JP2009075265A - グリッド偏光フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大面積のグリッド偏光フィルムを、高生産性で安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護する工程、部分的に保護された前記ダイヤモンド材をプラズマエッチング処理して幅600nm以下の突起を形成して切削工具を得る工程、該切削工具を用いて金型部材に微細な格子形状を形成し金型を得る工程、該金型により格子形状を透明樹脂成形体に転写する工程、および格子形状が転写された透明樹脂成形体に金属グリッド層を形成する工程を含む、グリッド偏光フィルムの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、グリッド偏光フィルムの製造方法に関する。さらに詳細には、大面積のグリッド偏光フィルムを、高生産性で安価に製造する方法に関する。
高い偏光分離性能を有する反射型偏光子としてグリッド偏光子が知られている。これは、多数の線状金属(ワイヤ)を一定の周期で平行に配列したグリッド構造をもつ光学部材である。グリッドの周期が入射光の波長より短い金属製グリッド構造を形成すると、グリッド構造に対して平行な偏光成分は反射され、垂直な偏光成分は透過され、単一偏光を作りだす偏光子として機能する。このグリッド偏光子を、光通信ではアイソレーターの光部品として、液晶表示装置では光の利用率を高め輝度を向上させるための部品として、利用することが提案されている。
このグリッド偏光フィルムの製法として、モース硬度9以上の材料(例えば、ダイヤモンド材)を高エネルギー線で直接加工し、先端に幅600nm以下の突起を形成してなる工具を作製し、該工具を使用して金型部材上に、幅50〜600nm、ピッチ50〜1,000nm、高さ50〜800nmの微細格子形状を形成し、該金型部材の微細格子形状を直接又はいったん金属版に転写したのち透明樹脂成形体に転写し、該微細格子形状が転写された透明樹脂成形体に導電性反射体を蒸着することを特徴とする製造方法が特許文献1に記載されている。
特開2006−17879号公報
そこで、本発明の目的は、切削工具先端に形成した微細構造の加工精度を低下させる要因の少ない切削工具の製造方法、及び高生産性で安価な大面積のグリッド偏光フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護(マスク)し、マスクされた前記ダイヤモンド材をプラズマエッチング処理して幅600nm以下の突起を形成することによって得られる切削工具を用いて、金型部材に微細な格子形状を形成し金型を得、該金型により格子形状を透明樹脂成形体に転写し、次いで格子形状が転写された透明樹脂成形体に金属グリッド層を形成することによって、大面積のグリッド偏光フィルムを高生産性で安価に製造できることを見出した。本発明はこの知見に基づいてさらに検討し、完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1)ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護する工程、前記ダイヤモンド材をプラズマエッチング処理して幅600nm以下の突起を形成して切削工具を得る工程、該切削工具を用いて金型部材に微細な格子形状を形成し金型を得る工程、該金型により格子形状を透明樹脂成形体に転写する工程、および格子形状が転写された透明樹脂成形体に金属グリッド層を形成する工程を含む、グリッド偏光フィルムの製造方法。
(2)ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護する工程が、ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料の膜で被覆し、その上にレジストを塗布して成膜し、該レジスト膜に潜像を形成し、該レジスト膜の前記潜像を現像して保護すべき部分以外の部分のレジスト膜を除去し、さらにエッチング耐性材料膜をエッチング処理して保護すべき部分以外の部分のエッチング耐性材料膜を除去することを含む、(1)に記載のグリッド偏光フィルムの製造方法。
(3)エッチング耐性材料膜のエッチング処理において、フッ化炭素化合物を使用する、(2)に記載のグリッド偏光フィルムの製造方法。
(4)ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護し、前記ダイヤモンド材をプラズマエッチング処理して幅600nm以下の突起を形成することを含む切削工具の製造方法。
本発明のグリッド偏光フィルムの製造方法によれば、大面積のグリッド偏光フィルムを、高生産性で安価に製造することができる。
本発明のグリッド偏光フィルムの製造方法は、(1)ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護する工程、(2)前記ダイヤモンド材をプラズマエッチング処理して幅600nm以下の突起を形成して切削工具を得る工程、(3)該切削工具を用いて金型部材上に微細な格子形状を形成し金型を得る工程、(4)該金型により格子形状を透明樹脂成形体に転写する工程、および(5)格子形状が転写された透明樹脂成形体に金属グリッド層を形成する工程を含むものである。
本発明に用いられるダイヤモンド材は、切削工具の材料として従来から使用されている材料の中から選択できる。特にダイヤモンド材は単結晶のものが好ましい。
ダイヤモンド材は切削工具として切削盤に取り付け易い大きさ及び形状に加工されている。例えば、直方体などの形状に加工されている。
ダイヤモンド材の表面(具体的には逃げ面及び掬い面)をエッチング耐性材料によって部分的に保護(マスク)する好ましい方法としては、ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料の膜で被覆し、その上にレジストを塗布して成膜し、該レジスト膜に潜像を形成し、該レジスト膜の前記潜像を現像して保護すべき部分以外の部分のレジスト膜を除去し、さらにエッチング耐性材料膜をエッチング処理して保護すべき部分以外の部分のエッチング耐性材料膜を除去することを含む方法が挙げられる。
ダイヤモンド材は、酸素が存在する雰囲気においてプラズマエッチングされる。ダイヤモンド材のマスク(ダイヤモンド材を部分的に保護する膜)となるエッチング耐性材料は酸素が存在する雰囲気においてプラズマエッチングされ難いものが好ましい。具体的なエッチング耐性材料は酸化物または酸化物を主成分として含有するものである。
エッチング耐性材料の例としては、Be、B、Al、Si、Ti、Zn、Mg、Zr、Nb、In、Sn、Hf、Ta、W等の酸化物または該酸化物を主成分として含有するものが挙げられる。これらのうち、Siの酸化物が好ましい。
エッチング耐性材料をダイヤモンド材の表面に被覆する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング(イオンめっき)法、イオンビームデポジション法、CVD法などが挙げられる。その中でもスパッタリング法が好ましい。被覆されたエッチング耐性材料膜の厚さは、好ましくは5〜1000nm、より好ましくは20〜500nmである。エッチング耐性材料の膜はダイヤモンド材のプラズマエッチング対象面全体に被覆させることが好ましい。
次にエッチング耐性材料膜の上に、レジストを塗布して成膜し、該レジスト膜に潜像を形成し、該レジスト膜の潜像を現像する。
使用されるレジストは、エネルギー線に感応して硬化部と非硬化部とが形成され、非硬化部が後述する現像剤によって除去され、硬化部がエッチング耐性材料のエッチング処理に耐性を示すものであれば、特に制限されない。レジストは、ポジ型感応性レジストであってもよいし、ネガ型感応性レジストであってもよい。本発明においては、解像度の観点からポジ型感応性レジストが好ましい。本発明に用いられるレジストは、たとえば、半導体回路の形成等に用いられる公知のレジストの中から適宜選択できる。例えば、日本ゼオン社製の電子線レジストZEP520などが挙げられる。レジストは、スピンコート、バーコート、ディップコートなどの方法によって、エッチング耐性材料膜の上に塗布される。
レジスト膜の厚さは特に制限されず、好ましくは5〜500nm、より好ましくは20〜400nmである。レジスト膜はエッチング耐性材料膜全体を被覆するように形成されることが好ましい。
レジスト膜に潜像を形成する方法としては、例えば、紫外線、遠紫外線、真空赤外線、極短紫外線、電子線、KrFエキシマレーザー光、X線などのエネルギー線によるリソグラフィーを用いた方法などで行うことができる。この潜像形成によってレジスト膜に所望パターンに対応した硬化部と非硬化部とが形成される。潜像形成後、熱処理(ベーク)を行ってもよい。
次いで前記レジスト膜の潜像を現像する。この現像によってレジスト膜の非硬化部(保護すべき部分以外の部分)を溶解除去し、保護すべき部分にレジスト膜を残す。現像剤は、レジストの種類に応じて適宜選択することができるが、通常、アルカリ性水溶液が使用される。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリの水溶液;エチルアミン、プロピルアミンなどの第一級アミン類の水溶液;ジエチルアミン、ジプロピルアミンなどの第二級アミン類の水溶液;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの第三級アミン類の水溶液;ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類の水溶液;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルヒドロキシメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウムヒドロキシド類の水溶液;などが挙げられる。また、現像剤は、必要に応じて、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、エチレングリコールなどの水溶性有機溶剤、界面活性剤、樹脂の溶解抑制剤などを含有していてもよい。現像手法として、パドル法、ディップ法、スプレー法などがあるが、特に制限されない。
現像によって保護すべき部分以外の部分のエッチング耐性材料膜が露出する。その露出されたエッチング耐性材料膜をエッチング処理する。エッチング耐性材料膜のエッチング方法としては、弗酸などの酸性液体を使用するウェットエッチング法;四フッ化炭素などのフッ化炭素化合物のガスを使用するドライエッチング法が挙げられる。本発明ではフッ化炭素化合物のガスを用いるドライエッチング法が好ましい。ドライエッチングに用いられるフッ化炭素化合物としては、四フッ化炭素、パーフルオロ−2−ブチン、パーフルオロ−2−ペンチン、1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン、1,1,1,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン、パーフルオロ−2−ペンテン、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン、2,2,3,4,4−ペンタフルオロオキセタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンなどが挙げられる。
このエッチング処理によって、プラズマエッチングすべきダイヤモンド材部分の上のエッチング耐性材料膜が除去されダイヤモンド材が露出する。エッチングすべき部分以外の部分(レジストが被覆されている部分)の領域にマスク(エッチング耐性材料膜)が残される。このマスクは次に行うダイヤモンド材のプラズマエッチング処理に対して耐性を示す。
ダイヤモンド材のプラズマエッチング処理(反応性イオンエッチングとも言う。)には、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、水などの酸素を含むガス、好ましくは酸素ガスが用いられる。酸素を含むガス以外にはアルゴンなどの不活性ガスが含まれていてもよい。プラズマエッチング処理とは、酸素を含むガスの存在する雰囲気において、誘電結合プラズマや有磁場マイクロ波プラズマなどを発生させてエッチングを行うことをいう。エッチング時の気圧は133mPa以上が好ましく、プラズマの電子密度は5×1010cm-3以上であることが好ましい。このプラズマを維持するために、通常70W以上、好ましくは100W以上の電力を供給する。
このようにしてダイヤモンド材の表面に幅600nm以下、好ましくは25〜300nmの突起を形成させて切削工具が得られる。突起は少なくとも1つあればよい。複数の突起を形成させる場合は突起間の間隔を、得ようとしているグリッド偏光フィルムの金属グリッド層のピッチ間隔に対応したサイズにすることが好ましい。突起のピッチ間隔は、好ましくは20〜500nm、より好ましくは30〜300nmである。また、突起の高さHは、好ましくは5〜3000nm、より好ましくは20〜1000nm、特に好ましくは50〜300nmである。突起の高さ/突起の幅の比は、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.4〜3.0、特に好ましくは0.8〜2.0である。
ダイヤモンド材の表面に形成される突起の形状は特に制限されず、例えば、突起の垂直断面が、長方形、三角形、半円形、台形、又はこれらの形状を若干変形させたような形状などを挙げることができる。これらの中で断面が長方形のものが好適である。工具の先端に形成される突起の算術平均粗さ(Ra)は好ましくは10nm以下、より好ましくは3nm以下である。
該切削工具を精密微細加工機(切削盤)に取り付けて、該切削工具を用いて金型部材上に微細な格子形状を形成し金型を得る。金型部材としては、平板状のものと、ロール状のものとが挙げられる。ロール状金型部材では、切削工具の突起をロール状金型部材の周面に圧しあて、ロール状金型部材を回転させて、ロール状金型部材周面を切削又は研削する。
精密微細加工機は、X,Y,Z軸の移動精度が、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、特に好ましくは10nm以下のものである。精密微細加工機は、好ましくは0.5Hz以上の振動の変位が50μm以下に管理された室内、より好ましくは0.5Hz以上の振動の変位が10μm以下に管理された室内に設置する。また、平板部材又はロール部材の切削又は研削は、好ましくは温度が±0.5℃以内に管理された恒温室、より好ましくは±0.3℃以内に管理された恒温室で行う。
微細加工に用いられる金型部材は、その表面が、好ましくは40〜350、より好ましくは200〜300のビッカース硬度を有する材料で形成されていることが好ましい。そのような硬度を有する材料として、例えば、電着又は無電解めっきにより形成された金属膜が挙げられる。金属膜の材料としては銅、ニッケル、ニッケル−リン合金、パラジウムなどが挙げられ、これらのうち、銅、ニッケル、ニッケル−リン合金が好ましい。
透明樹脂成形体用の転写金型になる金型部材に直接切削工具を圧し付け加工して格子形状を形成させることもできるが、仮の金型部材の上に切削工具を圧し付け加工して格子形状を形成させ、この仮金型の上に電鋳で金属版を製造し、この金属版を仮金型から引き剥がし、その金属版を透明樹脂成形体用の転写金型になる基材に貼り付ける方法で、金型を作製してもよい。
上記の方法で得られた金型により格子形状を透明樹脂成形体に転写する。
透明樹脂成形体としては、透明樹脂のフィルムや板が通常用いられる。該透明樹脂は、加工性の観点からガラス転移温度が60〜200℃であることが好ましく、100〜180℃であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
透明樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、脂環式オレフィンポリマーなどが挙げられる。
本発明に用いる透明樹脂は、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤が適宜配合されたものであってもよい。
透明樹脂成形体の平均厚さは、取り扱い性の観点から通常5μm〜10mm、好ましくは20〜500μmである。透明樹脂成形体は、波長400〜700nmの可視領域の光の透過率が80%以上であるものが好ましい。
また、透明樹脂成形体は、その波長550nmで測定したレターデーションRe(Re=d×(nx−ny)で定義される値、nxおよびnyは透明基材の面内主屈折率(nx≧ny);dは透明基材の平均厚さである。)によって特に制限されない。面内の任意2点のレターデーションReの差(レターデーションむら)は、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。レターデーションむらが大きいと、液晶表示装置に用いた場合に表示面の明るさにバラツキが生じやすくなる。
グリッド偏光フィルムを製造するにあたって、透明樹脂成形体として長尺状のものが好ましく用いられる。長尺とは、幅に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものを言い、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有するものを言い、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものを言う。
長尺状の透明樹脂成形体の幅は、好ましくは500mm以上、より好ましくは1000mm以上である。グリッド偏光フィルムの製造工程の途中において、任意に、その幅方向の両端を切り落とす(トリミング)ことがある。この場合、前記透明樹脂成形体の幅は、両端を切り落とした後の寸法とすることができる。
透明樹脂成形体は、公知の成形方法で得ることができる。成形法としては、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。
透明樹脂成形体への転写方法は特に制限されない。例えば、ロール状金型(転写ロール)を用いる場合は、転写ロールとニップロールの間で透明樹脂フィルムを挟圧し、転写ロール面に形成された格子形状を樹脂フィルム表面に転写する。転写ロールとニップロールとによる挟み圧力は、好ましくは数MPa〜数十MPaである。また転写時の温度は、樹脂フィルムを構成している透明樹脂のガラス転移温度をTgとすると、好ましくはTg〜(Tg+100)℃である。樹脂フィルムと転写ロールとの接触時間は樹脂フィルムの送り速度、すなわちロール回転速度によって調整でき、好ましくは5〜600秒間である。
別の転写方法としては、透明樹脂成形体の表面に感光性透明樹脂を塗布し、該塗膜に転写用金型を圧しあて、露光して感光性透明樹脂を硬化させ、次いで金型を剥がす方法が挙げられる。
転写によって得られる形状は、グリッド偏光性能を示す格子形状である(例えば、図1参照)。該格子形状は、略平行に延びる複数の凸条によって構成されている。凸条の垂直断面の形状は特に限定されないが、矩形、台形、菱形、波形、凸条の頂から両袖にオーバーハングを有する形状(例えば、上辺(凸条の頂部側の幅)が下辺(基部側の幅)よりも長い台形(いわゆる逆テーパー状)、基部側の幅よりも大きい直径(凸条の頂部側の幅)の円が頂部に形成された断面形状のもの)などが挙げられる。これらのうち矩形または台形のものが好ましい。
本発明の製法によって形成される凸条の大きさはグリッド偏光性能を示すものであれば特に制限されない。凸条の高さは、好ましくは5〜3000nmの範囲内、好ましくは20〜300nmの範囲内、より好ましくは50〜200nmの範囲内である。凸条の幅は、好ましくは30〜200nmの範囲内、より好ましくは60〜150nmの範囲内にある。凸条間の距離(ピッチ)は、好ましくは20〜600nmの範囲内、より好ましくは80〜400nmの範囲内にある。なお、ここで凸条間の距離は、凸条の頂点間距離のことである。
なお、凸条の高さ、幅、およびピッチは、それらを電子顕微鏡によって観察して、その観察像の寸法を測定して、それらから平均を求める。具体的には、フィルム面から無作為に9点を選択し、その部分を観察し、観察像の長さ10μmの範囲内にある凸条の高さ、幅、およびピッチを測定し、それら9点の測定値から算出する。
凸条の高さ/幅の比は、好ましくは0.3〜3.0、より好ましくは0.5〜2.0である。凸条は細長く線状に延びており、その長さは好ましくは500nm以上である。凸条は略平行に並んでいる。ここで略平行とは、平行方向から±5°の範囲内にあることをいう。
本発明のグリッド偏光フィルムの製法では、次に前記格子形状が転写された透明樹脂成形体に金属グリッド層を形成する。金属グリッド層に用いられる材料は、導電性金属が好ましく、具体的には、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、ロジウム、スズ等の金属が挙げられる。
金属グリッド層は、前記格子形状を構成する凸条の頂、または凸条の間に形成される溝の底に形成されることが好ましい。金属グリッド層は、導電性金属の材料を物理蒸着(PVD法)することによって形成することができる。PVD法は、蒸着材料を蒸発・イオン化し、被膜を形成させる方法である。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング(イオンめっき)法、イオンビームデポジション法等の中から適宜選択することができる。これらのうち真空蒸着法が好適である。蒸着材料を蒸発・イオン化する方法は、蒸着材料、基材の種類により、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法から選択される。
PVD法によって形成された金属グリッド層の幅を細く調整するために、金属グリッド層の上にマスキングをして湿式エッチングを行ってもよい。
マスキングには無機酸化物が通常用いられる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素または窒化酸化ケイ素などの化合物が挙げられる。この中では特に酸化ケイ素が好ましい。マスキングに用いられる無機酸化物膜の厚さは、特に制限されないが、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、より好ましくは3〜20nmである。
湿式エッチングの前に、略平行に並んだ凸条の長手に直交する方向に延伸することができる。この延伸によって凸条の中心間距離が広がるため、金属グリッド層のピッチ間隔が広がり、結果として光線透過率が高くなる。また溝の底面に形成されていた金属グリッド層Bは、延伸によって、凸条の基部から離れ隙間ができる。後述する湿式エッチング液がこの隙間に入り込み、溝に形成された金属グリッド層Bの両端を優先的に除去し、中央よりも両端を薄くすることができる。
延伸方法は特に限定されないが、凸条に直交する方向の延伸倍率を好ましくは1.05〜5倍、より好ましくは1.1〜3倍、凸条に平行な方向の延伸倍率を好ましくは0.9〜1.1倍、より好ましくは0.95〜1.05倍にすると好ましい。
延伸後の凸条の幅および高さは、延伸前の値とほとんど変わらない。一方、凸条の中心間距離は、延伸前よりも長くなり、好ましくは30〜1000nm、より好ましくは50〜600nmである。このような延伸を行うために、テンター延伸機による連続的な横一軸延伸が好適である。
湿式エッチングはエッチング液に金属グリッド層を接触させることによって行われる。エッチング液は、透明樹脂成形体を腐食等させずに金属グリッド層の一部を除去できる液であれば良く、マスキング層(無機酸化物膜)、金属グリッド層、透明樹脂成形体の材質に応じて適宜選択される。湿式エッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を含有する溶液;硫酸、燐酸、硝酸、酢酸、フッ化水素、塩酸などを含有する溶液;過硫酸アンモニウム、過酸化水素、フッ化アンモニウム等やそれらの混合液からなる溶液などが挙げられる。また、湿式エッチング液には界面活性剤などの添加剤が含まれていても良い。
この湿式エッチングによって、マスキング層が積層されていない部分またはマスキング層が薄い部分の下にある金属グリッド層が除去される。具体的には、凸部の頂部に積層された金属グリッド層の両袖部分、溝の底面に積層された金属グリッド層の両端が除去される。一方、凸条の頂に凸条の幅と同程度の幅の金属グリッド層Aが除去されずに残る。溝の底面の中央に金属グリッド層Bが除去されずに残る。
金属グリッド層の幅および長さは、凸条の幅および長さ、または凸条の間に形成される溝の幅または長さにほぼ従う。凸条の頂に形成される金属グリッド層Aの厚さは、特に制限されない。通常20〜500nm、好ましくは30〜300nm、より好ましくは40〜200nmである。凸条の間に形成される溝の底に形成される金属グリッド層Bの厚さは、特に制限されない。通常20〜500nm、好ましくは30〜300nm、より好ましくは40〜200nmである。溝の底に形成される金属グリッド層Bは、中央部の厚さH1に対する両端部の厚さH2の比が、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.2以下であるものが好ましい。すなわち、溝の底に形成される金属グリッド層Bの垂直断面の形状は、中央に高く両側に低くなる形(山形)であることが好ましい。
金属グリッド層のピッチ間隔は、凸条の頂に形成された金属グリッド層Aのピッチ間隔および/または溝の底に形成された金属グリッド層Bのピッチ間隔として示され、いずれも好ましくは20〜600nmの範囲内、より好ましくは80〜400nmの範囲内にある。
得られたグリッド偏光フィルムの金属グリッド層を形成した側の面に直接または他の層を介して保護層を積層させてもよい。
保護層は、その材質によって特に制限されないが、透明材料からなるものが好ましい。透明材料としては、ガラス、無機酸化物、無機窒化物、多孔質物質、透明樹脂などが挙げられる。これらのうち、特に透明樹脂からなるものが好ましい。透明樹脂は、前述の透明樹脂成形体を構成するものとして示したものから適宜選択して用いることができる。
保護層の平均厚さは、取り扱い性の観点から通常5μm〜1mm、好ましくは20〜200μmである。保護層は、400〜700nmの可視領域の光の透過率が80%以上であるものが好ましい。
また、保護層は、その波長550nmで測定したレターデーションReが、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。また、面内の任意2点のレターデーションReの差(レターデーションむら)は、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。保護層のレターデーションReが大きく、またレターデーションむらが大きいと、液晶表示装置に用いた場合に表示面の明るさにバラツキが生じやすくなる。
保護層を積層させるために接着剤(粘着剤を含む)を用いることができる。凸条の頂の金属グリッド層と保護層との間に介在する接着剤からなる層(接着層)の平均厚さは、通常0.01μm〜30μm、好ましくは0.1μm〜15μmである。保護層を接着剤で貼り付ける場合には、凸条の間に形成される溝に接着剤が入り込まないようにし、金属グリッド層間の空間に空気が残るようにすることが偏光分離性能を高める点で好ましい。
次に、本発明を実施例を示してより具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されない。
0.2mm×1mm×1mmの直方体の単結晶ダイヤモンドの1mm×1mmの面に、アルゴンガス存在下にて出力400Wの条件でSiO2をスパッタリングして厚さ400nmの膜を形成した。前記SiO2膜上に、クロロホルムを用いて1重量%に希釈した電子線描画用感光性材料ZEP520(日本ゼオン社製EBレジスト)の溶液をスピンコート法により塗布し、40℃で10分間乾燥することにより、厚さ500nmのレジスト膜を形成した。
次に、電子線描画装置にて、SiO2膜を形成した面の一辺の端から長さ80nmで該辺に直角に幅100nmの平行線をピッチ200nmでレジスト膜に描画(潜像形成)した。
この描画されたレジスト膜を現像液(日本ゼオン製)で約3分間現像し、水洗浄し、窒素ブロアーにて乾燥した。該操作により、描画された平行線部分のレジスト膜は除去された。次に、CF4とArとの混合ガスによってSiO2膜を反応性イオンエッチングした。レジスト膜でマスクされた部分以外の部分のSiO2膜が除去された。
次いで、ArとO2との混合ガスによってダイヤモンドを反応性イオンエッチングした。SiO2膜でマスクされた部分以外の部分のダイヤモンドがエッチングされた。10重量%のNaOH水溶液でマスクとして使用したSiO2膜およびレジスト膜を完全に除去した。電界放出型走査電子顕微鏡S−4700(日立製作所製)を用いてダイヤモンドのエッチング処理面を観察したところ、幅98nmおよび長さ82nmの断面矩形の突起がピッチ200nmで平行に並んで形成されていた。得られたダイヤモンドバイトを、8mm×8mm×60mmのSUS製シャンクにろう付けし、切削工具を作製した。
直径200mmで長さ150mmのステンレス鋼SUS430製の円筒部材の曲面全面に、厚さ100μmのニッケル−リン無電解メッキを施した。精密円筒研削盤S30−1(スチューダ製)を用いて、前記円筒部材を回転させ、前記切削工具のダイヤモンドバイトの突起を、前記ニッケル−リン無電解メッキ面に当てて切削加工し、転写ロールを得た。なお、ニッケル−リン無電解メッキ面の切削加工は、温度20.0±0.2℃、振動制御システム(昭和サイエンス製)により0.5Hz以上の振動の変位が10μm以下に管理された恒温低振動室内で行った。
直径70mmのゴム製ニップロール(表面温度100℃)及び上記転写ロール(表面温度160℃)の間に100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(ZF−14、オプテス社製)を、搬送テンション0.1kgf/mm2、ニップ圧0.5kgf/mmの条件で挟み、フィルム面に転写ロール面の形状を転写した。形状が転写されたフィルムはロール状に巻き取った。得られた転写フィルム表面に、平均幅99nm、平均高さ82nmの断面矩形の凸条が、長尺フィルムの長手方向に平行に平均ピッチ200nmで並んで形成されていることが、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所製)の観察によって確認された。なお、観察用の試料は、集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所製)のマイクロサンプリング装置にて作成した。
前記転写フィルムの凸条形成面に、アルゴンガス存在下にて出力400Wの条件でSiO2をフィルムの法線方向から70度傾き且つ凸条の長手に対して直角になる方向からスパッタリングし、次いで、法線方向から逆に70度傾き且つ凸条の長手に対して直角になる方向からアルゴンガス存在下にて出力400Wの条件でSiO2をスパッタリングしてSiO2膜を形成した。アルミニウムをフィルムの法線方向から真空蒸着してアルミニウム層(金属グリッド層)を形成した。
次いで、硝酸5.2重量%、リン酸73.0重量%、酢酸3.4重量%、及び残部が水からなる組成(酸成分相当濃度:81.6重量%)で、温度33℃のエッチング液に、上記のアルミニウム層を形成したフィルムを30秒間浸漬した。次いで水で洗浄し、120℃で5分間乾燥し、ロール状に巻き取り、長尺のグリッド偏光フィルムを作製した。
長尺のグリッド偏光フィルムのアルミニウム層(金属グリッド層)の寸法を、透過電子顕微鏡H−7500(日立製作所社製)による観察で求めた。観察用の試料は集束イオンビーム加工観察装置FB−2100(日立製作所社製)のマイクロサンプリング装置で作製した。グリッド偏光フィルムは、凸条の頂に形成されたアルミニウム層の平均ピッチが200nm、平均幅が98nm、平均厚さが75nmであり;凸条間の溝の底に形成されたアルミニウム層の平均ピッチが200nm、平均幅が92nm、平均厚さが65nmであった。底に形成されたアルミニウム層は両端部の膜厚が中心部の膜厚より薄い山形構造であった。
トリアセチルセルロースからなる保護フィルムをウレタン系接着剤を介して、前記長尺グリッド偏光フィルムのアルミニウム層側に積層し、この積層体を加圧ローラーのニップに供給し圧着して貼り合せ、保護層付きの長尺のグリッド偏光フィルムを得た。得られた保護層付きの長尺のグリッド偏光フィルムはロール状に巻き取った。得られた保護層付きの長尺のグリッド偏光フィルムの透過軸は、フィルムの幅方向と略平行であった。
導光板の側面に、直径3mmの冷陰極管を配置し、銀蒸着ポリエステルフィルムからなる光源ホルダにより冷陰極管を包囲し、導光板の下面に銀蒸着ポリエステルフィルムからなる反射シートを配置してなるサイドライト型面光源装置を用意した。
前記サイドライト型面光源装置の上に光拡散シートおよび吸収型偏光板をこの順に載置し、さらに透過型のTN液晶パネルを載せ、その上に別の吸収型偏光板を(偏光透過軸が前記吸収型偏光板のものと直交するように)載せて、液晶表示装置Aを得た。該液晶表示装置Aを白表示にし、輝度計(BM−7、トプコン製)を用いて正面輝度(A)を測定した。
次いで、前記サイドライト型面光源装置の上に光拡散シート2枚及び前記グリッド偏光フィルムをこの順で積層して偏光光源装置を得た。該偏光光源装置の上に、吸収型偏光板をその偏光透過軸がグリッド偏光フィルムの偏光透過軸と平行になるように載置し、さらに透過型のTN液晶パネルを載せ、その上に別の吸収型偏光板を(偏光透過軸が前記吸収型偏光板のものと直交するように)載せて、液晶表示装置Bを得た。得られた液晶表示装置Bを白表示にし、輝度計(BM−7、トプコン製)を用いて正面輝度(B)を測定した。輝度向上率を以下の式を用いて求めた。
(輝度向上率)=B/A×100 (%)
得られたグリッド偏光フィルムによる輝度向上率は130%であり、良好な光学特性を発現するものであった。
本発明の製造方法によって得られるグリッド偏光フィルムの一例を示す斜視概念図である。
符号の説明
310:表面に微細な凹凸格子形状を有する樹脂フィルム
311:金属グリッド層A
311’:金属グリッド層B
312:金属グリッド層間の空間

Claims (4)

  1. ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護する工程、前記ダイヤモンド材をプラズマエッチング処理して幅600nm以下の突起を形成して切削工具を得る工程、該切削工具を用いて金型部材に微細な格子形状を形成し金型を得る工程、該金型により格子形状を透明樹脂成形体に転写する工程、および格子形状が転写された透明樹脂成形体に金属グリッド層を形成する工程を含む、グリッド偏光フィルムの製造方法。
  2. ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護する工程が、ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料の膜で被覆し、その上にレジストを塗布して成膜し、該レジスト膜に潜像を形成し、該レジスト膜の前記潜像を現像して保護すべき部分以外の部分のレジスト膜を除去し、さらにエッチング耐性材料膜をエッチング処理して保護すべき部分以外の部分のエッチング耐性材料膜を除去することを含む、請求項1に記載のグリッド偏光フィルムの製造方法。
  3. エッチング耐性材料膜のエッチング処理において、フッ化炭素化合物を使用する、請求項2に記載のグリッド偏光フィルムの製造方法。
  4. ダイヤモンド材の表面をエッチング耐性材料により部分的に保護し、前記ダイヤモンド材をプラズマエッチング処理して幅600nm以下の突起を形成することを含む切削工具の製造方法。
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