JP2009073970A - 硬化性樹脂組成物ならびにこれを用いた透明積層体およびその製造方法 - Google Patents

硬化性樹脂組成物ならびにこれを用いた透明積層体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一対の透明基板が接着層を介して一体化された透明積層体であって、接着層の耐引き裂き性および透明基板との密着性が良好であり、かつ透明性にも優れた透明積層体を提供する。
【解決手段】第1の雰囲気中で、一対の透明基板10a間に硬化性樹脂組成物を収容した密閉空間を形成した後、該密閉空間の外部を第1の雰囲気よりも圧力が高い第2の雰囲気とした状態で硬化性樹脂組成物を硬化させる。硬化性樹脂組成物として、ポリビニルブチラール樹脂(a)と、水酸基の数が1または2個である炭素数2〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレート(b)を含有する硬化性樹脂組成物を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、一対の透明基板間に挟持された硬化性樹脂組成物を硬化させて透明積層体を製造する方法に好適な硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いた透明積層体の製造方法、および該製造方法で得られる透明積層体に関する。
一対のガラス透明基板を接着層を介して一体化した合わせガラスは、破損したガラス破片がフィルムに付着して飛散しないことから自動車の風防ガラスとして使用され、また、貫通し難く強度が優れていることから建物の窓ガラス(安全ガラス、防犯ガラス)として使用されている。
合わせガラス等の積層体における接着層には、透明性に優れるほかに、透明基板との密着性および耐引き裂き性が良好であることが要求される。
合わせガラスの製造方法として特許文献1、2には以下の製法が開示されている。まず、接着性のスペーサーを挟んで一対のガラス透明基板を張り合わせた平板状の容器を作製する。このときスペーサーの一部を開口させておく。次に、スペーサーの開口部から未硬化の硬化性樹脂組成物を注入した後、該スペーサーの開口部を閉塞し、硬化性透明樹脂組成物を硬化させることにより、合わせガラスを製造する。
特開2005−41747号公報 特開昭60−51766号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載されている方法では、一対の透明基板によって形成された平板容器に未硬化の硬化性樹脂組成物を注入する際に気泡が発生し、この気泡の除去に時間を要するため、生産性の点で不満がある。
また、一般的に知られているアクリル系またはメタクリル系の硬化性樹脂組成物は、塗膜や接着層、粘着層などの比較的薄い形状で硬化される場合は問題ないが、合わせガラスの接着層は厚みが数100ミクロン〜数ミリ程度と比較的大きいため、硬化反応の不均一に起因して耐引き裂き性や透明基板との密着性が不充分となる場合がある。これは硬化過程において硬化反応によって組成物の粘度が急激に増大するためと考えられ、特に、硬化速度が速い光硬化では粘度が急増しやすく、硬化反応がより不均一になりやすい。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、一対の透明基板が接着層を介して一体化された透明積層体であって、接着層の耐引き裂き性および透明基板との密着性が良好であり、かつ透明性にも優れた透明積層体を製造できる、硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
またかかる透明積層体を、接着層中における気泡の発生を抑えて、生産性良く製造できる製造方法、およびを提供することを目的とする。
本発明の硬化性樹脂組成物は、一対の透明基板間に挟持された硬化性樹脂組成物を硬化させて透明積層体を製造する方法に用いられる硬化性樹脂組成物であって、ポリビニルブチラール樹脂(a)と、水酸基の数が1または2個である炭素数2〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレート(b)を含有することを特徴とする。
前記ポリビニルブチラール樹脂(a)は、10質量%エチルアルコール溶液としたときの粘度が0.03Pa・s以上であることが好ましい。
前記ヒドロキシアルキルアクリレート(b)が、水酸基の数が1個である炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートであることが好ましい。
硬化性樹脂組成物中における、前記ポリビニルブチラール樹脂(a)の含有量が3質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。
前記硬化性樹脂組成物が、光重合開始剤を含む、光硬化性の樹脂組成物であることが好ましい。
本発明は、第1の雰囲気中で、一対の透明基板間に、内部に本発明の硬化性樹脂組成物を収容した密閉空間を形成する第1の工程と、前記密閉空間の外部を、前記第1の雰囲気よりも圧力が高い第2の雰囲気とした状態で、前記硬化性樹脂組成物を硬化させる第2の工程を有することを特徴とする透明積層体の製造方法を提供する。
前記第1の工程において、一方の透明基板の表面上に周縁に沿うシール部を設け、該シール部で囲まれた領域内に前記硬化性樹脂組成物を供給し、前記第1の雰囲気中で、前記一方の透明基板の表面に向かって他方の透明基板を押し当てて、前記硬化性樹脂組成物を押し広げるとともに2枚の透明基板の間隙内に該硬化性樹脂組成物が挟持された密閉空間を形成することが好ましい。
前記第1の雰囲気の圧力が1kPa以下であり、前記第2の雰囲気の圧力が10kPa以上であり、両圧力の差が100kPa以上であることが好ましい。
前記一対の透明基板の少なくとも一方がガラス板であることが好ましい。
前記一対の透明基板が、ほぼ同じ曲率を有する一対の湾曲基板であってもよい。
本発明は、本発明の製造方法で製造された透明積層体を提供する。
本発明は、さらに、一対の透明基板と該一対の透明基板間に挟持された硬化樹脂の層を有する透明積層体であって、前記硬化樹脂が前記硬化性樹脂組成物の硬化物である、透明積層体を提供する。
前記透明積層体は、600mm以上の辺を少なくとも一つ有する大きさの透明積層体であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、一対の透明基板が接着層を介して一体化された透明積層体であって、接着層の耐引き裂き性および透明基板との密着性が良好であり、かつ透明性にも優れた透明積層体が得られる。
本発明の透明積層体の製造方法によれば、一対の透明基板が接着層を介して一体化された透明積層体であって、接着層の耐引き裂き性および透明基板との密着性が良好であり、かつ透明性にも優れた透明積層体脂組成物を、接着層中の気泡を除去する作業を必要とせずに生産性良く製造できる。
本発明の透明積層体は、接着層の耐引き裂き性および透明基板との密着性が良好であり、かつ透明性にも優れている。
[(a)成分]
本発明にかかるポリビニルブチラール樹脂(a)は、ビニルアセタール単位と、ビニルアルコール単位と、酢酸ビニル単位とからなる3元共重合体である。樹脂中の各単位の含有量は、ビニルアセタール単位が65〜94質量%、ビニルアルコール単位が5〜30質量%、酢酸ビニル単位が0.2〜15質量%であることが好ましい。ビニルアセタール単位の含有量は通常70質量%以上である。透明基板との接着性を向上させる点では、ビニルアルコール単位を10質量%以上有することが好ましい。特に、ビニルアセタール単位が75〜85質量%、ビニルアルコール単位が10〜24質量%、酢酸ビニル単位が0.5〜10質量%であることが好ましい。また、平均重合度は、500〜2500が好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂(a)は、10質量%エチルアルコール溶液としたときの粘度(以下、溶液粘度ということもある)が0.03Pa・s以上であるものが好ましい。該溶液粘度は、具体的には、測定対象のポリビニルブチラール樹脂(a)を、樹脂濃度が10質量%となるようにエチルアルコールに溶解して得られる樹脂溶液の粘度を、後述の粘度測定方法で、測定温度25℃にて測定して得られる値である。
該溶液粘度が0.03Pa・s以上であるポリビニルブチラール樹脂(a)を用いると接着層の引裂き耐性が高く、ガラス破砕時に接着層の破断を抑制でき好ましい。該溶液粘度は、好ましくは0.04Pa・s以上である。該溶液粘度の上限は特に限定されない。一般的には10Pa・s以下である。
ポリビニルブチラール樹脂(a)は市販品(例えば、電気化学工業社製、製品名「デンカブチラール」シリーズ等)を適宜用いることができる。
また、ポリビニルブチラール樹脂(a)として、合わせガラスの中間膜に使用される、可塑化ポリビニルブチラール樹脂を用いることもできる。可塑化ポリビニルブチラール樹脂は、上記ポリビニルブチラール樹脂を可塑剤で可塑化した樹脂である。可塑剤としては、脂肪族系エステルが適当であり、例えば、トリエチレングリコールなどのジオールと脂肪酸とのジエステルや脂肪族二塩基酸と脂肪族アルコールとのジエステルが挙げられる。可塑剤の添加量はポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して60質量部以下、特に50質量部以下が適当である。なお、本発明におけるポリビニルブチラール樹脂(a)の粘度や含有量は、可塑剤を含まないポリビニルブチラール樹脂のみについての粘度や含有量をいう。
[(b)成分]
(b)成分は、水酸基の数が1または2個である炭素数2〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートである。具体的には、アクリル酸のエステル(CH=CH−COOR)であって、Rが炭素数2〜8のアルキル基であり、かつ、該アルキル基に結合している水素原子の1個または2個が水酸基で置換されている化合物である。
(b)成分が水酸基を有することにより透明基板との良好な密着性が得られやすい。水酸基の数が1または2個であるものは入手が容易である。水酸基の数が多すぎると硬化物が水素結合により硬くなりすぎ脆くなることがある。
Rの炭素数は2〜8である。炭素数が1であると(b)成分における水酸基密度が高くなりやすく、(a)成分と組み合わせた硬化性樹脂組成物を硬化させる際に、硬化反応の過程で一部相分離が生じるなどして硬化物のヘイズが大きくなるおそれがある。また該炭素数が9以上であると水酸基の密度が低下して、(a)成分の溶解性が低下したり、硬化後に透明基板との充分な密着性が得られない場合がある。
特に(b)成分のヒドロキシアルキル基における水酸基の数が1個でありかつ炭素数3〜6であると、硬化物の透明性が高く、かつ、適度な柔軟性を保持しつつ透明基板との良好な密着性を得ることができる点でより好ましい。
さらに、(b)成分としてのヒドロキシアルキルアクリレートの代わりにヒドロキシアルキルメタアクリレートを使用すると、硬化反応の過程で一部相分離が生じるなどして硬化物が白濁し、ヘイズが著しく大きくなる場合がある。また、密着性や引き裂き強度に関しても充分なものが得られない。
(b)成分として使用できる化合物の例としては、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらのうちで4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
[重合開始剤]
硬化性樹脂組成物は熱重合開始剤を含有させて熱硬化性の樹脂組成物としてもよく、
または光重合開始剤を含有させて光硬化性の樹脂組成物としてもよい。該開始剤は加熱または光照射によって(a)成分の硬化反応を促進する作用を生じるものであればよく、公知の開始剤を適宜用いることができる。
前述したように光照射によって硬化させる場合の方が硬化反応に要する時間が短く、生産性の面で有利であるが、一方で合わせガラスの接着層のような厚みの大きい光硬化による成形体は、その硬化反応に起因した急激な粘性の上昇により充分な機械的強度が得られない場合がある。これに対して本発明による光硬化性の樹脂組成物は、光硬化によっても充分な機械的強度を呈することができるため、光重合開始剤を含有させて光照射によって硬化させる方法に特に好ましい。
また光硬化の方が、省エネルギーである点、および熱変形しやすい透明基板も使用できる点でも好ましい。
光重合開始剤としては、可視光線または紫外線(波長300〜400nm)の照射により励起され活性化して硬化反応を促進するものが好ましく用いられる。具体例としては、ベンゾインエーテル系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうちで、好ましい光重合開始剤としては、ベンゾインイソプロピエーテル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。特に、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤は、微量の添加においても充分に硬化性樹脂組成物を硬化させることができ好ましい。
[その他の反応性成分]
硬化性樹脂組成物には、(a)および(b)成分を硬化させる工程で、同時に硬化反応を生じるようなその他の反応性成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。
その他の反応性成分は、後述の真空積層法の工程中で気泡の発生を防ぐうえで、常圧における沸点が150℃以上であるものが好ましい。かかるその他の反応性成分の例としては、硬化促進剤としてのアミン系化合物や、(a)および(b)の分子中に存在する水酸基と反応するイソシアネート基を有する化合物、透明基板との密着性を改善するためのシランカップリング剤等が挙げられる。
また、その他の反応性成分として、分子内に2〜6個のアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、またはイソシアネート基を有する多官能の硬化性化合物を硬化性樹脂組成物に含有させると、硬化物に架橋構造を付与することができる。
なお、硬化性化合物として通常よく用いられるメチルメタクリレート、ブチルアクリレート等は沸点が150℃未満であるため、含有させないことが好ましい。
[その他の添加剤]
また硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、重合禁止剤;ベンゾトリアゾール系またはヒドロキシフェニルトリアジン系のUV吸収剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤等を適宜添加してもよい。また、各種顔料や染料を添加して透明積層体の透過光色を変化させたり、ITO(インジウム錫の酸化物)などの電導性の微粒子を微量分散させることで赤外線を吸収させることもできる。また、硬化物の弾性率や引っ張り強度を調整するために可塑剤を含有させてもよい。更に、硬化後の硬化性樹脂組成物と屈折率の異なる微粒子や短繊維状のフィラーを均一分散させることで透明積層体の透過光の様態を変化させたり、硬化物の厚みの範囲内で特定の意匠を実現するフィラーを添加することもできる。
[含有割合]
硬化性樹脂組成物中におけるポリビニルブチラール樹脂(a)の含有量は、3〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。該(a)成分の含有量が3質量%以上であると硬化物の引裂き耐性が向上して合わせガラスの安全性が向上するので好ましく、30質量%以下であると硬化性樹脂組成物の流動性が確保でき、透明基板に挟持した際に短時間で延展するため好ましい。
上記その他の反応性成分の含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。ゼロでもよい。多官能の硬化性化合物を含有させる場合は、その含有量が多すぎると硬化物が脆くなり引裂き強度が低下するおそれがあるため、10質量%以下とすることが好ましい。
光重合開始剤を添加する場合、その添加量は、(b)成分と上記その他の反応性成分のうち光硬化する成分の合計量100質量部に対して0.1〜3質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましい。好ましい添加量は用いる光重合開始剤の硬化促進の効果に依存するが、上記範囲の下限値以上であると添加効果が充分に得られやすく、上限値以下であると硬化後の紫外線照射による黄変などを低減でき好ましい。
熱重合開始剤を添加する場合、その添加量は、(b)成分と上記その他の反応性成分のうち熱硬化する成分の合計量100質量部に対して0.5〜3質量部が好ましく、0.5〜1質量部がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると添加効果が充分に得られやすく、上限値以下であると硬化物の分子量を大きくでき引裂き耐性を改善でき好ましい。
[粘度]
本明細書における粘度の値は以下の方法で測定した値である。粘度測定用の容器(Brookfield社製 HT−2DB−100)に、測定しようとする試料を約10g入れ、粘度測定用の保温機に設置して試料の温度を25℃の測定温度とする。次に粘度計(Brookfield社製 LVDV−II+ pro)に取り付けた測定用のスピンドル(Brookfield社製 SC4−31)を測定容器中の試料中に浸漬させて、試料の粘性の大きさに応じて0.3〜100rpmの範囲の速度に設定したスピンドルを回転させながら15分保持した後、試料の粘度を測定する(V25)。
硬化性樹脂組成物のうち、低分子量である(b)成分が占める割合が多いほど該組成物の粘度は低下する。また(a)成分の溶液粘度が高いほど該組成物の粘度は増大する。
硬化性樹脂組成物の未硬化の状態における25℃での粘度(V25)が0.05Pa・s以上であると、硬化前後での硬化に起因した硬化物の収縮を抑えやすい。硬化前後での収縮が大きいと、硬化物に歪みが残り機械的強度が低下しやすい。更に真空積層法を用いて硬化性樹脂組成物を一対の透明基板間に挟持する場合は、V25が0.15Pa・s以上、特に0.5Pa・s以上であると、透明基板に滴下した硬化性樹脂組成物が、他方の透明基板と重ね合わせる際に、透明基板の周辺に予め形成されたシールから溢れ出ることを防止するのに効果があり好ましい。
前記特許文献1、2に記載の方法、すなわちシールした後の基板間に硬化性樹脂組成物を注入して硬化させる方法(以下、注入充填法という)では、粘度の高い硬化性樹脂組成物の使用は困難である。狭い基板間隙に粘度の高い硬化性樹脂組成物を注入できたとしても注入された硬化性樹脂組成物中や硬化性樹脂組成物と基板との間に生じた泡の除去はきわめて困難である。注入充填法を使用する場合、脱泡を容易に行うためには硬化性樹脂組成物のV25は0.15Pa・s未満が必要であり、特に0.10Pa・s以下が好ましい考えられる。したがって、本発明の硬化性樹脂組成物のうちV25が0.05Pa・s以上0.15Pa・s未満のものは注入充填法への適用に適しており、0.15Pa・s以上のものは真空積層法への適用に適している。
<積層体の製造方法>
図1〜図4は、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて透明積層体(以下、単に積層体とうこともある。)を製造するのに好適な真空積層法の一実施形態を説明するための図である。図1(B)は図1(A)のb−b線に沿う断面図であり、図2(B)は図2(A)のb−b線に沿う断面図である。これらの図に基づいて本実施形態の積層体の製造方法について説明する。
まず一対の矩形の透明基板10a、10bを用意する。図1に示すように、一方の透明基板10aの4辺縁部に沿って両面接着タイプのシール材12を固定する。本実施形態では、シール材12として両面テープ12を貼着する。シール材12は、硬化性樹脂組成物14の硬化物と同程度の透明性(光透過性)を有するものが好ましい。
次に、図2に示すように、透明基板10aのシール材12に囲まれた矩形状の領域13内に硬化性樹脂組成物14を供給する。硬化性樹脂組成物14の供給量は、後の工程で形成される、シール材12と一対の透明基板10a、10bとで囲まれた密閉空間が、硬化性樹脂組成物14の硬化物で満たされる量に設定する。この時、透明基板の自重によるたわみなどの変形は起こらない前提で密閉空間の体積を算出する。
硬化性樹脂組成物14を供給する方法は塗布でもよく、滴下でもよい。本実施形態では、透明基板10aを下定盤18上に平置きにし、水平方向に移動するディスペンサー20を用い、硬化性樹脂組成物14を線状、帯状又は点状に塗布する。このディスペンサー20は、一対の送りねじ22、22と、これらの送りねじ22、22に直交する送りねじ24とからなる周知の水平移動機構によって、領域13の全範囲上を水平移動可能となっている。なお、ディスペンサー20に代えてダイコート塗布手段を適用することもできる。
また必須ではないが、本実施形態ではシール材12の上面にシール用硬化性樹脂36を塗布する。シール用硬化性樹脂36は本発明の硬化性樹脂組成物14と同じものであってもよく、異なる硬化性樹脂を使用することもできる。硬化性樹脂としては紫外線硬化性の硬化性樹脂が好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物14が熱硬化性の硬化性樹脂組成物の場合、シール用硬化性樹脂もまた熱硬化性樹脂を使用できる。
こうして硬化性樹脂組成物14が塗布された一方の透明基板10aおよび他方の透明基板10bを、図3に示すように減圧チャンバー26内に収容する。減圧チャンバー26内において、一方の透明基板10aは、硬化性樹脂組成物14が塗布された面が上面となるように水平に保持される。他方の透明基板10bは、上定盤30の吸着パッド32、32…によって、一方の透明基板10aの上方に水平に吸着保持される。吸着パッドは粘着材を用いた粘着パッドでもよい。上定盤30はエアシリンダ34によって上下に駆動可能となっている。吸着パッド32の個数、及び上定盤30に対する取り付け位置は、透明基板16のサイズなどによって適宜変更できる。
そして、減圧チャンバー26内の空気を真空ポンプ28によって吸引して、減圧チャンバー26内を減圧雰囲気(第1の雰囲気)とする。該減圧雰囲気(第1の雰囲気)の圧力は1kPa以下が好ましく、10〜100Paがより好ましく、30〜50Paがさらに好ましい。該第1の雰囲気の圧力が1kPa以下であると、硬化性樹脂組成物14に気泡が残存するのを防止しやすい。10Pa未満であると、真空度が高いため、その真空環境を構築する際の時間的なロスが大きい。また、真空度が高過ぎると、硬化性樹脂組成物14に含まれる熱重合開始剤、又は光重合開始剤、重合禁止剤、光安定剤などの添加物が一部揮発するなど悪影響を与えるおそれがある。
この状態で、エアシリンダ34を動作させて他方の透明基板10bを下降させ、一方の透明基板10a上に重ね合わせる。すなわち一方の透明基板10aの上面に向かって他方の透明基板10bを押し当てて、透明基板10a上の硬化性樹脂組成物を押し広げながら、重ね合わせる。
さらに減圧雰囲気(第1の雰囲気)の圧力で所定時間保持することにより、2枚の透明基板10a、10bの間隙内に硬化性樹脂組成物14が挟持された密閉空間を形成する。すなわち、一対の透明基板10a、10bが、シール材12およびシール用硬化性樹脂36を介して積層された状態(未硬化の積層体)となり、シール材12と一対の透明基板10a、10bとで囲まれた密閉空間が形成される。この密閉空間内には硬化性樹脂組成物14が収容されており、密閉空間内の硬化性樹脂組成物14以外の部分は、第1の雰囲気と同じ減圧状態(真空状態)となっている。
次に、減圧チャンバー26内を、前記第1の雰囲気よりも圧力が高い第2の雰囲気にする。第2の雰囲気の圧力は10kPa以上が好ましく、第1の雰囲気の圧力と第2の雰囲気の圧力との差が100kPa以上であることが好ましい。例えば減圧チャンバー26内を大気開放する。第2の雰囲気の圧力が大気圧であると、特定の圧力に保持するための設備が不要なため簡便である。これによりシール材12と一対の透明基板10a、10bとで囲まれた密閉空間の外部が、第1の雰囲気よりも圧力が高い第2の雰囲気となるため、密閉空間の外部と内部の圧力差によって一対の透明基板10a、10bが互いに密着する方向に押圧される。これにともない、密閉空間内の硬化性樹脂組成物14以外の部分に硬化性樹脂組成物14が流動していき、密閉空間全体が硬化性樹脂組成物14によって均一に満たされる。
この後、シール用硬化性樹脂36および硬化性樹脂組成物14を硬化させることにより、一対の透明基板10a、10bが硬化性樹脂組成物14の硬化物からなる接着層を介して一体化された透明積層体が得られる。
例えば、シール用硬化性樹脂36及び密閉空間内の硬化性樹脂組成物14が、紫外線硬化性樹脂組成物の場合には、図4に示した紫外線照射装置40を使用してこれらを硬化させることができる。
紫外線照射装置40は、高圧水銀ランプやメタルハライドランプによる紫外線光源をミラーなどにより構成されている。複数連装させたケミカルランプやブラックライトなどを用いて使用することもできる。なお、硬化性樹脂組成物14が熱硬化性樹脂組成物の場合には、熱を加えて硬化させればよい。
上記実施形態において、シール用硬化性樹脂36は必須ではないが、両面テープ12上にシール用硬化性樹脂36を塗布しておくと、密着性が向上し、密閉空間の密閉度が向上するため、大気圧に開放した際に、密閉空間内の減圧度(真空度)を保持するうえで好ましい。更に、減圧下で一対の透明基板を対向接合させる際に、シール用硬化性樹脂36の塗布厚み分、透明基板間の距離を大きくとることができ、シール内に供給された硬化性樹脂組成物14が一対の透明基板の接合時に局所的にシールから漏れることを防止できる。大気解放した後は、シール用硬化性樹脂36は差圧によりシール上に広がり塗布厚みは充分小さくなるため、所定の密閉空間の体積変化はほとんど問題にならない。また両面テープの代わりに、硬化性樹脂組成物14とは別の高粘性のシール用硬化性樹脂に所定のシール厚みを維持できるようスペーサー粒子を混合したものを塗布してもよい。
<透明基板>
透明基板10a、10bは特に限定されず、ガラス等の無機透明基板であってもよく樹脂製の透明基板であってもよい。
透明基板は、ガラス又は樹脂よりなることが好ましい。ガラス板の場合には、合わせガラスが得られる。樹脂板としてポリカーボネイトを適用すれば、衝撃性が高く軽量な透明パネルを提供できる。また、ガラス板と樹脂板とを、硬化性樹脂組成物で接合してもよい。透明基板の大きさは特に限定されないが、300mm以上、より好ましくは600mm以上の辺を少なくとも一つ有する透明基板であると、建築用や車両用の開口部に設置する透明部材として広く利用することができる透明パネルを提供できる。透明基板の大きさに上限は特にないが、通常の用途においては4m以下の大きさが適当である。
一対の透明基板10a、10bの少なくとも一方の、硬化性樹脂組成物14と接する側の表面上に、硬化性樹脂組成物14の硬化時に硬化性樹脂組成物14と化学結合可能な官能基を有する表面処理剤からなる層が設けられていることが好ましい。これにより硬化性樹脂組成物14の硬化物からなる接着層と透明基板との接着性が向上し、積層体の機械的強度が向上する。したがって高い強度が要求される合わせガラスに好適である。表面処理剤としては公知のチタン化合物またはシラン化合物を使用できる。
シラン化合物としては、例えば3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。シラン系化合物を用いる場合、具体な使用方法の一例としては、まずシラン化合物:水:iPA(イソプロピルアルコール)=0.3:0.5:99.2 の溶液を室温で10時間攪拌し、シラン化合物を加水分解することで一部または全部ががシラノール化した溶液を得る。次いで、この溶液中に透明基板を1分間浸漬して引き上げた後、150℃のオーブンで30分熱処理してガラス表面と反応させる方法を用いることができる。
また、一対の透明基板10a、10bがほぼ同じ曲率を有する湾曲基板であってもよい。例えば、フィルム状に成形された中間層を介して一対の透明基板10a、10bを一体化する場合、透明基板が曲率の大きい湾曲基板であるとフィルムに皺が生じるため積層体の製造が困難である。これに対して、本発明の真空積層法では透明基板の形状に追従するように接着層が形成されるため、透明基板の形状は制限されず、三次元的に湾曲した曲率の比較的大きい透明基板であっても使用できる。
<透明積層体>
本発明によれば、一対の透明基板が、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる接着層を介して一体化された透明積層体が得られる。該接着層の厚さは0.2〜4.0mmが好ましい。該接着層の厚さが0.2mm以上であると、積層体の良好な機械的強度が得られやすい。また本発明によれば硬化反応の不均一を抑えることができるため、接着層の厚さが4.0mm程度に厚くても、硬化物の屈折率の不均一に起因した透過光のい歪みが抑制でき、透明基板との密着性が良好な積層体が得られる。
また、硬化性樹脂組成物の硬化物は透明性に優れており、ヘイズ値が6%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である、透明性に優れた透明積層体が得られる。
また接着層の厚さをTs、一対の透明基板10a、10bのいずれか薄い方の厚みをT1、厚い方の厚みをT2とする時、接着層の厚みTsが下記の式(1)を満足することが好ましい。なお、T1とT2は同じ厚みの場合がある。
T1×0.05≦Ts≦T2×1.5 …(1)
すなわち、接着層の厚みTsが一対の透明基板の薄い方の厚みに対して5%以上であると、積層体としての強度を確保しやすく、透明基板の厚い方の厚みに対して150%を超えると積層体の厚みが無用に厚くなる。
本発明の硬化性樹脂組成物を積層体の接着層に用いることにより、接着層が比較的厚い場合にも、ヘイズ値や光学歪が小さい良好な光学特性が得られる。これは、特定の高分子化合物((a)成分)と特定の低分子量の硬化性成分((b)成分)を組み合わせて用いることにより、より分子量の高い(a)成分の導入効果と、(b)成分の硬化物と(a)成分とにおける分子間の水素結合で硬化物内部の凝集力が高まることなどで、引裂き耐性が向上すると考えられる。また、特定分子構造の(b)成分を用いることで(a)成分を均一に溶解することができると同時に、透明基板との密着性も向上できる。
特に(b)成分の硬化性反応基がアクリロイルオキシ基であることにより、更に硬化性が高まると共に、硬化後に相分離を起こすのを抑制できるため透明度の高い合わせガラスが得られやすい。
したがって本発明の硬化性樹脂組成物を透明基材の接着層として用いることで、接着層が、高い機械的強度、および基材との良好な密着性を示すと共に、良好な透明性を示すことから、耐衝撃性が高く、光学品位が良好であり、安全性能に優れた透明積層体が得られる。
また本発明の硬化性樹脂組成物は、真空積層法に好適に用いて透明積層体を製造することができる。真空積層法にあっては、真空減圧下の雰囲気により一対の透明基板が密着されるため、接着層中に気泡が発生しにくい。したがって、かかる気泡を除去するために工程が不要となり、透明積層体を生産性良く製造できる。
また真空積層法では、硬化性樹脂組成物として比較的粘度の高い組成物、又は分子量の高い組成物を使用できるので、硬化した際に強度の高い硬化物となり、全体として機械的強度の高い透明積層体を得ることができる。したがって、接着層の厚みを薄くして透明積層体の機械的強度を充分に得ることが可能である。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[例1〜16]
表1に示す配合で、各成分を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。表1における配合量の単位は質量部である。
また得られた一部の硬化性樹脂組成物の25℃での粘度をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。表1の「未硬化物の粘度」の欄の「−」は粘度を測定していないことを示す。ただし、組成物の粘度は(a)成分の溶液粘度とその含有割合でほぼ決まるものであることより、例1〜3、5、8、9、12〜16における組成物の粘度は例4の組成物の粘度とほぼ同等、またはそれより大きい。このことは各例の積層体製造における硬化性樹脂組成物の取り扱いにおいて確認されている。
表1に記載した各成分は以下の通りである。
・ポリビニルブチラール樹脂1:製品名「デンカブチラール #3000−1」、電気化学工業社製。25℃における10質量%の樹脂溶液の粘度の測定値約0.05Pa・s。ビニルアセタール単位が80質量%、ビニルアルコール単位が19質量%、酢酸ビニル単位が1質量%の平均重合度数が約600の3元共重合体と認められる。
・ポリビニルブチラール樹脂2:製品名「デンカブチラール #5000−A」、電気化学工業社製。25℃における10質量%の樹脂溶液の粘度の測定値約1.7Pa・s。ビニルアセタール単位が83質量%、ビニルアルコール単位が16質量%、酢酸ビニル単位が1質量%の平均重合度数が約2000の3元共重合体と認められる。
・ポリビニルブチラール樹脂3:製品名「デンカブチラール #6000−C」、電気化学工業社製。25℃における10質量%の樹脂溶液の粘度の測定値約3.7Pa・s。ビニルアセタール単位が83質量%、ビニルアルコール単位が16質量%、酢酸ビニル単位が1質量%の平均重合度数が約2400の3元共重合体と認められる。
・ウレタンアクリレート:アクリロイル基を有するウレタン系オリゴマー(製品名「EB230」、ダイセル・サイテック社製)。官能基数2、25℃における粘度の測定値約56Pa・s。数平均分子量約3000のポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの反応生成物と認められる。
・CH=CHCO(OC−OH:n≒2(製品名「AE−90」、日本油脂社製)。
・CH=CHCO(OC−OH:n≒3(製品名「AP−150」、日本油脂社製)。
・CH=C(CH)CO(OC−OH:n≒2(製品名「PE−90」、日本油脂社製)。
・CH=CHCOOCHCH(OH)CHOC1531:(製品名「EBECRYL 112」、ダイセル・サイテック社製)。
・重合開始剤1:ベンゾインイソプロピエーテル。
・重合開始剤2:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(製品名「IRGACURE 819」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
[積層体の製造]
例1〜16で得られた各硬化性樹脂組成物を用いて合わせガラス(透明積層体)を製造した。各硬化性樹脂組成物は、容器に入れたまま開放状態で減圧チャンバー内に収容し、チャンバー内を約200Pa・sに減圧して10分保持することで脱泡処理を行ってから使用した。
まず、長さ610mm、幅610mm、厚み2mmのソーダライムガラスを2枚用意した。一方の透明基板10aの4辺の端部に沿って、厚み1mm、幅10mmの両面テープ(シール材12)を貼った後、該両面テープの上面の離型フィルムを除去した。
予め、ウレタンアクリレートオリゴマー(製品名「UF8001G」、共栄社化学社製)100質量部とベンゾインイソプロピルエーテル(重合開始剤)1質量部を均一に混合して調製したシール用紫外線硬化性樹脂36を、前記両面テープの上面に、塗布厚み約0.3mmでディスペンサーにて塗布した。
次に、硬化性樹脂組成物(例1〜6、8,9、12〜16)に関しては、透明基板10aの両面テープを貼った面上の、両面テープで囲まれた領域内に硬化性樹脂組成物14をディスペンサーを用いて総重量が380gとなるように複数個所に滴下した。次いで、この透明基板10aを、図3に示すように真空チャンバー内に水平に載置した。
次に、他方の透明基板10bを、真空チャンバー内の上定盤30に吸着パッド32、32・・・を用いて保持させるとともに、透明基板10aと平行に対向し、かつ透明基板10aとの距離が10mmとなるように保持させた。
次いで、真空チャンバーを密封状態としてチャンバー内が約30Paとなるまで排気した。この時、滴下した組成物は発泡が継続することはなかった。この後、昇降装置によって上下の定盤を接近させ、透明基板10aと透明基板10bとを2kPaの圧力で圧着し1分間保持した。この後、約30秒で真空チャンバー内を大気圧に戻し、透明基板10aと透明基板10bとが硬化性樹脂組成物14の未硬化層を介して密着している前駆体を得た。
次に、昇降装置によって上下の定盤を離間させ、上側の上定盤30の吸着パッド32、32・・・に貼着している、前駆体を、上側の上定盤30から剥離させた。次いで、前駆体の外周部の両面テープが存在する部分に対して、他方の透明基板10bを介して、高圧水銀ランプを光源とするファイバー光源から紫外線を照射し、シール用紫外線硬化性樹脂36を硬化させた。この後、前駆体を水平に保って約1時間静置した。
一方、25℃における未硬化物の粘度(V25)が0.15Pa・s未満の硬化性樹脂組成物では真空チャンバー内を大気圧に戻したときシール部から液漏れが生じるため、上記真空積層法の適用は困難であった(なお、V25が0.15Pa・s以上の硬化性樹脂組成物では注入した硬化性樹脂組成物からの脱泡ができず、下記注入充填法は使用できなかった)。そこで、V25が0.15Pa・sより小さい硬化性樹脂組成物(例7,10、11)に関しては、予め一対の透明基板を周辺に貼った両面テープのシールを介して張り合わせ、上辺のシールを一部剥がして開口部を設け、その隙間から注射筒を用いて所定量の硬化性樹脂組成物を透明基板間に注入した。次に、縦置きに長時間静置して混入した気泡をシール上辺に集めた後に、上部に集まった気泡を押し出すようにして再度注入口を両面テープのシールを介して密着させ封口した。この後、前駆体を水平に保って約24時間静置した。
次に、前駆体の両面方向から、均一にケミカルランプを連装した紫外線照射機により、それぞれ1mW/cmの強度の紫外線を10分間照射して、硬化性樹脂組成物14を硬化させることにより透明積層体(合わせガラス)を得た。
[評価]
(ヘイズ値)
得られた透明積層体の接着層が存在する部分について透明性の評価としてヘイズ値を測定した。その結果を表1に示す。ヘイズ値は、(株)東洋精機製作所製のヘイズガードIIを用い、ASTM D 1003に準じた測定により測定した。その結果を表1に示す。
(密着性)
透明積層体の一方の透明基板10aの一部のみを除去して接着層(硬化物)を露出させ、他方の透明基板10bから引き剥がす操作を行い、下記の基準で密着性を評価した。その結果を表1に示す。
○:接着層を引き剥がす際に接着層が大きく変形した。
△:接着層を引き剥がす際に接着層がやや変形した。
×:接着層を引き剥がす際に接着層はほとんど変形しなかった。
(引き裂き強度)
透明積層体の一方の透明基板10aの一部のみを除去して接着層(硬化物)を露出させ、他方の透明基板10bから接着層(硬化物)の一部(1cm×2cm程度の大きさ)を剥離して試験片とした。得られた試験片の長辺のほぼ中央に約1mmの切れ目を入れて引き裂き、下記の基準で引き裂き強度を評価した。その結果を表1に示す。
○:引裂かれる際に接着層が大きく変形して伸びた。
△:引裂かれる際に接着層が変形したが伸びは小さかった。
×:引裂かれる際に接着層はほとんど変形することなく容易裂断した。
(落球試験)
例4で得られた積層体について落球試験を行った。試験では、積層体をJIS R 3205 の試験枠上に設置して、重量4.11kgの鉄球を1.5mの高さから積層体の中央に落下させた。試験は、室温を23±2℃に管理した雰囲気内で行った。
試験の結果、鉄球は積層体を貫通しなかった。続けて、同じ高さより2回同じ試験体に鉄球を落下させたが貫通しなかった。
Figure 2009073970
表1の結果に示されるように、本発明にかかる例1〜9ではヘイズが低くて透明性に優れており、基板との密着性および耐引き裂き性も良好である。
(a)成分に代えて、比較的高分子量のウレタンアクリレートオリゴマーを用いた例10では、強い白濁が生じ、更に密着性および耐引き裂き性も劣っていた。また、(a)成分を含まず、(b)成分のみの例11では白濁はなく透明性は充分であったが、密着性および耐引き裂き性も劣っていた。
(b)成分に代えて、水酸基を有するエステル部の炭素数が4であるメタクリレートを用いた例12では白濁が生じ、更に密着性および耐引き裂き性も劣っていた。同様に(b)成分に代えて、水酸基を有すると共にポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートを用いた例13〜15では、いずれも密着性および耐引き裂き性が劣っていた。(b)成分に代えて、水酸基を有すると共にエステル部がエーテル結合を含み炭素数が18のアクリレートを用いた例16でも密着性および耐引き裂き性が劣っていた。
本発明の製造方法の一実施形態においてシール材を設ける工程の説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)中のb−b線に沿う断面図である。 本発明の製造方法の一実施形態において塗布工程の説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)中のb−b線に沿う断面図である。 本発明の製造方法の一実施形態において密閉空間を形成する工程の説明図である。 本発明の製造方法の一実施形態において光照射による硬化工程の説明図である。
符号の説明
10a…一方の透明基板、
10b…他方の透明基板、
12…シール材、
14…硬化性樹脂組成物、
26…減圧チャンバー、
28…真空ポンプ、
36…シール用硬化性樹脂、
40…紫外線照射装置、
42…高圧水銀ランプ。

Claims (13)

  1. 一対の透明基板間に挟持された硬化性樹脂組成物を硬化させて透明積層体を製造する方法に用いられる硬化性樹脂組成物であって、
    ポリビニルブチラール樹脂(a)と、水酸基の数が1または2個である炭素数2〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレート(b)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
  2. 前記ポリビニルブチラール樹脂(a)は、10質量%エチルアルコール溶液としたときの粘度が0.03Pa・s以上である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 前記ヒドロキシアルキルアクリレート(b)が、水酸基の数が1個である炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートである、請求項1または請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 硬化性樹脂組成物中における、前記ポリビニルブチラール樹脂(a)の含有量が3質量%以上、30質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 前記硬化性樹脂組成物が、光重合開始剤を含む、光硬化性の樹脂組成物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
  6. 第1の雰囲気中で、一対の透明基板間に、内部に請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を収容した密閉空間を形成する第1の工程と、
    前記密閉空間の外部を、前記第1の雰囲気よりも圧力が高い第2の雰囲気とした状態で、前記硬化性樹脂組成物を硬化させる第2の工程を有することを特徴とする透明積層体の製造方法。
  7. 前記第1の工程において、一方の透明基板の表面上に周縁に沿うシール部を設け、該シール部で囲まれた領域内に前記硬化性樹脂組成物を供給し、前記第1の雰囲気中で、前記一方の透明基板の表面に向かって他方の透明基板を押し当てて、前記硬化性樹脂組成物を押し広げるとともに2枚の透明基板の間隙内に該硬化性樹脂組成物が挟持された密閉空間を形成する、請求項6記載の透明積層体の製造方法。
  8. 前記第1の雰囲気の圧力が1kPa以下であり、前記第2の雰囲気の圧力が10kPa以上であり、両圧力の差が100kPa以上である、請求項6または7に記載の透明積層体の製造方法。
  9. 前記一対の透明基板の少なくとも一方がガラス板である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の透明積層体の製造方法。
  10. 前記一対の透明基板が、ほぼ同じ曲率を有する一対の湾曲基板である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の透明積層体の製造方法。
  11. 請求項6〜10のいずれか一項に記載の製造方法で製造された透明積層体。
  12. 一対の透明基板と該一対の透明基板間に挟持された硬化樹脂の層を有する透明積層体であって、前記硬化樹脂が請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物である、透明積層体。
  13. 透明積層体が、600mm以上の辺を少なくとも一つ有する大きさである、請求項12に記載の透明積層体。
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