JP5407809B2 - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、一対の基板と、該一対の基板間に存在する硬化性樹脂組成物の硬化物の層とを有する積層体の製造方法に関する。
本発明の方法で製造される積層体は、合わせガラス、画像表示装置の前面パネル板、より具体的には、液晶表示装置(LCD)、有機ELや無機ELといったEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、プラズマ表示装置、電子インク型画像表示装置といったフラットパネルディスプレイ(FPD)の前面パネル板、薄層太陽電池デバイス、タッチパネルの保護板等の用途に好適である。
一対のガラス基板を接着層を介して一体化した合わせガラスは、破損したガラス破片がフィルムに付着して飛散しないことから自動車の風防ガラスとして使用され、また、貫通し難く強度に優れることから建物の窓ガラス(安全ガラス、防犯ガラス)として使用されている(特許文献1,2参照)。
また、液晶パネルの破損防止および光反射の防止の観点から、透明な保護板と偏光板との間に透明な中間膜を封入した前面パネルを該液晶パネルの前面に設けた液晶表示装置が知られている(特許文献3参照)。
また、受光面となる透明な表面材と裏面材との間に樹脂等の封止材にて封止された太陽電池デバイスを有する太陽電池モジュールが知られている(特許文献4参照)。
このように、一対の基板と、該一対の基板間に存在する硬化性樹脂組成物の硬化物の層とを有する積層体には、様々な技術分野で需要が存在する。
このような積層体の製造方法は多数提案されているが、特許文献1,2に記載されている方法が、使用する基板の種類が限定されず、基板間に挟持されて、中間層をなす硬化性樹脂組成物の種類の自由度が大きく、中間層を形成するための資源を有効に利用でき、生産性に優れ、環境負荷が小さいという点から優れている。
この方法では、一方の基板上の周辺部に硬化性樹脂組成物を封じ込めるためのシール部を形成した後、基板上のシール部で囲まれた領域に硬化性樹脂組成物を供給する。次に、減圧雰囲気下にて一方の基板上に供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせることにより、一対の基板間に硬化性樹脂組成物を挟持して密封することによって積層前駆体を得る(以下、本明細書において、減圧雰囲気下にて一方の基板上に供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる手順のことを「減圧積層」と言う場合がある)。
次いで、得られた積層前駆体を前述した減圧雰囲気よりも高い圧力雰囲気下(例えば、大気圧下)に置く(以下、本明細書において、この手順のことを「減圧雰囲気の解除」と言う場合がある)。減圧雰囲気の解除による雰囲気圧力の上昇によって、一対の透明基板同士が密着する方向に押圧されると同時に、一対の基板とシール部とで密封された、積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留する空隙の体積がその雰囲気の差圧に応じて縮減することによって、該密封空間を硬化性樹脂組成物が流動していき、該密封空間全体が硬化性樹脂組成物によって均一に充填され、該密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が消滅することによって、該密封空間内に空隙のない硬化性樹脂組成物層が形成される。この後、硬化性樹脂組成物を硬化させることにより積層体を得る。
国際公開WO2008/081838号公報 国際公開WO2009/016943号公報 特開2009−205065号公報 特開平11−87743号公報
上述したように、特許文献1,2に記載の積層体の製造方法は、減圧積層によって積層前駆体を得た後、減圧雰囲気を解除することによって、一対の基板とシール部とで密封された、積層前駆体の密封空間内に空隙のない硬化性樹脂組成物層を形成するものであるが、減圧雰囲気を解除した後、密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が消滅するまでに要する時間は、該空隙の大きさによって異なり、硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が大きいほど、該空隙が消滅するまでに要する時間が長くなる。
ここで、使用する硬化性樹脂組成物の粘度が高い場合(例えば、硬化性樹脂組成物の粘度が0.2Pa・s以上の場合)や、密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが大きい場合(例えば、硬化性樹脂組成物層の厚さが30μm以上の場合)は、密封空間内の大きな空隙が残留しやすく、該空隙が消滅するまで長時間を要する傾向があるので、減圧雰囲気を解除した時点で密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙ができるだけ小さくなっていることが望ましい。
具体的には、使用する硬化性樹脂組成物の粘度が高い場合(例えば、硬化性樹脂組成物の粘度が0.2Pa・s以上の場合)や、密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが大きい場合(例えば、硬化性樹脂組成物層の厚さが30μm以上の場合)は、減圧雰囲気を解除した時点で密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の径が0.5mm未満であれば、該硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が消滅するまでに要する時間がほぼ10分以内となるので好ましい。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、減圧雰囲気を解除した時点で密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の径を小さくすることができ、それにより、該硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が消滅するまでに要する時間を短縮することができる新規の方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、2枚の基板を準備し、一方の基板上の周辺部に硬化性樹脂組成物を封じ込めるためのシール部を形成し、基板上の前記シール部で囲まれた領域に硬化性樹脂組成物を供給し、減圧雰囲気下にて前記供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせて一対の基板間に硬化性樹脂組成物を挟持して密封して積層前駆体を得た後、該積層前駆体を前記減圧雰囲気よりも雰囲気圧力が50kPa以上高い第2の圧力雰囲気下に置き、該第2の圧力雰囲気下にて硬化性樹脂組成物を硬化させる積層体の製造方法であって、
前記供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる手順を、雰囲気圧力Pが0.1〜1000Paであって、かつ、該雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT(Pa/sec))が、−1(Pa/sec)≦ΔP/ΔT≦0(Pa/sec)を満たす減圧雰囲気で実施すること、
前記供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる手順を実施してから前記積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に置く直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP(Pa))を、0(Pa)<ΔP≦2(Pa)に保持すること、および、
前記一対の基板間の距離を小さくなる方向に前記積層前駆体を加圧した状態で、前記該積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に置くことを特徴とする積層体の製造方法を提供する。
本発明の積層体の製造方法において、前記硬化性樹脂組成物の粘度が0.2〜50Pa・sであることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法において、前記一対の基板と前記シール部とで密封された、前記積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが30〜3000μmであることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法において、前記硬化性樹脂組成物の粘度が1〜14Pa・sであって、前記一対の基板と前記シール部とで密封された、前記積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが100〜2000μmである場合、前記積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に置く際、30〜37g/cm2の加圧力で前記積層前駆体を加圧することが好ましい。
本発明の積層体の製造方法において、前記供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる手順を実施してから前記積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に置くまでの時間T(sec)をT≦5secとすることが好ましい。
前記硬化性樹脂組成物が前記減圧雰囲気の雰囲気圧力よりも高い蒸気圧を有する成分を含有する場合に、本発明の積層体の製造方法を適用することが好ましい。
本発明の積層体の製造方法において、前記シール部が、粘度が200〜3000Pa・sの第2の硬化性樹脂組成物を用いて形成されることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法において、すくなくとも一つが透明基板であることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法では、減圧雰囲気を解除した時点で積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の径を小さくすることができ、それにより、該硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が消滅するまでに要する時間を短縮することができる。具体的には、使用する硬化性樹脂組成物の粘度が高い場合(例えば、硬化性樹脂組成物の粘度が0.2Pa・s以上の場合)や、密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが大きい場合(例えば、硬化性樹脂組成物層の厚さが30μm以上の場合)に、減圧雰囲気を解除した時点で密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の径を0.5mm未満とすることができ、それにより、該硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が消滅するまでに要する時間をほぼ10分以内とすることができる。
図1は、基板の平面図であり、基板上の周辺部にシール部が形成されている状態を示している。
以下、図面を参照して本発明の積層体の製造方法について説明する。
本発明の積層体の製造方法では、一対の基板のうち、一方の基板上の周辺部に硬化性樹脂組成物を封じ込めるためのシール部を形成する。図1は、基板の平面図であり、基板10上の周辺部にシール部20が形成されている状態を示している。
[基板]
本発明による積層体の製造方法では、後述するように、硬化性樹脂組成物として、光硬化性樹脂組成物を使用することが好ましいことから、一対の基板のうち、少なくとも1つが透明基板であることが好ましい。この場合、一対の基板のうち、一方のみが透明基板で他方が不透明な基板であってもよく、両方の基板が透明基板であってもよい。ここで、一方が透明基板で他方が不透明な基板とする場合、透明基板の周辺部にシール部を形成してもよく、不透明な基板の周辺部にシール部を形成してもよい。
なお、透明基板は、透明、すなわち、光透過性を有する基板である限り特に限定されない。透明基板の具体例としては、ガラス基板および透明樹脂基板が例示される。これらの中でも、ガラス基板が、透明性、耐光性、低複屈折性、高い平面精度、耐表面傷付性、高い機械的強度を有する点から好ましい。
ガラス基板の材料としては、ソーダライムガラスの他、より鉄分が低く青みの小さい高透過ガラス(白板)、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
透明樹脂基板の材料としては、透明性の高い樹脂材料(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等)が挙げられる。
また、透明基板は、少なくとも光透過性を有している限り、光を散乱させたり、屈折させたりする目的で基板表面に微細な凹凸加工が施されているものや、基板表面に遮光印刷が施されているものであってもよい。
また、透明基板が複数枚張り合わせてあるものや、光学フィルムなどが貼合されている透明基板を一体の透明基板として用いることもできる。
また、透明基板を構成要素の一部として含む構造体も透明基板として用いることができる。このような透明基板を構成要素の一部として含む構造体の具体例としては、液晶表示装置(LCD)、有機ELや無機ELといったEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、プラズマ表示装置、電子インク型画像表示装置といったフラットパネルディスプレイ(FPD)、薄層太陽電池デバイス、タッチパネル等が挙げられる。
一対の基板のうち、一方を不透明な基板とする場合、不透明な基板の具体例としては、ステンレス等の金属材料製の基板、セラミックス材料製の基板、可視光を吸収する充填剤を基板中に分散することによって遮光された樹脂基板等が例示される。
なお、一対の基板の両方を透明基板とする場合、一対の透明基板は、同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。すなわち、一対の透明基板の両方がガラス基板または透明樹脂基板であってもよく、一対の透明基板のうち、一方がガラス基板で他方が透明樹脂基板であってもよい。
基板の厚さは、特に限定されないが、透明基板の場合、機械的強度、透明性の点から、ガラス基板の場合は通常1〜6mmであり、透明樹脂基板の場合は通常0.1〜3mmである。
一方、不透明な基板の場合、機械的強度、薄型軽量化の点から通常0.8〜4mmである。
なお、一対の基板の厚さは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
基板の表面、より具体的には、周辺部にシール部を形成する側の表面は、該シール部との界面接着力を向上させるために表面処理が施されていてもよい。ここで、表面処理は基板の周縁部のみに施してもよく、基板の表面全体に施してもよい。
表面処理の方法としては、基板の表面をシランカップリング剤で処理する方法等が挙げられる。
[シール部]
シール部は、該シール部に囲まれた領域に供給され、その後、減圧雰囲気下にて一対の基板間に挟持され密封される硬化性樹脂組成物を封じ込める目的で設けられることから、本発明の積層体の製造過程において該シール部で囲まれた領域に供給された硬化性樹脂組成物が漏れ出さない程度以上の界面接着力を有し、かつ、本発明の積層体の製造過程において形状を維持できる程度の固さを有することが求められる。
このような要求を満足するシール部は、表面に接着剤または粘着剤を有するシール部材を一方の基板の周辺部に設けることで形成することができる。
このようなシール部材の具体例としては、下記のものが挙げられる。
・あらかじめ表面に粘着剤層または接着剤層が設けられたテープ状または棒状の長尺体(両面接着テープ等)。
・一方の基板の表面の周縁部に接着剤層または粘着剤層を形成し、これに長尺体を貼着したもの。
・硬化性樹脂組成物を用いて一方の基板の表面の周縁部にダム状のシール前駆体を印刷やディスペンス等で形成し、硬化性樹脂組成物を硬化させた後、該表面に接着剤層または粘着剤層を形成したもの。
また、上記の要求を満足するシール部は、第2の硬化性樹脂組成物として、高粘度の硬化性樹脂組成物を一方の基板の周辺部に所定の厚さになるように、ディスペンサやダイコータを用いて塗布することによっても形成することができる。
ここで、第2の硬化性樹脂組成物は、後述する手順において、一対の基板間に挟持され、密封された硬化性樹脂組成物を硬化させる際に同時に硬化させてもよく、密封された硬化性樹脂組成物を硬化させる前に硬化させてもよい。
第2の硬化性樹脂組成物は、粘度が200〜3000Pa・sであることが、シール部に囲まれた領域に硬化性樹脂組成物を供給した際に該硬化性樹脂組成物を封じ込める強度を持つこと、減圧積層および減圧雰囲気の解除を実施した際に、一対の基板とシール部とで密封された、積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さにあわせて該シール部が変形することができること、および、減圧積層および減圧雰囲気の解除を実施した際にシール部が大気圧に耐える強度を持つことから好ましく、500〜2000Pa・sであることがより好ましい。
ここで、一対の基板同士の間隔を保持するために、所定の粒子径のスペーサ粒子を第2の硬化性樹脂組成物に配合してもよい。
なお、第2の硬化性樹脂組成物としては、後述する光硬化性樹脂組成物であって、上記の粘度を満たすものを用いることが好ましい。
シール部は、該シール部で囲まれた領域に供給された硬化性樹脂組成物が漏れ出さないようにするため、該シール部で囲まれた領域に供給された硬化性樹脂組成物がなす層(以下、本明細書において、単に「硬化性樹脂組成物層」と言う場合もある。)の所定厚さよりも若干厚く形成することが好ましい。例えば、硬化性樹脂組成物層の所定厚さの1.1倍以上2倍以下であることが好ましい。
また、シール部の幅は、硬化性樹脂組成物層の厚さによっても異なるが、0.5〜5mmが好ましい。
次に、基板上のシール部で囲まれた領域に硬化性樹脂組成物を供給する。
硬化性樹脂組成物の供給量は、後述する手順で一対の基板間に硬化性樹脂組成物を挟持し密封した際に、一対の基板とシール部とで密封された、積層前駆体の密封空間が硬化性樹脂組成物によって充填されるだけの量にあらかじめ設定する。この際、硬化性樹脂組成物の硬化収縮による体積減少をあらかじめ考慮して、硬化性樹脂組成物の供給量を定めることができる。
本発明の積層体の製造方法では、減圧積層後の積層前駆体において、一対の基板とシール部とで密封された、積層前駆体の密封空間内に存在する硬化性樹脂組成物層の厚さが30〜3000μmであることが好ましい。その理由は、硬化性樹脂組成物層は、一対の基板間の接着剤としての機能だけでなく、該層に機械的強度を持たせる機能を付与するために厚みが必要である一方、一般的には開口部材や表示部材に代表されるように薄型軽量化が要求されることから無用に厚くすることは好ましくないからである。
後述する手順で一対の基板間に硬化性樹脂組成物を挟持し密封した際に、一対の基板とシール部とで密封された、積層前駆体の密封空間内に存在する硬化性樹脂組成物層の厚さは、100〜2000μmであることがより好ましく、100〜1600μmであることがさらに好ましく、100〜800μmであることがさらに好ましい。
硬化性樹脂組成物の供給方法としては、上記の手順でシール部が形成された基板を平置きにし、ディスペンサ等の供給手段によって、点状に分散滴下する方法や、線状に塗布する方法が挙げられる。
本発明の製造方法においては、予め形成した積層体の間隙に硬化性樹脂を注入する従来の方法(例えば、特開昭57−165411号公報、特開2001−339088号公報に記載の方法)に比べ、比較的高粘度の硬化性樹脂組成物を用いることができる。これにより、硬化性樹脂組成物を硬化させる際の硬化収縮の低減および硬化後の樹脂層の機械的強度の向上を図ることができる。
使用する硬化性樹脂組成物の粘度が0.2〜50Pa・sであることが、工業的に大量の硬化性樹脂組成物を製造、移送、塗布する工程で扱いやすいことから好ましい。
なお、ここで言う硬化性樹脂組成物の粘度とは、本発明の積層体の製造方法の実施時の温度領域における粘度であり、特に、シール部で囲まれた領域に硬化性樹脂組成物を供給した後、後述する手順にしたがって減圧積層を実施するまでの温度領域における粘度である。たとえば、これらの手順を常温で実施する場合、常温における硬化性樹脂組成物の粘度である。したがって、これらの手順を実施する際の温度によって異なるが、いずれの場合であっても、5〜80℃の温度範囲内である。この点については、上述したシール部の形成に用いる第2の硬化性樹脂組成物の粘度も同様である。
使用する硬化性樹脂組成物の粘度は、1〜20Pa・sであることがより好ましく、1〜14Pa・sであることがさらに好ましい。
上記の粘度を満たす硬化性樹脂組成物としては、以下に述べるような高分子量の硬化性化合物(オリゴマー等)を含む硬化性樹脂組成物を用いることができる。
高分子量の硬化性化合物は、硬化性樹脂組成物中の化学結合の数を少なくできることから、硬化性樹脂組成物を硬化させる際の硬化収縮が小さくなり、また、硬化後の樹脂層の機械的強度が向上する。一方で、高分子量の硬化性化合物の多くは、粘性が高い。そのため、硬化後の樹脂層の機械的強度を確保しつつ空隙の残存を抑制する点からは、高分子量の硬化性化合物に、より分子量の小さい硬化性モノマーを溶解させて粘度を調整することが好ましい。ただし、分子量の小さい硬化性モノマーを用いることによって、硬化性樹脂組成物の粘度は下がるが、硬化性樹脂組成物を硬化させる際の硬化収縮が大きく、また、機械的強度が低下しやすい。
使用する硬化性樹脂組成物は光硬化性樹脂組成物が好ましい。光硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物に比べ、少ない熱エネルギーにより短時間で硬化する。よって、本発明において光硬化性樹脂組成物を用いることによって、積層体を製造する際の環境負荷が小さくなる。また、光硬化性樹脂組成物を数分ないし数10分程度で実質的に硬化できることから積層体の生産効率が高い。
光硬化性樹脂組成物とは、光の作用により硬化して樹脂層を形成する材料である。光硬化性樹脂組成物としては、たとえば、下記のものが挙げられ、硬化後の樹脂層の硬度が高くなり過ぎない範囲で用いることができる。
・付加重合性の不飽和基を有する化合物と光重合開始剤とを含む組成物。
・1〜6個の不飽和基を有するポリエン化合物(トリアリルイソシアヌレート等)と、1〜6個のチオール基を有するポリチオール化合物(トリエチレングリコールジメルカプタン)とを、不飽和基とチオール基のモル数がおおむね等しくなる割合で含み、かつ光重合開始剤を含む組成物。
・エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と光カチオン発生剤とを含む組成物。
光硬化性樹脂組成物としては、硬化速度が速く、硬化後の樹脂層の透明性が高い点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選ばれる基(以下、(メタ)アクリロイルオキシ基と記す。)を有する化合物の少なくとも1種と、光重合開始剤とを含むものがより好ましい。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、(メタ)アクリレート系化合物とも記す。)としては、1分子あたり(メタ)アクリロイルオキシ基を1〜6個有する化合物が好ましく、硬化後の樹脂層が硬くなり過ぎない点から、1分子あたり(メタ)アクリロイルオキシ基を1〜3個有する化合物が特に好ましい。
(メタ)アクリレート系化合物としては、硬化後の樹脂層の耐光性の点からは、芳香環をできるだけ含まない脂肪族または脂環式の化合物が好ましい。
また、(メタ)アクリレート系化合物としては、基板との界面接着力の向上の点からは、水酸基を有する化合物がより好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、全(メタ)アクリレート系化合物のうち、25質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。一方、水酸基を有する化合物は、硬化後の樹脂層の弾性率が高くなりやすく、特に水酸基を有する(メタ)アクリレートを用いる場合には、積層体の用途によっては、硬化後の樹脂層が硬くなり過ぎるおそれがある。例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)の前面パネル板に使用する場合は、硬化後の樹脂層が低弾性率であることが好ましいため、水酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量は40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
また、ガラス基板とポリカーボネートなどの樹脂基板との積層のように異種材料製の基板同士の積層においては、異なる表面エネルギーの基板表面において、樹脂層がいずれの基板に対しても好適に密着力を発現できるように低弾性率の粘着様態を示す樹脂層を用いることができる。
一方、薄いガラス基板と厚いガラス基板を積層する場合に、高弾性率で、かつ0.1mm以下の薄い樹脂層を設けることで積層体の機械的強度を高めることもでき、その場合には、水酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量を60質量%以上とすることもできる。
(メタ)アクリレート系化合物は、比較的低分子の化合物(以下、アクリレート系モノマーと記す。)であってもよく、繰り返し単位を有する比較的高分子量の化合物(以下、(メタ)アクリレート系オリゴマーと記す)であってもよい。
(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート系モノマーの1種以上からなるもの、(メタ)アクリレート系オリゴマーの1種以上からなるもの、(メタ)アクリレート系モノマーの1種以上と(メタ)アクリレート系オリゴマーの1種以上とからなるものが挙げられ、アクリレート系オリゴマーの1種以上からなるもの、またはアクリレート系オリゴマーの1種以上と(メタ)アクリレート系モノマーの1種以上とからなるものが好ましい。基板との密着性を高める目的では、アクリロイルオキシ基とメタクロイルオキシ基の一方または両方からなる硬化性官能基を1分子あたり平均1.8〜4個有するウレタン系オリゴマーと、水酸基の数が1個または2個である炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルメタクリレートを含有する硬化性樹脂組成物が特に好ましい。
また、積層体の用途が、フラットパネルディスプレイ(FPD)の前面パネル板の場合、硬化過程の樹脂の収縮などがフラットパネルディスプレイ(FPD)の表示性能に悪影響を及ぼさないように、硬化後の樹脂層がより低弾性率であることが好ましい。このため、(メタ)アクリロイルオキシ基からなる硬化性官能基を1分子あたり平均1.8〜4個有するオリゴマーと、水酸基の数が1個または2個である炭素数3〜8のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルメタクリレートと、水酸基を有さない(メタ)アクリレート系モノマーの1種以上を含有する硬化性樹脂組成物が好ましい。更には、水酸基を有さない(メタ)アクリレート系モノマーの総含有量が上記水酸基を有する(メタ)アクリレート系モノマーの含有量より質量比で大きいことがより好ましい。また、水酸基を有さない(メタ)アクリレート系モノマーの代わりに水酸基が1個である炭素数12〜22のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート水酸基を用いることもできる。
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、光硬化性樹脂組成物が減圧装置内での減圧雰囲気下に置かれることを考慮すると、減圧雰囲気下での揮発を充分抑制できる程度に低い蒸気圧を有する化合物、具体的には、後述する手順にしたがって減圧積層を実施する際の減圧雰囲気の雰囲気圧力よりも低い蒸気圧を有する化合物が好ましい。硬化性樹脂組成物が、水酸基を有さない(メタ)アクリレート系モノマーを含有する場合、炭素数が8〜22のアルキル(メタ)アクリレート、比較的低分子量のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリエーテルジオールのモノ(メタ)アクリレートやジ(メタ)アクリレートなどを用いることができ、炭素数が8〜22のアルキルメタクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、繰り返し単位を2個以上有する鎖(ポリウレタン鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリカーボネート鎖等)と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する分子構造の(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましい。
該(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、たとえば、ウレタンアクリレートオリゴマーと呼ばれる、ウレタン結合(通常さらにポリエステル鎖やポリエーテル鎖を含む。)と2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられる。ウレタンアクリレートは、ウレタン鎖の分子設計により硬化後の樹脂層の機械的性能や基板との密着性などを幅広く調整できるためより好ましい。
(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量は、1000〜100000が好ましく、10000〜70000がより好ましい。数平均分子量が1000より小さいと硬化後の樹脂層の架橋密度が高くなり樹脂層の柔軟性が損なわれるおそれがある。また数平均分子量が100000より大きいと未硬化の硬化性樹脂組成物の粘度が大きくなりすぎるおそれがある。(メタ)アクリレート系オリゴマーの粘度が高すぎる場合、(メタ)アクリレート系モノマーと併用して、硬化性樹脂組成物全体としての粘度を低下させることが好ましい。
一方、シール部の形成に使用する第2の硬化性樹脂組成物として使用する場合、粘度を上述した200〜3000Pa・sの範囲に調整しやすいことから、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が30000〜100000である硬化性オリゴマーの1種以上と、硬化性基を有し、かつ(メタ)アクリレート系モノマーの1種以上とを含み、モノマーの割合が、オリゴマーとモノマーとの合計(100質量%)のうち、15〜50質量%であるものが好ましい。
(メタ)アクリレート系オリゴマーは、硬化において反応性を高めることができるアクリレート系オリゴマーがより好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤が挙げられ、アセトフェノン系またはフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤が好ましい。短波長の可視光による硬化を行う場合は、光重合開始剤の吸収波長域からフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤がより好ましい。吸収波長域の異なる2種以上の光重合開始剤を併用することでより硬化時間を速めたり、シール部の形成に使用する第2の硬化性樹脂組成物においては表面硬化性を高めることができより好ましい。
光カチオン発生剤としては、オニウム塩系の化合物等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合禁止剤、光硬化促進剤、連鎖移動剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕獲剤等)、酸化防止剤、難燃化剤、接着性向上剤(シランカップリング剤等)、顔料、染料等の各種添加剤を含んでいてもよく、重合禁止剤、光安定剤を含むことが好ましい。特に、重合禁止剤を重合開始剤より少ない量含むことによって、硬化性樹脂組成物の安定性を改善でき、硬化後の樹脂層の分子量を調整することもできる。
ただし、積層体の用途によっては、硬化後の樹脂層における光線の透過を妨げるおそれのある添加剤を含むことが好ましくない。一例を挙げると、積層体の用途が、フラットパネルディスプレイ(FPD)の前面パネル板や、薄層太陽電池デバイスの場合、前者については表示画像を形成するフラットパネルディスプレイ(FPD)からの出射光や反射光、後者については太陽光が硬化後の樹脂層を透過するため、それらの光線の透過を妨げるおそれのある添加剤を含むことが好ましくない。たとえば、紫外線吸収剤は、樹脂層を透過する太陽光の紫外線成分を吸収して薄層太陽電池デバイスに入射する光の量を低下させたり、フラットパネルディスプレイ(FPD)の表示画像の色調に悪影響を与えるおそれがある。しかし一方で、太陽光が透過する樹脂層には、耐光性、特に紫外線等の短波長の光に対する耐久性が要求される。よって、紫外線吸収剤等を含ませる場合は、その吸収特性、配合量等を適宜調整することが好ましい。
また、基板との密着性を高めたり、硬化後の樹脂層の弾性率を調整するためには、連鎖移動剤を含むことが好ましく、分子内にチオール基を有する連鎖移動剤が特に好ましい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン系(2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等)、カテコール系(p−t−ブチルカテコール等)、アンスラキノン系、フェノチアジン系、ヒドロキシトルエン系等の重合禁止剤が挙げられる。
光安定剤としては、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチレート系等)、ラジカル捕獲剤(ヒンダードアミン系)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、リン系、イオウ系の化合物が挙げられる。
光重合開始剤および各種添加剤としては、硬化性樹脂組成物が減圧雰囲気下に置かれることから、減圧雰囲気下での揮発を充分抑制できる程度に低い蒸気圧を有する、比較的分子量が大きい化合物や(メタ)アクリル酸のような水酸基などの極性部位を有するC4以上の化合物など、具体的には、後述する手順にしたがって減圧積層を実施する際の減圧雰囲気の雰囲気圧力よりも充分に低い蒸気圧を有する、比較的分子量が大きい化合物や(メタ)アクリル酸のような水酸基などの極性部位を有するC4以上の化合物などが好ましい。
上述したように、硬化性樹脂組成物に含有される成分としては、減圧雰囲気下での揮発を抑制するために、減圧積層を実施する際の減圧雰囲気の雰囲気圧力よりも低い蒸気圧を有する材料が選択される。しかしながら、製造される硬化性樹脂組成物には、減圧雰囲気下で揮発するおそれのある成分、具体的には、減圧積層を実施する際の減圧雰囲気の雰囲気圧力よりも高い蒸気圧を有する成分(以下、本明細書において、「揮発成分」という。)が不可避不純物として含まれることがある。このような不可避不純物として含まれる揮発成分は、使用する硬化性樹脂組成物に含まれる成分の種類、特に、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性化合物の種類によっても異なるが、硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレート系化合物を含有する場合、その原料化合物である(メタ)アクリル酸や、ジアクリル酸無水物、エチレングリコールやブタンジオールなどの比較的分子量の小さい水酸基含有化合物などが例示される。また、硬化性樹脂組成物がウレタンアクリレートオリゴマーを含有する場合、その原料化合物の一例である2−ヒドロキシエチルアクリレートなどが例示される。更に、上記原料化合物に含まれることがある重合禁止剤や酸化防止剤などの各種添加物もその分子量が小さい場合に揮発成分となるおそれがある。
また、減圧積層を実施するまでの手順において、大気中の水分が硬化性樹脂組成物に含まれることがある。このような大気中の水分が硬化性樹脂組成物に含まれたものも不可避不純物として含まれる揮発成分の一例である。
不可避不純物として含まれる揮発成分の含有量は、0.01〜1wt%と微量であるが、減圧雰囲気下での揮発成分の揮発が、減圧雰囲気を解除した時点で積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の径に影響を及ぼすことを本願発明者らは見出している。
次に、減圧積層を実施する。すなわち、減圧雰囲気下において、上記の手順でシール部で囲まれた領域に供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる。これを達成するためには、一方の基板の表面のうち、上記の手順で硬化性樹脂組成物が供給された側の表面が他方の基板の側に向いた状態で、一対の基板と他方の基板とを重ね合わせればよい。重ね合わせにより、一対の基板間に硬化性樹脂組成物が挟持されて密封された、より具体的には、一方の基板の表面、他方の基板の下面、およびシール部で囲まれた空間内に硬化性樹脂組成物が密封された積層体前駆体が得られる。
重ね合わせの際、他方の基板の自重、移動支持機構からの押圧等によって、硬化性樹脂組成物が押し広げられ、上述した空間内に硬化性樹脂組成物が充満する。
本発明の積層体の製造方法では、減圧積層を実施する際の減圧雰囲気の雰囲気圧力(P)を0.1〜1000Paとする。雰囲気圧力が1000Paよりも高いと、減圧雰囲気の解除によって雰囲気圧力が上昇した際に、積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の縮減率が低下し、空隙消滅までに要する時間が長時間化するという問題がある。一方、雰囲気圧力(P)が0.1Paよりも低いと、硬化性樹脂組成物に含まれる各成分(硬化性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤、光安定剤等)に悪影響を与えるおそれがある。たとえば、上述した各成分が気化するおそれがあり、また、減圧雰囲気を提供するために時間がかかることがある。なお、雰囲気圧力(P)を1000Pa以下とする必要があることから、減圧積層を実施する減圧雰囲気において、硬化性樹脂組成物中に不可避不純物として含まれる減圧雰囲気下での揮発成分が揮発することを防ぐことはできない。
減圧雰囲気の雰囲気圧力(P)は、1〜100Paがより好ましい。3〜30Paがさらに好ましい。
さらに、減圧積層を実施する際、減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT(Pa/sec))が、下記式を満たす必要がある。
−1(Pa/sec)≦ΔP/ΔT≦0(Pa/sec)
ここで言う圧力勾配(ΔP/ΔT)とは、減圧積層を実施する時点(すなわち、重ね合わせを実施する時点)の雰囲気圧力と、その直前の雰囲気圧力と、の間の圧力勾配を指す。例えば、減圧積層を実施する時点で減圧雰囲気の雰囲気圧力が平衡に達している場合、圧力勾配(ΔP/ΔT)=0(Pa/sec)である。減圧積層を実施する時点の雰囲気圧力がその直前の雰囲気圧力よりも低くなっている場合、圧力勾配(ΔP/ΔT)<0(Pa/sec)であり、減圧積層を実施する時点の雰囲気圧力がその直前の雰囲気圧力よりも高くなっている場合、圧力勾配(ΔP/ΔT)>0(Pa/sec)である。
圧力勾配(ΔP/ΔT)が上記式を満たす条件で減圧積層を実施した場合、減圧雰囲気下で硬化性樹脂組成物から揮発した揮発成分は雰囲気中に拡散されて除去されることとなり、減圧積層により積層前駆体を形成した際に、形成された積層前駆体の密封空間内に取り込まれる揮発成分が減少する。この結果、該揮発成分が密封空間内に取り込まれることによって、該密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に大きな空隙が形成されることが防止される。
圧力勾配(ΔP/ΔT)>0(Pa/sec)の場合、すなわち、減圧積層を実施する時点の雰囲気圧力がその直前の雰囲気圧力よりも高くなっている場合、硬化性樹脂組成物から揮発した揮発成分が、減圧雰囲気中に拡散されて除去されることなく硬化性樹脂組成物の付近に存在し、減圧積層により積層前駆体を形成した際に、形成された積層前駆体の密封空間内に該揮発成分が取り込まれる。この結果、該密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に大きな空隙が形成される。
圧力勾配(ΔP/ΔT)<−1(Pa/sec)の場合、硬化性樹脂組成物からの揮発成分の揮発が活発になるので、減圧積層により積層前駆体を形成した際に、形成された積層前駆体の密封空間内に取り込まれる揮発成分は、圧力勾配のマイナス方向の絶対値の大きさに応じて増大することとなり、より多くの揮発成分が該密封空間内に取り込まれる。この結果、該密封空間内の硬化性樹脂組成物中に大きな空隙が形成される。
減圧積層を実施する際、減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)が、下記式を満たすことが好ましい。
−0.5(Pa/sec)≦ΔP/ΔT≦0(Pa/sec)
本発明の積層体の製造方法において、減圧積層は以下の手順で実施することができる。以下、本明細書において、一対の基板のうち、表面上にシール部および硬化性樹脂組成物の層を形成した側の基板を一方の基板と言い、表面上にこれらを形成しなかった側の基板を他方の基板と言う。
一方の基板を減圧装置に入れ、減圧装置内の固定支持盤の上に硬化性樹脂組成物の面が上になるように、該基板を平置きする。
減圧装置内の上部には、上下方向に移動可能な移動支持機構が設けられ、移動支持機構に他方の基板が取り付けられる。ここで、他方の基板の表面に薄膜系太陽電池デバイスが形成されている場合、薄膜系太陽電池デバイスが形成された側の表面を下に向ける。また、積層体の用途がフラットパネルディスプレイ(FPD)の場合、画像を表示する側の表面を下に向ける。また、他方の基板の表面に反射防止層が設けられている場合、反射防止層が形成されていない側の表面を下に向ける。
他方の基板は、一方の基板の上方かつ硬化性樹脂組成物と接しない位置に置く。すなわち、一方の基板の上の硬化性樹脂組成物と他方の基板とを接触させることなく対向させる。
なお、上下方向に移動可能な移動支持機構を減圧装置内の下部に設け、移動支持機構の上に一方の基板を置いてもよい。この場合、他方の基板は、減圧装置内の上部に設けられた固定支持盤に取り付けて、一方の基板と他方の基板とを対向させる。
また、一方の基板および他方の基板の両方を、減圧装置内の上下に設けた移動支持機構で支持してもよい。
一方の基板および他方の基板を所定の位置に配置した後、減圧装置の内部を減圧して、上記した所定の減圧雰囲気とする。可能であれば、減圧操作中または所定の減圧雰囲気とした後に、減圧装置内で一方の基板および他方の基板を所定の位置に位置させてもよい。
その後、減圧装置の内部を上記した所定の減圧雰囲気に保持した状態で移動支持機構で支持された他方の基板を下方に移動し、一方の基板の上の硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる。
次いで、減圧雰囲気の解除を実施する。すなわち、減圧積層によって得られた積層体前駆体を、減圧積層を実施した減圧雰囲気よりも雰囲気圧力が高い第2の圧力雰囲気下(例えば、大気圧下)に置く。
減圧雰囲気の解除による雰囲気圧力の上昇によって、一対の基板同士が密着する方向に押圧されると同時に、一対の基板とシール部で密封された、積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の体積がその雰囲気の差圧に応じて縮減することによって、該密封空間全体が硬化性樹脂組成物によって均一に充填されることとなる。
ここで、上記の効果を発揮するためには、第2の圧力雰囲気は、減圧積層実施時の減圧雰囲気よりも雰囲気圧力が50kPa以上高いことが求められ、通常は、減圧雰囲気よりも雰囲気圧力が80k〜120kPa高い。第2の圧力雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、それよりも雰囲気圧力が高くてもよい。硬化性樹脂組成物の硬化等の操作を、特別な設備を要することなく行うことができる点から、大気圧雰囲気が最も好ましい。
本発明の積層体の製造方法では、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP(Pa))を、−1(Pa)≦ΔP≦2(Pa)に保持する。ここで、ΔP<0(Pa)の場合、減圧積層を実施してから減圧雰囲気の解除を実施する直前までの間に雰囲気圧力が低下する。一方、ΔP>0(Pa)の場合、減圧積層を実施してから減圧雰囲気の解除を実施する直前までの間に雰囲気圧力が上昇する。
雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)が上記の範囲を満たしていれば、積層前駆体の密封空間内に存在する硬化性樹脂組成物からの揮発成分の揮発が抑制される。これにより、該密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に大きな空隙が形成されることが防止される。
圧力変化量(ΔP)が−1Paよりも小さい場合、積層前駆体の密封空間内に存在する硬化性樹脂組成物からの揮発成分の揮発が活発になるので、これにより、該密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に大きな空隙が形成される。
圧力変化量(ΔP)が2Paよりも大きい場合、減圧雰囲気の解除を実施する前の積層前駆体において、密封空間内の硬化性樹脂組成物層に存在する空隙中に揮発成分がより多く含まれることとなる。これにより、減圧雰囲気の解除を実施してから、空隙消滅までに要する時間が長時間化するという問題がある。
また、本発明の積層体の製造方法では、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施するまでの時間T(sec)をT≦5secとすることが好ましい。すなわち、減圧積層を実施してから5秒以内に減圧雰囲気の解除を実施することが好ましい。
減圧積層を実施してから減圧雰囲気の解除を実施するまでの時間Tが5秒よりも長い場合、積層前駆体の密封空間内に存在する硬化性樹脂組成物からの揮発成分の揮発により、該密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に大きな空隙が形成されるおそれがある。
これに対し、減圧積層を実施してから5秒以内に減圧雰囲気の解除を実施した場合、積層前駆体の密封空間内に存在する硬化性樹脂組成物からの揮発成分の揮発が少ないため、該密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に大きな空隙が形成されるおそれが低くなる。
本発明の積層体の製造方法では、減圧積層により得られた積層前駆体を加圧した状態、より具体的には、積層前駆体を構成する一対の基板間の距離を小さくなる方向に該積層前駆体を加圧した状態で減圧雰囲気の解除を実施する。
積層前駆体の加圧によって、該積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層が加圧されるため、該硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙に硬化性樹脂組成物からの揮発成分が入りこむことが抑制される。この結果、減圧雰囲気の解除を実施した時点で硬化性樹脂組成物層中に残留する空隙がより小さくなる。
なお、上記の効果を発揮するためには、減圧積層の実施後、減圧雰囲気の解除を実施するまでの間、積層前駆体を加圧し続けることが好ましい。
積層前駆体を加圧する手段は特に限定されないが、例えば、上述した移動支持機構からの押圧によって、積層前駆体を加圧することができる。
上述した効果を得るために必要となる加圧力は、使用する硬化性樹脂組成物の粘度や積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さによっても異なるが、使用する硬化性樹脂組成物の粘度が1〜14Pa・sであって、密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが100〜2000μmである場合、積層前駆体を30〜37g/cm2の加圧力で加圧することが好ましい。
加圧力が30g/cm2よりも小さいと、シール部が基板表面と十分に密着せず、減圧雰囲気の解除を実施した際にシール部から密封空間内に外気が入りこむことによって、該密封空間内の硬化性樹脂組成物層に大きな空隙が形成される場合がある。
また、密着できたとしても密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙に、硬化性樹脂組成物からの揮発成分が入りこむことを抑制する効果が低く、減圧雰囲気の解除を実施した時点で硬化性樹脂組成物層中に残留する空隙が十分小さくならないおそれがある。
一方、加圧力が37g/cm2よりも大きいと、硬化性樹脂組成物への加圧が過剰となり、硬化性樹脂組成物がシール部よりも外側にはみ出すおそれがある。硬化性樹脂組成物がシール部よりも外側にはみ出した場合、密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に大きな空隙が生じるおそれがある。また、硬化性樹脂組成物がシール部よりも外側にはみ出すことによって、製造される積層体の意匠性が損なわれるおそれがある。
減圧雰囲気を解除した後の積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に保持する時間は特に限定されない。積層前駆体を減圧装置から取り出して硬化装置に移動し、硬化を開始するまでのプロセスを大気圧雰囲気下で行う場合には、そのプロセスに要する時間が第2の圧力雰囲気下に保持する時間となる。よって、大気圧雰囲気下に置いた時点ですでに密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に空隙が存在しない場合、またはそのプロセスの間に硬化性樹脂組成物層中の空隙が消失した場合は、直ちに硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。空隙が消失するまでに時間を要する場合は、空隙が消失するまで積層前駆体を第2の圧力雰囲気下で保持する。
本発明の積層体の製造方法によれば、減圧雰囲気を解除した時点で密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の径を小さくすることができ、それにより、該硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が消滅するまでに要する時間を短縮することができる。具体的には、使用する硬化性樹脂組成物の粘度が高い場合(例えば、硬化性樹脂組成物の粘度が0.2Pa・s以上の場合)や、密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが大きい場合(例えば、硬化性樹脂組成物層の厚さが30μm以上の場合)に、減圧雰囲気を解除した時点で密封空間内の硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙の径を0.5mm未満とすることができ、それにより、該硬化性樹脂組成物層中に残留している空隙が消滅するまでに要する時間をほぼ10分以内とすることができる。
次いで、密封空間内の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、一対の基板と、該一対の基板間に存在する硬化性樹脂組成物の硬化物の層とを有する積層体が製造される。
硬化性樹脂組成物を硬化させる手段は、熱硬化性樹脂組成物の種類に応じて熱硬化または光硬化のいずれかを用いる。但し、上述したように、使用する硬化性樹脂組成物は光硬化性樹脂組成物が好ましい。
光硬化性樹脂組成物の場合、たとえば、光源(紫外線ランプ、高圧水銀灯等)から紫外線または短波長の可視光を照射して、密封空間内の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、一対の基板と、該一対の基板間に存在する硬化性樹脂組成物の硬化物の層とを有する積層体が製造される。
光は、一対の基板のうち、透明基板の側から照射する。両方が透明基板の場合、両側から照射してもよい。
製造される積層体がフラットパネルディスプレイ(FPD)の場合、該フラットパネルディスプレイが透過型の表示デバイスを用いている場合、該デバイスを動作させることで光透過性を得ることはできるが、動作させない状態では光透過性を有さないものが多いため、保護板となる透明基板から硬化性樹脂組成物を硬化させる光を照射する。一方、該フラットパネルディスプレイが非動作時に透明状態を呈する透過−散乱型の表示デバイスを用いている場合は、表示デバイス側からの光を利用することもできる。
光としては、紫外線または450nm以下の可視光が好ましい。特に、透明基板上に反射防止層が設けられ、反射防止層または反射防止層の形成に用いた樹脂フィルムが紫外線を透過しない場合には、可視光による硬化が必要となる。
本発明の製造方法により得られる積層体は、薄層太陽電池デバイスや画像表示装置などに好適に用いられる。薄層太陽電池デバイスの具体例としては、薄膜シリコン太陽電池デバイス、カルコパイライト系やCdTe系等の化合物半導体太陽電池デバイスなどが挙げられる。一方、画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置(LCD)、有機ELや無機ELといったEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、プラズマ表示装置、電子インク型画像表示装置といったフラットパネルディスプレイ(FPD)が挙げられる。
薄層太陽電池デバイスの場合、積層体を構成する一対の基板のうち、一方の基板にのみ薄層太陽電池デバイスを形成してもよく、両方の基板に薄層太陽電池デバイスを形成してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。なお、例1,5,6が実施例であり、その他の例は比較例である。
(例1)
(シール部形成用光硬化性樹脂組成物)
分子末端をエチレンオキシドで変性した2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000)と、ヘキサメチレンジイソシアネートとを、6対7となるモル比で混合し、ついでイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製、IBXA)で希釈した後、錫化合物の触媒存在下で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加えて反応させることによって、30質量%のイソボルニルアクリレートで希釈されたウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UC−1と記す。)溶液を得た。UC−1の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約55000であった。UC−1溶液の60℃における粘度は約580Pa・sであった。
UC−1溶液の90質量部および2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の10質量部を均一に混合して混合物を得た。該混合物の100質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 184)の1質量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.1質量部、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤)の0.04質量部、および紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、TINUVIN 109)の0.3質量部を均一に混合し、シール部形成用光硬化性樹脂組成物Xを得た。
シール部形成用光硬化性樹脂組成物Xを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。シール部形成用光硬化性樹脂組成物Xの25℃における粘度を測定したところ、約1400Pa・sであった。
長さ610mm、幅610mm、厚み2mmのソーダライムガラス製の基板(以下、基板Aと呼ぶ。)の外周部から5mm内側の位置に沿って、上記のシール部形成用光硬化性樹脂組成物Xを塗布して、厚さ1mmのシール部を形成した。
(樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物)
分子末端をエチレンオキシドで変性した2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000)と、イソホロンジイソシアネートとを、3対4となるモル比で混合し、錫化合物の触媒存在下で反応させて得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをほぼ1対2となるモル比で加えて反応させることによって、ウレタンアクリレートオリゴマー(以下、UA−2と記す。)を得た。UA−2の硬化性基数は2であり、数平均分子量は約20000であり、25℃における粘度は230Pa・sであった。
UA−2の50質量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の50質量部を均一に混合し、該混合物の100質量部に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.2質量部、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤)の0.04質量部、紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、TINUVIN 109)の0.3質量部を均一に溶解させて、樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Yを得た。
上記の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Yを容器に入れたまま開放状態で減圧装置内に設置して、減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行った。樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Yの25℃における粘度を測定したところ、3.5Pa・sであった。
次に、ディスペンサを用いて、シール部で囲まれた領域に上記の樹脂層形成用光硬化性樹脂組成物Yを以下の条件で分散滴下した。
分散滴下の条件
滴下のピッチ:15mm
硬化性樹脂組成物の層の厚さ:0.8mm(滴下量:0.18cc/点)
滴下ヘッド:8×8=64点の多点ノズル(分岐ノズル)を2台並列させたものを使用
滴下時間:滴下タクト3.3sec×15点=49.5sec
硬化性樹脂組成物の分散滴下後の基板Aを減圧装置の真空チャンバ内の昇降装置の下側の下定盤の上面に載置した。基板Aで用いたものと同形状かつ同厚のソーダライムガラス板(基板Bと呼ぶ)を昇降装置の上側の上定盤の下面に静電吸着した。
次いで、真空チャンバを密封状態とした後、真空バルブを開放してチャンバ内が8Paとなるまで排気した。この後、真空チャンバ内の昇降装置にて上下の定盤を接近させ、基板Aと基板Bとを減圧積層させて、積層前駆体Cを形成した。この時点で積層前駆体Cは、基板間の距離を小さくする方向に、30g/cm2の加圧力で加圧されている。その後、積層前駆体Cを上記の加圧力で加圧した状態のままで、真空バルブを閉止した後、減圧雰囲気を解除して、真空チャンバ内を大気圧に戻した。なお、真空バルブ開放後の経過時間は以下の通り。
減圧積層:119.5sec
真空バルブの閉止:120sec
減圧雰囲気の解除:120.1sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:−0.02Pa/sec
ΔP:0.3Pa
次に、真空雰囲気の解除後直ちに、積層前駆体Cの面方向から均一に高圧水銀ランプから紫外線を照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、合わせガラス状の積層体(積層体Dと呼ぶ)を得た。
得られた積層体Dについて、硬化後の樹脂層を基板Bの側から観察して、樹脂層中の空隙の個数、および、空隙の径、より具体的には、基板B表面への投影形状における円相当径Dpore(以下、本明細書において、「空隙の円相当径Dpore」)を測定した。測定によって得られた空隙の個数と、空隙の円相当径Dporeの平均値(平均空隙径)を下記表に示した。
なお、下記表中の評価における数値は基板全体の空隙の状態を目視で観察した評価結果であり、空隙消滅までの時間が、1は1日以上放置しても空隙が消滅しないと判断したもの、5は10分以内に空隙が消えると判断したことを示す。他の数値はそれぞれ以下を示している。
2:空隙が消滅するまでの時間が60分より長く、1日程度放置すればその間に空隙が消滅すると判断したもの。
3:空隙が消滅するまでの時間が30分より長く、60分以内と判断したもの。
4:空隙が消失するまでの時間が10分より長く、30分以内と判断したもの。
(例2)
真空バルブ開放後の経過時間が以下となるように減圧積層、真空バルブの閉止、減圧雰囲気の解除を実施したこと、減圧積層時のチャンバ内の圧力が7Paであったこと、および、積層前駆体Cを加圧しない状態で減圧雰囲気の解除を実施したことを除いて例1と同様の手順を実施した。
減圧積層:89.5sec
真空バルブの閉止:120sec
減圧雰囲気の解除:125sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:−0.02Pa/sec
ΔP:−1.8Pa
(例3)
真空バルブ開放後の経過時間が以下となるように減圧積層、真空バルブの閉止、減圧雰囲気の解除を実施したこと、および、積層前駆体Cを加圧しない状態で減圧雰囲気の解除を実施したことを除いて例1と同様の手順を実施した。
減圧積層:89.5sec
真空バルブの閉止:90sec
減圧雰囲気の解除:95sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:−0.02Pa/sec
ΔP:0.8Pa
(例4)
真空バルブ開放後の経過時間が以下となるように減圧積層、真空バルブの閉止、減圧雰囲気の解除を実施したこと、および、積層前駆体Cを加圧しない状態で減圧雰囲気の解除を実施したことを除いて例1と同様の手順を実施した。
減圧積層:119.5sec
真空バルブの閉止:120sec
減圧雰囲気の解除:125sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:−0.02Pa/sec
ΔP:0.8Pa
(例5)
真空バルブ開放後の経過時間が以下となるように減圧積層、真空バルブの閉止、減圧雰囲気の解除を実施したことを除いて例1と同様の手順を実施した。
減圧積層:119.5sec
真空バルブの閉止:120sec
減圧雰囲気の解除:125sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:−0.02Pa/sec
ΔP:0.8Pa
(例6)
真空バルブ開放後の経過時間が以下となるように減圧積層、真空バルブの閉止、減圧雰囲気の解除を実施したこと、および、積層前駆体Cの加圧力を37g/cm2としたことを除いて例1と同様の手順を実施した。
減圧積層:119.5sec
真空バルブの閉止:120sec
減圧雰囲気の解除:125sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:−0.02Pa/sec
ΔP:1.2Pa
(例7)
真空バルブ開放後の経過時間が以下となるように減圧積層、真空バルブの閉止、減圧雰囲気の解除を実施したこと、減圧積層時のチャンバ内の圧力が9Paであったこと、および、積層前駆体Cを加圧しない状態で減圧雰囲気の解除を実施したことを除いて例1と同様の手順を実施した。
減圧積層:122.5sec
真空バルブの閉止:120sec
減圧雰囲気の解除:128sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:0.2Pa/sec
ΔP:2.4Pa
(例8)
真空バルブ開放後の経過時間が以下となるように減圧積層、真空バルブの閉止、減圧雰囲気の解除を実施したこと、および、減圧積層時のチャンバ内の圧力が9Paであったことを除いて例1と同様の手順を実施した。
減圧積層:122.5sec
真空バルブの閉止:120sec
減圧雰囲気の解除:128sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:0.2Pa/sec
ΔP:2.4Pa
(例9)
真空バルブ開放後の経過時間が以下となるように減圧積層、真空バルブの閉止、減圧雰囲気の解除を実施したこと、減圧積層時のチャンバ内の圧力が10Paであったこと、および、積層前駆体Cを加圧しない状態で減圧雰囲気の解除を実施したことを除いて例1と同様の手順を実施した。
減圧積層:124.5sec
真空バルブの閉止:120sec
減圧雰囲気の解除:130sec
なお、減圧積層時の減圧雰囲気の雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT)、および、減圧積層を実施してから、減圧雰囲気の解除を実施する直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP)は以下の通りであった。
ΔP/ΔT:0.2Pa/sec
ΔP:3.2Pa
Figure 0005407809
10:基板
20:シール部

Claims (8)

  1. 2枚の基板を準備し、一方の基板上の周辺部に硬化性樹脂組成物を封じ込めるためのシール部を形成し、基板上の前記シール部で囲まれた領域に硬化性樹脂組成物を供給し、減圧雰囲気下にて前記供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせて一対の基板間に硬化性樹脂組成物を挟持して密封して積層前駆体を得た後、該積層前駆体を前記減圧雰囲気よりも雰囲気圧力が50kPa以上高い第2の圧力雰囲気下に置き、該第2の圧力雰囲気下にて硬化性樹脂組成物を硬化させる積層体の製造方法であって、
    前記供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる手順を、雰囲気圧力Pが0.1〜1000Paであって、かつ、該雰囲気圧力の圧力勾配(ΔP/ΔT(Pa/sec))が、−1(Pa/sec)≦ΔP/ΔT≦0(Pa/sec)を満たす減圧雰囲気で実施すること、
    前記供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる手順を実施してから前記積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に置く直前までの雰囲気圧力の圧力変化量(ΔP(Pa))を、0(Pa)<ΔP≦2(Pa)に保持すること、および、
    前記一対の基板間の距離を小さくなる方向に前記積層前駆体を加圧した状態で、前記該積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に置くことを特徴とする積層体の製造方法。
  2. 前記硬化性樹脂組成物の粘度が0.2〜50Pa・sである請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記一対の基板と前記シール部とで密封された、前記積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが30〜3000μmである請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記硬化性樹脂組成物の粘度が1〜14Pa・sであって、前記一対の基板と前記シール部とで密封された、前記積層前駆体の密封空間内の硬化性樹脂組成物層の厚さが100〜2000μmである場合、前記積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に置く際、30〜37g/cm2の加圧力で前記積層前駆体を加圧する、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  5. 前記供給された硬化性樹脂組成物の上に他方の基板を重ね合わせる手順を実施してから前記積層前駆体を第2の圧力雰囲気下に置くまでの時間T(sec)をT≦5secとする、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  6. 前記硬化性樹脂組成物が、前記減圧雰囲気の雰囲気圧力よりも高い蒸気圧を有する成分を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  7. 前記シール部が、粘度が200〜3000Pa・sの第2の硬化性樹脂組成物を用いて形成される請求項1〜6のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  8. 前記2枚の基板のうち、すくなくとも一つが透明基板である請求項1〜7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
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