JP2009073759A - Icam−1発現抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とする新規ICAM−1発現抑制剤を提供することを課題とする。
【解決手段】下記の一般式(I)で表される1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とするICAM−1発現抑制剤による。
一般式(I):
(式中、R1は低級アルキル基、R2は、置換若しくは非置換低級アルキル基、Xは2−、3−または4−位におけるニトロソ基、Yは原子記号N若しくはNHである。)
【選択図】図8
【解決手段】下記の一般式(I)で表される1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とするICAM−1発現抑制剤による。
一般式(I):
(式中、R1は低級アルキル基、R2は、置換若しくは非置換低級アルキル基、Xは2−、3−または4−位におけるニトロソ基、Yは原子記号N若しくはNHである。)
【選択図】図8
Description
本発明は、1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とするICAM−1発現抑制剤に関する。
ICAM−1(intercellular adhesion molecule-1)は、免疫系の細胞間相互作用をつかさどる接着分子の一つである。血管内皮細胞や気道粘膜上皮細胞で発現しており、通常は発現量は少ないが、炎症時にマクロファージやマスト細胞から分泌されるインターロイキン1やTNFα等のサイトカインの作用により発現が増強する。発現が増強すると好酸球や好中球は血管を通過し、気道粘膜で顆粒タンパク質を放出することなどにより組織を破壊するようになる。また、敗血症、膠原病、癌転移などの病態における接着分子の役割が注目されている。
ニフェジピンは高血圧や狭心症の治療に、世界で広く使用されているカルシウム拮抗薬である。ニフェジピンの臓器保護効果のメカニズムについては、内皮保護作用(非特許文献1、2)、抗酸化作用(非特許文献3、4)、抗炎症作用(非特許文献5)などが報告されている。
一方、ニフェジピンは、光に非常に不安定な化合物であり、光照射下において、主にニトロ基がニトロソ基に還元されてカルシウム拮抗作用を持っていないラジカル体であるニトロソニフェジピンに変化すると報告されている(非特許文献6)。光を照射することにより、ニフェジピンの黄色の粉末は、青色の粉末に変化する。また、光照射がなくても肝臓組織とニフェジピンを作用させることにより酵素的にニトロソニフェジピンラジカルが生成することが、ラジカルを直接測定する電子常磁性共鳴装置(EPR装置)により証明されており、 生体内でニフェジピンの代謝物としてニトロソニフェジピンが存在することが明らかにされている(非特許文献7)。ニトロソニフェジピンは、試験管実験で、ラジカルジェネレーター(radical generator)であるABAPにより生成したラジカルに対する抗酸化活性の評価系で、抗酸化物質ビタミンEの水溶性誘導体であるTrolox Cより2.3倍抗酸化活性が高いことが報告されている(非特許文献8)。
また、ニトロソニフェジピンを含む1,4−ジヒドロピリジン化合物の新規細胞保護剤について、開示がある(特許文献1)。ここでは、1,4−ジヒドロピリジン化合物は、酸化ストレスによる細胞膜の脂質過酸化を抑制し、それによって細胞障害を抑制できることが示されている。このため、高血圧、糖尿病、高脂血症、老化による細胞障害を予防することが可能であり、さらに肥満における細胞障害の抑制、臓器障害の予防にも有用であることが示されている。
Hypertension, 37: 943-948 (2001) Hypertension, 37: 34-39 (2001) Biochemical Pharmacology, 51: 811-819 (1996) Hypertension, 37: 240-245 (2001) Life Sciences, 67: 2655-2661 (2000) J Pharm Pharmacol, 39: 1044-1046 (1987) Magnetic Resonance in Medicine, 41: 691-694 (1999) Bioorganic & Medicinal Chemistry, 12: 2459-2468 (2004) 特開2007-91664号公報
Hypertension, 37: 943-948 (2001) Hypertension, 37: 34-39 (2001) Biochemical Pharmacology, 51: 811-819 (1996) Hypertension, 37: 240-245 (2001) Life Sciences, 67: 2655-2661 (2000) J Pharm Pharmacol, 39: 1044-1046 (1987) Magnetic Resonance in Medicine, 41: 691-694 (1999) Bioorganic & Medicinal Chemistry, 12: 2459-2468 (2004)
本発明は、1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とする新規ICAM−1発現抑制剤を提供することを課題とする。
本発明者等は、前記課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、1,4−ジヒドロピリジン化合物について、細胞に対するTNF−α刺激によるICAM−1の発現を調べ、各種薬剤との比較を行った結果、1,4−ジヒドロピリジン化合物がICAM−1の発現抑制に優れた効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.下記の一般式(I)で表される1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とするICAM−1発現抑制剤。
一般式(I):
(式中、R1は低級アルキル基、R2は置換または非置換低級アルキル基、Xは2−、3−または4−位におけるニトロソ基、Yは原子記号NまたはNHである。)
2.一般式(I)におけるR1およびR2が、各々メチル基である前項1に記載のICAM−1発現抑制剤。
3.1,4−ジヒドロピリジン化合物が、下記の式(II)で表されるニトロソニフェジピンである前項1に記載のICAM−1発現抑制剤。
4.1,4−ジヒドロピリジン化合物が、下記の式(III)で表されるニトロソニフェジピンである前項1に記載のICAM−1発現抑制剤。
1.下記の一般式(I)で表される1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とするICAM−1発現抑制剤。
一般式(I):
2.一般式(I)におけるR1およびR2が、各々メチル基である前項1に記載のICAM−1発現抑制剤。
3.1,4−ジヒドロピリジン化合物が、下記の式(II)で表されるニトロソニフェジピンである前項1に記載のICAM−1発現抑制剤。
本発明のICAM−1発現抑制剤は、有効成分として1,4−ジヒドロピリジン化合物を含有する。1,4−ジヒドロピリジン化合物は、細胞障害を抑制することは、特許文献1より公知であるが、その作用メカニズムについては、十分に解明されているとはいえなかった。本願により、1,4−ジヒドロピリジン化合物は、ICAM−1発現抑制作用を有することが初めて見出された。これにより、抗ICAM−1発現作用に基づく、新規医薬用途の可能性が得られた。また、水溶性ビタミンE誘導体であるTrolox Cに劣らぬ活性を有し、優れた抗酸化剤として使用することもできる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のICAM−1発現抑制剤に含有される有効成分としての1,4−ジヒドロピリジン化合物は、下記の一般式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容される塩からなり、ICAM−1発現抑制作用を有する。
一般式(I):
(式中、R1は低級アルキル基、R2は置換または非置換低級アルキル基、Xは2−、3−または4−位におけるニトロソ基、Yは原子記号NまたはNHである。)
本発明のICAM−1発現抑制剤に含有される有効成分としての1,4−ジヒドロピリジン化合物は、下記の一般式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容される塩からなり、ICAM−1発現抑制作用を有する。
一般式(I):
上記一般式(I)において、R1の低級アルキル基としては、炭素数1〜4個の直鎖または分枝鎖アルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基またはイソプロピル基が挙げられる。R2の置換または非置換低級アルキル基における低級アルキル基としては、炭素数1〜4個の直鎖または分枝鎖アルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基またはイソブチル基である。またその置換基としては、炭素数1〜3個の直鎖アルコキシ基(例えばメトキシ基)、フリル基、または低級アルキル基および/またはフェニル低級アルキル基によりモノまたはジ−置換されたアミノ基(例えば、N−メチル−N−フェニルメチルアミノ)等が挙げられる。
一般式(I)の1,4−ジヒドロピリジン化合物の好ましい具体例は、ニトロソ−ニフェジピン(一般式(I)中、R1:−CH3、R2:−CH3、X:2−NO・、Y:N)、ニトロソ−ニソルジピン(一般式(I)中、R1:−CH3、R2:−CH2(CH3)2、X:2−NO・、Y:N)ニトロソ−ニモジピン(一般式(I)中、R1:−CH(CH3)2、R2:−(CH2)2OCH3、X:3−NO・、Y:N)、ニトロソ−ニカルジピン(一般式(I)中、R1:−CH3、R2:−(CH)2N(CH3)(CH2C6H5)、X:3−NO・、Y:Nおよびニトロソ−ニトレンジピン(一般式(I)中、R1:−CH3、R2:−CH2CH3、X:3−NO・、Y:N)である。
さらに、本発明の1,4−ジヒドロピリジン化合物は、水中や生体内などの水分の存在する条件下では、YはNHであってもよい。
さらに、本発明の1,4−ジヒドロピリジン化合物は、水中や生体内などの水分の存在する条件下では、YはNHであってもよい。
一般式(I)におけるR1およびR2は各々メチル基であることが好ましく、さらには、1,4−ジヒドロピリジン化合物が、式(II)または式(III)で示されるニトロソニフェジピンであることが好適である。
本発明において、薬学上許容される塩とは、以下が挙げられる。
塩基性付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;例えばアンモニウム塩;例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩;ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩;たとえばN,N−ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;例えばピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;例えばテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩;リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
塩基性付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;例えばアンモニウム塩;例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩;ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩;たとえばN,N−ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩;例えばピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩;例えばテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩;リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、りん酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、りんご酸塩、くえん酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等を挙げることができる。
本発明の1,4−ジヒドロピリジン化合物は、自体公知の方法によって合成することができる。
本発明のICAM−1発現抑制剤は、上述の如く上記一般式(I)で示される1,4−ジヒドロピリジン化合物またはその薬学的に許容される塩を有効量含み、さらに前記ICAM−1発現抑制剤を薬学的に許容し得る担体を含んでいても良い。かかる医薬組成物は、経口的または非経口的に投与することができる。経口投与による場合、本発明のICAM−1発現抑制剤は通常の製剤、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤;水剤;油性懸濁剤;またはシロップ剤もしくはエリキシル剤等の液剤のいずれかの剤型としても用いることができる。非経口投与による場合、本発明のICAM−1発現抑制作用を有する化合物は、水性または油性懸濁注射剤、点鼻液として用いることができる。その調製に際しては、慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、水性溶剤、油性溶剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、安定剤等を任意に用いることができる。
本発明のICAM−1発現抑制剤は、炎症時にマクロファージやマスト細胞から分泌されるインターロイキン1やTNFα等のサイトカインの作用によるICAM−1の発現が増強するのを抑制することにより、組織・細胞保護作用の他、炎症、膠原病や癌転移などの治療剤または予防剤として用いることが期待される。
本発明の理解を助けるために、以下に実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
(実施例1)1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とするICAM−1発現抑制剤の調製
1,4−ジヒドロピリジン化合物のうち、式(II)に示す構造からなるニトロソニフェジピンを用いた。式(II)に示す構造からなるニトロソニフェジピンは、以下の方法により調製した。
1,4−ジヒドロピリジン化合物のうち、式(II)に示す構造からなるニトロソニフェジピンを用いた。式(II)に示す構造からなるニトロソニフェジピンは、以下の方法により調製した。
ニフェジピンは、光照射下において青色の粉末になるが、ニフェジピンのみを光照射してもニトロソニフェジピンのラジカルシグナルは生成されず、不飽和脂肪酸の共存下でニトロソニフェジピンのラジカルシグナルを生成することができる(図1)。
ニフェジピン(和光純薬製)をメタノールに溶解し、25mMニフェジピンメタノール溶液(500mL)を調製した。この溶液にハロゲン光(Kodak Ektagraphic III E Plus projector)を7時間照射した。それによって黄色のニフェジピン溶液は徐々に緑色に変色する。光照射後、メタノールをエバポレーターで減圧下除去し、析出する結晶を冷メタノールで洗浄した。得られる結晶をメタノールで再結晶して、ニトロソ−ニフェジピンを得た。その生成物をNMRスペクトル、元素分析により同定した。HPLCにより測定した純度は>99.9%であった。
上記により得られたニトロソニフェジピンを臍帯静脈内皮細胞に作用させると、20分後よりニトロソニフェジピンのラジカルシグナルが観察されはじめ、シグナルは徐々に大きくなり、反応後6時間程度でシグナルはピークとなりうる(図2)。このため、ニトロソニフェジピンを細胞に6時間作用させて、ラジカルシグナルがピークとなったときの細胞を用いて、以下の確認実験を行った。
(実験例1)ニトロソニフェジピンの細胞障害抑制作用1
細胞膜脂質二重膜の過酸化反応開始薬であるクメンヒドロペルオキシド(cumene hydroperoxide、CuOOH)による細胞障害に対するニトロソニフェジピンの効果を検討した。培養ヒト糸球体内皮細胞、4×104個をCSC完全培地に懸濁したもの1mlを24ウェルプレートの各ウェルに播種し、37±1℃で1日間培養したのち、クメンヒドロペルオキシドを10μl加え、さらに37±1℃で24時間インキュベーションした。クメンヒドロペルオキシド10、30、100および300μMをヒト糸球体内皮細胞に作用させると、用量依存的にヒト糸球体内皮細胞の細胞生存率が低下した(図3)。これにより、クメンヒドロペルオキシドは内皮細胞傷害作用を有することが確認された。
細胞膜脂質二重膜の過酸化反応開始薬であるクメンヒドロペルオキシド(cumene hydroperoxide、CuOOH)による細胞障害に対するニトロソニフェジピンの効果を検討した。培養ヒト糸球体内皮細胞、4×104個をCSC完全培地に懸濁したもの1mlを24ウェルプレートの各ウェルに播種し、37±1℃で1日間培養したのち、クメンヒドロペルオキシドを10μl加え、さらに37±1℃で24時間インキュベーションした。クメンヒドロペルオキシド10、30、100および300μMをヒト糸球体内皮細胞に作用させると、用量依存的にヒト糸球体内皮細胞の細胞生存率が低下した(図3)。これにより、クメンヒドロペルオキシドは内皮細胞傷害作用を有することが確認された。
ニトロソニフェジピン(10μM)、水溶性ビタミンE誘導体であるTrolox C(10μM)またはニフェジピン(10μM)で細胞を6時間前処置した後、クメンヒドロペルオキシド100μMで細胞を処理した。クメンヒドロペルオキシドで細胞を処理後、24時間インキュベーションして細胞の生存率を測定した。その結果、クメンヒドロペルオキシドによる細胞膜の過酸化刺激により減少した細胞生存率は、ニトロソニフェジピン(10μM)またはTrolox C(10μM)の前処置により回復したが、ニフェジピン(10μM)前投与では回復しなかった(図4)。これにより、ニトロソニフェジピンは、ニフェジピンに比べて効果的に細胞保護作用を発揮しうることが確認された。これにより、ニトロソニフェジピンは、強い抗酸化作用を示す水溶性ビタミンE誘導体であるTrolox Cよりもさらに高い細胞障害抑制作用を有することが確認された。
(実験例2)ニトロソニフェジピンの細胞傷害抑制作用2
次に、クメンヒドロペルオキシドによる細胞障害を、細胞からのLDH(Lactate Dehydrogenase、乳酸脱水素酵素)放出で評価した。薬剤の処理は実験例1の手法に従った。LDHは、ロッシュ社製のLDH測定キットを用いて測定した。クメンヒドロペルオキシド10、30、100および300μMをヒト糸球体内皮細胞に作用させると、内皮細胞からのLDH放出が用量依存的に増加した(図5)。クメンヒドロペルオキシドを細胞に100μM接触させる前に、ニトロソニフェジピン(10μM)、Trolox C(10μM)またはニフェジピン(10μM)で前処置し、その後クメンヒドロペルオキシド刺激によるLDH放出の増加を確認した。その結果、クメンヒドロペルオキシドによるLDH放出の増加は、ニトロソニフェジピン(10μM)またはTrolox C(10μM)の前処置により抑制されたが、ニフェジピン(10μM)前投与では抑制されなかった(図6)。
次に、クメンヒドロペルオキシドによる細胞障害を、細胞からのLDH(Lactate Dehydrogenase、乳酸脱水素酵素)放出で評価した。薬剤の処理は実験例1の手法に従った。LDHは、ロッシュ社製のLDH測定キットを用いて測定した。クメンヒドロペルオキシド10、30、100および300μMをヒト糸球体内皮細胞に作用させると、内皮細胞からのLDH放出が用量依存的に増加した(図5)。クメンヒドロペルオキシドを細胞に100μM接触させる前に、ニトロソニフェジピン(10μM)、Trolox C(10μM)またはニフェジピン(10μM)で前処置し、その後クメンヒドロペルオキシド刺激によるLDH放出の増加を確認した。その結果、クメンヒドロペルオキシドによるLDH放出の増加は、ニトロソニフェジピン(10μM)またはTrolox C(10μM)の前処置により抑制されたが、ニフェジピン(10μM)前投与では抑制されなかった(図6)。
これらの結果から、ニトロソニフェジピンが細胞膜内に蓄積され、細胞膜の過酸化反応の連鎖を抑制することにより、血管内皮細胞障害抑制作用を有することが示唆された。
(実験例3)ICAM−1発現抑作用の確認
1)TNF−αによるICAM−1発現の確認
TNF−αは、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一種であり炎症時や肥満・糖尿時の血管リモデリングを引き起こす物質として知られている。TNF−αは、血管内皮細胞に作用して内皮細胞を活性化させ、内皮細胞表面の接着因子の発現を増加させ白血球や血小板の内皮への接着を誘導し、血管障害の第一段階に大きな役割を担うと考えられている。
このため、培養ヒト糸球体内皮細胞を用いてTNF−α刺激による ICAM−1発現について検討した。
1)TNF−αによるICAM−1発現の確認
TNF−αは、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一種であり炎症時や肥満・糖尿時の血管リモデリングを引き起こす物質として知られている。TNF−αは、血管内皮細胞に作用して内皮細胞を活性化させ、内皮細胞表面の接着因子の発現を増加させ白血球や血小板の内皮への接着を誘導し、血管障害の第一段階に大きな役割を担うと考えられている。
このため、培養ヒト糸球体内皮細胞を用いてTNF−α刺激による ICAM−1発現について検討した。
培養ヒト糸球体内皮細胞について、TNF−α刺激によるICAM−1の発現量を調べた。培養ヒト糸球体内皮細胞を3×105個をCSC完全培地に懸濁したもの3mlを60mmディッシュに播種し、37±1℃で、2日間培養したのち、TNF−αを加え、さらに37±1℃で、12時間インキュベーションした。
TNF−α刺激によりヒト糸球体内皮細胞では、ICAM−1発現が増加し、12時間でピークに達することが確認された。また、TNF−α用量依存的にICAM−1の発現が増加した(図7)。
TNF−α刺激によりヒト糸球体内皮細胞では、ICAM−1発現が増加し、12時間でピークに達することが確認された。また、TNF−α用量依存的にICAM−1の発現が増加した(図7)。
次に培養ヒト糸球体内皮細胞を用いて、無処置の細胞とニトロソニフェジピンまたはニフェジピンの前処置した細胞で、ICAM−1の発現量を調べた。さらに、ニトロソニフェジピンまたはニフェジピンの前処置した細胞で、TNF−α刺激によるICAM−1の発現量の変化を調べた。
その結果、無刺激の細胞や、ニトロソニフェジピンまたはニフェジピンの前処置のみでは、ICAM−1の発現は殆ど認められなかった。一方、TNF−α刺激によるICAM−1の発現の増加は、ニトロソニフェジピンを作用させた細胞では、濃度依存的に抑制されることが確認された。ニフェジピンを作用させた細胞では、TNF−α刺激によるICAM−1の発現の増加は抑制されなかった(図8)。
(実験例4)TNF−αの作用とニトロソニフェジピンによる細胞障害抑制作用について
TNF−α刺激による内皮細胞の活性作用が実際に細胞障害を引き起こすか否かについて、ヒト糸球体内皮細胞(HGEC)の細胞生存率(cell viability) をMTTアッセイ にて評価した。HGEC、4×104個をCSC完全培地に懸濁したもの1mlを24ウェルプレートの各ウェルに播種した。次に、各濃度のTNF−αを加え、24時間 、37±1℃でインキュベートした。その後、無血清CSC培地に交換し、MTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bromide ) をPBSで溶解し、5mg/ml溶液を調製したものを1/10量加えて4時間、37±1℃でインキュベートした。10%SDS/0.01M HClを入れ、沈殿したホルマザンを溶解し、590nmでの吸光度を測定した。
TNF−α刺激による内皮細胞の活性作用が実際に細胞障害を引き起こすか否かについて、ヒト糸球体内皮細胞(HGEC)の細胞生存率(cell viability) をMTTアッセイ にて評価した。HGEC、4×104個をCSC完全培地に懸濁したもの1mlを24ウェルプレートの各ウェルに播種した。次に、各濃度のTNF−αを加え、24時間 、37±1℃でインキュベートした。その後、無血清CSC培地に交換し、MTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bromide ) をPBSで溶解し、5mg/ml溶液を調製したものを1/10量加えて4時間、37±1℃でインキュベートした。10%SDS/0.01M HClを入れ、沈殿したホルマザンを溶解し、590nmでの吸光度を測定した。
TNF−α刺激によりヒト糸球体内皮細胞の細胞生存率は用量依存的に低下した(図9)。水溶性ビタミンE誘導体であるTrolox C で前処置することにより、TNF−α刺激による細胞生存率の低下は抑制され、細胞障害抑制作用が認められた。また、ニトロソニフェジピンについてもTrolox C と同様に細胞障害抑制作用を認めが、ニフェジピンにはこのような抑制作用は観察されなかった(図10)。
以上詳述したように、1,4−ジヒドロピリジン化合物は、ICAM−1発現抑制作用を有することが初めて見出された。これにより、1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とする薬剤は、抗ICAM−1発現作用に基づく新規医薬用途の可能性が示唆される。例えば、ICAM−1の発現が増強するのを抑制することにより、組織・細胞保護作用の他、炎症、膠原病や癌転移などの治療剤または予防剤として用いることが期待される。
Claims (4)
- 下記の一般式(I)で表される1,4−ジヒドロピリジン化合物を有効成分とするICAM−1発現抑制剤。
一般式(I):
- 一般式(I)におけるR1およびR2が、各々メチル基である請求項1に記載のICAM−1発現抑制剤。
- 1,4−ジヒドロピリジン化合物が、下記の式(II)で表されるニトロソニフェジピンである請求項1に記載のICAM−1発現抑制剤。
- 1,4−ジヒドロピリジン化合物が、下記の式(III)で表されるニトロソニフェジピンである請求項1に記載のICAM−1発現抑制剤。
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