JP2009072649A - ナノバブル溶液、ナノバブル溶液を製造する方法及び装置、ナノバブル溶液の利用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微小なナノバブルを含むナノバブル溶液を簡便に製造することのできる方法を提供する。
【解決手段】溶液を多孔性フィルターに通すろ過処理S101,S105を少なくとも一回行って、ナノバブルを含むろ液を得ることを特徴とするナノバブル溶液の製造方法とする。
【選択図】図1
【解決手段】溶液を多孔性フィルターに通すろ過処理S101,S105を少なくとも一回行って、ナノバブルを含むろ液を得ることを特徴とするナノバブル溶液の製造方法とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、ナノバブル溶液、ナノバブル溶液を製造する方法及び装置、ナノバブル溶液の利用方法に関し、特に、微小なナノバブルを含むナノバブル溶液、当該ナノバブル溶液を製造する方法及び装置、当該ナノバブル溶液の利用方法に関する。
従来、ナノバブルを生成する方法としては、例えば溶液を電気分解する方法や、溶液に超音波振動を付与する方法があった(特許文献1参照)。
特開2007−118006号公報
しかしながら、上記従来技術においては、電気分解を行う装置や、超音波を発生させる装置といった、大がかりな装置が必要であった。また、上記従来技術において、生成されるナノバブルのサイズの低減には限界があった。このため、ナノバブルの利用方法についても限界があった。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、微小なナノバブルを含むナノバブル溶液、当該ナノバブル溶液を簡便に製造することのできる方法及び装置、当該ナノバブル溶液の利用方法を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るナノバブル溶液の製造方法は、溶液を多孔性フィルターに通すろ過処理を少なくとも一回行って、ナノバブルを含むろ液を得ることを特徴とする。本発明によれば、微小なナノバブルを含むナノバブル溶液を簡便に製造することのできる方法を提供することすることができる。
また、前記ろ過処理を複数回行って、複数回の前記ろ過処理を施された前記ろ液を得ることもできる。こうすれば、微小なナノバブルをより高濃度で含むナノバブル溶液を簡便に製造することができる。また、この場合、前記ろ過処理を少なくとも一回行って得られたろ液を保持する第一工程と、前記第一工程で使用された前記多孔性フィルターの内部に含まれる気体の量を増加させる乾燥処理を行う第二工程と、前記第二工程で乾燥処理が施された前記多孔性フィルターに、前記第一工程で保持された前記ろ液を通す追加ろ過処理を行う少なくとも一回行う第三工程と、を含むことができる。こうすれば、微小なナノバブルをより一層、高濃度で含むナノバブル溶液を簡便に製造することができる。また、前記多孔性フィルターは、疎水性フィルターであるとすることもできる。こうすれば、微小なナノバブルをより高濃度で含むナノバブル溶液を簡便に製造することができる。また、この場合、前記疎水性フィルターは、フッ素含有樹脂製フィルターであるとすることもできる。こうすれば、微小なナノバブルをより高濃度で含むナノバブル溶液を簡便且つ確実に製造することができる。また、前記ろ過処理において、乾燥状態の前記多孔性フィルターに前記溶液を通すこともできる。こうすれば、微小なナノバブルをより高濃度で含むナノバブル溶液を簡便に製造することができる。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るナノバブル溶液は、上述のいずれかの製造方法により製造された、ナノバブルを含む溶液であることを特徴とする。本発明によれば、微小なナノバブルを含むナノバブル溶液を提供することすることができる。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るナノバブル溶液は、直径が50nm未満のナノバブルを含む溶液であることを特徴とする。本発明によれば、微小なナノバブルを含むナノバブル溶液を提供することすることができる。また、前記ナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして10%以上が、前記直径が50nm未満のナノバブルであるとすることもできる。こうすれば、微小なナノバブルを高濃度に含むナノバブル溶液を提供することすることができる。また、このナノバブル溶液は、直径が10nm以下のナノバブルを含むこともできる。こうすれば、より微小なナノバブルを含むナノバブル溶液を提供することすることができる。この場合、前記ナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして50%以上が、前記直径が10nm以下のナノバブルであるとすることもできる。こうすれば、より微小なナノバブルを高濃度に含むナノバブル溶液を提供することすることができる。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るナノバブル溶液の利用方法は、上述のいずれかのナノバブル溶液を、基材表面に接触させて、前記ナノバブル溶液に含まれるナノバブルを前記基材表面に吸着させることを特徴とする。本発明によれば、ナノバブル溶液をクリーンな基材表面処理剤として利用することができる。また、この場合、前記ナノバブルが吸着した前記基材表面に、界面活性剤を含む溶液を接触させて、前記基材表面から前記ナノバブルを除去することもできる。こうすれば、ナノバブルの基材表面への吸着と脱着とを効果的に制御することができる。
以下に、本発明の一実施形態に係るナノバブル溶液の製造方法(以下、「本方法」という)及び本方法により製造されるナノバブル溶液について説明する。なお、本発明は、本実施形態に示す例に限られるものではない。
図1は、本方法の一例に含まれる主な工程を示すフロー図である。図1に示すように、本方法は、多孔性フィルターを準備する工程S100と、当該多孔性フィルターに、ナノバブルを含有させるべき溶液(以下、「前溶液」という)を通すろ過処理を行う工程S101と、当該ろ過処理によって得られたろ液を保持する工程S102と、を含んでいる。
工程S100においては、多孔性フィルターと前溶液とを準備する。本方法において用いられる多孔性フィルターとしては、その内部に複数の微細な孔が形成された多孔性の膜構造体であれば、特に限られず、目的に応じて任意のものを適宜選択して用いることができる。
すなわち、多孔性フィルターとしては、例えば、樹脂の発泡成形によって製造される樹脂製の多孔性フィルターや、樹脂、セラミック、金属等の微粒子から成形された焼結フィルター等、その内部の溶液が流通する方向(厚さ方向)において複数の孔が形成されているものを用いることができる。
樹脂製の多孔性フィルターとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4、6フッ化)(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)(PVDF2)、ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等のフッ素含有樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等の合成樹脂、セルロースアセテートやニトロセルロース等のセルロース系樹脂を用いて成形されたものを用いることができる。
また、この多孔性フィルターの形状は、特に限られず、目的に応じて任意の形状のものを適宜選択して用いることができる。すなわち、多孔性フィルターとしては、平板状に成形されたものを用いることができ、また、中空糸の多孔性の側壁部分も多孔性フィルターとして用いることができる。
また、多孔性フィルターとしては、例えば、疎水性フィルターを好ましく用いることができる。すなわち、例えば、その全体又は少なくとも孔表面が疎水性の樹脂から成形された多孔性フィルターを好ましく用いることができる。具体的に、例えば、PVDF、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF2、PCTFE、ECTFE等のフッ素含有樹脂を用いて成形された多孔性フィルターを好ましく用いることができる。また、この疎水性の樹脂から成形された疎水性フィルターとしては、溶液が流通する際の抵抗を低減させるための表面処理が施されたものを好ましく用いることができる。すなわち、例えば、その表面が適度に親水化されたフッ素含有樹脂製の多孔性フィルターを好ましく用いることができる。
また、多孔性フィルターとしては、溶液の滅菌処理に使用できるものを好ましく用いることができる。すなわち、多孔性フィルターとしては、溶液を当該多孔性フィルターでろ過することによって、当該溶液中に含まれる微生物やウイルス等を除去できる孔構造を有するものを好ましく用いることができ、例えば、汎用されている滅菌用フィルターや限外ろ過膜、精密ろ過膜を用いることができる。このような溶液を滅菌できる多孔性フィルターとしては、例えば、孔径が0.001〜0.5μmの範囲のものを用いることができ、0.2〜0.45μmの範囲のものを好ましく用いることができる。
また、多孔性フィルターとしては、ろ過処理に先立って、予め乾燥処理が施されたものを好ましく用いることができる。すなわち、例えば、乾燥状態で包装されて販売されている多孔性フィルターを用いる場合には、当該多孔性フィルターを濡らすことなく、乾燥状態を維持した当該多孔性フィルターを用いることができる。
また、例えば、洗浄等の前処理によっていったん濡らされた多孔性フィルターを用いる場合には、当該多孔性フィルターの内部に保持された液体を除去し、又は当該液体の量を低減することにより、当該多孔性フィルターの内部に保持される気体の量を増加させる乾燥処理を施した後に、当該多孔性フィルターを用いることができる。具体的な乾燥処理としては、例えば、多孔性フィルターを湿度の低い気体に接触させる方法、多孔性フィルターを加熱する方法、多孔性フィルターに湿度の低い気体を通す方法を用いることができる。
また、多孔性フィルターの内部に保持させる気体は、特に限られず、目的に応じて任意の気体を適宜選択して用いることができる。すなわち、例えば、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、オゾン、ヘリウム等の気体のうち一種類、又はこれらのうち複数の種類の気体を任意の比率で混合した混合気体を、多孔性フィルターの孔構造の少なくとも一部に満たすことができる。このような気体は、例えば、上述の乾燥処理に伴って多孔性フィルターの内部に保持させることもできる。
また、ろ過処理の対象となる前溶液としては、例えば、既にマイクロバブルやナノバブルの製造に利用可能であることが知られている溶液等、ナノバブルを含有し得る溶液であれば、特に限られず、任意の組成のものを用いることができる。
すなわち、前溶液としては、例えば、水、超純水(抵抗率10MΩ・cm以上)、無機塩類及び緩衝剤を含む緩衝溶液、界面活性剤を含む溶液、アルコール等の水と混和可能な有機溶媒を含む水溶液等を用いることができる。
工程S101においては、工程S100で準備した多孔性フィルターに前溶液を通すろ過処理を行う。すなわち、工程S101においては、多孔性フィルターの内部に形成されている多数の孔の全部または一部に前溶液を流入させ、さらに流出させる。
具体的に、例えば、前溶液を流通可能な流路(例えば、樹脂製のチューブや金属製の管)の中途部分又は末端に、当該流路を塞ぐように多孔性フィルターを設置し、次いで、当該流路内に前溶液を圧送して、当該多孔性フィルターを通過させる。
この前溶液の圧送は、例えば、所定のポンプ装置を用いて行うことができ、又はシリンジ等を用いた手動操作によって行うことができる。このろ過処理の過程で、前溶液は、多孔性フィルターの各孔に保持されている気体に接触しながら流通することとなる。
工程S102においては、工程S101のろ過処理によって得られるろ液(すなわち、多孔性フィルターを通過後の溶液)を保持する。ここで、このろ液は、ナノバブルを含むナノバブル溶液となっている。すなわち、本方法によれば、多孔性フィルターに前溶液を通すという極めて簡便な処理によって、ナノバブル溶液を確実に製造することができる。
しかも、本方法により製造されるナノバブル溶液は、直径が50nm未満の範囲のナノバブルを含むことができ、好ましくは直径が40nm以下の範囲のナノバブルを含むことができ、より好ましくは直径が30nm以下の範囲のナノバブルを含むことができ、特に好ましくは直径が10nm以下の範囲のナノバブルを含むことができる。ナノバブルの直径が50nm未満である場合、当該ナノバブルのサイズは、タンパク質等の高分子量物質分子や細胞のサイズに極めて近くなる。したがって、この場合、例えば、ナノバブルを基材表面に吸着させて、当該ナノバブルによって当該基材表面を被覆することにより、当該ナノバブルと同程度又はそれ以上のサイズの分子や細胞が当該基材表面に接着することを効果的に抑制することができる。すなわち、このような微小なサイズのナノバブルを予め基材表面に高密度に吸着させておくことにより、当該基材表面に対する細胞の接着、当該基材表面におけるタンパク質の集合、当該基材表面に対するタンパク質の凝集体や複合体の吸着を効果的に抑制することができるようになる。
また、上記の各範囲の直径を有するナノバブルは、ナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして、例えば、10%以上とすることができ、好ましくは30%以上とすることができ、より好ましくは50%以上とすることができる。すなわち、例えば、ナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして10%以上のナノバブルの直径が50nm未満である場合には、基材表面をナノバブルで隙間なく均一にコートできるようになるため、上述したような当該基材表面に対する細胞の接着やタンパク質の吸着を高レベルに抑制することができる。
すなわち、本方法により製造されるナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして10%以上のナノバブルは、直径が50nm未満の範囲とすることができ、好ましくは直径が40nm以下の範囲とすることができ、より好ましくは直径が30nm以下の範囲とすることができ、特に好ましくは直径が10nm以下の範囲とすることができる。
このようなナノバブルのサイズは、例えば、動的光散乱法を用いて評価することができる。すなわち、例えば、動的光散乱法に基づく所定の測定装置によってナノバブル溶液に含まれるナノバブルのサイズを測定し、当該ナノバブルの直径に対する散乱強度の分布を示す曲線を取得した場合には、当該直径の全範囲にわたる当該曲線の総積分値に対する、当該直径の上記各範囲内の積分値の割合を算出することができる。なお、ナノバブル溶液に含まれるナノバブルの直径の下限値は特に限られないが、例えば、1nmとすることができる。
また、本方法において、疎水性の多孔性フィルターを用いた場合には、親水性の多孔性フィルターを用いた場合に比べて、ナノバブル溶液に含まれるナノバブルの個数を増加させることができる。すなわち、疎水性の多孔性フィルターを用いてろ過処理を行うことにより、直径が上記各範囲である微小なナノバブルを高濃度に含むナノバブル溶液を効率よく製造することができる。
また、乾燥状態の多孔性フィルターに前溶液を通すろ過処理を行った場合には、例えば、湿潤状態の多孔性フィルターを用いた場合に比べて、ナノバブル溶液に含まれるナノバブルの個数を増加させることができる。すなわち、乾燥状態の多孔性フィルターを用いてろ過処理を行うことにより、直径が上記各範囲である微小なナノバブルを高濃度に含むナノバブル溶液を効率よく製造することができる。
したがって、本方法においては、特に、乾燥状態である疎水性の多孔性フィルターを用いることにより、微小なナノバブルを豊富に含むナノバブル溶液を簡便且つ確実に製造することができる。
また、図1に示すように、本方法は、さらに、上述のようなろ過処理をさらに繰り返すか否かを判断する工程S103を含むことができる。ここで、ろ過処理を繰り返す必要がない場合(図1の工程S103においてNoの場合)には、工程S102で保持したろ液をナノバブル溶液としてそのまま回収し(工程S107)、本方法を終了する。なお、例えば、本方法において、ろ過処理を一回のみ行うことが予め決定されている場合には、工程S101におけるろ過処理によって得られたろ液を、そのままナノバブル溶液として回収することもできる。
一方、ろ過処理を繰り返す必要がある場合(図1の工程S103においてYesの場合)、本方法においては、上述のようなろ過処理をさらに少なくとも一回行う。すなわち、この場合、本方法においては、ろ過処理を複数回繰り返すこととなる。具体的に、本方法は、図1に示すように、多孔性フィルターを準備する工程S104と、当該多孔性フィルターに、既に得られているろ液(すなわち、ナノバブル溶液)を通す追加的なろ過処理(以下、「追加ろ過処理」という)を行う工程S105と、当該追加ろ過処理によって得られたろ液を保持する工程S106と、をさらに含む。
工程S104においては、追加ろ過処理に用いる多孔性フィルターを準備する。すなわち、工程S104においては、例えば、工程S101のろ過処理で使用した多孔性フィルターを追加ろ過用として準備することができ、又は当該使用済みの多孔性フィルターとは別体の新たな多孔性フィルターを準備することもできる。なお、新たな多孔性フィルターとしては、工程S101で使用した多孔性フィルターと同一の特性(材質、孔径等)を有するものを用いることができ、又は異なる特性を有するものを用いることもできる。
また、この工程S104においては、乾燥処理が施された多孔性フィルターを好ましく準備することができる。すなわち、例えば、工程S101で使用した多孔性フィルターを再利用する場合には、当該多孔性フィルターに乾燥処理を施すものを準備することができる。この場合、例えば、既にろ過処理に使用された多孔性フィルターに対して、当該多孔性フィルターの内部に保持された液体を除去し、又は当該液体の量を低減することにより、当該多孔性フィルターの内部に保持される気体の量を増加させる乾燥処理を施す。具体的な乾燥処理としては、例えば、多孔性フィルターを湿度の低い気体に接触させる方法、多孔性フィルターを加熱する方法、多孔性フィルターに湿度の低い気体を通す方法を用いることができる。
また、例えば、未使用の新たな多孔性フィルターを用いる場合には、乾燥状態で包装されて販売されている当該多孔性フィルターを濡らすことなく、乾燥した状態で準備することができる。その他、この工程S104においては、工程S100について上述したとおり、疎水性の多孔性フィルター、乾燥状態の多孔性フィルター、乾燥状態の疎水性フィルター等を好ましく準備することができる。
また、任意の気体を内部に保持した多孔性フィルターを準備することもできる。すなわち、上述したような様々な気体のうち少なくとも一種類を、例えば、上述の乾燥処理に伴って多孔性フィルターの内部に保持させることができる。この工程S104において多孔性フィルターに保持させる気体は、例えば、工程S100において準備した多孔性フィルターに保持されていた気体と同種の気体とすることができ、又は異種の気体とすることもできる。
工程S105においては、工程S104で準備した多孔性フィルターに、既に得られている、ナノバブルを含むろ液を通す追加ろ過処理を行う。すなわち、この工程S105においては、工程S101と同様の操作により、例えば、多孔性フィルターに、工程S102において保持されているろ液を通す。
工程S106においては、工程S102と同様に、工程S105の追加ろ過処理によって得られたろ液を保持する。この追加ろ過処理によって得られるろ液もまた、ナノバブルを含むナノバブル溶液である。しかも、この追加ろ過処理によって得られるナノバブル溶液は、当該追加ろ過処理前のナノバブル溶液に比べて、より多くの量のナノバブルを含んでいる。
すなわち、本方法においては、多孔性フィルターを用いたろ過処理を複数回繰り返すことによって、当該ろ過処理のたびに、得られるナノバブル溶液に含まれるナノバブルの数を順次増加させることができる。したがって、例えば、複数回のろ過処理によって、微小なナノバブルの含有量が高められたナノバブル水を基材表面に接触させることにより、当該基材表面を迅速且つ確実に高密度のナノバブルで被覆することができる。この結果、タンパク質の吸着を確実に阻害できる基材表面を作製することができる。また、このような複数回のろ過処理を行うことによって、フッ素含有樹脂製フィルター等の疎水性フィルターはもちろん、その他の材料で成形された多孔性フィルターを用いても、微小なナノバブルを含むナノバブル溶液を簡便に製造することができる。
さらに、追加ろ過処理により得られるナノバブル溶液もまた、工程S102で保持されるナノバブル溶液と同様に、直径が50nm未満の範囲のナノバブルを含むことができ、好ましくは直径が40nm以下の範囲のナノバブルを含むことができ、より好ましくは直径が30nm以下の範囲のナノバブルを含むことができ、特に好ましくは直径が10nm以下の範囲のナノバブルを含むことができる。
そして、上記の各範囲の直径を有するナノバブルは、追加ろ過処理により得られるナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして、例えば、10%以上とすることができ、好ましくは30%以上とすることができ、より好ましくは50%以上とすることができる。
すなわち、本方法により製造されるナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして50%以上のナノバブルは、直径が50nm未満の範囲とすることができ、好ましくは直径が40nm以下の範囲とすることができ、より好ましくは直径が30nm以下の範囲とすることができ、特に好ましくは直径が10nm以下の範囲とすることができる。
また、追加ろ過処理において、疎水性の多孔性フィルターを用いた場合には、親水性の多孔性フィルターを用いた場合に比べて、ナノバブル溶液に含まれるナノバブルの個数を増加させることができる。すなわち、疎水性の多孔性フィルターを用いて追加ろ過処理を行うことにより、直径が上記各範囲である微小なナノバブルを高濃度に含むナノバブル溶液を効率よく製造することができる。
また、乾燥状態の多孔性フィルターを用いて追加ろ過処理を行った場合には、例えば、湿潤状態の多孔性フィルターを用いた場合に比べて、ナノバブル溶液に含まれるナノバブルの個数を増加させることができる。すなわち、乾燥状態の多孔性フィルターを用いて追加ろ過処理を行うことにより、直径が上記各範囲である微小なナノバブルを高濃度に含むナノバブル溶液を効率よく製造することができる。
したがって、本方法においては、特に、乾燥状態である疎水性の多孔性フィルターを用いることにより、微小なナノバブルを豊富に含むナノバブル溶液を簡便且つ確実に製造することができる。
そして、図1に示すように、本方法においては、追加ろ過処理の後、さらにろ過処理を繰り返すか否かを判断する(工程S103)。ここで、ろ過処理をさらに繰り返す必要がない場合(図1の工程S103においてNoの場合)には、工程S106で保持したろ液をナノバブル溶液として回収し(工程S107)、本方法を終了する。
一方、ろ過処理をさらに繰り返す必要がある場合(図1の工程S103においてYesの場合)、本方法においては、上述のような追加ろ過処理をさらに繰り返す。すなわち、この場合、本方法においては、工程S104、工程S105、及び工程S106を再度実行する。具体的に、例えば、工程S105においては、工程S106で保持されている、追加ろ過処理により得られたろ液を、工程S104で準備した多孔性フィルターに通す追加ろ過処理を行う。
そして、最終的に、追加ろ過処理をそれ以上繰り返す必要がないと判断すれば(図1の工程S103においてNoの場合)、工程S106で保持したろ液をナノバブル溶液として回収し(工程S107)、本方法を終了する。
このように、本方法によれば、多孔性フィルターを用いたろ過処理を一回又は複数回行うことによって、微小なナノバブルを含むナノバブル溶液を簡便且つ確実に、効率よく製造することができる。
また、このナノバブル溶液は、例えば、基材表面の処理に用いることができる。すなわち、例えば、ナノバブル溶液を、基材表面に接触させることにより、当該ナノバブル溶液に含まれるナノバブルを当該基材表面に吸着させることができる。このナノバブルが吸着した基材表面においては、タンパク質等の分子の吸着が顕著に抑制される。
しかも、このナノバブル溶液は、上述のとおり、直径が50nm未満のナノバブルを多く含むため、当該微小なナノバブルによって、基材表面を緻密に被覆することができる。特に、直径が10nm以下のナノバブルは、そのサイズがアルブミン等のタンパク質分子と同程度であるため、当該ナノバブルが固定化された基材表面に対するタンパク質の吸着をほぼ完全に阻害することができる。
また、ナノバブルが吸着した基材表面に、界面活性剤を含む溶液を接触させることにより、当該基材表面から当該ナノバブルを除去することもできる。すなわち、基材表面にナノバブル溶液を接触させる工程と、ナノバブルが固定化されている基材表面に界面活性剤を含む溶液を接触させる工程と、を繰り返すことにより、当該基材表面の上述したような吸着阻害能力を制御することができる。
このように、本方法により溶液中に生成されるナノバブルは、高機能且つクリーンな表面処理剤として利用することができる。すなわち、例えば、従来、基材表面に対する分子の非特異的吸着を防ぐために、当該基材表面に予めアルブミン等のタンパク質を吸着させておく方法(タンパク質によるブロッキング)が用いられていたが、当該基材表面から脱着したアルブミンが汚染の原因になることもあった。これに対し、本方法により生成される微小なナノバブルは、そのサイズが分子レベルである上に、内部に所定の気体を包含しているクリーンな構造を有しているため、従来のような汚染の問題を生じることなく利用することができる。
また、上述のように、本方法により生成されるナノバブルが吸着した基材表面に界面活性剤を含む溶液を接触させると、当該基材表面から当該ナノバブルを消失させることができる。ここで、ナノバブルが高圧の気体を保持しているため、界面活性剤溶液の処理に伴い当該ナノバブルが破壊されることによって発生する気体圧やラジカルにより、強力な殺菌効果を得ることが期待される。すなわち、本方法により生成されるナノバブルと界面活性剤との併用によって、基材表面に対して、クリーン且つ確実な殺菌処理を施すことができると考えられる。
次に、本方法を実現するための一例として、ナノバブル溶液を製造する装置(以下、「本装置」という)について説明する。図2は、本装置1の一例について、その主な構成を模式的に示す説明図である。図2に示すように、本装置1は、多孔性フィルター10を備えている。この多孔性フィルター10としては、上述したように本方法で用いることのできるものを用いることができる。
また、本装置1は、前溶液を保持する前溶液保持部20と、ろ液を保持するろ液保持部21と、気体を保持する気体保持部22と、を備えている。前溶液保持部20及びろ液保持部21は、例えば、所定の体積の溶液を収容可能な容器(リザーバ)によって実現することができる。気体保持部22は、例えば、圧縮された気体が充填されたボンベによって実現することができる。
また、本装置1は、溶液及び気体が流通可能な流入路30、流出路31、循環路32、前溶液供給路33、気体供給路34を備えている。流入路30は、その下流端が多孔性フィルター10の上流側部分に接続され、当該多孔性フィルター10を通過させるべき溶液又は気体を当該多孔性フィルタ10ーに導く。流出路31は、多孔性フィルター10の下流側部分とろ液保持部21とを接続するよう配置され、当該多孔性フィルター10から流出したろ液を当該ろ液保持部21に導く。循環路32は、ろ液保持部21と流入路30の上流端とを接続するよう配置され、当該ろ液保持部21に保持されたろ液を当該流入路30に導く。前溶液供給路33は、前溶液保持部20と流入路30の上流端を接続するよう配置され、当該前溶液保持部33に保持された前溶液を当該流入路30に導く。気体供給路34は、気体保持部22と流入路30の上流端とを接続するよう配置され、当該気体保持部22に保持された気体を当該流入路30に導く。
また、本装置1は、流入路30内の前溶液又はろ液を多孔性フィルター10に通すための圧力を発生させる第一送液部40と、循環路32内のろ液を多孔性フィルター10に通すための圧力を発生させる第二送液部41と、を備えている。第一送液部40は流入路30の中途部分に設けられ、第二送液部41は循環路32の中途部分に設けられている。これら第一送液部40及び第二送液部41は、例えば、ポンプ装置によって実現することができる。また、本装置1の循環路32、前溶液供給路33、気体供給路34の各々の中途部分には、これらの流路における溶液又は気体の流通を制御するバルブ50,51,52がそれぞれ設けられている。
また、本装置1は、第一送液部40及び第二送液部41の送液動作や、バルブ50,51,52の開閉動作を制御する不図示の制御部を有している。この制御部は、例えば、電子データを磁気的又は電気的に保持するメモリ装置や、演算処理等を行う中央処理装置(CPU)を有して構成され、第一送液部40、第二送液部41、バルブ50,51,52の各々と不図示の配線によって電気的に接続されている。
このような本装置1を用いて、本方法を実行する場合には、まず、制御部からの指示により、前溶液供給路33のバルブ50を開けるとともに、他のバルブ51,52を閉じて、さらに第一送液部40を駆動させ、前溶液保持部20に保持されている前溶液を流入路30に流入させる。
この流入路30に流入した前溶液は、さらに第一送液部40により圧送されて、多孔性フィルター10を通過する。本装置1においては、このようにしてろ過処理を行うことができる。そして、多孔性フィルター10から流出したろ液は、流出路31を流通して、ろ液保持部21に流入する。こうして、ろ液保持部21には、ナノバブルを含むろ液であるナノバブル溶液を保持することができ、必要に応じて当該ろ液保持部21から当該ナノバブル溶液を回収することができる。
このように、本装置1を用いることにより、上述したような微小なナノバブルを高濃度に含むナノバブル溶液を簡単且つ確実に製造することができる。
また、本装置1において、追加ろ過処理を実行する場合には、制御部からの指示により、循環路32のバルブ51を開けるとともに、他のバルブ50,52を閉じて、さらに第二送液部41を駆動させ、ろ液保持部21に保持されているろ液を流入路30に流入させる。
この結果、多孔性フィルタ−10にろ液を通過させる追加ろ過処理を行うことができ、さらに、追加ろ過処理により得られた、より高濃度のナノバブルを含むろ液を、ろ液保持部21に保持することができる。
また、本装置1においては、この追加ろ過処理を行うに先立って、多孔性フィルター10の乾燥処理を実行することもできる。すなわち、この場合、本装置1においては、制御部からの指示により、気体供給路34のバルブ52を開けるとともに、他のバルブ50,51を閉じて、気体保持部22に充てんされている気体を流入路30に流入させる。
この結果、多孔性フィルター10に気体を通すことによって、当該多孔性フィルター10に保持されていた液体の量を低減させるとともに、当該気体を当該多孔性フィルター10に新たに保持させることができる。
このように、本装置1においては、各ろ過処理の前に多孔性フィルター10の乾燥処理を実行し、乾燥状態の多孔性フィルター10に溶液を通すことにより、微小なナノバブルを高濃度に含むナノバブル溶液を簡単且つ確実に製造することができる。
なお、本装置1においては、制御部が備えるメモリ装置に予め保持されている、ろ過処理を実行すべき回数を指定するデータに基づいて、第一送液部40、第二送液部41、バルブ50,51,52を制御して、所定回数のろ過処理を実行することができる。
また、本装置1は、例えば、多孔性フィルター10を複数備えることもできる。この場合、例えば、本装置1においては、流路の中途部分に、複数の多孔性フィルター10が直列的に配置されて、前溶液やろ液は、当該複数の多孔性フィルター10を順次通過することとなる。
次に、本方法及び本方法により得られたナノバブル溶液の具体的な実施例について説明する。
[実施例1]
前溶液としては、超純水製造装置(日本ミリポア株式会社製)により調製した超純水(抵抗18.2kΩ)を準備した。多孔性フィルターとしては、包装された乾燥状態で販売されているPVDF製のフィルター(ポアサイズ0.22μm、フィルター直径33mm、日本ミリポア株式会社製)を準備した。
前溶液としては、超純水製造装置(日本ミリポア株式会社製)により調製した超純水(抵抗18.2kΩ)を準備した。多孔性フィルターとしては、包装された乾燥状態で販売されているPVDF製のフィルター(ポアサイズ0.22μm、フィルター直径33mm、日本ミリポア株式会社製)を準備した。
1.5mLの超純水を、開封直後の乾燥したPVDFフィルターにより3回ろ過し、3回目のろ過で得られたろ液をナノバブル溶液(ナノバブル水)として回収した。すなわち、1.5mLの超純水を開封直後のPVDFフィルターでろ過し、得られたろ液を、開封直後の別のPVDFフィルターでろ過し、得られたろ液を、開封直後のさらに別のPVDFフィルターでろ過することにより、最終的なろ液をナノバブル水として得た。なお、各ろ過処理においては、2〜3秒の間に1.5mLの超純水をPVDFフィルターに通し、ろ液はポリプロピレン製の容器に流入させた。また、本実施例及び後述する他の実施例においても、ろ過処理は同様にシリンジを用いた手動操作により行った。
得られたナノバブル水のうち30μLを、動的光散乱(DLS)測定装置(Zetasizer Nano−ZS、Malvern Instruments Ltd.製)にセットし、積算回数自動制御のもと、25℃にて、当該ナノバブル水に含まれるナノバブルのサイズを測定した。
図3及び図4に、この測定の結果を示す。図3において、横軸はナノバブルの粒径(直径)(nm)を示し、縦軸は各粒径について測定された散乱強度(%)を示す。図4において、横軸はナノバブルの粒径(nm)を示し、縦軸はナノバブル総数に対する各粒径のナノバブルの数の割合(%)を示す。図3及び図4において、実線及び破線は、互いに異なる3つのPVDFフィルターを用いて得られた2つのナノバブル水についての測定結果をそれぞれ示している。
図3に示すナノバブルの粒径と散乱強度との相関関係を示す曲線に基づいて、当該粒径の全範囲についての当該曲線の積分値に対する、当該粒径の1〜30nmの範囲についての当該曲線の積分値の割合は、実線で示した曲線について65.3%、破線で示した曲線について81.6%とそれぞれ算出された。
すなわち、図3に示す散乱強度換算の結果に基づけば、本方法により製造されたナノバブル水に含まれるナノバブルのうち、個数にして少なくとも65%以上のナノバブルは、その直径が1〜30nmの範囲内であった。
また、図3に示す測定結果において、最も散乱強度の高いピークに対応する粒径は7.8nmであった。すなわち、このナノバブル水に含まれるナノバブルの大部分は、直径が8nm前後という極めて微小なものであった。
また、図4に示すナノバブルの粒径と個数との相関関係を示す曲線に基づいて、当該粒径の全範囲についての当該曲線の積分値に対する、当該粒径の1〜30nmの範囲についての当該曲線の積分値の割合は、実線で示した曲線及び破線で示した曲線のいずれについても99.9%と算出された。
このように、超純水をPVDFフィルターでろ過することにより、微小なナノバブルを高い割合で含むナノバブル水を製造することができた。
[実施例2]
上述の実施例1と同様に、超純水とPVDFフィルターとを準備した。そして、1mLの超純水を、開封直後の乾燥したPVDFフィルターにより1回ろ過し、当該ろ過で得られたろ液をナノバブル溶液として回収した。
上述の実施例1と同様に、超純水とPVDFフィルターとを準備した。そして、1mLの超純水を、開封直後の乾燥したPVDFフィルターにより1回ろ過し、当該ろ過で得られたろ液をナノバブル溶液として回収した。
一方、表面プラズモン共鳴(SPR)装置(ビアコア3000、ビアコア株式会社製)のセンサーチップに、数平均分子量30000、重量平均分子量/数平均分子量の比率が1.26であるイソタクチックポリメタクリル酸メチル(it−PMMA)をスピンコートし、厚さが10nmのit−PMMAの薄膜を形成した。このセンサーチップをSPR装置にセットした。
そして、このセンサーチップに、25℃にて、10mMのHEPES、150mMのNaClを含み、pHが7.4であるHBSバッファー(緩衝液)を流速20μL/minで流し、SPR測定を行った。
その後、HBSバッファーに代えて、センサーチップ上にナノバブル水を流して、it−PMMA薄膜表面に当該ナノバブル水を接触させ、SPR測定を行った。さらに、その後、ナノバブル水に代えて、HBSバッファーに1μMの濃度で牛血清アルブミン(BSA)を溶解して調製したアルブミン溶液を流し、it−PMMA薄膜表面に当該アルブミン溶液を接触させ、SPR測定を行った。
一方、比較の対照として、ナノバブル水を流す代わりに、PVDFフィルターによるろ過処理を施していない超純水そのもの(すなわち、前溶液)を用いて、同様のSPR測定を行った。
図5及び図6は、これらの測定果を示す。図5及び図6において、横軸は測定したタイミングを表す時間(秒)を示し、縦軸は各タイミングで測定されたレスポンス(RU)を示している。ここで、RUは、センサーチップ表面(ここではit−PMMA薄膜表面)に物質が吸着したときにSPR測定において観察されるResonance Unitの略であり、当該センサーチップ表面の単位面積(cm2)あたりに0.1ngのタンパク質が吸着した場合(吸着量が0.1ng/cm2の場合)に、1(RU)の測定結果が得られることが知られている。
図5にその結果を示す測定においては、時間0秒までHBSバッファーを流し、時間0秒の時点で当該HBSバッファーをナノバブル水又は超純水に切り替え、時間0〜120秒の間、当該ナノバブル水又は超純水を流し、時間120秒の時点で当該ナノバブル水又は超純水を再びHBSバッファーに切り替えて、その後はHBSバッファーを流した。実線は、ナノバブル水を用いた場合の結果を示し、破線は、超純水を用いた場合の結果を示している。
図5に破線で示すように、センサーチップのit−PMMA薄膜表面に超純水を接触させた場合には、当該薄膜表面に対する吸着現象は観察されなかった。これに対し、図5に実線で示すように、it−PMMA薄膜表面にナノバブル水を120秒間接触させた場合には、750RUの変化が得られ、当該薄膜表面に対する吸着現象が観察された。
すなわち、時間120秒以降におけるレスポンス値の差分として、ナノバブル水を薄膜表面に接触させることによる、当該薄膜表面に対するナノバブルの吸着が確認された。
また、図6にその結果を示す測定においては、時間0秒までHBSバッファーを流し、時間0秒の時点で当該HBSバッファーをアルブミン溶液に切り替え、時間0〜120秒の間、当該アルブミン溶液を流し、時間120秒の時点で当該アルブミン溶液を再びHBSバッファーに切り替えて、その後はHBSバッファーを流した。実線は、予めナノバブル水を接触させた薄膜表面を用いた場合の結果を示し、破線は、予め超純水を接触させた薄膜表面を用いた場合の結果を示している。
図6に破線で示すように、予め超純水を接触させた薄膜表面にアルブミン溶液を接触させると、当該薄膜表面に対する顕著なアルブミンの吸着現象が観察された。これに対し、図6に実線で示すように、予めナノバブル水を接触させた薄膜表面にアルブミン溶液を接触させた場合には、当該薄膜表面に対する吸着現象はほとんど観察されなかった。すなわち、図6に実線で示したように、薄膜表面を予めナノバブル水で処理することにより、当該薄膜表面に対するアルブミンの吸着を顕著に抑制できることが確認された。
このことは、薄膜表面に吸着しているナノバブルの隙間にアルブミンが吸着できる当該薄膜表面が露出されていないこと、及び当該ナノバブルに対してアルブミンが吸着しないことを示している。
このようなアルブミンの吸着阻害効果は、上述の実施例で示したように、本方法により得られるナノバブル水中のナノバブルは、直径が1〜30nmの範囲、さらには1〜10nmの範囲という極めて微小なナノバブルを高い比率で含むため、当該ナノバブル水に接触した薄膜表面には当該ナノバブルの緻密な被覆層が形成されていることによるものと考えられる。
このように、本方法により製造されたナノバブル水に含まれるナノバブルは、基材表面に対するタンパク質の吸着を阻害する吸着抑制剤として機能することが確認された。
[実施例3]
上述の実施例2と同様に、it−PMMA薄膜表面を作製した。この薄膜表面を、室温下にて、HBSバッファー中に1時間浸漬した後、当該薄膜表面の表面状態を、室温下にて、原子間力顕微鏡(AFM)(SPN−3800N、タッピングモード、セイコーインスツル株式会社製)により直接観察した。図7には、その測定結果を示す。図7に示すように、この薄膜表面は比較的平らであった。
上述の実施例2と同様に、it−PMMA薄膜表面を作製した。この薄膜表面を、室温下にて、HBSバッファー中に1時間浸漬した後、当該薄膜表面の表面状態を、室温下にて、原子間力顕微鏡(AFM)(SPN−3800N、タッピングモード、セイコーインスツル株式会社製)により直接観察した。図7には、その測定結果を示す。図7に示すように、この薄膜表面は比較的平らであった。
一方、薄膜表面を、室温下にて、上述の実施例2で調製したナノバブル水中に2分間浸漬し、その後当該薄膜表面をHBSバッファーに浸漬してAFMにて観察した。図8には、その測定結果を示す。図8に示すように、予めナノバブル水を接触させた薄膜表面はドット状に変化する凹凸形状であることが確認された。
さらに、この薄膜表面のうち、図8に示す矩形の範囲内のドット状表面の一部を、AFMのカンチレバーによって、より強い力でタップした。図9には、その測定結果を示す。図9に示すように、より強い力でタップした範囲においてドット形状が消滅し、当該範囲には図7に示したような平滑な薄膜表面が露出した。これは、HBSバッファー中のタッピングによって、薄膜表面の一部を覆っていたナノバブルが、当該薄膜表面から脱着し、又は破壊されたことを示している。このように、ナノバブル水で処理したit−PMMA薄膜表面はナノバブルで覆われていることが確認された。
[実施例4]
1.5mLの超純水を、開封直後の乾燥したPVDFフィルター(ポアサイズ0.22μm、フィルター直径33mm、日本ミリポア株式会社製)により、1回、2回、3回、4回ろ過し、4種類のナノバブル水を得た。すなわち、1回のろ過処理により得られたろ液、2回のろ過処理により得られたろ液、3回のろ過処理により得られたろ液、4回のろ過処理により得られたろ液、をそれぞれ第一のナノバブル水、第二のナノバブル水、第三のナノバブル水、第四のナノバブル水として、それぞれ回収した。各ろ過処理には、上述の実施例1と同様に、開封直後の乾燥した新品のPVDFフィルターを用いた。
1.5mLの超純水を、開封直後の乾燥したPVDFフィルター(ポアサイズ0.22μm、フィルター直径33mm、日本ミリポア株式会社製)により、1回、2回、3回、4回ろ過し、4種類のナノバブル水を得た。すなわち、1回のろ過処理により得られたろ液、2回のろ過処理により得られたろ液、3回のろ過処理により得られたろ液、4回のろ過処理により得られたろ液、をそれぞれ第一のナノバブル水、第二のナノバブル水、第三のナノバブル水、第四のナノバブル水として、それぞれ回収した。各ろ過処理には、上述の実施例1と同様に、開封直後の乾燥した新品のPVDFフィルターを用いた。
一方、上述の実施例2と同様に、it−PMMA薄膜表面を作製した。また、同様に、数平均分子量173000、重量平均分子量/数平均分子量の比率が1.06であるポリスチレン(PS)の薄膜表面を作製した。そして、これらit−PMMA薄膜表面及びPS薄膜表面を、3種類のナノバブル水の各々にそれぞれ接触させて、上述の実施例2と同様に、SPR装置を用いて、これら薄膜表面に対するナノバブルの吸着現象又は脱着現象を測定した。
図10及び図11には、it−PMMA薄膜表面及びPS薄膜表面のそれぞれについて、第一のナノバブル水を接触させた場合の結果(N1)、第二のナノバブル水を接触させ他場合の結果(N2)、第三のナノバブル水を接触させた場合の結果(N3)を示す。図10及び図11において、横軸は測定したタイミングを表す時間(秒)、縦軸は各タイミングで測定されたレスポンス(RU)を示している。
図10及び図11に示す測定においては、時間0秒まで超純水を流し、時間0秒の時点で当該超純水をナノバブル水に切り替え、時間0〜120秒の間、当該ナノバブル水を流し、時間120秒の時点で当該ナノバブル水を再び超純水に切り替えて、その後は超純水を流した。図10及び図11に示すように、it−PMMA薄膜表面及びPS薄膜表面のいずれに対しても、ろ過回数の増加に伴って、ナノバブルの固定化量が増加することが確認された。特に、複数回のろ過処理により製造されたナノバブル水を用いた場合には、例えば、800RUを超えるレスポンス値に対応する量のナノバブルを、薄膜表面に対して、迅速且つ確実に吸着させることができた。
また、図12には、ろ過処理の回数と、it−PMMA薄膜表面及びPS薄膜表面に対するナノバブルの固定化量と、の相関関係を示す。図12において、横軸は、ナノバブル溶液を製造するにあたって実施されたろ過処理の回数を示し、縦軸は、ナノバブル溶液を120秒間接触させた時点におけるit−PMMA薄膜表面及びPS薄膜表面について測定されたレスポンス(RU)を示している。また、図12において、白抜き丸印はit−PMMA薄膜表面についての測定結果を示し、黒塗り丸印はPS薄膜表面についての測定結果を示している。なお、図12に示す結果のうち、ろ過処理が0.1回及び0.5回の結果は、1回のろ過処理で得られたナノバブル溶液を超純水で10倍及び2倍(体積比)に希釈して調製されたナノバブル溶液を用いた結果をそれぞれ示す。
図12に示すように、it−PMMA薄膜表面及びPS薄膜表面のいずれについても、より多くの回数のろ過処理によって得られたナノバブル溶液に接触させることによって、より多くのナノバブルを固定化できることが確認された。
これらの結果は、ろ過処理の回数の増加により、得られるナノバブル溶液に含まれるナノバブルの濃度が増加すること、ろ過処理の回数により、基材表面に対するナノバブルの固定化量を制御できること、様々な材料表面にナノバブルを固定化できることを示している。
[実施例5]
上述の実施例2で調製したナノバブル溶液を、it−PMMA薄膜表面に接触させる時間を変化させることによって、当該it−PMMA薄膜表面に、当該接触時間に応じた量のナノバブルを固定化した。そして、互いに異なる量のナノバブルが固定化されたit−PMMA薄膜表面に、上述の実施例2で調製したアルブミン溶液を接触させて、当該it−PMMA薄膜表面に対するアルブミンの吸着量を測定した。ナノバブルの固定化量及びアルブミンの固定化量は、上述の実施例2と同様に、SPR装置により測定した。
上述の実施例2で調製したナノバブル溶液を、it−PMMA薄膜表面に接触させる時間を変化させることによって、当該it−PMMA薄膜表面に、当該接触時間に応じた量のナノバブルを固定化した。そして、互いに異なる量のナノバブルが固定化されたit−PMMA薄膜表面に、上述の実施例2で調製したアルブミン溶液を接触させて、当該it−PMMA薄膜表面に対するアルブミンの吸着量を測定した。ナノバブルの固定化量及びアルブミンの固定化量は、上述の実施例2と同様に、SPR装置により測定した。
図13は、その測定結果を示す。図13において、横軸は、it−PMMA薄膜表面に固定化されたナノバブルの量を示すレスポンス(RU)を示している。また、左の縦軸は、各量のナノバブルが固定されたit−PMMA薄膜表面に吸着したアルブミンの量を示すレスポンス(RU)を示し、右の縦軸は、当該レスポンス値に基づいて換算したアルブミンの吸着量(ng/cm2)を示している。
図13に示すように、it−PMMA薄膜表面に予め固定化するナノバブルの量の増加に伴い、当該薄膜表面に対するアルブミンの吸着量は減少した。そして、795RUに対応する量のナノバブルが固定化されたit−PMMA薄膜表面に対するアルブミンの吸着量は、0RUに対応する量のナノバブルが固定化されたit−PMMA薄膜表面(すなわち、ナノバブルが全く固定化されていないit−PMMA薄膜表面)に対するアルブミンの吸着量の1%未満であった。
すなわち、本方法により製造されたナノバブル水でit−PMMA薄膜表面を処理することにより、当該、it−PMMA薄膜表面に対するアルブミンの吸着を99%以上阻害できることが確認された。
これらの結果は、基材表面に対するナノバブルの固定化量により、当該基材表面に対するタンパク質の吸着量を制御できること、ナノバブルがタンパク質の吸着を抑制する吸着抑制剤として機能することを示している。
[実施例6]
上述の実施例2で得られたナノバブル水と、HBSバッファーと、1μMのアルブミンを含むアルブミン溶液と、を準備した。また、基材表面に吸着したナノバブルを当該基材表面から除去するナノバブル除去溶液として、超純水に0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶解した界面活性剤水溶液を調製した。そして、これら各溶液を、上述の実施例2と同様に、SPR装置を用いて、it−PMMA薄膜表面に順次接触させることにより、当該it−PMMA薄膜表面に対するナノバブル及びアルブミンの吸着を制御できることを確認した。
上述の実施例2で得られたナノバブル水と、HBSバッファーと、1μMのアルブミンを含むアルブミン溶液と、を準備した。また、基材表面に吸着したナノバブルを当該基材表面から除去するナノバブル除去溶液として、超純水に0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶解した界面活性剤水溶液を調製した。そして、これら各溶液を、上述の実施例2と同様に、SPR装置を用いて、it−PMMA薄膜表面に順次接触させることにより、当該it−PMMA薄膜表面に対するナノバブル及びアルブミンの吸着を制御できることを確認した。
図14には、その測定結果を示す。図14において、横軸は測定したタイミングを表す時間(秒)を示し、縦軸は各タイミングで測定されたレスポンス(RU)を示している。図14にその結果を示す測定においては、時間0秒までHBSバッファーを流し(期間T0)、時間0〜120秒の間(期間T1)はナノバブル水を流し、時間120〜???秒の間(期間T2)はHBSバッファーを流し、時間411〜531秒の間(期間T3)は1μMのアルブミン溶液を流し、時間531〜777秒の間(期間T4)はHBSバッファーを流し、時間777〜897秒の間(期間T5)はSDS溶液を流し、時間897〜1141秒の間(期間T6)はHBSバッファーを流し、1141〜1261秒の間(期間T7)は1μMのアルブミン溶液を流し、時間1261〜1543秒の間(期間T8)はHBSバッファーを流し、時間1543〜1663秒の間(期間T9)はSDS溶液を流し、時間1663秒以降(期間T10)はHBSバッファーを流した。
図14に示すように、期間T3においては、薄膜表面へのナノバブルの吸着が確認された。また、期間T3のレスポンス(RU)に対する期間T5のレスポンス(RU)の増加分が、薄膜表面に対するアルブミンの吸着量を示すが、図14に示す結果から、期間T2において予めナノバブル溶液に接触した薄膜表面にはアルブミンの吸着量は極めて僅かであることが確認された。
また、期間T6において、薄膜表面にSDS溶液を接触させることによって、期間T7におけるレスポンス(RU)は期間T0の初期値に回復したことから、当該SDS溶液による処理によって、当該薄膜表面に固定化されていたナノバブルを除去できることが確認された。このことから、SDSに限られず、界面活性剤を用いることにより、いったん薄膜表面に固定化されたナノバブルを当該薄膜表面から除去できると考えられた。
また、期間T7から期間T9へのレスポンス(RU)の変化により、ナノバブルが除去された薄膜表面に対しては、顕著な量のアルブミンが吸着することが確認された。さらに、期間T10におけるレスポンス(RU)は期間T0の初期値に回復したことから、期間T9におけるSDS溶液による処理によって、薄膜表面に吸着されていたアルブミンを除去できることが確認された。
このように、ナノバブル水及びSDS溶液を用いることにより、薄膜表面に対するナノバブルの吸着及び脱着を制御でき、その結果、当該薄膜表面に対するアルブミンの吸着及び脱着をも制御できることが確認された。
また、図14に示すような一連の連続的なナノバブル及びアルブミンの吸着、脱着の制御サイクルは、さらに複数回繰り返し行うことができた。図15には、その結果を示す。図15において、横軸は図13に示すサイクルを繰り返した回数を示している。また、左の縦軸は、各回のサイクルにおいてit−PMMA薄膜表面に吸着したアルブミンの量を示すレスポンス(RU)を示し、右の縦軸は、当該レスポンス値に基づいて換算したアルブミンの吸着量(ng/cm2)を示している。図15にプロットされる丸印は、サイクル回数が1回に対応する位置から順に、ナノバブルが固定化された薄膜表面にアルブミン溶液を接触させた場合のレスポンス(RU)と、SDS溶液で処理された薄膜表面にアルブミン溶液を接触させた場合のレスポンス(RU)と、を示している。
図15に示すように、薄膜表面にナノバブル水とSDS溶液とを順に接触させることにより、当該薄膜表面のタンパク質吸着特性を繰り返し制御できることが確認された。
[実施例7]
上述の実施例2と同様に、材質又は孔径(ポアサイズ)の異なる多孔性フィルターを用いてナノバブル水を作製した。すなわち、図16に示すように、多孔性フィルターとして、ポアサイズの異なる2種類のPVDF製の多孔性フィルター、PES製の多孔性フィルター、及びセルロース系樹脂(セルロースアセテートとニトロセルロースとの混合樹脂)製の多孔性フィルター(いずれも日本ミリポア株式会社製)、をそれぞれ準備した。
上述の実施例2と同様に、材質又は孔径(ポアサイズ)の異なる多孔性フィルターを用いてナノバブル水を作製した。すなわち、図16に示すように、多孔性フィルターとして、ポアサイズの異なる2種類のPVDF製の多孔性フィルター、PES製の多孔性フィルター、及びセルロース系樹脂(セルロースアセテートとニトロセルロースとの混合樹脂)製の多孔性フィルター(いずれも日本ミリポア株式会社製)、をそれぞれ準備した。
そして、超純水を、開封直後の乾燥した各多孔性フィルターで1回ろ過することにより、4種類のナノバブル水を得た。さらに、上述の実施例2と同様に、it−PMMA薄膜表面に各ナノバブル水を接触させた場合の当該薄膜表面に対するナノバブルの固定化量、及びナノバブルが固定化された当該薄膜表面にアルブミン溶液を接触させた場合の当該薄膜表面に対するアルブミンの吸着量をSPR装置を用いて測定した。
図16には、その測定結果を、各多孔性フィルターにより得られたナノバブル水を用いた結果を、当該各多孔性フィルターに対応させて示している。図16に示すように、まず、ポアサイズの異なる2種類のPVDFフィルターにより得られたナノバブル水の結果から、ポアサイズは、薄膜表面へのナノバブルの固定化量およびアルブミンの吸着量にほとんど影響しなかった。一方、多孔性フィルターを構成する材料の親水性の増加に伴い、薄膜表面に対するナノバブルの固定化量は減少し、アルブミンの吸着量は増加した。なお、ナノバブル水で処理していないit−PMMA薄膜表面にアルブミン溶液を接触させた場合のアルブミン吸着量は1260RUであった。
これらの結果は、より疎水性の高い多孔性フィルターを用いることにより、ナノバブル水を効率よく製造できることを示している。なお、これらの結果は、本方法において使用可能な多孔性フィルターの種類を限定するものではない。すなわち、例えば、上述のような汎用されているSPR測定等によって、目的に応じて好ましいナノバブル溶液を効率よく製造できる多孔性フィルターを容易に、適宜選択することができる。
[実施例8]
上述の実施例1と同様に、1.5mLの超純水を、PVDFフィルターによって3回ろ過処理して製造されたナノバブル水を用いた。製造直後のナノバブル水又は製造後7日間、25℃にて保管したナノバブル水を、上述の実施例2と同様に、it−PMMA薄膜表面に接触させて、当該薄膜表面に対するナノバブルの吸着・脱着現象を測定した。
上述の実施例1と同様に、1.5mLの超純水を、PVDFフィルターによって3回ろ過処理して製造されたナノバブル水を用いた。製造直後のナノバブル水又は製造後7日間、25℃にて保管したナノバブル水を、上述の実施例2と同様に、it−PMMA薄膜表面に接触させて、当該薄膜表面に対するナノバブルの吸着・脱着現象を測定した。
図17には、その測定結果を示す。図17において、横軸は測定したタイミングを表す時間(秒)、縦軸は各タイミングで測定されたレスポンス(RU)を示し、破線は製造直後のナノバブル水についての結果を示し、実線は製造後7日目のナノバブル水についての結果を示す。図17に示す測定においては、時間0秒まで超純水を流し、時間0〜120秒の間、ナノバブル水を流し、時間120秒以降は再び超純水を流した。
図17に示すように、製造7日後のナノバブル水を用いた場合においても、製造直後のナノバブル水を用いた場合と同程度の、薄膜表面に対するナノバブルの吸着が確認された。この結果は、本方法により製造されたナノバブル水に含まれるナノバブルが長期間安定に維持できること、当該ナノバブル水中において当該ナノバブルの濃度を長期間維持できること、上述したような基材表面に対する吸着阻害能の付与等の微小ナノバブルに特有の効果を長期間維持できることを示している。
1 ナノバブル溶液製造装置、10 多孔性フィルター、20 前溶液保持部、21 ろ液保持部、22 気体保持部、30 流入路、31 流出路、32 循環路、33 前溶液供給路、34 気体供給路、40 第一送液部、41 第二送液部、50,51,52 バルブ。
Claims (13)
- 溶液を多孔性フィルターに通すろ過処理を少なくとも一回行って、ナノバブルを含むろ液を得る
ことを特徴とするナノバブル溶液の製造方法。 - 前記ろ過処理を複数回行って、複数回の前記ろ過処理を施された前記ろ液を得る
ことを特徴とする請求項1に記載されたナノバブル溶液の製造方法。 - 前記ろ過処理を少なくとも一回行って得られたろ液を保持する第一工程と、
前記第一工程で使用された前記多孔性フィルターの内部に含まれる気体の量を増加させる乾燥処理を行う第二工程と、
前記第二工程で乾燥処理が施された前記多孔性フィルターに、前記第一工程で保持された前記ろ液を通す追加ろ過処理を行う少なくとも一回行う第三工程と、
を含む
ことを特徴とする請求項2に記載されたナノバブル溶液の製造方法。 - 前記多孔性フィルターは、疎水性フィルターである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載されたナノバブル溶液の製造方法。 - 前記疎水性フィルターは、フッ素含有樹脂製フィルターである
ことを特徴とする請求項4に記載されたナノバブル溶液の製造方法。 - 前記ろ過処理において、乾燥状態の前記多孔性フィルターに前記溶液を通す
ことを特徴とする請求項4又は5に記載されたナノバブル溶液の製造方法。 - 請求項1乃至6のいずれかに記載された製造方法により製造された、ナノバブルを含む溶液である
ことを特徴とするナノバブル溶液。 - 直径が50nm未満のナノバブルを含む溶液である
ことを特徴とするナノバブル溶液。 - 前記ナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして10%以上が、前記直径が50nm未満のナノバブルである
ことを特徴とする請求項8に記載されたナノバブル溶液。 - 直径が10nm以下のナノバブルを含む
ことを特徴とする請求項8又は9に記載されたナノバブル溶液。 - 前記ナノバブル溶液に含まれるナノバブルのうち、個数にして50%以上が、前記直径が10nm以下のナノバブルである
ことを特徴とする請求項10に記載されたナノバブル溶液。 - 請求項7乃至11のいずれかに記載されたナノバブル溶液を、基材表面に接触させて、前記ナノバブル溶液に含まれるナノバブルを前記基材表面に吸着させる
ことを特徴とするナノバブル溶液の利用方法。 - 前記ナノバブルが吸着した前記基材表面に、界面活性剤を含む溶液を接触させて、前記基材表面から前記ナノバブルを除去する
ことを特徴とする請求項12に記載されたナノバブル溶液の利用方法。
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