JP2009066533A - 生物捕捉除去装置及び生物捕捉除去装置の保守方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】船舶にバラスト水として取水される海水及び/またはバラストタンクから排水される海水に含まれる生物を捕捉して除去する生物捕捉除去装置1であって、容器本体3内に複数のろ過エレメント13を有し、前記海水をろ過して水生生物を捕捉するろ過装置と、ろ過作用を行ったろ過装置の内部に熱を加えて高温状態にするための高温清水を供給する高温清水管27を備えた。
【選択図】 図1
Description
ところで、環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶によってバラスト水の注排水が行われると、荷積み港と荷下し港におけるバラスト水に含まれる微生物の差異により沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
そこで、船舶のバラスト水管理に関する国際会議において2004年2月に船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約が採択され、バラスト水の処理が義務付けられることとなった。
また、バラスト水の積込み時または排水時に、上記海水中の生物処理を行うということは、船舶への荷下し時または荷積み時にこの処理を行なうことであり、係船時間を短縮するために、短時間で海水の給水または排水を行なう必要がある。このため、ろ過装置により生物を捕捉除去する際には短時間で大量のろ過処理が可能なろ過装置が望まれる。
このようなろ過装置として、海水の供給・排出系統に配置され、ろ過ドラムとろ過ドラムのろ過面に高圧水を噴射して逆洗浄する機構を設け、連続してろ過を行うことにより、大量処理が可能なろ過装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、ろ過操作を終了した後、次に海水を取水して同様の操作を行うまでの停止期間中におけるろ過装置の保守については、何ら言及されていない。
海水の取水を停止した時には、逆洗されていたとしてもろ過体には種々の生物が残留しているため、停止期間中にこの残留している生物が成長、繁殖して、ろ過体に容易に除去できない目詰まりを生じさせたり、ろ過体を損傷させたりして、ろ過体の寿命を著しく低下させるという問題がある。そのため、作業が煩雑なろ過体の交換頻度が多くなり、作業自体の煩雑さが増すことに加え、ろ過体を交換することに起因して運転費用が嵩むという問題がある。
なお、ろ過装置の内部を高温状態にするに際して、その温度と持続時間を、温度が60℃以上で持続時間が10分間以上にするのが好ましい。ろ過装置内をこのような状態にすれば、ろ過体に付着残留している生物を確実に死滅させることができ、残留生物の成長、繁殖による被害を確実に防止できる。
<実験内容>
目開き50μmのろ過エレメントを設けたろ過装置により海水原水をろ過し、プランクトンを捕捉した。ろ過エレメントを取り出し洗浄して、捕捉され付着しているプランクトンを計数したところ、5.6×107個/m3生息していた。
次に、ろ過を終えた後、ろ過装置内に高温の清水をその温度と維持時間を変えて充填し、その後ろ過エレメントを取り出し洗浄して、生息しているプランクトンを計数した。その結果を表1に示す。
なお、上記のように60℃以上の清水を、ろ過装置内部を加熱するための加熱手段とすることにより、清水をそのままろ過装置内に貯留しておくことができ、停止期間中ろ過装置内部で生物が成長、繁殖することを確実に防止できると共に海水によるろ過装置部材の腐食を防ぐことができる。
蒸気は、エンジン廃熱から熱回収してボイラなどによって生成することができるので、船内で容易に得ることができる。
清水を充填することにより、停止期間中ろ過装置内部で生物が成長、繁殖することを確実に防止できると共に海水によるろ過装置部材の腐食を防ぐことができる。
また、ろ過装置の内部に清水を充填することにより、海水によるろ過装置部材の腐食を防ぐことができる。これらのことにより、ろ過体の交換頻度が多くなったり、作業が煩雑になったりして運転費用が嵩むという問題が生ずることを防ぐことができる。
以下、図面を用いて、本発明に係る生物捕捉除去装置について、最良の形態の一例を具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係る生物捕捉除去装置1の一例を示したものである。本実施の形態に係る生物捕捉除去装置1は、円筒形状の容器本体3と、容器本体3の上部を覆う蓋体5と、容器本体3の底部7と、容器本体3の下部に設けられて海水を導入する海水導入口9と、容器本体3の側面上部に設けられてろ過水を排出するろ過水出口11と、容器本体3内に設置された複数のろ過エレメント13と、ろ過エレメント13を逆洗する逆洗機構15と、容器本体3に図示しない高温清水製造部で製造された高温清水を充填するための高温清水充填口17を備えている。
本実施の形態における生物捕捉除去装置1を構成する容器本体3、蓋体5、底部7、海水導入口9、ろ過水出口11、ろ過エレメント13、逆洗機構15が、本発明のろ過装置を構成し、図示しない高温清水を製造する装置、この装置によって生成される高温清水、高温清水を充填する高温清水充填口17が本発明の加熱手段を構成する。
容器本体3の下部にはドレンを排出するためのドレン管31が接続され、ドレン管31には第4開閉弁33が設けられている。
ろ過エレメント13の目開きを10〜200μmとするのは、動物性プランクトンや植物性プランクトンの捕捉率を一定のレベルに保ちつつ、逆洗頻度を少なくして、船舶の寄港地でのバラスト水処理時間を短縮するためである。
換言すれば、目開きが200μmより大きいと、動物プランクトンや植物プランクトンの捕捉率が著しく低くなり、他方、目開きが10μmより小さいと、ろ過エレメント13の目詰まりが短時間で生ずるため、逆洗頻度が多くなり船舶の寄港地でのバラスト水処理時間が長くなり、いずれも好ましくない。特に、目開き20〜50μm程度のろ過エレメント13を用いることが、捕捉率および逆洗頻度を最適に設定することができるので、好ましい。
逆洗アーム41における垂直部分の下部は容器本体3の底部7に設けられた流路51を介して逆洗液排出口53に連結されている。逆洗液排出口53には逆洗水を排出する逆洗水排出管55が接続され、逆洗水排出管55には第5開閉弁57が設けられている。
逆洗アーム41の水平部分における上面部には集合基板35の流通孔39に連通可能な連通孔59が設けられている。そして、逆洗アーム41の連通孔59が集合基板35の流通孔39に連通することで、ろ過エレメント13と逆洗アーム41が連通し、逆洗液は逆洗アーム41内を通過して逆洗水排出管55から排出される。
高温清水としては、容器本体3内を60℃以上の温度で10分間以上保持することができる温度の清水であることが好ましい。
高温清水は、船舶のエンジン排ガスとの熱交換により熱回収した廃熱を利用して得るようにすることが、運転費用の点で好ましい。
本実施の形態では、実施の形態1の生物捕捉除去装置を用いて海水をろ過して水生生物を捕捉除去した後、ろ過されたバラスト水に殺菌剤を供給して、海水中の生物を除去・死滅処理するバラスト水処理装置を説明する。
本実施の形態のバラスト水処理装置は、図2に示すように、海水を船内に取り込むための海水取水ライン61、該海水取水ライン61によって取水された海水中の粗大物を除去する粗ろ過装置62、海水を取り込むため、あるいは後述のバラストタンク68のバラスト水を後述の生物捕捉除去装置1に送水するためのポンプ63、粗ろ過装置62によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去する生物捕捉除去装置1、生物捕捉除去装置1でろ過された海水に細菌類やプランクトンを殺滅する殺菌剤を供給する殺菌装置65、殺菌装置65で殺菌剤を供給されたろ過水を供給して殺菌剤を海水中に拡散させる拡散装置66、該拡散装置66から排出された処理水を後述のバラストタンク68に送水する処理水送水ライン67、該処理水送水ライン67から送水される処理水を貯留するバラストタンク68、該バラストタンク68内の処理済みのバラスト水を海に排水するバラスト水排水ライン69を備えている。
(1)粗ろ過装置
粗ろ過装置62は、船舶の船側部に設けられたシーチェスト(海水吸入口)から取水され、ポンプ63によって海水取水ライン41を通して取水される海水中に含まれる大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物を除去するためのものである。粗ろ過装置としては10mm程度の孔を設けた筒型ストレーナ(こし器)、水流中の粗大物を比重差により分離するハイドロサイクロン、回転スクリーンにより粗大物を捕捉し掻揚げ回収する装置等を用いることができる。
生物捕捉除去装置1としては、実施の形態1において説明した生物捕捉除去装置を用いる。
生物捕捉除去装置1は粗ろ過装置62によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するものであり、ろ過壁における目開きが10〜200μmのろ過エレメントを備えたものを用いる。目開きを10〜200μmにした理由は、実施の形態1で述べたように、植物性プランクトンの捕捉率を一定のレベルに保ちつつ逆洗頻度を少なくして寄港地でのバラスト水処理時間を短縮するためである。特に、目開きが20〜50μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆洗頻度とを最適に設定できるので、好ましい。
ウェッジワイヤフィルタとは、断面が三角形のワイヤを枠体へコイル状に密に巻きつけてワイヤ同士の間隔を調整してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントである。このウェッジワイヤフィルタの具体例としては、東洋スクリーン工業株式会社製ウェッジワイヤフィルタがある。
殺菌装置65は生物捕捉除去装置1によってろ過され拡散装置66に供給される海水に殺菌剤を供給して細菌類とプランクトンを殺滅する装置である。供給する殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、二酸化塩素、過酸化水素、オゾン、過酢酸またはこれらの2種以上の混合物が使用できるが、これ以外の殺菌剤を使用することも可能である。
殺菌装置65における殺菌剤注入部として、海水の流路内に複数のノズルを配置し、殺菌剤供給管の殺菌剤注入口は、流路断面の半径方向と周方向のそれぞれに複数設けられることとなっているものが好ましい。
上記のように構成された殺菌装置65においては、殺菌剤は拡散装置66に対して上流側に供給されるので、拡散装置66に達するまでに管内で殺菌剤をある程度拡散させておき、拡散装置66において殺菌剤の拡散、混合を進めて、さらに殺菌剤の細菌類への浸透を促進して殺菌剤の殺滅効果を促進できる。
拡散装置66は生物捕捉除去装置1のろ過エレメントを通過した細菌類やプランクトンに対して殺菌装置65から供給された殺菌剤を海水中に拡散させるものである。
拡散装置66としてベンチュリ管を用いることが好ましい。ベンチュリ管を用いることによって生物捕捉除去装置1を通過した細菌類やプランクトンに対して該ベンチュリ管により発生せるキャビテーションにより損傷を与えるか殺滅すると共に殺菌装置65から供給された殺菌剤を海水中に拡散させる効果を有する。
以下にベンチュリ管について説明する。
拡散装置66として、ベンチュリ管以外に海水流路内に攪拌流れを生じさせるスタティックミキサや攪拌翼を回転させる撹拌器を用いてもよい。
ポンプ63を稼動することによって、海水取水ライン61から海水が船内に取水される。その際、まず粗ろ過装置62によって海水中に存在する大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物が除去される。
粗大物が除去された海水は生物捕捉除去装置1に供給され、生物捕捉除去装置1のろ過エレメントの目開きに応じた大きさの動物性プランクトン、植物性プランクトン等が除去される。
生物捕捉除去装置1でろ過された海水には殺菌装置65から殺菌剤が供給され、殺菌剤が供給された海水は拡散装置66であるベンチュリ管に供給される。
殺菌剤分解装置を備えることにより、バラストタンク68に貯留されていた海水を海に排水する際に残留する殺菌剤を分解してバラスト水を排出する海域への影響を防止することができる。
次亜塩素酸ナトリウム、塩素等の塩素殺菌剤に対して供給される殺菌剤分解剤としては、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)を用いることができ、過酸化水素に対して供給される殺菌剤分解剤としては、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)及びカタラーゼ等の酵素を使用することができる。
Claims (5)
- 船舶にバラスト水として取水される海水及び/またはバラストタンクから排水される海水に含まれる生物を捕捉して除去する生物捕捉除去装置であって、前記海水をろ過して水生生物を捕捉するろ過装置と、ろ過作用を行ったろ過装置の内部に熱を加えて高温状態にする加熱手段を備えたことを特徴とする生物捕捉除去装置。
- 加熱手段は、60℃以上の清水をろ過装置内に供給して充填することによってろ過装置内を高温状態にするものであることを特徴とする請求項1に記載の生物捕捉除去装置。
- 加熱手段は、蒸気をろ過装置内に供給することによってろ過装置内を高温状態にするものであることを特徴とする請求項1に記載の生物捕捉除去装置。
- ろ過装置内へ清水を供給して充填する清水充填手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の生物捕捉除去装置。
- 船舶にバラスト水として取水される海水及び/またはバラストタンクから排水される海水に含まれる生物をろ過することによって捕捉して除去する生物捕捉除去装置の保守方法であって、ろ過後にろ過装置の内部に熱を加えて高温状態にする加熱工程と、加熱工程と同時又は加熱工程後にろ過装置の内部に清水を充填する清水充填工程を備えたことを特徴とする生物捕捉除去装置の保守方法。
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