JP2009062503A - 発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法、及び該製造方法により得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子 - Google Patents

発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法、及び該製造方法により得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子 Download PDF

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Abstract

【課題】融着性改良剤を使用しなくとも発泡粒子相互の融着性に優れるポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得るための発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】加熱速度2℃/minでの示差走査熱量測定における吸熱量(Rendo)が10J/g以上であるポリ乳酸系樹脂を基材樹脂とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法であって、ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸させる含浸工程と、該物理発泡剤が含浸されたポリ乳酸系樹脂粒子を温度0〜40℃の条件下にて、含浸させた物理発泡剤の10〜60重量%を逸散させる逸散工程とを含むことを特徴とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等のポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体の製造に使用可能な型内成形時の二次発泡性、融着性に優れる発泡粒子を得ることができる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法、及び該製造方法により得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子に関する。
従来、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の汎用樹脂からなる発泡体は、軽量性、断熱性、緩衝性に優れていることから、多分野にわたって使用されてきた。一方、近年地球環境に対する意識が高まっており、石油資源の枯渇などの環境問題がクローズアップされる中、従来の石油資源を原料とする上記の汎用樹脂に変わって、植物由来のポリ乳酸系樹脂が注目されている。該ポリ乳酸系樹脂は、とうもろこし等の植物を出発原料として作られ、カーボンニュートラルの考え方から環境低負荷型の熱可塑性樹脂である。かかるポリ乳酸系樹脂は、今後汎用性が高まることが予想される。同様に、ポリ乳酸系樹脂は、環境に優しい植物由来の発泡用汎用樹脂として用いられることが期待されており、ポリ乳酸系樹脂を原料とする発泡体の研究が行なわれ、その一つとして形状的な制約を比較的受けずに所望の形状の発泡体を得ることができる発泡粒子成形体の開発が行なわれている。
ポリ乳酸系樹脂からなる発泡体に関する先行技術として、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルの結晶化度が0〜20%の範囲となるような温度範囲で揮発型発泡剤を吸収させる発泡性樹脂粒子の製造方法(特許文献1)、乳酸成分単位を50モル%以上含み、熱流束示差走査熱量測定における吸熱量と発熱量との差が0J/g以上30J/g未満であり、且つ該吸熱量が15J/g以上である発泡粒子(特許文献2)、融着改良剤を含有してなるポリ乳酸系樹脂発泡粒子(特許文献3)、及び発泡粒子相互の融着性に優れ、低温(低圧スチーム)で型内成形が可能なポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びその発泡粒子を用いて得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体(特許文献4)が知られている.
特開2000−136261号公報 特開2004−83890号公報 特開2006−282750号公報 特開2006−282753号公報
しかし、特許文献1等に記載のポリ乳酸系樹脂からなる発泡粒子成形体は発泡性樹脂粒子を金型内に充填し熱風により該樹脂粒子を発泡させると同時に粒子同士を相互に融着せしめる方法であるため、発泡粒子成形体内の部分における密度ばらつきが比較的大きく、発泡粒子同士の融着性、寸法安定性が不充分で、機械的物性も不充分であるという問題点を有していた。
上記特許文献1等に記載の発泡粒子成形体の問題点を解決し、発泡粒子同士の融着性、寸法安定性等を改良することを目的として、本発明者等は特許文献2において、結晶性のポリ乳酸系樹脂を用いて、該ポリ乳酸系樹脂が結晶化していない状態の発泡粒子を製造し、該発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を得ることを試みた。しかしながら、特許文献2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、型内成形時の発泡粒子相互の融着性、二次発泡性の点で改良が認められるものであったが、成形容易性を高めるために型内成形時に良好な成形体が得られる加熱温度範囲を広げることが望まれる。
更に本発明者らは、特許文献3、特許文献4において、ポリ乳酸系発泡樹脂粒子に特定の融着性改良剤を含有させることによって、低い成形温度での型内成形が可能となることを見出した。しかしながら、発泡粒子成形体の形状が複雑であると発泡粒子相互の融着が不十分になる、厚みが大きいと発泡粒子成形体の中心部の発泡粒子相互の融着が不十分になるなど、融着性の点で改善すべき余地を残すものであった。
本発明は、融着性改良剤を使用しなくとも発泡粒子相互の融着性に優れるポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹脂粒子に物理発泡剤を含浸後その表層部に存在する発泡剤の少なくとも一部を逸散させた発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の発泡を行う製造方法により得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子は型内成形性に優れる発泡粒子となることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明によれば、以下の(1)ないし(4)に示す発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法、及び該製造方法により得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子が提供される。
(1)JIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱して溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱して溶融させる際に得られるDSC曲線における吸熱量(Rendo)が10J/g以上であるポリ乳酸系樹脂を基材樹脂とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法であって、
(i)該ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸させる含浸工程と、
(ii)該物理発泡剤が含浸されたポリ乳酸系樹脂粒子を温度0〜40℃の条件下にて、含浸させた物理発泡剤の10〜60重量%を逸散させる逸散工程、
とを含むことを特徴とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法。
(2)前記逸散工程が相対湿度40%以上の条件にて行なわれることを特徴とする、前記(1)に記載の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法。
(3)前記物理発泡剤の主成分が炭酸ガスである、前記(1)又は(2)のいずれかに記載の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法。
(4)前記(2)又は(3)のいずれかの製造方法により得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子であって、含水率が0.5重量%以上であることを特徴とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子。
尚、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子において、樹脂粒子表面部近傍を表層部(S)(又は単に表層部)ということがあり、樹脂粒子中心部近傍を中央部(C)(又は単に中央部)ということがある。
本発明の製造方法により製造される発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子は、物理発泡剤含浸後の逸散において、表層部(S)の方が中央部(C)よりも相対的に多くの物理発泡剤が逸散されるので、該発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させると、発泡粒子の表層部(S)の結晶化度が中央部(C)よりも低いポリ乳酸系樹脂発泡粒子が得られ、該発泡粒子の型内成形によりポリ乳酸系樹脂発泡粒子相互の融着性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体を得ることができる。さらに、吸熱量(Rendo)が10J/g以上であるポリ乳酸系樹脂を基材樹脂とするため、結晶化し得る成分が多いので、本発明の製造方法により得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡して得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の中央部と表層部の結晶化度の差を広げることができ上記の型内成形時の十分な融着性改善効果が期待できる。また、本発明の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させて得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子をさらに型内成形して得られる発泡粒子成形体は高温養生などにより結晶化度が高められることによって耐熱性の高いものとなる。
更に、逸散工程が相対湿度40%以上の条件にて行なわれる本発明の方法によって製造された発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させて得られた、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は表層厚みが、より一層厚いものとなるためポリ乳酸系樹脂発泡粒子の耐熱性が高まるため、型内成形時の良好な発泡粒子成形体が得られる加熱温度範囲を広げることができる。
更に、物理発泡剤が炭酸ガスを主成分とするものであれば、オゾン層の破壊がなく且つ安価であり、また、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂への溶解性が高いので見かけ密度の小さい発泡粒子を得るのに適した発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子となり、かつ発泡剤が含浸されたポリ乳酸系樹脂粒子からの発泡剤の逸散速度が発泡剤逸散量の調整、特に表層部の発泡剤逸散量の調整において適度な速度を示すものであるため、本発明の製造方法において好適なものである。
以下、本発明の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法及び発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子について説明する。
本発明の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子(以下、単に発泡性樹脂粒子ということもある。)の製造方法は、
JIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱して溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱して溶融させる際に得られるDSC曲線における吸熱量(Rendo)が10J/g以上であるポリ乳酸系樹脂を基材樹脂とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法であって、
(i)該ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸させる含浸工程と、
(ii)該物理発泡剤が含浸されたポリ乳酸系樹脂粒子を温度0〜40℃の条件下にて、含浸させた物理発泡剤の10〜60重量%を逸散させる逸散工程、
とを含むことを特徴とする。
以下に本発明の「発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法」について詳しく説明する。
〔1〕ポリ乳酸系樹脂粒子について
(1)基材樹脂
(イ)基材樹脂について
本発明の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造に用いられる、ポリ乳酸系樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子ということもある。)の基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂は、樹脂中に乳酸に由来する単位を50モル%以上含むポリマーである。該ポリ乳酸系樹脂には、例えば、(a)乳酸の重合体、(b)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(c)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(d)乳酸と他の脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(e)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(f)前記(a)〜(e)の何れかの組み合わせによる混合物等が包含される。尚、上記乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物を挙げることができる。
前記(b)における他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。また、前記(c)及び(e)における脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられる。また、前記(c)及び(d)における脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
前記ポリ乳酸系樹脂の製造方法の具体例としては、例えば、乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5,310,865号明細書に開示されている製造方法)、乳酸の環状二量体(ラクチド)を重合する開環重合法(例えば、米国特許2,758,987号明細書に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えば、ラクチドやグリコリドとε−カプロラクトンを、触媒の存在下、重合する開環重合法(例えば、米国特許4,057,537号明細書に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5,428,126号明細書に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とポリマーを、有機溶媒存在下に縮合する方法(例えば、欧州特許出願公開第0712880号明細書に開示されている製造方法)、乳酸重合体を触媒の存在下、脱水重縮合反応を行うことによりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で、固相重合を行う方法、等を挙げることができるが、その製造方法は、特に限定されない。また、少量のグリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合させても良く、又ポリイソシアネート化合物等のような結合剤(高分子鎖延長剤)を用いて分子量を上げてもよい。また、ペンタエリスリトール等の多価脂肪族アルコールに代表される分岐化剤にて分岐化させたものであってもよい。
本発明における基材樹脂は、結晶性ポリ乳酸系樹脂(m)20〜100重量部と、非結晶性ポリ乳酸系樹脂(n)0〜80重量部とからなることが好ましい(但し、(m)と(n)との重量部の合計は100重量部である)。
基材樹脂中の結晶性ポリ乳酸系樹脂(m)の割合が20重量部未満の場合には、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子(A)を発泡後、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子をさらに型内成形して得られる発泡粒子成形体の結晶性成分を高温養生などにより十分に結晶化させたとしても機械的物性と耐熱性が不十分となる虞がある。かかる観点から、基材樹脂中の結晶性ポリ乳酸系樹脂(m)の含有量は30重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい。
なお、本発明における基材樹脂は、結晶性ポリ乳酸系樹脂(m)20〜90重量部と非結晶性ポリ乳酸系樹脂(n)10〜80重量部の混合物であることが好ましく、結晶性ポリ乳酸系樹脂(m)30〜80重量部と非結晶性ポリ乳酸系樹脂(n)20〜70重量部の混合物であることが上記した観点から更に好ましく、結晶性ポリ乳酸系樹脂(m)40〜80重量部と非結晶性ポリ乳酸系樹脂(n)20〜60重量部の混合物であることが上記した観点から特に好ましい(但し、(m)と(n)との重量部の合計は100重量部である)。上記した範囲であれば、樹脂粒子を発泡後、得られる発泡粒子をさらに型内成形して得られる発泡粒子成形体の結晶性成分を高温養生などにより十分に結晶化させた場合に、十分な耐熱性を有する発泡粒子成形体とすることが可能となり、かつ非結晶性ポリ乳酸系樹脂も有するため、樹脂粒子を発泡後、得られる発泡粒子は融着性の高いものとなり、さらに二次発泡性を調整しやすいものとなる。
(ロ)基材樹脂の示差走査熱量測定における吸熱量
該基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂は、上述したポリ乳酸系樹脂の中でも、後述する加熱速度2℃/minでの示差走査熱量測定における吸熱量(Rendo)が10J/g以上のものである。
吸熱量が10J/g以上であれば、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡後、更に型内成形して得られる発泡粒子成形体は結晶化されることによって加熱雰囲気下での変形を起こし難くするための耐熱性、また剛性等を有する発泡粒子成形体を得ることができ、かつ後述する該基材樹脂から得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の中央部と表層部の結晶化度の差を広げることが容易となる。かかる観点から、前記吸熱量が15J/g以上のものが好ましく、20J/g以上のものがより好ましい。一方、該吸熱量の上限は特に限定する必要はないが、通常の基材樹脂の性状から、一般に70J/gである。
本明細書において、ポリ乳酸系樹脂の示差走査熱量測定における吸熱量(Rendo)は、JIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法によって求められる値とする。但し、ポリ乳酸系樹脂1〜4mgを試験片とし、試験片の状態調節及びDSC曲線の測定は以下の手順にて行う。試験片をDSC装置の容器に入れ、融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱して溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱して溶融させる際に得られるDSC曲線を得る。
尚、ポリ乳酸系樹脂の吸熱量(Rendo)は、図1に示すように、該DSC曲線の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点aとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点bとして、点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。また、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、図2に示すようにベースラインが湾曲してしまう場合は、吸熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点a、吸熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点bとする。
なお、上記吸熱量(Rendo)の測定において、試験片の状態調節およびDSC曲線の測定条件として、110℃での120分間の保持、2℃/minの冷却速度および2℃/minの加熱速度を採用する理由は、ポリ乳酸試験片の結晶化を極力進ませて、完全に結晶化した状態、或いは、それに近い状態に調整されたものの吸熱量(Rendo)を該測定にて求めることを目的としている為である。以上、試験片としてポリ乳酸系樹脂を用いた場合について説明したが、発泡粒子を試験片として同様の手順にて発泡粒子の吸熱量を測定すると基材樹脂の吸熱量(Rendo)と同様の値となる。
本明細書における結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、前述のポリ乳酸系樹脂の吸熱量の測定手順により得られるDSC曲線において10J/gを超える吸熱ピークが現れるものとする。なお、結晶性ポリ乳酸系樹脂の吸熱量は通常30〜70J/gである。また、本明細書における非結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、前述のポリ乳酸系樹脂の吸熱量の測定手順により得られるDSC曲線において2J/g以下の吸熱ピークが現れるもの或いは吸熱ピークが現れないものである。
(2)他の樹脂成分及び添加剤
本発明の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造に使用する基材樹脂には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において他の樹脂成分を配合することができる。ポリ乳酸系樹脂と他の樹脂との混合樹脂中にはポリ乳酸系樹脂が50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。
尚、ポリ乳酸系樹脂と混合できる他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、中でも脂肪族エステル成分単位を少なくとも35モル%含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、上記ポリ乳酸系樹脂以外のヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、及びポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート,ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物等が挙げられる。
本発明の基材樹脂は、例えば、黒、灰色、茶色、青色、緑色等の着色顔料又は染料を添加して着色したものであってもよい。着色した基材樹脂より得られた着色樹脂粒子を用いれば、着色された発泡粒子及びその成形体を得ることができる。
着色剤としては、有機系、無機系の顔料、染料などが挙げられる。このような、顔料及び染料としては、従来公知の各種のものを用いることができる。
また、基材樹脂には、気泡調整剤として、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ほう酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の無機物や、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の有機物をあらかじめ配合することができる。
上記基材樹脂に着色顔料、染料又は無機物等の添加剤を配合する場合は、添加剤をそのまま基材樹脂にペレタイズ工程や発泡剤含浸工程において含有させることができるが、通常は分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作り、それと基材樹脂とをペレタイズ工程において混練して基材樹脂中に添加剤を均一に含有させることが好ましい。着色顔料又は染料の配合量は着色の色によっても異なるが、通常、基材樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部とするのが好ましい。また、無機物の配合量は、基材樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部、更に0.02〜1重量部とすることが好ましい。上記無機物やポリエチレンワックス等の有機物を基材樹脂に配合することにより、発泡倍率の向上効果、気泡径の均一性向上や気泡径調整効果が期待できる。
また、前記方法では、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、増粘剤等の添加剤の混合も本発明の製造方法の効果を妨げない範囲内で可能である。
(3)ポリ乳酸系樹脂粒子の製造
ポリ乳酸系樹脂粒子の製造においては、結晶性ポリ乳酸系樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂で構成される基材樹脂を原料としてストランドカット法、アンダーウォーターカット法など周知のペレタイズ法を採用することにより得られる。その具体例としては、基材樹脂又は必要に応じて添加剤が配合された樹脂組成物を押出機に供給して、溶融、混練してストランド状に押出し、該ストランド状の押出物を水冷により冷却した後、所定の長さに切断するか、又は押出されたストランドを所定の長さに切断後または切断と同時に、冷却して、樹脂粒子を得ることができる。その他の樹脂粒子を製造する方法としては、基材樹脂を押出機を用いて溶融、混練した後、板状または塊状に押出し、該押出物を冷却プレス等により冷却した後、該冷却樹脂を破砕したり、格子状に破断することによっても得る方法など、周知の方法を採用することができる。尚、上記の樹脂粒子を製造する際の冷却は、以降の工程にて得られる発泡粒子の発熱量(Bexo)及び発泡粒子の吸熱量(Bendo)についての比(Bexo/Bendo)の調整の容易さの点から水没させる等により急冷することが好ましい。
前記ストランド状の押出物を切断して得られる樹脂粒子平均直径(D)、及び[樹脂粒子平均長さ(L)/樹脂粒子平均直径(D)]は発泡方法、型形状等の条件により適宜、選択される。Dは、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.3〜4mmであり、L/Dは、好ましくは1.0〜1.5である。
また、樹脂粒子1個当りの平均重量は、生産性、発泡剤含浸性の観点から好ましくは0.05〜10mg、より好ましくは0.1〜4mgである。また該樹脂粒子の形状は特に制約されず、柱状(ペレット状)の他、球形状、棒状等の各種の形状にすることが可能である。
基材樹脂を上記した通り押出機で溶融混練しストランド状等に押出す際に、基材樹脂が吸湿性を有する場合、該基材樹脂を予め乾燥させておくことが好ましい。多量の水分を吸収している樹脂を押出機に供給すると、樹脂粒子中に気泡が混入して得られた樹脂粒子を後工程で発泡して得られる発泡粒子の気泡の均一性に悪影響を及ぼしたり、樹脂粒子を得るために基材樹脂を押出機中で溶融混練する際に基材樹脂のメルトフローレイト(MFR)が極端に大きくなるなど物性低下が生じるおそれがある。
また、基材樹脂の劣化を抑制するために、ベント口付き押出し機を使用して、真空吸引して基材樹脂から水分を除去する方法も採用できる。また、基材樹脂の物性低下が生じないように、前記押出温度条件の上限温度を設定することも可能である。また、得られた樹脂粒子は高温、高湿条件下を避けて加水分解が進行しないような環境下で保存することが好ましい。
〔2〕発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法
発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法は、
(i)上記ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸させる含浸工程と、
(ii)該物理発泡剤が含浸されたポリ乳酸系樹脂粒子を温度0〜40℃の条件下に曝して、含浸させた物理発泡剤の10〜60重量%を逸散させる逸散工程、
とを含むことを特徴とする。
以下に発泡性ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法について記載する。
(1)物理発泡剤の含浸工程
物理発泡剤の含浸工程は、上記ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸させる工程である。
(イ)物理発泡剤
物理発泡剤としては、従来公知のもの、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソヘキサン、ノルマルヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、クロロフロロメタン、トリフロロメタン、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1−クロロ−1,1−ジフロロエタン、1,1−ジフロロエタン、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン等の有機系物理発泡剤、もしくは窒素、炭酸ガス、アルゴン、空気、水等の無機系物理発泡剤、又はそれらから選択される2種以上の混合物が挙げられるが、なかでもオゾン層の破壊がなく且つ安価な無機系物理発泡剤が好ましく、その観点から、さらに窒素、空気、又は炭酸ガスを主成分とすることがさらに好ましい。
本発明においては、物理発泡剤の主成分が炭酸ガスであることが最も好ましい。物理発泡剤の主成分が炭酸ガスであれば、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂との相溶性が高いので見かけ密度の小さい発泡粒子を得るのに適した発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子となる。
また、含浸された炭酸ガスは発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子から適度な速度で逸散するので、本発明において物理発泡剤を逸散させるのに適しており、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させて得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の表層部と中央部の結晶化度を調整しやすくなる。前記「物理発泡剤の主成分が炭酸ガスである」とは、物理発泡剤の60mol%以上が炭酸ガスであることを意味し、より好ましくは、70mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上である。
(ロ)物理発泡剤の含浸方法
次に、前記ポリ乳酸系樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる含浸例について説明する。
物理発泡剤の含浸方法としては、ポリ乳酸系樹脂粒子を押出機によるペレタイズ工程にて製造する際に押出機中に物理発泡剤を圧入する方法により、ポリ乳酸系樹脂粒子の製造と該発泡剤の含浸を1つの工程で行うことも可能であるが、物理発泡剤の含浸量の調整、物理発泡剤の含浸温度の調整、発泡性樹脂粒子の後述する結晶化度の調整などの観点から、水性媒体中でポリ乳酸系樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる方法が好ましい。この場合、密閉容器内に水性媒体と樹脂粒子とを入れて、次いで密閉容器内に物理発泡剤を圧入して攪拌することにより樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させることができる。
上記水性媒体としては、好ましくは水が使用され、より好ましくはイオン交換水が使用されるが、水に限らずポリ乳酸系樹脂を溶解せず且つ樹脂粒子の分散が可能な水性媒体であれば使用することができる。水以外の水性媒体としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。水性媒体には、水と有機溶媒、例えば前記アルコールとの混合液が包含される。
物理発泡剤の含浸温度は、好ましくは10〜50℃、更に好ましくは20〜40℃である。含浸の操作性と効率を考慮すると前記温度範囲が好ましい。また前記温度範囲であれば、樹脂粒子の結晶化度を適度に促進させることができ、結晶化の調整が容易である。
また、樹脂粒子への物理発泡剤を含浸させる際における気相含浸時の樹脂粒子雰囲気、或いは液層含浸時の密閉容器気層部の物理発泡剤の圧力は、目的とする発泡粒子の見かけ密度(発泡倍率)によっても変わってくるが、通常は0.5〜5.0MPa(G)であり、含浸時間は0.2〜7時間程度である。
(ハ)発泡剤の含浸量
物理発泡剤の含浸量は、次の工程である物理発泡剤の逸散による逸散分も考慮した量を含浸させておく必要がある。物理発泡剤の含浸量はポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対して1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部、更に好ましくは3〜15重量部である。含浸量が1重量部未満の場合には、物理発泡剤逸散後に加熱発泡させる際に発泡性樹脂粒子を十分に発泡させられないおそれがあり、一方、含浸量が30重量部を超える場合には、物理発泡剤の逸散の際に処理時間が長くかかったり、或いは樹脂粒子の結晶化が進行し易くなるため得られた発泡粒子の型内成形時の融着性が不十分になる虞がある。
樹脂粒子100重量部に対する物理発泡剤の含浸量(重量部)は下記(3)式により求められる。
物理発泡剤含浸量(重量部)=[(物理発泡剤含浸後のポリ乳酸系樹脂粒子重量−物理発泡剤含浸前のポリ乳酸系樹脂粒子重量)/物理発泡剤含浸前のポリ乳酸系樹脂粒子重量]×100(重量部)・・・(3)
上記(3)式における物理発泡剤含浸後のポリ乳酸系樹脂粒子の重量とは、物理発泡剤が含浸されて大気圧中に取り出されてから10分経過後に測定される物理発泡剤含浸ポリ乳酸系樹脂粒子の重量をいう。なお、密閉容器内にて水性媒体中でポリ乳酸系樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させた場合の物理発泡剤含浸後のポリ乳酸系樹脂粒子の重量は、物理発泡剤含浸後、大気圧中に取り出して樹脂粒子表面の水分をエアーや遠心分離機などにて除去してから測定される物理発泡剤含浸ポリ乳酸系樹脂粒子の重量であり、大気圧中に取り出されてから10分経過後に測定される。
(ニ)物理発泡剤として炭酸ガスの使用をした場合
以下、物理発泡剤として炭酸ガスを使用する場合について説明する。
炭酸ガスの含浸量は、上記したのと同様に、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部、更に好ましくは3〜15重量部である。含浸量が前記1重量部未満の場合には、発泡剤逸散後の発泡の際に十分に樹脂粒子を発泡させられない虞があり、一方、含浸量が前記30重量部を超える場合には、次の発泡剤逸散の際に処理時間が長くかかったり、或いはポリ乳酸系樹脂中に炭酸ガスが含浸されるとガラス転移温度が低下する結果、相対的に結晶化速度が速くなるので、結晶化が過度に進行して後工程で得られる発泡粒子の型内成形時の融着性が不十分となる虞がある。
炭酸ガスの含浸温度は、上記したと同様に、好ましくは10〜50℃、更に好ましくは20〜40℃である。含浸の操作性と効率を考慮すると前記温度範囲が好ましい。また前記温度範囲であれば、樹脂粒子の結晶化を抑制するように調整することが容易である。
特に、発泡剤に炭酸ガスを使用する場合の含浸温度は、炭酸ガスの樹脂粒子に対する含浸量をX(重量%)とすると、(−0.6X+50)℃以下の温度であることが好ましい。(−0.6X+50)℃を超えると、特に結晶性の高いポリ乳酸系樹脂では結晶化が極端に進行して所定の発泡倍率が得られなくなる場合がある。また、後工程で得られる発泡粒子を型内成形する際に、発泡粒子の膨張性、発泡粒子相互の融着性が低下する場合にはより高温で成形しなければならず、それにより表面が凹凸状の発泡粒子成形体となる場合がある。
また、樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させる際の気相含浸時の樹脂粒子雰囲気、或いは液層含浸時の密閉容器気層部の炭酸ガス発泡剤の圧力は、目的とする発泡粒子の見かけ密度(発泡倍率)によっても変わってくるが、通常は0.5〜5.0MPa(G)であり、含浸時間は0.2〜7時間程度である。
(ホ)融着性改良剤の使用
発泡剤を含浸させる際にポリ乳酸系樹脂中に融着性改良剤が含有されていなくとも、本発明の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させて得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を成形する際に、融着性の高い発泡粒子成形体を製造することが可能であるが、本発明の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる際に、更なる融着性向上を目的としてポリ乳酸系樹脂中に融着性改良剤を含有させることもできる。
融着性改良剤を含有する発泡性樹脂粒子を用いる場合、表層部近傍の融着性改良剤の含有量が発泡粒子中央部近傍の含有量より多いことがより好ましく、表層部近傍のみに融着性改良剤が存在することが更に好ましい。
ここで融着性改良剤とは、ポリ乳酸系樹脂に含有させることによりポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度を低下させる機能を有するものをいう。具体的なガラス転移温度の低下度合は、使用する融着性改良剤の種類と量にもよるが、中間点ガラス転移温度を0.5〜20℃低下させるものが好ましく、1〜15℃低下させるものがより好ましい。尚、前記中間点ガラス転移温度は、後述する測定方法により測定される値である。
融着性改良剤としては、ポリ乳酸系樹脂の可塑剤として用いられているものが挙げられ、グリセリン脂肪酸エステル等のグリセリン誘導体、エーテルエステル誘導体、グリコール酸誘導体、クエン酸誘導体、アジピン酸誘導体、ロジン誘導体、テトラヒドロフルフリルアルコール誘導体から選ばれた単一または複数の混合物が好ましく挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂粒子に融着改良剤を含有させる方法としては、例えば、発泡剤の含浸の際に、或いは含浸前やその後に融着改良剤を樹脂粒子に含有させる方法が挙げられる。
また後述する発泡性樹脂粒子の発泡の際に、樹脂粒子を発泡機を用いて加熱媒体にて発泡させる場合、例えば、融着性改良剤を発泡機中の樹脂粒子の表面に付着させるように霧状に吹付けると同時に或いは霧状に吹付けた後に加熱媒体を発泡機に導入して発泡させる方法や、融着性改良剤を添加した加熱媒体を発泡機に導入して発泡させながら、融着改良剤を樹脂粒子の表面に吹き付ける方法が挙げられる。更には、発泡終了後に発泡粒子の表面に付着させるように霧状に吹付けても良い。
(2)物理発泡剤の逸散工程
物理発泡剤の逸散工程は、物理発泡剤を含浸させたポリ乳酸系樹脂粒子中の物理発泡剤の一部を逸散させる工程である。該逸散により、含浸樹脂粒子の表層部近傍の発泡剤濃度が発泡粒子中央部近傍の発泡剤濃度より低くなる結果、後工程で発泡性樹脂粒子を発泡させた際に中央部近傍の結晶化が表層部近傍よりも相対的に進んでいる発泡粒子が得られる。そのため該逸散後に発泡性樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子の表層部(S)の結晶化度は、比較的低く維持することができる為、発泡粒子が型内成形において加熱された際に、発泡粒子が相互に融着し易いものとなり、融着性に優れた発泡粒子を得ることが可能になる。
物理発泡剤の逸散方法を以下に例示する。
樹脂粒子への発泡剤含浸操作終了後に密閉容器から、発泡剤含浸樹脂粒子を取り出して水性媒体を除去乾燥後、大気圧下又は減圧下に静置する方法、水性媒体を除去後容器に発泡剤含浸樹脂粒子を投入してその容器の一端から不活性ガス等の置換気体を導入し発泡剤を強制的に逸散させる方法、発泡剤含浸終了後に密閉容器から発泡剤含浸樹脂粒子を取り出さずに密閉容器の圧力を開放し又は発泡剤含浸終了後に密閉容器から発泡剤含浸樹脂粒子を取り出して他の容器に移した後に、水性媒体中に懸濁させた状態で発泡剤を逸散させる方法等が挙げられる。発泡剤含浸樹脂粒子の表層部近傍の発泡剤をより効率良く逸散するためには、大気圧下に静置する方法、又は不活性ガス等の置換気体を容器内に導入して発泡剤を逸散させる方法が好ましい。
物理発泡剤を逸散させる際の雰囲気温度は、0℃から40℃であることが好ましい。逸散温度が0℃以上であれば、工業的に短時間で逸散することが可能であり、一方、40℃以下であれば、目的とする発泡剤の逸散量が調整しやすいので、後工程にて得られる本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の表層部の発熱量(Bs:J/g)が中央部の発熱量(Bc:J/g)より大きくなるように、発泡剤含浸樹脂粒子の表層部に存在する発泡剤の濃度を内部に存在する発泡剤の濃度より効率的に低くすることができる。より好ましい発泡剤の逸散温度は10℃から30℃である。
また、逸散処理の圧力は、物理発泡剤含浸時の物理発泡剤の分圧よりも低い必要があるが、その圧力は物理発泡剤含浸時の発泡剤分圧の半分以下が好ましく、より好ましくは大気圧以下である。また、これらの条件で含浸させた物理発泡剤の10〜60重量%を逸散させる。発泡剤逸散率が10〜60重量%であれば、発泡剤逸散工程を経たポリ乳酸系樹脂粒子の表層部近傍の発泡剤の量が中央部近傍の発泡剤の量より濃度が低く維持され、その結果、表層部の結晶化が進行しづらいものとなることにより、後工程にて得られる発泡粒子の表層部の結晶化が抑制され、該発泡粒子を型内成形する際、発泡粒子は相互に融着しやすいものとなる。かかる観点から、発泡剤逸散率は20重量%から50重量%がより好ましい。
なお、ポリ乳酸系樹脂粒子に含浸させた物理発泡剤のうち逸散させた物理発泡剤の割合を表す「発泡剤逸散率」は以下、下記(4)式で求められる値である。
発泡剤逸散率(重量%)=[(物理発泡剤含浸量(g)−逸散後の物理発泡剤含浸量(g))/(物理発泡剤含浸量(g))]×100・・(4)
式(4)において、物理発泡剤含浸量とは逸散工程に使用する物理発泡剤含浸樹脂粒子重量(g)から、物理発泡剤含浸前の樹脂粒子重量(g)を引いた値である。逸散後の物理発泡剤含浸量とは逸散後の物理発泡剤含浸樹脂粒子重量(g)から、物理発泡剤含浸前の樹脂粒子重量(g)を引いた値である。ここでいう逸散後とは、逸散工程終了時から10分経過後を意味する。なお、水性媒体中に懸濁させた状態で物理発泡剤を逸散させる方法により、物理発泡剤を逸散させた場合は、樹脂粒子を逸散工程終了後、直ちに大気圧中に取り出し樹脂粒子表面の水分をエアーなどにて除去したものを対象に、大気圧中に取り出されてから10分経過後の樹脂粒子重量を測定して逸散後の樹脂粒子重量(g)を求めることとする。
発泡剤を逸散させる際の湿度条件は、好ましくは40%相対湿度(RH)以上、より好ましくは50%RH以上である。湿度条件が40%RH以上であると逸散処理後に得られる発泡性樹脂粒子の含水率を例えば0.5重量%以上の高い値に維持することができ、このような発泡性樹脂粒子を発泡して得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は表層厚みのより大きいものとなるため、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の耐熱性が向上するので発泡粒子の型内成形時において良好な発泡粒子成形体が得られる加熱温度範囲を広げることができる。かかる観点から、発泡剤を逸散させる際の湿度条件は、より好ましくは50%RH以上である。尚、ポリ乳酸系樹脂組成物の常態における含水率は0.5重量%未満である。
上記した物理発泡剤の逸散温度と逸散率にするには、発泡剤の逸散処理時間は、概ね30分以上6時間以下であることが好ましく、より好ましくは1時間以上5時間以下である。処理時間が30分以上6時間以下であれば、発泡剤の逸散が行なわれるのに十分であり、また、発泡に十分な発泡剤を残すことができる。
また、逸散処理温度(℃)と処理時間(時間)の積が、10(℃・時間)以上200(℃・時間)以下となる様な温度と時間の条件が好ましく、更には20(℃・時間)以上150(℃・時間)以下となる様な温度と時間の条件が好ましく、30(℃・時間)以上100(℃・時間)以下となる様な温度と時間の条件が最も好ましい。
(3)発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子について
発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子は、ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸後、該物理発泡剤が含浸された発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を温度0〜40℃の条件下に曝して物理発泡剤の一部を逸散させて物理発泡剤の逸散率を10〜60重量%とすることにより得られる。このことにより、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の表層部近傍からの逸散が必然的に多くなり、樹脂粒子の表層部近傍の発泡剤濃度は中央部近傍の発泡剤濃度より低くなる。
また、有機系物理発泡剤や炭酸ガス等の無機系物理発泡剤等が含有されるとポリ乳酸系の樹脂組成物は、ガラス転移温度が低下するため結晶化が進みやすい状態となる。その結果、逸散工程を経ることによって発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の表層部近傍は中央部近傍よりも結晶化が進みにくい状態となり、後の発泡工程を経て得られる発泡粒子において、発泡粒子中央部近傍の結晶化度は表層部近傍の結晶化度よりは相対的に高くなる。このことは、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の粒子が小さいために物理発泡剤の濃度分布を直接確認することは困難であるが、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡して得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の中央部と表層部との後述する発熱量の対比により確認することが可能である。
本発明の該逸散工程後に発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子の表層部(S)の結晶化度は、比較的低く維持されているため、発泡粒子相互の融着性が高い発泡粒子を得ることが可能になる。さらに、厚みの厚い発泡粒子成形体、或いは複雑な形状の発泡粒子成形体を成形したとしても、中心部の発泡粒子まで相互に融着されている発泡粒子成形体を得ることも可能となる。尚、該発泡粒子を用いることにより、融着率が高い発泡粒子成形体を成形できるメカニズムは定かではないが、発泡粒子の表層部(S)の発熱量が低下しないことによると考えられる。つまり、発泡粒子表層部(S)の結晶化が進んでいないため、発泡粒子表層部が軟化しやすい状態にあり、発泡粒子同士の融着がしやすい状態となっているためと考えられる。従って、発泡粒子における表層部(S)の発熱量(Bs)が中央部(C)の発熱量(Bc)よりも大きければ、表層部(S)の結晶化が進んでいないことを示すので発泡粒子同士の融着がしやすいものとなる。また、中央部(C)の結晶化が進んでいることで、発泡粒子自体の耐熱性は向上し、型内成形による発泡粒子の収縮を抑制することができ、良好な発泡粒子成形体を得ることができる型内成形加熱温度条件の幅を広げることができる。
〔3〕ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法は、上記発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法において記載した、(i)前記ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸させる含浸工程と、(ii)該物理発泡剤が含浸されたポリ乳酸系樹脂粒子を温度0〜40℃の条件下に曝して、含浸させた物理発泡剤の10〜60重量%を逸散させる逸散工程に続いて、(iii)発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させて、
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができる。
以下に発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させる工程について説明する。
(1)発泡工程
発泡工程では、前記物理発泡剤の逸散工程を終了した発泡性樹脂粒子を加熱し発泡させる。発泡性粒子を加熱し発泡させる方法としては、従来公知の方法が採用できる。その中でも密閉容器内に発泡性樹脂粒子を充填し水蒸気又は水蒸気と空気の混合熱媒体を導入して発泡させる方法が好ましい。又、温水に一定時間浸漬させ発泡させる方法も温水の温度調節が比較的容易なため工業的に好ましい。尚、密閉容器には、加熱媒体を排気させる開孔弁が備わっていると、密閉容器内の雰囲気温度を容易に一定に保つことができ、見かけ密度が均一な発泡粒子が得られ易い。
前記方法において、発泡剤が含浸されている発泡性樹脂粒子を加熱する際の温度条件、すなわち発泡温度は、基材樹脂の中間点ガラス転移温度をTgとすると、通常、基材樹脂の(Tg−50)℃〜(Tg+50)℃が好ましく、(Tg−40)℃〜(Tg+40)℃がより好ましい。発泡温度が(Tg−50)℃未満であると、十分な発泡が起こり難く、また(Tg+50)℃を超えると発泡粒子の独立気泡率が低下してしまい良好な型内成形性を示す発泡粒子が得られずらいという問題が生ずる。発泡剤が基材樹脂に含浸することにより基材樹脂の中間点ガラス転移温度以下においても発泡する。特に、発泡剤が炭酸ガスの場合には、発泡温度は基材樹脂の(Tg−40)℃〜(Tg+40)℃が好ましく、(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃がより好ましい。
尚、本明細書において基材樹脂の中間点ガラス転移温度(Tg)の測定はJIS K 7121(1987年)に基づく熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求められる値である。より具体的には、中間点ガラス転移温度(Tg)の測定は、JIS K7121(1987年)の3.試験片の状態調節(3)記載の「一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合」に準拠して試験片をDSC装置の容器に入れ、融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱速度10℃/minにて昇温して加熱溶解させ、その温度に10分保持した後、0℃まで冷却速度10℃/minにて冷却する状態調整を行ない、次に加熱速度10℃/minにて0℃から融解ピーク終了時より30℃高い温度まで昇温したときに得られるDSC曲線から求められる。
(2)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子について
上記発泡により得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、見かけ密度が0.02g/cm〜0.65g/cmであり、熱流束示差走査熱量測定法にて、熱処理をおこなわず、常温から融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱速度2℃/minにて加熱して溶融させる際に得られるDSC曲線における該樹脂発泡粒子の吸熱量(Bendo:J/g)と発熱量(Bexo:J/g)との比[(Bexo)/(Bendo)]が0.3超で、かつ表層部の発熱量(Bs:J/g)が中央部の発熱量(Bc:J/g)より大きいものである。
なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないような条件下で保存することが好ましい。
(イ)見かけ密度
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の見かけ密度は、0.02g/cm〜0.65g/cmが好ましい。すなわち、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の見かけ密度は、型内成形後の収縮率が大きくなる虞を避ける観点から0.03g/cm以上が好ましく、0.04g/cm以上がより好ましい。一方、その上限は発泡粒子の密度のばらつきが大きくなり易く、型内成形にて得られる発泡粒子成形体の物性ばらつきの虞を避ける観点から0.45g/cm以下が好ましく、0.20g/cm以下がより好ましい。
尚、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の見かけ密度は次のように測定する。
23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日放置した500個以上の発泡粒子(発泡粒子群の重量W1)を金網などを使用して沈めて、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1(cm)にてメスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1(g)を割り算(W1/V1)することにより求める。
(ロ)示差走査熱量測定における発泡粒子の吸熱量と該発泡粒子の発熱量との関係
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、加熱速度2℃/minでの示差走査熱量測定における発泡粒子の吸熱量(Bendo:J/g)と該発泡粒子の発熱量(Bexo:J/g)との関係が下記(1)式を満足する。
(Bexo)/(Bendo)>0.3 (1)
(Bexo)/(Bendo)比が0.3を超える値であれば、発泡粒子中で結晶化しうる領域に対して、未結晶である領域を多く有しているため、型内成形時の発泡粒子の相互の融着性に優れるものとなる。また、高温養生などの後工程にて結晶化させて、発泡粒子成形体の耐熱性、機械的物性を高めることができる。上記(1)式において(Bexo)/(Bendo)の値の上限は1であり、好ましくは0.8、更に好ましくは0.7である。
尚、上記発泡粒子の発熱量(Bexo)および吸熱量(Bendo)は、JIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定により求められる値とする。但し、発泡粒子1〜4mgの試験片とし、該試験片の状態調節およびDSC曲線の測定は以下の手順にて行う。
試験片をDSC装置の容器に入れ、熱処理を行わず、2℃/minの加熱速度にて常温から融解ピーク終了時より30℃高い温度まで昇温する際のDSC曲線を得る。この場合、上記常温とはおおむね23℃程度の温度をいう(以下同じ。)。
尚、発泡粒子の発熱量(Bexo)は該DSC曲線の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。また、発泡粒子の吸熱量(Bendo)は、該DSC曲線の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点eとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点eと点fとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。
但し、該DSC曲線におけるベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することする。また、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、発熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点c、発熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ発熱ピークが戻る点を点dとする。更に、吸熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点e、吸熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点fとする。
例えば、図3に示す場合には、上記の通り定められる点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から発泡粒子の発熱量(Bexo)を求め、上記の通り定められる点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から発泡粒子の吸熱量(Bendo)を求める。また、図4に示すような場合には、上記のように点dと点eを定めることが困難である為、上記の通り定められる点cと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点d(点e)と定めることにより、発泡粒子の発熱量(Bexo)及び吸熱量(Bendo)を求める。また、図5に示すように、吸熱ピークの低温側に小さな発熱ピークが発生するような場合には、発泡粒子の発熱量(Bexo)は、図5中の第1の発熱ピークの面積Aと第2の発熱ピークの面積Bとの和から求められる。即ち、該面積Aは第1の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、第1の発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積Aとする。そして、該面積Bは第2の発熱ピークの低温側のベースラインから第2の発熱ピークが離れる点を点gとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点gと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点eと定め、点gと点eとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積Bとする。一方、図5において、発泡粒子の吸熱量(Bendo)は点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる部分の面積から求められる値とする。
なお、上記発熱量(Bexo)および吸熱量(Bendo)の測定において、DSC曲線の測定条件として、2℃/minの加熱速度を採用する理由は、発熱ピークと吸熱ピークとをなるべく分離し、正確な吸熱量(Bendo)および(Bexo/Bendo)を熱流束示差走査熱量測定にて求める際に、2℃/minの加熱速度が好適であるという発明者の知見に基づくものである。
(ハ)発泡粒子の表層部(S)の発熱量と中央部(C)の発熱量との関係
発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡して得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、その表層部(S)の発熱量(Bs)と該発泡粒子の中央部(C)の発熱量(Bc)との関係が下記(2)式を満足するので、表層部は中央部よりも未結晶部分を多く有しており、成形時の発泡粒子相互の融着性に優れるものとなり、厚みが大きくとも或いは形状が複雑なものであっても発泡粒子相互の融着性に優れた発泡粒子成形体を得ることも可能となる。また、中央部が表層部よりも結晶化の進んだ状態であるので、発泡粒子全体としては耐熱性が向上しているので、型内成型時の成形温度範囲を高めることができる。結果的に、本発明の発泡粒子によれば、成形圧力の範囲を広げることができる。
(Bs)>(Bc) (2)
上記発熱量(Bs)、(Bc)は、それぞれ表層部(S)、中央部(C)1〜4mgを試験片とする以外は、発泡粒子の発熱量(Bexo)の測定方法と同様にして求めることができる。尚、発泡粒子の表層部(S)とは、発泡粒子の表面全面から、切り出し前の発泡粒子の重量の5分の1から3分の1の重量となるように、できるだけ均一な厚みで切り出される部分をいう。それに対して中央部(C)は、発泡粒子の表面全面を、できるだけ均一な厚みで切り取り除去し、切り取り前の発泡粒子の重量の5分の1から3分の1の重量となる発泡粒子残部をいう。
上記の発泡粒子の表層部(S)のサンプルとしては、表面を含む表層部(S)をカッターナイフ、ミクロトーム等を用いて切削処理を行い表層部(S)を集めて測定に供すればよい。但し、この際の留意点としては1個の発泡粒子の表面全面を必ず切除し且つ1個の発泡粒子から切除した表層部(S)の合計重量が元の発泡粒子の粒子重量の5分の1から3分の1となるように切除する。切除した表層部(S)の重量が元の発泡粒子の粒子重量の5分の1から3分の1であれば、粒子内部の発泡層を多量に含有することがないので表層部の発熱量を正確に測定することができる。更に1個の発泡粒子から得られる表層部が1〜4mgに満たない場合は上記操作を繰り返し複数個の発泡粒子について行う必要がある。
一方、中央部(C)の発泡層のサンプル調製の方法としては、表層部(S)を含まない中央部(C)の発泡層を残すことを目的にカッターナイフ等で切削処理を行い測定に供する必要がある。中央部(C)の発泡層のサンプルを調製する際の留意点としては、1個の発泡粒子の表面全面を必ず切除した上、切り出し面からできるだけ均一の厚みとなる厚さの発泡層を切除するようにして中央部(C)の発泡層を残す。この際、切除作業にて残された中央部(C)の発泡層の重量は、元の発泡粒子の粒子重量の5分の1から3分の1とする必要があり、且つ元の発泡粒子の形状とできる限り相似の関係にあることが好ましい。更に1個の発泡粒子から得られる中央部(C)の発泡層が1〜4mgに満たない場合は上記操作を繰り返し複数個の発泡粒子を用いる必要がある。
元の発泡粒子の重量の5分の1から3分の1となるように切り出される発泡粒子の表層部の厚みの算出方法は下記の通りである。
まず、発泡粒子の重量(g)は下記の式により導かれる。
W=(4/3)π(Rρ
但し、Wは発泡粒子の重量(g)、Rは発泡粒子を球と仮定した球の半径(cm)、ρは発泡粒子の見かけ密度が全体的に一定であると仮定した見かけ密度(g/cm)である。
次いで、発泡粒子の表層部が元の発泡粒子の粒子重量の3分の1となるように切り出される発泡粒子の表層からの厚みSは、以下のように算出される。
(2/3)×(4/3)π(Rρ=(4/3)π(Rρ
=0.873R
=R−R=0.127R
但し、RはWの2/3の重量となる球の半径である。
同様にして、発泡粒子の表層部が5分の1となるように切り出される発泡粒子の表層からの厚みSは、0.072Rとなる。よって、発泡粒子の表層部(S)が、元の発泡粒子の粒子重量の5分の1から3分の1以下となるためには、発泡粒子の表層部(S)からできるだけ均一の厚みとなるように、表層から0.072R〜0.127Rcmの厚みで切り出されることになる。
次に、中央部(C)は、発泡粒子表面全面を、できるだけ均一の厚みとなるように切り出して除去し、元の発泡粒子の粒子重量の5分の1から3分の1となる残部の発泡粒子をいうが、そのように切り出された元の発泡粒子の粒子重量の3分の1となる残部の発泡粒子中央部の半径R(cm)は次のように導かれる。
(1/3)×(4/3)π(Rρ=(4/3)π(Rρ
=0.693R
同様にして、発泡粒子の中央部が元の発泡粒子の粒子重量の5分の1となる残部の発泡粒子中央部の半径R(cm)は、R=0.585Rとなる。
よって、発泡粒子の中央部(C)が、元の発泡粒子の粒子重量の5分の1から3分の1となるように発泡粒子を切除するためには、中央部の半径が0.585R〜0.693Rcmとなるように切除作業を行うことになる。
ここで、見かけ密度0.15g/cm、直径0.3cmのほぼ球形である発泡粒子を例として示すと、上記の方法にて表層部(S)と中央部(C)に切り出した際の、発泡粒子の重量(g)、表層から切り出される厚みS、S、中央部の半径R、Rは、それぞれ、0.019cm、0.011cm、0.104cm、0.088cmとなる。
よって、見かけ密度0.15g/cm、直径0.3cmのほぼ球形である発泡粒子の場合、発泡粒子の表層部(S)は、発泡粒子の表層部(S)からできるだけ均一の厚みとなるように発泡粒子の表面全面を切り出し、切り出された表層部(S)の合計重量が元の発泡粒子の重量の5分の1から3分の1となる部分であり、発泡粒子表面から0.11mm〜0.19mmまでの部分をいう。それに対して中央部(C)は、発泡粒子の表面全面を、できるだけ均一の厚みとなるように切り出して除去し、元の発泡粒子の粒子重量の5分の1から3分の1となる残部であり、発泡粒子の中心部からの半径が0.88mm以上1.04mm以下の部分をいう。
さらに、他の発泡粒子を同様に切り出して、測定のために表層部(S)および中央部(C)を1mg〜4mgにする。
このようにして得られるサンプルから、示差走査熱量測定にて表層部(S)の発熱量(Bs)と該発泡粒子の中央部(C)の発熱量(Bc)が測定される。
(ニ)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の平均表層厚み(Ts)と平均気泡膜厚み(Tm)との比
上記発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の平均表層厚み(Ts)と平均気泡膜厚み(Tm)との比(Ts/Tm)が、5.0〜40.0、好ましくは6.0〜25.0、更に好ましくは7.0〜18.0であり、このような状態のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、平均気泡膜厚み(Tm)に対する平均表層厚み(Ts)の値が従来のものに比べて大きいものであるので、丈夫な表皮に覆われていることにより発泡粒子の見かけの耐熱性が高いものとなり、型内成形時のスチーム、熱風などの加熱媒体による加熱時において発泡粒子の収縮、破泡を防ぐことができ、良好な発泡粒子成形体が得られる成形温度範囲が広がり、良好なポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体を成形するのにさらに適したものとなる。
(ニ−1)発泡粒子の平均表層厚み(Ts)の測定
発泡粒子の平均表層厚み(Ts)は次のように測定される。
発泡粒子を略二分割し切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。得られた断面写真において、発泡粒子の最外に位置し円周方向に連接する気泡と発泡粒子表面との間の長さが最小値となる値をそれぞれ全ての写真上の該連接する気泡に対して測定し、それらの値の算術平均値を発泡粒子の表層厚みとする。この操作を多数(少なくとも30個以上)の発泡粒子について行い各発泡粒子の表層厚みの算術平均値を平均表層厚み(Ts)とする。
尚、該連接する気泡より外側に独立して、あるいは数個連続して気泡が存在することがあるが、これらは発泡粒子を形成する気泡群とは別に稀に存在するものであることから無視できるものとする。表層厚みを正確に測定するためには表皮部が捲れないように発泡粒子を略二分割する必要がある。
(ニ−2)発泡粒子の平均気泡径の測定
発泡粒子の平均気泡径は次のように測定される。
発泡粒子を略二分割し切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から八方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントし、該直線の合計長さをカウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とする。この操作を多数(少なくとも30個以上)の発泡粒子について行い各発泡粒子の気泡径の算術平均値を平均気泡径とする。
尚、上記各発泡粒子の気泡径の測定において、該直線と一部でも交わる気泡もカウントすることとする。また、上記測定において発泡粒子切断面の中心付近から八方向に等間隔に直線を引く理由としては、直線が発泡粒子切断面の中心付近から八方向に等間隔に引かれるものであれば測定される気泡の形状が、仮に発泡粒子切断面上で方向によって異なるものであっても、安定した気泡径の値が得られるからである。
(ニ−3)発泡粒子の平均気泡膜厚み(Tm)の算出
発泡粒子の平均気泡膜厚み(Tm)は、上記の方法で測定された平均気泡径dから以下の式(5)を使って算出される。
=(ρf−ρg)/(ρs−ρg)=[(d+Tm)−d]/(d+Tm)・・(5)
但し、Vは基材樹脂の容積分率、ρfは発泡粒子の見かけ密度(g/cm)、ρsは基材樹脂の密度(g/cm)、ρgは気泡内のガス密度(g/cm)、dは平均気泡径(μm)、Tmは平均気泡膜厚み(μm)である。なお、(5)式における(ρfおよびρs)>>ρgであることからρgを0(g/cm)とし、Vs=ρf/ρsとなる。従って、平均気泡膜厚みTm(μm)は、Tm=d〔(X/(X−1))1/3−1〕の式(但し、X=ρs/ρf。)にて算出することができる。この式によって、本発明の発泡粒子の平均気泡径dが定まれば、発泡粒子の平均気泡膜厚み(Tm)が定まる。
上記(5)式は、気泡の形状を球とみなした際の平均気泡径と平均気泡膜厚みとの関係式であり、「プラスチックフォームハンドブック」(発行所:日刊工業新聞社、昭和48年2月28日発行)、222頁目の「1.3.2の項」に記載されている。
これらの発泡粒子を用いると、広い範囲の型内成形温度条件にて発泡粒子相互の融着性に優れた発泡粒子成形体を成形できる。尚、該発泡粒子を用いることにより、発泡粒子相互の融着性に優れる発泡粒子成形体を成形できる理由は定かではないが、発泡粒子表層部(S)の結晶化が進んでいないため、発泡粒子表層部が軟化しやすい状態にあり、発泡粒子同士の融着がしやすい状態となっていること、更に、高湿条件化で物理発泡剤の逸散を行った発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子は、従来のものよりも厚い表皮が形成されて型内成形時において発泡粒子の収縮、破泡が防がれることに起因すると考えられる。
〔4〕ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体の製造
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体の製造方法は、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法において記載した、
(i)前記ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸させる含浸工程と、
(ii)該物理発泡剤が含浸されたポリ乳酸系樹脂粒子を温度0〜40℃の条件下に曝して、含浸させた物理発泡剤の10〜60重量%を逸散させる逸散工程、
(iii)前記発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得る工程、
に続いて更に
(iv)前記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を型内成型することにより発泡粒子を相互に融着させてポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体を得ることができる。
(1)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の成形
上記(iv)発泡粒子型内成形工程においては、発泡粒子を型内に充填した後に、水蒸気又は水蒸気と空気等の加熱媒体により該発泡粒子を加熱して発泡粒子を相互に融着させることが好ましい。このように、加熱成形すると発泡粒子は相互に融着し一体となった発泡粒子成形体が得られる。この場合の成形用の型としては一般に使用されている金型又は特開2000−15708号公報等に記載の連続成形装置に使用されているスチールベルトが用いられる。また、加熱手段としては、通常スチ−ムが用いられ、その加熱温度は発泡粒子表面部が溶融する温度にできればよく、通常、0.1〜0.25MPa(G)のスチ−ム圧力が採用される。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を型内成形させて得られる発泡粒子成形体は、従来のポリ乳酸樹脂発泡粒子成形体より発泡粒子相互の融着性に優れる。
(2)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子への加圧ガスの含浸
発泡粒子成形体を製造する場合、型内成形に先立ってポリ乳酸系樹脂発泡粒子に予め空気、窒素、炭酸ガス等の無機ガス、又はブタン等の有機ガス等を含浸させることが好ましい。上記無機ガス又は有機ガスの中でも炭酸ガスが取扱性の点から好ましい。発泡粒子にガスを含浸させることにより、型内成形において、発泡粒子相互間の隙間が少なくなる等の二次発泡性、金型形状再現性、発泡粒子成形体成形後の養生回復性が向上する。発泡粒子への含浸ガス量は、好ましくは0.05〜4mol/(1000g発泡粒子)、更に好ましくは0.1〜2mol/(1000g発泡粒子)の範囲内である。
尚、発泡粒子内のガス量(mol/1000g発泡粒子)は下記(6)式によって求められる。
発泡粒子内のガス量(mol/1000g発泡粒子)=
[ガス増加量(g)×1000]/[ガスの分子量(g/mol)×発泡粒子重量(g)]・・(6)
上記(6)式中のガス増加量(g)は次のように求める。
金型内に充填される、ガスを含浸することにより発泡粒子内部の圧力が高められた発泡粒子を500個以上取り出して60秒以内に相対湿度50%、23℃の大気圧下の恒温恒湿室に移動し、その恒温恒湿室内の秤に乗せ、該発泡粒子を取り出して120秒後の重量を読み取る。このときの重量をQ(g)とする。次に、該発泡粒子を相対湿度50%、23℃の大気圧下の同恒温恒湿室内にて240時間放置する。発泡粒子内の高い圧力のガスは時間の経過とともに気泡膜を透過して外部に抜け出すため発泡粒子の重量はそれに伴って減少し、240時間後では平衡に達しているため実質的にその重量は安定している。上記240時間後の該発泡粒子の重量を同恒温恒湿室内にて測定し、このときの重量をS(g)とする。上記のいずれの重量も0.0001gまで読み取るものとする。この測定で得られたQ(g)とS(g)の差を(6)式中のガス増加量(g)とする。
上記無機ガス又は有機ガスを発泡粒子に含浸させる方法としては、周知の通り、密閉容器に発泡粒子を入れ、該容器内を無機ガス又は有機ガスにて加圧する方法が挙げられ、この方法により発泡粒子の含浸ガス量を高めることができる。
(3)型内成形後の養生
上記型内成形で得られた発泡粒子成形体は、基材樹脂の中間点ガラス転移温度をTgとした場合、[Tg+5]〜[Tg+30]℃の雰囲気下に一定時間保持する養生工程を経ることが好ましい。
養生工程の温度が[Tg+5]℃未満の場合には、ポリ乳酸系樹脂を結晶化させるのに長時間必要であることや発泡粒子成形体の耐熱性向上の効果がなく、耐熱性に劣った発泡粒子成形体となる。この観点から、養生温度は[Tg+8]℃以上が好ましく、[Tg+10]℃以上がより好ましい。また、[Tg+30]℃を超える場合には、発泡粒子成形体が変形を起こしてしまい、良好な発泡粒子成形体を得ることが困難となる。この観点から[Tg+25]℃以下が好ましく、[Tg+20]℃以下がより好ましい。
また、養生工程で上記の温度雰囲気下で保持する時間としては耐熱性向上の観点から1時間以上が好ましく、3時間以上が好ましく、特に5時間以上が好ましい。一方、その上限は発泡粒子成形体が変形や変色を起こさない観点から通常、36時間である。上記観点と生産性のバランスから24時間以下がより好ましく、特に12時間以下が好ましい。
また、養生工程の相対湿度は、相対湿度が高いと発泡粒子成形体が加水分解を受けやすくなり、機械的物性に劣った発泡粒子成形体となる虞があることから40%RH以下が好ましい。上記観点から30%RH以下がより好ましく、20%RH以下がさらに好ましい。一方、その下限は0%RHではその条件とするのに特別な装置が必要となる虞れがあることから5%RH以上が好ましい。
また、養生工程全体の時間を100%とした場合、上記観点から相対湿度が40%RHを超える時間が50%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。
養生する際、発泡粒子成形体はそのままの形態でも良いが、温度が高いと発泡粒子成形体が変形を起こすおそれがある。このような場合には、形状を固定する冶具などで発泡粒子成形体を固定することが好ましい。
上記養生工程によれば、基材樹脂の中間点ガラス転移温度を基準として結晶化させることも兼ねるので、効率よく耐熱性が向上した発泡粒子成形体が得られる。なお、養生工程での加熱媒体は通常熱風で行なわれる。発泡粒子成形体は、前記養生工程を行うことによってより耐熱性に優れたものとなる。具体的な耐熱性は90℃の雰囲気下で22時間放置後の加熱寸法変化率の絶対値が4%以内であることが好ましく、3%以内であることがより好ましく、2%以内であることが更に好ましい。該加熱寸法変化率の絶対値が4%を超えると、90℃付近で用いる分野に使用し難いなど使用範囲が狭くなる虞れがある。発泡粒子成形体を構成しているポリ乳酸系樹脂の組成にもよるが、上記範囲内の耐熱性を有する発泡粒子成形体は、上記養生工程を経ることにより得ることができる。なお、上記加熱寸法変化率(%)とは、〔(90℃、22時間の加熱後の発泡粒子成形体の寸法(mm)−加熱前の発泡粒子成形体の寸法(mm))/加熱前の発泡粒子成形体の寸法(mm)〕×100の式にて求められる値であり、本明細書における発泡粒子成形体の加熱寸法変化率は、上式により求められる各部位の加熱寸法変化率の内、最も寸法変化率の絶対値が大きかった部位の値を採用することとする。
(4)発泡粒子成形体
かくして得られる発泡粒子成形体は、型内成形時の二次発泡性と発泡粒子相互の融着が良好な発泡粒子より得られるので発泡粒子相互間に隙間が少ないため、外観と発泡粒子成形体の中心部付近の融着が良好な発泡粒子成形体である。
更に、発泡粒子成形体の結晶化が促進されていると、耐熱性が向上するので、前述した養生工程を経ることにより効率よく結晶化度を高め、耐熱性を向上させることができる。
発泡粒子成形体の形状は特に制約されず、その形状は、例えば、容器状、板状、筒体状、柱状、シート状、ブロック状等の各種の形状にすることができる。また、該発泡粒子成形体は寸法安定性、表面平滑性において優れたものである。
(イ)見かけ密度
発泡粒子成形体の見かけ密度は、0.02〜0.65g/cmが好ましく、0.03〜0.45g/cmがより好ましい。
発泡粒子成形体の見かけ密度は、発泡粒子成形体の外形寸法から求められる体積VM(cm)にて発泡粒子成形体の重量WM(g)を割り算し(WM/VM)単位換算することにより求められる。
(ロ)融着率
発泡粒子成形体の融着率は、該成形体の曲げ強さなどの十分な機械的物性示すものとなる観点から50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。
融着率の測定は以下の方法で行うことができる。即ち、発泡粒子成形体を、カッターナイフで発泡粒子成形体の厚み方向に約3mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部から発泡粒子成形体を破断した。次に、破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(n)と(b)の比(b/n)から下記(7)式により求めることができる。
融着率(%)=(b/n)×100・・・(7)
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体は、環境低負荷型の熱可塑性樹脂を基材樹脂とするものであることから、従来のポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体やポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体が使用されていた分野、例えば、魚箱、包装緩衝材料、自動車の内装材等の代替物として好ましく使用できる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例における評価方法等を以下に記載する。
尚、以下の実施例、比較例にて使用したDSC装置はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、商品名:DSC―Q1000である。
(1)基材樹脂について
(イ)吸熱量(Rendo)の測定
前記「〔1〕ポリ乳酸系樹脂粒子について、(1)基材樹脂、(ロ)基材樹脂の示差走査熱量測定における吸熱量」の項に記載した測定法を採用した。
(ロ)中間点ガラス転移温度の測定
前記「〔3〕ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法、(1)発泡工程」の項に記載した測定法を採用した。
(2)発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子について
(イ)物理発泡剤含浸量
ポリ乳酸系樹脂粒子に対する物理発泡剤の含浸量(重量部)は下記式から求められる。
物理発泡剤含浸量(重量部)=[(物理発泡剤含浸後のポリ乳酸系樹脂粒子重量(g)−物理発泡剤含浸前のポリ乳酸系樹脂粒子重量(g))/物理発泡剤含浸前のポリ乳酸系樹脂粒子重量(g)]×100(重量部)
(ロ)物理発泡剤逸散率
樹脂粒子に対する物理発泡剤逸散率(重量%)は下記式から求めた。
[(物理発泡剤含浸量(g)−逸散後の物理発泡剤含浸量(g))/(物理発泡剤含浸量(g))]×100(%)
(ハ)含水率
発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の含水率はJIS K7251(2002年)のB法−水分気化法に基づき測定した。
(3)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子について
(イ)見かけ密度
23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日放置した約1000個の発泡粒子(発泡粒子群の重量W1)を金網を使用して沈めて、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1(cm)にてメスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1(g)を割り算(W1/V1)することにより求めた。
(ロ)発熱量(Bexo)と吸熱量(Bendo)
前記「〔3〕ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法、(2)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子について、(ロ)示差走査熱量測定における発泡粒子の吸熱量と該発泡粒子の発熱量との関係」の項に記載した測定法を採用した。
(ハ)中央部の発熱量(Bc)と表層部の発熱量(Bs)
前記「〔3〕、(2)、(ハ)発泡粒子の表層部(S)の発熱量と中央部(C)の発熱量との関係」の項に記載した測定法を採用した。
(ニ)樹脂発泡粒子の平均表層厚みと平均気泡膜厚み
前記「〔3〕、(2)、(ニ)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の平均表層厚み(Ts)と平均気泡膜厚み(Tm)との比」の項に記載した方法を採用し各々50個の発泡粒子について測定を行った。なお、ρgを0(g/cm)、ρsを1.26(g/cm)とした。
(4)発泡粒子成形体について
(イ)二次発泡性
表1に示した二次発泡性の評価は、以下に示す基準にて発泡粒子成形体を目視により観察することにより評価した。
◎:発泡粒子成形体の表面において発泡粒子相互間に隙間がなく、成形体の角部の形状が金型の形状と同じ。
○:発泡粒子成形体の表面において発泡粒子相互間に隙間がほとんどなく、成形体の角部の形状が金型の形状とほぼ同じ。
△:発泡粒子成形体の表面において発泡粒子相互間に隙間が少なく、成形体の角部の形状が金型の形状より若干丸い。
×:発泡粒子成形体の表面において発泡粒子相互間に隙間が多く、成形体の角部の形状が金型の形状より丸い。
(ロ)融着率
発泡粒子成形体を、カッターナイフで発泡粒子成形体の厚み方向に約3mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部から発泡粒子成形体を破断した。次に、破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(n)と(b)の比(b/n)の100分率である〔(b/n)×100〕(%)を融着率とした。
(ハ)中心部の融着評価
上記融着率の測定で破断した発泡粒子成形体の破断面の中心部を目視により観察し、融着の程度を以下のように評価した。
◎:全ての発泡粒子が粒子界面で剥がされず、発泡粒子自体が破壊している。
○:ほとんどの発泡粒子が粒子界面で剥がされず、発泡粒子自体が破壊している。
△:界面で剥がされている発泡粒子が多く、発泡粒子自体が破壊しているものが少ない。
×:ほぼ全ての発泡粒子が粒子界面で剥がされている。
(ニ)発泡粒子成形体の見かけ密度
発泡粒子成形体の見かけ密度は、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日放置した発泡粒子成形体の外形寸法から求められる体積VM(cm)にて発泡粒子成形体の重量WM(g)を割り算(WM/VM)してkg/mに単位換算することにより求めた。
[実施例1]
(1)樹脂粒子の製造
結晶性ポリ乳酸(三井化学(株)製、商品名:レイシアH−100、密度1.26g/cm、吸熱量49J/g、表1に結晶性樹脂と記した。)50重量部と非結晶性ポリ乳酸(三井化学(株)製、商品名:レイシアH−280、密度1.26g/cm、吸熱量0J/g、表1に非結晶性樹脂と記した。)50重量部とのブレンド物に、ポリエチレンワックス(東洋ペトロライト(株)製、商品名:ポリワックス1000、数平均分子量2200)200重量ppmを添加し、これらを押出機にて溶融、混練してストランド状に押出した。次いでこのストランドを約25℃の水中で急冷固化させた後に切断して、長さ(L)/直径(D)が1.3、1個当たりの平均重量1.1mgの無架橋の樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の中間点ガラス転移温度は、57℃であった。
得られた樹脂粒子の吸熱量(Rendo)を測定した結果、図1に示したようなDSC曲線が得られた。吸熱量(Rendo)の測定値を表1に示した。
(2)発泡剤の含浸
5リットル(L)の内容積を有するオートクレーブにイオン交換水3000mlと酸化アルミニウム(デグッサ製、商品名:アエロオキサイド)0.5g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名:ネオゲンS20A)0.2g、樹脂粒子1000gを投入し、さらに融着性改良剤としてグリセロールジアセトモノカプリレート(理研ビタミン(株)製、商品名:リケマールPL―019)を樹脂粒子100重量部に対し0.5重量部添加した。
次に、前記オートクレーブ内温度を30℃(表1の含浸条件の欄に示す含浸温度)に調整した後、炭酸ガス(CO)を圧力調整弁を介してオートクレーブ内に圧入し、そのオートクレーブ内の気相部の圧力が2MPa(G)(表1の含浸条件の欄に示した含浸圧力)になるように調整し、5.5時間(表1の含浸条件の欄に示す時間保持(保持時間))保持し炭酸ガスを含浸させた。
その後、オートクレーブ内の圧力を大気圧に減圧した後、樹脂粒子を取出した。取出した樹脂粒子は、遠心分離機にて付着水分が除去された。
得られた樹脂粒子表面の水分をエアーによりさらに除去し、上記オートクレーブから取り出してから10分経過後に樹脂粒子の物理発泡剤含浸量を測定したところ6.3重量部であった。
(3)発泡剤の逸散
前記発泡剤含浸樹脂粒子をポリエチレン袋に入れ、室温25℃、湿度50%RHの雰囲気で袋の口は開封したまま2時間半静置して、該樹脂粒子に含浸された炭酸ガスの一部を逸散させる処理を実施した。この発泡剤逸散処理を終えてから10分経過後に測定される逸散処理後の発泡剤含浸量は3.5重量%であった。発泡剤逸散処理前後の発泡剤含浸量から、樹脂粒子の発泡剤逸散率は、45重量%であった。また、逸散処理後の発泡性樹脂粒子の含水率は、1.1重量%であった。
(4)ポリ乳酸系樹脂発泡性樹脂粒子の発泡
この発泡剤逸散処理後の発泡性樹脂粒子を、圧力調整弁の付いた密閉容器内に充填した後、スチームとエアーにより96℃に温度調整した混合熱媒体を8秒間導入して加熱し、膨張発泡した無架橋の発泡粒子を得た。この時、発泡機内の最高温度は82℃であった。この発泡粒子のこの発泡粒子の見かけ密度、発熱量(Bexo)、吸熱量(Bendo)、比(Bexo/Bendo)及び差(Bendo−Bexo)、表層部の発熱量(Bs)、中央部の発熱量(Bc)、及び比(Bs/Bc)、平均表層厚み(Ts)、平均気泡膜厚み(Tm)、比(Ts/Tm)を表1に示す。
(5)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の型内成形
得られた発泡粒子を用いて、次のように型内成形を行った。
発泡粒子を密閉容器内に充填し、空気にて加圧し、空気の含浸量が0.33(mol/1000g)となるよう発泡粒子に含浸した後、横250(mm)×縦200(mm)×厚み50(mm)の成形空間部を有する金型に圧縮率20%(金型に充填される圧縮前の発泡粒子の嵩体積(cm)−型締後の金型内容積(cm))×100/型締後の金型内容積(cm))(%)にて充填し、表1に示す成形圧力(スチーム圧)で型内成形した。なお、金型に充填される圧縮前の発泡粒子の嵩体積(cm)は、発泡粒子の嵩密度(g/cm)にて金型に充填される該発泡粒子の重量(g)を除した値であり、発泡粒子の嵩密度(g/cm)は、発泡粒子を空のメスシリンダーに入れた際にメスシリンダーの目盛りが示す発泡粒子の体積(cm)にてメスシリンダー中の発泡粒子の重量(g)除した値である。型内成形条件と得られた発泡粒子成形体の評価結果を表1に示す。
図6には、実施例1で得られた本発明のポリ乳酸発泡粒子を略二分割した断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。図7には、実施例1で得られた本発明のポリ乳酸発泡粒子を略二分割した断面における表層部を更に拡大した走査型電子顕微鏡写真を示す。
[実施例2]
実施例2では、実施例1と同じ樹脂粒子を用い、発泡剤の含浸時に、グリセロールジアセトモノカプリレート(理研ビタミン(株)製、商品名:リケマールPL―019)を添加しないで炭酸ガスを含浸させた。発泡剤逸散処理、及び発泡は実施例1と同様の条件で実施した。また、型内成形は発泡粒子に空気を加圧含浸させないで行った以外は実施例1と同様の条件で行った。得られた発泡粒子成形体の評価結果を表1に示す。
[比較例1、2]
比較例1及び比較例2では、実施例1と同じ樹脂粒子を用い、表1に記載の条件で発泡剤の炭酸ガスを含浸させた。比較例1及び比較例2では、発泡剤の逸散処理を行わず発泡剤含浸終了後直ちに実施例1と同様の条件にて発泡し、発泡粒子を得た。ここで含浸終了後直ちにとは、含浸終了から発泡開始まで10分以内に実施した事を示す。また、型内成形は発泡粒子に空気を加圧含浸させないで成形圧力を0.2MPa(G)とした以外は実施例1と同様の条件で行った。得られた発泡粒子成形体の評価結果を表1に示す。
図8には、比較例1で得られたポリ乳酸発泡粒子を略二分割した断面の一部の走査型電子顕微鏡写真を示す。図9には、比較例1で得られたポリ乳酸発泡粒子を略二分割した断面の一部における表層部を更に拡大した走査型電子顕微鏡写真を示す。
[実施例3、実施例4]
実施例3と実施例4では、実施例1で使用したのと同じ樹脂粒子を用い、発泡剤含浸条件の保持時間を5時間とした以外は実施例1と同じ条件で発泡剤の炭酸ガスを含浸させた。次に、オートクレーブ内の圧力を大気圧に減圧した後、樹脂粒子を取り出し、遠心分離機にて付着水分を除去した。
得られた発泡性樹脂粒子を内径10cm深さ25cmの円筒容器(流動層乾燥装置)に入れ、この容器の下部から湿度を調整した空気を導入して容器内を温度25℃、湿度40%RHの状態にして、実施例3では1時間、実施例4では2時間、発泡性樹脂粒子の発泡剤逸散処理を実施した。次いで、実施例1と同様の条件で逸散処理後の発泡性樹脂粒子を発泡させた。得られた発泡粒子を成形圧力0.2MPa(G)とした以外は実施例2と同様の条件で型内成形した。得られた発泡粒子成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例5では、実施例1で使用したのと同じ樹脂粒子を用い、発泡剤含浸条件の保持時間を5時間とした以外は実施例1と同じ条件で発泡剤の炭酸ガスを含浸させた。次に、オートクレーブ内の圧力を大気圧に減圧した後、樹脂粒子を取り出し、遠心分離機にて付着水分を除去した。
得られた発泡性樹脂粒子を内径10cm深さ25cmの円筒容器(流動層乾燥装置)に入れ、この容器の下部から乾燥空気を導入して容器内を温度25℃、湿度15%RHの状態にして2時間、発泡性樹脂粒子の発泡剤逸散処理を実施した。次いで、実施例1と同様の条件で逸散処理後の発泡性樹脂粒子を発泡させた。
得られた発泡粒子に空気の加圧含浸処理を行わずに横250(mm)×縦200(mm)×厚み10(mm)の成形空間部を有する金型に圧縮率50%にて充填し、成形圧力を0.16MPa(G)とした以外は実施例1と同様の条件で型内成形した。得られた発泡粒子成形体の評価結果を表1に示す。
[比較例3]
比較例3では、実施例1と同じ樹脂粒子を用い、表1に記載の条件で発泡剤の炭酸ガスを含浸させた。比較例3では、発泡剤の逸散処理を行わず発泡剤含浸終了後直ちに実施例1と同様の条件にて発泡し、発泡粒子を得た。また、型内成形は発泡粒子に空気を加圧含浸させないで成形圧力を0.16MPa(G)とした以外は実施例1と同様の条件で行った。得られた発泡粒子成形体の評価結果を表1に示す。
[参考例1]
比較例3にて得られた発泡粒子を、空気による加圧含浸処理を行わずに横250(mm)×縦200(mm)×厚み10(mm)の成形空間部を有する金型に圧縮率50%にて充填し、比較例3と同様の条件で型内成形した。得られた発泡粒子成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例6では、実施例1と同じ樹脂粒子を用い、実施例3と同じ条件で発泡剤の炭酸ガスを含浸させた。次に、オートクレーブ内の圧力を大気圧に減圧した後、オートクレーブ内で攪拌しながらそのまま2時間発泡剤の逸散処理を実施した。次いで発泡性樹脂粒子をオートクレーブ内から取り出し、遠心分離機にて付着水分を除去した後、実施例3と同様の条件で逸散処理後の発泡性樹脂粒子を発泡させた。得られた発泡粒子を実施例3と同様の条件で型内成形した。得られた発泡粒子成形体の評価結果を表1に示す。なお、表1において()内の値は推定値である。
なお、表1において重量部とはポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対する値である。
[実施例と比較例のまとめ]
実施例1〜6より、本発明の物理発泡剤の逸散処理を行った発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子は、表層部の発熱量が大きいもので型内成形にて二次発泡性に優れ、融着率が高い発泡粒子成形体が得られるものであることが分かる。更に、実施例1〜4、6から、本発明の発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子は、厚み50mmの二次発泡性、融着性において良好な発泡粒子成形体が得られるものであることが分かる。また、実施例1、2より、本発明の発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子は、成形圧力を低く設定し0.16MPa(G)とした場合でも、二次発泡性、発泡粒子成形体の中心部まで融着性に優れる厚み50mmの発泡粒子成形体が得られていることが分かる。また、実施例1と実施例2との対比結果より、融着改良剤が添加されている実施例1の発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子の方が実施例2のものよりも二次発泡性において多少優位ではあるが、実施例1、2において得られた発泡粒子成形体は互いに遜色のないものであった。実施例1、2の比較より、融着性改良剤を含有しなくとも本発明の逸散処理を行った発泡性樹脂粒子から、二次発泡性、融着性において良好な発泡粒子成形体が得られる発泡粒子を得ることが可能であることが分かる。
一方、比較例1、2より、物理発泡剤の逸散処理を行なわなかった発泡性樹脂粒子は、高い加熱スチーム圧力でも発泡粒子成形体は充分に融着しておらず、特に発泡粒子成形体の中心部の融着が極端に低いものであり、表には示していないが更に加熱スチーム圧を上げても発泡粒子相互の融着性に優れる50mmの厚みの発泡粒子成形体を得ることは出来なかった。
また、実施例1〜4、6で得られた本発明の発泡性ポリ乳酸樹脂粒子は、逸散処理において発泡性樹脂粒子の含水率を高く調整したものであることにより、該発泡性樹脂粒子を発泡して得られたポリ乳酸発泡粒子は、平均表層厚みと平均気泡厚みとの比が大きな値を示すものであった(図7参照のこと)。一方、比較例1〜3で得られた発泡性ポリ乳酸樹脂粒子は、逸散処理を行っておらず、また実施例5で得られた発泡性ポリ乳酸樹脂粒子は、逸散処理を行っているが含水率が低い為、それらの発泡性樹脂粒子を発泡して得られたポリ乳酸発泡粒子は、平均表層厚みと平均気泡厚みとの比が小さな値を示すものであった(図9参照のこと)。なお、図7と図9の写真の拡大倍率は同じである。
実施例3〜6は、物理発泡剤の逸散処理方法を変更したものであり、静置による逸散処理に限らずその他の逸散処理方法でも、良好な発泡粒子成形体が得られる発泡粒子となる本発明の発泡性樹脂粒子を製造できることが分かる。
実施例5で得られた本発明の発泡性ポリ乳酸樹脂粒子は、含水率が低いものであるが、物理発泡剤の逸散処理に起因して、該発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子は、表層部の発熱量が大きいものであることより、二次発泡性、融着性において良好な10mm厚みの発泡粒子成形体が得られるものであった。なお、実施例5の発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子は、参考例1として示す逸散処理を行なわず融着性改良剤を添加した発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子よりも、融着率が大きい値を示すものであった。
参考例1の発泡性樹脂粒子は、該発泡性樹脂粒子から得られる発泡粒子において10mm厚みの発泡粒子成形体が型内成形により成形可能であったが、比較例3に示す通り、50mm厚みの良好な発泡粒子成形体を得ることが難しいものであった。
熱流束示差走査熱量計により測定された基材樹脂の吸熱量(Rendo)を示すDSC曲線の例である。 熱流束示差走査熱量計により測定された基材樹脂の吸熱量(Rendo)を示すDSC曲線の例である。 熱流束示差走査熱量計により測定された発泡粒子の発熱量(Bexo)及び吸熱量(Bendo)を示すDSC曲線の例である。 熱流束示差走査熱量計により測定された発泡粒子の発熱量(Bexo)及び吸熱量(Bendo)を示すDSC曲線の例である。 熱流束示差走査熱量計により測定された発泡粒子の発熱量(Bexo)及び吸熱量(Bendo)を示すDSC曲線の例である。 実施例1で得られた本発明のポリ乳酸発泡粒子を略二分割した断面の一部の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた本発明のポリ乳酸発泡粒子を略二分割した断面における表層部の一部の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られたポリ乳酸発泡粒子を略二分割した断面の一部の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られたポリ乳酸発泡粒子を略二分割した断面における表層部の一部の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. JIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱して溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時より30℃高い温度まで加熱して溶融させる際に得られるDSC曲線における吸熱量(Rendo)が10J/g以上であるポリ乳酸系樹脂を基材樹脂とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法であって、
    (i)該ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対し物理発泡剤を1〜30重量部含浸させる含浸工程と、
    (ii)該物理発泡剤が含浸されたポリ乳酸系樹脂粒子を温度0〜40℃の条件下にて、含浸させた物理発泡剤の10〜60重量%を逸散させる逸散工程、
    とを含むことを特徴とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記逸散工程が相対湿度40%以上の条件にて行なわれることを特徴とする、請求項1記載の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法。
  3. 前記物理発泡剤の主成分が炭酸ガスである、請求項1又は2のいずれかに記載の発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子の製造方法。
  4. 請求項2又は3のいずれかの製造方法により得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子であって、含水率が0.5重量%以上であることを特徴とする発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子。
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