JP2009059530A - 固体酸化物型燃料電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】長時間を必要としない簡素なプロセスにより低廉に製造することが可能な固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】固体酸化物を電解質とする燃料電池であって、網状導体上に、アノード層、電解質層、カソード層から成るセル本体がプラズマ溶射法により形成されて成り、アノード層およびカソード層にそれぞれ接する雰囲気同士を相互に隔離しない方式で作動させる。その製造方法は、網状導体上にアノード組成物、電解質組成物、カソード組成物をこの順序でプラズマ溶射することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】固体酸化物を電解質とする燃料電池であって、網状導体上に、アノード層、電解質層、カソード層から成るセル本体がプラズマ溶射法により形成されて成り、アノード層およびカソード層にそれぞれ接する雰囲気同士を相互に隔離しない方式で作動させる。その製造方法は、網状導体上にアノード組成物、電解質組成物、カソード組成物をこの順序でプラズマ溶射することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、固体酸化物を電解質として用いた固体酸化物型燃料電池およびその製造方法に関する。
一般に固体酸化物型燃料電池は、酸素含有ガスと燃料ガスとを相互に隔離する方式で作動させるので、アノード層、電解質層、カソード層から成るセル本体は、少なくとも電解質層がガス隔離に十分な気密構造でなくてはならない。したがって、セル本体の各層は高い緻密性を要し、その形成には焼成等に数週間といったオーダーの長時間を必要とし、コスト的にも高くならざるを得なかった。
一方、固体酸化物層を短時間で低廉に形成する方法としては、プラズマ溶射法があるが、溶射形成層はガス隔離に十分な緻密性を備えていない。
特許文献1には、メッシュ金属上に固体酸化物の原料組成物のグリーンシートを配置して焼成することが開示されているが、やはり長時間プロセスを要し、コスト低減もできない。
特許文献2には、網状の担持構造部上にアノード層、電解質層、カソード層を溶射法により形成することができる旨記載されているが、これら三層により構成されるセル本体は酸素含有ガスと燃料ガスをと相互に隔離して用いる方式であり、三層のうち少なくとも電解質層は気密層とする必要があり、三層全てを溶射により形成することはできない。
本発明は、長時間を必要としない簡素なプロセスにより低廉に製造することが可能な固体酸化物型燃料電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明によれば、固体酸化物を電解質とする燃料電池であって、網状導体上に、アノード層、電解質層、カソード層から成るセル本体がプラズマ溶射法により形成されて成り、アノード層およびカソード層にそれぞれ接する雰囲気同士を相互に隔離しない方式で作動させることを特徴とする固体酸化物型燃料電池が提供される。
本発明の固体酸化物型燃料電池の製造方法は、網状導体上にアノード組成物、電解質組成物、カソード組成物をこの順序でプラズマ溶射することを特徴とする。
本発明の固体酸化物型燃料電池は、アノード層およびカソード層にそれぞれ接する雰囲気同士を相互に隔離しない方式で作動させるので、アノード層、電解質層、カソード層のいずれも気密性すなわち緻密性を必要とせず、プラズマ溶射により形成される多孔性の構造で十分に作動できる。そのため、短時間の簡素なプロセスで安価に製造できる。
本発明の固体酸化物型燃料電池の作動方式は、アノード層に燃料の火炎を直接当てる方式(直接火炎方式)か、または、酸素含有ガスと燃料ガスとの混合ガスをアノード層およびカソード層に共通して供給する方式(混合気方式)であり、いずれも酸素含有ガスと燃料ガスとを隔離する構造を必要としない。
前者の直接火炎方式は例えば特開2004−139936号公報により公知であり、後者の混合気方式は例えば特開2000−243412号公報により公知である。
ここで、後者の混合気方式は、アノードにおける燃料酸化の触媒選択性とカソードにおける酸素還元の触媒選択性との間に大差が確保できる必要があり、混合気であるためアノード反応ガスもカソード反応ガスもガス濃度が最適濃度より低く、混合気であるため常に爆発限界を回避した設計および運転を必要とする、といった制約がある。これに対して、前者の直接火炎方式はその制約が無い点で有利である。
望ましくは、セル本体のうちアノード層およびカソード層の少なくとも一方が、網状導体上にその少なくとも一部を埋め込んで形成されている。更に望ましくは、アノード層およびカソード層の両方がそれぞれの網状導体上にその少なくとも一部を埋め込んで形成されている。これにより、網状導体を溶射の下地として用いるだけでなく、集電層としても兼用できるので、集電のための付加的な構造を設けることも、そのための付加的な処理プロセスも必要としない。
望ましくは、網状導体の一部がセル本体の外部まで延在している。これにより、網状導体を集電層として用いる場合、網状導体の延在部を電池の出力端子として用いることができるので、出力端子としての付加的な構造を設けることも、そのための付加的な処理プロセスも必要としない。また、複数の電池同士を各出力端子としての網状導体延在部で相互に接続することによりセルモジュールを容易に構成できる。
望ましくは、電解質層の平面領域の内側にアノード層およびカソード層の各平面領域が含まれる。これにより、電解質層を挟んで両側にあるアノード層とカソード層とを相互に電気的に絶縁することができるので、絶縁のための付加的な構造を設けることも、そのための付加的な処理プロセスも必要としない。
本発明の固体酸化物型燃料電池の製造方法においては、基本的な処理プロセスとして、網状導体上にアノード組成物、電解質組成物、カソード組成物をこの順序でプラズマ溶射する。典型的な一実施形態として、本発明の固体酸化物型燃料電池を直接火炎方式で作動させる場合、網状導体を例えばNi等の耐熱金属で形成し、その上にアノード層を形成すれば、直接火炎を浴びるアノード層を担持する網状導体の耐久性を高く確保できる。
望ましくは、カソード組成物の溶射を2回に分け、1回目の溶射後に溶射形成層上に他の網状導体を配し、その上から2回目の溶射を行なう。これにより、アノード層のみでなく、カソード層にも網状導体を作り込むことができ、各網状導体を集電層として用い、その延在部を設けることで、モジュール化が容易な形態の電池を得ることができる。
望ましくは、溶射方向に見て網状導体の後ろに遮蔽板を配して溶射を行なう。これにより、網状導体近傍で溶射流が制御され、溶射組成物の網状導体への堆積効率が高まる。
図1に、本発明の固体酸化物型燃料電池の望ましい一実施形態を示す。
図1(1)および(2)に、それぞれ(A)平面図および(B)断面図で示すユニットセルUは上から順に、アノード層A、網状導体層D1、電解質層E、網状導体層D2、カソード層Cが積層して成る。網状導体層D1、D2はそれぞれ集電体として作用し、それぞれセル本体Bからの延在部X1、X2はユニットセルUの出力端子として機能する。
その製造はプラズマ溶射法により、例えば網状導体D1の表面にアノード層Aを形成し、次いで網状導体D1の裏面に電解質層Eを形成、電解質層Eの上に網状導体D2を配し、その上からカソード層Cを形成することにより行なう。
図1(1)の形態においては、電解質層Eの平面領域の内側にアノード層Aおよびカソード層Cの各平面領域が含まれる。アノード層Aとカソード層Cとの電気的な絶縁を確保するにはこの形態が便利である。ただし、これに限定する必要はない。図1(2)の形態においては、アノード層A、電解質層E、カソード層Cが同等の平面領域の大きさを持ち、順次若干位置をずらして配置されている。アノード層Aおよびカソード層Cの、電解質層Eからはみ出た部分AX、CXは電解質層Eに対して軸対称的な位置関係にあるので、AX、CXを介してアノード層Aとカソード層Cとの短絡が容易に起きる虞はない。
いずれの形態のユニットセルUも、網状導体D1とD2の延在部X1とX2がセル本体Bから逆向きに張り出しているので、隣接したユニットセルUの延在部X1と延在部X2とを連結することにより、複数個のユニットセルを直列接続してセルモジュールを容易に構成できる。
図2に、図1(1)の形態の場合について、ユニットセルの連結によるセルモジュールの構成例を示す。図示の例では、隣接ユニットセルU同士の間で、網状導体延在部X1とX2とを連結して4個のユニットセルUを直列接続してセルモジュールMを構成した。セルモジュールMは、ユニットセルUの起電力の4倍の起電力を出力する。
図3に、図2のセルモジュールMを直接火炎方式で用いた構成例を示す。図示の例では、1対のセルモジュールM、Mをアノード層A側で向け合って燃焼ノズルZを挟んで対面配置し、ノズルZからの多重火炎Fをアノード層Aに直接放射して発電を行なう。
網状導体Dとしては、耐熱性の金属が好ましく、例として、ニッケルメッシュ、SUS310、SUS304、SUS430等のステンレスメッシュ、ハステロイ等の耐熱合金メッシュを挙げることができる。
メッシュの構造は、平織りが好ましい。平織りは綾織りより安価であり、かつ応力に対して変形し易いからである。
固体酸化物から成る電解質層Eとしては、燃料電池で使用される公知の固体電解質を使用することができ、例として、次のものを挙げることができる。
(a)YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、これらにCe、Al等をドープしたジルコニア系セラミックス。
(b)SDC(サマリアドープドセリア)、GDC(ガドリアドープドセリア)等のセリア系セラミックス。
(c)LSGM(ランタンガレート)。
(d)酸化ビスマス系セラミックス。
アノード層Aを形成する材料も、公知の材料を使用することができ、例として、次のものを挙げることができる。
(a)ニッケルと、イットリア安定化ジルコニア系、スカンジア安定化ジルコニア系、又はセリア系(SDC、GDC、YDC等)セラミックとのサーメット。
(b)ニッケルとコバルトと、イットリア安定化ジルコニア系、又はセリア系セラミックスとのサーメット。
(c)導電性酸化物、例えばリチウムが固溶された酸化ニッケル等、を主成分(50重量%以上99重量%以下)とする焼結体。
(d)(a)、(b)、(c)に挙げたものに、白金族元素からなる金属、又はその酸化物が1〜10重量%程度配合されたもの。
これらのうち、特に(a)、(b)、(c)が好ましい。
(c)の導電性酸化物を主成分とする焼結体は、優れた耐酸化性を有するので、アノード層の酸化に起因して発生する、アノード層の電極抵抗の上昇による発電効率の低下、あるいは発電不能、アノード層の固体電解質層からの剥離といった現象を防止できる。また、導電性酸化物としては、先に例示したリチウムが固溶された酸化ニッケルが好適である。更に、上記(a)、(b)、(c)に挙げたものに白金族元素から成る金属、又はその酸化物を配合した材料を使用することにより、高い発電性能を得ることができる。
カソードCの材料も、やはり公知のものを使用することができ、例えば、ストロンチウム(Sr)が添加されたランタン、サマリウム等の周期律表第3族元素の、マンガン酸化合物(例えばランタンストロンチウムマンガナイト)、ガリウム酸化合物、又はコバルト酸化合物(例えばランタンストロンチウムコバルタイト、サマリウムストロンチウムコバルタイト)又は、フェライト系化合物(例えばランタンストロンチウムコバルトフェライト)等が挙げられる。
網状導体として100メッシュのニッケル製メッシュ上に、#200メッシュパスのニッケル粉末をプラズマ溶射してアノード層を形成した(図4)。
次いで金属マスクを配し、#200メッシュパスのSDC(サマリウムドープトセリア)粉末をプラズマ溶射して電解質層を形成した(図5)。
その上に、同様に、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)を少量溶射した(図6)。
その後、100メッシュのニッケル製メッシュを配し、更にその上からSSCを溶射してカソード層を形成した(図7)。
写真に示されるように、プラズマ溶射により形成される各層はいずれも多数の気孔を含む構造であるが、アノード極およびカソード極にそれぞれ接する雰囲気同士を相互に隔離しない発電方式、すなわち直接火炎方式や混合気方式であれば、何ら支承なく発電反応が確保される。
本発明によれば、長時間を必要としない簡素なプロセスにより低廉に製造することが可能な固体酸化物型燃料電池およびその製造方法が提供される。
A アノード層
E 電解質層
C カソード層
D 網状導体(メッシュ)
B セル本体
X1、X2 網状導体の延在部
U ユニットセル
M セルモジュール
F 火炎
Z ノズル
E 電解質層
C カソード層
D 網状導体(メッシュ)
B セル本体
X1、X2 網状導体の延在部
U ユニットセル
M セルモジュール
F 火炎
Z ノズル
Claims (8)
- 固体酸化物を電解質とする燃料電池であって、網状導体上に、アノード層、電解質層、カソード層から成るセル本体がプラズマ溶射法により形成されて成り、アノード層およびカソード層にそれぞれ接する雰囲気同士を相互に隔離しない方式で作動させることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
- 請求項1において、上記方式は、アノード層に燃料の火炎を直接当てる方式か、または、酸素含有ガスと燃料ガスとの混合ガスをアノード層およびカソード層に共通して供給する方式であることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
- 請求項1または2において、セル本体のうちアノード層およびカソード層の少なくとも一方が、網状導体上にその少なくとも一部を埋め込んで形成されていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
- 請求項1から3までのいずれか1項において、網状導体の一部がセル本体の外部まで延在していることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
- 請求項1から4までのいずれか1項において、電解質層の平面領域の内側にアノード層およびカソード層の各平面領域が含まれることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
- 請求項1から5までのいずれか1項記載の固体酸化物型燃料電池を製造する方法であって、網状導体上にアノード組成物、電解質組成物、カソード組成物をこの順序でプラズマ溶射することを特徴とする製造方法。
- 請求項6において、カソード組成物の溶射を2回に分け、1回目の溶射後に溶射形成層上に他の網状導体を配し、その上から2回目の溶射を行なうことを特徴とする製造方法。
- 請求項5または6において、溶射方向に見て網状導体の後ろに遮蔽板を配して溶射を行なうことを特徴とする製造方法。
Priority Applications (2)
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JP2007224463A JP2009059530A (ja) | 2007-08-30 | 2007-08-30 | 固体酸化物型燃料電池およびその製造方法 |
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WO2010103596A1 (ja) | 2009-03-12 | 2010-09-16 | 本田技研工業株式会社 | ヘッドアップディスプレイ装置 |
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DE19909930B4 (de) * | 1999-03-06 | 2004-09-02 | Fraunhofer-Gesellschaft zur Förderung der angewandten Forschung e.V. | Herstellung von tubulären PEM-Brennstoffzellen und Ionentauschermembranen |
WO2002101859A2 (de) * | 2001-06-13 | 2002-12-19 | Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft | Brennstoffzelle und verfahren zur herstellung einer solchen brennstoffzelle |
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