以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
<画像形成方法>
図1(A)〜(F)は画像が形成される工程を説明するための図である。まず、図1(A)〜(F)を参照して、本発明の前提となる、光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナー(以下、「感光性トナー」と称する)を用いる画像形成方法について説明する。
感光性トナーは、例えばトナーの1粒1粒が異なる波長の光で露光されると、該波長に応じた色に発色する(発色)状態、あるいは発色しない(非発色)状態を維持する機能を有している。すなわち、トナーがその内部に光による発色情報の付与により発色可能な発色性物質を有しており、光による発色情報の付与により、トナーが発色または非発色の状態を維持するように制御されるものである。なお、感光性トナーの詳細については後述する。
発色情報付与のための露光波長は、トナーが吸収する波長域である必要があるため使用されるトナーの材料設計により決まるが、例えば、特定波長の光照射により発色するトナー(光発色型トナー)を用いる場合、イエロー(Y色)に発色させるときは405nmの光(λy光)を、マゼンタ(M色)に発色させるときは535nmの光(λm光)を、シアン(C色)に発色させるときは657nmの光(λc光)を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。
図1(A)は記録媒体100上の画像形成領域102内に形成されたカラー画像を表す。例えば、複写により画像を形成する場合は、図1(A)は元の原稿画像である。この例では、画像形成領域102内には、画像が形成される画像部104と、画像が形成されない非画像部106とが存在する。画像部104は、Y色の画像部104Y、M色の画像部104M、C色の画像部104C、及びK色の画像部104Kから構成されている。
上記感光性トナーを用いた画像形成方法で、図1(A)に示す画像を形成する。まず、図1(B)に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及びシアン(C)の3色の画像形成情報の論理和データに基づいて、予め帯電させた感光体の露光領域108を露光する。露光時には、所定の露光開始位置から走査露光を開始して、主走査方向、副走査方向に走査し、露光領域108の全面を露光する。感光体の露光領域108には、図1(A)の画像部104に対応した領域に、静電潜像110が形成される。
次に、図1(C)に示すように、例えば上記感光性トナーを1つの現像器に搭載し、図1(B)の静電潜像110を該トナーで現像する。感光体の露光領域108には、図1(B)の静電潜像110が形成された領域に現像トナー像112が形成される。
次に、図1(D)に示すように、Y、M、及びCの3色の色情報に応じた波長の光(λy光、λm光、λc光)で、感光体の露光領域114を同時に露光する。感光体の露光領域114では、図1(A)の画像部104及び非画像部106に対応した領域に、発色情報が付与される。このとき、発色情報付与のための露光領域114が、静電潜像110を形成するための露光領域108と重なるように露光されると、図1(C)で形成された現像トナー像112が露光され、現像トナー像112に発色情報が付与される。これにより、図1(A)の画像部104に対応した領域に、発色情報が付与されたトナー像116が形成される。
次に、図1(E)に示すように、発色情報が付与されたトナー像116は、記録媒体100上の画像形成領域102に転写される。その後、図1(F)に示すように、熱と圧力により、トナー像116が記録媒体100に定着される。この時、熱によりトナーの発色反応が行なわれ、トナー像116が付与された発色情報に応じて発色する。これにより、記録媒体100上の画像形成領域102内に、Y色、M色、C色、及びK色の発色トナー像118Y、118M、118C、118K(総称する場合は、「発色トナー像118」という)を有するカラー画像(図1(A)と同じ画像)が形成される。なお、K色の発色トナー像は、Y色、M色及びC色に発色したトナーの減色混合により形成される。
上記の感光性トナーを用いる画像形成方法によれば、1つの感光体と1つの現像器とでフルカラー画像を得ることができるので、画像形成装置本体の大きさは限りなくモノクロプリンタ並みの大きさに近づくこととなり、装置の小型化が可能となる。これに加えて、トナー像の形成に際して色毎にトナーを積層する必要がないために画像表面の凸凹が抑制でき、画像表面の光沢を均一にすることができ、更に、トナーに顔料等の着色剤を使わないため、銀塩ライクな画像を得ることも可能である。
<中間調画素の階調再現>
図2(A)及び(B)は従来の着色トナーを用いた画像形成における中間調(ハーフトーン)再現方法を画素単位で示す図である。図2(A)に示す中間調画素200は、図2(B)に示すように、例えば2値のドットマトリックス202として表現される。ドットマトリックス202は、着色トナーで現像されたオンドット204と、現像されていないオフドット206からなり、オンドット204がマトリックス202に占める比率により、階調(濃淡)を表現する。この例では、ドットマトリックス202は、3×3の9個のドットからなり、0〜9階調を表現することができる。
図1を参照して説明した通り、感光性トナーを用いる画像形成方法においては、露光により現像トナー像112に発色情報が付与されて、発色情報が付与されたトナー像116が形成される。このトナー像116が、付与された発色情報に応じて発色し、発色トナー像118となる。しかしながら、現像トナー像112の位置に対し、発色情報を付与する位置がずれてしまうと、発色情報が付与された部分に在る現像トナー像112しか発色せず、現像トナー像112の一部だけが発色トナー像118となる。
特に、中間調画像のハイライト部(低階調濃度部)では、現像される感光性トナーの量自体が少ないので、発色情報を付与する位置の「ずれ」の問題は顕著となる。中間調画像のハイライト部とは、一般には、トナー像における網点面積率(トナーカバレッジ)が20%以下の領域を意味している。図3はハイライト部の再現画素のドットマトリクスの一例を示す図である。3×3のドットマトリクス300は、中央の1ドットだけがオンドット302であり、その外のドットは総てオフドット304である。
図4(A)〜(C)は感光性トナーを用いる画像形成方法において中間調画像のハイライト部の階調再現性が低下する原因を説明するための図である。図3に示すように、中央の1ドットだけがオンドット302のドットマトリクス300からなる画素を再現する場合には、まず、図4(A)に示すように、感光体上に再現画素に対応した現像トナー像306を形成する。現像トナー像306は、中央のドットだけが、オンドット302に対応して感光性トナーで現像された現像ドット308である。
次に、図4(B)に示すように、現像トナー像306を、再現画素に対応した露光パターン310で露光して、発色情報を付与する。露光パターン310により、オンドット302に対応した中央のドット領域312だけが露光され、このドット領域312に在る現像トナー像だけに、発色情報が付与される。
発色情報を付与する位置の「ずれ」が生じると、図4(C)に示したように、発色トナー像314には、現像ドット308の一部だけが発色した発色部316が形成され、色相が変化する等、中間調画像の画質が低下する。このように画素単位で見ると、中間調画像のハイライト部では、1画素中の特定のドットのトナーにピンポイントで発色情報を付与しなければならないことになる。即ち、ハイライト部では、位置ずれが生じると、感光性トナーは所望の色に発色せず、階調再現性が低下し易い。
<中間調画像の階調再現方法>
図5〜図7は感光性トナーを用いる画像形成方法において階調再現性を向上させる方法を説明するための図である。上述した通り、この画像形成方法では、現像トナー像における網点面積率(トナーカバレッジ)が、そのまま再現画像における網点面積率(再現カバレッジ)となる訳ではない。従って、再現画像において所望の再現カバレッジを得るためには、従来とは異なる発想が必要になる。
そこで、低階調濃度の画素を再現する場合には、現像ドットの近傍にあるドットを現像ドットにする。簡単に言えば、感光性トナーが現像される現像ドットを追加するのである。例えば、中央の1ドットだけがオンドット302のドットマトリクス300からなる画素(図3参照)を再現する場合には、オンドット302に対応した現像ドット308の近傍にある1以上のドットを、現像ドット308と同様に、静電潜像露光して、感光性トナーで現像する。
図5(A)及び(B)は1画素に対応した現像トナー像を示す図である。例えば、図5(A)に示すように、オンドット302に対応した現像ドット308と、現像ドット308の4近傍にある現像ドット318と、を有する現像トナー像306Aを形成する。この場合、トナーカバレッジは55%である。或いは、図5(B)に示すように、オンドット302に対応した現像ドット308と、現像ドット308の8近傍にある現像ドット318と、を有する現像トナー像306Bを形成する。この場合、トナーカバレッジは100%である。
図6(A)は図5(A)の現像トナー像に発色情報を付与する様子を示す図であり、図6(B)は図6(A)による発色情報の付与により発色した発色トナー像を示す図である。図5(A)に示すように、現像ドット308とその4近傍に現像ドット318とが形成された現像トナー像306Aは、図6(A)に示すように、露光パターン310の中央のドット領域312だけが露光されて、このドット領域312に在る現像トナー像だけに、発色情報が付与される。
しかしながら、図5(A)に示すように、現像ドットが追加されていると、発色情報を付与する位置の「ずれ」が生じても、図示した通り、ドット領域312は現像ドット308だけでなく現像ドット318とも重なる。その結果、図6(B)に示すように、発色トナー像314Aには、現像ドット308の一部が発色した発色部316Aが形成されると共に、現像ドット318の一部が発色した発色部316B、316Cが形成されて、階調再現を補完する。即ち、現像ドット308とドット領域312とが一致した場合の再現カバレッジ(11%)と、同等の再現カバレッジを確保することができるようになる。
図7(A)は図5(B)の現像トナー像に発色情報を付与する様子を示す図であり、図7(B)は図7(A)による発色情報の付与により発色した発色トナー像を示す図である。上記と同様に、図5(B)に示すように、現像ドット308とその8近傍に現像ドット318とが形成された現像トナー像306Bは、図7(A)に示すように、露光パターン310の中央のドット領域312だけが発色情報付与のために露光されると、発色情報を付与する位置の「ずれ」が生じても、図7(B)に示すように、発色トナー像314Bには、現像ドット308の一部が発色した発色部316Aが形成されると共に、現像ドット318の一部が発色した発色部316B、316Cに加え、発色部316Dが形成されて、階調再現を補完する。再現カバレッジは、現像ドット308とドット領域312とが一致した場合の再現カバレッジに更に近づく。
<階調再現性の制御>
次に、感光性トナーを用いた画像形成方法では、現像トナー像における網点面積率(トナーカバレッジ)が、そのまま再現画像における網点面積率(再現カバレッジ)となる訳ではないという点に着目して、階調再現性を向上させる方法を説明する。
まず、トナーを用いる画像形成方法における階調再現性の問題点について説明する。図8はゼログラフィーの現像カーブを示すグラフである。縦軸はプリント濃度(現像濃度)を表し、横軸は画像の網点面積率を表す。着色トナー像を用いた従来のレーザプリンタでは、現像濃度がトナーカバレッジに相当する。従来のレーザプリンタでは、現像剤の現像性からハイライト部での階調再現性が低く、現像可能な下限値は、画像の網点面積率で7%〜10%程度までであった。それ以下の網点面積率では、トナー像そのものが現像されなかった。
また、網点面積率で7%〜10%程度では、現像が可能といっても、網点面積率が30%や40%のものと比較すると、ばらつきがある、局所的な未現像部がある等、トナー像は弱々しいものであった。一方、画像の網点面積率が60%を超えると、いわゆる「トナーつぶれ」により、定着における像の太りが発生し、見掛け上、画像の網点面積率に対しトナーカバレッジが増加する。
図9(A)及び(B)は、本発明における、現像トナー像における網点面積率(トナーカバレッジ)と、再現画像における網点面積率(再現カバレッジ)との関係を示す図である。着色トナーを用いた従来の画像形成方法に対し、感光性トナーを用いた画像形成方法では、現像トナー像における網点面積率(トナーカバレッジ)と、再現画像における網点面積率(再現カバレッジ)と、を別々にコントロールすることができる。
例えば、図9(A)に示すように、再現カバレッジが20%以下となるハイライト部(低階調濃度部)では、トナーカバレッジを20%以上にすることで、ハイライト部での階調再現性を向上させることができる。この例では、ハイライト部でのトナーカバレッジを20%で一定にしているが、20%〜100%の範囲とすることができる。例えば、図5(A)に示す例ではトナーカバレッジは55%であり、図5(B)に示す例ではトナーカバレッジは100%である。消費トナー量を低減する観点からは、トナーカバレッジが小さいほどよいが、現像安定性の観点からは、トナーカバレッジを30%以上とすることが好ましい。
また、再現カバレッジが20%より大きい部分では、図9(A)に示すように、再現カバレッジが20%に対しトナーカバレッジを20%、再現カバレッジが100%に対しトナーカバレッジを100%というように、トナーカバレッジを再現カバレッジに対応させて同じ値にすることができる。
或いは、図9(B)に示すように、再現カバレッジが60%を超える領域では、「トナーつぶれ」による像の太りや、印刷でよく言われるドットゲイン現象の発生を考慮して、トナーカバレッジが再現カバレッジより小さくなるようにすることができる。この例に示すように、再現カバレッジが100%に対しトナーカバレッジが最大で10%低下するように、トナーカバレッジを徐々に減少させることが好ましい。トナーカバレッジを再現カバレッジより小さくすることで、再現カバレッジが60%以上の中階調濃度部や高階調濃度部でも、階調再現性が向上する。トナーカバレッジを小さくするには、図5(A)及び図5(B)に示した例とは逆に、ドットマトリックスのオンドットに対応する現像ドットを、画素単位で間引けばよい。
なお、ここで再現カバレッジに関係なくトナーカバレッジを常に100%とすること、即ち、露光領域の全面に感光性トナーを現像しておくこともできるが、無駄な現像部分が多くなる。消費トナー量を減らすためには、図9(A)又は図9(B)に示すような関係で、トナーカバレッジを再現カバレッジに対応させることが好ましい。
<実施例>
図10(A)〜(H)はハイライト部の階調再現性を向上させる更に具体的な方法を説明するための図である。この例では、600dpiの解像度で潜像露光を行うと共に、同じ600dpiの解像度で発色情報付与露光を行い、5×5のドットマトリックスを1画素として画像を再現するものである。再現画素である5×5のドットマトリクス400A〜400Dは、2個のオンドット402を含み、その外のドットは総てオフドット404である。
図10(A)に示すように、再現画素のドットマトリクス400Aでは、2個のオンドット402は、0度のスクリーン角度に対応して、5×5のドットマトリックスの「4行2列目」と「4行4列目」とに配置されている。図10(B)に示すように、図10(A)に示す再現画素を得るために、2個のオンドット402に対応した現像ドット408と、現像ドット408の4近傍にある現像ドット418と、を有する現像トナー像406Aを形成する。この場合、トナーカバレッジは36%と十分である。
この現像トナー像406Aに、発色情報を付与するための光を、パルス幅変調して照射した。パルス幅は1ドットの時間を8分割したうちの2単位の時間である。それをオンドット402に対応した2箇所に照射すると、((2×2)/(5×5×8)=4/200=0.02)という計算で、2%の再現カバレッジで画素を再現することができた。即ち、低階調濃度の画素について優れた階調再現性を実現できた。
これは、現像トナー像406Aでは、現像ドット408の4近傍にも現像ドット418が存在するので、現像トナー像に弱々しさがなく、発色情報を付与するための露光時に、位置ずれが発生しても、4近傍の現像ドット418が付与された発色情報に応じて発色して、再現カバレッジの変動を低減するためである。
また、図10(C)に示すように、ドットマトリクス400Bでは、2個のオンドット402は、90度のスクリーン角度に対応して、5×5のドットマトリックスの「4行2列目」と「2行2列目」とに配置されている。図10(D)に示すように、図10(C)に示す再現画素を得るために、現像ドット408及びその4近傍の現像ドット418を有する現像トナー像406Bを形成する。このときのトナーカバレッジは36%である。
また、図10(E)に示すように、ドットマトリクス400Cでは、2個のオンドット402は、45度のスクリーン角度に対応して、5×5のドットマトリックスの「4行2列目」と「2行4列目」とに配置されている。図10(F)に示すように、図10(E)に示す再現画素を得るために、現像ドット408及びその4近傍の現像ドット418を有する現像トナー像406Cを形成する。このときのトナーカバレッジは40%である。
図10(G)に示すように、ドットマトリクス400Dでは、2個のオンドット402は、26.6度のスクリーン角度に対応して、5×5のドットマトリックスの「4行2列目」と「3行4列目」とに配置されている。図10(H)に示すように、図10(G)に示す再現画素を得るために、現像ドット408及びその4近傍の現像ドット418を有する現像トナー像406Dを形成する。このときのトナーカバレッジは40%である。
これら図10(D)、図10(F)、及び図10(H)の何れについても、トナーカバレッジは30%以上と十分であり、発色情報を付与するための露光により、所望の再現カバレッジを得ることができる。従って、図10(B)と同様に、低階調濃度の画素について優れた階調再現性を実現できる。
<画像形成装置>
図11は本発明の画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。この画像形成装置は、通常の電子写真プロセスに用いる感光体(像担持体)10を備えている。感光体10の周りには、帯電装置12、露光装置14、現像装置16、発色情報付与装置28、転写装置18、及びクリーナ20が、感光体10の回転方向に沿ってこの順に設けられている。転写装置18の下流側には、定着装置22が設けられている。定着装置22はトナー像を発色させる発色装置を兼ねている。また、定着装置22の下流側にはトナーの発色を固定化するために記録媒体100への光照射を行う発色固定装置24が設けられている。
上記の画像形成装置では、各装置が以下のように動作して画像を形成する。帯電装置12は、感光体10の表面を一様に帯電させる。露光装置14は、帯電装置12によって帯電された感光体10上を露光して静電潜像を形成する。現像装置16は、感光体10上の静電潜像を上記トナーによって現像して静電潜像に応じたトナー像を形成する。発色情報付与装置28は、特定波長領域の光をトナー像に照射して発色情報を付与する。
この発色情報の付与としての、トナー像を構成するトナーへの特定波長領域の光の照射では、トナー像を複数の領域に分割した各領域(例えば、各画素に対応する領域)に存在するトナーに対して行われ、該各領域のトナーが発色情報を付与された後に加熱されたときに、形成対象の画像の対応する領域(各画素)の色に発色するように、各領域に応じて特定波長の光を照射する。
転写装置18は、感光体10上のトナー像Tを記録媒体100に転写する。定着装置22は、記録媒体100上にトナー像を定着させると共に、トナーに熱を加えて発色させる。発色固定装置24は、記録媒体100に光を照射して、記録媒体100上のトナーの発色を固定化する。なお、クリーナ20は、転写後の感光体10上の残留トナーや紙粉等の異物を感光体10表面から除去する。
また、上記の画像形成装置には、露光装置14、発色情報付与装置28など、画像形成装置の各装置の動作を制御するコントロールユニット30を備えている。更に、上記の画像形成装置には、ユーザに各種の情報を表示し、ユーザが各種の情報を入力するための表示入力部32と、外部から画像データや画像形成指示情報を取得する情報取得部34と、が設けられている。表示入力部32としては、例えば、タッチパネル等が挙げられる。情報取得部34としては、例えば、パラレルポート、シリアルポート、有線または無線によりネットワークに接続可能なネットワークポート等がある。
なお、図11に示す画像形成装置では、現像装置16、転写装置18との間に発色情報付与装置28を設けているが、転写装置18と定着装置22との間に発色情報付与装置28を設けることもできる。この場合には、記録媒体100に転写されたトナー像に、特定波長領域の光を照射して発色情報を付与する。
また、発色情報付与装置28を感光体10の内部に配置して、発色情報付与のための露光を、感光体10の内側から行うこともできる。発色情報付与装置28を感光体10の内部に配置することで、装置全体をよりコンパクト化できる。いわゆる背面露光である。
また、図11に示す画像形成装置では、いわゆる電子写真プロセスで現像トナー像を形成する例について説明しているが、現像トナー像の形成方法はこれに制限されない。電子写真プロセスの外に、誘電体上にイオンなどで静電潜像を形成するプロセス(イオノグラフィ)、液体現像、インクジェット、印刷など、いかなる方法で現像トナー像を形成してもよい。
以下、画像形成装置の主要装置の構成を詳細に説明する。
(感光体)
最初に背面露光で使用される感光体(透明感光体)について説明する。
感光体10は、導電性基材の上に、単層又は多層の感光層が形成されたものである。また、感光体10としては、発色情報付与装置28からの露光光に対し、実質的に透明であれば公知のいかなるものも用いることができる。
導電性基材としては、例えばドラム状、シート状、プレート状等の形状を有するガラス、PETなどの基材上にITOをスパッタしたもの、ITO微粉末をバインダーに分散させ塗布したもの、導電性高分子を塗布したものなどの透明導電層を形成したものが挙げられる。
前記感光層としては、Se、a−Si等の無機感光層、又は有機感光層を設けることができる。また、多層の感光層を形成する場合には、感光層の層構成としては、組成の異なる複数の層を含有する層構成が好ましい。例えば、電荷発生層、電荷輸送層、保護層といった積層構造にすると、それぞれの層がそれぞれの機能を満たせば良いという機能分離ができるため、より高い機能を実現できる。
また、入射した発色情報付与光の散乱をより起こさせ、感光性トナーに十分な情報光を付与するために、金属酸化物やフッ素樹脂粒子等の有機粒子などの粒径が数十ナノメーターから数ミクロンのものを感光層に分散させることが好ましい。ただし、前記のように感光層を光が通過しトナーまでも露光することが必要とされるので、光透過性のよいものがよい。透過性の目安としては、感光層そのもので透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
背面露光でないケースで使用される感光体10は、導電性基材が非透明の金属等の部材であればよい。感光層の構成は上記の透明感光体と同様である。
また、感光体10には、発色情報付与装置28によって発色情報を付与するための光が照射されるが、発色情報を付与するための露光は、通常の潜像形成のための露光よりかなり強い強度で行われる。具体的には、発色情報付与に供する光のエネルギー量は、通常の電子写真プロセスに使用される感光体への光量(2mJ/m2)の約1000倍程度必要である。このため、発色情報の付与による感光体10へのダメージが心配されるが、例えば、感光体10の電荷発生層の光感度を従来の1/1000とすれば、バランスが取れるので問題とはならない。
なお、感光層の厚みは、前記透過性(透明感光体の場合)と、経時による膜減りと、を勘案した帯電電位に耐えられる絶縁性から決められ、おおよそ5μm以上50μm以下の範囲が好ましい。
また、感光体10がベルト状である場合には、透明基体としてPET、PC等の透明樹脂が使用でき、透明基材を必要としないときは、ニッケル等の金属やポリイミドアミド等の樹脂が使用でき、その厚みはベルト状感光体を張架するロールの径、張力等の設計事項から決められ、おおよそ10μm以上500μm以下程度の範囲である。その他の層構成等はドラムの場合と同様である。
更に、感光体10の表面には、次工程における発色情報付与のための露光による感光体10の劣化を防止する機能を持たせることが好ましい。具体的には、感光層の表面に潜像形成のための露光光のみ透過し、発色情報付与のための露光光を反射する若しくは吸収する表面層を設けることが有効である。該表面層としては、ダイクロイックミラーコート(反射)、光吸収物質を分散したシャープカットフィルター(吸収)などを挙げることができる。
一方、イオノグラフィによりトナー像を形成する場合は、感光体10の代わりに誘電体を用いる。誘電体層としては、PET、PC等の透明プラスチックを用いたものを使用することができる。基材は上記の感光体10と同様である。
(帯電装置)
帯電装置12は、感光体10の表面を一様に帯電させる。帯電装置12としては公知の帯電手段が使用できる。接触方式である場合は、ロール、ブラシ、磁気ブラシ、ブレード等が使用でき、非接触の場合は、コロトロン、スコロトロン等が使用できる。帯電手段としてはこれらに限られるものではない。
これらの中でも、帯電補償能力に優れ、オゾンの発生が少ない点で接触型帯電器が好ましく用いられる。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた帯電部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。帯電部材の形状はブラシ状、ブレード状、あるいはロール状等何れでもよいが、特にロール状部材が好ましい。通常、ロール状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。さらに必要に応じて、抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
これらの帯電部材を用いて感光体10を帯電させる方法としては、帯電部材に電圧を印加するが、印加電圧は直流電圧、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流のみで帯電させる場合は、絶対値で所望の表面電位+500V程度の正または負が好ましく、その値は、100V〜1500Vが好ましく、より好ましくは100〜1000Vである。
交流電圧を重畳する場合は、その直流値はおおよそ所望の表面電位±50V程度とし、交流のピーク間電圧(Vpp)が400〜1800V、好ましくは800〜1600V、交流電圧の周波数は50〜20000Hz、好ましくは100〜5000Hzであり、サイン波、方形波、三角波がいずれも使用可能である。また、帯電電位は、電位の絶対値で150〜1000Vの範囲に設定することが好ましい。
(露光装置)
露光装置14は、帯電装置12によって帯電された感光体10上を露光して静電潜像を形成する。静電潜像の形成には公知の露光装置14が使用できる。露光装置14としては、例えば、ROS(Raster Output Scanner;ラスター出力走査装置)を用いたレーザスキャニングシステム、LEDイメージバーシステム、アナログ露光手段、さらにはイオン流制御ヘッド等などを用いることができる。図11における矢印Aのように、露光装置14の光源(図示せず)から感光体10表面に、ビームを照射して露光を行うことが可能である。これ以外にも今後開発される新規な露光手段が本発明の効果を達成する限り使用できる。
露光装置14で露光を行う場合の露光光の波長としては、感光体10の分光感度領域にあるものが使用される。感光体10の感光層としては、発色情報付与のための露光光の波長域に対して、ほとんど吸収のないものが用いられる。このため、静電潜像の形成のための露光には、感光体10の吸収波長域に合わせた波長域の光が用いられる。例えば、感光体10の吸収波長域を700nm以上とすると、露光光として780nmの半導体レーザを用いることが好ましい。
感光体10に対する露光は、反転現像の場合は後述するトナーを現像する位置に、正規現像の場合はトナーを現像する以外の位置に、前記4つの色の画像形成情報の論理和として行なわれる。露光スポット径は、解像度が600dpi〜1200dpiの範囲となるように、40μm〜80μmの範囲となるようにすることが好ましい。
露光光量としては、感光体10上の露光された領域の電位(露光後電位)が、帯電電位の5%以上30%以下程度の範囲となるようにすることが好ましい。露光光量を調整することによって、感光体10上へのトナーの現像量を調整することができ、トナー像の付着量を調整することができる。また、露光位置ごとの必要な付着量に応じて露光光量を変化させることによって、トナーの現像量を変化させることができる。
一方、前記イオノグラフィの場合には、イオン書込みヘッドにより像担持体上に潜像を形成する(イオン書き込み工程)。イオン書込みヘッドとしては、例えば、イオン流を画像信号によりOn/Off制御するもの(特開平4−122654号公報)や、イオン流の発生そのものをOn/Off制御するもの(特開平6−99610号公報)などを用いることができる。なお、この方式の場合、像担持体としては誘電体のみでなく感光体も使用することが可能である。
(現像装置)
現像装置16は、感光体10上の静電潜像を感光性トナーによって現像して静電潜像に応じた現像トナー像を形成する。
現像装置16としては公知の現像手段が使用できる。現像法としては、キャリアと呼ばれるトナーを担持するための微小粒子とトナーからなる二成分現像法、またはトナーのみからなる一成分現像法、またこれらの現像法においてさらに現像その他の特性改善のために別の構成物質が添加される場合もある全ての現像方法が使用できる。
また、現像方法によっては感光体10へ現像剤が接触または非接触で現像を行なうもののいずれもが使用可能である。さらに、前記一成分現像法と二成分現像法とを組み合わせたハイブリッド現像方法も使用可能である。これ以外にも、今後開発される新規な現像手段が本発明の効果を達成する限り使用できる。
なお、前記現像剤に含まれるトナーとしては、例えばY色に発色可能な発色部(Y発色部)、M色に発色可能な発色部(M発色部)及びC色に発色可能な発色部(C発色部)を1つのトナー粒子中に含むものであってもよいし、前記Y発色部、M発色部、C発色部を各々トナーごとに別々に含むものであってもよい。
トナー現像量(感光体に付着させるトナー付着量)としては、形成する画像によっても異なるが、べた画像において3.5〜8.0g/m2の範囲とすることが好ましく、4.0〜6.0g/m2の範囲とすることがより好ましい。
また、形成された現像トナー像において、後述する発色情報付与のための光が、当該照射された部分全体に行き渡らなければならないため、トナー層厚は一定以下に抑えることが好ましい。具体的には、例えばべた画像においてトナー層は3層以下であることが好ましく、2層以下であることがより好ましい。なお、上記トナー層厚は、実際の感光体10表面に形成されたトナー層の厚さを測定し、これをトナーの個数平均粒径で除した値である。
(発色情報付与装置)
発色情報付与装置28は、特定波長領域の光を現像トナー像に照射して発色情報を付与する。発色情報付与装置28としては、発色情報付与時に、発色させるトナー粒子が特定色に発色するための波長の光を所定の解像度と強度とで照射することができる露光手段であればよく、公知の露光手段を使用することもできる。
発色情報付与装置28は、画像データ中の色成分情報に基づいて、発色対象の色に対応して予め定められた波長の光を出射する光源を含んで構成されている。後述するように、本実施の形態では、発色情報付与装置28は、イエロー発色部を発色させる発色情報を付与する光源76Yと、マゼンタ発色部を発色させる発色情報を付与する光源76Mと、シアン発色部を発色させる発色情報を付与する光源76Cと、を含んで構成されている(図12参照)。なお、光源76Y、光源76M、及び光源76Cを区別する必要がない場合には、光源76と総称する。
光源76から出射された光を、感光体10上に形成された現像トナー像を構成する各トナーに照射することにより、各トナーに発色情報が付与される。即ち。光源76Y、光源76M、及び光源76Cの各々から出射された光により、現像トナー像を複数領域に分割した(例えば、ドット毎に分割した)各領域に位置するトナーに、画像データの色に発色するように発色情報が付与される。
発色情報付与装置28としては、例えば、ROSを用いたレーザスキャニングシステム、LEDイメージバーシステム等などを用いることができる。図11における矢印Bのように、発色情報付与装置28の光源(図示せず)から感光体10表面に、ビームを照射して露光を行うことが可能である。これ以外にも今後開発される新規な露光手段が本発明の効果を達成する限り使用できる。
現像トナー像に照射される光の照射スポット径は、形成される画像の解像度が100〜2400dpiの範囲となるよう、10〜300μmの範囲となるように調整されることが好ましく、20〜200μmの範囲とすることがより好ましい。
発色あるいは非発色状態維持のために供される光(発色情報付与のための露光)の波長は、トナーが吸収する波長域である必要があるため使用されるトナーの材料設計により決まるが、例えば、特定波長の光照射により発色するトナー(光発色型トナー)を用いる場合、イエロー(Y色)に発色させるときは405nmの光(λy光とする)を、マゼンタ(M色)に発色させるときは535nmの光(λm光とする)を、シアン(C色)に発色させるときは657nmの光(λc光とする)を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。
また、光発色型トナーで二次色に発色させる時には、前記光の組み合わせになり、レッド(R色)に発色させる時はλy光及びλm光を、グリーン(G色)に発色させる時はλy光及びλc光を、ブルー(B色)に発色させる時はλm光及びλc光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。さらに、三次色であるブラック(K色)に発色させるときは上記λy光、λm光及びλc光をその発色させる所望の位置に重ねて照射する。
一方、特定波長の光照射により非発色状態を維持するトナー(光非発色型トナー)の場合には、例えば、イエロー(Y色)を発色させないようにするときは405nmの光(λy光)を、マゼンタ(M色)に発色させないようにするときは535nmの光(λm光)を、シアン(C色)に発色させないようにするときは657nmの光(λc光)を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。したがって、Y色に発色させる時はλm光及びλc光を、M色に発色させる時はλy光及びλc光を、C色に発色させる時はλy光及びλm光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射することとなる。
また、光非発色型トナーで二次色に発色させる時には、前記光の組み合わせになり、レッド(R色)に発色させる時はλc光を、グリーン(G色)に発色させる時はλm光を、ブルー(B色)に発色させる時はλy光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。さらに、三次色であるブラック(K色)に発色させるときはその発色させる所望の位置には露光しないようにする。
発色情報付与装置28からの光は、必要に応じてパルス巾変調、強度変調、左記2つを組み合わせたものなど、公知の画像変調方法が使用可能である。また、光の露光量は0.05〜0.8mJ/cm2の範囲とすることが好ましく、0.1〜0.6mJ/cm2の範囲とすることがより好ましい。特にこの露光量に関しては、必要露光量は現像されたトナーの量と相関があり、例えば、トナー現像量(べた)が約5.5g/m2に対し0.2〜0.4mJ/m2の範囲の露光を行うことが好ましい。
(転写装置)
転写装置18は、感光体10上のトナー像を記録媒体100に転写する。発色情報を与えられた感光性トナーは、その後一括して記録媒体100に転写される。供給部(図示せず)から供給された記録媒体100が、搬送ロール(図示せず)等によって感光体10と転写装置18とによって挟持される位置まで搬送され、感光体10と転写装置18とによって挟持搬送されることで、感光体10上のトナー像は記録媒体100に転写される。
転写装置18としては公知の転写手段が使用できる。例えば、接触方式である場合は、ロール、ブラシ、ブレード等が使用でき、非接触方式の場合は、コロトロン、スコロトロン、ピンコロトロン等が使用できる。また、圧力、若しくは圧力及び熱による転写も可能である。転写バイアスは300〜1000V(絶対値)の範囲とすることが好ましく、さらに交流(Vpp:400V〜4kV、400〜3kHz)を重畳してもよい。
(定着装置)
定着装置22は、トナー像を発色させる発色手段を兼ねており、記録媒体100上にトナー像を定着させると共に、トナーに熱を加えて発色させる。発色(あるいは非発色状態維持)可能な状態におかれた前記トナー像は、記録媒体100が定着装置22によって加熱されることで発色がなされる。
定着装置22としては公知の定着手段が使用できる。例えば、加熱部材及び加圧部材としてロール、ベルトのそれぞれが選択可能であり、熱源としては、ハロゲンランプ、IH等が使用可能である。その配置も、種々の紙パス、例えばストレートパス、リアCパス、フロントCパス、Sパス、サイドCパス等に対応可能である。
なお、図11に示した画像形成装置では、定着装置22が発色手段と定着手段とを兼ねているが、発色装置は定着装置と別に設けられていてもよい。発色工程を実施するための発色装置を配置する位置は特に制限されない。例えば、定着装置22によって記録媒体100上にトナー像が定着される前に、トナー像を発色させることが可能な位置に配置することができる。
発色の方法については、トナー粒子の発色メカニズムに応じて様々の方法が考えられるため、発色装置(発色手段)としては、例えばさらに異なる波長の光を用いてトナー中に発色関与物質を硬化させ、あるいは光分解させるなどの方法で発色をさせ、または制限する方法では特定光の発光装置、加圧してカプセル化した発色粒子を破壊するなどの方法で発色をさせ、または制限する方法では加圧装置、などを用いることができる。
しかしながら、発色をさせるこうした化学的な反応は、一般的に泳動、拡散による反応速度が遅いため、上記いずれの方法をとるにしても充分な拡散エネルギーを与える必要があり、そういった点で加熱して反応を促す方法が最も優れているといえる。このため、前記発色手段と定着手段とを兼ねる定着装置22を用いることが好ましい。
(発色固定装置)
発色固定装置24は、トナーの発色を固定化するために記録媒体100への光照射を行う。この光照射により発色不可能な状態に制御された発色部中に残存する反応性物質を分解又は失活させることができるため、画像形成後のカラーバランスの変動をより確実に抑制したり、バックグランド色の除去・漂白を行ったりすることができる。
発色固定装置24としては、トナーの発色をこれ以上進めないようにすることができれば特に制限されず、公知のランプ、例えば、蛍光灯、LED、EL等が使用できる。また、照射光の波長は前記トナーを発色させるための光に三波長を含み、照度は2000〜200000luxの範囲程度とすることが好ましく、露光時間は0.5〜60secの範囲とすることが好ましい。
なお、図11に示した画像形成装置では、発色固定装置24は定着装置22の下流側に設けられているが、加熱溶融しない定着方法、例えば圧力を用いて定着させる圧力定着などの場合は、発色固定装置24を定着装置22の上流側に設けることもできる。また、発色固定装置24を省略してもよい。
<画像形成装置の制御系の構成>
次に、画像形成装置の電気的構成について説明する。図12は図11に示す画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
上述したように画像形成装置は、画像形成装置の全体を制御するためのコントロールユニット30を含んで構成されている(図11参照)。コントロールユニット30は、画像形成装置の各部の動作を制御する制御部38、入力された画像データを画像形成装置に適した形式の画像データに変換する画像処理部40、各種データや各種プログラムを記憶するメモリ42、露光装置14を制御する露光制御部46、及び発色情報付与装置28を制御する発色情報付与制御部48を含んで構成されている。
これら制御部38、画像処理部40、メモリ42、露光制御部46、及び発色情報付与制御部48の各々と、表示入力部32と、情報取得部34とは、互いにデータや信号の授受が行えるように、バス31により接続されている。
制御部38は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んだマイクロコンピュータとして構成されている。
画像処理部40は、ページ記述言語(PDL)で記述された画像データやビットマップデータを多値画像に変換し、この多値画像であるYMCデータをスクリーン処理して、YMCデータの各画素の階調がドットマトリックスで表現された2値画像に変換する。或いは、RGBデータとして入力された画像データをYMCデータに色変換し、階調補正し、多値画像であるYMCデータをスクリーン処理して、YMCデータの各画素の階調がドットマトリックスで表現された2値画像に変換する。これによりドット毎にオン/オフするY色書き込み用の画像データ、M色書き込み用の画像データ、及びC色書き込み用の画像データ(以下、「YMC書き込み用の画像データ」という。)が各々生成される。
また、画像処理部40は、ドット毎にYMCの論理和を求め、潜像書き込み用の画像データを生成する。静電潜像露光と発色情報付与露光とで、解像度が異なる画像データを生成してもよい。
更に、画像処理部40は、ページ記述言語(PDL)で記述された画像データ等、入力されたデータを解析して、極薄い濃度領域(ハイライト部)、グラデーション、ハーフトーンを描画する領域など、中間調画像を形成する領域を抽出する。そして、中間調画像を形成する領域に対しては、中間調画像の階調再現性を向上させるために、適応したスクリーン処理を行うと共に、図9(A)又は図9(B)に示したような、トナーカバレッジと再現カバレッジとの相関関係に基づいて、潜像書き込み用の画像データを補正する。
メモリ42には、上述したトナーカバレッジと再現カバレッジとの相関関係を表すルックアップテーブル(LUT)等のデータが記憶されている。
露光制御部46は、入力された画像データに応じて露光装置14の光源74から感光体10表面へ露光される光の強度(例えば、オン/オフ)を制御する。また、露光制御部46には、書き込み開始のタイミング等の設定値を予め記憶した設定値記憶部66が設けられている。露光制御部46は、制御部38から書き込み開始信号が入力されると、設定値記憶部66に記憶された設定値に基づいて、露光装置14の書き込みタイミング等を制御する。これらの露光制御部46の制御によって、露光装置14の光源74による露光が行われて、感光体10表面に静電潜像が形成される。
発色情報付与制御部48は、入力された画像データに応じて発色情報付与装置28の光源76Y、光源76M、光源76Cの各々から、感光体10表面へ露光される光の強度を制御する。また、発色情報付与制御部48には、書き込み開始のタイミング等の設定値を予め記憶した設定値記憶部68が設けられている。発色情報付与装置28の書き込み開始のタイミング等の設定値は、静電潜像を形成するための露光領域108の位置と、発色情報付与のための露光領域114の位置とが、調度重なるように予め設定されている。
発色情報付与制御部48は、制御部38から書き込み開始信号が入力されると、設定値記憶部68に記憶された設定値に基づいて、発色情報付与制御部48の書き込みタイミング等を制御する。これらの発色情報付与制御部48の制御によって、発色情報付与装置28の光源76Y、光源76M、及び光源76Cによる露光が行われて、感光体10表面に形成された現像トナー像に発色情報が付与される。
図13は図12に示す画像形成装置の露光制御系の動作を説明するための機能ブロック図である。画像処理部40は、上述した通り、入力された画像データからYMC書き込み用の画像データを生成するYMC書き込みデータ生成部70と、YMCの論理和を求め、潜像書き込み用の画像データを生成する論理和回路72と、潜像書き込み用の画像データを補正する補正処理部78と、を含んで構成されている。また、発色情報付与制御部48は、設定値記憶部68(図示省略)の外に、イエロー発色制御回路80Y、マゼンタ発色制御回路80Y、シアン発色制御回路80C、及び同期信号を生成する発振回路82を備えている。
イエロー発色制御回路80Yは、発色情報付与装置28のイエロー発色部を発色させる発色情報を付与する光源76Yを駆動制御する。マゼンタ発色制御回路80Mは、発色情報付与装置28のマゼンタ発色部を発色させる発色情報を付与する光源76Mを駆動制御する。シアン発色制御回路80Cは、発色情報付与装置28のシアン発色部を発色させる発色情報を付与する光源76Cを駆動制御する。
ページ記述言語(PDL)で記述された画像データ、ビットマップデータ、RGBデータ等の画像データが入力されると、画像処理部40は、YMC書き込みデータ生成部70で、入力された画像データからYMC書き込み用の画像データを生成し、生成したYMC書き込み用の画像データを論理和回路72に出力する。論理和回路72は、YMCのいずれか一色でも画像データがオンの場合に潜像が書き込まれるように、ドット毎にYMCの論理和を求め、潜像書き込み用の画像データを生成する。
補正処理部78は、中間調画像を形成する領域の場合には、再現画像の網点面積率が予め設定した下限値以下となる階調濃度領域では、1画素に対応するドットマトリクスのオンドットを追加し、再現画像の網点面積率が予め設定した上限値を超える階調濃度領域では、1画素に対応するドットマトリクスのオンドットを一部削除するように、潜像書き込み用の画像データを補正し、露光制御部46に出力する。
露光制御部46は、制御部38から書き込み開始信号が入力されると、設定値記憶部66に設定された書き込みタイミングで走査露光を開始する。また、露光制御部46は、入力された潜像書き込み用の画像データに応じて露光装置14の光源74を駆動制御する。これにより、感光体10表面の所定領域(露光領域108)が露光され、感光体10上に静電潜像が形成される。
YMC書き込みデータ生成部70で生成されたYMC書き込み用の画像データは、発色情報付与制御部48にも出力される。Y色書き込み用の画像データはイエロー発色制御回路80Yに入力され、M色書き込み用の画像データはマゼンタ発色制御回路80Mに入力され、C色書き込み用の画像データはシアン発色制御回路80Cに入力される。また、イエロー発色制御回路80Y、マゼンタ発色制御回路80M、及びシアン発色制御回路80Cには、発振回路82から同期信号が入力される。
発色情報付与制御部48は、制御部38から書き込み開始信号が入力されると、設定値記憶部68に設定された書き込みタイミングで走査露光を開始する。また、イエロー発色制御回路80Yは、入力されたY色書き込み用の画像データに応じて、発色情報付与装置28の光源76Yを駆動制御する。同様に、マゼンタ発色制御回路80Mは、入力されたM色書き込み用の画像データに応じて光源76Mを駆動制御し、シアン発色制御回路80Cは、入力されたC色書き込み用の画像データに応じて光源76Cを駆動制御する。
また、イエロー発色制御回路80Y、マゼンタ発色制御回路80M、及びシアン発色制御回路80Cの各々は、発振回路82から入力された同期信号に同期して、光源76Y、光源76M、光源76Cを駆動する。光源76Y、光源76M、及び光源76Cの各々から出力される光は、感光体10表面の同じ位置に同時に照射される。これにより、感光体10表面の所定領域(露光領域114)が露光され、感光体10上の現像トナー像に発色情報が付与される。
<感光性トナー>
次に、本発明で使用する感光性トナーについて説明する。感光性トナーは、前述のように、例えばトナーの1粒1粒が異なる波長の光で露光されると、該波長に応じた色に発色する(発色)状態、あるいは発色しない(非発色)状態を維持する機能を有している。すなわち、トナーがその内部に光による発色情報の付与により発色可能な発色性物質を有しており、光による発色情報の付与により、トナーが発色または非発色の状態を維持するように制御されるものである。
ここで、前記「光による発色情報の付与」とは、トナー像を構成する個々のトナー粒子単位で発色/非発色状態や発色した際の色調を制御するために、トナー像の所望の領域に対して選択的に1種類以上の特定波長の光を付与する、あるいは、何らの光を付与しないことを意味する。
上記のような機能を有するトナーとしては、種々のタイプがあるが、例えば前記特許文献2に開示されているトナーは、外部刺激を受けて物質透過性が変化するカプセル壁を有する複数のマイクロカプセルをトナー樹脂中に分散混合して成る粒子であり、この粒子中に互いに混合されて発色反応を起こす2種類の反応性物質のうちの一方(各色染料前駆体)が、マイクロカプセル内に、他方(顕色剤)がマイクロカプセル外のトナー樹脂中に含まれるものである。
このトナーでは、カプセル壁として特定波長の光を照射した際に物質透過性が増大する光異性化物質を用い、このシス−トランス遷移を利用して光の照射や超音波を印加した際に、カプセル内外に存在する2種類の反応性物質が反応して発色する。
したがってこの構成のトナーの場合、前記シス−トランス遷移は可逆反応であるため、光刺激によりトランス状態からシス状態への遷移が起こり、顕色剤がカプセル壁をわずかに透過したとしても、プリントプロセス中にトランス状態に戻った場合には加熱による発色時に十分な発色反応(濃度)が得られない場合がある。
このため、本発明では、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、該第1成分及び第2成分のいずれかを含む光硬化性組成物と、を有し、光による発色情報の付与により前記光硬化性組成物が硬化または未硬化の状態を維持して、前記発色のための反応が制御されるトナー(以下、「Fトナー」という場合がある)を用いることが好ましい。
後述するように、上記Fトナーにおいては、トナーに対する発色情報付与メカニズムは可逆反応ではないので、ハイライト画像形成用に発色させたいトナーは低中間調の濃度で安定して発色させることができる。従って、現状の多色インクジェットプリンターに見られるような高画質画像形成が可能となる。さらに、前記のように発色情報付与メカニズムが可逆反応ではないことより、加熱による発色までに時間的制約がないというメリットを有する結果、低速域までのプリントも可能、すなわち、広いスピードレンジに対応可能となり、加えて、加熱による発色が行なわれる定着器等の配置場所についても自由度が高いというメリットを有している。
上記Fトナーの発色メカニズムと簡単な構成について、以下に説明する。
前記Fトナーは、後述するように、バインダー樹脂中に発色部と呼ばれる光による発色情報が付与された際に、特定のひとつの色に発色可能な(または非発色状態を維持することが可能な)連続した領域を1つ以上有する。図14は「Fトナー」中の前記発色部の一例を示す模式図である。図14(A)は1つの発色部の概略的な構造を示す図であり、図14(B)はさらにその発色部に含まれる材料を示す図である。
図14(A)に示すように、発色部60中には、各色の発色剤を含有する発色性マイクロカプセル50とそれを取り巻く組成物58とから構成され、図14(B)に示すように、組成物58は、マイクロカプセル50に含有される発色剤(第1成分)52と近接または接触することで発色させる重合性官能基を有した顕色剤モノマー(第2成分)54と光重合開始剤56とを含んでいる。
トナー粒子を構成する発色部60において、発色性マイクロカプセル50に封入する発色剤52としては、発色色相の鮮やかさに優れたトリアリール系ロイコ化合物などが好適である。このロイコ化合物(電子供与性)を発色させる顕色剤モノマー54としては電子受容性化合物が好ましい。特にフェノール系化合物が一般的であり、感熱、感圧紙などに利用されている顕色剤から適宜選択できる。このような電子供与性の発色剤52と電子受容性の顕色剤モノマー54とが酸塩基反応することで発色剤が発色することになる。
光重合開始剤56としては、可視光により感光し顕色剤モノマー54を重合させるためのトリガーとなる重合性ラジカルを発生する分光増感色素が用いられる。例えば、R色、G色、B色の如き三原色露光に対して、顕色性モノマー54が十分な重合反応を進行させることができるように光重合開始剤56の反応促進剤が用いられる。例えば、露光光を吸収する分光増感色素(カチオン)とホウ素化合物(アニオン)からなるイオンコンプレックスを用いることにより、露光により分光増感色素が光励起されホウ素化合物に電子移動することで重合性ラジカルが生成し重合を開始する。
これらの材料を組み合わせることにより、感光性の発色部60として、0.1〜0.2mJ/cm2程度の発色記録感度を得ることができる。
上記構成の発色部60に対する発色情報のための光照射の有無により、発色部60によっては重合された顕色剤化合物と重合されなかった顕色剤モノマー54とを有するものが存在することになる。その後の加熱などの発色装置によって、重合されなかった顕色剤モノマー54を有する発色部60では、この顕色剤モノマー54が熱などによって泳動し、発色剤マイクロカプセル50の隔壁の空孔を泳動通過して発色剤マイクロカプセル中に拡散する。マイクロカプセル50中に拡散された顕色剤モノマー54と発色剤52とは、前述のように発色剤52が塩基性であり、顕色剤モノマー54が酸性であることにより発色剤52を酸塩基反応によって発色させることになる。
一方、重合反応を生じた顕色剤化合物は、この後の加熱などによる発色工程では重合による嵩高さによりマイクロカプセル50の隔壁の空孔を拡散通過できず、発色性マイクロカプセル中の発色剤52と反応ができないため発色することができない。したがって、発色性マイクロカプセル50は無色のままで残ることとなる。すなわち、特定波長光を照射された発色部60は発色されに存在することになる。
発色後、適当な段階で再度全面を白色光源で露光することにより、残留している重合未了の顕色性モノマー54を全て重合させて安定した画像定着がなされるとともに、残留分光増感色素を分解することで地色の消色が行われる。なお、可視光域に対応する光重合開始剤56の分光増感色素はその色調が最後まで地色として残留してしまうが、この分光増感色素の消色には色/ホウ素化合物の光消色現象を利用することができる。すなわち、光励起された分光増感色素からホウ素化合物に電子移動することで重合性ラジカルが生成するが、このラジカルはモノマーの重合を引き起こす一方で、励起された色素ラジカルと反応して色素の色分解を起し、結果的に色素を消色させることができる。
前記Fトナーでは、このような異なる発色を行なう発色部60(例えば、Y色、M色、C色に発色する)を、それぞれの顕色剤モノマー54が目的とする発色剤52以外の発色剤と干渉し合わない状態(互いに隔離された状態)にして一つのマイクロカプセルとして構成し用いることができる。そしてこのFトナーでは、電子供与性発色剤を含むマイクロカプセル以外の空間を電子受容性顕色剤及び光硬化性組成物が埋め、かつこれにより構成される発色部が受光するため、一粒のトナー粒子における受光効率のよさは、前記特許文献2に開示されたトナーに比べ圧倒的に高い。したがって、他のトナーと比較して、例えば前記背面露光の場合の効果を十分に活用できるものである。
さらに、前記のように発色情報付与メカニズムが可逆反応ではないことより、加熱による発色までに時間的制約がないというメリットを有する結果、低速域までのプリントも可能、すなわち、広いスピードレンジに対応可能となり、加えて、加熱による発色が行なわれる定着器等の配置場所についても自由度が高いというメリットも有している。
Fトナーの構成について、さらに詳述する。
Fトナーは、発色可能な物質(発色性物質)として、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分と第2成分とを含む。このように、2種類の反応性成分の反応を利用して発色させることにより、発色の制御が容易になる。なお、前記第1成分、第2成分は、発色する前の状態において予め着色していてもよいが、実質的に無色の物質であることが特に好ましい。
前記発色制御を容易とするために、発色性物質として互いに反応した際に発色する2種類の反応性成分を用いるが、これらの反応性成分が、光による発色情報が付与されない状態でも物質拡散が容易な同一のマトリックス内に存在すると、トナーの保管時や製造時において、自発的な発色が進行してしまう場合がある。
このため、前記反応性成分は、その種類毎に、発色情報が付与されない限り互いの領域への物質拡散が困難な異なるマトリックス内に含まれていること(互いに隔離されていること)が必要である。
このように光による発色情報が付与されない状態での物質拡散を阻害して、トナーの保管時や製造時における自発的な発色を防止するためには、2種類の反応性成分の第1成分が第1のマトリックスに含まれ、第2成分が第1のマトリックス外(第2のマトリックス)に含まれ、第1のマトリックスと第2のマトリックスとの間には、両マトリックス間の物質の拡散が阻害されると共に、熱等の外部刺激が付与された際には、刺激の種類、強度や、組み合わせに応じて両マトリックス間の物質の拡散を可能とするような機能を持つ隔壁が設けられることが好ましい。
なお、このような隔壁を利用して2種類の反応性成分をトナー中に配置するには、マイクロカプセルを利用することが好適である。
この場合、Fトナーには、2種類の反応性成分のうち、例えば第1成分がマイクロカプセル内に含まれ、第2成分がマイクロカプセル外に含まれることが好ましい。この場合、マイクロカプセル内部が前記第1のマトリックス、マイクロカプセル外が前記第2のマトリックスに相当する。
このマイクロカプセルは、芯部と、該芯部を被覆する外殻とを有するものであり、熱等の外部刺激が付与されない限りマイクロカプセル内外の物質の拡散を阻害すると共に、外部刺激が付与された際には、刺激の種類、強度や、組み合わせに応じてマイクロカプセル内外の物質の拡散を可能とする機能を有するものであれば特に限定されない。なお芯部には、前記反応性成分の一方が少なくとも含まれる。
また、マイクロカプセルは、光の照射や圧力などの刺激の付与によってマイクロカプセル内外の物質拡散を可能とするものでもよいが、加熱処理によりマイクロカプセル内外の物質拡散を可能とする(外殻の物質透過性が増大する)熱応答性マイクロカプセルであることが特に好ましい。
なお、刺激が付与された際のマイクロカプセル内外の物質拡散は、画像形成時の発色濃度の低下を抑制したり、高温環境下に放置された画像のカラーバランスの変化を抑制する観点からは、不可逆的なものであることが好ましい。それゆえ、マイクロカプセルを構成する外殻は、加熱処理や光照射等の刺激の付与による軟化、分解、溶解(周囲の部材への相溶)、変形等により、物質透過性が不可逆的に増大する機能を有することが好ましい。
次に、前記Fトナーがマイクロカプセルを含む場合の好ましい構成について説明する。
このようなトナーとしては、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、マイクロカプセルと、第2成分を分散させた光硬化性組成物とを含むものであることが好ましく、このようなトナーとしては、以下の3つの態様が挙げられる。
すなわち、前記Fトナーは、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含み、第1成分がマイクロカプセルに含まれ、第2成分が光硬化性組成物中に含まれる態様(第1の態様)、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、光硬化性組成物を含むマイクロカプセルとを含み、第1成分がマイクロカプセル外に含まれ、第2成分が光硬化性組成物内に含まれる態様(第2の態様)、あるいは、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、第1成分を含む一のマイクロカプセルと、第2成分を分散させた光硬化性組成物を含む他のマイクロカプセルとを含む態様(第3の態様)のいずれかであることが好ましい。
これら3つの態様の中では、特に第1の態様が、光による発色情報付与前の安定性、発色の制御等の観点から好ましい。なお、以下のトナーの説明においては、基本的に第1の態様のトナーを前提としてより詳細に説明するが、以下に説明する第1の態様のトナーの構成、材料、製法等は、第2の態様や第3の態様のトナーにおいても、勿論、利用/転用可能である。
なお、上述した熱応答性マイクロカプセルと光硬化性組成物とを組み合わせて用いたFトナーは、以下の2つのタイプのいずれかであることが特に好ましい。
(1)光硬化性組成物が未硬化の状態で加熱処理しても、未硬化の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が抑制され、発色情報付与光の照射によって光硬化性組成物が硬化した後に加熱処理すると、硬化後の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が促進されるタイプのトナー(以下、「光発色型トナー」と称す場合がある)。
(2)光硬化性組成物が未硬化の状態(第2成分が重合していない状態)で加熱処理すると、未硬化の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が促進され、発色情報付与光の照射によって光硬化性組成物が硬化した後(第2成分が重合した後)に加熱処理すると、硬化後の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が抑制されるタイプのトナー(以下、「光非発色型トナー」と称す場合がある)。
前記光発色型トナーと光非発色型トナーとの主たる違いは、光硬化性組成物を構成する材料にあり、光発色型トナーでは、光硬化性組成物中に(光重合性を有さない)第2成分と光重合性化合物とが少なくとも含まれるのに対して、光非発色型トナーは、光硬化性組成物中に、分子中に光重合性基を有する第2成分が少なくとも含まれる。
なお、光発色型トナーおよび光非発色型トナーに用いられる光硬化性組成物中には、光重合開始剤が含まれていることが特に好ましく、必要に応じてその他種々の材料が含まれていてもよい。
上記光発色型トナーに用いられる光重合性化合物および第2成分としては、光硬化組成物が未硬化の状態で両者の間に相互作用が働き、光硬化性組成物中での第2成分の物質拡散が抑制され、発色情報付与光の照射による光硬化性組成物の硬化(光重合性化合物の重合)後の状態で両者の間の相互作用が減少して、光硬化性組成物中での第2成分の拡散が容易となる材料が用いられる。
従って、光発色型トナーにおいては、加熱処理(発色工程)前に予め光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光を照射しておくことによって、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が容易な状態となる。このため、加熱処理された際に、マイクロカプセルの外殻の溶解等によって、マイクロカプセル内の第1成分と光硬化性組成物中の第2成分との反応(発色反応)が起こる。
逆に、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光を照射せずに、そのまま加熱処理しても第2成分は光重合性化合物にトラップされ、マイクロカプセル中の第1成分と接触することができず、第1成分と第2成分との反応(発色反応)が起こらない。
以上説明したように、光発色型トナーでは、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光の照射の有無と、加熱処理とを組み合わせて付与することによって、第1成分と第2成分との反応(発色反応)を制御できるため、トナーの発色を制御できる。
また、光非発色型トナーにおいては、第2成分自体が光重合性を有するため、発色情報付与光を照射したとしても、この光の波長が光硬化性組成物を硬化させる波長でなければ、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が容易な状態を保てるため、この状態で加熱処理するとマイクロカプセルの外殻の溶解等によって、マイクロカプセル内の第1成分と光硬化性組成物中の第2成分との反応(発色反応)が起こる。
逆に、加熱処理前に光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光が照射されると、光硬化性組成物中に含まれる第2成分同士が重合してしまうため、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が困難となる。それゆえ、加熱処理しても第2成分は、マイクロカプセル中の第1成分と接触することができず、第1成分と第2成分との反応(発色反応)が起こらない。
以上説明したように、光非発色型トナーでは、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光の照射の有無と、加熱処理とを組み合わせて付与することによって、第1成分と第2成分との反応(発色反応)を制御できるため、トナーの発色を制御できる。
次に、前記Fトナーの好適な構造について、トナーが、前記光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む場合についてより詳細に説明する。
この場合、トナーは光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を1つのみ有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。ここで、上記「発色部」とは、前述のように外部刺激が付与された際に、特定のひとつの色に発色可能な連続した領域を意味する。
なお、トナーに2以上の発色部が含まれる場合、同じ色に発色可能な1種類の発色部のみがトナー中に含まれていてもよいが、互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部がトナー中に含まれることが特に好ましい。その理由は、ひとつのトナー粒子の発色可能な色が、前者の場合は1種類のみに限定されるが、後者の場合は2種類以上とすることができるからである。
例えば、互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部としては、イエロー色に発色可能なイエロー発色部と、マゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色部と、シアン色に発色可能なシアン発色部とを含むような組み合わせが挙げられる。
この場合、例えば、外部刺激の付与によりいずれか1種類の発色部のみが発色した場合には、トナーは、イエロー、マゼンタ、あるいは、シアンのいずれかの色に発色することができ、いずれか2種類の発色部が発色した場合には、これら2種類の発色部の発色した色を組み合わせた色に発色することができ、ひとつのトナー粒子で、多様な色を表現することが可能となる。
なお、トナー中に互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部が含まれる場合の発色する色の制御は、各々の種類の発色部に含まれる第1成分および第2成分の種類や組み合わせを異なるものとすることの他に、各々の種類の発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に用いる光の波長を異なるものとすることにより実現できる。
すなわち、この場合、発色部の種類毎に発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に必要な光の波長が異なるため、制御刺激として、発色部の種類に応じた波長の異なる複数種の発色情報付与光を用いればよい。なお、発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に必要な光の波長を異なるものとするには、発色部の種類毎に異なる波長の光に感応する光重合開始剤を光硬化性組成物中に含有させることが好適である。
例えば、イエロー、マゼンタ、および、シアンに発色可能な3種類の発色部がトナー中に含まれる場合、各々の種類の発色部に含まれる光硬化性組成物として、光の波長が405nm、532nmおよび657nmのいずれかに応答して硬化する材料を用いれば、これら3つの異なる波長の発色情報付与光(特定波長を有する光)を使い分けることによって、トナーを所望の色に発色させることができる。
なお、発色情報付与光の波長としては、可視域の波長から選択することもできるが、紫外域の波長から選択してもよい。
本発明に用いるトナーは、従来の顔料等の着色剤を用いたトナーに用いられるのと同様な結着樹脂を主成分とする母材を含むものであってもよい。この場合、母材中に、前記2以上の発色部の各々が粒子状のカプセルとして分散していることが好ましい(以下、カプセル状のひとつの発色部を「感光・感熱カプセル」と称する場合がある)。また、母材中には、従来の顔料等の着色剤を用いたトナーと同様に離型剤や、種々の添加剤が含まれていてもよい。
感光・感熱カプセルは、マイクロカプセルや光硬化性組成物を含む芯部と、該芯部を被覆する外殻とを有し、この外殻は、後述するトナーの製造過程や、トナーの保管時において、感光・感熱カプセル内のマイクロカプセルや光硬化性組成物を感光・感熱カプセル外に漏れないように安定して保持できるものであれば特に限定されない。
しかしながら、本発明においては、後述するトナーの製造過程において、第2成分が外殻を透過して感光・感熱カプセル外のマトリックスへ流出したり、他の色に発色可能な感光・感熱カプセル中の第2成分が外殻を透過して流入したりするのを防ぐために、非水溶性樹脂からなる結着樹脂や離型材等の非水溶性材料を主成分として含むものであることが好ましい。
次に、前記Fトナーに用いられるトナー構成材料や、各トナー構成材料を調整する際に用いる材料・方法等について以下により詳細に説明する。
この場合、トナーには、第1成分、第2成分、第1成分を含むマイクロカプセル、第2成分を含む光硬化性組成物が少なくとも用いられ、光硬化性組成物中には光重合開始剤が含まれることが特に好ましく、種々の助剤等が含まれていてもよい。また、マイクロカプセル内(芯部)には第1成分が固体状態で存在していてもよいが、溶媒と共に存在していてもよい。
なお、前記光非発色型トナーにおいては、第1成分として電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物等が用いられ、第2成分として光重合性基を有する電子受容性化合物又は光重合性基を有するカプラー化合物等が用いられる。また、前記光発色型トナーにおいては、第1成分としては、電子供与性無色染料が用いられ、第2成分としては電子受容性化合物(「電子受容性顕色剤」あるいは「顕色剤」と称す場合がある)が用いられ、光重合性化合物としてはエチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物が用いられる。
以上に列挙した材料に加えて、更に、従来の着色剤を用いたトナーを構成する材料と同様の各種材料;結着樹脂、離型剤、内添剤、外添剤等を必要に応じて適宜利用することができる。以下、各材料等についてより詳細に説明する。
−第1成分および第2成分−
第1成分および第2成分の組合せとしては、下記(ア)〜(ツ)の組合せを好適に挙げることができる(下記例において、それぞれ前者が第1成分、後者が第2成分を表す。)。
(ア)電子供与性無色染料と電子受容性化合物との組合せ。
(イ)ジアゾニウム塩化合物とカップリング成分(以下、適宜「カプラー化合物」と称する。)との組合せ。
(ウ)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機酸金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ。
(エ)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪酸鉄塩と、タンニン酸、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ。
(オ)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀塩のような有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属硫化物との組合せ、又は前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ。
(カ)銀、鉛、水銀、ナトリウム等の硫酸塩等の重金属硫酸塩と、ナトリウムテトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ。
(キ)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ク)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機酸金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ケ)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪酸第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ。
(コ)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ。
(サ)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪族重金属塩とジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ。
(シ)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せのようなオキサジン染料を形成するもの。
(ス)ホルマザン化合物と還元剤および/又は金属塩との組合せ。
(セ)保護された色素(又はロイコ色素)プレカーサーと脱保護剤との組合せ。
(ソ)酸化型発色剤と酸化剤との組合せ。
(タ)フタロニトリル類とジイミノイソインドリン類との組合せ。(フタロシアニンが生成する組合せ。)
(チ)イソシアナート類とジイミノイソインドリン類との組合せ(着色顔料が生成する組合せ)。
(ツ)顔料プレカーサーと酸または塩基との組合せ(顔料が形成する組合せ)。
上記に列挙した第1成分としては、実質的に無色の電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物が好ましい。
前記電子供与性無色染料としては、従来より公知のものを使用することができ、前記第2成分と反応して発色するものであれば全て使用することができる。 具体的には、フタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、ピリジン系、ピラジン系化合物、フルオレン系化合物等の各種化合物を挙げることができる。
前記第2成分としては、前記光非発色型トナーの場合は同一分子内に光重合性基および第1成分と反応して発色する部位とを有する実質的に無色化合物であり、光重合性基を有する電子受容性化合物又は光重合性基を有するカプラー化合物等の第1成分と反応して発色し、かつ光に反応して重合し、硬化するという両機能を有するものであれば全て使用することができる。
前記光重合性基を有する電子受容性化合物、即ち、同一分子中に電子受容性基と光重合性基とを有する化合物としては、光重合性基を有し、かつ第1成分の一つである電子供与性無色染料と反応して発色し、かつ光重合して硬化しうるものであれば全て使用することができる。
また、光発色型トナーの場合の第2成分である電子受容性顕色剤としては、フェノール誘導体、含硫フェノール誘導体、有機のカルボン酸誘導体(例えば、サリチル酸、ステアリン酸、レゾルシン酸等)、及びそれらの金属塩等、スルホン酸誘導体、尿素もしくはチオ尿素誘導体等、酸性白土、ベントナイト、ノボラック樹脂、金属処理ノボラック樹脂、金属錯体等が挙げられる。
さらに、光発色型トナーには、光重合性化合物としてエチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物が用いられ、これはアクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類などの分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物である。
次に、前記光重合開始剤について説明する。前記光重合開始剤は、発色情報付与光を照射することによりラジカルを発生して光硬化性組成物内で重合反応を起こし、かつその反応を促進させることができる。この重合反応により光硬化性組成物が硬化する。
前記光重合開始剤は、公知のものの中から適宜選択することができ、中でも、300〜1000nmに最大吸収波長を有する分光増感化合物と、該分光増感化合物と相互作用する化合物と、を含有するものであることが好ましい。
但し、前記分光増感化合物と相互作用する化合物が、その構造内に300〜1000nmに最大吸収波長を有する色素部とボレート部との両構造を併せ持つ化合物であれば、前記分光増感色素を用いなくてもよい。
前記分光増感化合物と相互作用する化合物としては、前記第2成分中の光重合性基と光重合反応を開始しうる公知の化合物の中から、1種又は2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。
この化合物を前記の分光増感化合物と共存させることにより、その分光吸収波長領域の照射光に敏感に感応し、高効率にラジカルを発生させうることから、高感度化が図れ、かつ紫外〜赤外領域にある任意の光源を用いてラジカルの発生を制御することができる。
前記「分光増感化合物と相互作用する化合物」としては、有機系ボレート塩化合物、ベンゾインエーテル類、トリハロゲン置換メチル基を有するS−トリアジン誘導体、有機過酸化物又はアジニウム塩化合物が好ましく、有機系ボレート塩化合物がより好ましい。この「分光増感化合物と相互作用する化合物」を前記分光増感化合物と併用して用いることにより、露光した露光部分に局所的に、かつ効果的にラジカルを発生させることができ、高感度化を達成することができる。
また、光硬化性組成物には重合反応を促進する目的で、さらに助剤として、酸素除去剤(oxygen scavenger)又は活性水素ドナーの連鎖移動剤等の還元剤や連鎖移動的に重合を促進するその他の化合物を添加することもできる。
前記酸素除去剤としては、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト、第1銀塩又は酸素により容易に酸化されるその他の化合物が挙げられる。具体的には、N−フエニルグリシン、トリメチルパルビツール酸、N,N−ジメチル−2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリン酸が挙げられる。さらに、チオール類、チオケトン類、トリハロメチル化合物、ロフィンダイマー化合物、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類、有機過酸化物、アジド類等も重合促進剤として有用である。
Fトナーでは、電子供与性無色染料やジアゾニウム塩化合物のような第1成分をマイクロカプセルに内包して使用する。
マイクロカプセル化する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、米国特許第2800457号、同28000458号に記載の親水性壁形成材料のコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号、英国特許第990443号、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報、同42−771号公報等に記載の界面重合法、米国特許第3418250号、同3660304号に記載のポリマー析出による方法、米国特許第3796669号に記載のイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号に記載のイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同4087376号、同4089802号に記載の尿素−ホルムアルデヒド系、尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025455号に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシブロビルセルロース等の壁形成材料を用いる方法、特公昭36−9168号、特開昭51−9079号に記載のモノマーの重合によるin situ法、英国特許第952807号、同965074号に記載の電解分散冷却法、米国特許第3111407号、英国特許第930422号に記載のスプレードライング法、特公平7−73069号公報、特開平4−101885号公報、特開平9−263057号公報に記載の方法等が挙げられる。
使用しうるマイクロカプセル壁の材料は、油滴内部及び/又は油滴外部に添加される。前記マイクロカプセル壁の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアがより好ましい。前記高分子物質は、2種以上併用して用いることもできる。
マイクロカプセルの体積平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲内となるように調整することが好ましく、0.3〜1.0μmの範囲内となるように調整することが更に好ましい。
前記感光・感熱カプセルにはバインダーが含まれていてもよく、これは、1つの発色部を有するトナーにおいても同様である。
バインダーとしては、前記光硬化性組成物の乳化分散に用いるバインダーと同様のもの、第1の反応性物質をカプセル化する際に用いる水溶性高分子のほか、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリメチルアクリレート,ポリブチルアクリレート,ポリメチルメタクリレート,ポリブチルメタクリレートやそれらの共重合体等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エチルセルロース、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の溶剤可溶性高分子、或いは、これらの高分子ラテックスを用いることもできる。中でも、ゼラチン及びポリビニルアルコールが好ましい。また、バインダーとして後述する結着樹脂を用いてもよい。
また、Fトナーには、従来のトナーに用いられている結着樹脂を用いることができる。結着樹脂は、例えば、母材中に感光・感熱カプセルが分散した構造を有するトナーでは、母材を構成する主成分や感光・感熱カプセルの外殻を構成する材料として利用することができるがこれに限定されるものではない。
結着樹脂としては特に限定されず、公知の結晶性や非晶性の樹脂材料を用いることができる。特に低温定着性を付与するには、シャープメルト性がある結晶性ポリエステル樹脂が有用である。また、無定形高分子(非晶質樹脂)としては、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂など公知の樹脂材料を用いることができるが、非結晶性ポリエステル樹脂が特に好ましい。
その他、Fトナーは、上記に列挙した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、離型剤、無機微粒子、有機微粒子、帯電制御剤等の従来のトナーに用いられている公知の各種添加剤等が挙げられる
次に、Fトナーの製造方法について簡単に説明する。
Fトナーは、凝集合一法等の公知の湿式製法を利用して作製されることが好ましい。特に、互いに反応した際に発色する第1成分および第2成分と、光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含み、前記第1成分が前記マイクロカプセルに含まれ、前記第2成分が前記光硬化性組成物中に含まれる構造を有するトナーの作製に湿式製法は好適である。
なお、上記構造を有するトナーに用いられるマイクロカプセルは熱応答性マイクロカプセルであることが特に好ましいが、光等、その他の刺激に応答するマイクロカプセルであってもよい。
トナーの製造には、公知の湿式製法が利用できるが、湿式製法の中でも最高プロセス温度を低く抑えることができると共に、様々な構造を有するトナーの作製が容易であることから凝集合一法を利用することが特に好ましい。
また、従来の顔料や結着樹脂を主成分とするトナーと比べると、上記構造を有するトナーは、低分子成分を主成分として含む光硬化性組成物が多く含まれるため、トナーの造粒過程で得られる粒子の強度は不十分となりやすいが、凝集合一法では、高いせん断力を必要としないため、この点でも凝集合一法を利用することは好適である。
一般的に、凝集合一法は、トナーを構成する各種材料の分散液を調製した後、2種類以上の分散液を混合した原料分散液中で凝集粒子を形成する凝集工程と、原料分散液に形成された凝集粒子を融合する融合工程とを含むものであり、必要に応じて凝集工程と融合工程との間に、凝集粒子の表面に被覆層を形成する成分を付着させて被覆層を形成する付着工程(被覆層形成工程)とが実施されるものである。
Fトナーの製造においても、原料として使用する各種分散液の種類や組み合わせは異なるものの、凝集工程、融合工程の他に、必要に応じて付着工程を適宜組み合わせることによりトナーを作製することができる。
例えば、樹脂中に感光・感熱カプセル分散構造を有するトナーの場合には、まず、(a1)第1成分を含むマイクロカプセルを分散させたマイクロカプセル分散液と、第2成分を含む光硬化性組成物を分散させた光硬化性組成物分散液とを含む原料分散液中にて第1の凝集粒子を形成する第1の凝集工程と、(b1)前記第1の凝集粒子が形成された原料分散液に、樹脂粒子を分散させた第1の樹脂粒子分散液を添加して、前記凝集粒子表面に前記樹脂粒子を付着させる付着工程と、(c1)前記樹脂粒子をその表面に付着させた凝集粒子を含む原料分散液を加熱して融合させ、第1の融合粒子(感光・感熱カプセル)を得る第1の融合工程とを経ることにより、互いに異なる色に発色可能な1種類以上の感光・感熱カプセル分散液を調製する。
続いて、(d1)前記1種類以上の感光・感熱カプセル分散液と、樹脂粒子を分散させた第2の樹脂粒子分散液とを混合した混合溶液中にて、第2の凝集粒子を形成する第2の凝集工程と、(e1)前記第2の凝集粒子を含む混合溶液を加熱して、第2の融合粒子を得る第2の融合工程とを経ることにより、感光・感熱カプセル分散構造を有するトナーを得ることができる。
なお、第2の凝集工程で用いる感光・感熱カプセル分散液の種類は2種類以上が好ましい。また、(a1)〜(c1)工程を経て得られた感光・感熱カプセルをそのままトナー(すなわち1つの発色部のみを含むトナー)として利用してもよい。
また、1つの発色部のみを含むトナーを作製する場合、上述した付着工程の代わりに、前記第1の凝集粒子が形成された原料分散液に、離型剤を分散させた離型剤分散液を添加して、凝集粒子表面に離型剤を付着させる第1の付着工程と、第1の付着工程を経た後の原料分散液に、樹脂粒子を分散させた第1の樹脂粒子分散液を添加して、この離型剤を表面に付着させた凝集粒子表面に樹脂粒子を付着させる第2の付着工程とを実施してもよい。
本発明に用いることが可能なトナーの体積平均粒径は、特に限定されず、トナーの構造や、トナー中に含まれる発色部の種類・数に応じて適宜調整することができる。
しかしながら、トナー中に含まれる互いに異なる色に発色可能な発色部の種類が2〜4種類前後(例えば、トナーがイエロー、シアン、マゼンタの各々に発色可能な3種類の発色部を含むような場合)であれば、各々のトナー構造に応じた体積平均粒径は以下の範囲内であることが好ましい。
すなわち、例えばトナーの構造が樹脂中に感光・感熱カプセル(発色部)分散構造の場合には、トナーの体積平均粒径は5〜40μmの範囲内が好ましく、10〜20μmの範囲内がより好ましい。また、このような粒径を有する感光・感熱カプセル分散構造型のトナー中に含まれる感光・感熱カプセルの体積平均粒径は1〜5μmの範囲内であることが好ましく、1〜3μmの範囲内であることが好ましい。
トナーの体積平均粒径が5μm未満では、トナー中に含まれる発色成分量が少なくなるため色再現性が悪化したり、画像濃度が低下してしまう場合がある。また、体積平均粒径が40μmを超えると、画像表面の凹凸が大きくなり、画像表面の光沢ムラが発生してしまう場合がある。また画質が低下する場合がある。
なお、その内部に複数の感光・感熱カプセルを分散させた感光・感熱カプセル分散構造型のトナーは、従来の着色剤を用いた小径トナー(体積平均粒径5〜10μm程度)と比べると粒径が大きくなる傾向にあるものの、画像の解像度は、トナーの粒径ではなく感光・感熱カプセルの粒径により決定されるため、より高精細な画像を得ることができる。加えて、粉体流動性にも優れるため、外添剤の量が少なくても十分な流動性が確保できると共に、現像性やクリーニング性も向上させることができる。
一方、1つの発色部のみを有するトナーの場合には、上述した場合と比べると小径化がより容易であり、その体積平均粒径は3〜8μmの範囲内が好ましく、4〜7μmの範囲内が好ましい。体積平均粒径が3μm未満の場合には粒径が小さすぎるために粉体流動性が十分に得られなくなったり、十分な耐久性が得られない場合がある。また、体積平均粒径が8μmを超えると、高精細な画像が得られなくなる場合がある。
本発明には、以上説明したFトナーをはじめ、光照射により(あるいは光が照射されないことにより)発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーであれば、用いる構成材料、トナーの構造、発色機構等によらず用いることができる。
本発明に用いることができるトナーは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.95以上であることが好ましい。
更に好ましくは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.25以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.97以上であることが更に好ましい。
体積分布指標GSDvが1.30を超えた場合には、画像の解像性が低下する場合があり、また、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpの比(GSDv/GSDp)が0.95未満の場合、トナーの帯電性低下やトナーの飛散、カブリ等が発生し画像欠陥を招く場合がある。
なお、本発明において、トナーの体積平均粒径や、上記した体積平均粒度分布指標GSDv、及び数平均粒度分布指標GSDpの値は、次のようにして測定し算出した。
まず、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)等の測定器を用いて測定されたトナーの粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のトナー粒子の体積および数について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16v、および、数平均粒子径D16pと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50v、および、数平均粒子径D50pと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、および、数平均粒子径D84pと定義する。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、(D84v/D16v)1/2として定義され、数平均粒度指標(GSDp)は、(D84p/D16p)1/2として定義されるこれらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)および数平均粒度指標(GSDp)を算出できる。
また、前記マイクロカプセルや感光・感熱カプセルの体積平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所製)を用いて測定することができる。
また、本発明のトナーは、下式(1)で表される形状係数SF1が、110〜130の範囲内であることが好ましい。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
〔但し、上記式(1)において、MLはトナーの最大長(μm)を表し、Aはトナーの投影面積(μm2)を表す。〕
形状係数SF1が110未満の場合には、画像形成の際に転写工程で、像担持体表面にトナーが残留しやすくなるため、この残留トナーの除去が必要となるが、残留トナーをブレード等によりクリーニングする際のクリーニング性を損ないやすく、結果として画像欠陥を生じる場合がある。
一方、形状係数SF1が130を超える場合には、トナーを現像剤として使用する場合に、現像器内でのキャリアとの衝突によりトナーが破壊される場合がある。この際、結果として微粉が増加したり、これによってトナー表面に露出した離型剤成分により像担持体表面等が汚染され帯電特性を損なうことがあるばかりでなく、微粉に起因するかぶりの発生等の問題を起こすことがある。
形状係数SF1はルーゼックス画像解析装置(株式会社ニレコ製、FT)を用いて以下のように測定した。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定し、個々のトナーについて、最大長の2乗、投影面積を算出し、上記式(1)により形状係数SF1を求めた。
<現像剤>
本発明に用いられるトナーは、そのまま一成分現像剤として用いてもよいが、本発明では、キャリアとトナーとからなる二成分現像剤におけるトナーとして使用することが好ましい。
ここで、1種類の現像剤でカラー画像が形成できるという点からは、現像剤は、(1)前記光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を2種類以上有するトナーを1種類有し、且つ、前記トナー中に含まれる2種類以上の発色部が互いに異なる色に発色可能であるタイプの現像剤、あるいは、(2)前記光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を1つ有するトナーを2種類以上混合した状態で有し、且つ、前記2種類以上のトナーの発色部が互いに異なる色に発色可能であるタイプの現像剤であることが好ましい。
例えば、前者のタイプの現像剤では、トナー中に3種類の発色部が含まれ、且つ、3種類の発色部が、イエロー色に発色可能なイエロー発色部、マゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色部及びシアン色に発色可能なシアン発色部からなることが好ましく、後者のタイプの現像剤では、発色部がイエロー色に発色可能なイエロー発色性トナーと、発色部がマゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色性トナーと、発色部がシアン色に発色可能なシアン発色性トナーとが混合した状態で現像剤中に含まれることが好ましい。
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、芯材表面に樹脂を被覆してなることが好ましい。キャリアの芯材としては、上記条件を満たしていれば特に規定されないが、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類等との合金、及びフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられるが、芯材表面性、芯材抵抗の観点から、好ましくはフェライト、特にマンガン、リチウム、ストロンチウム、マグネシウム等との合金が挙げられる。
また、 芯材表面を被覆する樹脂としては、マトリックス樹脂として使用できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上記二成分現像剤における、本発明のトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲が好ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。