以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の画像形成装置は、光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーを用いる画像形成装置である。
本発明に用いられるトナーは、例えばトナーの1粒1粒が異なる波長の光で露光されると、該波長に応じた色に発色可能な状態を維持する、あるいは発色しない(非発色)状態を維持する機能を有している。すなわち、トナーがその内部に光による発色情報の付与により発色可能な発色性物質(さらにはこれを含む発色部)を有しており、前記光による発色情報の付与により、トナーが発色可能な状態または非発色可能な状態を維持するように制御されるものである。
ここで、前記「光による発色情報の付与」とは、トナー像を構成する個々のトナー粒子単位で発色/非発色状態や発色した際の色調を制御するために、トナー像の所望の領域に対して選択的に1種類以上の特定波長の光を付与する、あるいは、何らの光を付与しないことを意味する。
光の露光により発色情報が付与されると、トナー像を構成する各トナーは、露光された波長の光に応じた色に発色可能な状態を維持、または露光された波長の光に応じた色を発色しない非発色の状態を維持した状態となる。
トナーは、発色性物質として、互いに反応した際に発色する2種類の反応性成分(第1の成分及び第2の成分と称する)を含む発色部(詳細後述)を少なくとも含んで構成され、光による発色情報の付与により発色可能な状態または非発色の状態に維持された後に、熱が加えられることにより発色する。
本発明で用いるトナーでは、この第1の成分と第2の成分とは、発色情報が付与されない限り互いの領域への物質拡散が困難な異なるマトリックス内に含まれていること、すなわち互いに隔離された状態で存在する。
具体的には、2種類の反応性成分の第1の成分が第1のマトリックスに含まれ、第2の成分が第1のマトリックス外(第2のマトリックス)に含まれ、第1のマトリックスと第2のマトリックスとの間には、両マトリックス間の物質の拡散が阻害されると共に、熱等の外部刺激が付与された際には、刺激の種類、強度や、組み合わせに応じて両マトリックス間の物質の拡散を可能とするような機能を持つ隔壁が設けられることが好ましい。
このような隔壁を利用して2種類の反応性成分をトナー中に配置するには、マイクロカプセルを利用することが好適であり、トナー内において2種類の反応性成分のうち、第1の成分及び第2の成分の内の何れか一方をマイクロカプセル内に含み、他方をマイクロカプセル外に含むようにすればよい。
なお、第1の成分がマイクロカプセル内に含まれ、第2の成分がマイクロカプセル外に含まれる場合には、マイクロカプセル内部が前記第1のマトリックス、マイクロカプセル外が前記第2のマトリックスに相当する。
このマイクロカプセルは、芯部と、該芯部を被覆する外殻とを有するものであり、熱等の外部刺激が付与されない限りマイクロカプセル内外の物質の拡散を阻害すると共に、外部刺激が付与された際には、刺激の種類、強度や、組み合わせに応じてマイクロカプセル内外の物質の拡散を可能とする機能を有するものであれば特に限定されない。なお芯部には、前記反応性成分の一方が少なくとも含まれる。
また、マイクロカプセルは、光の照射や圧力などの刺激の付与によってマイクロカプセル内外の物質拡散を可能とするものでもよいが、加熱処理によりマイクロカプセル内外の物質拡散を可能とする(外殻の物質透過性が増大する)熱応答性マイクロカプセルであることが特に好ましい。
刺激が付与された際のマイクロカプセル内外の物質拡散は、画像形成時の発色濃度の低下を抑制したり、高温環境下に放置された画像のカラーバランスの変化を抑制する観点からは、不可逆的なものであることが好ましい。
それゆえ、マイクロカプセルを構成する外殻は、加熱処理や光照射等の刺激の付与による軟化、分解、溶解(周囲の部材への相溶)、変形等により、物質透過性が不可逆的に増大する機能を有することが好ましい。
本発明において用いられるトナーとしては、上記機能を発揮できるものであれば特に制限されず、例えば前記特許文献1、2に記載のトナーを挙げることができるが、マイクロカプセルをトナー中に多く存在させ且つマイクロカプセルの偏在を抑制するという観点から、下記トナーを用いることが好ましい。
本発明置では、上述のように、光による発色情報の付与により発色可能な状態または非発色の状態を維持するトナーとして、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1の成分及び第2の成分と、該第1の成分及び第2の成分のいずれかを含む光硬化性組成物と、を有し、光による発色情報の付与により前記光硬化性組成物が硬化または未硬化の状態を維持することにより、発色可能な状態または非発色の状態を維持するトナー(以下、「Fトナー」という場合がある)を用いることが好ましい。
まず、本発明で用いられるFトナーの発色のメカニズムについて説明する。
本発明におけるトナーは、後述するように、バインダー樹脂中に発色部と呼ばれる光による発色情報が付与されることで、特定の一つの色に発色可能な状態を維持、または特定の一つの色を発色しないような状態(即ち、非発色の状態)を維持することが可能な連続した領域を1つ以上有する。
なお、トナー中に複数の発色部が含まれる場合には、複数の発色部は互いに内部に含まれる材料が混在することのないように隔離された状態で設けられている。
このように、本発明のトナーは、1または複数の、互いに異なる色に発色可能な状態または非発色可能な状態を維持することが可能な連続した領域としての発色部を1または複数有し、図9(A)に示すように、各発色部60は、発色剤を含有するマイクロカプセル50とそれを取り巻く光硬化性組成物58とから構成されている。すなわち、発色部60において、マイクロカプセル50は、光硬化性組成物58中に分散されている。
発色部60の拡大部を示す図9(B)に示されるように、発色部60は、少なくとも、マイクロカプセル50と、発色剤(第1の成分)52と、この発色剤52と近接または接触することで発色させる重合性官能基を有した顕色剤モノマー(第2の成分)54と、光重合開始剤56と、を含んで構成されている。
マイクロカプセル50は、カプセル内部に少なくとも発色剤(第1の成分)52を含有している。このマイクロカプセル50を取り巻く光硬化性組成物58中には、発色剤(第1の成分)52と近接または接触することで発色させる重合性官能基を有した顕色剤モノマー(第2の成分)54と光重合開始剤56とが含まれている。
発色剤(第1の成分)52としては、発色色相の鮮やかさに優れたトリアリール系ロイコ化合物などが好適である。
このロイコ化合物(電子供与性)等の発色剤52を発色させる顕色剤モノマー54としては電子受容性化合物が好ましい。顕色剤モノマー54としては、特にフェノール系化合物が一般的であり、感熱、感圧紙などに利用されている顕色剤から適宜選択できる。
このような電子供与性の発色剤52と、電子受容性の顕色剤モノマー54と、が酸塩基反応することで発色剤52が発色する。
光重合開始剤56としては、可視光により感光し顕色剤モノマー54を重合させるためのトリガーとなる重合性ラジカルを発生する分光増感色素が用いられる。
例えば、R色、G色、B色の如き三原色露光に対して、顕色性モノマー54が十分な重合反応を進行させることができるように光重合開始剤56の反応促進剤が用いられる。例えば、露光光を吸収する分光増感色素(カチオン)とホウ素化合物(アニオン)からなるイオンコンプレックスを用いることにより、露光により分光増感色素が光励起されホウ素化合物に電子移動することで重合性ラジカルが生成し重合を開始する。
これらの材料を組み合わせることにより、感光性の発色部60として、0.1〜0.2mJ/cm2程度の発色記録感度を得ることができる。
上記構成の発色部60に対する発色情報付与のための光照射の有無により、発色部60によっては重合された顕色剤化合物と重合されなかった顕色剤モノマー54とを有するものが存在することになる。
発色情報が付与された後に、加熱などの処理によって、重合されなかった顕色剤モノマー54を有する発色部60では、この顕色剤モノマー54が熱などによって泳動し、マイクロカプセル50の隔壁の空孔を泳動通過してマイクロカプセル中に拡散する。マイクロカプセル50中に拡散された顕色剤モノマー54と発色剤52とは、前述のように発色剤52が塩基性であり、顕色剤モノマー54が酸性であることにより発色剤52を酸塩基反応によって発色させることになる。
一方、重合反応を生じた顕色剤化合物は、この後の加熱などによる発色工程では重合による嵩高さによりマイクロカプセル50の隔壁の空孔を拡散通過できず、マイクロカプセル中の発色剤52と反応ができないため発色することができない。したがって、マイクロカプセル50は無色のままで残ることとなる。すなわち、特定波長光を照射された発色部60は発色されに存在することになる。
発色後、適当な段階で発色情報に応じた色に発色されたトナーを、詳細を後述する発色反応停止光で露光することにより、残留している重合未了の顕色性モノマー54を全て重合させて安定した画像定着がなされるとともに、残留分光増感色素を分解することで地色の消色が行われる。
なお、可視光域に対応する光重合開始剤56の分光増感色素はその色調が最後まで地色として残留してしまうが、この分光増感色素の消色には色/ホウ素化合物の光消色現象を利用することができる。すなわち、光励起された分光増感色素からホウ素化合物に電子移動することで重合性ラジカルが生成するが、このラジカルはモノマーの重合を引き起こす一方で、励起された色素ラジカルと反応して色素の色分解を起し、結果的に色素を消色させることができる。
前記Fトナーでは、このような異なる発色を行なう発色部60(例えば、Y色、M色、C色に発色する)を、それぞれの顕色剤モノマー54が目的とする発色剤52以外の発色剤と干渉し合わない状態(互いに隔離された状態)にして一つのマイクロカプセルとして構成し用いることができる。すなわち、同一のトナー中に、互いに異なる色に発色する発色剤52が含まれる複数の発色部が含まれる場合には、複数の発色部は互いに内部に含まれる材料が混在することのないように隔離された状態で設けられている。
そしてこのトナーでは、発色部60中の、電子供与性の発色剤52を含むマイクロカプセル50以外の空間は、電子受容性の顕色剤モノマー54及び光硬化性組成物58によって埋められており、このような発色部60に光が照射されるため、一粒のトナー粒子における受光効率のよさは、前記特許文献2に開示されたトナーに比べ圧倒的に高い。
さらに、前記のように発色情報付与メカニズムが可逆反応ではないことより、加熱による発色までに時間的制約がないというメリットを有する結果、低速域までのプリントも可能、すなわち、広いスピードレンジに対応可能となり、加えて、加熱による発色が行なわれる定着器等の配置場所についても自由度が高いというメリットも有している。
本発明で用いられるFトナーについて、更に詳細に説明する。
本発明で用いられるFトナーとしては、以下の3つの態様が挙げられる。
Fトナーは、互いに反応した際に発色する第1の成分および第2の成分と、光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含み、第1の成分がマイクロカプセルに含まれ、第2の成分が光硬化性組成物中に含まれる態様(第1の態様)、互いに反応した際に発色する第1の成分および第2の成分と、光硬化性組成物を含むマイクロカプセルとを含み、第1の成分がマイクロカプセル外に含まれ、第2の成分が光硬化性組成物内に含まれる態様(第2の態様)、あるいは、互いに反応した際に発色する第1の成分および第2の成分と、第1の成分を含む一のマイクロカプセルと、第2の成分を分散させた光硬化性組成物を含む他のマイクロカプセルとを含む態様(第3の態様)のいずれかであることが好ましい。
これら3つの態様の中では、特に第1の態様が、光による発色情報付与前の安定性、発色の制御等の観点から好ましい。なお、以下のトナーの説明においては、基本的に第1の態様のトナーを前提としてより詳細に説明するが、以下に説明する第1の態様のトナーの構成、材料、製法等は、第2の態様や第3の態様のトナーにおいても、勿論、利用/転用可能である。
なお、上述した熱応答性マイクロカプセルと光硬化性組成物とを組み合わせて用いたFトナーは、以下の2つのタイプのいずれかであることが特に好ましい。
(1)光硬化性組成物が未硬化の状態で加熱処理しても、未硬化の光硬化性組成物中に含まれる第2の成分の物質拡散が抑制され、発色情報付与光の照射によって光硬化性組成物が硬化した後に加熱処理すると、硬化後の光硬化性組成物中に含まれる第2の成分の物質拡散が促進されるタイプのトナー(以下、「光発色型トナー」と称す場合がある)。
(2)光硬化性組成物が未硬化の状態(第2の成分が重合していない状態)で加熱処理すると、未硬化の光硬化性組成物中に含まれる第2の成分の物質拡散が促進され、発色情報付与光の照射によって光硬化性組成物が硬化した後(第2の成分が重合した後)に加熱処理すると、硬化後の光硬化性組成物中に含まれる第2の成分の物質拡散が抑制されるタイプのトナー(以下、「光非発色型トナー」と称す場合がある)。
前記光発色型トナーと光非発色型トナーとの主たる違いは、光硬化性組成物を構成する材料にあり、光発色型トナーでは、光硬化性組成物中に(光重合性を有さない)第2の成分と光重合性化合物とが少なくとも含まれるのに対して、光非発色型トナーは、光硬化性組成物中に、分子中に光重合性基を有する第2の成分が少なくとも含まれる。
なお、光発色型トナーおよび光非発色型トナーに用いられる光硬化性組成物中には、光重合開始剤が含まれていることが特に好ましく、必要に応じてその他種々の材料が含まれていてもよい。
上記光発色型トナーに用いられる光重合性化合物および第2の成分としては、光硬化組成物が未硬化の状態で両者の間に相互作用が働き、光硬化性組成物中での第2の成分の物質拡散が抑制され、発色情報付与光の照射による光硬化性組成物の硬化(光重合性化合物の重合)後の状態で両者の間の相互作用が減少して、光硬化性組成物中での第2の成分の拡散が容易となる材料が用いられる。
従って、光発色型トナーにおいては、加熱処理によりトナーを発色させる工程を経る前に、発色情報の付与として、予め光硬化性組成物を硬化させる波長の光を照射しておくことによって、光硬化性組成物中に含まれる第2の成分の物質拡散が容易な状態となる。このため、加熱処理された際に、マイクロカプセルの外殻の溶解等によって、マイクロカプセル内の第1の成分と光硬化性組成物中の第2の成分との反応(発色反応)が起こる。
逆に、発色情報の付与として、光硬化性組成物を硬化させる波長の光を照射せずに、そのまま加熱処理しても第2の成分は光重合性化合物にトラップされ、マイクロカプセル中の第1の成分と接触することができず、第1の成分と第2の成分との反応(発色反応)が起こらない。
このように、光発色型トナーでは、発色情報の付与として、光硬化性組成物を硬化させる特定の波長領域内の波長の光の照射の有無と、加熱処理とを組み合わせて付与することによって、第1の成分と第2の成分との反応(発色反応)を制御できるため、トナーの発色を制御できる。
また、光非発色型トナーにおいては、第2の成分自体が光重合性を有するため、発色情報の付与として光を照射したとしても、この光の波長が光硬化性組成物を硬化させる特定波長領域内の波長でなければ、光硬化性組成物中に含まれる第2の成分の物質拡散が容易な状態を保てるため、この状態で加熱処理するとマイクロカプセルの外殻の溶解等によって、マイクロカプセル内の第1の成分と光硬化性組成物中の第2の成分との反応(発色反応)が起こる。
逆に、加熱処理前に光硬化性組成物を硬化させる特定波長領域内の波長の光が照射されると、光硬化性組成物中に含まれる第2の成分同士が重合してしまうため、光硬化性組成物中に含まれる第2の成分の物質拡散が困難となる。それゆえ、加熱処理しても第2の成分は、マイクロカプセル中の第1の成分と接触することができず、第1の成分と第2の成分との反応(発色反応)が起こらない。
このように、光非発色型トナーでは、発色情報の付与として、光硬化性組成物を硬化させる特定波長領域内の波長の光の照射の有無と、加熱処理とを組み合わせて付与することによって、第1の成分と第2の成分との反応(発色反応)を制御できるため、トナーの発色を制御できる。
次に、前記Fトナーの好適な構造について、トナーが、前記光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルと、を含む場合についてより詳細に説明する。
この場合、トナーは光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を1つのみ有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。
ここで、上記「発色部」とは、前述のように外部刺激が付与された際に、特定のひとつの色に発色可能な連続した領域を意味する。
なお、トナーに2以上の発色部が含まれる場合、同じ色に発色可能な1種類の発色部のみがトナー中に含まれていてもよいが、互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部が同一のトナー中に含まれることが特に好ましい。その理由は、ひとつのトナー粒子の発色可能な色が、前者の場合は1種類のみに限定されるが、後者の場合は2種類以上とすることができるからである。
例えば、互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部としては、イエロー色に発色可能なイエロー発色部と、マゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色部と、シアン色に発色可能なシアン発色部とを含むような組み合わせが挙げられる。
この場合、例えば、外部刺激の付与によりいずれか1種類の発色部のみが発色した場合には、トナーは、イエロー、マゼンタ、あるいは、シアンのいずれかの色に発色することができ、いずれか2種類の発色部が発色した場合には、これら2種類の発色部の発色した色を組み合わせた色に発色することができ、ひとつのトナー粒子で、多様な色を表現することが可能となる。
なお、トナー中に互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部が含まれる場合の発色する色の制御は、各々の種類の発色部に含まれる第1の成分および第2の成分の種類や組み合わせを異なるものとすることの他に、各々の種類の発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に用いる光の波長を異なるものとすることにより実現できる。
すなわち、この場合、発色部の種類毎に発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に必要な光の波長が異なるため、発色情報の付与には、発色部(詳細には、発色部の光硬化性組成物)の種類に応じた波長の異なる複数種の光を用いればよい。
発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に必要な光の波長を異なるものとするには、発色部の種類毎に異なる波長の光に感応する光重合開始剤を光硬化性組成物中に含有させることが好適である。
例えば、イエロー、マゼンタ、および、シアンに発色可能な3種類の発色部がトナー中に含まれる場合、各々の種類の発色部に含まれる光硬化性組成物として、同一の光量で波長のみを除々に変化させたときに、光の波長が405nm、532nmおよび657nmのいずれかの波長の光が照射されたときに最も硬化された状態となる材料を用いれば、照射する光の波長を変化させることによって、トナーを所望の色に発色させることができる。なお、このトナーに照射する光の波長は、可視域から選択することもできるが、紫外域から選択してもよい。
本発明に用いるトナーは、従来の顔料等の着色剤を用いたトナーに用いられるのと同様な結着樹脂を主成分とする母材を含むものであってもよい。この場合、母材中に、前記2以上の発色部の各々が粒子状のカプセルとして分散していることが好ましい(以下、カプセル状のひとつの発色部を「感光・感熱カプセル」と称する場合がある)。また、母材中には、従来の顔料等の着色剤を用いたトナーと同様に離型剤や、種々の添加剤が含まれていてもよい。
感光・感熱カプセルは、マイクロカプセルや光硬化性組成物を含む芯部と、該芯部を被覆する外殻とを有し、この外殻は、後述するトナーの製造過程や、トナーの保管時において、感光・感熱カプセル内のマイクロカプセルや光硬化性組成物を感光・感熱カプセル外に漏れないように安定して保持できるものであれば特に限定されない。
しかしながら、本発明においては、後述するトナーの製造過程において、第2の成分が外殻を透過して感光・感熱カプセル外のマトリックスへ流出したり、他の色に発色可能な感光・感熱カプセル中の第2の成分が外殻を透過して流入したりするのを防ぐために、非水溶性樹脂からなる結着樹脂や離型材等の非水溶性材料を主成分として含むものであることが好ましい。
次に、前記Fトナーに用いられるトナー構成材料や、各トナー構成材料を調整する際に用いる材料・方法等について以下により詳細に説明する。
この場合、トナーには、上記第1の成分、上記第2の成分、上記第1の成分を含むマイクロカプセル、上記第2の成分を含む光硬化性組成物が少なくとも用いられ、光硬化性組成物中には光重合開始剤が含まれることが特に好ましく、種々の助剤等が含まれていてもよい。また、マイクロカプセル内(芯部)には第1の成分が固体状態で存在していてもよいが、溶媒と共に存在していてもよい。
なお、前記光非発色型トナーにおいては、第1の成分として電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物等が用いられ、第2の成分として光重合性基を有する電子受容性化合物又は光重合性基を有するカプラー化合物等が用いられる。また、前記光発色型トナーにおいては、第1の成分としては、電子供与性無色染料が用いられ、第2の成分としては電子受容性化合物(「電子受容性顕色剤」あるいは「顕色剤」と称す場合がある)が用いられ、光重合性化合物としてはエチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物が用いられる。
以上に列挙した材料に加えて、更に、従来の着色剤を用いたトナーを構成する材料と同様の各種材料;結着樹脂、離型剤、内添剤、外添剤等を必要に応じて適宜利用することができる。以下、各材料等についてより詳細に説明する。
−第1の成分および第2の成分−
第1の成分および第2の成分の組合せとしては、下記(ア)〜(ツ)の組合せを好適に挙げることができる(下記例において、それぞれ前者が第1の成分、後者が第2の成分を表す。)。
(ア)電子供与性無色染料と電子受容性化合物との組合せ。
(イ)ジアゾニウム塩化合物とカップリング成分(以下、適宜「カプラー化合物」と称する。)との組合せ。
(ウ)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機酸金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ。
(エ)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪酸鉄塩と、タンニン酸、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ。
(オ)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀塩のような有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属硫化物との組合せ、又は前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ。
(カ)銀、鉛、水銀、ナトリウム等の硫酸塩等の重金属硫酸塩と、ナトリウムテトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ。
(キ)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ク)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機酸金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ケ)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪酸第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ。
(コ)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ。
(サ)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪族重金属塩とジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ。
(シ)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せのようなオキサジン染料を形成するもの。
(ス)ホルマザン化合物と還元剤および/又は金属塩との組合せ。
(セ)保護された色素(又はロイコ色素)プレカーサーと脱保護剤との組合せ。
(ソ)酸化型発色剤と酸化剤との組合せ。
(タ)フタロニトリル類とジイミノイソインドリン類との組合せ。(フタロシアニンが生成する組合せ。)
(チ)イソシアナート類とジイミノイソインドリン類との組合せ(着色顔料が生成する組合せ)。
(ツ)顔料プレカーサーと酸または塩基との組合せ(顔料が形成する組合せ)。
上記に列挙した第1の成分としては、実質的に無色の電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物が好ましい。
前記電子供与性無色染料としては、従来より公知のものを使用することができ、前記第2の成分と反応して発色するものであれば全て使用することができる。具体的には、フタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、ピリジン系、ピラジン系化合物、フルオレン系化合物等の各種化合物を挙げることができる。
前記第2の成分としては、前記光非発色型トナーの場合は同一分子内に光重合性基および第1の成分と反応して発色する部位とを有する実質的に無色化合物であり、光重合性基を有する電子受容性化合物又は光重合性基を有するカプラー化合物等の第1の成分と反応して発色し、かつ光に反応して重合し、硬化するという両機能を有するものであれば全て使用することができる。
前記光重合性基を有する電子受容性化合物、即ち、同一分子中に電子受容性基と光重合性基とを有する化合物としては、光重合性基を有し、かつ第1の成分の一つである電子供与性無色染料と反応して発色し、かつ光重合して硬化しうるものであれば全て使用することができる。
また、光発色型トナーの場合の第2の成分である電子受容性顕色剤としては、フェノール誘導体、含硫フェノール誘導体、有機のカルボン酸誘導体(例えば、サリチル酸、ステアリン酸、レゾルシン酸等)、及びそれらの金属塩等、スルホン酸誘導体、尿素もしくはチオ尿素誘導体等、酸性白土、ベントナイト、ノボラック樹脂、金属処理ノボラック樹脂、金属錯体等が挙げられる。
さらに、光発色型トナーには、光重合性化合物としてエチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物が用いられ、これはアクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類などの分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物である。
次に、前記光重合開始剤について説明する。前記光重合開始剤は、発色情報付与光を照射することによりラジカルを発生して光硬化性組成物内で重合反応を起こし、かつその反応を促進させることができる。この重合反応により光硬化性組成物が硬化する。
前記光重合開始剤は、公知のものの中から適宜選択することができ、中でも、300〜1000nmに最大吸収波長を有する分光増感化合物と、該分光増感化合物と相互作用する化合物と、を含有するものであることが好ましい。
但し、前記分光増感化合物と相互作用する化合物が、その構造内に300〜1000nmに最大吸収波長を有する色素部とボレート部との両構造を併せ持つ化合物であれば、前記分光増感色素を用いなくてもよい。
前記分光増感化合物と相互作用する化合物としては、前記第2の成分中の光重合性基と光重合反応を開始しうる公知の化合物の中から、1種又は2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。
この化合物を前記の分光増感化合物と共存させることにより、その分光吸収波長領域の照射光に敏感に感応し、高効率にラジカルを発生させうることから、高感度化が図れ、かつ紫外〜赤外領域にある任意の光源を用いてラジカルの発生を制御することができる。
前記「分光増感化合物と相互作用する化合物」としては、有機系ボレート塩化合物、ベンゾインエーテル類、トリハロゲン置換メチル基を有するS−トリアジン誘導体、有機過酸化物又はアジニウム塩化合物が好ましく、有機系ボレート塩化合物がより好ましい。この「分光増感化合物と相互作用する化合物」を前記分光増感化合物と併用して用いることにより、露光した露光部分に局所的に、かつ効果的にラジカルを発生させることができ、高感度化を達成することができる。
また、光硬化性組成物には重合反応を促進する目的で、さらに助剤として、酸素除去剤(oxygen scavenger)又は活性水素ドナーの連鎖移動剤等の還元剤や連鎖移動的に重合を促進するその他の化合物を添加することもできる。
前記酸素除去剤としては、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト、第1銀塩又は酸素により容易に酸化されるその他の化合物が挙げられる。具体的には、N−フエニルグリシン、トリメチルパルビツール酸、N,N−ジメチル−2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリン酸が挙げられる。さらに、チオール類、チオケトン類、トリハロメチル化合物、ロフィンダイマー化合物、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類、有機過酸化物、アジド類等も重合促進剤として有用である。
Fトナーでは、電子供与性無色染料やジアゾニウム塩化合物のような第1の成分をマイクロカプセルに内包して使用する。
マイクロカプセル化する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、米国特許第2800457号、同28000458号に記載の親水性壁形成材料のコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号、英国特許第990443号、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報、同42−771号公報等に記載の界面重合法、米国特許第3418250号、同3660304号に記載のポリマー析出による方法、米国特許第3796669号に記載のイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号に記載のイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同4087376号、同4089802号に記載の尿素−ホルムアルデヒド系、尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025455号に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシブロビルセルロース等の壁形成材料を用いる方法、特公昭36−9168号、特開昭51−9079号に記載のモノマーの重合によるin situ法、英国特許第952807号、同965074号に記載の電解分散冷却法、米国特許第3111407号、英国特許第930422号に記載のスプレードライング法、特公平7−73069号公報、特開平4−101885号公報、特開平9−263057号公報に記載の方法等が挙げられる。
使用しうるマイクロカプセル壁の材料は、油滴内部及び/又は油滴外部に添加される。前記マイクロカプセル壁の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアがより好ましい。前記高分子物質は、2種以上併用して用いることもできる。
マイクロカプセルの体積平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲内となるように調整することが好ましく、0.3〜1.0μmの範囲内となるように調整することが更に好ましい。
前記感光・感熱カプセルにはバインダーが含まれていてもよく、これは、1つの発色部を有するトナーにおいても同様である。
バインダーとしては、前記光硬化性組成物の乳化分散に用いるバインダーと同様のもの、第1の反応性物質をカプセル化する際に用いる水溶性高分子のほか、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリメチルアクリレート,ポリブチルアクリレート,ポリメチルメタクリレート,ポリブチルメタクリレートやそれらの共重合体等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エチルセルロース、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の溶剤可溶性高分子、或いは、これらの高分子ラテックスを用いることもできる。中でも、ゼラチン及びポリビニルアルコールが好ましい。また、バインダーとして後述する結着樹脂を用いてもよい。
また、Fトナーには、従来のトナーに用いられている結着樹脂を用いることができる。結着樹脂は、例えば、母材中に感光・感熱カプセルが分散した構造を有するトナーでは、母材を構成する主成分や感光・感熱カプセルの外殻を構成する材料として利用することができるがこれに限定されるものではない。
結着樹脂としては特に限定されず、公知の結晶性や非晶性の樹脂材料を用いることができる。特に低温定着性を付与するには、シャープメルト性がある結晶性ポリエステル樹脂が有用である。また、無定形高分子(非晶質樹脂)としては、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂など公知の樹脂材料を用いることができるが、非結晶性ポリエステル樹脂が特に好ましい。
その他、Fトナーは、上記に列挙した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、離型剤、無機微粒子、有機微粒子、帯電制御剤等の従来のトナーに用いられている公知の各種添加剤等が挙げられる
なお、本発明のFトナーの前記第1成分、第2成分は、発色する前の状態において予め着色していてもよいが、実質的に無色の物質であることが特に好ましい。
次に、Fトナーの製造方法について簡単に説明する。
Fトナーは、凝集合一法等の公知の湿式製法を利用して作製されることが好ましい。特に、互いに反応した際に発色する第1の成分および第2の成分と、光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含み、前記第1の成分が前記マイクロカプセルに含まれ、前記第2の成分が前記光硬化性組成物中に含まれる構造を有するトナーの作製に湿式製法は好適である。
なお、上記構造を有するトナーに用いられるマイクロカプセルは熱応答性マイクロカプセルであることが特に好ましいが、光等、その他の刺激に応答するマイクロカプセルであってもよい。
トナーの製造には、公知の湿式製法が利用できるが、湿式製法の中でも最高プロセス温度を低く抑えることができると共に、様々な構造を有するトナーの作製が容易であることから凝集合一法を利用することが特に好ましい。
また、従来の顔料や結着樹脂を主成分とするトナーと比べると、上記構造を有するトナーは、低分子成分を主成分として含む光硬化性組成物が多く含まれるため、トナーの造粒過程で得られる粒子の強度は不十分となりやすいが、凝集合一法では、高いせん断力を必要としないため、この点でも凝集合一法を利用することは好適である。
一般的に、凝集合一法は、トナーを構成する各種材料の分散液を調製した後、2種類以上の分散液を混合した原料分散液中で凝集粒子を形成する凝集工程と、原料分散液に形成された凝集粒子を融合する融合工程とを含むものであり、必要に応じて凝集工程と融合工程との間に、凝集粒子の表面に被覆層を形成する成分を付着させて被覆層を形成する付着工程(被覆層形成工程)とが実施されるものである。
Fトナーの製造においても、原料として使用する各種分散液の種類や組み合わせは異なるものの、凝集工程、融合工程の他に、必要に応じて付着工程を適宜組み合わせることによりトナーを作製することができる。
例えば、樹脂中に感光・感熱カプセル分散構造を有するトナーの場合には、まず、(a1)第1の成分を含むマイクロカプセルを分散させたマイクロカプセル分散液と、第2の成分を含む光硬化性組成物を分散させた光硬化性組成物分散液とを含む原料分散液中にて第1の凝集粒子を形成する第1の凝集工程と、(b1)前記第1の凝集粒子が形成された原料分散液に、樹脂粒子を分散させた第1の樹脂粒子分散液を添加して、前記凝集粒子表面に前記樹脂粒子を付着させる付着工程と、(c1)前記樹脂粒子をその表面に付着させた凝集粒子を含む原料分散液を加熱して融合させ、第1の融合粒子(感光・感熱カプセル)を得る第1の融合工程とを経ることにより、互いに異なる色に発色可能な1種類以上の感光・感熱カプセル分散液を調製する。
続いて、(d1)前記1種類以上の感光・感熱カプセル分散液と、樹脂粒子を分散させた第2の樹脂粒子分散液とを混合した混合溶液中にて、第2の凝集粒子を形成する第2の凝集工程と、(e1)前記第2の凝集粒子を含む混合溶液を加熱して、第2の融合粒子を得る第2の融合工程とを経ることにより、感光・感熱カプセル分散構造を有するトナーを得ることができる。
なお、第2の凝集工程で用いる感光・感熱カプセル分散液の種類は2種類以上が好ましい。また、(a1)〜(c1)工程を経て得られた感光・感熱カプセルをそのままトナー(すなわち1つの発色部のみを含むトナー)として利用してもよい。
また、1つの発色部のみを含むトナーを作製する場合、上述した付着工程の代わりに、前記第1の凝集粒子が形成された原料分散液に、離型剤を分散させた離型剤分散液を添加して、凝集粒子表面に離型剤を付着させる第1の付着工程と、第1の付着工程を経た後の原料分散液に、樹脂粒子を分散させた第1の樹脂粒子分散液を添加して、この離型剤を表面に付着させた凝集粒子表面に樹脂粒子を付着させる第2の付着工程とを実施してもよい。
本発明に用いることが可能なFトナーの体積平均粒径は、特に限定されず、トナーの構造や、トナー中に含まれる発色部の種類・数に応じて適宜調整することができる。
しかしながら、トナー中に含まれる互いに異なる色に発色可能な発色部の種類が2〜4種類前後(例えば、トナーがイエロー、シアン、マゼンタの各々に発色可能な3種類の発色部を含むような場合)であれば、各々のトナー構造に応じた体積平均粒径は以下の範囲内であることが好ましい。
例えば、トナーの構造が樹脂中に感光・感熱カプセル(発色部)分散構造の場合には、トナーの体積平均粒径は5〜40μmの範囲内が好ましく、10〜20μmの範囲内がより好ましい。また、このような粒径を有する感光・感熱カプセル分散構造型のトナー中に含まれる感光・感熱カプセルの体積平均粒径は1〜5μmの範囲内であることが好ましく、1〜3μmの範囲内であることが好ましい。
該体積平均粒径が5μm未満では、トナー中に含まれる発色成分量が少なくなるため色再現性が悪化したり、画像濃度が低下してしまう場合がある。また、体積平均粒径が40μmを超えると、画像表面の凹凸が大きくなり、画像表面の光沢ムラが発生してしまう場合があり、画質が低下する場合がある。
なお、その内部に複数の感光・感熱カプセルを分散させた感光・感熱カプセル分散構造型のトナーは、従来の着色剤を用いた小径トナー(体積平均粒径5〜10μm程度)と比べると粒径が大きくなる傾向にあるものの、画像の解像度は、トナーの粒径ではなく感光・感熱カプセルの粒径により決定されるため、より高精細な画像を得ることができる。加えて、粉体流動性にも優れるため、外添剤の量が少なくても十分な流動性が確保できると共に、現像性やクリーニング性も向上させることができる。
一方、1つの発色部のみを有するトナーの場合には、上述した場合と比べると小径化がより容易であり、その体積平均粒径は3〜8μmの範囲内が好ましく、4〜7μmの範囲内が好ましい。体積平均粒径が3μm未満の場合には粒径が小さすぎるために粉体流動性が十分に得られなくなったり、十分な耐久性が得られない場合がある。また、体積平均粒径が8μmを超えると、高精細な画像が得られなくなる場合がある。
本発明には、以上説明したFトナーをはじめ、光照射により(あるいは光が照射されないことにより)発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーであれば、用いる構成材料、トナーの構造、発色機構等によらず用いることができる。
本発明に用いることができるトナーは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.95以上であることが好ましい。
更に好ましくは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.25以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.97以上であることが更に好ましい。
体積分布指標GSDvが1.30を超えた場合には、画像の解像性が低下する場合があり、また、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpの比(GSDv/GSDp)が0.95未満の場合、トナーの帯電性低下やトナーの飛散、カブリ等が発生し画像欠陥を招く場合がある。
なお、本発明において、トナーの体積平均粒径や、上記した体積平均粒度分布指標GSDv、及び数平均粒度分布指標GSDpの値は、次のようにして測定し算出した。
まず、コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)等の測定器を用いて測定されたトナーの粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のトナー粒子の体積および数について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16v、および、数平均粒子径D16pと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50v、および、数平均粒子径D50pと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、および、数平均粒子径D84pと定義する。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、(D84v/D16v)1/2として定義され、数平均粒度指標(GSDp)は、(D84p/D16p)1/2として定義されるこれらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)および数平均粒度指標(GSDp)を算出できる。
また、前記マイクロカプセルや感光・感熱カプセルの体積平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所製)を用いて測定することができる。
また、本発明のトナーは、下式(1)で表される形状係数SF1が、110〜130の範囲内であることが好ましい。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
〔但し、上記式(1)において、MLはトナーの最大長(μm)を表し、Aはトナーの投影面積(μm2)を表す。〕
形状係数SF1が110未満の場合には、画像形成の際に転写工程で、像担持体上にトナーが残留しやすくなるため、この残留トナーの除去が必要となるが、残留トナーをブレード等によりクリーニングする際のクリーニング性を損ないやすく、結果として画像欠陥を生じる場合がある。
一方、形状係数SF1が130を超える場合には、トナーを現像剤として使用する場合に、現像器内でのキャリアとの衝突によりトナーが破壊される場合がある。この際、結果として微粉が増加したり、これによってトナー表面に露出した離型剤成分により像担持体上等が汚染され帯電特性を損なうことがあるばかりでなく、微粉に起因するかぶりの発生等の問題を起こすことがある。
形状係数SF1はルーゼックス画像解析装置(株式会社ニレコ製、FT)を用いて以下のように測定した。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定し、個々のトナーについて、最大長の二乗、投影面積を算出し、上記式(1)により形状係数SF1を求めた。
本発明に用いられるトナーは、そのまま一成分現像剤として用いてもよいが、本発明では、キャリアとトナーとからなる二成分現像剤におけるトナーとして使用することが好ましい。
ここで、1種類の現像剤でカラー画像が形成できるという点からは、現像剤は、(1)前記光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を2種類以上有するトナーを1種類有し、且つ、前記トナー中に含まれる2種類以上の発色部が互いに異なる色に発色可能であるタイプの現像剤、あるいは、(2)前記光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を1つ有するトナーを2種類以上混合した状態で有し、且つ、前記2種類以上のトナーの発色部が互いに異なる色に発色可能であるタイプの現像剤であることが好ましい。
例えば、前者のタイプの現像剤では、トナー中に3種類の発色部が含まれ、且つ、3種類の発色部が、イエロー色に発色可能なイエロー発色部、マゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色部及びシアン色に発色可能なシアン発色部からなることが好ましく、後者のタイプの現像剤では、発色部がイエロー色に発色可能なイエロー発色性トナーと、発色部がマゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色性トナーと、発色部がシアン色に発色可能なシアン発色性トナーとが混合した状態で現像剤中に含まれることが好ましい。
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、芯材表面に樹脂を被覆してなることが好ましい。キャリアの芯材としては、上記条件を満たしていれば特に規定されないが、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類等との合金、及びフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられるが、芯材表面性、芯材抵抗の観点から、好ましくはフェライト、特にマンガン、リチウム、ストロンチウム、マグネシウム等との合金が挙げられる。
また、 芯材表面を被覆する樹脂としては、マトリックス樹脂として使用できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上記二成分現像剤における、本発明のトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲が好ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
次に、本発明の画像形成装置について説明する。
本発明の画像形成装置は、上記Fトナーを用い、電子写真方式を応用してカラー画像を得るものである。
本発明の画像形成装置における画像形成プロセスは、いわゆる電子写真プロセス、誘電体上にイオンなどで静電潜像を形成するプロセス(イオノグラフィ)、または、一様帯電した誘電体に、サーマルヘッドの熱により画像情報に応じて静電潜像を形成するプロセス、さらに、静電潜像を利用するものではなく、たとえば、磁気潜像を形成してトナー画像を形成するプロセス、粘着性のインク滴を像担持体に画像情報に応じて形成し、トナー画像を形成するプロセス、など特に制限されない。
図1に示すように、本発明の画像形成装置10は、通常の電子写真プロセスに用いる感光体(像担持体)11を含んで構成されている。感光体11は、所定方向(図1中、時計回り方向)に回転可能に設けられている。感光体11の近傍には、感光体11の回転方向に添って、帯電装置(帯電手段)12、露光装置(露光手段)14、現像装置(現像手段)16、発色情報付与装置28、及び転写装置(転写手段)18が設けられている。また、画像形成装置10には、光照射装置24が設けられている。
また、画像形成装置10は、画像形成装置10において画像を形成するための記録媒体26を貯留する用紙貯留部(図示省略)と、この記録媒体26を搬送経路21に添って搬送するための複数の搬送ロール(図示省略)と、を備えており、後述する制御部の制御により、用紙貯留部から順次搬送経路21へと記録媒体26が供給されることにより、記録媒体26は、搬送経路21を搬送される。
感光体11としては、公知のいかなるものも用いることができる。例えば、導電性基体上にSe、a−Si等の無機の感光層、あるいは単層若しくは多層の有機感光層を形成したものである。ベルト状感光体の場合には、基体としてPET、PC等の透明樹脂が使用でき、その厚みはベルト状感光体を張架するロールの径、張力等の設計事項から決められ、おおよそ10〜500μm程度の範囲である。その他の層構成等はドラムの場合と同様である。
なお、後述する発色情報付与装置28による露光が、感光体11の背面(感光体の内側)から行われる場合には、前記基体を透明な樹脂等とした透明感光体を用いることができる。透明感光体の場合には、感光体基体として露光光に対して透明な材質を用いる。
ここで、「透明」とは、入射した光に対して出射した光の透過率(出射光/入射光)が、使用する波長域において50%以上であることをいう。この場合には、例えば、基材用材料としてガラス、プラスチック材料が用いられ電極形成の為に、外表面に導電層が形成されるが、基材材料自体が導電化処理されていてもよい。なお、透明感光体を用いない場合は、上述の透明基体のほかに通常用いられるアルミウムなどの金属円筒体やニッケルシームレスベルトなどの基体材料も用いることができる。
透明感光体は、ガラス、プラスチック等の透明材料を基体とし、その表面に感光層等を設けてなる。基体の肉厚は必要とされる機械強度から決められ、おおよそ0.1〜5mm程度の範囲が好ましい。透明の基体上には透明電極が設けられることが好ましく、該透明電極としては、ITO、SnO2などの金属酸化物を微粒化しバインダー樹脂と混合したものや、ポリピロールなどの導電性ポリマーなどを塗布したもの等が使用できる。透明電極の厚みは、必要とされる導電度と透過性から決められ、おおよそ0.01〜10μm程度の範囲が好ましい。
前記感光層としては、例えば、Se、a−Si等の無機の感光層、あるいは単層若しくは多層(電荷発生層、電荷輸送層等)の有機感光層を挙げることができる。また、前記入射した光の散乱をより起こさせるため、金属酸化物やフッ素樹脂粒子等の有機粒子などの粒径が数十ナノメーターから数ミクロンのものを感光層に分散させることが好ましい。
ただし、前記のように感光層を光が通過しトナーまでも露光することが必要とされるので、光透過性のよいものがよい。透過性の目安としては、感光層そのもので透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
また、発色情報を付与するための露光は、通常の潜像形成のための露光よりかなり強い強度で行われる。具体的には、発色情報付与に供する光のエネルギー量は、通常の電子写真プロセスに使用される感光体の露光量(2mJ/m2)の約1000倍程度必要である。このため、発色情報の付与による感光体11へのダメージが心配されるが、例えば、感光体11の電荷発生層の光感度を従来の1/1000とすれば、バランスが取れるので問題とはならない。
なお、感光層の厚みは、前記透過性と、経時による膜減りと、を勘案した帯電電位に耐えられる絶縁性から決められ、おおよそ5〜50μmの範囲が好ましい。
また、ベルト状感光体の場合は、透明基体としてPET、PC等の透明樹脂が使用でき、その厚みはベルト状感光体を張架するロールの径、張力等の設計事項から決められ、おおよそ10〜500μm程度の範囲である。その他の層構成等はドラムの場合と同様である。
一方、イオノグラフィによりトナー像を形成する場合は、感光体11の代わりに誘電体を用いる。誘電体としても、同様の理由から透明誘電体を用いることが好ましい。
上記透明誘電体としては、前記透明感光体における感光層の代わりに透明誘電体層、例えば、PET、PC等の透明プラスチックを用いたものを使用することができる。
帯電装置12は、感光体11の外周表面を所定電位となるように帯電させる。
感光体11の帯電を行う帯電装置12としては、公知の帯電装置を使用することができる。接触方式である場合は、ロール、ブラシ、磁気ブラシ、ブレード等が使用でき、非接触の場合は、コロトロン、スコロトロン等が使用できる。帯電装置12としてはこれらに限られるものではない。
これらの中でも、帯電補償能力とオゾン発生量とのバランスから、接触型帯電器が好ましく用いられる。接触帯電方式は、感光体11表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体11表面を帯電させるものである。すなわち、この場合には、帯電装置12は、図示は省略するが、導電性部材と、この導電性部材に電圧を印加するための電圧印加部と、を含んで構成するようにすればよい。
この導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、あるいはロール状等何れでもよいが、特にロール状部材が好ましい。通常、ロール状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。さらに必要に応じて、抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
これらの導電性部材を用いて感光体11を帯電させる方法としては、導電性部材に電圧印加部によって電圧を印加するが、印加電圧は直流電圧、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。
電圧の範囲としては、直流のみで帯電させる場合は、絶対値で所望の表面電位+500V程度の正または負が好ましく、その値は、700〜1500Vの範囲である。交流電圧を重畳する場合は、その直流値はおおよそ所望の表面電位±50V程度とし、交流のピーク間電圧(Vpp)が400〜1800V、好ましくは800〜1600V、交流電圧の周波数は50〜20000Hz、好ましくは100〜5000Hzであり、サイン波、方形波、三角波がいずれも使用可能である。
帯電電位は、電位の絶対値で150〜700Vの範囲に設定することが好ましい。
露光装置14は、帯電装置12によって帯電された感光体11を露光することによって、感光体11上に画像データに応じた静電潜像を形成する。
感光体11上に静電潜像を形成するための露光装置14としては、公知の露光装置を使用することができる。露光装置14としては、例えばレーザスキャニングシステム、LEDイメージバーシステム、アナログ露光手段、さらにはイオン流制御ヘッド等などを用いることができ、感光体11表面に露光を行うことが可能である。これ以外にも今後開発される新規な露光手段が本発明の効果を達成する限り使用できる。
露光装置14から感光体11表面を露光するための光源15の波長は、感光体11の分光感度領域にあるものが使用される。これまで、半導体レーザーの波長として780nmm付近に発振波長を有する近赤外が主流であるが、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400〜450nm近傍に発振波長を有するレーザーも利用が可能である。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
感光体11に対する露光は、反転現像の場合は後述するトナーを現像する位置に、正規現像の場合はトナーを現像する以外の位置に、例えば3つの色(YMC)の画像形成情報の論理和として行なわれる。
露光スポット径は、解像度が600〜1200dpiの範囲となるように、40〜80μmの範囲となるようにすることが好ましい。露光量としては、感光体11上の露光された領域の電位(以下、適宜、露光後電位という)が前記帯電電位の5〜30%程度の範囲となるようにすることが好ましいが、本実施の形態では、画像の濃度に応じてトナーの現像量を変化させるために、露光位置ごとに濃度(階調値)に応じて露光量を変化させる。
一方、前記イオノグラフィの場合には、イオン書込みヘッドにより像担持体上に潜像を形成する。イオン書込みヘッドとしては、例えば、イオン流を画像信号によりOn/Off制御するもの(特開平4−122654号公報)や、イオン流の発生そのものをOn/Off制御するもの(特開平6−99610号公報)などを用いることができる。
なお、この方式の場合、像担持体としては誘電体のみでなく感光体も使用することが可能である。
現像装置16は、感光体11上に形成された静電潜像を、トナーによって現像することで、感光体11上に静電潜像に応じたトナー像を形成する。
現像装置16には、上記Fトナーが貯留されている。この現像装置16は、現像装置16内に貯留されたトナーを担持すると共に感光体11表面へ供給するための現像ロール16Aを含んで構成されている。
本実施の形態では、現像装置16内に貯留されているトナーは、イエロー、マゼンタ、及びシアンに発色可能な3種類の発色部を含み、各々の種類の発色部には、各々光の波長が405nm、532nm、及び657nmの波長の光で露光されたときに、最も硬化された状態、すなわち最大分光感度を示す光硬化性組成物が含まれているものとして説明する。すなわち、各発色部は、各々所定の波長領域内の波長の光が照射されることで、発色可能な状態、または非発色の状態(すなわち加熱処理による発色反応を起こすことが可能な状態、または発色反応を起こさない状態を維持する状態)を維持し、最大分光感度に対応する波長の光が照射されたときに、最も光硬化性組成物が硬化した状態となる。
すなわち、トナーには、各トナーに含まれる発色部を構成する材料毎に、各発色部に発色情報を付与可能な波長領域が定められている。このため、現像装置16内に貯留されているトナーは、各トナーに含まれる発色部の発色情報を付与可能な波長領域内の波長の光が照射されることで、各トナーに発色情報が付与されて、付与された発色情報に応じた色に発色可能な状態または非発色状態を維持可能な状態となる。
なお、以下では、現像装置16内に貯留されているトナーに発色情報を付与可能な光の波長領域を、特定波長領域と称して説明する。
現像装置16としては、公知の現像装置16を使用することができる。現像法としては、キャリアと呼ばれるトナーを担持するための微小粒子とトナーからなる二成分現像法、またはトナーのみからなる一成分現像法、またこれらの現像法においてさらに現像その他の特性改善のために別の構成物質が添加される場合もある全ての現像方法が使用できる。
また、現像方法によっては感光体11へ現像剤が接触または非接触で現像を行なうもの、あるいはそれらの組み合わせのいずれもが使用可能である。さらに、前記一成分現像法と二成分現像法とを組み合わせたハイブリッド現像方法も使用可能である。これ以外にも、今後開発される新規な現像手段が本発明の効果を達成する限り使用できる。
なお、前記現像剤に含まれるトナーとしては、例えばY色に発色可能な発色部(Y発色部)、M色に発色可能な発色部(M発色部)及びC色に発色可能な発色部(C発色部)を1つのトナー粒子中に含むものであってもよいし、前記Y発色部、M発色部、C発色部を各々トナーごとに別々に含むものであってもよい。
また、形成されたトナー像において、発色情報付与のための光が、当該照射された部分全体に行き渡らなければならないため、トナー層厚は一定以下に抑えることが好ましい。具体的には、例えばべた画像においてトナー層は3層以下であることが好ましく、2層以下であることがより好ましい。なお、上記トナー層厚は、実際の感光体11表面に形成されたトナー層の厚さを測定し、これをトナーの個数平均粒径で除した値である。
発色情報付与装置28は、画像データ中の色成分情報に基づいて、発色対象の色または非発色対象の色に対応して予め定められた上記特定波長領域内の波長の光を出射する光源53を含み、この光源53から出射された光を、感光体11上に形成されたトナー像を構成する各トナーに露光することにより、このトナー像を構成する各トナーに発色情報を付与する。
なお、図1では、発色情報付与装置28は、現像装置16と、現像装置16から感光体11の回転方向下流側に設けられた転写装置18と、との間に設けられている場合を説明するが、転写装置18より記録媒体26の搬送方向下流側に設けられるようにしてもよい。
発色情報付与装置28は、感光体11の回転軸方向に添った方向に光を走査露光する。
本実施の形態では、トナーがYMC各々に対応する3種類の発色部を含む場合を説明するので、光源53は、Y色に発色可能なY発色部に発色情報を付与可能な波長領域内の光を出射する光源53Y、M色に発色可能なM発色部に発色情報を付与可能な波長領域内の光を出射する光源53M、C色に発色可能なC発色部に発色情報を付与可能な波長領域内の光を出射する光源53Cを含んで構成されているものとする。
光源53Y、光源53M、及び光源53Cとしては、トナー像上の発色させる領域に位置するトナー粒子が特定色に発色するための波長の光を所定の解像度と強度とで照射することができるものであれば何でもよい。
例えば、トナーに発色情報を付与するために必要な光の露光量は0.05〜0.8mJ/cm2の範囲とすることが好ましく、0.1〜0.6mJ/cm2の範囲とすることがより好ましい。特にこの露光量に関しては、必要露光量は現像されたトナーの量と相関があり、例えば、トナー現像量(べた)が約5.5g/m2に対し0.2〜0.4mJ/m2の範囲の露光を行うことが好ましい。
このような露光量を実現可能な光源53Y、光源53M、及び光源53Cとしては、例えば、LEDイメージバー、レーザーROS等を使用することが可能である。なお、感光体11のトナー像に照射される光の照射スポット径は、形成される画像の解像度が100〜2400dpiの範囲となるよう、10〜300μmの範囲となるように調整されることが好ましく、20〜200μmの範囲とすることがより好ましい。
Fトナーに発色情報を付与しうる光の波長は、上述のように、使用されるトナーの材料設計により決まるが、例えば、Fトナーが光発色型トナーである場合には、例えば、イエロー(Y色)に発色させるときは、光源53Yを点灯させて405nmの光(以下、λA光とする)を、マゼンタ(M色)に発色させるときは光源53Mを点灯させて535nmの光(以下、λB光とする)を、シアン(C色)に発色させるときは光源53Cを点灯させて657nmの光(以下、λC光とする)を、感光体11上のトナー像の、画像データに対応してYMC各々の色に発色させる位置にそれぞれ露光する。
また、二次色に発色させる時には、前記光の組み合わせになり、光源53Y、光源53M、及び光源53C各々の点灯及び非点灯を調整することにより、レッド(R色)に発色させる時はλA光及びλB光を、グリーン(G色)に発色させる時はλA光及びλC光を、ブルー(B色)に発色させる時はλB光及びλC光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ露光する。さらに、三次色であるブラック(K色)に発色させるときは上記λA光、λB光及びλC光をその発色させる所望の位置に重ねて露光する。
一方、光非発色型トナーの場合には、例えば、イエロー(Y色)を発色させないようにするときは405nmの光(λA光)を、マゼンタ(M色)に発色させないようにするときは535nmの光(λB光)を、シアン(C色)に発色させないようにするときは657nmの光(λC光)を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。したがって、Y色に発色させる時はλB光及びλC光を、M色に発色させる時はλA光及びλC光を、C色に発色させる時はλA光及びλB光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射することとなる。
また、二次色に発色させる時には、前記光の組み合わせになり、レッド(R色)に発色させる時はλC光を、グリーン(G色)に発色させる時はλB光を、ブルー(B色)に発色させる時はλA光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。さらに、三次色であるブラック(K色)に発色させるときはその発色させる所望の位置には露光しないようにする。
発色情報付与装置28からの光は、必要に応じてパルス巾変調、強度変調、左記2つを組み合わせたものなど、公知の画像変調方法が使用可能である。
なお、上記に関連して、発色情報付与装置28は前記潜像形成のための露光装置14と同一の筐体に配置してもよい。これにより、光学系を含む露光手段を部分的に共通化、簡略化することができ、装置全体のさらなる小型化を可能とすることができる。
以上、本発明における発色情報付与装置28について、フルカラー画像形成を行う場合の機構について説明したが、本発明における発色情報付与装置28による発色情報を付与する工程は、イエロー、マゼンタ及びシアンのうちのいずれか1色を発色させるモノカラー画像形成のための工程であってもよい。この場合は、発色情報付与装置28からは、前記イエロー、マゼンタ及びシアンのうちの所望の発色に対応する特定波長の光のみを照射する。その他の好ましい条件等については、フルカラー画像形成時における条件等と同様である。
図1に示す画像形成装置10では、発色情報の付与は、現像装置16によって静電潜像の現像が行われた後で、且つトナー像の記録媒体26への転写前に行われているが、少なくとも記録媒体26上に転写されたトナー像が定着される前に行われれば良く、例えば発色情報の付与は、記録媒体26に転写されたトナー像に行うようにしてもよい。
ただし、発色情報の付与を、記録媒体26に転写されたトナー像について行う場合には、記録媒体26表面の平滑性や所望画像の発色位置精度の正確性等が問題となることから、発色情報の付与は、現像装置16によって静電潜像の現像が行われた後で、且つトナー像の記録媒体26への転写前に行われることが好ましい。
なお、発色情報が付与された直後のトナー像は、未発色の本来の色調のままの未発色の状態にあり、例えば、増感色素が含まれている場合にはその色素の色調を帯びているに過ぎない。
転写装置18は、感光体11上のトナー像を記録媒体26に転写する。転写装置18は、搬送経路21に添って搬送された記録媒体26を、感光体11との間で挟持搬送可能な位置に設けられている。
転写装置18としては、公知の転写装置を使用することができる。例えば、接触方式である場合は、ロール、ブラシ、ブレード等が使用でき、非接触方式の場合は、コロトロン、スコロトロン、ピンコロトロン等が使用できる。また、圧力、若しくは圧力及び熱による転写も可能である。
転写バイアスは300〜1000V(絶対値)の範囲とすることが好ましく、さらに交流(Vpp:400V〜4kV、400〜3kHz)を重畳してもよい。
図示を省略する記録媒体供給部に貯留された記録媒体26が感光体11と転写装置18とによって挟持される位置まで達すると共に、感光体11と転写装置18とによって挟持搬送されることで、感光体11上のトナー像は記録媒体26に転写される。
定着装置22は、搬送経路21に添って設けられており、転写装置18によって記録媒体26に転写されたトナー像を記録媒体26上に定着する。
なお、定着装置22は、トナー像を発色させる発色装置(発色手段)を兼ねており、さらに、後述する光照射装置24を発色装置として共に機能するようにしてもよい。
発色情報の付与により、発色(あるいは非発色状態維持)可能な状態におかれたトナーにより構成されるトナー像は、定着装置22によって熱が加えられることで発色する。
定着装置22としては公知の定着手段が使用できる。例えば、加熱部材及び加圧部材としてロール、ベルトのそれぞれが選択可能であり、熱源としては、ハロゲンランプ、IH等が使用可能である。その配置も、種々の紙パス、例えばストレートパス、リアCパス、フロントCパス、Sパス、サイドCパス等に対応可能である。
本実施形態では、定着装置22が、記録媒体26上に転写されたトナー像の発色及び記録媒体26への定着の双方を行うが、発色と定着とを別々に行うようにしてもよい。
この場合には、記録媒体26に転写されたトナー像を構成する各トナーを発色させるための発色装置を別途設けるようにすればよい。
この発色装置を配置する位置は特に制限されないが、例えば、定着装置22によってトナー像が記録媒体26に定着される前に、トナー像を発色可能な位置に設けることができる。
このように、記録媒体26に転写されたトナー像の発色と、記録媒体26への定着とを別の装置により行うことにより、発色のための加熱温度と、記録媒体26へのトナー定着のための加熱温度とが別途制御可能となるため、発色材料、トナーバインダー材料等の設計度の自由度を向上させることができる。
この場合、発色の方法についてはトナー粒子の発色メカニズムに応じて様々の方法が考えられるため、発色装置としては、例えば、上記特定波長領域外の波長の光を用いてトナー中の発色関与物質を硬化させ、あるいは光分解させるなどの方法で発色をさせるには、特定の波長の光を照射する発光装置や、加圧してカプセル化した発色粒子を破壊する加圧装置等によりFトナーを発色させればよい。などの方法で発色をさせればよい。
しかしながら、発色情報が付与されたFトナーを発色させるためにFトナー内で発生する化学的な反応は、一般的に泳動、拡散による反応速度が遅いため、上記いずれの方法をとるにしても充分な拡散エネルギーを与える必要があることから、Fトナーの発色には、加熱により発色反応を促す方法が最も優れているといえる。このため、定着装置22により、記録媒体26上に転写されたトナー像の発色及び記録媒体26への定着の双方を行うことが省スペース化も含め好ましい。
搬送経路21上の、記録媒体26の搬送方向の定着装置22の設置位置より下流側には、搬送経路21に添って光照射装置24が設けられている。
光照射装置24は、トナーにおける発色反応の進行を停止させるための発色反応停止光を照射する光源27を含んで構成されている。光照射装置24の光源27によって発色反応停止光が照射されることで、トナー中の発色不可能な状態に制御された発色部中に残存する反応性物質を、分解又は失活させることができる。
すなわち、光源27は、現像装置16内に貯留されているトナーに含まれる発色部全ての反応性物質を分解または失活させるための波長の光として、発色反応停止光を出射する。
具体的には、光源27は、図2に示すように、画像形成装置10で採用可能なサイズの記録媒体の全領域を覆うように、複数の小光源271〜小光源27nが配列されて構成されている。
各小光源271〜小光源27nから出射される発色反応停止光の波長は、前記Fトナーに発色情報を付与するための上記特定波長領域の範囲外の波長領域の波長であり、このような波長領域の波長の光をFトナーに照射することにより、Fトナーに含まれる各発色部の反応性物質を分解または失活させることができる。
なお、光源27は、図3に示すように、現像装置16に貯留されているトナーに含まれる各発色部内の反応性物質各々を、発色部毎に分解または失活させるための波長の発色反応停止光を出射する光源27Y、光源27M、及び光源27Cを含んで構成するようにしてもよい。
詳細には、この光源27Y、光源27M、及び光源27Cの波長は、上記発色情報を付与可能な上記特定波長領域の範囲外で且つ、各々、トナー中のY発色部、M発色部、及びC発色部各々の発色反応の進行を抑制可能となるように、各発色部に応じて予め定められた互いに異なる波長の発色反応停止光を出射する。
このため、光源27Yから発色反応停止光が照射されると、トナー中のY発色部内の発色反応の進行が抑制され、光源27Mから発色反応停止光が照射されると、トナー中のM発色部内の発色反応の進行が抑制され、光源27Cから発色反応停止光が照射されると、トナー中のC発色部内の発色反応の進行が抑制される。
このような場合についても、図3に示すように、各光源27Y、光源27M、及び光源27Cは、各々、複数の小光源(小光源27Y1〜小光源27Yn、小光源27M1〜小光源27Mn、小光源27C1〜小光源27Cn)を含んで構成され、これら複数の小光源が記録媒体26の搬送方向に直交する方向(すなわち記録媒体26の幅方向)に向かって複数配列されて構成されるようにすればよい。
この光源27を構成する各小光源271〜小光源27n及び、各小光源27Y1〜小光源27Yn、各小光源27M1〜小光源27Mn、各小光源27C1〜小光源27Cnとしては、トナー中の発色反応が進行することを抑制可能な波長の光を特定の露光量で照射可能な構成であればよく、公知のランプ、例えば、蛍光灯、LED、EL等を使用することができる。
この光源27を構成する各小光源271〜小光源27n及び、各小光源27Y1〜小光源27Yn、各小光源27M1〜小光源27Mn、各小光源27C1〜小光源27Cnの照度は、2000〜200000luxの範囲程度とすることが好ましく、露光時間は0.5〜60secの範囲とすることが好ましい。
各小光源(小光源271〜小光源27n、小光源27Y1〜小光源27Yn、小光源27M1〜小光源27Mn、小光源27C1〜小光源27Cn)は、画像形成装置10を制御するためのシステム制御部32(詳細後述)に接続されており、システム制御部32の制御によって各小光源の点灯または非点灯、露光量、及び露光時間を制御可能に構成されている。
このように、光照射装置24は、発色情報付与装置28によって発色情報を付与されることによって、発色不可能な状態に制御された発色部中に残存する反応性物質を分解または失活させることができるため、画像形成後のカラーバランスの変動をより確実に抑制したり、バックグランド色の除去・漂白を行ったりすることができる。
なお、本実施形態においては、上記光照射装置24による発色反応停止光の照射は、トナー像を記録媒体26に定着させた後に行うが、定着方法として、加熱溶融しない定着方法、例えば圧力を用いて定着させる圧力定着を用いる場合には、記録媒体26へのトナー像の定着を行う前に、光照射装置24によって光照射を行うようにしてもよい。
本発明の画像形成装置10では、前述のように、発色情報付与装置28によって、トナー像を構成する各トナーに発色情報が付与されてから、定着装置22によってトナーが発色するまでの間、トナーにおいて付与された発色情報が安定して保持されるため、発色情報が付与されてから発色するまでの時間を考慮する必要がなく、広いスピードレンジの設計に対応することが可能である。
具体的には、線速を10〜500mm/秒の範囲とすることが好ましく、50〜300mm/秒の範囲とすることがより好ましい。ただし、上記のような線速で画像形成を行う場合でも、前記発色情報付与のための露光時間は線速と解像度から決まる値に設定すればよい。
また、このようなトナーによる発色情報の安定的な保持は、画像における色調安定性やハイライト画像の再現性にも優れた効果を有するため、入力画像情報を高画質で忠実に再現できるフルカラー画像形成に大きく寄与する。
なお、本実施の形態では、光照射装置24から照射された発色反応停止光は、直接記録媒体26上へと照射される場合を説明するが、図10に示すように、光照射装置24から照射された発色反応停止光を、反射板31を介して反射させた後に、記録媒体26へと照射するようにしてもよい。
このように、反射板31を介して発色反応停止光を記録媒体26に照射することで、直接発色反応停止光を記録媒体26に照射する場合に比べて、散乱光を記録媒体26に照射することができるので、効率よく発色反応停止光を記録媒体26上のトナー像を構成する各トナーに照射することが可能となる。
また、画像形成装置10は、センサ30を含んで構成されている。センサ30は、光照射装置24によって発色反応停止光を照射されることが可能な位置に記録媒体26が達したことを検知する。すなわち、搬送経路21を搬送された記録媒体26に、感光体11と転写装置18とによってトナー像が転写され、定着装置22によってトナー像が定着及び発色された後に、この記録媒体26が光照射装置24の設置位置に搬送されると、センサ30は、この記録媒体26を検知する。
センサ30は、記録媒体26の搬送方向両端部各々を検出可能に設けられており、記録媒体26の搬送方向端部を検出するとともに、反搬送方向端部を検出することができる。
センサ30としては、例えば、記録媒体26を搬送する搬送ベルトと記録媒体26との反射率の違いを検出することによって記録媒体26の端部を検出する方法や、記録媒体26の搬送経路21に撮像部を設け、この撮像部による撮像によってえられた画像データの画像に基づいて、例えば、記録媒体26のエッジを検出することによって判別するようにしてもよい。詳細は後述するが、センサ30が画像形成装置10に設けられているので、このセンサ30から出力される信号に基づいて、光照射装置24の光源27による発色反応停止光の照射タイミングを調整することが可能となる。
画像形成装置10は、さらに、画像形成装置10全体を制御するためのシステム制御部32を含んで構成されている。システム制御部32は、露光装置14、発色情報付与装置28、センサ30、及び光照射装置24にデータや信号授受可能に接続されると共に、画像形成装置10に設けられた各種機器に信号授受可能に接続されている。
システム制御部32は、図4に示すように、画像処理部40、論理和処理部42、発色制御部44、記憶部48、及び制御部46を含んで構成されている。
上記画像処理部40、発色制御部44、及び記憶部48は、各々制御部46にデータや信号を授受可能に接続されている。また、制御部46は、上記光照射装置24、センサ30、露光装置14、及び発色情報付与装置28に、データや信号を授受可能に接続されている。
制御部46は、画像形成装置10に含まれる装置各部を制御する。
記憶部48は、後述する処理ルーチンや各種データを記憶すると共に、予め光照射装置24に含まれる各光源を構成する各小光源の位置を示す位置情報を、各小光源を識別するための識別情報として予め記憶する。
具体的には、例えば、図2に示す小光源271〜小光源27n各々の位置を示す位置情報を予め記憶する。また、例えば、光源27が図3に示すように、各々異なる波長の発色反応停止光を照射する各色光源27Y、光源27M、光源27Cに含まれる各小光源(小光源27Y1〜小光源27Yn、小光源27M1〜小光源27Mn、小光源27C1〜小光源27Cn)によって構成される場合についても同様に、各小光源の位置を示す位置情報を予め記憶する。
また、記憶部48は、記録媒体26上に形成されたトナー像による画像領域の画像密度に対応して、この画像密度のトナー像を構成するトナーの発色反応の進行を停止させるために必要な発色反応停止光の露光量を予め記憶する。
画像処理部40は、色変換部71、画像密度分布データ作成部72、画像領域・非画像領域判定部73、精細度処理部74、及び出力階調補正部75を含んで構成されている。
色変換部71は、画像形成装置10に入力された画像データがPDLデータであるときには、ラスタイメージデータに変換するとともに、RGB色空間の画像データを、デバイスに依存しない、L*a*b*色空間の画像データに変換した後に、YMCK色空間の画像データへ変換する。
なお、RGB色空間からL*a*b*色空間の画像データへの変換は、例えば、3次元ルックアップテーブル(DLUT:3次元色補正用LUT)を予め記憶し、このDLUTを用いればよい。L*a*b*色空間からYMCK色空間への変換は、あらかじめ後述する出力階調補正部75を通して出力された色パッチにより、L*a*b*色空間における値とYMCK色空間での値を関係づけたプリンタモデルを作成しておき、これを用いて変換すればよい。このプリンタモデルの作成は、ニューラルネットワーク、重回帰法、ノイゲバウアーの理論式などあるが、ここでは特に方式を限定していない。色変換部71では、このようにして作成したプリンタモデルによってRGB色空間からYMC色空間への変換を行う。
画像密度分布データ作成部72は、画像処理部40に入力された画像データに含まれる、出力する画像の記録媒体サイズ情報に基づいて、該記録媒体サイズの記録媒体に該画像データに含まれる画像を形成したときの画像密度の分布を示す画像密度分布データを作成する。
画像領域・非画像領域判定部73は、画像密度分布データ作成部72で作成された画像密度分布データに基づいて、上記画像データに含まれる出力する画像の記録媒体サイズ情報によって示されるサイズの記録媒体上の、トナー像の形成される画像領域と、トナー像の形成されない非画像領域と、を判断し、画像領域と非画像領域各々のこの記録媒体上の位置を示す位置情報を作成する。
作成された画像領域及び非画像領域各々を示す位置情報は、後述する制御部46の制御によって記憶部48に記憶される。
なお、上記「画像領域」の画像とは、画像処理部40に入力された画像データが表す画像に含まれる、グラフィック、イメージ、及びテキスト等の画像を示している。
精細度処理部74は、画像データに、画像を滑らかにする平滑化処理、或いは画像を強調する強調化処理等を施す。出力階調補正部75は、精細度処理部74で平滑化あるいは強調化された各色信号に、例えば、ドット形状、記録媒体種別により最適化された画像形成部に出力特性に応じて、各色の画像データ毎に非線形なガンマ変換処理を施す。なお、このガンマ変換処理は、例えば、一次元のルックアップテーブル(LUT)等に基づいて行うことができる。
論理和処理部42には、制御部46の制御によって、画像処理部40で処理された画像データが入力される。論理和処理部42では、画像処理部40から画像データが入力されると、画素毎にCMYデータの論理和を計算し、計算した論理和データを露光装置14に出力する。露光装置14は、入力された論理和データに基づいて、感光体11表面を露光する。
画像処理部40から論理和処理部42に出力される画像データは、発色制御部44にも出力される。
発色制御部44は、マゼンタ色の発色を制御するためのマゼンタ発色制御部44M、シアン色の発色を制御するためのシアン発色制御部44C、及びイエロー色の発色を制御するためのイエロー発色制御部44Yを含んで構成されている。
なお、本実施の形態では、発色制御部44は、シアン、マゼンタ、イエローの各々発色を制御するための発色制御部を含む場合を説明するが、この発色制御部44は、光源53から出射される光の波長が、該波長の光を照射されたFトナーを発色または非発色可能な状態に維持するために異なる波長の光を選択的に照射するための光源の種類に対応して設けられていれば良く、例えば、画像形成装置10が光源としてトナーを黒色に発色又は非発色な状態とするための特定波長の光を出射する光源を更に備える場合には、さらにブラック発色制御部を含むようにしてもよい。
マゼンタ発色制御部44M、シアン発色制御部44C、及びイエロー発色制御部44Y各々に入力された、M画素データ、C画素データ、及びY画素データは、制御部46の制御によって、発色情報付与装置28に出力される。
発色情報付与装置28の光源53は、制御部46の制御によって、入力された各色の画素データに基づいて、各画素の色情報の色に応じた波長の光を射出するように制御される。
このように、本発明の画像形成装置10は、制御部46の制御によって、感光体11上に画像データに応じた静電潜像が形成されると共に、静電潜像が現像されたトナー像を構成する各トナーに発色情報を付与可能に構成されている。
次に、画像形成装置の制御部46で実行される処理を説明する。
なお、本ルーチンでは、光照射装置24の光源27は、現像装置16内に貯留されているトナーに含まれる発色部全ての反応性物質を分解または失活させるための波長の発色反応停止光を出射する場合、すなわち、光源27が、図2に示すように、画像形成装置10で採用可能なサイズの記録媒体の全領域を覆うように、複数の小光源271〜小光源27nが配列されて構成され、且つ、各小光源271〜小光源27nは、Fトナーに含まれる発色部の反応性物質を分解または失活させる波長の発色反応停止光を照射可能に構成されているものとして説明する。
制御部46では、所定時間毎に図5に示す処理ルーチンが実行されてステップ100へ進む。
ステップ100では、画像形成装置10の外部から、図示を省略する入出力ポートを介して画像形成装置10で形成する画像の画像データが入力されたか否かを判別し、否定されると、本ルーチンを終了し、肯定されるとステップ102へ進む。
次のステップ102では、入力された画像データを記憶部48に記憶する。
次のステップ104では、色変換部71に、ラスイメージ生成指示及びRGB画像データの変換処理を示す指示信号を出力する。
色変換部71は、ラスターイメージ生成指示及び変換処理を示す指示信号を入力されると、上記ステップ100で取得したPDLデータとしての画像データを、ラスタイメージデータに変換すると共に、RGB色空間の画像データを、デバイスに依存しない、L*a*b*色空間の画像データに変換した後に、YMCK色空間の画像データへ変換する。
次のステップ106では、精細度処理及び出力階調補正の実行指示を示す指示信号を、精細度処理部74及び出力階調補正部75に出力する。
精細度処理部74は、精細度処理の実行指示を示す指示信号を入力されると、上記ステップ104で変換された画像データについて、画像を滑らかにする平滑化処理、或いは画像を強調する強調化処理等を施す。
出力階調補正部75は、出力階調補正の実行指示を示す指示信号を入力されると、精細度処理部74で平滑化あるいは強調化された各色信号に、例えば、ドット形状、記録媒体種別により最適化された画像形成部に出力特性に応じて、各色の画像データ毎に非線形なガンマ変換処理を施す。
次のステップ108では、上記ステップ106で処理された画像データを記憶部48に記憶する。
次のステップ110では、上記ステップ108で記憶部48に記憶した画像データに基づいて、画像密度分布データを作成するための指示信号を、画像密度分布データ作成部72に出力する。
画像密度分布データを作成するための指示信号が入力されると、画像密度分布データ作成部72は、上記ステップ100で取得した画像データに含まれる、出力する記録媒体サイズを示す記録媒体サイズ情報と、上記ステップ108で記憶部48に記憶した画像データに基づいて、該記録媒体サイズ情報によって示される記録媒体に、該画像データの画像を形成したときの画像密度の分布を示す画像密度分布データを作成する。
次のステップ112では、上記ステップ110の処理によって作成された画像密度分布データに基づいて、画像領域と非画像領域を判定することを指示する判定指示信号を、画像領域・非画像領域判定部73に出力する。
判定指示信号を入力された画像領域・非画像領域判定部73は、画像密度分布データ作成部72で作成された画像密度分布データに基づいて、上記画像データに含まれる出力する画像の記録媒体サイズ情報によって示される記録媒体上の、トナー像の形成される画像領域と、トナー像の形成されない非画像領域と、を判別し、画像領域と非画像領域各々の記録媒体上の位置を示す位置情報を、画像領域及び非画像領域各々を示すデータ(画像領域データ及び非画像領域データ)として作成する。
次のステップ114では、光照射装置24に含まれる小光源271〜小光源27nのうちの、上記ステップ112の処理によって作成された画像領域データの画像領域に光を照射する小光源の位置を示す位置情報を、記憶部48から読み取る。
上記ステップ114の処理は、上記ステップ112の処理によって作成された画像領域データによって示される記録媒体上の位置を示す位置情報に対応する、予め記憶部48に記憶された各小光源の位置を示す位置情報を検索することによって可能である。
次のステップ116では、上記ステップ114で読み取った、画像領域データの画像領域に光を照射する小光源の位置を示す位置情報を、画像領域に対応する小光源の位置を示す位置情報として記憶部48に記憶する。
次のステップ118では、画像形成処理が実行される。ステップ118の処理は、上記ステップ108で記憶部48に記憶した画像データに基づいて、静電潜像が形成されるように露光装置14を制御すると共に、該画像データに含まれる色成分情報に基づいて、発色情報付与装置28に含まれる光源53Y、光源53M、及び光源53C各々の点灯を制御することにより、画像データ形成処理を実行する。
ステップ118の処理によって、上記ステップ108で記憶部48に記憶された画像データに基づいて露光装置14による感光体11の露光が行われて、感光体11上に静電潜像が形成された後に、現像装置16によってこの静電潜像が現像されてトナー像が形成され、発色情報付与装置28によって、このトナー像に発色情報が付与される。
記録媒体26が搬送経路21に添って搬送されて、感光体11と転写装置18とによって挟持搬送されることにより、記録媒体26上に発色情報を付与されたトナー像が転写される。
次のステップ120では、センサ30から記録媒体26を検知したことを示す検知信号を入力されるまで否定判断を繰り返し、肯定されるとステップ122へ進む。
次のステップ122では、上記ステップ116で記憶部48に記憶した、上記ステップ112で判定した画像領域に照射する小光源を示す位置情報を読取り、読み取った位置情報に対応する位置の小光源を点灯した後に、本ルーチンを終了する。
なお、この小光源を点灯するタイミングは、予めセンサ30からの検知信号の入力タイミングと、記録媒体26のサイズと、記録媒体26の搬送経路21上の搬送速度と、センサ30と光照射装置24の各小光源までの位置と、に基づいて、記録媒体26上の各領域を照射する各小光源によって照射可能な位置に、記録媒体26上の対応する領域が位置されるタイミングを予め記憶するようにし、センサ30からの検知信号の入力タイミングに基づいて各小光源の点灯タイミングを調整するようにすればよい。
上記ステップ100乃至ステップ122の処理が実行されることにより、例えば、図6(A)に示すように、記録媒体26上の画像領域26A、及び画像領域26Bに画像が形成される場合には、各画像領域26A、及び画像領域26Bに光を照射する複数の小光源による領域27A、及び領域27Bに位置する小光源(図6(B)参照)が、センサ30からの検知信号の入力タイミングに応じて、各小光源によって記録媒体26上の対応する領域を照射可能なタイミングで点灯される。
以上説明したように、本発明の画像形成装置10によれば、光照射装置24の光源27を構成する複数の小光源271〜27nのうち、記録媒体26上の画像領域に光を照射する小光源のみ照射させることができる。
従って、Fトナーに含まれる、発色部内の反応性物質各々を発色部毎に分解または失活させるための波長の光(発色反応停止光)を出射する光照射装置24において、記録媒体26上の画像領域にのみ発色反応停止光を照射し、記録媒体26の非画像領域には発色反応停止光を照射しないように、光照射装置24を制御することができるので、発色反応停止光の照射によるエネルギーの消費を抑制することができ、効率よく発色反応停止光を照射することができる。
なお、上記実施の形態では、光照射装置24の光源27を構成する複数の小光源271〜27nのうち、記録媒体26上の画像領域に光を照射する小光源のみ照射させる場合を説明したが、さらに、画像領域の画像の色に応じて、発色に関与しない色に発色可能な発色部の発色反応を停止するための波長の光を、この画像領域の画像の濃度に応じた露光量で照射することにより、発色反応を停止させるようにしてもよい。
この場合には、下記処理ルーチンを実行するようにすればよい。
なお、下記処理ルーチンでは、光照射装置24の光源27は、現像装置16内に貯留されているトナーに含まれる発色部各々に含まれる反応性物質を分解または失活させるための波長の光を出射する光源27Y、光源27M、及び光源27Cを含んで構成され、且つ図3に示すように、各光源27Y、光源27M、及び光源27Cに含まれる複数の小光源(小光源27Y1〜小光源27Yn、小光源27M1〜小光源27Mn、小光源27C1〜小光源27Cn)は、記録媒体26の搬送方向に直交する方向(すなわち記録媒体26の幅方向)に向かって複数配列されて構成されているものとして説明する。
制御部46では、所定時間毎に図7に示す処理ルーチンが実行されて、ステップ100へ進み、上記図5に示す処理ルーチンと同様に、ステップ100からステップ112の処理が実行される。
ステップ100からステップ112の処理が実行されることによって、ステップ100で取得した画像データに色変換処理、精細度処理、階調補正処理が実行されて記憶部48に記憶されると共に、画画像密度分布データが作成されて、画像領域及び非画像領域が判定される。
次のステップ200では、上記ステップ112で判定した画像領域を構成する各画素の色を、上記ステップ108で記憶部48に記憶した画像データに基づいて、該画像領域に対応する位置の画素の画素データに含まれる色成分情報を読み取ることにより判別する。
次のステップ201では、上記ステップ112の処理によって作成された画像領域データの画像領域に光を照射する対象となる小光源の位置を示す位置情報を、記憶部48から読み取る。
ステップ201の処理は、まず、光照射装置24に含まれる複数の小光源27Y1〜小光源27Yn、小光源27M1〜小光源27Mn、小光源27C1〜小光源27Cnのうちの、上記ステップ112の処理によって作成された画像領域データの画像領域に光を照射する小光源の位置を示す位置情報を、記憶部48から読み取る。
次に、この画像領域の発色に関与しない発色部の発色反応を停止させるための波長の光を照射する小光源として、読み取った同一の画像領域に光を照射する光源27Mの小光源、光源27Cの小光源、光源27Yの小光源のうち、上記ステップ200で判定した色以外の色の発色反応を停止するための波長の光を照射可能な小光源を選択する。
例えば、記録媒体26上に形成される画像領域の色がY色(イエロー)である場合には、ステップ201に処理によって、該画像の画像領域に照射する発色反応停止光としては、M色に発色可能な発色部、及びC色に発色可能な発色部における発色反応を停止するように、光源27Yの対応する位置の小光源27Y1〜27Yn、及び光源27Cの対応する位置の小光源27C1〜27Cnが、画像領域に光照射する光照射部光源の位置情報として読み取られる。
次のステップ202では、上記ステップ201で、画像領域に発色停止光を照射する小光源として位置情報を読み取った各小光源について、光照射するときの露光量を算出し、次のステップ206において、算出した露光量と、発色停止光を照射する小光源の位置を示す位置情報と、を対応付けて記憶部48に記憶する。
ステップ204の処理は、上記ステップ201で読み取った位置情報に対応する小光源各々について、各位置で照射する画像領域の画像密度に応じた露光量を算出する。
具体的には、記憶部48に、現像装置16に貯留されるFトナーの種類に応じて、Fトナーに含まれる各発色部の発色反応を完全に停止させることができるような露光量を、画像密度に対応して予め記憶するようにし、この記憶部48から画像密度に対応する露光量を読み取ることによって算出することができる。
例えば、現像装置16に貯留されているFトナーが光発色型トナーである場合には、画像密度が高くなるほど、光照射装置24において発色反応を停止させるために照射する光の露光量が大きくなるように、画像密度に対応する露光量を予め記憶部48に記憶するようにすればよい。
一方、現像装置16に貯留されているFトナーが光非発色型トナーである場合には、画像密度が高くなるほど、光照射装置24において発色反応を停止させるために照射する光の露光量が小さくなるように、画像密度に対応する露光量を予め記憶部48に記憶するようにすればよい。
次のステップ118では、図5に示す処理ルーチンと同様に、画像形成処理が実行され、発色情報を付与されたトナー像が記録媒体26上に転写される。
次のステップ120では、センサ30から、記録媒体26を検知したことを示す検知信号を入力されるまで否定判断を繰り返し、肯定されるとステップ208へ進む。
次のステップ208では、上記ステップ206で記憶部48に記憶した、画像領域に照射する小光源を示す位置情報、及び露光量を示す露光量情報を読み取り、読み取った位置情報に対応する位置の小光源を読み取った露光量情報の露光量の光を照射するように点灯制御した後に、本ルーチンを終了する。
上記図7に示す、ステップ100からステップ210の処理が実行されることにより、例えば図8(A)に示すように、記録媒体26上の画像領域26BにY色の画像が形成される場合には、各画像領域を構成するトナー像のトナーのうちの、M色に発色可能なM色発色部、及びC色に発色可能なC色発色部における発色反応を停止させるような波長の光を照射する光源27M、及び光源27Cを構成する小光源27M1〜小光源27Mn、及び小光源27C1〜小光源27Cnのうち、各画像領域に発色反応停止光を照射可能な位置の小光源として、図8中、小光源27M8〜小光源27M14と、小光源27C8〜小光源27C14が(図8(B)参照)、画像領域26Bの画像密度に応じた露光量で点灯される。
このように小光源が点灯された状態の光源27と搬送経路21との間を、トナー像が転写された記録媒体26が搬送されて通過することにより、記録媒体26上の画像領域上に、該画像領域の画像密度に応じた露光量で、画像領域26Bの色以外の色の発色反応の進行を停止するような波長の光が照射される。
以上説明したように、光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持するトナーを用いた本発明の画像形成装置10によれば、発色反応停止光を照射する複数の小光源のうちの、記録媒体26に形成された画像による画像領域に発色反応停止光を照射する小光源のみ点灯させるとともに、この画像領域の色に基づいて、画像領域の発色に関与しない色に対応する発色部の発色反応を停止するための波長の発色反応停止光を選択的に照射し、且つ、画像領域の画像密度に応じた露光量の発色反応停止光を照射することができる。
従って、Fトナーに含まれる、発色部内の反応性物質各々を発色部毎に分解または失活させるための波長の発色反応停止光を出射する光照射装置24において、記録媒体26上の画像領域にのみ発色反応停止光を照射し、記録媒体26の非画像領域には発色反応停止光を照射しないように、光照射装置24を制御することができるので、発色反応停止光の照射によるエネルギーの消費を抑制することができ、効率よく発色反応停止光を照射することができる。
また、光照射装置24は、制御部46の制御によって、画像領域の色以外の色に発色するための発色部における発色反応を停止させるような波長の発色反応停止光を照射する小光源のみを、各画像領域の画像密度に応じた露光量で照射することができるので、効率よく発色反応停止光を照射することができると共に、画像領域における色相及び濃度が、画像形成装置10で記録する画像の画像データに基づいた画像領域の色相及び濃度とは異なるものとなることを抑制することができ、トナー像を構成する各トナーが付与された発色情報に応じた色に発色された後における発色反応の進行による画質劣化を抑制することができる。
なお、上記実施の形態では、記録媒体26に形成される画像の画像領域の、記録媒体26全体に対する占有率に拘わらず、画像領域に光を照射する小光源から発色反応停止光を照射する場合を説明したが、記録媒体26全体に対する画像領域の占有率が所定占有率以上(例えば、記録媒体26全面に対して80%以上)であり、且つこの画像領域の画像密度が所定密度以上である場合には、発色情報付与装置28による発色情報の付与時に、画像領域に対応するトナー像を構成する各トナーに十分な発色情報付与のための光が照射されていることから、上記ステップ118の画像形成処理終了後、光照射装置24による光照射を行わずに、図5及び図7に示す処理ルーチンを終了するようにしてもよい。
このように制御すれば、さらに、効率よく光照射装置24による光照射を制御することが可能となる。
<試験例>
上記実施形態の作用を確認するため、以下のような試験を行った。
なお、以下の実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
(トナーの作製)
まず、下記実施例に用いたトナーについて説明する。なお、以下のトナーの作製において、光硬化性組成物分散液の調整およびこれを用いた一連のトナーの作製は全て暗所で実施した。
光発色型トナー
(マイクロカプセル分散液の調製)
−マイクロカプセル分散液(1)−
前記電子供与性無色染料(1)12.1質量部を酢酸エチル10.2質量部に溶解し、ジシクロヘキシルフタレート12.1質量部とタケネートD−110N(武田薬品工業株式会社製)26質量部とミリオネートMR200(日本ポリウレタン工業株式会社製)2.9質量部とを添加した溶液を準備した。
続いて、この溶液を、ポリビニルアルコール5.5質量部および水73質量部の混合液に添加し、20℃で乳化分散し、平均粒径0.5μmの乳化液を得た。得られた乳化液に水80質量部を加え、攪拌しながら60℃に加温し、2時間後に電子供与性無色染料(1)を芯材とするマイクロカプセルを分散させたマイクロカプセル分散液(1)を得た。
なお、このマイクロカプセル分散液(1)に含まれるマイクロカプセルの外殻を構成する材料(上記とほぼ同様の条件でジシクロヘキシルフタレート、タケネートD−110NおよびミリオネートMR200を反応させて得られた材料)のガラス転移温度は130℃であった。
−マイクロカプセル分散液(2)−
電子供与性無色染料(1)を前記電子供与性無色染料(2)に変更した以外は、マイクロカプセル分散液(1)を調製する場合と同様にしてマイクロカプセル分散液(2)を得た。
−マイクロカプセル分散液(3)−
電子供与性無色染料(1)を前記電子供与性無色染料(3)に変更した以外は、マイクロカプセル分散液(1)を調製する場合と同様にしてマイクロカプセル分散液(3)を得た。
(光硬化性組成物分散液の調製)
−光硬化性組成物分散液(1)−
光重合開始剤(1−a)1.62部と、(1−b)0.54部とを、酢酸エチル4部に溶解させた溶液に、電子受容性化合物(1)9部およびトリメチロールプロパントリアクリレートモノマー(3官能アクリレート、分子量約300)7.5部を添加した。
このようにして得られた溶液を、15%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液19部と水5部と2%界面活性剤(1)水溶液0.8部と2%界面活性剤(2)水溶液0.8部とを混合した混合溶液中に添加し、ホモジナイザー(日本精機株式会社製)にて8000rmpで7分間乳化して、乳化液とした光硬化性組成物分散液(1)を得た。
−光硬化性組成物分散液(2)−
光重合開始剤(1−a)及び(1−b)を、光重合開始剤(2−a)0.08部、(2−b)0.18部、(2−c)0.18部に変更した以外は、光硬化性組成物分散液(1)を調製する場合と同様にして光硬化性組成物分散液(2)を得た。
−光硬化性組成物分散液(3)−
前記光硬化性組成物分散液(2)で用いた光重合開始剤(2−b)を、光重合開始剤(3−b)に変更した以外は、光硬化性組成物分散液(1)を調製する場合と同様にして光硬化性組成物分散液(3)を得た。
なお、光硬化性組成物分散液の調整に用いた光重合開始剤(1−a)、(1−b)、(2−a)、(2−b)、(2−c)、(3−b)、電子受容性化合物(1)、及び、界面活性剤(1)〜(2)の化学構造式を以下に示す。
−樹脂粒子分散液(1)の調製−
・スチレン:360部
・nブチルアクリレート:40部
・アクリル酸:4部
・ドデカンチオール:24部
・四臭化炭素:4部
以上を混合し、溶解した溶液を、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)6部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)10部をイオン交換水560部に溶解した溶液に、フラスコ中で分散・乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4部を溶解したイオン交換水50部を投入した。
続いて、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、体積平均粒径が200nm、ガラス転移温度が50℃、重量平均分子量(Mw)が16200、比重が1.2である樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液(1)(樹脂粒子濃度:30%)を得た。
−感光・感熱カプセル分散液(1)の調製−
・マイクロカプセル分散液(1)24部
・光硬化性組成物分散液(1)232部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてIKA製ウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。
そして、硝酸でpH3に調整し、次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.20部を加え、ウルトラタラックスで回転数6000rpmで10分間の分散操作を継続した。 加熱用オイルバスでフラスコをゆっくり攪拌しながら40℃まで加熱した。
ここで、樹脂粒子分散液(1)60部を緩やかに追加した。
これにより、感光・感熱カプセル分散液(1)を得た。なお、この分散液中に分散する感光・感熱カプセルの体積平均粒経は約2μmであった。また、得られた分散液の自発的な発色は確認されなかった。
−感光・感熱カプセル分散液(2)の調製−
マイクロカプセル分散液(1)をマイクロカプセル分散液(2)に、光硬化性組成物分散液(1)を光硬化性組成物分散液(2)に変更した以外は、感光・感熱カプセル分散液(1)と同様に作製し、感光・感熱カプセル分散液(2)を得た。なお、この分散液中に分散する感光・感熱カプセルの体積平均粒経は約2μmであった。また、得られた分散液の自発的な発色は確認されなかった。
−感光・感熱カプセル分散液(3)の調製−
マイクロカプセル分散液(1)をマイクロカプセル分散液(3)に、光硬化性組成物分散液(1)を光硬化性組成物分散液(3)に変更した以外は、感光・感熱カプセル分散液(1)と同様に作製し、感光・感熱カプセル分散液(3)を得た。なお、この分散液中に分散する感光・感熱カプセルの体積平均粒経は約2μmであった。また、得られた分散液の自発的な発色は確認されなかった。
(トナー(発色部分散構造タイプ)の作製)
−トナーの作製−
・感光・感熱カプセル分散液(1):80部
・感光・感熱カプセル分散液(2):80部
・感光・感熱カプセル分散液(3):80部
・樹脂粒子分散液(1):80部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてIKA製ウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。
次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.1部を加え、ウルトラタラックスで回転数6000rpmで10分間の分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で60分保持した後、ここに樹脂粒子分散液(1)を緩やかに20部追加した。
その後、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.5にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら55℃まで加熱し、10時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水1Lに再分散し、15分300rpmで攪拌・洗浄した。
これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度7.0μS/cmtとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで12時間の真空乾燥を行うことにより、母材中に3種類の感光・感熱カプセルが分散した構造を有するトナー粒子を得た。
この時の粒子径をコールターカウンターにて測定したところ体積平均粒径D50vは約15μmであった。また、得られたトナーの自発的な発色は確認されなかった。
次に、このトナー(1)100部と、n−デシルトリメトキシシランで表面処理した平均粒子径15nmの疎水性チタニア0.3部と、平均粒子径30nmの疎水性シリカ(NY50、日本アエロジル社製)0.4部とをヘンシェルミキサーを用い周速32m/sで10分間ブレンドをおこなった後、目開き45μmのシーブを用いて粗大粒子を除去し、外添剤を添加した外添トナー3を得た。
<現像剤の作製>
次に、キャリア芯材の表面を、ポリメチルメタアクリレート(総研化学社製)で被覆した平均粒径50μmのフェライトキャリア(キャリア全質量に対するポリメチルメタアクリレートの使用量:1質量%)を用い、トナー濃度が5質量%になるように前記の外添トナーを秤量し、両者をボールミルで5分間攪拌・混合して現像剤を調製した。
<試験例1>
(画像形成)
図1に示したような画像形成装置を用意し、現像剤として、上記作成した現像剤を用いた。
感光体11としては、アルミドラムの周りに、電荷発生層が塩化ガリウムフタロシアニン、電荷輸送層がN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミンを含む膜厚25μmの多層有機感光層を塗布形成したものを用いた。また、帯電装置12としてはスコロトロンを用いた。
露光装置14としては、解像度600dpiで潜像形成が行える波長780nmのLEDイメージバーを用いた。現像装置16は、二成分磁気ブラシ現像用の金属スリーブを備え反転現像を行うことが可能なものである。なお、この現像器に前記現像剤を装填したときのトナー帯電量は、−5〜−30μC/g程度であった。
発色情報付与装置28は、ピーク波長405nm(露光量:0.2mJ/cm2)、532nm(露光量:0.2mJ/cm2)、657nm(露光量:0.4mJ/cm2)の光を照射可能な解像度600dpiのLEDイメージバーである。転写装置18は、導電性芯材の外周に導電性弾性体を被覆してなる半導電性ロールを転写ロールとして有する。導電性弾性体は、NBRとEPDMを混合してなる非相溶性のブレンド物に、ケッチェンブラックとサーマルブラックからなる2種類のカーボンブラックを分散させてなり、ロール抵抗が108.5Ωcm、アスカーC硬度が35度のものである。
定着装置22は、富士ゼロックス社製DPC1616に使用されている定着器を使用し、発色情報付与のポイントから30cmの位置に配置した。また、光照射装置24としては、前記発色情報付与装置の三波長を含む高輝度シャーカステンを用い、照射幅を5mmとした。
以上の構成の画像形成装置により印字条件を下記のように設定した。
・感光体線速:10mm/秒。
・帯電条件:スコロトロンのスクリーンに−400V、ワイヤーには直流−6kVを印加。このとき感光体の表面電位は−400Vとなった。
・露光:Y、M、C、黒の4色分の画像情報の論理和で露光し、露光後の電位は約−50Vであった。
・現像バイアス:直流−330Vに交流Vpp1.2kV(3kHz)の矩形波を重畳。
・現像剤接触条件:周速比(現像ロール/感光体)2.0、現像ギャップ0.5mmとし、現像ロール上の現像剤重量は400g/m2とし、感光体上のトナー現像量がべた画像で5g/m2となるようにした。
・転写バイアス:直流+800V印加。
・定着温度:定着ロール表面温度を180℃に設定。
・光照射装置光源:光源53Y:405nmの光を露光。光源53M:535nmの光を露光。光源53C:657nmの光を露光。
・光照射装置照度:130000lux。
以上の条件により、図8(A)に示すような、Y色の画像領域26Bを含む画像の画像データを画像形成装置10において取得して、上記図7に示す処理ルーチンを制御部46において実行した。
その結果、図8(B)に示すように、画像領域26Bに光を照射する小光源27Y1〜小光源27Yn、小光源27M1〜小光源27Mn、小光源27C1〜小光源27Cnのうちの、M色の発色反応及びC色の発色反応を停止するための波長の光を照射する小光源(小光源27M1〜小光源27Mn、小光源27C1〜小光源27Cn)のうちの、画像領域26Gに発色反応停止光を照射可能な位置の小光源27M8〜小光源27M14、小光源27C8〜小光源27C14が点灯された。
このため、従来技術のように、記録媒体26に形成された画像領域の位置に拘わらず、記録媒体26の全面に渡って発色反応停止光を照射する場合に比べて、効率よく発色反応停止光を照射することができた。