JP2009054344A - 導電性被膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、低温かつ短時間で導電性被膜を製造可能であり、前記特性に加えて、被膜外観、強度に優れた導電性被膜の製造方法、該製造方法により製造された導電性被膜、および該導電性被膜を有する積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】保護物質によって被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質とを、無機微粒子の存在下で接触させることを特徴とする導電性被膜の製造方法により上記課題を解決することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性微粒子を含んでなる導電性被膜の製造方法、該製造方法により製造された導電性被膜、および該導電性被膜を有する積層体に関する。
導電性被膜は、ブラウン管、プラズマディスプレイパネル等の電磁波遮蔽、建材または自動車の赤外線遮蔽、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止被膜、ガラスの曇り止め用熱線、回路基板等の配線、樹脂に導電性を付与するためのコーティング、回路そのもの等の広い範囲に用途を有する。これらの導電性被膜を形成する方法としては、金属の真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリング等による方法、あるいは金属粒子を分散媒に分散させた金属コロイド溶液を塗布し、加熱焼成する方法などが従来知られている。これらの方法は操作が煩雑である、量産性に乏しい、高温での加熱が必要であるなどの問題点を含んでいる。
一方、プリント基板等の配線を、導電膜のエッチングにより形成する方法も行われているが、エッチングは操作が煩雑で、高コストである上、廃液処理等の問題もあり、環境面からも好ましくない。また、使用できる基材が、プラスチックフィルム等のエッチング耐性のあるものに限定されるという欠点があった。また、導電性ペーストによる場合は、スクリーン印刷により配線等の導電回路を作成することが必要とされ、良好な導電性を得るためには、印刷後高温で加熱する必要があり、その体積抵抗値は、10-5Ω・cmオーダーが限界であった(特許文献1、2参照)。
これに対して、最近では、銀ナノ粒子を用いることによって、0.1〜5μm程度の比較的薄い膜厚で10-6Ω・cmオーダーの体積抵抗値が得られることが知られている(非特許文献1、2参照)。しかし、この抵抗値を発現させるためには、ペーストを200℃程度の高温で数十分間加熱して焼結させる必要があり、コート紙などの通常の紙基材や、ポリエステル等のプラスチックフィルム基材に使用することは困難である。また、この方法は、形成された導電回路、導電性被膜と基材との密着性が劣り、クラックが入りやすい欠点がある(特許文献3、4参照)。
特開2000−260224号公報 特開2003−16836号公報 特開2004−273205号公報 特開2005−81501号公報 エレクトロニクス実装学会誌、Vol.5、No.6(2002年)、523〜528頁 日経ナノビジネス、Vol.22(2005.9.26)、2〜7頁
従って、本発明は、前記従来の問題を有しない導電性被膜の製造方法、該製造方法により製造された導電性被膜、および該導電性被膜を有する積層体を提供することを目的とする。
より具体的には、本発明は、通常の紙やプラスチック、繊維、ガラス等、任意の基材上に、低温かつ短時間で導電性被膜を製造でき、前記特性に加えて、例えば、10-6Ω・cmオーダーの低い体積抵抗値を有し、外観良好かつ耐引掻き性の優れた導電性被膜を製造する方法、この方法により製造された導電性被膜、およびこの導電性被膜を有する積層体を提供することを目的とするものである。
すなわち、第1の発明は、保護物質によって被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質とを、無機微粒子の存在下で接触させることを特徴とする導電性被膜の製造方法に関する。
また、第2の発明は、保護物質によって被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを、接触させることを特徴とする第1の発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第3の発明は、無機微粒子がシリカであることを特徴とする第1または第2の発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第4の発明は、無機微粒子の平均粒子径が1〜200nmであることを特徴とする第1〜第3いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第5の発明は、無機微粒子がコロイダルシリカであることを特徴とする第1〜第4いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第6の発明は、無機微粒子に含まれる酸化ナトリウムの含有量が、無機微粒子全体の1重量%未満であることを特徴とする第1〜第5いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第7の発明は、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子との重量比が、陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=40/60〜1/99であることを特徴とする第1〜第6いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第8の発明は、導電性微粒子が、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、および鉄から選ばれた金属、またはこれら金属の合金の少なくとも1種であることを特徴とする第1〜第7いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第9の発明は、導電性微粒子が銀である、第8の発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第10の発明は、基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層を形成した後、該陰イオン交換層上に、保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む被膜層を形成する第1〜第9いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第11の発明は、基材上に、保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む被膜層を形成した後、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層を形成する第1〜第9いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第12の発明は、基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層を形成した後、該イオン交換層上に、保護物質によって被覆された導電性微粒子と無機微粒子をともに含む皮膜層を形成する第1〜第9いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第13の発明は、基材上に、保護物質によって被覆された導電性微粒子と無機微粒子をともに含む皮膜層を形成した後、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層を形成する第1〜第9いずれかの発明の導電性被膜の製造方法に関する。
また、第14の発明は、第1〜第13いずれかの発明の製造方法によって製造されてなる導電性被膜に関する。
また、第15の発明は、基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層、および第10の発明の製造方法により得られる導電性皮膜が積層されてなる積層体に関する。
また、第16の発明は、基材上に、第11の発明の製造方法により得られる導電性皮膜、および陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層が積層されてなる積層体に関する。
さらに、第17の発明は、基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層、および第12の発明の製造方法により得られる導電性皮膜が積層されてなる積層体に関する。
さらにまた、第18の発明は、基材上に、第13の発明の製造方法により得られる導電性皮膜、および陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層が積層されてなる積層体に関する。
本発明の導電性被膜の製造方法により、低温かつ短時間で、優れた導電性、例えば10-6Ω・cmオーダーの体積抵抗値を有し、かつ被膜外観、強度に優れた導電性被膜を形成することができる。また、本発明の導電性被膜は、紙、各種プラスチックフィルム、ガラス、繊維等に対する密着性に優れているため、基材の種類を問わずあらゆる基材上に容易に導電性被膜を形成することができる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明は本発明の技術的思想を逸脱しない限り、以下の説明あるいは実施の形態に限定されるものではない。
先ず、本発明の導電性被膜の製造方法は、保護物質によって被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能を有する物質とを、無機微粒子の存在下で接触させることを特徴としている。まず、これら保護物質によって被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能を有する物質とを無機微粒子の存在下で接触させる態様としては、(I)保護物質で被覆された導電性微粒子を含んだ層と、陰イオン交換能を有する物質を含んだ層のどちらか一方または両方に無機微粒子を含有させ、隣接層として設ける、あるいは、(II)保護物質で被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを同一層内に互いに接触させるような状態で含ませる方法がある。
(I)の方法での導電性被膜の製造方法としては、例えば、(I−1)基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層を形成し、次に、前記陰イオン交換層上に、保護物質で被覆された導電性微粒子を含んだ被膜層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−2)基材上に、保護物質で被覆された導電性微粒子を含んだ被膜層を形成し、次に、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−3)基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含んだ陰イオン交換層を形成し、次に、前記陰イオン交換層上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と無機微粒子とを含んだ被膜層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−4)基材上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と無機微粒子とを含んだ被膜層を形成し、次に、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質を含んだ陰イオン交換層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−5)基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層を形成し、次に、前記陰イオン交換層上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と無機微粒子とを含んだ被膜層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−6)基材上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と無機微粒子とを含んだ被膜層を形成し、次に、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層を形成して導電性被膜を形成する方法等が挙げられる。
また(II)の方法での導電性被膜の製造方法としては、例えば、基材上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子を含んだ被膜形成用組成物からなる層を形成する方法が挙げられる。これらの層は、保護物質で被覆された導電性微粒子を含む被膜形成用組成物、陰イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用組成物、無機微粒子、あるいは保護物質で被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子を含む被膜形成用組成物を、基材に例えば塗布、印刷などにより被覆し、導電性被膜層とする方法が挙げられる。しかし、本発明の導電性被膜の製造方法では、保護物質によって被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能を有する物質とが無機微粒子の存在下で、何らかの方法により接触していればよいのであり、保護物質によって被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能を有する物質とを接触させる方法は、前記例示方法に限られるものではない。
以下、本発明で用いられる、保護物質によって被覆された導電性微粒子(A)、陰イオン交換能を有する物質(B)、無機微粒子(X)、これらを含む被膜形成用組成物(C)、導電性被膜の製造方法(D)、導電性被膜を有する積層体(E)、導電性被膜の各種用途(F)について順次詳細に説明する。
(A)保護物質によって被覆された導電性微粒子
先ず、本発明で用いられる、保護物質によって被覆された導電性微粒子における導電性微粒子について説明する。本発明で用いられる導電性微粒子は、被膜に導電性を与えるために用いられるものであり、被膜に導電性を与えるものである限りどのようなものであってもよい。このような導電性微粒子としては、代表的なものとして導電性の金属物質が挙げられる。このような金属物質としては、導電性の金属単体、例えば、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、タングステン、チタン、インジウム、イリジウム、ロジウム、アモルファス銅等の金属;これら金属の合金、例えば銀−銅合金など;これら金属の金属複合体、例えば銀−銅複合体など;金属を更に他の導電性金属で被覆したもの、例えば、銀めっき銅などが挙げられる。導電性金属としては、なかでも、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、鉄が好ましく、金、銀、銅、ニッケルがより好ましく、導電性、コストの点から銀が更に好ましい。その他の導電性微粒子としては、例えば、前記金属物質で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等の金属酸化物、カーボンブラック、グラファイト、金属錯体、有機導電性微粒子等を用いることもできる。導電性微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の導電性微粒子を組み合わせて用いる場合、これら複数の物質は、混合物、混融物、分散物、被覆物など任意の形態であってよい。また、これら導電性微粒子は、微粒子、例えば平均粒子径が0.001〜10μmの範囲の微粒子であるものが、本発明では好ましく用いられる。この範囲の導電性微粒子を用いることにより、低温かつ短時間で優れた導電性能を有する導電性被膜の形成が可能となる。
前記平均粒子径範囲の導電性金属物質として、例えば、湿式法、アトマイズ法、電解法等の従来周知あるいは公知の製法によって得られる粉末状の導電性金属物質(A−1)が挙げられる。この導電性金属物質(A−1)の形状としては、例えば、フレーク状、鱗片状、板状、球状、略球状、凝集球状、樹枝状、箔状等種々の形状が知られているが、いずれの形状のものをも本発明では使用することができる。またこれら製法により製造されたものは、通常平均粒子径が1μm以上であるが、前記理由から平均粒子径が1〜10μmのものが好ましい。
更に、前記平均粒子径範囲の導電性金属物質の他のものとして、例えば、ガス中蒸発法等の気相法、液相中で超音波、紫外線や還元剤を用いて金属化合物を還元する液相法(特開平11−80647号公報および特開昭61−276907号公報を参照)、あるいは溶融法、電解法等により得られる平均粒子径0.001〜0.1μmの導電性微粒子(A−2)が挙げられる。本発明においては、導電性被膜層形成方法にもよるが、平均粒子径が0.001〜0.05μmの導電性微粒子を用いることが更に好ましい。この導電性微粒子(A−2)は、前記導電性金属物質(A−1)に比べてより好ましいものである。この導電性微粒子(A−2)中では、製造コスト、工数を考慮すると、金属化合物を液相中で超音波、紫外線や還元剤を用いて還元する液相法によって得られる導電性微粒子が好ましい。
前記導電性金属物質(A−1)および(A−2)は、各々1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明における導電性微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を利用した粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、マイクロトラックまたはナノトラック等)により測定された値である。
また、本発明においては、導電性微粒子は、保護物質によって被覆されているものが用いられる。該保護物質は、導電性微粒子の凝集を防ぎ、例えば、導電性インキ、導電性塗料などの導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物とした際に、該組成物中での導電性微粒子の分散安定性を高めるために用いられているものであり、このような目的を達成できる物質であれば、保護物質としてどのようなものでも用いることができる。このような目的を達成する保護物質として、例えば導電性微粒子に対する親和性基を化合物中に1個または複数個有する化合物が挙げられる。導電性微粒子に対する親和性基としては、導電性微粒子の種類によっても異なるが、一般的には、アミノ基、4級アンモニウム、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等の極性基が挙げられる。しかし、導電性微粒子に対する親和性基が、これらに限定されるものではない。これらの親和性基は、化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは側鎖と主鎖の双方に含まれていてもよい。導電性微粒子に対する親和性基を化合物中に1個または複数個有する化合物としては、例えば、顔料分散剤、界面活性剤、カップリング剤、脂肪酸等の分散剤が挙げられる。本発明においては、保護物質は分散剤を含むものが好ましく、さらには分散剤としては脂肪酸が好ましい。これは、脂肪酸を含んだ保護物質によって被覆された導電性微粒子が用いられると、より低温かつ短時間での導電性被膜の製造が可能となるからである。なお、本発明で「分散剤を含む」あるいは「脂肪酸を含む」とは、分散剤あるいは脂肪酸が単独で用いられる場合と、分散剤あるいは脂肪酸と他の保護剤とが併用される場合との両者を含むものである。以下、保護物質として用いられる顔料分散剤、界面活性剤、カップリング剤、脂肪酸等の分散剤について更に具体的に説明する。
本発明において保護物質として用いることができる顔料分散剤としては、導電性微粒子に対する親和性基を化合物中に1個または複数個有するものであればよく、特に限定されるものではない。顔料分散剤は既に多種、多様のものが市販されており、これら市販の顔料分散剤の何れのものをも、本発明において導電性微粒子の保護物質として用いることができる。本発明において保護物質として用いることができる市販の顔料分散剤としては、例えば、ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース17000、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース36000、ソルスパース41000(いずれも日本ルーブリゾール株式会社製)、SMA1000、SMA2000、SMA3000、SMA1440、SMA17352、SMA2625、SMA3840(いずれも川原油化株式会社製)、EFKA4009、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4080、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4080、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4300、EFKA4330、EFKA4340、EFKA6220、EFKA6225、EFKA6230、EFKA6525、EFKA6700、EFKA6745、EFKA6780、EFKA6782、EFKA6903、EFKA6906、EFKA6950、EFKA7462、EFKA8502、EFKA8503、EFKA8511、EFKA8512、EFKA8580、EFKA8590(いずれもエフカアディティブズ社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB711、アジスパーPB822、アジスパーPN411、アジスパーPA111(いずれも味の素ファインテクノ株式会社製)、TEXAPHOR−UV20、TEXAPHOR−UV21、TEXAPHOR−UV61(いずれもコグニスジャパン株式会社製)、DIsperbyk−101、DIsperbyk−102、DIsperbyk−103、DIsperbyk−106、DIsperbyk−110、DIsperbyk−111、DIsperbyk−140、DIsperbyk−142、DIsperbyk−145、DIsperbyk−161、DIsperbyk−162、DIsperbyk−163、DIsperbyk−164、DIsperbyk−166、DIsperbyk−167、DIsperbyk−168、DIsperbyk−170、DIsperbyk−171、DIsperbyk−174、DIsperbyk−180、DIsperbyk−182、DIsperbyk−2000、DIsperbyk−2001、DIsperbyk−2050、DIsperbyk−2070、DIsperbyk−2090(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロンKS−860、ディスパロンKS−873N、ディスパロン7004、ディスパロン1831、ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロンDA−400N、ディスパロンPW36、ディスパロンDA−703−50、ディスパロンDA−725、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−7301、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−234、ディスパロンDN−900、ディスパロンDA−1200(いずれも楠本化成株式会社製)等が挙げられる。これら顔料分散剤は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、顔料分散剤と顔料分散剤以外の保護物質を組み合わせて使用してもよい。
また、界面活性剤は一般に、陰イオン系、非イオン系、両性イオン系、陽イオン系のものが知られているが、本発明においては、保護物質としてこれらのいずれのものをも用いることができる。本発明において用いられる界面活性剤は、界面活性剤として知られた化合物であればよく、特に限定されるものではないが、入手が容易である点からは、界面活性剤として市販されている化合物を使用することが好ましい。以下に、陰イオン系、非イオン系、両性イオン系、陽イオン系界面活性剤の例を具体的に示すが、本発明において用いることのできる界面活性剤が、下記のものに限定されるものではない。
陰イオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルファオレインスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、メチルタウリン酸塩等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸モノグリセリド等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、例えば、アミノ酸、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、N−メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム等が挙げられる。
また、これらとは分類形態が異なるものとして、フッ素系界面活性剤、アリル系反応性界面活性剤等の反応性界面活性剤、カチオン性セルロース誘導体、ポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子界面活性剤も知られている。これらは湿潤分散剤としても市販されているが、このような湿潤分散剤をも含め、前記いずれの界面活性剤も本発明においては保護物質として用いることができる。これらの界面活性剤の市販品の一例を示せば、EFKA5010、EFKA5044、EFKA5244、EFKA5054、EFKA5055、EFKA5063、EFKA5064、EFKA5065、EFKA5066、EFKA5070、EFKA5071、EFKA5207(いずれもエフカアディティブズ社製)、DIsperbyk−101、DIsperbyk−108、DIsperbyk−130(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いることも、また2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、本発明においては、界面活性剤と界面活性剤以外の本発明の保護物質を組み合わせて導電性微粒子の保護物質として用いることもできる。
また、カップリング剤としては、一般に、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が知られているが、これらのいずれのものをも本発明の保護物質として使用することができる。以下に、本発明において用いることのできる市販のカップリング剤をいくつか例示するが、本発明で用いられるカップリング剤が下記のものに限定されるものではない。
シランカップリング剤としては、例えば、KA−1003、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBE403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−6123、KBE−585、KBM−703、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
また、チタネート系カップリング剤としては、例えば、プレンアクトKR−TTS、プレンアクトKR−46B、プレンアクトKR−55、プレンアクトKR−41B、プレンアクトKR−38S、プレンアクトKR−138S、プレンアクトKR−238S、プレンアクト338X、プレンアクトKR−44、プレンアクトKR−9SA(いずれも味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
アルミニウム系カップリング剤としては、プレンアクトAL−M(味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
これらのカップリング剤は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、カップリング剤とカップリング剤以外の本発明の保護物質を組み合わせて使用してもよい。
本発明において使用される脂肪酸としては、特に限定されず、一般に脂肪酸として知られているものを使用することができ、例えば直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分岐脂肪酸、3級脂肪酸などを挙げることができる。
直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等が挙げられる。
直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
分岐脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチルイソヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−イソブチルイソオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、2−イソペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルイソデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−イソブチルドデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−イソヘプチルウンデカン酸、2−イソペプチルイソウンデカン酸、2−ドデシルヘキサン酸、2−イソドデシルヘキサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−イソオクチルドデカン酸、2−オクチルイソドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−イソノニルイソトリデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−イソデシルドデカン酸、2−デシルイソドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−オクチルヘキサデカン酸、2−イソオクチルヘキサデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−イソウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘプタデカン酸、2−イソドデシルイソヘプタデカン酸、2−デシルオクタデカン酸、2−デシルイソオクタデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−イソトリデシルイソヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−イソテトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルヘキサデカン酸、2−ヘキサデシルテトラデカン酸、2−ヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−イソヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−イソペンタデシルイソノナデカン酸、2−テトラデシルベヘン酸、2−イソテトラデシルベヘン酸、2−テトラデシルイソベヘン酸、2−イソテトラデシルイソベヘン酸、イソヘプタン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸等が挙げられる。
3級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学株式会社製)、エクアシッド13(出光石油化学株式会社製)などが挙げられる。
これらの脂肪酸は、炭素数3〜22のものが好ましく用いられる。また、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、脂肪酸と脂肪酸以外の保護物質を組み合わせて使用してもよい。
これら保護物質を導電性微粒子に被覆する方法としては、予め製造された導電性微粒子と保護物質とを乾式、または湿式で混合するなどして導電性微粒子を保護物質により被覆する方法、導電性微粒子を製造する際保護物質の存在下に導電性微粒子を形成して、保護物質で被覆された導電性微粒子を得る方法、脂肪酸金属塩など保護物質として機能する物質の金属塩を還元剤などを用いて還元することにより保護物質で被覆された導電性微粒子を得る方法などが知られている。これら方法はいずれも公知の方法であり、適宜の方法が用いられればよい。
また、本発明では、液体媒体中、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて、金属塩等の金属化合物を還元することによって得られた金属微粒子分散体を好ましく用いることができる。この方法においては、還元反応が高温に加熱しなくても迅速に進行するため、反応後の金属微粒子の凝集が抑えられ、微小で粒子径の揃った金属微粒子を得ることができる。このため、この方法で得られた金属微粒子分散物は流動性や安定性に優れており、例えば、インキとして用いた場合、低温での乾燥でも、低い体積抵抗値を有する導電性回路パターンを形成することができる。この方法では、金属塩として例えば脂肪酸金属塩を用いることにより、脂肪酸を含む保護物質で被覆された金属微粒子を直接製造することができ、またこの方法で得られた金属微粒子は諸特性が優れていることから、本発明では該方法で得られた金属微粒子を導電性微粒子として好ましく用いることができる。
Figure 2009054344
(式中、Rはn価の多塩基酸残基を表す。)
前記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドとしては、例えば、二塩基酸ジヒドラジド、三塩基酸トリヒドラジド、四塩基酸テトラヒドラジド等が挙げられ、二塩基酸ジヒドラジドとしては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、タルタロジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、ヘキサデカン酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
また三塩基酸トリヒドラジドとしては、例えば、クエン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等があげられる。四塩基酸テトラヒドラジドとしては、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等があげられる。前記以外の多塩基酸ポリヒドラジドとしては、ポリアクリル酸ポリヒドラジド等が挙げられる。
この導電性微粒子製造方法の一例を挙げると、例えば、金属化合物として脂肪酸の金属塩を用い、これをトルエンなどの水と相分離する非水系溶剤に溶解し、この溶液に前記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは前記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドの水溶液を滴下して前記脂肪酸金属塩を還元し、反応後の非水系微粒子分散体から水相を分離、除去し、その後非水系溶剤相を、水を用いて洗浄することにより、不純物の分離された脂肪酸で被覆された金属微粒子分散体が製造される。
本発明では、保護物質は、導電性微粒子100重量部に対する保護物質の総量で1〜2000重量部の範囲で用いることが好ましいが、10〜100重量部の範囲で用いることが更に好ましい。保護物質の使用量が1重量部未満の場合、保護物質の効果が得られず、導電性微粒子の凝集を生じるためである。また、2000重量部を超える場合、安定化に寄与しない余剰の保護物質の存在が、導電性インキなどとして用いた場合の導電性や、物性に悪影響を与えるため好ましくない。
(B)陰イオン交換能を有する物質
次に、保護物質によって被覆された導電性微粒子と接触される陰イオン交換能を有する物質について説明する。
本発明において陰イオン交換能を有する物質とは、陰イオン交換反応を示す物質をいう。イオン交換反応とは、一般に、固体または液体中のイオンが、それと接する外部溶液中にある同符号のイオンと交換する現象である。本発明で用いられる陰イオン交換能を有する物質としては、分子中に陰イオン交換にあずかるイオン性基、陰イオン交換基を有するものが挙げられる。陰イオン交換にあずかるイオン性基、陰イオン交換基としては、例えば、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、アミノ基や、陰イオン交換物質としては第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンが挙げられる。
本発明において、導電性微粒子は保護物質で被覆され分散安定化しているが、前記陰イオン交換能を有する物質と接触することにより、保護物質が陰イオン交換能を有する物質によって導電性微粒子の表面から奪われたり、あるいは保護物質が、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4 -、ClO3 -、SO4 2-、NO3 -、CrO4 -、CO3 2-、PO4 3-、HPO4 2-、H2PO4 -、OH-等のイオンに交換されたりすることにより、活性エネルギーの高い導電性微粒子の表面が露出する。これにより導電性微粒子は、分散安定性を失い凝集して、融着しやすくなるため、室温等低温での被膜形成時においても、導電性微粒子の被膜化が速やかに進行して導電性発現が可能となったと考えられる。
本発明の陰イオン交換能を有する物質としては、例えば陰イオン交換樹脂、カチオン活性剤等のカチオン性化合物等が挙げられる。
陰イオン交換樹脂は、一般に、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体からなる橋かけ高分子母体を、クロロメチル化後アミノ化することにより作ることができる。クロロメチル基は、無水塩化アルミニウム触媒の存在下、クロロメチルエーテルを反応させることで容易に導入される。アミノ化は、クロロメチル基をアミンで処理する反応であるが、アミンの種類により各種の陰イオン交換樹脂ができる。陰イオン交換樹脂には、強塩基性陰イオン交換樹脂および弱塩基性イオン交換樹脂があり、トリメチルアミンを用いて第4アンモニウム基を導入したものは強塩基性I型、ジメチルエタノールアミンを用いて4級化したものは強塩基性II型といわれている。また、第1級ないし第3級アミンを導入すると弱塩基性イオン樹脂となる。また、前記スチレン/ジビニルベンゼン共重合体は、懸濁重合により得られるが、透明で均質な橋かけ球状粒子のものを一般にゲル型と呼び、他方、水不溶性の芳香族炭化水素等の高沸点有機溶媒を加えて多孔質化したものはマクロポーラス型、生成した重合体をほとんど膨潤させない2−ブタノール等の有機溶媒を添加して得られた多孔体はMR型樹脂と呼ばれている。本発明においては、これらの陰イオン交換樹脂を含め陰イオン交換樹脂であれば何れのものでも陰イオン交換能を有する物質として用いることができる。
一方、カチオン性化合物としては、例えば、第4アンモニウム塩、または第4アンモニウム塩を有する化合物などが挙げられる。第4アンモニウム塩は、一般に、第3アミンにハロゲン化アルキルを作用させて作ることができる。この第4アンモニウム塩としては、例えば、窒素原子を環内に持つN−メチルピペリジンメチオジドや、キノリンメチオジド等の環状第4アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルピリジニウム、高級アミンのハロゲン酸塩等のカチオン活性剤が挙げられ、これらのいずれをも本発明の陰イオン交換能を有する物質として使用することができる。
また、これらの第4アンモニウム塩基を導入した樹脂化合物や、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、アミノ基や、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンを導入した樹脂化合物も同様に使用することができる。樹脂化合物としては、例えば、アクリル系樹脂や、ウレタン系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アリルアミン重合樹脂、ジアリルアミン重合樹脂等が挙げられる。更に、ジシアンジアミジンやジシアンジアミドの重合樹脂等や、樹脂を直接カチオン変性したカチオン変性樹脂や、例えばアリルアミン重合樹脂を架橋させた樹脂ビーズ等も挙げられ、これらも使用することができる。
また、第4アンモニウム塩の酸基としては、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4 -、ClO3 -、SO4 2-、NO3 -、CrO4 -、CO3 2-、PO4 3-、HPO4 2-、H2PO4 -、OH-等いずれの酸基も用いることができる。
前記陰イオン交換能を有する物質は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(X)無機微粒子
次に、本発明で用いられる無機微粒子について説明する。本発明で用いられる無機微粒子は、保護物質によって被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質との接触面積を増大させ、陰イオン交換反応を効率よく行い、被膜の導電性、外観および強度を向上させるために用いられるものであり、陰イオン交換能を有する、または有さないものであってもよい。
前記陰イオン交換能を有するまたは有さない無機微粒子としては、例えば、クレー、珪藻土、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、カオリン、焼成カオリン、サポナイト、モルデナイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉛、リン酸マグネシウム、塩化アルミニウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、モンモリロナイト等が挙げられる。これらの無機微粒子のなかでも、非晶質シリカ、コロイダルシリカが好ましく、粒径が小さく接触面積を増大させることができる点から、コロイダルシリカが特に好ましい。
本発明における非晶質シリカとは、ケイ素酸化物を主成分とし、シリカフューム、マイクロシリカ、ホワイトカーボン等と呼ばれる非晶質のシリカ微粒子のことである。また、本発明におけるコロイダルシリカとは、ケイ素酸化物を主成分とし、単粒子状で存在する微粒子が水または単価のアルコール類またはジオール類またはこれらの混合物を分散媒としてコロイドとして存在するもののことを言う。
無機微粒子の平均粒子径は、1〜200nmであることが好ましく、1〜100nmがより好ましく、1〜50nmが最も好ましい。平均粒子径が200nmを超える微粒子を用いると、導電性発現効果が劣るだけでなく、被膜滲み等の外観不良をも引き起こすため好ましくない。
また、無機微粒子には、表面処理剤に由来する、または製造過程に由来する、酸化ナトリウムが含有されていることが多い。この酸化ナトリウムの含有量は、無機微粒子全体の1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%未満であることがより好ましく、0.1重量%未満であることが特に好ましい。酸化ナトリウムの含有量が1重量%以上であると、無機微粒子を含有する被膜形成用組成物の安定性を低下させるため好ましくない。
(C)被膜形成用組成物
本発明の、保護物質によって被覆された導電性微粒子、陰イオン交換能を有する物質、無機微粒子、を含む被膜層形成用組成物について説明する。
(C−1)(C−1’)導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物
まず、本発明の保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む被膜層を形成するために用いられる導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物から説明する。
本発明で用いる保護物質によって被覆された導電性微粒子は前記したとおり種々の方法で製造することができる。このとき、利用した製造方法により保護物質によって被覆された導電性微粒子が溶媒分散液として直接得られる場合には、これを導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物として用いてもよい。しかし、保護物質によって被覆された導電性微粒子が溶媒分散物として得られない場合は、導電性微粒子を被覆している保護物質の溶解性を損なわない範囲で、各種の液状媒体を使用して、導電性微粒子分散体とすることができる。更に組成物の特性を向上させたい場合には、保護物質によって被覆された導電性微粒子に、必要に応じて、樹脂および/またはその前駆体、その他の添加剤等を添加して、導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物とされてもよい。前記する「その他の添加剤」としては、例えば消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤等が挙げられる。被膜形成用組成物は、使用される被覆方法によって、例えば、塗料あるいはインキなどと呼称されている。例えば、コーター、浸漬、噴霧などにより塗布される場合には、被膜形成用組成物は塗料あるいは場合によってはインキといわれ、印刷機、プリンターなどにより印刷される場合にはインキあるいはインクといわれている。そして、これら被膜形成用組成物は被覆方法に適した組成とするべく、液状媒体、樹脂および/またはその前駆体、その他の添加剤等が適宜選定されている。本発明においても、保護物質によって被覆された導電性微粒子、液状媒体、樹脂および/またはその前駆体、その他の添加剤等を選定することにより、使用する被覆方法に最適の特性を有する組成物とすることができる。
得られた導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物は、導電性インキ、導電性塗料として、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの各種印刷方式、各種塗布形式への適用が可能である。
本発明の導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物で用いられる液状媒体としては、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、環状エーテル系溶剤、水等が挙げられる。これら溶剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。以下、これら各溶剤について、更に詳細に説明する。
前記エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン等が挙げられる。
また、グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、およびこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
脂肪族系溶剤としては、例えば、ノルマルパラフィン系溶剤として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、0号ソルベントL、M、H(いずれも新日本石油株式会社製)、ノルマルパラフィンSL、L、M(いずれも新日本石油株式会社製)、イソパラフィン系溶剤として、イソヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、アイソゾール200、300、400(いずれも新日本石油株式会社製)、スーパゾルFP2、25、30、38(いずれも出光興産株式会社製)、シクロパラフィン系溶剤としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ナフテゾール160、200、220(いずれも新日本石油株式会社製)、AFソルベント4号、5号、6号、7号(いずれも新日本石油株式会社製)、テトラヒドロナフタリン、デカヒドロナフタリン、テレピン油、リモネン、工業用揮発油1号、2号、3号、4号、5号、リグロイン等が挙げられる。
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ソルベントナフサ、芳香族混合炭化水素等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ヘプタノール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、アリルアルコール、エチレンクロロヒドリン、オクチルドデカノール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、t−アミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール、1,4−ブタンジオール、オクタンジオール等や、ファインオキソコール140N、ファインオキソコール1600、ファインオキソコール180、ファインオキソコール180N、ファインオキソコール2000(いずれも日産化学工業株式会社製)等の側鎖高級アルコール等が挙げられる。
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、へキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等が挙げられる。
環状エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、フルフラールが挙げられる。
導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物に用いられている材料や、被膜形成方法など種々の条件で異なるものの、これら液体媒体は、導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物100重量%中、通常0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜95重量%となるように添加して用いることができる。
本発明の導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物において用いられる樹脂および/またはその前駆体は、使用する基材に対する密着性や、導電性インキ、導電性塗料などの陰イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用組成物との密着性を高める、あるいは導電性インキ、導電性塗料などの成膜性を向上させるために用いられるもので、例えば、ポリウレタン樹脂、(不飽和)ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ゼラチン、ギルソナイト、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
樹脂の前駆体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、単官能であっても、多官能であってもよい。これらの化合物は、1種を単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」という場合、アクリル酸およびメタクリル酸を含む意味で使用される。また「(メタ)アクリレート」という場合にも、同様に、アクリレートとメタクリレートを含む意味で用いられる。その他(メタ)アクリロイルなどでも、同様である。
(メタ)アクリレート化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
また、多官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ロジン変性アクリレート等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物のうち、単官能のビニルエーテル化合物として、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。また、多官能のビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ビスフェノールAジエトキシジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等が挙げられる。
さらに、前記化合物以外のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、N−ビニルアセトアミド、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、ステアリルアクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート等が挙げられる。
これらの樹脂および/またはその前駆体は、保護物質によって被覆された導電性微粒子の導電性を阻害しない範囲で用いればよく、使用される被覆された導電性微粒子として何が用いられるか、被膜形成する基材の種類や隣接層の組成、被膜形成方法、樹脂またはその前駆体として何が用いるかなど種々の条件によって異なるものの、導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物100重量%のうち、好ましくは0.01〜99重量%、更に好ましくは0.1〜95重量%となるように添加して用いることができる。
本発明の導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物を製造するには、保護物質によって被覆された導電性微粒子を、必要に応じて、液体媒体、消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、樹脂および/またはその前駆体等と混合し、従来公知の方法、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、従来公知の方法、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合すればよい。
また、前記導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物には、無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子を含まない被膜層形成用組成物を(C−1)、無機微粒子を含む被膜層形成用組成物を(C−1’)とする。
(C−2)(C−2’)陰イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用組成物
次に、陰イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用組成物について説明する。
陰イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用組成物(以降、陰イオン交換層形成用組成物と略記する)は、用いられる陰イオン交換能を有する物質、被覆対象となる基材、陰イオン交換層形成用組成物が導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物膜上に被覆される場合には、該組成物膜の特性、あるいは陰イオン交換層形成用組成物の塗布または印刷方法などに応じて適宜の液状媒体を使用することができる。そして、陰イオン交換層形成用組成物は、前記した陰イオン交換能を有する物質を液状媒体と混合し、更に必要に応じて消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、陰イオン交換能を有する樹脂以外のその他の樹脂および/またはその前駆体、陰イオン交換能を有するまたは有さない、無機または有機微粒子等を混合し、導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物を製造する際に用いた方法と同様の方法、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合することにより製造することができる。
陰イオン交換層形成用組成物は、前記方法によって製造が可能であるが、陰イオン交換能を有する物質が、液状媒体に可溶の物質である場合は、液状媒体と混合撹拌しながら溶解して用いることができ、また、液状媒体に不溶の物質である場合は、前記分散機を用いて、陰イオン交換能を有する物質を分散した後、必要に応じて前記添加剤、その他の樹脂等を加えて陰イオン交換層形成用組成物とすることができる。得られた陰イオン交換層形成用組成物は、導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物同様、塗料、インキ等として用いられて、基材等に被覆される。
陰イオン交換層形成用組成物を製造する際に用いられる液状媒体としては、導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物を製造する際に挙げられた液状媒体と同様の液状媒体、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、水等を使用することができ、これらは2種類以上を混合して使用することもできる。これら各溶剤の具体例も導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物を製造する際に挙げられたものと同様のものが使用できるが、本発明ではイオン交換能を有する樹脂に対する溶解性の理由から、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコール系溶剤、あるいはこれらの溶剤と水との混合溶剤等が、好ましく用いられる。また、必要に応じて用いられる消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤なども導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物を製造する際に挙げられたものと同様のものが用いられる。
一方、陰イオン交換能を有する物質として用いられる樹脂以外のその他の樹脂および/またはその前駆体は、陰イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用組成物が塗布あるいは印刷される基材に対する密着性や、保護物質によって被覆された導電性微粒子を含んだ被膜との密着性を高める、あるいは形成された導電性被膜を保護する目的で添加される。このような目的で添加されるその他の樹脂としては、例えばポリウレタン樹脂、飽和または不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ゼラチン、ギルソナイト、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は前記添加目的を達成するべく、基材、被膜形成方法、導電性被膜特性などに応じ適宜のものが選定される。これらの中では、陰イオン交換層被膜の基材に対する密着性、被膜強度の理由から、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が好ましいものとして挙げられる。これらその他の樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記樹脂のうち、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等に、アミン類、酸無水物類、メルカプト類、イミダゾール類、イソシアネート類、ジシアンジアミド類、ジヒドラジド類等の硬化剤を組み合わせて用いることによって、得られた被膜の耐溶剤性や耐薬品性等の物性を高めることができる。
また、樹脂の前駆体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、単官能であっても、多官能であってもよい。これらの化合物は、1種を単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(メタ)アクリレート化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
また、多官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ロジン変性アクリレート等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物のうち、単官能のビニルエーテル化合物として、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。また、多官能のビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ビスフェノールAジエトキシジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等が挙げられる。
さらに、前記化合物以外のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、N−ビニルアセトアミド、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、ステアリルアクリレート、テトラメチルピペリジルメタクリレート等が挙げられる。
樹脂の前駆体を含む陰イオン交換層形成用組成物を、電子線照射により硬化する場合には、樹脂の前駆体(エチレン性不飽和二重結合を有する化合物)の分子鎖切断によってラジカル重合が起こる。これに対し、紫外線を照射して硬化する場合は、前記被膜形成用組成物に光重合開始剤を添加するのが一般的である。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ビスイミダゾール系、アクリジン系、カルバゾール−フェノン系、トリアジン系、オキシム系等の光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤は、樹脂の前駆体100重量部に対して、1〜20重量部の量で用いることができる。
前記光重合開始剤について更に具体的に説明すると、前記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。また、チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。ビスイミダゾール系開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラ(4−メチルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられる。アクリジン系開始剤としては、例えば、1,7−ビス(9−アクリジル)ヘプタン、カルバゾール−フェノン系開始剤としては、例えば、3,6−ビス(1−ケト−2−メチル−2−モルホリノプロピル)−9−オクチルカルバゾール、トリアジン系光開始剤としては、例えば、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等が挙げられる。その他、オキシム系開始剤等が挙げられる。
樹脂の前駆体を含む本発明の陰イオン交換層形成用組成物には、光重合開始剤と共に、光重合促進剤、増感剤を含ませることができる。光重合促進剤および増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル等の脂肪族や芳香族のアミン類が挙げられる。
また、樹脂の前駆体を含む陰イオン交換層形成用組成物には、組成物の安定性を高める目的で、(熱)重合禁止剤を含ませることができる。(熱)重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,6−t−ブチル−p−クレゾ−ル、2,3−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、アンスラキノン、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
その他の樹脂またはその前駆体は、陰イオン交換層形成用組成物100重量%中、通常0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜95重量%となるように添加して用いることができる。
また、前記陰イオン交換層形成用組成物には、無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子を含まない陰イオン交換層形成用組成物を(C−2)、無機微粒子を含む陰イオン交換層形成用組成物を(C−2’)とする。
(C−3)保護物質によって被覆された導電性微粒子、陰イオン交換能を有する物質および無機微粒子を含む被膜形成用組成物。
保護物質によって被覆された導電性微粒子、陰イオン交換能を有する物質および無機微粒子を含む被膜形成用組成物は、保護物質によって被覆された導電性微粒子、陰イオン交換能を有する物質および無機微粒子を必要に応じ液状媒体、消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、陰イオン交換能を有する樹脂以外のその他の樹脂および/またはその前駆体、陰イオン交換能を有するまたは有さない無機または有機微粒子等と共に、従来公知の方法、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、従来公知の方法、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合することにより製造することができる。その際必要に応じ用いられる液状媒体、消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、陰イオン交換能を有する樹脂以外のその他の樹脂および/またはその前駆体、陰イオン交換能を有するまたは有さない無機または有機微粒子等は、保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む被膜形成用組成物あるいは陰イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用組成物を製造する際に用いられるものと同様のものの中から、この組成物が被覆される基材、塗布または印刷方法、塗布後の膜特性、導電特性等に応じて適宜選択して用いればよい。
被膜の導電性、被膜形成用組成物の安定性という点から、無機微粒子は陰イオン交換層形成用組成物中に含まれることが好ましい。また、無機微粒子を含む陰イオン交換層形成用組成物(C−2’)における陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子との重量比が、陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=40/60〜1/99であることが好ましく、30/70〜5/95(重量部)であることがより好ましく、25/75〜10/90(重量部)であることが特に好ましい。無機微粒子の添加量が多すぎると成膜性が低下し、少なすぎると被膜の導電性が低下する恐れがある。
(D)導電性被膜の製造方法
本発明の導電性被膜の製造方法は、保護物質で被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質とを、無機微粒子の存在下で接触させることを特徴としているため、無機微粒子の存在下で接触させることが可能であれば導電性被膜の製造方法や基材、導電性被膜の膜形状等は、特に限定されるものではない。この保護物質で被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質とを無機微粒子の存在下で接触させる態様として、(I)保護物質で被覆された導電性微粒子を含んだ層と、陰イオン交換能を有する物質を含んだ層のどちらか一方または両方に無機微粒子を含有させ、隣接層として設ける、あるいは、(II)保護物質で被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを同一層内に互いに接触させるような状態で含ませる方法があり、また(I)の態様には、(I−1)基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層を形成し、次に、前記陰イオン交換層上に、保護物質で被覆された導電性微粒子を含んだ被膜層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−2)基材上に、保護物質で被覆された導電性微粒子を含んだ被膜層を形成し、次に、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−3)基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含んだ陰イオン交換層を形成し、次に、前記陰イオン交換層上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と無機微粒子とを含んだ被膜層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−4)基材上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と無機微粒子とを含んだ被膜層を形成し、次に、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質を含んだ陰イオン交換層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−5)基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層を形成し、次に、前記陰イオン交換層上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と無機微粒子とを含んだ被膜層を形成して導電性被膜を形成する方法、あるいは、(I−6)基材上に、保護物質で被覆された導電性微粒子と無機微粒子とを含んだ被膜層を形成し、次に、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層を形成して導電性被膜を形成する方法があることは、既に述べたとおりである。本発明においては、これらいずれの方法を用いても、低温かつ短時間で導電性被膜の形成が可能であり、基材の種類や被覆形態、使用する材料、得られる膜の使用目的、導電性被膜に要求される導電特性等に合わせて接触態様を選択すればよい。なお、本発明の導電性被膜の製造方法が前記記載のものに限定されないことは既に述べたとおりである。
導電性被膜を形成するための基材としては、紙、プラスチックフィルム、ガラス、繊維等、通常基材として知られたものの何れをも使用することができる。基材はフィルム状、あるいはシート状でなくてもよい。また、基材上に被膜が形成されたものを基材として使用してもよい。使用する基材は、これら従来知られた基材の中から用途に応じて適宜選択、使用すればよい。以下、これら基材を更に詳細に説明する。紙基材としては、例えば、コート紙、非コート紙の他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できる。これらの中では、導電性被膜として安定した導電性を得る観点からは、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど導電性被膜の抵抗値が安定するため好ましい。
プラスチック基材としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常使用されるプラスチックからなる基材を使用することができる。プラスチックフィルムの表面には、形成される導電性被膜の密着性を高めたり、塗布、印刷される導電性被膜や導電性回路等の印刷再現性等を高める目的で、必要に応じて、コロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、ポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等の樹脂コーティング剤を塗布したりすることができる。
ガラス基材としては、一般に基板用ガラスとして使用されているものは、いずれも使用することができる。例えば、ソーダライムガラス、マイクロシートガラス、無アルカリガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、バイコールガラス、石英ガラス等が挙げられる。
繊維基材としては、例えば、綿、麻等の植物繊維、絹、羊毛等の動物繊維、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン等の化学繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ等の再生繊維が挙げられる。また、繊維の構造体としては、例えば、織物、ニット、不織布等いずれのものも用いることができる。
本発明においては、被覆手段としては、通常グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などによる印刷、コーター、浸漬、スプレーなどによる塗布など何れの手段によってもよい。また塗布あるいは印刷形態も面状であってもよいし、回路など図形状であってもよい。
本発明の導電性被膜の製造方法について、前記(I−1)の方法から具体的に説明する。
先ず、基材上に、従来公知の方法で、本発明の陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層形成用組成物を塗布または印刷する。塗布または印刷方法は、基材、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等の従来公知の方法が用いられればよい。その後、基材に応じ、50〜150℃程度の乾燥温度で数秒〜数10分間乾燥させることで、陰イオン交換膜を基材上に形成する。陰イオン交換膜の厚さは、特に限定されないが、一般的には0.1〜200μm、好ましくは1〜100μm程度とされる。
次に、前記陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換膜層上に、保護物質で被覆された導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物を塗布または印刷する。塗布または印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、スプレーコート、スピンコート、ダイコート、リップコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンコート、ロールコート、バーコート等の方法を用いて塗布または印刷後、使用する基材に応じて、50〜150℃程度の温度で、数秒から数10分程度乾燥することによって、低抵抗値を有する導電性被膜、例えば導電回路、導電膜等を得ることができる。例えば室温25℃で数時間、放置あるいは真空乾燥することにより溶剤を除去することによっても導電性被膜が得られるが、十分な導電性を得るためには、前記した温度での乾燥が好ましい。乾燥方法は、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等いずれの方法も用いることができる。基材としてシュリンクフィルム等を使用した場合のように、どうしても前記のごとき温度がかけられない場合は、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換膜層上に、保護物質で被覆された導電性微粒子を含む被膜を形成した後、例えば40℃で一晩、オーブン中で加熱することで十分な導電性を得ることができる。導電性微粒子を含む被膜の厚さ(すなわち、導電性被膜の厚さ)は、特に限定されないが、一般的には、0.01〜20μm程度、好ましくは0.05〜10μm程度とされる。例えば、導電性被膜が電磁波シールド被膜として用いられる場合には、一般には0.05〜5μm程度とされ、また、導電回路として用いられる場合には、一般には0.5〜20μm程度とされる。
前記において、被膜の乾燥は、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等いずれの方法も用いることができる。
以上の方法によって、基材に対する密着性、導電性に優れた導電性被膜を得ることができる。
導電性被膜製造方法(I−2)については、保護物質で被覆された導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物、および陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ陰イオン交換層形成用組成物を塗布または印刷する順を、方法(I−1)と逆にすればよい。即ち、基材上に、保護物質で被覆された導電性微粒子を含む被膜層形成用組成物を、前記方法(I−1)と同様の方法で塗布または印刷後、乾燥して導電物質を含む膜、回路などを形成し、次に、陰イオン交換層形成用組成物を、方法(I−1)と同様の方法で塗布または印刷後、乾燥して陰イオン交換層を形成することにより、方法(I−1)と同様に基材に対する密着性、導電性に優れた導電性被膜層を得ることができる。また、陰イオン交換層を導電性微粒子を含む被膜層上に形成する場合には、該陰イオン交換層を導電性被膜層の保護層として機能させることもできる。
導電性被膜製造方法(I−3)(I−5)については、層形成用塗料を変えて方法(I−1)と同様にして塗布または印刷すればよい。導電性被膜製造法(I−4)(I−6)については、層形成用塗料を変えて方法(I−2)と同様にして塗布または印刷すればよい。
導電性被膜製造方法(II)については、前記で得られた保護物質で被覆された導電性微粒子と陰イオン交換能と無機微粒子とを有する物質を含む被膜形成用組成物を、前記したとおりの従来公知の方法で基材上に塗布または印刷後、乾燥して導電性被膜を得ることができる。
前述したように、被膜の導電性、被膜形成用組成物の安定性という点から、無機微粒子は陰イオン交換層形成用組成物にのみ含まれるのが最も好ましく、それゆえ、導電性被膜製造方法としては(I−1)(I−2)が最も好ましい。
なお、本発明において、被膜が基材上に形成される場合には、基材全面を覆う必要はなく、部分的に覆うものであったり、パターン状であったり、回路であったりしてもよい。
本発明の製造方法によって形成された導電回路などの導電性被膜は、加熱処理または加熱加圧処理を施すことにより、導電性被膜層の融着、金属化が促進されて、更に抵抗値を低減することが可能である。より高い導電性を得るためには、加熱加圧処理が好ましいが、使用する基材等の種類に応じていずれかの方法を選択すればよい。加熱加圧処理は、プレスロール機、プレス機、ラミネーター等で行うことができる。加熱処理または加熱加圧処理の際の処理条件は、基材に影響のない範囲で行えばよいが、処理温度は50〜150℃、加圧条件は、0.5〜2.0MPa、加圧時間は10秒〜10分間の範囲で行うことが好ましい。プレスロール機を用いる場合、ロールの線圧は1〜25kg/cmの範囲が好ましい。また、プレス時の基材搬送速度は1〜30m/分の範囲で行うことができる。
また、導電回路などの導電性被膜形成後に、更にその保護を目的として、オーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらの各種ワニス、コーティング剤としては、従来印刷分野で用いられているものを利用すればよい。これらワニスやコーティング剤は通常の熱乾燥型、活性エネルギー線硬化型のいずれも使用できる。
また、導電性被膜上に接着剤を塗布した後、紙基材やプラスチックフィルムを接着、またはプラスチックの溶融押出し等によりラミネートして回路、被膜を保護することもできる。勿論、あらかじめ粘着剤、接着剤が塗布された基材を接着することによって保護層を形成することもできる。
(E)導電性被膜が積層された積層体
前記のとおり、本発明においては、基材上に導電性被膜が形成されることにより、導電性被膜が積層された積層体が形成される。積層体の具体的態様は、基材としてどのようなものが用いられるか、また導電性微粒子を含む被膜、陰イオン交換膜の形成順序、保護層が更に設けられるかどうか、用途などによって異なる。本発明における代表的な積層形態としては、例えば、必要に応じプライマー層、紫外線処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理などの易接着処理が施された基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層が形成され、さらに前記(I−1)の導電性被膜の製造方法で得られた導電性被膜が積層された積層体。基材上に、前記(I−2)の導電性被膜の製造方法で得られた導電性被膜が形成され、さらに陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層が積層されてなる積層体。基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層が形成され、さらに前記(I−3)の導電性被膜の製造方法で得られた導電性被膜が積層されてなる積層体。および基材上に、前記(I−4)の導電性被膜の製造方法で得られた導電性被膜が形成され、さらに陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層が積層されてなる積層体が好ましい。なお、前記保護膜層とその下層となる導電性被膜または陰イオン交換層との間には、接着剤層等の機能層が設けられてもよい。
(F)導電性被膜の各種用途
本発明の導電性被膜は、低温での形成が可能であること、また種々の基材との密着性が良好なことから、従来基材として知られているどのような基材の上にも形成可能である。また、低温、短時間で特性の優れた導電性被膜を形成することができ、膜厚も薄いものから厚いものまで任意の膜厚を有するものを形成することができることから、従来導電膜が用いられているあらゆる分野の用途の導電膜、導電回路等として適用することができる。中でも本発明の導電性被膜が好ましく適用される用途としては、例えば、非接触型ICメディアのアンテナ回路や、プリント基板の導電回路、印刷エレクトロニクス用導電材料、各種電極材、電磁波シールド用メッシュ形成、電磁波シールド用導電性薄膜、静電気帯電防止膜、非導電性物への導電性付与膜、例えば導電布等が挙げられる。そして、本発明の導電性被膜は、0.1〜5μm程度の比較的薄い膜厚で10-6Ω・cmオーダーの体積抵抗値が得られることから、特に非接触型ICメディアのアンテナ回路用の導電膜などとして好ましく用いることができる。また、本発明の導電性被膜は、膜の平滑性や色の均一性といった外観面および被膜強度の面でも優れており、ディスプレイの反射板等、鏡面性を必要とする用途にも使用できる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
[導電性微粒子合成例1]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン200部およびペンタン酸銀20.9部を仕込み、0.5mol/lの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%コハク酸ジヒドラジド(以降SUDHと略記する)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を添加すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。更に反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水層を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、更にトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄・分離を繰り返し、トルエンを溶媒とする銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は5±1nmであり、銀濃度は82%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[導電性微粒子合成例2]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン200部およびペンタン酸銀20.9部を仕込み、0.5mon/lの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、ディスパロンPW36(固形分50%、楠本化成株式会社製)2.2部(金属に対し10重量%)を、20%濃度にトルエンで希釈した溶液として添加し溶解させた。その後、20%SUDH水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を添加すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。更に反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水層を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、更にトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄・分離を繰り返し、トルエンを溶媒とする銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は6±2nmであり、銀濃度は80%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例1]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−510」、固形分20%)15部、無機微粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO−40」、平均粒子径20−30nm、Na2O量0.2%対SIO2、固形分40%)30部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)55部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=20/80(重量比))を得た。次に、この陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含有する塗料を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上にバーコーターを用いて塗工した後、75℃で5分間乾燥することにより、乾燥後の塗膜厚さ6μmの無機微粒子含有陰イオン交換層を得た。
次に、導電性微粒子合成例1に示される銀微粒子分散体を用いて、前記無機微粒子含有陰イオン交換層上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷した後、熱風乾燥オーブン中、120℃で10分間乾燥させて、導電性被膜を得た。
[実施例2]
その他の樹脂としてポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製「ポバールPVA−117」)0.3部、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−324」、固形分40%)14.25部、無機微粒子として陰イオン交換能を有するコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、平均粒子径10−20nm、Na2Oを含まず、固形分18%)50部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)35.45部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=38.8/61.2(重量比))を得た。次に、この陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含有する塗料を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上にバーコーターを用いて塗工した後、75℃で5分間乾燥することにより、乾燥後の塗膜厚さ6μmの無機微粒子含有陰イオン交換層を得た。
次に、導電性微粒子合成例1に示される銀微粒子分散体を用いて、前記無機微粒子含有陰イオン交換層上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷した後、熱風乾燥オーブン中、120℃で10分間乾燥させて、導電性被膜を得た。
[実施例3]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(三菱化学株式会社製「サフトマーST−3000」、固形分25%)12部、無機微粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、平均粒子径40−50nm、Na2O量0.25%対SIO2、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)28部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ印刷インキ(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=20/80(重量比))を得た。この陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含有する印刷インキを用いて、小型グラビア印刷機で易接着ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「A4100」、厚さ100μm)に、全面ベタ印刷して乾燥後、塗膜厚さ5μmの無機微粒子含有陰イオン交換層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は60℃に設定した。
次に、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、前記無機微粒子含有陰イオン交換層上に、小型グラビア印刷機を用いて幅3mmの導電回路パターンをグラビア印刷し、乾燥して導電性被膜を得た。なお、印刷機の乾燥温度は実測値で100℃に設定した。
[実施例4]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(新中村化学株式会社製「NKポリマーAC−13」、固形分36%)8.3部、無機微粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」、平均粒子径10−20nm、Na2O量0.2%対SIO2、固形分20%)60部、液状媒体(水/エチルカルビトール=1/1)31.7部を混合し、ディソルバーを用いて60分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ印刷インキ(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=20/80(重量比))を得た。この陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含有する印刷インキを用いて、インクジェット装置でポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)に、幅3mmの導電回路パターンを印刷して乾燥後、塗膜厚さ3μmの無機微粒子含有導電回路パターン状陰イオン交換層を得た。なお、印刷機の乾燥温度は100℃に設定した。
次に、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、前記無機微粒子含有導電回路パターン状陰イオン交換層上に、インクジェット法により前記導電回路パターンを印刷し、熱風乾燥オーブン中、150℃で10分間乾燥して、導電性被膜を得た。
[実施例5]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(大原パラジウム化学株式会社「パラコンPJ−O」、固形分25%)12部、無機微粒子としてコロイダルシリカ(触媒化成工業株式会社製「CataloId S−20L」、平均粒子径10−20nm、Na2O量0.25%対SIO2、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)28部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=20/80(重量比))を得た。この陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含有する塗料を用いて、スピンコート法でガラス基板上に塗工、75℃で5分間乾燥することにより、乾燥後の塗膜厚さ6μmの無機微粒子含有陰イオン交換層を得た。
次に、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、前記無機微粒子含有陰イオン交換層上に、スピンコート法によって塗布、熱風乾燥オーブン中、150℃で10分間乾燥させて、導電性被膜を得た。
[実施例6]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−330」、固形分15%)10部、無機微粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO−40」、平均粒子径20−30nm、Na2O量0.2%対SIO2、固形分40%)33.8部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)56.2部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=10/90(重量比))を得た。
前記陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例7]
陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子の比率を35/65(重量比)にしたこと以外は、実施例6と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例8]
陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子の比率を50/50(重量比)にしたこと以外は、実施例6と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例9]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−330」、固形分15%)20部、無機微粒子としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスMP−2040」、平均粒子径200nm、Na2O量1.0×10-3%対SIO2、固形分40%)30部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)50部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=20/80(重量比))を得た。
前記陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例10]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−330」、固形分15%)20部、無機微粒子としてコロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クォートロンPL−7」、平均粒子径66nm、Na2O量1.5×10-6%対SIO2、固形分23%)52.2部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)27.8部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=20/80(重量比))を得た。
前記陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性被膜を得た。
[実施例11]
導電性微粒子として、導電性微粒子合成例1に示される銀微粒子分散体を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷した後、熱風乾燥オーブン中、100℃で10分間乾燥させて導電性微粒子を含む被膜層を得た。
次に、陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−310」、固形分40%)7.5部、無機微粒子としてコロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クォートロンPL−3」、平均粒子径34nm、Na2O量1.5×10-6%対SIO2、固形分20%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)16.75部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料(陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=20/80(重量比))を得た。次に、前記陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを含んだ塗料を用いて、前記被膜層上にバーコーターを用いて塗工し、70℃で5分間乾燥することにより導電性被膜を得た。
[比較例1]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−510」、固形分20%)75部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を含む塗料を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上にバーコーターを用いて塗工した後、75℃で5分間乾燥することにより、乾燥後の塗膜厚さ6μmの無機微粒子を含まない陰イオン交換層を得た。
次に、導電性微粒子合成例1に示される銀微粒子分散体を用いて、前記無機微粒子を含まない陰イオン交換層上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷した後、熱風乾燥オーブン中、120℃で10分間乾燥させて、導電性被膜を得た。
[比較例2]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−324」、固形分40%)37、5部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)62、5部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
前記陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性被膜を得た。
[比較例3]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(三菱化学株式会社製「サフトマーST−3000」、固形分25%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)40部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を含む塗料を用いて、ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「エステルE5100」、厚さ100μm)上にバーコーターを用いて塗工した後、75℃で5分間乾燥することにより、乾燥後の塗膜厚さ6μmの無機微粒子を含まない陰イオン交換層を得た。
次に、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、前記無機微粒子を含まない陰イオン交換層上に、ディスペンサー法によって幅3mmの回路パターンを印刷した後、熱風乾燥オーブン中、120℃で10分間乾燥させて、導電性被膜を得た。
[比較例4]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(新中村化学株式会社製「NKポリマーAC−13」、固形分36%)41.7部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)58.3部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
前記陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を使用した以外は、比較例3と同様にして導電性被膜を得た。
[比較例5]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(大原パラジウム化学株式会社「パラコンPJ−O」、固形分25%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)40部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
前記陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を使用した以外は、比較例3と同様にして導電性被膜を得た。
[比較例6]
陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料として、カチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−330」、固形分15%)を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性被膜を得た。
[比較例7]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(明成化学工業株式会社製「パルセットJK−310」、固形分40%)37、5部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1)62、5部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
前記陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を使用した以外は、比較例1と同様にして導電性被膜を得た。
実施例および比較例で得られた、陰イオン交換能層形成用組成物の安定性、導電回路/導電膜の体積抵抗値、および導電性被膜の外観/耐引掻き強度について、以下の方法で評価した。結果を表1〜2に示す。
[陰イオン交換能層形成用組成物の安定性]
陰イオン交換能層形成用組成物について、40℃で3日間経時させた後の組成物中の凝集物発生状態を目視で観察し、下記評価基準により評価を行なった。
(評価基準)
5:凝集物が生じないもの
4:凝集物が僅かに生ずるもの
3:凝集物が生ずるもの
2:凝集物が多量に生ずるもの
1:組成物全体が凝集してしまうもの
[体積抵抗値]
得られた幅3mmの導電回路パターンを、30mm間隔で4箇所はさみ、その抵抗値を四探針抵抗測定器(三和電気計器株式会社製「DR−1000CU型」)で測定した。導電回路の膜厚を膜厚計(株式会社仙台ニコン製「MH−15M型」)で測定し、得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。また、パターンを形成していない導電性被膜の場合は、被膜を3mm幅に加工した後、前記と同様にして体積抵抗値(Ω・cm)を測定した。
なお、導電性微粒子を含む被膜層、陰イオン交換層の順に積層した場合は、一部陰イオン交換層を剥離、導電性被膜層を露出させて抵抗値、膜厚を測定して体積抵抗値を算出した。
[導電性被膜の外観]
導電性被膜の表面が平滑ではないまたは、被膜の色が不均一であるまたは、被膜に滲みが見られる場合を外観不良とし、外観不良の面積を目視で観察し、下記評価基準により評価を行なった。
(評価基準)
○:外観良好(外観不良面積10%未満)
△:一部外観不良(外観不良面積10%以上50%未満)
×:外観不良(外観不良面積50%以上)
[導電性被膜の耐引掻き強度]
導電性被膜の耐引掻き強度を、スクラッチ試験で確認した。スクラッチ試験では導電性被膜を爪でやや力を入れて横へ引掻き、皮膜のキズの生ずる程度を目視で観察し、下記評価基準により評価を行った。
なお、導電性微粒子を含む被膜層、陰イオン交換層の順に積層した場合は、一部陰イオン交換層を剥離、導電性被膜層を露出させて評価を行った。
(評価基準)
5:キズを生じないもの
4:僅かにキズを生じるもの
3:キズを生じるもの
2:3と1の中間の引掻き強度を持つもの
1:非常に弱いもの
Figure 2009054344
Figure 2009054344
表1および2の結果より明らかなように、実施例1〜11は比較例1〜7と比較して、保護物質によって被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質とを、無機微粒子の存在下で接触させることにより、従来法では困難であった紙やプラスチック、繊維、ガラス等の基材上に、低温かつ短時間の乾燥によって導電性、被膜外観および被膜強度に優れる導電性被膜ができることがわかる。そのため量産性良好かつ低コストで導電回路や導電膜を形成することが可能となった。
本発明の導電性被膜は、薄膜でも優れた導電特性を有することから、非接触型ICメディアのアンテナ回路や、プリント基板の導電回路、印刷エレクトロニクス用導電材料、各種電極材、電磁波シールド用メッシュ形成、電磁波シールド用導電性薄膜、静電気帯電防止膜、非導電性物への導電性付与膜、例えば導電布等に使用できる。また、本発明の導電性被膜は、膜の平滑性や色の均一性といった外観面および被膜強度の面でも優れており、ディスプレイの反射板等、鏡面性を必要とする用途にも使用できる。










Claims (18)

  1. 保護物質によって被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質とを、無機微粒子の存在下で接触させることを特徴とする導電性被膜の製造方法。
  2. 保護物質によって被覆された導電性微粒子と、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子とを、接触させることを特徴とする請求項1記載の導電性被膜の製造方法。
  3. 無機微粒子がシリカであることを特徴とする請求項1または2記載の導電性被膜の製造方法。
  4. 無機微粒子の平均粒子径が1〜200nmであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の導電性被膜の製造方法。
  5. 無機微粒子がコロイダルシリカであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の導電性被膜の製造方法。
  6. 無機微粒子に含まれる酸化ナトリウムの含有量が、無機微粒子全体の1重量%未満であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の導電性被膜の製造方法。
  7. 陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子との重量比が、陰イオン交換能を有する物質/無機微粒子=40/60〜1/99であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の導電性被膜の製造方法。
  8. 導電性微粒子が、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、および鉄から選ばれた金属、またはこれら金属の合金の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の導電性被膜の製造方法。
  9. 導電性微粒子が銀である、請求項8記載の導電性被膜の製造方法。
  10. 基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層を形成した後、該陰イオン交換層上に、保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む被膜層を形成する請求項1〜9いずれか記載の導電性被膜の製造方法。
  11. 基材上に、保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む被膜層を形成した後、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層を形成する請求項1〜9のいずれかに記載の導電性被膜の製造方法。
  12. 基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層を形成した後、該イオン交換層上に、保護物質によって被覆された導電性微粒子と無機微粒子をともに含む皮膜層を形成する請求項1〜9のいずれかに記載の導電性被膜の製造方法。
  13. 基材上に、保護物質によって被覆された導電性微粒子と無機微粒子をともに含む皮膜層を形成した後、該被膜層上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層を形成する請求項1〜9のいずれかに記載の導電性被膜の製造方法。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法によって製造されてなる導電性被膜。
  15. 基材上に、陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層、および請求項10記載の製造方法により得られる導電性皮膜が積層されてなる積層体。
  16. 基材上に、請求項11記載の製造方法により得られる導電性皮膜、および陰イオン交換能を有する物質と無機微粒子をともに含む陰イオン交換層が積層されてなる積層体。
  17. 基材上に、陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層、および請求項12記載の製造方法により得られる導電性皮膜が積層されてなる積層体。
  18. 基材上に、請求項13記載の製造方法により得られる導電性皮膜、および陰イオン交換能を有する物質を含む陰イオン交換層が積層されてなる積層体。
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