JP2009052506A - 車両の冷却装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷却媒体を循環させるための流路構造をより簡易とすることのできる車両の冷却装置を提供する。
【解決手段】エンジン内部とラジエタ13との間で冷却水を循環させるメイン流路と、エンジン内部とヒータコア15との間で冷却水を循環させるヒータ流路と、冷却水温に感応して作動して上記メイン流路の冷却水の循環を選択的に許容/遮断するサーモスタット18と、を備える車両の冷却装置において、上記ヒータ流路を、エンジンの暖機中にラジエタ13を介すことなく冷却水を循環させるバイパス流路としての機能を兼ね備えたヒータ/バイパス流路として使用するようにした。そしてこれにより、格別なバイパス流路の設置を不要として、流路構造の簡易化を図るようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、冷却媒体を循環させて車載エンジンを適温に保持する車両の冷却装置に関する。
車両には、オーバーヒートやオーバークールを抑制してエンジンを適温に保つための冷却装置が搭載されている。エンジンの内部に冷却水を循環させてエンジンの冷却を行う水冷式の冷却装置では、エンジンのシリンダブロック及びシリンダヘッドの内部に冷却水の流路となるウォータジャケットを設け、ウォータポンプにより冷却水を循環させて、エンジンの熱を奪うようにしている。そしてエンジンの熱で高温となった冷却水は、熱交換器であるラジエタに送られ、ラジエタに当る風によって冷却された後、エンジンに戻されるようになっている。
一方、始動直後のようにエンジンの暖機が必要な場合には、ラジエタを介した冷却水の循環を遮断することで、冷却水を適温まで早期昇温させるようにしている。ただし、ウォータポンプは一般に、クランクシャフトと連動されており、エンジン動作中はその動作を停止させることが、すなわち冷却水の循環を止めることができないようになっている。そのため、こうした車両の冷却装置では、ラジエタをバイパスして冷却水を循環させるバイパス流路を設けるとともに、暖機中はこのバイパス流路を通じて冷却水を循環させることで、冷却水を適温まで早期昇温させるようにしている。
こうした暖機中、暖機完了後の冷却水の循環経路の切り替えは、自身に流入する冷却水の温度に感応して作動する温度感応式の弁であるサーモスタットにより行われる。従来、こうしたサーモスタットとしては、例えば特許文献1〜4に見られるように、様々のタイプのものが提案され、実用されている。従来における一般的なサーモスタットの構成は、基本的には以下のようなものとなっている。すなわち、サーモスタットは、感温部であるサーモエレメントに封入された物質の熱膨張・熱収縮により移動される弁体を備えて構成されている。例えばワックスペレット型のサーモスタットでは、弾丸状の容器にワックスを密封したものをその感温部として使用し、低温状態では固体のワックスが温度上昇により液化して膨張することを利用して弁体を移動させるようにしている。そしてこの弁体の移動により弁を開閉することで、冷却水温度の低いときには上記バイパス流路を通じて冷却水を循環させ、冷却水温度が十分に高いときにはラジエタを通じて冷却水を循環させるようにしている。
ところでエンジンにより熱せられた冷却水は、車室内の温度を高めるためのヒータにも利用されている。すなわち、エンジンによって暖められた冷却水は、熱交換器であるヒータコアにも送られ、そのヒータコアにおいて車室内に送風される空気を暖めるために利用されている。
特開平02−146219号公報 特開平08−319828号公報 特開平10−019160号公報 特開2006−37889号公報
このように水冷方式を採用する車両の冷却装置は、冷却水の循環される複数の流路を備えて構成されている。こうした冷却水の流路構造は複雑なものであるため、その形成には多数の部品や加工が必要となる。そのため、製造コストを低減すべく、冷却水の流路構造を簡易化することが要望されている。
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであって、その解決しようとする課題は、冷却媒体を循環させるための流路構造をより簡易とすることのできる車両の冷却装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果を記載する。
請求項1に記載の発明は、エンジン内部とラジエタとの間で冷却媒体を循環させる第1の流路と、前記エンジン内部とヒータコアとの間で前記冷却媒体を循環させる第2の流路と、前記冷却媒体の温度に感応して、同温度が高いときには、前記第1の流路における前記冷却媒体の循環を許可し、同温度が低いときには、前記第1の流路における前記冷却媒体の循環を遮断するよう作動するサーモスタットと、を備える車両の冷却装置において、前記第2の流路は、前記冷却媒体の温度が低いときに前記ラジエタを介すことなく前記冷却媒体を循環させるバイパス流路と兼用されてなることをその要旨とするものである。
上記構成では、冷却媒体の温度が低いときには、ヒータコアを通る第2の流路を通じて冷却媒体を循環させることで、ラジエタをバイパスして冷却媒体の循環がなされるようになる。かかる構成では、ヒータコアを通る第2の流路、すなわちヒータ流路が、暖機中にラジエタをバイパスして冷却媒体を循環させるバイパス流路としての機能も兼ねることとなる。そのため、バイパス流路を別途に設ける必要がなく、流路構造をより簡易とすることができる。
請求項2に記載の発明は、エンジン内部とラジエタとの間で冷却媒体を循環させる第1の流路と、前記エンジン内部とヒータコアとの間で前記冷却媒体を循環させる第2の流路と、前記冷却媒体の温度に感応して、同温度が高いときには、前記第1の流路における前記冷却媒体の循環を許可し、同温度が低いときには、前記第1の流路における前記冷却媒体の循環を遮断するよう作動するサーモスタットと、を備える車両の冷却装置において、前記冷却媒体の温度が低いときには、同温度が高いときの前記第1及び第2の流路の総循環量分の前記冷却媒体が、前記第2の流路を通じて循環されてなることをその要旨とするものである。
上記構成では、冷却媒体の温度が高いときにラジエタを通る第1の流路を循環される分の冷却媒体が、冷却媒体の温度が低いときには、ヒータコアを通る第2の流路を通じて循環されるようになる。すなわち上記構成では、ヒータコアを通る第2の流路、すなわちヒータ流路が、暖機中にラジエタをバイパスして冷却媒体を循環させるバイパス流路としての機能も兼ねるようになっている。そのため、バイパス流路を別途に設ける必要がなく、流路構造をより簡易とすることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両の冷却装置において、前記サーモスタットは、前記冷却媒体の温度に関わらず、前記第2の流路を通じた前記冷却媒体の循環を常に許容することをその要旨とするものである。
上記構成では、常時、ヒータコアを通る第2の流路に冷却媒体が流れるようになる。そのため、必要に応じていつでも、エンジンで熱せられてヒータコアに流入する冷却媒体の熱で空気を暖めることが、すなわち車室内を暖房することができるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両の冷却装置において、前記サーモスタットは、前記冷却媒体の温度が高いときには、同温度が低いときに比して、前記第2の流路を通じた前記冷却媒体の循環を制限するよう構成されてなることをその要旨とするものである。
なお、上述の請求項3の如く車両の冷却装置を構成した場合、冷却媒体の温度が低いときには、同温度が高いときに上記第1及び第2の流路を通じて循環される冷却媒体の総量が第2の流路を通じて循環されることになる。そのため、低温時には、第2の流路における冷却媒体の循環量は多くなる。一方、高温時には、ラジエタを通る第1の流路を通じて、ある程度よりも多い冷却媒体を循環させなければ、エンジンの冷却性能を十分確保することができなくなってしまう。
その点、上記構成では、暖機完了後のように冷却媒体の温度が高いときには、暖機中のように冷却媒体の温度が低いときに比して、第2の流路を通じた冷却媒体の循環が制限されるように、すなわち第2の流路を通じて循環される冷却媒体に対する流動抵抗がより大きくなるようになる。その結果、第2の流路を通じては冷却媒体が流れ難くなり、第1の流路における冷却媒体の循環量がその分、多くなるようになる。したがって上記構成によれば、高温時における第1の流路を通じた冷却媒体の循環量を十分確保し、エンジンの冷却性能を高く維持することができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両の冷却装置において、前記サーモスタットは、感温部の周囲を流れる前記冷却媒体の温度に応じて移動して前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を選択的に許容・遮断する弁体と、前記感温部の外周を覆うように設けられて、前記第2の流路を通じて当該サーモスタットに流入した前記冷却媒体を前記感温部に導く筒状のガイド部材と、を備えることをその要旨とするものである。
上記構成では、ヒータコアを通る第2の流路を循環する冷却媒体が、ガイド部材によってサーモスタットの感温部に導かれるようになる。そのため、感温部により良好に冷却媒体が当るようになり、サーモスタットの温度応答性を高めることができる。なお、こうした構成では、弁体の移動位置に関わらず、感温部とガイド部材との間にクリアランスが常時形成されるようにすれば、冷却媒体の温度に関わらず、上記第2の流路を通じて冷却媒体が常に循環されるようにすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両の冷却装置において、前記弁体が前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を許容するときに、前記感温部と前記ガイド部材とのクリアランスに形成される前記冷却媒体の流路の最小面積は、前記弁体が前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を遮断するときの同流路の最小面積よりも小さくされてなることをその要旨とする。
上記構成では、ラジエタを通る第1の流路を通じて冷却媒体が循環されるときには、第2の流路を通じた冷却媒体の循環量が、ラジエタをバイパスして冷却媒体が循環されるときよりも低減されるようになる。そのため、高温時における第1の流路を通じた冷却媒体の循環量を十分確保し、エンジンの冷却性能を高く維持することができるようになる。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の車両の冷却装置において、前記弁体が前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を許容するときに、前記感温部と前記ガイド部材とのクリアランスに形成される前記冷却媒体の流路の最小面積を、前記弁体が前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を遮断するときの同流路の最小面積よりも小さくする絞り部が設けられてなることをその要旨とするものである。
上記構成では、その絞り部によって、ラジエタを通る第1の流路を通じて冷却媒体が循環されるときには、ヒータコアを通る第2の流路を通じた冷却媒体の循環量が、ラジエタをバイパスして冷却媒体が循環されるときよりも低減されるようになる。そのため、高温時における第1の流路を通じた冷却媒体の循環量を十分確保し、エンジンの冷却性能を高く維持することができるようになる。
以下、本発明の車両の冷却装置を具体化した一実施形態を、図1〜図6を参照して詳細に説明する。本実施形態の車両の冷却装置では、凍結防止剤や錆防止剤の混入された水、いわゆる冷却水を冷却媒体として使用し、その冷却水を循環させてエンジンを適温に保つものとなっている。
図1には、こうした本実施形態の車両の冷却装置について、その冷却水の流路構造が模式的に示されている。同図に示すように、本実施形態の冷却装置は、大きくは、エンジン(シリンダブロック11、シリンダヘッド12)内部とラジエタ13との間で冷却水を循環させる第1の流路と、エンジン内部とヒータコア15との間で冷却水を循環させる第2の流路とを備えて構成されている。
エンジンのクランクシャフトに連動されたウォータポンプ10の吐出口は、シリンダブロック11の内部に形成されたウォータジャケットに接続されている。このシリンダブロック11のウォータジャケットはシリンダヘッド12の内部に形成されたウォータジャケットに接続され、更にその下流側において、ラジエタ13に向うラジエタ入り流路14とヒータコア15に向うヒータ入り流路16とに分岐されている。
走行風やファンの送風により冷却水を冷却する熱交換器であるラジエタ13を通過した冷却水は、ラジエタ戻り流路17を通じてサーモスタット18に流入される。一方、エンジンにより熱せられた冷却水によって車室内に送風される空気を暖める熱交換器であるヒータコア15を通過した冷却水は、ヒータ戻り流路19を通じて、やはりサーモスタット18に流入される。そして冷却水は、流入した冷却水の温度に感応して作動する感温作動式の弁であるサーモスタット18からインレット流路20を通ってウォータポンプ10に戻されるようになっている。
このようにこの車両の冷却装置には、上記第1の流路として、ウォータポンプ10→シリンダブロック11→シリンダヘッド12→ラジエタ入り流路14→ラジエタ13→ラジエタ戻り流路17→サーモスタット18→インレット流路20→ウォータポンプ10の順に冷却水を循環させるメイン流路が形成されている。また上記第2の流路として、ウォータポンプ10→シリンダブロック11→シリンダヘッド12→ヒータ入り流路16→ヒータコア15→ヒータ戻り流路19→サーモスタット18→インレット流路20→ウォータポンプ10の順に冷却水を循環させるヒータ/バイパス流路が形成されてもいる。
本実施形態の車両の冷却装置では、上記サーモスタット18は、次のように構成されている。すなわち、本実施形態に採用されるサーモスタット18は、流入した冷却水の温度に応じて作動して、暖機中のように冷却水の温度が低いときには、上記メイン通路を通じた冷却水の循環を遮断し、暖機完了後のように冷却水の温度が高いときには、同メイン通路を通じた冷却水の循環を許容するものとなっている。一方、サーモスタット18は、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環は、冷却水の温度に関わらず、常に許容するものとなっている。加えてこのサーモスタット18は、冷却水の温度が高いときには、同温度が低いときに比して、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を制限するように、すなわち上記ヒータ/バイパス流路を通じて循環される冷却水に対する流動抵抗がより大きくなるように構成されている。なおこうしたサーモスタット18の詳細な構造については、後述する。
続いてこうした本実施形態の車両の冷却装置における、暖機中、及び暖機完了後の冷却水の循環態様について説明する。図2−Aは、暖機中、すなわち冷却水の温度が低いときの冷却水の循環態様を、図2−Bは、暖機完了後、すなわち冷却水の温度が高いときの冷却水の循環態様をそれぞれ示している。
上述したように、サーモスタット18は、冷却水の温度が低いときには、ラジエタ13を通る上記メイン流路を通じた冷却水の循環を遮断する。そのため、このときの冷却水は、図2−Aに示されるように、その全てが上記ヒータ/バイパス流路を通じて循環されている。
一方、サーモスタット18は、冷却水の温度が高いときには、ラジエタ13を通る上記メイン通路を通じた冷却水の循環が許容される。また、ヒータコア15を通る上記ヒータ/バイパス流路を通じての冷却水の循環は、冷却水の温度に関わらず、常に許容されている。したがって、このときの冷却水は、図2−Bに示されるように、上記メイン通路、上記ヒータ/バイパス流路の双方を通じて循環されている。なお、このときのサーモスタット18は、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を、低温時に比して制限するように、すなわち同流路を通じて循環される冷却水に対する流動抵抗をより大きくするようにしている。そのため、ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環が制限され、その分、ラジエタ13を通る上記メイン流路を通じた冷却水の循環量が増大されるようになる。そしてこれにより、ラジエタ13を通る冷却水の循環量を十分確保し、エンジンの冷却性能を好適に保つようにしている。
次に、こうした車両の冷却装置に採用される上記サーモスタット18の構造の詳細について説明する。図3−Aは、閉弁時、すなわち上記メイン流路を通じた冷却水の循環を遮断するときのサーモスタット18の側部断面構造を、図3−Bは、開弁時、すなわち上記メイン流路を通じた冷却水の循環を許可するときのサーモスタット18の側部断面構造をそれぞれ示している。
これら図に示されるように、サーモスタット18は、ラジエタ戻り流路17、ヒータ戻り流路19及びインレット流路20の集合部に形成されたサーモスタットハウジング21に設置されている。サーモスタットハウジング21は、上方が開口された円筒形状に形成されており、その上部には、ドーム状に形成されたラジエタ戻り流路17の接続部17aが開口を覆うように取り付けられている。またサーモスタットハウジング21の下面にはヒータ戻り流路19が、その側面にインレット流路20がそれぞれ開口されている。
こうしたサーモスタットハウジング21とラジエタ戻り流路17の接続部17aとの間に挟み込まれる態様で、当該サーモスタット18の本体フレーム22が固定されている。本体フレーム22は、その上部側面に通水孔23を有するとともに、中央部が開口した円環形状の弁座24が一体に固定されたものとなっている。また本体フレーム22には、その下方に垂下されて、先端にばね座26が固定されたアーム25が固定されてもいる。
こうした本体フレーム22の上部には、弁軸27が固定されており、その弁軸27には、当該サーモスタット18の感温部であるサーモエレメント28が同弁軸27に沿って上下に移動可能に支持されている。サーモエレメント28は、弁軸27に嵌装された可撓性材料からなるスリーブと弾丸形状のケースを備え、それらスリーブとケースとの間に形成される密閉空間にワックスを充填して形成されている。
こうしたサーモエレメント28の上部には、上記弁座24に着座してその開口を閉塞可能な弁体32が一体に固定されている。この弁体32と上記ばね座26との間には、ばね33が圧縮状態で介設されており、サーモエレメント28及び弁体32はそのばね33によって上方に、すなわち弁体32を上記弁座24に着座させる方向に付勢されている。
一方、サーモスタットハウジング21の下部には、サーモエレメント28の周囲を覆うように、略円管形状のガイド部材34が固定されている。このガイド部材34の下端に形成されたフランジ35と上記ばね座26との間には、上記ばね33とは別のばね36が圧縮状態で介設されている。このばね36によってガイド部材34は、ヒータ戻り流路19の開口されたサーモスタットハウジング21の底面に押し付けられている。なおヒータ戻り流路19を通じてサーモスタットハウジング21に流入する冷却水のすべては、このガイド部材34の内部を通ってサーモエレメント28の周囲に導かれるようになっている。さらに本実施形態の車両の冷却装置では、こうしたガイド部材34は、その内周に段部37が設けられ、その段部37よりも下方の部分の内径がそれよりも上方の部分の内径よりも小さくなるように形成されている。
さて、こうしたサーモスタット18では、ヒータ戻り流路19より流入してガイド部材34により感温部であるサーモエレメント28の周囲に導かれた冷却水の温度が低いときには、そのサーモエレメント28に封入されたワックスは固体となっている。このときの弁体32は、図3−Aに示されるように、上記ばね33の付勢によって弁座24に着座される。そしてこれにより、弁座24の開口が弁体32により塞がれ、ラジエタ戻り流路17からインレット流路20への冷却水の流動が、ひいてはラジエタ13を通る上記メイン流路を通じた冷却水の循環が遮断されるようになる。なお、このときにも、サーモエレメント28の外周とガイド部材34の内周とのクリアランスを通じて、ヒータ戻り流路19からインレット流路20への冷却水の流動は、すなわちヒータコア15を通る上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環は許容されている。ちなみに、このときのサーモエレメント28は、上記ガイド部材34の段部37よりも上方に位置されている。
一方、ヒータ戻り流路19より流入する冷却水の温度が高いときは、その熱でサーモエレメント28内部のワックスが暖められて、液化して膨張するようになる。そして、このときのワックスの膨張によってスリーブが弁軸27を上方に押圧することで、サーモエレメント28は弁体32と共に下方に押し下げられるようになる。これにより、弁体32が弁座24から離れて、弁座24の開口を通じたラジエタ戻り流路17からインレット流路20への冷却水の流動が、ひいてはラジエタ13を通る上記メイン流路を通じた冷却水の循環が許容されるようになる。なおこのときのサーモエレメント28は、上記ガイド部材34の段部37よりも下方に移動する。
図4(a)は、図3−Aのa−a線に沿った断面構造を、すなわちサーモスタット18の閉弁時にサーモエレメント28とガイド部材34とのクリアランスに形成される冷却水流路のうちでその面積が最小となる部分の断面構造を示している。このときのサーモエレメント28は上述のように、ガイド部材34にあってその内径のより大きい段部37よりも上方の部分に位置しているため、上記流路の最小面積は比較的大きくなっている。一方、図4(b)は、図3−Bのb−b線に沿った断面構造を、すなわちサーモスタット18の開弁時にサーモエレメント28とガイド部材34とのクリアランスに形成される冷却水流路のうちでその面積が最小となる部分の断面構造を示している。このときのサーモエレメント28は上述のように、ガイド部材34の内部にあってその内径のより小さい段部37よりも下方の部分まで移動しているため、上記流路の最小面積は、上記サーモスタット18の閉弁時よりも小さくなる。
このように、このサーモスタット18では、その開弁時にサーモエレメント28とガイド部材34とのクリアランスに形成される冷却水の流路の最小面積は、その閉弁時に形成される同流路の最小面積よりも小さくなるようになっている。そのため、このサーモスタット18は、冷却水の温度が高いときには、同温度が低いときに比して、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を制限するように、すなわち同流路を通じて循環される冷却水に対する流動抵抗をより大きくするように機能する。なお、こうしたサーモスタット18では、ガイド部材34にあってその内径のより小さい上記段部37よりも下方の部分が上述の絞り部に対応する構成となっている。
以上説明した本実施形態の車両の冷却装置によれば、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、ヒータコア15を通る流路が、暖機中にラジエタ13をバイパスして冷却水を循環させるバイパス流路としての機能も兼ね備えたヒータ/バイパス流路となっている。そのため、バイパス流路を別途に設ける必要がなく、流路構造をより簡易とすることができる。
(2)本実施形態では、そのサーモスタット18は、冷却水の温度に関わらず、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を常に許容するものとなっている。そのため、必要に応じていつでも、エンジンで熱せられてヒータコア15に流入する冷却水の熱で空気を暖めることが、すなわち車室内を暖房することができるようになる。
(3)本実施形態では、そのサーモスタット18が、冷却水温度の高いときには、同温度の低いときに比して、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を制限するように、すなわち同流路を通じて循環される冷却水に対する流動抵抗がより大きくなるように構成されている。その結果、サーモスタット18の開弁時には、上記ヒータ/バイパス流路を通じて冷却水が流れ難くなり、その分、ラジエタ13を通る上記メイン流路の冷却水の循環量が多くなるようになる。そのため、本実施形態では、高温時における上記メイン流路を通じた冷却水の循環量を十分確保し、エンジンの冷却性能を高く維持することができる。
(4)本実施形態では、そのサーモスタット18が、感温部であるサーモエレメント28の周囲を流れる冷却水の温度に応じて移動して上記メイン流路を通じた冷却水の循環を選択的に許容・遮断する弁体32と、サーモエレメント28の外周を覆うように設けられて、上記ヒータ/バイパス流路を通じて当該サーモスタット18に流入した冷却水をそのサーモエレメント28に導く筒状のガイド部材34と、を備えて構成されている。こうしたサーモスタット18では、ヒータコア15を通る上記ヒータ/バイパス流路を循環する冷却水が、ガイド部材34によってサーモスタット18の感温部であるサーモエレメント28に導かれるようになる。そのため、サーモエレメント28に冷却水がより良好に当るようになり、サーモスタット18の温度応答性を高めることができる。
(5)本実施形態では、そのサーモスタット18の弁体32が上記メイン流路を通じた冷却水の循環を許容するときに、そのサーモエレメント28とガイド部材34とのクリアランスに形成される冷却水流路の最小面積が、弁体32が上記メイン流路を通じた冷却水の循環を遮断するときの同流路の最小面積よりも小さくされるように形成されている。すなわち、サーモスタット18には、その開弁時における上記冷却水流路の最小面積を、その閉弁時における上記冷却水流路の最小面積よりも小さくする絞り部が設けられている。そのため、サーモスタット18を比較的簡易な構成としながらも、その開弁時に、その閉弁時に比して上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を制限することが、すなわち同流路を通じて循環される冷却水に対する流動抵抗をより大きくすることが可能となる。
なお上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、ガイド部材34の内周面に段部37を形成することで、ガイド部材34とサーモエレメント28との間に形成される冷却水流路の最小面積を、サーモスタット18の閉弁時にはその開弁時よりも小さくするようにしていた。もっとも、サーモスタット18の閉弁時における上記冷却水流路の最小面積をその開弁時における同最小面積よりも小さくすることができるのであれば、ガイド部材34の内周構造として上記実施形態とは別の構造を採用することも可能である。例えば図5に示されるガイド部材の別の構成例(40)では、サーモスタット18の閉弁時にのみ、そのサーモエレメント28が位置される、ガイド部材40の下方の部分に、その上下方向に延びる複数の凸部41を形成したものとなっている。こうした場合にも同様に、サーモスタット18の開弁時における上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環は、同サーモスタット18の閉弁時よりも制限されるようになる。なお、こうした場合には、凸部41の形成された部分が上述の絞り部に相当する構成となる。
・サーモスタット18の開弁時における上記冷却水流路の最小面積の縮小は、サーモエレメント28の外周に凸部を設けることによっても達成することができる。例えば、図6に示されるサーモスタットの構成例では、そのガイド部材42は、その上端から下端まで内径が一定に形成されたものとなっている。一方、そのサーモエレメント43の外周面には段部44が形成され、サーモスタットの開弁時にのみガイド部材42の内部に位置する、その段部44よりも上方の部分の外径が、その段部44よりも下方の部分の外径よりも大きくなっている。こうした場合にも、ガイド部材の内周に段部を設けた場合と同様に、サーモスタット開弁時における上記冷却水流路の最小面積を縮小することができる。なおこうした場合には、サーモエレメント43の段部44よりも上方の部分が上述の絞り部に相当する構成となる。
・上記実施形態では、感温部であるサーモエレメントの外周を覆うように設けられ、ヒータ戻り流路19より流入した冷却水をそのサーモエレメントに導くガイド部材の設けられたサーモスタットを採用するようにしていたが、そうしたガイド部材を備えないサーモスタットを採用して本発明を実施することも可能である。そうした場合にも、常時ヒータを使用可能な状態としておくには、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を常時許容するように、サーモスタットを構成することが望ましい。また暖機完了後に上記メイン流路を通じた冷却水の循環量を十分確保し、エンジンの冷却性能を好適に保つようにするには、冷却水の温度が高いときには、同温度が低いときに比して、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を制限するように構成されたサーモスタットを採用することが望ましい。もっとも、上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環が暖機完了後には遮断されるようにサーモスタットが構成されていても、必要に応じて上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を開始することが可能となっていれば、ヒータを使用可能とすることはできる。また上記ヒータ/バイパス流路を通じた冷却水の循環を特に制限せずとも、エンジンの冷却性能を確保することができるのであれば、そうした冷却水循環の制限を行わない構成のサーモスタットを採用するようにしても良い。
・上記実施形態での車両の冷却装置における冷却水路構造を適宜変更して実施することも可能である。要は、エンジン内部とヒータコアとの間で冷却水を循環させるヒータ流路が、ラジエタをバイパスして冷却水を循環させるバイパス流路としての機能を兼ね備えたものとなっていれば、格別なバイパス流路の設置を不要として、その流路構造をより簡易なものとすることができる。
・上記実施形態では、冷却水を循環させてエンジンを適温に維持する構成の車両の冷却装置に本発明を適用した場合を説明したが、循環される冷却媒体として冷却水以外の流体を使用する車両の冷却装置にも本発明は同様に適用することができる。
本発明の一実施形態に係る車両の冷却装置についてその冷却水の流路構造を模式的に示す略図。 同実施形態の車両の冷却装置についてその暖機中の冷却水の循環態様を示す略図。 同実施形態の車両の冷却装置についてはその暖機完了後の冷却水の循環態様を示す略図。 同実施形態の車両の冷却装置に採用されるサーモスタットについてその閉弁時における断面構造を示す断面図。 同じくサーモスタットについてその開弁時における断面構造を示す断面図。 (a)は図3−Aのa−a線に沿った断面構造を、(b)は図3−Bのb−b線に沿った断面構造をそれぞれ示す断面図。 同実施形態に採用されるサーモスタットの一変形例についてそのガイド部材の一部をカットした状態での斜視構造を示す破断斜視図。 同実施形態に採用されるサーモスタットの他の変形例についてその断面構造を示す断面図。
符号の説明
10…ウォータポンプ、11…シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…ラジエタ、14…ラジエタ入り流路、15…ヒータコア、16…ヒータ入り流路、17…ラジエタ戻り流路(17a…接続部)、18…サーモスタット、19…ヒータ戻り流路、20…インレット流路、21…サーモスタットハウジング、22…本体フレーム、23…通水孔、24…弁座、25…アーム、26…ばね座、27…弁軸、28、43…サーモエレメント(感温部)、32…弁体、33…ばね、34、40、42…ガイド部材、35…フランジ、36…ばね、37,44…段部、41…凸部(絞り部)。

Claims (7)

  1. エンジン内部とラジエタとの間で冷却媒体を循環させる第1の流路と、前記エンジン内部とヒータコアとの間で前記冷却媒体を循環させる第2の流路と、前記冷却媒体の温度に感応して、同温度が高いときには、前記第1の流路における前記冷却媒体の循環を許可し、同温度が低いときには、前記第1の流路における前記冷却媒体の循環を遮断するよう作動するサーモスタットと、を備える車両の冷却装置において、
    前記第2の流路は、前記冷却媒体の温度が低いときに前記ラジエタを介すことなく前記冷却媒体を循環させるバイパス流路と兼用されてなる
    ことを特徴とする車両の冷却装置。
  2. エンジン内部とラジエタとの間で冷却媒体を循環させる第1の流路と、前記エンジン内部とヒータコアとの間で前記冷却媒体を循環させる第2の流路と、前記冷却媒体の温度に感応して、同温度が高いときには、前記第1の流路における前記冷却媒体の循環を許可し、同温度が低いときには、前記第1の流路における前記冷却媒体の循環を遮断するよう作動するサーモスタットと、を備える車両の冷却装置において、
    前記冷却媒体の温度が低いときには、同温度が高いときの前記第1及び第2の流路の総循環量分の前記冷却媒体が、前記第2の流路を通じて循環されてなる
    ことを特徴とする車両の冷却装置。
  3. 請求項1又は2に記載の車両の冷却装置において、
    前記サーモスタットは、前記冷却媒体の温度に関わらず、前記第2の流路を通じた前記冷却媒体の循環を常に許容する
    ことを特徴とする車両の冷却装置。
  4. 請求項3に記載の車両の冷却装置において、
    前記サーモスタットは、前記冷却媒体の温度が高いときには、同温度が低いときに比して、前記第2の流路を通じた前記冷却媒体の循環を制限するよう構成されてなる
    ことを特徴とする車両の冷却装置。
  5. 請求項1又は2に記載の車両の冷却装置において、
    前記サーモスタットは、
    感温部の周囲を流れる前記冷却媒体の温度に応じて移動して前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を選択的に許容・遮断する弁体と、
    前記感温部の外周を覆うように設けられて、前記第2の流路を通じて当該サーモスタットに流入した前記冷却媒体を前記感温部に導く筒状のガイド部材と、
    を備える
    ことを特徴とする車両の冷却装置。
  6. 請求項5に記載の車両の冷却装置において、
    前記弁体が前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を許容するときに、前記感温部と前記ガイド部材とのクリアランスに形成される前記冷却媒体の流路の最小面積は、前記弁体が前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を遮断するときの同流路の最小面積よりも小さくされてなる
    ことを特徴とする車両の冷却装置。
  7. 請求項5に記載の車両の冷却装置において、
    前記弁体が前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を許容するときに、前記感温部と前記ガイド部材とのクリアランスに形成される前記冷却媒体の流路の最小面積を、前記弁体が前記第1の流路を通じた前記冷却媒体の循環を遮断するときの同流路の最小面積よりも小さくする絞り部が設けられてなる
    ことを特徴とする車両の冷却装置。
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