JP2009050893A - 条鋼線材の冷却制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかる条鋼線材6の冷却制御方法は、圧延機3,4とこの圧延機3,4の上流側に配備された冷却手段8,10との間を、冷却手段で冷却された条鋼線材6の復熱が十分進行する距離に予め設定しておき、圧延時に、圧延機3,4での条鋼線材6の変形抵抗Kを求め、変形抵抗Kから条鋼線材6の内部温度Tを推定し、推定された内部温度Tに基づいて、冷却手段8,10,11の冷却能を制御する。
【選択図】図1
Description
条鋼線材の熱間圧延による製造においては、上記圧延装置を用いながら、加熱炉での加熱温度、各圧延機での圧延荷重や圧延温度すなわちパススケジュールなどを最適化することにより、条鋼線材中のオーステナイト組織を微細フェライト組織に変態するように制御している。条鋼線材の組織を微細フェライトとすることで、最終製品での優れた材料強度、靭性を得ることができる。
しかしながら、温度計測手段による温度計測は、条鋼線材の表面温度を測定しているのみであり、材料の全体の温度を代表した値になっているとは言い難い。また、直径が小さく圧延速度が速い条鋼線材においては圧延中の材料の振動が激しく、温度計測手段による計測データの信頼性が低い。このため、計測された温度を基に冷却制御・温度制御を行ったとしても、フェライト組織が十分に微細化されず、所望される強度、靭性を有さない条鋼線材、棒鋼材が製造されることとなる。
一方、放射温度計などの温度計測手段を用いずに圧延材の温度を求める方法が開示されている。例えば、特許文献1には、圧延材の圧延抵抗と外形寸法とに基づいて、圧延時の圧延温度を求め、その圧延温度に冷却による温度降下を加味することで加熱炉から抽出される際の温度を推定する技術が開示されている。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、条鋼線材の内部温度を正確に推定でき、且つ推定された内部温度に基づいて所望とする条鋼線材製品を得ることのできる条鋼線材の冷却制御方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明に係る冷却制御方法は、圧延機と冷却手段とが上流側から順に配設されてなる圧延装置で条鋼線材を圧延する際に用いる条鋼線材の冷却制御方法であって、前記冷却手段で冷却された条鋼線材の復熱を十分進行させておき、その後、前記圧延機での条鋼線材の変形抵抗を求め、該変形抵抗から条鋼線材の内部温度を推定し、前記推定された内部温度に基づいて前記冷却手段の冷却能を制御することを特徴とする。
本冷却方法では、冷却手段で冷却された条鋼線材の復熱を十分進行させておくため、冷却手段により冷却され一旦低温となった表面温度が、内部からの熱により再び上昇し中心温度と略同一となる。その状態において、圧延機での条鋼線材の変形抵抗を求め、該変形抵抗から条鋼線材の内部温度を推定するため、推定された内部温度は、条鋼線材の内部で略均一となった全体の温度を正確に示すものとなる。かかる内部温度を用いて冷却手段の冷却能を制御することで、所望とする条鋼線材製品を得ることができる。
さらに好ましくは、前記推定された内部温度が圧延機での目標温度となるように、当該圧延機の上流側に配備された冷却手段の冷却状態を制御するとよい。
また、前記圧延機の入側で条鋼線材の表面温度を計測し、前記計測された表面温度と前記変形抵抗から推定された内部温度とから、前記冷却手段での冷却能を補正することは非常に好ましい。
[第1実施形態]
熱間圧延装置は、上流側から、ビレットなどの鋼材を加熱する加熱炉、デスケーラ、粗圧延機、仕上げ圧延機、巻き取り装置が順番に配設されている。
条鋼線材の元となる鋼材(母材)は、加熱炉内に導入され所定の温度に昇温され加熱炉から抽出される。その後、デスケーラで鋼材の表面についたスケールを剥離させ、粗圧延機及び仕上げ圧延機で圧延されて条鋼線材となる。製造された条鋼線材は巻き取り装置でリング状に巻線される。
図1は、熱間圧延装置1における中間列圧延機2以降を模式的に示したものである。
熱間圧延装置1に設けられた中間列圧延機2の下流側には、ブロックミル3(VBM)が配備され、ブロックミル3の下流側には仕上げ圧延機4(RSM)が配備される。仕上げ圧延機4の下流側には、巻き取り装置5が順番に配設されており、圧延材が上流側から導入され連続的に圧延を施された後、条鋼線材6となり、巻き取り装置5でリング状に巻線されるようになっている。以下説明において、圧延中の圧延材も条鋼線材6と呼ぶこととする。
ブロックミル3の入側には、条鋼線材6の温度を計測するための温度計測手段7が設けられている。同様に、仕上げ圧延機4の入側にも温度計測手段7が設けられている。これら温度計測手段7は、放射温度計から構成されるとよい。温度計測手段7は、ブロックミル3の出側、仕上げ圧延機4の出側、巻き取り装置5の出側や入側に設けられてもよい。
第1冷却手段8において、各冷却ボックス9間の距離は7m程度であり、4つめの冷却ボックス9(最下流に位置する冷却ボックス9)の出側からブロックミル3の入側までの距離L1は約30m程度となっている。
第2冷却手段10においては、各冷却ボックス9間の距離は3m程度であり、3つめの冷却ボックス9(最下流に位置する冷却ボックス9)の出側からブロックミル3の入側までの距離L2は約15m程度となっている。
ところで、図2は、第1冷却手段8で冷却された条鋼線材6の表面温度、中心温度の推移を示したものである。最上流の冷却ボックス9で冷却された条鋼線材6の表面温度は、一旦、700℃以下になるが、続く冷却ボックス9に達するまで、条鋼線材6内部の熱が表面側を温め、800℃を越えるようになる。このように条鋼線材6の内部の熱が表面を温める作用すなわち復熱により、冷却後の条鋼線材6の内部温度は時々刻々と変化することとなる。
制御部12が第1冷却手段8〜第3冷却手段11を用いて条鋼線材6の温度をコントロールするに際しては、各冷却ボックス9において噴射される冷却水量を変更すると共に、「複数の冷却ボックス9において、上流から何番目のものを未使用状態又は使用状態にするか」などを適宜変更するようにする。制御部12はプロセスコンピュータからなる。
本発明の冷却制御方法は、圧延時に、圧延機での条鋼線材6の変形抵抗を求め、変形抵抗から条鋼線材6の内部温度を推定し、推定された内部温度に基づいて、前記冷却手段の冷却能を制御する。この制御方法は、制御部12内にプログラムという形で実現されている。
詳しくは、まず、1本目の条鋼線材6を過去実績に基づいて圧延する。その際に、仕上げ圧延機4に設けられたロードセルにより、圧延ロールにかかる圧延荷重P(kg)を計測する。その後、圧延荷重Pを条鋼線材6の断面積で割ることで、仕上げ圧延機4に位置し且つ復熱が十分進んだ条鋼線材6の変形抵抗K(kg/mm2)を求める。
さらに精度よく内部温度を求めるようにする場合には、条鋼線材6のサイズ毎に分類した「変形抵抗-温度関係図」を用いるとよい。「変形抵抗-温度関係図」は予め実験で求めておいてもよいし、文献等のデータを用いてもよい。
なお、表1は、C=0.45%の鋼を圧延した際の29番スタンド(最上流から29番目の圧延スタンドであって仕上げ圧延機4内に位置する圧延スタンド、以降#29と表記する)での圧延データをまとめたものである。例えば、φ8.0mmの条鋼線材の場合で変形抵抗が30kg/mm2の場合、内部温度は約900℃となる。
#29での変形抵抗は、志田の式、美坂の式(板圧延の理論と実際,社団法人日本鉄鋼協会,1984,p195〜p197を参照)を用いて計算している。なお、各式においては、#29でのひずみやひずみ速度を入力する必要がある。
ひずみ速度の計算は、(1)母材の線径、#29での線材の上下寸法(天地寸法)、圧延ロール径から投射接触長(条鋼線材の移送方向における、圧延ロールと条鋼線材との接触部分の水平長さ)を計算し、(2)製品線速、製品面積と#29出側面積とから、#29の出側速度を計算し、(3)製品線速、製品面積と母材の断面積とから、母材の移送速度を計算し、(4)#29の出側速度と母材の移送速度とから#29における平均速度を計算すると共に、投射接触長と平均速度から#29の通過時間を計算した上で、(6)ひずみ/通過時間より、ひずみ速度を計算している。
次に、求めた内部温度Tと、図4で示されるCCT曲線などを基に算出されたパススケジュールで決定された「仕上げ圧延機4の目標温度」とが同じか否かを、制御部12において判断する。例えば、「推定された内部温度T>目標温度」であれば、2本目以降の条鋼線材6の圧延では、第2冷却手段10での冷却水量を増やす又は未使用の冷却ボックス9を使用状態とするなどして冷却能を増し、「推定された内部温度T=目標温度」とする。
また、求められた内部温度は、条鋼線材6内部の均一となっている温度であるため、かかる内部温度を用いることで微細フェライト組織を確実に生成でき、所望される強度、靭性を有する条鋼線材6を製造できるようになる。
なお、上記説明において、1本目の条鋼線材6の実績値を基に2本目以降の冷却制御を行う旨を述べたが、この方法に限定はされない。各条鋼線材6において、制御周期毎に変形荷重Pを求めて内部温度Tを推定し、第2冷却手段10をフィードバック制御するようにしてもよい。また、制御対象は第2冷却手段10に限定されず、第2冷却手段10よりさらに上流側の第1冷却手段8をフィードバック制御してもよいし、仕上げ圧延機4の下流側に位置する第3冷却手段11をフィードフォワード制御してもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明にかかる条鋼線材6の冷却制御方法の第2実施形態について説明する。
すなわち、仕上げ圧延機4に入る直前の条鋼線材6の表面温度TSを温度計測手段7で計測すると共に、仕上げ圧延機4での条鋼線材6の変形抵抗から内部温度Tを推定する。これら表面温度TSと内部温度Tとの温度差ΔTを用いて、内外温度差解消のための最適な第2冷却手段10での水冷パターンをガイダンスしたり、制御に反映したりする。
例えば、推定した条鋼線材6の内部温度に基づいて第1冷却手段8〜第3冷却手段11の冷却水量をコントロールする代わりに、条鋼線材6の線速度をコントロールし復熱に要する時間を調整するようにしてもよい。
2 中間列圧延機
3 ブロックミル
4 仕上げ圧延機
5 巻き取り装置
6 条鋼線材
7 温度計測手段
8 第1冷却手段
9 冷却ボックス
10 第2冷却手段
11 第3冷却手段
12 制御部
Claims (4)
- 圧延機と冷却手段とが上流側から順に配設されてなる圧延装置で条鋼線材を圧延する際に用いる条鋼線材の冷却制御方法であって、
前記冷却手段で冷却された条鋼線材の復熱を十分進行させておき、
その後、前記圧延機での条鋼線材の変形抵抗を求め、該変形抵抗から条鋼線材の内部温度を推定し、前記推定された内部温度に基づいて前記冷却手段の冷却能を制御することを特徴とする条鋼線材の冷却制御方法。 - 前記圧延機と該圧延機の上流側に配備された冷却手段との間を、該冷却手段で冷却された条鋼線材の復熱が十分進行する距離に設定しておくことを特徴とする請求項1に記載の条鋼線材の冷却制御方法。
- 前記推定された内部温度が圧延機での目標温度となるように、当該圧延機の上流側に配備された冷却手段の冷却状態を制御することを特徴とする請求項2に記載の条鋼線材の冷却制御方法。
- 前記圧延機の入側で条鋼線材の表面温度を計測し、
前記計測された表面温度と前記変形抵抗から推定された内部温度とから、前記冷却手段での冷却能を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の条鋼線材の冷却制御方法。
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