JP2009049275A - インク受容基材及びそれを用いた導電性パターン形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク受容基材と導電性インクとの接着性の良好なインク受容基材及び導電性パターン形成方法を提供する。
【解決手段】導電性インクを用いて導電性パターンを形成するためのインク受容基材において、該インク受容基材が、
(A)メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物を含む下地層、
(B)及びシランカップリング剤から成る下地層
の少なくともいずれかの下地層を有することを特徴としたインク受容基材及び導電性パターン形成方法。
【選択図】なし
【解決手段】導電性インクを用いて導電性パターンを形成するためのインク受容基材において、該インク受容基材が、
(A)メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物を含む下地層、
(B)及びシランカップリング剤から成る下地層
の少なくともいずれかの下地層を有することを特徴としたインク受容基材及び導電性パターン形成方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、インク受容基材及びそれを用いた導電性パターン形成方法に関する。
従来、微細な電子回路等を作製するには、導電層が形成された基材にレジスト層を積層し、所望のパターンを有するフォトマスクを介して光照射し現像した後、不要なレジスト層を除去するフォトリソグラフによる方法が行われていた。しかしながら、このフォトリソグラフによる方法は、多数の工程が必要であり、また高コスト及び除去したレジスト層の廃棄という環境的な問題もあった。
このような問題を解決するために、例えば、導電性インクとして金属コロイドを含有するインクジェットインクを用いて基材面に導電回路パターンを形成し、加熱乾燥及び溶融を経て金属コロイド間の接触を向上させることにより導電率を向上させる方法(例えば、特許文献1参照)が紹介されている。しかしながら、このような金属コロイド等の金属微粒子は、基材として樹脂シートを用いた場合、基材と金属微粒子との接着性が悪いために、印字後金属微粒子が基材から簡単に剥離してしまうという問題があった。
このような接着性の問題を解決するために、さらに、基材上に金属微粒子インクにより導電性パターンを描画後、基材を150〜300度で15〜30分程度加熱し金属微粒子を焼成処理することにより基材との接着性を向上させる方法(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、それだけでは接着性は不十分であった。
特開2004−247667号公報
特開2002−134878号公報
本発明の目的は、インク受容基材表面に官能基を設けることにより、インク受容基材と導電性インクの密着性を向上したインク受容基材を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.導電性インクを用いて導電性パターンを形成するためのインク受容基材において、該インク受容基材が、
(A)メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物を含む下地層、
(B)及びシランカップリング剤から成る下地層
の少なくともいずれかの下地層を有することを特徴とするインク受容基材。
(A)メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物を含む下地層、
(B)及びシランカップリング剤から成る下地層
の少なくともいずれかの下地層を有することを特徴とするインク受容基材。
2.前記下地層がメルカプト基、カルボン酸エステル基、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有するシランカップリング剤から成ることを特徴とする前記1記載のインク受容基材。
3.前記下地層がメルカプト基を有する化合物を含む下地層であることを特徴とする前記1記載のインク受容基材。
4.前記1〜3のいずれか1項記載のインク受容基材に対して、インクジェット装置を用い、前記導電性インクを射出描画することを特徴とする導電性パターン形成方法。
5.前記導電性インクはメッキ触媒として作用する金属微粒子を含有することを特徴とする前記4記載の導電性パターン形成方法。
6.前記インクジェット装置による射出描画が、圧力印加と電界印加の両者の効果によるものであることを特徴とする前記4又は5記載の導電性パターン形成方法。
本発明によれば、基材と導電性インクとの密着性の良好なインク受容基材及び導電性パターン形成方法を提供することができる。
本発明を更に詳しく説明する。
現在、基材上に導電性インクをインクジェットにより描画すると基材と導電性インクの密着性が悪く剥がれてしまうという問題がある。そこで基材表面に官能基(メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基及びエポキシ基)を有する化合物を含む下地層を設けることにより、基材と導電性インクの密着性が向上したインク受容基材を提供することができた。特に、シランカップリング剤を用いることにより基材と下地層の密着性が高くなり好ましく、またメルカプト基又はカルボキシル基を含む化合物を用いることにより導電性インクと下地層の高い密着性が得られて好ましい。
〈導電性インク〉
本発明に係る導電性インクは、導電性付与材料として金属微粒子を含有する。
本発明に係る導電性インクは、導電性付与材料として金属微粒子を含有する。
本発明に用いられる金属微粒子としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等が挙げられるが、その中でも特に、Au、Ag、Cuのような金属微粒子を用いると、電気抵抗が低く、かつ腐食に強い回路パターンを形成することができるので好ましい。これらの金属微粒子は、平均粒子径が100nm以下の金属微粒子であることが好ましい。
本発明に係る導電性インクには、金属微粒子の保護コロイドとして重合体または界面活性剤を用いることができ、特に、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリウレタンとアルカノールアミンとのブロック共重合体が好ましい。
本発明に係る導電性インクは、水系導電性インクと油系導電性インクとが挙げられる。金属微粒子を、水を主体とする分散媒に分散して構成される水系導電性インクは、例えば、以下に示す方法に従って調製することができる。
塩化金酸や硝酸銀のような金属イオンソース水溶液中に水溶性の重合体を溶解させ、撹拌しながら、ジメチルアミノエタノールのようなアルカノールアミンを添加する。数10秒〜数分で金属イオンが還元され、平均粒子径が100nm以下の金属微粒子が析出する。その後、塩素イオンや硝酸イオンを限外濾過などの濾過方法で除去した後、濃縮・乾燥することにより、高濃度に金属微粒子を含有した水系導電性インクが得られる。この水系導電性インクは、水やアルコール系溶媒、テトラエトキシシランやトリエトキシシランのようなゾルゲルプロセス用バインダーに安定に溶解、混合することが可能である。
また、金属微粒子を油性分散媒に分散した油系導電性インクは、例えば、以下に示す方法に従って調製することができる。
油溶性ポリマーをアセトンのような水混和性有機溶媒に溶解させ、このポリマー溶液を金属イオンソース水溶液と混合する。混合物は不均一系であるが、これを撹拌しながらアルカノールアミンを添加すると、金属微粒子が重合体中に分散した形で油相側に析出してくる。これを洗浄、濃縮、乾燥させることにより、水系導電性インクと同様の濃厚な金属微粒子を含有する油系導電性インクが得られる。この油系導電性インクは、芳香族系、ケトン系、エステル系などの溶媒やポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等に安定に溶解、混合することが可能である。
導電性インクの分散媒中における金属微粒子の濃度は、最大80質量%程度にすることが可能であるが、用途に応じて適宜稀釈して使用することができる。通常は、導電性インクにおける金属微粒子の含有量は2〜50質量%、界面活性剤および樹脂成分の含有量は0.3〜30質量%、粘度は3〜30mPa・sとすることが好ましい。
〈インク受容基材〉
本発明に係るインク受容基材は、支持シートの導電性インクを受容する面に、下地層が設けられていることを特徴とする。好ましい支持シートとしては、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられる。また、最終的な高い透過性、具体的には、可視部における平均透過率が80%以上である導電性パターンを形成する観点からは、樹脂フィルムあるいはガラス−エポキシ基板が好ましい。
本発明に係るインク受容基材は、支持シートの導電性インクを受容する面に、下地層が設けられていることを特徴とする。好ましい支持シートとしては、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられる。また、最終的な高い透過性、具体的には、可視部における平均透過率が80%以上である導電性パターンを形成する観点からは、樹脂フィルムあるいはガラス−エポキシ基板が好ましい。
本発明で用いられる樹脂フィルムの材質としては、特に限定はないが、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリレート系フィルム、ポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。これらの素材を主成分とする異なる材質のフィルムを積層したフィルムであってもよい。
支持シートとその上に設ける下地層との密着性を高める観点から、支持シートの表面にプラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、プライマー処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理を施すことが好ましい。
(メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基又はエポキシ基を有する化合物)
下地層に用いるメルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基又はエポキシ基を有する化合物としては、これらの基をポリマー末端に持つものが好ましい。これらの母体ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール等)、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びこれらのコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー等のビニルポリマーの他に、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体等疎水性ポリマーが挙げられる。親水性ポリマーとして、ゼラチンの他にポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のビニルポリマーが挙げられる。
下地層に用いるメルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基又はエポキシ基を有する化合物としては、これらの基をポリマー末端に持つものが好ましい。これらの母体ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール等)、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びこれらのコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー等のビニルポリマーの他に、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体等疎水性ポリマーが挙げられる。親水性ポリマーとして、ゼラチンの他にポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のビニルポリマーが挙げられる。
本発明においては、特に、これらの基をシランカップリング剤の末端に有する化合物が好ましい。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基又はエポキシ基を有する化合物は市販品でも使用することができる。例えば、メルカプト基を有する化合物として、シランカップリング剤(製品名;KBM802、信越化学工業株式会社製)、アミノ基を有する化合物として、シランカップリング剤(製品名;KBM603、信越化学工業株式会社製)、カルボキシル基を有する化合物として、ニチゴーポリエスター(製品名;WR961、日本合成化学製)、エポキシ基を有する化合物として、エポキシ樹脂(製品名;モデピクス302、荒川化学工業製)、エポキシシランカップリング剤(製品名;KBM403、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤としては、上述した官能基を有するシランカップリング剤の外、単純シランカップリング剤でも良い。例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位にそれぞれ1個の硅素原子に結合した水酸基を有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、上述した官能基を有するシランカップリング剤の外、単純シランカップリング剤でも良い。例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位にそれぞれ1個の硅素原子に結合した水酸基を有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
〈導電性パターンの形成方法〉
本発明において、本発明に係る導電性パターンの形成方法としては、特に制限はなく、公知のパターン形成方法を適用することができ、例えば、インクジェット方式、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができるが、インクジェット記録装置を用いたインクジェット方式を適用することが好ましく、更には、電気回路等に使用される線幅が20μm以下の細線を高精度に形成できる観点から、インクジェット記録装置による導電性インクの吐出方法が、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることが好ましい。
本発明において、本発明に係る導電性パターンの形成方法としては、特に制限はなく、公知のパターン形成方法を適用することができ、例えば、インクジェット方式、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができるが、インクジェット記録装置を用いたインクジェット方式を適用することが好ましく、更には、電気回路等に使用される線幅が20μm以下の細線を高精度に形成できる観点から、インクジェット記録装置による導電性インクの吐出方法が、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることが好ましい。
以下、圧力印加手段と電界印加手段とを用いたインクジェット記録方法について説明する。
一般に、電子回路等で要求されている微細な線幅のパターンを高精細に描画するには、インクジェット記録装置から射出するインク液滴をより微細化する必要がある。
しかしながら、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)や電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)のみの出力手段を用いて、極微小インク液滴を吐出した場合、ノズルから吐出したインク液滴に付与される運動エネルギーは、インク液滴の半径の3乗に比例して小さくなるため、微小液滴は空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気対流などによる擾乱を受け、正確な着弾が困難となる。さらに、インク液滴が微細になるほど、表面張力の効果が増すために、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる。このため微細液滴は、飛翔中の著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという問題があった。このように着弾位置の高精度化は、インク液滴の微細化と相反する課題であり、これら2つを同時に実現することに対し、障害を抱えていた。
本発明においては、上記課題を解決する方法として、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた射出方法を適用することが好ましい。
この射出方法は、0.1〜100μmの内径の吐出口を有するノズルを用い、導電性インクに任意波形の電圧を印加して、この導電性インクを帯電させることにより、そのインク液滴を吐出口から、導電性インクを受容する面に下地層が塗設されているインク受容基材に吐出する方法である。
すなわち、この射出方法は、ノズルの吐出口の内径が0.1〜100μmであり、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内に供給された導電性インクに任意波形の電圧を印加することにより電界を集中させることができる。その結果、形成されるインク液滴を微小で、かつ形状の安定化したものとすることができる。従って、従来よりも微細な、例えば1pl(ピコリットル)未満の複数のインク液滴からなるインク液滴パターンを下地層表面に形成することができる。また、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内の導電性インクに印加する総印加電圧を低減することができる。また、インク液滴は、ノズルから吐出された直後、電界と電荷の間に働く静電力により加速されるが、ノズルから離れると電界は急激に低下するので、その後は、空気抵抗により減速する。しかしながら、微小液滴でかつ電界が集中したインク液滴は、下地層に近づくにつれ、静電力により加速される。この空気抵抗による減速と静電力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることが可能となる。
図1は、本発明に好ましく適用できる圧力印加手段と電界印加手段とを用い導電性インク吐出装置の一例を示した概略断面図である。
図1において、導電性インク吐出装置20は、帯電可能な導電性インクの液滴を先端部から下地層を有するインク受容基材Kに向かって吐出する超微細径のノズル21と、ノズル21の先端部に対向する面側に配置され、その対向面で下地層を有するインク受容基材Kを支持する対向電極23と、ノズル内流路22に導電性インクを供給する導電性インク供給手段と、ノズル21内の導電性インクに任意波形の吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段(電圧印加手段)25とを備えている。上記ノズル21と導電性インク供給手段の一部の構成と吐出電圧印加手段25の一部の構成とは、ノズルプレート26と一体的に形成されている。
ノズル21は、ノズルプレート26の下面層26cから垂設され、この下面層26cと一体的に形成されている。ノズル21の先端部は、対向電極23に指向している。ノズル21の内部には、その先端部からその中心線に沿って貫通するノズル内流路22が形成されている。
ノズル21は、例えば、ガラスなどの電気絶縁体により、超微細径で形成されている。ノズル21の各部の寸法の具体例を挙げると、ノズル内流路22の内部直径は1μm、ノズル21の先端部における外部直径は2μm、ノズル21の根元、すなわち、上端部の直径は5μm、ノズル21の高さは100μmに設定されている。また、ノズル21の形状は限りなく円錐形に近い円錐台形に形成されている。このようなノズル21はその全体がノズルプレート26の下面層26cと共に絶縁性の樹脂材により形成されている。
ノズル21の各寸法は上記一例に限定されるものではない。特に吐出口の内径については、電界集中の効果により液滴の吐出を可能とする吐出電圧が1000V未満を実現する範囲であって、例えば、100μm以下であり、より望ましくは、20μm以下であって、現行のノズル形成技術により溶液を通す貫通穴を形成することが実現可能な範囲である内径、例えば0.1μmをその下限値とする。
導電性インク供給手段は、ノズルプレート26の内部であってノズル21の根元となる位置に設けられると共にノズル内流路22に連通する溶液室24と、図示しない外部の導電性インクタンクからインク室24に導電性インクを導く供給路27と、インク室24への溶液の供給圧力を付与する図示しない供給ポンプとを備えている。
上記供給ポンプは、ノズル21の先端部まで導電性インクを供給し、当該先端部からこぼれ出さない範囲の供給圧力を維持して導電性インクの供給を行う。
吐出電圧印加手段25は、ノズル21内の導電性インクに吐出電圧を印加してこの導電性インクを帯電させることにより、この導電性インクの液滴をノズル21の吐出口からインク受容基材Kに向かって吐出させるものである。この吐出電圧印加手段25は、ノズルプレート26の内部であってインク室24とノズル内流路22との境界位置に設けられた吐出電圧印加用の吐出電極28と、この吐出電極28に常時,直流のバイアス電圧を印加するバイアス電源30と、吐出電極28にバイアス電圧に重畳して吐出に要する電位とするパルス電圧を印加する吐出電圧電源29とを備えている。
吐出電極28は、インク室24内部において導電性インクに直接接触し、導電性インクを帯電させると共に吐出電圧を印加する。
バイアス電源30によるバイアス電圧は、導電性インクの吐出が行われない範囲で常時電圧印加を行うことにより、吐出時に印加すべき電圧の幅を予め低減し、これによる吐出時の反応性の向上を図っている。
一例を挙げると、バイアス電圧はDC300Vで印加され、パルス電圧は100Vで印される。従って、吐出の際の重畳電圧は400Vとなる。
ノズルプレート26は、最も上層に位置する上面層26aと、その下に位置する導電性インクの供給路を形成する流路層26bと、この流路層26bのさらに下に形成される下面層26cとを備え、流路層26bと下面層26cとの間には、吐出電極28が介挿されている。
対向電極23は、ノズル21に垂直な対向面を備えており、かかる対向面に沿うようにインク受容基材Kの支持を行う。ノズル21の先端部から対向電極23の対向面までの距離は、例えば100μm等、一定に保持されている。
また、対向電極23は接地されているため、常時、接地電位を維持している。従って、パルス電圧の印加時にはノズル21の先端部と対向面との間に生じる電界による静電力により吐出された液滴を対向電極23側に誘導する。
なお、導電性インク吐出装置20は、ノズル21の超微細化による当該ノズル21の先端部での電界集中により電界強度を高めることで液滴の吐出を行うことから、対向電極23による誘導がなくとも液滴の吐出を行うことは可能ではあるが、ノズル21と対向電極23との間での静電力による誘導が行われた方が望ましい。この場合、ノズル21から吐出され空気抵抗により減速する液滴を、静電力により加速することができる。従って、これら空気抵抗による減速と静電力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることができる。帯電した液滴の電荷を、対向電極23の接地により逃がすことも可能である。
以上のような導電性インク吐出装置20は、図示しない駆動機構により、下地層を有するインク受容基材Kの搬送方向に対して直交する方向に走査自在とされた走査型の導電性インク吐出装置としてもよい。この場合において、導電性インク吐出装置20に複数のノズル21を配列するようにしてもよい。また、導電性インク吐出装置20は、下地層を有するインク受容基材Kの搬送方向に対して直交する方向に多数のノズル21を配列してなるライン型の導電性インク吐出装置としてもよい。
〈メッキ処理〉
本発明の導電性インク、特にメッキ触媒として作用する金属微粒子を含有する導電性インクにより形成した導電性パターンは、この導電性パターンが含有している金属微粒子をメッキ触媒として作用させてメッキ処理を施すことにより優れた導電性が得られる観点から好ましい。
本発明の導電性インク、特にメッキ触媒として作用する金属微粒子を含有する導電性インクにより形成した導電性パターンは、この導電性パターンが含有している金属微粒子をメッキ触媒として作用させてメッキ処理を施すことにより優れた導電性が得られる観点から好ましい。
以下、本発明に適用可能なメッキ処理方法について説明する。
本発明においては、従来公知のメッキ法を適用できるが、その中でも、低抵抗の導電性パターンを、煩雑な工程なしに簡便、低コストでメッキ処理することができる観点から、無電解メッキ法を適用することが好ましい。
無電解メッキ法によるメッキ処理は、メッキ触媒として作用する金属微粒子を含有する導電性パターンに、メッキ剤を接触させる方法である。メッキ触媒である金属微粒子とメッキ剤とが接触し、導電性パターン部に無電解メッキが施されて、より優れた導電性を得ることができる。
本発明に係るメッキ処理で使用できるメッキ剤としては、例えば、メッキ材料として析出させる金属イオンが均一溶解された溶液が用いられ、金属塩とともに還元剤が含有される。ここで、通常は溶液が用いられるが、無電解メッキを生じさせるものであればこれに限らず、ガス状や粉体のメッキ剤を適用することも可能である。
具体的に、この金属塩としては、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Feから選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが適用可能である。還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン塩、ボロハライド塩、次亜燐酸塩、次亜硫酸塩、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸塩などが適用可能である。これらの還元剤に含有されるボロン、燐、窒素などの元素が、析出する電極に含有されていてもよい。或いはこれらの金属塩の混合物を用いて合金が形成されていてもよい。
メッキ剤は、上記金属塩と還元剤とが混合されたものを適用するようにしてもよいし、或いは金属塩と還元剤とを別個に適用するようにしてもよい。ここで、導電性パターンをより鮮明に形成するためには、金属塩と還元剤とが混合されたものを適用することが好ましい。また、金属塩と還元剤とを別個に適用する場合には、導電性パターン部にまず金属塩を配した後、還元剤を配することで、より安定した電極パターンを形成することができる。
メッキ剤には、必要があれば、pH調整のための緩衝剤、界面活性剤などの添加物を含有させることができる。また、溶液に用いる溶媒としては、水以外にアルコール、ケトン、エステルなどの有機溶剤を添加するようにしてもよい。
メッキ剤の組成は、析出させる金属の金属塩、還元剤、および必要に応じて添加物、有機溶媒を添加した組成で構成されるが、析出速度に応じて濃度や組成を調整することができる。また、メッキ剤の温度を調節して析出速度を調整することもできる。この温度調整の方法としては、メッキ剤の温度を調整する方法、また例えばメッキ剤中に浸漬する場合、浸漬前に基板を加熱、冷却して温度調節する方法などが挙げられる。さらに、メッキ剤に浸漬する時間で析出する金属薄膜の膜厚を調整することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔導電性インク〕
金属微粒子;平均粒径が20nmのAgコロイド微粒子 5質量%
(保護コロイド成分を1.5質量%含む)
金属微粒子;平均粒径が50nmのPdコロイド微粒子 15質量%
(保護コロイド成分を3質量%含む)
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 80質量%
〔インク受容基材の作製〕
(インク受容基材1の作製)
ガラスエポキシ(利昌工業製 ES−3350)の表面に、12W・min/m2のコロナ放電処理を2秒間施し、次いで、5%メタノール溶液にしたシランカップリング剤(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、製品名;KBM803、信越化学工業株式会社製)をスピンコート(400rpm×20秒)で塗布した。塗布後、ドライヤー(冷風)で乾燥し、インク受容基材1を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
金属微粒子;平均粒径が20nmのAgコロイド微粒子 5質量%
(保護コロイド成分を1.5質量%含む)
金属微粒子;平均粒径が50nmのPdコロイド微粒子 15質量%
(保護コロイド成分を3質量%含む)
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 80質量%
〔インク受容基材の作製〕
(インク受容基材1の作製)
ガラスエポキシ(利昌工業製 ES−3350)の表面に、12W・min/m2のコロナ放電処理を2秒間施し、次いで、5%メタノール溶液にしたシランカップリング剤(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、製品名;KBM803、信越化学工業株式会社製)をスピンコート(400rpm×20秒)で塗布した。塗布後、ドライヤー(冷風)で乾燥し、インク受容基材1を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
(インク受容基材2の作製)
上記シランカップリング剤をKBM603(N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)に変更した以外は同様にしてインク受容基材2を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
上記シランカップリング剤をKBM603(N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)に変更した以外は同様にしてインク受容基材2を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
(インク受容基材3の作製)
上記シランカップリング剤をニチゴーポリエスター(製品名;WR961、日本合成化学製)5%水溶液に変更した以外は同様にしてインク受容基材3を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
上記シランカップリング剤をニチゴーポリエスター(製品名;WR961、日本合成化学製)5%水溶液に変更した以外は同様にしてインク受容基材3を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
(インク受容基材4の作製)
上記シランカップリング剤を水系エポキシ樹脂(製品名;モデピクス302、荒川化学工業製)5%水溶液に変更した以外は同様にしてインク受容基材4を作製した。下地層の乾燥膜厚は1.0μmであった。
上記シランカップリング剤を水系エポキシ樹脂(製品名;モデピクス302、荒川化学工業製)5%水溶液に変更した以外は同様にしてインク受容基材4を作製した。下地層の乾燥膜厚は1.0μmであった。
(インク受容基材5の作製)
上記シランカップリング剤をKBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)に変更した以外は同様にしてインク受容基材5を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
上記シランカップリング剤をKBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)に変更した以外は同様にしてインク受容基材5を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
(インク受容基材6の作製)
上記シランカップリング剤をKBM1003(ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)に変更した以外は同様にしてインク受容基材6を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
(インク受容基材7の作製)(比較基材)
ガラスエポキシ(利昌工業製 ES−3350)をそのままインク受容基材として使用した。
上記シランカップリング剤をKBM1003(ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)に変更した以外は同様にしてインク受容基材6を作製した。下地層の乾燥膜厚は0.5μmであった。
(インク受容基材7の作製)(比較基材)
ガラスエポキシ(利昌工業製 ES−3350)をそのままインク受容基材として使用した。
(導電性パターンの形成)
上記の導電性インク液を図1に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置に装填し、上記で作製したインク受容基材(本発明6種、比較1種)に導電性インクを射出し、線幅10μm、線間隔285μmの格子状の導電性パターンを描画した。その後、無電界Cuメッキ浴にて60分間パターン上にメッキを施し、導電性パターンを作製し、接着性の評価試料とした。
上記の導電性インク液を図1に記載の圧力印加手段と電界印加手段とを備えたインクジェット記録装置に装填し、上記で作製したインク受容基材(本発明6種、比較1種)に導電性インクを射出し、線幅10μm、線間隔285μmの格子状の導電性パターンを描画した。その後、無電界Cuメッキ浴にて60分間パターン上にメッキを施し、導電性パターンを作製し、接着性の評価試料とした。
〔評価〕
<評価法>
接着性
日本工業規格JIS K 5600−5−6に示される、所謂テープ剥離試験をもって接着性の評価を行った。
<評価法>
接着性
日本工業規格JIS K 5600−5−6に示される、所謂テープ剥離試験をもって接着性の評価を行った。
この際、試験結果分類0のものを○、試験結果分類1のものを△、それより大きく剥離したものを×とした。
表1の結果から明らかなように、本発明に係る下地層は支持シートとの接着性が良好であり、更に本発明に係るインク受容基材は導電性インクに対して接着性が良好であることが判る。
20 導電性インク吐出装置
21 ノズル
22 ノズル内流路
23 対向電極
24 インク室
25 吐出電圧印加手段
26 ノズルプレート
27 供給路
28 吐出電極
30 バイアス電源
K インク受容基材
21 ノズル
22 ノズル内流路
23 対向電極
24 インク室
25 吐出電圧印加手段
26 ノズルプレート
27 供給路
28 吐出電極
30 バイアス電源
K インク受容基材
Claims (6)
- 導電性インクを用いて導電性パターンを形成するためのインク受容基材において、該インク受容基材が、
(A)メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物を含む下地層、
(B)及びシランカップリング剤から成る下地層
の少なくともいずれかの下地層を有することを特徴とするインク受容基材。 - 前記下地層がメルカプト基、カルボン酸エステル基、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有するシランカップリング剤から成ることを特徴とする請求項1記載のインク受容基材。
- 前記下地層がメルカプト基を有する化合物を含む下地層であることを特徴とする請求項1記載のインク受容基材。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載のインク受容基材に対して、インクジェット装置を用い、前記導電性インクを射出描画することを特徴とする導電性パターン形成方法。
- 前記導電性インクはメッキ触媒として作用する金属微粒子を含有することを特徴とする請求項4記載の導電性パターン形成方法。
- 前記インクジェット装置による射出描画が、圧力印加と電界印加の両者の効果によるものであることを特徴とする請求項4又は5記載の導電性パターン形成方法。
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---|---|---|---|---|
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-
2007
- 2007-08-22 JP JP2007215696A patent/JP2009049275A/ja active Pending
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