JP2009047555A - 皮膜の機械的特性評価装置および評価方法 - Google Patents

皮膜の機械的特性評価装置および評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基材の表面に成膜された皮膜であっても、皮膜のみの機械的特性を評価することができる評価装置および評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材Sの表面に皮膜Fが形成された試験片Pを変形させる試験片変形手段1と、皮膜Fの変形量を測定する試験片変形量測定手段2と、試験片Pの変形により皮膜F、基材Sおよび両者の界面のうちのいずれか1以上から発生するAE(アコースティック・エミッション)を検出するAE検出手段3と、皮膜Fの表面状態を観察する表面状態観察手段4と、AE検出手段3がAEを検出したときに、表面状態観察手段4で観察された表面状態に応じてAE発生源を特定し、AE発生源が皮膜Fのみである場合に試験片変形量測定手段2による測定結果を皮膜Fの機械的特性と判定する判定手段5と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜状の材料の機械的特性を評価するための装置および評価方法に関するものである。
各種装置の部品の表面は、求められる性能に応じた皮膜により被覆されていることが多い。たとえば、耐摩耗性や高い強度などが求められる工具や金型などの表面には、硬質な皮膜が形成されている。工具や金型の性能を評価する上で、皮膜そのものの機械的特性の評価は重要である。
しかしながら、皮膜は通常、蒸着、めっき等の方法により基材の表面に形成されるため、薄く、基材に密着した状態にある。このような皮膜は単独で取り扱い難いため、正確に測定することができる皮膜そのものの特性は極限られたものであった。そこで、これまでにも皮膜の特性を評価するための様々な工夫が成されてきた。たとえば、以下に示すように、アコースティック・エミッションを用いた皮膜の特性評価方法が提案されている。なお、アコースティック・エミッション(AE)とは、材料が変形したり材料に亀裂が発生したりする際に、材料が内部に蓄えていた歪エネルギーを弾性波として放出する現象である。
特許文献1では、基板の表面に形成された薄膜上に圧子を押し付けた状態で基材を移動させながら荷重を増加させ、圧子の押し込みにより薄膜が破壊する際に発生するAEを検知することで、薄膜の機械的特性を評価する。AE曲線の形状は薄膜の特性に大きく依存するものであるため、薄膜の機械的特性は、検知されたAEの波形から計数的に得られる。ところが、特許文献1では、薄膜は、押し込まれながら引っ掻かれるという応力が負荷された状態にある。そのため、破壊の起点が薄膜であるのか基板であるのかが不明で、薄膜の機械的特性のみを正確に評価するのは困難である。
また、特許文献2では、窒化物薄膜が成膜された樹脂製基板を押し曲げたときに発生するAEを検知することで、薄膜の付着力を測定する装置が開示されている。押し曲げることで薄膜だけでなく基板からもAEが発生するが、特許文献2では、AEが発生した瞬間の薄膜表面を顕微鏡により観察し、検出されたAEの発生源が薄膜の剥離であることを確認する。ところが、特許文献2では、顕微鏡観察で判別できる限りの剥離を確認するだけで、剥離以外の他のAE発生源を区別して評価を行うまでには至っていない。
特公平6−12320号公報 特許第2745648号公報
上記の各特許文献に記載のように、基材の表面に形成された皮膜を基板とともに変形させると、皮膜の破壊が発生するときには、皮膜が剥離する場合だけでなく、皮膜のみが割れる場合や、基材が割れたために皮膜が割れる場合がある。また、皮膜に破壊が生じなくても、基材のみが割れたり、基材と皮膜との界面で剥離したりする場合がある。ところが、この全ての場合において、AEが検出される。本発明者らは、基材の表面に形成された皮膜の評価において、皮膜そのものの機械的特性を正確に評価するためには、これら全ての場合を区別して扱う必要があることに着目した。
本発明は、上記問題点に鑑み、基材の表面に成膜された皮膜であっても、皮膜のみの機械的特性を評価することができる評価装置および評価方法を提供することを目的とする。
本発明の皮膜の機械的特性評価装置は、基材と該基材の表面に形成された皮膜とからなる試験片を変形させる試験片変形手段と、
前記皮膜の変形量を測定する試験片変形量測定手段と、
前記試験片の変形により前記皮膜、前記基材および該皮膜と該基材との界面のうちのいずれか1以上から発生するアコースティック・エミッション(AE)を検出するAE検出手段と、
前記皮膜の表面状態を観察する表面状態観察手段と、
前記AE検出手段がAEを検出したときに、前記表面状態観察手段で観察された表面状態に応じてAE発生源を特定し、該AE発生源が前記皮膜のみである場合に前記試験片変形量測定手段による測定結果を該皮膜の機械的特性と判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする。
また、本発明の皮膜の機械的特性評価装置は、皮膜の機械的特性評価方法として捉えることもできる。本発明の皮膜の機械的特性評価方法は、基材と該基材の表面に形成された皮膜とからなる試験片を変形させる試験片変形工程と、
前記皮膜の変形量を測定する試験片変形量測定工程と、
前記試験片の変形により前記皮膜、前記基材および該皮膜と該基材との界面のうちのいずれか1以上から発生するアコースティック・エミッション(AE)を検出するAE検出工程と、
前記皮膜の表面状態を観察する表面状態観察工程と、
前記AE検出工程がAEを検出したときに、前記表面状態観察工程で観察された表面状態に応じてAE発生源を特定し、該AE発生源が前記皮膜のみである場合に前記試験片変形量測定工程による測定結果を該皮膜の機械的特性と判定する判定工程と、
を有することを特徴とする。
本発明の皮膜の機械的特性評価装置では、判定手段によりAE発生源が、皮膜、基材および両者(皮膜と基材)の界面のうちのいずれであるかを特定し、AE発生源が皮膜のみである場合に試験片変形量測定手段による測定結果を皮膜の機械的特性と判定する。そのため、基材の表面に形成された皮膜であっても、皮膜のみの機械的特性を正確に評価することができる。
本発明の皮膜の機械的特性評価装置において、試験片変形量測定手段は、皮膜の変形量を測定するひずみ計であるのが好ましい。たとえば、試験片変形手段において、同じ荷重で試験片を変形させても、基材の種類が異なると試験片の変形量も異なる。そのため、同じ種類の皮膜をもつ試験片であっても基材の種類が異なることで、皮膜からAEが発生するときの荷重も異なってしまう。つまり、皮膜の機械的特性を応力で一般化することはできない。ひずみ計からのひずみ値を用いることで、皮膜の機械的特性を定量化できる。
以下に、本発明の皮膜の機械的特性評価装置および評価方法を実施するための最良の形態を、図を用いて説明する。
[皮膜の機械的特性評価装置]
本発明の皮膜の機械的特性評価装置は、主として、試験片変形手段と、試験片変形量測定手段と、AE検出手段と、表面状態観察手段と、判定手段と、を備える。図1は、本発明の皮膜の機械的特性評価装置の一例を示す概略図である。
試験片変形手段は、試験片を変形させる手段である。試験片を変形させる方法としては、試験片に荷重を負荷して試験片を変形させるのがよく、JIS等に規定されている一般的な曲げ試験を適用すれば、試験片を容易に変形させることができる。たとえば、試験片変形手段は、図1に一例を示す3点曲げ試験機1であるとよい。3点曲げ試験機1は、試験片Pを互いに離間した位置で支持する2つの支持部11と、支持部11間の中央部で試験片Pを押し曲げる圧子部12と、からなる。図1では、支持部11および圧子部12の断面形状が円形であるが、先端部が先鋭となっているナイフエッジを用いてもよい。
試験片は、基材と、基材の表面に形成された皮膜と、からなる。試験片の形状は、試験片を変形させる方法に応じて適宜選択すればよい。試験片を変形させる方法が曲げ試験であれば、一般的な曲げ試験で用いられる形状の試験片を用いればよい。試験片を変形させる際には、皮膜の破壊の主応力を引張り応力とすることで、破壊時の皮膜の機械的特性を良好に評価することができる。したがって、試験片変形手段として3点曲げ試験機を用いるのであれば、皮膜に引張り応力が発生するように試験片を設置して、試験片を変形させるとよい。なお、試験片は、主応力(引張り応力)以外の応力で皮膜が破壊するのを防ぐために、引張り応力が高くなる範囲に皮膜が形成されるとよい。すなわち、図1に示すように、棒状の基材Sの中央部に皮膜Fを形成し、基材Sの中立面を挟んで皮膜Fと背向する側から圧子12を押し込んで試験片Pを変形させるのが好ましい。
試験片変形量測定手段は、皮膜の変形量を測定する手段である。試験片変形量測定手段において測定される変形量としては、試験片を変形させる際に負荷される荷重、荷重に対する試験片の変位、等が考えられるが、皮膜の機械的特性を定量的に評価するには、皮膜のひずみ値を測定するとよい。すなわち、試験片変形量測定手段は、皮膜の変形量を測定するひずみ計であるのが好ましい。具体的には、図1に示すように、基材Sに形成された皮膜Fの表面にひずみゲージ21を取り付ければよい。また、光学的手法を用いた非接触式のひずみ計も使用可能であり、たとえば、スペックルパターンを用いたひずみ計としてLavision社製Strain Master、ETTEMEYER社製3D−ESPI、等が市販されている。
AE検出手段は、試験片の変形により皮膜、基材および皮膜と基材との界面のうちのいずれか1以上から発生するAEを検出する手段である。AE検出手段は、弾性波(AE)を検出するAEセンサを有するのが好ましい。ただし、AEセンサは、試験片の変形をAE発生源としたAEの他、試験片変形手段と試験片との間や試験片変形手段そのものから発生するAEをも検出する。そのため、AE検出手段は、AEセンサとともに、AEセンサで検出されたAEが試験片の変形に起因して発生したAEである(すなわち、AE発生源が、皮膜、基材および両者の界面のうちのいずれか1以上である)ことを判別するAE判別装置を有するとよい。図2に、AE判別装置が行う信号処理の一例を示す。発生したAEがAEセンサの内部の素子に伝わると、素子が歪むことにより電気信号が生じる。そのため、AE波形は電気信号としてAE判別装置に入力され、AE判別装置において包絡線検波処理が行われる。包絡線検波処理された波形は、AE波形が出ている時間が継続的な状態となるため、閾値によりONとOFFとに2値化できる。閾値を適宜設定することで、AE波検出信号がONの範囲において、皮膜、基材および両者の界面のうちのいずれか1以上をAE発生源としたAEが検出される。
また、AEセンサの配置に特に限定はなく、1つだけ設置してもよいし、複数個設置することでAE発生位置を決定できるようにしてもよい。また、試験片変形手段が3点曲げ試験機であれば、図1に示すように、AEセンサ31を3点曲げ試験機1の圧子部12に固定するのがよい。
表面状態観察手段は、皮膜の表面状態を観察する手段である。表面状態観察手段は、試験片を変形させている間に連続的に皮膜の表面を観察してもよいし、AE検出手段によりAEが所定の閾値を超えた時点での皮膜の表面を観察してもよい。表面状態観察手段は、顕微鏡など、皮膜の表面状態がわかるものであれば特に限定はない。皮膜の表面状態とは、具体的には、表面の拡大画像、表面粗さ、断面形状、などである。表面状態観察手段は、特に、白色光源を用いた白色干渉型三次元表面形状解析装置であるのが好ましい。本装置によれば、非接触で高精度に試験片の表面形状、表面粗さ等の測定が可能である。
判定手段は、AE検出手段がAEを検出したときに、表面状態観察手段で観察された表面状態に応じてAE発生源を特定し、AE発生源が皮膜のみである場合に試験片変形量測定手段による測定結果を皮膜の機械的特性と判定する手段である。前述のように、AE検出手段は、皮膜を発生源としたAEだけでなく、基板および皮膜と基板との界面から発生するAEをも検出する。表面状態観察手段で観察された表面状態からAE発生源を特定すれば、AEが検出されたときに測定された変形量を皮膜の機械的特性としてよいかどうか判定できる。
表面状態観察手段で、皮膜が剥離した状態や皮膜のみが割れた状態が明確に観察された場合には、AEが検出されたときに測定された変形量を皮膜の機械的特性としてよい。しかし、基材が破壊した疑いがある場合には、さらなる判定が必要となる。
たとえば、AE検出手段がAEを検出しても表面状態観察手段により皮膜の破壊が観察されない場合には、基材のみが割れたり、皮膜が破壊されることなく基材と皮膜との界面で皮膜が剥離したりして発生したAEが検出される。そのため、AEが検出された時点の試験片変形量測定手段による測定結果は、皮膜の機械的特性に相当しない。一方、AE検出手段によりAEが検出されたときに表面状態観察手段により皮膜の破壊が観察された場合には、皮膜のみが割れたり、皮膜が剥離したり、基材が割れたために皮膜が割れたりして発生したAEが検出される。このとき、基材が割れたために皮膜が割れて発生したAEが検出されたのであれば、皮膜だけでなく基材もAE発生源である。そのため、AEが検出された時点の試験片変形量測定手段による測定結果は、皮膜の機械的特性に相当しない。
表面状態観察手段による観察で皮膜の破壊の有無しかわからない場合であっても、以上のAE発生源の特定は、皮膜をもたない基材のみを試験片として同様の試験を行った場合のデータ、具体的には、AEが検出されたときの基材の変形量、AE波形の振幅、振動周波数、AEエネルギー(前述の包絡線に囲まれた面積より算出される相対値)など、と比較することで容易に特定できる。こうした特定方法については、[皮膜の機械的特性評価装置]の欄で詳説する。
本発明の皮膜の機械的特性評価装置は、さらに、試験片変形量測定手段からの測定結果およびAE検出手段からの検出結果、必要に応じて表面状態観察手段で観察された表面状態を経時的に記録する記録手段を備えるのが好ましい。図3に、記録手段に記録されるデータの一例を示す。表面状態観察手段からの画像を同期的に記録する場合には、AE波検出信号がOFFからONに立ち上がるタイミングを開始点とした数画像が記録されるとよい。AE波形信号がONの区間を連続的に観察することにより、皮膜の破壊の進行状況を捉えることができる。そして、AE波形信号と表面観察画像を同期して解析することで、AE発生源を特定することができる。皮膜のみからAEが発生したのであれば、AE波形信号がONになったときの試験片変形量測定手段からの測定結果(図3の荷重W、変位V、ひずみε)を、皮膜の機械的特性とすればよい。
なお、変形量測定手段としてひずみゲージを皮膜の表面に取り付ける場合には、ひずみゲージを皮膜から取り去った後に表面観察を行うため、試験片の変形量と表面状態との同期的な記録は困難である。しかし、既に説明した非接触式のひずみ計を用いれば、変形量の測定と表面の観察を同時に行うことができるため、同期的な記録も可能である。連続的な画像の記録により最初の破壊起点を特定できることで、AE発生源を的確に選別できる。
なお、本発明の皮膜の機械的特性評価装置において、評価される対象である皮膜の種類に特に限定はない。たとえば、塑性加工用金型の表面に形成される硬質皮膜の機械的特性の評価に好適である。硬質皮膜は、その硬さがビッカース硬さでHv500以上さらにはHv800以上、膜厚が1〜100μmさらには1〜50μmであるとよい。具体的には、工業用クロムめっき、無電解ニッケルめっき、分散ニッケルめっき、ロジウムめっき等のめっき皮膜、スパッタリング、イオンプレーティング、熱CVD、プラズマCVD等のドライプロセスで基材に成膜されるTiN膜、TiC膜、TiCN膜、TiAlN膜、TiCrN膜、CrN膜、Al膜、WC膜、非晶質炭素(DLC)膜、基材に塩浴処理して形成されるVC膜、FeB膜、等が挙げられる。
また、皮膜を保持する基材の種類に特に限定はないが、評価の対象が硬質皮膜であれば、金属製の基材を用いるのが好ましい。硬さがHv500以上の硬質膜に対しては、表面硬さがHv35〜1000、ヤング率が45〜220MPaの金属製の基材であるのが好ましい。具体的には、鉄、アルミニウム、マグネシウム、これらを主成分とする合金などが挙げられる。
本発明の皮膜の機械的特性評価装置は、皮膜の機械的特性評価方法として捉えることもできる。以下に、本発明の皮膜の機械的特性評価方法を説明する。
[皮膜の機械的特性評価方法]
本発明の皮膜の機械的特性評価方法は、主として、試験片変形工程と、試験片変形量測定工程と、AE検出工程と、表面状態観察工程と、判定工程と、を有する。試験片変形工程は、上記試験片を変形させる工程である。試験片変形量測定工程は、皮膜の変形量を測定する工程である。AE検出工程は、試験片の変形により皮膜、基材および両者の界面のうちのいずれか1以上から発生するAEを検出する工程である。表面状態観察工程は、皮膜の表面状態を観察する工程である。判定工程は、AE検出工程がAEを検出したときに、表面状態観察工程で観察された表面状態に応じてAE発生源を特定し、AE発生源が皮膜のみである場合に試験片変形量測定工程による測定結果を皮膜の機械的特性と判定する工程である。
判定工程は、表面状態観察工程で皮膜の剥離が観察された場合に、試験片変形量測定工程による測定結果を皮膜の機械的特性と判定する工程であるのが望ましい。AE検出手段がAEを検出したときに、表面状態観察手段により皮膜の剥離が明確に観察される場合には、そのときの変形量を皮膜の機械的特性とみなすことができる。
さらに、表面状態観察工程で皮膜の割れが観察された場合に、AE検出工程でAEを検出したときの変形量Aと、基材のみを変形させたとき基材から発生するAEを検出したときの変形量Bと、を比較して、A<Bである場合に変形量Aを皮膜の機械的特性と判定する二次判定工程を有するとよい。表面状態観察工程では、皮膜の割れが観察されても、皮膜のみが割れているのか、基材とともに皮膜が割れているのか、特定し難い場合がある。基材のみを変形させたとき基材から発生するAEを検出したときの変形量に基づいてAE発生源を特定することで、皮膜のみの機械的特性を正確に評価することができる。変形量の他、AE波形の振幅、振動周波数、AEエネルギーなどを比較することで、AE発生源が皮膜のみであるのか基材と皮膜であるのかを特定することもできる。
以下に、図4〜図6に示すフローチャートを用いて、本発明の皮膜の機械的特性評価方法の一例を説明する。なお、図4のフローチャートにおいて、ステップS1〜S7は、試験片変形工程、試験片変形量測定工程、AE検出工程および表面状態観察工程に相当する。ステップS8〜S12は、判定工程に相当する。また、図5のフローチャートは、二次判定工程に相当する。
基材の表面に評価対象である皮膜が形成された試験片は、試験片変形工程において変形される。図4のフローチャートにおいて、試験片変形工程では、試験終了条件を入力し(ステップS1)試験片の変形が開始する(ステップS2)。ステップS1において入力される終了条件は、変形の際に負荷される荷重、試験片変形量測定工程において測定される変形量、試験時間、などとするとよい。表面状態観察工程において経時的に皮膜の表面状態を観察する場合には、皮膜の表面画像を取り込む(ステップS3)。次に、AE検出工程においてAE波の有無を判断する(ステップS4)。
ステップS4においてAE波が検出されない場合(無)には、ステップS1において入力した試験終了条件を満たすかを判断する(ステップS5)。ステップS5において試験終了条件を満たす場合(YES)には、試験は終了する(ステップS6)。ステップS5において試験終了条件を満たさない場合(NO)には、試験終了条件を満たすまでステップS3〜S5を繰り返す。
ステップS4においてAE波が検出された場合(有)には、AE波が検出されたときに試験片に負荷されていた荷重、試験片の変形量(ひずみ値、変位など)、および画像を表示させる(ステップS7)。次に、表示された画像に基づき、画像異常(皮膜の表面の破壊の有無)を判別する(ステップS8)。ステップS8において画像異常が無い(皮膜の表面の破壊が無い)場合には、AE発生源は皮膜ではないため、基材の割れまたは皮膜と基材との界面からの剥離によりAEが発生したと判断する(ステップS9)。
ステップS8において画像異常が有る(皮膜の表面の破壊が有る)場合には、皮膜の破壊が皮膜の剥離であるのか皮膜の割れであるのかを判断する(ステップS10)。ステップS10において皮膜の剥離が判断された場合には、皮膜のみがAE発生源であるため、皮膜の剥離によりAEが発生したと判断する(ステップS11)。この場合は、ステップS7で表示された試験片の変形量により、皮膜の機械的特性を評価する。
ステップS10において皮膜の割れが判断された場合には、皮膜および/または基材がAE発生源であるため、皮膜の割れまたは基材の割れに伴う皮膜の割れによりAEが発生したと判断する(ステップS12)。AE発生源が皮膜のみであるのか皮膜と基材の両方であるのかを特定するには、皮膜をもたない基材のみを試験片として同様の試験を行った場合のデータと比較する(処理I)必要がある。既知の皮膜と既知の基材との組み合わせであれば、AE検出工程において検出されたAE波形から解析することも可能である。しかし、皮膜と基材のうちのいずれか一方が未知であれば、AE波形の解析から得られるAE波形の振幅、振動周波数、AEエネルギーなどの絶対値が変わり、その場での判断が困難な場合がある。その場合は、処理Iのように比較を行うのが望ましい。
なお、ステップS10において、皮膜の割れが判断された場合であっても、基材に割れが生じていないことが画像から明確にわかるのであれば、皮膜のみがAE発生源であると特定できる。そのため、ステップS7で表示された試験片の変形量により、皮膜の機械的特性を評価できる。
次に、図5のフローチャート(処理I)を用いて、皮膜をもたない基材のみを変形させることで、AE発生源が皮膜のみであるのか皮膜と基材の両方であるのかを特定する方法を示す。試験終了条件を入力して(ステップS21)試験片の変形を開始する(ステップS22)。ステップS21において入力される終了条件は、図4のステップS4においてAE波が検出されたときの変形量(「変形量A」とする。)とするとよい。表面状態観察工程において経時的に基材の表面状態を観察する場合には、基材の表面画像を取り込む(ステップS23)。次に、AE検出工程においてAE波の有無を判断する(ステップS24)。
ステップS24においてAE波が検出されない場合(無)には、ステップS21において入力した試験終了条件を満たすかを判断する(ステップS25)。ステップS25において試験終了条件を満たさない場合(NO)には、試験終了条件を満たすまでステップS23〜S25を繰り返す。ステップS25において試験終了条件を満たす場合(YES)には、AE波が検出されずに試験が終了したため、図4のステップS10において判断された皮膜の割れは、皮膜のみが割れたと判断される(ステップS26)。この場合は、図4のステップS7で表示された試験片の変形量Aにより、皮膜の機械的特性を評価する。
ステップS24においてAE波が検出された場合(有)には、AE波が検出されたときに試験片に負荷されていた荷重、試験片の変形量(ひずみ値、変位など。「変形量B」とする。)、および画像を表示させる(ステップS27)。次に、表示された画像を記録する(ステップS28)。ステップS28において基材の表面に割れが発生していればAE発生源は基材である。そして、試験終了前にAE波が検出されたということは、変形量にA≧Bの関係がある。したがって、図4のステップS10において判断された皮膜の割れは、基材の割れに伴う皮膜の割れによりAEが発生したと判断される(ステップS29)。
なお、皮膜の機械的特性の評価には直接関係ないが、図4のステップS4においてAE波が検出されても、ステップS8において画像異常が無い(皮膜の表面の破壊が無い)場合にも、AE発生源を区別することができる。以下に、図6のフローチャートを用いて、皮膜をもたない基材のみを変形させることで、AE発生源が基材のみであるのか皮膜と基材との界面であるのかを特定する方法を示す。
試験終了条件を入力して(ステップS31)試験片の変形を開始する(ステップS32)。ステップS31において入力される終了条件は、図4のステップS4においてAE波が検出されたときの変形量とするとよい。表面状態観察工程において経時的に基材の表面状態を観察する場合には、基材の表面画像を取り込む(ステップS33)。次に、AE検出工程においてAE波の有無を判断する(ステップS34)。
ステップS34においてAE波が検出されない場合(無)には、ステップS31において入力した試験終了条件を満たすかを判断する(ステップS35)。ステップS35において試験終了条件を満たさない場合(NO)には、試験終了条件を満たすまでステップS33〜S35を繰り返す。ステップS35において試験終了条件を満たす場合(YES)には、AE波が検出されずに試験が終了したため、図4のステップS4において検出されたAE波は、皮膜と基材とが界面で剥離したと判断される(ステップS36)。
ステップS34においてAE波が検出された場合(有)には、AE波が検出されたときに試験片に負荷されていた荷重、試験片の変形量(ひずみ値、変位など)、および画像を表示させる(ステップS37)。次に、表示された画像を記録する(ステップS38)。ステップS38において基材の表面に割れが発生していればAE発生源は基材であるため、図4のステップS4において検出されたAE波は、基材のみの割れによりAEが発生したと判断される(ステップS39)。
以上、本発明の皮膜の機械的特性評価装置および評価方法の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。たとえば、3点曲げ試験を4点曲げ試験に変更することで、試験片の圧子と接触する部位の変形量を低減することができる。また、皮膜の破壊の主応力を引張り応力から圧縮応力に変更することも可能である。
以下に、本発明の皮膜の機械的特性評価装置および評価方法の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
[皮膜の機械的特性評価装置]
皮膜の機械的特性評価装置の構成を、図1を用いて説明する。
本実施例で使用する評価装置は、試験片変形手段として3点曲げ試験機1を備える。3点曲げ試験機1は、試験片Pを互いに離間した位置で支持する2つの支持部11と、支持部11間の中央部で試験片Pを押し曲げる圧子12と、からなる。支持部11および圧子12は半径3mmの窒化珪素丸棒からなる。
本評価装置は、3点曲げ試験機(試験片変形手段)1とともに試験片変形量測定手段2を備える。試験片変形量測定手段2は、ひずみゲージ21と、ひずみゲージ21からの電気信号を表示・記録する動ひずみ計22と、を有する。ひずみゲージ21は、ゲージ長1mmで、試験片Pの表面に貼り付けて用いられる。動ひずみ計22は、ひずみゲージ21に接続される。
本評価装置は、AE検出手段3を備える。AE検出手段3は、AEセンサ31と、AEセンサ31に接続されたプリアンプ32と、を有する。AEセンサ31は、50kHz〜200kHzの範囲に共振周波数がある共振型AEセンサである。AEセンサ31は、圧子12の上部にグリスで密着固定して用いられる。
また、本評価装置は、表面状態観察手段4として白色干渉型三次元表面形状解析装置(Zygo社製NewView100)を備える。
さらに、本評価装置は、試験片変形量測定手段2、AE検出手段3および表面状態観察手段4から入力されたデータを記録し、データに基づき判定を行う判定手段5を有する。
[皮膜の機械的特性評価方法]
1.ディスクリレベルの設定
予備試験用の試験片(基材S0)として、直径8mm長さ70mmの丸棒(SUS440C(JIS規格)焼入れ材)を準備した。基材S0は、3点曲げ試験機1において、支点間距離が50mmとなるように2つの支持部11に載置された。圧子12は、基材S0の上方であって、2つの支持部11から等距離に位置するため、圧子12を下方に移動させることで、基材S0の中央が押し曲げられる。基材S0の表面には、ひずみゲージ21を貼り付けた。ひずみゲージ21の貼り付け位置は、基材S0を挟んで圧子12と反対側であって、最大引張り応力が発生する位置を中心とした。
次に、基材S0に対し、3点曲げ試験機1により曲げ試験を行った。曲げ試験は、ひずみ2%まで行った。曲げ試験から得られた荷重−ひずみ線図を図7に、AE信号−ひずみ線図を図8に、それぞれ示す。図8より、3点曲げ試験機1自体(たとえば基材S0と支持部11、基材S0と圧子12との間)から発生する振動および電気的ノイズは、最大±0.1V、平均約±0.03V程度であり、最大値は不可避な突発的なノイズであった。このような突発的なノイズは、周波数解析を行えば判別が可能であるが、実験毎に解析するよりも不可避なノイズの最大値をディスクリレベルとして設定した方が合理的である。本実施例では、ディスクリレベルを±0.15Vに設定した。
2.試験片の作製
皮膜として非晶質炭素膜(DLC膜)をもつ試験片P0を準備した。試験片P0を図9に示す。試験片P0は、基材S0をイオン窒化処理することにより形成された窒化深さ30μmの窒化拡散層と、軸方向に40mm、周方向に12.5mm長の範囲でプラズマCVD法により窒化拡散層の上に成膜された厚さ5μmのDLC膜と、を有する。なお、ナノインデンテーション法で測定したDLC膜の硬さは、17GPa(Hv1360相当)であった。
3.皮膜の機械的特性評価
試験片P0は、3点曲げ試験機1において、支点間距離が50mmとなるように2つの支持部11に載置した。試験片P0が支持部11に載置された際のDLC膜は、圧子12に試験片P0が押し曲げられることで最大引張り応力が発生する部位に位置するようにした(図9の矢印の方向が圧子12による応力負荷方向に相当)。DLC膜の表面には、最大引張り応力が発生する位置を中心として、ひずみゲージ21を貼り付けた。
次に、試験片P0に対し、3点曲げ試験機1により上記と同様の手順で曲げ試験を行った。試験片P0は、DLC膜と背向する側から圧子12に押し曲げられ、連続的に変形された。曲げ試験から得られた荷重−ひずみ線図を図10に、AE信号−ひずみ線図を図11に、それぞれ示す。図10によれば、ひずみが0〜7500μまでは荷重とひずみとが比例関係にあったが、7500μを超えると塑性変形するのがわかった。また、図11によれば、ひずみが9400μ付近でディスクリレベルを超えるAE波が検出され、17000μまで継続して発生した。
試験片P0を17000μまで変形させた後、ひずみゲージ21を剥がし、DLC膜の表面状態を詳細に観察した。DLC膜の表面には、最大引張り応力が働く部位(DLC膜が成膜されている範囲の中央部であって、軸方向に約7mm幅)に4箇所の割れが観察された。図12は、観察された割れの光学顕微鏡写真である。観察された割れを矢印で示す。なお、図12に示す(A)〜(D)の写真は、視野範囲が0.351mm×0.263mmで、それぞれ、塑性変形した変形中心から割れまでの距離が0.7mm、−2.7mm、−3.4mm、2.0mmであった。最も大きな割れが確認された位置は、中心から0.7mmの位置(図12(A))であって、最初のAE発生源であったと考えられる。(A)の部位の詳細な表面形状を図13に示す。図13は、白色干渉型三次元表面形状解析装置による解析画像である。解析画像は、二次元および三次元の表面地図(図13上のSurface Map)、断面図(図13左下のSurface Profile)および拡大像(図13右下のIntensity Map)からなる。断面図より、(A)での割れ深さは、約5μmであってDLC膜の膜厚とほぼ等しい。そのため、最初のAE発生源がDLC膜のみであるのか基材とDLC膜の両方であるのかを判別することはできなかった。
そこで、DLC膜をもたないほかは試験片P0と同様にして作製された基材S’に対して3点曲げ試験機1により上記と同様の手順で曲げ試験を行った。曲げ試験から得られた荷重−ひずみ線図を図14に、AE信号−ひずみ線図を図15に、それぞれ示す。荷重−ひずみ曲線は、図10と図14とでほぼ同じであり、曲げ試験における塑性変形の挙動はDLC膜の有無によらず、同様であることがわかった。また、図15によれば、ひずみが8700μ付近でディスクリレベルを超えるAE波が検出され、12000μまで継続して発生した。
試験片を12000μまで変形させた後、ひずみゲージ21を剥がし、基材S’の表面状態を詳細に観察した。基材の表面には、最大引張り応力が働く部位に数箇所の割れが観察された。すなわち、試験片P0においてひずみが9400μのときに発生したAE(図11)は、基材の表面の窒化拡散層を基点に割れが発生したときのものであり、AE発生源は基材であるとわかった。
つまり、上記の試験ではDLC膜の機械的特性を判定することができなかった。そこで、延性の高い材質の基材に変えた試験片を用いて再度同様の試験を行い、DLC膜の機械的特性の評価を行った。
4.試験片の作製
再試験に用いられる試験片P1は、アルミニウム合金製の基材S1を用い、イオン窒化処理を行わない他は、試験片P0と同様にして作製された。すなわち、試験片P1は、アルミニウム合金製基材の表面にDLC膜が成膜された試験片である。なお、基材S1は直径8mm長さ70mmの丸棒(A2017(JIS規格))、DLC膜の膜厚は4μmとした。
5.皮膜の機械的特性評価
試験片P1に対し、試験片P0と同様の手順で曲げ試験を行った。試験片P1は、DLC膜と背向する側から圧子12に押し曲げられ、連続的に変形された。曲げ試験から得られた荷重−ひずみ線図を図16に、AE信号−ひずみ線図を図17に、それぞれ示す。図16によれば、基材の材質を変更したことで、図14の荷重−ひずみ曲線と比較し、変形荷重が大きく低下した。また、図17によれば、ひずみが37000μでディスクリレベルを超える最初のAE波が検出され、次いで44000μ、48000μ、の3回のAE波が検出された。
試験片P1を48000μまで変形させた後、ひずみゲージ21を剥がし、DLC膜の表面状態を詳細に観察した。白色干渉型三次元表面形状解析装置による解析画像を図18および図19に示す。図18では、DLC膜の剥離が観察された。また、図19では、DLC膜の欠けと割れが観察された。DLC膜の剥離をAE発生源とする最初のAE波は、ひずみが37000μのときと考えられる。これは、37000μ付近でのAE波の振幅が小さいためである。一方、DLC膜の欠けと割れをAE発生源とする場合は、AE波の振幅が大きく、振動周波数が剥離よりも高い。また、このときの最大振幅が、前述のステンレス鋼製の基材が破壊する最大振幅(図11および図15参照)の半分以下であることからも、AE発生源がDLC膜のみであると考えられる。
以上の試験より、皮膜の機械的特性として、上記DLC膜の破壊が生じないひずみ値の上限は37000μであると評価される。
なお、試験後の試験片P1と基材S1に、ひずみゲージの測定限界ひずみ(50000μ)を超えるひずみをそれぞれ付与した。その後の表面状態を詳細に観察した。試験片P1について、白色干渉型三次元表面形状解析装置による解析画像を図20に示す。曲げによる引張り応力の方向に対して垂直に無数に発生した割れが観察された。一方、基材S1の表面には、割れは確認されなかった。したがって、図19に示される破壊は、DLC膜の亀裂発生の初期段階であることがわかった。
本発明の皮膜の機械的特性評価装置の一例を示す概略図である。 AE検出手段における信号処理の一例を示す。 記録手段に記録されるデータの一例を示す。 本発明の皮膜の機械的特性評価方法の一例を説明するフローチャートである。 本発明の皮膜の機械的特性評価方法の一例を説明するフローチャートである。 本発明の皮膜の機械的特性評価方法の一例を説明するフローチャートである。 ステンレス鋼製丸棒に対する3点曲げ試験から得られた荷重−ひずみ線図である。 ステンレス鋼製丸棒に対する3点曲げ試験から得られたAE信号−ひずみ線図である。 実施例の皮膜の機械的特性評価に用いられる試験片の概略図である。 イオン窒化処理されたステンレス鋼製丸棒にDLC膜を成膜した試験片P0に対する3点曲げ試験から得られた荷重−ひずみ線図である。 試験片P0に対する3点曲げ試験から得られたAE信号−ひずみ線図である。 試験後の試験片P0の表面を観察した光学顕微鏡写真を示す。 試験後の試験片P0の表面を観察した白色干渉型三次元表面形状解析装置による解析画像である。 イオン窒化処理されたステンレス鋼製丸棒に対する3点曲げ試験から得られた荷重−ひずみ線図である。 イオン窒化処理されたステンレス鋼製丸棒に対する3点曲げ試験から得られたAE信号−ひずみ線図である。 アルミニウム合金製丸棒にDLC膜を成膜した試験片P1に対する3点曲げ試験から得られた荷重−ひずみ線図である。 試験片P1に対する3点曲げ試験から得られたAE信号−ひずみ線図である。 試験後の試験片P1の表面を観察した白色干渉型三次元表面形状解析装置による解析画像である。 試験後の試験片P1の表面を観察した白色干渉型三次元表面形状解析装置による解析画像である。 試験後の試験片P1にさらにひずみを付与した後の試験片P1の表面を観察した白色干渉型三次元表面形状解析装置による解析画像である。
符号の説明
1:試験片変形手段(3点曲げ試験機)
2:試験片変形量測定手段
3:AE検出手段
4:表面状態観察手段
5:判定手段
P:試験片 S:基材 F:皮膜

Claims (13)

  1. 基材と該基材の表面に形成された皮膜とからなる試験片を変形させる試験片変形手段と、
    前記皮膜の変形量を測定する試験片変形量測定手段と、
    前記試験片の変形により前記皮膜、前記基材および該皮膜と該基材との界面のうちのいずれか1以上から発生するアコースティック・エミッション(AE)を検出するAE検出手段と、
    前記皮膜の表面状態を観察する表面状態観察手段と、
    前記AE検出手段がAEを検出したときに、前記表面状態観察手段で観察された表面状態に応じてAE発生源を特定し、該AE発生源が前記皮膜のみである場合に前記試験片変形量測定手段による測定結果を該皮膜の機械的特性と判定する判定手段と、
    を備えることを特徴とする皮膜の機械的特性評価装置。
  2. 前記判定手段は、前記表面状態観察手段で前記皮膜の剥離が観察された場合に、前記試験片変形量測定手段による測定結果を該皮膜の機械的特性と判定する請求項1記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  3. 前記表面状態観察手段で前記皮膜の割れが観察された場合に、前記AE検出手段でAEを検出したときの変形量Aと、前記基材のみを変形させたとき該基材から発生するAEを検出したときの変形量Bと、を比較して、A<Bである場合に変形量Aを該皮膜の機械的特性と判定する二次判定手段を有する請求項1記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  4. さらに、前記試験片変形量測定手段からの測定結果および前記AE検出手段からの検出結果、必要に応じて前記表面状態観察手段で観察された表面状態を経時的に記録する記録手段を備える請求項1記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  5. 前記試験片変形手段は、棒状の前記試験片を互いに離間した位置で支持する2つの支持部と、該支持部間の中央部で該試験片を押し曲げる圧子部と、からなる3点曲げ試験機である請求項1記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  6. 前記3点曲げ試験機は、前記皮膜に引張り応力が発生するように前記試験片を変形させる請求項5記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  7. 前記AE検出手段は、前記圧子部に固定されたAEセンサを有する請求項5記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  8. 前記試験片変形量測定手段は、前記皮膜の変形量を測定するひずみ計である請求項1記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  9. 前記表面状態観察手段は、顕微鏡である請求項1記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  10. 前記顕微鏡は、白色光源を用いた白色干渉型三次元表面形状解析装置である請求項9記載の皮膜の機械的特性評価装置。
  11. 基材と該基材の表面に形成された皮膜とからなる試験片を変形させる試験片変形工程と、
    前記皮膜の変形量を測定する試験片変形量測定工程と、
    前記試験片の変形により前記皮膜、前記基材および該皮膜と該基材との界面のうちのいずれか1以上から発生するアコースティック・エミッション(AE)を検出するAE検出工程と、
    前記皮膜の表面状態を観察する表面状態観察工程と、
    前記AE検出工程がAEを検出したときに、前記表面状態観察工程で観察された表面状態に応じてAE発生源を特定し、該AE発生源が前記皮膜のみである場合に前記試験片変形量測定工程による測定結果を該皮膜の機械的特性と判定する判定工程と、
    を有することを特徴とする皮膜の機械的特性評価方法。
  12. 前記判定工程は、前記表面状態観察工程で前記皮膜の剥離が観察された場合に、前記試験片変形量測定工程による測定結果を該皮膜の機械的特性と判定する工程である請求項11記載の皮膜の機械的特性評価方法。
  13. 前記表面状態観察工程で前記皮膜の割れが観察された場合に、前記AE検出工程でAEを検出したときの変形量Aと、前記基材のみを変形させたとき該基材から発生するAEを検出したときの変形量Bと、を比較して、A<Bである場合に変形量Aを該皮膜の機械的特性と判定する二次判定工程を有する請求項11記載の皮膜の機械的特性評価方法。
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