JP2009040141A - 可変減衰力ダンパの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】MRF(磁気粘性流体)を用いた可変減衰力ダンパにおいて、ダンパの伸びと縮みが切り替わる際に、MLV(磁気流体バルブ)を構成するコイルに流れる電流を速やかに立ち下げることができるようにする。
【解決手段】コイル40aに対する電源からの給電を断続するハイサイドスイッチ41と、このハイサイドスイッチのオンオフにより減衰力を制御するCPU42とを有する可変減衰力ダンパの制御装置において、目標電流の低下に応じて実電流を低減するためにハイサイドスイッチをオフとする電流低減制御時にコイルのインダクタンス特性により流れる電流のエネルギーを消費するエネルギー吸収回路44を設ける。
【選択図】図4

Description

本発明は、磁気粘性流体を用いた可変減衰力ダンパの磁気流体バルブを構成するコイルに対する電源からの給電をスイッチ手段により断続してダンパの減衰力を制御する可変減衰力ダンパの制御装置に関するものである。
近年、自動車用サスペンションを構成する筒型ダンパとして、操縦安定性と乗り心地とを高い次元で両立させるべく、自動車の運動状態に応じて減衰力を可変制御する減衰力可変型のものが種々開発されている。
この可変減衰力ダンパの減衰力制御機構としては、従来、モータやソレノイド等を用いてオリフィスの流路面積を増減させる機械制御式のものが一般的であったが、構成の簡素化や制御応答性の向上等を実現すべく、作動液に磁気粘性流体(Magneto-Rheological Fluid:以下、MRFと記す)を用い、ピストンに設けられた磁気流体バルブ(Magnetizable Liquid Valve:以下、MLVと記す)を構成するコイルに印可する電流の増減によってMRFの見かけ上の粘度を変化させることで減衰力を制御するものが出現している(特許文献1参照)。
特開2006−77789号公報
前記のMRF式の可変減衰力ダンパの制御にあたっては、ダンパ制御装置内のCPUにおいて、車体に発生する横加速度や前後加速度などの車体の運動状態を示す情報に基づいて目標減衰力が設定された後、この目標減衰力と、ダンパの伸縮量を検出するストロークセンサの検出値から求められるストローク速度とから、図10に示す目標電流マップを参照して目標電流が設定され、この目標電流に実電流が近づくようにフィードバック制御が行われる。
また、このMRF式の可変減衰力ダンパの制御では、本件出願人が先に提案した制御システム(特願2006−245779)でも説明したように、MLVを構成するコイルに対する電源からの給電を断続するスイッチ素子を設け、このスイッチ素子のオンオフによりコイルに流れる電流量を制御し、具体的には、CPUから出力されるPWM(Pulse Width Modultion、パルス幅変調)信号に応じて所定の周期でスイッチ素子がオンオフを繰り返すようにしている。
しかるに、図10の目標電流マップに示されるように、ダンパの伸びと縮みが切り替わる際、例えば伸びを抑える力を発生している状況においてストローク速度が伸びる(プラス符号)側から縮む(マイナス符号)側へ変化する際に、目標電流が急に低下するため、これに応じてコイルの実電流も速やかに立ち下げる必要があるが、従来の回路では電流低減に時間を要するため、減衰力を十分に低下させることができず、荒れた路面を走行する際や段差の乗り越え時などにおける乗り心地の悪化を招くという不都合があった。
一方、コイルに流れる電流をスイッチで強制的に遮断することも考えられるが、この場合、電流の急激な変化に応じてダンパの取付点付近での応力が急変化して異音が発生するという問題が生じることから望ましくない。
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、MRFを用いた可変減衰力ダンパにおいて、ダンパの伸びと縮みが切り替わる際に、MLVを構成するコイルに流れる電流を速やかに立ち下げることができるように構成された可変減衰力ダンパの制御装置を提供することにある。
このような課題を解決するために、本発明においては、請求項1に示すとおり、磁気粘性流体を用いた可変減衰力ダンパ(4)の磁気流体バルブ(40)を構成するコイル(40a)に対する電源からの給電を断続するスイッチ手段(ハイサイドスイッチ41)と、このスイッチ手段のオンオフにより当該可変減衰力ダンパの減衰力を制御する制御手段(CPU42)とを有する可変減衰力ダンパの制御装置において、前記コイルの目標電流の低下に応じて実電流を低減するために前記スイッチ手段をオフとする電流低減制御時に前記コイルのインダクタンス特性により流れる電流のエネルギーを消費するエネルギー吸収手段(エネルギー吸収回路44)が設けられたものとした。
これによると、コイルのインダクタンス特性により流れる電流のエネルギーがエネルギー吸収手段で消費されるため、電流低減制御時に電流低減に要する時間を短縮することができ、ダンパの伸びと縮みが切り替わる際に減衰力を速やかに消失させて乗り心地が悪化することを避けることができる。
この場合、コイルの目標電流は、車体の運動状態に関する状態量(例えば横加速度や前後加速度など)に基づいて設定された目標減衰力と、ダンパの伸縮状態に関する状態量(例えばストローク速度)とから求められる。
前記制御装置においては、請求項2に示すとおり、前記エネルギー吸収手段が、電流のエネルギーを消費する電気素子(51・52・54・55・61〜64)と、この電気素子に対して並列に設けられたバイパススイッチ手段(53・65)とを有し、前記制御手段が、電流低減制御時に前記バイパススイッチ手段をオフとするように制御する構成とすることができる。
これによると、所要の大きさの減衰力を得るためにスイッチ手段をオンオフする通常制御時に、バイパススイッチ手段をオフとすることで、コイルに流れる回生電流が電気素子に流れることを防止して、エネルギー吸収回路での発熱を抑制することができる。
前記電気素子としては、ダイオードや抵抗が好適であり、そのいずれか一方のみ、あるいは双方を組み合わせて用いると良い。
前記制御装置においては、請求項3に示すとおり、前記コイルの一端が、当該可変減衰力ダンパ内で接地された構成とすることができる。
このようにコイルの一端がダンパ内で接地された構成では、コイルに流れる電流を急速に低減する一般的な手法を採用することができない。例えばHブリッジ回路を用いてコイルの電源側と接地側とを切り替える手法では、その切り替えにより電源側のラインが接地側に短絡してしまうことから採用することができない。
これに対して、前記の構成の制御装置では、コイルの一端がダンパ内で接地された構成においても、コイルに流れる電流を速やかに立ち下げることができる。
前記制御装置においては、請求項4に示すとおり、前記スイッチ手段のオフ時に前記コイルに回生電流を流すために前記コイルの電源側と接地側とを接続するバイパスライン上に設けられたフライホイールダイオード(43)を有し、前記エネルギー吸収手段が、前記フライホイールダイオードに対して直列に接続された状態で前記バイパスライン上に設けられた構成とすることができる。
このように本発明によれば、コイルのインダクタンス特性により流れる電流のエネルギーがエネルギー吸収手段で消費されるため、電流低減制御時に電流低減に要する時間を短縮することができ、ダンパの伸びと縮みが切り替わる際に減衰力を速やかに消失させて乗り心地が悪化することを避けることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明が適用される4輪自動車の概略構成を示す模式図である。ここで、4つの車輪やそれらに対して配置された部材、すなわち、タイヤやサスペンション等については、それぞれ数字の符号に前後左右を示す添字を付して、例えば、車輪3fl(左前)、車輪3fr(右前)、車輪3rl(左後)、車輪3rr(右後)と記す一方、総称する場合には、例えば、車輪3と記す。
この自動車(車両)Vは、タイヤ2が装着された4つの車輪3を備えており、これら各車輪3がサスペンションアームや、スプリング、ダンパ4等からなるサスペンション5によって車体1に懸架されている。自動車Vには、サスペンションシステムの制御主体であるECU(Electronic Control Unit)7や、EPS(Electric Power Steering:電動パワーステアリング)8が設置されている。
また、自動車Vには、車速を検出する車速センサ9、横加速度を検出する横Gセンサ10、前後加速度を検出する前後Gセンサ11、ヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ12等が車体1の適所に設置されるとともに、ダンパ4の伸縮量を検出するストロークセンサ13と、ホイールハウス付近の上下加速度を検出する上下Gセンサ14とが各車輪3ごとに設置されている。
ダンパ4は、MRFを作動流体とする減衰力可変型ダンパであり、ECU7によってその減衰力が可変制御される。ECU7は、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成されており、通信回線(CAN(Controller Area Network))を介して各車輪3のダンパ4や各センサ9〜14と接続されている。
図2は、図1に示したダンパ4の縦断面図である。このダンパ4は、モノチューブ式(ド・カルボン式)であり、MRFが充填された円筒状のシリンダチューブ21と、このシリンダチューブ21に対して軸方向に相対動するピストンロッド22と、ピストンロッド22の先端に装着されてシリンダチューブ21内を上部油室24と下部油室25とに区画するピストン26と、シリンダチューブ21の下部に高圧ガス室27を画成するフリーピストン28と、ピストンロッド22等への塵埃の付着を防ぐカバー29と、フルバウンド時における緩衝を行うバンプストップ30とを主要構成要素としている。
シリンダチューブ21は、下端のアイピース21aに嵌挿されたボルト31を介して、車輪側部材であるトレーリングアーム35の上面に連結されている。また、ピストンロッド22は、上下一対のブッシュ36とナット37とを介して、その上端のスタッド22aが車体側部材であるダンパベース(ホイールハウス上部)38に連結されている。
図3は、図2に示したダンパの作動原理を説明する模式図である。ピストン26には、上部油室24と下部油室25とを連通する連通路39と、この連通路39に沿って配置されたMLV(Magnetizable Liquid Valve:磁気流体バルブ)40を構成するコイル40aとが設けられている。ECU7からコイル40aに電流が供給されると、連通路39を通過するMRFに磁界(図3中に矢印で磁束を示す)が印可されて強磁性微粒子が鎖状のクラスタを形成し、連通路39内を通過するMRFの見かけ上の粘度が上昇する。
図4は、図1に示したダンパ4の制御に係る要部を示す構成図である。ECU7に設けられるダンパ制御回路は、ハイサイドスイッチ(スイッチ手段)41と、CPU(制御手段)42と、フライホイールダイオード43と、エネルギー吸収回路(エネルギー吸収手段)44とを備えている。
ハイサイドスイッチ41は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などのスイッチ素子からなり、コイル40aに対する電源からの給電を断続するものであり、CPU42から出力されるPWM信号に応じて所定の周期(例えば50μS)でオンオフを繰り返しながらコイル40aに流れる電流を増減してダンパ4の減衰力を調整する。
CPU42では、横Gセンサ10で検出される横加速度や前後Gセンサ11で検出される前後加速度などの車体の運動状態を示す情報に基づいて各ダンパ4の目標減衰力が設定され、この目標減衰力と、ストロークセンサ13の検出値から求められるストローク速度とから、図10に示す目標電流マップを参照して目標電流が設定され、この目標電流に実電流が近づくようにフィードバック制御される。
フライホイールダイオード43は、ハイサイドスイッチ41のオフ時にコイル40aに回生電流を流すために、コイル40aの電源側のラインL1と接地側のラインL2とを接続するバイパスラインL3上に設けられている。またエネルギー吸収回路44は、フライホイールダイオード43に直列に接続された状態でバイパスラインL3上に設けられている。
図5は、図4に示したエネルギー吸収回路の具体例を示す構成図である。図5(A)に示す例では、エネルギー吸収回路44が、エネルギーを消費する電気素子として、互いに直列に接続されたダイオード51及び抵抗52と、このダイオード51及び抵抗52に対して並列に設けられたバイパススイッチ53とで構成されている。
バイパススイッチ53は、CPU42からの駆動信号でオンオフされ、所要の大きさの減衰力を得るために所定周期でハイサイドスイッチをオンオフする通常制御時には、オンのままで、ダイオード51及び抵抗52に電流が流れないが、目標電流の急低下に応じて実電流を低減するためにハイサイドスイッチ41をオフとする電流低減制御時には、ハイサイドスイッチ41と共にバイパススイッチ53もオフとなり、ダイオード51及び抵抗52に電流が流れる。
図5(B)・(C)に示す例では、図5(A)の例でのダイオード(一般整流ダイオード)51の代わりにツェナーダイオード54及びバリスタ55がそれぞれ設けられている。
図6は、図4に示したエネルギー吸収回路44の別の例を示す構成図である。図7は、図6に示したエネルギー吸収回路44の動作要領を説明する表である。ここでは、第1の組のダイオード61及び抵抗62と第2の組のダイオード63及び抵抗64とが直列に接続され、これら2組のダイオード61・63及び抵抗62・64に対してバイパススイッチ65が並列に接続され、また第2の組のダイオード63及び抵抗64に対してエネルギー吸収量可変スイッチ66が並列に接続されている。
このエネルギー吸収回路44では、図7に示すように、バイパススイッチ65をオンとすることでエネルギー吸収量が0となり、またバイパススイッチ65をオフとし、且つエネルギー吸収量可変スイッチ66をオンとすると、エネルギー吸収量が小となり、またバイパススイッチ65をオフとし、且つエネルギー吸収量可変スイッチ66をオフとすると、エネルギー吸収量が大となり、エネルギー吸収量を2段階に制御することができる。
図8は、図4に示したダンパ制御回路における電流の状況を示す構成図である。図9は、図4に示したコイル40aに流れる電流の変化状況を示すグラフである。
所要の大きさの減衰力を発生させるために設定された目標電流に向けて実電流を増加するためにハイサイドスイッチ41をオンとする電流増加制御時には、図8(A)に示すように、電源からの電流が、コイル40aを通って接地側に流れ、このとき、エネルギー吸収回路44を経由せずに電流が流れるため、所要の電流値に到達するのに要する時間は従来と同じである。
一方、ストローク速度の変化に伴い目標電流が急に低下したのに応じて実電流を低減するためにハイサイドスイッチ41をオフとする電流低減制御時には、図8(B)に示すように、エネルギー吸収回路44を経由して電流が流れ、このときエネルギー吸収回路44内のバイパススイッチもオフとなるため、エネルギー吸収回路44内のダイオード及び抵抗でエネルギーが消費されて、コイル40aの実電流を速やかに立ち下げることができる。
なお、所要の大きさの減衰力を得るために所定周期でハイサイドスイッチ41をオンオフする通常制御時には、エネルギー吸収回路44内のバイパススイッチはオンのままであり、コイル40aに流れる回生電流がエネルギー吸収回路44内のダイオード及び抵抗に流れることがないため、エネルギー吸収回路44での発熱を抑制することができる。
本発明が適用される4輪自動車の概略構成を示す模式図である。 図1に示したダンパの縦断面図である。 図2に示したダンパの作動原理を説明する模式図である。 図1に示したダンパの制御に係る要部を示す構成図である。 図4に示したエネルギー吸収回路の具体例を示す構成図である。 図4に示したエネルギー吸収回路の別の例を示す構成図である。 図6に示したエネルギー吸収回路の動作要領を説明する表である。 図4に示したダンパ制御回路における電流の状況を示す構成図である。 図4に示したコイルに流れる電流の変化状況を示すグラフである。 ダンパ制御で用いられる目標電流マップである。
符号の説明
4 ダンパ
7 ECU
40 MLV
40a コイル
41 ハイサイドスイッチ(スイッチ手段)
42 CPU(制御手段)
43 フライホイールダイオード
44 エネルギー吸収回路(エネルギー吸収手段)
51・61・63 ダイオード
52・62・64 抵抗
53・65 バイパススイッチ
54 ツェナーダイオード
55 バリスタ
66 エネルギー吸収量可変スイッチ

Claims (4)

  1. 磁気粘性流体を用いた可変減衰力ダンパの磁気流体バルブを構成するコイルに対する電源からの給電を断続するスイッチ手段と、このスイッチ手段のオンオフにより当該可変減衰力ダンパの減衰力を制御する制御手段とを有する可変減衰力ダンパの制御装置であって、
    前記コイルの目標電流の低下に応じて実電流を低減するために前記スイッチ手段をオフとする電流低減制御時に前記コイルのインダクタンス特性により流れる電流のエネルギーを消費するエネルギー吸収手段が設けられたことを特徴とする可変減衰力ダンパの制御装置。
  2. 前記エネルギー吸収手段が、電流のエネルギーを消費する電気素子と、この電気素子に対して並列に設けられたバイパススイッチ手段とを有し、前記制御手段が、電流低減制御時に前記バイパススイッチ手段をオフとするように制御することを特徴とする請求項1に記載の可変減衰力ダンパの制御装置。
  3. 前記コイルの一端が、当該可変減衰力ダンパ内で接地されたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の可変減衰力ダンパの制御装置。
  4. 前記スイッチ手段のオフ時に前記コイルに回生電流を流すために前記コイルの電源側と接地側とを接続するバイパスライン上に設けられたフライホイールダイオードを有し、前記エネルギー吸収手段が、前記フライホイールダイオードに対して直列に接続された状態で前記バイパスライン上に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の可変減衰力ダンパの制御装置。
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