JP2009039904A - 過酸化水素バリア性フィルム、およびそれを使用した積層材 - Google Patents

過酸化水素バリア性フィルム、およびそれを使用した積層材 Download PDF

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Abstract

【課題】 過酸化水素による殺菌工程に付される包装袋に使用される包装材料として特に有用で、かつ、ガスバリア性能にも優れた過酸化水素バリア性フィルムを提供する。
【解決手段】 基材フィルム1の片面に、耐水耐油剤を含む過酸化水素保護膜2を設け、他の面にバリア性薄膜層3を設けたことを特徴とする過酸化水素バリア性フィルムを提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、過酸化水素バリア性フィルム、およびそれを使用した積層材に関する。
従来、各種のたれ、ソース、醤油等の調味料、あるいは、めんつゆ、スープ等の飲食品を充填包装した包装製品は、プラスチックフィルム等からなる包装用材料を走行させつつこれを略半分に折り合わせ、次いで、その対向面の周辺端部をヒートシールして袋体を形成し、その袋体の開口部から上記の内容物を充填しながら、その開口部の端部をヒートシールにより密封することにより製造されていた。
上記のような充填包装方式は、生産性の向上を図るため、高速作業化が図られており、その充填包装速度は、包装用材料の走行速度にして、10m/min〜20m/min、あるいは、それ以上にまで達している。
一方、上記袋体の殺菌処理は、充填包装される内容物を、約80℃以上に加熱し、高温短時間で殺菌処理した後、その高温の状態で袋体内に充填し、その充填される内容物の熱により、袋体自身も殺菌される、いわゆる、ホットパック充填方式により実現されている。
上記のホットパック充填方式は、高度の設備を必要としないという利点を有するものの、内容物を高温に加熱すると、内容物の味、臭い等が変化するばかりではなく、充填包装後の包装製品の冷却のために、大規模な冷却装置等を必要とする等の種々の不都合を来すものである。例えば、塩分の少ない低酸性、低塩分の内容物については、高温充填包装しても、包装製品が日持ちしないという問題点がある。さらに上記のホットパック充填方式は、80℃の殺菌温度と時間に耐える菌に対しては、有効な方法ではなく、包装製品の長期保存には不向きであるという問題点がある。
また、包装製品の長期保存が可能な滅菌方式として、高圧下、120℃前後で殺菌処理を行うレトルト殺菌処理方式が提案されているが、この方式は、包装用材料として、耐熱性を有する包装用材料を必要とする、また、高速充填包装を行うことができない、レトルト殺菌処理の包装製品の取り扱い勝手が悪い、最終的にはコストアップになる等の種々の問題点があるものである。
そこでこれらホットパック充填方式、レトルト殺菌処理方式等に代えて、殺菌された環境下で、殺菌処理された包装用材料を使用し、かつ、内容物を常温で充填包装する無菌充填包装方式が提案されている。この無菌充填包装方式は、無菌環境下で充填包装することにより、低温充填包装が可能であり、その結果、内容物の味、臭い等の変化を最低限に抑えながら、長期保存が可能な包装製品を製造することができるという利点を有するものである。そして上記無菌充填包装方式における包装材料の殺菌は、ガンマ線等の電磁波を照射することや、過酸化水素等の殺菌効果のある薬剤により行われる。
上記無菌充填包装方式のうち、ガンマ線照射等の電磁波を使用して殺菌処理する方式は、通常、バッグ内に包装用材料を入れて密封し、これにガンマ線照射処理を行い、次いで、無菌化された充填包装機内のグローブボックスでバッグを開封し、しかる後、包装用材料を充填包装機に配設して供給するというものであり、ハンドリングの手間が非常にかかるというものである。またこの方式は、放射線を使用するため、充填包装機とは別の設備で作業を行う必要があり、インラインで殺菌、充填包装するということは難しく、また、ガンマ線照射により包装用材料の変色や異臭が生じるという問題もあり、さらに、ガンマ線照射後、バッグに穴が空き外気が入った場合等には、殺菌処理した包装用材料は、もはや、殺菌処理の効果が喪失し、包装用材料としては使用することができず、手間がかかると共にその取り扱い作業に慎重を要とすることから、極めてリスクの大きな方式である。
他方、上記の過酸化水素等の殺菌効果のある薬剤を使用して殺菌処理する方式として、例えば、包装用材料を過酸化水素槽に浸漬し、その後、包装用材料から過酸化水素液滴を除去すると共にこの包装用材料を乾燥ドラムに巻き付けて乾燥させて殺菌処理する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
さらに包装用材料の表面に、過酸化水素ガスを導入し、包装用材料の表面に、過酸化水素を凝結させ、その後、過酸化水素を乾燥させて殺菌処理する方法が知られている(例えば、特許文献3、4等参照)。
しかしながら、上記の特許文献1、2に記載の殺菌処理方法においては、包装用材料を浸漬後、高温乾燥するため、包装材料の材質によっては、層間剥離(デラミ)や変形を起こすことから、使用に耐え得る包装用材料が限定されるという問題点がある。
また、上記の特許文献3、4に記載の殺菌処理方法は、過酸化水素を加熱蒸気化したミストを使用し、低温乾燥が可能であるものの、吸湿性を有する包装用材料や耐酸性に劣る包装用材料の場合、殺菌処理および乾燥後に、包装用材料の表面層の劣化やその表面層に過酸化水素が残留するという問題点があり、充填包装適性、内容物の保護適性等に優れた包装用材料であっても、包装用材料として使用することができないという問題点がある。
例えば、従来、液体小袋としては、耐突き刺し強度性、耐圧性等の観点から、基材フィルムとして、ポリアミド系樹脂フィルムが、良材として使用されるが、上記のポリアミド系樹脂フィルムは、吸湿性があり、かつ、酸に弱く、簡単に加水分解するという性質があることから、ポリアミド系樹脂フィルムに対し、最小量の過酸化水素ミストを適用して殺菌処理しても、ポリアミド系樹脂フィルムは、表面から加水分解を起こし、外観として白化現象(白っぽくなること)を生じ、また、ポリアミド系樹脂フィルムに過酸化水素が浸透し、ポリアミド系樹脂フィルム表面に存在する過酸化水素は、乾燥工程等で除去できても、内部まで浸透した過酸化水素までは除去することが困難であり、過酸化水素等の殺菌剤が残留するという問題点がある。
このような問題点を解決するため、基材に化学気相成長法による有機酸化珪素の蒸着膜を設けたフィルムを製造し、前記蒸着膜を過酸化水素に対する保護膜として使用すること、すなわち前記フィルムの蒸着面とは逆側に印刷層やヒートシール性樹脂層を積層することにより積層材を製造し、これを過酸化水素による殺菌処理が行われる包装用材料として使用することが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
しかしながら上記フィルム自体は、過酸化水素による白化現象や、過酸化水素の浸透に対し、耐性を有するものの、前記フィルムは、単独で包装袋として使用できるものではなく、包装袋とするためには、さらに印刷層やヒートシール性樹脂層を積層して積層材とし、さらに前記積層材を製袋工程に付さなければならない。そして前記印刷、ラミネート工程においては、過酸化水素保護膜として機能する蒸着膜がロールとの接触により摩耗することや、製袋工程においては、曲げ、伸び等の外的負荷により、前記蒸着膜面にクラックが発生することから、前記フィルムを包装袋に加工したときには、過酸化水素に対する耐性が失われてしまうという問題点があった。
特開平6−99949号公報 特開平6−99950号公報 特公昭61−9163号公報 特開2003−118709号公報 特開2005−231042号公報
上記のとおり、過酸化水素等の殺菌効果のある薬剤(以下、「過酸化水素等」という)を使用した殺菌処理に付される包装袋においては、前記包装袋を構成するフィルム自体が過酸化水素等による白化現象や、過酸化水素等の浸透に対し、優れた耐性を有することに加え、積層材製造時や包装袋製造時の様々な物理的負荷により、前記耐性が低下しないことが求められるが、そのような特性を有するフィルムは得られていない。
これに対し本発明は、それ自体が過酸化水素等による白化現象や、過酸化水素等の浸透に対する優れた耐性を有すると共に、積層材製造時や包装袋製造時におけるロールとの摩擦や、曲げ、伸び等の外的負荷という様々な物理的負荷により、前記耐性が低下しない、すなわち過酸化水素等による殺菌工程に付される包装袋に使用される包装材料として特に有用で、かつ、ガスバリア性能にも優れた過酸化水素バリア性フィルムを提供するものである。
本発明者は、包装材料に関する上記のような問題点を改良すべく鋭意研究した結果、紙等に対し耐水性や耐油性を付与するために使用される耐水耐油剤を過酸化水素保護膜として使用したところ、前記耐水耐油剤による保護膜は、積層材製造時におけるロールとの摩擦による磨耗が極めて少なく、かつ、包装袋製造時における曲げ、伸び等の外的負荷によりクラックを生ぜず、その結果、前記耐水耐油剤による保護膜を設けた基剤を使用した包装袋が、従来のものと比較して、過酸化水素の基材フィルムへの接触、吸着、浸透に対し優れた耐性を有すると共にその表面を極めて良好に殺菌処理することができることを見出して本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の(a)〜(f)に示す発明を包含する。
(a) 基材フィルムの片面に、耐水耐油剤を含む過酸化水素保護膜を設け、他の面にバリア性薄膜層を設けたことを特徴とする過酸化水素バリア性フィルム。
(b) 耐水耐油剤が、アクリルエマルジョン系耐水耐油剤であることを特徴とする(a)の過酸化水素バリア性フィルム。
(c) バリア性薄膜層が、化学気相成長法による有機酸化珪素の蒸着膜、または真空蒸着法による無機酸化物の蒸着膜からなることを特徴とする(a)または(b)の過酸化水素バリア性フィルム。
(d) バリア性薄膜層にガスバリア性塗布膜を設けた過酸化水素バリア性フィルムであって、
前記ガスバリア性塗布膜が、一般式R1 nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、さらに、ゾル−ゲル法触媒、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物であることを特徴とする(a)〜(c)のいずれかの過酸化水素バリア性フィルム。
(e) 過酸化水素を用いた殺菌処理に付される包装材料に使用することを特徴とする(a)〜(d)のいずれかの過酸化水素バリア性フィルム。
(f) (a)〜(e)の過酸化水素バリア性フィルムにヒートシール性樹脂層を積層した積層材であって、前記ヒートシール性樹脂層を、過酸化水素バリア性フィルムのバリア性薄膜層、またはガスバリア性塗布膜を設けた面側に積層したことを特徴とする前記積層材。
本発明の過酸化水素ガスバリア性フィルムは、ロール等との接触や曲げ、伸び等という物理的負荷を受けても、その表面がほとんど摩耗せず、またクラックを生ずることがない。すなわち本発明の過酸化水素ガスバリア性フィルムは、それ自体が、過酸化水素等による白化現象や、過酸化水素等の浸透に対し、優れた耐性を有すると共に、積層材製造工程や製袋工程に付されても、前記耐性が低下しないという特徴と有する。したがって本発明により、ポリアミド系樹脂フィルムのように、過酸化水素等を使用する殺菌方式には不向きであったものを使用することができる、すなわち包装用材料を設計する際に、その設計選択の自由度を向上させることができる。
さらに本発明においては、基材の過酸化水素保護膜を設けた面とは別の面に、さらに、酸素ガスや水蒸気ガスの透過を阻止するバリア性薄膜層を設けることから、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを用いて、長期間にわたり内容物の保存性に優れた包装袋を製造することができる。
本発明の過酸化水素バリア性フィルムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の過酸化水素バリア性フィルムの層構成の一例を示す概略的断面図であり、図2は、図1に示す本発明の過酸化水素バリア性フィルムを使用して製造した積層材の層構成についてその一例を示す概略的断面図であり、図3は、図2に示す積層材を使用して製袋した包装用袋についてその一例の構成を示す概略的斜視図であり、図4は、上記の図3に示す本発明の包装用袋内に内容物を充填包装してなる包装製品についてその一例の構成を示す概略的斜視図である。
図1に示すように本発明の過酸化水素バリア性フィルムAは、基材フィルム1の一方の面に、耐水耐油剤を含む過酸化水素保護膜2を、他の面にバリア性薄膜層3を設けた構成からなることを基本構造とするものである。
次に、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを使用した積層材について例示すると、図2に示すように、図1の本発明の過酸化水素バリア性フィルムAのバリア性薄膜層面に、例えば、アンカーコート剤によるアンカーコート剤層、さらに、ポリオレフィン系樹脂等を溶融押出した溶融押出樹脂層、あるいはラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層等(図示せず)を介して、ヒートシール性樹脂層4を溶融押出ラミネート法あるいはドライラミネート法等により積層して積層材Bを製造することができる。
上記に挙げた例は、本発明の過酸化水素バリア性フィルム、およびそれを使用した積層材を例示したものであり、本発明は、これによって限定されるものではなく、例えば図示しないが、本発明においては、さらに、その使用目的、充填包装する内容物、流通経路、販売形態、用途等によって、他の基材を任意に積層して、種々の形態の積層材を設計して製造することができる。
次に、上記のような本発明の過酸化水素バリア性フィルムを使用した積層材を使用して製袋してなる包装用袋の構成について説明すると、かかる包装用袋としては、例えば、図3に示すように、上記の積層材B、Bを2枚用意し、その最内層に位置するヒートシール性樹脂層4、4の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールしてヒートシール部11、11、11を形成すると共に開口部12を形成して、三方シール型の液体充填包装用袋Cを製造することができる。
さらに本発明においては、図4に示すように、上記で製造した液体充填包装用袋Cを使用し、その開口部12から、例えば、醤油、ソース等の液状ないし粘体状の調味料等の内容物13を充填し、次いで、その開口部12をヒートシールして上部ヒートシール部14を形成して、本発明にかかる液体小袋包装体Dを製造することができる。
なお、上記の図4において、15は、例えば、IノッチあるいはVノッチ等の開封用切れ目を表すものである。
上記の例示は、本発明にかかる液体充填包装用袋、あるいは、液体小袋包装体についてその一例を例示したものであり、本発明は、これによって限定されるものではなく、例えば、液体充填包装用袋の形態としては、図示しないが、例えば、ピロー包装形態、ガセット包装形態、スタンディング(自立性)パウチ包装形態等の内容物に合った包装用袋形態を取り得るものである。
次に、本発明において、上記のような本発明の過酸化水素バリア性フィルム、それを使用した積層材等を構成する材料、製造法等について説明する。
1.基材フィルム
本発明の過酸化水素バリア性フィルムは、主に醤油、ソース、スープ等を充填包装する液体用小袋、餅を充填包装する小袋、生菓子等を充填包装する軟包装用袋、あるいは、ボイルあるいはレトルト食品等を充填包装する軟包装用袋等の飲食物等を充填包装する包装用容器として使用されるものであるから、基材フィルムとしては、優れた耐突き刺し強度と耐圧性とを有すると共に、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ、耐熱性を有し、過酸化水素保護膜を形成する条件等に耐え、過酸化水素保護膜の特性を損なうことなく良好に保持し得る樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。
このような性質を有する基材フィルムとして、具体的には、例えば、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂のフィルムないしシートを挙げることができる。
本発明において、上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、例えば、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、さらには、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種の樹脂のフィルムないしシートを製造し、さらに、要すれば、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。
本発明において、各種の樹脂のフィルムないしシートの膜厚としては、6〜100μm、より好ましくは、9〜50μmが望ましい。
なお、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤等を任意に使用することができ、さらには、改質用樹脂等も使用することができる。
また、本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムないしシートのバリア性薄膜層を設ける面には、後述するバリア性薄膜層との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けることができる。
上記の表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理を任意に施し、例えば、コロナ放電処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層等を形成して設けることができる。
上記の表面前処理は、各種の樹脂のフィルムないしシートと後述するバリア性薄膜との密接着性等を改善するための方法として実施するものであるが、上記の密接着性を改善する方法として、例えば、各種の樹脂のフィルムないしシートの表面に、予め、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
上記の前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
2.過酸化水素保護膜
本発明の過酸化水素バリア性フィルム等を形成する過酸化水素保護膜は、包装袋における基材フィルムへの過酸化水素等の接触、吸着、浸透を防止するという役割を有するものであるから、単に過酸化水素等に対する浸透等を防止するという性質を有するだけでなく、印刷工程やラミネート工程といった積層材製造時におけるロール等との摩擦による摩耗が少なく、さらに包装袋製造時における曲げや伸びといった外的負荷によりクラックが生じないという特質を有するものでなければならない。このような特質を有する過酸化水素保護膜は、紙等に耐水性や耐油性を付与するために使用される耐水耐油剤を使用して形成することができる。
上記耐水耐油剤として、具体的には、以下の耐水耐油剤1種または2種以上を混合して使用することができる。
(1)アクリルエマルジョン系耐水耐油剤
アクリルエマルジョン系耐水耐油剤としては、アクリル樹脂が水性媒体に分散し、エマルジョンを形成しているものであれば、特に限定されないが、基材に塗布し、乾燥した後に形成された耐水耐油剤層(過酸化水素保護膜)のガラス転移温度が40℃〜70℃となるようなものを使用することが好ましい。また、上記のアクリル樹脂としては、アクリル酸エステル、アクリル酸およびアクリル系モノマーを80重量%以上含有するモノマーを重合して得られる重合体を使用することができ、ここでアクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−エチルメタクリレート等を使用することができる。
本発明において好適に使用することのできるアクリルエマルジョン系耐水耐油剤としては、ジョンソンポリマー社製のDFCシリーズ、例えばDFC−3040やPDX−7326等が挙げられる。
(2)スチレン−ブタジエン(SB)系耐水耐油剤
スチレン−ブタジエン系耐水耐油剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体が水性媒体中に分散しているものであれば特に限定されないが、ガラス転移温度が−10℃〜50℃であるスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを使用することが好ましい。さらに前記スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの中でも、耐水性の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体の表面に結合しているカルボキシル基、スルホン酸基、ホスフィニル基等の酸基量と、共重合体ラテックスの水相中の酸基量との合計が、塩酸当量換算で、共重合体1g辺り0.4mg〜3.5mg当量であるものが好ましい。
上記のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスとしては、日本ゼオン(株)社製のニポールZ400Sが挙げられる。
(3)エチレン酢酸ビニル系耐水耐油剤
エチレン酢酸ビニル系耐水耐油剤としては、エチレン−酸化ビニル重合体ケン化物溶液を好適に使用することができる。そして前記エチレン−酸化ビニル重合体ケン化物溶液中のエチレン−酸化ビニル重合体としては、エチレン含量が20モル%〜60モル%であることが好ましく、ケン化度が90モル%以上であるものが好ましい。また上記溶液においては、溶媒として、水と、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等が挙げられ、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコールとの混合溶媒を使用することが好ましい。
なお上記エチレン−酸化ビニル重合体ケン化物溶液を耐水耐油剤として使用する場合、基材フィルムへの積層は、特開平9−277461号公報に記載の条件、すなわち以下の(1)、(2)の条件を満たすように基材フィルムに塗布および乾燥して積層するのが好ましい。
105<9・logη+T<145 ・・・・・(1)
12・logα+β<40 ・・・・・(2)
(ただし、ηはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物溶液の基材フィルム面への塗布時の溶液粘度(cps)、Tはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物溶液の基材フィルム面への塗布後の乾燥温度(℃)、αは基材の秤量(g/m2)、βはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物溶液の乾燥後の基材への着量(g/m2)をそれぞれ表わす。)
(4)アクリロニトリル−ブタジエン(NB)系耐水耐油剤、ポリエチレン系耐水耐油剤、塩化ビニル系耐水耐油剤、塩化ビニリデン系耐水耐油剤
アクリロニトリル−ブタジエン(NB)系耐水耐油剤としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体をトルエンなどの有機溶媒に溶解したものを使用することができる。さらにポリエチレン系耐水耐油剤、塩化ビニル系耐水耐油剤、塩化ビニリデン系耐水耐油剤としては、ポリエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンを、例えばイソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、水等、あるいはこれらの混合溶液等で、1〜30重量%になるように希釈した溶液を使用することができる。
(5)シリコン系耐水耐油剤
シリコン系耐水耐油剤としては、シリコン樹脂(主にポリジメチルシロキサン)、あるいはその溶液、水性エマルジョンを使用することができる。具体的には、チッソ(株)社製のFM0711、FM0721、FM0725、PS583、信越化学(株)社製のKP−600、X−62−7100、X−62−7112、X−62−7140、X−62−7144、X−62−7153、X−62−7157、X−62−7158、KNS−5200、X−62−7166、X−62−7168、X−62−7177、X−62−7180、X−62ー7181、X−62−7192、X−62−7200、X−62−7203、X−62−7205、X−62−7931、ゴールドシュミット社製のRC149、RC300、RC450、RC802、RC710、RC720、ダイセルUCB(株)社製のEBECRYL350、EBECRYL1360等が挙げられる。
(6)アクリルエマルジョンとワックスエマルジョンの混合物
アクリルエマルジョンとワックスエマルジョンの混合物としては、アクリル系エマルジョンとワックス系エマルジョンとの混合物を好適に使用することができる。そしてアクリル系エマルジョンとしては、例えば、アクリルポリマー、アクリル−スチレンコポリマー等の共重合体エマルジョンや自己架橋型アクリル系共重合体エマルジョン等の各種エマルジョンを使用することができ、具体的には、スチレンおよびスチレン誘導体、アクリル酸(メタクリル酸)およびアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステルなどを共重合したアクリル系コポリマーを使用することができる。また、ワックス系エマルジョンとしては、パラフィン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、マイクロクリスタリン系ワックス等の公知のワックスエマルジョンを使用することができるが、2種以上のワックス系エマルジョンを混合して使用してもよい。上記アクリル系エマルジョンとワックス系エマルジョンの配合は、アクリル系エマルジョン100重量部に対してワックス系エマルジョン1〜20重量部であるのが好ましい。
(7)カルボキシ基含有の非ハロゲン系樹脂水溶液と、非ハロゲン系のアクリル系樹脂エマルジョンと、ワックス系エマルジョンとの混合物
カルボキシ基含有の非ハロゲン系樹脂水溶液として、不飽和カルボン酸単量体と水に難溶または不溶の疎水性単量体とを必須成分として含む単量体混合物を、有機溶剤または水と有機溶剤の混合溶剤中で溶液重合し、その後、樹脂中のカルボキシル基の一部ないし全てをアンモニウム塩および/またはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩とすると共に、有機溶剤をストリッピングして水に置換することによって得られるカルボキシル基含有樹脂水溶液を使用することができる。前記不飽和カルボン酸単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸等を挙げることができ、また水に難溶又は不溶の疎水性単量体としては炭素数4以上のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、炭素数4以上のアルキルビニルエーテル等を挙げることができる。
非ハロゲン系のアクリル系樹脂エマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体を、乳化剤を用いて水中で乳化重合して得られる非ハロゲン系のアクリル系樹脂エマルジョンであり、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外にこれらと共重合可能な単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン等も使用することができる。
ワックス系エマルジョンとしては、例えば石油系パラフィンワックス、動植物系ワックス、石炭由来のワックス、低分子量ポリエチレン等の固形ワックス等から選択されるワックス類を乳化したものを使用することができる。
上記の混合物中における各成分の含有量は、カルボキシ基含有の非ハロゲン系樹脂水溶液と、非ハロゲン系のアクリル系樹脂エマルジョンとの固形分比が10〜90重量%対90〜10重量%であり、ワックス系エマルジョンの固形分量は、上記樹脂水溶液とアクリル系樹脂エマルジョンの合計固形分重量に対して、5重量%以上20重量%未満であることが好ましい。
本発明において好適に使用することのできる上記混合物としては、青木油脂工業社製のOR−20、PA−1等が挙げられる。
(8)フッ素系耐水耐油剤
フッ素系耐水耐油剤として、フッ素系樹脂またはフッ素系樹脂エマルジョンを使用する。フッ素系樹脂としては、限定されないが、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシ行重合体樹脂、四フッ化エチレンと六フッ化プロピレン共重合体樹脂、エチレン−四フッ化エチレン樹脂、三フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、またはフッ化ビニル樹脂を使用することができる。
本発明において好適に使用することのできるフッ素系耐水耐油剤としては、理研グリーン社製のインプレスFP−200等が挙げられる。
本発明における過酸化水素保護膜は、上記の耐水耐油剤を、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことにより形成することができる。そして、そのコーティング量としては、乾燥状態で1g/m2〜16g/m2であることが好ましく、特に2g/m2〜8g/m2が望ましい。コーティング量が、1g/m2未満、さらには2g/m2未満であると、積層材製造時におけるロールとの接触や包装袋製造時における曲げや伸び等の外的負荷により、上記保護膜が摩耗したり、保護膜にクラックが生ずることから、包装袋を製造した場合に、過酸化水素等の基材フィルムへの接触、吸着、浸透を有効に防止することができない。また上記コーティング量が16g/m2、さらには8g/m2を超えるとコストが上昇することから好ましくない。
3.バリア性薄膜層
次に、本発明の過酸化水素バリア性フィルム等を構成するバリア性薄膜層について説明する。本発明においては、バリア性薄膜層は、化学気相成長法または物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜により形成することができる。
(1)化学気相成長法による蒸着膜の形成
化学気相成長法として、具体的には、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(chemical Vapor Deposition法、CVD法)を用いて無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
さらに具体的には上記の樹脂のフィルムないしシートの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キヤリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、さらに酸素を供給ガスとして使用し、かつ低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができるが、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るために、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
具体的に、上記のプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその一例を例示して説明する。図5は、上記のプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその槻要を示す低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。
図5に示すように、本発明においては、プラズマ化学気相成長装置21の真空チヤンバー22内に配置された巻き出しロール23から基材フィルム1を繰り出し、さらに、その基材フィルム1を、補助ロール24を介して所定の速度で冷却・電極ドラム25周面上に搬送する。
本発明においては、ガス供給装置26,27および原料揮発供給装置28から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガス等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しながら原料供給ノズル29を通して真空チヤンバー22内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム25周面上に搬送された基材フィルム1の上に、グロー放電プラズマによってプラズマを発生させ、これを照射して、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成し、製膜化する。
本発明においては、その際に、冷却・電極ドラム25は、チヤンバー外に配置されている電源31から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム25の近傍には、マグネット32を配置してプラズマの発生が促進されている。次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム1をガイドロール33を介して巻き取りロール34に巻き取って、無機酸化物の蒸着膜を有する樹脂フィルムないしシートを製造することができる。
上記の例示は、その一例を例示するものであり、これによって本発明は限定されるものではない。
本発明においては、無機酸化物の蒸着膜としては、無機酸化物の蒸着膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
上記において、真空チヤンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1.33×10-1〜1.33×10-8mbar、好ましくは、真空度1.33×10-3〜1.33×10-7mbarに調整することが好ましい。
また、原料揮発供給装置においては、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを、原料供給ノズルを介して真空チヤンバー内に導入する。
この場合、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることができ、例えば、有機珪素化合物と酸素ガスと不活性ガスとの混合比を1:6:5〜1:17:14とすることができる。
一方、冷却・電極ドラムには、電極から所定の電圧が印加されているため、真空チヤンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成され、このグロー放電プラズマは、混合ガス中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、基材フィルムを一定速度で搬送させ、グロー放電プラズマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
なお、このときの真空チヤンバー内の真空度は、1.33×10-1〜1.33×10-4mbar、好ましくは、真空度1.33×10-1〜1.33×10-2mbarに調整することが好ましく、また、基材フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは、50〜150m/分に調整することが望ましい。
また、上記のプラズマ化学気相成長装置において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、基材フィルム上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOxの形で薄膜状に形成されるので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となる。従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のガスバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高いものとなり、薄い膜厚で十分なガスバリア性を得ることができる。
また、本発明においては、SiOxプラズマにより基材フィルム表面が、清浄化され、基材フィルム表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなるという利点を有するものである。
さらに、上記のように酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1.33×10-1〜1.33×10-4mbar、好ましくは、1.33×10-1〜1.33×10-2mbarに調整することから、従来の真空蒸着法による蒸着膜形成時の真空度(1.33×10-4〜1.33×10-5mbar)に比べて低真空度であることから、基材フィルムを原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定し、製膜プロセスが安定するものである。
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式:SiOx(式中、xは0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。
上記の酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式:SiOx(式中、xは1.3〜1.9の数を表す)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。
上記において、xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
また、上記の酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、これに、さらに、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または、その2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有することが好ましい。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、さらに、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。
具体例を挙げると、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。
上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。
上記の化合物が、酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有率としては、0.1〜50%、好ましくは、5〜20%が好ましい。
上記において、含有率が、0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げ等により、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になり、また、50%を越えると、ガスバリア性が低下して好ましくないものである。
さらに、本発明においては、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が、酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少させることが好ましく、これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面においては、上記の化合物等により耐衝撃性等を高められ、他方、基材との界面では上記化合物の含有量が少ないため、基材フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜について、例えば、X線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析する方法を利用して、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことより、上記のような物性を確認することができる。
また、本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜の膜厚としては、膜厚50Å〜4000Åであることが望ましく、具体的には、その膜厚としては、100〜1000Åが望ましい。1000Å、さらには、4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、また、100Å、さらには、50Å未満であると、ガスバリア性の効果を期待できない。
蒸着膜の膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。
また、上記の酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくすること、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸著する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
次に、本発明において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を使用することができる。
本発明において、上記のような有機珪素化合物の中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。
また、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
(2)物理気相成長法による蒸着膜の形成
本発明において、無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、真空蒸着法、スバッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)を用いて形成することができる。
具体的には、金属の酸化物を原料とし、これを加熱して樹脂のフィルムないしシートの上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて樹脂のフィルムないしシートの上に蒸着する酸化反応蒸着法、さらに、酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて無機酸化物の非結晶の薄膜を形成することができる。
上記において、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。
上記の無機酸化物の蒸着膜としては、金属の酸化物の蒸着膜が挙げられ、具体的には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましいものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属が挙げられる。
上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物ということができ、その表記は、例えば、SiOx、AlOx、MgOx等のようにMOx(式中、Mは、金属元素を表し、xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる)で表される。
また、上記のxの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0〜2、アルミニウム(Al)は0〜1.5、マグネシウム(Mg)は0〜1、カルシウム(Ca)は0〜1、カリウム(K)は0〜0.5、スズ(Sn)は0〜2、ナトリウム(Na)は0〜0.5、ホウ素(B)は0〜1.5、チタン(Ti)は0〜2、鉛(Pb)は0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は0〜1.5の範囲の値をとることができる。
上記において、x=0の場合、完全な金属であり、透明でないので使用することができない。また、xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。
本発明において、望ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)が使用され、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
本発明において、上記のような無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、使用する金属、または、金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜4000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。
また、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属、または、金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
次に、本発明において、上記の無機酸化物の蒸着膜を形成する方法について説明する。図6は、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略構成図である。
図6に示すように、巻き取り式真空蒸着装置40の巻き取りチヤンバー41の中で、巻き出しロール42から繰り出す基材フィルム1は、ガイドロール43,44を介して、冷却したコーティングドラム45に案内される。
上記の冷却したコーティングドラム上に案内された樹脂のフィルムないしシートの上に、るつぼ52で熱せられた蒸着源46、例えば、金属アルミニウム、あるいは酸化アルミニウム等を蒸発させ、さらに、必要ならば、酸素ガス吹出口47より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク48を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を樹脂のフィルムないしシート上に形成する。
次いで、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム1を、ガイドロール49,50を介して巻き取りロール51に巻き取って、無機酸化物の蒸着膜を有する樹脂のフィルムないしシートを製造することができる。
また、巻き取りチヤンバーの真空度としては、100 〜10-5mbar、好ましくは、10-1〜10-4mbarが望ましい。また、蒸着チヤンバーの真空度としては、酸素ガスの導入前においては、10-2〜10-8mbar、好ましくは、10-3〜10-7mbarが望ましく、酸素ガスの導入後においては、10-1〜10-6mbar、好ましくは、10-2〜10-5mbarが望ましい。また、可撓性プラスチック基材の搬送速度としては、10〜800m/分、好ましくは、50〜600m/分が望ましい。
上記の例示は、その一例を例示するものであり、これによって本発明は限定されるものではない。
なお、本発明においては、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず、第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、同様にして、該無機酸化物の蒸着膜の上に、さらに、無機酸化物の蒸着膜を形成するか、あるいは、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、これを2連に連接し、連続的に、無機酸化物の蒸着膜を形成することにより、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
上記のように化学気相成長法、または物理気相成長法により基材に無機酸化物の蒸着膜を形成した後、さらに前記蒸着膜をグロー放電処理、プラズマ処理、またはマイクロウェーブ処理してもよい。これにより蒸着膜と以下のガスバリア性塗布膜との密着性がさらに向上する。
4.ガスバリア性塗布膜
本発明においては、基材フィルムに設けたバリア性薄膜層に、さらにガスバリア性塗布膜を設けることが好ましい。
上記のガスバリア性塗布膜は、アルコキシドと水溶性高分子を含有するものであり、具体的には、ガスバリア性塗布膜として、一般式:R1 nM(OR2mで表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールを含有する組成物をゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を使用する。
本発明に好適に使用できるアルコキシドは、一般式:R1 nM(OR2m(式中、Mは金属原子、R1、R2が炭素数1〜8の有機基、nは0以上、mは1以上の整数、n+mはMの原子価を表す)で表されるものであり、このアルコキシドの部分加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができる。なお上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、およびその混合物であってもよい。また、加水分解の縮合物は、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のものを表しており、2〜6量体が通常使用される。
上記一般式:R1 nM(OR2mにおける、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等が使用でき、好ましくはケイ素である。これらのアルコキシドの用い方としては、単独または2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
有機基R1の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等のアルキル基等が挙げられる。また、有機基R2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。同一分子中にこれらアルキル基は同一でであっても、異なってもよい。
アルコキシドの中でも、MがSiであるアルコキシシランが好ましく、アルコキシシランはSi(ORa4で表され、Rは低級アルキル基である。Raとしてはメチル基、エチル基、N−プロピル基、N・ブチル基等が用いられ、アルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(OC374、テトラブトキシシランSi(OC494等が挙げられる。
また、アルキルアルコキシシランRb mSi(ORc4-mを用いることができる(mは1、2、3の整数)。Rb、Rcとしては、メチル基、エチル基等が用いられ、アルキルアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン(CH32Si(OCH32、ジメチルジエトキシシラン(CH32Si(OC252等があげられる。これらのアルコキシシラン、アルキルアルコキシシランは、単独または2種以上を混合しても用いることができる。
さらに、アルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的にはポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン等が挙げられる。
上記アルコキシドの中で、MがZrであるジルコニウムアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシジルコニウムZr(O−CH34、テトラエトキシジルコニウムZr(O−C254、テトラiプロポキシジルコニウムZr(O−Iso−C374、テトラnブトキシジルコニウムZr(O−C494等を好適に使用できる。
上記アルコキシドの中で、MがTiであるチタニウムアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシチタニウムTi(O−CH34、テトラエトキシチタニウムTi(O−C254、テトライソプロポキシチタニウムTi(O−Iso−C374、テトラnブトキシチタニウムTi(O−C494等を好適に使用できる。
上記アルコキシドの中で、MがAlであるアルミニウムアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシアルミニウムAl(O−CH34、テトラエトキシアルミニウムAl(O−C254テトライソプロポキシアルミニウムAl(O−Iso−C374、テトラnブトキシアルミニウムAl(O−C494等を好適に使用できる。
2種以上のこれらのアルコキシドを混合して用いてもよい。特にアルキキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られる積層フィルムの靭性、耐熱性等が向上し、廷伸時のフィルムの耐レトルト性等の低下が回避できる。ジルコニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100重量部に対して10重量部以下の範囲であり、好ましくは約5重量部である。10重量部を上回ると、形成される複合ポリマーがゲル化しやすくなり、複合ポリマーの脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際に複合ポリマー層が剥離しやすくなる。
また特にアルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られる皮膜の熱伝導率が低くなり、基材フィルムの耐熱性が著しく向上する。チタニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100重量部に対して5重量部以下の範囲であり、好ましくは約3重量部である。5重量部を超えると形成される複合ポリマーの脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際に複合ポリマーが剥離しやすくなる。
本発明においては、上記アルコキシドと共にシランカップリング剤が併用されることが好ましい。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランが用いられ得る。特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適である。それには、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、およびβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランがある。このようなシランカップリング剤は2種以上を混合して用いてもよい。このようなシランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲内である。20重量部以上を使用すると形成される複合ポリマーの剛性と脆性とが大きくなり、複合ポリマー層の絶縁性および加工性が低下する。
本発明では、ガスバリア性塗布膜形成用の組成物(塗工液)に、水溶性高分子として、ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールコポリマーが含まれる。ポリビニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコールコポリマーを組み合わせることによって、得られる塗布膜のガスバリア性、耐水性、耐候性等が著しく向上する。さらに、ポリビニルアルコールとエチレン・ビニルアルコールコポリマーとを組み合わせた積層フィルムは、ガスバリア性、耐水性、および耐候性に加えて耐熱水性および熱水処理後のガスバリア性に優れる。
ポリビニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコールコポリマーの組み合わせを採用する場合のそれぞれの含有重量比は、10:0.05〜10:6であることが好ましく、約10:1がさらに好ましい。
上記ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールコポリマーの合計の含有量は、上記アルコキシドの合計量100重量部に対して5〜600重量部の範囲であり、好ましくは約50〜400重量部である。600重量部を上回ると複合ポリマーの脆性が大きくなり、得られる積層フィルムの耐水性および耐候性も低下する。5重量部を下回るとガスバリア性が低下する。
本発明においては、上記の組成物(塗工液)を蒸着膜上に塗布し、その組成物をゾル−ゲル法により重縮合して塗布膜を得る。ゾル−ゲル法触媒、主として重縮合触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三級アミンが用いられる。例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等があり、特にN−N−ジメチルベンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、およびシランカップリング剤の合計量100重量部当り、0.01〜1重量部、好ましくは約0.03重量部である。
本発明においては、上記の組成物は第三級アミンに代えて、またはさらに酸を含んでいてもよい。酸は、ゾル−ゲル法の触媒、主としてアルコキシドやシランカップリング剤等の加水分解のための触媒として用いられる。酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、ならびに酢酸、酒石酸等の有機酸が用いられる。酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.001〜0.05モルであり、好ましくは約0.01モルである。
本発明においては、上記ガスバリア性塗布膜形成用組成物中に、アルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは0.8〜2モルの割合の水を含んでなることが好ましい。水の量が2モルを上回ると、上記アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、さらに、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなる。多孔性のポリマーは、基材フィルムのガスバリア性を改善することができない。水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる。
また、ガスバリア性塗布膜形成用組成物は、有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等が用いられる。
ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールコポリマーは、上記のアルコキシドやシランカップリング剤等を含む組成物(塗工液)中で溶解した状態であることが好ましく、そのため上記有機溶媒の種類が適宜選択される。ポリビニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコールコポリマーの組み合わせを採用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコールコポリマーは、例えば、ソアノール(商品名)として市販されている。上記有機溶媒の使用量は、通常上記アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールコポリマー、酸、およびゾル−ゲル法触媒の合計量100重量部当り30〜500重量部である。
本発明のガスバリア性積層フィルムにおいて、ガスバリア性塗布膜の形成方法について以下に説明する。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合してガスバリア性塗工液を調製する。ガスバリア性塗工液中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性塗工液を通常の方法で塗布し、乾燥する。乾燥により、上記アルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびビニルアルコールポリマーの重縮合がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。好ましくは上記の操作を繰り返して、複数の複合ポリマー層を積層する。
最後に、上記塗工液を塗布したフィルムを通常の環境下、50℃〜300℃、好ましくは、70℃〜200度の温度で、0.005分間〜60分間、好ましくは、0.01分間〜10分間、加熱・乾燥することにより、縮合が行われ、ガスバリア性塗布膜を形成することができる。
本発明においては、ビニルアルコールポリマーの代わりに、エチレン・ビニルアルコールコポリマーまたはエチレン・ビニルアルコールコポリマーとポリビニルアルコールとの両者を用いた組成物を使用してもよい。エチレン・ビニルアルコールコポリマーとポリビニルアルコールとの両者を用いた積層フィルムは、ボイル処理、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリア性がさらに向上する。
ガスバリア性塗布膜を形成する他の態様として、熱水処理後のガスバリア性を向上させるため、以下のような積層フィルムを形成することが好ましい。
すなわち、予め基材フィルムの少なくとも片面に、ポリビニルアルコールを含有する組成物を塗工して第1の複合ポリマー層を形成し、次いで、その塗工面上に上記エチレン・ビニルアルコールコポリマーを含有する組成物を塗工して第2の複合ポリマー層をさらに形成する。そのことにより、得られる積層フィルムのガスバリア性が向上する。
さらに、本発明においては、ガスバリア性塗布膜を、基材フィルム上に複数層形成してもよい。ガスバリア性塗布膜を複数層設けることにより、一層ガスバリア性の向上を図ることができる。
ガスバリア性塗布膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーター等のロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイッピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗装手段により、1回あるいは複数回の塗装で、乾焼膜厚が0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μmの本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
また、必要ならば、本発明のガスバリア性組成物を塗布する際に、予め、無機酸化物の蒸着膜の上に、プライマー剤等を塗布することもできる。
また、本発明の態様においては、基材フィルム上に蒸着層とガスバリア性塗布膜を設けた後、さらに蒸着層を設け、その蒸着層上にガスバリア性塗布膜を上記と同様にして形成してもよい。このように積層数を増やすことにより、より一層ガスバリア性に優れる積層フィルムを実現できる。
5.本発明の過酸化水素バリア性フィルムを使用した積層材
次に本発明の過酸化水素バリア性フィルムを使用した積層材に使用する材料、製造方法について説明する。
本発明の積層材は、過酸化水素バリア性フィルムを過酸化水素保護膜基材、バリア性基材等として使用し、これと、他のプラスチックフィルム、紙基材、セロハン、織布ないし不織布、ガラス板等の種々の基材の1種ないし2種以上と任意に積層したものである。
上記プラスチックフィルム等の基材において、積層材の最内層等を形成するものとして、例えば、熱によって溶融し相互に融着し得るヒートシール性樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂のフィルムないしシートが挙げられる。上記のフィルムないしシートは、その樹脂を含む組成物によるコーティング膜の状態で使用することができる。そしてその膜もしくはフィルムないしシートの厚さとしては、5μmないし300μmが好ましく、さらには10μmないし100μmが望ましい。
さらに上記の積層材を構成するプラスチックフィルム等の基材として、例えば、積層材の基本素材となるものとして、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等の強靱な樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、未延伸フィルム、あるいは、1軸方向または2軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができ、そのフィルムの厚さとしては、5μmないし100μm、好ましくは、10μmないし50μmが望ましい。
また上記の積層材を構成する基材としては、例えば、紙層を構成する各種の紙基材を使用することができる。上記の紙基材は、積層材に賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものであり、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙等の紙基材等を使用することができる。上記の紙基材としては、坪量約80〜600g/m2のもの、好ましくは坪量約100〜450g/m2のものを使用することが望ましい。
さらに、上記の積層材を構成する材料として、例えば、水蒸気、水等のバリア性を有する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂のフィルムないしシート、あるいは、酸素、水蒸気等に対するバリア性を有するポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ナイロンMXD6樹脂等の樹脂のフィルムないしシート、樹脂に顔料等の着色剤、その他所望の添加剤を加えて混練してフィルム化してなる遮光性を有する各種の着色樹脂のフィルムないしシート等を使用することができる。これらの材料は、1種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。上記のフィルムないしシートの厚さとしては、任意であるが、通常、5μmないし300μm、さらには、10μmないし100μmが望ましい。
なお、本発明においては、通常、上記の積層材は各種の用途に適用される場合、物理的にも化学的にも過酷な条件におかれることから、上記の積層材には、厳しい条件が要求され、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性等の種々の条件が要求され、このために、本発明においては、上記のような諸条件を充足する材料を任意に選択して使用することができる。
次に本発明の積層材の製造方法について説明すると、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを構成する基材フィルムのバリア性薄膜層面やガスバリア性塗布膜面に、例えば、ラミネート用接着剤層を形成し、該ラミネート用接着剤層等を介して、例えば、ヒートシール性樹脂層等を構成するプラスチックチフィルム等の所望の基材をドライラミネート積層法を用いて積層することにより、種々の形態からなる積層材を製造することができる。
あるいは、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを構成する基材フィルムのバリア性薄膜層面やガスバリア性塗布膜面に、例えば、アンカーコート剤層を形成し、該アンカーコート剤層等を介して、各種の樹脂等を溶融押出して、例えば、ヒートシール性樹脂層等を構成するプラスチックチフィルム等の所望の基材を積層する押出ラミネート積層法を用いて積層することにより、各種の形態からなる積層材を製造することができる。
上記のような積層を行う際に、積層面の基材面には、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理等の公知の前処理を任意に行うことができる。
なお本発明においては、上記の積層材を構成するいずれかの層間に所望の印刷模様層を形成することができる。
本発明の積層材は、包装用材料、光学部材、太陽電池モジュール用保護シート、有機ELディスプレイ用保護フィルム、フィルム液晶ディスプレイ用保護フィルム、ポリマーバッテリー用包材、または、アルミ包装材料等の種々の用途に使用することができる。
6.本発明の積層材を使用した包装容器
次に本発明の積層材の使用例として、包装用容器を例にして説明する。
本発明においては、包装用容器として、例えば、上記の積層材を2枚用意し、その最内層に位置するヒートシール性樹脂層の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部の三方をヒートシールしてシール部を形成すると共に上方に開口部を設けて、三方シール型の軟包装用容器を製造することができる。さらに上記で製造した三方シール型の軟包装用容器の開口部から、例えば、飲食品等の内容物を充填し、次いで、上方の開口部をヒートシールして上方のシール部等を形成し、さらに、必要に応じて、例えば、ボイル処理、レトルト処理等を施して、種々の形態からなる包装製品を製造することができる。
なお上記の例示は本発明を限定するものではなく、その目的、用途等により、軟包装用袋、液体紙製容器、紙缶等の種々の形態の包装用容器を製造することができる。
次に、本発明の積層材を殺菌処理し、製袋し、包装材料に内容物を充填する一連の方法について説明すると、殺菌充填包装方式において、殺菌充填包装機内の積層材を供給する上流側で、まず、積層材を予備加熱し、次いで、過酸化水素水を加熱気化させた後に凝縮させて生成した過酸化水素ミストを上記の予備加熱した積層材の表面に供給して上記の積層材の表面に過酸化水素ミストを接触させ、しかる後、上記の過酸化水素ミストが接触した積層材を乾燥させて殺菌処理を行い、次いで、殺菌処理した積層材を使用して、殺菌充填包装機内で上記のように製袋、充填、包装等の工程を経て、包装製品を製造することができる。上記の例は、その一例であり、本発明は、これによって限定されるものではない。
本発明の包装材料を使用して製造した包装用容器は、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品等の物品の充填包装に使用されるものであり、特に、醤油、ソース、スープ等を充填包装する液体用小袋、餅を充填包装する小袋、生菓子等を充填包装する軟包装用袋、あるいは、ボイルあるいはレトルト食品等を充填包装する軟包装用袋等の飲食物等を充填包装する包装用容器として有用なものである。
上記の本発明について以下に実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
[実施例1]
1.本発明の過酸化水素バリア性フィルムの製造
(1)バリア性薄膜層の形成
基材フィルムとして、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカONBC)を使用し、まず、上記の2軸延伸ナイロンフィルムをプラズマ化学蒸着装置の送り出しロールに装着した。次いで、これを繰り出し、その2軸延伸ナイロンフィルムに、下記の蒸着条件により、膜厚100Åの有機酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:4.0:1.0(単位:slm)
到達圧力;5.0×10-5mbar
製膜圧力;7.0×10-2mbar
ライン速度;150m/min
パワー;35kW
(2)過酸化水素保護膜の形成
上記2軸延伸ナイロンフィルムの有機酸化珪素を積層した面の背面に、耐水耐油剤として、ジョンソンポリマー社製のDFC−3040をグラビアロールコート法で、乾燥状態で4g/m2となるように塗工し、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを製造した。
2.本発明の過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材の製造
上記で製造した過酸化水素バリア性フィルムの有機酸化珪素の蒸着膜面に、グラビア印刷方式により、文字、図形、記号、絵柄等からなる所定の印刷模様を印刷して印刷模様層を形成した。次に、前記印刷模様層上に二液硬化型のポリウレタン系のドライラミネート用接着剤を、グラビアコート法で、乾燥状態で4g/m2となるように塗工し、その接着剤面に対向するように、厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレン(出光:LS722CN)と貼り合わせ、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材を製造した。
[実施例2]
1.本発明の過酸化水素バリア性フィルムの製造
(1)バリア性薄膜層の形成
基材フィルムとして、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカONBC)を使用し、まず、上記の2軸延伸ナイロンフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着した。次いでこれを繰り出し、その2軸延伸ナイロンフィルムのコロナ放電処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、以下の蒸着条件により、膜厚約100Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
酸素ガス導入後の蒸着チヤンバー内の真空度:2×10-4mbar
巻き取りチヤンバー内の真空度:2×10-2mbar
電子ビーム電力:25kW
フィルムの搬送速度:240m/分
蒸着面:コロナ放電処理面
(2)過酸化水素保護膜の形成
上記2軸延伸ナイロンフィルムの酸化アルミニウムを積層した面の背面に、耐水耐油剤として、ジョンソンポリマー社製のPDX−7326をグラビアロールコート法で、乾燥状態で4g/m2となるように塗工し、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを製造した。
2.本発明の過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材の製造
上記「[実施例2]の1.本発明の過酸化水素バリア性フィルムの製造」で製造した過酸化水素バリア性フィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材を製造した。
[実施例3]
1.本発明の過酸化水素バリア性フィルムの製造
(1)バリア性薄膜層の形成
基材フィルムとして、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカONBC)を使用し、まず、上記の2軸延伸ナイロンフィルムをプラズマ化学蒸着装置の送り出しロールに装着した。次いで、これを繰り出し、その2軸延伸ナイロンフィルムに、下記の蒸着条件により、膜厚100Åの有機酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:4.0:1.0(単位:slm)
到達圧力;5.0×10-5mbar
製膜圧力;7.0×10-2mbar
ライン速度;150m/min
パワー;35kW
(2)ガスバリア性塗布膜の形成
上記有機酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧8.0×10-5mbar、処理速度100m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、有機酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
他方、下記の(表1)に示す組成に従って、調製した組成a.のポリビニルアルコール水溶液、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート、シランカップリング剤、イソプロピルアルコール、0.5N塩酸水溶液、イオン交換水からなる加水分解液を加え、充分に攪拌し、無色透明のバリア塗工液を得た。
Figure 2009039904
次に、上記の(1)で形成した有機酸化珪素の蒸着膜のプラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成し、ガスバリア性塗布膜を有する本発明の透明ガスバリア性フィルムを製造した。
(3)過酸化水素保護膜の形成
上記2軸延伸ナイロンフィルムの有機酸化珪素を積層した面の背面に、耐水耐油剤として、ジョンソンポリマー社製のDFC−3040をグラビアロールコート法で、乾燥状態で4g/m2となるように塗工し、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを製造した。
2.本発明の過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材の製造
上記「[実施例3]の1.本発明の過酸化水素バリア性フィルムの製造」で製造した過酸化水素バリア性フィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、本発明の過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材を製造した。
[比較例1]
過酸化水素保護膜を形成しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法により、過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材を製造した。
[比較例2]
厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカON)のコロナ放電処理面に、グラビア印刷方式により、文字、図形、記号、絵柄等からなる所定の印刷模様を印刷して、印刷模様層を形成した。
次に、前記印刷模様層上に二液硬化型のポリウレタン系のドライラミネート用接着剤を、グラビアコート法で、乾燥状態で4g/m2となるように塗工し、その接着剤面に対向するように、厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレン(出光:LS722CN)と貼り合わせ、過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材を製造した。
[比較例3]
バリア性薄膜層、ガスバリア性塗布膜を形成しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法により、過酸化水素バリア性フィルムを用いた積層材を製造した。
[実験例]
上記の実施例1〜3で製造した積層材と、上記の比較例1〜3で製造した積層材について、下記のデータを測定した。
1.酸素透過度の測定
温度23℃、湿度90%RHの条件(JIS規格 K7126)で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN2/20)〕にて測定した。
2.水蒸気透過度の測定
温度40℃、湿度90%RHの条件(JIS規格 K7129)で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。
3.残留過酸化水素量の測定
上記実施例1〜3、および比較例1〜3で製造した積層材に過酸化水素水のミストを吹き付け、次いで、加熱エアーにて乾燥後、その積層材10cm2を水100mlに浸漬し、次いで、その水に溶出した過酸化水素濃度を酸素電極法にて測定した。
上記の実験結果を下記の表2に示す。
Figure 2009039904
上記(表2)において、酸素透過度の単位は、[cc/m2 /day・23℃・90%RH]であり、水蒸気透過度の単位は、[g/m2 /day・40℃・90%RH]であり、残留過酸化水素濃度の単位は、[ppm]である。
上記の表2に示す結果より明らかなように、本発明の積層材は、残留過酸化水素が殆ど認められず、また、酸素透過度および水蒸気透過度において良好であったが、これに対し、過酸化水素保護膜を形成しなかった比較例1、2の積層材は、残留過酸化水素濃度が著しく高いことが確認された。
すなわち過酸化水素保護膜を設けた実施例1の積層材においては、残留過酸化水素濃度は、3.0ppmと低かったのに対し、過酸化水素保護膜を設けた比較例1、2の積層材は、残留過酸化水素濃度が検出限界である50ppmを超え、本願発明の積層材は過酸化水素の浸透に対する優れた耐性を有することが確認された。
さらにガスバリア性層とガスバリア性塗布膜を設けた実施例3の積層材においては、酸素透過度、水蒸気透過度が、それぞれ0.3、1.6と低かったのに対し、ガスバリア性層のない比較例3の積層材は、酸素透過度が検出限界である100を超えると共に、水蒸気透過度が7.0と高く、本発明の積層材は、優れたガスバリア性を有することが確認された。
本発明の過酸化水素バリア性フィルムの層構成の一例を示す概略的断面図である。 図1に示す本発明の過酸化水素バリア性フィルムを使用して製造した積層材の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。 図2に示す積層材を使用して製袋した包装用袋についてその一例の構成を示す概略的斜視図である。 図3に示す本発明の包装用袋内に内容物を充填包装してなる包装製品についてその一例の構成を示す概略的斜視図である。 低温プラズマ化学気相成長装置の一例を示す概略的構成図である。 巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 基材フィルム
2 過酸化水素保護膜
3 バリア性薄膜層
4 ヒートシール性樹脂層
11 ヒートシール部
12 開口部
13 内容物
14 上部ヒートシール部
15 開封用切れ目
21 プラズマ化学気相成長装置
22 真空チヤンバー
23 巻き出しロール
24 補助ロール
25 冷却・電極ドラム
26,27 ガス供給装置
28 原料揮発供給装置
29 原料供給ノズル
30 グロー放電プラズマ
31 電源
32 マグネット
33 ガイドロール
34 巻き取りロール
35 真空ポンプ
40 巻き取り式真空蒸着装置
41 巻き取りチヤンバー
42 巻き出しロール
43,44 ガイドロール
45 コーティングドラム
46 蒸着源
47 酸素ガス吹出口
48 マスク
49,50 ガイドロール
51 巻き取りロール
52 るつぼ
53 蒸着チャンバー
A 過酸化水素バリア性フィルム
B 積層材
C 液体充填包装用袋
D 液体小袋包装体

Claims (8)

  1. 基材フィルムの片面に、耐水耐油剤を含む過酸化水素保護膜を設け、他の面にバリア性薄膜層を設けたことを特徴とする過酸化水素バリア性フィルム。
  2. 基材フィルムが、2軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素バリア性フィルム。
  3. 耐水耐油剤が、アクリルエマルジョン系耐水耐油剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の過酸化水素バリア性フィルム。
  4. 過酸化水素保護膜が、耐水耐油剤を乾燥状態で1g/m2〜16g/m2となるように塗工してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の過酸化水素バリア性フィルム。
  5. バリア性薄膜層が、化学気相成長法による有機酸化珪素の蒸着膜、または真空蒸着法による無機酸化物の蒸着膜からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の過酸化水素バリア性フィルム。
  6. バリア性薄膜層にガスバリア性塗布膜を設けた過酸化水素バリア性フィルムであって、
    前記ガスバリア性塗布膜が、一般式R1 nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、さらに、ゾル−ゲル法触媒、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の過酸化水素バリア性フィルム。
  7. 過酸化水素を用いた殺菌処理に付される包装材料に使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の過酸化水素バリア性フィルム。
  8. 請求項1〜7の過酸化水素バリア性フィルムにヒートシール性樹脂層を積層した積層材であって、前記ヒートシール性樹脂層を、過酸化水素バリア性フィルムのバリア性薄膜層、またはガスバリア性塗布膜を設けた面側に積層したことを特徴とする前記積層材。
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