JP2009037829A - 鉛蓄電池用正極、鉛蓄電池および鉛蓄電池用正極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】正極活物質の利用率が高く高容量化が可能な鉛蓄電池用正極を提供する。
【解決手段】単板セル電池は、正極板1枚の両側にセパレータを介して正極板の理論容量の約2倍の理論容量を有する負極板2枚が積層され、比重1.28の硫酸が注液されている(2V)。酢酸鉛を加水分解して得られた二酸化鉛粉末をポリアニリン、グラファイトの混合物で混練した二酸化鉛スラリーを、鉛−カルシウム−スズ系のエキスパンド格子に充填して正極板を作製した。二酸化鉛粉末にはβ型のナノスケール粒子が含まれており、化学的に活性で、正極活物質の利用率を高めることができる。
【選択図】なし
【解決手段】単板セル電池は、正極板1枚の両側にセパレータを介して正極板の理論容量の約2倍の理論容量を有する負極板2枚が積層され、比重1.28の硫酸が注液されている(2V)。酢酸鉛を加水分解して得られた二酸化鉛粉末をポリアニリン、グラファイトの混合物で混練した二酸化鉛スラリーを、鉛−カルシウム−スズ系のエキスパンド格子に充填して正極板を作製した。二酸化鉛粉末にはβ型のナノスケール粒子が含まれており、化学的に活性で、正極活物質の利用率を高めることができる。
【選択図】なし
Description
本発明は鉛蓄電池用正極、鉛蓄電池および鉛蓄電池用正極の製造方法に係り、特に、鉛蓄電池に用いられる正極、該正極を用いた鉛蓄電池および鉛蓄電池用正極の製造方法に関する。
鉛蓄電池は、安価で信頼性が高いという利点を有するため、自動車用のバッテリ、ゴルフカート等の電動車両の動力源、更には無停電電源装置等の産業機器用の蓄電池として広く普及している。自動車用のバッテリでは、車両の電装品の増加に伴い、容量の大きなものが求められており、鉛蓄電池の高容量化の要求は近年一段と増してきている。
鉛蓄電池の正極活物質は二酸化鉛からなる。通常、正極活物質は次のように作製される。酸化鉛と補強材である有機繊維とを水で混練し、その後所定量の硫酸を加えてさらに混練し、活物質ペーストを作製する。このペーストを集電体格子に充填し、熟成・乾燥して未化成の活物質を作製する。この段階では活物質は三塩基性硫酸鉛と酸化鉛の混合物となっている。この状態で電池が組立てられ、硫酸を注液し、化成が行われると、二酸化鉛が生成される。この二酸化鉛は数μm程度の粒子が凝集した凝集物として存在している。また、二酸化鉛には化学的に不活性なα型と活性なβ型とが存在し、通常の形成方法ではα型とβ型との混合物となっている。
このように、従来、正極活物質に用いられる二酸化鉛は、粒子が大きいため反応面積が小さく、かつ、不活性なα型を含んでいるため、活物質の利用率が低い、という問題がある。したがって、余分に活物質を必要とするため、電池が大きく、また重くなる一因であった。
本発明は上記事案に鑑み、正極活物質の利用率が高く高容量化が可能な鉛蓄電池用正極、該正極を用いた鉛蓄電池および鉛蓄電池用正極の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、鉛蓄電池用正極であって、酢酸鉛を加水分解して得られた二酸化鉛のナノスケール粒子が正極活物質に含まれていることを特徴とする。また、本発明の第2の態様は、第1の態様の鉛蓄電池用正極を用いた鉛蓄電池である。さらに、本発明の第3の態様は、鉛蓄電池用正極の製造方法であって、酢酸鉛を水中で加水分解して得られた二酸化鉛を含む正極活物質を用いることを特徴とする。
本発明は、酢酸鉛を加水分解して得られた二酸化鉛を含む正極活物質を正極に用いたものである。酢酸鉛を加水分解して得られた二酸化鉛はβ型のナノスケール粒子であり、化学的に活性である。二酸化鉛は、粒子径が1〜20nmで、BET比表面積が30〜50m2/gであることが好ましく、正極活物質には、この二酸化鉛のナノスケール粒子に加え、導電性高分子樹脂が含まれていることがさらに好ましい。作製された二酸化鉛は反応面積が非常に大きく、これを用いて作製された正極は、活物質の利用率を高めることができる。このような正極を用いた鉛蓄電池は高容量化を図ることができる。
本発明によれば、酢酸鉛を加水分解して得られた二酸化鉛はβ型のナノスケール粒子であり、化学的に活性であるため、この二酸化鉛を含む正極活物質を正極に用いることにより、正極活物質の利用率を高めることができ、鉛蓄電池の高容量化を図ることができる、という効果を得ることができる。
以下、本発明を単板セル電池に適用した実施の形態について説明する。
(正極)
酢酸鉛を水中で撹拌し、加水分解をおこなった。雰囲気温度は室温にて行ったが、反応を早くしたり、遅くしたりする場合には、任意の温度で行ってもよい。反応時間は30分間としたが、これも任意の時間で行うことができる。その後、6000rpmで1時間遠心分離を行い、洗浄、真空乾燥し、二酸化鉛粉末を得た。この二酸化鉛は、結晶粒径が10nm前後で、BET比表面積が40m2/g程度のナノスケール粒子であり、化学的に活性を有するβ型単層構造を採ることができる。
酢酸鉛を水中で撹拌し、加水分解をおこなった。雰囲気温度は室温にて行ったが、反応を早くしたり、遅くしたりする場合には、任意の温度で行ってもよい。反応時間は30分間としたが、これも任意の時間で行うことができる。その後、6000rpmで1時間遠心分離を行い、洗浄、真空乾燥し、二酸化鉛粉末を得た。この二酸化鉛は、結晶粒径が10nm前後で、BET比表面積が40m2/g程度のナノスケール粒子であり、化学的に活性を有するβ型単層構造を採ることができる。
ここで、溶媒に水を用いた場合を実施例Aとし、アルコールとの混合溶液(本例では水中にアルコールを添加することで作製)中で加水分解した実施例B〜Dを下表1に示す。なお、実施例B〜Dは、それぞれ、溶媒に用いる混合溶液を、水:エタノール=50:50(実施例B)、水:メタノール=50:50(実施例C)、水:n−プロパノール(実施例D)としたものである。
作製した二酸化鉛粉末を、導電性高分子樹脂としてのポリアニリンと、グラファイトとの混合物で混練し、二酸化鉛スラリーを得た。その後、このスラリーを厚み1.5mmの鉛−カルシウム−スズ系のエキスパンド格子に充填し正極板を得た。また、参考のために、従来例(比較例)として、酸化鉛を主成分とする鉛粉と、鉛丹、カットファイバ、硫酸、水を混合したペーストを厚み1.5mmの鉛−カルシウム−スズ系エキスパンド格子に充填し、熟成、乾燥して、未化成の正極板を作製し、硫酸中で酸化し、水洗乾燥して得た正極板も作製した。
これらの正極板1枚の両側にセパレータを介して正極板の理論容量の約2倍の理論容量を有する負極板2枚を積層した。その後、比重1.28の硫酸を注液、化成して2Vの単板セル電池を作製した。なお、自動車用のバッテリとして一般に市販されている14V系鉛蓄電池の場合は、例えば、正極板6枚、負極板7枚をセパレータ(ないしリテーナ)を介して積層することで作製することができる。
(試験)
実施例および従来例の単板セル電池を理論容量の50%容量の0.2C電流で1.75Vまで放電し、放電容量を求めた。そして、下表2に示すように、理論容量に対する放電容量の割合を利用率として求めた。
実施例および従来例の単板セル電池を理論容量の50%容量の0.2C電流で1.75Vまで放電し、放電容量を求めた。そして、下表2に示すように、理論容量に対する放電容量の割合を利用率として求めた。
表2に示すように、従来例の単板セル電池の利用率が55%程度に対し、実施例の単板セル電池はすべて利用率が80%以上の高い利用率となった。特に、加水分解時にアルコールを添加した実施例B、C、Dの単板セル電池は85%以上の利用率が得られた。
(効果等)
次に、本実施形態の単板セル電池の効果等について説明する。
次に、本実施形態の単板セル電池の効果等について説明する。
本実施形態の単板セル電池では、正極活物質に、酢酸鉛を加水分解して得られた二酸化鉛のβ型のナノスケール粒子が含まれている。この二酸化鉛は、化学的に活性であるため、表2に示したように、正極活物質の利用率を高めることができる。従って、軽量な鉛蓄電池用正極を提供することが可能であるし、鉛蓄電池用正極の高容量化を図ることも可能である。
また、本実施形態の単板セル電池は、正極活物質の利用率が高いため、負極と組み合わせて鉛蓄電池を作製した際に、鉛蓄電池の高容量化を図ることができる。また、正極の軽量化を図ることができることから、鉛蓄電池全体の重量の軽量化を図ることができる。
さらに、加水分解の溶媒にアルコールと水の混合物を使用することで、粒子サイズを制御することができる(実施例B〜D)。これは、アルコールを添加することにより、アルコールが二酸化鉛の分散剤として働き、加水分解で生成した二酸化鉛同士が凝集し、粒子サイズが大きくなるのを抑制しているためと考えられる。
なお、本実施形態では、エキスパンド格子正極板を例示したが、本発明はこれに制限されず、例えば、鉛−スズ系などの圧延シートを用いた打ち抜き格子や、箔を用いた正極板を用いるようにしてもよい。このような態様でも同様の効果が得られる。また、本発明は積層タイプの鉛蓄電池に限らず、例えば、捲回タイプの鉛蓄電池にも適用可能である。
また、上記実施例では、説明を簡単にするために、酢酸鉛の加水分解に用いる溶媒の例を4種類に限定して説明したが、水:アルコールの比率を100:0〜10:90の間で代えても、同様な結果が得られた。さらに、アルコールは例示した1種に制限されず、複数種を用いるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、導電性高分子としてポリアニリンを導電性高分子として例示したが、これに代えて、または、これに加えて、例えば、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン等の導電性高分子を用いるようにしてもよい。
また、本実施形態では、粒子径が10nm前後で、BET比表面積が40m2/g程度のナノスケール粒子の二酸化鉛を例示したが、本発明はこれに制約されず、粒子径が1〜20nm、BET比表面積が30〜50m2/gのものが好適に使用できる。
本発明は正極活物質の利用率が高く高容量化が可能な鉛蓄電池用正極を提供するものであるため、鉛蓄電池用正極や鉛蓄電池の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
Claims (9)
- 酢酸鉛を加水分解して得られた二酸化鉛のナノスケール粒子が正極活物質に含まれていることを特徴とする鉛蓄電池用正極。
- 前記二酸化鉛は、β型単層であることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池用正極。
- 前記二酸化鉛は、粒子径が1〜20nmで、BET比表面積が30〜50m2/gであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉛蓄電池用正極。
- 前記二酸化鉛のナノスケール粒子と導電性高分子樹脂とが前記正極活物質に含まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用正極。
- 前記導電性高分子樹脂は、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の鉛蓄電池用正極。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用正極を用いた鉛蓄電池。
- 酢酸鉛を水中で加水分解して得られた二酸化鉛を含む正極活物質を用いることを特徴とする鉛蓄電池用正極の製造方法。
- 前記水中にアルコール類を添加することを特徴とする請求項7に記載の鉛蓄電池用正極の製造方法。
- 前記アルコール類は、エタノール、メタノール、n−プロパノールから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の鉛蓄電池用正極の製造方法。
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2007
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