JP2009036219A - 回転速度検出装置付き車輪用軸受装置 - Google Patents

回転速度検出装置付き車輪用軸受装置 Download PDF

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圭三 小林
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Abstract

【課題】センサホルダの固定部の歪みを防止し、外方部材とセンサホルダの嵌合部の気密性を高めて密封性を確保した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】外方部材5の端部にシメシロを介して内嵌され、合成樹脂から射出成形で形成し、回転速度センサ28が包埋されたセンサホルダ19を備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、センサホルダ19が圧入される外方部材5の内周面5cの表面粗さが1.3Ra以下に規制されると共に、センサホルダ19の嵌合面19aの表面粗さが0.4Ra以下に規制され、両者の嵌合部のシメシロが0.14〜0.36mmの範囲に設定されているので、センサホルダ19の引抜き耐力を確保すると共に、気密性を高めることができ、軸受内部の昇温により内部の空気が温められて内部圧力が上昇してもグリースが嵌合部から軸受外部に流出するのを防止できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車等の車輪の回転速度を検出する回転速度センサを内蔵した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置に関するものである。
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承すると共に、アンチロックブレーキシステム(ABS)を制御するために車輪の回転速度を検出する装置が軸受に内蔵された回転速度検出装置付き車輪用軸受装置が一般的に知られている。従来、このような車輪用軸受装置は、転動体を介して転接する内方部材および外方部材の間にシール装置が設けられ、円周方向に磁極を交互に並べてなる磁気エンコーダを前記シール装置に一体化させると共に、磁気エンコーダと、この磁気エンコーダに対面配置され、車輪の回転に伴う磁気エンコーダの磁極変化を検出する回転速度センサとで回転速度検出装置が構成されている。
前記回転速度センサは、懸架装置を構成するナックルに車輪用軸受装置が装着された後、当該ナックルに装着されているものが一般的である。しかし、この回転速度センサと磁気エンコーダとのエアギャップ調整作業の煩雑さを解消すると共に、よりコンパクト化を狙って最近では、回転速度センサをも軸受に内蔵した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置が提案されている。
このような回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一例として図4に示すような構造が知られている。この回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、ハブ輪55と複列の転がり軸受50と等速自在継手61が着脱自在にユニット化されている。複列の転がり軸受50は、外方部材51と内方部材52と複列のボール53、53とを備えている。外方部材51は、外周に懸架装置を構成するナックル54に取り付けられるための車体取付フランジ51bを一体に有し、内周に複列の外側転走面51a、51aが一体に形成されている。
一方、内方部材52は、ハブ輪55と、このハブ輪55に固定された内輪56とからなる。ハブ輪55は、一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ55dを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面51a、51aの一方に対向する内側転走面55aと、この内側転走面55aから軸方向に延びる円筒状の小径段部55bが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション55cが形成されている。
内輪56は、外周に前記複列の外側転走面51a、51aの他方に対向する内側転走面56aが形成され、ハブ輪55の小径段部55bに所定のシメシロを介して圧入されている。そして、小径段部55bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部57によって内輪56が軸方向に固定されている。
外方部材51の複列の外側転走面51a、51aと、これらに対向するハブ輪55の内側転走面55aおよび内輪56の内側転走面56a間には複列のボール53、53が収容され、保持器58、58によって転動自在に保持されている。また、外方部材51と内方部材52との間に形成される環状空間の開口部にはシール59、60が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
等速自在継手61は、外側継手部材62と継手内輪63とケージ64およびトルク伝達ボール65からなる。外側継手部材62は、カップ状のマウス部66と、このマウス部66の底部をなす肩部67と、この肩部67から軸方向に延びる軸部68とを一体に有している。軸部68の外周にはハブ輪55のセレーション55cに係合するセレーション68aと、このセレーション68aの端部に雄ねじ68bが形成されている。そして、ハブ輪55にこの外側継手部材62がセレーション55c、68aを介してトルク伝達可能に内嵌され、雄ねじ68bに締結された固定ナット69によってハブ輪55と外側継手部材62が着脱自在にユニット化されている。
シール60は、図5に示すように、第1のシールリング70と第2のシールリング71とが組み合わされた、所謂パックシールで構成されている。第1のシールリング70は外方部材51に装着され、断面が略L字状に形成された芯金72と、この芯金72に被着され、主リップ73aと補助リップ73bからなるシール部材73とからなる。
第2のシールリング71は内輪56に装着され、断面が略L字状に形成された芯金74と、この芯金74に被着されたラジアルリップ75とからなる。この第2のシールリング71にパルサリング76が取り付けられている。パルサリング76は、芯金74に外嵌され、断面が略コの字状に形成された芯金77と、この芯金77に被着された多極磁石ロータ78からなる。この多極磁石ロータ78は、磁性粉を含有したゴムまたは樹脂を加硫接着して周方向交互にN極、S極を配置するように径方向から着磁されている。
ここで、第1のシールリング70における芯金72の外周面全周にはセンサホルダ79が積層されている。このセンサホルダ79はポリフェニレンサルファイド(PPS)等の非磁性の樹脂材で形成され、磁気センサ80が埋設されている。そして、センサホルダ79の円周所定位置には、磁気センサ80と車体の電子回路に接続されたハーネス(図示せず)とを結線する雌型のコネクタ81が径方向外方に突出する状態で一体に形成されている。
このように、ラジアルリップ75がパルサリング76よりも外側に配置されているので、パルサリング76が雨水やダスト等により汚れるのを防止することができると共に、第1のシールリング70の主リップ73aおよび補助リップ73bによってボール53および転走面から隔離されているので、ボール53の回転によって生じる金属摩耗粉等がパルサリング76に付着するのを防止することができ、検出精度の低下を回避することができる。
特開2005−98332号公報
然しながら、こうした従来の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、センサホルダ79がシメシロを持って直接外方部材51の端部に圧入される構造で、センサホルダ79が粘弾性材料からなる樹脂製のため、圧入により固定部が歪み、密封性が確保できない恐れがある。これでは、センサホルダ79の固定力が低下して軸受内部に雨水やダスト等が侵入すると共に、センサホルダ79が位置ずれを起こし、速度検出機能を満足しなくなってしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、センサホルダの固定部の歪みを防止し、外方部材とセンサホルダの嵌合部の気密性を高めて密封性を確保した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することを目的としている。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、外周に懸架装置に取り付けるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、前記外方部材のインナー側の端部にシメシロを介して内嵌され、合成樹脂から射出成形によって形成されて回転速度センサが包埋されたセンサホルダとを備えると共に、前記シールのうちインナー側のシールが、前記センサホルダがインサート成形され、鋼板からプレス加工によって形成された芯金、およびこの芯金に一体に接合されたシール部材からなる環状のシール板と、このシール板に対向して前記内輪の外径に圧入され、鋼板からプレス加工によって断面が略L字状に形成されたスリンガと、このスリンガに嵌合固定され、前記回転速度センサに所定の径方向すきまを介して対峙し、円周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するように構成された磁気エンコーダを有するパルサリングとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記センサホルダが圧入される前記外方部材の内周面の表面粗さが1.3Ra以下に規制されると共に、当該センサホルダの嵌合面の表面粗さが0.4Ra以下に規制されている。
このように、外方部材のインナー側の端部にシメシロを介して内嵌され、合成樹脂から射出成形によって形成されて回転速度センサが包埋されたセンサホルダを備えた内輪回転タイプの回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、センサホルダが圧入される外方部材の内周面の表面粗さが1.3Ra以下に規制されると共に、当該センサホルダの嵌合面の表面粗さが0.4Ra以下に規制されているので、車両運転時、軸受内部の昇温により内部の空気が温められて内部圧力が上昇しても封入されたグリースが内部空気と共に外方部材とセンサホルダの嵌合部から軸受外部に流出するのを防止して嵌合部の気密性を高めることができる。
好ましくは、請求項2に記載の発明は、前記外方部材とセンサホルダとのシメシロが0.14〜0.36mmの範囲に設定されていれば、センサホルダの嵌合部が歪むのを防止することができると共に、引抜き耐力を確保することができる。
また、請求項3に記載の発明のように、前記センサホルダに繊維状強化材が所定量充填されていれば、弾性率の増大によりセンサホルダの剛性が高くなり、嵌合部が歪んで経年変化でクリープ変形が生ずるのを防止することができる。したがって、固定力の低下によるセンサホルダの位置ずれを防止し、長期間に亘って所望の速度検出機能を満足することができる。
好ましくは、請求項4に記載の発明のように、前記繊維状強化材がガラス繊維からなり、充填量が10〜45wt%の範囲に設定されていれば、そのガラス転移温度を超える温度で使用することができるためセンサホルダの耐熱性が向上すると共に、成形品内の繊維が異方性を引き起こし、密度が大きくなって寸法安定性が低下するのを防止することができる。
また、請求項5に記載の発明のように、前記センサホルダの円周所定位置に前記回転速度センサと電子回路に接続されたハーネスとを結線するコネクタが径方向外方に所定の角度傾斜して突設されると共に、このコネクタに凹所が形成され、この凹所が前記外方部材のインナー側の端部を覆うように嵌合されていれば、ハーネスを結線する際、コネクタに直接圧入力が加わらずに圧入力は外方部材の端部で受けることになるので、コネクタに無理な力が作用してシールや回転速度センサの位置精度が崩れることはなく信頼性と組立性の向上を図ると共に、組立精度を高めることができる。
また、請求項6に記載の発明のように、前記シール部材が複数のシールリップを一体に有し、これらシールリップが前記パルサリングに摺接されていれば、転動体および各転走面から隔離され、転動体の回転によって生じる金属摩耗粉等がパルサリングに付着するのを防止することができ、長期間に亙って所望の検出精度を維持することができる。
また、請求項7に記載の発明のように、前記スリンガの外縁にラジアルリップが一体に接合され、このラジアルリップが前記シール板の芯金に摺接されていれば、パルサリングが外部から密封され、ダスト等により汚れるのを防止することができ、長期間に亙って所望の検出精度を維持することができる。
また、請求項8に記載の発明のように、前記磁気エンコーダがエラストマに磁性体粉が混入されたゴム磁石からなり、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されると共に、前記シール板の芯金がオーステナイト系ステンレス鋼鈑で形成されていれば、磁気検出に悪影響を及ぼさず、検出精度を向上させることができる。
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、外周に懸架装置に取り付けるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、前記外方部材のインナー側の端部にシメシロを介して内嵌され、合成樹脂から射出成形によって形成されて回転速度センサが包埋されたセンサホルダとを備えると共に、前記シールのうちインナー側のシールが、前記センサホルダがインサート成形され、鋼板からプレス加工によって形成された芯金、およびこの芯金に一体に接合されたシール部材からなる環状のシール板と、このシール板に対向して前記内輪の外径に圧入され、鋼板からプレス加工によって断面が略L字状に形成されたスリンガと、このスリンガに嵌合固定され、前記回転速度センサに所定の径方向すきまを介して対峙し、円周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するように構成された磁気エンコーダを有するパルサリングとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記センサホルダが圧入される前記外方部材の内周面の表面粗さが1.3Ra以下に規制されると共に、当該センサホルダの嵌合面の表面粗さが0.4Ra以下に規制されているので、車両運転時、軸受内部の昇温により内部の空気が温められて内部圧力が上昇しても、封入されたグリースが内部空気と共に外方部材とセンサホルダの嵌合部から軸受外部に流出するのを防止して嵌合部の気密性を高めることができる。
外周に懸架装置に取り付けるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、前記外方部材のインナー側の端部に所定のシメシロを介して内嵌され、合成樹脂から射出成形によって形成されて回転速度センサが包埋されたセンサホルダと備えると共に、前記シールのうちインナー側のシールが、前記センサホルダがインサート成形され、鋼板からプレス加工によって形成された芯金、およびこの芯金に一体に接合されたシール部材からなる環状のシール板と、このシール板に対向して前記内輪の外径に圧入され、鋼板からプレス加工によって断面が略L字状に形成されたスリンガと、このスリンガに嵌合固定され、前記回転速度センサに所定の径方向すきまを介して対峙し、円周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するように構成された磁気エンコーダを有するパルサリングとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記センサホルダが圧入される前記外方部材の内周面の表面粗さが1.3Ra以下に規制されると共に、当該センサホルダの嵌合面の表面粗さが0.4Ra以下に規制され、前記外方部材とセンサホルダとのシメシロが0.14〜0.36mmの範囲に設定されている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の検出部を示す要部拡大図、図3は、図1の軸受部の側面図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図面左側)、中央寄り側をインナー側(図面右側)という。
この回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は駆動輪用の第3世代構造と呼称され、ハブ輪1と内輪2からなる内方部材3と、この内方部材3に複列の転動体(ボール)4、4を介して外挿された外方部材5とを備え、等速自在継手10が連結されている。
内方部材3は、ハブ輪1と、このハブ輪1に固定された内輪2とからなる。ハブ輪1は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ6を一体に有し、外周にアウター側(一方)の内側転走面1aと、この内側転走面1aから軸方向に延びる円筒状の小径段部1bが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション(またはスプライン)1cが形成されている。なお、車輪取付フランジ6の円周等配位置にはハブボルト6aが植設されている。
ハブ輪1はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼からなり、内側転走面1aをはじめ、後述するアウター側のシール10が摺接する車輪取付フランジ6のインナー側の基部6bから小径段部1bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、後述する加締部1dは未焼入れで鍛造加工後の表面硬さのままとされている。
内輪2は、外周にインナー側(他方)の内側転走面2aが形成され、ハブ輪1の小径段部1bに所定のシメシロを介して圧入され、ハブ輪1の小径段部1bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部1dによって所定の軸受予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。なお、内輪2および転動体4はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
外方部材5はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼からなり、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ5bを一体に有し、内周に内方部材3の内側転走面1a、2aに対向する複列の外側転走面5a、5aが一体に形成されている。そして、これらの複列の外側転走面5a、5aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
外方部材5の複列の外側転走面5a、5aと、これらに対向するハブ輪1の内側転走面1aおよび内輪2の内側転走面2a間には複列の転動体4、4が収容され、保持器7、7によって転動自在に保持されている。そして、内輪2の小径側(正面側)の端面がハブ輪1の肩部に突合せ状態で衝合し、所謂背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受を構成している。また、外方部材5と内方部材3との間に形成される環状空間の開口部にはシール8、9が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
等速自在継手10は、外側継手部材11と継手内輪12とケージ13およびトルク伝達ボール14とを備えている。外側継手部材11は、カップ状のマウス部15と、このマウス部15の底部をなす肩部16と、この肩部16から軸方向に延びる軸部17とを一体に有している。軸部17の外周にはハブ輪1のセレーション1cに係合するセレーション17aと、このセレーション17aの端部に雄ねじ17bが形成されている。そして、ハブ輪1にこの外側継手部材11がセレーション1c、17aを介して加締部1dの端面と肩部16が衝合するまで内嵌され、雄ねじ17bに締結された固定ナット18によってハブ輪1と外側継手部材11がトルク伝達可能に、かつ着脱自在に結合されている。
本実施形態では、センサホルダ19が外方部材5のインナー側の端部に装着されている。そして、インナー側のシール9はこのセンサホルダ19と内輪2との間に形成される環状空間の開口部に装着されている。シール9は、図2に示すように、断面略L字状に形成された環状のシール板20とスリンガ21およびこのスリンガ21に外嵌されたパルサリング22を備え、互いに対向して配置されている。シール板20は、センサホルダ19がインサート成形された芯金23と、この芯金22に加硫接着等で一体に接合されたシール部材24とからなる。
芯金23は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)をプレス加工にて断面略L字状に形成されている。特に、磁気検出に悪影響を及ぼさない非磁性体のオーステナイト系ステンレス鋼鈑が好ましい。また、シール部材24は合成ゴム等の弾性部材からなり、主リップ24aとグリースリップ24bを一体に有している。
スリンガ21は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)をプレス加工にて断面略L字状に形成されている。このスリンガ21は、内輪2の外径に圧入される円筒部21aと、この円筒部21aから径方向外方に延びる立板部21bとを有し、この立板部21bの端部にラジアルリップ25が加硫接着によって一体に接合されている。
パルサリング22は、スリンガ21の円筒部21aに圧入される芯金26と、この芯金26の外径部に加硫接着により一体に接合された磁気エンコーダ27からなる。芯金26は、強磁性体の鋼鈑、例えば、フェライト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)あるいは防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からなり、プレス加工によって断面が略コの字状に形成されている。そして、シール部材24の主リップ24aとグリースリップ24bが芯金26に摺接されると共に、スリンガ21のラジアルリップ25がシール板20の芯金23に摺接されている。一方、磁気エンコーダ27はゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されたゴム磁石からなり、周方向に交互に磁極N、Sが着磁され、車輪の回転速度検出用のロータリエンコーダを構成している。
こうしたシール9を構成することにより、パルサリング22が外部から侵入するダスト等により汚れるのを防止することができると共に、このパルサリング22に摺接するシール板20の主リップ24aおよびグリースリップ24bによって転動体4および各転走面から隔離されているので、転動体4の回転によって生じる金属摩耗粉等が磁気エンコーダ27に付着するのを防止することができ、長期間に亙って所望の検出精度を維持することができる。
センサホルダ19はPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の非磁性の樹脂材で形成され、GF(グラス繊維)からなる繊維状強化材が10〜45wt%充填されている。このGFを充填させることにより、半結晶性材料を、そのガラス転移温度を超える温度で使用することができるため耐熱性が向上すると共に、弾性率の増大により剛性が高くなり、外方部材5に直接圧入されるこの種のセンサホルダ19において、嵌合部が歪んで経年変化でクリープ変形が生ずるのを防止することができる。
ここで、GFの充填量が10wt%未満ではその効果が発揮されず、また、45wt%を超えて充填されると、成形品内の繊維が異方性を引き起こして密度が大きくなって寸法安定性が低下し、外方部材5に直接圧入されるセンサホルダ19としては好ましくない。なお、センサホルダ19はPPS以外にもPA(ポリアミド)66、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の射出成形可能な合成樹脂を例示することができる。また、繊維状強化材としては、GFに限らず、CF(炭素繊維)やアラミド繊維、ホウ素繊維等が例示できる。
センサホルダ19には、磁気エンコーダ27に所定の径方向すきま(エアギャップ)を介して対峙する回転速度センサ28が包埋されている。この回転速度センサ28は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子と、この磁気検出素子の出力波形を整える波形成形回路が組み込まれたICとからなる。これにより、低コストで信頼性の高い回転速度検出装置を得ることができる。
ここで、センサホルダ19の円周所定位置(図中垂直方向の上部)に、回転速度センサ28と車体の電子回路に接続されたハーネス(図示せず)とを結線する雌型のコネクタ29が径方向外方に所定の角度傾斜して突設されている(図3参照)。このコネクタ29には凹所29aが形成され、外方部材5のインナー側の端部を覆うように所定のシメシロを介して外方部材5に嵌合固定されている。これにより、ハーネスを結線する際、コネクタ29に直接圧入力が加わらない。すなわち、この圧入力は外方部材5の端部で受けることになるので、コネクタ29に無理な力が作用してシール9や回転速度センサ28の位置精度が崩れることはなく、信頼性と組立性の向上を図ると共に、組立精度を高めて所望の回転速度検出ができる回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することができる。
なお、本実施形態では、回転速度検出装置として、磁気エンコーダ27と、ホール素子等の磁気検出素子からなる回転速度センサ28とからなるアクティブタイプの回転速度検出装置を例示したが、本発明に係る回転速度検出装置はこれに限らず、例えば、歯車等と、磁石と巻回された環状のコイル等からなるパッシブタイプであっても良い。
ここで、本実施形態では、センサホルダ19が圧入される外方部材5の内周面5cの表面粗さが1.3Ra以下、好ましくは、研削加工によって0.8Ra以下に規制されている。この内周面5cは、研削加工によるリード目が形成されないよう、所謂プランジカットで研削加工されるのが良い。内周面5cは、研削加工に限らず旋削加工によって形成しても良いが、この場合、トラバース加工でなくプランジカットによる旋削加工が好ましいが、例え、通常のトラバース加工であっても、バイトの送り速度を遅く(0.2mm/rev以下)することにより、バイトの送りによるリード目の山部はなくならないが、山部の高さを低く抑えることができ、嵌合部の気密性を高めることができる。なお、Raは、JISの粗さ形状パラメータの一つで(JIS B0601−1994)、算術平均粗さ、すなわち、平均線から絶対値偏差の平均値を言う。
一方、センサホルダ19の嵌合面19aの表面粗さが0.4Ra以下に規制されている。そして、両者のシメシロが0.14〜0.36mmの範囲に設定されている。なお、外方部材5の内周面5cの表面粗さが1.3Raを超え、センサホルダ19の嵌合面19aの表面粗さが0.4Raを超えると、車両運転時、軸受内部の昇温により内部の空気が温められて内部圧力が上昇した場合、内部空気と共に封入されたグリースが外方部材5とセンサホルダ19の嵌合部から軸受外部に流出する恐れがあるからである。また、両者のシメシロが0.14未満では、センサホルダ19の引抜き耐力を確保するが難しく、シメシロの上限が0.36を超えると嵌合部が歪む恐れがあるからである。
このように、外方部材5とセンサホルダ19との嵌合部の表面粗さが所定値に規制されると共に、両者のシメシロが所定の範囲に設定されることにより、センサホルダ19が粘弾性材料からなる樹脂製であっても、圧入固定部が歪むのを防止することができ、凹所29aが外方部材5のインナー側の端部を覆う効果と相俟って嵌合部の気密性と強固な密封性を確保することができる。また、センサホルダ19の固定力の低下によってセンサホルダ19が位置ずれするのを防止し、長期間に亘って所望の速度検出機能を満足することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、回転速度センサが包埋された樹脂製のセンサホルダを備え、このセンサホルダが外方部材の端部に圧入された車輪用軸受装置に適用することができる。
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。 図1の検出部を示す要部拡大図である。 図1の軸受部の側面図である。 従来の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を示す縦断面図である。 図4の要部拡大図である。
符号の説明
1・・・・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
1a、2a・・・・・・・・・・・・内側転走面
1b・・・・・・・・・・・・・・・小径段部
1c、17a・・・・・・・・・・・セレーション
1d・・・・・・・・・・・・・・・加締部
2・・・・・・・・・・・・・・・・内輪
3・・・・・・・・・・・・・・・・内方部材
4・・・・・・・・・・・・・・・・転動体
5・・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
5a・・・・・・・・・・・・・・・外側転走面
5b・・・・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
5c・・・・・・・・・・・・・・・内周面
6・・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
6a・・・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
6b・・・・・・・・・・・・・・・インナー側の基部
7・・・・・・・・・・・・・・・・保持器
8・・・・・・・・・・・・・・・・アウター側のシール
9・・・・・・・・・・・・・・・・インナーの側のシール
10・・・・・・・・・・・・・・・等速自在継手
11・・・・・・・・・・・・・・・外側継手部材
12・・・・・・・・・・・・・・・継手内輪
13・・・・・・・・・・・・・・・ケージ
14・・・・・・・・・・・・・・・トルク伝達ボール
15・・・・・・・・・・・・・・・マウス部
16・・・・・・・・・・・・・・・肩部
17・・・・・・・・・・・・・・・軸部
17b・・・・・・・・・・・・・・雄ねじ
18・・・・・・・・・・・・・・・固定ナット
19・・・・・・・・・・・・・・・センサホルダ
19a・・・・・・・・・・・・・・嵌合面
20・・・・・・・・・・・・・・・シール板
21・・・・・・・・・・・・・・・スリンガ
21a・・・・・・・・・・・・・・円筒部
21b・・・・・・・・・・・・・・立板部
22・・・・・・・・・・・・・・・パルサリング
23、26・・・・・・・・・・・・芯金
24・・・・・・・・・・・・・・・シール部材
24a・・・・・・・・・・・・・・主リップ
24b・・・・・・・・・・・・・・グリースリップ
25・・・・・・・・・・・・・・・ラジアルリップ
27・・・・・・・・・・・・・・・磁気エンコーダ
28・・・・・・・・・・・・・・・回転速度センサ
29・・・・・・・・・・・・・・・コネクタ
29a・・・・・・・・・・・・・・凹所
50・・・・・・・・・・・・・・・複列の転がり軸受
51・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
51a・・・・・・・・・・・・・・外側転走面
51b・・・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
52・・・・・・・・・・・・・・・内方部材
53・・・・・・・・・・・・・・・ボール
54・・・・・・・・・・・・・・・ナックル
55・・・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
55a、56a・・・・・・・・・・内側転走面
55b・・・・・・・・・・・・・・小径段部
55c、68a・・・・・・・・・・セレーション
55d・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
56・・・・・・・・・・・・・・・内輪
57・・・・・・・・・・・・・・・加締部
58・・・・・・・・・・・・・・・保持器
59・・・・・・・・・・・・・・・アウター側のシール
60・・・・・・・・・・・・・・・インナー側のシール
61・・・・・・・・・・・・・・・等速自在継手
62・・・・・・・・・・・・・・・外側継手部材
63・・・・・・・・・・・・・・・継手内輪
64・・・・・・・・・・・・・・・ケージ
65・・・・・・・・・・・・・・・トルク伝達ボール
66・・・・・・・・・・・・・・・マウス部
67・・・・・・・・・・・・・・・肩部
68・・・・・・・・・・・・・・・軸部
68b・・・・・・・・・・・・・・雄ねじ
69・・・・・・・・・・・・・・・固定ナット
70・・・・・・・・・・・・・・・第1のシールリング
71・・・・・・・・・・・・・・・第2のシールリング
72、74、77・・・・・・・・・芯金
73・・・・・・・・・・・・・・・シール部材
73a・・・・・・・・・・・・・・主リップ
73b・・・・・・・・・・・・・・補助リップ
75・・・・・・・・・・・・・・・ラジアルリップ
76・・・・・・・・・・・・・・・パルサリング
78・・・・・・・・・・・・・・・多極磁石ロータ
79・・・・・・・・・・・・・・・センサホルダ
80・・・・・・・・・・・・・・・磁気センサ
81・・・・・・・・・・・・・・・コネクタ

Claims (8)

  1. 外周に懸架装置に取り付けるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
    一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
    この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
    前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、
    前記外方部材のインナー側の端部にシメシロを介して内嵌され、合成樹脂から射出成形によって形成されて回転速度センサが包埋されたセンサホルダとを備えると共に、
    前記シールのうちインナー側のシールが、前記センサホルダがインサート成形され、鋼板からプレス加工によって形成された芯金、およびこの芯金に一体に接合されたシール部材からなる環状のシール板と、
    このシール板に対向して前記内輪の外径に圧入され、鋼板からプレス加工によって断面が略L字状に形成されたスリンガと、
    このスリンガに嵌合固定され、前記回転速度センサに所定の径方向すきまを介して対峙し、円周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するように構成された磁気エンコーダを有するパルサリングとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、
    前記センサホルダが圧入される前記外方部材の内周面の表面粗さが1.3Ra以下に規制されると共に、当該センサホルダの嵌合面の表面粗さが0.4Ra以下に規制されていることを特徴とする回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  2. 前記外方部材とセンサホルダとのシメシロが0.14〜0.36mmの範囲に設定されている請求項1に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  3. 前記センサホルダに繊維状強化材が所定量充填されている請求項1または2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  4. 前記繊維状強化材がガラス繊維からなり、充填量が10〜45wt%の範囲に設定されている請求項3に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  5. 前記センサホルダの円周所定位置に前記回転速度センサと電子回路に接続されたハーネスとを結線するコネクタが径方向外方に所定の角度傾斜して突設されると共に、このコネクタに凹所が形成され、この凹所が前記外方部材のインナー側の端部を覆うように嵌合されている請求項1乃至4いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  6. 前記シール部材が複数のシールリップを一体に有し、これらシールリップが前記パルサリングに摺接されている請求項1乃至5いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  7. 前記スリンガの外縁にラジアルリップが一体に接合され、このラジアルリップが前記シール板の芯金に摺接されている請求項1乃至6いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  8. 前記磁気エンコーダがエラストマに磁性体粉が混入されたゴム磁石からなり、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されると共に、前記シール板の芯金がオーステナイト系ステンレス鋼鈑で形成されている請求項1乃至7いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
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