しかしながら、対象エンジン(内燃機関)の排気系全体について考えた場合、上記特許文献1に記載の装置により大気学習を行うだけでは、十分な配慮がなされているとはいえず、未だ改善の余地を残すものとなっている。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、所定の内燃機関の排気系について、より好ましいかたちでその制御や情報の取得を行うことのできる内燃機関排気系の制御装置及び情報取得装置を提供することを主たる目的とするものである。
以下、上記課題を解決するための手段、及び、その作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、内燃機関の排気系に関する所定の制御を行う内燃機関排気系の制御装置において、内燃機関の排気通路にあって該通路内の酸素濃度の変化に応じて出力を変化させる酸素濃度センサについて、そのセンサ出力に関する1乃至複数の所定パラメータである出力パラメータを、前記内燃機関が燃料カット状態にある時に取得するセンサ出力取得手段と、前記センサ出力取得手段により取得された燃料カット時の出力パラメータに基づき、前記酸素濃度センサよりも排気下流側に設けられた排気浄化用フィルタについて、そのフィルタ目詰まり回復処理の開始タイミングを決定するフィルタ回復手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、内燃機関の排気系に関する所定の制御を行う内燃機関排気系の制御装置において、内燃機関の排気通路にあって該通路内の酸素濃度の変化に応じて出力を変化させる酸素濃度センサについて、そのセンサ出力に関する1乃至複数の所定パラメータである出力パラメータを、前記内燃機関が燃料カット状態にある時に取得するセンサ出力取得手段と、前記酸素濃度センサに付着したデポジットを除去するセンサクリーニング処理の開始タイミングを、前記センサ出力取得手段により取得された燃料カット時の出力パラメータに基づいて決定するセンサ回復手段と、を備えることを特徴とする。
発明者は実験等により、車載内燃機関等に用いられる一般的な酸素濃度センサについて、そのセンサ出力が、酸素濃度以外のパラメータとして、主にセンサ付着物(デポジット)と背圧レベル(酸素濃度センサよりも排気下流側の圧力レベル)とにより影響を受けることを見出し、上記各装置を発明した。
具体的には、背圧レベルが大きくなるほど酸素濃度センサのセンサ出力(特に収束値)が大きくなる。そして、背圧レベルは、その酸素濃度センサの排気下流側に設けられた排気浄化用フィルタの状態に応じて変化する。すなわち、フィルタ目詰まり度合が大きくなるほど、ひいてはPM堆積量が多くなるほど、背圧レベルは大きくなる。このため、上記センサ出力から、そのフィルタのPM堆積量、ひいてはそのPMを取り除くためのフィルタ目詰まり回復処理を行うべきタイミングを推定することができる。したがって、請求項1に記載の装置によれば、フィルタ回復手段を通じて、フィルタ目詰まり回復処理の開始タイミングとして、より適切なタイミングを設定することができるようになる。
また、センサ付着物(デポジット)については、センサにデポジットが付着すると、センサ出力の応答性が悪化したり、排気中の酸素濃度が変化したり、センサ自体の特性が変化したりする懸念がある。このため、センサ出力から、そのセンサのデポジット付着量、ひいてはそのデポジットを取り除くためのセンサクリーニング処理を行うべきタイミングを推定することができる。したがって、請求項2に記載の装置によれば、センサ回復手段を通じて、センサクリーニング処理の開始タイミングとして、より適切なタイミングを設定することができるようになる。
さらに、上記請求項1又は2に記載の装置では、燃料カット状態におけるセンサ出力を用いるようにしている。前述したように、こうしたセンサ出力は一般に、酸素濃度センサの大気学習のために取得、保存されている。したがって現状のシステムを利用して、容易に取得することが可能である。また上記所定制御の精度を高める上でも、環境条件の安定する燃料カット中のセンサ出力を用いることは有益である。
このように、上記請求項1又は2に記載の装置によれば、所定の内燃機関の排気系について、より好ましいかたちでその制御を行うことができるようになる。
なお、上記請求項2に記載の装置において、前記センサクリーニング処理としては、例えば前記酸素濃度センサに付着したデポジットと化学反応する添加剤を同センサに対して噴射する添加弁を排気通路に設けて、その添加剤によりデポジットを反応除去させることによって、あるいは適宜の電気ヒータを前記酸素濃度センサに設けて、この電気ヒータの駆動によりデポジットを燃焼除去することによって実現する構成が考えられる。しかしながら、一般的なエンジンシステムへの適用を考えた場合には、請求項3に記載の発明のように、前記酸素濃度センサよりも排気上流側又は排気下流側に対し、PM(粒子状物質)を捕集してその捕集したPMを除去するための再生処理として発熱処理の施される排気浄化用フィルタが配設される構成として、前記センサクリーニング処理についてはこれを、該排気浄化用フィルタの再生処理による発熱を利用して、前記酸素濃度センサに付着したデポジットを除去するものとすることがより有効である。こうした構成であれば、センサのクリーニングと同時に、フィルタの目詰まり回復も行うことができる。なお、排気浄化用フィルタの再生処理による発熱だけではデポジットを燃焼除去するためのエネルギーに満たない場合には、他の手段(例えば上記添加弁や電気ヒータなど)も併用する構成とすることが有効である。
請求項4に記載の発明では、上記請求項3に記載の装置において、前記センサ出力取得手段についてはこれを、前記酸素濃度センサ及び前記排気浄化用フィルタがそれぞれ初期状態(新品又はそれに準ずる状態)にあるタイミングと、都度のタイミングとについて、それぞれ前記燃料カット状態の出力パラメータを取得するものとし、前記センサ回復手段についてはこれを、該センサ出力取得手段により取得された各タイミングでの出力パラメータを互いに比較することにより、それら出力パラメータの偏差に基づいて、前記センサクリーニング処理の開始タイミングを決定するものとすることが有効である。このように、初期状態の出力パラメータと、現在(都度のタイミング)の出力パラメータとの偏差を参照することで、初期状態からの劣化度合などを把握することができるようになる。したがって上記構成のように、それら出力パラメータの偏差に応じて設定することで、前記センサクリーニング処理の開始タイミングをより適切なタイミングに設定することが可能になる。
請求項5に記載の発明では、上記請求項2〜4のいずれか一項に記載の装置において、前記酸素濃度センサが、センシング部に対するカバーに1乃至複数の通気孔を備えて、該通気孔を通じてセンシング部に取り込まれた排気の酸素濃度を検出するものであり、前記センサ出力取得手段により取得される出力パラメータの中に、単位時間あたりの出力変化(いわば応答速度)、及び収束値の少なくとも1つが含まれている構成とすることを特徴とする。
一般的な酸素濃度センサは、上記構造を有し、センシング部のカバーに設けられた通気孔を通じて排気を取り込み、その排気について酸素濃度の検出を行っている。そして、このような構造のセンサにおいて、排気中の煤などのデポジットが通気孔に付着してそれら通気孔が塞がれてしまった場合には、センシング部への排気流入が阻害され(ひいてはガス交換量が低下し)、センサ出力の応答性(センサ出力の単位時間あたりの出力変化)が悪化するおそれがある。また、センシング部自体にデポジットが付着(又は被覆)した場合には、その付着物がセンシング部と排気との反応を阻害したり、あるいはその付着物が排気と反応することにより排気中の酸素濃度が変えられてしまったり、あるいは化学反応や浸漬によりセンシング部の特性が変えられてしまったりして、センサ出力の収束値が変化する(例えば性能劣化により出力が低下する)おそれがある。このように、こうした構造のセンサでは、センサ出力に関するパラメータの中でも、特に単位時間あたりの出力変化(応答速度)及び収束値が、前記酸素濃度センサに付着したデポジットに起因した性能劣化に相関した値を示すようになる。したがって、上述のセンサに関する回復制御(センサクリーニング処理)を好適に実現する上では、こうしたパラメータを用いることが特に有益である。
請求項6に記載の発明では、上記請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置において、前記センサ出力取得手段により取得される出力パラメータの中に、前記センサ出力の収束値が含まれており、該センサ出力取得手段により取得されたセンサ出力の収束値が、所定の記憶装置に保存されて別途、前記酸素濃度センサの出力補正に用いられるものである構成とすることを特徴とする。
このように、センサ出力の収束値についてはこれを、前述したセンサの大気学習とフィルタ又はセンサの回復制御とで共用にすることで、上記各装置による制御システムをより効率的に実現することができるようになる。
また発明者は、上記各装置に準ずる機能を有する装置として、請求項7に記載の装置を発明した。すなわち、この請求項7に記載の発明では、内燃機関の排気通路にあって該通路内の酸素濃度の変化に応じて出力を変化させる酸素濃度センサについて、前記内燃機関が燃料カット状態にある時の同センサの出力誤差が、前記酸素濃度センサよりも排気下流側の圧力レベル(背圧レベル)と、前記酸素濃度センサに対するデポジット付着に起因した同センサの性能劣化度合と、の2つによるものであるとして、前記酸素濃度センサの出力に基づいてそれらセンサ排気下流側圧力レベル及びセンサ性能劣化度合の少なくとも一方を検出するとともに、その検出結果に基づいて、所定の制御を行う制御手段を備えることを特徴とする。
発明者の実験等によれば、酸素濃度センサの出力誤差(基準特性からのずれ)は、背圧レベル(センサ排気下流側圧力レベル)による誤差と、センサ性能劣化度合による誤差と、の総和によって近似することができる。このため、酸素濃度センサの出力に基づいて、背圧レベルやセンサ性能劣化度合を検出(推定)することが可能になる。例えば酸素濃度センサの出力誤差から、背圧レベルによる誤差分を除去すれば、センサ性能劣化度合による誤差、ひいてはセンサ性能劣化度合を検出することができる。また同様に、酸素濃度センサの出力誤差から、センサ性能劣化度合による誤差分を除去することで、背圧レベルを検出することもできる。また、センサの背圧レベルが安定しているようなシステムであれば、「酸素濃度センサの出力誤差=センサ性能劣化度合による誤差」として、酸素濃度センサの出力に基づいてセンサ性能劣化度合を検出することができる。
このため、こうした構成によっても、上記請求項1又は2に記載の装置による効果に準ずる効果を得ることができる。なお、所定の制御としては、例えば触媒やDPF等の排気浄化装置に関する制御(例えば上述のフィルタ目詰まり回復処理や補正・診断制御など)や、各種センサに関する制御(例えば上述のセンサクリーニング処理や補正・診断制御など)、消音装置(マフラ)に関する制御(例えば温度制御や補正・診断制御など)、等々の制御を採用することができる。
請求項8に記載の発明では、上記請求項7に記載の装置において、前記酸素濃度センサが、センシング部に対するカバーに1乃至複数の通気孔を備えて、該通気孔を通じてセンシング部に取り込まれた排気の酸素濃度を検出するものであり、前記酸素濃度センサよりも排気下流側に対して、PM(粒子状物質)を捕集する排気浄化用フィルタが設けられており、前記制御手段が、前記酸素濃度センサの単位時間あたりの出力変化(いわゆる応答速度の変化)に基づいて、前記酸素濃度センサの性能劣化に起因した同センサ出力の収束値変化量であるセンサ劣化収束値変化量を推定するとともに、前記酸素濃度センサの出力の収束値からそのセンサ劣化収束値変化量の推定値を減算した結果に基づいて、前記センサ排気下流側圧力レベルを検出するものである、ことを特徴とする。
前述したように、上記構造のセンサでは、通気孔やセンシング部に対するデポジットの付着によって、センサ出力の応答速度や収束値が共に低下する。そしてこの場合、通気孔に対するデポジットの付着量とセンシング部に対するデポジットの付着量とは、同様の傾向で増加すると考えられる。このため通常、応答速度の低下量と収束値の低下量との間には、少なからずの相関がある。上記装置は、こうした相関関係に基づき、センサ出力の応答速度変化に基づいて、センサ劣化収束値変化量を推定するものである。すなわち、酸素濃度センサの出力(収束値)から、センサ劣化収束値変化量(センサ性能劣化度合による誤差分に相当)を除去(減算)することで、背圧レベル(センサ排気下流側圧力レベル)を検出する。こうすることで、背圧レベルを、より容易且つ的確に検出することができるようになる。
請求項9に記載の発明では、上記請求項7に記載の装置において、前記酸素濃度センサよりも排気下流側にフィルタが設けられておらず、前記制御手段が、前記酸素濃度センサの出力の収束値と、所定の基準収束値と、の偏差に基づいて、前記センサ性能劣化度合を検出するものである、ことを特徴とする。
現状における一般的なエンジンシステムにおいてセンサ排気下流側圧力レベル(背圧レベル)に大きな変動を起こし得るものとして有力なものは、同センサの排気下流側に設けられたフィルタ(特に排気浄化用フィルタ)であり、前記酸素濃度センサよりも排気下流側にフィルタが設けられていない場合には、背圧レベルを近似的に一定(すなわち上記所定の基準収束値)とみなすことができる。このため、上記構成のように、酸素濃度センサの出力の収束値と、所定の基準収束値(背圧レベルに相当)と、の偏差に基づいて、センサ性能劣化度合を検出することができるようになる。こうすることで、センサ性能劣化度合を、より容易且つ的確に検出することができるようになる。
請求項10に記載の発明では、上記請求項7に記載の装置において、前記酸素濃度センサよりも排気下流側に対して、PM(粒子状物質)を捕集する排気浄化用フィルタが配設されており、前記制御手段が、前記酸素濃度センサに付着したデポジットを除去するセンサクリーニング処理が行われた直後のセンサ性能劣化度合を第1の所定値と、前記排気浄化用フィルタのフィルタ目詰まり回復処理が行われた直後のセンサ排気下流側圧力レベル(背圧レベル)を第2の所定値と、それぞれみなして、前記酸素濃度センサの出力の収束値に基づいて、その時のセンサ排気下流側圧力レベル及びセンサ性能劣化度合の少なくとも一方を検出するものであることを特徴とする。
システム構成にもよるが、通常、センサクリーニング処理が完全に行われれば、センサの性能劣化を初期(新品の時)に準ずる状態にまで回復させることができる。したがってこのようなシステムでは、クリーニング直後のセンサ性能劣化度合を「0」又はそれに準ずる値とみなす(推定する)ことが可能になる。ただし、センサの経年変化の度合又はクリーニング処理の内容によっては、初期に準ずる状態にまでは回復しないことも考えられる。しかしこの場合も通常、上記センサの経年変化の度合やクリーニング処理の内容等から、クリーニング直後のセンサ性能劣化度合を推定することが可能である。また、フィルタ目詰まり回復処理直後の背圧レベル(センサ排気下流側圧力レベル)も、上記センサ性能劣化度合に準ずる態様で、フィルタの経年変化の度合やフィルタ目詰まり回復処理の内容等により推定可能である。
上記請求項10に記載の発明は、こうした点に鑑みてなされたものであり、例えば「0」又はそれに準ずる値(固定値)や、上記センサの経年変化の度合やクリーニング処理の内容に応じた可変値などを上記第1の所定値に、また例えば「PM堆積量=0」に対応した圧力レベル(固定値)や、上記フィルタの経年変化の度合やフィルタ目詰まり回復処理の内容に応じた可変値などを上記第2の所定値に、それぞれ設定することで、フィルタ目詰まり回復処理直後の背圧レベル及びクリーニング直後のセンサ性能劣化度合の少なくとも一方を検出することできる。詳しくは、フィルタ目詰まり回復処理直後には背圧レベルの値が特定される。このため、酸素濃度センサの出力(収束値)からその背圧レベルの影響分を除去して、その時のセンサ性能劣化度合を検出することが可能になる。また一方、クリーニング直後にはセンサ性能劣化度合の値が特定される。したがって、酸素濃度センサの出力(収束値)からそのセンサ性能劣化度合の影響分を除去して、その時の背圧レベルを検出することが可能になる。
請求項11に記載の発明では、内燃機関の排気通路にあって該通路内の酸素濃度の変化に応じて出力を変化させる酸素濃度センサと、該酸素濃度センサよりも排気下流側にてPM(粒子状物質)を捕集する排気浄化用フィルタとを備えるエンジンシステムに適用され、前記酸素濃度センサに付着したデポジットを除去するセンサクリーニング処理と、前記排気浄化用フィルタのフィルタ目詰まり回復処理とを同時に行う回復手段と、前記回復手段によりセンサクリーニング処理とフィルタ目詰まり回復処理とが同時に行われた場合に、前記酸素濃度センサについて、前記内燃機関が燃料カット状態にある時の同センサの出力誤差が、前記酸素濃度センサよりも排気下流側の圧力レベルと、前記酸素濃度センサに対するデポジット付着に起因した同センサの性能劣化度合と、の2つによるものであるとして、前記回復手段の処理実行直後における前記酸素濃度センサの出力の収束値が所定の範囲にあるか否かに基づいて、前記エンジンシステムの異常診断を行う診断手段と、を備えることを特徴とする。
上述したように、酸素濃度センサの出力誤差(ひいてはセンサ出力自体)は、背圧レベルによる誤差と、センサ性能劣化度合による誤差と、の総和によって近似することができる。また、フィルタ目詰まり回復処理の直後又はセンサクリーニング処理の直後には、それぞれ背圧レベル又はセンサ性能劣化度合を推定することができる。このため、フィルタ目詰まり回復処理及びセンサクリーニング処理を同時に行った場合においては、その処理直後におけるセンサ出力の収束値を概ね予測することができる。しかしながら、エンジンシステムに異常が生じた場合には、実際の値がその予測値とは異なる値を示すことが考えられる。上記請求項11に記載の発明は、こうした点に鑑みてなされたものであり、フィルタ目詰まり回復処理及びセンサクリーニング処理を同時に行ったタイミングの直後におけるセンサ出力(収束値)が許容範囲(例えば上記所定の範囲として設定)にない場合に、エンジンシステムが異常である旨診断するようにしている。こうした構成によれば、エンジンシステムの異常を容易且つ的確に診断することが可能になる。
また発明者は、上記各装置を実現するために用いて有益な装置として、請求項12〜16に記載の装置を発明した。以下、これら各装置について説明する。
まず請求項12に記載の装置では、内燃機関の排気系に関する所定の情報を取得する内燃機関排気系の情報取得装置において、内燃機関の排気通路にあって該通路内の酸素濃度の変化に応じて出力を変化させる酸素濃度センサについて、そのセンサ出力に関する1乃至複数の所定パラメータである出力パラメータを、前記内燃機関が燃料カット状態にある時に取得するセンサ出力取得手段と、前記センサ出力取得手段により取得された燃料カット時の出力パラメータに基づき、前記酸素濃度センサよりも排気下流側の圧力レベル(背圧レベル)に関する所定パラメータの値を推定する背圧レベル推定手段と、を備えることを特徴とする。
上述のように、酸素濃度センサのセンサ性能劣化度合を一定とみなせる場合や、こうしたセンサ性能劣化度合を別途、正確に検出することができる場合には、同センサのセンサ出力から、センサ性能劣化度合の影響分を除去して、背圧レベル(又はその相関パラメータ)を推定することができる。上記請求項12に記載の発明は、こうした点に鑑みてなされたものであり、こうした構成であれば、背圧レベルに関する所定パラメータ(背圧レベル自体も含む)の値をより容易且つ的確に推定することが可能になる。
またこの場合、具体的には請求項13に記載の発明のように、前記酸素濃度センサよりも排気下流側に、PM(粒子状物質)を捕集する排気浄化用フィルタが設けられており、前記センサ出力取得手段により取得される出力パラメータが、前記排気浄化用フィルタのPM堆積量である構成とすることが有効である。こうした構成であれば、前記排気浄化用フィルタのPM堆積量を容易且つ的確に推定することが可能になり、ひいてはそのPM堆積量に基づいて、適切なタイミングでフィルタの再生処理を実行することなどが可能になる。
また請求項14に記載の装置では、内燃機関の排気系に関する所定の情報を取得する内燃機関排気系の情報取得装置において、内燃機関の排気通路にあって該通路内の酸素濃度の変化に応じて出力を変化させる酸素濃度センサについて、そのセンサ出力に関する1乃至複数の所定パラメータである出力パラメータを、前記内燃機関が燃料カット状態にある時に取得するセンサ出力取得手段と、前記センサ出力取得手段により取得された燃料カット時の出力パラメータに基づき、前記酸素濃度センサのその時の検出能力を推定するセンサ性能推定手段と、を備えることを特徴とする。
上述のように、背圧レベルを一定とみなせる場合や、背圧レベルを別途、正確に検出することができる場合には、酸素濃度センサのセンサ出力から、背圧レベルの影響分を除去して、センサ性能劣化度合、すなわち同センサのその時の検出能力(又はその相関パラメータ)を推定することができる。上記請求項14に記載の発明は、こうした点に鑑みてなされたものであり、こうした構成であれば、酸素濃度センサのその時の検出能力の値をより容易且つ的確に推定することが可能になる。
またこの場合、具体的には請求項15に記載の発明のように、前記酸素濃度センサが、センシング部に対するカバーに1乃至複数の通気孔を備え、該通気孔を通じてセンシング部に取り込まれた排気の酸素濃度を検出するものであり、前記センサ出力取得手段により取得される出力パラメータが、単位時間あたりの出力変化、及び収束値のいずれか一方であり、前記センサ性能推定手段が、前記センサ出力取得手段により取得された燃料カット時の出力パラメータの値が許容範囲にあるか否かに基づいて、前記酸素濃度センサの異常の有無を診断するものである構成とすることが有効である。こうした構成であれば、酸素濃度センサの異常の有無を容易且つ的確に診断することが可能になり、ひいてはその異常時に早期のフェイルセーフ処理を行うことなどが可能になる。
また請求項16に記載の装置では、内燃機関の排気系に関する所定の情報を取得する内燃機関排気系の情報取得装置において、内燃機関の排気通路にあって該通路内の酸素濃度の変化に応じて出力を変化させる酸素濃度センサについて、前記内燃機関が燃料カット状態にある時の同センサの出力誤差が、前記酸素濃度センサよりも排気下流側の圧力レベル(背圧レベル)と、前記酸素濃度センサに対するデポジット付着に起因した同センサの性能劣化度合と、の2つによるものであるとして、前記酸素濃度センサの出力に基づいてそれらセンサ排気下流側圧力レベル及びセンサ性能劣化度合の少なくとも一方を検出するとともに、その検出結果に基づいて、所定状態の検出を行う手段を備えることを特徴とする。
こうした構成によれば、上記センサ排気下流側圧力レベルやセンサ性能劣化度合に関わる所定の状態(上記背圧レベルや、PM堆積量、センサ検出能力のほか、デポジット付着量など)を容易且つ的確に検出することが可能になる。そしてこれにより、それらの情報を用いて、例えばデータ解析や適宜の制御(例えば上述のフィルタやセンサに係る回復制御)などを行うことができるようになる。なお、この請求項16に記載の装置に関しても、上記センサ排気下流側圧力レベル及びセンサ性能劣化度合の少なくとも一方を検出する構成として、上記請求項8〜10のいずれか一項に記載の構成と同様の構成を適用することが有効である。
以下、図1〜図11を参照して、本発明に係る内燃機関排気系の制御装置を具体化した一実施形態について説明する。なお、本実施形態のシステムは、コモンレール式の燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンを制御対象にするエンジン制御システムである。
まず図1を参照して、本実施形態に係るエンジン制御システムの概略構成について説明する。図中の信号線は配線レイアウトに相当する。なお、このシステムの制御対象とするエンジン(図中のエンジン10)としては、4輪自動車(例えばAT車)に搭載される多気筒(例えば直列4気筒)エンジンを想定している。ただし、この図1においては、説明の便宜上、1つのシリンダ(図中のシリンダ20)のみを図示している。このエンジン10は、4ストローク(4×ピストン行程)のレシプロ式ディーゼルエンジン(内燃機関)である。すなわちこのエンジン10では、吸排気弁21,22のカム軸(図示略)に設けられた気筒判別センサ(電磁ピックアップ)にてその時の対象シリンダが逐次判別され、例えば図中のシリンダ20をシリンダ#1とする4つのシリンダ#1〜#4について、それぞれ吸入・圧縮・燃焼・排気の4行程による1燃焼サイクルが「720°CA」周期で、詳しくは例えば各シリンダ間で「180°CA」ずらして、シリンダ#1,#3,#4,#2の順に逐次実行される。これら4つのシリンダ#1〜#4の構成は基本的には同様の構成となっているため、ここでは1つのシリンダ20に注目して、当該システムについての説明を行う。
同図1に示されるように、このシステムは、シリンダ20内での燃焼を通じて生成したトルクにより出力軸であるクランク軸10a(図示部分はクランク軸に装着されたパルサ歯車)を回転させるエンジン10を制御対象として、該エンジン10を制御するための各種センサ及びECU(電子制御ユニット)70等を有して構築されている。以下、制御対象のエンジン10をはじめ、このシステムを構成する各要素について詳述する。
ここで制御対象とされるエンジン10(ディーゼルエンジン)は、基本的には、シリンダブロック20aとシリンダヘッド20bとによりシリンダ(気筒)20が形成されて構成されている。シリンダブロック20aには、冷却水がエンジン10内を循環するための冷却水路(ウォータジャケット)21aと、同水路21a内の冷却水の温度(冷却水温)を検出する水温センサ21bと、が設けられており、その冷却水によりエンジン10が冷却されている。また、シリンダ20内には、ピストン20cが収容され、そのピストン20cの往復動により、エンジン10の出力軸であるクランク軸10aが回転するようになっている。なお、クランク軸10aの外周側には、所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)クランク角信号を出力するクランク角センサ10b(例えば電磁ピックアップ)が配設され、同クランク軸10a(エンジン出力軸)の回転角度位置や回転速度(エンジン回転速度)等が検出可能とされている。
シリンダブロック20a上端面に固定されるシリンダヘッド20bと、シリンダ20内のピストン20c冠面との間には、燃焼室20dが形成されている。シリンダヘッド20bには、燃焼室20dに開口する吸気ポート(吸気口)11と排気ポート(排気口)12とが例えば1つのシリンダに対して2つずつ(計4ポート)形成されている。そして、これら吸気ポート11及び排気ポート12が、それぞれ図示しないカム(詳しくはクランク軸10aと連動するカム軸に取り付けられたカム)によって駆動される吸気弁(吸気バルブ)21と排気弁(排気バルブ)22とにより開閉されるようになっている。さらに、これら各ポートを通じてシリンダ20内の燃焼室20dと車外(外気)とを連通可能にすべく、吸気ポート11には、シリンダ20に外気(新気)を吸入するための吸気管30(吸気通路)が接続され、排気ポート12には、各シリンダから燃焼ガス(排気)を排出するための排気管40(排気通路)が接続されている。
エンジン10の吸気系を構成する吸気管30には、最上流部のエアクリーナ(図示略)を通じて空気中の異物が除去されつつ新気が吸入され、エアクリーナの下流側には、その新気の流量(新気量)を電気信号として検出するエアフロメータ31(例えばホットワイヤ式エアフロメータ)が設けられている。また、このエアフロメータ31の近傍には、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ32が設けられている。さらに、これらエアフロメータ31及び吸気温センサ32よりも下流側には、過給用の吸気コンプレッサ50a(詳しくは後述)と、DCモータ等のアクチュエータによって電子的に開度調節される電子制御式のスロットル弁33(吸気絞り弁)と、このスロットル弁33の開度(スロットル弁開度)や動き(開度変動)を検出するためのスロットル開度センサ33aとが設けられている。
他方、エンジン10の排気系を構成する排気管40には、過給用の排気タービン50b(詳しくは後述)と、排気浄化システムとしてのDPFシステム41とが配設されている。図2に、このDPFシステム41の詳細を示す。
同図2に示されるように、このシステムは、大きくは、排気上流側から、例えば白金系金属等からなる酸化触媒411,414と、排気中のPM(Particulate Matter、粒子状物質)を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)416と、消音装置としてのマフラ45とを有して構成されている。そして、酸化触媒411の排気下流側近傍(触媒出口付近)には、その触媒出口付近での通路内温度(排気温度に相当)を検出する温度センサ412が設けられており、例えば過昇温等を目的として、酸化触媒411の温度(ひいては同触媒411の状態)が検出(推定)可能とされている。さらに、酸化触媒414とDPF416との間には、温度センサ415a(下流側温度センサ)及び差圧センサ415bが設けられており、それら両装置間の排気温度及び排気圧力(ひいては酸化触媒414やDPF416の状態)がそれぞれ検出(推定)可能とされている。他方、DPF416よりも下流側には温度センサ(排気温センサ)は設けられていない。
ここで、上記DPF416は、例えばコーディエライト等の耐熱性セラミックからなる連続再生式のPM除去用フィルタであり、例えば出力トルクを主に生成するためのメイン噴射後のポスト噴射等で捕集PMを繰り返し燃焼除去する(再生処理に相当)ことにより継続的に使用することができるようになっている。また、上記差圧センサ415bは、一端側が大気に開放されることで、DPF416の排気上流側近傍(DPF入口付近)の圧力と外気(大気圧)との差圧を検出するようになっている。そして、この差圧センサ415bにより検出される差圧は、上記DPF416による圧力損失に相当し、上記PM捕集によるDPF416の目詰まりの度合を示すものとなる。こうして、その差圧を参照することにより、上記DPF416にて捕集されたPMの量(PM捕集量)を検出することが可能になっている。
さらに上記酸化触媒414(ひいては温度センサ415a)よりも排気上流側にあって且つ上記温度センサ412よりも排気下流側には、リニア検出式の空燃比センサであるA/Fセンサ42が設けられている。図3に、同センサ42の一例として、いわゆる積層タイプのヒータ付A/Fセンサについて、その(a)概観構造、及び(b)内部構造を示す。なお、この図3において、(a)はそのセンサの概観形状を示す側面図、(b)は同センサの内部構造を示す断面図である。
同図3に示されるように、このセンサ42は、大きくは、ジルコニア(ZrO2)等の
固体電解質からなるセンサ素子421と、このセンサ素子421を加熱するヒータ422(発熱装置)との積層体が、センシング部(ガス検出部)に相当するその先端部において外側カバー427及び内側カバー428により二重に被われて構成されている。ここで、センサ素子421は、例えばアルミナ(Al2O3)からなる基板上に、ガス遮蔽層や拡散抵抗層等と共に形成され、一対の電極に挟まれるセンシング部には所定の電圧が印加されている。また、ヒータ422は、駆動エネルギーが与えられる(通電される)ことで駆動状態(通電状態)となり、その駆動状態で発熱して駆動量(通電量)が大きくなるほど発熱量を大きくするものであり、上記センサ素子421のセンシング部を直接的且つ均一に加熱するように、同基板の所定箇所に(必要があれば複数箇所に分けて)埋め込まれるかたちで形成されている。そして、これらの積層体を被う外側カバー427及び内側カバー428には、センシング対象となる排気を取り入れるための通気孔が側面(孔427a,428a)及び底面(孔427b,428b)に設けられており、これら通気孔を通じて内側カバー428内(センシング部)に取り込まれた排気中の酸素濃度が、センサ素子421によって検出されるようになっている。このセンサ42では、上記外側カバー427及び内側カバー428により通気孔の迷路構造が形成され、こうした通気孔の迷路構造によりこのセンサ(A/Fセンサ42)の耐被水性は高められている。
また、このA/Fセンサ42は、センシング部が所定の動作温度範囲(例えば常温よりも高い温度、より具体的には例えば「700℃」近傍)に加熱された状態(活性化状態)でなければ高い検出能力を発揮しない。したがって本実施形態では、上記A/Fセンサ42(図3)を使用する際に、車載バッテリを電源として、PWM(Pulse Width Modulation)制御により上記ヒータ422の通電量を制御して、センサ素子421の少なくともセンシング部を、上記動作温度範囲に加熱(温度制御)するようにしている。これにより、その活性状態においては、同センサ素子421のセンシング部が、周囲の酸素濃度(すなわち排気中の酸素濃度)に応じて、所定の電圧の印加により発生する電流量を変化させて(例えば酸素濃度に対して電流量をリニアに変化させて)、この電流値をセンサ出力として、上記ECU70へ出力するようになる。詳しくは、ヒータ422で加熱されたセンサ素子421(固体電解質)にECU70から電圧を印加すると、空燃比リーンの場合には排気中の酸素濃度に応じたイオン電流が、また空燃比リッチの場合には排気中の未燃ガス濃度に応じたイオン電流がそれぞれ発生する。このため、センサ素子421の排気側に設けられた拡散抵抗層(図示略)により、排気中の酸素濃度や未燃ガス濃度に応じた電流値がセンサ出力として得られる。なお、同センサ42の動作温度範囲は、例えばセンサ素子421が活性化される温度以上であって、且つ、同センサ素子421に損傷を与えない程度の温度範囲として設定される。また、このA/Fセンサ42においては、上記温度センサ412により、同センサ42周辺の温度(雰囲気温度)が検出(推定)可能とされている。この雰囲気温度は、例えばエンジン始動初期に同センサ42の活性化を促すべく行われるセンサ加熱処理(ヒータ422の駆動)の開始タイミングを決めるためなどに用いられる。以下、再び図1を参照して、本実施形態のエンジン制御システムについての説明を続ける。
同システムの制御対象とされるエンジン10は、燃料供給方式として筒内噴射式を採用している。すなわち、シリンダ20内において燃焼室20dには、図示しないコモンレール(蓄圧配管)から供給された高圧燃料(例えば噴射圧力「1000気圧」以上の軽油)を、同燃焼室20d内へ直接的に噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁としてのインジェクタ15が、さらに設けられている。エンジン10においては、こうしたインジェクタの開弁駆動により各シリンダに対して所要の量の燃料が随時噴射供給されている。すなわち、エンジン10の運転時には、吸気弁21の開動作により吸入空気が吸気管30からシリンダ20の燃焼室20dへ導入され、これがシリンダ20内のピストン20cにより圧縮された後に、上記インジェクタ15から直接的に噴射供給(直噴供給)された燃料と混ざり、混合気の状態で着火(自己着火)、燃焼し、排気弁22の開動作により燃焼後の排気が排気管40へ排出されることになる。
さらに、このシステムにおいて、吸気管30と排気管40との間にはターボチャージャが配設されている。このターボチャージャは、いわゆる可変ノズル式のターボチャージャであり、吸気管30の中途に設けられた吸気コンプレッサ50aと、排気管40の中途に設けられた排気タービン50bとを有し、これらコンプレッサ50a及びタービン50bが、図示しないシャフトにて連結されている。すなわち、排気管40を流れる排気によって排気タービン50bが回転し、その回転力がシャフトを介して吸気コンプレッサ50aへ伝達され、この吸気コンプレッサ50aにより、吸気管30内を流れる空気が圧縮されて過給が行われる。またここで、排気タービン50bは、周知の弁機構からなる可変ノズル機構50cを備え、この可変ノズル機構50cの開閉動作に応じて排気流路の面積が変化することで、同タービン50bにぶつかる排気の流速、ひいては同タービン50bの回転速度も変化するようになっている。このターボチャージャでは、こうした可変ノズル機構50cに対する指令値に基づき、排気タービン50bの回転速度を制御して、このタービン50bの回転に応じた吸気コンプレッサ50aの回転による過給量を可変制御する(ノズルを絞るほど過給量は多くなる)ことができるようになっている。そしてこの過給により、各シリンダに対する吸入空気の充填効率が高められることになる。なお、必要に応じて、吸入空気を冷却するインタクーラ等も、吸気管30に対して設けられる。
またさらに、排気の一部をEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスとして吸気系に
還流させるためのEGR装置も、同じく吸気管30と排気管40との間に配設されている。このEGR装置は、基本的には、吸気管30と排気管40とを連通するように設けられたEGR配管60aと、吸気管30のスロットル弁33よりも排気下流側に設けられた電磁弁等からなるEGR弁60bと、によって構成されている。そして、EGR弁60bのバルブ開度により、EGR配管60aの通路面積、ひいてはEGR率(排気全体に対してシリンダに戻されるEGRガスの占める割合)が調節可能とされている。ちなみに、この調整は、上記A/Fセンサ42(図3)の出力を1パラメータとして行われ、例えばEGR弁60bが全閉された状態では、EGR配管60aが遮断され、EGR量は「0」となる。また必要に応じて、EGRガスを冷却するEGRクーラ等も、EGR配管60aに対して設けられる。このEGR装置では、こうした構成に基づき、EGR配管60aを通じて排気の一部を吸気系に再循環することにより燃焼温度を下げてNOxの発生を低減している。
さらに、上記エンジン10を動力に利用して走行する図示しない車両(例えば4輪乗用車又はトラック等)には、上記各センサの他にも、車両制御のための各種のセンサが設けられている。例えば運転者の要求トルクを車両側に知らせるための運転操作部に相当するアクセルペダルには、同ペダルの状態(変位量)に応じた電気信号を出力するアクセルセンサ71が、運転者によるアクセルペダルの操作量(踏み込み量)を検出するために設けられている。またECU70には、外気の圧力(大気圧)を検出する大気圧センサ72が設けられている。
こうしたシステムの中で、本実施形態の制御装置として機能するとともに、電子制御ユニットとして主体的にエンジン制御を行う部分がECU70である。このECU70(エンジン制御用ECU)は、周知のマイクロコンピュータ(図示略)を備えて構成され、上記各種センサの検出信号に基づいてエンジン10の運転状態やユーザの要求を把握し、それに応じて上記スロットル弁33やインジェクタ15等の各種アクチュエータを操作することにより、その時々の状況に応じた最適な態様で上記エンジン10に係る各種の制御を行っている。例えばエンジン10の定常運転時には、上記各センサの検出信号に基づいて、各種の燃焼条件(例えば噴射時期や燃料噴射量等)を算出するとともに、各種アクチュエータを操作することで、上記各シリンダ内(燃焼室)での燃料燃焼を通じて生成される図示トルク(生成トルク)、ひいては実際に出力軸(クランク軸10a)へ出力される軸トルク(出力トルク)を制御する。なお本実施形態の制御システムでも、周知のディーゼルエンジン用システムと同様、定常運転時には、新気量増大やポンピングロス低減等の目的で、同エンジン10の吸気通路(吸気管30)に設けられた吸気絞り弁(スロットル弁33)が略全開状態に保持される。したがって、定常運転時の燃焼制御(特にトルク調整に係る燃焼制御)としては燃料噴射量のコントロールが主となっている。
またここで、ECU70に搭載されるマイクロコンピュータは、基本的には、各種の演算を行うCPU(基本処理装置)、その演算途中のデータや演算結果等を一時的に記憶するメインメモリとしてのRAM(Random Access Memory)、プログラムメモリとしてのROM(読み出し専用記憶装置)、データ保存用メモリとしてのEEPROM(電気的に書換可能な不揮発性メモリ)やバックアップRAM(ECUの主電源停止後も車載バッテリ等のバックアップ電源により常時給電されているメモリ)、さらにはA/D変換器やクロック発生回路等の信号処理装置、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等といった各種の演算装置、記憶装置、信号処理装置、通信装置、及び電源回路等によって構成されている。そして、ROMには、エンジン制御に係る各種のプログラムや制御マップ等が、またデータ保存用メモリ(例えばEEPROM)には、エンジン10の設計データをはじめとする各種の制御データ等が、それぞれ予め格納されている。
以上、本実施形態に係るエンジン制御システムの構成について詳述した。すなわち、上記システムの搭載された車両では、こうしたシステムによる各種の制御を通じて運転環境の最適化が図られることになる。
また本実施形態でも、特許文献1に記載の装置と同様、上記A/Fセンサ42(図3)について、いわゆる大気学習を行うようにしている。以下、図4〜図6を参照して、この大気学習について説明する。
図4は、上記エンジン10の搭載された車両が高速状態から減速する時を例にとって、この大気学習の一態様を示すタイミングチャートである。なお、同図4中、実線L10aは、エンジン10のエンジン回転速度の推移を、実線L10bは、上記インジェクタ15による燃料噴射量の推移を、それぞれ示している。
同図4に示されるように、この車両は、図中のタイミングt10までは高速での定常運転を行っており、同タイミングt10で、運転者の足がアクセルペダルから離されて減速する。これにより、エンジン10の全シリンダがそれぞれ燃料カットされる。そして、この燃料カット期間においては、排気管40内(ひいてはA/Fセンサ42周辺)が大気状態(酸素濃度「20%」程度)になる。本実施形態では、こうした燃料カット期間を利用して、A/Fセンサ42について、上記大気状態でのセンサ出力を取得、保存するようにしている。これが、いわゆる大気学習である。
図5に、上記A/Fセンサ42(図3)について、その検出部位の酸素濃度とその酸素濃度に対応するセンサ出力(収束値に相当)との関係をグラフとして示す。
このA/Fセンサ42は、同図5に示す許容範囲内(破線Lt1,Lt2にて示す上限許容レベルと下限許容レベルとの間)で使用されるものである。そしてこの際、センサの特性が実線STで示す特性(基準特性)に近いほど、そのセンサの検出精度は高くなる。このため、本実施形態では、経年変化等に起因してセンサ特性と基準特性との間にずれ(センサ出力誤差)が生じた場合には、センサ出力に対する補正係数の値を変更(更新)するなどして、その誤差分を補償するようにしている。詳しくは、本実施形態では、上述の大気学習を行うポイント、すなわち酸素濃度≒「20%」(例えば「21%」)の時について、予め測定された大気雰囲気での正規の値(実線ST)からの乖離量を補償すべく、すなわち当該A/Fセンサ42の出力誤差(出力値の誤差)を補償すべく、上記大気学習後に、その学習値に基づき、センサ出力に係る補正係数を更新するようにしている。こうすることで、センサ出力が補正され、その検出精度が高められることになる。
図6は、この大気学習の処理手順を示すフローチャートである。同図6に示す処理も、基本的には、ECU70でROMに記憶されたプログラムが実行されることにより、所定の条件が成立している間は(例えばエンジン運転中は常時)、所定処理間隔(例えば所定クランク角ごとに又は所定時間周期など)で逐次実行される。また、同図6の処理において用いられる各種パラメータの値は、例えばECU70に搭載されたRAMやEEPROM、あるいはバックアップRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。
同図6に示されるように、この一連の処理に際しては、まずステップS11で、この学習に関連するシステムが正常に作動しているか否かを判断する。次いで、ステップS12で、センサ出力特性の学習を実行すべきか否かを示す所定の実行条件(センサ出力特性の学習を実行すべき場合にのみ成立)が成立しているか否かを判断する。そして、これら各ステップの判断処理により、関連システムが正常に作動しており、且つ、所定の実行条件が成立している旨判断された場合には、次のステップS13へ進むようになる。他方、それ以外の判断がなされている間は、最初のステップS11,S12において、所定の処理間隔で繰り返し上記各判断処理が実行されることになる。
詳しくは、ステップS11では、例えば各センサの出力が正常であること、各アクチュエータが正常に作動している(故障はない)こと、等々の条件(システム作動に関する所定の条件)を全て満足しているか否かを判断する。そしてここで、上記条件を全て満足している旨判断された場合には、関連システムが正常に作動しているとして、次のステップS12へ進む。
このステップS12では、例えばA/Fセンサ42周辺の酸素濃度が安定していることを示す所定の実行条件が満足しているか否かを判断する。例えば、
・エンジン10の全シリンダが燃料カット(トルク生成に係る燃料噴射の休止処理)されていること(例えば図4に示したエンジン減速時)。
・エンジン冷却水温(例えば水温センサ21bによる実測値)が十分高いこと。例えばセンサ測定値が所定値以上(エンジン冷却水温≧所定値)であれば、十分高いとする。
・吸入空気の温度(例えば吸気温センサ32による実測値)が所定範囲内にあること。
・大気圧(例えば大気圧センサ72による実測値)が十分高いこと。例えばセンサ測定値が所定値以上(大気圧≧所定値)であれば、十分高いとする。
・DPF416が再生処理実行中ではなく、且つ、学習処理の実行中に再生処理が実行されないこと。例えばDPF416の上流側の排気温度(例えば温度センサ415aによる実測値)が所定温度以下であること(この温度が高いほど自己着火し易い)、DPF416に堆積されたPM量(例えば差圧センサ415bにより推定)が所定量以下であること(PM堆積量が多いほど自己着火し易い)、等々の条件を全て(ただし部分的としても可)満足した場合に、DPF416が再生処理実行中ではなく、且つ、しばらく再生処理実行の必要はないとする。
等々の条件(いずれもエンジン10の運転条件)を全て(ただし部分的としても可)満足しているか否か(いわば所定の実行条件が満足しているか否か)を判断する。そしてここで、上記条件を全て満足している旨判断された場合には、上記所定の実行条件が成立しているとして、次のステップS13へ進む。
続くステップS13では、その時の、すなわちA/Fセンサ42周辺が大気に準ずる酸素濃度になっている状態での、同センサ42の出力値を逐次取得、保存する。こうして、所定の記憶装置に対し、燃料カットに伴うA/Fセンサ42の出力推移(センサ出力波形)が学習データとして格納されることになる。なお、この学習データは、ECU70の主電源停止後もデータを保持可能とする所定の記憶装置(例えばEEPROMやバックアップRAM)に保存することが有効である。こうすることで、例えばエンジン10が停止され、当該ECU70に対する給電が遮断された後も消去されずに、記憶装置内にデータが不揮発に保持されるようになり、データ解析等についてもこれをより容易に行うことができるようになる。
このステップS13の処理をもって、図6の一連の処理は終了する。そして、この図6の処理に続けて、別ルーチンにおいて、上記ステップS13で取得した学習データのうち、センサ出力波形の収束値(例えば複数回算出したデータの平均値)に基づき、上記A/Fセンサ42についてのセンサ出力補正(補正係数の更新)を行う。本実施形態では、こうして当該A/Fセンサ42の検出精度を高く維持するようにしている。
次に、図7を参照して、上記大気学習により取得、保存された学習データ(センサ出力波形)に基づくDPF416の再生制御について説明する。なお、この図7に示す処理も、基本的には、ECU70でROMに記憶されたプログラムが実行されることにより、所定の条件が成立している間は(例えばエンジン運転中は常時)、所定処理間隔で逐次実行される。また、同図7の処理において用いられる各種パラメータの値も、例えばECU70に搭載されたRAMやEEPROM、あるいはバックアップRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。
同図7に示されるように、この一連の処理に際しては、まずステップS20で、上記図6の処理により学習データが取得されたか否かを判断し、このステップS20で学習データが取得された旨判断された場合にのみ、ステップS21以降の処理を実行する。そうして、ここで学習データが取得された旨判断された場合には(すなわち図6のステップS13にて学習データが取得されるごとに)、その取得された学習データに基づいて、次のステップS21以降の処理を行う。
ステップS21では、A/Fセンサ42及びDPF416がいずれも初期状態(取り付けられたばかりでまだ劣化していない状態、すなわち新品又はそれに準ずる状態)にあるか否かを判断する。そして、このステップS21でいずれも初期状態にある旨判断された場合には、続くステップS21aにおいて、その時の学習データに基づいて、上記A/Fセンサ42の出力の収束値を算出、保存する。ここでは、この初期状態におけるデータを、基準データA1という。他方、ステップS21でいずれかが初期状態にない旨判断された場合には、続くステップS22において、その時の学習データに基づいて、上記ステップS21aと同様、センサ出力の収束値を算出、保存する。ここでは、この現在の状態に関するデータを、現在データB1という。そして、この現在データB1を先の基準データA1と比較することにより、すなわち現在のデータと初期状態のデータとを比較することにより、両者の偏差C1を算出する。
続くステップS23では、そのステップS22で算出した偏差C1が許容レベルよりも大きいか、詳しくは同偏差C1が所定の判定値K1(例えば可変値)以上(C1≧判定値K1)か否かを判断する。
そして、このステップS23で偏差C1が許容レベルよりも大きい(偏差C1≧判定値K1)旨判断された場合には、続くステップS24で、DPF416の再生処理を実行する。すなわち、例えばトルクを主に生成するメイン噴射から所定時間遅れた時期にポスト噴射を行うことにより、排気温度を上昇させるとともに、上記DPF416上流の酸化触媒414(図2)に対して未燃燃料(主にHC)を添加する。こうすることで、その反応熱(酸化反応による発熱)により、捕集PMの燃焼、ひいては同DPF416の再生が行われることになる。
他方、ステップS23で偏差C1が許容レベルよりも大きくない(偏差C1<判定値K1)旨判断された場合には、上記再生処理は行わず、図7の一連の処理を終了する。このように、本実施形態では、DPF416の再生タイミングを、センサ特性の偏差C1と所定の判定値K1との比較(ステップS23)に基づいて決定するようにしている。
次に、図8を参照して、前述した大気学習(図6)により取得、保存された学習データ(センサ出力波形)に基づくセンサクリーニング制御について説明する。なお、この図8に示す処理も、基本的には、ECU70でROMに記憶されたプログラムが実行されることにより、所定の条件が成立している間は(例えばエンジン運転中は常時)、所定処理間隔で逐次実行される。また、同図8の処理において用いられる各種パラメータの値も、例えばECU70に搭載されたRAMやEEPROM、あるいはバックアップRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。
図8の一連の処理でも、ステップS30〜S33,S31aにおいて、先の図7のステップS20〜S23,S21aに準ずる処理、すなわち学習データ取得の有無の判断、センサ及びDPFが初期状態か否かの判断、センサ特性の現在データB2及び偏差C2の算出及び保存、偏差C2の大小判定、センサ特性の基準データA2の算出及び保存を行う。ただし、この図8の処理においては、ステップS31a,S32で、センサ特性を示すパラメータとして、収束値だけでなく、応答性(応答速度)についても、基準データA2、現在データB2、及び偏差C2を算出、保存する。以下、図9を参照して、ステップS32におけるセンサ特性の偏差C2の算出処理について説明する。なお、この図9において、(a)は上記学習データのデータ例を示すグラフであり、(a)中の実線L11aは基準データAの一例を示しており、また実線L11b,L11cはそれぞれ現在データB1の一例を示している。一方、(b)は、上記実線L11a,L11bでそれぞれ示す2種類のデータの応答性、特に(a)中の期間R1でのそれらデータの応答性について、両者を対比して示すものである。
同図9に示されるように、この例では、図8のステップS31aにて、図中に実線L11aで示すようなデータが得られる。このデータは、図中のタイミングt1で燃料カットが開始されたことに基づき、所定の応答速度(応答性)をもって、収束値Y1に収束するようなセンサ出力推移を示している。これに対し、ステップS32では、例えば実線L11aのデータよりも応答速度の小さい(遅い)データ、すなわち実線L11bで示すようなデータや、例えば実線L11aのデータよりも収束値の小さい(例えば収束値Y2)データ、すなわち実線L11cで示すようなデータが得られる。上記センサ特性の偏差C2は、各センサ特性、例えば応答性と収束値とについて別々に算出される。
例えば応答性について上記偏差C2を求める場合には、燃料カットが開始されてからデータが収束するまでの全期間を見るよりも、適当なところに図9中に示すような応答性確認期間R1を設けて、この期間だけに注目する手法が有効である。図9(b)は、こうした期間R1を設けて、上記実線L11bのデータの応答性に関する偏差C2を求める場合の一算出態様を示す図である。すなわちこの例では、実線L11aのデータ(基準データA)が収束するタイミングの近傍に上記期間R1を設けることで、同期間R1内でのデータの傾きに基づき、そのデータの応答速度の大小を算出可能としている。詳しくは、傾きが大きいデータほど、その応答速度は小さいといえる。すなわち、図9(b)の例であれば、傾きの大きい実線L11bのデータの方が、傾きの小さい実線L11aのデータよりも応答速度が小さいことになる。図8のステップS32では、例えばこうした期間R1内の傾きの差として、上記応答性に関する偏差C2を算出することができる。また、その他の手法としては、例えば図9(a)中の収束タイミングt2a,t2の差(=t2−t2a)として、この偏差C2を算出する手法などが考えられる。
一方、収束値について上記偏差C2を求める場合には、単純に収束値の差を求める手法が有効である。例えば上記実線L11cのデータの収束値に関する偏差C2を求める場合には、実線L11aのデータの収束値Y1と実線L11cのデータの収束値Y2との差(Y1−Y2)を、上記収束値に関する偏差C2として用いることができる。なお、このことは、偏差C1についても同様である。
図8の上記ステップS32では、このような処理が行われる。こうして、上記応答性及び収束値に関する偏差C2についてそれぞれ判定値K2(例えば所定の数式に基づく可変値)を用意し、続くステップS33では、各偏差C2とそれに対応する判定値K2とを比較する。そして、これら偏差C2のうち、1つでも判定値K2以上のものがあれば、このステップS33では、上記偏差C2が許容レベルよりも大きい旨判断することとする。
そして、ステップS33で偏差C2が許容レベルよりも大きい(偏差C2≧判定値K2)旨判断された場合には、続くステップS34で、A/Fセンサ42に対するセンサクリーニング処理を実行する。詳しくは、上述のDPF416の再生処理(ポスト噴射)を実行して、その際の排気温度の上昇やDPF416の発熱により、DPF416の上流側に位置するA/Fセンサ42を加熱し、同センサ42(詳しくは図3に示したカバー427,428や、センサ素子421、ヒータ422など)に付着したデポジット(排気中の煤など)を燃焼除去する。また、こうしたDPF416の再生処理だけでは発熱量が不十分である場合には、適宜の電気ヒータをA/Fセンサ42に設けて、DPF416の再生処理による発熱と併せ、この電気ヒータの駆動による発熱も利用して、デポジットを燃焼除去するようにしてもよい。
他方、ステップS33で偏差C2が許容レベルよりも大きくない(偏差C2<判定値K2)旨判断された場合には、上記センサクリーニング処理は行わず、図8の一連の処理を終了する。このように、本実施形態では、A/Fセンサ42に対するセンサクリーニング処理を、センサ特性の偏差C2と所定の判定値K2との比較(ステップS33)に基づいて決定するようにしている。
次に、先の図3に併せ図10及び図11を参照して、図7のステップS23及び図8のステップS33で用いられる判定値をどのような値に設定するか、について説明する。
ところで、図7のステップS23及び図8のステップS33の処理は、A/Fセンサ42のセンサ出力に関する判定を行うものである。発明者は、このセンサ出力について実験等を重ね、このセンサ出力が酸素濃度以外のパラメータによっても影響を受けることを見出した。
例えばA/Fセンサ42のセンサ出力は、同センサ42に付着したデポジット(排気中の煤など)の影響を受ける。
詳しくは、図3に示したように、A/Fセンサ42は、カバー427,428に設けられた通気孔(孔427a,427b,428a,428b)から排気を取り込み、カバー内部のセンシング部(センサ素子421)でその排気中の酸素濃度を検出するようになっている。このため、排気中の煤などのデポジットが通気孔に付着してそれら通気孔が塞がれてしまった場合には、センシング部への排気流入が阻害され(ひいてはガス交換量が低下し)、センサ出力の応答性が悪化するおそれがある。また、センシング部自体にデポジットが付着(又は被覆)した場合には、その付着物がセンシング部と排気との反応を阻害したり、あるいはその付着物が排気と反応することにより排気中の酸素濃度が変えられてしまったり、あるいは化学反応や浸漬によりセンシング部の特性が変えられてしまったりするおそれがある。
このように、センサ出力はセンサ付着物(デポジット)の影響を受ける。そして、こうした付着物によるセンサ出力への影響は、基本的には、センサに対する付着物が多いほどセンサ特性が悪化する傾向にある。このため、こうしたセンサの汚れ度合(付着の程度)は、センサ出力の推移などに基づいて推測することができる。
また、上記A/Fセンサ42のセンサ出力は、同センサ42の背圧レベル(同センサ42よりも排気下流側の圧力レベル)によっても影響を受ける。図10は、それらセンサ出力と背圧レベルとの関係を示すグラフである。この図10において、(a)は同センサ42をDPF416の上流側に設けた場合(詳しくは図2の構成)のセンサ出力を、また(b)は、同センサ42をDPF416の下流側(詳しくは図2におけるDPF416とマフラ45との間)に設けた場合のセンサ出力を、それぞれ示している。
同図10(a)及び(b)に示されるように、いずれの場合も、背圧レベルが大きくなるほどセンサ出力が大きくなる。ただし本実施形態の構成、すなわちA/Fセンサ42をDPF416の上流側に設けた構成(図10(a))においては、マフラ45だけでなくDPF416の影響もある(特にマフラ45に比してDPF416の存在が背圧レベルに与える影響は大きい)ため、同センサ42をDPF416の下流側に設けた場合(図10(b))よりも、DPF416の影響分だけ背圧レベルが大きくなり、センサ出力がより大きく変化するようになる。
またここで、本実施形態の構成(図10(a))における背圧レベルは、DPF416の状態によって変化する。図11に、背圧レベルとDPF416の状態との関係を示す。詳しくは、この図11は、背圧レベルに相関するパラメータである排気抵抗と排気流量とで定義される各状況について、それぞれその状況におけるDPF416の状態を示すグラフである。
同図11に示されるように、図中に実線Lt10cよりも排気抵抗が大きくて実線Lt10bよりも小さい領域として示される状況においては、DPF416は正常(OK)であると考えられる。しかし、図中に実線Lt10cよりも排気抵抗の小さい領域として示される状況、すなわち排気流量が大きくなっても排気抵抗が大きくならない場合には、DPF416にクラック(異常)が発生している可能性が高い。また逆に、図中に実線Lt10bよりも排気抵抗の大きい領域として示される状況(過剰堆積1)、すなわち排気流量の小さな変化で排気抵抗が大きく変化する場合には、DPF416が過剰な量のPMを堆積している可能性が高い。さらに進行して、図中に実線Lt10aよりも排気抵抗の大きい領域として示される状況(過剰堆積2)になると、DPF416のPM堆積量は容量の限界に近い可能性が高い。すなわち、こうした関係に基づいて、背圧レベルからDPF416の状態を推測することができる。
このように、発明者は実験等により、A/Fセンサ42のセンサ出力が、酸素濃度以外のパラメータとして、主にセンサ付着物と背圧レベル(ひいてはDPF416の状態)とにより影響を受けることを明らかにした。したがって、図7のステップS22及び図8のステップS32にて取得される現在データB1,B2は、これらセンサ付着物及び背圧レベルの影響が反映されたものとなっているはずである。これに対し、図7のステップS21a及び図8のステップS31aにて取得される基準データA1,A2は、A/Fセンサ42及びDPF416がいずれも初期状態にある時に取得されるため、これらセンサ付着物と背圧レベルとの影響は含まれないと考えられる。したがって、図7のステップS22及び図8のステップS32にて求められる現在データB1,B2と基準データA1,A2との偏差C1,C2が、上記センサ付着物(デポジット)及び背圧レベルの影響分に相当する。ただしこのままでは、これら2つの影響分の総和しか分からないため、上記判定値K1,K2の設定に際しては、これら2つの影響分を区別して認識することが重要になる。本実施形態では、これら2つの影響分を区別して認識することで、A/Fセンサ42の状態やDPF416の状態を求め、上記判定値K1,K2をその状態に応じて可変設定するようにしている。
具体的には、例えば図7のステップS22の処理は、センサ特性(センサ出力)に基づいて、PM堆積量(背圧レベルに対応)が許容範囲にあるか否かを判定するもの(いわば背圧レベルの大小を検出する処理に相当するもの)である。したがって本実施形態では、この判定に先立ち、センサ出力からデポジット(センサ性能劣化度合)の影響分を除去して、背圧レベル(PM堆積量)のみによるセンサ出力変化について判定を行うべく、判定値K1を補正する(ただし偏差C1を補正してもよい)。この補正に際しては、まず、例えばセンサ出力の応答速度(単位時間あたりの出力変化)に基づいて、同センサ42のデポジット(ひいては同センサ42の性能劣化)に起因したセンサ出力の収束値変化量(センサ劣化収束値変化量)を推定する。そして、このセンサ劣化収束値変化量により、デポジットによるセンサ出力(収束値)の変化量を求め、その分だけ判定値K1を補正する。例えばデポジットの影響により、センサ出力が高くなっていれば、その分だけ判定値K1を高くする(デポジットの影響分を「判定値K1に加算」=「偏差C1に減算」する)。また逆に、センサ出力が低くなっていれば、その分だけ判定値K1を低くする。
一方、例えば図8のステップS32の処理は、センサ特性(センサ出力)に基づいて、A/Fセンサ42の性能劣化度合が許容範囲にあるか否かを判定するもの(いわば同センサ42の性能劣化度合の大小を検出する処理に相当するもの)である。したがって本実施形態では、この判定に先立ち、センサ出力から背圧レベルの影響分を除去して、センサ付着物(デポジット)のみによるセンサ出力変化について判定を行うべく、判定値K2を補正する(ただし偏差C2を補正してもよい)。この補正に際しては、まず、例えばエンジン10の運転履歴又は差圧センサ415bのセンサ出力(フィルタの詰まり度合に相当)に基づいてDPF416のPM堆積量(背圧レベルに対応)を推定する。そして、このPM堆積量により、背圧レベルによるセンサ出力(収束値及び応答速度)の変化量を求め、その分だけ判定値K2を補正する。例えば背圧レベルの影響により、センサ出力が高くなっていれば、その分だけ判定値K2を高くする(背圧レベルの影響分を「判定値K2に加算」=「偏差C2に減算」する)。また逆に、センサ出力が低くなっていれば、その分だけ判定値K2を低くする。なお、デポジット付着量(ひいてはセンサ出力に対する影響分)は、単位時間あたりにA/Fセンサ42に付着するデポジット量を、エンジン10の運転条件に関する所定パラメータ(例えばエンジン回転速度及び燃料噴射量)に基づいて逐次算出するとともに、それら時々の値を積算することによっても求めることもできる。
また、背圧レベルは、車両が走行している場所が高地か低地かによっても変化してしまう。このため、大気圧センサ72のセンサ出力(大気圧相当値)に基づいて、背圧レベルを求める(例えば上記推定値を補正する)構成も有効である。
本実施形態では、図7のステップS23及び図8のステップS33で用いられる判定値K1,K2を、このような態様で設定している。次に、図12を参照して、上記図7及び図8の処理を通じて行われるDPF416及びA/Fセンサ42の再生処理について説明する。なお、図12は、同再生処理の一態様を示すタイミングチャートである。この例では、特にDPF416の再生に注目して、センサ出力の収束値に基づいて再生タイミングが決定される場合を想定している。すなわち、縦軸のセンサ出力は収束値を示している。
同図12に実線L12にて示されるように、この例では、A/Fセンサ42のセンサ出力が時間の経過と共に増加している。これは、DPF416のPM堆積量が、時間の経過と共に増加していくことによる。すなわち、DPF416のPM堆積量が増加すると、A/Fセンサ42の背圧レベルが大きくなり、先の図9に示した関係に従って、同センサ42のセンサ出力が大きくなる。そして、このようにA/Fセンサ42のセンサ出力が増加していくと、やがて図7のステップS23にてその偏差C(初期状態との差)が判定値以上になった旨判断されるようになる。
こうして同ステップS23にて偏差Cが判定値以上になった旨判断された場合には、上述の再生処理が実行され、DPF416が再生される。これにより、PM堆積量、背圧レベル、そして同センサ42のセンサ出力が順に小さくなる。ただし通常、センサ出力は、再生処理を行っても完全には初期状態の値に戻らない。これは、DPF416内の堆積物(スラッジ)などに起因して、A/Fセンサ42の背圧レベルが初期状態よりも高くなることによる。そして通常、このDPF416内の堆積物は、図12に実線L13にて示されるように、時間の経過と共に蓄積されていく。上記DPF416は、こうした堆積物が過剰に蓄積されるまでは、上記再生処理を繰り返し行うことで、PM堆積量を少なく維持して継続的に使用することができる。なお、上記図7及び図8の処理によれば、A/Fセンサ42についても、こうしたDPF416の再生処理に準ずる態様で再生処理が行われることとなる。
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関排気系の制御装置によれば、以下のような優れた効果が得られるようになる。
(1)内燃機関の排気系に関する所定の制御を行う内燃機関排気系の制御装置(ECU70)として、対象内燃機関(エンジン10)の排気通路(排気管40)にあって該通路内の酸素濃度の変化に応じて出力を変化させる酸素濃度センサ(A/Fセンサ42)について、そのセンサ出力に関する所定パラメータ、詳しくは応答性及び収束値等のセンサ特性(出力パラメータ)を、エンジン10が燃料カット状態にある時に取得するプログラム(センサ出力取得手段、図7のステップS21a,S22)と、A/Fセンサ42に付着したデポジットを除去するセンサクリーニング処理、より具体的にはDPF再生処理(図7のステップS24)の開始タイミングを、図7のステップS21a,S22にて取得された燃料カット時のセンサ特性に基づいて決定するプログラム(センサ回復手段、図7のステップS23)と、を備える構成とした。こうすることで、センサクリーニング処理の開始タイミングとして適切なタイミングを設定することができるようになる。そしてこれにより、対象内燃機関(エンジン10)の排気系について、より好ましいかたちで上記制御(すなわちセンサクリーニング処理)を行うことができるようになる。
(2)燃料カット時のセンサ出力を用いるようにした。環境条件の安定する燃料カット中のセンサ出力を用いることは、上記制御の精度を高める上で有益である。
(3)上記システム(図1、図2参照)には、A/Fセンサ42よりも排気下流側に対し、PM(粒子状物質)を捕集してその捕集したPMを除去するための再生処理として発熱処理の施される排気浄化用フィルタ(DPF416)が配設されている。こうした構成において、上記センサクリーニング処理についてはこれを、DPF416の再生処理(フィルタ目詰まり回復処理)による発熱を利用して、A/Fセンサ42に付着したデポジットを除去するものとした。こうすることで、一般的なエンジンシステムに容易に適用することができるようになる。なお、本実施形態では、このセンサクリーニング処理を行うプログラムが「フィルタ回復手段」に相当する。
(4)エンジン10が燃料カット状態にある時の同センサの出力誤差が、A/Fセンサ42排気下流側の圧力レベルと、同センサ42に対するデポジット付着に起因した同センサ42の性能劣化度合と、の2つによるものであるとして、A/Fセンサ42の出力に基づいてそれらセンサ排気下流側圧力レベル及びセンサ性能劣化度合を検出するとともに、その検出結果に基づいて、所定の制御(DPF再生制御及びセンサクリーニング制御)を行うプログラム(制御手段、図7及び図8)を備える構成とした。そして、特に図7のステップS22では、A/Fセンサ42の応答速度(単位時間あたりの出力変化)に基づいて、同センサ42の性能劣化に起因したセンサ出力の収束値変化量(センサ劣化収束値変化量)を推定するとともに、同センサ42の出力の収束値から、そのセンサ劣化収束値変化量の推定値(デポジットの影響分)を減算した結果(詳しくはデポジットの影響分を「判定値K1に加算」=「偏差C1に減算」した結果)に基づいて、背圧レベル(センサ排気下流側圧力レベル)を検出するようにした。詳しくは、背圧レベルを絶対値として検出するのではなく、相対的に背圧レベルが判定値と比較して大きいか小さいか(換言すれば、背圧レベルが許容範囲内にあるか否か)を判定するようにした。こうすることで、背圧レベルを、より容易且つ的確に検出することができるようになる。
(5)図7のステップS21a,S22においては、A/Fセンサ42及びDPF416がそれぞれ初期状態(新品又はそれに準ずる状態)にあるタイミングと、都度のタイミングとについて、それぞれ燃料カット状態のセンサ特性を取得するようにした。そして、図7のステップS23においては、上記ステップS21a,S22にて取得された各タイミングでのセンサ特性を互いに比較することにより、それらセンサ特性の偏差に基づいて、上記センサクリーニング処理の開始タイミングを決定するようにした。こうすることで、同センサクリーニング処理の開始タイミングをより適切なタイミングに設定することが可能になる。
(6)図7のステップS21a,S22にて取得されたセンサ出力の収束値についてはこれを、所定の記憶装置(例えばECU70内のEEPROM)に保存されて別途、上記A/Fセンサ42の出力補正に用いられるものとした。こうして、A/Fセンサ42の大気学習とDPF再生処理とで共通のパラメータを用いる構成とすることで、上記制御システムをより効率的に実現することができるようになる。
(7)A/Fセンサ42として、センシング部に対するカバー427,428に通気孔(孔427a,427b,428a,428b)を備えて、その通気孔を通じてセンシング部に取り込まれた排気の酸素濃度を検出するものを採用した。そして、図7のステップS21a,S22においては、上記A/Fセンサ42のセンサ出力について、その単位時間あたりの出力変化(例えば応答速度)、及び収束値を取得するようにした。センサ付着物や背圧レベルの影響が特に顕著に現れる出力変化や収束値を用いることで、上記DPF再生処理(図7のステップS24)によるA/Fセンサ42及びDPF416の再生制御をより好適に実現することが可能になる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・図8のステップS34のセンサクリーニング処理は、図7のステップS24のDPF再生処理が行われる都度、実行するようにしてもよい。こうした構成であれば、DPF416の再生とセンサクリーニングとを同時に行って、DPF416の再生処理(ポスト噴射)による発熱を有効に利用することができるようになる。
・図12に示したような、DPF416の経年変化(スラッジなど)に起因したセンサ出力変化を知ることができれば、上述の制御をより好適に行うことが可能になる。したがって、DPF416の経年変化に起因したセンサ出力変化と時間との関係を示す手段(例えば予め実験等により作成したマップなど)を備える構成とすることなども有効である。
・上記実施形態では、センサ出力の応答速度に基づいてセンサ劣化収束値変化量を推定するプログラムや、エンジン10の運転履歴又は差圧センサ415bのセンサ出力に基づいてDPF416のPM堆積量を推定するプログラムを備える構成とし、PM堆積量(背圧レベル)やA/Fセンサ42の性能劣化度合を検出するようにした。しかし、これらのプログラムに代わるプログラムとして、A/Fセンサ42に付着したデポジットを除去するセンサクリーニング処理(図8のステップS34)が行われた直後のセンサ性能劣化度合を第1の所定値(固定値でも可変値でも可、例えば「0」)と、DPF416の再生処理(フィルタ目詰まり回復処理、図7のステップS24)が行われた直後の背圧レベル(センサ排気下流側圧力レベル)を第2の所定値(固定値でも可変値でも可、例えば「PM堆積量=0」時の基準値)と、それぞれみなして、A/Fセンサ42の出力の収束値に基づいて、その時の背圧レベル(又はPM堆積量)又はセンサ性能劣化度合を検出するプログラムを備える(又はそれぞれのパラメータについて検出プログラムを備える)構成としてもよい。こうしたプログラムであれば、より簡素なプログラム構成で、上記PM堆積量(背圧レベル)やA/Fセンサ42の性能劣化度合を検出することができるようになる。
・図7のステップS22にて取得したセンサ特性について所定の判定を行うプログラムを設けることにより、内燃機関の排気系に関する所定の情報を取得する内燃機関排気系の情報取得装置(ECU70)として、A/Fセンサ42のセンサ出力に関する所定パラメータ(出力パラメータ)を、エンジン10が燃料カット状態にある時に取得するプログラム(センサ出力取得手段、図7のステップS21a,S22)と、同ステップS21a,S22にて取得された燃料カット時のセンサ特性に基づき、A/Fセンサ42のその時の検出能力を推定するプログラム(センサ性能推定手段、上記新たに設ける判定に係るプログラム)と、を備える構成としてもよい。以下、図13を参照して、図7のステップS22にて取得したセンサ特性に係る良否判定の一態様について説明する。なお、同図13(a)及び(b)は、それぞれ先の図9(a)及び(b)に対応する図である。
同図13(a)及び(b)に示されるように、この例では、図中に一点鎖線Lt11,Lt12にて示されるような判定値を設けることで、センサ出力の収束値や応答速度(応答性)について、その妥当性を判定(診断)するようにしている。例えば収束値については、その値が判定値よりも小さい場合に異常である旨判定する。すなわちこの場合、実線L11a,L11bのデータは正常、実線L11cのデータは異常である旨判定されることになる。また、応答速度については、期間R1内でのデータの傾きが判定値よりも大きい場合に異常である旨判定する。すなわちこの場合、実線L11a,L11cのデータは正常、実線L11bのデータは異常である旨判定されることになる。なお、この判定処理は、A/Fセンサ42のセンサ特性(収束値及び応答速度)が許容範囲にあるか否かに基づいて、A/Fセンサ42の異常の有無を診断するものである。したがってここでは、この判定に先立ち、センサ出力から背圧レベルの影響分を除去(上記実施形態で示した態様に準ずる態様で除去)して、センサ付着物(デポジット)のみによるセンサ出力変化について判定を行うようにする。
そして、例えば図7のステップS23で、こうしたセンサ出力の異常判定(例えばセンサ劣化等に起因する異常の判定)を行って、同センサ出力が異常である旨判定された場合には、A/Fセンサ42(又はその制御部分)に異常があるとして、例えばダイアグコードを不揮発性メモリに記憶させる処理や、所定の警告灯を点灯する処理、警告音を鳴らす処理(所定の音楽やメッセージ等を流す処理も含む)等、所定のフェイルセーフ処理を行うようにする。こうした構成によれば、A/Fセンサ42の異常を容易且つ的確に診断することが可能になる。
・また同様に、図8のステップS32にて取得したセンサ特性について所定の判定を行うプログラムを設けることにより、A/Fセンサ42のセンサ出力に関する所定パラメータ(出力パラメータ)を、エンジン10が燃料カット状態にある時に取得するプログラム(センサ出力取得手段、図8のステップS31a,S32)と、同ステップS31a,S32にて取得された燃料カット時のセンサ特性に基づき、A/Fセンサ42よりも排気下流側の圧力レベル(背圧レベル)に関する所定パラメータの値(例えばDPF416のPM堆積量)を推定するプログラム(背圧レベル推定手段、上記新たに設ける判定に係るプログラム)と、を備える構成として、上述のような診断を行うようにしてもよい。この場合は、DPF416に関する異常を容易且つ的確に診断することが可能になる。
・さらに、A/Fセンサ42に付着したデポジットを除去するセンサクリーニング処理と、DPF416のフィルタ目詰まり回復処理とを同時に行うプログラム(回復手段)と、このプログラムによりセンサクリーニング処理とフィルタ目詰まり回復処理とが同時に行われた場合に、A/Fセンサ42について、エンジン10が燃料カット状態にある時の同センサ42の出力誤差が、同センサ42よりも排気下流側の圧力レベル(背圧レベル)と、同センサ42に対するデポジット付着に起因した同センサ42の性能劣化度合と、の2つによるものであるとして、センサクリーニング処理とフィルタ目詰まり回復処理との同時処理実行直後におけるA/Fセンサ42の出力の収束値が所定の範囲にあるか否かに基づいて、エンジンシステムの異常診断を行うプログラム(診断手段)と、を備える構成として、センサクリーニング処理とフィルタ目詰まり回復処理とを同時に実行した直後のセンサ特性について、先の図13に示したような判定処理を行うようにしてもよい。この場合も、同センサ出力が異常である旨判定されたときには、エンジンシステムに異常(詳しくはA/Fセンサ42やDPF416に関する異常)があるとして、例えばダイアグコードを不揮発性メモリに記憶させる処理や、所定の警告灯を点灯する処理、警告音を鳴らす処理(所定の音楽やメッセージ等を流す処理も含む)等、所定のフェイルセーフ処理を行うようにする。こうした構成によれば、エンジンシステムの異常を容易且つ的確に診断することが可能になる。
・上記実施形態では、一般的なDPF416の再生処理(再生プログラム)を利用して上記A/Fセンサ42のセンサクリーニング処理を行うようにした。しかしこれに限られず、任意の手法でセンサクリーニング処理を行うことができる。例えば電気ヒータ等を同センサ42に設けて、この電気ヒータの駆動のみによりデポジットを燃焼除去するようにしてもよい。あるいは、例えば図14に示すように、A/Fセンサ42に付着したデポジットと化学反応する添加剤を同センサ42に対して噴射する添加弁42aを排気通路に設けて、その添加剤によりデポジットを反応除去させるようにしてもよい。なお、添加剤としては、例えば炭化水素系のエンジン燃料や、一般に排気浄化に用いられている尿素水溶液などを利用することが有効である。また、添加弁42aは、A/Fセンサ42に対して添加剤を付与する際に排気流を利用すべく、同センサ42よりも排気上流側の位置に設けることが有効である。また、同図14中に破線にて示すように、A/Fセンサ42に対向する位置に(例えば鉛直方向下側から添加する態様で)設けてもよい。この添加弁42aの噴射口は、排気による汚染を抑制すべく排気下流側に向けてもよいし、排気流にぶつけて添加剤の微粒化を図るべく排気上流側に向けてもよい。
・上記実施形態では、エンジン減速時の燃料カットを利用してセンサ特性(出力パラメータ)を取得するようにしたが、任意のタイミングの燃料カットを利用することができる。例えばエンジン始動時における短い燃料カット期間を利用してもよい。要は、燃料カット中であればよい。
・エンジン10が燃料カット状態にある時のA/Fセンサ42の出力変化に関する所定パラメータ(収束値や応答速度)が、同センサ42よりも排気下流側の圧力レベル(センサ排気下流側圧力レベル、すなわち背圧レベル)と、同センサ42に対するデポジット付着に起因した同センサ42の性能劣化度合(センサ性能劣化度合)と、の少なくとも一方によるものであることを利用して、上記DPF及びセンサの回復制御以外の制御(例えばマフラ45に関する制御など)を行ったり、それらDPF及びセンサの状態以外の所定状態(例えば排気通路内の所定箇所における圧力や温度など)の検出を行ったりするようにしてもよい。こうした場合も、上記各種情報を的確に検出することが可能になる。そしてこれにより、それらの情報を用いて、例えばデータ解析や適宜の制御などを行うことができるようになる。
・図1及び図2に示したシステム構成は、あくまで本発明の適用可能な構成の一例であり、これを適宜に変更した場合にも本発明を適用することはできる。
例えばA/Fセンサ42よりも排気下流側にフィルタが設けられていない構成、すなわち図15に示すように、上記A/Fセンサ42を、DPF416よりも排気下流側に設けるようにした構成であってもよい。なおこの場合は、A/Fセンサ42周辺の温度(雰囲気温度)を検出(推定)するために、同センサ42の近傍に温度センサ43を設けることが有効である。そしてこの場合は、図10(b)に示したように、センサ出力に対する背圧レベルの変動が小さくなる。このため、背圧レベルを近似的に一定とみなし、A/Fセンサ42の出力の収束値と、所定の基準収束値(背圧レベルに対応した所定値)と、の偏差に基づいて、センサ性能劣化度合を検出することができるようになる。ただし、センサ出力に対する背圧レベルの変動が小さくなることで、センサ出力から背圧レベルを求めることは難しくなる。
また、例えば圧縮着火式のディーゼルエンジンに限られず火花点火式のガソリンエンジン等にも本発明は適用可能であり、またレシプロエンジンに限られずロータリーエンジン等にも本発明は適用可能である。
そして、上記実施形態についてこうした構成の変更を行う場合には、上述した各種の処理(プログラム)についても、その細部を、実際の構成に応じて適宜最適なかたちに変更(設計変更)することが好ましい。
・上記実施形態及び変形例では、各種のソフトウェア(プログラム)を用いることを想定したが、専用回路等のハードウェアで同様の機能を実現するようにしてもよい。
10…エンジン、15…インジェクタ、20…シリンダ(気筒)、41…DPFシステム、42…A/Fセンサ、43…温度センサ、45…マフラ、70…ECU(電子制御ユニット)、411、414…酸化触媒、412…温度センサ、415a…温度センサ、415b…差圧センサ、416…DPF。