JP2009029145A - インクカートリッジ - Google Patents
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Abstract
【課題】インクと接触している状態で温度が上昇し、ケース内部の空気の熱膨張やインクの蒸発が生じてインクが通気フィルタに押しつけられても、インクが漏洩しにくい通気フィルタを備えたインクカートリッジを提供する。
【解決手段】通気孔14に、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材との積層体である通気フィルタ13を取り付ける。通気フィルタ13は、ケース1の内部空間に面し、インク2との接触面となる表面をフッ素樹脂多孔質膜により構成する。
【選択図】図1
【解決手段】通気孔14に、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材との積層体である通気フィルタ13を取り付ける。通気フィルタ13は、ケース1の内部空間に面し、インク2との接触面となる表面をフッ素樹脂多孔質膜により構成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、インクカートリッジに関し、特に、カートリッジ内の正圧または負圧を解放するための通気孔を有するインクカートリッジに関するものである。
従来から、プリンタなどの画像形成装置では、インクカートリッジから印字ヘッドにインクを供給する機構が多用されている。この機構では、予めインクをケースに収容したインクカートリッジがプリンタなどの所定位置に搭載される。この状態で、インクカートリッジは印字ヘッドと導通し、インクが印字ヘッドへと供給される。インク成分の分散媒としては、一般に、水、または水と良好な相溶性を有する有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノールなどの低級アルコール)との混合溶媒が用いられる。
ところが、インクが減少するにつれてインクの液面が下降すると、カートリッジの内部には負圧が生じる。この負圧が大きくなると、インクの正常な流出が妨げられ、印字にかすれが生じてしまう。そこで、ケースに通気孔を設けたインクカートリッジが使用されている。通気孔は、インクカートリッジをプリンタなどに搭載した状態ではインクに浸らない位置に設けられる。しかし、カートリッジの輸送時や保管時には、インクカートリッジが傾けられたり倒されたりして通気孔がインクに浸り、通気孔からインクが漏洩する危険がある。このため、インクカートリッジの通気孔には、空気は通過させるが液体は通過させない通気フィルタを取り付けることが提案されている。通気フィルタとしては、ポリエチレン多孔質膜などのポリオレフィン多孔質膜やポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)多孔質膜などのフッ素樹脂多孔質膜が用いられる。
しかしながら、通気孔に通気フィルタを取り付けたインクカートリッジを用いても、インクと通気フィルタとが接触している状態で温度が上昇すると、インクが通気フィルタに染み込み、漏洩に至る危険がある。これは、ケース内部の空気の熱膨張やインクの蒸発により、ケース内のインクの液面に正圧が加わり、インクが通気フィルタに押しつけられるためである。特に、通気フィルタと通気孔の接合部からインクは漏洩しやすくなる。
そこで、本発明は、通気フィルタ自体を改善することにより、輸送時や保管時におけるインクの漏洩を防止するインクカートリッジを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のインクカートリッジは、インクを収容する空間を有し、通気孔が形成されたケースと、前記通気孔に取り付けられた通気フィルタとを備え、前記通気フィルタが、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材とをそれぞれ少なくとも1層含む積層体であり、前記フッ素樹脂多孔質膜が前記空間に面するように配置されていることを特徴とする。
本発明のインクカートリッジでは、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材との積層体を用いており、フッ素樹脂多孔質膜が通気性支持材により補強されるので、圧力により変形したりすることがない。また、インクと接触するのは、インクをはじく特性を有するフッ素樹脂多孔質膜であるから、通気フィルタへのインクの浸透自体も抑制できる。
また、本発明のインクカートリッジにおいては、通気フィルタの少なくとも1層に撥水撥油処理が施されていることが好ましい。
本発明によれば、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材とをそれぞれ少なくとも1層含み、フッ素樹脂多孔質膜がインク側に面するように配置した通気フィルタを用いることにより、輸送時や保管時におけるインクの漏洩を効果的に防止できるインクカートリッジが提供される。
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のインクカートリッジの一形態を示す断面図である。このインクカートリッジのケース1の内部は、インク2を収容するための空間として使用される。インク2は、インク注入孔11からケース内部へと注入される。インク2を注入した後、インク注入孔11にはキャップ12がはめ込まれる。インク2は、インクカートリッジがプリンタヘッドなどに装着された状態で、インク供給孔3からプリンタヘッドなどの描画装置へと送り込まれる。
キャップ12の内部には、通気孔14が設けられており、この通気孔14を通じてケース1の内部空間と外部空間(大気)とが導通している。通気孔14には、通気フィルタ13が取り付けられている。通気フィルタ13は、通気孔14を覆うようにキャップ12の外側の面に貼り付けられている。通気フィルタ13は、熱融着、接着などにより、キャップ12に固着される。なお、通気フィルタ13は、通気孔14の内部で孔を区切るように配置してもよいが、インク漏洩防止の観点から、ケースに露出している通気孔14を覆うようにケース内面または外面に配置することが好ましい。
なお、通気フィルタ13を備えた通気孔14はケース1に複数設けてもよい。この場合は、複数の通気孔を、インクカートリッジがどのような姿勢におかれても、少なくとも一つの通気孔14がインクに埋没しないように配置することが好ましい。
通気フィルタ13には、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材との積層体が用いられる。この積層体には、少なくとも1層のフッ素樹脂多孔質膜と少なくとも1層の通気性支持材が含まれていればよく、ケースの内部空間(インク収容空間)に面する側がフッ素樹脂多孔質膜であれば、積層数や積層の順序に特に制限はない。
以下、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材とについて説明する。
フッ素樹脂多孔質膜を構成するフッ素樹脂としては、PTFE、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロプレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などが挙げられる。特に、PTFE多孔質膜は、通気性、耐インク性、撥水撥油性に優れているため、目詰まりによる通気性の低下を防いだり、インク漏れを長時間防止することができる。
PTFE多孔質膜を製造する方法の一例を以下に説明する。まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたぺースト状の混和物を予備成形する。液状潤滑剤は、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができて、抽出や加熱により除去できるものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を使用できる。液状潤滑剤の添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が適当である。上記予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行う。次に、予備成形体を、ぺ一スト押出や圧延によってシート状に成形し、このPTFE成形体を少なくとも一軸方向に延伸してPTFE多孔質膜を得る。なお、PTFE成形体の延伸は、液状潤滑剤を除去してから行うことが好ましい。この多孔質膜は、PTFEの融点以上の温度で加熱し焼成したものであってもよい。
フッ素樹脂多孔質膜の平均孔径は、大き過ぎると、膜の強度が低下したり、インクカートリッジの内圧の上昇によってインク漏れが発生しやすくなる。このため、フッ素樹脂多孔質膜の平均孔径は、通常5μm以下、好ましくは0.05〜2μmである。
同様に、フッ素樹脂多孔質膜の膜厚は、薄すぎると、膜の強度が低下したり、インクカートリッジの内圧の上昇によってインク漏れが発生しやすくなる。このため、フッ素樹脂多孔質膜の膜厚は、通常5〜500μm、好ましくは20〜300μmである。
通気性支持材は、材質、構造、形態が特に限定されるものではないが、積層するフッ素樹脂多孔質膜よりも孔径が大きく通気性に優れたものが好ましい。通気性支持材としては、例えば不織布、織布、メッシュ(網目状シート)、その他の多孔質材料を用いることができる。ただし、強度、柔軟性、作業性の観点から不織布が好ましい。さらに、不織布を構成する一部または全部の繊維が芯鞘構造の複合繊維であり、芯成分が鞘成分より相対的に融点が高い合成繊維が好ましい。なお、通気性支持材の材料としては、特に限定されないが、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、芳香族ポリアミドまたはこれらの複合材を用いることができる。
通気性支持材と積層することにより、通気フィルタの強度を向上させることができる。また、フッ素樹脂多孔質膜よりも孔径が大きく通気性に優れた通気性支持材と積層することにより、通気フィルタの目詰まりによる通気性の低下を抑制することができる。また、熱可塑性樹脂材料の通気性支持材と積層することにより、熱融着性を向上させることができる。
通気性支持材とフッ素樹脂多孔質膜とを含む積層体を製造する方法は、特に限定されず、ただ単に重ね合わせるだけでもよいし、例えば、接着剤ラミネート、熱ラミネートなどの方法を適用してもよい。熱ラミネートにより積層する場合は、加熱により通気性支持材の一部を溶融させて融着する方法や、ホットメルトパウダーを界面に介在させて加熱して接着する方法などを採用できる。
また、通気性支持材とフッ素樹脂多孔質膜との積層の順序は特に制限されず、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材とを交互に積層してもよく、フッ素樹脂多孔質膜を連続して重ね合わせた層を含んでいてもよい。PTFE多孔質膜などのフッ素樹脂多孔質膜相互を積層する方法も、特に限定されず、ただ単に重ね合わせるだけでも構わないし、成膜時に圧着積層したり、熱融着してもよい。
通気フィルタの積層構造の例を図2および図3に示す。図2に示した通気フィルタは、通気性支持材7とフッ素樹脂多孔質膜8とを1層ずつ積層した積層体である。この通気フィルタは、フッ素樹脂多孔質膜8がインクを収容する空間に面するように配置される。図3に示した通気フィルタは、1層の通気性支持材7を2層のフッ素樹脂多孔質膜を挟持した積層体である。
なお、通気フィルタは、インクカートリッジの内部と外部との圧力差を迅速に解消できる程度の通気性を有することが好ましく、ガーレー数により表示して、200sec/100ml以下(特に60sec/100ml以下)であることが好ましい。ここで、ガーレー数は、JIS P8117に規定されているガーレー試験法により定められる。
通気フィルタには、インクの性質に応じ、撥水撥油処理を施してもよい。撥水撥油処理は、フッ素樹脂多孔質膜(フッ素樹脂多孔質膜が2層以上のときは少なくとも1層)に施せばよいが、通気性フィルタ全体に施すこともできる。
撥水撥油処理剤としては、具体的には、各種の含フッ素ポリマーを用いることができる。含フッ素鎖を有する高分子は、繊維の表面に低表面自由エネルギーの皮膜を形成し、撥水撥油効果を発揮する。含フッ素ポリマーとしては、パーフルオロアルキル基を有する高分子が好ましい。パーフルオロアルキル基を有するポリマーとしては、フロラード(住友スリーエム社製)、テックスガード(ダイキン社製)、ユニダイン(ダイキン社製)、スコッチガード(住友スリーエム社製)、アサヒガード(旭硝子社製)などの市販の撥水撥油処理剤を用いることができる。撥水撥油処理は、撥水撥油処理剤への含浸、同処理剤の塗布、スプレーなどにより行えばよい。撥水撥油処理剤の塗布量は、充分な撥水撥油性が得られ、かつフィルタの通気性が妨げられないように調整することが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
(実施例1)
PTFE多孔質膜(厚さ:70μm、気孔率:75%、平均孔径:0.6μm、通気度:8sec/100ml)と、PET/PE芯鞘不織布(ユニチカ社製「エルベスTO303WDO」)とを熱ラミネートにより接合して、図2と同様の構成を有する積層体を作製した。
PTFE多孔質膜(厚さ:70μm、気孔率:75%、平均孔径:0.6μm、通気度:8sec/100ml)と、PET/PE芯鞘不織布(ユニチカ社製「エルベスTO303WDO」)とを熱ラミネートにより接合して、図2と同様の構成を有する積層体を作製した。
一方、上記で作製した積層体を通気フィルタとして取り付けた図4に示すカートリッジを得るために、直径2cm、高さ12cmの円筒状のプラスチック製ケース5内に市販の水性インク(表面張力33dyne/cm2)6を4cm2充填した。また、通気孔24として直径5mmの孔が貫通した、ポリプロピレン製のキャップ22を用意した。
PTFE多孔質膜とPET/PE芯鞘不織布とからなる積層体を、通気孔24を覆うようにキャップ22の外側の面に熱融着して通気フィルタ23とした。通気フィルタ23は、PTFE多孔質膜がインク側(ケース内部側)となり、不織布が大気側となるように配置した。
(実施例2)
実施例1と同じPTFE多孔質膜と、別のPTFE多孔質膜(厚さ:20μm、気孔率:93%、平均孔径:0.7μm、通気度:1sec/100ml)とを、実施例1と同じ不織布を介して熱ラミネートにより接合して、図3と同様の構成を有する積層体を作製した。
実施例1と同じPTFE多孔質膜と、別のPTFE多孔質膜(厚さ:20μm、気孔率:93%、平均孔径:0.7μm、通気度:1sec/100ml)とを、実施例1と同じ不織布を介して熱ラミネートにより接合して、図3と同様の構成を有する積層体を作製した。
こうして得た積層体を厚さ20μmのPTFE多孔質膜がインク側となるように配置した点を除いては、実施例1と同様にして、図4に示したようなカートリッジを得た。
(実施例3)
ユニダインTG−725(ダイキン社製)をトルエンで希釈し、固形分5重量%の撥水撥油処理剤を作製した。この処理剤を、実施例1と同じPTFE多孔質膜に塗布し、130℃で3分間加熱して撥水撥油処理を施したPTFE多孔質膜を得た。このPTFE多孔質膜を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、図4に示したようなカートリッジを得た。
ユニダインTG−725(ダイキン社製)をトルエンで希釈し、固形分5重量%の撥水撥油処理剤を作製した。この処理剤を、実施例1と同じPTFE多孔質膜に塗布し、130℃で3分間加熱して撥水撥油処理を施したPTFE多孔質膜を得た。このPTFE多孔質膜を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、図4に示したようなカートリッジを得た。
(比較例1)
不織布と積層することなく、単層で、実施例1と同じPTFE多孔質膜を通気フィルタとして用いた点を除いては、実施例1と同様にして、図4に示したようなカートリッジを得た。
不織布と積層することなく、単層で、実施例1と同じPTFE多孔質膜を通気フィルタとして用いた点を除いては、実施例1と同様にして、図4に示したようなカートリッジを得た。
(比較例2)
実施例1と同様にして作製した積層体を不織布をインク側として配置した点を除いては、実施例1と同様にして、図4に示したようなカートリッジを得た。
実施例1と同様にして作製した積層体を不織布をインク側として配置した点を除いては、実施例1と同様にして、図4に示したようなカートリッジを得た。
上記実施例および比較例により得たカートリッジを、図5に示したように、通気フィルタにインクが接触するように、1回転/2秒で回転させる試験機に投入した。そして、所定回数ごとに試験機を止め、500,000回転までフィルタを目視で観察した。結果を表1に示す。
(表1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
回転数(回数)
100,000 500,000
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 ○ ×
実施例2 ○ ○
実施例3 ○ ○
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
比較例1 × −
比較例2 × −
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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回転数(回数)
100,000 500,000
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実施例1 ○ ×
実施例2 ○ ○
実施例3 ○ ○
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比較例1 × −
比較例2 × −
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表1では、インクのにじみや漏れが観察されなかった場合を○、インクのにじみや漏れが観察された場合を×として表記した。なお、比較例1、2において、インクのにじみは通気フィルタを熱融着により接合した接続部において観察された。
1,5 ケース
2,6 インク
3 インク供給孔
7 通気性支持材
8 フッ素樹脂多孔質膜
11 インク注入孔
12,22 キャップ
13,23 通気フィルタ
14、24 通気孔
2,6 インク
3 インク供給孔
7 通気性支持材
8 フッ素樹脂多孔質膜
11 インク注入孔
12,22 キャップ
13,23 通気フィルタ
14、24 通気孔
Claims (5)
- インクを収容する空間を有し、通気孔が形成されたケースと、前記通気孔に取り付けられた通気フィルタとを備え、前記通気フィルタが、フッ素樹脂多孔質膜と通気性支持材とをそれぞれ少なくとも1層含む積層体であり、前記フッ素樹脂多孔質膜が前記空間に面するように配置されていることを特徴とするインクカートリッジ。
- フッ素樹脂多孔質膜の少なくとも1層に撥水撥油処理が施されている請求項1に記載のインクカートリッジ。
- 前記通気性支持材は、不織布である請求項1または2に記載のインクカートリッジ。
- 前記不織布は、芯鞘構造の複合繊維を含み、前記複合繊維は、芯部分が鞘部分よりも融点が高い請求項3に記載のインクカートリッジ。
- 前記通気性支持材は、熱可塑性樹脂材料からなる請求項1〜3に記載のインクカートリッジ。
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