JP2006088713A - インク容器用通気フィルタ - Google Patents

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浩明 益子
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Abstract

【課題】インクと接触している状態で温度変化が生じ、ケース内部の空気の熱膨張やインクの蒸発が生じてインクが通気フィルタに押し付けられても、インクが漏洩しにくい通気フィルタおよびこの通気フィルタを備えたインク容器を提供する。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂またはポリオレフィン樹脂からなる多孔体と、引張強さが1MPa以上である通気性支持材とをそれぞれ少なくとも一層積層した通気フィルタ5を、インク容器の通気孔に取り付ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、インク容器用通気フィルタとこれを用いたインク容器に関し、さらに詳しくは、インクを収納・保管するための内部空間と外部空間とを導通する通気孔を備えたインク容器、およびこの通気孔に設ける通気フィルタに関するものである。
従来から、プリンタなどの画像形成装置では、インクカートリッジから印字ヘッドにインクを供給する機構が多用されている。この機構では、予めインクを容器に収容したインクカートリッジがプリンタなどの所定位置に搭載される。この状態で、インクはインクカートリッジから印字ヘッドに供給される。インクカートリッジと印字ヘッドとの間に、一時的にインクを収容するインク溜め容器が設けられる場合もある。インク成分の分散媒としては、一般に、水、または水と良好な相溶性を有する有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノールなどの低級アルコール)との混合溶媒が用いられる。
ところが、インクが減少するにつれてインクの液面が下降すると、インクカートリッジの内部やインクの経路には負圧が生じる。この負圧が大きくなると、インクの正常な吐出が妨げられ、印字にかすれが生じてしまう。そこで、インクカートリッジまたはインクの経路に通気孔が設けられている。通気孔は、インクカートリッジをプリンタに搭載した通常の使用状態では、インクに浸らない位置に設けられる。しかし、輸送時や保管時に、プリンタやインクカートリッジが傾けられると、通気孔がインクに浸り、通気孔からインクが漏洩するおそれがある。このため、通気孔には、空気は通過させるが液体は通過させない通気フィルタ、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)多孔体などを取り付けることが提案されている。
さらに最近では、プリンタの印字速度を上げるために、インクカートリッジ内やインク経路を加圧して、インクの吐出を加速することが行われるようになってきた。また、プリンタ周辺の雰囲気温度が上昇すると、インクカートリッジやインク経路のインクが印字ヘッドから漏れるおそれがあるため、印刷終了時にインクカートリッジやインク経路を負圧にしてインクを吸い上げることが行われるようにもなってきた。
このように、通気孔を介して正圧または負圧が加えられることもあるため、通気フィルタには安定してインク漏洩を防止する性能が求められている。そこで、本発明は、高いインク漏洩防止性能を有するインク容器用通気フィルタを提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、この通気フィルタを用いたインク容器を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のインク容器用通気フィルタは、フッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも一方からなる多孔体と、引張強さが1MPa以上である通気性支持材とをそれぞれ少なくとも一層含む積層体であることを特徴とする。なお、本明細書では、引張強さをJIS K 7127に準じて定めるものとする。ただし、試験速度は200mm/分とする。
本発明によれば、PTFEおよびポリオレフィン樹脂の少なくとも一方からなる多孔体と、引張強さが1MPa以上である通気性支持材とをそれぞれ少なくとも一層積層した通気フィルタを用いることにより、輸送時や保管時におけるインクの漏洩を効果的に防止できるインク容器が提供される。
本発明のインク容器用通気フィルタでは、多孔体が通気性支持材により補強され、さらに通気性支持材の引張強さが1MPa以上であるため、高いインク漏洩防止性能を有する。特に、引張強さが高い通気性支持材により補強されているため、加圧や減圧による変形を効果的に抑制できる。また、精度の良い多孔化が容易にできる材料を多孔体に用いているため、通気安定性が高い通気フィルタとすることができる。通気性支持材の引張強さの上限は特に限定されない。ただし、多孔体と通気性支持材とを溶着などにより接合する場合の作業性の観点から、引張強さは1MPa〜1500MPaが好適であり、より好ましくは3MPa〜500MPaである。
本発明の通気フィルタでは、通気性支持材の通気度が、ガーレー数により表示して300秒/100ml以下であることが好ましい。インク容器内外の圧力差を迅速に解消できるからである。なお、本明細書では、ガーレー数をJIS P 8117に規定されているガーレー試験法により定めるものとする。ガーレー数の下限は特に限定されない。ただし、多孔体を補強するという観点から、ガーレー数は0.1秒/100ml〜300秒/100mlが好適であり、より好ましくは0.5秒/100ml〜100秒/100mlである。
また、本発明の通気フィルタでは、積層体の少なくとも一層に撥水撥油処理が施されていることが好ましい。フィルタへのインクの浸透を抑制してインクの漏洩をさらに効果的に抑制できるからである。また、本発明の通気フィルタでは、多孔体がPTFEからなり、かつ通気性支持材が超高分子量ポリエチレンからなることが好ましい。
本発明のインク容器は、インクを収容する空間と、上記記載の通気フィルタが設けられた少なくとも1つの通気孔とを有することを特徴とする。本発明のインク容器は、インク漏洩防止性能が向上したものとなる。
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の通気フィルタを用いたインク容器(インクカートリッジ)の一形態を示す断面図である。このインクカートリッジのケース1の内部は、インク2を収容するための空間として使用される。インク2は、インク注入孔11からケース内部へと注入される。インク2を注入した後、インク注入孔11にはキャップ12がはめ込まれる。インク2はインクカートリッジがプリンタヘッドなどに装着された状態でインク吐出孔14からプリンタヘッドなどの描画装置へと送り込まれる。
キャップ12の内部には通気孔13が設けられており、この通気孔13を通じてケース1の内部空間と外部空間(大気)とが導通している。通気孔13には通気フィルタ5が取り付けられている。通気フィルタ5はインク注入孔11をふさぐように取り付けられたキャップ12に複合化されている。通気フィルタ5は、加熱溶着、超音波溶着、振動溶着、接着、粘着などにより、予めキャップ12に固着しておけばよい。
なお、通気フィルタ5を備えた通気孔13はケースに複数個設けてもよい。この場合は、複数の通気孔を、インクカートリッジの姿勢にかかわらず、少なくとも一つの通気孔が規定量だけ導入されたインクに埋没しないように配置することが好ましい。
通気フィルタ5には、PTFEまたはポリオレフィン樹脂からなる多孔体と通気性支持材との積層体を用いることができる。この積層体には、少なくとも一層の多孔体と通気性支持材とが含まれていればよく、積層数、積層の順序などに特に制限はない。なお、インクの浸透性を低くするためには、インク容器の内部空間(インク収容空間)に面する側が上記多孔体であるほうがよい。したがって、通気フィルタは、上記多孔体が少なくとも一方の面から露出していることが好ましい。
図2は、本発明のインク容器(インクカートリッジ)の別の一形態を示す断面図である。このインクカートリッジでは、通気フィルタ5がインク注入孔11を覆うように直接ケース2に固着されている。なお、図1、図2のいずれの形態でも、インク注入孔から注入する代わりに、通気フィルタを介して減圧しながらインクをインク吐出孔14から吸い上げてケース内部へ導入してもよい。
図3は、本発明のインク容器であるインク溜め容器の一形態を示す断面図である。このインク溜め容器は、通気フィルタ5を介して外部から加圧してインクを吐出孔14から強制的に吐出したり、逆に減圧してインクを吸引孔15から吸引したりする構造を有している。もっとも、本発明は、図1〜図3に示した形態に限らず、インク容器一般に適用できる。
以下、多孔体および通気性支持材について説明する。多孔体としては、フッ素樹脂多孔膜、ポリオレフィン多孔膜を用いることができる。フッ素樹脂としては、PTFE、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ブテンなどが挙げられる。特に、PTFE多孔膜は、通気性、耐インク性、撥水撥油性に優れているため、目詰まりによる通気性の低下を防いだり、インク漏れを長時間防止することができる。
PTFE多孔膜を製造する方法の一例を以下に説明する。まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混和物を予備成形する。液状潤滑剤はPTFEファインパウダーの表面を濡らすことができて、抽出や乾燥によって除去できるものであれば特に制限されず、例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素を使用できる。液状潤滑剤の添加量はPTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が適当である。上記予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行う。次に予備成形体をペースト押出や圧延によってシート状に成形し、このPTFE成形体を少なくとも一軸方向に延伸してPTFE多孔膜を得る。なお、PTFE成形体の延伸は液状潤滑剤を除去してから行うことが好ましい。この多孔体はPTFEの融点以上の温度で加熱し焼成したものであってもよい。
多孔膜の孔径は、大きすぎると膜の強度が低下したり、インク容器の内部の圧力上昇によってインク漏れが発生しやすくなる。このため、多孔膜の平均孔径は通常10μm以下、特に0.01〜5μmが好適である。
同様に、多孔膜の厚さは、薄すぎると多孔体の強度が低下したり、インク容器の内部の圧力上昇によってインク漏れが発生しやすくなる。このため、多孔膜の厚さは、通常2μm以上、特に10〜1000μmが好適である。
通気性支持材は、材質、構造、形態が限定されるものではないが、特に通気フィルタに加圧または減圧する際の応力に対する耐久性を考慮して、引張強さを1MPa以上とする。また、通気度は、ガーレー数で300秒/100ml以下が好ましい。また、インク容器や装着用部品への溶着性という観点からは、通気性支持材は熱可塑性樹脂からなることが好ましく、融点は250℃以下が好適である。
通気性支持材としては、具体的には、ポリオレフィン多孔体、不織布、織布、ネット、メッシュ、スポンジ、フォーム、金属多孔体、金属メッシュ、その他の様々な多孔体材料を用いることができる。強度、弾性、通気性、作業性、溶着性などの観点から、特に超高分子量ポリエチレン多孔体が好ましい。この超高分子量ポリエチレンは、粘度法による平均分子量が30万以上、好ましくは50万〜1000万のものである。
多孔体と通気性支持材との複合化は、ただ単に重ね合わせるだけでもよいし、加熱溶着、超音波溶着、振動溶着などの溶着により接合してもよく、接着剤(感圧性接着剤、ホットメルト接着剤、熱硬化性接着剤など)を用いて接合してもよい。加熱を伴う方法(熱ラミネート)の場合には、通気性支持材の一部を溶融させて融着する方法、粉末状、粒状または網目状などのホットメルト接着剤を界面に介在させて加熱して接合する方法などを採用できる。
上記のように、多孔体と通気性支持材との積層の順序は特に制限されず、多孔体と通気性支持材とを交互に積層してもよく、多孔体を連続して重ね合わせた層を含んでいてもよく、異種の樹脂を含む多孔体を用いてもよい。通気フィルタの複合構造の例を図4および図5に示す。
図4に示した通気フィルタ5は、多孔体6と通気性支持材7とを一層ずつ複合した複合体である。この通気フィルタは多孔体6がインクを収容する空間に面するように配置することが好ましい。図5に示した通気フィルタ5は一層の通気性支持材7を二層の多孔体6で挟持した複合体である。
通気フィルタには、多孔体の性能やインクの性質に応じて、撥水撥油処理を施してもよい。撥水撥油処理は、通気フィルタの多孔体に施すのが好ましいが、通気性支持材に施すこともでき、また、通気フィルタ全体に施してもよい。
撥水撥油処理剤としては、具体的には各種の含フッ素ポリマーを用いることができる。含フッ素鎖を有する高分子は、繊維の表面に低表面エネルギーの皮膜を形成し、撥水撥油効果を発揮する。含フッ素ポリマーとしては、パーフルオロアルキル基を有する高分子が好ましい。パーフルオロアルキル基を有するポリマーとしては、フロラード(住友スリーエム製)、スコッチガード(住友スリーエム製)、テックスガード(ダイキン工業製)、ユニダイン(ダイキン工業製)、アサヒガード(旭硝子製)などの市販の撥水撥油処理剤を用いることができる。撥水撥油処理は、撥水撥油処理剤への含浸、同処理剤の塗布、スプレーなどにより行えばよい。撥水撥油処理剤の塗布量は十分な撥水撥油性が得られ、かつ通気フィルタの通気性が妨げられないように調整することが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
PTFE多孔体(厚さ:85μm、気孔率80%、平均孔径:1μm、ガーレー数:3秒/100ml)と、ポリプロピレン不織布であるシンテックスPS−120(三井化学製、厚さ:0.6mm、引張強さ:6MPa、ガーレー数:1秒/100ml)とを熱ラミネートにより貼り合わせ、図4と同様の構成を有する通気フィルタを作製した。
一方、上記で作製した通気フィルタを取り付けた、図6に示すインク容器を得るために、直径2cm、高さ20cmの円筒状のプラスチック製ケース8内に市販のプリンタ用インク(表面張力33dyne/cm)9を30cm3充填した。また、通気孔23として直径5mmの孔が貫通した、ポリプロピレン製のキャップ22を用意した。また、内径約1mmのインク吐出口24には予め蓋10を取り付けた。そして、PTFE多孔体とポリプロピレン製不織布とからなる上記通気フィルタ5を、通気孔23を覆うようにキャップ22に加熱溶着して一体化した。通気フィルタは、PTFE多孔体がインク側(ケース内部側)となり、不織布が大気側となるように配置した。
ユニダインTG−725(ダイキン工業製)をトルエンで希釈し、固形分5重量%の撥水撥油処理剤を作製した。この処理剤をPTFE多孔体(厚さ:85μm、気孔率75%、平均孔径:0.2μm、ガーレー数:21秒/100ml)に塗布し、130℃で3分間加熱して撥水撥油処理を施したPTFE多孔体を得た。この撥水撥油処理したPTFE多孔体とともに、通気性支持材として、超高分子量ポリエチレン多孔体(粘度法による平均分子量:440万、厚さ:0.5mm、引張強さ:12MPa、ガーレー数:1.5秒/100ml)を用意し、実施例1と同様にして通気フィルタを作製し、さらに実施例1と同様にしてインク容器を得た。
PTFE多孔体に代えてポリプロピレン多孔体(厚さ:10μm、気孔率:50%、平均孔径:0.04μm、ガーレー数:200秒/100ml)を用いた点を除いては、実施例2と同様にして通気フィルタを作製し、さらにインク容器を得た。
(比較例1)
通気性支持材として、ポリウレタン不織布であるタピルスP030UA−00X(東燃タピルス製、厚さ:0.5mm、引張強さ:0.6MPa、ガーレー数:1秒/100ml)を用いた点を除いては、実施例1と同様にして通気フィルタを作製し、さらにインク容器を得た。
(比較例2)
通気性支持材として、ポリプロピレン多孔体(厚さ:0.03mm、引張強さ:0.9MPa、ガーレー数:400秒/100ml)を用いた点を除いては、実施例1と同様にして通気フィルタを作製し、さらにインク容器を得た。
上記の実施例および比較例により得たインク容器を用いて下記の試験を行った。まず、インキ漏れ試験として、図7に示したように通気フィルタにインクが接触するように、1回転1秒で回転させる試験機に投入し、所定回数ごとに試験機を止め、500,000回転までフィルタを目視でインクのにじみや漏れを観察した。インクのにじみや漏れが観察されなかった場合を○、インクのにじみや漏れが観察された場合を×とした。
また、インク吐出試験として、容器を図6に示したように略直立の姿勢に保ち、蓋10を取り外して吐出口24を開放したときに、10秒以内にインクが吐出されるか否かを目視により観察した。吐出された場合を○、吐出されない場合を×とした。
インク漏れ試験およびインク吐出試験の試験の結果を表1に示す。
Figure 2006088713
本発明のインク容器の一形態の断面図である。 本発明のインク容器の別の一形態の断面図である。 本発明のインク容器のまた別の一形態の断面図である。 本発明の通気フィルタの一形態の断面図である。 本発明の通気フィルタの別の一形態の断面図である。 実施例で作製したインク容器の断面図である。 実施例で行った試験におけるインク容器の回転を説明するための図である。
符号の説明
1、8 ケース
2、9 インク
5 通気フィルタ
6 多孔体
7 通気性支持材
10 蓋
11 インク供給口
12、22 キャップ
13、23 通気孔
14、24 インク吐出口
15 インク吸引孔

Claims (1)

  1. フッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも一方からなる多孔体と、引張強さが1MPa以上である通気性支持材とをそれぞれ少なくとも一層含む積層体であることを特徴とするインク容器用通気フィルタ。
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