JP2009024635A - 内燃機関の排気浄化装置、及び内燃機関の排気微粒子堆積量推定方法 - Google Patents

内燃機関の排気浄化装置、及び内燃機関の排気微粒子堆積量推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸素との反応によるPMの燃焼と、二酸化窒素との反応によるPMの燃焼とをともに考慮してDPFにおけるPM堆積量の推定を行う内燃機関の排気浄化装置、及び排気微粒子堆積量推定方法を提供する。
【解決手段】PMの堆積量を算出するために、酸素との反応によるPMの燃焼量を推定して(S70)、さらに二酸化窒素との反応によるPMの燃焼量も推定して(S80)、これらを合計して(S81)、これを用いて補正後堆積量を算出する(S91)。こうして求められた精度の良い堆積量推定値を用いて、DPF強制再生の実行(S110)のタイミングを決定する(S100)。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関の排気浄化装置、及び内燃機関の排気微粒子堆積量推定方法に関する。
今日、環境保護意識の高まりのなかで内燃機関に対してすぐれた排気浄化性能が求められている。特にディーゼルエンジンにおいては、エンジンから排出される黒煙などのいわゆる排気微粒子(または粒子状物質、パティキュレートマター、PM)の除去がより一層の普及のために重要である。この目的のために排気管の途中にディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)が装備されることが多い。
DPFが、PMを捕集することにより排気中のPMは大部分が除去される。しかしDPF内にPMが堆積し続ける一方では、DPFは目詰まりを起こしてしまうので、堆積されたPMを燃焼して除去することで、DPFを再生する必要がある。DPF内に堆積したPMが酸素との反応で燃焼するために必要な温度は摂氏約500度以上とされるが、排気の温度は通常300度前後なので、PMを酸素との反応で燃焼させるためには、何らかの方法で温度を上げる必要がある。そのために例えば燃料添加等の方法が知られている。
しかしDPFの再生を頻繁に行うと燃費の悪化を招いてしまう。一方DPF再生の回数が少なすぎると、堆積量が過剰となり1回の再生処理において昇温し過ぎてDPFが破損する可能性がある。したがってDPF再生は適切な時期に行わなければならない。そのためにDPFにおけるPMの堆積量を何らかの方法で推定し、その推定値がDPF再生を必要とするレベルに達したら再生を実行するシステムの開発が必要である。
下記特許文献1には、パティキュレートフィルタへの排気微粒子の堆積量の増大による通気抵抗の増大で、パティキュレートフィルタの入口と出口との間の圧力の差である差圧が増大することを利用して、この差圧を検出し、検出差圧が所定値を超えると再生すべき時期と判断する技術が開示されている。
特開平7−332065号公報
DPFの再生においては、上で述べた強制的に温度を上昇させて空気中の酸素との反応でPMを燃焼させる方法の他に、酸化触媒を備えておき、その酸化触媒で二酸化窒素を生成して、それとの反応でPMを燃焼させる方法も知られている。後者の方法では、摂氏250度前後の低温から燃焼させることができ、連続して燃焼させることから、連続燃焼方式や連続再生方式と呼ばれている。
こうした酸化触媒を配置し、そこで生成された二酸化窒素を用いて低温でPMを燃焼させる方式を用いる場合においても、燃え残りの可能性は存在する。したがって、堆積量が多くなったら強制的にPMを燃焼する方式を併用することは有効な方法である。
しかし、その際には、DPFにおけるPMの堆積量の推定において、二酸化窒素との反応による燃焼でPMの堆積量が減少する量を計算することが必要となる。さらにそのときには、同時に酸素との反応による燃焼でのPMの減少量も合わせて計算すれば、より精度良くPM堆積量推定値が得られる。しかし例えば上記特許文献1では、二酸化窒素による燃焼と、酸素による燃焼とでPM堆積量が減少することは考慮されていない。
さらに、二酸化窒素との反応によるPMの燃焼量を推定する場合にも、より精度良く推定する方法が用いられるべきである。単にエンジンの運転状態から二酸化窒素の発生量を推定するといった方法よりも、二酸化窒素の発生からPMの燃焼までの各段階に即して、より多段階の推定を用いれば推定の精度が上がることが期待される。しかし上記特許文献1を含めた従来技術では、こうした多段階の推定は行われていない。
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、酸素との反応によるPMの燃焼と、二酸化窒素との反応によるPMの燃焼とがともに起こり得る状況において、両現象を考慮することによりパティキュレートフィルタにおけるPMの堆積量を精度良く推定する内燃機関の排気浄化装置、及び内燃機関の排気微粒子堆積量推定方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記課題を達成するために、第1の本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、排気通路の途中に、排気微粒子を捕集するパティキュレートフィルタを有する内燃機関の排気浄化装置であって、前記パティキュレートフィルタの内部の温度を取得する温度取得手段と、前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を取得するガス濃度取得手段と、前記パティキュレートフィルタに捕集された排気微粒子の堆積量を推定する推定手段と、前記推定手段により推定された前記パティキュレートフィルタに捕集された排気微粒子の堆積量の推定値が所定の再生開始堆積量を超えたら、前記堆積された排気微粒子を燃焼して前記パティキュレートフィルタを再生する再生手段とを備え、前記推定手段は、前記温度取得手段により取得された前記温度と、前記ガス濃度取得手段により取得された前記ガスの濃度を用いて、前記堆積量の推定値を補正する補正手段をさらに備えたことを特徴とする。
これにより、本発明の内燃機関の排気浄化装置においては、温度取得手段によりパティキュレートフィルタの内部温度を取得し、ガス濃度取得手段でパティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を取得し、これらの数値を用いて補正手段によって排気微粒子の堆積量を補正するので、パティキュレートフィルタ内部温度から酸素との反応による排気微粒子の燃焼量推定値を求め、パティキュレートフィルタ流入ガス濃度からガスとの反応による排気微粒子の燃焼量推定値を求めることができ、これらをともに堆積量の補正に用いることができる。したがって、上記2つの燃焼量のうちどちらか一方のみを用いた推定方法等と比して、パティキュレートフィルタにおける排気微粒子の堆積量をより精度良く求めることができる。これによりパティキュレートフィルタの強制再生のタイミングを適切に決定できるので、そのタイミングが早すぎることによる燃費の悪化や、遅すぎることによる堆積量過剰や再生における過昇温を回避する可能性が高まる。
また、前記パティキュレートフィルタに流入するガスは二酸化窒素であるとしてもよい。
これにより、パティキュレートフィルタに流入するガスとして二酸化窒素を用いるので、二酸化窒素との反応による排気微粒子の燃焼量を求めることができ、酸素との反応による燃焼と合わせて、排気微粒子の堆積量を精度良く推定することができる。これによりパティキュレートフィルタの強制再生のタイミングを適切に決定できるので、そのタイミングが早すぎることによる燃費の悪化や、遅すぎることによる堆積量過剰や再生における過昇温を回避する可能性が高まる。
また、前記パティキュレートフィルタ内に担持された酸化触媒、あるいは前記パティキュレートフィルタよりも上流に配置された触媒部に担持された酸化触媒と、その酸化触媒の温度を取得する触媒温度取得手段と、前記内燃機関から排出される窒素酸化物濃度を取得する窒素酸化物濃度取得手段と、前記パティキュレートフィルタに流入する二酸化窒素の濃度を、前記触媒温度取得手段により取得された前記酸化触媒の温度と、前記窒素酸化物濃度取得手段により取得された窒素酸化物濃度とより算出する算出手段とを備え、前記推定手段において用いられる二酸化窒素の濃度は、前記算出手段により算出された二酸化窒素の濃度であるとしてもよい。
これにより、パティキュレートフィルタに流入するニ酸化窒素の濃度を、算出手段によって、酸化触媒の温度と窒素酸化物濃度とより算出するので、二酸化窒素の濃度を精度良く推定することができる。したがって、二酸化窒素との反応による排気微粒子の燃焼量を精度良く求めることができ、酸素との反応による燃焼と合わせて、排気微粒子の堆積量を精度良く推定することができる。これによりパティキュレートフィルタの強制再生のタイミングを適切に決定できるので、そのタイミングが早すぎることによる燃費の悪化や、遅すぎることによる堆積量過剰や再生における過昇温を回避する可能性が高まる。
さらに、前記補正手段において、前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度が高い程、前記堆積量の単位時間当たりの減少量が大きくなるとの補正を行うとしてもよい。
これにより、パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度が高い程、前記堆積量の単位時間当たりの減少量が大きくなるとの性質を用いるので、ガスとの反応による排気微粒子の燃焼量の推定を精度良く行うことができる。したがって、酸素との反応による燃焼量の推定と合わせて、排気微粒子の堆積量の推定の精度を上げる可能性が高められる。よって、パティキュレートフィルタの強制再生のタイミングを適切に決定できるので、そのタイミングが早すぎることによる燃費の悪化や、遅すぎることによる堆積量過剰や再生における過昇温を回避する可能性が高まる。
また、前記ガス濃度取得手段は、前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を、前記内燃機関の運転状態に応じて算出するガス濃度マップを備え、そのガス濃度マップにより前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を算出するとしてもよい。
これにより、予め求めておいたマップと内燃機関の運転状態とによって、パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を求めることができる。したがって、ガスの濃度を計測する手段を備えなくても、ガス濃度を推定することができるので、装置構成を簡素化することができる。
また、前記パティキュレートフィルタの入口と出口の圧力の差である差圧を計測する差圧計測手段を備え、前記推定手段における堆積量の推定は、前記差圧計測手段により計測された差圧の計測値と、前記堆積量と前記差圧を2つの軸とする平面上で、直線の傾きは前記差圧の増加分と前記堆積量の増加分との比として、前記堆積量が増加する場合は、堆積量が0の初期点を通る直線である増加第1特性線と、その増加第1特性線上の1点を通り前記第1増加特性線よりも小さい傾きの直線である増加第2特性線とを用い、前記堆積量が減少する場合は、前記第2増加特性線上の1点を通り前記増加第1特性線と同じ傾きの直線である低減第1特性線と、その低減第1特性線上の1点と前記初期点とを通り前記増加第2特性線と同じ傾きの低減第2特性線とを用いて行われるとしてもよい。
これにより、推定手段が、排気微粒子の堆積量の推定を、堆積時及び燃焼時の特性を表す増加第1特性線と増加第2特性線と低減第1特性線と低減第2特性線とを用いて推定するので、排気微粒子の堆積量を精度良く推定することができる。よって、パティキュレートフィルタの強制再生のタイミングを適切に決定できるので、そのタイミングが早すぎることによる燃費の悪化や、遅すぎることによる堆積量過剰や再生における過昇温を回避する可能性が高まる。
第2の本発明に係る内燃機関の排気微粒子堆積量推定方法は、内燃機関の排気通路の途中に、排気微粒子を捕集するパティキュレートフィルタを有し、前記パティキュレートフィルタの内部の温度を取得する温度取得手段と、前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を取得するガス濃度取得手段と、前記パティキュレートフィルタに捕集された排気微粒子の堆積量を推定する推定手段と、前記推定手段により推定された前記パティキュレートフィルタに捕集された排気微粒子の堆積量の推定値が所定の再生開始堆積量を超えたら、前記堆積された排気微粒子を燃焼して前記パティキュレートフィルタを再生する再生手段とを備え、前記推定手段は、前記温度取得手段により取得された前記温度と、前記ガス濃度取得手段により取得された前記ガスの濃度を用いて、前記堆積量の推定値を補正する補正手段をさらに備えたことを特徴とする。
これにより、本発明に係る内燃機関の排気微粒子堆積量推定方法は、温度取得手段によりパティキュレートフィルタの内部温度を取得し、ガス濃度取得手段でパティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を取得し、これらの数値を用いて補正手段によって排気微粒子の堆積量を補正するので、パティキュレートフィルタ内部温度から酸素との反応による排気微粒子の燃焼量推定値を求め、パティキュレートフィルタ流入ガス濃度からガスとの反応による排気微粒子の燃焼量推定値を求めることができ、これらをともに堆積量の補正に用いることができる。したがって、上記2つの燃焼量のうちどちらか一方のみを用いた推定方法等と比して、パティキュレートフィルタにおける排気微粒子の堆積量をより精度良く求めることができる。これによりパティキュレートフィルタの強制再生のタイミングを適切に決定できるので、そのタイミングが早すぎることによる燃費の悪化や、遅すぎることによる堆積量過剰や再生における過昇温を回避する可能性が高まる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置1の実施例1の概略図である。
本実施例においては内燃機関として4気筒のディーゼルエンジン20(エンジン)を用いることとする。エンジン20に備えられた吸気マニホールド21は吸気管10に接続され、この吸気管10を通って吸気(空気)が供給される。吸気管10には、吸気マニホールド21の上流側にエアフローメータ11が配置されている。このエアフローメータ11によって吸気の流量が計測され、その数値はECU60へと送られる。ここで流量は例えば単位時間当たりの質量流量とすればよい。
またエンジン20に備えられた排気マニホールド22には排気管30が接続され、エンジン20からの排気がこの排気管30を通って外部へと排出される。排気管30には、パティキュレートフィルタ50(DPF)が配置されている。DPF50の構造としては、例えばコーディライトや炭化珪素などの多孔質セラミック製で、代表的な形状であるハニカム構造体において交互に入口側と出口側を目封じした形状とすればよい。こうした形態のフィルタにおける多孔質の隔壁を排気ガスが通過する際に、排気ガス中のPM(すす、SOF,サルフェート等)が隔壁の内部あるいは表面に捕集される。
本実施例ではDPF50の隔壁には白金やパラジウム等の貴金属を主成分とする酸化触媒が担持されているとする。この酸化触媒は、以下で説明するようにPM堆積量に関係する役割を果たす。
DPF50の入口側(上流側)、及び出口側(下流側)には排気温度センサ51,52が装備されており、排気の温度が計測される。排気温度センサ51,52の計測値はECU60へと送られ、後述するDPF50内部の温度推定のために用いられる。さらにDPF50には、DPF50の入口側と出口側の排気圧の差である差圧を計測する差圧センサ53が備えられている。この差圧センサ53の計測値もECU60へと送られ、後述するDPF50におけるPMの堆積量の推定のために使用される。以下で差圧とはDPF50の入口と出口の差圧を指すこととする。
既に言及しているように、エンジン20にはECU60(電子制御装置)が装備されており、エンジン20のための各種情報処理が行われる。上述のとおり、ECU60はエアフローメータ11、排気温度センサ51,52、差圧センサ53からの計測値を取得し、各種制御のためにこうした計測値を用いる。またエンジン20における燃料噴射のタイミングなどもECU60によって制御される。
本実施例ではDPF50におけるPMの堆積量が推定され、その推定値が所定値を超えたら、DPF50に堆積されたPMを強制的に燃焼してDPF50を再生する。本発明のポイントは、以下で詳述するとおり、PM堆積量の推定において酸素との反応によるPMの燃焼と、二酸化窒素との反応によるPMの燃焼とをともに考慮にいれた推定を行うことである。また二酸化窒素によるPMの燃焼量の推定では、二酸化窒素生成部(図1ではDPF50)の内部温度を考慮に入れる等、従来よりも精度の高い推定が行われる。本実施例における、DPF50の堆積量の推定、及び再生の処理手順は図2のフローチャートに示されている。このフローチャートの各手順がECU60によって順次処理される。以下でこれを説明する。
まず手順S10で、DPF50における差圧が計測される。これは差圧センサ53により計測され、ECU60へ計測値が送られる。
次にS20でDPF50の内部温度が取得される。この手順は本実施例では、DPF50の入口側と出口側に備えられた温度センサ51,52の計測値がECU60へ送られ、ECU60に記憶された推定プログラムを用いて、計測値からDPF50内部温度を推定するとすればよい。そのために、予め入口温度、出口温度からDPF50内部温度を推定するプログラムを作成しておく。なお直接DPF50の内部温度を計測するセンサを装備して、これを用いて計測してもよい。
次に、S30で吸気の単位時間当たりの質量流量を計測する。これはエアフローメータ11を用いて計測し、計測値をECU60へ送ればよい。
次にS40で排気ガスの粘度及び密度が算出される。この手順は、予めDPF50の内部温度から、排気ガスの粘度及び密度を求めるマップあるいはプログラムを作成しておき、これをECU60に記憶し、これに従って粘度、密度を推定するとすればよい。このときにS20で求めたDPF50の内部温度を使用すればよい。
次にS50で排気ガスの流速を算出する。算出の手順を以下で説明する。先ず、S30で求めた吸気の単位時間当たりの質量流量を排気ガスの体積流量に変換する。算出は次の式(E1)にしたがって行う。なおV(m/sec)が排気ガスの単位時間あたりの体積流量、G(g/sec)が吸気の単位時間当たりの質量流量、Tdpf(K)がDPF温度、P0(kPa)が大気圧、ΔP(kPa)がDPF50の差圧、Q(cc/sec)が単位時間当たりの燃料噴射量をそれぞれ示している。
V(m/sec)
=[G(g/sec)/28.8(g/mol)]
×22.4×10−3(m/mol)
×[T(K)/273(K)]
×[P0(kPa)/(P0(kPa)+ΔP(kPa))]
+Q(cc/sec)/207.3(g/mol)]
×0.84(g/cc)×6.75(mol)
×22.4×10−3(m/mol)
×[P0(kPa)/(P0(kPa)+ΔP(kPa))] (E1)
式(E1)の第1項は吸気の質量流量を体積流量に変換したものであり、第2項は、噴射燃料の燃焼による吸気から排気ガスへの増量分である。第2項中、0.84(g/cc)は軽油の代表的な液密度である。6.75(mol)は燃料噴射量1(mol)に対する増量分のモル数である。
増量分(6.75(mol))は以下により得ている。軽油の組成は代表的には、C1527.3(分子量207.3)と表され、燃焼時の反応式は次の通りである。
1527.3+21.75O→15CO+13.5H
したがって、燃料噴射量1molに対し、6.75(=(15+13.5)−21.75)molのモル数の増加がある。
また、燃料噴射はECU60で決定される所定の噴射時期にのみ噴射され、間欠的な噴射となる。式(E1)中の燃料噴射量Qは、非噴射期間も合わせた平均的な燃料噴射量である。
式(E1)で求められた排気ガスの単位時間当たりの体積流量を、DPF50の有効通路面積で除すことにより、排気ガスの流速が算出される。以上が手順S50である。
次にS70からS91では、DPF50におけるPMの新規堆積量あるいは堆積量の増加分を算出する。この算出の基本的な考え方は、図3に示されたDPF50の差圧とDPF50におけるPM堆積量との関係、さらには、排気ガスの流速からなされる。ただし図3においては、排気ガスの流速は一定であり、かつDPF50内にPMが堆積するときにはPMの燃焼はなく、PMを燃焼させるときにはPMの新たな堆積はないとした場合のみが示されている。以下でまず、図3を説明する。
図3は本出願人が得ている知見を示したものであり、同図に示されたとおり、4つの直線によりDPF50の差圧とDPF50におけるPM堆積量との関係は規定されるとみなされる。4つの直線を初期点100を起点にして時計方向に順に、PM増加第1特性線111(特性線)、PM増加第2特性線112(特性線)、PM低減第1特性線113(特性線)、PM低減第2特性線114(特性線)とする。
PM堆積量がゼロの状態におけるDPF50は初期点100にあり、PMが堆積されるに従い、差圧とPM堆積量を示す点はPM増加第1特性線111上を図示右上方向へ移動する。
そして、ある定められた増加時遷移点101へ到達すると、その後はPM増加第2特性線112上を移動する。PM増加第2特性線112は、図示のとおり、PM増加第1特性線111よりも傾きが小さい。
次に、図3の点102へと達したとする。以下で述べるように点102においてはPMの堆積量が予め設定された所定量を超えているとし、そのためPMを強制的に燃焼させる工程に移るとする。
PMの堆積過程から燃焼過程に移ると、差圧とPM堆積量はPM低減第1特性線113上を図示左下方向へ移動する。PM低減第1特性線113は、PM増加第1特性線111と平行である。なお、もし点102において燃焼行程に移らなければ、そのまま破線115に沿ってPMが堆積を続ける。
そして低減時遷移点103に達すると、それ以後はPM低減第2特性線114上を移動する。PM低減第2特性線114は、PM増加第2特性線112と平行である。こうした移動により最終的に初期点100に戻る。
手順S60では、ECU60は、この図3のDPF50の差圧とDPF50におけるPM堆積量推定値の関係と、S10で求めたDPF50の差圧と、S40で求めた排ガスの粘度・密度と、S50で求めた排ガス流速を用いてDPF50におけるPM堆積量推定値を求める。以上がPMの堆積量算出における基本的な考え方である。
ただし上でも述べたとおり、図3は排気ガスの流速は一定、PMの堆積時はPMの燃焼はなく、PMの燃焼時にはPMの新たな堆積はないとした場合の図であり、実際の状況においては、堆積しながら同時の燃焼するといった現象を考慮に入れて補正が行われる。これについては次に説明する。また上記4つの特性線のより詳細な論理的説明は後述する。以上の手法にしたがって、後述する手順S90で堆積量が推定される。
S70、S80の手順では、S91でPM堆積量を求める際の補正量を算出する。こうした補正が必要な理由は、上でも述べた通り、DPF50の温度が上昇することによりDPF50に堆積したPMが酸素(O )と反応して燃焼する現象と、酸化触媒により生成された二酸化窒素(NO )とDPF50に堆積されたPMとが反応して、より低い温度でPMが燃焼する現象とが存在することである。
まずS70では、DPF50の温度が上昇することによりDPF50に堆積したPMが酸素(O )と反応して燃焼することによる、DPF50のPM堆積量の補正を行う。具体的にはDPF50の内部温度と、DPF50における瞬時PM燃焼量(PM燃焼速度)との関係を予め求めておいてECU60に記憶しておき、それに従って瞬時PM燃焼量を求めるとすればよい。そのときにS20で取得されたDPF50内部温度を用いればよい。
DPF50の内部温度とDPF50におけるPM燃焼速度との関係は、例えば図8に示された関係となる。図8の関係では、DPF50の温度がPM燃焼開始温度を越えると、堆積されたPMが燃焼を始め、DPF50の温度が上昇するほど、瞬時PM燃焼量が単調増加する傾向が示されている。図8ではさらに、その単調増加の関係が線形関係よりも増加率が速い関係として示されている。こうした関係を、使用するDPF50に対して予め求めておけばよい。S70では、こうして求められた瞬時PM燃焼量を積算してPM燃焼量を求める。
次にS80では、本発明の主要部分に係る二酸化窒素(NO)の作用によるPM堆積量推定値の補正を行う。本実施例では上述のとおりDPF50に酸化触媒が担持されている。これによりエンジン20から排出されたNOxのうち特に一酸化窒素(NO)がこの酸化触媒の作用で二酸化窒素に酸化される。この二酸化窒素が、温度摂氏250度から300度といった、酸素による燃焼よりは低温で、DPF50に堆積したPMと反応することでPMが燃焼する。これによりDPF50におけるPMの堆積量が減少する。手順S80ではこの現象におけるPMの燃焼量を推定する。
手順S80では、エンジン20の運転状態、DPF50の温度と、予め求められた窒素酸化物(NOx)の濃度算出、NO生成率算出、PM燃焼速度算出のマップ等とを用いて、PM燃焼速度の推定値が求められる。S80におけるより詳細な処理手順は図4に示されており、これについては後述する。
次にS81では、S70とS80とで求められたPM燃焼量の和によって合計のPM燃焼量が求められ、これを差圧からPM堆積量を算出する際の補正量とする。
S82では上述したPM燃焼による補正量があるかないかを判断する。この補正量の有無により、PM堆積量を算出する際に以下に述べる通常の特性線を用いるか補正後特性線を用いるかを選択する。したがって補正量が0の場合はS90により通常の特性線よりPM堆積量を算出し、補正量が0でない場合にはS91により補正後特性線を用いてPM堆積量を算出する。手順S90では、ECU60は、上で説明した図3を用いて、図3のDPF50の差圧とDPF50におけるPM堆積量推定値の関係と、S10で求めたDPF50の差圧と、S40で求めた排ガスの粘度・密度と、S50で求めた排ガス流速を用いてDPF50におけるPM堆積量推定値を求める。
補正量がある場合つまりS91では、図3の差圧とPM堆積量推定値の関係を示した図上における移動は図7のようになされる。これを以下で説明する。
図7中、破線で示した堆積特性はDPF50の再生開始までに堆積排気微粒子が燃焼することなく、均一に堆積していったとしたときの堆積特性であり(以下、この堆積特性を標準堆積特性という)、標準堆積特性を表す特性線が前記通常の特性線である。前記のごとく、堆積特性は、増加時がPM増加第1特性線とPM増加第2特性線とからなり、低減時がPM低減第1特性線とPM低減第2特性線とからなる。したがって、堆積排気微粒子が燃焼すると、最初にPM低減第1特性線を辿って圧力損失ΔPが低下することになる。このとき、DPF50の細孔内に詰まった排気微粒子が主に燃焼するから、燃焼後、再び堆積が進行するときの堆積特性は、燃焼により消失した細孔内の堆積排気微粒子の分、遷移点が標準堆積特性の遷移点よりも初期点側に近いものとなる。そして、PM堆積層の厚さの増大が支配要因となるPM増加第2特性線の傾きは変わらないとみてよい。したがって、この燃焼後の圧力損失ΔPおよびPM堆積量がしたがう堆積特性は、標準堆積特性に対して、PM増加第2特性線112がPM堆積量軸の方向に前記積算PM燃焼量だけシフトしたものとなる。これが補正後の特性線112aである。
これにより、PM堆積量の演算に用いられる堆積特性が適正化され、再生開始前において堆積排気微粒子が燃焼することがあっても、PM堆積量を高精度に得ることができる。標準堆積特性の場合には、PM堆積量算出値が実際のPM堆積量よりも小さくなるから、急速燃焼の発生を十分に回避することができない。このため、再生開始量を小さめに設定するなどの措置が必要になって再生頻度が増えるおそれがあるが、本発明によれば再生頻度を適正化することができる。
なお、前記のごとくPM増加第2特性線のシフト量は燃焼により消失した細孔内の堆積排気微粒子の量であるから、上限が決まっており、基本的に増加時遷移点におけるPM堆積量以上にはならない。このときの堆積特性は、初期点を通り傾きが通常特性線と同じ直線で規定される。したがって、S81で、補正量が標準堆積特性の増加時遷移点におけるPM堆積量を越えたら、該PM堆積量に固定する。
なお、上記の操作のなかで、排気ガスの流速の情報を利用すると、以下のようになる。元来、図3に示された4つの特性線111,112,113,114は、上でも触れたように、排気ガスの流速が一定とした場合の特性を示すものである。排気ガスの流速が変動すれば、特性線111,113の傾き、及び特性線112,114の傾きもそれぞれ変動する。このことの理論的説明は後述される。
したがって、図7においても直線112aの傾きは、その時点での排気ガスの流速に応じた値とすることができる。この場合、直線112aは、直線112と平行とは一般にはならず、直線112と直線112aとはその傾きが異なったものとなる。このように排気ガスの流速情報を組み込むことで、より高精度な推定操作を行う可能性が高まる。以上がS91である。
図2に戻り、次にS100でPM堆積量に関する判断処理を行う。これは予め、DPF50における強制的なPM燃焼によるDPF再生処理を行う堆積量を定めておき、堆積量がこの所定値を超えたら、DPF再生を行うとする。S100では、この手順における、DPF50におけるPM堆積量推定値が所定値を超えたかどうかの判断がなされる。
S100でDPF50におけるPM堆積量推定値が所定値を超えたと判断された場合(S100:YES)は、S110へと進む。S100でDPF50におけるPM堆積量推定値が所定値を超えていないと判断された場合(S100:NO)は、再びS10へと戻り、上述と同じ堆積量推定手順が繰り返される。
S110ではDPFの再生処理が実行される。この処理は例えばポスト噴射などによる公知技術により、DPF50に堆積されたPMの燃焼を行えばよい。
S110が終了したら、この一連のDPF堆積量推定・再生処理の手順を終了する。図2の手順は運転中、繰り返し行うこととすればよい。また、再生処理中もS10からS91までの処理によりPM堆積量を推定することができる。
次に、図4に示された二酸化窒素の作用による補正処理を説明する。まずS701でエンジン20の回転数、及び負荷の情報が取得される。エンジン回転数は、図1に図示されていないセンサにより計測されECU60へ送られるとすればよい。負荷あるいはトルクの数値は、図示しないアクセル開度センサにより運転者によるアクセルペダルの操作量が計測され、これがECU60へ送られて推定されるとすればよい。なおトルク値の変わりに燃料噴射量でもよい。その場合、燃料噴射量はECU60により決定されるので、その情報を利用すればよい。
次にS702で窒素酸化物(NOx)の濃度が算出される。このNOx濃度は、S701で求められた回転数、負荷の情報から、マップを参照して求めることとすればよい。このために予め、使用するエンジン20における回転数、負荷と、排出されるNOx濃度の関係をマップとして求めておけばよい。ただしその際にEGRを備えている場合には、EGR率によって上記マップは変化するので、複数のEGR率に対応するマップを求めてECU60に記憶しておき、それらマップの補間によりNOx濃度を求めることとすればよい。
次にS703で二酸化窒素生成部の温度が取得される。本実施例においては、上述のとおり、二酸化窒素はDPF50で生成されるので、二酸化窒素生成部はDPF50である。S703では既に述べた図2のS20で求めたDPF50の内部温度を取得すればよい。
次にS704で二酸化窒素の生成率が算出される。この手順では、例えば図5に例示された二酸化窒素生成部の内部温度と二酸化窒素の生成率との関係を用いて、S703で求められた二酸化窒素生成部の内部温度から二酸化窒素の生成率が求められるとすればよい。このために予め、図5のように、二酸化窒素生成部の内部温度とそこで発生される二酸化窒素の生成率との関係を、使用する機器構成に対して求めておけばよい。
次にS705で二酸化窒素の濃度が算出される。これは、S702で求められたNOx濃度と、S704で求められた二酸化窒素の生成率との積として求められる。
次にS706でDPF50におけるPM燃焼速度が算出される。これは、例えば図6に例示された二酸化窒素濃度とPM燃焼速度との関係と、S705で算出された二酸化窒素の濃度とから求められる。このために予め、図6のように、二酸化窒素濃度とPM燃焼速度との関係を、使用するDPF50を含めた機器構成に対して求めておけばよい。ただし図6は、DPF50の内部温度を一定とした場合の図であり、一般にDPF50の内部温度が変化すると図6のグラフも変化する。したがって、予め複数のDPF50の内部温度における二酸化窒素濃度とPM燃焼速度との関係を求めておき、それらを補間する操作を行うとすればよい。
最後にS707で補正量を算出する。この手順では、S706で求められたPM燃焼速度が積算されてPM燃焼量が求められる。以上が図4の手順である。
以上の手順において、回転数、負荷からNOx濃度を算出し、さらに二酸化窒素生成部温度からに二酸化窒素生成率を算出し、そのうえでNOx濃度と二酸化窒素生成率との積により二酸化窒素濃度を求めた。このように多段階で二酸化窒素濃度を算出することが本発明の特徴のひとつであり、これにより、例えば単に回転数と負荷から二酸化窒素濃度を算出するマップを用意しておくといった従来技術よりも精度のよい二酸化窒素濃度の推定を行うことができる。
次に以下で、図3の4つの特性線のより詳細な理論的説明を行う。以下は本出願人が得ている知見である。上で述べたとおり、特性線111,112は、排気微粒子が堆積していない新品若しくはDPF50を完全に再生した直後の状態から排気微粒子が堆積していくときの圧力損失(差圧)とPM堆積量との関係を示すもので、圧力損失はPM堆積量の増加に応じて上昇する。
上述のとおり、圧力損失とPM堆積量との関係を示す特性線111,112は直線であり、PM堆積量がある大きさになる点(増加時遷移点、または単に遷移点)で、特性線111から特性線112に移り、直線の傾きが不連続に変化する。以下、適宜、増加時遷移点におけるPM堆積量を増加時遷移点堆積量若しくは遷移点堆積量という。PM堆積量が遷移点堆積量を越えると直線の傾きが緩やかになる。
以下で、特性線111と特性線112の傾きが異なることについて微視的な説明を行う。図9(A)、(B)、(C)は、DPF50の隔壁(以下、適宜、DPF壁という)で排気微粒子の堆積が進行していく様子を示しており、(A)、(B)、(C)の順に、PM堆積量が多くなる。矢印300が排気ガスの流れを、301がDPF壁の構成要素を示す。
図9(A)は新品若しくはDPF50を完全に再生した直後の、排気微粒子が堆積していない状態であり、DPF50の隔壁を排気微粒子が透過する際における圧力損失は、DPF50の形状諸元で規定される。
この状態から図9(B)に示すように、排気微粒子が、上流側のDPF壁表面に堆積したり、細孔に詰まって、圧力損失が上昇する。細孔内でのPM堆積部が302で示される。図中、矢印300で示すように、排気ガスは細孔に向かうように流れが形成されるので、最初のうちは細孔が詰まることが圧力損失を上昇させる支配要因となる。
細孔の多くが詰まり、DPF壁表面の全面にPM堆積層が形成されると、今度は、図9(C)に示すように、排気ガス中の排気微粒子によりPM堆積層の厚さが増していくことになる。DPF壁の表層へのPM堆積層が303で示されている。ここでは、DPF壁表面を覆うPM堆積層が厚くなることが圧力損失を上昇させる支配要因となる。
このように、細孔の多くが詰まり、全面にPM堆積層が形成される遷移点の前と後とで圧力損失を上昇させる支配要因が異なる。細孔に排気微粒子が詰まっていない状態では良好に流通が自在であった細孔が、排気微粒子が細孔で捕集されて細孔に詰まると、急激に圧力損失が増大するので、細孔の多くが詰まってしまうまでは、図3に示すように、PM堆積量に対する圧力損失の変化率は比較的大きい(PM増加第1特性線111)。一方、細孔の多くが詰まってしまった以降では圧力損失の上昇の支配要因がPM堆積層が厚くなることに変わるから、PM堆積量に対する圧力損失の変化率は緩やかなものに変わることになる(PM増加第2特性線112)。
次に、図3の特性線113,114は、排気微粒子が堆積した状態から排気微粒子が燃焼してPM堆積量が減少していくときの圧力損失とPM堆積量との関係を示す。PM燃焼時の特性が特性線113,114で表される微視的理由を、図10(A)、(B)、(C)により説明する。図10(A)、(B)、(C)は、DPF50に堆積した排気微粒子が燃焼、消失していく様子を示しており、この順に燃焼が進行する。排気微粒子は堆積時には細孔が詰まりDPF壁表面の全面にPM堆積層が形成された後、その厚さが増していくという過程を経たが、燃焼で低減する場合には、DPF50に担持された酸化触媒に接触する部位から先に燃焼する性質があるとみなされる。それにより、先ず細孔内に詰まった排気微粒子から燃焼、消失し(図10(A)、図10(B))、その後、DPF壁表面の排気微粒子が燃焼、消失していくことになる(図10(C))。
したがって、細孔に詰まった排気微粒子が除去されることで、急速に圧力損失が減少し(PM低減第1特性線113)、細孔の目詰まりの多くが回復し、DPF壁の表面に堆積した排気微粒子が燃焼、消失する段階になると、圧力損失の減少が緩やかになるものと認められる(PM低減第2特性線114)。
図3は以上述べた増加時の堆積特性と低減時の堆積特性とを併せたものである。PM増加第1特性線111は細孔に排気微粒子が詰まっていく過程に対応するものであり、PM低減第1特性線113は細孔に詰まった排気微粒子が消失する過程に対応するものである。いずれも、細孔内の堆積排気微粒子の増減に基因しているので、特性線の傾きは実質的に同じであり、PM増加第1特性線111とPM低減第1特性線113とは平行となる。また、PM増加第2特性線112は、細孔が略詰まった後、DPF壁表面のPM堆積層の厚さが増していく過程に対応するものであり、PM低減第2特性線114は細孔内の排気微粒子が燃焼し尽くした後、PM堆積層の厚さが減っていく過程に対応するものである。いずれも、PM堆積層をなす堆積排気微粒子の増減に基因しているので、特性線の傾きは実質的に同じであり、PM増加第2特性線112とPM低減第2特性線114とは平行となる。こうした特性線を予め実験などにより求めておけばおきECU60に記憶しておけばよい。
次に以下で、4つの特性線111,112,113,114が直線となることの理論的説明を与える。なお以下ではDPF50の圧力損失をΔPで、排気ガスの流速をvで表す。
より具体的に述べれば、以下で理論的説明を与えるのは次の事項である。すなわち、DPF50における圧力損失ΔPと流速vとの間には、モデル式として次の式(E2)の関係があり、係数M,NはPM堆積量が多いほど、大きな値をとる。
ΔP=Mμv+Nρv (E2)
また、PM堆積量をMLで表すと、圧力損失ΔPはPM堆積量MLに対して一次関数形で変化する。さらに、この変化は、図3に示すように、PM堆積量MLがある大きさ(遷移点堆積量)になる点(遷移点)で傾きが不連続に変化する。
これらの事項について、以下で、DPF50における圧力損失についての理論的なモデルから導き出す。図11はDPF50内部構造を表したもので、入口から流入した排気ガスが出口から流出するまでの間に、管摩擦による圧力損失、通路断面積が急拡大したり急縮小することによる圧力損失、DPF50の隔壁54を透過する際の圧力損失がある。以下に各圧力損失ΔPi について説明する。
まず、通路の摩擦による圧力損失について説明する。この圧力損失ΔPi については式(E3)が成立する。式中、λは損失の程度を示す係数であり、lは通路の長さであり、dは通路の径である。gは重力定数である。
ΔPi /(ρg)=λ(l/d)(v/2g) (E3)
ここで、Reをレイノルズ数として、層流であればλ=64/Reであり、Re=vd/r、r=μ/ρである。したがってα=32μl/(d)とおけば、式(E3)は次の式(E4)とできる。
ΔPi =αμv (E4)
次に、通路断面積の急縮小による圧力損失について説明する。この圧力損失ΔPi については、次の式(E5)が成立する。式中、ζは損失の程度を示す係数である。
ΔPi /(ρg)=ζ(v/2g) (E5)
したがって、β=ζ/2とおけば、式(E5)は次の式(E6)となる。
ΔPi =βρv (E6)
次に、DPF50の隔壁54を透過する際の圧力損失について説明する。この圧力損失ΔPi については次の式(E7)が成立する。これはエルガンの式として知られている。式中、k1 、k2 は係数、εは気孔率、Sは多孔質体の表面積/体積、Lは透過層の厚さである。
ΔPi g=k1 [(1−ε)/ε]Sμv
+k2 [(1−ε)/ε]SLρv (E7)
式(E7)は、DPF50の隔壁について(差圧ΔPiW)と、PM堆積層について(差圧ΔPiS)とのそれぞれについて成立するので、次の式(E8)、(E9)とも表せる。式中、LはPM堆積層の厚さである。δW、ηW、δS、ηSは適当な定数である。
ΔPiW=δW μv+ηW ρv (E8)
ΔPiS=(δS μv+ηS ρv)L (E9)
差圧センサ53で検出される圧力損失は、前記(E4)、(E6)の各圧力損失ΔPi 、(E8)のΔPiW 、(E9)のΔPiSを加算したものと考えられる。よって式(E2)が成り立つ。ただし
M=α+δW +δS L (E10)
N=β+δS +ηS L (E11)
PM堆積量が多ければPM堆積層も厚くなるから、PM堆積量が多いほどM,Nは大きくなる。なお、圧力損失ΔPi 、ΔPiW 、ΔPiSの表式において、DPF50よりも上流、下流での流速の項を無視しているのは、DPF50内部での流速に比してごく小さいからである。
また、L=aML とすれば、(E10)、(E11)は次の式(E12)、式(E13)となる。
M=α+δW +δS aML (E12)
N=β+δS +ηS aML (E13)
式(E12)、式(E13)を次の式(E14)、式(E15)と書き換えると、式(E2)は式(E16)となる。A,B,C,Dは定数である。
M=A+BML (E14)
N=C+DML (E15)
ΔP=(Aμv+Cρv)+(Bμv+Dρv)ML (E16)
式(E16)を変形すると次の式(E17)となる。
ML =[ΔP−(Aμv+Cρv)]/(Bμv+Dρv
(E17)
上記の式(E16)あるいは(E17)が、DPF50のPM堆積量MLと、DPF50の差圧ΔPとが1次関数の関係であることを示している。さらにその係数が流速vの関数であることも示されている。式(E16)、(E17)において、定数A,B,C,Dを、それぞれPM増加第1特性線111の場合と、PM増加第2特性線112の場合とで2組用意しておき、次の式(E18)、式(E19)とすればよい。そして例えばPM堆積量の算出式として、式(E18)、式(E19)をECU60内のROMに格納すればよい。式中、ML は堆積量、ΔPは圧力損失、vは流速である。また既述のとおりA1 ,B1 ,C1 ,D1 、A2 ,B2 ,C2 ,D2 は定数である。
ML =[ΔP−(A1 μv+C1 ρv)]/(B1 μv+D1 ρv
(E18)
ML =[ΔP−(A2 μv+C2 ρv)]/(B2 μv+D2 ρv
(E19)
あるいは定数A,B,C,Dを4つの特性線111,112,113,114それぞれに対応する4組求めておくとしてもよい。
なお上記実施例1において、S701、S702,S703,S704、S705の手順をまとめてガス濃度マップとして、予め求めてECU60に記憶し、これを用いて二酸化窒素濃度を算出するとしてもよい。この場合、二酸化窒素生成部の温度を運転状態から推定する推定プログラムを組み込むかたちとしてもよい。その場合、運転状態のみから二酸化窒素濃度を推定するマップとなり、測定機器を省き、機器構成を簡素化することができる。
次に、上で述べた実施例1の変形例としての実施例2,3について説明する。実施例2,3においては酸化触媒の配置場所と、それに関係する部分のみが実施例1と異なる。以下で実施例1と異なる部分のみ説明する。
実施例2の内燃機関の排気浄化装置2が図12に示されている。図12の構成では、DPF50の上流にディーゼル酸化触媒40(DOC)が配置されている。このDOC40内部の排気ガスの流路の内壁に白金などの酸化触媒が担持されているとする。DOC40の入口側と出口側に排気温度センサ41,42が装備されており、その計測値がECU60へと送られる。
こうした構成においては、DOC40で二酸化窒素が生成されて、それがDPF50へと流通し、DPF50でPMと二酸化窒素とが反応してPMが低温で燃焼する。したがってDOC40が二酸化窒素生成部であり、図4のS703では排気温度センサ41,42を用いてDOC40の内部温度が推定される。排気温度センサ41,42の計測値からDOC40の内部温度を推定するマップやプログラムを予め求めておき、ECU60に記憶しておけばよい。
実施例3の内燃機関の排気浄化装置3が図13に示されている。図13の構成では、DOC40とDPF50が一体に構成されて排気管30の途中に配置されている。DOC40内部の排気ガスの流路の内壁に白金などの酸化触媒が担持されているとする。こうした構成においても、DOC40で二酸化窒素が生成されて、それがDPF50へと流通し、DPF50でPMと二酸化窒素とが反応してPMが低温で燃焼する。
したがって二酸化窒素生成部はDOC40である。実施例3ではS20のDPF内部温度取得と、S703二酸化窒素生成部温度取得では、それぞれ排気温度センサ51,52の計測値からDPF50とDOC40との内部温度を推定するマップあるいはプログラムをECU60に記憶しておき、それを用いて推定すればよい。
なお、上記実施例において、S20の手順が温度取得手段として機能する。S705の手順が、ガス濃度取得手段として機能する。S60,S70,S80,S90の手順が推定手段として機能する。S70,S80の手順が補正手段として機能する。S110が再生手段として機能する。S703の手順が触媒温度取得手段として機能する。S702の手順が窒素酸化物濃度取得手段として機能する。S705の手順が算出手段として機能する。S10の手順が差圧計測手段として機能する。
実施例1の内燃機関の排気浄化装置の概略図。 DPF堆積量推定・再生処理を示すフローチャート。 DPFの差圧とPM堆積量推定値との関係を示す図。 二酸化窒素の作用による補正処理を示すフローチャート。 二酸化窒素生成率と二酸化窒素生成部温度との関係を示す図。 PM燃焼速度と二酸化窒素濃度との関係を示す図。 DPFの差圧とPM堆積量推定値との関係を示す図。 PM燃焼速度とDPF内部温度との関係を示す図。 DPFにPMが堆積していく状態を示す図。ただし(A)、(B)、(C)の順にPM堆積量が増加している。 DPFに堆積したPMが燃焼していく状態を示す図。ただし(A)、(B)、(C)の順にPM燃焼量が増加している。 DPFの内部構造を示す図。 実施例2の内燃機関の排気浄化装置の概略図。 実施例3の内燃機関の排気浄化装置の概略図。
符号の説明
1,2,3 内燃機関の排気浄化装置
10 吸気管
11 エアフローメータ
20 ディーゼルエンジン(内燃機関)
30 排気管
40 ディーゼル酸化触媒(DOC)
41,42,51,52 排気温度センサ
50 パティキュレートフィルタ(DPF)
53 差圧センサ
60 電子制御装置(ECU)
111 PM増加第1特性線(増加第1特性線)
112 PM増加第2特性線(増加第2特性線)
113 PM低減第1特性線(低減第1特性線)
114 PM低減第2特性線(低減第2特性線)

Claims (7)

  1. 排気通路の途中に、排気微粒子を捕集するパティキュレートフィルタを有する内燃機関の排気浄化装置であって、
    前記パティキュレートフィルタの内部の温度を取得する温度取得手段と、
    前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を取得するガス濃度取得手段と、
    前記パティキュレートフィルタに捕集された排気微粒子の堆積量を推定する推定手段と、
    前記推定手段により推定された前記パティキュレートフィルタに捕集された排気微粒子の堆積量の推定値が所定の再生開始堆積量を超えたら、前記堆積された排気微粒子を燃焼して前記パティキュレートフィルタを再生する再生手段とを備え、
    前記推定手段は、前記温度取得手段により取得された前記温度と、前記ガス濃度取得手段により取得された前記ガスの濃度を用いて、前記堆積量の推定値を補正する補正手段をさらに備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
  2. 前記パティキュレートフィルタに流入するガスは二酸化窒素である請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  3. 前記パティキュレートフィルタ内に担持された酸化触媒、あるいは前記パティキュレートフィルタよりも上流に配置された触媒部に担持された酸化触媒と、
    その酸化触媒の温度を取得する触媒温度取得手段と、
    前記内燃機関から排出される窒素酸化物濃度を取得する窒素酸化物濃度取得手段と、
    前記パティキュレートフィルタに流入する二酸化窒素の濃度を、前記触媒温度取得手段により取得された前記酸化触媒の温度と、前記窒素酸化物濃度取得手段により取得された窒素酸化物濃度とより算出する算出手段とを備え、
    前記推定手段において用いられる二酸化窒素の濃度は、前記算出手段により算出された二酸化窒素の濃度である請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  4. 前記補正手段において、前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度が高い程、前記堆積量の単位時間当たりの減少量が大きくなるとの補正を行う請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  5. 前記ガス濃度取得手段は、前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を、前記内燃機関の運転状態に応じて算出するガス濃度マップを備え、そのガス濃度マップにより前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を算出する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  6. 前記パティキュレートフィルタの入口と出口の圧力の差である差圧を計測する差圧計測手段を備え、
    前記推定手段における堆積量の推定は、前記差圧計測手段により計測された差圧の計測値と、前記堆積量と前記差圧を2つの軸とする平面上で、直線の傾きは前記差圧の増加分と前記堆積量の増加分との比として、前記堆積量が増加する場合は、堆積量が0の初期点を通る直線である第1増加特性線と、その増加第1特性線上の1点を通り前記第1増加特性線よりも小さい傾きの直線である増加第2特性線とに従い、前記堆積量が減少する場合は、前記第2増加特性線上の1点を通り前記増加第1特性線と同じ傾きの直線である低減第1特性線と、その低減第1特性線上の1点と前記初期点とを通り前記増加第2特性線と同じ傾きの第2減少特性線とを用いて行われる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  7. 内燃機関の排気通路の途中に、排気微粒子を捕集するパティキュレートフィルタを有し、
    前記パティキュレートフィルタの内部の温度を取得する温度取得手段と、
    前記パティキュレートフィルタに流入するガスの濃度を取得するガス濃度取得手段と、
    前記パティキュレートフィルタに捕集された排気微粒子の堆積量を推定する推定手段と、
    前記推定手段により推定された前記パティキュレートフィルタに捕集された排気微粒子の堆積量の推定値が所定の再生開始堆積量を超えたら、前記堆積された排気微粒子を燃焼して前記パティキュレートフィルタを再生する再生手段とを備え、
    前記推定手段は、前記温度取得手段により取得された前記温度と、前記ガス濃度取得手段により取得された前記ガスの濃度を用いて、前記堆積量の推定値を補正する補正手段をさらに備えたことを特徴とする内燃機関の排気微粒子堆積量推定方法。
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