JP2009024526A - ハイブリッド式の車両の始動制御装置及び方法、並びに出力制御装置及び方法 - Google Patents

ハイブリッド式の車両の始動制御装置及び方法、並びに出力制御装置及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ハイブリッド式の車両において、2次電池に蓄電された電力量を、効率的に使用し、内燃機関を、より確実に始動させることを可能とする。
【解決手段】ハイブリッド式の車両の始動制御装置(1)は、動力源として、内燃機関(16)及び電動発電機(14や19等)を備え、電動発電機に電気を供給する2次電池(10)と、2次電池の余力を特定する第1特定手段(18等)と、特定された余力が所定閾値に達しない場合に、内燃機関が点火を伴わない空回転を行うように、内燃機関が有する点火手段(202)及び電動発電機を制御する制御手段(20等)とを備える。
【選択図】図3

Description

本発明は、動力源として内燃機関及び電動発電機(所謂、モータジェネレータ)を備えるハイブリッド式の車両において内燃機関の始動を制御する、ハイブリッド式の車両の始動制御装置及び方法、並びに出力制御装置及び方法の技術分野に関する。
この種の始動制御装置に関して、特許文献1では、2次電池の状態量からエンジンのクランキングに必要な電力が得られる継続時間を算出し、2次電池の出力が低下して限界状態になった時点でエンジンを始動する技術について開示されている。
また、特許文献2では、2次電池やエンジンの状態に対応した適切な回転数で、エンジンを始動することによって、仮にエンジンの始動に失敗した場合でも、エンジンの再始動に必要な2次電池の電力が確保でき、再始動の回数を多頻度にさせる技術について開示されている。
また、特許文献3では、電池の状態に応じてエンジンの停止を禁止する領域の境界を示す車速の閾値を変更することで、電池を蓄電量を効果的に維持させ、例えば厳冬期等の極寒の外界環境下において、操作応答性を向上させる技術について開示されている。
特開2003−153402号公報 特開2003−314417号公報 特開2006−170128号公報
しかしながら、上述した技術によれば、2次電池の電池状態が、実際に低下し始めてから、スタータモータによって内燃機関をクランキングによって始動させ、2次電池を充電している。このため、2次電池の電池状態が低下している場合、内燃機関をクランキングによって始動するために十分な電力量が確保されていない可能性があり、内燃機関を始動することが技術的に困難となってしまう可能性がある。特に、外界が極低温である場合、内燃機関の潤滑剤(例えば、エンジンオイル)に基づくフリクションが増大してしまい、内燃機関を始動する際に、2次電池の電力量を多量に消費してしまい、内燃機関のクランキングの回数が制限されてしまう可能性があるという技術的な問題点が生じる。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド式の車両において、2次電池に蓄電された電力量を、効率的に使用し、内燃機関を、より確実に始動させることが可能なハイブリッド式の車両の始動制御装置及び方法、並びに出力制御装置及び方法を提供することを課題とする。
(ハイブリッド式の車両の始動制御装置)
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御装置は、動力源として、内燃機関及び電動発電機を備えるハイブリッド式の車両の始動制御装置であって、前記電動発電機に電気を供給する2次電池と、該2次電池の余力を特定する第1特定手段と、該特定された余力が所定閾値に達しない場合に、前記内燃機関が点火を伴わない空回転を行うように、前記内燃機関が有する点火手段及び前記電動発電機を制御する制御手段とを備える。
本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御装置によれば、動力源として、内燃機関及び電動発電機を備える。本発明における「内燃機関」とは、燃料の燃焼を動力に変換する機関を総称するが、好適にはガソリン、ディーゼル、LPG等を燃料とするエンジンなどを指す。また、本発明における電動発電機は、バッテリ等の2次電池から供給される電気エネルギを、機械エネルギに変換することによって、電動機として動作する機能と、機械エネルギを電気エネルギに変換することによって、例えばバッテリ等に電力を供給する発電機として動作する機能とを有する。尚、電動発電機は予め、主として電動機(モータ)として使用される電動発電機と、主として発電機(ジェネレータ)として使用される電動発電機の二種類搭載されていてもよい。このような内燃機関と電動発電機と、を具備する本発明に係るハイブリッド車両においては、電動発電機によって適宜内燃機関の動力をアシストすることが可能な所謂パラレル方式の制御が好適に行われる。
特に、本発明によれば、第1特定手段によって、2次電池が、電動発電機に供給可能な余力が特定される。ここに、本発明に係る「2次電池」とは、例えば、ニッケル水素2次電池、又は鉛蓄電池である単電池が直列に接続されており、例えば発電機等の負荷に電力を供給する電池を意味する。また、本発明に係る「余力」は、電池が現時点から持続して出力可能である、電気的な力の程度を示す。典型的には、出力可能な電力量又は仕事量である。或いは、出力可能な電力若しくは起電力又は仕事であってもよい。2次電池に残留している又は蓄電若しくは充電されている、電力量又は充電量と言い換えてもよい。但し、このような電力量或いは仕事量等の単位に限らず、2次電池が出力可能である、定格電流を得るために必要な電圧、或いは定格電圧を得るために必要な電流、出力可能な電荷量或いは電気量、出力可能な単位時間当たりの電荷量或いは電気量などであってもよい。更に、このような余力の特定は、2次電池の出力に先立って行われてもよいが、2次電池の出力の最中に或いは途中に、行われてもよい。即ち、余力は、出力可能な電力等のみならず、実際に出力している最中の電力等の値であってもよい。この余力は、具体的には、例えば、2次電池の容量や、2次電池の充電量や、2次電池の残留電荷量や、2次電池が現在、負荷に供給している電流又は電圧や、2次電池の劣化状態や、2次電池の寿命などの電池状態(SOC:State Of Charge)などに基づいて特定される、負荷に現在以降、供給することが可能な、電池に残存している電力量を意味してよい。尚、本発明に係る「特定」とは、典型的には、余力を示す何らかの物理量やパラメータの所定範囲を、直接的に「特定」、「選択」等することを意味する。更に、余力を示す何らかの物理量やパラメータを、間接的に「検出」、「測定」、「計測」等することを含んでいてもよい。更に、この余力は、具体的には、2次電池の温度等の各種の外界環境条件を加味した上で、特定してよい。例えば、外界環境の温度が相対的に低ければ、余力は、相対的に小さくなり、温度が相対的に高ければ、余力は、相対的に大きくなるが、温度に基づくことで、低温環境であれ高温環境であれ、より正確に余力を特定することが可能となる。この余力は、より具体的には、電動発電機によって、内燃機関が、点火を伴うクランキングなどを行うために供給される電力と、供給時間との積によって算出することが可能である。この電力量は、例えば2次電池の電池状態又は充電状態(SOC:State of Charge)、及び所定の電圧モデルをパラメータとして、決定される変数である。
特定された余力が所定閾値に達しない場合に、制御手段の制御下で、電動発電機によって、内燃機関が点火を伴わない空回転を行う。ここに、本発明に係る「点火を伴わない空回転」とは、内燃機関内の機構的な摩擦を低減するために、電動発電機によって、内燃機関のクランクシャフトを、点火プラグによる点火を行わないままで、1回から複数回程度、回転させ、ピストンを複数回、上下運動させることを意味する。この「点火を伴わない空回転」は、電動発電機によって、車両の駆動軸に動力を伝達し、低速走行を開始させるための回転とは異なる主旨である。また、本発明に係る「所定閾値」とは、内燃機関において点火を伴う回転による車両の始動を可能とする電力量、又は、(ii)内燃機関において点火を伴わない電動発電機による車両の始動を可能とする電力量を意味する。具体的には、電動発電機によって、内燃機関が、点火を伴ってクランキングさせるために必要な電力と、クランキングを継続させる時間との相関関係によって、理論的、実験的、経験的、又はシミュレーション等によって、空回転を必要とするか否かを判別できるように、個別具体的に規定することが可能である。特に、この「所定閾値」は、始動可能な電力量として、固定値に設定されてもよい。或いは、潤滑油、温度などの環境、運転状況等までも含めた、内燃機関の現状に応じた可変値に設定されてもよい。具体的には、この所定閾値は、例えば内燃機関の機関温度や、潤滑剤(例えば、エンジンオイル)の温度や粘性度や、空回転を行った回数などをパラメータとして、決定されてよい。
この結果、電動発電機によって、内燃機関が、点火を伴わない空回転を行うことによって、内燃機関の潤滑剤(例えば、エンジンオイル)に基づくフリクション(摩擦)を減少させ、電動発電機によって、例えば内燃機関が点火を伴うクランキングを行うために必要な始動電力量を顕著に減少させることが可能である。従って、電動発電機が、2次電池に蓄電された電力量(蓄電量)を、より効率的に使用できるので、仮に、内燃機関の点火を伴うクランキングの完全爆発が、初回目や2回目などに、失敗した場合でも、3回目以降に、クランキングするための電力量を確保することが可能である。以上の結果、内燃機関の点火を伴うクランキングの回数を飛躍的に多くさせることが可能であるので、より確実に、内燃機関を始動させることが可能である。
特に、外界が極低温である場合、内燃機関の潤滑剤(例えば、エンジンオイル)に基づくフリクションが増大してしまうが、電動発電機によって、内燃機関が、点火を伴わない空回転を行うことによって、内燃機関を始動させる確実性(可能性)を高める効果は顕著に大きい。
以上のように、本発明に係る始動制御装置によれば、ハイブリッド式の車両において、2次電池に蓄電された電力量を、効率的に使用し、内燃機関を、より確実に始動できる。
本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御装置の一の態様では、前記制御手段は、前記特定された余力が前記所定閾値を越える場合に、前記空回転を行わせることなく前記内燃機関を始動させるように、前記点火手段及び前記電動発電機を制御する。
この態様によれば、特定された余力が、所定閾値を越える場合、制御手段の制御下で、空回転を行うことなく、内燃機関において点火を伴う回転によって車両を迅速な判断によって始動したり、或いは、内燃機関において点火を伴うことなく、電動発電機によって車両を迅速な判断によって始動したりできる。尚、特定された余力が所定閾値と同じ場合には、空回転を行った後、又は、空回転を行わせることなく内燃機関において点火を伴う回転によって車両を始動してよい。或いは、内燃機関において点火を伴うことなく、電動発電機によって車両を始動してよい。
本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記空回転として、前記内燃機関が有するクランクシャフトを、少なくとも1回転させるように、前記電動発電機を制御する。
この態様によれば、内燃機関の潤滑剤(例えば、エンジンオイル)に基づくフリクションを減少させるための、電動発電機による内燃機関の空回転に必要な電力量を顕著に減少させることが可能である。従って、2次電池に蓄電された電力量(蓄電量)を、より節約させ、電動発電機は、2次電池に蓄電された電力量(蓄電量)を、より効率的に使用することが可能である。
本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御装置の他の態様では、前記余力は、前記2次電池が供給可能な電力量であり、前記所定閾値は、前記供給される電気により前記内燃機関を始動可能な電力量として設定される。
この態様によれば、2次電池が供給可能な電力量である余力と、所定閾値との比較に基づいた迅速な判断によって、車両を始動することが可能である。
本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御装置の他の態様では、前記始動可能な電力量を特定する第2特定手段を更に備える。
この態様によれば、特定された余力の電力量と、第2特定手段によって特定された始動可能な電力量との比較に基づいた迅速な判断によって、車両を始動することが可能である。
この第2特定手段に係る態様では、前記第2特定手段は、前記始動可能な電力量として、(i)前記内燃機関において点火を伴う回転による前記車両の始動を可能とする第1始動電力量、又は、(ii)前記内燃機関において点火を伴わない前記電動発電機による前記車両の始動を可能とする第2始動電力量を特定するようにしてよい。
このように構成すれば、特定された余力の電力量と、第2特定手段によって特定された第1始動電力量との比較に基づいた迅速な判断の下、内燃機関における点火を伴う回転によって車両を始動することが可能である。或いは、特定された余力の電力量と、第2特定手段によって特定された第2始動電力量との比較に基づいた迅速な判断の下、内燃機関における点火を伴わない電動発電機によって車両を始動することが可能である。
この第2特定手段に係る態様では、前記第2特定手段は、前記始動可能な電力量を、前記内燃機関の機関温度、潤滑剤の温度若しくは粘性度、並びに、前記空回転を行った回数のうち、少なくとも一つに基づいて特定するようにしてよい。
このように構成すれば、制御手段の制御下で、電動発電機によって、内燃機関の機関温度や、潤滑剤(例えば、エンジンオイル)の温度や粘性度等の各種のパラメータによって特定された始動可能な電力量と、特定された余力の電力量との比較に基づいて、内燃機関が、点火を伴わない空回転を、より高精度に行うことが可能である。尚、上述したように、このクランキングエネルギは、一般的に、内燃機関の機関温度や、潤滑剤(例えば、エンジンオイル)の温度が低いほど、大きくなる傾向にある。
この制御手段に係る態様では、前記制御手段は、前記空回転を行う実行時間を、前記特定された余力及び前記特定された始動可能な電力量に基づいて、算出する算出手段を有するようにしてよい。
このように構成すれば、算出された空回転を行う実行時間の変化に基づいて、2次電池に蓄電された電力量(蓄電量)を、より計画的、且つ、より効率的に使用することが可能である。尚、本発明に係る「算出」とは、典型的には、余力を示す何らかの物理量やパラメータを、直接的に「算出」、「測定」、「計測」等することを意味する。更に、余力を示す何らかの物理量やパラメータを、間接的に「演算」、「推定」等することを含んでいてもよい。
具体的には、空回転を行う実行時間は、次式(1)によって検出されてよい。
(実行時間) =
{(余力の電力量) − (始動可能な電力量)}/(空回転の電力) …(1)。
この制御手段に係る態様では、前記制御手段は、前記内燃機関の燃焼中に、前記特定された余力が前記所定閾値に達していない場合、前記燃焼を停止させないように、前記点火手段及び前記電動発電機を制御するようにしてよい。
このように構成すれば、制御手段の制御下で、余力が、例えば内燃機関が、点火を伴うクランキングを行うために必要な第1始動電力量等の所定閾値に達していない場合、内燃機関の駆動を継続させる。
仮に、第1始動電力量等の所定閾値に達していない場合、内燃機関の駆動を停止させた場合、車両の停止後、再始動の際に、内燃機関の完全爆発を実現できず、内燃機関の始動を実現できない可能性が生じてしまう。
これに対して、本発明によれば、制御手段の制御下で、余力が、例えば内燃機関が、点火を伴うクランキングを行うために必要な第1始動電力量等の所定閾値より小さい場合、内燃機関の駆動を継続させる。
この結果、内燃機関の始動が失敗する可能性を殆ど又は完全に防止することが可能である。
(ハイブリッド式の車両の出力制御装置)
上記課題を解決するために、動力源として、内燃機関及び電動発電機を備えるハイブリッド式の車両の出力制御装置であって、前記電動発電機に電気を供給する2次電池と、該2次電池の余力を特定する第1特定手段と、前記内燃機関の燃焼中に、前記特定された余力が所定閾値に達しない場合に、前記燃焼を停止させないように、前記内燃機関が有する点火手段を制御する制御手段とを備える。
本発明に係るハイブリッド式の車両の出力制御装置によれば、制御手段の制御下で、余力が、例えば内燃機関が、点火を伴うクランキングを行うために必要な第1始動電力量等の所定閾値に達していない場合、内燃機関の駆動を継続させる。
仮に、第1始動電力量等の所定閾値に達していない場合、内燃機関の駆動を停止させた場合、車両の停止後、再始動の際に、内燃機関の完全爆発を実現できず、内燃機関の始動を実現できない可能性が生じてしまう。
これに対して、本発明によれば、制御手段の制御下で、余力が、例えば内燃機関が、点火を伴うクランキングを行うために必要な第1始動電力量等の所定閾値より小さい場合、内燃機関の駆動を継続させる。
この結果、内燃機関の始動が失敗する可能性を殆ど又は完全に防止することが可能である。
(ハイブリッド式の車両の始動制御方法)
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御方法は、動力源としての内燃機関及び電動発電機と、前記電動発電機に電気を供給する2次電池と、備えるハイブリッド式の車両の始動制御方法であって、該2次電池の余力を特定する第1特定工程と、該特定された余力が所定閾値に達しない場合に、前記内燃機関が点火を伴わない空回転を行うように、前記内燃機関が有する点火手段及び前記電動発電機を制御する制御工程とを備える。
本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御方法によれば、上述した本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御装置に係る実施形態が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御装置に係る実施形態が有する各種態様に対応して、本発明に係るハイブリッド式の車両の始動制御方法に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
(ハイブリッド式の車両の出力制御方法)
上記課題を解決するために、本発明に係るハイブリッド式の車両の出力制御方法は、動力源としての内燃機関及び電動発電機と、前記電動発電機に電気を供給する2次電池と、を備えるハイブリッド式の車両の出力制御方法であって、該2次電池の余力を特定する第1特定工程と、前記内燃機関の燃焼中に、前記特定された余力が所定閾値に達しない場合に、前記燃焼を停止させないように、前記内燃機関が有する点火手段を制御する制御工程とを備える。
本発明に係るハイブリッド式の車両の出力制御方法によれば、上述した本発明に係るハイブリッド式の車両の出力制御装置に係る実施形態が有する各種利益を享受することが可能となる。
尚、上述した本発明に係るハイブリッド式の車両の出力制御装置に係る実施形態が有する各種態様に対応して、本発明に係るハイブリッド式の車両の出力制御方法に係る実施形態も各種態様を採ることが可能である。
本発明に係る始動制御装置によれば、ハイブリッド式の車両において、2次電池に蓄電された電力量を、効率的に使用し、内燃機関を、より確実に始動できる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
(1)実施形態の基本構成
(1−1)ハイブリッドシステムの構成
先ず、図1を参照して、本発明の実施形態に係るハイブリッドシステム1の構成について説明する。ここに、図1は、本実施形態に係るハイブリッドシステムのブロック図である。
図1において、ハイブリッドシステム1は、車速センサ2、アクセルセンサ3、ブレーキコンピュータ4、SOCセンサ5、2次電池10、インバータ12、動力分割機構13、電動発電機14、エンジン16、電池ECU18、電動発電機19、ハイブリッドECU(HVECU)20、車輪22を備え、ハイブリッド式の車両を制御するシステムである。
HVECU20は、ハイブリッドシステム1の動作全体を制御する、例えばECU(Engine Controlling Unit)等の制御ユニットであり、本発明に係る「制御手段」の一例として機能する。このHVECU20は、ハイブリッドシステム1の動作全体を制御するために、記憶部を備える。
詳細には、HVECU20によるインバータ12の制御は、エンジンECU17からのエンジン16の運転状態の情報やアクセルペダルの操作量、ブレーキコンピュータからのブレーキペダルの操作量、図示しないシフトポジションセンサからのシフトレンジ、電池ECU18からの2次電池10の電池状態又は充電状態(SOC:State of Charge)等に基づき実行される。例えば、HVECU20は、電池ECU18から供給された2次電池10の電池状態に基づき、モータ駆動からエンジン駆動への切替タイミングを制御する。エンジンの始動は、インバータ12を制御して2次電池10からの電力をジェネレータ19に供給し、ジェネレータ19をスタータモータとして機能させることで行ってよい。
2次電池10は、複数のブロックが直列接続されて構成され、各ブロックは複数のセルから構成される。各ブロック毎に電圧センサが設けられ、各ブロックの検出電圧を電池ECU18に供給する。また、電流センサで検出された2次電池10の電流値も電池ECU18に供給される。さらに、温度センサで検出された温度も電池ECU18に供給される。2次電池10としては、例えばニッケル水素電池を用いることができる。
電池ECU18は、検出された温度に基づき2次電池10の温度管理を実行し、温度が所定温度以上となった場合に図示しない冷却ファンを駆動して2次電池10の温度を一定に維持する。また、検出された電流値に基づき2次電池10の電池状態(SOC)を検出してHVECU20に供給する。電池状態は、初期状態の電池状態と電流積算値に基づき算出される。
エンジン16は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド式の車両の主たる動力源として機能する。エンジン16は、アクセルセンサで検出されたアクセルペダルの操作量や冷却水温などの環境条件、さらに電動発電機14の運転状態に基づきエンジンECU17によりその出力や回転数などが制御される。尚、エンジン16の詳細な構成については後述する。
電動発電機14は、本発明に係る「電動発電機」の一例であり、電動発電機14は、ハイブリッド(HV)ECU20により制御され、エンジン16の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。この場合、HVECU20は、モータECU15を介してインバータ12の各スイッチを制御することにより2次電池10から電動発電機14に電力を供給している。或いは、電動発電機14は、2次電池10を充電するための発電機として、機能するように構成されている。
電動発電機19は、本発明に係る「電動発電機」の他の一例であり、エンジン16の出力をアシストする電動機として機能するように構成されている。或いは、電動発電機19は、2次電池10を充電するための発電機として機能するように構成されている。
尚、これら電動発電機14及び電動発電機19は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式の電動発電機であっても構わない。
動力分割機構13は、図示せぬサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。これら各ギアのうち、内周にあるサンギアの回転軸は電動発電機14に連結されており、外周にあるリングギアの回転軸は、電動発電機19に連結されている。サンギアとリングギアの中間にあるプラネタリキャリアの回転軸はエンジン16に連結されており、エンジン16の回転は、このプラネタリキャリアと更にピニオンギアとによって、サンギア及びリングギアに伝達され、エンジン16の動力が2系統に分割されるように構成されている。ハイブリッド式の車両において、リングギアの回転軸は、ハイブリッド式の車両における伝達機構に連結されており、この伝達機構を介して車輪22に駆動力が伝達される。
インバータ12は、2次電池10から取り出した直流電力を交流電力に変換して電動発電機14及び電動発電機19に供給すると共に、電動発電機14及び電動発電機19によって発電された交流電力を直流電力に変換して2次電池10に供給することが可能に構成されている。
2次電池10は電動発電機14及び電動発電機19を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。2次電池10には、2次電池10の残容量を検出するSOCセンサ5が設置されており、ハイブリッドECU20と電気的に接続されている。2次電池10とインバータ12は、システムメインリレーSMRを介して接続される。
車速センサ2は、ハイブリッド式の車両の速度を検出するセンサであり、ハイブリッドECU20と電気的に接続されている。
(1−2:エンジンの詳細構成)
次に、図2を参照して、エンジン16の詳細な構成を、その基本動作と共に説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る、エンジン16の断面を示すと共に、エンジンのシステム系統を示した模式図である。
図2において、エンジン16は、エンジンECU17の制御下で、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。特に、本実施形態では、この爆発力と、上述した電動発電機14又は19の回転力によって、車両を始動することが可能である。また、点火プラグ202によって、本発明に係る「点火手段」の一具体例が構成されている。以下に、エンジン16の要部構成を動作と共に説明する。
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。インジェクタ207には、燃料(ガソリン)が燃料タンク223からフィルタ224を介して供給されており、インジェクタ207は、この供給される燃料を、ハイブリッドECU20の制御に従って吸気管206内に噴射することが可能に構成されている。尚、燃料タンク223には、燃料残量を検出するための燃料センサ225が設置されている。
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気バルブ208の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気バルブ208の開閉に連動して開閉する排気バルブ209を通過して排気管210を介して排気される。
吸気管206上には、クリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。クリーナ211の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
吸気管206におけるエアフローメータ212の下流側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ214が配設されている。このスロットルバルブ214には、スロットルポジションセンサ215が電気的に接続されており、その開度が検出可能に構成されている。更に、スロットルバルブ214の周囲には、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ216、及びスロットルバルブ214を駆動するスロットルバルブモータ217も配設されている。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の回転状態に基づいて、シリンダ201内部におけるピストン203の位置、及びエンジン16の回転数など取得することが可能に構成されている。また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン16のノック強度を測定可能なノックセンサ219が配設されており、係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン16の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
排気管210には、三元触媒222が設置されている。三元触媒222は、エンジン16から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。排気管210における三元触媒222の上流側には、空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210から排出される排気ガスから、エンジン16の空燃比を検出することが可能に構成されている。
(2) 実施形態の動作原理
(2−1) ハイブリッドシステムの基本動作
図1のハイブリッドシステム1においては、本発明に係る「2次電池」の一例である2次電池10へ電気を充電するための、主として発電機として機能する電動発電機14と、2次電池10からの電気の供給を受けることで、主として電動機として機能する電動発電機19と、エンジン16とのそれぞれの駆動力配分が、HVECU20により制御されてハイブリッド式の車両の走行状態が制御される。以下に、幾つかの状況に応じたハイブリッドシステム1の動作について説明する。
(2−1−1)始動時
例えば、ハイブリッド式の車両の始動時においては、2次電池10の電気エネルギを用いて駆動される電動発電機14が電動機として機能する。この動力によって、エンジン16がクランキングされエンジン16が始動する。
(2−1−2)発進時
発進時には、2次電池10の蓄電状態に応じて2種類の態様を採り得る。2次電池10の蓄電状態は、SOCセンサ5の出力信号に基づいてHVECU20によって把握されている。例えば、通常の(即ち、電池状態が良好な)発進時においては、電動発電機14によって2次電池10を充電する必要は生じないため、エンジン16は暖機のためだけに始動し、ハイブリッド式の車両は、電動発電機19による駆動力により発進する。一方、蓄電状態が良好ではない(即ち、電池状態が低下している)場合、エンジン16の動力により電動発電機14が発電機として機能し、2次電池10が充電される。
(2−1−3)軽負荷走行時
例えば、低速走行や緩やかな坂を下っている場合には、比較的エンジン16の効率が悪い為、エンジン16は停止され、ハイブリッド式の車両は、電動発電機19による駆動力のみで走行する。尚、この際、電池状態が低下していれば、エンジン16は電動発電機14を駆動するために始動し、電動発電機14により2次電池10の充電が行われる。
(2−1−4)通常走行時
エンジン16の効率が比較的良好な運転領域においては、ハイブリッド式の車両は主としてエンジン16の動力によって走行する。この際、エンジン16の動力は、動力分割機構13によって2系統に分割され、一方は、伝達機構を介して車輪22に伝達され、他方は、電動発電機14を駆動して発電を行う。更に、この発電された電力により、電動発電機19が駆動され、電動発電機19によりエンジン16の動力がアシストされる。尚、この際、電池状態が低下している場合には、エンジン16の出力を上昇させて、電動発電機14により発電された電力の一部が2次電池10へ充電される。
(2−1−5)制動時
減速が行われる際には、車輪22から伝達される動力によって電動発電機19を回転させ、発電機として動作させる。これにより、車輪22の運動エネルギが電気エネルギに変換され、2次電池10が充電される、所謂「回生」が行われる。
(2−2)実施形態におけるエンジンの基本制御動作
次に、エンジン16の基本的な制御動作について説明する。
HVECU20は、エンジン16に要求される出力であるエンジン要求出力を一定の周期で繰り返し演算している。HVECU20は、アクセルセンサ3及び車速センサ2の出力信号に基づいてアクセル開度と車速とを取得し、記憶部の不揮発性領域に記録されたマップを参照してアクセル開度及び車速に対応した出力軸トルク(伝達機構に出力されるべきトルク)を求める。また、HVECU20はSOCセンサ5の出力信号に基づいて要求発電量を求める。そして、要求発電量と各種の補機類(A/Cやパワーステアリングなど)の要求量とを参照して出力軸トルクを補正することにより、エンジン要求出力を求める。なお、エンジン要求出力の演算方法は公知のハイブリッド車両で実行されている通りでよく、その細部は必要に応じて種々変更してよい。
(2−3)エンジンの始動を制御する始動制御処理
次に、図3を参照して、本実施形態に係る、エンジンの始動を制御する始動制御処理について説明する。ここに、図3は、本実施形態に係る、エンジンの始動を制御する始動制御処理の流れを示したフローチャートである。尚、本実施形態に係る、エンジンの始動を制御する始動制御処理は、ハイブリッドECUによって、例えば、数十μ秒、又は数μ秒等の所定の周期で繰り返し実行される。
図3に示されるように、先ず、エンジンの始動が要求された場合、ハイブリッドECU等の制御下で、2次電池の電池状態(SOC:State of Charge)、及び所定の電圧モデルに基づいて、2次電池が、現在、供給可能な電力量が、算出される(ステップS101)。尚、この2次電池が供給可能な電力量の算出の手法については、電力量と、電池状態(又は電圧値や電流値)との相関関係を定量化又は定性化することが可能な、実験的、理論的、経験的、シミュレーション的な各種の手法によって、個別具体的に規定することが可能である。
次に、ハイブリッドECU等の制御下で、2次電池の電池状態が、安定しているか否かが判定される(ステップS102)。ここで、2次電池の電池状態が、安定していると判定される場合(ステップS102:Yes)、ハイブリッドECU等の制御下で、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行うために必要なクランキングエネルギが算出される(ステップS103)。ここに、本実施形態に係る「クランキングエネルギ」とは、本発明に係る「第1始動電力量」の一具体例を構成し、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴ってクランキングさせるために必要なエネルギを意味する。具体的には、電動発電機によって、エンジン16が、点火を伴ってクランキングさせるために必要な電力と、クランキングを継続させる時間との積によって算出することが可能である。このクランキングエネルギは、例えばエンジン16の機関温度や、潤滑剤(例えば、エンジンオイル)の温度や粘性度、後述の空回転を行った回数などをパラメータとして、決定される変数である。このクランキングエネルギは、一般的に、エンジン16の機関温度や、潤滑剤(例えば、エンジンオイル)の温度が低いほど、大きくなる傾向にある。
次に、ハイブリッドECU等の制御下で、2次電池が、現在、供給可能な電力量と、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行うために必要なクランキングエネルギとが比較され、2次電池が、現在、供給可能な電力量が、クランキングエネルギより多量であるか否かが判定される(ステップS104)。ここで、2次電池が、現在、供給可能な電力量が、クランキングエネルギより多量でない、即ち、2次電池が、現在、供給可能な電力量が、クランキングエネルギより少量である場合(ステップS104:No)、ハイブリッドECU等の制御下で、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴わない空回転を行う(ステップS105)。ここに、本実施形態に係る「点火を伴わない空回転」とは、エンジン16内の機構的な摩擦を低減するために、電動発電機14又は19による、エンジン16のクランクシャフトを、1回から複数回程度、回転させ、ピストンを複数回、上下運動させることを意味する。この「点火を伴わない空回転」は、電動発電機14又は19によって、車両の駆動軸に動力を伝達し、低速走行を開始させるための回転とは異なる主旨である。尚、この点火を伴わない空回転を行う実行時間の算出手法については、後述の図4及び図5で説明される。
他方、上述のステップS104の判定の結果、2次電池が、現在、供給可能な電力量が、クランキングエネルギより多量である場合(ステップS104:Yes)、ハイブリッドECU等の制御下で、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行う(ステップS106)。
次に、ハイブリッドECU等の制御下で、エンジン16は、始動したか否かが判定される(ステップS107)。ここで、エンジン16が、始動した場合(ステップS107:Yes)、一連のエンジンの始動を制御する始動制御処理は、終了する。他方、エンジン16が、始動しない場合(ステップS107:No)、ハイブリッドECU等の制御下で、2次電池が、現在、供給可能な電力量が、算出される(ステップS101)。
(2−3−1)点火を伴わない空回転を行う実行時間の算出手法
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る、点火を伴わない空回転を行う実行時間の算出手法について説明する。ここに、図4は、本実施形態に係る、点火を伴わない空回転を行う実行時間の算出手法を、図式的に示した模式図(図4(a)から図4(c))である。図5は、本実施形態に係る、点火を伴わない空回転を行う実行時間と、クランキングエネルギの最小値との関係を示したグラフである。
図4(c)に示されるように、空回転を行う実行時間「t1」は、2次電池が、現在、供給可能な電力量(図4(a)を参照)と、クランキングエネルギの最小値(図4(b)を参照)との差に基づいて、決定することが可能である。尚、斜線の面積は、略等しい。
具体的には、空回転を行う実行時間は、次式(2)によって決定される。
(空回転を行う実行時間) =
{(電力量) − (クランキングエネルギの最小値)}/(空回転の電力量) …(2)
尚、本実施形態に係る「クランキングエネルギの最小値」とは、例えば温暖時におけるクランキング等の、クランキングが成功する可能性が相対的に高い場合に、エンジン16が、クランキングを行うために最低限必要なエネルギ(「W・s」:ワット秒)を意味する。また、本実施形態に係る「空回転の電力」とは、エンジン16内の機構的な摩擦を低減するために、電動発電機による、エンジン16のクランクシャフトを、1回から複数回程度、回転させるために電動発電機に供給される電力(単位「W」=「J/s」)を意味する。
より具体的には、空回転の電力のレベルを、小さくして、空回転を行う実行時間「t1」を長くしてよい。或いは、空回転の電力のレベルを、大きくして、空回転を行う実行時間「t1」を短くしてよい。
詳細には、図5の点「P1」から「P4」は、点火を伴わない空回転が実行時間「t1」の間、4回、行なわれ、1回行われる度に、2次電池に蓄電された電力量が、減少していく様子を示している。加えて、実行時間「t1」の間、点火を伴わない空回転が行われた後も、クランキングエネルギの最小値は、確保されるので、より確実に、エンジン16を始動させることが可能である。
(3)本実施形態に係る作用と効果との検討
次に、図6を参照して、本実施形態に係る作用と効果とについて、検討する。ここに、図6は、比較例に係る、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行うために必要なクランキングエネルギを、図式的に示したグラフ(図6(a))、並びに、本実施形態に係る、エンジン16が、点火を伴わない空回転を行うために必要な仕事量、及び、空回転後に減少したクランキングエネルギを、図式的に示したグラフ(図6(b)及び図6(c))である。
図6(a)の比較例に示されるように、例えば、極低温時に、ハイブリッド式の車両のエンジン16を始動させる場合、エンジン16の潤滑剤(例えば、エンジンオイル)のフリクションに起因して、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行うために必要なクランキングエネルギは、相対的に高いレベルにある。具体的には、例えば、極低温時に、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行うために必要なクランキングエネルギは、20×α(ワット秒)である。但し、「α」は、所定の係数を意味する。
特に、本実施形態によれば、ハイブリッドECU、及び電池ECUの制御下で、2次電池が、電動発電機14又は19に供給可能な電力量が算出される。ここに、本実施形態に係る「電力量」とは、本発明に係る「余力」の一具体例であり、現在、2次電池に蓄電されており、電動発電機14又は19に供給可能なエネルギ(電力量)を意味する。具体的には、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴うクランキングなどを行うために供給される電力と、供給時間との積によって算出することが可能である。この電力量は、例えば2次電池の電池状態(SOC:State of Charge)、及び所定の電圧モデルをパラメータとして、決定される変数である。
そして、ハイブリッドECU、及び電池ECUの制御下で、算出された電力量に基づいて、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴わない空回転を行う。ここに、本実施形態に係る「点火を伴わない空回転」とは、エンジン16内の機構的な摩擦を低減するために、電動発電機14又は19による、エンジン16のクランクシャフトを、1回から複数回程度、回転させ、ピストンを複数回、上下運動させることを意味する。この「点火を伴わない空回転」は、電動発電機14又は19によって、車両の駆動軸に動力を伝達し、低速走行を開始させるための回転とは異なる主旨である。
具体的には、図6(b)に示されるように、例えば、極低温時に、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴わない空回転を行うために必要なエネルギは、「2×α(ワット秒)」である。
この結果、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴わない空回転を行うことによって、エンジン16の潤滑剤(例えば、エンジンオイル)に基づくフリクションを減少させ、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行うために必要なクランキングエネルギを顕著に減少させることが可能である。
具体的には、図6(c)に示されるように、例えば、極低温時に、上述の点火を伴わない空回転を行った後、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行うために必要なクランキングエネルギは、「14×α(ワット秒)」である。
従って、エンジン16を始動させるために必要なエネルギの総量は、上述の空回転に必要な「2×α(ワット秒)」と、「14×α(ワット秒)」との和の、「16×α(ワット秒)」であり、上述の空回転を行わないで、エンジン16を始動させるために必要なエネルギ「20×α(ワット秒)」より大きく減少していることが判明している。
この結果、電動発電機14又は19が、2次電池に蓄電された電力量(蓄電量)を、より効率的に使用できるので、仮に、エンジン16の点火を伴うクランキングの完全爆発が、初回目や2回目などに、失敗した場合でも、3回目以降に、クランキングするための電力量を確保することが可能である。以上の結果、エンジン16の点火を伴うクランキングの回数を飛躍的に多くさせることが可能であるので、より確実に、エンジン16を始動させることが可能である。
特に、外界が極低温である場合、エンジン16の潤滑剤(例えば、エンジンオイル)に基づくフリクションが増大してしまうが、電動発電機14又は19によって、エンジン16が、点火を伴わない空回転を行うことによって、エンジン16を始動させる確実性(可能性)を高める効果は顕著に大きい。
(4)他の実施形態
次に、図7を参照して、他の実施形態に係る、エンジンの始動を制御する始動制御処理について説明する。ここに、図7は、他の実施形態に係る、エンジンの始動を制御する始動制御処理の流れを示したフローチャートである。尚、他の実施形態において、上述の図3で説明したエンジンの始動を制御する始動制御処理における処理と概ね同様の処理については、同様のステップ番号を付し、それらの説明は適宜、省略する。
図7に示されるように、上述のステップS102の判定の結果、2次電池の電池状態が、安定していると判定される場合(ステップS102:Yes)、ハイブリッドECU等の制御下で、電力量が、始動電力量より大きいか否かが判定される(ステップS201)。ここに、本実施形態に係る「始動電力量」とは、本発明に係る「第2始動電力量」の一具体例であり、電動発電機だけによって、車両が駆動走行を開始するために、2次電池から電動発電機に供給する必要のある電力量を意味する。ここで、電力量が、始動電力量より大きい場合(ステップS201:Yes)、電動発電機によって、車両の駆動走行が、開始される(ステップS202)。この結果、電力量と、始動電力量との比較に基づいて、電動発電機によって、車両の駆動走行を、適切且つ迅速に開始することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明はガソリンに限らず、ディーゼルエンジンその他の燃料を利用する各種の内燃機関(エンジン)を有するハイブリッド式の車両の始動制御装置、及び出力制御装置に適用してよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド式の車両の始動制御装置及び方法、並びに、出力制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本発明の実施形態に係るハイブリッドシステムのブロック図である。 本実施形態に係る、エンジンの断面を示すと共に、エンジンのシステム系統を示した模式図である。 本実施形態に係る、エンジンの始動を制御する始動制御処理の流れを示したフローチャートである。 本実施形態に係る、点火を伴わない空回転を行う実行時間の算出手法を、図式的に示した模式図(図4(a)から図4(c))である。 本実施形態に係る、点火を伴わない空回転を行う実行時間と、クランキングエネルギの最小値との関係を示したグラフである。 比較例に係る、エンジン16が、点火を伴うクランキングを行うために必要なクランキングエネルギを、図式的に示したグラフ(図6(a))、並びに、本実施形態に係る、エンジン16が、点火を伴わない空回転を行うために必要な仕事量、及び、空回転後に減少したクランキングエネルギを、図式的に示したグラフ(図6(b)及び図6(c))である。 他の実施形態に係る、エンジンの始動を制御する始動制御処理の流れを示したフローチャートである。
符号の説明
1…ハイブリッドシステム、2…車速センサ、3…アクセルセンサ、4…ブレーキコンピュータ、5…SOCセンサ、10…2次電池、12…インバータ、13…動力分割機構、14…電動発電機、16…エンジン、18…電池ECU、19…電動発電機、20…ハイブリッドECU(HVECU)、22…車輪

Claims (12)

  1. 動力源として、内燃機関及び電動発電機を備えるハイブリッド式の車両の始動制御装置であって、
    前記電動発電機に電気を供給する2次電池と、
    該2次電池の余力を特定する第1特定手段と、
    該特定された余力が所定閾値に達しない場合に、前記内燃機関が点火を伴わない空回転を行うように、前記内燃機関が有する点火手段及び前記電動発電機を制御する制御手段と
    を備えることを特徴とするハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記特定された余力が前記所定閾値を越える場合に、前記空回転を行わせることなく前記内燃機関を始動させるように、前記点火手段及び前記電動発電機を制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記空回転として、前記内燃機関が有するクランクシャフトを、少なくとも1回転させるように、前記電動発電機を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  4. 前記余力は、前記2次電池が供給可能な電力量であり、
    前記所定閾値は、前記供給される電気により前記内燃機関を始動可能な電力量として設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  5. 前記始動可能な電力量を特定する第2特定手段を更に備えることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  6. 前記第2特定手段は、前記始動可能な電力量として、(i)前記内燃機関において点火を伴う回転による前記車両の始動を可能とする第1始動電力量、又は、(ii)前記内燃機関において点火を伴わない前記電動発電機による前記車両の始動を可能とする第2始動電力量を特定することを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  7. 前記第2特定手段は、前記始動可能な電力量を、前記内燃機関の機関温度、潤滑剤の温度若しくは粘性度、並びに、前記空回転を行った回数のうち、少なくとも一つに基づいて特定することを特徴とする請求項5又は6に記載のハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  8. 前記制御手段は、前記空回転を行う実行時間を、前記特定された余力及び前記特定された始動可能な電力量に基づいて、算出する算出手段を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  9. 前記制御手段は、前記内燃機関の燃焼中に、前記特定された余力が前記所定閾値に達していない場合、前記燃焼を停止させないように、前記点火手段及び前記電動発電機を制御することを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のハイブリッド式の車両の始動制御装置。
  10. 動力源として、内燃機関及び電動発電機を備えるハイブリッド式の車両の出力制御装置であって、
    前記電動発電機に電気を供給する2次電池と、
    該2次電池の余力を特定する第1特定手段と、
    前記内燃機関の燃焼中に、前記特定された余力が所定閾値に達しない場合に、前記燃焼を停止させないように、前記内燃機関が有する点火手段を制御する制御手段と
    を備えることを特徴とするハイブリッド式の車両の出力制御装置。
  11. 動力源としての内燃機関及び電動発電機と、前記電動発電機に電気を供給する2次電池と、を備えるハイブリッド式の車両の始動制御方法であって、
    該2次電池の余力を特定する第1特定工程と、
    該特定された余力が所定閾値に達しない場合に、前記内燃機関が点火を伴わない空回転を行うように、前記内燃機関が有する点火手段及び前記電動発電機を制御する制御工程と
    を備えることを特徴とするハイブリッド式の車両の始動制御方法。
  12. 動力源としての内燃機関及び電動発電機と、前記電動発電機に電気を供給する2次電池と、を備えるハイブリッド式の車両の出力制御方法であって、
    該2次電池の余力を特定する第1特定工程と、
    前記内燃機関の燃焼中に、前記特定された余力が所定閾値に達しない場合に、前記燃焼を停止させないように、前記内燃機関が有する点火手段を制御する制御工程と
    を備えることを特徴とするハイブリッド式の車両の出力制御方法。
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