以下、本発明に係る流体噴射装置を、インクジェット式プリンタに具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の流体噴射装置としてのプリンタ10は、略箱状をなす本体ケース11を備えている。本体ケース11内の下部には、その長手方向(図1において左右方向となる主走査方向)に沿ってプラテン12が架設されると共に、そのプラテン12の下側には図示しない廃インクタンクが設けられている。プラテン12は、ターゲットとしての用紙Pを支持する支持台であり、紙送り機構13が有する紙送りモータ14の駆動力に基づき、用紙Pを主走査方向と直交する副走査方向(図1において前後方向)に沿って給送するようになっている。
また、本体ケース11内においてプラテン12の上方にはガイド軸15が架設され、このガイド軸15にはキャリッジ16が移動可能に支持されている。また、本体ケース11の内面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17及び従動プーリ18が回転自在に支持されている。駆動プーリ17にはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモータ19が連結され、これら一対のプーリ17,18間には、キャリッジ16を固定支持したタイミングベルト20が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモータ19の駆動によりタイミングベルト20を介して主走査方向に移動可能となっている。
また、図1に示すように、キャリッジ16の下面側には、流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド21が設けられている。そして、図2に示すように、この記録ヘッド21の下面にて構成されるノズル形成面21aには、列状に並んだ複数のノズルで構成されるノズル群の各ノズル開口22が、前後方向に沿う複数列(図2では5列)のノズル列22A,22B,22C,22D,22Eを形成するようにして、左右方向へ一定の間隔をおいて形成されている。ちなみに、本実施形態では、図2において最右端に位置するノズル列22Eが白黒印刷用のブラックインクを噴射するノズル開口22とされ、それ以外の各ノズル列22A〜22Dがカラー印刷用のカラーインクを噴射するノズル開口22とされている。
一方、図1に示すように、キャリッジ16上には記録ヘッド21に対して流体としてのインクを供給するための複数(本実施形態の場合は5つ)のインクカートリッジ23が着脱可能に搭載されている。これらの各インクカートリッジ23は記録ヘッド21のノズル形成面21aに形成された各ノズル列22A〜22Eと個別に対応するものであり、記録ヘッド21内に形成された図示しないインク流路を介して対応するノズル列22A〜22Eのノズル群にインクを個別供給する構成とされている。ちなみに、本実施形態では、図1において最右端に位置するインクカートリッジ23には白黒印刷用のブラックインクが収容され、それ以外の各インクカートリッジ23にはカラー印刷用の各色カラーインクが各々収容されている。
さらに、本体ケース11の一端部(図1では右端部)、すなわち、用紙Pが至らない非印刷領域には、プリンタ10の電源オフ時や記録ヘッド21をメンテナンスする場合にキャリッジ16を位置させるためのホームポジションHPが設けられている。そして、このホームポジションHPの下方となる位置には、記録ヘッド21からの用紙Pに対するインク噴射が良好に維持されるように、各種のメンテナンス動作を行うメンテナンスユニット24が設けられている。
以下、このメンテナンスユニット24の具体的構成について、図3〜図12を参照しながら説明する。
図3及び図4に示すように、メンテナンスユニット24は、略矩形枠体状をなすユニット本体25を有している。このユニット本体25は、後側が開口した略箱体状の後側ケーシング25a、同じく後側が開口し且つ後側ケーシング25aよりも前後方向に大きな略箱体状をなす前側ケーシング25b、両ケーシング25a,25bの右端間を連結する右側フレーム25c、及び両ケーシング25a,25bの左端間を連結する左側フレーム25dを有している。そして、ユニット本体25における後側ケーシング25aの後側には、その後側ケーシング25aの後側開口を塞ぐように、補助ケーシング26が取り付けられている。
また、図3に示すように、ユニット本体25の下側には、ユニット本体25の左右幅よりも幅広な取付プレート27が水平状態に固定されている。そして、メンテナンスユニット24は、ユニット本体25における取付プレート27が図示しない取付手段を介して本体ケース11に支持されることにより、図1に示すように、本体ケース11内におけるホームポジションHPの下方位置に固定されている。
また、図4に示すように、メンテナンスユニット24において、補助ケーシング26内には正逆回転可能な駆動モータ(駆動源)30が取り付けられている。そして、駆動モータ30は、その出力軸30aが補助ケーシング26を貫通して前側へと延設され、その出力軸30aの先端がユニット本体25における後側ケーシング25a内に位置する構成とされている。
一方、図3及び図4に示すように、ユニット本体25における後側ケーシング25aと前側ケーシング25bとの間には、駆動力伝達部材及び送り部材としての右側リードスクリュ31と左側リードスクリュ32が、左右各フレーム25c,25dの上方で且つ内側寄りとなる位置で前後方向に沿う水平状態での回転自在に架設されている。これら各リードスクリュ31,32は、図5に示すように、その長手方向における前端側と後端側の外周面にピッチの大きさが比較的小さい第1送りねじ部33,35を有すると共に、その長手方向における略中央部の外周面にピッチの大きさが比較的大きい第2送りねじ部34,36を有する構成とされている。そして、右側リードスクリュ31の後端部と左側リードスクリュ32の後端部は後側ケーシング25a内に各々導入されている。
両リードスクリュ31,32の各後端部には歯付きプーリ(図示略)が各々装着され、両歯付きプーリ間には無端状のピニオンベルト(図示略)が掛装されている。また、右側のリードスクリュ31の後端部に装着された歯付きプーリは、駆動モータ30における出力軸30aの先端に対して伝達ギア(図示略)を介して動力伝達可能に連結されている。したがって、駆動モータ30が回転することによる駆動力の発生に伴い、左右の両リードスクリュ31,32は各々の軸線S(図4参照)を中心に同じ方向へ同期回転する構成とされている。
また、図3及び図4に示すように、左右の両リードスクリュ31,32には、その軸線S方向に沿って、複数(本実施形態では左右一対ずつ合計6つ)の移動部材41,42,43が螺合されている。すなわち、全ての移動部材41,42,43が共通のリードスクリュ31,32に装着されている。これら各移動部材41,42,43は、図6に示すように、リードスクリュ31,32に対する螺合部位となる筒状部44の一部に孔45が径方向に貫通形成され、その孔45内に係合部としてのピン46が嵌入されている。
そして、各筒状部44内において、各ピン46は、それらの先端がリードスクリュ31,32の第1送りねじ部33,35及び第2送りねじ部34,36間に亘って螺旋状に連続形成されたねじ溝47に係合されている。したがって、このピン46がリードスクリュ31,32の回転時にねじ溝47に係合案内されることにより、各移動部材41〜43は左右一対ずつが組となって、同じリードスクリュ31,32の軸線S方向に沿って順次に進退移動する構成とされている。具体的には、ピン46を係合案内するねじ溝47のピッチの大きさがリードスクリュ31,32の軸線S方向の途中で変化しているため、リードスクリュ31,32の回転速度は一定でも、各移動部材41〜43はねじ溝47のピッチの大きさの変化に伴い移動速度が変わる構成とされている。すなわち、各移動部材41〜43は、ピッチの大きさが比較的小さい第1送りねじ部33,35では移動速度が遅く、ピッチの大きさが比較的大きい第2送りねじ部34,36では移動速度が速くなる。
また、各移動部材41〜43は、2つ以上の移動部材が同時に第2送りねじ部34,36に係合することはなく、1つの移動部材のみが第2送りねじ部に係合するように、リードスクリュ31,32の軸線S方向に離間配置されている。すなわち、リードスクリュ31,32の軸線S方向において各移動部材41〜43の各ピン46の間に存在するピッチ数は、第2送りねじ部34,36のピッチ数以上に設定されている。そのため、リードスクリュ31,32の回転時には、1つの移動部材が第2送りねじ部34,36に係合しているときに、他の移動部材が第2送りねじ部34,36に同時に係合することはなく、その時点で第2送りねじ部34,36に係合している1つの移動部材のみが速い速度で移動することになる。
ちなみに、本実施形態では、駆動モータ30が正転駆動した場合に、両リードスクリュ31,32が正転方向へ回転し、各移動部材41〜43は後側ケーシング25a側から前側ケーシング25b側へと前進移動するように構成されている。その一方、駆動モータ30が逆転駆動した場合には、両リードスクリュ31,32が逆転方向へ回転し、各移動部材41〜43は前側ケーシング25b側から後側ケーシング25a側へと後退移動するように構成されている。すなわち、これら両リードスクリュ31,32と各移動部材41〜43とにより本実施形態では駆動力伝達装置が構成されている。
ここで、各移動部材41〜43のうち、リードスクリュ31,32の軸線S方向において最も前側に位置する移動部材41は、その移動途中にリードスクリュ31,32の回転に基づく駆動力を後述する被駆動部材としての、キャップ、ピストンポンプ及び大気開放弁装置に各々伝達するように構成されている。また、リードスクリュ31,32の軸線S方向において前側から2番目に位置する移動部材42は、その移動途中にリードスクリュ31,32の回転に基づく駆動力を後述する被駆動部材としてのワイパ部材79に伝達するように構成されている。また、リードスクリュ31,32の軸線S方向において最も後側に位置する移動部材43は、その移動途中にリードスクリュ31,32の回転に基づく駆動力を後述する被駆動部材としてのワイパ部材81及びフラッシングボックス88に各々伝達するように構成されている。
まず、各移動部材41〜43のうち移動部材41について説明する。
図7及び図8に示すように、この移動部材41には、前後方向に長い略長方形状のプレート部48がユニット本体25における左右の各フレーム25c,25dの内側に垂下配置されるようにして一体形成されている。そして、このプレート部48には移動部材41においてキャップに対する連係部として機能する案内長孔49が形成されている。この案内長孔49は、プレート部48の下部において後端側から前後方向の略中間位置まで水平に延びる後側水平部49aと、後側水平部49aの前端からプレート部48の前端側上部近傍に向けて斜状に延びる斜状部49bと、斜状部49bの前端からプレート部48の前端側上部まで水平に延びる前側水平部49cとを有している。
また、図7及び図8に示すように、プレート部48の内側となる位置であって、リードスクリュ31,32における第2送りねじ部34,36と対応する位置には、上方が開放された矩形枠体状のホルダ部材50が配設されている。そして、このホルダ部材50内には、キャップ部材51が有底箱状をなすキャップホルダ51a内に収容された状態でキャップホルダ51aと共に上下方向への移動自在に収容されている。なお、キャップ部材51の下面とキャップホルダ51aの内底面との間には、図示しないコイルスプリングがキャップ部材51を上方へ付勢するように介装されており、本実施形態ではキャップ部材51とキャップホルダ51aにより被駆動部材としてのキャップが構成されている。また、図7及び図8は、メンテナンスユニット24を左側から概観した状態を示すものであるため、この図7及び図8には左右の両リードスクリュ31,32に関して左側リードスクリュ32及びその送りねじ部35,36のみを図示している。
ここで、キャップを構成するキャップ部材51及びキャップホルダ51aについて説明する。
図3及び図4に示すように、キャップ部材51は、略矩形箱状をなし、その上面側には記録ヘッド21のノズル形成面21aに形成された各ノズル列22A,22B,22C,22D,22Eと各別に対応する複数(本実施形態では5つ)の矩形環状をなすシール部52がキャップ開口部を構成するように形成されている。そして、各シール部52の内側に凹設された各キャップ小室53内にはインク吸収材が収納され、各ノズル列22A〜22Eのノズル開口22から吐出されたインクを吸収保持するようになっている。
図7及び図8に示すように、キャップホルダ51aの左右両側壁外面からは凸部54が水平方向へ各々突出形成され、各凸部54は移動部材41に一体形成されたプレート部48の案内長孔49内に係入されている。したがって、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材41(及びプレート部48)が前後方向に直線的に進退移動した場合、キャップホルダ51aの凸部54はプレート部48の案内長孔49内を摺動し、特に、その案内長孔49の斜状部49bに沿って摺動するときには、上下方向へ移動することになる。
すなわち、キャップ部材51は、キャップホルダ51aの凸部54がプレート部48の案内長孔49の前側水平部49c内に係入状態となったときに、最も上方に移動した当接位置状態となって、記録ヘッド21のノズル形成面21aにシール部52を密着させつつ各ノズル開口22を囲んだ状態となる。一方、キャップ部材51は、キャップホルダ51aの凸部54がプレート部48の案内長孔49の後側水平部49a内に係入状態となったときに、記録ヘッド21のノズル形成面21aから離間した位置のうち最も下方に移動した非当接位置状態となる。そして、キャップ部材51は、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材41が第2送りねじ部34,36を通過する際に、キャップホルダ51aの凸部54が移動部材41と一体的に移動するプレート部48の案内長孔49の斜状部49bに摺動案内されることで当接位置と非当接位置との間を昇降動作するようになっている。
また、図3及び図4に示すように、左右一対の移動部材41から一体的に各々垂下形成された両プレート部48のうちユニット本体25の右側フレーム25cの内側に配置されるプレート部48の外側面からは平面視略三角形状をなす上下一対の押圧片56a,56bが水平方向に各々突出形成されている。これらの両押圧片56a,56bは、右側フレーム25cに前後方向に沿って切欠形成された切欠溝57を介してユニット本体25の外側へ突出している。
両押圧片56a,56bのうち下側の押圧片56aは、移動部材41においてピストンポンプ29に対する連係部として機能するものであり、この下側の押圧片56aの移動経路上に位置するようにして、ユニット本体25における右側フレーム25cの後端部外側にはピストンポンプ29が設けられている。そして、このピストンポンプ29には、キャップ部材51の前側壁から各キャップ小室53と各別に対応するように引き出された複数のインク排出チューブ55の合流した先端部が接続されている(図3及び図4参照)。すなわち、ピストンポンプ29が移動部材41の押圧片56aと連係状態となって駆動された場合には、インク排出チューブ55を介してキャップ部材51の各キャップ小室53内が吸引されるようになっている。
一方、両押圧片56a,56bのうち上側の押圧片56bは、移動部材41において大気開放弁装置58に対する連係部として機能するものであり、この上側の押圧片56bの移動経路上に位置するようにして、ユニット本体25における右側フレーム25cの後端部外側には大気開放弁装置58が設けられている。そして、この大気開放弁装置58からは複数(本実施形態では5つ)の大気開放チューブ64が引き出され、これらの各大気開放チューブ64はキャップ部材51の後側壁部において各々対応するキャップ小室53内と連通するように連結されている。したがって、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材41(及びプレート部48)が前後方向に進退移動した場合には、その移動部材41(及びプレート部48)と共に押圧片56bが前後方向に進退移動し、大気開放弁装置58を動作させるようになっている。
ここで、被駆動部材としてのピストンポンプ29及び大気開放弁装置58について順番に説明する。
図9(a)(b)(c)に示すように、ピストンポンプ29は、有底円筒形状をなすシリンダ101を有しており、その開口部102には密封栓103が嵌合されている。密封栓103の中心には貫通孔104がシリンダ101の軸線方向(換言すると、移動部材41の移動方向)に沿うように貫通形成され、該貫通孔104には移動部材41の移動方向に沿って延びるロッド部としてのピストンロッド105がスライド自在に挿通されている。すなわち、ピストンロッド105は、その長手方向における先端側(図9では後端側)をシリンダ101内に位置させる一方、その長手方向における基端側(図9では前端側)をシリンダ101外に位置させるようにして、移動部材41の移動方向となる前後方向に沿って進退移動自在とされている。
また、ピストンロッド105の長手方向においてシリンダ101内に位置する先端寄りの周面部位からは、シリンダ101の内径よりも径寸法が小さいフランジ部106が形成されている。そして、ピストンロッド105の周面においてフランジ部106よりも先端側となる周面には複数本(図9には2本のみ図示)の軸方向溝107が形成されている。そして、このピストンロッド105における軸方向溝107が形成された部位には、シリンダ101内をポンプ室としての吸入室108と吐出室109とに区画するピストン110が軸方向への移動自在に支持されている。
また、ピストンロッド105の先端にはピストン110の抜け防止用のストッパ板111が止めねじ112によって止着されている。なお、ストッパ板111は、シリンダ101の内径よりも小径の円板であって、そのストッパ板111においてピストン110に対向する側の面(図9では前面)にはピストンロッド105における軸方向溝107と各々連通する複数本(図9には2本のみ図示)の径方向溝113が形成されている。
一方、ピストンロッド105の長手方向においてシリンダ101外に位置する基端寄りの周面部位からは鉤状部114が突出形成され、この鉤状部114とシリンダ101側の密封栓103との間にはコイルスプリング115が蓄力状態にて介装されている。コイルスプリング115は、ピストン110を下死点位置状態(図9(a)参照)に付勢保持する機能を有しており、このコイルスプリング115の付勢力によりピストンロッド105は、常には、そのフランジ部106が密封栓103に当接すると共にストッパ板111がピストン110に当接した状態となる前方へ向けて付勢されるようになっている。
また、ピストンポンプ29におけるシリンダ101の外周壁からはシリンダ101内に各々連通する吸入筒部116と吐出筒部117とが径方向外方(図9では右方)に向けて突設されている。吸入筒部116は、シリンダ101の長手方向の略中間位置であって、ピストン110が下死点位置状態にあるときには該ピストン110によりシリンダ101内との連通口116aが塞がれる位置から突設されており、その突出端には既述したように複数のインク排出チューブ55の合流した先端部が接続されている。また、吐出筒部117は、シリンダ101の長手方向の先端寄り位置であって、ピストン110の上死点位置よりも更に先端側(図9では後端側)となる位置にシリンダ101内との連通口117aが開口するように突設されており、その突出端には廃インクタンク(図示略)に連なるインク排出チューブ118が接続されている。
以上のようなピストンポンプ29は、ピストンロッド105の基端に移動部材41の下側の押圧片56aが移動部材41の移動途中に当接して連係状態となり、その連係状態のまま更に所定方向(本実施形態では後方)へ移動する押圧片56aによりピストンロッド105が後方へ押圧されることで、ポンプ駆動するようになっている。すなわち、ピストンポンプ29は、移動部材41(及び押圧片56a)の進退移動に伴い、図9(a)に示す下死点位置状態から図9(b)に示す吸入開始位置状態を経て図9(c)に示す上死点位置状態に至った後、再び図9(b)の吸入開始位置状態を経て図9(a)の下死点位置状態に戻るという一連のポンプ作動を繰り返すようになっている。
次に、大気開放弁装置58は、図10及び図11に示すように、ユニット本体25の右側フレーム25cに固定された有底四角箱状のケース部59を有し、ケース部59の底壁60には、その底壁60の前端側略半分の領域を占める矩形状の透孔61が形成されている。また、ケース部59の底壁60には上下両方向へ端部が各々突出する複数(本実施形態では5つ)の筒部62が形成され、各筒部62内が大気開放孔63を構成している。各筒部62の底壁60下面から下方へ延びる端部にはそれぞれ大気開放チューブ64の一端が連結され、それら各大気開放チューブ64の他端は、図4に示すように、キャップ部材51の後側壁内へ引き込まれて個別対応する各キャップ小室と連通するように構成されている。
その一方、ケース部59内において各筒部62の底壁60上面側に突出する端部には、ゴムなどの弾性材料からなる弁座65が大気開放孔63の大気連通状態を確保する態様で冠着され、この弁座65上には、図10(a)及び図11(a)(b)に示すように矩形板状をなす弁手段としての弁体66が載置されている。弁体66の上面には、その左右両側で前後方向の略中間となる位置から、左右一対の係止片67が互いにフック状をなして対向するように立設されている。
図10(a)(b)に示すように、両係止片67の各外側面からはケース部59の上端から下方へ切欠形成された切欠溝68に係入される突起69が突設されている。そして、弁体66は、この突起69が切欠溝68内を上下方向に摺動することにより、大気開放チューブ64及びキャップ小室並びにキャップ小室を介して連通するインク排出チューブ55内を大気に対して連通状態とする開放位置(上方位置)と大気に対して非連通状態とする閉鎖位置(下方位置)との間を移動する構成とされている。
ケース部59において切欠溝68よりも前端側となるケース部59の上端位置からは、弁体66を開閉動作させるために揺動するレバー部材70を支持する支持溝71が上下方向に切欠形成されている。レバー部材70は、断面視逆L字状をなすように形成され、その屈曲部分の左右両端面から水平方向に突設した突起72が支持溝71内に係入されることにより、大気開放弁装置58のケース部59に揺動自在な状態で支持されている。
レバー部材70は、その屈曲部分から水平アーム73が水平方向の後側へ延設されると共に、その屈曲部分から垂下アーム74が鉛直下方へ延設されている。すなわち、水平アーム73は弁体66と係止片67のフック状上端部との間となる後方位置まで延設され、垂下アーム74はケース部59の底壁60に形成された透孔61を貫通する下方位置、具体的には移動部材41における上側の押圧片56bの移動軌跡と交差する位置まで延設されている。
また、図10,図11に示すように、ユニット本体25の右側フレーム25cにおいて大気開放弁装置58のケース部59の前側近傍には直方体状をなす台座75が取り付けられている。台座75の側面には鉤状部76が突出形成され、この鉤状部76とレバー部材70の垂下アーム74との間にはコイルスプリング77が掛装されている。したがって、レバー部材70は、このコイルスプリング77の付勢力により、常には、垂下アーム74が鉛直方向に沿うと共に、水平アーム73が閉鎖位置状態にある弁体66の係止片67から下方へ僅かに離間して水平方向に沿った状態、すなわち、図11(a)に示す位置状態となっている。
その一方、移動部材41と共に上側の押圧片56bが後退して垂下アーム74をコイルスプリング77の付勢力に抗して図11(b)に示すように押圧した場合には、レバー部材70が突起72を回転中心にして回転(揺動)し、水平アーム73が係止片67に係止して閉鎖位置にある弁体66を上方の開放位置へと持ち上げるようになっている。このように、大気開放弁装置58においては、レバー部材70の垂下アーム74が移動部材41と一体的に移動する押圧片56bに押圧(又は非押圧)されることにより、弁体66が下方の閉鎖位置(閉弁位置)と上方の開放位置(開弁位置)との間を移動部材41の移動途中に連動して昇降動作するようになっている。
ちなみに、本実施形態では、上記各押圧片56a,56bは、移動部材41がリードスクリュ31,32における後側の第1送りねじ部33,35を後端側へ後退した場合に、各々対応する被駆動部材としてのピストンポンプ29及び大気開放弁装置58と連係状態となるようになっている。具体的には、まず下側の押圧片56aがピストンポンプ29のピストンロッド105と連係状態となり、該ピストンロッド105を後方へ押圧し、その後に上側の押圧片56bが大気開放弁装置58におけるレバー部材70の垂下アーム74と連係状態となり、該垂下アーム74を開弁方向へ押圧するようになっている。
次に、払拭手段用の移動部材42について説明する。
図3及び図4に示すように、この払拭手段用の移動部材42には、移動部材42において払拭手段に対する連係部として機能するワイパホルダ78が左右一対の移動部材42間を連結するように設けられている。ワイパホルダ78の上面側には、払拭手段を構成するワイパ部材79がワイパホルダ78の長手方向全体に亘り少し斜め方向へ延びるように装着されている。そして、ワイパ部材79は、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材42(及びワイパホルダ78)が前後方向に進退移動した場合には、その移動部材42(及びワイパホルダ78)の移動途中に連動して前後方向に進退移動するようになっている。
ここで、ワイパ部材79は、その先端(上端)を記録ヘッド21のノズル形成面21aに摺接させながら前後方向に移動することにより、そのノズル形成面21aに形成された全ノズル列22A〜22Eをカバーするようにノズル形成面21a全面を払拭する全列用のワイパ部材79として構成されている。したがって、キャリッジ16(及び記録ヘッド21)がホームポジションHPに位置している状態において、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材42が第2送りねじ部34,36を通過する場合には、ワイパ部材79によって記録ヘッド21のノズル形成面21aの全面が払拭されることになる。
次に、払拭手段用及び流体受容手段用の移動部材43について説明する。
図3及び図4に示すように、この払拭手段用及び流体受容手段用の移動部材43には、移動部材43において払拭手段及び流体受容手段に対する連係部として機能するワイパホルダ80が左右一対の移動部材43間を連結するように設けられている。ワイパホルダ80の上面側には払拭手段を構成するワイパ部材81がワイパホルダ80の長手方向における左端部近傍に装着されている。そして、ワイパ部材81は、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材43(及びワイパホルダ80)が前後方向に進退移動した場合には、その移動部材43(及びワイパホルダ80)の移動途中に連動して前後方向に進退移動するようになっている。
ここで、ワイパ部材81は、その先端(上端)を記録ヘッド21のノズル形成面21aに摺接させながら前後方向に移動することにより、そのノズル形成面21aに形成された全ノズル列22A〜22Eのうち何れか1つのノズル列の形成領域のみ(ノズル形成面21aの一部)を払拭する単列用のワイパ部材81として構成されている。すなわち、この単列用のワイパ部材81を使用する場合には、ホームポジションHPにおいてキャリッジ16(及び記録ヘッド21)の左右方向位置が払拭対象となる1つのノズル列をワイパ部材81の前後方向に沿う移動経路と位置的に対応させるべく移動調節される。その後、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材43が第2送りねじ部34,36を通過した場合には、ワイパ部材81によって記録ヘッド21のノズル形成面21aの一部(その際に払拭対象とされた1つのノズル列の形成領域のみ)が払拭されることになる。
また、図4,図7,図8に示すように、ユニット本体25における後側ケーシング25aの前壁面からは左右一対の支持片82が前方へ向けて突設され、各支持片82の先端部上縁からは切欠溝83が後方側へ鉤状をなすように切欠形成されている。この左右両支持片82間には、前面側がシール面とされた矩形板状のシール板84が配置され、このシール板84は左右両端面から水平方向に突出させた軸部85を対応する支持片82の切欠溝83内に係入させることにより、その軸部85を回動中心として回動自在に支持されている。
また、支持片82よりも少し上方となる位置で後側ケーシング25aの前壁面とシール板84の後面との間にはコイルスプリング86が介装され、このコイルスプリング86の付勢力により、シール板84は、常には、軸部85を回動中心として図7,図8における時計方向へ回動付勢されている。また、支持片82よりも下方となる位置で後側ケーシング25aの前壁面からはストッパとして機能する突起87が前方に向けて突設され、その突起87に対してコイルスプリング86により回動付勢されたシール板84の後面下部が当接した場合には、シール板84のそれ以上の回動を規制するようになっている。
また、図3,図4,図7,図8に示すように、シール板84とワイパホルダ80との間には流体受容手段を構成するフラッシングボックス(流体受容体)88が配置されている。図12に示すように、このフラッシングボックス88は、記録ヘッド21のノズル形成面21aと対応した矩形状の受容開口部88aを表側に有する有底箱体状をなしている。そして、その受容開口部88a内にはキャップ部材51のキャップ小室53内に収納されたインク吸収材と同材質の流体吸収材としての液体吸収材88bがワイヤ88cにて抜け止めされた状態で収納されている。
また、図12に示すように、フラッシングボックス88の一端側(図3,図4,図7の場合は上端側)の左右両端からは左右一対のピン部88dが水平方向へ突設され、これら各ピン部88dは、前述したワイパホルダ80の左右後端部から後方に向けて突設された左右一対の支持片90に対して回動可能に軸支されている。したがって、フラッシングボックス88は、ワイパホルダ80の後面側から突設された左右一対の支持片90によって左右一対のピン部88dが回動可能に軸支されることにより、ワイパホルダ80に対して一端側のピン部88dを回動支点として回動自在に支持されている。
ここで、図3,図4,図7(a)に示すように、フラッシングボックス88は、記録ヘッド21から吐出されるインクを受容しない不使用時には、その受容開口部88aが後側への横向きとなる垂直状態となって非受容位置に保持され、その受容開口部88aがシール板84におけるシール面とされた前面により閉塞されるようになっている。すなわち、非受容位置において、フラッシングボックス88は、シール板84により受容開口部88aが閉塞されることで、フラッシングボックス88内に収納された液体吸収材88bが吸収保持しているインクの乾燥固化が抑制されるようにしている。
一方、図7及び図8に示すように、フラッシングボックス88の他端側(図7,図8の場合は下端側)における左右両端部からは左右一対の板片状をなす脚部91がフラッシングボックス88の底面から斜め外方(図7(a)の場合は斜め前側下方)へ延びるように一体形成され、各脚部91の先端部内側からはピン部92が水平方向へ各々突設されている。これら各脚部91は、前述したホルダ部材50における後端部の左右両端から立設された左右一対の板片状をなす支柱部50aの基部50bと左右方向位置が対応しており、図7に示すように、フラッシングボックス88が不使用時で略垂直状態となっている場合には、対応する支柱部50aの基部50bに後側から当接する構成とされている。
また、ホルダ部材50における左右両支柱部50aの高さ方向略中間位置の内側からは前述したフラッシングボックス88における脚部91のピン部92と対応するように左右一対のピン部93が水平方向へ各々突設されている。そして、互いに対応するピン部92とピン部93との間にはコイルスプリング94が掛装され、このコイルスプリング94の付勢力により、フラッシングボックス88は、その一端側(前端側)のピン部88dを回動支点として、常には、脚部91がホルダ部材50における支柱部50aの基部50bに圧接される方向(図7,図8では反時計方向)へ回動付勢されている。
また、図7,図8に示すように、ホルダ部材50における左右両支柱部50aの各内面側で上端からフラッシングボックス88の深さ相当距離だけ下方となる位置には、左右両支柱部50aの対向面間の距離をフラッシングボックス88の左右方向幅よりも若干大きくするように拡幅段差部(姿勢変化誘導手段)95が形成されている。すなわち、フラッシングボックス88は、ホルダ部材50における左右両支柱部50a間を、拡幅段差部95の上方側を通過することにより前後方向へ移動可能とされている。
したがって、フラッシングボックス88は、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材43(及びワイパホルダ80)が前後方向に進退移動した場合には、その移動部材43(及びワイパホルダ80)の移動途中に連動して前後方向へ進退移動するようになっている。すなわち、フラッシングボックス88は、リードスクリュ31,32の回転に伴い移動部材43が第2送りねじ部34,36を通過する際に、その移動部材43にワイパホルダ80の支持片90を介して支持された一対のピン部88dが連動して移動するようになっている。そして、このピン部88dの移動に伴い、フラッシングボックス88は、受容開口部88aが記録ヘッド21のノズル形成面21aに近接して対向する水平姿勢状態の受容位置(図8(c)参照)と、その受容位置から離間した垂直姿勢状態の非受容位置(図7(a)参照)との間を進退移動するようになっている。
このように移動部材43が前進移動する途中において、フラッシングボックス88は、その左右両側縁の底面及び脚部91が拡幅段差部95に接触することにより、その姿勢を垂直姿勢状態から水平姿勢状態となる方向へ安定的に変化させるようになっている。そして、受容位置における水平姿勢状態では、コイルスプリング94の付勢力により脚部91の先端が拡幅段差部95に接触した安定支持状態に維持される。
次に、上記のように構成されたプリンタ10の作用に関し、特にメンテナンスユニット24におけるキャップ部材51、ピストンポンプ29、及び大気開放弁装置58の各動作に着目して以下説明する。
さて、メンテナンスユニット24が図7(c)に示す状態で、プリンタ10が用紙Pに対する印刷を実行している途中に、記録ヘッド21のノズル開口22から目詰まり防止等を目的としてインクを吸引除去するクリーニングを行う場合には、プリンタ10及びそのメンテナンスユニット24において以下のような動作がなされる。
すなわち、印刷時にガイド軸15に沿って印刷領域を往復移動していたキャリッジ16が図4において二点鎖線で示す位置からキャップ部材51の上方のホームポジションHPまで移動して停止させられる。なお、図4はメンテナンスユニット24が図7(a)に示す状態の場合と対応している。すると、駆動モータ30が逆転駆動され、リードスクリュ31,32が逆転方向へ回転するため、このリードスクリュ31,32の逆転方向への回転に伴って、各移動部材41〜43がそれぞれ後退移動を開始する。
この時点(図7(c)に示す時点)において、リードスクリュ31,32の第1送りねじ部33,35に筒状部44が螺合している移動部材42,43は比較的ゆっくりと後退移動する。その一方、この時点でリードスクリュ31,32の第2送りねじ部34,36に筒状部44が螺合している移動部材41は比較的速やかに後退移動し、その際に、この移動部材41に一体化されたプレート部48も比較的速やかに後退移動する。
そのため、プレート部48の案内長孔49に係入されているキャップホルダ51a側の凸部54は、図7(b)に示すように、案内長孔49の斜状部49bに摺動案内されて上方へ速やかに移動する。そして、凸部54が案内長孔49の斜状部49bから前側水平部49cに移ると、図7(a)に示すように、キャップ部材51は最も上方に移動した当接位置状態となり、ホームポジションHPに位置する記録ヘッド21のノズル形成面21aに各ノズル開口22を囲んだ状態となってシール部52が密着する。
一方、キャップホルダ51a側の凸部54が案内長孔49の斜状部49bにより上方へ摺動案内されている時点において、図10(a)(b)に示すように、プレート部48から水平方向へ突出形成された各押圧片56a,56bは各々が対応するピストンポンプ29及び大気開放弁装置58の何れとも未だ連係状態にはなっていない。そして、その状態からリードスクリュ31,32の逆転方向への回転に伴って移動部材41が更に後退移動すると、図9(a)及び図11(a)に示すように、下側の押圧片56aがピストンポンプ29におけるピストンロッド105の基端(図11では前端)に当接する。
このとき、ピストンポンプ29は、図9(a)に示すように、ピストン110がポンプ室としての吸入室108の容積を最小とする下死点位置にある。そして、その状態から、移動部材41が更に後退移動すると、キャップ部材51は凸部54が案内長孔49の前側水平部49c内を水平移動するだけなので、記録ヘッド21に対する当接位置状態を維持する。一方、ピストンポンプ29は、下側の押圧片56aによりピストンロッド105が後方に向けて更に押され、図9(b)に示すように、ピストン110がフランジ部106により押されて吸入筒部116の連通口116aを吸入室108内に連通させる位置(吸入開始位置)まで移動する。
すると、ピストン110が図9(a)の下死点位置から図9(b)の吸入開始位置まで移動することにより吸入室108の容積が大きくなり吸入室108内には負圧が生じる。そして、そのように負圧が生じた吸入室108が吸入筒部116及びインク排出チューブ55を介してキャップ部材51の各キャップ小室53と連通する。その結果、記録ヘッド21に対して当接位置状態を維持しているキャップ部材51の各キャップ小室53内も負圧状態となり、記録ヘッド21の各ノズル開口22から廃インクがキャップ部材51内に吸引排出される「吸引工程」が実行される。
そして、図9(b)に示す状態から、移動部材41の更なる後退移動に伴い下側の押圧片56aがピストンロッド105を押圧しつつ更に後退移動すると、次には図11(b)に示すように、上側の押圧片56bが大気開放弁装置58におけるレバー部材70の垂下アーム74に当接し、該垂下アーム74を開弁方向へ揺動させるようになる。すると、弁体66が開弁状態となり、大気開放チューブ64を介してキャップ部材51における各キャップ小室53内の負圧が解消されると共に、そのキャップ部材51内にはピストンポンプ29から引き続き吸引力が作用するため、キャップ部材51内から廃インクがピストンポンプ29の吸入室108内に吸引排出される「空吸引工程」が実行される。
そして、その状態から更に移動部材41が後退移動し、各押圧片56a,56bが各々対応するピストンロッド105及び垂下アーム74を押圧しながら図9(c)に示す位置(すなわち、上死点位置)まで移動すると、上記の空吸引工程が終了する。なお、以上の吸引工程から空吸引工程に至る過程において、シリンダ101の吐出室109内にインクが充満している場合には、その吐出室109内からインクがピストン110に押し出されるようにして吐出筒部117及びインク排出チューブ118を介して廃インクタンクへと排出される「吐出工程」が実行される。
また、図9(c)に示す上死点位置の状態から、リードスクリュ31,32が正転駆動されることにより移動部材41が各押圧片56a,56bを図9(a)に示す下死点位置状態とするまで前進移動した場合には、ピストンロッド105がコイルスプリング115の付勢力により前方へ移動する。その結果、それまではフランジ部106からの後方への押圧力を前面で受けていたピストン110が今度はストッパ板111からの前方への押圧力を後面で受けるようになり、このストッパ板111により後押しされるようにして図9(a)に示す下死点位置へと移動する。そして、その移動途中において、吸入室108内にキャップ部材51内から吸引して充満している廃インクが軸方向溝107及び径方向溝113を介して吐出室109側に流入し、次回の吐出工程に備えられる。なお、この場合、キャップ部材51は、凸部54が案内長孔49の前側水平部49c内を水平移動するだけなので、記録ヘッド21に対する当接位置状態を維持する。
このように、メンテナンスユニット24においては、メンテナンス動作の一種とされるクリーニング動作を行う場合、駆動モータ30の駆動力によりリードスクリュ31,32を逆回転させる。そして、その際に、リードスクリュ31,32の軸線Sに沿って直線的に後退移動する同じ一つの移動部材41が移動途中にキャップ部材51とピストンポンプ29と大気開放弁装置58を順次に作動させて「吸引工程」「空吸引工程」「吐出工程」を次々と実行させる。
なお、当接位置(すなわち図7(a)の状態)にあるキャップ部材51を非当接位置(すなわち図7(c)の状態)へと移動させる場合には、図7(a)の状態において駆動モータ30が正転駆動される。すると、リードスクリュ31,32が正転方向に回転し、移動部材41とプレート部48が前進移動するため、キャップ部材51は案内長孔49の斜状部49bによりキャップホルダ51aの凸部54が下方へ向けて摺動案内される結果、図7(c)に示す非当接位置へと戻る。
そして、その状態からリードスクリュ31,32が更に正転方向に回転されると、各移動部材41,42,43がそれぞれ前進移動するようになる。その結果、図8(a)に示すように移動部材42と共に前進移動するワイパ部材79によるノズル形成面21aのワイピング動作、図8(b)に示す移動部材43と共に前進移動するワイパ部材81によるノズル形成面21aのワイピング動作、図8(c)に示すフラッシング位置へのフラッシングボックス88の移行セット動作などが順次に行われる。
したがって、以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)プリンタ10の記録ヘッド21をメンテナンスする複数の被駆動部材(キャップ部材51、ピストンポンプ29、大気開放弁装置58、ワイパ部材79,81、フラッシングボックス88)にはリードスクリュ31,32からの駆動力が各移動部材41,42,43の移動途中に連係状態となることで各々に伝達可能とされている。特にキャップ部材51、ピストンポンプ29、及び大気開放弁装置58という3つの被駆動部材が同じ一つの移動部材41と該移動部材41の移動途中に連係状態となって各々の動作をする。そして、この場合において、駆動力伝達のために変位する部材は直線移動する移動部材41(42,43)であるため、その移動部材41の変位のためのスペースが嵩張ることはない。また、各被駆動部材(キャップ部材51、ピストンポンプ29、大気開放弁装置58等)は直線移動する移動部材41と連係状態となり、その移動部材41の移動方向に動作する構成であるため、その移動方向には大きなストロークで動作することが可能となる。したがって、プリンタ10全体の小型化に貢献しつつ、各被駆動部材(キャップ部材51、ピストンポンプ29、大気開放弁装置58等)を被駆動時には大きく動作させることができる。
(2)一つの移動部材41はキャップ部材51用の連係部(案内長孔79)とピストンポンプ29用の連係部(下側の押圧片56a)と大気開放弁装置58用の連係部(上側の押圧片56b)を有している。また、移動部材42はワイパ部材79用の連係部(ワイパホルダ78)を有し、移動部材43はワイパ部材81用の連係部とフラッシングボックス用の連係部とを兼ねる連係部(ワイパホルダ80)を有している。そして、各移動部材41,42,43はリードスクリュ31,32の回転に伴い進退移動する際、各々が有する連係部を介して連係状態となった被駆動部材(キャップ部材51、ピストンポンプ29、大気開放弁装置58、ワイパ部材79,81、フラッシングボックス88)を他の被駆動部材とは別に独自の動作させるようになっている。したがって、プリンタ10における複数の被駆動部材(キャップ部材51、ピストンポンプ29、大気開放弁装置58、ワイパ部材79,81、フラッシングボックス88)を、各移動部材41,42,43の移動途中に被駆動部材毎に個別動作させることができる。
(3)駆動力伝達部材及び送り部材を構成するリードスクリュ31,32は、長棒状をなす部材であるため、プリンタ10の本体ケース11内及びメンテナンスユニット24内における設置スペースが確保しやすい。加えて、リードスクリュ31,32の回転に伴い変位する移動部材41(42,43)は何れもリードスクリュ31,32の軸線S方向に沿って直線移動する構成であるため、その変位のためのスペースも嵩張ることなく確保し易い。したがって、より一層、プリンタ10の小型化に貢献できる。
(4)駆動力伝達部材及び送り部材を構成するリードスクリュ31,32は特別部品ではなく汎用部品であることから、このリードスクリュ31,32を利用することにより、プリンタ10(メンテナンスユニット24)における駆動力伝達構造の小型化と簡略化を容易に図ることができる。
(5)リードスクリュ31,32の軸線S方向に沿って移動部材41が移動する途中で該移動部材41と連係状態となる各被駆動部材(キャップ部材51、ピストンポンプ29、大気開放弁装置58)が各々の動作を開始する順番に配置されている。したがって、その移動部材41の移動方向において対応する被駆動部材毎に連係状態となる位置を調整するようにすれば、記録ヘッド21をメンテナンスするために動作させたい被駆動部材を所望の動作タイミングで動作開始させることができる。
(6)リードスクリュ31,32を逆転駆動した場合には移動部材41が後退移動し、その後退移動の途中で、まずキャップ部材51を記録ヘッド21に対する当接位置に移動させ、次にピストンポンプ29を駆動させてキャップ部材51内に記録ヘッド21から廃インクを吸引排出させ、その後にキャップ部材51内を空吸引させる。そして、空吸引によりキャップ部材51からピストンポンプ29の吸入室(ポンプ室)108内に吸入した廃インクを吐出室109から廃インクタンクへ排出させるという一連のメンテナンス動作を一つの直線移動する移動部材41を各被駆動部材に順次に連係させることでスムーズに行うことができる。
(7)ピストンポンプ29はシリンダ101を長く形成すれば、ポンプ室となる吸入室108の容積を嵩張ることなく移動部材41の移動方向に沿って大きく確保できるので、ピストン110の1回のストローク移動によってもキャップ部材51から廃インクを吸引するための吸引力を大きく確保することができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更しても良い。
・ 上記実施形態において、往復動ポンプは、ピストンポンプ29以外に例えばダイヤフラムポンプなどで構成してもよい。要するに、ポンプ作動する際の駆動態様が直線的に往復移動する態様のポンプであれば、直線的に移動する移動部材41と連係状態となって良好にポンプ作動できる。
・ 上記実施形態において、同じ一つの移動部材41に対してその移動部材41の移動途中に連係状態となって動作する被駆動部材は少なくとも2つであればよい。すなわち、3つ以外に2つ被駆動部材が連係状態となる場合でもよく、又は4つ以上の被駆動部材が順次に連係状態となって各々動作するようにしてもよい。
・ 上記実施形態において、被駆動部材(キャップ部材51、ピストンポンプ29、大気開放弁装置58、ワイパ部材79,81、フラッシングボックス88)は、少なくとも2つの被駆動部材がメンテナンスユニット24に設けられたものであってもよい。
・ 上記実施形態において、リードスクリュ31,32はそのねじ溝47が同一ピッチで螺旋状をなすものであってもよい。また、移動部材は、リードスクリュ31,32に螺合する雌ねじ孔が形成されたナット部材により構成されたものであってもよい。この場合は、雌ねじ孔が係合部となる。
・ 上記実施形態では、インクカートリッジ23がキャリッジ16に搭載されたオンキャリッジタイプのインクジェット式プリンタに具体化したが、これに限らず、オフキャリッジタイプのインクジェット式プリンタに具体化しても良い。
・ 上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンタに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。
10…流体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、21…流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、21a…ノズル形成面、22…ノズル開口、29…被駆動部材及び往復動ポンプとしてのピストンポンプ、31,32…駆動力伝達部材及び送り部材としてのリードスクリュ、33,35…第1送りねじ部、34,36…第2送りねじ部、41〜43…移動部材、46…係合部としてのピン、51…被駆動部材としてのキャップを構成するキャップ部材、58…被駆動部材としての大気開放弁装置、66…弁体、101…シリンダ、105…ロッド部としてのピストンロッド、108…ポンプ室としての吸入室、110…ピストン、S…軸線。