JP2009011254A - 間葉系幹細胞の増殖能・分化能維持方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】間葉系幹細胞、特にヒト成人骨髄由来幹細胞の増殖能・分化能を維持する方法を提供する。
【解決手段】間葉系幹細胞に、哺乳類由来の転写因子Sox2あるいはNanog遺伝子を、(レトロウイルス)ベクターを使用して導入することで、強制的・安定的に遺伝子発現を誘導すること、あるいはSox2遺伝子を導入することと、成長因子であるbFGFの培地への添加を併用することにより、間葉系幹細胞、特にヒト成人骨髄由来幹細胞の増殖能・分化能を維持する方法。
【選択図】図1
【解決手段】間葉系幹細胞に、哺乳類由来の転写因子Sox2あるいはNanog遺伝子を、(レトロウイルス)ベクターを使用して導入することで、強制的・安定的に遺伝子発現を誘導すること、あるいはSox2遺伝子を導入することと、成長因子であるbFGFの培地への添加を併用することにより、間葉系幹細胞、特にヒト成人骨髄由来幹細胞の増殖能・分化能を維持する方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、増殖能・分化能を維持した間葉系幹細胞、その培養法並びに間葉系幹細胞に作用する薬物のスクリーニング方法に関する。
通常の成人由来の間葉系幹細胞(以下、「MSC」と略すことがある)よりも優れた増殖能・分化能を持つ骨髄由来MSCとしては、MAPCs (multipotent adult progenitor cells), MIAMI cells (marrow-isolated adult multilineage inducible cells)などが報告されている(非特許文献1、2)。
しかしそれらの幹細胞はその単離・樹立・維持の再現性に困難があることが知られている。
また転写因子であるSox2とNanogを多能性幹細胞ないし胚性幹細胞に導入して多能性ないし分化能を維持することは、特許文献1,2に記載されている。 特許文献2は、多分化能が胚性幹細胞(ES細胞)における多分化能と定義されており、MSCにおける分化能、例えば骨化能に関する記述は全くない。最近、マウス繊維芽細胞に4つの転写因子を導入することにより、ES細胞の有する多分化能を付与することができる事実が明らかになった(非特許文献3)。4つの転写因子の1つとしてSox2が開示されている。しかし、4つの遺伝子をそれぞれ単独で導入した場合の効果についての記述はない。
間葉系幹細胞(MSC)、特に成人ヒト骨髄由来MSCは、骨芽細胞・脂肪細胞などの中胚葉系細胞への優れた分化能を有する組織幹細胞であり(特許文献3、4)、すでに再生医療における臨床応用も行なわれている。また胚葉を超えた分化能を有することも知られているが、比較的速く老化することなどの理由から、安定した増殖能・分化能を得ることが容易でないという問題がある。
特表2002−533069
特開2005−110565
特開2006−263459
特開2006−122518
Jiang Y, Jahagirdar BN, Reinhardt RL, Schwartz RE, Keene CD, Ortiz-Gonzalez XR, Reyes M, Lenvik T, Lund T, Blackstad M, Du J, Aldrich S, Lisberg A, Low WC, Largaespada DA, Verfaillie CM. Pluripotency of mesenchymal stem cells derived from adult marrow.Nature 2002, 418: 41-49.
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Takahashi K, Yamanaka S. Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors.Cell 2006, 126: 663-676.
本発明は、従来技術の問題の解決のために、ヒト成人骨髄由来MSCの増殖能・分化能を維持する方法、或いは増殖能・分化能を維持した間葉系幹細胞、さらには間葉系幹細胞に作用する薬物のスクリーニング方法を開発することを目的とする。
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、間葉系幹細胞に特定の遺伝子を導入した形質転換体とすることで、安定した増殖能・分化能を得られることを見出した。具体的には、胚性幹細胞において本質的かつ不可欠な役割を果たしている3つの転写因子、Sox2遺伝子、Nanog遺伝子、Oct4遺伝子に注目した。間葉系幹細胞ではほとんど発現されていないこれらの転写因子を間葉系幹細胞に導入して、その形質転換細胞の性質を解析した。その結果、それぞれの発現細胞は異なる性質を示したが、Oct4遺伝子に関しては特に有用な性質変化を見出すことができなかった。しかしSox2遺伝子あるいはNanog遺伝子を間葉系幹細胞に導入すること、あるいはそれと成長因子の培地中への添加を併用することで、間葉系幹細胞の増殖能・分化能を維持できることを見出した。
本発明は、以下の形質転換された間葉系幹細胞及び間葉系幹細胞の増殖能・分化能を維持する方法を提供するものである。
項1. 哺乳類由来のSox2遺伝子を哺乳類由来間葉系幹細胞に導入してなる、Sox2遺伝子を安定的に発現可能な形質転換間葉系幹細胞。
項2. ERKタンパク質のリン酸化状態により示されたMAPK情報伝達系の活性化が亢進していることを特徴とする、請求項1に記載の間葉系幹細胞。
項3. 哺乳類由来のNanog遺伝子を哺乳類由来間葉系幹細胞に導入してなる、Nanog遺伝子を安定的に発現可能な形質転換間葉系幹細胞。
項4. 前記遺伝子を発現ベクターとして細胞内に導入してなる請求項1〜3のいずれかに記載の間葉系幹細胞。
項5. 発現ベクターがレトロウイルスベクターである請求項4に記載の間葉系幹細胞。
項6. 間葉系幹細胞がヒト由来である、請求項1〜5のいずれかに記載の間葉系幹細胞。
項7. 請求項1に記載の形質転換間葉系幹細胞をbFGF含有培地で培養することを特徴とする、増殖能・分化能を維持した間葉系幹細胞の培養方法。
項8. 請求項1〜6のいずれかに記載の形質転換間葉系幹細胞、あるいは請求項7に記載の方法により培養して得られた間葉系幹細胞を低血清の培養条件において培養することを特徴とする、形質転換間葉系幹細胞の培養方法。
項9. 請求項1〜6のいずれかに記載の間葉系幹細胞、あるいは請求項7または8に記載の方法により培養して得られた間葉系幹細胞に対し、薬物候補化合物を作用させ、該化合物の間葉系幹細胞に対する作用を評価することを特徴とする、間葉系幹細胞に作用する薬物のスクリーニング方法。
項1. 哺乳類由来のSox2遺伝子を哺乳類由来間葉系幹細胞に導入してなる、Sox2遺伝子を安定的に発現可能な形質転換間葉系幹細胞。
項2. ERKタンパク質のリン酸化状態により示されたMAPK情報伝達系の活性化が亢進していることを特徴とする、請求項1に記載の間葉系幹細胞。
項3. 哺乳類由来のNanog遺伝子を哺乳類由来間葉系幹細胞に導入してなる、Nanog遺伝子を安定的に発現可能な形質転換間葉系幹細胞。
項4. 前記遺伝子を発現ベクターとして細胞内に導入してなる請求項1〜3のいずれかに記載の間葉系幹細胞。
項5. 発現ベクターがレトロウイルスベクターである請求項4に記載の間葉系幹細胞。
項6. 間葉系幹細胞がヒト由来である、請求項1〜5のいずれかに記載の間葉系幹細胞。
項7. 請求項1に記載の形質転換間葉系幹細胞をbFGF含有培地で培養することを特徴とする、増殖能・分化能を維持した間葉系幹細胞の培養方法。
項8. 請求項1〜6のいずれかに記載の形質転換間葉系幹細胞、あるいは請求項7に記載の方法により培養して得られた間葉系幹細胞を低血清の培養条件において培養することを特徴とする、形質転換間葉系幹細胞の培養方法。
項9. 請求項1〜6のいずれかに記載の間葉系幹細胞、あるいは請求項7または8に記載の方法により培養して得られた間葉系幹細胞に対し、薬物候補化合物を作用させ、該化合物の間葉系幹細胞に対する作用を評価することを特徴とする、間葉系幹細胞に作用する薬物のスクリーニング方法。
本発明によれば、間葉系幹細胞を継代培養して細胞数を増大させた場合にも細胞の増殖能或いは、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、肝細胞などへの分化能は低下せず、再生医療などに有用な間葉系幹細胞を得ることができる。
間葉系幹細胞、例えばヒト成人骨髄由来MSCにSox2を安定的に発現することにより、成長因子bFGFに対する新しい反応性(応答性)、すなわち形態変化を起こして小型の細胞として高い増殖能と分化能を示すという現象を見出した。それらの細胞においてはMAPKシグナルの活性化が起きていることも確認した。またNanog発現細胞も非常に高い増殖能と分化能を示したが、この場合にはbFGFの添加によりむしろその効果が抑制される。
胚性幹細胞の多分化能を維持する機能が知られているが、間葉系幹細胞ではほとんど発現されていないSox2, Nanog遺伝子をそれぞれ単独で安定的発現させることによりヒト成人MSCの増殖能・分化能を維持する方法は、本発明により初めて明らかにされたものである。
本発明で使用する間葉系幹細胞は、ヒト、ラット、マウス、ウシ、ブタ、ウサギ、ウマ、サルなどの哺乳動物由来の間葉系幹細胞が挙げられ、特にヒト骨髄由来の間葉系幹細胞が挙げられる。
本明細書において、遺伝子が「安定的に発現可能な」とは、遺伝子が染色体に組み込まれて安定的に発現可能であるか、或いは染色体には組み込まれていなくても、ヌクレアーゼの作用により分解されず、細胞内に発現可能な状態で保持されていることを意味する。
Sox2遺伝子、Nanog遺伝子は、哺乳類の間葉系幹細胞で機能し得るプロモーターの下流に連結し、発現ベクターに組み込んで間葉系幹細胞に導入することで容易に行なうことができる。
間葉系幹細胞への遺伝子の導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。或いは、レトロウイルスベクターを使用した場合には、該レトロウイルスを感染させることにより遺伝子を導入できる。
間葉系幹細胞への遺伝子の導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。或いは、レトロウイルスベクターを使用した場合には、該レトロウイルスを感染させることにより遺伝子を導入できる。
哺乳類の間葉系幹細胞で機能し得るプロモーターとしては、アクチンプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF-1αプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、SV40の初期若しくは後期プロモーター、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモーターなどが挙げられる。プロモーターは誘導性プロモーターを使用することもできるが、構成的に発現可能なプロモーターが好ましい。
発現ベクターとしては、大腸菌中での複製起点および薬剤耐性マーカー遺伝子を有し、ヒト細胞で機能し得るプロモーターと、その下流にマルチクローニングサイト(MCS)を有する種々のプラスミドベクターが市販されているので、この市販のベクターを用いることができる。間葉系幹細胞は増殖が早く、遺伝子をできるだけ速やかに導入するのがよく、その点では、発現ベクターとして、レトロウイルスベクターを用いるのが好ましい。
Sox2遺伝子、Nanog遺伝子としては、哺乳動物由来の遺伝子が例示され、ヒトSox2遺伝子、ヒトNanog遺伝子が好ましい。ヒト間葉系幹細胞の使用可能なSox2遺伝子、Nanog遺伝子を以下の表に示す。
Sox2遺伝子が導入されて形質転換された間葉系幹細胞は、bFGFを含む培地で培養するのが望ましい。bFGFの培地中の濃度は、1-50ng/ml程度が好ましい。Sox2遺伝子をヒト間葉系幹細胞に導入した場合、この形質転換細胞をbFGF含有培地で培養すると、突起が消失し丸みを帯びた小型の細胞に形態変化すると共に、高い増殖能と分化能を維持することができる。bFGFとともに、神経成長因子(NGF)などの他の成長因子を培地中に添加してもよい。また、培地は、低血清(例えば2%)培地で培養することで、Sox2発現細胞ないしNanog発現細胞が、形質転換されていない間葉系幹細胞に対してより速やかに増殖し、結果として形質転換された間葉系幹細胞を濃縮することができる。なお、分化誘導における培地中には、デキサメタゾンなどの通常用いられる成分を添加するのが望ましい。
本発明によれば、間葉系幹細胞を増殖能と分化能を高い状態に維持しつつ培養することが可能である。従って、間葉系幹細胞に作用する薬物候補化合物のスクリーニングを容易に行なうことができる。例えば、間葉系幹細胞に対する分化を促進する作用を有する化合物、増殖能を維持する化合物などは、このようなスクリーニング系により得ることができる。
本発明によれば、間葉系幹細胞を増殖能と分化能を高い状態に維持しつつ培養することが可能である。従って、間葉系幹細胞に作用する薬物候補化合物のスクリーニングを容易に行なうことができる。例えば、間葉系幹細胞に対する分化を促進する作用を有する化合物、増殖能を維持する化合物などは、このようなスクリーニング系により得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1及び比較例1
<実験方法>
高い効率で安定的な強制発現をするために、発現にはレトロウイルスの感染による方法を用いた。またGFPの変異型であるVenus遺伝子を共発現させることにより、目的遺伝子(実施例のNanog遺伝子またはSox2遺伝子、比較例としてのOct4遺伝子)の発現を確認できるようにした。具体的には、IRES配列を用いて目的遺伝子-IRES-VenusとVenus-IRES-目的遺伝子のコンストラクトを作製した(図1)。 コントロールとしては、Venusのみの感染を行なった。感染後、Venusのシグナルにより感染効率を確認したが、感染を2回繰り返すことで70%以上の感染効率を達成した。その後選択培養を続けることにより、感染細胞の形態と増殖能・分化能について調べた。
<実験結果>
レトロウイルスによりSox2遺伝子、Nanog遺伝子、Oct4遺伝子を強制的・安定的に発現させたヒト骨髄由来MSCにおいて、それぞれのタンパク質が核内に局在していることを確認した(図2)。いずれのタンパク質の場合も内在的な発現を検出することはできなかった(データ省略)。それぞれの発現細胞は異なる性質を示したが、Oct4発現細胞に関しては特に有用な性質変化を見出すことができなかったので、以下ではSox2発現細胞とNanog発現細胞に関する解析結果についてのみ説明する。
実施例1及び比較例1
<実験方法>
高い効率で安定的な強制発現をするために、発現にはレトロウイルスの感染による方法を用いた。またGFPの変異型であるVenus遺伝子を共発現させることにより、目的遺伝子(実施例のNanog遺伝子またはSox2遺伝子、比較例としてのOct4遺伝子)の発現を確認できるようにした。具体的には、IRES配列を用いて目的遺伝子-IRES-VenusとVenus-IRES-目的遺伝子のコンストラクトを作製した(図1)。 コントロールとしては、Venusのみの感染を行なった。感染後、Venusのシグナルにより感染効率を確認したが、感染を2回繰り返すことで70%以上の感染効率を達成した。その後選択培養を続けることにより、感染細胞の形態と増殖能・分化能について調べた。
<実験結果>
レトロウイルスによりSox2遺伝子、Nanog遺伝子、Oct4遺伝子を強制的・安定的に発現させたヒト骨髄由来MSCにおいて、それぞれのタンパク質が核内に局在していることを確認した(図2)。いずれのタンパク質の場合も内在的な発現を検出することはできなかった(データ省略)。それぞれの発現細胞は異なる性質を示したが、Oct4発現細胞に関しては特に有用な性質変化を見出すことができなかったので、以下ではSox2発現細胞とNanog発現細胞に関する解析結果についてのみ説明する。
Sox2を発現した場合とVenusのみを発現した場合では、特に顕著な形態の違いや増殖能の違いを認めることはできなかった。ところが、最終濃度1-50ng/mlのbFGFを培地中に添加して培養したところ、両者の間に顕著な違いが明らかになった。コントロールのVenusのみを発現している場合には、遺伝子導入を行なっていない通常のMSCと同様に、細胞が形態変化を起こす。すなわち全体に細くなり、細胞の輪郭がより明確になって突起を伸ばすような反応を示す。この反応は高血清(10%)の場合でも明らかであるが、低血清(2%)の場合により顕著である。ところがSox2を発現している場合には、bFGF存在下で細胞がやや小型で丸みを帯びた形態となり、コロニー状に増殖する(図3-1、写真)。この反応はコントロールにおいては決して見られない。またSox2の発現のみでも見ることができなかった。またbFGFに追加して、さらに神経成長因子であるNGFを添加した場合においても、これらの細胞形態について同様な特徴を観察することができた(図3-2、写真)。小型の細胞が増加することはFACS解析によっても確かめられた(データ省略)。
Sox2発現細胞の増殖能を調べるために、コントロールの細胞とSox2発現細胞をそれぞれbFGF添加・無添加の両方の場合において継代培養を続けて、その細胞数を数えた。その結果、bFGF存在下のSox2発現細胞の増殖能が顕著に高いことが明らかになった(図4、グラフ)。Sox2発現細胞のbFGFに対する反応性は、低血清の場合に特に顕著に観察される。実際、bFGF存在下の低血清(2%)の条件で継代培養を続けることで、Sox2発現細胞を濃縮することができることがわかった(データ省略)。このことは、この培養条件のもとでのSox2発現細胞の増殖能が非発現細胞と比較して顕著に高いことを示している。一般に、優れた未分化な間葉系幹細胞は小型であることが知られているが、その意味でもSox2を強制発現したMSCにbFGFを添加すると高い増殖能を獲得して形態変化(小型細胞)を起こすという現象は非常に興味深い。
次にSox2発現細胞の骨化能について、ALP活性の測定とAlizarin Redによる染色とにより調べたところ、コントロール細胞と比較してbFGFを添加した場合には骨化能が強く促進されていることがわかった(図5-1 & 5-2、グラフ&写真)。またbFGFに反応するSox2発現細胞において、MAPKシグナルの活性化が起きているのではないかという予想のもと、ERKのリン酸化状態をタンパクの免疫ブロットの実験により行なった。その結果、bFGFに反応したSox2発現細胞では、コントロールの細胞と比較してERKリン酸化のベーサルレベルが亢進していることが明らかになった(図6、ブロット写真)。このリン酸化の亢進は、bFGF添加後24時間の時点ですでに起きていることも確かめられた(データ省略)。これらの結果は、MAPKシグナルの活性化が、この細胞の高い増殖能についての分子メカニズムのひとつであることを示している。
Nanog発現細胞は、細胞がやや小型であり(図2)、コントロールの細胞と比較して顕著に増殖能が高いことが明らかになった(図7、グラフ)。ただしNanog発現細胞の場合には、bFGFを添加することによる効果は明らかではなかった。 またNanog発現細胞に関しては、bFGFを添加した場合におけるSox2発現細胞と同様な反応(応答)を観察することはできなかった(データ省略)。これらの結果は、bFGFに対するSox2発現細胞の反応(応答)はSox2に特異的に見られるものであることを示している。またNanog発現細胞の場合においても、ALP活性の測定とAlizarin Redによる染色とにより骨化能を調べたところ、コントロール細胞と比較して骨化能が強く促進されていることがわかった。この場合にはbFGFを添加するとむしろその効果が抑制されていた(図8-1 & 8-2、グラフ&写真)。
Claims (9)
- 哺乳類由来のSox2遺伝子を哺乳類由来間葉系幹細胞に導入してなる、Sox2遺伝子を安定的に発現可能な形質転換間葉系幹細胞。
- ERKタンパク質のリン酸化状態により示されたMAPK情報伝達系の活性化が亢進していることを特徴とする、請求項1に記載の間葉系幹細胞。
- 哺乳類由来のNanog遺伝子を哺乳類由来間葉系幹細胞に導入してなる、Nanog遺伝子を安定的に発現可能な形質転換間葉系幹細胞。
- 前記遺伝子を発現ベクターとして細胞内に導入してなる請求項1〜3のいずれかに記載の間葉系幹細胞。
- 発現ベクターがレトロウイルスベクターである請求項4に記載の間葉系幹細胞。
- 間葉系幹細胞がヒト由来である、請求項1〜5のいずれかに記載の間葉系幹細胞。
- 請求項1に記載の形質転換間葉系幹細胞をbFGF含有培地で培養することを特徴とする、増殖能・分化能を維持した間葉系幹細胞の培養方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の形質転換間葉系幹細胞、あるいは請求項7に記載の方法により培養して得られた間葉系幹細胞を低血清の培養条件において培養することを特徴とする、形質転換間葉系幹細胞の培養方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の間葉系幹細胞、あるいは請求項7または8に記載の方法により培養して得られた間葉系幹細胞に対し、薬物候補化合物を作用させ、該化合物の間葉系幹細胞に対する作用を評価することを特徴とする、間葉系幹細胞に作用する薬物のスクリーニング方法。
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