JP2009009860A - インモールド成形用導電性フィルム及び透明導電層付きプラスチック成形品の製造方法 - Google Patents

インモールド成形用導電性フィルム及び透明導電層付きプラスチック成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造するために好適に用いられる転写用導電性フィルムを提供し、前記転写用導電性フィルムを用いて、透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造する方法を提供する。
【解決手段】支持体1と、前記支持体1上の前記支持体1とは剥離可能な透明導電層3と、前記透明導電層3上の放射線硬化性材料の硬化物層4と、前記硬化物層4上の熱溶融性樹脂層5とを少なくとも有し、前記透明導電層3は、導電性微粒子と該導電性微粒子相互間に含浸した前記放射線硬化性材料の硬化物とを含む、インモールド成形用導電性フィルム10。
【選択図】 図1

Description

本発明は、プラスチック成形品を射出成形により成形するに際して、プラスチック成形品本体の成形と同時に、成形品本体の表面に透明導電層を転写により積層一体化するインモールド成形に好適に用いられる転写用導電性フィルムに関する。また、本発明は、前記転写用導電性フィルムを用いてインモールド成形により透明導電層付きプラスチック成形品を製造する方法に関する。
透明導電層付き成形品としては、エレクトロルミネッセンスパネル電極、エレクトロクロミック素子電極、液晶電極、透明面発熱体、タッチパネルのような透明電極、エレクトリックペーパー、静電容量スイッチ、透明な電磁波遮蔽層が付けられたディスプレイ(CRTなど)などが挙げられる。
現在、透明導電層は主にスパッタリング法によって製造されている。スパッタリング法は、ある程度大きな面積のものでも、表面電気抵抗の低い導電層を形成できる点では優れている。しかし、装置が大掛かりで成膜速度が遅いという欠点がある。また、透明導電層を形成すべき面が平面状でない場合には、スパッタリング法によって均一な導電層を形成できないという欠点もある。
スパッタリング法による欠点を解決すべく、特開2002−347150号公報、及び特開2003−16842号公報には、対象物体表面に転写によって透明導電層を付与するための転写用導電層フィルムが開示されている。透明導電層は、支持体上に支持体とは剥離可能に設けられた導電性微粒子の圧縮層からなる。対象物体表面への透明導電層の転写は、転写用導電層フィルムに設けられた接着剤層を介して紫外線照射によって行われる。
特開2004−152221号公報には、ベースフィルム上に転写可能な透明電極膜を形成してなる転写フィルムを、タッチパネル基板成形用射出成形金型内に挿入し、タッチパネル基板成形用材料を射出注入し、タッチパネル基板を成形すると同時に、前記転写フィルムの透明電極膜をタッチパネル表面に転写する、インモールド成形によるタッチパネル用電極基板の製造方法が開示されている。
特開2002−347150号公報 特開2003−16842号公報 特開2004−152221号公報
特開2004−152221号公報によれば、転写フィルムの作製に際して、ベースフィルム上への透明電極膜の形成方法として、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル−ゲル法)が挙げられている。これらの電極膜形成方法では、電極膜は無機材料膜であり、有機樹脂成分は含まれていない。そのため、電極膜は可撓性に乏しく、歪み撓み等に追従することはできない。特に、インモールド成形時の高温環境下におけるフィルム変形時に、電極膜にクラックが生じてしまい、導電性に悪影響を及ぼす。また、転写フィルムの透明電極膜と注入された溶融樹脂とが直接接するので、電極膜とタッチパネル基板との密着性は良くない。
本発明の目的は、透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造するために好適に用いられる転写用導電性フィルムを提供することにある。また、本発明の目的は、前記転写用導電性フィルムを用いて、透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造する方法を提供することにある。
特に、本発明の目的は、電気抵抗値の低い透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造するために好適に用いられる転写用導電性フィルムを提供することにある。また、特に、本発明の目的は、前記転写用導電性フィルムを用いて、電気抵抗値の低い透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造するために好適に用いられる転写用導電性フィルムについて検討し、本発明に到達した。
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) 支持体と、前記支持体上の前記支持体とは剥離可能な透明導電層と、前記透明導電層上の放射線硬化性材料の硬化物層と、前記硬化物層上の熱溶融性樹脂層とを少なくとも有し、
前記透明導電層は、導電性微粒子と該導電性微粒子相互間に含浸した前記放射線硬化性材料の硬化物とを含む、インモールド成形用導電性フィルム。
(2) 前記導電性微粒子は、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、硼素ドープ酸化亜鉛、及び酸化カドミウムからなる群から選ばれる、上記(1) に記載の導電性フィルム。
(3) 前記透明導電層は、0.05〜5μmの厚みを有する、上記(1) 又は(2) に記載の導電性フィルム。
(4) 前記放射線硬化性材料の硬化物層は、0.1〜10μmの厚みを有する、上記(1) 〜(3) のうちのいずれかに記載の導電性フィルム。
(5) 前記熱溶融性樹脂の層は、0.1〜50μmの厚みを有する、上記(1) 〜(4) のうちのいずれかに記載の導電性フィルム。
(6) 前記インモールド成形用導電性フィルムは、
支持体上に導電性微粒子の分散液を塗布、乾燥し、導電性微粒子の含有層を形成し、
前記導電性微粒子の含有層を圧縮し、導電性微粒子相互間に空隙が存在する導電性微粒子の圧縮層を形成し、
前記導電性微粒子の圧縮層の上に、放射線硬化性材料を塗布、乾燥して、放射線硬化性材料を導電性微粒子相互間に含浸させると共に、放射線硬化性材料の層を形成し、
放射線照射を行って、導電性微粒子相互間に含浸している放射線硬化性材料、及び層を形成している放射線硬化性材料を硬化させ、
得られた放射線硬化性材料の硬化物層の上に、熱溶融性樹脂を塗布、乾燥して、熱溶融性樹脂の層を形成する、
ことにより得られたものである、上記(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載の導電性フィルム。
(7) プラスチック成形品本体と、前記成形品本体の表面に付与された透明導電層とを含む透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造する方法であって、
支持体と、前記支持体上の前記支持体とは剥離可能な透明導電層と、前記透明導電層上の放射線硬化性材料の硬化物層と、前記硬化物層上の熱溶融性樹脂層とを少なくとも有し、前記透明導電層は、導電性微粒子と該導電性微粒子相互間に含浸した前記放射線硬化性材料の硬化物とを含むインモールド成形用導電性フィルムを準備し、
前記導電性フィルムを、前記支持体面が射出成形用金型内の一方の型面を向くようにセットし、前記フィルムの熱溶融性樹脂層面と他方の型面との間にキャビティーが形成されるように型締めし、その後、
前記キャビティー内に溶融樹脂を射出して、冷却し、プラスチック成形品本体を成形すると共に、成形品本体の表面に前記透明導電層を積層一体化する、
ことを含む、透明導電層付きプラスチック成形品の製造方法。
(8) 前記透明導電層付きプラスチック成形品は、前記成形品本体の湾曲した表面に透明導電層が付与されたものである、上記(7) に記載のプラスチック成形品の製造方法。
なお、本発明において、「前記支持体とは剥離可能な透明導電層」とは、支持体と透明導電層とが互いに剥離可能な状態であることを意味する。本発明のインモールド成形用転写用導電性フィルムを実際に使用する際には、成形品本体の表面に積層一体化された導電層から支持体を剥離することもあるし、薄い成形品本体の表面に積層一体化された導電層を成形品と共に、支持体から剥離することもある。
本発明のインモールド成形用導電性フィルムにおいては、透明導電層は、導電性微粒子と該導電性微粒子相互間に含浸した放射線硬化性材料の硬化物とを含んでいる。このため、前記透明導電層は、可撓性に優れており歪み撓み等に追従することが可能であり、また、インモールド成形時の高温環境下におけるフィルム変形によっても前記透明導電層にクラックが生じることがない。さらに、導電性微粒子相互間に含浸した放射線硬化性材料の硬化物は、前記透明導電層中における導電性微粒子相互の位置関係を固定化し、導電性微粒子相互の接触を維持する役目を果たす。そのため、インモールド成形時の高温環境プロセスを経ても、成形品に付与された透明導電層の電気抵抗値を低く維持することができる。
また、本発明のインモールド成形用導電性フィルムにおいては、インモールド成形時に、前記導電性フィルムの熱溶融性樹脂層と注入された溶融樹脂とが接して溶着するので、成形品本体と透明導電層との密着性は非常に良好である。
本発明のインモールド成形用導電性フィルムを用いてインモールド成形を行うことにより、プラスチック成形品本体を成形すると共に、成形品本体の所望の表面に前記導電性フィルムの透明導電層を積層一体化することができる。得られた透明導電層は、可撓性に優れており、インモールド成形時の高温環境下においてもクラックが生じることがない。さらに、成形品に付与された透明導電層の電気抵抗値は低く維持される。
また、熱溶融性樹脂層と成形品本体とが溶着しているので、成形品本体と透明導電層との密着性は非常に良好である。透明導電層を付与すべき成形品本体の表面が平面状ではなく、曲面状であっても、透明導電層をクラックを生じさせることなく良好に付与することができる。
このように、本発明によれば、透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造するために好適に用いられる転写用導電性フィルムが提供される。この転写用導電性フィルムは、インモールド成形に好適に用いられるが、インモールド成形用途のみならず、熱溶融性樹脂層を介して熱転写を行うその他の用途にも用いることができる。また、本発明によれば、前記転写用導電性フィルムを用いて、電気抵抗値の低い透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により簡便に製造する方法が提供される。
本発明は、エレクトロルミネッセンスパネル電極、エレクトロクロミック素子電極、液晶電極、透明面発熱体、タッチパネルのような透明電極、エレクトリックペーパー、静電容量スイッチ、透明な電磁波遮蔽層が付けられたディスプレイ(CRTなど)などの製造に適用することができる。
図面を参照して、本発明を説明する。まず、本発明の転写用導電性フィルムについて説明する。
図1は、本発明の転写用導電性フィルムの一例を示す断面図である。図1において、導電性フィルム(10)は、支持体(1) 上に剥離層(2) と透明導電層(3) と放射線硬化性材料の硬化物層(4) と熱溶融性樹脂層(5) とをこの順で有している。剥離層(2) は、透明導電層(3) との剥離を容易にするための任意の層である。
支持体(1) は、可撓性樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、セロハンフィルム、ノルボルネンフィルム(JSR(株)製、アートンなど)等が挙げられる。支持体(1) の厚みは、例えば5〜100μmであり、ハンドリング性や成形安定性を考慮すると15〜75μmが好ましい。
支持体(1) 上には、図示の例では、剥離層(2) が形成されている。剥離層(2) は、インモールド成形後に成形体本体と一体化された導電層(3) と剥離層(2) との間での剥離を容易にするための任意の層であり、比較的硬い樹脂層(例えば、鉛筆硬度2H以上4H以下)とするとよい。
剥離層(2) は、一般にハードコート剤として知られている材料を必要に応じて溶剤に溶解した液を支持体(1) 上に塗布、乾燥して、硬化させることにより形成することができる。ハードコート剤としては、特に制限されることなく、公知の各種ハードコート剤を用いることができる。例えば、シリコーン系、アクリル系、メラミン系等の熱硬化型ハードコート剤を用いることができる。これらの中でも、シリコーン系ハードコート剤は、高い硬度が得られる点で優れている。
また、不飽和ポリエステル樹脂系、アクリル系等のラジカル重合性ハードコート剤、エポキシ系、ビニルエーテル系等のカチオン重合性ハードコート剤等の紫外線硬化型ハードコート剤を用いてもよい。紫外線硬化型ハードコート剤は、硬化反応性等の製造性の点から好ましい。これらの中でも、硬化反応性、表面硬度を考慮すると、アクリル系のラジカル重合性ハードコート剤が望ましい。
ハードコート剤の塗布は、グラビアシリンダー、リバース等のロールコーター、メイヤーバー、スリットダイコーター等公知の方法で行うとよい。
塗布後、適切な温度範囲で乾燥し、その後、硬化させる。熱硬化型ハードコート剤の場合には、適切な熱を与えて、例えばシリコーン系ハードコート剤の場合には60〜120℃程度に、1分間〜48時間加熱して硬化させる。紫外線硬化型ハードコート剤の場合には、紫外線照射を行い、硬化させる。紫外線照射は、キセノンランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等のランプを用いて、紫外線を200〜2000mJ/cm2 程度照射するとよい。剥離層(2) の厚さは、例えば0.5〜20μm程度であり、好ましくは0.5〜2μm程度である。
剥離層(2) を設けない場合には、支持体(1) の導電層(3) 側の表面は、インモールド成形後に成形体本体と一体化された導電層(3) と支持体(1) との剥離を容易にするために剥離処理されていることが好ましい。例えば、シリコーン剥離剤等を塗布するとよい。
支持体(1) 上に直接、又は支持体(1) 上の剥離層(2) 上に、透明導電層(3) を形成する。本発明において、導電層(3) の形成のために、各種の導電性微粒子から選ばれる導電性微粒子を用いる。
透明導電層の製造においては、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、硼素ドープ酸化亜鉛、酸化カドミウム等の導電性無機微粒子が用いられる。ITOがより優れた導電性が得られる点で好ましい。あるいは、ATO、ITO等の無機材料を硫酸バリウム等の透明性を有する微粒子の表面にコーティングしたものを用いることもできる。これら微粒子の粒子径は、導電層の用途に応じて要求される光学特性及び電気特性により異なり、また、粒子の形状により一概には言えないが、1.0μm以下が好ましく、1nm〜100nmがより好ましく、5nm〜100nmがさらに好ましい。粒子径が1.0μmを超えると、導電層表面のヘイズ値が悪化するなどの光学特性の悪化を招く。
本発明において、透明とは可視光を透過することを意味する。光の散乱度合いについては、導電層の用途により要求されるレベルが異なる。本発明では、一般に半透明といわれるような散乱のあるものも含まれる。
本発明において、上記各種の導電性微粒子から目的に応じて選ばれる導電性微粒子を分散した液を導電性塗料として用いる。この導電性塗料を支持体(1) 上に直接、又は支持体(1) 上の剥離層(2) 上に、塗布、乾燥し、導電性微粒子含有層を形成する。その後、前記導電性微粒子含有層を圧縮し、導電性微粒子の圧縮層を形成して、導電層(3) を得る。
導電性微粒子を分散する液体としては、特に限定されることなく、既知の各種液体を使用することができ、水、あるいは水と親和性のある極性有機溶剤が好ましい。特にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が好ましい。これら液体は、単独でも2種以上の混合したものでも使用することができる。また、液体の種類により、分散剤を使用することもできる。
用いる液体の量は、特に制限されず、導電性微粒子の分散液が塗布に適した粘度を有するようにすればよい。例えば、導電性微粒子100重量部に対して、液体100〜100,000重量部程度である。導電性微粒子と液体の種類に応じて適宜選択するとよい。
導電性微粒子の液体中への分散は、公知の分散手法により行うとよい。中でもメディアミルによる分散が好適である。分散メディアとしては、従来から用いられているガラスビーズ、アルミナビーズ、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ等が使用可能であるが、ジルコニアビーズが最適である。分散メディアは、その直径が小さくなるほど分散能力が高まる傾向にある。導電性微粒子の分散は、過分散になると、得られる導電層の導電性が悪化する傾向があり、一方、分散不十分であると、得られる導電層表面の粗さが粗くなる傾向がある。分散メディアは、直径0.03〜1.0mm程度のものを用いるとよい。
導電性微粒子の分散液は、樹脂を含まないことが好ましい。すなわち、樹脂量=0であることが好ましい。樹脂を用いなければ、導電層において、樹脂によって導電性微粒子同士の接触が阻害されることがない。従って、導電性微粒子相互間の導電性が確保され、得られる導電層の電気抵抗値が低い。導電性を損なわない程度の量であれば、樹脂を含むことも可能であるが、例えば、分散液中における樹脂の含有量の上限は、分散前の体積で表して、導電性微粒子の体積を100としたとき、25未満の体積であり、好ましくは19以下の体積である。バインダーとしての役割を果たす程度の量の樹脂を用いると、導電性微粒子同士の接触がバインダーにより阻害され、微粒子間の電子移動が阻害され導電性が低下する。
このように導電層には圧縮時において(すなわち、導電性微粒子の分散液中において)樹脂を用いないことが好ましく、用いるとしても少量が好ましい。用いる場合の樹脂量は、導電層の目的に応じて、ある程度変化し得るので、適宜決定するとよい。
導電性微粒子の分散液を支持体(1) 上に直接、又は支持体(1) 上の剥離層(2) 上に、塗布、乾燥し、導電性微粒子含有層を形成する。
導電性微粒子分散液の塗布は、特に限定されることなく、公知の方法により行うことができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョンノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スクイズ法などの塗布法によって行うことができる。
次に、形成された導電性微粒子含有層を圧縮し、導電性微粒子の圧縮層(3) を得る。圧縮することにより、膜の強度を向上させる。すなわち、圧縮することで導電性微粒子相互間の接触点が増え接触面が増加する。このため、塗膜強度が上がると共に、電気抵抗が低下する。
圧縮は44N/mm2 以上の圧縮力で行うことが好ましい。44N/mm2 未満の低圧であれば、導電性微粒子含有層を十分に圧縮することができず、導電性に優れた導電層が得られにくい。135N/mm2 以上の圧縮力がより好ましく、180N/mm2 の圧縮力が更に好ましい。圧縮力が高いほど、塗膜強度が向上し、より導電性に優れた層が得られる。圧縮力を高くするほど装置の耐圧を上げなくてはならないので、一般には1000N/mm2 までの圧縮力が適当である。圧縮は、特に限定されることなく、シートプレス、ロールプレス等により行うことができるが、ロールプレス機を用いて行うことが好ましい。圧縮の詳細については、前掲の特開2002−347150号公報、特開2003−16842号公報に記載されている。
このようにして、導電性微粒子の圧縮層(3) が形成される。導電性微粒子圧縮層の厚さ(=透明導電層の厚さ)は、用途にもよるが、0.05〜5μm程度とすればよく、0.1〜3μmが好ましい。厚さが0.05μm未満では、インモールド成形後の成形品において、表面抵抗値の上昇を招き、一方、5μmを超えると、全光線透過率が低下する等の光学特性の悪化を引き起こしやすい。
形成された導電性微粒子の圧縮層(3) は、多孔質の層であり、導電性微粒子相互間に空隙が存在する。
導電性微粒子の圧縮層(3) の上に、放射線硬化性材料を塗布、乾燥して、放射線硬化性材料を導電性微粒子相互間に含浸させると共に、圧縮層(3) 上に放射線硬化性材料の層を形成する。その後、放射線照射(電子線、紫外線など)を行って、導電性微粒子相互間に含浸している放射線硬化性材料を硬化させると共に、層を形成している放射線硬化性材料を硬化させ、放射線硬化性材料の硬化物層(4) を得る。
圧縮層(3) 中の導電性微粒子相互間に放射線硬化性材料を含浸させ硬化することによって、圧縮された導電性微粒子と含浸した放射線硬化性材料の硬化物とからなる可撓性に優れる透明導電層(3) が得られる。放射線硬化性材料の含浸は、導電性微粒子の圧縮層(3) が形成された後、すなわち、導電性微粒子相互が圧縮操作により互いに接合し導通性が確保された後に行われているので、透明導電層(3) の導電性は高い。しかも、導電性微粒子相互間の空隙が放射線硬化性材料の硬化物で満たされるので、透明導電層(3) 中における導電性微粒子の圧縮状態が維持され、導電性微粒子相互の位置関係が固定化され、導電性微粒子相互の接触が確実に維持される。そのため、インモールド成形時の高温環境プロセスを経ても、成形品に付与された透明導電層の電気抵抗値は低く維持される。
放射線硬化性材料の硬化物層(4) の厚さは、0.1〜10μm程度とすればよく、0.5〜7.0μmが好ましい。厚さが0.1μm未満では、圧縮層(3) 中への放射線硬化性材料の含浸量が少ない場合があり、導電性微粒子相互間の空隙が放射線硬化性材料の硬化物で満たされない場合がある。そのため、上述した導電性微粒子相互の接触の維持が不十分となり、インモールド成形時の高温環境プロセスによって、導電層の電気抵抗値が上昇することが懸念される。一方、厚さが10μmを超えると、圧縮層(3) 中への放射線硬化性材料の含浸量は十分であり、導電層の電気抵抗値の上昇抑制効果は飽和する。
放射線硬化性材料としては、光学的に透明な紫外線硬化性材料及び電子線硬化性材料から選択する。
放射線硬化性材料は、紫外線(電子線)硬化性化合物やその重合用組成物から構成されることが好ましい。このようなものとしては、アクリル酸やメタクリル酸のエステル化合物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートのような(メタ)アクリル系二重結合;ジアリルフタレートのようなアリル系二重結合;マレイン酸誘導体等の不飽和二重結合等の紫外線あるいは電子線照射によってラジカルを発生し、架橋あるいは重合する反応性二重結合基を分子中に含有又は導入したモノマー、オリゴマー及びポリマー等を挙げることができる。これらは多官能、特に3官能以上のものであることが好ましく、1種のみ用いても2種以上併用してもよい。また、単官能のものを必要に応じて用いてもよい。
紫外線(電子線)硬化性モノマーとしては、分子量2000未満の化合物が、オリゴマーとしては分子量2000〜10000のものが好適である。これらとしては、スチレン、エチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等も挙げられるが、特に好ましいものとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ) アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ) アクリレート、フェノールエチレンオキシド付加物の(メタ) アクリレート等が挙げられる。この他、紫外線硬化性オリゴマーとしては、オリゴエステルアクリレートやウレタンエラストマーのアクリル変性体等が挙げられる。
さらに、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素ポリマー、ポリエチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂等の樹脂に、公知の手法により(メタ)アクリル系二重結合を導入して放射線感応変性を行ったものを使用することができる。
放射線硬化性材料は、公知の光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、放射線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光重合開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。光重合開始剤のうち、光ラジカル開始剤としては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。光重合開始剤の含有量は、例えば、前記紫外線硬化性成分に対して、0.5〜5重量%程度である。
また、放射線硬化性材料として、エポキシ化合物及び光カチオン重合触媒を含有する組成物も使用される。
放射線硬化性材料の塗布は、グラビアシリンダー、リバース等のロールコーター、メイヤーバー、スリットダイコーター等公知の方法で行うとよい。また、塗布に際して、圧縮層(3) の導電性微粒子相互間によりよく含浸させるために、適切な溶剤で希釈して、放射線硬化性材料の粘度を調整してもよい。
放射線硬化性材料の硬化物層(4) の上に、熱溶融性樹脂を塗布、乾燥して、熱溶融性樹脂層(5) を形成する。熱溶融性樹脂層(5) を形成することによって、インモールド成形時に、熱溶融性樹脂層(5) と注入された溶融樹脂とが接して溶着するので、成形品本体と透明導電層との密着性が非常に良好となる。
熱溶融性樹脂は、常温(25℃)では固体であり、熱により溶融する樹脂である。熱溶融性樹脂は、光学的に透明であり、例えば、90℃以上の温度で溶融状態となるものであればよい。
熱溶融性樹脂としては、特に制限されることなく、公知のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、硝化綿系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ゴム系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体等を用いることができる。これらの中でも、成形品用の樹脂と相溶性の良好な樹脂が好ましい。溶融粘度が100〜10,000dPa・s/200℃であるものが好ましい。熱溶融性樹脂は、結晶融点を有し、構造的に凝集力が高いため、汎用有機溶剤に難溶性であるという特徴を有する。従って、水中、水/有機溶剤中、あるいは有機溶剤中の懸濁エマルジョン形態で使用されることが一般的である。しかしながら、凝集力の程度によっては、有機溶剤に可溶な熱溶融性樹脂も存在する。
熱溶融性樹脂の塗布は、グラビアシリンダー、リバース等のロールコーター、メイヤーバー、スリットダイコーター等公知の方法で行うとよい。塗布後、樹脂の溶融温度よりも低い適切な温度範囲で乾燥し、熱溶融性樹脂層(5) を形成する。熱溶融性樹脂層(5) の厚みは、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜5.0μmがより好ましい。熱溶融性樹脂層(5) は、層(5) の少なくとも表層部の樹脂が、インモールド成形時に、注入された溶融樹脂と接して溶着し、成形品本体と透明導電層とを密着性良く接合する役目を果たす。そのためには、熱溶融性樹脂層(5) の厚みは0.1μm以上であることが好ましく、一方、50μmを超えると接合する効果は飽和する。
以上のようにして、本発明の転写用導電性フィルムが得られる。なお、転写用導電性フィルムを使用するまでに、熱溶融性樹脂層(5) の表面を適切な離型紙で保護しておいてもよい。
次に、前記転写用導電性フィルムを用いて、透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造する方法について説明する。
図2は、本発明の転写用導電性フィルムを用いて、透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド射出成形により製造する方法を説明するための概略断面図である。図3は、得られた透明導電層付きプラスチック成形品の断面図である。
図2において、(A)は射出成形開始前の状態を表しており、(B)は金型を型閉めした状態を表しており、(C)は射出成形後の状態を表している。射出成形金型は、固定型(31)と可動型(32)とを型閉めすると、製造したい成形品形状に合致したキャビティー(34)が得られるようになされている。
(A)を参照して、固定型(31)と可動型(32)との間に、本発明の転写用導電性フィルム(10)が、支持体(1) 面が可動型(32)の型面(32a) を向き、熱溶融性樹脂層(5) 面が固定型(31)の型面(31a) を向くように配置され、位置決めされている。フィルム(10)の詳細な層構成の図示は省略されている。(B)を参照して、導電性フィルム(10)を可動型(32)の型面(32a) 側から吸引し、固定型(31)と可動型(32)とを型閉めする。射出ゲート(33)からキャビティー(34)内に溶融樹脂を射出して、冷却する。(C)を参照して、可動型(32)を移動させ、成形品本体(21)の片面に導電層(3) が付けられた成形品(20)を取り出す。
このようにして、所望形状の成形品本体(21)の所望の面に透明導電層(3) が積層一体化された成形品(20)が簡便に得られる。
図3を参照して、得られた透明導電層付きプラスチック成形品(20)は、導電性フィルム(10)の熱溶融性樹脂層(5) の少なくとも表層部の樹脂が、インモールド成形時に、注入された溶融樹脂と接して溶着し、そのため、成形品本体(21)と透明導電層(3) とは非常に密着性良く接合されている。図3においては、層(5) と成形品本体(21)との界面を便宜的に破線で示してあるが、実際にはこのような界面は存在していないと考えられる。得られた透明導電層(3) 中の導電性微粒子相互間の空隙には含浸した放射線硬化性材料の硬化物が存在しているため、透明導電層(3) は可撓性に優れており、成形品本体の表面が曲面状であっても、クラックが生じることがなく、さらに、導電性微粒子相互の接触が確実に維持され、成形品に付与された透明導電層の電気抵抗値は低く維持される。成形品の使用中においても耐久性に優れる。さらに、透明導電層(3) はヘイズも小さく光学特性にも優れている。
成形品本体を形成するための樹脂としては、その用途に応じて、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂等の従来から用いられている各種の樹脂を用いるとよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(転写用導電性フィルム)
まず、図1に示す転写用導電性フィルムを作製した。
50μm厚のPETフィルムHPE(帝人デュポンフィルム製)を支持体(1) として用いた。PETフィルム(1) の易接面上に、シリコーンハードコート液KP−854(信越化学工業(株)製)を塗布、乾燥し、60℃環境下にて、48時間で硬化させ、1.0μm厚の剥離層(2) を形成した。
一次粒径が26nmのITO微粒子(DOWAエレクトロニクス(株)製)100重量部にエタノール300重量部を加え、メディアをジルコニアビーズとして分散機にて分散した。得られたITO塗液をPETフィルム(1) の剥離層(2) 上に、バーコーターを用いて塗布し、50℃の温風を送って乾燥し、ITO微粒子含有層を形成した。このITO微粒子含有層の厚みは1.5μmであった。得られたフィルムを圧縮前ITOフィルムと称する。
一対の直径140mmの金属ロール(ロール表面にハードクロムめっき処理が施されたもの)を備えるロールプレス機を用いて、前記圧縮前ITOフィルムを金属ロール間に挟み圧縮した。圧縮圧力は183N/mm2 (線圧:330N/mm、圧縮幅:1.8mm)であり、送り速度は5m/分であった。このようにして、ITO微粒子の圧縮層(3) を形成した。圧縮層(3) の厚みは1.0μmであった。
この時点において、圧縮層(3) の表面電気抵抗値を測定したところ、450Ω/□であった。表面電気抵抗(四探針法)の測定は、三菱化学社製のロレスタGPを使用して、JIS K7194に準じて行った。
放射線硬化性材料として、反応性二重結合を有するアクリル樹脂溶液(モノマー成分:新中村化学工業(株)製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、溶媒:MEK(メチルエチルケトン)、反応開始剤:イルガキュア184(アクリルモノマー成分に対して3重量%)、溶液の固形分濃度:20重量%)を用いた。
圧縮層(3) 上に、上記アクリル樹脂溶液を硬化後の厚み3.0μmとなるように塗布し、乾燥し、その後、紫外線照射を行い、硬化させ、放射線硬化性材料の硬化物層(4) を形成した。この操作において、上記アクリル樹脂溶液は圧縮層(3) 中に含浸し、硬化された。
硬化物層(4) 上に、熱溶融性ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂溶液[組成:ウレタン変性共重合ポリエステル(Tg=83℃)12重量部、メチルエチルケトン44重量部、トルエン44重量部]を乾燥後の厚み1.0μmとなるように塗布し、80℃の温風を送って乾燥し、熱溶融性樹脂層(5) を得た。このようにして、転写用導電性フィルム(10)を作製した。
(透明導電層付き基板)
次に、転写用導電性フィルム(10)を用いて、図2に示した操作でインモールド成形を行い、厚み2.0mmの透明導電層付き基板を作製した。
固定型(31)と可動型(32)との間に、導電性フィルム(10)を、支持体(1) 面が可動型(32)の型面(32a) を向き、熱溶融性樹脂層(5) 面が固定型(31)の型面(31a) を向くように配置した。次に、導電性フィルム(10)を可動型(32)の型面(32a) 側から吸引し、固定型(31)と可動型(32)とを型閉めした。続いて、射出ゲート(33)からキャビティー(34)内に270〜330℃にて溶融したアートン樹脂(JSR(株)製、ARTON F4520)を射出注入して、冷却し、基板を作製した。基板表面には、均一な透明導電層が形成されていた。図2及び図3には、表面が湾曲した基板が例示されているが、種々の形状の基板を作製可能なことはいうまでもない。
(表面電気抵抗(四探針法))
三菱化学社製のロレスタGPを使用して、JIS K7194に準じて、得られた透明導電層の表面電気抵抗値を測定したところ、450Ω/□であった。
[実施例2]
放射線硬化性材料として、上記アクリル樹脂溶液の代わりに、反応性二重結合を有するシクロオレフィン樹脂溶液(モノマー成分:新中村化学工業(株)製トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、溶媒:MEK、反応開始剤:イルガキュア184(シクロオレフィンモノマー成分に対して3重量%)、溶液の固形分濃度:20重量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして転写用導電性フィルム(10)を作製した。
この転写用導電性フィルム(10)を用いて、実施例1と同様にして透明導電層付き基板を作製した。基板表面には、均一な透明導電層が形成されていた。得られた透明導電層の表面電気抵抗値を測定したところ、470Ω/□であった。
[実施例3]
放射線硬化性材料として、上記アクリル樹脂溶液の代わりに、反応性二重結合を有するウレタンアクリレート樹脂溶液(モノマー成分:新中村化学工業(株)製UA512、溶媒:MEK、反応開始剤:イルガキュア184(ウレタンアクリレートモノマー成分に対して3重量%)、溶液の固形分濃度:20重量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして転写用導電性フィルム(10)を作製した。
この転写用導電性フィルム(10)を用いて、実施例1と同様にして透明導電層付き基板を作製した。基板表面には、均一な透明導電層が形成されていた。得られた透明導電層の表面電気抵抗値を測定したところ、480Ω/□であった。
[比較例1]
この比較例においては、放射線硬化性材料の硬化物層(4) のない転写用導電性フィルムを次のように作製した。
実施例1と同様にして、50μm厚のPETフィルム(1) の易接面上に1.0μm厚の剥離層(2) を形成し、剥離層(2) 上にITO微粒子の1.0μm厚の圧縮層(3) を形成した。
圧縮層(3) 上に、実施例1で用いたのと同じ熱溶融性ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂溶液を乾燥後の厚み1.0μmとなるように塗布し、80℃の温風を送って乾燥した。前記熱溶融性ポリエステル樹脂は圧縮層(3) 中に含浸し、透明導電層(3) と熱溶融性樹脂層(5) を得た。このようにして、転写用導電性フィルムを作製した。
この転写用導電性フィルム(10)を用いて、実施例1と同様にして透明導電層付き基板を作製した。基板表面には、均一な透明導電層が形成されていた。得られた透明導電層の表面電気抵抗値を測定したところ、2200Ω/□であった。
[比較例2]
125μm厚のPETフィルム支持体上に、厚み30nmのITO薄膜をスパッタリング法により形成し、導電性フィルムとした。
固定型(31)と可動型(32)との間に、この導電性フィルムを、支持体面が可動型(32)の型面(32a) を向き、ITO薄膜面が固定型(31)の型面(31a) を向くように配置した。次に、導電性フィルムを可動型(32)の型面(32a) 側から吸引し、固定型(31)と可動型(32)とを型閉めした。続いて、射出ゲート(33)からキャビティー(34)内に溶融したアートン樹脂(JSR(株)製、ARTON F4520)を射出注入して、冷却し、基板を作製した。基板上の導電層の表面にはクラックが発生していた。そのため、導電層の表面電気抵抗値は測定できなかった。
実施例1〜3で示したように、本発明に合致するインモールド成形用導電性フィルムを用いると、透明導電層中の導電性微粒子相互間の空隙には含浸した放射線硬化性材料の硬化物が存在し、導電性微粒子相互の接触が確実に維持されるため、インモールド成形時の高温環境プロセスを経ても、成形品に付与された透明導電層の電気抵抗値を低く維持することができる。一方、比較例1においては、透明導電層中の導電性微粒子相互間の空隙には含浸した熱溶融性ポリエステル樹脂が存在しているが、インモールド成形時の高温環境プロセスによって、透明導電層の電気抵抗値の上昇が見られた。
本発明の転写用導電性フィルムの一例を示す断面図である。 透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド射出成形により製造する方法を説明するための概略断面図である。 透明導電層付きプラスチック成形品の断面図である。
符号の説明
(10):転写用導電性フィルム
(1) :支持体
(2) :剥離層
(3) :透明導電層
(4) :放射線硬化性材料の硬化物層
(5) :熱溶融性樹脂層
(31):固定型
(32):可動型
(33):射出ゲート
(34):キャビティー
(20):成形品
(21):成形品本体

Claims (8)

  1. 支持体と、前記支持体上の前記支持体とは剥離可能な透明導電層と、前記透明導電層上の放射線硬化性材料の硬化物層と、前記硬化物層上の熱溶融性樹脂層とを少なくとも有し、
    前記透明導電層は、導電性微粒子と該導電性微粒子相互間に含浸した前記放射線硬化性材料の硬化物とを含む、インモールド成形用導電性フィルム。
  2. 前記導電性微粒子は、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、硼素ドープ酸化亜鉛、及び酸化カドミウムからなる群から選ばれる、請求項1に記載の導電性フィルム。
  3. 前記透明導電層は、0.05〜5μmの厚みを有する、請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
  4. 前記放射線硬化性材料の硬化物層は、0.1〜10μmの厚みを有する、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の導電性フィルム。
  5. 前記熱溶融性樹脂の層は、0.1〜50μmの厚みを有する、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の導電性フィルム。
  6. 前記インモールド成形用導電性フィルムは、
    支持体上に導電性微粒子の分散液を塗布、乾燥し、導電性微粒子の含有層を形成し、
    前記導電性微粒子の含有層を圧縮し、導電性微粒子相互間に空隙が存在する導電性微粒子の圧縮層を形成し、
    前記導電性微粒子の圧縮層の上に、放射線硬化性材料を塗布、乾燥して、放射線硬化性材料を導電性微粒子相互間に含浸させると共に、放射線硬化性材料の層を形成し、
    放射線照射を行って、導電性微粒子相互間に含浸している放射線硬化性材料、及び層を形成している放射線硬化性材料を硬化させ、
    得られた放射線硬化性材料の硬化物層の上に、熱溶融性樹脂を塗布、乾燥して、熱溶融性樹脂の層を形成する、
    ことにより得られたものである、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の導電性フィルム。
  7. プラスチック成形品本体と、前記成形品本体の表面に付与された透明導電層とを含む透明導電層付きプラスチック成形品をインモールド成形により製造する方法であって、
    支持体と、前記支持体上の前記支持体とは剥離可能な透明導電層と、前記透明導電層上の放射線硬化性材料の硬化物層と、前記硬化物層上の熱溶融性樹脂層とを少なくとも有し、前記透明導電層は、導電性微粒子と該導電性微粒子相互間に含浸した前記放射線硬化性材料の硬化物とを含むインモールド成形用導電性フィルムを準備し、
    前記導電性フィルムを、前記支持体面が射出成形用金型内の一方の型面を向くようにセットし、前記フィルムの熱溶融性樹脂層面と他方の型面との間にキャビティーが形成されるように型締めし、その後、
    前記キャビティー内に溶融樹脂を射出して、冷却し、プラスチック成形品本体を成形すると共に、成形品本体の表面に前記透明導電層を積層一体化する、
    ことを含む、透明導電層付きプラスチック成形品の製造方法。
  8. 前記透明導電層付きプラスチック成形品は、前記成形品本体の湾曲した表面に透明導電層が付与されたものである、請求項7に記載のプラスチック成形品の製造方法。
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