JP5430792B1 - 転写フィルムおよび透明導電積層体の製造方法 - Google Patents

転写フィルムおよび透明導電積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 被転写体の表面に低抵抗値の透明導電層を形成することができる転写フィルム、およびこの転写フィルムを用いた透明導電積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】 基材フィルムの一方の面上に、少なくとも、離型層と、金属ナノワイヤと透明高分子樹脂とを含む透明導電層とをこの順に備え、前記離型層は、環状オレフィン系樹脂であることを特徴とする転写フィルム。そして、この転写フィルムを用いた透明導電積層体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、透明導電層を形成するための転写フィルム、および、この転写フィルムを用いた透明導電積層体の製造方法に関する。
透明導電性材料は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイデバイス、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、ならびに電磁波シールド材などの透明導電膜として極めて有用であるため、幅広く利用されている。
従来、透明導電膜は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性材料を、スパッタリング法、または蒸着法によりガラス板や透明フィルムなど基材上に堆積させることにより形成していた。しかし、スパッタリング法、または蒸着法を用いた透明導電膜の製造は、高額な大型の生産設備を必要とし、少量多品種の生産には適さない。また、このスパッタリング法や蒸着法により形成したITOなどの金属酸化物の透明導電膜は、フィルムなどの基材の撓みによりクラックが入りやすく、そのため導電性の低下が起こりやすいという問題があった。
一方、低温かつ低コストで成膜可能な透明導電膜の形成方法として、透明フィルムなどの基材にウェットプロセスにより導電性高分子膜を成膜する方法が知られている。導電性高分子などの導電体膜を塗布形成する透明導電性フィルムの製造方法は、製造コストが比較的安く、生産性に優れるという利点がある。また、ウェットプロセスにより塗布形成した導電性高分子などの導電体膜は、膜自体に柔軟性があるため、クラックなどの問題が生じにくい。
ウェットプロセスにより成膜が可能な透明導電材料としては、導電性高分子膜のほかに、カーボンナノチューブや金属ナノワイヤのような導電性繊維を導電体材料として用いる方法が、提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。また、特許文献3には、導電体材料としてカーボンナノチューブを含有する導電性繊維層を有する導電層転写シートが提案されている。
特表2006−517485号公報 特開2004−238503号公報 特開2006−35771号公報
しかしながら、特許文献3に開示の導電層転写シートは、透明性が高いものは、その抵抗値が10Ω/□程度であり導電性が低く、一方、抵抗値が10Ω/□程度のものは、全光線透過率が55%程度であり透明性が低い。すなわち、透明性と導電性の両特性を十分に満たしたものではなく、また、その剥離性や転写性も不十分である。したがって、比較的高抵抗値である帯電防止層等を、被転写体に付与するには適しているが、タッチセンサー等の用途に適した低抵抗値の透明導電層を、被転写体の表面に形成する転写シートとしては、不十分であるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決するもので、低抵抗値、柔軟性、転写性の各特性を満足する透明導電層を有する転写フィルムであり、被転写体の表面に、低抵抗値の透明導電層を形成することができる転写フィルム、およびこの転写フィルムを用いた透明導電積層体の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明の転写フィルムは、基材フィルムの一方の面上に、少なくとも、離型層と、金属ナノワイヤと透明高分子樹脂とを含む透明導電層とをこの順に備え、前記離型層は、環状オレフィン系樹脂であることを特徴とする。
そして、本発明の透明導電積層体の製造方法は、上記本発明の転写フィルムを用い、前記転写フィルムの透明導電層側を被転写体の表面に接着剤層を介して接着させた後に、基材フィルムを剥離することにより、被転写体表面に透明導電層を形成することを特徴とする。
本発明の転写フィルムによれば、透明導電層は、金属ナノワイヤと透明高分子樹脂とを含むことで、低抵抗値であるとともに、柔軟性に優れた透明導電層となる。また、離型層は、環状オレフィン系樹脂としたので、上記の透明導電層と組み合わせた場合に、上記透明導電層の剥離が容易となり、転写性に優れた転写フィルムとなる。
そして、本発明の透明導電積層体の製造方法によれば、上記本発明の転写フィルムを用いるので、例えばタッチセンサー等の用途に適した低抵抗値の透明導電層を、被転写体の表面に、容易かつ生産性良く形成することができ、優れた透明導電積層体の製造方法となる。
以下、本発明の転写フィルムについて詳細に説明する。本発明の転写フィルムは、基材フィルムの一方の面上に、少なくとも、離型層と、金属ナノワイヤと透明高分子樹脂とを含む透明導電層とをこの順に備え、前記離型層は、環状オレフィン系樹脂である構成としたものである。本発明の転写フィルムとその製造方法について、以下に、各層毎に順に説明する。
本発明の転写フィルムの基材フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、オレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、などのプラスチックフィルムを使用することができる。中でも、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の2軸延伸ポリエステル樹脂フィルムである。特に、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、耐熱性、機械的強度、平坦性に優れ、比較的安価な点等で好ましい。なお、基材フィルムの厚さとしては、特に制限はなく、例えば、12〜250μmのものが使用できる。
また、基材フィルムの表面には、下記の離型層との密着性を向上させるために、予め、コロナ放電処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよく、アンダーコート層等の易接着層を設けてもよい。
本発明の転写フィルムの離型層としては、後記の金属ナノワイヤと透明高分子樹脂を含む透明導電層と組み合わせた場合に、優れた剥離性と転写性が得られる効果の観点から、環状オレフィン系樹脂を用いて形成する。具体的には、非極性ノルボルネン系モノマー、より具体的には、非極性ジシクロペンタジエン類、非極性テトラシクロドデセン類から重合される環状オレフィン系樹脂を用いて離型層を形成することにより、後記の透明導電層と組み合わせた場合に、優れた剥離性と転写性が得られる。
離型層の厚さとしては、0.1μm未満では十分な効果が得られず、10μmを超えると離型層の膜にうねりのような膜厚のばらつきが発生し、後に形成する後記透明導電層の膜厚にばらつきが発生し、抵抗値のばらつきが発生する恐れであるので、0.1μm以上10μm以下が好ましい。離型層の形成方法としては、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの塗工法が使用できる。
次に、本発明の転写フィルムの透明導電層について、詳細に説明する。透明導電層は、金属ナノワイヤと透明高分子樹脂とを含む層である。この透明導電層を形成する方法としては、例えば、金属ナノワイヤを含む分散液を離型層の上に予め塗布形成した後に、この上に透明高分子樹脂を形成する。
金属ナノワイヤを含む分散液の金属ナノワイヤに用いられる金属としては、金、銀、銅、アルミ、ニッケル、鉄、ステンレスなどの導電性が高い金属が選ばれる。中でも、銀、銅、鉄などがより好ましい。また、金属ナノワイヤの形状および大きさについては、直径10〜500nm程度の大きさのものが用いられる。より好ましくは20〜100nmである。長さは1〜100μmであるが、より好ましくは10〜50μmである。
分散液の溶媒としては、一般的な溶媒が適用可能であり、水、アルコール系、ケトン系、酢酸エステル系、芳香族系などが使用できる。分散液には、金属ナノワイヤの凝集を防ぐ目的で一般的な分散剤を加えることも可能であり、また、濡れ性、透明高分子樹脂との密着性を考慮してオレフィン系樹脂以外のバインダー樹脂、具体的には、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系などの樹脂を適宜加えることも可能である。しかし、バインダー樹脂を加え過ぎると導電性が悪くなるため、分散液全量に対して、0.01〜1重量%程度加えることが好ましい。金属ナノワイヤを含む分散液の塗布形成方法としては、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの塗工法が使用できる。
そして、本発明の転写フィルムの透明導電層は、金属ナノワイヤの保護、転写後の平滑性付与などを目的として、金属ナノワイヤの上に透明高分子樹脂を形成する。透明高分子樹脂の膜厚は、50〜1000nm程度が好ましく、より好ましくは100〜300nmである。膜厚が薄すぎると保護する機能が低下する。膜厚が厚く金属ナノワイヤを完全に覆っても、1000nm以下であれば、転写後の透明導電層の導電性には影響を与えないので好ましい。
透明高分子樹脂として用いられる樹脂は、透明性が高く、強靭な樹脂であることが望ましく、具体的には、アクリル系、アクリルウレタン系、アクリルエステル系、エポキシ系などの樹脂が用いられる。添加剤として無機粒子などのフィラーを加えることもできる。また、樹脂の硬化には熱または紫外線照射によって硬化できる樹脂が好ましい。透明高分子樹脂の塗布形成方法としてはグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの塗工法が使用できる。
本発明の転写フィルムの透明導電層の特性としては、導電性としてのシート抵抗値は、好ましくは1〜500Ω/□、より好ましくは1〜150Ω/□であることが望ましい。また、透明性としての全光線透過率は、好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であることが望ましい。シート抵抗値および全光線透過率は、金属ナノワイヤ材料の選択および塗布量の制御などにより、適宜調整することが可能である。
そして、本発明の転写フィルムにおいては、被転写体に貼り付けるために、透明導電層の上に、予め接着剤層を備えていても良い。接着剤層は、後述する転写法や成形同時転写法などにより、本発明の転写フィルムを被転写体に接着転写させるための層である。接着剤層を構成する接着剤の材料としては、転写法や成形同時転写法などにより被転写体に転写する際に、転写時の加熱温度により軟化して粘着性を生ずる接着剤が好ましく、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい。被転写体の材質がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂接着剤を用いることが好ましい。また、被転写体の材質がフェニレンオキシド・スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂接着剤、ポリスチレン系樹脂接着剤、ポリアミド系樹脂接着剤などを選択して使用することが好ましい。接着剤層の厚さは、0.5〜5μmの範囲が好ましい。
さらには、紫外線硬化型樹脂を用いて、被転写体または転写フィルム上に紫外線硬化樹脂を形成し、貼り合わせた後に紫外線を照射し硬化させ転写する方法も用いることができる。この場合は、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリルエポキシ系樹脂などの紫外線硬化型樹脂を用いることができる。また、粘着剤を用いて、被転写体または転写フィルム上に粘着剤を形成し、貼り合わせ転写する方法も用いることができる。この場合は、アクリル系粘着剤、アクリルゴム系粘着剤など一般的な粘着剤を用いることができる。
続いて、本発明の転写フィルムを用いた本発明の透明導電積層体の製造方法について説明する。
本発明の透明導電積層体を製造するための被転写体としては、透明性を有する樹脂材料が望ましい。具体的な樹脂の種類としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の公知の熱可塑性樹脂がいずれも使用できる。また、被転写体の形状としては、フィルム、シート、板状、および各種形状のものがその用途に応じて使用できる。
本発明の転写フィルムを用いて、被転写体に透明導電層を転写形成する転写法は、次のようにして行う。まず、被転写体の表面に、転写フィルムの透明導電層上に予め形成した接着剤層を密着させる。次に、シリコンラバーなどの耐熱性弾性体を備えたロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用い、耐熱性弾性体を介して転写フィルムの基材フィルム側から熱および圧力を加える。これにより、接着剤層が被転写体の表面に接着する。そして、被転写体が冷却した後に基材フィルムを剥がすと、接着剤層とともに、透明導電層が被転写体の表面に転写される。以上により、転写工程が完了し、被転写体の表面に透明導電層を形成した透明導電積層体が得られる。
次に、成形同時転写法によって、本発明の透明導電積層体を製造する方法について説明する。本発明の転写フィルムを用いて、被転写体に透明導電層を転写形成する成形同時転写法は、次のようにして行う。まず、可動型と固定型とからなる成形用金型内に、透明導電層上に予め接着剤層を形成した転写フィルムを、基材フィルム側が金型キャビティに面するように金型内に配置する。そして、成形用金型を閉じた後、ゲートから成形樹脂を金型内に射出充填させ、樹脂を固化して被転写体を形成するとともに、その表面に転写フィルムを接着させる。被転写体を冷却した後、成形用金型を開いて被転写体を取り出す。最後に、被転写体から基材フィルムを剥がすと、接着剤層とともに、透明導電層が被転写体の表面に転写形成される。以上により、成形同時転写工程が完了し、被転写体の表面に透明導電層を形成した透明導電積層体が得られる。
上記の成形同時転写法によって得られる本発明の製造方法による透明導電積層体は、曲面などの3次元形状の被転写体の表面に、タッチセンサー等の用途に適した低抵抗値の透明導電層を形成することができ、多様な要望に応えられるものとなる。
なお、上記の透明導電積層体の製造方法においては、透明導電層上に予め接着剤層を形成した転写フィルムを用いた場合を例として説明したが、接着剤層は、必ずしも転写フィルムに予め形成する必要はなく、被転写体側に転写時または予め接着剤層を設けても良い。
また、被転写体の表面に透明導電層を形成した上記の透明導電積層体に、さらに、透明導電層の上に透明導電性の金属酸化物膜を形成することが好ましい。金属酸化物膜を積層することにより、金属ナノワイヤだけでは不均一である微小領域で導電性を均一化することが可能となり、微小領域でのより安定した導電性が得られる。これにより、具体的には、透明導電層をパターニングした場合でも良好な導電性が得られ、結果として、幅30μmのような狭配線の導体パターンを形成することが可能となる。
上記の透明導電性の金属酸化物膜としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等の金属酸化物半導体の蒸着膜またはスパッタ膜などを用いることができる。
上記の透明導電性の金属酸化物膜の膜厚は、10〜500nmが好ましい。透明性と導電性、および膜厚均一性を考慮した場合、20〜200nmがより好ましい。
以下に、本発明の転写フィルムおよび透明導電積層体の製造方法について、実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、本発明の範囲外の比較例も含めて、試料No.1〜9の9種類の転写フィルム、およびこれを用いた透明導電積層体を作製して、これらを評価した。試料No.1〜9の9種類の転写フィルムは、離型層を形成するために用いた離型樹脂組成物が異なるのみである。
次に、試料No.1〜9の9種類の転写フィルム、およびこれを用いた透明導電積層体の作製方法について、具体的に説明する。まず、基材フィルムとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム準備した。
また、試料No.1〜9の9種類の転写フィルムの透明導電層を形成するための金属ナノワイヤ分散液としては、銀ナノワイヤ分散液(直径50nm、長さ20μm、水系溶媒)を用いた。また、透明高分子樹脂としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A−DPH)をトルエンとMEKで5wt%に希釈し、イルガキュア184(チバ・ジャパン株式会社製)をモノマー比で5wt%添加して調整した塗料を用いた。
はじめに、試料No.1の転写フィルムは、以下のようにして作製した。まず、離型層を形成するための離型樹脂組成物を作製した。試料No.1の転写フィルムの離型樹脂組成物として、環状オレフィン樹脂であるゼオネックス330R(日本ゼオン株式会社製、固形分量100wt%)5重量部に、トルエン50重量部、キシレン30重量部、メチルシクロヘキサン15重量部の溶剤を加えて離型樹脂組成物を調製した。
次に、この離型樹脂組成物を用い、基材フィルムとして準備した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、離型樹脂組成物を乾燥後の厚さが500nmとなるよう塗工し、120℃で1分乾燥させ、離型層を形成した。
続いて、この離型層の上に、上記で準備した銀ナノワイヤ分散液を用い、塗布量10g/mになるように塗工し、120℃で30秒間乾燥させて、銀ナノワイヤの膜を形成した。次に、上記で調整し準備した透明高分子樹脂を含有する塗料を、乾燥後の厚さが150nmになるように塗工し、80℃で1分間乾燥させて、1000mJ/cmの紫外線量を照射し、硬化させて透明高分子樹脂を形成して、透明導電層を得た。
次に、この透明導電層の上に、接着剤としてアクリル系樹脂を乾燥後3μmの厚さになるように塗工し、120℃で1分間乾燥させて、接着剤層を形成した。以上により、試料No.1の転写フィルムを得た。
そして、試料No.1の転写フィルムの接着剤層側を、厚さ2mmアクリル板に当接し、ロール転写機を用いて、200℃、1.2m/分、10kg/cmの条件で加熱加圧し、冷却した後、基材フィルムを剥離した。以上により、アクリル板の表面に透明導電層を転写して形成し、試料No.1の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
試料No.2の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、ゼオネックス330Rに代えて、環状オレフィン樹脂であるゼオネックス480R(日本ゼオン株式会社製、固形分量100wt%)を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.2の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
試料No.3の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、ゼオネックス330Rに代えて、環状オレフィン樹脂であるアートンF4520(JSR株式会社製、固形分量100wt%)を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.3の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
試料No.4の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、ゼオネックス330Rに代えて、環状オレフィン樹脂であるアートンD4540(JSR株式会社製、固形分量100wt%)用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.4の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
試料No.5の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、ゼオネックス330Rに代えて、環状オレフィン樹脂であるアペルAPL5014DP(三井化学株式会社製、固形分量100wt%)を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.5の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
試料No.6の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、アクリル系樹脂(固形分量100wt%)5重量部に対し、トルエン30重量部、メチルエチルケトン50重量部、シクロヘキサノン15重量部、フッ素系添加剤(固形分量100wt%)0.005重量部を添加した組成とした離型樹脂組成物を用いた。これ以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして、試料No.6の転写フィルムを作製した。また、同様に、試料No.6の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
試料No.7の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、アクリル系樹脂(固形分量100wt%)5重量部に代えて樹脂を、アクリル系樹脂(固形分量100wt%)2.5重量部およびメラミン系樹脂(固形分量100wt%)2.5重量部とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.6の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.7の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
試料No.8の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、アクリル系樹脂(固形分量100wt%)5重量部に代えて樹脂を、シリコーン系樹脂(固形分量100wt%)5重量部とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.6の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.8の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
試料No.9の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、アクリル系樹脂(固形分量100wt%)5重量部に代えて樹脂を、ワックス系樹脂(固形分量100wt%)5重量部とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.6の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.9の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
以上により得られた試料No.1〜9の9種類の転写フィルム、およびこれらを用いた透明導電積層体について、評価した。評価としては、接着剤層形成前の転写フィルムの透明導電層のシート抵抗値R、転写後の透明導電積層体のシート抵抗値Rを測定し、R/Rから転写前後のシート抵抗変化率を求めた。なお、本発明の転写フィルムにおいては、転写前後のシート抵抗変化率が1.1未満であるものを得ることを目標とし、この目標に達しない試料を、本発明の範囲外のものとした。また、転写後の透明導電積層体の全光線透過率を評価した。評価結果を、転写フィルムの離型樹脂組成物の内容とともに、(表1)に示す。
なお、それぞれの評価は、次のようにして行った。シート抵抗値は、(株)三菱化学アナリテック製表面抵抗測定器MCP−T610を用いて、JIS K7194に準じて、四端子法により測定した。電圧端子間距離は5mmとした。
また、全光線透過率は、日本電色工業(株)製NDH−4000を用い、JIS K7361−1に準じて、入射光強度に対する透過光強度の割合を全光線透過率として測定した。透明導電層側を入射光側として測定した。
Figure 0005430792
(表1)の評価結果に示したように、試料No.1〜5の転写フィルムは、いずれも、シート抵抗値が50Ω/□であり、極めて低抵抗値であった。また、試料No.1〜5の転写フィルムを用いて作製した透明導電積層体は、いずれも、転写前後のシート抵抗変化率が1.1未満であり極めて小さく、剥離性および転写性が優れていることが確認できた。そして、試料No.1〜5の転写フィルムを用いて作製した透明導電積層体は、いずれも、全光線透過率が88%であり、透明性が高く低抵抗値の透明導電層を、被転写体の表面に有する積層体が得られた。
一方、試料No.6〜9の転写フィルムは、いずれも、試料No.1〜5の転写フィルムに比較してシート抵抗値が大であった。また、試料No.6〜9の転写フィルムを用いて作成した透明導電性積層体は、シート抵抗値が大きすぎたため測定することができなかった。これは、試料No.6〜9の転写フィルムは、いずれも、剥離性、転写性が悪く、透明導電層が十分に転写できていないためである。また、試料No.6および試料No.7の転写フィルムを用いて作成した透明導電性積層体は、全光線透過率が91%であることから判断しても、剥離性、転写性が悪く、透明導電層が転写できていないことが分かった。
本実施例2においては、上記実施例1で作製した透明導電積層体に、さらに、透明導電層の上に透明導電性の金属酸化物膜を形成して透明導電積層体を作製し、これらを評価した。
はじめに、試料No.11の透明導電積層体は、上記実施例1で作製した試料No.1の透明導電積層体に、さらに、透明導電性の金属酸化物膜として、酸化インジウムを膜厚が20nmになるようにスパッタリングして形成し、透明導電積層体を作製した。
試料No.12の透明導電積層体は、上記実施例1で作製した試料No.2の透明導電積層体に、さらに、透明導電性の金属酸化物膜として、酸化インジウムを膜厚が20nmになるようにスパッタリングして形成し、透明導電積層体を作製した。
試料No.13の透明導電積層体は、透明導電性の金属酸化物膜を形成せず、上記実施例1で作製した試料No.1の透明導電積層体をそのまま用いた。
以上により準備した試料No.11〜13の3種類の透明導電積層体について、評価した。評価としては、酸化インジウムを積層した後の透明導電積層体のシート抵抗値Rを測定した。さらに評価として、レーザーエッチング法により、透明導電層をエッチングして、ライン幅30μm、長さ50mmの細線導体パターンを形成し、この細線導体パターンの導電性を評価した。導電性の評価は、細線導体パターンの抵抗値をデジタルマルチメータで測定して、1MΩ未満の導通性が取れるものを○とし、1MΩ以上で導通性がないものを×とした。評価結果を、(表2)に示す。
なお、レーザーエッチング法によるエッチングは、波長1064nm、周波数50Hzのファイバーレーザーを用いて、2.0Wの出力でエッチングを行った。
Figure 0005430792










(表2)の評価結果に示したように、試料No.11、および12の透明導電積層体は、いずれも、透明導電層の上に金属酸化物膜を形成しているので、レーザーエッチングにより形成した細線導体パターンでも導通が確保できた。一方、透明導電層の上に金属酸化物膜を形成していない試料No.13の透明導電積層体は、細線導体パターンでは導通が得られなかった。
以上のように、被転写体の表面に透明導電層を形成した上記の透明導電積層体に、さらに、透明導電層の上に透明導電性の金属酸化物膜を形成することにより、金属ナノワイヤだけでは不均一である微小領域で導電性を均一化することが可能となり、微小領域でのより安定した導電性が得られる。これにより、透明導電層をパターニングした場合でも良好な導電性が得られ、細線導体パターンの形成が可能となる。
本発明に係る転写フィルム、およびこの転写フィルムを用いた透明導電積層体の製造方法は、低抵抗値、柔軟性、転写性の各特性を満足する透明導電層を有する転写フィルムであり、比較的簡易に、被転写体の表面に低抵抗値の透明導電層を形成することができ、例えば、タッチセンサー等の用途に適した透明導電層を形成する方法として、特に有用である。

Claims (4)

  1. 基材フィルムの一方の面上に、少なくとも、離型層と、金属ナノワイヤと透明高分子樹脂とを含む透明導電層とをこの順に備え、前記離型層は、環状オレフィン系樹脂であることを特徴とする転写フィルム。
  2. 請求項1に記載の転写フィルムを用い、前記転写フィルムの透明導電層側を被転写体の表面に接着剤層を介して接着させた後に基材フィルムを剥離することにより、被転写体表面に透明導電層を形成することを特徴とする透明導電積層体の製造方法。
  3. 請求項1に記載の転写フィルムを用い、前記転写フィルムの透明導電層側を被転写体の表面に接着剤層を介して接着させた後に基材フィルムを剥離することにより、被転写体表面に透明導電層を形成し、さらに、前記透明導電層の上に透明導電性の金属酸化物膜を形成することを特徴とする透明導電積層体の製造方法。
  4. 請求項1に記載の転写フィルムを用い、前記転写フィルムの透明導電層側を被転写体の表面に接着剤層を介して接着させた後に基材フィルムを剥離することにより、被転写体表面に透明導電層を形成し、さらに、前記透明導電層の上に透明導電性の金属酸化物膜を形成し、その後、前記透明導電層および前記金属酸化物膜の一部を除去することにより導体パターンを形成することを特徴とする透明導電積層体の製造方法。
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