現在、液晶ライトバルブに液晶パネルを用いた液晶プロジェクタ装置の開発が盛んに行われている。液晶プロジェクタ装置には、機能、形態からパーソナルコンピュータ用途などのデータプロジェクタ、ホームシアター用途などのフロントプロジェクタ、リアプロジェクタテレビジョン用途などのリアプロジェクタ等がある。
液晶プロジェクタ装置は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)3色のカラーフィルタ付きの液晶ライトバルブ(いわゆる液晶パネル)を1枚使った単板式と、モノクロの液晶パネルをR、G、Bの光路ごとに3枚使った3板式とに大別される。また、液晶プロジェクタ装置は、その中枢となる液晶パネルが透過型か反射型かに応じて、透過型プロジェクタ装置と反射型プロジェクタ装置とに分けられる。
このような液晶プロジェクタ装置には、高輝度化、高画質化、高精細化、低価格化等に対する要求が高まっている。特に、明るさ特性を向上させる要求が高く、その実現のための手段の1つに、マイクロレンズを備えた液晶パネルが多用されている。
ところで、液晶プロジェクタ装置において投射すべき光の偏光状態は、液晶パネル内に封入されている液晶分子の配向状態に対する光の入射角に支配される。すなわち、液晶パネル内に斜めに入射する直線偏光は、液晶の屈折率異方性(複屈折性)により、楕円偏光として出射されるため、本来遮蔽されるべき光の一部が出射され、コントラストを低下させてしまう。特に、マイクロレンズを備えた液晶プロジェクタ装置においては、液晶層への入射光発散角が大きくなるため、コントラストを極度に低下させてしまう問題が生じる。
このような液晶プロジェクタ装置におけるコントラストを向上させる方法として、光学補償技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この光学補償技術は、コントラストの視野角依存性を抑えることによって、コントラストを向上させる光学特性を有する光学補償板を配設する技術である。
この光学補償板が用いられる液晶プロジェクタ装置としては、図4に示すような、3板式の透過型液晶プロジェクタ装置100が挙げられる。図4に示すように、液晶プロジェクタ装置100は、光源101と、光源101から出射された光の光路順に、液晶層の有効面積内を均一に照明するためのマルチレンズアレイ102、入射光を所定方向に偏向させるPS合成素子103、光を集光するコンデンサレンズ104からなるレンズ群105と、光を波長帯域に応じて分離し、各液晶パネル106に分離された光を入射させるミラー群107と、ミラー群107により分離された各光がそれぞれ入射される液晶パネル106と、各液晶パネル106を透過した光の位相差を調整する光学補償板108と、分離された光を合成する合成プリズム109と、合成された光を拡大してスクリーン等に投写する投写レンズ110とから構成されている。
液晶プロジェクタ装置100に用いられる液晶パネル106は、画素電極を有するマイクロレンズ基板と、液晶層と、対向基板とが順に積層された構成を有しており、この液晶パネル106を透過する光は、液晶層に電圧を加えると液晶が配向変化し、所望とする映像を表示する。
ところで、このようなマイクロレンズ付きの液晶パネル106においては、光学補償板108が液晶パネル106の後段に配設される。これは、液晶パネル106に色々な角度で光が入射した場合、角度によってそのリタデーションが異なり、光学補償板108は、それぞれの角度のリタデーションを打ち消すように最適設計されているからである。
一般に、マイクロレンズは、画素の周辺部の光を集光する働きがあるので、画素中央付近と周辺では液晶層を通過する光の角度が異なる。したがって、マイクロレンズの手前に光学補償板を配設した場合、予めある補償を与えられた光が、マイクロレンズにより屈折を受け液晶層を通過し、マイクロレンズの位置により液晶層を通過する光の角度が異なるので、発生するリタデーションは場所によって異なるという問題が発生してしまう。このことより、位相差を調整する光学補償板108は、マイクロレンズより後段である液晶パネル106の出射側に配設される。
しかし、光学補償板108を液晶パネル106の出射側に設けると、その後段におけるバックフォーカスが大きくなり、必然的に投写レンズ110の口径が大きくなり、小型化の妨げとなっていた。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、透過型の液晶パネルを、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応するように3枚用いてフルカラー映像を投写する映像表示装置としての3板式液晶プロジェクタ装置10について、図面を参照しながら詳細に説明する。
液晶プロジェクタ装置10は、図1に示すように、外部のスクリーンに対して画像を投写するものであり、光を出射する光源11と、光源11からの光を所定の方向(図1においては90°方向)に全反射させるミラー12と、ミラー12から反射された光を偏向し集光させるレンズ群13と、レンズ群13からの光を波長帯域に応じて分離し各液晶パネル20に入射させるミラー群14と、ミラー群14において波長帯域に応じた光に分離された光が入射する液晶表示素子としての液晶パネル20R、20G、20B(以下、個別の場合を除いて、総称して液晶パネル20ともいう。)と、各液晶パネル20からの光を合成して出射する合成プリズム15と、合成プリズム15からの光を拡大してスクリーン16に投写する投写レンズ17とから構成されている。
液晶プロジェクタ装置10に用いられる光源11は、カラー画像表示に必要とされる、赤色光、緑色光、青色光を含んだ白色光を出射する。光源11は、白色光を発する発光体11aと、発光体11aから発せられた光を反射し、集光するリフレクタ11bとを有する。発光体11aとしては、例えば、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ又はキセノンランプが使用される。リフレクタ11bは、集光効率がよい凹面形状を有し、例えば、回転楕円面鏡や回転放物面鏡等の回転対称な面形状となっている。
光源11の後段で、ミラー12の前段には、さらに、UV/IRカットフィルタ18と、第1のフライアイレンズ19とが設けられている。
UV/IRカットフィルタ18は、光源11からの出射光が入射され、画像形成に不要で発熱の元となるUV(Ultra Violet)光やIR(Infrared)光を遮光する。UV/IRカットフィルタ18は、誘電体多層膜から形成される。
第1のフライアイレンズ19は、UV/IRカットフィルタ18を透過する光が入射され、複数のマイクロレンズが2次元的に配列されている。第1のフライアイレンズ19は、光の照度分布を均一化させるためのものであり、入射した光を複数の小光束に分割する機能を有している。
ミラー12は、全反射ミラーであり、光源11からの光を90°方向に全反射させる。なお、ミラー12は、光源11からの光を所望とする方向に全反射させる目的で設けられたものであり、光源11からの出射光の方向によっては、複数枚必要とする場合や、全く不要とする場合があることは勿論である。
レンズ群13は、ミラー12からの後段で光路順に、第2のフライアイレンズ21、PS合成素子22、コンデンサレンズ23が設けられている。レンズ群13は、UV/IRカットフィルタ18及び第1のフライアイレンズ19と合わせて、液晶パネル20に入射される光の照度分布を均一化等の液晶パネル20における光変調に適した光特性となるようにするものである。
第2のフライアイレンズ21は、ミラー12からの反射光が入射され、第1のフライアイレンズ19と同様、複数のマイクロレンズが2次元的に配列されている。第2のフライアイレンズ21は、光の照度分布を均一化させるためのものであり、入射した光を複数の小光束に分割する機能を有している。
第2のフライアイレンズ21の後段に配設されるPS合成素子22は、第2のフライアイレンズ21における隣接するマイクロレンズ間に対応する位置に、複数の1/2波長板を有する。PS合成素子22は、第2のフライアイレンズ21からの出射光が入射し、その入射光をP偏光成分とS偏光成分とに分離する。また、PS合成素子22は、分離された2つの偏光のうち、一方の偏光をその偏光方向(例えば、P偏光)を保ったまま出射し、他方の偏光(例えば、S偏光)を1/2波長板の作用により、他の偏光成分(例えば、P偏光成分)に変換して、後段のコンデンサレンズ23に出射する。
PS合成素子22の後段に配設されるコンデンサレンズ23は、PS合成素子22からの出射光が入射され、第1のフライアイレンズ19及び第2のフライアイレンズ21と相俟って、液晶パネル20に均一な光束が照射される。
ミラー群14は、コンデンサレンズ23からの出射光が入射される第1のダイクロイックミラー24と、第1のダイクロイックミラー24からの反射光をさらに反射し、液晶パネル20Rに出射する反射ミラー25と、第1のダイクロイックミラー24からの透過光が入射される第2のダイクロイックミラー26と、第2のダイクロイックミラー26からの透過光を反射し液晶パネル20Bに出射する反射ミラー27、28とから構成されている。ミラー群14は、レンズ群13からの出射光を所定の波長帯域の光に分離し、分離された光をそれぞれ液晶パネル20R、20G、20Bに入射させる。
第1のダイクロイックミラー24は、いわゆる色分離手段であり、コンデンサレンズ23からの出射光を、例えば、赤色光LRとその他の色光(緑色光及び青色光)とに分離する。第1のダイクロイックミラー24は、入射光のうち、赤色光LRを反射し、緑色光LG及び青色光LBを透過する。第1のダイクロイックミラー24によって反射された赤色光LRの光路上には、反射ミラー25、フィールドレンズ29Rが順に配設されている。
反射ミラー25は、いわゆる全反射ミラーであり、第1のダイクロイックミラー24によって反射された赤色光LRの光路上に設けられ、入射する赤色光LRを液晶パネル20Rに向けて反射する。
第2のダイクロイックミラー26は、第1のダイクロイックミラー24からの透過光である緑色光LGと青色光LBとが入射され、この緑色光LGと青色光LBとを分離する。第2のダイクロイックミラー26は、入射光のうち、緑色光LGを液晶パネル20Gに向けて反射し、青色光LBを透過する。
第2のダイクロイックミラー26によって反射された緑色光LGは、フィールドレンズ29Gを介して液晶パネル20Gに入射する。また、第2のダイクロイックミラー26によって透過された青色光LBの光路上には、リレーレンズ30、反射ミラー27、リレーレンズ31、反射ミラー28、フィールドレンズ29Bが順に配設されている。
反射ミラー27、28は、いわゆる全反射ミラーであり、第2のダイクロイックミラー26によって透過された青色光LBを液晶パネル20Bに向けて反射する。
リレーレンズ30、31は、赤色光LR、緑色光LGよりもそれぞれの液晶パネル20までの光路長が長い青色光LBの光路長を補正する機能を有する。
ミラー群14によって各液晶パネル20に入射された光は、各液晶パネル20によって与えられた画像信号に従って、3色の色光をそれぞれ変調して変調光線を生成し、合成プリズム15に出射する。液晶パネル20の詳細な構成については、後述する。
合成プリズム15は、液晶パネル20により光変調された各色光が入射され、この入射光を合成し、投写レンズ17に出射する。合成プリズム15は、赤色光LR、緑色光LG、青色光LBがそれぞれ入射する入射面15R、15G、15B、及び、赤色光LR、緑色光LG、青色光LBが合成された光が出射する出射面15Tを各々有する4つの直角プリズムを接合して構成されている。合成プリズム15は、合成プリズム15内に入射した緑色光LGを出射面15T側に向けて透過し、合成プリズム15内に入射した赤色光LR及び青色光LBを出射面15T側に向けて反射するように、ダイクロイック膜が各直角プリズムの接合面にコートされている。
合成プリズム15から出射された合成光は、スクリーン16に向けて投写するための投写レンズ17に出射される。投写レンズ17は、複数のレンズからなり、スクリーン16に投写する画像の大きさを調整するズーム機能や、ピント合わせ機能を有する。なお、投写レンズ17としては、テレセントリックレンズを用いることができる。
次に、液晶パネル20について説明する。なお、各色光LR、LG、LBが入射される液晶パネル20R、20G、20Bは、それぞれ同一の機能を有するものであるので、便宜上、液晶パネル20として説明する。また、液晶パネル20は、入射側及び出射側において、第1の偏光板321(321R、321G、321B)と第2の偏光板322(322R、322G、322B)とが設けられており、この第1及び第2の偏光板321、322により、液晶パネル20を挟むように配設されている。
第1の偏光板321は、液晶パネル20の入射側に設けられ、レンズ群13、ミラー群14等により出射された直線偏光光の偏光度を高める機能を有している。第2の偏光板322は、液晶パネル20からの出射側に設けられ、第1の偏光板321と同様に、液晶パネル20からの変調光の偏光度を高める機能を有している。
液晶パネル20は、入射した光を画像信号に応じて変調する変調装置であり、図示しない電源から電源が供給され駆動する。液晶パネル20は、図2に示すように、いわゆる透過型の液晶パネルであり、画像データに応じた信号電圧が印加される画素電極が形成された画素電極基板33と、液晶層34を挟んで画素電極基板33と対向して配置され、2次元的に複数配列されたマイクロレンズを有する対向電極を含む、マイクロレンズ基板としての対向基板35とを備える。液晶表示素子としての液晶パネル20は、例えば、フレーム毎に各画素電極に印加する電圧を対向電極電圧に対して反転させるフレーム反転駆動を行うアクティブマトリクス型液晶表示素子として構成される。
液晶パネル20の液晶層34は、画素電極基板33と、対向基板35と、画素電極基板33と対向基板35との間において周囲を枠状に囲うシール材(不図示)とにより形成される空間に液晶36が封入される。
画素電極基板33は、石英、ガラス、プラスチック等の透明材料からなる基板37を有し、この基板37の表面で対向基板35と対向する内面側には、TFT(Thin Film Transistor)(不図示)と、このTFTに接続された画素電極38とが画素毎に設けられている。画素電極38は、ITO膜(インジウム・ティン・オキサイド膜)等の透明導電膜により形成されている。また、画素電極基板33には、TFT上に遮光層39が設けられ、さらに、画素電極38を覆うように、例えば、無機材料により形成された配向膜(不図示)が設けられている。なお、本実施の形態においては、透過型の液晶パネルについて説明するが、反射型の液晶パネルの場合には、基板37は、透明材料である必要はなく、シリコン基板等を用いるようにしてもよい。
対向基板35は、いわゆるマイクロレンズを備えるマイクロレンズ基板であり、複数のレンズ面40aが形成されたベースガラス40と、ベースガラス40のレンズ面40aと対向して配設される光学異方性を有する位相差手段としての光学補償板41と、ベースガラス40と光学補償板41との間に樹脂が充填される樹脂層43と、光学補償板41と対向して配設されるカバーガラス42とから構成され、ベースガラス40と樹脂層43とによってマイクロレンズ層が形成されている。さらに、対向基板35には、画素電極基板33と対向する内面側であるカバーガラス42上に、ITO膜等の透明導電膜により形成された共通電極44が形成されており、この共通電極44を覆うように、例えば無機材料により形成された配向膜(不図示)が形成されている。
対向基板35のベースガラス40は、石英などのガラス基板からなり、液晶層34と対向する側に凹状のマイクロレンズとなるレンズ面40aが形成される。
光学補償板41は、屈折率が互いに異なる複数の層を規則的な順序で積層されることにより形成される。光学補償板41は、例えば、入射光の光軸と垂直な方向に一軸の負の屈折異方性を有するネガティブCプレート、一軸の正の屈折異方性を有するAプレート、補償板の厚み方向で変化するハイブリット型プレート等により形成される。なお、光学補償板41は、ベースガラス40のレンズ面40aから出射される光束の位相差を調整する光学異方性を有するものであればよく、例えば、上述のネガティブCプレートとAプレートを組み合わせて形成されるものであってもよい。
カバーガラス42は、石英、バイコール(Corning社製)、ネオセラム(日本電子硝子社製)、ホウケイ酸ガラスなどから形成されている。
樹脂層43は、ベースガラス40と光学補償板41との間で、凹状のレンズ面40aにより形成される空間に充填される樹脂からなる。樹脂層としては、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の屈折率がベースガラス40よりも高い材料が用いられる。
対向基板35は、ベースガラス40、光学補償板41、カバーガラス42が順に積層され、ベースガラス40と光学補償板41との間に樹脂層43を充填される構成を有する。
このような構成を有する液晶パネル20は、対向基板35にマイクロレンズが設けられ、さらに、光学補償板41を有することから、充分な光学補償を行い高輝度化、高画質化を図ることができるとともに、小型化を実現することができる。すなわち、マイクロレンズを備えることによるコントラストの低下を位相差手段としての光学補償板41が補償することができ、さらに、光学補償板41が対向基板35に一体化されているので、このような液晶パネル20を備える液晶プロジェクタ装置10全体の小型化を図ることができる。
以上のように、本発明に係る液晶プロジェクタ装置10は、液晶パネル20が光学補償板41を備えることから、充分な光学補償を行い高輝度化、高画質化を図ることができるとともに、小型化を実現することができる。さらに、液晶プロジェクタ装置10は、液晶パネル20において、光学補償板41が、ベースガラス40とカバーガラス42との間に配設されることから、この光学補償板41が液晶層34の液晶36と直接接することがなく、光学補償板41と液晶36との接触によるシミ、ムラ等の画質劣化の発生を防止することができる。
さらに、液晶プロジェクタ装置10は、光学補償板が液晶パネルから独立して配設されている液晶プロジェクタ装置と比較した場合に、光学補償板を配設するためのブラケット等の取付部材を要することや、液晶パネルと光学補償板が離間されることによるバックフォーカスの拡大を防ぐことができ、ひいては投写レンズ17の小型化を図ることができ、小型化、省スペース化を実現することができる。
続いて、上述の構成を有する対向基板35の製造方法について説明する。まず、ベースガラス40の製造方法について説明をする。
ベースガラス40は、図3(A)に示すように、ベースガラス40となる膜厚T1=1.2mm程度のガラス基板(例えば、バイコール、屈折率n=1.46)を用意し、このガラス基板上にベースガラス40をエッチングする際のマスクとなるマスキング材51を形成する。マスキング材51は、例えば、クロムからなり、スパッタ法を用いてマスキングする。
次に、図3(B)に示すように、リソグラフィ法によって、マスキング材51上にレジストパターン52を形成する。このレジストパターン52は、マイクロレンズとなるレンズ面40aを形成する位置に対応させた複数の開口を備えた形状である。次いで、このレジストパターン52をマスクにしたエッチングによって、マスキング材51に複数の開口を形成する。しかる後、マスキング材上のレジストパターン52を除去する。
次に、図3(C)に示すように、マスキング材51上からベースガラス40をウェットエッチング、又は等方的にドライエッチングすることによって、ベースガラス40の表面に複数の凹状のレンズ面40aを形成する。ベースガラス40のウェットエッチングには、フッ酸(HF)系の水溶液を用いる。しかる後、ベースガラス40上からマスキング材51を除去する。このようにしてマイクロレンズ基板となるベースガラス40を完成させる。
次に、カバーガラス42及び光学補償板41の製造方法について説明をする。カバーガラス42としては、例えば、膜厚がt1=0.8mmの石英、バイコール(Corning社製)、ネオセラム(日本電子硝子社製)、ホウケイ酸ガラス等を用いることができる。
このカバーガラス42を用いて、この表面に、光学補償板41として、屈折率が互いに異なる複数の層を規則的な順序で積層し、繰返し構造を有する周期構造積層体を形成する。各層の厚みは、可視光領域の光の波長より短いものであれば良く、特に制限はないが、カバーガラス42の1/10以下が好ましい。また、繰返しの層数は、使用する材料の屈折率、各単位層の厚み、補償すべき液晶パネルの特性に合わせて、最適値が決定されることが好ましい。このようにして、カバーガラス42上に、光学補償板41を形成する。
なお、光学補償板41としての積層物の材料は、目的に応じて適宜選択されるが、所望の位相差量を得るために、屈折率の大きなものと屈折率の小さなものを組み合わせて選ぶことが望ましい。光学補償板41としての積層物は、例えば、屈折率の高い材料として、TiO2、ZrO2、Nb2O5などの透明材料からなる膜をスパッタリング等で形成し、次に屈折率の低い材料、SiO2、MgF2などの透明材料からなる膜を同様にスパッタリング等で形成する。また、カバーガラス42の表面に、ポリイミド等の配向膜を形成し、ラビング処理等の配向処理を施した後に、光硬化型のネマティック液晶、ディスティック液晶等の液晶材料(ポリマー)を、スピンコート法、転写印刷法、スリットダイコート法等により塗布し、光学補償板41を形成するようにしてもよい。
そして、この積層物の形成工程を複数回繰返し、負の屈折率異方性を持つCプレート型の光学補償板41を完成させる。
次に、図3(D)に示すように、ベースガラス40のレンズ面40a上に、レンズ面40aを埋め込む状態で樹脂層43となる樹脂を塗布する。その後、樹脂層43上に、光学補償板41が形成されたカバーガラス42を、光学補償板41が樹脂層43と対向するように貼り合わせ、一体化する。
次に、図3(E)に示すように、カバーガラス42の表面をある程度の膜厚、すなわちカバーガラス42に損傷が入ることのない程度の膜厚にまで研削する。カバーガラス42は、例えば、膜厚0.8mmのカバーガラス42を、膜厚t2=0.05mm〜0.1mm程度にまで薄膜化する。最後に、カバーガラス42上に透明導電膜を形成し、対向基板35を完成させる。
以上のような構成を有する本発明に係る液晶プロジェクタ装置10は、液晶パネル20が光学補償板41を備えることから、充分な光学補償を行い高輝度化、高画質化を図ることができるとともに、小型化を実現することができる。さらに、液晶プロジェクタ装置10は、液晶パネル20において、光学補償板41が、ベースガラス40とカバーガラス42との間に配設されることから、この光学補償板41が液晶層34の液晶36と直接接することがなく、光学補償板41と液晶36との接触によるシミ、ムラ等の画質劣化の発生を防止することができる。
さらに、液晶プロジェクタ装置10は、光学補償板が液晶パネルから独立して配設されている液晶プロジェクタ装置と比較した場合に、光学補償板を配設するためのブラケット等の取付部材が不要となることや、液晶パネルと光学補償板が離間されることによるバックフォーカスの拡大を防ぐことができ、ひいては投写レンズ17の小型化を図ることができ、小型化、省スペース化を実現することができる。
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
10、100 液晶プロジェクタ装置、11 光源、11a 発光体、11b リフレクタ、12 ミラー、13 レンズ群、14 ミラー群、15 合成プリズム、16 スクリーン、17 投写レンズ、20 液晶パネル、22 合成素子、33 画素電極基板、34 液晶層、35 対向基板、36 液晶、37 基板、38 画素電極、40 ベースガラス、40a レンズ面、41 光学補償板、42 カバーガラス、43 樹脂層、44 共通電極、51 マスキング材、52 レジストパターン