JP2004309751A - 色分解合成光学系及び画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】反射型空間光変調素子131,132,133への入射光を偏光分離する素子として各反射型空間光変調素子131,132,133に対応された第1乃至第3の反射型偏光板120,121,122を用いている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示装置に関し、特に、反射型空間光変調素子を用いた3板式、投写型の画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、いわゆる3板式、投射型の画像表示装置(カラープロジェクタ)は、メタルハライドランプ等の強力な光源から得られる白色光から赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色を分離し、色分解された各色光によって対応する映像信号で駆動される液晶パネル等の反射型空間光変調素子を照明し、この反射型空間光変調素子によって変調された各色の変調光を合成して投写する構成を有している。
【0003】
図7は、従来の画像表示装置の構成を示す斜視図である。
【0004】
反射型空間光変調素子を3枚備えた投射型の画像表示装置の構成例として、特開平10−197949号公報には、図7に示すように、上下に2層構成になった光学系を有するものが記載されている。
【0005】
この光学系の上層部分においては、光源11から発せられた光束は、コリメートレンズ20及び第1、第2のインテグレータ21a,21bを経て、コールドミラー22に反射されて90°偏向される。この光束は、第3のインテグレータ21c及び赤外線カットフィルタ23を経て、3色分解クロスダイクロイックプリズム24に前面部より入射される。なお、第1乃至第3のインテグレータ21a,21b,21cは、インテグレータ21を構成している。3色分解クロスダイクロイックプリズム24に入射した光束は、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色光に分離されて、この3色分解クロスダイクロイックプリズム24の両側面部及び背面部から3方向に出射される。これら3原色光は、それぞれ上層部偏光ビームスプリッタプリズム12r,12g,12bに対応して入射され、これら上層部偏光ビームスプリッタプリズム12r,12g,12bの偏光反射面に対するS偏光成分が下層部分に向けて反射される。
【0006】
各上層部偏光ビームスプリッタプリズム12r,12g,12bよりの出射光束は、それぞれ凸レンズ13r,13g,13b及び偏光子14r,14g,14bを経て、下層部分の下層部偏光ビームスプリッタプリズム15r,15g,15bに対応して入射される。
【0007】
この光学系の下層部分においては、各下層部偏光ビームスプリッタプリズム15r,15g,15bに入射された光束がこれら各下層部偏光ビームスプリッタプリズム15r,15g,15bの偏光反射面によって反射され、波長板16r,16g,16bを経て、対応する反射型空間光変調素子17r,17g,17bに入射する。これら波長板16r,16g,16bは、偏光ビームスプリッタプリズムの偏光反射面に斜め光成分が入射した場合に、透過光の偏光状態が直線偏光からずれるために、透過光の位相特性を補正して直線偏光に戻すためのものである。また、これら波長板16r,16g,16bは、反射型空間光変調素子17r,17g,17bにおける液晶のプレチルトの補正も同時に行う。
【0008】
そして、反射型空間光変調素子17r,17g,17bにおいて画像信号に応じて変調されて反射された光束は、各下層部偏光ビームスプリッタプリズム15r,15g,15bに戻り、変調された成分のみが、各下層部偏光ビームスプリッタプリズム15r,15g,15bの偏光反射面を透過する。
【0009】
各下層部偏光ビームスプリッタプリズム15r,15g,15bの偏光反射面を透過した光束は、3色合成プリズム25の両側面部及び背面部の3方向から入射される。この3色合成プリズム25に入射された各色光は、合成され、この3色合成プリズム25の前面部より出射されて、投射レンズ18に入射される。
【0010】
このようにして投射レンズ18に入射された光束は、この投射レンズ18によって図示しないスクリーン上に投射され、画像を表示する。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−197949号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のような従来の画像表示装置において使用している偏光ビームスプリッタプリズムは、理想的には、偏光反射面において、入射光のS偏光成分を100%反射し、P偏光成分を100%透過する光学素子である。
【0013】
偏光ビームスプリッタプリズムは、偏光反射面における膜構成によって様々な特性を実現しうるが、実際には、理想的な特性を得ることは不可能である。S偏光成分に対しては比較的高い消光比が実現されているが、P偏光成分に対しては、低い消光比しか得ることができない。すなわち、S偏光の直線偏光が入射した場合には、ほぼ100%近い99%以上が偏光反射面において反射され、偏光反射面を透過するS偏光成分は僅かである。ところが、P偏光成分の入射光については、図8に示すように、最大でも90%程度しか透過せず、入射角度や波長によっては、20%程度しか透過しない。P偏光成分の残りの約十%乃至数十%は、S偏光成分の反射光と同じ方向に、漏れ光として反射されてしまうという欠点がある。
【0014】
したがって、前述した従来の画像表示装置においては、反射型空間光変調素子への入射光に不要な偏光成分が混じらないように、メインとなる下層部分の偏光ビームスプリッタプリズムの手前に、プリポラライザとして、上層部分の偏光ビームスプリッタプリズム、または、偏光子を配置して、S偏光成分の純度を高めている。すなわち、下層部分の偏光ビームスプリッタプリズムへの入射光へのP偏光成分の混入を防いで、この偏光ビームスプリッタプリズムの偏光反射面においてS偏光成分のみが反射されて反射型空間光変調素子に向かって反射されるようにしている。そして、反射型空間光変調素子において変調された反射光が再び偏光ビームスプリッタに入射したときに、不要光となるS偏光成分を偏光反射面によって100%近く反射し、P偏光成分のみを透過させることで、表示画像のコントラスト比を向上させるようにしている。
【0015】
このように、従来の画像表示装置においては、プリポラライザとしての偏光ビームスプリッタプリズムや偏光子が必要であるために、光学系を小型化することが困難となっている。
【0016】
また、近年、明るい表示画像を得ることができる投射型表示装置が求められており、表示画像をできるだけ明るくするために、光学系のF値を小さくすることが求められている。光学系のF値を小さくすると、利用する光線の光軸に対する角度が大きくなり、偏光ビームスプリッタプリズムに対する斜め入射光の成分が増加する。すると、偏光ビームスプリッタプリズムにおける偏光分離特性が劣化し、結果として表示画像のコントラスト比の低下が招来されるという問題がある。
【0017】
これは、偏光ビームスプリッタプリズムには、入射角度によってその偏光分離特性が大きく変わってしまうという欠点があるためである。偏光ビームスプリッタプリズムは、直角プリズムの斜面部に誘電体膜を数十層と蒸着して構成されたものであり、屈折率の異なる2種以上の誘電体が交互に積層され、これら各層の界面で屈折する光及び反射される光の位相干渉によって、S偏光成分を反射しP偏光成分を透過させるという特性をもたせているものである。これら各界面からの屈折光及び反射光は、その入射角度によって位相干渉関係が変化するために、入射角度によって偏光ビームスプリッタプリズムの偏光分離特性は変わってしまうのである。
【0018】
図8は、偏光ビームスプリッタプリズムにおけるP偏光成分の透過率の可視波長領域での波長依存性を、入射光の透光面(入射面)に対する入射角βをパラメータとして示すグラフである。
【0019】
この図8においては、入射光の透光面に対する入射角βが、aでは0°、bでは−6°、cでは−15°、dでは+6°、eでは+15°の場合を示している。なお、偏光ビームスプリッタプリズムの透光面を光軸に対して垂直としており、入射角βは、偏光ビームスプリッタプリズムへの入射光が光軸に対してなす角に等しい。この図8に示すように、入射角βが±6°以内である場合には、P偏光成分の透過率の波長依存性は、比較的一定している。しかし、入射角βが±6°以上になると、P偏光成分の透過率は、大きな波長依存性を有するようになるとともに、透過率そのものも低下する。
【0020】
このように偏光ビームスプリッタプリズムにおける偏光分離特性が劣化することにより、表示画像のコントラスト比が低下するのである。
【0021】
さらに、偏光ビームスプリッタプリズムを使用した画像表示装置においては、投射画面においてシェーディング(ムラ)が発生することがある。これは、プリズムのガラス中で偏光面が部分的に回転してしまうために生ずる。この現象が発生しないようにするには、偏光ビームスプリッタプリズムに使用するガラス材料における複屈折(歪)を極力抑えるため、光弾性定数の小さい材料を用いる必要がある。
【0022】
しかし、このような材料を用いることは、偏光ビームスプリッタプリズムの製造の困難化及びコスト上昇を招来する。また、このような材料は比重も大きいため、光学系全体の重量増加も招来される。特に、反射型空間光変調素子のサイズを大きくした場合は、反射型空間光変調素子のサイズに応じて偏光ビームスプリッタプリズムも大きくせざるを得ず、光学系全体の重量が非常に大きくなってしまう。
【0023】
さらに、前述した従来の画像表示装置においては、色分解を行う上層部分においてもダイクロイックプリズムを用いており、色分解を行う上層部分と色合成を行う下層部分とが略同じ寸法となっている。このような構成においては、光源から反射型空間光変調素子に向かって光束が収束していくことを考えると、色分解を行う上層部分でケラレが発生し易く、実質的に必要な量の光束を利用するのが困難となっている。すなわち、このような構成においては、光利用率を向上させることが困難であり、充分な明るさの表示画像を得ることができない。
【0024】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、光学系のF値を下げて明るい表示画像が得られるようにしても、表示画像のコントラスト比が低下することがなく、また、光源からの光束を効率よく利用することができ、さらに、光学系の小型化及び軽量化が可能で、製造が容易である画像表示装置を構成することができる色分解合成光学系を提供し、また、このような色分解合成光学系を用いて構成された画像表示装置を提供しようとするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、本発明に係る色分解合成光学系は、光源から入射される光束に含まれる第1乃至第3の原色光に対応される第1乃至第3の反射型空間光変調素子と、光源から3原色光を分離して各反射型空間光変調素子に導く色分解光学系と、各反射型空間光変調素子に入射される光束に含まれる直線偏光光のみを透過させて前記反射型空間光変調素子に入射させるとともに、該各反射型空間光変調素子に入射した前記直線偏光光を偏光変調して反射する第1乃至第3の反射型偏光板と、各反射型光変調素子によって反射され各反射型偏光板によって反射された第1乃至第3の原色光を合成する色合成手段とを備えている。
【0026】
この色分解合成光学系において、色分解光学系、反射型偏光板及び色合成手段における各原色光束の光軸は略同一平面上にあり、かつ、光源から各反射型空間光変調素子に至る各原色光束の光路長は互いに略等しくなっている。
【0027】
また、色合成手段は、少なくとも2組の対向面を形成して配置された少なくとも3個のプリズムより構成されており、第1の対向面間には、第1の原色光を透過させ第2の原色光を反射する第1の反射層が形成され、第2の対向面間には、第1及び第2の原色光を透過させ第3の原色光を反射する第2の反射層が形成されている。
【0028】
そして、この色合成手段においては、第1のプリズムから入射された第1の原色光は、第1の反射層を透過し第2のプリズムを透過し第2の反射層を透過して第3のプリズムを透過して出射し、第2のプリズムから入射された第2の原色光は、第1の反射層により反射され第2のプリズムを透過し第2の反射層を透過して第3のプリズムを透過して第1の原色光と合成されて出射し、第3のプリズムから入射された第3の原色光は、第2の反射層により反射され第3のプリズムを透過して第1及び第2の原色光と合成されて出射することを特徴とするものである。
【0029】
この色分解合成光学系においては、反射型空間光変調素子への入射光を偏光分離する素子として反射型偏光板を用いているため、光学系のF値を下げ、画像表示装置として構成した場合に明るい表示画像が得られるようにしても、表示画像のコントラスト比が低下することがなく、また、光学系の小型化及び軽量化が可能で、製造が容易である。
【0030】
また、この色分解合成光学系においては、色分解光学系、反射型偏光板及び色合成手段における各原色光束の光軸は略同一平面上にあることから、光学系全体を空間効率よく小型に構成することができ、また、光源から各反射型空間光変調素子に至る各原色光束の光路長は互いに略等しくなっていることから、各原色光束ごとに照明効率や反射型空間光変調素子への入射角度が異なることがなく、画像表示装置として構成した場合にカラーバランスの良好な表示画像を得ることができる。
【0031】
さらに、この色分解合成光学系においては、色合成手段として、いわゆる「フィリップスプリズム」を用いることができ、色合成手段を小型に構成できるとともに、画像表示装置として構成した場合に、色合成手段にクロスダイクロイックプリズムを用いた場合と異なり、表示画像の中心部分にプリズムの継ぎ目による影響が生ずることがない。
【0032】
そして、本発明に係る画像表示装置は、前述の色分解合成光学系と、少なくとも3原色光を含む光束を発し色分解合成光学系の色分解光学系に該光束を入射させる光源と、色分解合成光学系の色合成手段によって合成された光束が入射されこの光束を結像させる結像手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0033】
この画像表示装置においては、反射型空間光変調素子への入射光を偏光分離する素子として反射型偏光板を用いているため、光学系のF値を下げて明るい表示画像が得られるようにしても、表示画像のコントラスト比が低下することがなく、また、光学系の小型化及び軽量化が可能で、製造が容易である。
【0034】
また、この画像表示装置においては、色分解光学系、反射型偏光板及び色合成手段における各原色光束の光軸は略同一平面上にあることから、光学系全体を空間効率よく小型に構成することができ、また、光源から各反射型空間光変調素子に至る各原色光束の光路長は互いに略等しくなっていることから、各原色光束ごとに照明効率や反射型空間光変調素子への入射角度が異なることがなく、カラーバランスの良好な表示画像を得ることができる。
【0035】
さらに、この画像表示装置においては、色合成手段として、いわゆる「フィリップスプリズム」を用いることができ、色合成手段を小型に構成できるとともに、色合成手段にクロスダイクロイックプリズムを用いた場合と異なり、表示画像の中心部分にプリズムの継ぎ目による影響が生ずることがない。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る色分解合成光学系及び画像表示装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明に係る色分解合成光学系を用いて構成された本発明に係る画像表示装置の構成を示す平面図である。
【0038】
この画像表示装置における色分解合成光学系は、図1に示すように、同一平面上に光学素子が配置されて構成された光学系を有している。この光学系は、光源101からの光束を色分解する色分解光学系を有している。
【0039】
この画像表示装置は、光源101を有している。この光源101は、超高圧(UHP)水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどの如き放電ランプである発光体と、この発光体の背面側に配置された放物面形状のリフレクタから構成されている。この発光体からは、少なくとも可視光の3原色(赤色(以下Rという。)、緑色(以下Gという。)及び青色(以下Bという。))を含んだ光が発せられる。この光は、リフレクタに反射されることにより、略々平行光束となって光源101より出射される。なお、光源101の前面部(出力部)には、紫外光及び赤外光をカットする図示しない可視外光除去フィルタを配置してもよい。
【0040】
光源101から出射された光束は、第1のフライアイレンズアレイ103aを経て第2のフライアイレンズアレイ103bに入射される。これらフライアイレンズアレイ103a,103bは、対をなしてインテグレータを構成している。
【0041】
このインテグレータを経て光束内の照度分布を均一化された光束は、偏光変換プリズムアレイ104に入射される。この偏光変換プリズムアレイ104は、偏光分離プリズムアレイと、λ/2位相差板とを有して、全体として平板状に構成されている。すなわち、この偏光変換プリズムアレイ104に入射した光は、まず、偏光分離プリズムアレイにおいて、この偏光分離プリズムアレイが有する偏光ビームスプリッタ膜面により、この偏光ビームスプリッタ膜面に対するP偏光成分とS偏光成分とに分離される。偏光ビームスプリッタ膜面は、偏光変換プリズムアレイ104において、平行なストライプ状に複数設けられており、それぞれが偏光変換プリズムアレイ104の主面に対して45°の傾斜を有している。この偏光ビームスプリッタ膜面において、P偏光成分は透過して偏光変換プリズムアレイ104の裏面側に出射され、S偏光成分は反射される。一の偏光ビームスプリッタ膜面によって反射されたS偏光成分は、光路を90°曲げられ、隣接する他の偏光ビームスプリッタ膜面によって再び反射されて光路を90°曲げられて、偏光変換プリズムアレイ104の裏面側に出射される。そして、このようなS偏光成分が出射される領域(または、P偏光成分が出射される領域)には、λ/2位相差板が設けられている。このλ/2位相差板を透過したS偏光成分(または、P偏光成分)は、偏光方向を90°回転され、偏光ビームスプリッタ膜面を透過したP偏光成分(または、偏光ビームスプリッタ膜面に2回反射されたS偏光成分)と同一の偏光方向となされる。このようにして、偏光変換プリズムアレイ104を透過した光は、所定の一方向の偏光光となされている。
【0042】
この実施の形態においては、偏光変換プリズムアレイ104を透過した光は、図1中の符号で示すように、P偏光に変換されている。ただし、偏光変換プリズムアレイ104における偏光変換効率は100%ではなく、この偏光変換プリズムアレイ104からの出射光には、数%乃至数十%のS偏光成分が混入している。
【0043】
偏光変換プリズムアレイ104を透過した光は、第1のフィールドレンズ105を経て、第1のコールドミラー106によって反射されて光路を曲げられ、色分解光学系を構成する第1のダイクロイックミラー107に入射する。この第1のダイクロイックミラー107は、3原色のうちの2色の成分を透過させ、残りを反射する。この実施の形態においては、第1のダイクロイックミラー107は、例えばR光及びG光を透過させ、B光を反射する。
【0044】
第1のダイクロイックミラー107を透過したR光及びG光は、第2のコールドミラー109によって反射され、第2のダイクロイックミラー108に入射する。この第2のダイクロイックミラー108は、例えばR光を透過させ、G光を反射する。
【0045】
第2のダイクロイックミラー108を透過したR光は、第2のフィールドレンズ116及び偏光板90を経て、第1の反射型偏光板(いわゆる「ワイヤグリッド」)120を透過して、R用反射型空間光変調素子130に入射される。第1の反射型偏光板120は、光路に対して45°傾斜されており、R用反射型空間光変調素子130は、光路に対して垂直に配置されている。
【0046】
第2のダイクロイックミラー108により反射されたG光は、第3のフィールドレンズ117及び偏光板91を経て、第2の反射型偏光板(いわゆる「ワイヤグリッド」)121を透過して、G用反射型空間光変調素子131に入射される。第2の反射型偏光板121は、光路に対して45°傾斜されており、G用反射型空間光変調素子131は、光路に対して垂直に配置されている。
【0047】
一方、第1のダイクロイックミラー107により反射されたB光は、第3のコールドミラー110によって反射され、さらに、第4のコールドミラー112によって反射されて、第4のフィールドレンズ118及び偏光板92を経て、第3の反射型偏光板(いわゆる「ワイヤグリッド」)122を透過して、B用反射型空間光変調素子132に入射される。第3の反射型偏光板122は、光路に対して45°傾斜されており、B用反射型空間光変調素子132は、光路に対して垂直に配置されている。
【0048】
このように構成された色分解光学系においては、光源101の発光体から各反射型空間光変調素子130,131,132に至る各原色光束(R光、G光、B光)の光路長は、互いに略等しくなっている。
【0049】
なお、第2乃至第4のコールドミラー109,110,112は、必ずしもコールドミラーでなくてもよく、入射する光を反射する特性であれば、通常の金属膜反射ミラーまたは各色光帯域を反射するダイクロイックミラーであってもよい。
【0050】
ここで、各反射型偏光板120,121,122は、各反射型空間光変調素子130,131,132に入射される光束を偏光分離し、一方向の直線偏光成分(ここでは、P偏光成分)のみを透過させて各反射型空間光変調素子130,131,132に入射させる。
【0051】
また、各反射型空間光変調素子130,131,132としては、シリコン基板上にアルミニウム等の金属からなる画素電極を設け、このシリコン基板と透明基板との間に液晶を封入した構成の液晶表示素子を用いている。このような液晶表示素子は、画素集積度が高いので高解像度画像に適しており、また、画素電極の内側に回路構造を積層できるので、開口率を90%程度に高めることができ、明るく滑らかで細密な画像を表示できるという長所がある。
【0052】
そして、各反射型空間光変調素子130,131,132において画像信号に応じて偏光変調されて反射された光束は、それぞれ対応する反射型偏光板120,121,122に戻る。これら反射型偏光板120,121,122においては、各反射型空間光変調素子130,131,132で偏光変調されて反射された光束を偏光分離し、他方向の直線偏光成分(ここでは、S偏光成分)のみを反射する。
【0053】
各反射型空間光変調素子130,131,132で反射され、さらに、各反射型偏光板120,121,122により反射された光束は、色合成手段となる3色合成プリズム140の3方向から入射される。
【0054】
この3色合成プリズム140は、いわゆる「フィリップスプリズム」と呼ばれるものであり、例えば、特許第2505758号公報に記載されているように、画面対応部分に接合部を有さないプリズムであり、いわゆる「3板式ビデオカメラ」で色分解プリズムとして使用されているものである。この3色合成プリズム140は、少なくとも2組の対向面を形成して配置された少なくとも3個のプリズムより構成されている。図1に示す構成においては、3色合成プリズム140は、2組の対向面を形成して配置された3個のプリズムより構成されている。第1の対向面間には、第1の原色光(G光)を透過させ第2の原色光(R光)を反射する第1の反射層が形成され、第2の対向面間には、第1及び第2の原色光(G光及びR光)を透過させ第3の原色光(B光)を反射する第2の反射層が形成されている。
【0055】
この3色合成プリズム140において、第1のプリズムから入射されたG光は、第1の反射層を透過し第2のプリズムを透過し、さらに、第2の反射層を透過して、第3のプリズムを透過して出射する。また、この3色合成プリズム140において、第2のプリズムから入射されたR光は、第1の反射層により反射され第2のプリズムを透過し、第2の反射層を透過して、第3のプリズムを透過して、G光と合成されて出射する。そして、この3色合成プリズム140において、第3のプリズムから入射されたB光は、第2の反射層により反射され第3のプリズムを透過してG光及びR光と合成されて出射する
なお、この3色合成プリズム140を構成する各プリズムの各研磨面の空気界面には、反射防止膜が施されている。第2のプリズムと第3のプリズムとの間には、エアギャップを設けるようにしてもよい。
【0056】
このようにして、3色合成プリズム140に入射された各原色光は、合成され、この3色合成プリズム140の前面部より出射されて、結像手段となる投射レンズ150に入射される。このようにして投射レンズ150に入射された光束は、この投射レンズ150によって図示しないスクリーン上に投射されて実像を結像し、画像を表示する。
【0057】
このように、この画像表示装置は、同一平面上に、色分解光学系、偏光分離、空間光変調及び色合成手段部、結像光学系を構成する光学素子を配置して構成されているので、装置全体を同一平面上において構成することができ、装置の高さを低くしてコンパクトに構成することができる。また、各原色光の光源から空間光変調素子に至る光路長が等しくなっていることにより、色分解光学系内においてリレーレンズが不要となっており、光学系の構成を簡素化することができ、製造の容易化及びコスト低廉化を図ることができる。
【0058】
なお、この画像表示装置においては、色分解光学系が色合成手段よりも有効径が大きくなっており、光源101から反射型空間光変調素子130,131,132に向かって光束が収束していくようにしても、光源からの光束を効率よく利用することができる。
【0059】
また、結像手段は、投射レンズ150に限定されず、虚像を結像する虚像光学系であってもよい。
【0060】
前述のように構成された画像表示装置においては、従来の画像表示装置とは異なり、偏光分離手段として、立体的な偏光ビームスプリッタプリズムではなく、反射型偏光板を用いている。すなわち、反射型偏光板に照明光を入射させP偏光を透過させ、反射型空間光変調素子による変調後の光束を再び反射型偏光板に入射させ、S偏光を反射させて画像表示光として使用している。反射型偏光板においては、表面のワイヤグリッド面で光束を反射するために、このワイヤグリッド面の平面性を十分に高くしておくことで、非点収差の発生のない高解像度の画像表示が可能となる。
【0061】
なお、画像情報を含んだ光束を反射型偏光板を透過させて使用すると、斜めに配置した基板を透過するので、非点収差が発生し、解像度が劣化する。
【0062】
反射型偏光板は、例えば、米国特許6234634号などに開示されているように、板ガラス上にワイヤグリッド状の一方格子金属薄膜(アルミニウム)を波長の数分の1のピッチで形成したものである。金属膜から構成されているため、耐熱性に優れ、ガラスプリズムでサンドイッチする必要が無く、薄い板ガラス状の素子として光路中に配置することが可能である。したがって、プリズムに比べて、軽量であり、低コストである。
【0063】
図2は、反射型偏光板を有する偏光分離部の構成を示す側面図である。
【0064】
前述した画像表示装置においては、図2に示すように、各反射型偏光板120,121,122の上面部には45°の入射光に対応した減反射コートが施されている。そして、各反射型偏光板120,121,122の反射型空間光変調素子130,131,132側にワイヤグリッドが形成されている。この反射型偏光板120に対する入射光は、P偏光として入射するので、不要なS偏光は反射されて図示しない不要光吸収体に吸収され、迷光にならないようになっている。反射型偏光板120,121,122において、S偏光は100%近くが反射されるので、純度の高いP偏光光が反射型空間光変調素子120に入射する。
【0065】
反射型空間光変調素子130,131,132は、前述したように、シリコン基板上にアルミニウムの如き金属からなる画素電極を設け、透明基板との間に液晶を封入した構成であり、電気的に選択した箇所の反射出射光の偏光を入射光とは位相の異なる偏光に変換(偏光変調)する機能を有するものである。
【0066】
反射型空間光変調素子130,131,132の入射面の手前には、偏光変調層である液晶のプレチルト分を往復で補正するための波長板123が配置されている。波長板123を経て、画素電極に与えられた電気信号に応じて偏光変調されて画素電極において反射された光は、再び波長板123を透過して、反射型偏光板120,121,122に下面側より入射する。このとき、変調を受けてS偏光となった成分は、反射型偏光板120,121,122の金属膜で反射され、進行方向を90°変えられ、3色合成プリズム140の入射面に向けて進む。
【0067】
なお、これら各反射型空間光変調素子の前に配置する波長板123,124,125は、各色に対応した1/4波長板または1/2波長板を用いる構成としてもよい。
【0068】
液晶プレチルト角分の補正は微量でよく、1/10波長以下、さらには1/20波長以下の微量な波長板である方が望ましい。実際の波長板の取り付けにあたって光学軸方向の設定は、反射型空間光変調素子を黒表示状態にし、スクリーンに投影した画像画最も黒に沈んだ状態になるように調整して行う。
【0069】
3色合成プリズム140の入射面には、ポストポラライザとしての偏光板133が配置されている。この偏光板133は、3色合成プリズム140への入射光の偏光状態を補正して表示画像のコントラスト比を向上させるためのものである。すなわち、前述したように、反射型偏光板120,121,122からの反射光には、S偏光のほかに若干のP偏光成分が混入しているためである。
【0070】
この偏光板133としては、偏光フィルムを基板に貼り付けたものを用いる。この偏光板133の表面には、反射防止コートが施されている。なお、3色合成プリズム140の入射面に偏光フィルムを直接貼り付けることにより、部品点数及び不要光反射界面を少なくすることも可能である。
【0071】
この図2においては、R光が入射される偏光分離部の構成を示しているが、G光及びB光についても同様である。
【0072】
図3は、偏光分離部から3色合成プリズム140を経て投射レンズ150に光束が入射される状態を示す側面図である。
【0073】
この図3においては、G光が入射される偏光分離部の構成を示しているが、R光及びB光についても同様である。
【0074】
第3のフィールドレンズ117に入射された光束は、偏光板91を経て、反射型偏光板121を透過し、波長板124を経て、反射型空間光変調素子131に入射される。この反射型空間光変調素子131によって偏光変調されて反射された光束は、反射型偏光板121に戻り、この反射型偏光板121においてS偏光成分が反射される。反射型偏光板121において反射されたS偏光成分は、3色合成プリズム140に入射される。
【0075】
この3色合成プリズム140においては、波長特性上の理由から、G光は、この3色合成プリズム140の反射層に対するP偏光として透過させた方が、色純度及び光利用効率等を総合的に勘案して有利である。したがって、G光については、3色合成プリズム140の手前の偏光板136のさらに手前に、偏光面を90°回転させる1/2波長板134を配置する。この場合、G光用の偏光板136は、P偏光を透過させるように配置する。
【0076】
あるいは、G光用の偏光板136をS偏光を透過するものとし、この偏光板136の後に1/2波長板134を配置して、3色合成プリズム140への入射光がP偏光となるようにしてもよい。
【0077】
ただし、必ずしも1/2波長板134でG光のみをP偏光に90°回転する必要はなく、1/2波長板134を用いずにS偏光のままでもよい。
【0078】
なお、この画像表示装置において、光源101から色分解光学系までの照明光学系は、表示画像における色ムラや輝度ムラの発生を防止するために、3色合成プリズム140等の多層膜への入射光が入射位置により入射角の差がないようにし、また、反射型空間光変調素子の液晶に対して面内で均一な光線が入射されるようにすることが望まれる。したがって、照明光学系及び結像光学系ともに、主光線が光軸に平行となるようなテレセントリック光学系とする。
【0079】
前述のようにして3色合成プリズム140に入射した各色の光束は、この3色合成プリズム140において合成され、投射レンズ150へ入射される。
【0080】
この図3において、3色合成プリズム140には、偏光板134を透過した後の光束が入射されるため、3色合成プリズム140をなすガラスの複屈折で偏光が少々回っても、表示画像におけるコントラスト比や照度ムラにはほとんど影響が生じない。したがって、このプリズムをなすガラスには「BK7」の如き通常広く用いられている安価なガラス材料を使用することが可能である。このような汎用の材料は、入手が容易でコストも安く、また、軽量である。
【0081】
また、図3に示すように、3色合成プリズム140と投射レンズ150との間には、1/4波長板142を配置してもよい。これは、投射レンズ150を構成するレンズの表面からの微量な反射光が反射型空間光変調素子131に戻り、再度反射されてスクリーンに達し、ゴースト状に不要光が現われるのを防ぐためである。
【0082】
すなわち、図3中に矢印の線で示すように、P偏光でG光用の反射型偏光板121を透過した成分がG光用の反射型空間光変調素子131で変調されS偏光となる。G光用の反射型偏光板121でS偏光成分が反射され、偏光板134によって不要なP偏光成分が除去される。そして、1/2波長板136でS偏光がP偏光に変換され、3色合成プリズム140を透過する。ここで、この光束は、1/4波長板142によって円偏光となり、投射レンズ150に入射する。投射レンズ150を構成するレンズの各表面には反射防止膜が施されているが、微量な反射光があり、入射光に対して逆周りの円偏光となって、再度1/4波長板142に戻ってくる。1/4波長板142はこの円偏光を直線偏光に戻すが、この直線偏光は、入射光の偏光方向に直交するS偏光となる。したがって、1/2波長板136への再入射によって再びP偏光となり、偏光板134において吸収される。
【0083】
このような作用は、R光及びB光についても同様である。このようにして、ゴーストとなる不要な反射光成分が除去され、スクリーンには、ゴーストのないクリアな画像を表示することができる。
【0084】
なお、反射型偏光板120、121、122は、全てのS偏光成分を反射するわけではなく、一部の光束を吸収し、自ら発熱する。したがって、反射型偏光板120、121、122に強力な光束を入射させた場合には、この反射型偏光板120、121、122の温度は、周囲温度に対して、数十度乃至100度程度上昇する。この場合には、反射型偏光板120、121、122の放熱が必要となる。
【0085】
反射型偏光板120、121、122は、取り付けられるベース部材に熱を逃がすとともに、両面側が空間となっているので、冷風をあてて冷却することができる。
【0086】
また、反射型空間光変調素子も発熱するので、冷却が必要である。前述のような光学系の構成においては、各反射型空間光変調素子の背面部が他の光学部品に全く干渉しないので、この背面部にヒートシンクを取り付けて冷却するための十分なスペースを確保することができる。
【0087】
さらに、反射型偏光板120、121、122のガラス基板中における複屈折が照度ムラを発生させないように、このガラス基板の材料としては、放熱性のよい材料(例えば、石英(熱伝導率k≧1〔W/m・K〕)など)や、光弾性定数の比較的小さい材料(例えば、光弾性定数β≦2〔nm/cm/105Pa〕のもの)を使用することが望ましい。
【0088】
図4は、反射型空間光変調素子上にカバーガラスを設けた構成を示す側面図である。
【0089】
この画像表示装置においては、反射型空間光変調素子上に塵挨(ホコリやゴミ)等の異物が付着すると、この異物の影が表示画像上に生じ、画像の品位を低下させてしまう。しかし、反射型空間光変調素子130,131,132に異物が付着した場合であっても、付着する位置が結像範囲外であれば表示画像の品位は低下しないので、図4に示すように、反射型空間光変調素子130上にカバーガラス145を設け、反射型空間光変調素子130の表面部のみが密閉されるようにすることができる。なお、波長板123の基板がこのカバーガラスを兼ねるようにしてもよい。例えば、カバーガラス145の厚さを4mm程度とすれば、このカバーガラス145の表面部に異物が付着しても、表示画像における異物の像はフォーカスがぼけるので、目立たなくなる。この場合には、反射型偏光板120,121,122とカバーガラス145との間の空間内に冷却風を流すことができるので、ポストポラライザとしての偏光板132にも十分な冷却風を与えることができる。
【0090】
図5は、反射型空間光変調素子を密閉した構成を示す斜視図である。
【0091】
この画像表示装置においては、図5に示すように、反射型偏光板120,121,122から3色合成プリズム140までの部分は、密閉した構成とすることができる。この場合には、基板145上に、3色合成プリズム140及び各反射型光変調素子を設置し、これらの上部を反射型偏光板120,121,122によって覆った状態とし、かつ、隙間部分を閉塞して密閉状態とする。
【0092】
図6は、この画像表示装置における反射型偏光板の偏光分離特性を示すグラフである。
【0093】
ここで、前述の画像表示装置において使用される反射型偏光板の偏光分離特性について説明する。図6は、反射型偏光板への入射光の入射角αをパラメータとしたときの、P偏光成分の透過率の波長依存性を示している。この図6において、aは反射型偏光板への入射光の入射角αが0°、bは入射角αが−15°、cは入射角αが+15°の場合を示している。なお、入射角αは、反射型偏光板への入射光が光軸に対してなす角度であり、反射型偏光板の入射面は光軸に対して45°傾斜されている。
【0094】
この反射型偏光板においては、図6に示すように、入射角αが±15°に達しても、P偏光の透過率の波長依存性は、可視波長領域で極めて小さく、安定している。
【0095】
このため、従来の偏光ビームスプリッタプリズムの代わりに反射型偏光板を用いると、明るく、色再現性の良好な表示画像が得られることがわかる。また、反射型偏光板は、偏光ビームスプリッタプリズムと異なり、一枚の板状の偏光分離板であるので、軽量である。また、画像表示装置内において、光源から発せられる光を吸収しにくいため、複屈折による表示画像の品質低下を抑えることができる。
【0096】
画像表示装置においては、光学系としてF2.4程度のものを用いても、反射型偏光板の偏光分離特性にはほとんど変化がないことになる。ただ、反射型偏光板を、P偏光を透過させS偏光を反射させるようにして使うと、反射光に不要光であるP偏光が混入するので、このままでは表示画像のコントラスト比が低下する要因となる。そこで、前述の画像表示装置においては、反射型偏光板の出力側に不要な偏光を除去するための偏光板133,134,135を配置している。
【0097】
なお、この偏光板133,134,135としては、液晶表示素子(LCD)において使用されるものと同様の偏光板を使用することができる。現在、液晶表示素子用として量産実用化されている偏光板の多くは、基材フィルム(ポリビニルアルコール;PVA)にヨウ素や有機染料などの二色性の材料を染色、吸着させ、高度に延伸、配向させることで、吸収二色性を発現させているものである。このPVA偏光層をTAC(トリアセチルセルロース)層で挟んだ偏光フィルムを、ガラス基板上に粘着材、または、接着剤で貼り付けた構成である。このような吸収二色性を基本原理とした偏光板は、入射する光束の直交する偏光成分のうち、二色性染料の配列と同方向の偏光成分を吸収し、他方の偏光を透過する。
【0098】
この偏光板は吸収型であるので、耐熱性、放熱性を考慮し、水晶やサファイアなどの熱伝導性に優れた基板を用いて構成することが望ましい。光利用率の向上のためと、界面での不要反射光による表示画像の品位低下を防止するため、偏光板の空気界面には、減反射コートを施す必要がある。これらの偏光特性、反射防止膜特性は、R,G,B各色について最適化されることが望ましい。
【0099】
また、偏光板は、片面フィルムで構成してもよいが、フィルムの表面を波長オーダで平坦化するのは困難であるので、このフィルム表面の非平面性が波面収差となり、解像度を劣化させる要因となる。そこで、より高い解像度を実現するためには、この偏光フィルムを平坦な光学研磨の施された基板(白板ガラス、光学ガラス、水晶、石英、サファイアなど)で挟み、接着剤、または、粘着材でフィルムの凹凸を埋めることで、解像度劣化を防ぐことができる。
【0100】
他に偏光板としては、反射型偏光板を用いることも可能である。反射型偏光板は、耐熱性、耐光性では、吸収型よりも優れている。しかし、反射型偏光板は、不要な偏光を吸収するのではなく、分離して反射するので、この不要光成分が投射レンズ150を介してスクリーンに達し、表示画像の品位を劣化させることがないようにする。この反射型偏光板には、減反射コートを施す必要がある。
【0101】
さらに、この偏光板としては、コレステリック液晶によって構成された反射型偏光板、または、例えば米国特許第5,486,949号に記載されているような、複屈折ポリマー積層体も使用することができる。
【0102】
前述のように、本発明に係る色分解合成光学系においては、反射型空間光変調素子への入射光を偏光分離する素子として反射型偏光板を用いているため、光学系のF値を下げ、この色分解合成光学系を用いた画像表示装置において明るい表示画像が得られるようにしても、表示画像のコントラスト比が低下することがなく、また、光学系の小型化及び軽量化が可能で、製造が容易である。
【0103】
また、この色分解合成光学系においては、色分解光学系、反射型偏光板及び色合成手段における各原色光束の光軸は略同一平面上にあることから、光学系全体を空間効率よく小型に構成することができ、また、光源から各反射型空間光変調素子に至る各原色光束の光路長は互いに略等しくなっていることから、各原色光束ごとに照明効率や反射型空間光変調素子への入射角度が異なることがなく、この色分解合成光学系を用いた画像表示装置においてカラーバランスの良好な表示画像を得ることができる。
【0104】
さらに、この色分解合成光学系においては、色合成手段として、いわゆる「フィリップスプリズム」を用いることができ、色合成手段を小型に構成できるとともに、この色分解合成光学系を用いた画像表示装置において、色合成手段にクロスダイクロイックプリズムを用いた場合と異なり、表示画像の中心部分にプリズムの継ぎ目による影響が生ずることがない。
【0105】
なお、色分解の色順は、実施例で述べた色配置に限らず、R,G,Bの順番が入れ替わるよう構成してもよい。
【0106】
【発明の効果】
本発明は、光学系のF値を下げて明るい表示画像が得られるようにしても、表示画像のコントラスト比が低下することがなく、また、光源からの光束を効率よく利用することができ、さらに、光学系の小型化及び軽量化が可能で、製造が容易である画像表示装置を構成することができる色分解合成光学系を提供し、また、このような色分解合成光学系を用いて構成された画像表示装置を提供提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る色分解合成光学系を用いて構成された本発明に係る画像表示装置の構成を示す平面図である。
【図2】反射型偏光板を有する前記画像表示装置の偏光分離部の構成を示す側面図である。
【図3】前記偏光分離部から3色合成プリズムを経て投射レンズに光束が入射される状態を示す側面図である。
【図4】前記画像表示装置において、反射型空間光変調素子上にカバーガラスを設けた構成を示す側面図である。
【図5】前記画像表示装置において、反射型空間光変調素子を密閉した構成を示す斜視図である。
【図6】前記画像表示装置における反射型偏光板の偏光分離特性を示すグラフである。
【図7】従来の画像表示装置の構成を示す斜視図である。
【図8】従来の画像表示装置において使用されている偏光ビームスプリッタプリズムのP偏光成分の透過率の波長依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
101…光源
103a,103b…フライアイレンズアレイ
104…偏光変換プリズムアレイ
105…第1のフィールドレンズ
106…コールドミラー
107,108…ダイクロイックミラー
109,110,112…コールドミラー
116,117,118…フィールドレンズ
120,121,122…反射型偏光板
123,124,125…波長板
130,131,132…反射型空間光変調素子
133,134,135…偏光板
136…1/2波長板
140…3色合成プリズム
142…1/4波長板
150…投射レンズ
Claims (2)
- 光源から入射される光束に含まれる第1乃至第3の原色光に対応される第1乃至第3の反射型空間光変調素子と、
前記光源から前記3原色光を分離して前記各反射型空間光変調素子に導く色分解光学系と、
前記各反射型空間光変調素子に入射される光束に含まれる直線偏光成分のみを透過させて該各反射型空間光変調素子に入射させるとともに、該各反射型空間光変調素子に入射した前記直線偏光光を偏光変調して反射する第1乃至第3の反射型偏光板と、
前記各反射型光変調素子によって反射され前記各反射型偏光板によって反射された第1乃至第3の原色光を合成する色合成手段とを備え、
前記色分解光学系、前記反射型偏光板及び前記色合成手段における各原色光束の光軸が略同一平面上にあり、かつ、前記光源から前記各反射型空間光変調素子に至る各原色光束の光路長が互いに略等しくなっており、
前記色合成手段は、少なくとも2組の対向面を形成して配置された少なくとも3個のプリズムより構成されており、第1の対向面間には、第1の原色光を透過させ第2の原色光を反射する第1の反射層が形成され、第2の対向面間には、第1及び第2の原色光を透過させ第3の原色光を反射する第2の反射層が形成されており、
第1のプリズムから入射された第1の原色光は、前記第1の反射層を透過し第2のプリズムを透過し前記第2の反射層を透過して第3のプリズムを透過して出射し、
前記第2のプリズムから入射された第2の原色光は、前記第1の反射層により反射され前記第2のプリズムを透過し前記第2の反射層を透過して前記第3のプリズムを透過して前記第1の原色光と合成されて出射し、
前記第3のプリズムから入射された第3の原色光は、前記第2の反射層により反射され前記第3のプリズムを透過して前記第1及び第2の原色光と合成されて出射することを特徴とする色分解合成光学系。 - 請求項1記載の色分解合成光学系と、
少なくとも3原色光を含む光束を発し、前記色分解合成光学系の色分解光学系に該光束を入射させる光源と、
前記色分解合成光学系の前記色合成手段によって合成された光束が入射され、この光束を結像させる結像手段とを備えていることを特徴とする画像表示装置。
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