JP2009007639A - Fe系非晶質合金薄帯 - Google Patents

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Abstract

【課題】Fe系非晶質合金薄帯の歪解放特性を焼鈍条件との関係で定量的に評価する手法を確立するとともに、結晶化温度が高く、歪解放特性と磁気特性に優れたFe系非晶質合金薄帯を提供する。
【解決手段】原子%で、B:12〜17%、Si:2〜8%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなるFe系非晶質合金薄帯であって、(x)BとSiの含有量の和が17%以上であり、かつ、(y)結晶化温度が450℃以上であり、(z)下記式(1)で定義する歪解放率λが、80%以上であることを特徴とする歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
λ(%)=(ε1/ε0)×100・・・(1)
ε0:解放すべき歪 ε1:320℃×2時間歪取焼鈍して解放された歪
【選択図】図3

Description

本発明は、電力トランス、高周波トランス等の鉄芯に用いるFe系非晶質合金薄帯に関するものである。
合金を溶融状態から急冷することにより、連続的に、薄帯や線を製造する方法として、遠心急冷法、単ロール法、双ロール法等が知られている。これらの方法は、高速回転する金属製ドラムの内周面又は外周面に、溶融金属を、オリフィス等から噴出させて急速に凝固させ、薄帯や線を製造するものである。
また、合金組成を適正に選ぶことにより、液体金属に類似し、磁気的性質又は機械的性質に優れた非晶質合金を得ることができる。
この非晶質合金薄帯は、その優れた特性から、多くの用途において工業材料として有望視されている。中でも、Fe系非晶質合金薄帯、例えば、Fe−B−Si系非晶質合金薄帯等は、鉄損が低く、かつ、飽和磁束密度及び透磁率が高いこと等の理由から、電力トランスや高周波トランスなどの鉄芯材料として採用されている。
非晶質合金薄帯を、電力用トランス、高周波用トランス等の鉄芯素材として用いる際の技術的課題としては、珪素鋼板を用いる場合に比較して、トランス製造時の材料使用量、例えば、鉄芯、銅線が多くなり、製造コストが高くなることが挙げられる。
これは、非晶質合金薄帯の多くが、飽和磁化力が小さく、トランスでの設計磁束密度を低くせざるを得ないという理由によるもので、その結果、鉄芯断面積が大きくなるためである。
そこで、非晶質合金薄帯の磁束密度を向上させるために、様々な研究がなされてきた(例えば、特許文献1〜6、非特許文献1、参照)。
しかし、実際に、Fe系非晶質合金薄帯を鉄芯材料として、特に、巻き鉄芯材料として使用するユーザー側の立場からすると、鉄芯製造過程で必須の歪取焼鈍で、製造過程で導入された歪が解放されず、磁気特性が劣化したり、非晶質合金薄帯が脆化することが問題である。特に、薄帯の脆化は、作業効率の低下や、歩留の低下等、製造上の問題を引き起こすので、重大な問題である。
このように、Fe系非晶質合金薄帯を、工業材料用として用いるためには、優れた磁気特性の他、優れた歪解放特性や加工性を備えることが必要である。
一般に、焼鈍温度を高くする、及び/又は、焼鈍時間を長くすると、薄帯内の歪は解放され易くなるが、焼鈍温度を高くし過ぎると、非晶質合金薄帯が結晶化し始め、磁気特性が劣化するし、また、非晶質合金薄帯も脆化する。
したがって、結晶化温度を高くすると、非晶質薄帯の熱的安定性が向上し、焼鈍時の脆化を抑えることができるが、一方で、結晶化温度が高いと、歪取焼鈍時に、非晶質合金薄帯の構造緩和がされ難く、歪が解放され難くなる。
これまで、優れた磁気特性を持ちながら、高い結晶化温度や歪解放特性に着目した提案はこれまでなされていない(特許文献3、5、及び、6、参照)。
特開平03−264654号公報 特表平03−500668号公報 特開平09−95760号公報 特開昭62−74050号公報 特開平09−202946号公報 特開平2006−316348号 Hatta et al.: JEEEE Trans. Magnetics MAG-14(1978)1013
Fe系非晶質合金薄帯の鉄芯を製造する際、歪取焼鈍により、磁気特性が劣化したり、材質が脆化することが問題となるが、このことは、Fe系非晶質合金薄帯が、焼鈍で歪が容易に解放され易い材質特性を備えているか否かによる。
しかし、Fe系非晶質合金薄帯の材質特性を、焼鈍で歪が容易に解放され易いか否かという観点から定量的に評価する手法は、これまで確立されていない。
一般に、結晶化温度が高いと、焼鈍時に構造緩和がされ難く、歪が解放され難いと認識されているが、磁気特性や機械特性の焼鈍温度感受性が低下して、焼鈍可能な温度範囲が広がり、焼鈍温度の設定、制御が容易となるので、結晶化温度が高いことは、鉄芯製造の観点から好ましことである。
そこで、本発明は、(i)Fe系非晶質合金薄帯の歪解放の難易性(以下「歪解放特性」という。)を、結晶化温度の高低によらず、焼鈍条件との関係で定量的に評価する手法を確立するとともに、(ii)結晶化温度が高く、かつ、焼鈍により歪が容易に解放され易い材質特性(優れた歪解放特性)を備える、磁気特性に優れたFe系非晶質合金薄帯を提供することを目的とする。
本発明者らは、Fe−B−Si系非晶質合金薄帯及びFe−B−Si−C系非晶質合金薄帯の歪解放特性を、焼鈍条件との関係で定量的に評価する手法について鋭意検討した。
その結果、下記式(1)で定義する歪解放率を用いれば、非晶質合金薄帯の歪解放性を客観的に評価することができることを見いだした。下記式(1)の技術的意義については後述する。
λ(%)=(ε1/ε0)×100 ・・・(1)
ε0:開放すべき歪
ε1:解放された歪
また、本発明者らは、Fe−B−Si系非晶質合金薄帯及びFe−B−Si−C系非晶質合金薄帯の成分組成と結晶化温度の間に、有意の相関関係があることを見いだした。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1) 原子%で、B:12〜17%、Si:2〜8%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなるFe系非晶質合金薄帯であって
(x)BとSiの含有量の和が17%以上であり、かつ、
(y)結晶化温度が450℃以上であり、
(z)下記式(1)で定義する歪解放率λが、80%以上である
ことを特徴とする歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
λ(%)=(ε1/ε0)×100 ・・・(1)
ε0:解放すべき歪
ε1:320℃×2時間歪取焼鈍して解放された歪
(2) 前記Fe系非晶質合金薄帯が、さらに、原子%で、Cを0.003〜2%含有することを特徴とする前記(1)に記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
(3) 前記Fe系非晶質合金薄帯が、さらに、原子%で、Pを0.001〜0.2%含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
(4) 前記Fe系非晶質合金薄帯において、Feが、原子%で78〜84%であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
(5) 前記Fe系非晶質合金薄帯において、原子%で、Feの1%以下を、Co、Ni、Crのうち一種以上で置換したことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
(6) 前記BとSiの含有量の和が17.3%以上であり、かつ、結晶化温度が460℃以上であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
本発明によれば、結晶化温度が高く、かつ、優れた歪解放性を備える、磁気特性に優れたFe系非晶質合金薄帯を提供することができる。
まず、本発明における成分組成について説明する。なお、以下、単に「%」と記載した場合は、「原子%」を意味する。質量%の場合は、「質量%」又は「質量%で」と記載する。
Bは、溶融合金の非晶質形成能、及び、非晶質薄帯の熱的安定性を高めるために添加する。Bが7%未満であると、非晶質相が安定して形成されず、一方、Bを20%超としても、原料コストが高くなるだけで、非晶質形性能及び/又は熱的安定性の向上が認められない。さらに、Bの添加量が少ないと脆化し易くなり、一方、多く添加すると、磁束密度が低下するし、また、12%未満又は17%超では、歪解放特性が劣化するので、Bの好ましい添加範囲は、12〜17%である。
Siは、Bと同じく溶融合金の非晶質形成能、及び、非晶質薄帯の熱的安定性を高めるために添加する。Siが1%未満であると、非晶質相が安定して形成されず、一方、Siを19%超としても、原料コストが高くなるだけで、非晶質形性能及び/又は熱的安定性の向上が認められない。
Siも、Bと同様で、添加量が少ないと脆化し易くなり、一方、多く添加すると、磁束密度が低下し、また、2%未満又は8%超では、歪解放特性が劣化するため、Siの好ましい添加範囲は、2〜8%である。
Cは、溶融合金と冷却ロール等の冷却基板との濡れ性を高め、溶融合金の鋳造性及び非晶質形成能を高める元素である。Cが0.003%未満であると、上記効果が得られないので、Cは0.003%以上添加する。上記効果は、2%超で飽和するので、Cは、2%以下とする。Cの添加により、さらに大きな濡れ性の向上を図るためには、Cの含有量を、0.02〜2%とするとよい。
Pは、鉄損、非晶質形性能の改善に有効な元素であり、各特性の要求に応じて適正量を含有する。Pの含有により、非晶質形性能が改善され、不純物元素含有の許容量が拡大するが、Pが0.001%未満では、非晶質形性能改善効果が見られず、また、鉄損改善効果も見られない。
Pを含有することにより、非晶質形性能が向上するが、一方で、Pの含有量の増加に伴い、薄帯内で亀裂が伝播し易くなり、加工性が劣化する問題が発生する。さらに、Pが0.2%を超えると、非晶質薄帯の加工性(脆性)が悪化する。
Pは、0.002%、0.003%、0.004%、0.006%、0.008%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、さらには、0.12%、0.15%程度含まれていてもよい。
Feの含有量が70%以上であれば、鉄芯として使用可能なレベルの飽和磁束密度を得ることができるが、1.6T(テスラ)以上の高い飽和磁束密度(実用的には、磁場800A/mにおける磁束密度が1.56T以上)を得るためには、Fe含有量は、78%以上にすることが好ましい。
一方、Feの含有量が84%を超えると、非晶質の形成が困難となるので、非晶質を安定して形成するためには、84%以下にすることが好ましい。
本発明では、特に、安価な鉄源を用いた場合に、原子%で、Feの1%以下を、Co、Ni、Crのうち一種以上で置換することにより、鉄損の一層の改善を実現することができる。また、Co、Niによる置換は、磁束密度の改善にも繋がり、Crによる置換は、結晶化温度の改善にも繋がる。
しかし、Feを、1%を超えて置換しても、不純物がある程度含まれる鉄源を使用した場合には、置換による鉄損の改善効果は飽和してしまい、かえって、原料コストが高くなってしまうので、好ましくない。よって、本発明では、Feの1%以下を、Co、Ni、Crのうち一種以上で置換することとした。
安価な鉄源を用いる場合、例えば、鉄鉱石を原料とする製鋼プロセスで生産される一部の鋼種を、合金の鉄源として使用することが可能であるが、本発明の薄帯を製造するための鉄源は、この製鋼プロセスで生産される鋼種に限定される訳ではない。
本発明において含有する微量成分は、合金等の添加により、積極的に添加をしてもよく、また、他の合金等から混入する不純物成分を積極的に活用して、含有させてもよい。
また、本発明の成分に、構成元素として、Fe、B、Si以外に、公知のTi、Zr、V、Nb、Mo、Cu等を含んでいても、本発明の効果を、なんら損なうものではない。
特に、Ti、Zrは、非晶質形成能の改善に効果があることが知られており、これらは、それぞれ、0.01〜5%程度含有してもよい。
本発明の薄帯は、本発明の合金成分を溶解し、溶鋼を、スリットノズル等を通して高速で移動している冷却板の上に噴出し、該溶鋼を急冷凝固させる方法、例えば、単ロ−ル法、双ロ−ル法によって製造することができる。
単ロ−ル装置には、ドラムの内壁を使う遠心急冷装置、エンドレスタイプのベルトを使う装置、及び、これらの改良型である補助ロ−ルや、ロ−ル表面温度制御装置を付属させたもの、減圧下又は真空中、又は、不活性ガス中での鋳造装置も含まれる。
本発明では、薄帯の板厚、板幅などの寸法は特に限定しないが、薄帯の板厚は、例えば、10μm以上100μm以下が好ましい。また、板幅は20mm以上が好ましい。
次に、本発明薄帯の特徴要件について説明する。
前述したように、結晶化温度が高いと、磁気特性や機械特性の焼鈍温度感受性が低下して、焼鈍可能温度範囲が広がり、焼鈍温度の設定、制御が容易となり、鉄芯製造の観点から好ましいので、本発明者らは、まず、薄帯組成、特に、非晶質薄帯の熱的安定性を高めるために添加するSi量及びB量と、結晶化温度(Tx)との関係を調査した。
図1に、Fe−B−Si系非晶質薄帯及びFe−B−Si−C系非晶質薄帯において、BとSiの含有量の和:(B+Si)量を変えて、結晶化温度を調査した結果を示す。
図1から、(B+Si)量が17%以上で、結晶化温度Txが450℃以上に達し、17.3%以上で、Tx:460℃に達し、Txが急激に上昇していることが解る。
(B+Si)量が22%超となると、Txの上昇は飽和傾向となり、一方で、1.6T以上の高い飽和磁束密度を得るためには、Feを78〜84%必要とすることから、(B+Si)量は、22%以下とすることが好ましい。
このことから、本発明薄帯においては、BとSiの含有量の和:(B+Si)量を17%以上で、結晶化温度:450℃以上と規定する。好ましくは、(B+Si)量が17.3%以上で、結晶化温度:460℃以上である。
次に、前記式(1)で定義する歪解放率λの技術的意義について説明する。
本発明者らは、一般に、結晶化温度が高いと、焼鈍時に構造緩和がされ難く、歪が解放され難いと認識されていることを踏まえ、Fe系非晶質合金薄帯の歪解放特性を、焼鈍条件との関係で定量的に評価する必要があるとの発想の下に、定量的な評価方法を鋭意検討した。
その結果、Fe系非晶質合金薄帯の歪解放特性を定量的に評価する指標として、前記式(1)で定義する歪解放率λを導入した。この点が、本発明の最大の特徴である。
前記式(1)で定義する歪解放率λの技術的意義について、以下に説明する。
本発明者らは、Fe系非晶質合金薄帯の歪解放特性を、円筒内に、非晶質合金薄帯を巻いた状態で装入した場合に導入される歪を、歪取焼鈍をした場合に解放される歪解放率として定量評価することを考案した。
図2に示すように、円筒内に、非晶質合金薄帯を1.5巻き程度巻いた状態で装入した場合、装入した非晶質合金薄帯に導入される歪み(=解放すべき歪):ε0(−)は、円筒内径:D0(mm)、非晶質合金薄帯の板厚:t(mm)により、下記式(2)で定義することができる。
ε0=t/(D0−t) ・・・(2)
前記の円筒内に装入した非晶質合金薄帯を、酸化させないように窒素雰囲気中で、所定の温度、時間で歪取焼鈍し、冷却後に円筒から取り出し、非晶質合金薄帯の外径を測定する。
ここで、円筒内に装入する非晶質合金薄帯を1.5巻き程度としたことは、非晶質合金薄帯をラップさせることで、円筒から取り出した非晶質合金薄帯の外径測定を容易とするためである。
非晶質合金薄帯の外径は、非晶質合金薄帯を巻いたことにより導入された歪が完全に解放された場合(歪=0、歪解放率=100%の場合)、円筒内径と同じD0となる。一方歪が解放されないと、非晶質合金薄帯の外径は、円筒内径D0より大きくD1となり、残留した歪:ε1(−)は、前記式(2)より、下記式(3)となる。
ε1=t/(D1−t) ・・・(3)
上記式(2)及び式(3)から非晶質合金薄帯の歪解放率λ(%)を、前記式(1)で定義した。
λ(%)=(ε1/ε0)×100 ・・・(1)
=(D0−t)/(D1−t)×100 ・・・(1')
このように、上記式(1)で定義した歪解放率λは、円筒の内径D0と、円筒から取り出した後の非晶質合金薄帯の外径D1及び板厚tにより、上記式(1')のように書き換えることができる。
図3に、100mm×80mmの本発明薄帯を、100mmの辺で丸めて、内径20.8mm、長さ100mmの鋼管製円筒に装入し、歪解放率の測定を行った結果を示す。
前記測定において、前記鋼管製円筒を、窒素雰囲気中で、280〜400℃の範囲で温度を変え、2時間焼鈍し、上記式(1’)より歪解放率を求めた。
焼鈍温度400℃では、本発明薄帯及び比較例薄帯のいずれにおいても、歪が完全に解放されているが、本発明薄帯では、320℃で、歪解放率が80%以上に達し、一方、比較例では、75%程度にとどまっている。
本発明薄帯においては、320℃×2時間の歪取焼鈍で、該薄帯内に存在する歪の80%以上を解放することができるが、比較例では、80%以上を解放するために、焼鈍温度を20℃高くしなければならず、また、焼鈍温度を高くすることにより、脆化が進行する。
この意味で、本発明薄帯は、歪解放特性が優れたものである。さらに、本発明薄帯は、結晶化温度が450℃以上を有するため、歪取焼鈍にて脆化することがない。即ち、結晶化温度が高いと、焼鈍時に構造緩和がされ難く、歪が解放され難いとの一般的な認識に反し、本発明薄帯は、結晶化温度が高くても、歪解放特性に優れたものであって、低温での焼鈍により、優れた磁気特性を維持したまま、材質の劣化を招くことなく、鉄芯製造時、薄帯内部に蓄積された歪を十分に解放することができるものである。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
図4に示す態様の装置を用い、Fe系非晶質合金薄帯を製造した。図4では、タンディッシュ3に供給した溶融したFe系非晶質合金4を、ストッパー6を開放して、170mm×0.85mmの矩形スリット開口のノズル5から、ロール直径1198mm、ロール幅250mmの冷却ロール7の表面に噴出し、急冷凝固させて非晶質合金薄帯8とし、巻取ロール9にて連続的に巻取っている。
製造時の冷却ロール周速は21m/sとし、製造したFe系非晶質合金薄帯は、板幅170mmで、板厚は約30μmであった。
なお、Fe系非晶質合金については、Fe源は不純物の少ない転炉鋼を用い、Bの添加はFe−Bとして、Siの添加はFe−Siとして、Cの添加は純Cとして、Pの添加はFe−Pとして、高周波誘導溶解炉(図示せず)にて溶解・配合し、タンディッシュ3に供給した。
製造したFe系非晶質薄帯の1ロットの全長に渡って12箇所からサンプルを採取し、磁気特性、結晶化温度、歪解放率を測定した。
なお、磁気特性の測定は、採取したFe系非晶質合金薄帯サンプルから幅25mm×長さ120mmの試験片を切り出し、360℃×1時間の熱処理後、単板磁気測定装置(SST)、)装置で、磁束密度1.3T、周波数50Hzでの鉄損と、磁場800A/mにおける磁束密度を測定した(JIS H7152に準拠)。
また、結晶化温度は、示差走査熱量計(DSC)にて測定した(JIS H7151に準拠)。歪解放率は、図3で測定した方法で、280℃、320℃、360℃、400℃の4温度水準で、2時間、歪取焼鈍して求め、320℃での歪解放率を比較した。
製造したFe系非晶質合金薄帯の1ロット内の各サンプル間において、バラツキはほとんどなく、表1に、その成分組成と得られた各特性の1ロットの平均値を示す。
Figure 2009007639
本発明例1〜3はFe−B−Si系であり、本発明例4〜8はFe−B−Si系にCを添加した例であり、本発明例9〜12はFe−B−Si系にPを添加した例であり、本発明例13〜18はFe−B−Si系にC及びPを添加した例であり、本発明19〜22はFe−B−Si系にC、P、Co、Ni、Crを添加した例である。
いずれも、磁気特性は良好であり、(B+Si)が17%以上であり、結晶化温度が450℃以上で、歪解放率も80%以上となっている。
また、本発明例13以外は、(B+Si)が17.3%を超えており、結晶化温度も460℃以上と高くなっていて、また、Feが78〜84%の範囲に入っているため、非晶質の形成が良く、安定して薄帯を製造することが可能であり、かつ、磁束密度も高いものである。
さらに、本発明例4〜8は、本発明例3に対してCを添加しており、添加量0.003%で、非晶質形成能が高まり、結果として、結晶化温度が上昇している。この効果は、Cの添加量の増加に伴い大きくなり、結晶化温度も高くなるが、2%付近で飽和している。
本発明例9〜12は、本発明例3に対してPを添加した例であり、添加量0.001%で、非晶質形成能及び鉄損改善効果が高まり、結果として、結晶化温度が上昇し、鉄損が低くなっている。この効果は、Pの添加量の増加に伴い大きくなるが、Pの添加量が0.2%を超えると、加工性が劣化し始める。
本発明例19〜22は、本発明例6のFeの一部をCo、Ni、Crで置換した例であり、いずれも鉄損が改善されている。また、Co、Niの添加効果により、磁束密度が大きくなっており、Crの添加効果により、結晶化温度が上昇している。
これらの元素は、高価なため、1%を超えて置換すると合金コストが高くなってしまうので、1%以下が好ましい。なお、Ni及びCrは、Fe源及びFe−B等の添加合金から、微量が不可避的に混入した(本発明例19〜22のNi:0.02%、Cr:0.04%)。
一方、比較例23〜26は、(B+Si)が17%未満であり、結晶化温度も450℃以下で、歪解放率も80%以下となっている。また、比較例27〜30は、(B+Si)が17%以上であるが、B及びSiの含有量が適正範囲外となっているため、結晶化温度は450℃以上であるが、磁気特性が悪く、また、歪解放率も80%以下と低いものである。
比較例31〜34は、(B+Si)が20%以上で、結晶化温度も500℃を超えているが、Feが78%以下であり、磁気特性が劣化しており、歪解放率も低くなっている。
以上のことから、本発明は、結晶化温度が高く、かつ、焼鈍により歪が容易に解放され易い材質特性(優れた歪解放特性)を備える、磁気特性に優れたFe系非晶質合金薄帯であることが分かる。
前述したように、本発明によれば、結晶化温度が高く、かつ、優れた歪解放特性を備える、磁気特性に優れたFe系非晶質合金薄帯を提供することができる。したがって、本発明のFe系非晶質合金薄帯を用いることにより、歪取焼鈍において歪が解放されず磁気特性が劣化したり、非晶質合金薄帯が脆化することがなく、作業効率や、歩留が改善されるので、鉄芯製造等の製造産業において利用可能性が大きいものである。
Fe−B−Si系非晶質合金薄帯及びFe−Si−B−C系非晶質合金薄帯において、(Si+B)量を変えて、結晶化温度を調査した結果を示す図である。 非晶質合金薄帯の歪解放率を測定するために、円筒内に非晶質合金薄帯を1.5巻き程度巻いた状態で装入した状態を概略的に示す図である。 内径20.8mm、長さ100mmの鋼管製円筒を用いて、歪解放率の測定を行った結果の一例を示す図である。 Fe系非晶質合金薄帯を製造した装置の概略を示す図である。
符号の説明
1 円筒
2 非晶質合金薄帯
3 タンディッシュ
4 溶融したFe系非晶質合金
5 ノズル
6 ストッパー
7 冷却ロール
8 Fe系非晶質合金薄帯
9 巻取ロール

Claims (6)

  1. 原子%で、B:12〜17%、Si:2〜8%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなるFe系非晶質合金薄帯であって
    (x)BとSiの含有量の和が17%以上であり、かつ、
    (y)結晶化温度が450℃以上であり、
    (z)下記式(1)で定義する歪解放率λが、80%以上である
    ことを特徴とする歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
    λ(%)=(ε1/ε0)×100 ・・・(1)
    ε0:解放すべき歪
    ε1:320℃×2時間歪取焼鈍して解放された歪
  2. 前記Fe系非晶質合金薄帯が、さらに、原子%で、Cを0.003〜2%含有することを特徴とする請求項1に記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
  3. 前記Fe系非晶質合金薄帯が、さらに、原子%で、Pを0.001〜0.2%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
  4. 前記Fe系非晶質合金薄帯において、Feが、原子%で78〜84%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
  5. 前記Fe系非晶質合金薄帯において、原子%で、Feの1%以下を、Co、Ni、Crのうち一種以上で置換したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
  6. 前記BとSiの含有量の和が17.3%以上であり、かつ、結晶化温度が460℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の歪解放特性に優れたFe系非晶質合金薄帯。
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