JP2008534703A - 遊離基で開始される加硫プロセスにおけるスコーチ遅延 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ゴムを、遊離基を生じることができる開始剤、マレイミドタイプの助剤および硫黄ドナーと合わせる工程を含むゴムを架橋する方法であって、該助剤および該硫黄ドナーが2種の異なる化学物質である方法に関する。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は、遊離基で開始されるゴムの加硫プロセスに関する。
ペルオキシドが遊離基源である、ペルオキシドで開始される加硫プロセスは、長く知られている。典型的には、例えば電気絶縁物、ホース、ベルトおよび封止物におけるように、得られる硬化ゴムが良好な耐老化性、高い加工処理温度、良好な圧縮永久歪および/または良好な色安定性を有していなければならない硫黄硬化プロセスよりむしろ、ペルオキシドで開始されるプロセスが使用される。しかしながら、ペルオキシドで開始されるプロセスは典型的には、加硫スコーチを欠点としてもつ。例えば短い加硫時間または高い加工処理温度が必要とされ、同時に、硬化されるべきゴム組成物が金型の空洞を満たさなければならないときには、硬化プロセスの遅れた開始が必要とされ得る。硬化の速すぎる開始は、スコーチの問題を生じる。スコーチを防ぐために、種々の解決法が提案されてきた。
例えば米国特許第6,277,925号明細書は、ペルオキシドに基づく硬化系におけるスコーチ抑制剤として特定のアリル化合物を使用することを教示する。良好なスコーチ抑制剤は、その使用が、スコーチ抑制剤を含まないこと以外は同じ装置および同じ混合物を使用して測定されたTs2より10%長いTs2を生じる抑制剤であると定義される。
同様に、米国特許第5,292,815号明細書は、ラジカルスカベンジャーと組合せてある種のビスシトラコンイミド化合物を使用して、ゴムのペルオキシド加硫におけるスコーチ時間を制御し、同時に、良好な架橋密度および良好な架橋時間がなお観察されることを教示する。
しかしながら、従来技術の全部の系でないとしたらほとんどについて、架橋密度の減少によってスコーチの減少が達成されることが観察された。それ故に、この分野において、代替物および改善された生成物についての引き続く要求がある。より詳細にはゴム架橋工業は、同じかまたはより良い架橋密度を達成しつつ、同じかそれ以上と判断されるスコーチの遅延を与える硬化系に関心がある。
驚くべきことに、発明者らは、特定の硬化系の使用が、慣用のプロセスと比べて改善されたスコーチ遅延および同等もしくは改善された硬化特性(特に架橋密度に関して)を示し、かつ広範囲のゴムについて使用することができる架橋プロセスを生じることを見出した。また、得られる架橋ゴムは驚くべきことに、慣用のペルオキシドで硬化されたゴムと比べて改善された特性を有していた。特定の硬化プロセスは、ゴムと遊離基を生じることができる開始剤、マレイミドタイプの助剤および硫黄ドナーとを合わせる工程を含み、ここで該助剤および該硫黄ドナーは、2種の異なる化学物質である。したがって、本発明は、少なくともこれら3種の化学物質が使用されるゴム硬化プロセス、これら3種の化学物質の混合物を含む組成物、およびこのプロセスから生じる架橋ゴム物品に関する。
欧州特許出願第0 254 010号は、架橋が酸素の存在下で生じるとき、表面粘着性のないゴム製品を作るために、ペルオキシド、イミダゾールタイプの化合物および硫黄ドナーを使用することを教示することが注意される。本発明の組成物は、開示されていないか、または示唆されていない。
米国特許第3,297,713号明細書は、ゴムのための加硫剤として、対称なジチオビス(N-フェニルマレイミド)の使用を開示する。適当に硬化されるゴムは、高いオレフィン性不飽和を有する天然および合成ゴムであると言われる。これらのチオマレイミドは、ペルオキシドまたはベンズチアジルジスルフィドに基づく加硫プロセスにおいて試験される。本発明は、より広範囲のマレイミドの使用を可能にし、より良い硬化特性および改善された生成物を有するプロセスを生じる。
他に示されなければ、本明細書において挙げられた全ての百分率、部、比等は、重量による。「phr」という語は、「ゴム百部当たり」を意味し、処方物中のゴムの重量に基づいて重量百分率で表した量を表す。さらには、スコーチまたはスコーチ安全性(さらに、本明細書ではTs2と略される)は、硬化プロセスの開始後、架橋がアルファ テクノロジーズ(Alpha Technologies)からのRPA 2000レオメーターを用いて測定されるときに観察される最小トルクより0.2Nm(2dNm)上の値にトルクが達するのに要する時間として定義される。架橋密度または架橋度(Δトルク)は、レオメーターで硬化中に観察される、最大トルク(MH)マイナス最小トルク(ML)である。最適硬化(ここで、t90と称される)は、硬化プロセスの開始後、デルタトルク値の90%であるトルクに達するのに要する時間であると定義される。
本発明に従い架橋されるべきゴムは、多くの従来技術のプロセスについてより広い範囲から選択することができる。使用されるゴムという語は、遊離基を生じる化合物を用いて架橋(加硫、硬化)されることができる全てのポリマーまたはポリマー混合物を包含する。適当なゴムは、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、例えばアクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコーンゴム、変性ゴム、例えばエチレン-α-オレフィンゴムで変性されたシリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ならびにエラストマーおよび/または熱可塑性ポリマーである。これらのエラストマー性および/または熱可塑性ポリマーの中で好ましいゴムは、ポリエチレンおよびエチレン含有コポリマー、例えばエチレン-α-オレフィンコポリマー、エチレン-アクリル酸エステルゴム、エチレン-α-オレフィンゴムおよびエチレン-α-オレフィン-非共役ジエンコポリマーである。エチレン-α-オレフィンコポリマーおよびエチレン-α-オレフィン-非共役ジエンコポリマーにおいて挙げられたα-オレフィンは典型的には、限定されることはないが、プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ヘプテン等から選択される。エチレン-α-オレフィン-非共役ジエン中の典型的な非共役ジエン種は、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデン-ノルボルネン、メチル-ノルボルネンおよびビニル-ノルボルネンである。本発明において使用される好ましいゴムは、ポリエチレン、例えば線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよび塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンエラストマー、ニトリルエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンエラストマー、ポリクロロプレン(例えばneoprene(商標))、クロロスルホン化ポリエチレンおよびフルオロエラストマーを含む。より好ましくは、ゴムは、エチレンを含むポリマー、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、塩素化ポリエチレン(CPE)、エチレン-酢酸ビニルポリマー(EVA)、エチレンオクテンコポリマー、スチレンヘキセンコポリマー、エチレンブテンコポリマー、エチレン-プロピレンエラストマー(EPM)およびエチレン-プロピレンジエンエラストマー(EPDM)を含む。本発明に従い架橋されるべき最も好ましいゴムは、EPMおよびEPDMである。挙げられた全てのゴムは市販されていて入手可能である。
本発明に従い使用することができる、ラジカルを生じる化合物は典型的には、不安定なC-C、O-O、N-N、O-C結合を有する化合物から選択されるが、また、例えば放射での励起後、遊離基のための前駆体である他の生成物であり得る。好ましくはそれらは熱的に不安定である化合物から選択され、これは、化合物を加熱すると遊離基が生成されることを意味する。好ましい熱的に不安定な化合物は、C-C開始剤、アゾ開始剤およびペルオキシドである。好ましいC-C開始剤は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(Perkadox(商標)30)および3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン(Perkadox(商標)58)である。好ましいペルオキシドは、ペルケタール、ペルエステル、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、以下の式
のトリオキセパン化合物(ここで、R1、R2およびR3は独立して、水素および置換もしくは非置換のヒドロカルビル基から選択される)および、式I〜III:
によって示される構造を有する環状ケトンペルオキシド(ここで、R1〜R6は独立して、水素、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキルおよびC7〜C20アルカリールからなる群より選択され、これらの基は、非環状もしくは分岐したアルキル部分を含むことができ、R1〜R6のそれぞれは任意的に、C1〜C20アルキル、線状もしくは分岐したC3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキル、ヒドロキシ、C1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、C7〜C20アラルコキシ、C7〜C20アルカリールオキシ、R1C(O)O-、R1OC(O)-、ハロゲン、カルボキシ、ニトリルおよびアミドから選択される1個以上の基で置換されることができるか、またはR1/R2、R3/R4およびR5/R6はそれぞれ、それらが結合する炭素原子と一緒に、3〜20個の原子で構成される脂環式環を形成し、その環は任意的に、C1〜C20アルキル、非環状もしくは分岐したC3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキル、ヒドロキシ、C1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、C7〜C20アラルコキシ、C7〜C20アルカリールオキシ、R1C(O)O-、R1OC(O)-、ハロゲン、カルボキシ、ニトリルおよびアミドから選択される1個以上の基で置換されることができる)である。
好ましいアゾ開始剤およびペルオキシドは、100℃で1時間より多い半減期を有するものである。
より好ましい開始剤は、次から選択されるペルオキシドである:ジアルキルペルオキシド、例えばジ-クミルペルオキシド(Perkadox(商標)BC)、t-ブチルクミルペルオキシド(Trigonox(商標)T)、ジ- t-ブチルペルオキシド(Trigonox(商標)B)、メタ、パラもしくは混合メタ/パラ形態のジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(Perkadox(商標)14)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(Trigonox(商標)101)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(Trigonox(商標)145)、t-ブチルイソプロピルクミルペルオキシド、ジ-t-アミルペルオキシド(Trigonox(商標)201)およびクミルイソプロピルクミルペルオキシド;ペルオキシエステル、例えば:ジペルオキシフタル酸ジ(t-ブチル)、ペルオキシ安息香酸t-ブチル(Trigonox(商標)C)、ペルオキシ酢酸t-ブチル(Trigonox(商標)F)、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸t-ブチル(Trigonox(商標)21)、ペルオキシイソプロピル炭酸t-ブチル(Trigonox(商標)BPIC)、ペルオキシ-2-メチル安息香酸t-ブチル(Trigonox(商標)97)、ペルオキシラウリン酸t-ブチル、ペルオキシジエチル酢酸t-ブチル(Trigonox(商標)27)、ペルオキイソ酪酸t-ブチル(Trigonox(商標)41)、ペルオキ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸t-ブチル(Trigonox(商標)42)、ペルオキシ安息香酸t-アミル(Trigonox(商標)127)、ペルオキシ酢酸t-アミルおよびペルオキシ2-エチルヘキサン酸t-アミル(Trigonox(商標)121);ペルオキシケタール、例えば3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)酪酸エチル、3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)酪酸エチル、4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)吉草酸n-ブチル、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン(Trigonox(商標)D)、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(Trigonox(商標)22)、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(Trigonox(商標)29)および1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン;トリオキセパン、例えば3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン(Trigonox(商標)311);ならびに環状ケトンペルオキシド、例えば3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソノナン(Trigonox(商標)301)。
ゴムの重量に基づく典型的に使用されるペルオキシドの量は、典型的には0.02重量%、好ましくは0.08重量%、より好ましくは0.1重量%(phr)から、12重量%、好ましくは10重量%、最も好ましくは5重量%(phr)までの量である。
使用されるべきマレイミドタイプの助剤は、式IVa〜IVdを有する:
(ここで、各Qは独立して、酸素および硫黄から選択され、Lはn+1価の架橋基であり、各R1および各R2は独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-6ヒドロカルビルまたはハロゲンから選択される)
任意的に、マレイミドタイプの助剤は、式IVeの適当な前駆体の形態でゴムに添加される:
(ここで、R1およびR2は先に示した意味を有し、R3は、R1について定義された意味を有し、R4は、任意的にR3と一緒に、脱離基である)該脱離基は、架橋工程の前またはその最中にエンド環もしくはエキソ環二重結合を形成するために適当でなければならない。適当な脱離基は、F、Cl、Br、I、CN、OSO2R5、SpR5、OR5、OOR5、OC(O)R5、OS(O)R5、SpC(S)OR6、NR6R7、N+R6R7R8、SpNR6R7、SpC(S)NR6R7、1個以上の硫黄架橋原子を有する2-メルカプトベンゾチアゾリルからなる群より選択され、この基は任意的に、R6、(RO)2P(O)Sp、(RS)2P(O)Sp、(RO)2P(S)Sp、(RS)2P(S)Sp、フタルイミド- Sp、シクロヘキセニルで置換され、かつこの基は任意的に、R6および
で置換され;ここでR5、R6およびR7は独立して、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C18シクロアルキル、C3〜C18ポリシクロアルキル、C2〜C18アルケニル、C2〜C18アルキニル、C6〜C18アリール、C6〜C20ポリアリール、C7〜C20アルカリールおよびC7〜C20アラルキルからなる群より選択され、これらの基は任意的に、1個以上のO、N、Si、P、S、B、F、Cl、BrもしくはI原子を含むか、または1個以上のC(O)、C(O)O、C(O)N、C(S)N、SS、SO2、SO3、SO2N、SiO2、SiO3、C(O)NHC(O)、CN、C=NH、N=NH、N=N、N=N(O)、NHNH、NO2またはオキシラン基を含むことができ;R8は、水素以外はR5、R6およびR7と同じ意味を有し;Zは、OまたはCH2であり;かつpは1〜4の整数である。脱離基の効果に関してのより詳細な調査については、有機化学の教科書を参照することができ、それに基づいて、当業者はえり抜きの適当な脱離基を選ぶことができる。例えば、J.マーチ(March)によるアドバンスト オーガニック ケミストリー(Advanced Organic Chemistry)、第4版、ジョン ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)(すなわち、205、1005および1008頁)参照(引用することにより本明細書に組み入れられる)。本発明の目的のために好ましい脱離基は、式V
の特に好ましい前駆体化合物におけるように、クロロ、メシル、2-メルカプトベンゾチアゾリル、ジベンジルジチオカルバモイル、ジエチルジチオカルバモイル、ジメチルジチオカルバモイル、エチルオキシジチオカルボシキ、ベンジルオキシジチオカルボシキおよび3,6-オキサ-シクロヘキセ-4-エンである。
任意的に、マレイミドタイプの助剤は、式IVeの適当な前駆体の形態でゴムに添加される:
架橋基Lは好ましくは、置換もしくは非置換の、任意的に硫黄、酸素、シリシウムおよび/またはリンを含有する、C1-6脂肪族、脂環式、芳香族または結合された脂肪族および芳香族基である。適当な基Lの例は、フェニルおよびジフェニル含有部分、例えばN,N'-m-フェニレンジマレイミド(BMI-MP)およびN,N'-p-フェニレンジマレイミド(BMI-PP)、4,4'-ジフェニルエーテルジマレイミド、4,4'-ジフェニル(モノ、ジ、トリもしくはポリ)スルフィドジマレイミド、4,4'-ジフェニルスルホンジマレイミド、4,4'-ジフェニルメタンジマレイミド、3,3'-ジフェニルエーテルジマレイミド、3,3'-ジフェニル(モノ、ジ、トリもしくはポリ)スルフィドジマレイミド、3,3'-ジフェニルスルホンジマレイミド、3,3'-ジフェニルメタンジマレイミド、4,4'-(2-ジメチル) ジフェニルメタンジマレイミド、4,4'-(2-ジメチル) ジフェニルエーテルジマレイミド、4,4'-ビフェニレンジマレイミド、4,4'-ジフェニルイソプロピリデンジマレイミド、3,4'-ジフェニルイソプロピリデンジマレイミド、1,4-(マレイミド-4'-フェノキシ)フェニレン、1,3-(マレイミド-4''-フェノキシ)フェニレン、4,4'-フェノキシジフェニルスルホン-4''-ジマレイミドおよび4,4'-(マレイミド-4''-フェノキシ)ジフェニルスルホンである。
最も好ましくは、4,4'-ジフェニルメタンジマレイミド、4,4'-ジフェニル(モノ、ジ、トリもしくはポリ)スルフィドジマレイミド、N,N'-m-フェニレンジマレイミド(BMI-MP)およびN,N'-p-フェニレンジマレイミド(BMI-PP)である。
ゴムの重量に基づき、典型的に使用されるマレイミドタイプの助剤の量は、典型的には0.1重量%、好ましくは0.5重量%、より好ましくは3重量%(phr)から、12重量%、好ましくは10重量%、最も好ましくは5重量%(phr)までの量である。
硫黄ドナーは、使用されるマレイミドタイプの助剤とは異なり、式Y-Sx-Y(VI)の化合物から選択され、ここで、xは平均して2以上であり、各Y原子は独立してCおよびNから選択され、各Yは独立して、任意の1つ以上の水素、酸素、硫黄および、中性化合物を得るために任意の中性の置換された炭素、窒素またはケイ素に基づく基から選択される基で置換される。xが2である式の化合物について、硫黄ドナーは好ましくは式R3C(Q)-(S)2-C(Q)R3の化合物から選択され、ここで、Qは先に定義した意味を有し、好ましくはSであり、R3は、任意の中性の置換された炭素、窒素またはケイ素に基づく基である。しかしながら、それらのより大きい有効性のために、xが平均して3より大きい式VIの生成物が好ましい。適当な硫黄ドナーの例は、ジチオジモルホリン、カプロラクタムジスルフィド、2-モルホリノ-ジチオ-ベンゾチアゾール、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、N-オキシジエチレンジチオカルバミル-N'-オキシジエチレンスルホンアミド、ビス(トリエトキシシリル-プロピル)テトラスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィドである。ゴムの重量に基づき、使用される硫黄ドナーの量は、典型的には0.02重量%、好ましくは0.08重量%、より好ましくは0.1重量% (phr)から、12重量%、好ましくは10重量%、最も好ましくは5重量%(phr)までの量である。
他の慣用のゴム添加剤をまた、それらの通常の量で使用することができる。例えば、強化剤または充填剤、例えばカーボンブラック、シリカ、クレー、チョーク、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムを、ゴム組成物中に含むことができる。他の添加剤、例えば滑剤、粘着性付与剤、蝋、酸化防止剤、顔料、UV-安定剤、抗オゾン化剤、発泡剤、核形成剤、エクステンダー油、例えばパラフィン系油、電圧安定剤、ウォータートリー(water tree)抑制剤、金属不活化剤、カップリング剤、染料および着色剤をまた、単独もしくは組合せて含むことができる。使用されるなら、そのような添加剤は、意図される効果を与えるのに十分な量で使用されるべきである。
組成物の実際の架橋の前に、架橋を生じることなく、種々の成分は入念に混合されるべきである。開始剤が熱的に不安定な化合物であるなら、このことは、混合が典型的には、開始剤の半減期が0.5時間より多い、好ましくは1時間より多い、なおさらに好ましくは2時間より多い温度で行われることを意味する。実際には、ゴムの温度は、混合段階中50〜150℃に制限される。混合は、当業者に公知であるような、種々のやり方で達成することができる。例えば成分を、マルチロールミル、スクリューミル、連続ミキサー、コンパウンド押出機およびバンバリーミキサーを包含する種々の装置で粉砕するか、または共通のもしくは相溶性の溶媒に溶かすことができる。組成物の全ての固体成分が粉末の形態で、または小さい粒子として入手可能であるときには、まず、例えばバンバリーミキサーまたは連続押出機で、成分のブレンドを作り、その後、このブレンドを、加熱したミル、例えば2-ロールミルで混練し、かつ成分の完全な混合物が得られるまで粉砕を続けることによって、組成物が最も便利に製造される。あるいは、ゴムおよび1種以上の酸化防止剤、および所望なら幾つかもしくは全ての他の成分を含むマスターバッチを、ゴムの塊に添加することができる。ゴムが粉末の形態で入手可能でない場合には、ゴム成分をミルに導入し、1つのロールの周りに帯を形成するまでそれを混練し、その後、残っている成分のブレンドを添加し、完全な混合物が得られるまで粉砕を続けることによって、組成物を作ることができる。ポリオレフィンの場合には、ロールは好ましくは、約80〜120℃の範囲で、開始剤成分の急速分解温度より下である温度に保持される。組成物はシートの形態でミルから除かれた後、典型的には、その後の加工処理のために適当なダイス様の片の形態にされる。
混合した後、慣用のやり方で開始剤によって遊離基が形成されると、組成物は架橋される。好ましくは、80℃、より好ましくは120℃、最も好ましくは140℃から、300℃、より好ましくは200℃までの温度で、2分間〜2時間で、ゴムが架橋される。最も普通の架橋温度は、160〜200℃の範囲である。
例えば、本発明の組成物の全ての成分は、例えばポリオレフィンについて約120〜160℃の温度で押し出されるべき押出装置へ導入される前に、一緒にブレンドされるかまたは配合されることができる。押し出される前に、本発明の組成物は、約140℃またはそれ以上の高めれた温度で、好ましくは約180〜200℃で、慣用の加硫の手順を用いて加硫される。
ゴム組成物は、限定されないが、タイヤ組成物、例えばトレッド、アンダートレッド、サイドウォール、ワイヤースキム(wireskim)、インナーライナーおよびビーズコンパウンド;工業用ゴム組成物、例えばホース、ベルト、チューブ、エンジンマウント、ショックアブソーバーおよびアイソレーター、ウェザーストリッピング、モールディングおよび車両用バンパー;ならびにワイヤおよびケーブル、例えば半導体および絶縁コンパウンドを含む種々の用途を有することができる。
混合: 評価される全てのゴム組成物について、まず、100重量部(pbw)のEPM、60phrのカーボンブラック、1phrのステアリン酸および45phrのパラフィン系油を含むマスターバッチを、慣用のやり方で製造した。架橋成分(表参照)を、シュヴァーベンタン2-ロールミルで、このマスターバッチに添加した(摩擦1:1.22、温度50〜70℃、混合時間10分間)。
架橋の評価: 架橋は、アルファ テクノロジーズ(Alpha Technologies)からのRPA 2000を用いて評価して、最大トルク(MH)マイナス最小トルク(ML)であるデルタトルクまたは架橋度;最小トルク(ML)より上で2dNmに達する時間であるスコーチ安全性(Ts2);および、ISO 6502法(ローターレスキュアメーターを用いた加硫特性のゴム測定)に従い、最小より上でデルタトルクの90%に達する時間である最適硬化時間(t90)を決定した。
架橋ゴムの機械的試験のための試料: 試料は、ウィッカートプレス(Wickert press)にて160℃で、t90時間の2倍である時間圧縮成形することによってゴム組成物を架橋することにより製造した。ISO 37に従い、試料は2mm厚であった。
架橋ゴムの評価: 架橋ゴムは、ダイで切断してダンベルにし、ISO 37に従ってツビック(Zwick)引張り試験機で試験した。
これらの結果から、実施例1においてのみ、硬化の開始の遅れが観察されたことが明らかである。この組合せだけが実際、改善されたスコーチに至る。この例における架橋度(Δトルク)はまだ最適でない。さらに、そのトルク、引っ張り強度および破断点伸びから、実施例1の架橋生成物が優れた特性を有するという結果になる。また、硫黄それ自体は、本発明の方法における硫黄ドナーであるのに適当でないということになる。
明らかに、ペルオキシドおよびマレイミドタイプの助剤と組み合わせたDPTT(ここで、x=4)のような好ましい化合物の使用は、広い濃度範囲にわたって良好なスコーチと良好な架橋の両方を与える。実施例4の結果は、ある種の硫黄ドナーについては、使用されるべき量が最適であるべきことを示す。というのは、高すぎる量はゴムの架橋度の低下を生じ得るからである。また、トルク、破断点伸びおよび引張り強度は、本発明の架橋ゴムが優れた特性を有することを示す。
助剤の量はその場その場に基づいて最適にされるべきであることが示される。
これらの結果は、種々の硫黄ドナーを使用することができることを示す。
明らかに、特許請求の範囲外の慣用の助剤の使用は、スコーチおよび架橋の改善に有効でないが、それに対して、例Eおよび8は、BMI-MPのような助剤についてまた、特許請求された成分の組合せが、所望の結果を達成するために必要とされることを証明する。また、本発明の架橋ゴムのトルク、引っ張り強度および破断点伸びは、他のゴムより優れている。
結果は、別のペルオキシドについてまた、同じ効果が観察されたことを示す。
実施例11〜15および比較例L
206pbwのマスターバッチに、2.4pbwのジクミルペルオキシド、4pbwのBMI-MPおよび種々の量のDPTTを添加した。圧縮永久歪およびショアーA硬度へのDPTTの量の影響を以下の表に示す。
206pbwのマスターバッチに、2.4pbwのジクミルペルオキシド、4pbwのBMI-MPおよび種々の量のDPTTを添加した。圧縮永久歪およびショアーA硬度へのDPTTの量の影響を以下の表に示す。
Claims (9)
- ゴムを、
- 遊離基を生じることができる開始剤、
- マレイミドタイプの助剤、および
- 硫黄ドナー
と合わせる工程を含み、該助剤および該硫黄ドナーが2種の異なる化学物質である、ゴムを架橋する方法。 - ゴムが、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムのようなニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレン-α-オレフィンゴムで変性されたシリコーンゴムのような変性ゴム、ポリウレタンゴム、エラストマー性および/または熱可塑性ポリマーならびにそれらの混合物からなる群より選択される請求項1記載の方法。
- 開始剤が、不安定なC-C、O-O、N-NおよびO-C結合を有する化合物ならびにそれらの混合物からなる群より選択される請求項1または2記載の方法。
- 硫黄ドナーが、式Y-Sx-Y(VI)(ここで、xは平均して2以上であり、各Y原子は独立してCおよびNから選択され、各Yは独立して、任意の1つ以上の水素、酸素、硫黄および、中性化合物を得るために任意の中性の置換された炭素、窒素またはケイ素に基づく基から選択される基で置換されている)の1種以上の化合物から選択される請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- ゴムを架橋するために、遊離基を生じることができる開始剤、マレイミドタイプの助剤および硫黄ドナーの組合せを使用する方法。
- ゴム、遊離基を生じることができる開始剤、マレイミドタイプの助剤および硫黄ドナーを含む組成物であって、該助剤および該硫黄ドナーが2種の異なる化学物質である、組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の方法によって得ることができる架橋ゴム。
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