JP2008529451A - 信号間の位相、周波数、および到達時間の差分を検出するシステムおよび方法 - Google Patents

信号間の位相、周波数、および到達時間の差分を検出するシステムおよび方法 Download PDF

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Abstract

2つの信号間(118および120)の位相、周波数、および到達時間の差分を検出するシステムおよび方法であって、遅延およびジッタを最小にし、2つの信号(118および120)が実質的に同一であったときでも安定して動作する。システムは、2つのシングルエンド型チャージポンプ(188)、位相周波数検出(PFD)回路(280)を含む。極性判定フリップフロップに供給される基準信号が、同期化される信号に対して先行しているとき第1PFDは安定している。極性判定回路に供給され同期化される信号が、基準信号に対して先行しているとき第2相補PFD回路は安定しているが、反転極性出力を有する。極性選択論理回路(284)は、選択されたPFDの極性判定もしくは非極性判定フリップフロップの活性化の間の遅延によって決定される期間において、最初に活性化されたPFDが極性を制御することを保証する。

Description

本発明は、ディジタル信号処理の分野、より具体的には、本発明は、位相同期ループで用いられる改良されたディジタル位相周波数検出のための方法、装置、およびシステムに関する。
位相同期ループ(PLL)は、基準周波数、または基準周波数の数分の1もしくは数倍の周波数に局所電圧制御発振器(local voltage controlled oscillator)を同期させる方法としてよく知られている。PLL技術は、電子技術時代の非常に初期から使用され、例えばパーソナル・コンピュータ(PC)のような電子技術製品の重要部品として重要であり続けている。電子技術製品において、PLLは、規則的かつ同期化されたデータ処理を目的として、複数の構成要素を基準クロックに同期させるために用いられる。
図1に示されるPLL100の基本構成単位は、位相検出器(phase detector)112、ループフィルタ(loop filter)114、および電圧制御発振器(VCO)116を含む。位相検出器112は、入力される基準信号(FREF)118とVCO116で生成された局部信号(FVCO)120との位相差を比較する。その後、位相検出器112からの位相誤差出力信号121が、ループフィルタ114を通じて供給され、かつ戻されて、位相誤差信号(phase error signal)121がゼロになるまでVCO116を調整する。例えば、VCO120からの局所信号が、基準信号118に対して進んでいるのならば、位相検出器112は、逆相誤差信号121を送って、VCO出力信号120が最終的に基準信号118と同期するまでVCO116を減速させる。もし、VCO出力信号120が基準信号118に対して遅延しているのならば、位相検出器112は、正相誤差信号121を送って、VCO出力信号120が基準信号118に追いつくまでVCO116を加速させる。最終的に、VCO116は基準信号118に対して常に同期することになる。そして、同期化が発生しているときは、ロック状態にあるといわれる。
周波数誤差と位相誤差を共に検出でき、ただ1つの動作点を有しており、通常ディジタル位相周波数検出器(PFD)と呼ばれている位相検出器112がよく用いられる。PFDの使用は、基準周波数に対して初期的に遠く離れた周波数のVCO出力を基準周波数にロックさせることを可能にする。チャージポンプ出力を有した基本PFD280は図2に示され、基準フリップフロップ122、VCOフリップフロップ124、およびAND論理ゲート126を含んでいる。基本PFD280は2つの出力を生成し、一の出力は、ソース・チャージポンプ(sourcing charge pump)がVCOの周波数を高めることができるようにするために使われることができ、他の出力は、シンク・チャージポンプ(sinking charge pump)がVCOの周波数を引き込むことができるように使われることができる。
理想的には、2つの周波数が同期化されたとき、チャージポンプ出力を有するPFD280が基本的に何もしないように、PLL100は動作するべきである。しかしながら、チャージポンプ出力を有するPFD280には、“不感帯(dead zone)”と呼ばれるよく知られた問題がある。この問題の複数の成因については、後に詳しく議論する。不感帯の問題は、仮にチャージポンプ出力を有するPFD280への信号が正確に同期化された場合、顕著なジッタ(jitter)を示すVCOとして現れてくる。実際に使われている回避策は、チャージポンプ出力を有するPFD280のリセット経路に遅延を導入し、フリップフロップリセット時間を遅くするか延ばすことによって不感帯を回避することである。この対処法の問題は、同期化できるクロック・レートが、フリップフロップの最大スイッチングスピードの数分の1にしかならないことである。
例えば、0.35μm線幅シリコン製造技術で作られた典型的な自己トグル型フリップフロップは、約800MHzでトグルすることができる。このフリップフロップを用いたPFDの最大動作スピードは、しかしながら、不感帯を避けるために導入された遅延のために400MHz未満に制限される。PCのクロックスピードは、不感帯の回避策が問題を引き起こすスピードに近づいている、あるいはより高価な製造技術への転換を要求している。
そして最悪にも、不感帯の問題は解決されるのではなく、ただ回避されるのみであり、それによって常にPFDが不感帯に踏み込みジッタの問題を引き起こす余地がある。不感帯によるジッタの問題は、PCのシステムがクロックのエッジごとに順に動作する、PCのクロックのアプリケーションで特に問題になる。1つのクロックのジッタは、命令またはデータを誤って実行させる可能性があり、PCが誤りとクラッシュから決して復旧できなくなる。
必要とされているのは、既存の高価ではない製造手順を用いたPFDを使用して、より高い周波数クロック・レートが同期化されるために人為的な遅延を導入する必要がなく、不感帯によるジッタ問題を完全に取り除きこれを発生させないように、不感帯によるジッタ問題をきっぱりと解決する、位相および周波数の差分を検出する方法である。
出願書類の相互参照
本出願は、ダブリュ・ティー・リン(W.T.Lin)によって2005年2月2日に出願され「平衡ディジタル位相周波数検出器」と題された暫定的な米国出願第60/649,233号、そしてまたダブリュ・ティー・リン(W.T.Lin)によって2005年4月7日に出願され「最適な不感帯動作特性を有する位相同期ループ」と題された暫定的な米国出願第60/654,835号、およびもう一つの、ダブリュ・ティー・リン(W.T.Lin)によって2005年5月6日に出願され、同じ題名で「最適な不感帯動作特性を有する位相同期ループ」と題された暫定的な米国出願第60/678,841号に関し、その優先権を主張するものであり、その全内容および要旨は、これによって参照して全体的に併合されている。
発明の開示
本発明は、2つの信号間の位相、周波数、および到達時間の差分を検出するシステムと方法を与え、遅延とジッタを最小化し、2つの信号が実質的に同一である場合においても安定した動作をする。つまり、前記の方法は、先行技術の位相周波数検出器のいわゆる“不感帯”問題を克服した。
好適な実施例330において、本発明は、シングルエンド型チャージポンプ(sinngle−ended charge pump)出力を有する2つの位相周波数検出(PFD)回路を含む。第1PFD280は、PFD280の極性判定フリップフロップへ供給されている信号が、非極性判定フリップフロップへ供給される信号に対して先行している限りは安定して動作する。第2相補(complementary)PFD282回路は、PFD280の極性判定フリップフロップへ供給されている信号が、非極性判定フリップフロップへ供給される信号に対して先行している限りは安定して動作するが、第1PFD280に対して出力極性が反転される。極性判定信号として基準信号が第1PFD280へ、そして極性判定信号として同期化される信号が第2相補PFD282へ供給される。極性選択論理回路284が、最初に活性化したPFDからの極性信号がシングルエンド型チャージポンプ188用の最終極性入力信号307を制御する極性信号として供給されることを保証する。最終極性信号307を制御するためにどちらのPFDが選ばれたとしても、極性判定および非極性判定フリップフロップが活性化している間の遅延により決まる期間においてイネーブル回路がシングルエンド型チャージポンプを活性化する。その結果は、2つの信号が実質的に同一のときでさえ、安定した動作をする、位相周波数到達時間の検出器となる。
本発明の位相周波数到達時間の検出器は、位相同期ループの電圧制御発振器の制御に適している。
本発明のこれらと他の特徴が、次の複数の図を参照することで詳細に説明される。
図面の簡単な説明
図1は、基本的な先行技術の位相同期ループ(PLL)の図である。
図2は、基本的な先行技術の位相周波数検出器(PFD)の図である。
図3は、位相周波数検出器(PFD)の理想的な伝達特性を示すグラフである。
図4は、理想的なPFDの動作を示すグラフである。
図5は、典型的なPFDの出力特性を示すグラフである。
図6は、理想的なPFDの伝達特性を示すグラフである。
図7は、不感帯を有するPFDの伝達特性を示すグラフである。
図8は、遅延誤差を有する伝達特性を示すグラフである。
図9は、電圧チャージポンプとして構成されたトライステート出力を示す図である。
図10は、基本的な先行技術のダブルエンド型チャージポンプ出力を示す図である。
図11は、基本的な先行技術の図10に説明されたPFDのタイミング図である。
図12は、基本的な先行技術の図10に説明されたPFDの伝達特性を示す図であり、負のグリッチを示す。
図13は、シングルエンド型チャージポンプ出力を有する先行技術の基本PFD回路の図である。
図14は、図13で説明された先行技術の基本的なPFDのタイミング図である。
図15は、図13で説明されたシングルエンド型チャージポンプ出力を有する先行技術の基本PFDの伝達特性を示すグラフである。
図16は、シングルエンド型チャージポンプ出力を有する相補PFD回路を示す図である。
図17は、図16で説明された相補PFDのタイミング図である。
図18は、図16で説明されたシングルエンド型チャージポンプ出力を有する相補PFDの伝達特性を示すグラフである。
図19は、本発明の不感帯を有する平衡位相周波数検出器(BPFD)回路の実施例を示す図である。
図20は、図19で説明されたBPFDにおける遅延時間の不整合の効果を示すタイミング図である。
図21は、電圧チャージポンプにバイアス電圧を供給するための直流増幅器として構成するオペアンプを示す図である。
図22は、電圧チャージポンプにバイアス電圧を固定するための積分器として構成するオペアンプを示す図である。
図23は、到達時間の検出器を有するPLLを示す図である。
図24は、位相検出器としての混合器を示す図である。
図25は、第2実施例として、到達時間の検出器としての不感帯と線形状態を有しない典型的なBPFDを示す図である。
図26は、第2実施例として、到達時間の検出器としての不感帯と線形状態を有しない典型的なBPFDの出力伝達特性を示す。
図27は、不感帯を有しないBPFDの伝達特性を示す。
図28は、第3実施例として、不感帯を有しないBPFDの図を示す。
図29は、図28の不感帯を有しないBPFDで用いられるイネーブル信号幅を抑制する回路の図である。
図30は、第4実施例として、不感帯と線形状態のないBPFDの図を示す。
図31は、それぞれのPFDの誤差を含んだ非極性判定フリップフロップからの極性出力信号用いたBPFDの伝達特性を示す。
図32は、第5実施例として、不感帯と線形状態を含まないBPFDの図を示す。
図33は、第6実施例として、不感帯を含まないBPFDの図を示す。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、遅延とジッタを最小化し、2つの信号が実質的に同一である場合においても安定した動作を有する、2つの信号間の位相、周波数、および到達時間の差分を検出するシステムと方法に関する。つまり、前記方法は、先行技術の位相周波数検出器のいわゆる“不感帯”問題を克服する。
本発明の概念を理解するために、位相同期ループ(PLL)に関する不感帯問題を理解することが役立つ。
雑音(noise)がなく、図1の基本的なPLL100がロック状態にある理想的な世界に我々はいることを想定する。電圧制御発振器(VCO)116は、常に入力基準信号118に同期しているから、位相周波数検出器112への2つの入力信号は、常に同時に到達する。結果的に、雑音のないPLL100がロック状態にあるときは、補正措置は必要ないから、PFD112は何もしない。したがって、理想的には、雑音のないPLL100システムがロック状態にあるときは、PFD112は常に文字通り死んでいるはずである。この状態は、通常“PFD112は不感帯にある”といわれる。理論的には、不感帯は両方の入力信号が同時に到達するときの時間上におけるただ一点で起きる。理論的には、それは信号間の到達時間の差分ゼロ点がある場合のみ起こる。実際には、スルーレート(slew rate)の制限と論理ゲートの入力閾値要求により、不感帯は1点ではなく、到達時間の差分の小領域に渡って現れる。理想的には、論理ゲートはハイの状態かローの状態の2つの出力状態をとることができる。しかしながら、スルーレートの制限によって論理デバイスが2つの状態を切替えるのに時間がかかり、2つの望ましいHまたはL状態の間には、望まれない過渡状態が常に存在する。過渡状態はかなり望ましくはないが避けることはできない。論理デバイスへの入力が、LからHへもしくはHからLへ状態が変わりつつあるとき、入力が接地電位を超えて上昇もしくはVCCの下方に下降し始めても論理デバイスはすぐには応答しない。論理デバイスは、入力信号の状態の変化を認識し措置を講じる前に、入力電圧がある閾値を交差するまで待つ必要がある。入力が閾値を交差する前までのこの過渡状態の間において、論理デバイスの出力は現在の状態を維持する。到達時間の差分ゼロの点を不感帯に拡大するのは、この不活性時間もしくは論理デバイスの無駄時間である。
雑音の付加があったとしても、PLL100システムの性能は、この理想図から離れすぎるべきではない。PFD112は、ほとんど常に到達時間の差分ゼロ点(zero arrival−time difference point)にとどまるべきであり、雑音による摂動を補償するために小さな補正出力パルスを時折送信する。理論的には、到達時間の差分ゼロの点は、PFD112において最も安定な動作点であり、VCO116に対して最も少ない数の補正パルスを生成する。結果として、VCO116の位相雑音は、最小になるはずである。
しかしながら、実際はこのようにならない。一度、実際のPLLが到達時間の差分ゼロ点になるとVCOは著しいジッタを示す。この問題は、通常“不感帯問題”といわれる。結果として、設計技術者は通常、PLL100の理想動作点になると推定される、不感帯から離れるように教えられる。不感帯問題を解決あるいは回避するためのかなりの数の試みがなされてきたが、問題を完全に処理したものは現れていない。例えば、“改良されたリセット機構を備えた高周波位相周波数検出器”と題された米国特許6822484号には、位相周波数検出器の動作点を不感帯から押し出すために単にリセットパルスを延ばすことで不感帯問題を扱う一般的な方法が説明されている。これは、不感帯のジッタ問題を最小にするが、そのような解決法はPFDを遅くしまたVCOに入力される位相雑音が大きく増加する著しい不利益がある。
あるいはローム社によって作られたPLLシステム用のVCO+位相比較器ICであるBU2374FVのデータシートにあるように、到達時間の差分ゼロ点の周りに+/−2.5nsecの窓を作るためにシュミット・トリガ回路入力を用いて、到達時間の差分が小さくゼロ付近のときにはPFDの動作を停止させる。窓はPFD出力駆動のスルー時間の2倍と等しくもある。結果として、このPFDには3つの安定出力状態、H(VCC)状態、L(接地)状態、およびオフ状態のみがある。すぐに分かるように、理想的なPFDは、PFDが3つの状態、H(VCC)状態、L(接地)状態、および線形状態で動作することを要求する。線形状態の欠如および線形状態の大きなオフ状態による置き換えで、ローム社によって開発されたこのPFDは、VCOに対しより多くの雑音を作り出す。なぜならこのPFDの出力は、常にVCCへもしくはグランドへと揺れ動くことによって補正電圧がいつも高く、PLLがロック状態にあるときに一番よく起こる小さな位相誤差を検出し補正することができなくなるからである。結果として、VCOは決して正確にロックされず、VCO信号の位相は、大きな窓の中を大きく変動する可能性があり、位相雑音と位相ジッタの両方ともいつも高くなる。
不感帯問題の他の解決策は、米国特許6157218号に“不感帯のない位相周波数検出”と題して詳述されている。この特許は、両方のチャージポンプが同時にオンされるのを防止することにより不感帯を回避することを教えている。それは不感帯を回避する効率的な方法ではあるが、著しい伝播遅延を導いてしまい、ちょうどローム社の設計のように小さな位相誤差の検出と補正には非効率的である。
PFDにおける不感帯の回避の40年は、理論面の食い違いに起因する不感帯問題の本質の理解の欠如に端を発する。不感帯問題の本質が理解されたときのみ、問題が最終的に解決し得る。
不感帯問題を理解するには、はじめにPFDの特性を理解しなければならない。チャージポンプ出力を有するPFD280の理想概念出力特性が図3のように示され得る。この図において、チャージポンプ出力を有するPFD280の出力電圧は、3つの線分130、132、および134に特徴付けることができる。位相差が+2πより大きいときは、チャージポンプの出力はVCC130の一定の電源電圧にとどまり、位相差が−2πより小さいときは、チャージポンプの出力は一定のゼロ接地電圧132にとどまり、そして位相差が+2πと−2πの間のときは、チャージポンプの出力電圧はVCC/(4π)136の一定傾斜をもつ直線134になる。この一定傾斜は、PFDの利得ともいわれ古典的なPLL解析において、ループ利得とPLLの振る舞いを判定する上で非常に重要な要因となる。チャージポンプ出力を有するPFD280の利得は、Volt/radを単位にもつ。図3は、教科書類に載っている、誰もが自分のPFDに期待する理想的な出力特性を示しているグラフである。PLLがロックの状態にあるとき、理想的には、2つの入力信号からの位相差はゼロになるはずで、それによってチャージポンプ出力を有するPFD280の出力は伝達特性の中央にとどまるはずであり、そしてそこがチャージポンプ出力を有するPFD280の唯一の安定動作点になるはずでもある。チャージポンプ出力を有するPFD280の出力は、位相差がゼロでチャージポンプ出力を有するPFD280の利得がこの時点でまだVCC/(4π)のとき、理想的にはVCC/2138である。
図4は、図2に示されるようなダブルエンド型チャージポンプ(double−ended charge pump)出力を有した理想的な基本PFD280の動作を説明する図である。この図において、基準信号FREF118は、等間隔にとられた時間R1 140、R2 142、R3 144、R4 146、R5 148、そしてR6 150に到達すると仮定される。最初のVCO信号V1 152が到達するとき、それはわずかにR1 140よりも遅れると仮定すると、アップ出力がVCO116を加速するためにR1 140から始まりV1 152で終わる最終的な補正パルスを送出する。補正パルスはローパスフィルタ114によってフィルタにかけられ、VCO116を滑らかに加速するために補正パルスを減速する。第2VCO信号V2 154が到達するとき、その到達時間はR2 142に近づくはずで、それによってアップ出力はR2 142に始まりV2 154に終わる、より小さな最終的な補正パルスを再び送出する。そして第3VCO信号V3 156が到達するとき、それが最終的に基準信号と同期すると仮定すると、第3VCO到達に対する最終的な補正出力は無くなる。
さて、VCO上に雑音による摂動があることを想定する。そうすると、V4 158がR4 146に対してわずかに先行する。ダウン出力はV4 158に始まりR4 146に終わる小さな補正パルスを送出することで、VCOを減速し望ましくはVCOの第5到達V5 160の時点とその後において両信号は同期状態に戻る。
さて、第6到達R6 150の後に基準信号が突然消えることを想定する。V7 164が到達するとき、基本PFD280はダウン出力をイネーブルすることでVCOの周波数を単に押し下げる。そして、それはどれだけの数のVCO信号が続いて到達するかにかかわらず、VCOの周波数を押し下げ続ける。
それゆえにPFD280がそれ自身、それぞれの信号の到達時間について気にしないことは明らかで、到達V1 152、V2 154、V3 156、V4 158・・・の間、もしくは到達R1 140、R2 142、R3 144、R4 146の間のタイミング関係は、PFD280の出力とはまったく関係がない。換言すれば、それぞれの信号の位相および周波数はPFD280の出力とは関係がない。PFD280が気にする唯一のことは、2つの入力信号間の到達時間の差分R1−V1,R2−V2,R3−V3,R4−V4と、信号が到達する順序である。到達時間の差分が、チャージポンプ出力を有するPFD280の出力を判定する唯一の要因である。
したがって、実際にはチャージポンプ出力を有するPFD280は、図3に示すように理想的な出力特性と非常に近い振る舞いをするが、その動作原理は我々が考えていたのとは非常に異なっている。実際には、チャージポンプ出力を有するPFD280の出力特性の傾きは、単にチャージポンプのスルーレートで決まり、入力における位相差とは関係がなく、水平軸は2つの信号間の位相差の代わりに到達時間の差分となるべきある。チャージポンプを備えた基本PFD280の出力特性は図5のように示されるはずである。
PFD280のアップ出力が真のとき、それはPFD280が基準信号118が先に到達したと判断したことを意味するだけである。PFD280はVCO120からの信号に比べて基準信号118の周波数が高いか否かもしくは基準信号118の位相が早いか否かを本当は認識していないか、気にしていない。基準信号118の周波数は、実をいうとVCO120からの信号に比べて低いこともあり得る。しかし、基本PFD280はそれでもVCO116を加速させるためにアップ出力を出す。
信号の到達時間は、信号の振幅、周波数、および位相の関数である。それはとても複雑な現象で解析は容易ではない。到達時間を解析する唯一の方法は、統計学の手法を用いることである。到達時間は、雑音源がガウス分布であるならば、ポアソン分布に支配される確率過程として特徴付けられる。PLLがロックされる前には、PFDへの2つの信号は無関係である。PLLが最終的にロックされたとき、PFDへの2つの入力信号はある程度関係をもつ。この過程の解析は、たいがいの技術者の能力を超えている。
チャージポンプは、ディジタル論理デバイスであるので、PFD280のアップ出力が真のとき、それはローパスフィルタ114の電圧を汲み上げるためにソース・チャージポンプをオンする。そしてソース・チャージポンプ出力は、理想的には最後まで電源電圧VCC130にとどまる。PFD280のダウン出力が真のときは、それはローパスフィルタ114の電圧を引き込むためにシンク・チャージポンプをオンする。そして、シンク・チャージポンプ出力は、スルーレートによる制限により、基準信号118とVCO120からの信号の間の到達時間の差分が小さすぎて、チャージポンプ出力が電源電圧VCC130もしくはゼロ接地電圧132に到達する時間がないときを除いて、理想的には最後までゼロ接地電圧132にとどまる。結果的に、チャージポンプ出力を備えたPFD280の出力特性の傾き172は、単にチャージポンプのスルーレートで判定される。
結果的に、チャージポンプ出力を備えたPFD280の出力は、図3におけるPFDの概念的理想特性の代わりに図5におけるように特徴付けられるはずである。なぜなら、チャージポンプ出力を備えたPFD280出力は2πを認識しないからである。PFD280は、ただ到達時間の差分を認識しているだけである。チャージポンプ出力を備えたPFD280の出力は、到達時間の差分が+VCC/(2*スルーレート)168より大きい場合はVCC130、あるいは到達時間が−VCC/(2*スルーレート)170より小さい場合は接地ゼロボルト132のどちらかになる。チャージポンプ出力を備えたPFD280出力の出力電圧は、到達時間の差分が+/−VCC/(2*スルーレート)の範囲にあるとき、VCCと0の間にある。そしてチャージポンプ出力は、PLL100がロック状態でかつPFD280への両入力信号が同時に到達するとき、一定のDCバイアス電圧、理想的にはVCC/2 138にバイアスされる。この理想的なVCC/2 DC電圧138は、チャージポンプ出力を備えたPFD280の理想的な動作点とも呼ばれる。理想的なチャージポンプ出力を備えたPFD280出力は、それゆえに3つの状態、H(ハイ)状態130、L(ロー)状態132、および線形状態134のみを有する。時間VCC/(2*スルーレート)168は、チャージポンプが理想動作点から電源のどちらかの端に移るのにかかる時間であることから、チャージポンプのスルータイム(slew time)168と呼ばれる。
PLL100がロック条件にある場合、2つの入力信号間の到達時間の差分はほぼゼロで、位相雑音によって到達時間の差分ゼロ点178の付近をわずかに変動し得る。そしてチャージポンプ出力を備えたPFD280の出力は、DCバイアス電圧の付近をわずかに変動するはずである。チャージポンプがVCC/2 138の理想動作点上でバイアスされていると仮定すると、到達時間の差分が大きいときチャージポンプ出力を備えたPFD280の出力は、VCC/2 138の理想動作点から+VCC/2または−VCC/2を超えて行くことはない。チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、チャージポンプ出力電圧および一定バイアス電圧138の間の電位差として単純に定義され、ボルトの単位を持ち、それによって理想動作点上でバイアスされたこのチャージポンプ出力を備えたこのPFD280において2つの信号が同時に到達したとき位相検出器の利得はゼロであり、到達時間の差分が大きいとき利得は+/−VCC/2となるはずである。VCC/2 138の動作点は、理想動作点上でバイアスされたチャージポンプ出力を備えたこのPFD280にとって唯一の安定動作点である。そしてもしPLL100システムにおいて雑音がなければ、チャージポンプ出力を備えたPFD280は、PLL100がロックしているとき理想動作点138上にとどまり永久に死んでいるはずである。なぜならこの点上でチャージポンプ出力を備えたPFD280の利得はゼロだからである。
チャージポンプ出力を備えたPFD280の理想的な伝達特性は図6のように示される。チャージポンプ出力を備えたこのPFD280の利得は、到達時間の差分がVCC/(2*スルーレート)168より大きいとき、VCC/2 174(正のハイ状態)になり、到達時間の差分が−VCC/(2*スルーレート)170より小さいとき、−VCC/2 176(負のハイ状態)になり、到達時間の差分が−VCC/(2*スルーレート)170から+VCC/(2*スルーレート)168の間を変化するとき、チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、−VCC/2から+VCC/2 173(線形状態)を変化し得る。そして両信号が同時に到達し、VCO116を補正するためにチャージポンプ出力を備えたPFD280からAC出力が必要ないとき、チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は単にゼロになる。到達時間の差分ゼロ点178は、AC出力のないただ一つの点であるはずである。しかしながら実際にはスルーレート制限により生じる不活性時間(無駄時間)と、前に説明したような論理ゲートの入力閾値要求のために、不感帯175が到達時間の差分ゼロ点178の周囲に現れ、チャージポンプ出力を備えたPFD280に対して余分なオフ状態を作り出す。結果的に図7に示すように、不感帯がチャージポンプ出力を備えたPFDの伝達特性を変えることになる。チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、正のハイ状態174、負のハイ状態176、線形状態173、および不感帯オフ状態の4つの異なった出力状態を有する。
論理デバイスのスルーレート172は、入力がHからLもしくはLからHに変化するとき、どれくらいの速さで論理デバイスが状態を変えられるかを判定する。スルーレート172は、ふつう過渡状態の間に切替えられる電流の量で決められる。過渡状態の間に切替えられる電流が多ければ多いほど、要する時間も多くなりスルーレート172も遅くなる。IC内部の論理デバイスにとって、出力ドライバ(output driver)はより大きな負荷を駆動する必要があるため、ふつうスルーレート172の判定要素となる。IC内部の普通のCMOSゲートの切替え電流は、出力ドライバの切替え電流が通常mAのオーダーであるのに対し、通常μAのオーダーである。結果的にVCC/(2*SR)168のスルータイムは、出力ドライバのスルーレート制限によって主に決まっている。しかし、無駄時間Tdead179はすべての部分で決まり、スルータイムVCC/(2*SR)168はふつう無駄時間Tdead179より数倍大きい。典型的なCMOSゲートでは、スルータイムVCC/(2*SR)168は駄時間Tdead179の約3倍で、スルータイムVCC/(2*SR)168と駄時間Tdead179の双方とも論理ゲートの設計により大きく変化し得る。
不感帯175によって作られるオフ状態は、PLL100システムにとって必ずしも悪いわけではない。VCO116の位相雑音が重要となる応用、例えば隣接チャネルからの干渉を低減するために低い位相雑音を有するVCO116を必要とする携帯電話では、チャージポンプ出力を備えたPFD280はVCO116に対してより少なくて小さい補正パルスを生成するため、不感帯175がVCO116の位相雑音を大幅に減らすことができる。しかしクロック生成器のような応用では悪い。なぜならばVCO116が不感帯175内を動き回ることを許し、VCO116のジッタが増加し得るからである。不感帯175によって引き起こされる最大の問題は、ループフィルタ114に非常に大きなキャパシタ184が必要になることである。不感帯を有するチャージポンプ出力を備えたPFD280において、チャージポンプ出力を備えたPFD280は、ループフィルタに対してまったく補正出力を送出することなく長時間何もしないことがあり得るので、チャージポンプからの補正電圧をまったく必要としない、長時間安定的なVCO周波数を維持するために、大きな時定数と大きな容量のキャパシタ184を備えることが避けられない。一方、不感帯175を有しないチャージポンプ出力を備えたPFD280においては、ほぼ毎回の比較サイクルでチャージポンプは定期的にループフィルタを充電もしくは放電することになるので、ループフィルタの時定数は小さくすることができ、またキャパシタ184の容量も小さくすることができる。不感帯175が大きくなればなるほど、大きな容量のキャパシタが必要である。これは大きなキャパシタを組み込むことが難しい上ICのコストも著しく増大するために、通常キャパシタがIC内部に組み込まれるPCのクロックICに対しては当然問題となる。
理論上は、不感帯175は望まれない動作状態ではあるが、通常は害を及ぼさないし、いくつかの場合においては有益になることもある。それでも設計技術者は不感帯175を最小値にまで減らすために、必要なことは何でもすべきである。理想的には図5に示すように、チャージポンプ出力を備えた完全なPFDは、3つの出力状態、VCC(H)130状態、接地(L)132状態、および線形状態134のみを有するはずである。不幸にもすぐに分かるように線形状態134を失うことなく、実際の回路で不感帯175を完全に消し去るのは非常に困難である。
それゆえに位相検出器利得のための従来定義は、チャージポンプ出力を備えたPFD280を解析するためにはもはや使うことができないことは明らかである。第一にチャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は入力信号の位相情報とはもはや関連がないため、従来定義されたVolt/radの代わりにVoltの単位を有する。第二にチャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、チャージポンプ出力を備えたPFD280と、理想的にVCC/2 138上でバイアスされて、入力信号の到達時間の差分がゼロのときの出力電圧でもあるチャージポンプ出力のDCバイアス電圧の間との電位差として定義されるべきである。結果として、チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は一定にならず、すぐに分かるようにチャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、非常に小さい到達時間の範囲で0から無限大にすばやく変化する可能性すらある。PLL100が取得(acquisition)モードにあるとき、チャージポンプ出力がVCC/2 138の理想動作電圧上でバイアスされているのなら、チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は単純に+/−VCC/2である。なぜならこの期間中には2つの信号間の到達時間の差分が大きいからである。PLL100がロック状態にあるとき、チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、入力信号の位相雑音とチャージポンプのスルーレート172によって決まる。位相の雑音が高くなれば高くなるほど、雑音が基準信号から来るか、あるいはVCO116から来るかとは関係なく利得が高くなる。それゆえに低い雑音システムを正しく動作させるためには、チャージポンプ出力のスルーレート172は可能な限り高くしなければならないことは明らかである。したがってチャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、よく設計されたPLL100において一定ではなく−VCC/2から+VCC/2の間を変化するはずである。第三に各信号の到達時間は、ポアソン分布に支配される確率過程である。結果的にチャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、ループがロックされているとき、統計学の手法によってのみ計算することができる。
チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得をどのように計算するかを調べる前に、チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、オシロスコープを用いて単純に計測することによって見出すことができる可能性がある。PLL100がロックしているときチャージポンプからの出力は、一定DCバイアス電圧上にとどまるはすで、ときどき雑音により出力電圧がDCバイアス電圧から急上昇あるいは急降下するので、チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は、立ち上がりエッジトリガからDCバイアスを差し引いたものを用いてオシロスコープへのチャージポンプ出力の出力信号の最大安定トリガ電圧として、また立ち下がりエッジトリガからDCバイアスを差し引いたものを用いてオシロスコープへのチャージポンプ出力の出力信号の最小安定トリガ電圧として計測できる。この計測方法では、もし2つの計測結果の絶対値が等しくなければ、チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得は2つの異なった値をとり得る。すぐに分かるようにチャージポンプ出力を備えたPFD280が2つの異なった利得をもつことはきわめて正常なことである。チャージポンプ出力を備えたPFD280の利得を計測するこの方法は、実験結果と理論計算が正確に合致することが証明されている。
図6に示されているように、チャージポンプ出力を備えた理想的なPFD280の伝達特性において、到達時間の差分検出のための判定回路は理想的であると仮定されているので、2つの信号は常に同じ遅延で判定回路に到達し判定回路が誤りを犯すことは決してない。判定回路への2つの信号間にわずかな遅延差があることを想定すると、基準信号が判定回路へ到達するまでにはさらに時間がかかる。この場合、判定回路の判定に誤りがない限り、ループがロックされているときこの遅延の誤差は、基準信号が入力に早く到達するように単純に補償される。遅延誤差を有するチャージポンプ出力を備えたPFD280の伝達特性は、図8のように示される。この図において遅延の不整合を有するチャージポンプ出力を備えたPFD280の伝達特性は、チャージポンプ出力利得(t−tdelay)181を有する理想PFDの伝達特性を単に偏移(shift)させた変形(version)であり、到達時間の差分ゼロ点178は、もはや安定動作点ではなく新しい安定動作点tdelay180は、遅延を相殺するためにわずかに正の時間を有する点である。遅延の不整合を有するチャージポンプ出力を備えたPFD280は、それでもチャージポンプ出力を備えた理想的なPFD280と非常に似たような動作をする。到達時間の差分軸上のずれは、チャージポンプ出力を備えたPFD280の動作に影響しない。
チャージポンプ出力を備えたPFD280の特性を明らかにした後、不感帯問題に取り掛かる前にチャージポンプの動作についても明らかにする必要がある。チャージポンプは、回路が発明されて以来PFD280の出力ドライバとして用いられてきた。チャージポンプを作るためには2種類の方法がある。1つの方法は、図9に示すようにディジタル論理回路でふつうに用いられるトライステート出力ドライバをチャージポンプとして使用することである。この種のチャージポンプは、電荷の源が電圧源であることからふつう電圧チャージポンプといわれる。電圧チャージポンプから汲み出す、あるいは電圧チャージポンプへ引き込まれる電荷量は、抵抗とトライステート出力ドライバにおけるバイアス電圧で決まる。抵抗182が充電もしくは放電のための電流の量を決める一方で、キャパシタ184はVCOの調整電圧VLPF186およびシングルエンド型チャージポンプ188に対するバイアス電圧を同時に供給する。
トライステート出力ドライバは、イネーブル入力190と極性入力192の2つの入力信号を要求する。トライステート出力ドライバの出力は、ふつうイネーブルされるまでHi−Z状態(または開回路オフ状態)にある。イネーブルされたときは、トライステート出力ドライバへの極性入力信号によって、出力はH(VCC)130またはL(接地)132のどちらかをとることができる。トライステート出力ドライバの出力は、Hi−Z状態のとき通常VCCと接地の間の外部DC電圧源に接続される。それによってトライステート出力ドライバがイネーブルされて極性入力がHのときトライステート出力ドライバから正の電流が流れ出すが、トライステート出力ドライバがイネーブルされて極性入力がLのときは負の電流がトライステート出力ドライバへ流れ込む。結果として外部DC電圧源に接続されるトライステート出力ドライバは、電圧チャージポンプとして動作する。ここでの我々の応用において、ローパスフィルタのキャパシタ184は外部DC電圧バイアス源をチャージポンプ188に与える。キャパシタ184においてVCOを制御するための安定的な制御電圧が成立するまで、チャージポンプ188はローパスフィルタのキャパシタ184から電流を汲み出すか、もしくは電流を引き込む。
チャージポンプを作るもう1つの方法は電流源を用いるものである。電流源からの出力電流はローパスフィルタの構成によっては影響を受けない。両方の種類のチャージポンプが広く用いられそれらの性能は同じであり、電圧チャージポンプはシングルエンド型チャージポンプとして使い易く充電および放電電流の量を容易に調整できるので、ここでは電圧チャージポンプだけを用いることにする。
チャージポンプはトライステート出力ドライバ1つ、もしくは電流を汲み出すか引き込むことができる電流源1つを用いて作ることができる。あるいは2つの独立したトライステート出力ドライバ、もしくは2つの独立した電流源でそのうちの1つは電流を汲み出すことだけができ、もう1つは電流を引き込むことだけができる。この文書の残りの部分では、電圧チャージポンプに単体トライステート出力ドライバ、もしくは電流チャージポンプに単体電流源を使用することをシングルエンド型チャージポンプと呼ぶことにし、電圧チャージポンプに2つの独立したトライステート出力ドライバ、もしくは電流チャージポンプに2つの独立した電流源を使用することをダブルエンド型チャージポンプと呼ぶことにする。シングルエンド型チャージポンプは、極性入力信号とイネーブル信号の2つの独立した入力を要求する。一方でダブルエンド型チャージポンプは、2つの独立したイネーブル信号を要求する。ダブルエンド型チャージポンプを用いて動作する基本PFD280を図10に示す。これは、PFDにおいて今日最も広く使われている設計であるので、この文書の残りの部分では“現在のPFD336”と呼ぶことにする。
さて、PFD280とチャージポンプ188の特性とが明らかになった後に、我々はなぜ現在のPDF336に不感帯問題が起こるのかを理解する準備が整う。そうするために、図10に示すような現在のPFD336に対する図11に示すタイミング図を検討する必要がある。
1.基準信号118が先に到達する場合、それは基準F/F122の出力をトリガし、H状態に切替える。
2.基準F/F122のH出力は、ソース・チャージポンプ194をイネーブルして、レジスタ182とキャパシタ184で作られるLPFへ電流を汲み出す。
3.VCO信号120が最終的に到達するとき、それのVCO F/F124の出力をトリガしてH状態に切替える。
4.VCO F/F124のH出力は、シンク・チャージポンプ194をイネーブルして、レジスタ182とキャパシタ184で作られるLPFへ電流を引き込む。
5.F/F122と124の出力がともにH状態のとき、両方のF/FをクリアするためにAND論理ゲートによってリセット信号128が生成される。
6.いくらか伝播遅延があった後、F/F122および124はともにリセットされ、チャージポンプ194および196はともにディスエーブルさHi−Z状態に戻る。
7.結果として、最終的な正の電流が汲み出されたので、現在のPFD336は次の到達順番に対して準備ができている。
8.VCO信号120が先に到達するとき、フリップフロップ動作の順序が反転された場合を除いて、現在のPFD336は上と同じプロセスを繰り返す。そしてチャージポンプは、はじめに電流を引き込み最後に負の電流を汲み出す。
この現在のPFD336が長年使われてきた。しかしながら矛盾がないわけでもない。現行PFDの最大の問題はフリップフロップ122および124がリセットされる前にソース194およびシンク196チャージポンプがイネーブルされる期間が存在することである。リセットパルスを生成しフリップフロップをクリアするためには時間がかかるためこの期間は避けられない。この期間において、もし両方のフリップフロップと両方のチャージポンプが完全に整合しない場合、誤差を含んだ漏れ電流が生じる。この誤差を含んだ漏れ電流はどちらの信号が先行しているかには関係がなく、期間は2つの信号間の到達時間の差分の量とは無関係に一定である。
この誤差を含んだ漏れ電流、もしくは現在のPFD336出力のグリッチ(Glitch)は解決不可能な問題である。理論的にはグリッチを無くすことは可能である。しかし、それには2つのフリップフロップとチャージポンプの完全な整合を要するが、すべての条件の下において現実の世界で繰り返すことは不可能である。どのくらい小さいかにはよらず、わずかな不整合がグリッチをもたらす。グリッチは絶えず引き込みと送り出しをするので、それは確実に現在のPFD336の伝達特性に影響を与える。もしグリッチが電流を引き込んでいるのならば最終的な出力電流は常に小さくなる。結果として図12に示すように、グリッチは現在のPFD336伝達特性を押し下げる。この新しい伝達特性は、判定回路において遅延の不整合がある場合に図8と非常に似ているが大きな違いがある。グリッチは、実際には伝達特性を押し下げるために現在のPFD336の利得を変える。垂直軸方向のPFDの利得を変えずに、水平到達時間の差分軸方向の伝達特性利得Gain(t)171の曲線全体を偏移させただけの遅延不整合誤差とは違い、グリッチはその逆を行う。それは水平到達時間の差分軸に影響を与えることはないが、垂直軸上で利得の変更をするものとして働く。到達時間の差分ゼロ点178を除くすべての点において、2つの誤差の最終結果はほぼ同じである。例えばA198の到達時間の差分を有する点において、出力電圧はグリッチを有しない理想的な現在のPFD336のGain(A)になるはずで、それによってAの到達時間の差分における利得は、グリッチがないときGain(A)−VCC/2 200となる。負のグリッチが存在し、負のグリッチが伝達特性をVoffset202だけ押し下げると仮定すると、現在のPFD336の出力電圧は、Gain(A)−Voffsetとなり現在のPFD336の利得は、[Gain(A)−Voffset]−VCC/2 204となる。それによって負のグリッチは因子{[Gain(A)−Voffset]−VCC/2}/[Gain(A)−VCC/2]によって利得に影響を与える。しかし到達時間の差分ゼロ点178において、Gain(A)−VCC/2はゼロなのでグリッチはこの点において実質的に無限大になる。言い換えると、到達時間の差分がゼロのときグリッチを有しない現在のPFD336の利得はゼロであるが、グリッチによりこの時点での利得はゼロ以外の有限の出力になり、それによって到達時間の差分ゼロ点178におけるグリッチの実効利得は無限206になるはずである。この到達時間の差分ゼロ点178はグリッチによって特異点(singularity)になった。現在のPFD336の利得は−VCC/2〜+VCC/2、から−無限大〜+VCC/2に変更された。結果的に現在のPFD336は、伝達特性の右側でのみ動作することができる。
基準信号118が先行していて、現在のPFD336がVCO116を汲み上げていることを想定する。VCO116が基準信号118に追いつくためゆっくりと速度を上げているとき、到達時間の差分は最終的にゼロへと縮小する。しかし2つの信号が同時に到達するときにおいても、現在のPFD336は負のグリッチのためなお最終的なシンク電流を生成している。シンク電流はVCO116を減速していき、それによって基準信号118が再び先行する。そして同じ過程が何度も何度も繰り返されるだけである。VCO信号120が到達時間の差分ゼロ点178に到達するとすぐに、誤差を含む負のグリッチがそれを再び減速するので、VCO116は到達時間の差分ゼロ178の点において安定になることは決してない。最終的にVCO116は、図12に示すような安定な動作点terror208を見出し、小さな正の電流を生成して負の誤差を含むグリッチを相殺することによって、この新しい安定な動作点terror208において最終的な補正電流はゼロとなる。
現在のPFD336の安定的な動作点が、今度は正の側に偏移することによって、基準信号118は常にVCO信号120信号に対して先行する。もしグリッチが小さければ、新しい動作点terrorは到達時間の差分ゼロ点178からそれほど遠くには離れないので、現在のPFD336は雑音のためにそれでも到達時間の差分ゼロ点178に至る場合が頻繁にある。そして現在のPFD336が到達時間の差分ゼロ点178に至るたびに、利得の−Voffset202から−無限大206への突然の増加が、チャージポンプ出力上に突然の衝撃を引き起こす。それがよく知られた不感帯の問題であるが、実のところこの問題は問題の原因をよく表現するために“ゼロ到達時間の差分問題”と呼ばれるべきである。現在のPFD336出力上のこの突然の衝撃は、周波数スペクトル全域にエネルギーをもつ不連続であるので、完全には除去できない。この問題を扱うための唯一の知られた方法は、現在のPFD336を到達時間の差分ゼロ点178からできる限り遠くで動作させることである。到達時間の差分ゼロ点178を避けるこの方法は、不感帯問題の原因を修正することはまったくできないが、代償はあるものの不感帯問題を回避するために業界において今日まで役立ってきている。
現在のPFD336を到達時間の差分ゼロ点178から遠ざけるための唯一の方法は、グリッチの影響を強めることである。これは2つの方法でなされる。故意にシンク196とソース194チャージポンプ間の不整合を増やすか、またはリセットパルス128の幅を延ばし、かつ/またはリセットパルス128を遅延させるかのどちらかの方法で行われる。一つの方法は、グリッチの幅を同じに保ちながらグリッチの大きさを増やすことである。もう一つの方法はグリッチを同じ大きさに保つが、長く継続させるものである。どちらの方法とも現在のPFD336は、比較サイクルのたびに積極的に電流をローパスフィルタ114に送り出すことになるため、VCO116の位相雑音が増加する。グリッチの大きさの増加は、さらにVCO116の位相雑音を取り込むだけであるが、リセットパルス128の幅を延ばし、かつ/またはリセットパルス128を遅延させることは、位相雑音をさらに発生させるだけではなく、現在のPFD336を遅くする。リセットパルス128の幅を延ばし、かつ/またはリセットパルス128を遅延させることは、最悪の解決策であるが、容易に実施できるのでより一般的である。
グリッチの影響を強めることにより到達時間の差分ゼロ点178から離す解決策はまた、設計技術者に2つのさらなる問題を引き起こす。最初の問題はシステムにさらに多くの位相雑音が存在することである。動作点を到達時間の差分ゼロ点178から離せば離すほど、そして動作点を遠くにすればするほど、さらに位相雑音が生成される。もしシステムのノイズが高ければ、それは収束しない解決策になる可能性がある。第2の問題は、技術者はPLL100がループ利得の広範にわたって安定であることを確信しなければならず、PLL100の安定性が問題になる。ゼロから無限大まで変化すループ利得のための根奇跡解析(root locus analysis)が、PLL100の安定性を調べるためには絶対的に要求される。グリッチに対してでなければ、技術者はとても小さい範囲のループ利得にわたってPLL100の安定性を調べるだけになり、安定性の問題はかなり扱いやすくなる。
“PFD280はどのくらいの速さで動作するのだろうか?”は常にどの技術者にとっても答えることが困難な問いなのだろうか?理論的には、PFD280の動作速度は、リセット回路経路のANDゲート126が伝播遅延を信号経路に加えるため、フリップフロップの自己トグル速度よりわずかに遅い。フリップフロップ122および124がマスタースレーブのようなフリップフロップであると仮定すると、フリップフロップの伝播遅延は論理ゲート一段の伝播遅延のだいたい2倍になる。フリップフロップへの入力信号もまた、セットアップとホールドタイムを満たすことが要求される。それらも、それぞれ、ふつう論理ゲート一段の伝播遅延の2倍となる。自分自身でトグルができるように反転出力が入力に戻されて接続されているとき、経路指定(routing)と反転出力はそれぞれフリップフロップに追加ゲート一段分の遅延を加えるから、この自己トグル回路は論理ゲート一段遅延の8つ分の全伝播遅延を有する。したがってフリップフロップの自己トグル速度は基本的に1/(8*論理ゲート一段遅延)となる。ANDゲート126がPFD280のリセット回路として使われるときは、PFD280の信号経路は、1つはANDゲート126から、そしてもう1つは経路指定からの2つの追加ゲート遅延を有し、自己トグルフリップフロップを超えるので、PFD280の最大動作周波数は、1/(10*論理ゲート一段遅延)となる。結果として、PFD280はフリップフロップの自己トグル速度の80%未満でしか動作しない。もしリセット信号128がリセット信号経路に1つのゲートを追加してさらに2つ分の論理ゲート一段遅延だけ延ばされた場合、PFD280の最大動作速度はフリップフロップの自己トグル速度の67.5%より速くはならない。もしリセット信号128がリセット信号経路に2つのゲートを追加してさらに4つ分の論理ゲート一段遅延だけ延ばされた場合、PFD280の最大動作速度はさらに57%だけに減り、リセット信号経路に3つのゲートを追加した場合は、50%だけになる。
上の最大動作速度の計算はただの近似であり、PLL100が理想的な動作条件で有効であり、かつすべての論理ゲートが同じ伝播遅延を有していると仮定している。グリッチの影響を強めて現在のPFD336の動作点を到達時間の差分ゼロ点178から遠ざける解決策は、現在のPFD336を減速させることおよびさらに雑音を引き起こすことを除いて完全に筋が通っている。設計技術者は現在のPFD336の回路を設計するとき、常にできる限りチャージポンプと信号伝播経路を整合させることを試みた。しかしよく整合すればするほど、よりグリッチは小さくなり現在のPFD336は到達時間の差分ゼロ点178のより近くで動作し現在のPFD336のジッタが増えた。この問題を解決するために現在のPFD336は、リセット回路にさらに長い遅延が必要であった。結果的に、現在のPFD336は非常に遅くなった。この問題は今日のPLLICのほとんどすべてに起きた。
現在のPFD336の設計は、本質的に到達時間の差分ゼロ点によるジッタ問題を有しているので、確率の小ささには無関係に、いつの時点かにおいて現在のPFD336が到達時間の差分ゼロ点に踏み込む余地を常に有している。マーフィーの法則(Murphy’s Law)は、余地がある限り悪い方へ進み得ると言っているし、そうなる。この到達時間の差分ゼロ点によるジッタ問題は、到達時間の差分ゼロ点に踏み込むことによって引き起こされる1つのクロックのジッタが確実にシステム全体の停止の原因になり得るので、特にPCのクロック生成器では困難である。PCクロックの製造業者は、この問題が起こることを防ぐためにクロック間ジッタの仕様に頼っているがそれは十分ではない。この仕様は残念ながら問題が起こらないことを保証するものではない。到達時間の差分ゼロによるジッタ問題が起こらないことを保証する唯一の方法は、最初から到達時間の差分ゼロ点がジッタ問題を引き起こさないことを確認するしかない。
もし図11において現在のPFD336のタイミング図を注意深く調べるならば、基準信号118がVCO120からの信号より早く到達したとき、基準フリップフロップ122の出力は、2つの信号の間の到達時間の差分の情報に加えて基準フリップフロップ122の出力がリセットされるまでのフリップフロップ122の出力からANDゲート126への伝播遅延を含んでいることが分かる。一方VCOフリップフロップ124の出力は、VCOフリップフロップ124がリセットされるまでの、VCOフリップフロップ124の出力からANDゲート126への遅延の情報のみを含んでいる。出力から望まれないフリップフロップ遅延信号情報を除去するために、チャージポンプ194および196の間の整合性に我々は完全に頼っていることになる。両方のチャージポンプ194および196が完全に整合し、その2つのフリップフロップのリセット経路の遅延時間が等しいときにのみ、正確な到達時間の差分情報を有したチャージポンプ出力を得ることができる。もし整合性が完全でないか、遅延が等しくないならばチャージポンプ出力は正しくないことになる。結果として、現在のPFD336において、VCO116を補正するために正確な到達時間の差分出力信号を送出するのは非常に困難である。
もし基準信号118がVCO120からの信号より遅く到達するのならば、VCOフリップフロップ124の出力だけが、2つの信号間の到達時間の差分の情報を伝える。基本PFD280は2つの出力信号を生成するにしても、それは常に望まれた到達時間の差分信号を有した出力信号を作るだけであることはそれゆえに明らかである。基準信号118が先行しているとき、基準フリップフロップ122からの出力だけが、望まれた到達時間の差分情報を伝える。そしてVCO信号120が先行しているとき、VCOフリップフロップ124からの出力だけが、望まれた到達時間の差分情報を伝える。すぐ分かるようにこれが不感帯問題を解決するための鍵となる。
1つの結論として、現在のPFD336を用いたPLL100は、到達時間の差分ゼロ点178にとどまることはできない。なぜなら単に現在のPFD336のグリッチが特異点になり、現在のPFD336を到達時間の差分ゼロ点178から絶えず押し出しているからである。到達時間の差分ゼロ点178は、PFDにとっては理想動作点であるとされるが、現在のPFD336にとっては不安定状態でありジッタ問題の根源となる。不感帯によるジッタ問題を防ぐため現在のPFD336への2つの入力信号は、現在のPFD336が到達時間の差分ゼロ点178から離れて動作するために、タイミングオフセットとともに動作させなければならない。タイミングオフセットは残念ながら、現在のPFD336を減速させVCO116にさらに位相雑音を加えることになる。不感帯によるジッタ問題は最小化されるが、不感帯によるジッタ問題の原因は残る。
PFDが到達時間の差分ゼロ点178に静かにとどまるためには、グリッチ問題が先に解決されなければならない。PFDがグリッチ無しで到達時間の差分ゼロ点178において動作しているときのみ、それはVCO116に対して最小量の補正パルスを生成し、それによってVCO116は最小量の位相雑音を有することになる。そしてそのときのみPLL100は位相雑音と速度の性能において妥協することなく最もよく動作することになる。
図10に示すように現在のPFD336は解決不可能な本質的なグリッチの問題を有している。ダブルエンド型チャージポンプの構造は単に捨て去るべきである。なぜなら2つのチャージポンプとフリップフロップの平衡を完全にとることは不可能であり、誤差の無い出力信号を生成するために我々はもっぱらチャージポンプと遅延経路の平衡に頼ることはできないためである。今日のほとんどすべてのPLL ICは、現在のPFD336の設計を用いている。なぜなら単にチャージポンプとフリップフロップの平衡を完全にとることが非常に困難であるからであり、それによってグリッチは常に大きく、そして実は大きなグリッチを有するPFDを到達時間の差分ゼロ点178から押し出すことはより容易である。
理想的なPFDは出力としてシングルエンド型チャージポンプしか用いることができない。基準フリップフロップ122、VCOフリップフロップ124、AND論理ゲート126、排他的論理和(Exclusive−OR)ゲート210、およびシングルエンド型チャージポンプとしてトライステート出力を含む、シングルエンド型電圧チャージポンプ出力337を有した基本PFDを図13に示し、タイミング図を図14に示す。フリップフロップ122は、シングルエンド型チャージポンプの極性信号を生成する一方、排他的論理和ゲート210は2つの信号の間の到達時間の差分を含み、シングルエンド型チャージポンプのイネーブル信号となる。この設計では、排他的論理和ゲートは所望の到達時間の差分信号を得るために、フリップフロップ出力から望まれないフリップフロップ遅延を除去するために用いられる。そしてシングルエンド型チャージポンプ出力337を有した基本PFDの動作は次のように説明される。
1.基準信号118が最初に到達するとき、それは基準F/F122をH状態に切替える要因となる。基準F/Fからの出力は、シングルエンド型チャージポンプ188の極性信号192として使用される。
2.VCO120からの信号が最終的に到達するとき、それは基準F/F124をH状態に切替える要因ともなる。
3.両方のF/FがH状態にあるとき、リセット信号128が両方のF/FをクリアするためにAND論理ゲート126によって生成される。その間排他的論理和ゲート210は、2つのF/Fが同じ状態にないときシングルエンド型チャージポンプ188を作動させるイネーブル信号190を生成したことになる。そしてシングルエンド・チャージポンプ188がイネーブルされている期間は、正確に2つの入力信号間の到達時間の差分になる。この場合基準信号118が先に到達するとき、シングルエンド型チャージポンプはローパスフィルタへ電流を汲み出し、そしてそれはVCO信号120が最終的に到達した少し後にハイ・インピーダンス状態になる。出力信号の継続時間は、それゆえに2つの入力信号間の正確な到達時間の差分を表している。そしてチャージポンプ出力電流の極性は正確であり、チャージポンプがイネーブルになっている間は常に正である。
シングルエンド型チャージポンプ出力337を有した基本PFDもまた、長年用いられてきた。しかしながらそれも矛盾がなくである。第一にシングルエンド型チャージポンプ出力337を有した基本PFDのフリップフロップの平衡をとることは、それぞれのフリップフロップの負荷が同じではないため非常に困難である。第二にそれは半分の時間でVCO116を補正するための正確なチャージポンプ出力信号を作ることができるだけであり、それは残りの半分の時間で誤差を含んだグリッチを生成する。問題は図14におけるタイミング図のように示される。
VCO信号120が先に到達したとき次のような問題が起きる。
1.VCO信号120が先に到達したとき、VCO F/F124は先にH状態になる一方、基準F/F122はまだL状態にある。
2.基準信号118が最終的に到達し、基準F/F122をH状態に切替えるきっかけを与え、リセット信号128がその後アンド論理回路126によって生成されて両方のF/Fをクリアする。
3.リセット信号128の生成からそれが両方のF/FをL状態にさせるまでいくらかの本質的な伝播遅延があるので、基準F/F122における出力はそれが最終的にリセットされる前に短時間H状態にとどまることになる。理論的にはVCO信号120が先に到達するとき、基準F/F122の出力は常にL状態にとどまるはずである。そしてチャージポンプ出力電流の極性は負で、チャージポンプはローパスフィルタから電流を引き込むだけのはずである。しかしながら基準F/F122出力の立ち上がりエッジは、イネーブル信号190の立下りエッジを引き起こすので、チャージポンプ出力電流は、VCO信号が先に到達したときいつも最後に電流を引き込みから電流の汲み出しへ切替えることになる。シングルエンド型チャージポンプ出力337を有するPFDの出力は、VCO信号120が先に到達するとき、それゆえに不正確で誤差を含んだグリッチ電流をともなっていて誤りが多い。
4.理論では基準信号118が先に到達するとき基準F/F122の出力(極性信号192)は、排他的論理輪ゲート210の伝播遅延によって常にイネーブル信号190より早く起きるので、それゆえに極性信号がチャージポンプ188に到達する前に、基準F/F122からの極性信号192を排他的論理和ゲート210の遅延時間と等しい追加遅延時間だけ遅らせることによってグリッチを回避することが可能である。しかし、もしその追加時間が必要とされているものより長ければ、基準信号118がVCO信号120に対して先行しているとき誤差を含んだグリッチが現れる。もしその追加時間が十分でなければ、VCO信号120が基準信号118に対して先行しているときグリッチがまた現れる。2つの信号経路間の遅延の完全な整合のみが、シングルエンド型チャージポンプ出力337を有するこの基本PFDに対してグリッチが起こることを防ぎ得る。しかしそれを常にすべての条件下において毎回達成するのは不可能である。余分な遅延を追加ことで、ふつうシングルエンド型チャージポンプ出力337を有するこの基本PFDのグリッチのサイズを大幅に小さくすることが可能である。しかしながらグリッチが小さくなればなるほど、PFDは到達時間の差分ゼロ点178に近いところで動作することになりPFDはさらにジッタを起こす。
シングルエンド型チャージポンプ出力337を有する基本PFDの伝達特性が図15のように示される。シングルエンド型チャージポンプ出力337を有する基本PFDの出力におけるグリッチは、ちょうど現在のPFD336のようにPFDの利得に不連続性を生じさせる。シングルエンド型チャージポンプ出力を有する基本PFDの利得は、到達時間の差分が到達時間の差分ゼロ点178の上を横切るとき、0からVoffset202へ突然飛躍し、現在のPFD336のグリッチとちょうど同じ様な問題を引き起こす。結果的に基本PFD280の2つの入力は、正確に同じ時間に到達することは決してない。ある一定のタイミングオフセットがグリッチを補償するために避けられない。グリッチは伝達特性の左側を引き上げるだけで、安定動作点−terror209は左へ偏移されている。シングルエンド型チャージポンプ337を有する基本PFDが、今度は伝達特性において、実はシングルエンド型チャージポンプ出力337を有する基本PFDの悪い半分でしか動作していないのを見ることは非常に残念である。シングルエンド型チャージポンプ出力337を有する基本PFDの良い半分は、伝達特性の右半分であり単に使われていない。
シングルエンド型チャージポンプ出力337を有する基本PFDは、幸運にもまだ正確で誤差の無い出力信号を半分の時間で作ることができるので救済可能である。我々は信号の他の半分をもう一つの回路、例えば相補PFD282から生成する方法を見つける必要があるだけである。
反転出力を有するVCOフリップフロップ218、反転出力を有する基準フリップフロップ220、反転入力付きのAND論理ゲート222、排他的論理和ゲート224、およびシングルエンド型チャージポンプ188を含む、シングルエンド型チャージポンプ出力339を有する相補PFD282を図16のように示す。相補PFD282は、F/Fが反転出力を生成することと、極性信号出力が異なったフリップフロップから取り込まれる以外は、前記したように基本PFD280とまったく同様に動作する。排他的論理和ゲート224の出力は、2つの入力信号間の正確な到達時間の差分の情報を伝え、そしてそれはシングルエンド型チャージポンプ188のイネーブル信号として用いられる。シングルエンド型チャージポンプ出力339を有する相補PFDのタイミング図を図17に示す。シングルエンド型チャージポンプ出力339を有した相補PFDは次のように動作する。
1.もしVCO信号120が先に到達するならば、それはVCO F/F218の出力をL状態に切替える要因となる。VCO F/F218の出力は、シングルエンド型チャージポンプ188の極性信号192としても用いられる。
2.基準信号118が最終的に到達するとき、それは基準信号F/F220をL状態に切替える要因にもなる。
3.両方のフリップフロップがL状態にあるとき、リセット信号228がAND論理ゲートにより生成され両方のF/Fをクリアする。そして両方のF/Fはリセットが起きた後H状態に戻る。その間排他的論理和ゲート224は、2つのF/Fが同じ状態にないときシングルエンド型チャージポンプ188を作動させるイネーブル信号190を生成したことになる。そしてシングルエンド型チャージポンプ188がイネーブルされている期間は、正確に2つの入力信号間の到達時間の差分になる。この場合基準信号120が先に到達するときシングルエンド型チャージポンプ188は、ローパスフィルタから電流を引き込み、それは基準信号118が最終的に到達した少し後にハイ・インピーダンス状態になる。チャージポンプ出力信号の継続時間は、それゆえに2つの入力信号間の正確な到達時間の差分を表している。そしてチャージポンプ出力電流の極性は正確であり、チャージポンプがイネーブルになっている期間中は負である。
しかし基本PFD280とちょうど同じように、相補PFD282は、VCO信号120が先行しているとき正確な出力を動作時間の半分しか生成することができない。基準信号118が先行しているとき、相補PFD282はちょうど基本PFD280と同じ様にグリッチを生成する。グリッチは次のように生成される。
1.基準信号118が先に到達するとき、基準F/F220は先にL状態になる。
2.VCO信号120が最終的に到達するとき、それはVCO F/F218をL状態に切替えさせ、それがリセット信号228を生成して両方のF/Fをクリアする。残念なことにちょうど基本PFD280のように、VCO F/F218出力の立ち下がりエッジは、イネーブル信号190の立下りエッジを引き起こすので、チャージポンプ188の出力は短時間誤差を含んだL状態にとどまる。結果的に前に基本PFD280で見たような誤差を含んだ漏れ電流が生成される。
シングルエンド型チャージポンプ出力を有する相補PFD282の伝達特性が図18に示される。シングルエンド型チャージポンプ出力を有する相補PFD282の安定動作点が今度は右に偏移されてterror208になる。
シングルエンド型チャージポンプ出力を有するPFD280は、基準信号118がVCO信号に対して先行しているときのみ、正確で誤差の無い出力信号を供給でき、そしてシングルエンド型チャージポンプ出力を有する相補PFD282は、VCO信号120が基準信号118に対して先行しているときのみ、正確で誤差の無い出力信号を供給できる。それゆえにPFD280と相補PFD282を一緒に組み合わせることによって我々は、正確で誤差の無いシングルエンド型チャージポンプを有する平衡したPFD(BPFD)を作ることができることは明らかである。それによって基準信号118が先行しているときBPFDはPFD280のように動作し、VCO信号120が先行しているときBPFDは相補PFD282のように動作する。結果的にBPFDの出力は常に正確かつ誤差無しになる。不感帯を有するBPFDの典型的な設計を好適な実施例330として図19に示す。
この設計において、基準信号118がVCO信号120に対して先行しているとき、基本PFD280から生成された極性出力信号192は、チャージポンプ188への最終極性信号307として選択される。そしてVCO信号120が基準信号118に対して先行しているとき、相補PFD282から生成された極性出力信号192が、チャージポンプ188への最終極性信号307として選択される。この方法を実行することにより最終極性信号307は、常に正確で誤差を含んだグリッチが無くなり、新しいBPFDの出力はそれゆえに緻密かつ正確で常に誤差を含まない。
我々はすでに知っているようにPFD280は2つの出力信号を生成するにもかかわらず、常にその出力の一方だけが到達時間の差分情報を伝える。それによって基準信号が先に到達するとき、図13に示されるシングルエンド型チャージポンプ出力337を有するPFDの基準フリップフロップ122からの極性信号が、所望の到達時間の差分情報を有した極性信号だけを供給することができる。VCOからの信号が先に到達するとき、基準フリップフロップ122には所望の到達時間の差分情報を供給する能力は単にない。結果的にVCO信号が先に到達するときシングルエンド型チャージポンプ出力を有するPFD280が正常に動作するため、VCOが先に到達したときに所望の到達時間の差分情報を生成するために我々はフリップフロップの平衡、排他的論理和、および伝播経路に依拠しなければならない。我々は知っているように、デバイスの平衡に依拠して誤差の無い極性出力信号を得るのは非常に困難である。これがPFD280が正確かつ誤差の無い出力を時間の半分でのみ供給することができる理由であり、なぜならそれはそのように設計されていた。VCO信号が最初に到達するとき、正確な到達時間の差分情報を供給する唯一の方法は単にもう1つのPFDを用いることである。それによって我々は2つの独立のPFDを有して2つの入力信号のそれぞれについて到達時間情報を供給する。我々はどちらが先に到達したかによって、最終的な誤差無しの極性信号として、どちらかを選択するための切替え器を用いることができる。
BPFD330を作るために最も重要な部分は、基本PFD280と相補PFD282の出力のそれぞれから誤差無しの極性信号192を選ぶために、誤差の無い極性選択284回路を採用することである。極性選択回路は、2つの部分を含んでいる。極性判定回路およびチャージポンプのためのイネーブル信号選択回路である。極性判定回路は、基本PFD280からの極性信号出力、もしくは相補PFD282からの極性信号出力の、どちらの極性信号が最初に到達したかを判定し、チャージポンプ188の最終極性信号307として最初に到達した極性信号を選ぶ。もし基準信号118がVCO信号120に対して先行しているならば、基本PFD280の基準F/F122の出力からの極性信号が先に到達し、チャージポンプ188への最終的な極性信号として選ばれることになる。基本PFD280の基準フリップフロップ122の出力からの極性信号は、基準信号118がVCO120に対して先行しているとき、正確で誤差を含んだグリッチが無いので、最終極性信号307は常に正確で誤差を含んだグリッチが無く、チャージポンプ188からの最終出力もそうなる。同様にVCO120からの信号が基準信号118に対して先行しているとき、相補PFD282のVCOフリップフロップ218の出力からの極性信号出力が先に到達し、チャージポンプ188への最終極性信号307として選ばれる。相補PFDのVCOフリップフロップ218の出力からの極性信号は、VCO120からの信号が基準信号118に対して先行しているとき、正確で誤差を含んだグリッチが無いので、最終極性信号307は常に正確で誤差を含んだグリッチが無く、チャージポンプ188からの最終出力もそうなる。
一度最終極性信号307が選ばれると、イネーブル信号選択回路286は、VCO116のためにどれくらいの補正時間が必要かを判定するために、最終イネーブル選択信号305を選ぶ。すぐ分かるようにVCOのための正しい補正量の選択には多くの自由がある。最も単純な設計は最終イネーブル信号305の補正時間を到達時間の差分信号と等しくおくことである。この選択の考え方は、チャージポンプ188が単に2つの入力信号間の到達時間の差分と等しい期間でVCO116を補正するという明解なものである。到達時間の差分の時間が長ければ長いほど、VCO116が補正される時間が長くなる。基本PFD280および相補PFD282からの到達時間の差分信号は、異なったフリップフロップおよびゲートから生成されるので、基本PFD280の到達時間の差分信号は、相補PFD282の到達時間の差分信号と同時に起こらない可能性がある。そこで理論的には最終極性信号307を基本PFD280もしくは相補PFD282のどちらかを選択することに加え、我々は最終極性信号307に供給するために選択されたどちらかのPFDから生成された関連する到達時間の差分を選択する必要もある。
誤差の無いチャージポンプ出力を補償する唯一の方法は、最終的な誤差の無い極性信号307が最終イネーブル信号305よりもかなり広い時間を有していることを確認することで、それによって最終イネーブル信号305が最終極性信号307の期間の窓の内部へ常に安全な余裕を十分にもって容易に落ち込むことになる。我々はすぐに分かるように、実際にはシングルエンド型チャージポンプ188への最終イネーブル信号305を選択するにあたり多くの自由がある。結論的には第一に、それぞれのPFDから最初に到達した極性信号を選択するための判定は、正確かつ精密で絶対的に誤差無しでなくてはならない。第二にシングルエンド型チャージポンプ188へ行っている最終イネーブル信号305が2つの入力信号118および120の間の到達時間の差分情報を伝え、シングルエンド型チャージポンプ188へ行っている最終イネーブル信号305の期間がチャージポンプ188へ行っている最終極性信号307の期間の窓の外側に落ち込まない限り、BPFDの動作は正確でありジッタ問題から逃れられる。
図14および図17から排他的論理和論理ゲート210および224の出力における到達時間の差分信号(イネーブル信号190)の時間は、フリップフロップ122および218の出力からの極性信号192の期間よりいつも狭いことは明らかである。フリップフロップ出力極性信号192の期間は、フリップフロップの伝播遅延および排他的論理和ゲートのために常により広い。フリップフロップの出力はイネーブル信号190より排他的論理和ゲート伝播遅延の量分だけ早く起こる。またフリップフロップの出力はまたリセット入力からのフリップフロップの伝播遅延量分だけイネーブル信号190より長く続く。結果的にイネーブル信号190が極性信号192の期間の窓の範囲内に落ち込むのは非常に容易である。それぞれのPFDのフリップフロップ122および218の出力からの極性信号192は、2つの入力信号間の到達時間の差分の情報に加えてフリップフロップのリセット経路の伝播遅延を伝える。一方イネーブル信号190は到達時間の差分情報を伝えるだけなので、極性信号192の期間は常にイネーブル信号190の期間よりかなり長くなる。極性信号192は常にイネーブル信号190よりずっと広い期間を有しているので、最終極性信号307も常に最終イネーブル信号305よりもずっと広い時間を有し、チャージポンプ188は最終極性信号307および最終イネーブル信号305の信号経路間の伝播経路の不整合に対して非常に寛容になる。不整合がシングルエンド型チャージポンプの入力において最終イネーブル信号305を最終極性信号307の期間の窓の外側に落ち込ませない限りは、誤差を含んだ出力は無くBPFDはジッタ無しになる。
図19において、以前に説明したようにBPFD330はフリップフロップ122、124およびAND論理ゲート126を含む基本PFD280と、反転出力を有するフリップフロップ220および218および反転入力222を有するAND論理ゲートを含む相補PFD282から作られる。トライステート出力ドライバは、シングルエンド型チャージポンプ188として用いられる。
この設計ではシングルエンド型チャージポンプ188への最終極性信号307は、AND論理ゲート234およびOR論理ゲート236から作られる極性選択回路284によって判定される。これらの2つの論理ゲートの出力はOR論理ゲート238によって組み合わされて最終極性選択信号307になる。
基準信号118が先行しているとき、基準F/F122の出力からの極性信号は、極性選択回路284のAND243およびOR238論理ゲートの両方をH状態に変化させる。VCO信号120が先行しているとき、VCO F/F218からの極性信号は、極性選択回路284のOR論理ゲート236および238の両方をL状態へ変化させる。
AND論理ゲート234の出力からOR論理ゲート236の入力への帰還処理は、基準信号118が先に到達するとき、極性選択出力をH状態にロックする可能性がある。帰還信号は先行の基準信号118によってすでにH状態に変化したOR論理ゲート236およびAND論理ゲート234およびOR論理ゲート238の出力が切替えられることを防ぐために、後に到達したVCO信号120を阻止する。
OR論理ゲート236の出力からAND論理ゲート234の入力への帰還処理は、VCO信号120が先に到達するとき、極性選択出力をL状態にロックする可能性がある。帰還信号は先行のVCO信号120によってすでにL状態に変化したOR論理ゲート236および238およびAND論理ゲート234の出力が切替えられることを防ぐために、後に到達した基準信号118を阻止する。
帰還信号がOR論理ゲート236の入力からAND論理ゲート234の入力へ伝わるには論理ゲート一段の伝播遅延とちょうど同じだけの時間がかかるため、2つの入力信号間の到達時間の差分が論理ゲート一段の伝播遅延よりも小さいとき、AND論理ゲート234の出力がH状態に切替えられることを防ぐための、後に到達する基準信号118を阻止する準備ができていない可能性がある。これはVCO信号120が先に到達したときに問題となる可能性がある。そしてOR論理ゲート238の出力における最終極性選択出力307はすでにL状態にあり、後に到達した基準信号はまだ最終極性選択出力307をH状態に変え得る。これは基準信号118が最初に到達し最終出力307がすでにH状態にあるときには問題にならない。なぜなら後に到達したVCO信号120がOR論理ゲート236の出力をL状態に変化させたとしても、それはORゲートの性質によりOR論理ゲート238の出力における最終極性出力307を変化させることはできないからである。
結果として後に到達した基準信号118は、到達時間の差分が論理ゲート一段の遅延の伝播時間より小さいとき、VCO120からの信号が最終極性信号出力307をL状態に変えた後に最終極性選択出力307をH状態に変える可能性はまだあるが、誤りを含んだH状態は帰還処理のため非常に短時間である。AND論理ゲートの出力234が伝播遅延後に最終的にL状態になると直ちに、OR論理ゲート238の出力もすぐ後に正しいL状態に戻る。誤差を含んだH状態はAND論理ゲート234の出力からの帰還処理を通過して戻り、OR論理ゲート236を再び誤りを含んだH状態に変化させ得るので、最終極性出力307は極性信号の全期間においてH状態およびL状態の間を行ったり来たりする。
最終極性選択出力307は、基準信号118が先行しているときHであるが、VCO信号120が先行しているとき、最終極性選択出力307はVCO信号120が基準信号118に対して少なくとも論理ゲート一段の伝播遅延分先行しているときのみ確実にLである。ORゲート238を有した極性選択回路284の判定は、ORゲートの性質により基準信号118に対して有利に働く。結果的に、判定閾値の中央はもはや到達時間の差分ゼロ点178にはなく、すべての伝播経路がフリップフロップおける信号入力からOR論理ゲート238の入力までよく整合していると仮定すると、論理ゲート一段の伝播遅延時間の半分の量だけ負の側へ向かってわずかに偏移される。VCO120からの信号が先行していて、到達時間の差分が論理ゲート一段の伝播遅延時間の範囲内のとき、上で説明したようにOR論理ゲート238の出力における判定出力は、極性信号の全体でHとLの間を跳ね返る(bounce)可能性がある。跳ね返りの速度は、論理ゲートの最大動作周波数より速いので跳ね返りは持続しないか、もしくは跳ね返り信号のデューティサイクルが高いもしくは低いときは始まりもしない。換言すれば、VCOからの信号が先行し、到達時間の差分がゼロに近いか、もしくは論理ゲート一段の伝播遅延時間に近いとき跳ね返りは起こらない。VCO120からの信号が先行し、到達時間の差分がゼロに近いとき、最終極性選択307はL状態よりかなり長い間H状態にとどまる。そしてL状態は論理ゲート一段の伝播遅延よりかなり短い間続くので、複数のゲートを通過する可能性はなく、最終極性選択出力307は単にH状態にとどまって跳ね返りは起こらない。VCOからの信号が先行していて到達時間の差分が論理ゲート一段の伝播遅延に近いとき、最終極性信号出力307は、H状態よりもかなり長い期間L状態にとどまる。そしてH状態は論理ゲート一段の伝播遅延よりもかなり短い期間続くので、それはゲートを複数の通過する可能性はなく、最終極性選択出力307はL状態にとどまって跳ね返りも起こらない。跳ね返りはデューティサイクルが50%に近いときにだけ持続する可能性がある。これは50%の点もまた判定の横断地点になり、OR論理ゲート238の出力における判定出力はなす術を認識せずに行ったり来たりするので完全に筋が通る。結果的に極性選択の判定は常に正確で曖昧さはほとんどない。
極性選択回路284により極性が一度判定されると、シングルエンド型チャージポンプ188への排他的論理和ゲート210および224の出力から所望の最終イネーブル信号305を選択するため、極性選択回路からの出力が反転入力240を有するAND論理ゲート240およびAND論理ゲート242およびOR論理ゲート244を含むイネーブル信号選択回路286へ送られる。結果的にチャージポンプ188からの出力は常にグリッチが無く正確であり、BPFD330はジッタが無く到達時間の差分ゼロ点に永久にとどまる。チャージポンプ188への最終イネーブル信号305の期間は、0から無限大の間を変化し得る2つの入力信号間の到達時間の差分と同じであるので、先に説明したように不感帯は避けられず、それによってBPFD330の伝達特性は4つのはっきり異なる安定出力状態、正のハイ状態174、負のハイ状態176、線形状態173、および不感帯オフ状態175を含むちょうど図7に示したようになる。
先に説明したようにBPFD330の判定閾値の中央は、論理ゲート一段の伝播遅延の半分の量だけ左へ偏移される。そして偏移はOR論理ゲート238の性質によって起こり、H入力に対して有利に働くので基準信号入力からの信号が有利に働く。もし我々がOR論理ゲート238を、L入力を優先するAND論理ゲートで置き換えたならば、判定の中央は代りに同じ量だけ右へ偏移する。両方の場合において、判定は論理ゲート一段の伝播遅延の範囲内で正確かつ精密である。そして判定は到達時間の差が論理ゲート一段の伝播遅延の範囲内でのみ跳ね返り得る。我々は単にORゲート238もしくはANDゲートを用いずに、AND論理ゲート234もしくはOR論理ゲート236からの出力を最終極性出力307として用いることもできるが、AND論理ゲート234もしくはOR論理ゲート236からの極性出力のどちらかを直接最終的な極性出力として用いるのは、判定回路への不確定な範囲を2倍にし、判定出力は到達時間の差分が+/−(論理ゲート一段の伝播遅延)内のとき跳ね返る可能性があり、判定の中央が今度は到達時間の差分ゼロ点178となる。
BPFDの基本PFD280と相補PFD282の両方が平衡状態にあり、それによって各PFDの伝播遅延が等しいことを確認することは非常に重要である。遅延時間の不整合はBPFD330の性能に大きな影響を持たせ得る。しかし残念ながらすべての経路について等しい伝播遅延を保つことは非常に難しい。各PFDのフリップフロップの負荷は異なっているので各PFDの速度は同じではない可能性がある。BPFDのすべての4つのフリップフロップが、結局異なった伝播遅延を有することは非常に起こり得る筋書きである。結果的に基本PFD280の排他的論理和ゲート210の出力における到達時間の差分信号の期間は、相補PFD282の排他的論理和ゲート224の出力における到達時間の差分信号の期間とかなり異なる。この設計では排他的論理和ゲート210および224からの到達時間の差分信号がシングルエンド型チャージポンプ188への最終イネーブル信号305になり、最終イネーブル信号305の期間が、どれくらいの時間ローパスフィルタのキャパシタ184へ充電もしくは放電を可能にするかを決めるので、イネーブル信号305の期間は、BPFDの出力電圧と利得に直接影響を与える。基本PFD280および相補PFD282について、到達時間の差分が常に同じであることを保証するのは不可能なので、BPFD330の利得はVCO信号120が先行しているときおよび基準信号118が先行しているときの間ではそれゆえに異なる。結果的にBPFD330には2つの固有周波数(natural frequencies)が存在する可能性があり、1つは基本PFD280による寄与で、そして他方は相補PFD282による寄与である。2つの固有周波数の計算結果はBPFD330に対しては固有ではない。それは、もしフリップフロップ122および124がよく平衡していないならば、現在のPFD336にも起こる。しかしながら現在のPFD336では、2つのフリップフロップ122および124を平衡させるのは困難ではなく、結果的に2つの固有周波数はたいてい互いに非常に接近していて別々に特定するのは困難である。BPFD330において、平衡させる必要のある異なる負荷を有するフリップフロップは4つ存在する。それによって平衡はさらに困難になる。我々はBPFD330におけるフリップフロップの平衡をPLLの固有周波数を単に計測することにより確認することができる。もしBPFD330のフリップフロップと信号経路がよく平衡しているならば、2つの固有周波数は互いに非常に接近していて別々に特定するのは困難である。
BPFD330の固有周波数は次のように計測できる。基準信号118の位相雑音がVCO116からの位相雑音よりかなり小さいと仮定すると、VCO116がPLL100の位相雑音を占める。基準信号にとってPLL100は実際にはローパスフィルタのように働くので、基準信号118がPLL100のバンド幅の範囲内の低周波の可聴信号によって周波数変調されるとき、VCO116は基準信号118の周波数の動きを追跡する。変調する可聴信号の周波数がPLL100のバンド幅を超えているとき、VCO116はもはや基準信号118の周波数の動きを追跡することができなくなる。ゆえに我々はVCO116がどのように基準信号118の偏差を追跡するかを観測することにより、固有周波数およびPLL100の周波数応答を計測することができる。
そうするために、最初に我々は基準信号118が変調されていないときのVCO116の残留FMを計測する必要がある。残留FMはVCO116のノイズフロアレベル(noise floor level)を示す。我々はその次にPLL100のバンド幅の範囲内で低周波可聴信号により基準信号118を変調し、VCOの偏差がVCO116の残留FMの量の2倍になるまで基準信号118の周波数偏差を増やし始める。この低周波可聴変調信号は我々のテスト信号である。基準信号118に小さなFM偏差を用いる目的は、BPFD330の利得が一定ではなく、到達時間の差分ゼロ点178においてBPFD330の出力がBPFD330のDCバイアス電圧からどれくらい偏差があるかに依存する。そして我々はBPFD330の周波数応答を直接計測することはできない。なぜならそれはふつう振幅が非常に小さく、広いバンド幅にわたり広がる位相雑音で決まるからである。我々は小さな既知のテスト信号を加えることによりBPFD330の周波数応答を間接的に計測できるだけで、テスト信号はBPFD330の利得に対して影響を与えすぎないほど小さいが、観測できるぐらいにノイズフロアより十分大きい。テスト信号が小さくなればなるほど、双子の固有周波数効果(twin natural frequencies)を観測しやすくなる。よく平衡したBPFD330にとって、2つのイネーブル信号間の不整合はふつう非常に小さいので、不整合が0.1nsecだけしかなく、もしテスト信号およびノイズが小さく、一方のPFDに対しイネーブル信号が0.2nsecだけでもう一方に対して0.1nsecだけ続くと仮定すると2つのPFDの間の利得の不整合は100%になる。結果的に固有周波数の高い方が周波数の低い方の1.4倍に位置づけられる。もし我々が基準信号118に対してさらに大きな周波数偏差を引き起こす、さらに大きなテスト信号を用いて、今度は一方のPFDに対して1nsec、もう一方のPFDに対して1.1nsecの間イネーブル信号が続くと仮定するならば、利得の不整合は非常に小さく、双子の固有周波数効果は観測することが困難になる。それゆえにテスト信号のレベルをできる限り低く設定することは重要である。
双子の固有周波数効果は、ゼロ到達時間の差分178から遠ざけるためにリセット経路に追加遅延を用いる現在のPFD336にはふつう起こらない。一つの理由は以前に説明したように、フリップフロップの整合がふつう良いからで、もう一つの理由は2つの入力信号が常にわずかなタイミングオフセットをもって判定回路に到達することで、チャージポンプ194および196が常にほとんどの比較サイクルごとにほとんど同じ量の電流を活発に汲み出し、引き込むからである。現在のPFD336のアップ(up)およびダウンスパイク(down spikes)の振幅はほとんど同じなので、PFD336の利得はそれゆえに一定であり2つの固有周波数は互いに非常に接近し、それらは単に1つの固有周波数になる。(アップおよびダウンスパイクの振幅はPFDの利得である。)アップおよびダウンスパイクの振幅が非常に異なるときのみ、例えば、チャージポンプの出力がVCCもしくは0接地電圧付近でバイアスされているとき、現在のPFD336はPFD330のような同じ双子の固有周波数効果を示す。現在のPFD336をそれらの極端なところでバイアスすることは異常なので、誰もこの双子の周波数効果に注意を払ってきていない。これが、双子の固有周波数効果が以前に決して報告されず、長い間PFDの利得の定義を疑ってきたエンジニアが誰一人いなかった理由である。現在のPFD336の利得は、チャージポンプ出力におけるアップおよびダウンスパイクのサイズによって決まる定数で、ふつうVCC/(4*π)に非常に近い。グリッチはPFDに既存の理論が予想したものに非常に近い働きをさせたが、それは単に偶然である。現在のPFD336のグリッチは、単にPFDの本質を隠してしまったにすぎない。PLL100が安定周波数を生成するために用いられるときは、双子の固有周波数効果は何も問題を起こさないが、PLL100がアナログ用途において変調器もしくは復調器として用いられるときは、それはベースバンド(baseband)信号を歪ませ得る。BPFDの利得(もしくは最終イネーブル信号305の期間)は、基準信号118が先行しているときと、VCO信号120が先行しているときとで異なるためこの問題は起こる。例えばPLLがFM変調器として用いられ等しい正の振幅と負の振幅を有するベースバンド信号がVCO同調電圧を変調しているとき、双子の固有周波数を有したBPFDは、正のベースバンド信号と負のベースバンド信号に対し異なった反応をする。結果的に基準信号118は、VCO信号120が基準信号118に対して先行しているときとは異なった到達時間分だけVCO120からの信号に先行するが、それでも2つの入力信号118および120の到達時間の差分を生成するベースバンド入力信号は、等量の正および負の振幅を有している。換言すれば正のベースバンド信号は、負のベースバンド信号に対して異なった周波数偏差を生じさせるので変調された信号は歪む。この問題を克服するため理論では、イネーブル信号選択回路286を用いる代わりに、AND論理ゲートもしくはOR論理ゲートを両方の排他的論理和ゲート210および224の出力からの到達時間の差分を組み合わせるために使用できる。それによって、チャージポンプ188への最終イネーブル信号305を生成することで、どちらの信号が先行するかにかかわらず到達時間の差分が等しい限りは結果の最終イネーブル信号305が常に同じ期間を有する。あるいは、排他的論理和210もしくは224の出力からの到達時間の差分信号のどちらか1つを単に用いることで十分である。最終イネーブル信号305の期間は正確ではないが、BPFDがアナログの用途に用いられるときこれらの最終イネーブル信号305を生成する代替方法が歪を低減させる。通常のようにシングルエンド型チャージポンプ188の複数の入力における最終イネーブル信号305および最終極性入力信号307の間の遅延時間は、最終イネーブル信号305の全期間が安全な余裕を十分有して最終極性選択信号307の期間の窓の範囲内に落ち込むことを保証できるように制御されなければならない。
複数のフリップフロップの間の伝播遅延時間の不整合は、BPFDの動作に非常に深刻な影響をもたせる可能性がある。例えば図19のBPFD330の両方のVCOフリップフロップ124および218は、基準フリップフロップ122および220より速いと仮定すると、それらのVCOフリップフロップは基準フリップフロップよりも短い伝播遅延を有する。この不整合の結果は図20のように示される。この図において基準フリップフロップの伝播遅延はT246、VCOフリップフロップの伝播遅延はT248、そして基準信号118はVCO信号に対してT250の量だけ先行していると仮定する。残念ながら基準信号が先行しているとき、到達時間の差分信号の期間はT−(T−T)252に減る。一方VCO信号120が同じ時間量T250だけ先行しているとき、到達時間の差分信号の期間はT+(T−T)254に増える。結果的にこのBPFD330を用いたPLL100のVCO116は、基準信号118が周波数的に下がっていても、基準信号118を追跡することに支障はない。VCO116からの信号が先行しているとき、BPFD330は多くの利得を有するが、基準信号118が周波数的に上がっているとき、PLL100のVCO116が基準信号118を追跡することに支障が出る可能性がある。BPFD330はこの方向で多くのゲイン失い利得は完全に消滅することすらある。それによって基準信号118が周波数的に上がっているとき、特に周波数が最大動作周波数付近にあるときに、VCO116が基準信号118を追跡することに支障が出る可能性がある。
伝播遅延の不整合は追跡能力だけではなく、最大動作周波数に影響を与える。図20に示されたフリップフロップT−Tの間の伝播遅延の不整合量が、論理ゲート一段の伝播遅延時間と等しく、完全に整合したBPFDの最大動作周波数が1/(10*論理ゲート一段遅延)と仮定すれば、論理ゲート一段の伝播遅延時間の不整合を有したこのBPFD330の基本PFD280の部分は、1/(11*論理ゲート一段遅延)の遅い動作周波数有する。一方、同じBPFD330の相補PFD282の部分は、1/(9*論理ゲート一段遅延)の速い動作周波数を有する。BPFD330の動作速度は、2つのうちの遅い方なので不整合は動作速度を大幅に下げ得る。
ダブルエンド型チャージポンプ出力とは違い、シングルエンド型チャージポンプ出力では電流の充電および放電の整合はそれほど重要ではない。とはいえ充電および放電電流が過度に違うことはありえない。電流の充電および放電の不整合は、それでもなおBPFD330の線形性を歪め得る。VCO116は通常広い電圧範囲で同調する必要があるので、ローパスフィルタ186の電圧も、もしそれがVCO116を直接駆動しているならば、広い電圧範囲を変化する。ローパスフィルタの広い同調電圧範囲は、残念ながら電圧チャージポンプからの電流の充電および放電の量に影響を与える。図9に示すように単純なRCローパスフィルタを駆動するシングルエンド電圧チャージポンプ188に対して、チャージポンプ出力からの出力電流はチャージポンプ188がローパスフィルタへ電流を汲み出しているとき(VCC−VLPF)/Rに等しくなり、チャージポンプ188がローパスフィルタから電流を引き込んでいるとき(0−VLPF)/Rに等しくなる。それゆえにVLPFは常に同量の充電および放電電流を維持するため、VCC/2一定にバイアスされなければならないことは明らかである。
充電および放電電流の不整合を低減するため、オペアンプ256、帰還抵抗R2 258、利得設定レジスタR3 260およびVCC/2のバイアス電圧138を含む図21に示す非反転DC増幅器として構成されたオペアンプ256が、チャージポンプ188に固定バイアスを供給しバイアス電圧138およびローパスフィルタ186の電圧間の電位差に対していくらかの電圧利得を与えるために用いられる。VCO同調範囲がVtune264であると仮定すると、オペアンプ256はA262のDC利得を与えるので、VLPFにおける電圧変化はVtune/Aに減少し、それによって充電および放電電流の不整合は、それゆえにオペアンプ256の電圧利得の係数で大幅に減少する。
図21において帰還抵抗258をキャパシタ265に置き換えて、図22に示すようにオペアンプ256を無限のDC利得を備えた能動積分器として用いることもでき、それによってVLPF186における電圧変動はまったく無くなり、充電および放電電流は全VCO同調範囲を通して常に同じである。BPFD330のチャージポンプ出力をバイアスするためにオペアンプ256を用いるのは、利得とループの周波数応答の両方に影響を与える。残念ながらそれはPLL100の計算をいっそう複雑にする。オペアンプ256はBPFD330の出力を、取得およびロック期間中において常に理想バイアス点138にとどまらせる。結果的にPLL100の性能は常に最良である。オペアンプ256無しではBPFD330のチャージポンプ出力のバイアスは、VCOの同調周波数と同程度に変化する可能性があり、BPFDは取得期間に利得をまったく作り出さない点に捕捉される可能性がある。例えばVCO116が取得期間中にVCC付近に打ち付けられるとき、BPFD330の利得はオペアンプ256が用いられないときには−VCCからほとんどゼロになる。この時点でBPFD330は、VCO116を加速させるだけの強さを備えていない。結果としてPLL100の取得能力は、劣化しロック条件に至ることがでない点までに悪化する。
BPFDの性能は全体的にフリップフロップとチャージポンプ出力188の整合に依存している。チャージポンプ188は最大動作周波数においてでさえも同じスルーレートで電流を汲み出し、引き込まなければならない。等しくないスルーレートはBPFDの利得に影響を与え、BPFDの性能はちょうど非平衡のフリップフロップによって引き起こされる問題のようにBPFDの性能を大幅に劣化させる可能性がある。
理論的な解析
図1に示されたような基本的なPLL100は、次のように解析することができる。
単純なRCローパスフィルタが伝達関数H(s)を有するループフィルタとして用いられることを想定する。
Figure 2008529451
PLL100の開ループ利得は、
Figure 2008529451
のように定義される。ここで、KVCOはVCO感度で、Kは位相検出器の利得である。
そこで、ループの特性方程式は、
Figure 2008529451
標準的な2次の式と比較すると、
Figure 2008529451
となる。我々は、
Figure 2008529451
であることを知っている。そしてダンピング係数ζは、
Figure 2008529451
である。
VCOはrad/(sec*Volt)の単位を有し、時定数RCはsec/radの単位を有し、KはVoltの単位を有するので、我々は式5が正確でありすべての単位が正しいと結論付ける。したがって、我々はこの式を用いてPLLの固有周波数を正確に計算できる。PLLについてのすべての書籍には、位相検出器の利得がVolt/radの単位を有するように定義されており、結果的に式5はまったく働かない。これらの書籍のすべての著者たちは、彼ら自身と他のすべての人たちに彼らの公式が働くことを納得させるために、1/sec=rad/secであることを主張しなければならない。それは単に間違いである。1/secはrad/secと同じではない。一方は1秒間にどれだけのサイクルが通過したかを計測するために用いられ、他方は1秒間にどれだけの位相角が通過したかを計測する。これらの2つの単位は同じ振動運動を説明するために用いられるが、非常に異なった見通しを有している。
位相検出器の利得は、我々が以前に説明したように単にVoltの単位を有するべきであり、理論的な計算においてもそれは再びここで証明された。PLLを説明する正しい方法は、到達時間の検出器266、ループフィルタ114およびVCO116を含む図23のように示され、2つの入力信号の間の到達時間の差分268を検出する到達時間の検出器を有する帰還ループのように示される。到達時間の検出器266の出力は、入力信号の振幅、周波数、および位相の関数の電圧である。
この位相検出器の定義の問題は、PFDが開発されるずっと以前に始まった。古いアナログのPLLがちょうど同じ問題を有していた。アナログPLLで用いられた位相検出器は、2つの入力信号の乗算の積を作り出す乗算器である。乗算の結果は、入力信号の振幅、周波数、および位相の関数の電圧で、ちょうどPFDのようにVolt/radの代わりにVoltを単位にもつはずである。アナログPLLの問題は、実はもっと分かりやすい。例えば図24に示すように、アナログPLL用に位相検出器として混合器を用いる。2つの信号がVref*SIN(ωt+θ)270およびVVCO*COS(ωt+θ)272であり、混合器の利得がK274であると想定すると、混合器の出力は、1/2*K*Vref*VVCO*[SIN((ω+ω)t+θ+θ)+SIN(ω−ω)t+θ−θ)]276となる。最初のSINの項はループフィルタによって除去されるので、2番目のSINの項がVCOに到達する唯一の信号となる。そこで、混合器の出力は簡略化されて、
Figure 2008529451
となる。
そして位相検出器出力Kと、位相検出器の利得として定義される1/2*K*Vref*VVCOは両方ともVoltsの単位を有しているのに対し、最終項のSIN((ω−ω)t+θ−θ))は定数で次元は無い。従来の解析では、ループがロック条件にあるとき周波数ωおよびωは等しいと仮定されるので、それによって式7はさらに簡略化できて、
Figure 2008529451
となる。そしてループがロックされていて位相誤差が小さいとき、式8はさらに簡略化されて
Figure 2008529451
となる。上の式9は簡略化の多くの段階の結果であり、θ−θは位相誤差でラジアンの単位を有するから、KがそれでもVoltsの単位をもつためには、位相検出器の利得は最初にVoltと定義されたにもかかわらず、Volt/radの単位を今度はもたなければならない。それゆえに“位相検出器”の概念を受け入れさせるため、それが実際は信号の位相と何ら関係が無いのにもかかわらず、位相検出器の利得は、Volt/radの単位をもたせられることは明白である。
式7は、混合器の乗算計算を忠実に説明していて、その出力は入力信号の振幅、周波数、および位相の関数であり、それによってちょうどPFDのように混合器は位相検出器の代わりに真の到達時間の検出器である。アナログPLLが80年前最初に開発されたとき、それは無線通信に用いられた。この用途では、自動利得制御(AGC)回路および自動周波数制御(AFC)回路も振幅および周波数を調節することに用いられた。信号の振幅および周波数の両方が調節されたときだけ、アナログPLLは位相についてロックする可能性があった。AGCとAFCは両方とも狭いバンド幅を有した帰還制御なので、それらは高い周波数の振幅雑音および周波数雑音がアナログPLL回路へ到達することを防げることはできなかった。そして一度高い周波の振幅雑音および周波数雑音がアナログPLLに到達すると、アナログPLLの混合器は雑音の源を特定することはできないのでそれらはすべて位相雑音になった。すべての振幅および周波数雑音は混合器にとっては位相雑音と同じように見えた。これがまさしく式7が我々に言っていることである。
本発明は、言葉によって構造的な特徴および/または方法論的行為に限定して説明されたが、添付の請求項に定義された本発明は、特定の特徴もしくは説明された行為に限定される必要はない。むしろ、特定の特徴および行為は請求された発明を実施する典型的な形として開示される。
代替実施例
好適な実施例330における不感帯を有するBPFDは、通常スルータイム168の約1/3の無駄時間Tdead179を有している。不感帯175は、しかしながらBPFDが不感帯の範囲内で動作しているときは、BPFDは利得が無く働いていないので望まれない状態である。BPFDを不感帯で動作させることは、最良の雑音性能をもたらすが、我々は式5からわかるようにBPFDの利得がゼロのときPLLの固有周波数はゼロになり、ループを維持するために働くループ利得がないので、BPFDが不感帯にあるときPLLは外部のかく乱によく応答しない。先に説明したように不感帯175は論理デバイスのスルーレート限界および論理ゲートの入力閾値によって引き起こされる。到達時間の差分が、OR論理ゲート244の出力が立ち上がりチャージポンプ188の入力閾値を越える時間よりも小さいとき、チャージポンプ188からの出力はなくチャージポンプは働かない。好適な実施例330において、最終イネーブル信号305の期間は、無限大から0まで変化する2つの入力信号の間の到達時間の差と正確に等しい。結果的に不感帯175は避けられない。不感帯175を最小にするために、我々は最終イネーブル信号305の期間を増やさなければならない。そうすることによって、それはシングルエンド型チャージポンプ188と他のすべての論理ゲートの入力閾値を乗り越えるために必要な最低限の期間を備える。
最終イネーブル信号305への最小限の期間の増加によって、図25に示される第2実施例334にあるように、不感帯175はおろか線形状態173全体でさえも完全に除去され得る。この第2実施例334において、PFD280のフリップフロップ122の極性出力は、2つの入力信号間の到達時間の差分情報に加えて、フリップフロップのリセット経路により論理ゲート一段の伝播遅延の4倍を有するので、極性出力信号192もチャージポンプに対するイネーブル信号として用いることができる。もし我々がフリップフロップ122からの極性出力信号192をイネーブル信号としても用いるならば、我々は基本的に所望の2つの入力信号間の到達時間の差分に論理ゲート一段の伝播遅延の4倍を加えることになる。結果的に最終イネーブル信号305の最小期間は、論理ゲート一段の伝播遅延の4倍になり、通常論理ゲートの入力閾値に必要とされる論理ゲート一段の伝播遅延時間より大きくなり、そしてまたチャージポンプ188のスルータイム168よりも長くなる。チャージポンプ188の典型的なスルータイム168は、約論理ゲート一段の3倍の伝播遅延である。チャージポンプ188のスルータイム168および論理ゲートの入力閾値は、論理ゲートの設計によって大きく変化する可能性があるので、論理ゲート一段の伝播遅延の4倍の最小期間がスルータイム168を乗り越えるために十分でなければ、そのときはフリップフロップ122からの極性出力信号192を必要な分だけ引き延ばさなければならない。極性出力信号192は、論理ゲート一段の伝播遅延の4倍の最小期間を有するので、もし必要であればさらに引き延ばすことは容易である。結果的に第2実施例334においてBPFDの伝達特性は、図26において示されるように正のハイ状態174および負のハイ状態176の2つの状態のみを有し、不感帯175が無くかつ線形状態173の無いこのBPFD334は完全な到達時間の検出器になった。もしすべての信号経路およびフリップフロップの伝播遅延が完全に整合するならば、第2実施例におけるBPFD334の判定閾値の中央は、以前に説明したように(論理ゲート一段遅延時間)/2 332の量だけ左側に偏移する。不感帯175および線形状態173がないので、第2実施例におけるこのBPFD334は、常にループフィルタ114へ大きな補正パルスを送り出している。それによってVCO116の位相雑音は増加し、平均的なクロック・ジッタ(clock jitter)は高くなる可能性がある。幸いなことにBPFDはさらに大きな利得を有しているので、チャージポンプ出力から雑音を低減するためにより大きな時定数を備えたループフィルタを用いることができる。結果的に第2実施例におけるBPFD330によって引き起こされた位相雑音は、好適な実施例におけるBPFD330と同じような位相雑音性能を有すことができ、第2実施例の設計は、位相周波数到達時間の検出器の完全な設計である。完全な到達時間の検出器の利得334は、+/−VCC/2である一方で、現在のPFD336の利得は+/−VCC/(4*π)だけで、完全な到達時間の検出器334の利得の1/(2*π)だけである。完全な到達時間の検出器としての第2実施例におけるBPFD334は、それゆえにPLLに対してさらに大きな利得を与える。それによってPLLは単にあらゆる点で性能が向上することになる。
極性信号出力192は、イネーブル信号および極性信号の両方として用いられ、そのことによってフリップフロップ122はフリップフロップ124よりさらに多くの負荷を有することになり、結果的にフリップフロップ122および124の平衡をとることは非常に困難である。図25に示されるような平衡問題の一つの解決策は、基準フリップフロップ122の出力からの極性信号出力192を極性選択回路284を駆動するためだけに用いることである。一方で相補基準フリップフロップ220はイネーブル選択回路286で用いられる。基準フリップフロップ122および相補基準フリップフロップ220は、両方とも同一の情報を反対の極性で伝えるので、負荷の問題は解決され、フリップフロップは容易に平衡する。今回のイネーブル信号は論理ゲート一段の伝播遅延の4倍の最小期間を有するので、最終極性信号307と最終イネーブル信号305の間の伝播経路におけるわずかな不整合が出力に影響を与えることはなく、チャージポンプ188は、2つの入力信号間のわずかな不整合に関して非常に寛容になる。BPFD334の相補PFD282の部分は単に基本PFD280と同じ内容のものである。
OR論理ゲート244および反転入力240、243を有する2つのAND論理ゲートが、第2実施例の設計においてイネーブル信号選択回路286として用いられる。イネーブル信号選択用のこの設計は非常に単純であり、我々はイネーブル信号として単にフリップフロップからの同じ極性の信号を用いることによって、イネーブル信号は常に極性信号と等しくなる。すでに両方の信号で論理ゲート一段の伝播遅延の4倍の最小期間があるので、我々は2つの信号間のわずかな不整合を心配する必要はない。
BPFD334の最終イネーブル信号305は、今回論理ゲート一段の伝播遅延の4倍の最小期間を有していて、結果的に線形状態173およびBPFD出力のオフ状態(不感帯175)は完全に除去される。しかしながら線形状態173無しでは、位相雑音はループフィルタの時定数を大きくしない限り不可避的に常に高くなる。PCのクロックのようないくつかの応用では、論理ゲートの入力閾値を乗り越えるちょうど十分な量の最小期間を有したイネーブル信号を用いることが求められ、そうすることによって不感帯175は完全に除去される一方、線形状態173はまだ損なわれておらずこの設計でのBPFDの伝達特性は、図27に示されるように3つの安定出力状態、正のハイ状態174、負のハイ状態176、および線形状態173をのみを有する。図28に示されるように、第3実施例338の3つの安定出力状態を有するBPFDは、不感帯を有しないPFDになり適切な位相雑音および位相ジッタを同時に提供する。そしてPLLがロックされるときBPFDの利得はより低くなり、小さな時定数を有したループフィルタで十分でありフィルタはICの内部で容易に組み立てられるのでPCのクロックの応用にとっては理想的である。
第3実施例338を実施するために、我々は論理デバイスの入力閾値を乗り越えるために少量の期間を加えることによって、所望のイネーブル信号になるように到達時間の差分信号190を引き延ばす必要がある。しかしながら到達時間の差分信号の期間は0から無限大まで変化するため、到達時間の差分信号190用に少量の期間を引き延ばすのは非常に困難である。イネーブル信号用に所望の期間を得るには、図29におけるイネーブル信号幅抑制回路を用いて極性信号192の期間を抑制することによる方がより容易である。イネーブル信号幅抑制回路316および317を用いると、最終イネーブル信号305の期間がインバータ318および320のために単一ゲートの伝播遅延の2倍の量だけ抑制される。2つのキャパシタ324および326は、最終イネーブル信号305の期間をさらに抑制し、これら2つのキャパシタの容量は必要に応じて調整する必要がある。容量の最適な値を探すのに何度か繰り返すこともある。最終イネーブル信号305にとって誤差なしで落ち込む十分に安全な余地を備えた期間の窓を最終極性信号307が有することを保証するため、極性信号用に2つのインバータ346および348が必要である。不可能ではないが、線形状態173を失うことなしに不感帯175を除去するのは実際のところ非常に困難である。
第2実施例334として完全な到達時間の検出器を作るもう1つの方法がある。この新しい設計は第4実施例340として図30に示されている。この設計では、以前のすべての実施例で用いられていたのと同じ極性選択回路284がどちらの信号が先に到達したかを判定するために用いられているが、シングルエンド型チャージポンプ188に送り込まれる最終極性信号307がPFDの極性判定フリップフロップ122および218から来ないので、OR論理ゲート238はもはやこの設計では必要ない。その代わりに我々は、極性判定フリップフロップ122および218の出力から選択された正確な極性信号出力をPFDの非極性判定フリップフロップ220および124からの出力のどちらかを選択するため、そして極性信号切替え器から選択された信号をシングルエンド型チャージポンプ188への最終極性選択信号307として送り込むために極性信号切替え器への切替え制御信号として用いる。極性信号切替え器は、ANDゲート350、複数の反転入力を備えたANDゲート352、およびNORゲート354から作られている。ORゲート360および複数の反転入力を備えたORゲート362がイネーブル信号を生成するために用いられる。
この設計では、チャージポンプ188へ送られるそれぞれのPFDからの極性信号は、到達時間の差分情報を伝え正確な極性出力を発生する極性判定フリップフロップ122および218からではなく、通常は到達時間の差分情報を伝えずに誤差を含んだグリッチを生成する非極性判定フリップフロップ124および220から取り込まれるが、我々は、それでもこれらの極性判定フリップフロップ122および218からの正確な極性出力信号を、正確な切替え制御信号を生成するために必要とする。基本PFD280の極性出力はVCOフリップフロップ124から取り込まれる一方、相補PFD282の極性出力は基準フリップフロップ220から取り込まれる。我々はグリッチの大きさを制御するため、非極性判定フリップフロップ124および220からの誤差を含んだ極性出力の期間を抑制するために、イネーブル信号幅抑制器316および317の同じ回路を用いる必要がある。それぞれのPFDからの誤差を含んだ非極性判定フリップフロップ出力を用いたBPFDの伝達特性が図31のように示される。2つの安定動作点terror208およびterror209があるので、BPFDはこれらの2つの安定動作点間のあちらこちらに飛ぶ可能性があり、VCO116に大きなジッタを引き起こすので、図31のように示されるこの伝達特性は単にひどい。それでもなお、もし我々がスルータイム168とterror208の合計よりも長い最小期間を最終イネーブル信号305に加えるとすれば、我々は不安定状態と線形状態を一緒に除去でき、ちょうどBPFDは第2実施例334の設計のような2つだけの安定動作点を有する。したがって第2実施例334のような両方のPFDからの正確な極性判定フリップフロップ出力を用いる設計と、第4実施例340のようなPFDからの両方の誤差を含んだ非極性判定フリップフロップ出力を用いるものでは同じ結果が得られるが、第2実施例334の正確な極性判定フリップフロップからの出力を用いる方が容易にできる。その上第4実施例のBPFD340のグリッチは、第2実施例のBPFD334よりもさらに多くの位相雑音を生成する。結果的に位相同期ループにとって第2実施例334がより望ましい位相周波数到達時間の検出器であることになる。
もし我々が誤差を含む非極性判定フリップフロップからの極性出力を用いたBPFDの伝達特性の図31を調べれば、少しの最小期間を最終イネーブル信号305に加えることによって我々は2つの安定動作点terror208およびterror209を一緒にすることができそうに見える。それによって結果として現れた伝達特性は、図6に示すように理想的なPFDと正確に同じ形を有することになる。しかしながら実際には、同じ振幅を有した2つのグリッチがあるものの2つの安定動作点208および209のそれぞれについて反対の極性に生じているので、BPFDの利得はこれらの点では2つの安定動作点が完全に一緒になったとしてもゼロにはならない。それにより最終的な伝達特性は、最終のイネーブル信号305に少しの最小期間を加えることによって2つの安定動作点が正確に統合されたとしても、実際には図6ではなく図27に近くなる。誤差を含む非極性判定フリップフロップ出力の使用は、正確な極性判定フリップフロップからの出力を使用する設計と似た結果を生み出すがグリッチのために結果は通常劣っている。
図32は第5実施例364の到達時間の検出器として、不感帯および線形状態のないBPFDを示す。この設計は不感帯および線形状態のないBPFDを作るために必要とされる最小限の構成のみを含んでいる。極性判定回路284は、ORゲート236およびANDゲート234のみを含むので、判定閾値の中央は到達時間の差分ゼロ点178であり、到達時間の差分が+/−(論理ゲート一段の遅延)の範囲にあるとき判定は、跳ね返る可能性がある。イネーブル選択回路は反転入力付きのORゲート336を含むだけである。反転入力336を備えたORゲートは、論理ゲート一段の伝播遅延の4倍を到達時間の差分信号に加えることによって最終イネーブル信号を引き延ばすことで、線形状態と同様に不感帯も完全に除去される。反転入力付きのORゲート336は、排他的NORゲートに置き換えることも可能である。もし反転入力付きのORゲート336を置き換えるために排他的NORゲートが用いられるならば、BPFDは不感帯および線形状態も生じさせる。
図33は第6実施例372として不感帯を有するBPFDを示す。この設計は不感帯を有するBPFDを作るために必要とされる最小限の構成のみを含む。OR論理ゲート368一段が遅く到達した信号を遮断するための帰還なしの極性選択回路として用いられるので、判定回路は一度選択がなされるとロックしなくなる。結果的に最終イネーブル信号305および最終極性信号307の間のタイミング問題は重要である。最終イネーブル信号305を生成するために、排他的NORゲート370が用いられる。最終イネーブル信号は、到達時間の差分信号と正確に同じ期間を有するので、第6実施例372のこのBPFDは不感帯を生じさせる。
産業上の利用性
家庭用電化製品の分野においては、とくに位相同期ループ回路の一部として電圧制御発振器を制御するために、信号間の位相、周波数、および到達時間の差分を検出することに多大な関心が存在する。そのような回路は、例えばパーソナル・コンピュータにおける局所クロックの同期化のような場合においてかなり有用である。
基本的な先行技術の位相同期ループ(PLL)の図である。 基本的な先行技術の位相周波数検出器(PFD)の図である。 位相周波数検出器(PFD)の理想的な伝達特性を示すグラフである。 理想的なPFDの動作を示すグラフである。 典型的なPFDの出力特性を示すグラフである。 理想的なPFDの伝達特性を示すグラフである。 不感帯を有するPFDの伝達特性を示すグラフである。 遅延誤差を有する伝達特性を示すグラフである。 電圧チャージポンプとして構成されたトライステート出力を示す図である。 基本的な先行技術のダブルエンド型チャージポンプ出力を示す図である 基本的な先行技術の図10に説明されたPFDのタイミング図である。 基本的な先行技術の図10に説明されたPFDの伝達特性を示す図であり、負のグリッチを示す。 シングルエンド型チャージポンプ出力を有する先行技術の基本PFD回路の図である。 図13で説明された先行技術の基本的なPFDのタイミング図である。 図13で説明されたシングルエンド型チャージポンプ出力を有する先行技術の基本PFDの伝達特性を示すグラフである。 シングルエンド型チャージポンプ出力を有する相補PFD回路を示す図である。 図16で説明された相補PFDのタイミング図である。 図16で説明されたシングルエンド型チャージポンプ出力を有する相補PFDの伝達特性を示すグラフである。 本発明の不感帯を有する平衡位相周波数検出器(BPFD)回路の実施例を示す図である。 図19で説明されたBPFDにおける遅延時間の不整合の効果を示すタイミング図である。 電圧チャージポンプにバイアス電圧を供給するための直流増幅器として構成するオペアンプを示す図である。 電圧チャージポンプにバイアス電圧を固定するための積分器として構成するオペアンプを示す図である。 到達時間の検出器を有するPLLを示す図である。 位相検出器としての混合器を示す図である。 第2実施例として、到達時間の検出器としての不感帯と線形状態を有しない典型的なBPFDを示す図である。 第2実施例として、到達時間の検出器としての不感帯と線形状態を伴わない典型的なBPFDの出力伝達特性を示す。 不感帯を有しないBPFDの伝達特性を示す。 第3実施例として、不感帯を有しないBPFDの図を示す。 図28の不感帯を有しないBPFDで用いられるイネーブル信号幅を抑制する回路の図である。 第4実施例として、不感帯と線形状態のないBPFDの図を示す。 それぞれのPFDの誤差を含んだ非極性判定フリップフロップからの極性出力信号用いたBPFDの伝達特性を示す。 第5実施例として、不感帯と線形状態を含まないBPFDの図を示す。 第6実施例として、不感帯を含まないBPFDの図を示す。

Claims (35)

  1. 信号間の位相、周波数、および到達時間の差分を検出する方法であって、
    第1信号(118)および第2信号(120)を、第1位相周波数検出回路(280)および第2相補位相周波数検出回路(282)の双方の入力端子に供給するステップと、
    前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して先行しているとき、前記第1位相周波数検出回路(280)の出力信号になり、前記第1信号(118)が第2信号(120)に対して遅延しているとき、前記第2相補位相周波数検出回路(282)の出力信号になる極性信号(307)を、シングルエンド型チャージポンプ(188)への入力として選択するステップと、
    を含む、方法。
  2. 前記シングルエンド型チャージポンプをイネーブルするために、前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して先行しているとき、前記第1位相周波数検出回路(280)の第2出力信号になり、前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して遅延しているとき、第2相補位相周波数検出回路(282)の第2出力になるイネーブル信号(305)を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1位相周波数検出回路(280)は、シングルエンド型チャージポンプを駆動できる位相周波数検出回路を提供するように構成された、第1基準フリップフロップ(122)、第1VCOフリップフロップ(124)、および第1AND論理ゲート(126)を含み、
    前記第2相補位相周波数検出回路(282)は、シングルエンド型チャージポンプを駆動できる位相周波数検出回路を提供するように構成された、反転出力を生成する第2基準フリップフロップ(220)、反転出力を生成する第2VCOフリップフロップ(218)、および第2AND論理ゲート(222)を含む、請求項2に記載の方法。
    [すべての実施例]
  4. 前記極性信号(307)を選択するステップはさらに、
    前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して先行しているとき、前記第1基準フリップフロップ(122)の出力信号を用いること、および
    前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して遅延しているとき、前記第2VCOフリップフロップ(218)の反転出力信号を用いること
    を含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記極性信号(307)を選択するステップはさらに、
    極性選択回路(284)を備えることを含み、
    前記極性選択回路は、第3ANDゲート(234)および第1ORゲート(236)を含み、
    前記第3ANDゲート(234)からの出力は前記第1ORゲート(236)に入力を供給する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記シングルエンド型チャージポンプをイネーブル(305)するステップはさらに、
    第3ORゲート(244)を含むイネーブル回路(286)を備えることを含み、
    それによって、ハイ、ローの2つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記イネーブル回路(286)はさらに、
    第4ANDゲート(240)および第5ANDゲート(242)を含む、請求項5に記載の方法。
  8. 前記イネーブル信号(305)を生成するステップはさらに、
    前記第1基準フリップフロップ(122)および前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力を第1排他的ORゲート(210)に入力として供給すること、および、前記第1排他的ORゲート(210)の出力を前記イネーブル回路(286)に入力として供給すること、ならびに
    前記第2基準フリップフロップ(220)および前記第2VCOフリップフロップ(218)からの反転出力を第2排他的ORゲート(224)に入力として供給すること、および、前記第2排他的ORゲート(224)の出力を前記イネーブル回路(286)に入力として供給すること、を含み、
    それによって、ハイ、ロー、線形、およびジッタなしの不感帯175の4つの安定出力状態を有する位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記イネーブル信号(305)を生成するステップはさらに、
    前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力を前記イネーブル回路(286)に入力として供給すること、および
    前記第2基準フリップフロップ(220)からの反転出力を前記イネーブル回路(286)に入力として供給すること
    を含む、請求項7に記載の方法。
  10. 前記極性信号(307)を選択するステップはさらに、
    前記第1基準フリップフロップ(122)の出力信号を前記極性選択回路(284)に入力信号として供給すること、および
    前記第2VCOフリップフロップ(218)の反転出力信号を前記極性選択回路(284)に入力として供給すること、を含み、
    それによって、ハイ、ローの2つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記イネーブル信号(305)を生成するステップはさらに、
    前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力を第1イネーブル信号抑制器317に入力として供給すること、および
    前記第2基準フリップフロップ(220)からの反転出力を第2イネーブル信号抑制器316に入力として供給すること
    を含む、請求項7に記載の方法。
  12. 前記極性信号(307)を選択するステップはさらに、
    出力が前記極性選択回路(284)への入力信号となる第2インバータ(348)に対して並列に接続されている第1インバータ(346)に、前記第1基準フリップフロップ(122)の出力信号を入力として供給すること、
    出力が前記極性選択回路(284)への入力信号となる第4インバータ(352)に対して並列に接続されている第3インバータ(350)に、前記第2VCOフリップフロップ(218)の出力信号を入力として供給すること、を含み、
    それによって、ハイ、ロー、および線形領域の3つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記イネーブル信号(305)を生成するステップはさらに、
    前記第1基準フリップフロップ(122)からの出力および前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力を第4ORゲート(360)に入力として供給すること、および
    前記第2基準フリップフロップ(220)からの出力および前記第2VCOフリップフロップ(218)からの出力を第5ORゲート(362)に入力として供給すること、を含み、
    前記極性信号(307)を選択するステップはさらに、
    前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力信号を第1イネーブル信号抑制器317に入力として供給すること、および
    前記第2基準信号フリップフロップ(220)からの反転出力を第2イネーブル信号抑制器316に入力として供給すること、を含み、
    それによって、ハイ、ロー、および線形領域の3つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項7に記載の方法。
  14. 前記極性信号(307)を選択するステップはさらに、
    第1ORゲート(368)を有する極性選択回路(284)を備えることを含み、
    前記シングルエンド型チャージポンプをイネーブル(305)するステップはさらに、
    第1排他的ORゲート(370)を有するイネーブル回路(286)を備えることを含み、
    それによって、ハイ、ロー、線形、およびジッタなしの不感帯(175)の4つの安定出力状態を有する位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項4に記載の方法。
  15. 第1信号(118)および第2信号(120)と、
    極性信号(307)入力、および、シングルエンド型チャージポンプ(188)をイネーブルするためのイネーブル信号(305)を受けるシングルエンド型チャージポンプ(188)と、を有し、
    前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して先行しているとき、前記極性信号(307)は第1位相周波数検出回路(280)の第1出力信号であるとともに、前記イネーブル信号(305)は前記第1位相周波数検出回路(280)の第2出力信号であり、
    前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して遅延しているとき、前記極性信号(307)は第2相補位相周波数検出回路(282)の第1出力信号であるとともに、前記イネーブル信号(305)は前記第2相補位相周波数検出回路(282)の第2出力信号である、信号間の位相周波数到達時間の差分を検出するための回路。
  16. 前記第1位相周波数検出回路(280)は、シングルエンド型チャージポンプを駆動できる位相周波数検出回路を提供するように接続された、第1基準フリップフロップ(122)、第1VCOフリップフロップ(124)、および第1AND論理ゲート(126)を含み、
    前記第2相補位相周波数検出回路(282)は、シングルエンド型チャージポンプを駆動できる位相周波数検出回路を提供するように構成された、反転出力を生成する第2基準フリップフロップ(220)、反転出力を生成する第2VCOフリップフロップ(218)、および第2AND論理ゲート(222)を含む、請求項15に記載の回路。
  17. 前記第1位相周波数検出回路(280)の前記第1出力信号は、前記第1基準フリップフロップ(122)の出力信号であり、
    前記第2相補位相周波数検出回路(282)の前記第1出力信号は、前記第2VCOフリップフロップ(218)の反転出力信号である、請求項16に記載の回路。
  18. 第3ANDゲート(234)および第1ORゲート(236)を有する極性選択回路(284)をさらに含み、
    前記第3ANDゲート(234)からの出力は、前記第1ORゲート(236)に入力を供給する、請求項17に記載の回路。
  19. 第3ORゲート(244)を有するイネーブル回路(286)をさらに含む、請求項18に記載の回路。
  20. 反転入力を備えた第4ANDゲート(240)、第5ANDゲート(242)、および第3ORゲート(244)を有するイネーブル回路(286)をさらに含む、請求項18に記載の回路。
  21. 前記第1基準フリップフロップ(122)および前記第1VCOフリップフロップ(124)の出力信号を入力とし、出力が前記イネーブル回路(286)への入力となる第1排他的ORゲート(210)と、
    前記第2基準フリップフロップ(220)および前記第2VCOフリップフロップ(218)の反転出力を入力とし、出力が前記イネーブル回路(286)への入力となる第2排他的ORゲート(224)と、をさらに含み、
    それによって、ハイ、ロー、線形、およびジッタなしの不感帯175の4つの安定出力状態を有する位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項20に記載の回路。
  22. 前記第1VCOフリップフロップ(124)の出力は、第1イネーブル信号抑制器(317)を経由して前記イネーブル回路(286)に入力として供給され、
    前記第2基準フリップフロップ(220)からの反転出力は、第2イネーブル信号抑制器(316)を経由して前記イネーブル回路(286)に入力として供給され、
    前記第1基準フリップフロップ(122)の出力信号は、第1および第2インバータ(346,348)を経由して前記極性選択回路(284)に入力信号として供給され、
    前記第2VCOフリップフロップ(218)の反転出力信号は、第3および第4インバータ(346,348)を経由して前記極性選択回路(284)に入力信号として供給され、
    それによって、ハイおよびローの2つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を備える、請求項19に記載の回路。
  23. 前記第1基準フリップフロップ(122)および前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力を入力とし、出力が前記イネーブル回路(286)への入力となる第4ORゲート(360)と、
    前記第2基準フリップフロップ(220)および前記第2VCOフリップフロップ(218)からの反転出力を入力とし、出力が前記イネーブル回路(286)への入力となる、反転入力付き第5ORゲート(298)と、をさらに含み、かつ、
    前記第1基準フリップフロップ(122)の出力信号を入力信号とし、出力が前記極性選択回路(284)の出力とともに用いられて前記最終極性307を供給する第1抑制器(317)と、
    前記第2VCOフリップフロップ(218)の出力信号を入力信号とし、出力が前記極性選択回路(284)の出力信号とともに用いられて前記最終極性307を供給する第2抑制器(316)と、をさらに含み、
    それによって、ハイ、ロー、および線形領域の3つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を備える、請求項19に記載の回路。
  24. 第1ORゲート(368)を有する極性選択回路(284)と、
    第1排他的ORゲート(370)を有するイネーブル回路(286)と、をさらに含み、
    それによって、ハイ、ロー、線形、およびジッタなしの不感帯175の4つの安定出力状態を有する位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項17に記載の回路。
  25. 第1信号(118)および第2信号(120)を受け付ける手段と、
    前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して先行しているとき、極性信号(307)が第1位相周波数検出回路(280)の出力信号になり、前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して遅延しているとき、第2相補位相周波数検出回路(282)の出力信号になるように、極性信号(307)をシングルエンド型チャージポンプ(188)に供給する手段と、
    前記シングルエンド型チャージポンプをイネーブルするために、前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して先行しているとき、イネーブル信号(305)が前記第1位相周波数検出回路(280)の第2出力信号になり、前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して遅延しているとき、前記第2相補位相周波数検出回路(282)の第2出力になるように、イネーブル信号(305)を生成する手段と、
    を含む、信号間の位相周波数到達時間の差分を検出するためのシステム。
  26. 前記第1位相周波数検出回路(280)は、シングルエンド型チャージポンプを駆動できる位相周波数検出回路を提供するように構成された、第1基準フリップフロップ(122)、第1VCOフリップフロップ(124)、および第1AND論理ゲート(126)を含み、
    前記第2相補位相周波数検出回路(282)は、シングルエンド型チャージポンプを駆動できる位相周波数検出回路を提供するように構成された、反転出力を生成する第2基準フリップフロップ(220)、反転出力を生成する第2VCOフリップフロップ(218)、および第2AND論理ゲート(222)を含む、請求項25に記載のシステム。
  27. 前記極性信号(307)を供給する手段はさらに、
    前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して先行しているとき、前記第1基準フリップフロップ(122)の出力信号を選択する手段と、
    前記第1信号(118)が前記第2信号(120)に対して遅延しているとき、前記第2VCOフリップフロップ(218)の反転出力信号を選択する手段と、
    を含む、請求項26に記載のシステム。
  28. 前記極性信号307を供給する手段は、
    第3ANDゲート(24)および第3ORゲート(236)を有する極性選択回路(284)を含み、
    前記第3ANDゲート(234)の出力は、前記第3ORゲート(236)に入力を供給する、請求項27に記載のシステム。
  29. 前記イネーブル信号(305)を生成する手段は、
    第4ORゲート(244)を有するイネーブル回路(286)を含む、請求項28に記載のシステム。
  30. 前記イネーブル信号(305)を生成する手段は、
    第4ANDゲート(240)、第5ANDゲート(242)、および第4ORゲート(244)を有するイネーブル回路(286)を含む、請求項28に記載のシステム。
  31. 前記イネーブル信号(305)を生成する手段はさらに、
    前記第1基準フリップフロップ(122)および前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力を入力とし、出力が前記イネーブル回路(286)への入力となる第1排他的ORゲート(210)と、
    前記第2基準フリップフロップ(122)および前記第2VCOフリップフロップ(124)からの反転出力を入力とし、出力が前記イネーブル回路(286)への入力となる第2排他的ORゲート(224)と、を含み、
    それによって、ハイ、ロー、線形、およびジッタなしの不感帯の4つの安定出力状態を有する位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項30に記載のシステム。
  32. 前記イネーブル信号(305)を生成する手段はさらに、
    前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力を、前記イネーブル回路(286)への入力とし、前記第2基準フリップフロップ(220)からの反転出力を前記イネーブル回路(286)への入力とすることを含み、
    それによって、ハイ、ローの2つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項30に記載のシステム。
  33. 前記イネーブル信号(305)を生成する手段はさらに、
    前記第1VCOフリップフロップ(124)の出力を、第1イネーブル信号抑制器手段(317)への入力として、かつ、前記第2基準フリップフロップ(220)からの反転出力を、前記第2イネーブル信号抑制器手段(316)への入力として含み、
    前記最終極性信号(307)を選択する手段はさらに、
    前記第1基準フリップフロップ(122)の前記出力信号を、第1および第2反転手段(346,348)を経由して前記極性を選択する手段(284)に供給される入力信号とし、前記第2VCOフリップフロップ(218)の出力信号を、第3および第4反転手段(350,352)を経由して前記極性を選択する手段(284)に供給される入力信号とすることを含み、
    それによって、ハイ、ロー、および線形領域の3つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項30に記載のシステム。
  34. 前記イネーブル信号(305)を生成する手段はさらに、
    前記第1基準フリップフロップ(122)および前記第1VCOフリップフロップ(124)からの出力を入力とし、出力が前記イネーブル回路(286)への入力となる第4ORゲート(360)と、
    前記第2基準フリップフロップ(220)および前記第2VCOフリップフロップ(218)からの反転出力を入力とし、出力が前記イネーブル回路(286)への入力となる、反転入力付き第5ORゲート(298)と、を含み、
    前記極性信号(307)を選択する手段はさらに、
    前記第1基準フリップフロップ(122)の出力信号を入力信号とし、出力が前記極性選択回路(284)の出力とともに用いられて前記最終極性307を供給する第1抑制器(317)と、
    前記第2VCOフリップフロップ(218)の出力信号を入力信号とし、出力が前記極性選択回路(284)の出力信号とともに用いられて前記最終極性307を供給する第2抑制器(316)と、を含み、
    それによって、ハイ、ロー、および線形領域の3つのみの安定出力状態を有し、不感帯を有しない位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項30に記載のシステム。
  35. 前記極性信号(307)を選択する手段はさらに、
    第1ORゲート(368)を有する極性選択回路(284)を含み、
    前記シングルエンド型チャージポンプをイネーブル(305)する手段はさらに、
    第1排他的ORゲート(370)を有するイネーブル回路(286)を含み、
    それによって、ハイ、ロー、線形、およびジッタなしの不感帯(175)の4つの安定出力状態を有する位相周波数到達時間の検出器を提供する、請求項29に記載のシステム。
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