(4.発明の詳細な説明)
本発明のポリペプチドを図1に表し、以下に詳細を述べる。
配列番号3のSCFA2ポリペプチドは、非グリコシル化推定分子量約27kDaの約243アミノ酸のタンパク質である。最初のメチオニンは配列番号2の262の位置で開始し、推定終止コドンは、配列番号2の991の位置で始まる。BLASTアルゴリズム(参照して本明細書に組み入れる、Altschul S.F.et al.,J.Mol.Evol.36:290-300(1993)およびAltschul S.F.et al.,J.Mol.Biol.21:403-10(1990))でのタンパク質データベース検索は、配列番号3がXenopus laevisのR-スポンジン2(配列番号49)(受入番号:AAV31037.1;gi54145368)と相同であることを示している。
配列番号3の残基、約1から22に、約22アミノ酸残基の推定上のシグナルペプチドがコードされている。細胞外部分はそのままで有効である。シグナルペプチド領域は、Neural Network Signal P VI.Iプログラム(参照して本明細書に組み入れる、Nielsenら、Int.J.Neural Syst.8:581-599(1997))および/またはNeural Network Signal P V1.1プログラム(Nielsen et al.(1997),Int.J.Neural Syst.8:581-599)を用いて予測した。当業者は、実際の開裂部位はコンピュータープログラムで予測したものと異なる可能性があることを認めるだろう。配列番号6は、配列番号3のSCFA2ポリペプチドのシグナルペプチドを欠いたものであり、つまり配列番号6は、SCFA2(配列番号3)の主要成熟型である。SCFA2は、配列番号3のアミノ酸32と33の間に推定上のフューリンのプロテアーゼ開裂部位を含む。従って、シグナルペプチドを欠いた主要成熟型(配列番号6)、および、シグナルペプチドと配列番号3のアミノ酸33とアミノ酸38の間のアミノ酸残基を欠いた成熟型(配列番号8)のSCFA2の二つの型が存在する可能性がある。本明細書でSCFA2ΔC(配列番号51)と示されるC末端の37アミノ酸(配列番号3の207から243の残基)の欠失は、本明細書にSCFA2△C(配列番号51)として示されるように生物活性に全く変化を及ぼさずにSCFA2の分泌増加をもたらす(Kazanskayaら、Dev.Cell 7:525-534(2004))。
配列番号14のSCFA4ポリペプチドは、非グリコシル化推定分子量が約26kDaの約234アミノ酸のタンパク質である。最初のメチオニンは配列番号13の101の位置で開始し、推定終止コドンは、配列番号13の803の位置で始まる。SCFA4の変形であるSCFA4v(配列番号23)は、SCFA4vはTSP1ドメインを欠いているという点以外はSCFA4と同一である。SCFA4vは、非グリコシル化推定分子量が約19kDaの約172アミノ酸のタンパク質である。最初のメチオニンは配列番号23の101の位置で開始し、推定終止コドンは、配列番号23の667の位置で始まる。BLASTアルゴリズム(参照して本明細書に組み入れる、Altschul S.F.et al.,J.Mol.Evol.36:290-300(1993)およびAltschul S.F.et al.,J.Mol.Biol.21:403-10(1990))でのタンパク質データベース検索は、配列番号14がマウスのトロンボスポンジン1型ドメインタンパク質R-スポンジン(配列番号48)(受入番号:CAB65783.3;gi14627121)に類似したヒトの新規タンパク質dJ824F16.3と同一であることを示している。またSCFA4vは、配列番号48のヒトR-スポンジンタンパク質と相同で、69%の同一性を共有する(図2)。
配列番号14および配列番号23の残基、約1から20に、約23アミノ酸残基の推定上のシグナルペプチドがコードされている。シグナルペプチド領域は、Neural Network Signal P V1.1プログラム(参照して本明細書に組み入れる、Nielsenら、Int.J.Neural Syst.8:581-599(1997))を用いて予測した。当業者は、実際の開裂部位はコンピュータープログラムで予測したものと異なる可能性があることを認めるだろう。配列番号17は、配列番号14のSCFA4ポリペプチドのシグナルペプチドを欠いたものであり、配列番号26は、配列番号23のSCFA4vポリペプチドのシグナルペプチドを欠いたものである。SCFA2と異なり、SCFA4およびSCFA4vは推定上のフューリンのプロテアーゼ開裂部位を含まない(Kazanskayaら、Dev.Cell 7:521-534(2004))。従って、それぞれ主要成熟型である配列番号17および配列番号26のSCFA4およびSCFA4vの一つの型が存在する可能性がある。
Pfamソフトウェアプログラム(参照して本明細書に組み入れる、Sonnhammerら、Nucleic Acids Res.,Vol.26(1) pp.320-322(1998))を用いて、SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vポリペプチド(それぞれ、配列番号3、14、23)の既知のペプチドドメインとの相同性を調査した。それぞれSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vポリペプチドは、二つのフューリン様ドメインを含む。SCFA2のフューリン様ドメインは、配列番号9のポリヌクレオチドでコードされ、ポリペプチドは配列番号3のアミノ酸39から85とアミノ酸91-132にわたる。SCFA4、およびSCFA4vの二つのフューリン様ドメインは同一である。配列番号19に含まれるドメインは、配列番号18のポリヌクレオチドでコードされる。SCFA4、およびSCFA4vの最初のフューリンドメインはぞれぞれの全長配列のアミノ酸34から79にわたり、二つめはアミノ酸85-126にわたる。これらのフューリン様ドメインは、受容体チロシンキナーゼを介したシグナル伝達に関わる様々な真核細胞のタンパク質に見いだされてきた(Razら、Genetics 129:191-201(1991))。従って、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vのフューリン様システインリッチドメインは、腸上皮の増殖に影響する可能性がある。
それぞれ配列番号3および14のSCFA2およびSCFA4ポリペプチドは、それぞれ配列番号11および20のヌクレオチド配列でコードされるトロンボスポンジン1型(TSP1)(それぞれ配列番号12および21)を有すると期待される。配列番号3に含まれるトロンボスポンジン1型は、アミノ酸残基147から203であると予測され、また配列番号14のTSP1は、アミノ酸残基141から195であると予測される。SCFA4vはTSP1ドメインを欠いている。
トロンボスポンジンは、細胞-細胞、および細胞-マトリックスのコミュニケーションに関わる細胞外マトリックスタンパク質のファミリーである(Lawlerら、Curr.Opin.Cell Bio.12:634-640(2000))。組織分布パターンが相異なる5つ以上の異なるトロンボスポンジンが知られている。心臓、軟骨、および脳といった一部の組織は最も多くトロンボスポンジン遺伝子産物を発現する。トロンボスポンジン-1は、血小板の主要成分である。トロンボスポンジン-1は、細胞表面で膜タンパク質とサイトカイン、およびその他の可溶性因子をとりまとめるように機能するようである。トロンボスポンジン-1に結合する膜タンパク質には、インテグリン、インテグリン関連タンパク質(CD47)、CD36、およびプロテオグリカンなどがある。形質転換成長因子β(TGFβ)および血小板由来成長因子もトロンボスポンジン-1に結合する。
トロンボスポンジン-1は、多くの異なるドメインを持つ大きなタンパク質である。アミノ末端とカルボキシ末端の両方に球状ドメイン、プロコラーゲンと相同性がある領域、およびトロンボスポンジン(TSP)1型、2型、および3型と呼ばれる3種類の反復配列モチーフを含む。TSP1反復は、補体成分(C6、C7、C8Aなど)、細胞外マトリックスタンパク質様ADAMTS、mindin、軸索ガイダンス分子様F-スポンジンセマフォリンとSCO-スポンジン、およびマラリア原虫のTRAPタンパク質などの様々な異なるタンパク質に見いだされてきた。
トロンボスポンジン1型反復は、細胞の増殖、分化、接着、遊走、および細胞死の調節に関与するTGFβ上皮組織を活性化することができる。TSP1は更にタンパク質結合、ヘパリン結合、細胞接着、神経突起伸長、増殖阻害、血管新生阻害、およびアポトーシスの活性化に関わっている。熱帯マラリアスポロゾイト(CS)タンパク質のTSP1ドメインとTRAPタンパク質は、胞子虫体による唾液腺侵入に関係すると考えられている。
TSP1の配列は、保存されたシステイン、近接して間隔をあけたトリプトファン、および塩基性残基の集団によって特徴付けられる。TSP-1配列の空間配置は、ヘパリンと結合することが示されている二つのβシートドメインを示す(参照して本明細書に組み入れる、Kilpelainenら、(2000) J.Biol Chem.275,13564-13570)。同様の空間的折りたたみが、ヘパリン結合性成長関連分子(HB-GAM)で記述されてきた。HB-GAMは、分裂促進および神経突起伸長促進タンパク質のプレイオトロフィン、骨芽細胞特異的因子-1、ヘパリン結合性神経栄養因子、およびヘパリン親和性調節ペプチドと同一である。HB-GAMの発現は、軸索路およびシナプスの細胞外マトリックス、また脳の外側の基底膜および軟骨マトリックスと関連していることが示された。近年、N-シンデカンが脳におけるHB-GAMの受容体であることが示され、記憶と学習に関連していると考えられる脳の可塑性の形成である海馬長期増強の調節に役割を果たしていることが示唆された。従って、TSP1を含むタンパク質は、成長助触媒として作用する可能性があり、またSCFA2、SCFA4もしくはSCFA4v活性を示す可能性がある。
更に、骨髄で合成されて細胞外マトリックス中に蓄積されるトロンボスポンジンは、一次多能性前駆細胞、および赤血球、顆粒球、および巨核球系統にコミットした造血前駆細胞の細胞接着分子として機能する。従って、トロンボスポンジンは、血球細胞の発生に重要である可能性がある(参照して本明細書に組み入れる、Long and Dixit(1990) Blood 75,2311-2318)。
本発明のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドとポリヌクレオチドは、消化管腺窩細胞の増殖もしくは分化の誘導に利用されてもよい。また、上皮形成が必要な状態の治療、例えば化学療法及び放射線療法で誘導された粘膜炎、中咽頭、唇、および食道の粘膜炎、炎症性腸疾患などの消化管障害、ならびに、創傷、熱傷、眼科疾患などのその他の状態、および上皮細胞の増殖もしくは再生の刺激が望まれる任意の障害の治療に用いてもよい。本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドは、移植組織が必要な患者を補助することもできる新しい組織と臓器の作製に更に利用してもよい。
(4.1 定義)
本発明で述べる場合、以下の用語を用い、また以下に示して定義されるよう意図する。
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いるように、単数形の「一つの(a)」「一つの(an)」および「その(the)」は、文脈で明確に別に指示しない限りは複数を含む点に留意しなければならない。
本発明に従い、「SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質」もしくは「SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチド」は、アミノ酸Met1からAla243(配列番号3)、Met1からAla234(配列番号14)、およびMet1からAla172の断片、およびそのアナログと定義される全長のタンパク質を意味する。
本明細書で用いる場合「全長のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v」、「野生型のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v」、または「天然のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v」という語は全て、243、234、および172アミノ酸残基を含むポリペプチド(それぞれ、配列番号3、14、および23)を意味する。
「断片」という語は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの全体の配列を含まない天然のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vに由来するポリペプチドを意味する。該断片は、例えば、内部が欠失したポリペプチドである配列番号8のような、全長の分子の切断型である可能性がある。SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v断片は、本明細書で述べるように、インビトロおよび/またはインビボでの上皮細胞の増殖に対するSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの効果により決定されるSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの生物活性を有する場合がある。
「アナログ」という語は、参照分子の派生物を意味する。アナログは、上述のように生物活性を保持する場合もある。一般的に「アナログ」という語は、修飾が活性を破壊しない限りは、天然の分子に対して一つ以上のアミノ酸の添加、置換(一般的に、性質は保存的)、及び/または欠失がある天然のポリペプチド配列と構造を有する化合物を意味する。望ましくは、アナログは少なくとも親分子と同じ生物活性を有し、また親分子以上に強化された活性を示す場合さえある。ポリペプチドアナログ作製の方法は当業者に知られている。特に好適なアナログは、自然界において保存的な置換を含む、つまり、側鎖で関連するアミノ酸ファミリー内で行われる置換を含む。具体的に述べると、アミノ酸は一般的に、(1)酸性アミノ酸:アスパラギン酸、グルタミン酸、(2)塩基性アミノ酸:リジン、アルギニン、ヒスチジン、(3)非極性アミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、および(4)非荷電極性アミノ酸:グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンの4ファミリーに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは場合によっては芳香族アミノ酸に分類される。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンとの単独の置換、アスパラギン酸のグルタミン酸との単独の置換、スレオニンのセリンとの単独の置換、または同様の構造的に関連したアミノ酸との保存的なアミノ酸置換は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの生物活性を保存するだろうことが合理的に予測可能である。
関心の活性を損なわずにどのアミノ酸残基を置換、追加、もしくは欠失してよいかの決定の指針は、特定のペプチドの配列を相同のペプチドと比較することによって、また高度の相同性がある領域(保存領域)内のアミノ酸配列変化の数を最小限にすることによって、あるいはコンセンサス配列でアミノ酸を置換することで見いだされる可能性がある。
あるいは、これらの同一もしくは類似のポリペプチドをコードする組み換えアナログを遺伝暗号の「重複性」を利用して作製することによって、合成もしくは選択してもよい。様々な制限部位を作り出すサイレント変化など、様々なコドン置換がプラスミドもしくはウイルスベクターへのクローニングを最適化するために、あるいは特定の原核細胞系または真核細胞系での発現を最適するために導入してもよい。ポリペプチド配列における変異は、リガンド結合親和性、鎖間親和性、もしくは分解/回転速度といった特性を変化させるため、ポリペプチドの任意の部分の性質を改変するためにポリペプチドに追加したポリペプチド、もしくはその他のペプチドドメインに反映される場合がある。
望ましくは、アミノ酸「置換」は一つのアミノ酸の類似した構造および/または化学的特性を有する別のアミノ酸との置換、つまり保存的アミノ酸置換の結果である。「保存的」アミノ酸置換は、関与する残基の極性、荷電、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行われる可能性がある。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸はアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含み、極性中性アミノ酸はグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含み、陽性に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、およびヒスチジンを含み、陰性に荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸とグルタミン酸を含む。「挿入」もしくは「欠失」は、望ましくは1から20アミノ酸の範囲であり、より望ましくは1から10アミノ酸の範囲である。許容される変化は、DNA組み換え技術を用いてポリペプチド分子内に系統的にアミノ酸の挿入、欠失、もしくは置換を作出して、結果として得られる組み換え変異体の活性をアッセイすることで実験的に決定してもよい。
あるいは、機能の改変が望まれる場合には、改変されたポリペプチドを作り出すために挿入、除去、もしくは非保存的な改変を行なってもよい。該改変は、例えば本発明のポリペプチドの一つ以上の生物機能もしくは生化学的特性を変化させてもよい。例えば、該改変は、リガンド結合親和性、鎖間親和性、もしくは分解/回転速度といったポリペプチドの特性を変化させてもよい。更に、該改変は、発現のために選択した宿主細胞内での発現のスケールアップなど、発現により適したポリペプチドを作製するために選択してもよい。例えば、システイン残基は、ジスルフィド架橋を除去するために除去、もしくは別のアミノ酸残基に置換してもよい。
「誘導体」という語は、ユビキチン化、標識化(例えば、放射性核種もしくは様々な酵素)、ペグ化(ポリエチレングリコールでの誘導体化)などの共有的ポリマー結合、および挿入、もしくは通常ヒトタンパク質には生じないオルニチンなどのアミノ酸の化学合成による置換などの手法によって化学的に修飾されたポリペプチドを意味する。
「ポリペプチド」および「タンパク質」という語は、アミノ酸残基のポリマーを意味するが産物の最低長に限定されない。この用語は、別に示されない限り、例えば、グリコシル化、アセチル化、およびリン酸化などの、アミノ酸配列を変化させないポリペプチドの修飾も含む。本発明の目的のために、ポリペプチドもしくはタンパク質は天然の供給源から単離するだけでなく、合成もしくは組み換えによって作製してもよい。
ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを指す場合、「精製した」および「単離した」とは、示した分子が実質的に他の同じ種類の生物的高分子を含まずに存在することを意味する。本明細書で用いる場合、「精製した」という語は、重量で75%以上、より望ましくは重量で85%以上、更により望ましくは重量で95%以上、最も望ましくは重量で98%以上の同じ種類の生物的高分子が試料中に存在していることを意味する。ある実施態様では、ポリヌクレオチドもしくはプリペプチドは、水、緩衝液およびその他の小分子、特に1000ダルトン未満の分子量の分子を除いて、示された生物的高分子が重量で95%以上を構成して存在するように精製する。
「特定のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド」とは、対象のポリペプチドをコードしないその他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を意味するが、その分子は組成物の基本的な特性に有害に影響しない、いくつかの追加塩基もしくは部分を含んでもよい。
「天然に生じるポリペプチド」とは、遺伝的に操作されていない細胞によって産生されたポリペプチドを意味し、特に、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化などを含むがそれに限定されないポリペプチドの翻訳後修飾から生じた様々なポリペプチドを意図する。
「翻訳されたタンパク質をコードする部分」という語は、任意のリーダー配列もしくは切り出し配列を含む可能性がある全長タンパク質をコードする配列を意味する。
「主要成熟タンパク質をコードする配列」という語は、リーダー配列/シグナル配列を全く含まないペプチドもしくはタンパク質をコードする配列を意味する。「主要成熟タンパク質部分」は、リーダー配列/シグナル配列を含まないタンパク質の部分を表す。「成熟」型とは、リーダー配列/シグナル配列とフューリン開裂部位の配列を欠くSCFA2ポリペプチドを意味する。該ペプチドはリーダー配列および/またはフューリン開裂部位が細胞内でプロセッシングの間に除去されてもよく、または、タンパク質は合成的に、もしくは成熟タンパク質をコードする配列のみをコードするポリヌクレオチドを用いて作製してもよい。成熟タンパク質部分もしくは主要成熟タンパク質部分は、開始メチオニン残基を含んでも含まなくてもよいことが予期される。開始メチオニンはペプチドのプロセッシングの間にしばしば除去される。
本明細書で用いる場合「単離した」という語は、核酸もしくはポリペプチドと共にその天然の供給源中に存在する少なくとも一つの別の構成要素(例えば核酸もしくはポリペプチド)から分離された核酸もしくはポリペプチドを意味する。ある実施態様では、核酸もしくはポリペプチドは(たとえ何か存在するとしても)、溶媒、緩衝液、イオン、もしくは通常の同溶液中に存在するその他の構成要素のみが存在する状態で見いだされる。「単離した」および「精製した」という語は、天然の供給源中に存在する核酸もしくはポリペプチドは含まない。
本明細書で用いる場合「組み換え」という語は、ポリペプチドもしくはタンパク質を表し、ポリペプチドもしくはタンパク質が組み換え(例えば、微生物、昆虫もしくは哺乳動物の)発現システムに由来することを意味する。「微生物の」とは、細菌もしくは真菌(例えば、酵母)の発現システムにおいて作られた組み換えポリペプチドもしくはタンパク質を表す。結果として、「組み換え微生物の」とは、基本的に自然の内因性物質を含まず、また自然のグリコシル化を伴わないポリペプチドもしくはタンパク質を定義する。例えば大腸菌のような大部分の細菌培養中で発現されたポリペプチドもしくはタンパク質は、グリコシル化修飾を含まないだろうし、酵母で発現されたポリペプチドもしくはタンパク質は哺乳動物細胞で発現されたものとは一般的に異なるグリコシル化パターンを有するだろう。
「組み換えポリペプチド」とは、本明細書で記載のようになDNA組み換え技術によって調製したポリペプチドを意図している。一般的に、目的のポリペプチドをコードする遺伝子は、更に先で述べるように、クローニングした後に形質転換された生物で発現される。宿主生物は、発現条件下でポリペプチドを産生するために外来遺伝子を発現する。あるいは、組み換えポリペプチドを発現するために、内在性ポリペプチドの発現を制御しているプロモーターを変更してもよい。
「活性」という語は、自然に生じた任意のポリペプチドの生物活性および/または免疫活性を保持するポリペプチドの形を示す。本発明に照らすと、「生物学的に活性」もしくは「生物学的活性」という語は、自然に生じた分子の構造、調節機能、もしくは生化学的機能を有するタンパク質もしくはペプチドを示す。同様に、「生物学的に活性」もしくは「生物学的活性」とは、天然、組み換え、もしくは合成のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vペプチド、もしくはその任意のペプチドの適切な動物もしくは細胞での特異的な生物反応および特異的な抗体との結合を誘導する機能を意味する。
「分泌される」という語は、適切は宿主細胞で発現された場合にそのアミノ酸配列においてシグナル配列の結果としての輸送を含む、膜を越えて、もしくは通じて輸送されるタンパク質を含む。「分泌された」タンパク質は、発現された細胞から全体的に(例えば、可溶性タンパク質)、もしくは部分的に(例えば、受容体)分泌されるタンパク質を限定なしに含む。また「分泌された」タンパク質は、小胞体の膜を越えて輸送されるタンパク質も限定なしに含む。また「分泌された」タンパク質は、非典型的なシグナル配列(例えば、インターロイキン-1β、Krasney,P.A.and Young,P.R.(1992) Cytokine 4(2):134-143を参照)、および損傷を受けた細胞から放出される因子(例えば、インターロイキン-1受容体拮抗剤、Arend,W.P.et al.,(1998) Annu.Rev.Immunol.16:27-55を参照)を含むタンパク質も含むことを意図している。
本明細書中で使われれる場合「ポリヌクレオチド」もしくは「核酸分子」という語は、任意の長さのリボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドの多量体型を表す。この用語は、分子の一次構造のみを表し、従って、二本鎖と一本鎖のDNAおよびRNAを含む。また、既知の種類の修飾、例えば、当業者に知られた標識、メチル化、「キャップ」、天然に生じる一つ以上のヌクレオチドのアナログでの置換、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホン酸、ホスホトリエステル、ホスホアミド、カルバメートなど)および荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)での修飾といったヌクレオチド間修飾、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなどを含む)などといった懸垂部分を含む修飾、干渉物質(例えば、アクリジン、ソラレンなど)での修飾、キレート(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含む修飾、アルキル化剤を含む修飾、修飾された結合(例えば、αアノマー核酸など)での修飾、また修飾されていないポリヌクレオチドも含む。一般的に、本発明で提供される核酸断片は、細菌オペロンもしくはウイルスオペロン由来の調節因子または真核生物の遺伝子を含む組み換え転写単位で発現可能な合成核酸をもたらすために、ゲノム断片と短いオリゴヌクレオチドリンカーから、あるいは一連のオリゴヌクレオチドから、あるいは個別のヌクレオチドから組み立ててもよい。
「オリゴヌクレオチド断片」もしくは「ポリヌクレオチド断片」もしくは「部分」もしくは「断片」もしくは「プローブ」もしくは「プライマー」という語は、相互に置き換え可能で用いられ、少なくとも約5ヌクレオチドの、より望ましくは少なくとも約7ヌクレオチドの、より望ましくは少なくとも約9ヌクレオチドの、より望ましくは少なくとも約11ヌクレオチドの、最も望ましくは少なくとも約17ヌクレオチドのヌクレオチド残基の配列を表す。断片は、望ましくは約500ヌクレオチド未満であり、望ましくは約200ヌクレオチド未満であり、より望ましくは約100ヌクレオチド未満であり、より望ましくは約50ヌクレオチド未満であり、もっとも望ましくは約30ヌクレオチド未満である。望ましくは、プローブは約6ヌクレオチドから約200ヌクレオチドであり、望ましくは約15から約50ヌクレオチドであり、より望ましくは約17から約30ヌクレオチドであり、もっとも望ましくは約20から25ヌクレオチドである。望ましくは断片は、同一もしくは関連するmRNAもしくはDNA分子の一部を同定もしくは増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、様々なハイブリダイゼーション方法もしくはマイクロアレイ手法に用いてもよい。断片もしくは切片は、本発明の各ポリヌクレオチド配列を独自に同定してもよい。望ましくは、断片は配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の部分に実質的に類似した配列を含む。
プローブは、例えば、特異的mRNA分子が細胞もしくは組織内に存在するかどうかの決定、または、Walsh et al.(Walsh,P.S.et al.,1992,PCR Methods Appl 1:241-250)が述べたように、染色体DNAから類似の核酸配列を単離するために用いてもよい。プローブは、ニックトランスレーション法、Klenow fill-in反応、PCR、もしくは当業者に知られるその他の方法で標識してもよい。本発明のプローブは、その調製および/または標識は、両方を全体を参照して本明細書に組み入れる、Sambrook,J.et al.,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lboratory,NY、または、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York NYに詳しく説明されている。
本発明の核酸配列は、配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の任意の核酸配列からの配列情報も含む。配列情報は、独自に同定する、または、配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の配列情報を表す、配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の切片であってもよい。20塩基長が完全に一致する確率はヒトゲノムにおいて300分の1であるため、前述の切片の一つは20塩基長の核酸配列であってもよい。ヒトゲノムにおいて、1セットの染色体には30億塩基対がある。考えられる20塩基は420通り存在するため、ヒト染色体1セット中の塩基対の300倍の20塩基がある。同じ分析を用いると、ヒトゲノムで17塩基長が完全一致する確率は、約5分の1である。これらの切片を発現研究のアレイに用いる場合、15塩基長の切片が用いられる。発現された配列はゲノム配列全体の約5%未満を含むので、発現された配列中で15塩基長が完全一致する確率も、約5分の1である。
同様に、ミスマッチ1箇所の配列の検出のために配列情報を用いる場合、切片は25塩基長である。25塩基がヒトゲノム中にミスマッチ1箇所で出現する確率は、完全一致の確率(1÷425)に各ヌクレオチドの位置でのミスマッチの確率の上昇(3x25)を掛けることで計算される。発現研究のアレイで18塩基がミスマッチ1箇所で検出可能な確率は、約5分の1である。ヒトゲノム中において20塩基長でミスマッチ1箇所を検出可能な確率は、約5分の1である。
「オープン・リーディング・フレーム(ORF)」という語は、終止コドンを含まないアミノ酸をコードするヌクレオチドの一連のトリプレットがタンパク質に翻訳可能な配列であることを意味する。
「動作可能な状態で連結する」もしくは「動作可能な状態で結びついた」という語は、機能的に関連する核酸配列を示す。例えば、プロモーターがコード配列の転写を制御している場合、プロモーターはコード配列と動作可能な状態で結びついて、もしくは動作可能な状態で連結している。動作可能な状態で連結した核酸配列は隣接して、同一リーディング・フレーム内にある可能性があるが、例えば抑制遺伝子といった特定の遺伝要素はコード配列に隣接して連結されていないが、依然、コード配列の転写と翻訳を制御している。
本明細書で用いる場合、「組み換えDNA分子」もしくは「組み換えポリヌクレオチド」という語は、ゲノム、cDNA、半合成、もしくは合成由来のポリヌクレオチドを示し、その由来もしくは操作のために、(1)自然に関連したポリヌクレオチドの全体もしくは一部と関連せず、(2)自然に関連したポリヌクレオチド以外のその他のポリヌクレオチドと関連し、もしくは(3)自然には生じない。従って、この語は「合成由来の」核酸分子を含む。
「相補的」もしくは「相補性」という語は、塩基対形成によるポリヌクレオチドの自然の結合示す。例えば、配列5’-AGT-3'は相補的な配列3’-TCA-5'と結合する。二つの1本鎖分子の間の相補性は、一部の核酸のみが結合するような「部分的」相補であってもよく、もしくは一本鎖分子の間に全ての相補が存在するような「完全」相補であってもよい。核酸鎖の間の相補性の程度は、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率と強度に著しく影響する。
「厳密な」という語は、当業者が厳密であると一般的に理解している条件を意味するために用いる。厳密な条件は、高度に厳密な条件(つまり、フィルターに結合したDNAへの0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中で65℃でのハイブリダイゼーションと0.1xSSC/0.1% SDS中で68℃での洗浄。)と中程度に厳密な条件(つまり、0.2xSSC/0.1% SDS中で42℃での洗浄。)を含んでもよい。その他の典型的なハイブリダイゼーション条件は、本明細書の実施例で述べている。
デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの例として、典型的な追加の厳密なハイブリダイゼーション条件は、6xSSC/0.05%リン酸ナトリウム中での37℃(14塩基長のオリゴヌクレオチド用)、48℃(17塩基長のオリゴヌクレオチド用)、55℃(20塩基長のオリゴヌクレオチド用)、60℃(23塩基長のオリゴヌクレオチド用)での洗浄を含む。
本明細書で用いる場合「実質的に同等」とは、例えば変異配列といった、一つ以上の置換、欠失、もしくは追加によって基準の配列と異なり、その最終的な影響は基準配列と対象配列の間に不都合な機能の相違を引き起こさない、ヌクレオチドとアミノ酸配列の両方を示す可能性がある。一般的には、該実質的に同等の配列が、本明細書に列挙した配列の一つと異なるのは35%未満である(つまり、相当する基準配列と比較して、実質的に同等な配列中の個別の残基の置換、追加、および/または欠失の数を実質的に同等の配列中の残基の総数で割ったものは、約0.35未満である)。前記の配列は、リストに掲載した配列に対して65%の配列の相同性を有すると言われる。ある実施態様において、実質的に同等な本発明の、例えば変異配列は、リストに記載した配列に対して30%未満異なり(70%配列が同一)、この実施態様の変形では25%未満まで異なり(75%配列が同一)、またこの実施態様の更なる変形では20%未満まで異なり(80%配列が同一)、この実施態様の更なる変形では10%未満まで異なり、(90%配列が同一)、この実施態様の変形では5%未満まで異なる(95%配列が同一)。本発明に従った実質的に同等の例えば変異アミノ酸配列は、リストに掲載したアミノ酸配列と望ましくは80%以上の配列同一性を有し、より望ましくは90%以上の配列同一性を有する。実質的に同等な本発明のヌクレオチド配列は、例えば遺伝子コードの重複性もしくは縮重を考慮して、より低い配列同一性を有してもよい。望ましくは、ヌクレオチド配列は約65%以上の、より望ましくは約75%以上、最も望ましくは約95%以上の同一性を有する。本発明の目的においては、実質的に同等な生物活性と実質的に同等な発現特性を有する配列が実質的に同等と見なされる。同等性を判断する目的においては、成熟配列の切断(例えば、偽の終止コドンを作り出す変異)は無視されなければならない。配列同一性は、例えばJotun Hein法(Hein,J.(1990) Methods Enzymol.183:626-645)を用いて判定してもよい。また配列間の同一性は、当業者に知られる、例えば様々なハイブリダイゼーション条件といったその他の方法で判定してもよい。
「ベクター」という語は、結合した別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を示す。「発現ベクター」という語は、ベクターに含まれるそれぞれの組み換え遺伝子によってコードされるSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質を合成できるプラスミド、コスミド、もしくはファージを含む。好適なベクターは、自己複製、および結合した核酸の発現が可能である。
「形質転換」という語は、DNAが複製できるように、染色体外要素として、もしくは染色体組み込みのいずれかによって、DNAを適切な宿主細胞に導入することを意味する。
「形質移入」という語は、任意のコード配列が実際に発現されるか否かに関わらず、適切な宿主細胞によって発現ベクターが取り込まれることを示す。「感染」という語は、ウイルスもしくはウイルスベクターの利用による適切な宿主細胞への核酸の導入を示す。
「転写調節要素」および「転写調節配列」という語は、特定の生物において動作可能な状態で連結したコード配列の発現に必要なDNA配列を意味し、互いに置き換え可能で用いられる。原核生物に適した制御配列は、例えば、プロモーター、動作可能なオペレーター配列、およびリボゾーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、およびポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。これらの用語は、転写を促進もしくは調節する、例えばプロモーター、RNAポリメラーゼと転写因子の基本的な相互作用に必要なコアエレメント、上流エレメント、エンハンサーおよび応答エレメントといった、全ての要素を含むよう意図されている(Lewin,"Genes V"(Oxford University Press,Oxford)page 847-873)。
RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写した後にトランスRNAが任意でスプライシングされてコード配列にコードされたタンパク質に翻訳される場合、コード配列は細胞中の転写および翻訳制御配列の「制御下」にある。
「発現調節断片(EMF)」の用語は、動作可能な状態で結合されたORFもしくはその他のEMFの発現を調節する一連のヌクレオチドを意味する。
本明細書で用いる場合、配列の発現がEMFの存在によって変更された場合、配列が「動作可能な状態で連結された配列の発現を調節する」と言われる。EMFは、プロモーター、およびプロモーター制御配列(誘導可能なエレメント)を含むがそれに限定されない。ある種類のEMFは、特異的な調節因子もしくは生理的事象に反応して、動作可能な状態で連結したORFの発現を誘導する核酸断片である。
「組み換え発現媒体」もしくは「組み換え発現ベクター」という語は、DNA(RNA)由来のポリペプチドを発現するためのプラスミドもしくはファージもしくはウイルスもしくはベクターを表す。発現媒体は、(1)例えばプロモーターやエンハンサーといった、遺伝要素もしくは遺伝子発現において調節的な役割を有するエレメント、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される、構造的配列もしくはコード配列、(3)適切な転写開始および転写終止配列の集合を含む転写単位を含む。酵母もしくは真核生物での発現系において用いられる場合の構造的単位は、望ましくは、翻訳されたタンパク質の宿主細胞による細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。あるいは、組み換えタンパク質がリーダ配列もしくは輸送配列なしに発現された場合、アミノ末端のメチオニン残基を含む場合がある。この残基は、最終産物を提供するために発現された組み換えタンパク質から後に開裂されてもされなくてもよい。
「組み換え発現系」という語は、染色体DNAに安定して組み込まれた組み換え転写単位を有する、もしくは染色体外に組み換え転写単位を含む宿主細胞を意味する。本明細書に定義されたように、組み換え発現系は、発現されるようにDNA切片もしくは合成遺伝子に結合した調節エレメントの誘導によって、異種ポリペプチドもしくは異種タンパク質を発現する。またこの用語は、組み換え遺伝要素、もしくは、例えばプロモーターやエンハンサーといった、遺伝子発現において調節的な役割を有するエレメントを安定に組み込んだ宿主細胞を意味する。本明細書で定義したように、組み換え発現系は、発現される内因性DNA断片もしくは遺伝子に結合した調節エレメントの誘導で、細胞の内因性のポリペプチドもしくはタンパク質を発現する。細胞は原核細胞でも真核細胞でもよい。
「多機能性」という語は、成体の生物に存在する数々の分化した細胞種に分化する細胞の能力を意味する。多機能性細胞は、全能細胞と比較すると分化能力が限定される。
「非ヒト哺乳動物」という語は、ヒト以外の哺乳動物の全てのメンバーを示す。「哺乳動物」は、ヒト、例えばマウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシおよび高等霊長類などの家畜、動物園、競技用、ペット用の動物などの哺乳動物として分類される任意の動物を示す。
「治療する」もしくは「治療」という語は、例えば化学療法もしくは放射線療法で誘導された粘膜炎といった、望ましくない生理的変化や状態を予防もしくは低減させることが目的である医薬的および予防的処置の両方を表す。本発明の目的において、検出可能か否かに関わらず症状の緩和、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化などの有益もしくは望ましい臨床結果を含むがそれに限定されない。
「障害」とは、本発明の遺伝子組み換え動物モデルを用いて特定された分子による治療から利益を得るであろう任意の状態である。これは、問題となっている障害に罹りやすくした哺乳動物の病的状況を含む、慢性および急性の障害もしくは疾患を含む。本明細書で治療される疾患の限定されない例は、粘膜炎、炎症性腸疾患、および皮膚損傷を含む。本発明に従って治療される好適な疾患は、粘膜炎である。
本明細書では「炎症性腸疾患(IBD)」は、小腸と大腸のいずれかもしくは両方の突発性もしくは慢性の炎症性疾患を表し、またクローン病、潰瘍性大腸炎、病原体によって引き起こされるIBD、および抗生剤に関連したIBDを含む。
本明細書では「粘膜炎」は、中咽頭、唇、食道、大腸、小腸を含む、消化管粘膜の炎症を表す。
本明細書では「短腸症候群」もしくは「SBS」は、解剖学的あるいは機能的な小腸の長さの欠失から引き起こされる栄養の吸収不良状態を表す。
「有効量」もしくは「医薬的に有効な量」という語は、望ましい生物学的結果をもたらす、薬剤の非毒性だが十分な量を表す。その結果は、徴候、症状もしくは疾患の原因の低減および/または緩和、もしくはその他の生物システムの任意の望ましい変更である可能性がある。例えば、本発明の方法で用いる場合のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v断片の有効量は、上皮細胞の刺激もしくは増殖を刺激するのに十分な量であり、また望ましくは、化学療法もしくは放射線療法で誘導された粘膜炎、炎症性腸疾患、もしくは上皮細胞の増殖が望まれるその他の障害を患う被験体において、消化管上皮の再生の増加を引き起こすのに十分な量である。該量は以下に記載する。任意の個別の症例における適切な「有効」量は、当業者により日常的な実験を用いて決定してもよい。
「薬剤的に許容可能な」もしくは「薬理学的に許容可能な」とは、生物学的にもしくはその他の面でも望ましくなくはない構成要素、即ち、望ましくない生物作用を引き起こさずに、もしくは、組成物に含まれる任意の構成要素と有害な方法で相互作用せずに、個人に投与される可能性がある構成要素を意味する。
「生理的pH」もしくは「生理的な範囲内のpH」とは、約7.0から8.0の範囲を含むpHを意味する。好適な生理的pHは、約7.2から7.6の範囲を含むpHである。
本明細書で用いる場合、「被験者」という語は、哺乳動物と非哺乳類を含む。哺乳動物の例は、哺乳動物の任意のメンバー、即ち、ヒト、チンパンジーやその他の類人猿、およびサル類といったヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタといった家畜、ウサギ、犬、およびネコといった家畜、ラット、マウス、モルモットなどの齧歯類を含む実験動物を含むがそれに限定されない。非哺乳動物の例は、鳥類、魚類などを含むがそれに限定されない。用語は、特定の年齢もしくは性別を意味しない。
(4.2 本発明の組成物)
4.2.1 核酸組成物
本発明は、上皮細胞増殖因子ポリペプチド、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v、および、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物が腺窩細胞を含む腸の上皮細胞の成長と増殖を刺激するという発見に基づく。従って、上皮細胞の増殖または再生の刺激が望まれる状態の診断および治療へのこれらの組成物の使用を意図している。単離された本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の配列の任意のヌクレオチド、配列番号2、4、13、15、22、もしくは24の配列をコードする全長タンパク質(例えば、配列番号3、14、もしくは23をコード)、および、配列番号5のポリペプチドの配列をコードする成熟タンパク質と主要成熟タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むがそれに限定されない。また、本発明のポリヌクレオチドは、厳密な条件下で(a)配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の任意のヌクレオチド配列の相補配列、(b)配列番号3、6、8、10、12、14、17、19、21、23、26、36、40、44、51、もしくは55の任意の一つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(c)上に列挙した任意のポリヌクレオチドの対立遺伝子多型であるポリヌクレオチド、(d)上に列挙した任意のタンパク質の種間相同体をコードするポリヌクレオチド、もしくは(e)配列番号3、6、8、10、12、14、17、19、21、23、26、36、40、もしくは44のポリペプチドの特定のドメインもしくは切断を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドを含むがそれに限定されない。該当するドメインは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、もしくは細胞質ドメイン、またはそれらの組合せ、および触媒ドメインと基質結合ドメインである。
本発明のポリヌクレオチドは、自然に生じた、または全体もしくは部分的に合成のDNA(例えば、cDNAとゲノムDNA)とRNA(例えば、mRNA)を含む。ポリヌクレオチドは、cDNAの全コード領域を含んでもよく、もしくは、cDNAのコード領域の一部を表してもよい。
また本発明は、本明細書で開示したcDNA配列に相当する遺伝子を含む組成物も提供する。相当する遺伝子は、本明細書で開示した配列情報を用いて既知の方法に従って単離してもよい。該方法は、適切なゲノムライブラリーもしくはその他のゲノム物質の供給源中の遺伝子の同定および/または増幅のための開示した配列情報からのプローブまたはプライマーの調製を含む。更に、5’および3’配列は、当業者に知られた方法を用いて調達してもよい。例えば、配列番号2、13、もしくは22の任意のポリヌクレオチドに相当する全長cDNAもしくはゲノムDNAは、プローブとして配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の任意のポリヌクレオチド、またはその一部を用いて、適切なハイブリダイゼーション条件下で適切なcDNAライブラリーもしくはゲノムDNAライブラリーのスクリーニングによって調達してもよい。あるいは、配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54のポリヌクレオチドは、適切なゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリー中の遺伝子の同定および/または増幅を可能にする、適切なプライマーの基礎材料として用いてもよい。
本発明の核酸配列は、ESTおよび、dbEST、gbpri、およびUniGeneなどの一つ以上の公のデータベースから得た配列(cDNAおよびゲノム配列を含む)から組み立ててもよい。EST配列は、配列情報の特定、典型的な断片情報または切片情報、もしくは、全長遺伝子の新規の断片情報を供給することができる。
また本発明のポリヌクレオチドは、上に列挙したポリヌクレオチドと実質的に同等なヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドも提供する。本発明に従ったポリヌクレオチドは、例えば、上に列挙したポリヌクレオチドに対して、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、もしくは89%、より典型的には少なくとも約90%、91%、92%、93%、もしくは94%、更により典型的には、少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する可能性がある。
本発明の核酸配列の範囲には、厳密な条件下で配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54、またはその相補配列の任意のヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする核酸配列断片が含まれ、該断片は、約5ヌクレオチド以上であり、望ましくは7ヌクレオチド、より望ましくは9ヌクレオチド、最も望ましくは17ヌクレオチド以上である。例えば、15、17、もしくは20、またはそれ以上のヌクレオチドの断片は、選択性の(つまり、本発明のポリヌクレオチドの任意の一つと特異的にハイブリダイゼーションする)断片であるよう意図されている。ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイゼーションさせることができるプローブは、同じファミリーの遺伝子中のその他のポリヌクレオチド配列から本発明のポリヌクレオチド配列を区別することができ、あるいは、ヒトの遺伝子をその他の種から識別することができ、また望ましくはそれは固有のヌクレオチド配列に基づいている。
本発明の範囲内にある配列は、これらの特異的な配列に限定されず、それらの対立遺伝子多型や種変動も含む。対立遺伝子多型や種変動は、配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54、それらの典型的な断片、または、配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54に対して同じ種の別の単離物と少なくとも90%、望ましくは95%同一なヌクレオチド配列で提供される配列との比較によってごく普通に検出可能である。更に、コドンの変動を調製するため、本発明は、本明細書で開示した特定のORFがコードするものと同じアミノ酸配列をコードする核酸分子を含む。言い換えれば、ORFのコード領域において、一つのコドンの同じアミノ酸をコードする別のコドンへの置換が明確に意図されている。
本発明の核酸に最も近い結果は、アルゴリズムもしくはプログラムを用いたデータベース検索によって得てもよい。望ましくは、局所的アライメント検索基礎ツール(Basic Local Alignment Search Tool)の略であるBLASTが、局所的な配列アライメントの検索に用いられる(Altshul,S.F.J Mol.Evol.36:290-300(1993)、およびAltschul S.F.et al.,J.Mol.Biol.21:403-410)。
開示されたポリヌクレオチドとタンパク質の相同分子種(オルソログ)も、本発明で提供する。相同分子種は、本明細書で提供した配列から適切なプローブもしくはプライマーを作製し、目的の種由来の適切な核酸供給源をスクリーニングすることによって特定される。
本発明は、開示されたポリヌクレオチドまたはタンパク質の対立遺伝子多型も含み、対立遺伝子多型とは、そのポリヌクレオチドによってコードされたものと同一、相同、あるいは関連したタンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチドの自然発生した別の型である。
本発明の核酸配列は更に、記載の核酸のアナログをコードする配列を対象としている。こららのアミノ酸配列アナログは、自然のポリヌクレオチドもしくは変異ポリヌクレオチドに適切なヌクレオチド変化を導入することによって、当業者に知られた方法で調製してもよい。アミノ酸配列の変形の構造には、変異の位置と変異の性質という二つの変化要素がある。アミノ酸配列アナログをコードする核酸は、望ましくは、天然には生じないアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドに変異させることによって構築される。これらの核酸の変更は、異なる種由来の核酸で異なる位置(可変位置)、もしくは高度に保存された領域(定常部)で行ってもよい。前記の位置での部位は、一般的には、例えば最初に保存的な選択肢(例えば、疎水性アミノ酸から別の疎水性アミノ酸へ)での置換、次により隔たった選択肢(例えば、疎水性アミノ酸から荷電アミノ酸へ)による置換、次に除去もしくは挿入を標的部位で行ってもよい、といった一連の修飾である。アミノ酸配列除去は、一般的に約1から30残基、望ましくは約1から10残基の範囲にわたり、一般的には連続的である。アミノ酸挿入は、1から100残基、もしくはそれ以上の残基の長さのアミノ末端および/またはカルボキシ末端の融合、ならびに単独アミノ酸残基もしくは複数アミノ酸残基の配列内挿入を含む。配列内挿入は、一般的に約1から10アミノ酸残基、望ましくは1から5残基の範囲にわたる場合がある。末端挿入の例は、異なる宿主細胞での分泌もしくは細胞内標的に必要な異種単一配列や、発現されたタンパク質の精製に有用なポリヒスチジン配列などの配列を含む。
推奨される方法において、新規アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、部位特異的変異誘発を介して変更してもよい。この方法は、所望のアミノ酸変化をコードするポリヌクレオチドを変更するオリゴヌクレオチド配列を用いるだけでなく、荷電したアミノ酸の両側で安定な二つ組を作るように荷電したアミノ酸の両脇の十分近接したヌクレオチドを用いる。一般的に、部位特異的変異誘発の手法は当業者によく知られており、この手法は例えば、Edelmanら、DNA 2:183(1983)といった刊行物に例示されている。ポリヌクレオチド配列で部位特異的変異誘発を行うための、多用途で効果的な方法は、Zoller and Smith,Nucleic Acids Res.10:6487-6500(1982)により発表されている。PCRも新規核酸のアミノ酸配列変化を作り出すのに用いられる。出発材料として少量の鋳型DNAが用いられる場合、鋳型DNAの相当する領域由来の配列とやや異なるプライマーで、目的のアミノ酸変化を作り出すことができる。PCR増幅は、プライマーによって特定された位置でポリペプチドをコードする鋳型ポリヌクレオチドと異なるDNA断片産物の集合をもたらす。産物のDNA断片は、プラスミド中の相当する領域を置き換え、目的のアミノ酸変化をコードするポリヌクレオチドを与える。
アミノ酸変化を作り出す更なる手法は、Wellsら、Gene 34:315(1985)で記載のカセット変異導入法と、当業者によく知られた、例えば、前出のSambrook et al.supraおよびCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubell et al.といったその他の変異導入法である。遺伝コードに備わる縮重のため、実質的に同一なアミノ酸配列、もしくは機能的に同等なアミノ酸配列をコードするその他のDNA配列を、これらの新規の核酸のクローニングと発現のための本発明の実践に際して用いてもよい。前記のDNA配列は、厳密な条件下で適切な新規核酸配列にハイブリダイゼーションすることができる配列を含む。
本発明の好適なポリペプチド切断をコードするポリヌクレオチドは、本発明の一つ以上のドメインと異種タンパク質配列を含む、キメラタンパク質もしくは融合タンパク質配列をコードするポリヌクレオチド作製に用いてもよい。
本発明のポリヌクレオチドは、上に列挙した任意のポリヌクレオチドの相補ポリヌクレオチドを更に含む。ポリヌクレオチドは、DNA(ゲノムDNA、cDNA、増幅したDNA、または合成DNA)もしくはRNAであってもよい。該ポリヌクレオチドを得るための方法とアルゴリズムは、当業者によく知られており、例えば、所望の配列に一致するポリヌクレオチドをごく普通に単離可能な、ハイブリダイゼーションの条件決定の方法などを含んでもよい。
本発明に従い、配列番号6、8、17もしくは26、またはそれと機能的に同等な任意の一つをコードする主要成熟タンパク質もしくは成熟タンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチド配列は、適切な宿主細胞において核酸の発現を指示する組み換えDNA分子、もしくはそれと機能的に同等なDNA分子を作製するのに利用してもよい。また、本発明で同定された任意のクローンcDNA挿入も含まれる。
本発明に従ったポリヌクレオチドは、十分に確立された組み換えDNA技術(Sambrook J et al.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,NYを参照)により、その他の任意のヌクレオチド配列に結合されてもよい。ポリヌクレオチドへの結合に有用なヌクレオチド配列は、各種のベクター、例えば、当業者によく知られたプラスミド、コスミド、λファージ誘導体、ファージミドなどを含む。従って、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターとポリヌクレオチドを含む宿主細胞も提供する。一般的にベクターは、少なくとも一つの生物において機能する複製起点、便利なエンドヌクレアーゼの制限部位、宿主細胞のための選択マーカーを含む。本発明によるベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、および配列決定ベクターを含む。本発明による宿主細胞は、原核細胞もしくは真核細胞であってよく、また単細胞生物もしくは多細胞生物の一部であってもよい。
本発明は、更に配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54、またはその断片、またはその他の任意のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリヌクレオチドの配列の任意のヌクレオチド配列を有する核酸を含む組み換えコンストラクトを提供する。ある実施態様では、本発明の組み換えコンストラクトは、配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の任意のヌクレオチド配列、またはその断片を有する核酸が挿入された、例えばプラスミドもしくはウイルスベクターといったベクターを含む。本発明の一つのORFを含むベクターの場合、ベクターは更に例えば動作可能な状態でORFに連結したプロモーターといった調節配列も含んでもよい。本発明の組み換えコンストラクト作製のための数多くの適したベクターとプロモーターが当業者に知られており、また市販されている。以下のベクターを例として提供する。細菌:pBs、Phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)。真核:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXTI、pSG(Stratagene);pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(Pharmacia)。
単離した本発明のポリヌクレオチドは、例えばKaufmanら、Nucleic Acids Res.19,4485-4490(1991)に開示された組み換え的にタンパク質を産生するためのpMT2もしくはpED発現ベクターといった、発現制御配列に動作可能な状態で連結することができる。多くの適切な発現制御配列が当業者に知れられている。組み換えタンパク質発現の一般的な方法も知られ、R.Kaufman,Methods in Enzymology 185,537-566(1990)に例示されている。本明細書に定義されたように、「動作可能な状態で連結された」とは、結さつしたポリヌクレオチド/発現制御配列で形質転換(形質移入)された宿主細胞によりタンパク質が発現されるような方法で、単離した本発明のポリヌクレオチドと発現制御配列がベクターもしくは細胞内に置かれていることを意味する。
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクターもしくはその他の選択マーカーを持つベクターを用いて任意の目的に遺伝子から選択することもできる。適切な二つのベクターは、pKK232-8およびpCM7である。固有の名前が付いた細菌プロモーターには、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、lambda PR、およびtrcがある。真核プロモーターには、CMVの前初期プロモーター、HSVのチミジンキナーゼプロモーター、S40の初期および後期プロモーター、レトロウイルス由来のLTRプロモーター、およびマウスのメタロチオネイン-1がある。適切なベクターとプロモーターの選択は、当業者に十分対応できる範囲である。一般的に、組み換え発現ベクターは、複製起点、および宿主細胞の形質変換を可能にする、例えば、E.coliのアンピシリン耐性遺伝子やS.cerevisiaeのTRP1遺伝子、といった選択マーカー、ならびに構造配列下流の直接転写のための高度発現遺伝子由来のプロモーターを含む。前記のプロモーターは、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)といった糖分解酵素、a-因子、酸性ホスファターゼ、もしくは熱ショックタンパク質などをコードするオペロンに由来する場合もある。異種構造配列は、適切な位相で翻訳開始と終止配列と、また望ましくは、翻訳されたタンパク質を細胞膜周辺腔もしくは細胞外の培地に分泌可能にするリーダー配列と共に組み立てられる。任意で、異種配列は、例えば安定性、もしくは発現した組み換え産物精製の単純化といった望ましい特質を与えるアミノ末端識別ペプチドなどの融合タンパク質をコードしてもよい。細菌用の有用な発現ベクターは、目的のタンパク質をコードする構造DNA配列と共に、適切な翻訳開始シグナルと終結シグナルを機能的なプロモーターと共に動作可能な読み枠で挿入することによって構築される。ベクターは、一つ以上の表現型選択マーカーとベクターの維持を保証し、また望ましければ宿主内での増幅をもたらす複製起点を含む。形質転換に適切な原核宿主は、各々の好みの問題でその他のものも採用してもよいが、E.coli、Bacillus subtilis、Slmonella typhimurium、ならびにPseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphyococcus属の様々な種を含む。
典型的だが限定されない例として、細菌用の有用な発現ベクターは、よく知られたクローニングベクターpBR322(ATCC37017)の遺伝子要素を含む市販のプラスミド由来の選択マーカーと細菌での複製のオリジンを含む場合がある。該市販ベクターは、例えば、pKK223-3(Pharmacia Fine Chemicals Uppsala,Sweden)およびGEM1(Promega Biotech,Madison,WI,USA)などを含む。これらのpBR322「骨格」部分は、適切なプロモーターと発現される構造配列と組み合わされる。適切な宿主株の形質転換と適切な細胞密度への宿主細胞の増殖の後、選択したプロモーターが誘導されるか、もしくは適切な方法で活性化され(例えば、温度シフト、もしくは化学的誘導)、更なる期間、細胞を培養する。細胞を一般的に遠心で回収し、物理的方法か化学的方法で破砕し、得られた粗製抽出物を更なる精製のために確保する。
本発明の実践における発現ベクターの使用に加えて、本発明は更に、該当のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に動作可能な状態で結合したプロモーター要素を含む新規の発現ベクターを含む。
4.2 宿主
本発明は更に、例えば、本発明のポリヌクレオチドを含む可能性があるクローニングベクターもしくは発現ベクターといった、本発明のベクターで遺伝的に操作した宿主細胞を提供する。例えば、該宿主細胞は、既知の形質転換法、形質移入法、もしくは感染法を用いて宿主細胞に導入した本発明の核酸を含んでもよい。ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形であってもよい。操作された宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換体の選択、もしくはSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v遺伝子の増幅に適した従来の栄養培地中で培養することもできる。例えば温度、pHなどといった培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に以前用いられた条件であり、当業者には明らかであろう。本発明は更に、細胞内でポリヌクレオチドの発現を推進する宿主細胞とは異種の調節配列と動作可能な状態で前記のポリヌクレオチドを結びつけて、本発明のポリヌクレオチドを発現するよう遺伝的に操作した宿主細胞を提供する。
宿主細胞は、哺乳動物細胞のような高等真核宿主細胞、酵母のような下等真核宿主細胞であってもよく、もしくは、宿主細胞は細菌細胞のような原核細胞であってもよい。宿主細胞への組み換えコンストラクトの導入は、カルシウムリン酸形質移入法、DEAE、デキストランを介した形質移入法、もしくは電気せん孔法(Davis,L.et al.,Basic Methods in Molecular Biology(1986))によって達成されてもよい。本発明のポリヌクレオチドの一つを含む宿主細胞は、単離した断片(ORFの場合)にコードされた遺伝子産物を産生する従来の方法に、あるいはEMFの制御下で異種タンパク質の産生に用いてもよい。
一つ以上のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドの発現には、任意の宿主/ベクター系を用いてもよい。該宿主/ベクター系は、HeLa細胞、Cv-1細胞、COS細胞およびSf9細胞といった真核宿主、並びにE.coliおよびB.Subtilisといった原核宿主を含むがそれに限定されない。最も望ましい細胞は、通常特定のポリペプチドもしくはタンパク質を発現しない、またはポリペプチドもしくはタンパク質を自然な低レベルで発現する細胞である。成熟タンパク質は哺乳動物細胞、酵母、細菌、もしくは適切なプロモーターの制御下でその他の細胞内で発現されてもよい。無細胞翻訳システムも、本発明のDNAコンストラクト由来のRNAを用いて該タンパク質の産生に利用してもよい。原核宿主および真核宿主と、用いる適切なクローニングベクターと発現ベクターは、Sambrook,et al.により、参照して本明細書の開示に組み入れるMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,New York(1989)に記載されている。
組み換えタンパク質の発現に、様々な哺乳動物細胞培養系を利用してもよい。哺乳動物発現システムの例には、Gluzman,Cell 23:175(1981)に記載されたサルの腎臓繊維芽細胞のCOS-7系統、および、例えばC127細胞系、3T3細胞系、CHO細胞系、HeLa細胞系、およびBHK細胞系といった適合するベクターを発現可能なその他の細胞系統を含む。哺乳動物の発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーター、また必要な任意のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位とスプライス受容部位、転写終止配列、および5’に隣接する非転写配列を含む。例えばSV40オリジン、早期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、およびポリアデニル化部位といったSV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列を、必要な非転写遺伝要素を提供するために利用してもよい。細菌培養中で産生される組み換えポリペプチドおよび組み換えタンパク質は、通常、細胞ペレットからの最初の抽出の後、1回もしくはそれ以上の塩析、水溶性イオン交換クロマトグラフィーもしくはサイズ排除クロマトグラフィー処理によって単離される。必要な場合には、成熟タンパク質の構造を完成するためにタンパク質のリフォールディング処理を用いることもできる。最後に、最終的な精製処理として高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用してもよい。タンパク質の発現に用いた微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波破砕、機械的破砕、もしくは細胞溶解剤の使用を含む、従来の任意の方法で破砕してもよい。
多種類の細胞が、タンパク質の発現に適した宿主細胞としての役割を果たす可能性がある。哺乳動物の宿主細胞は、例えば、サルのCOS細胞、ヒトの上皮細胞A431、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV-1細胞、形質転換されたその他の霊長類細胞系統、正常の二倍体細胞、インビトロ一次組織培養由来の細胞株、初代移植片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK、HL-60、U937、Hak細胞、もしくはJurkat細胞を含む。望ましくは、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、およびヒトの胚腎臓293(HEK293)細胞で発現される。
あるいは、タンパク質を酵母のような下等真核生物、もしくは細菌のような原核生物で産生することを可能にすることもできる。潜在的に適した酵母株は、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces株、Candida、Pichia pastoris、もしくは異種タンパク質を発現可能な任意の酵母株を含む。潜在的に適した細菌株は、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、もしくは異種タンパク質を発現可能な任意の細菌株を含む。タンパク質が酵母もしくは細菌で作られた場合、機能的なタンパク質を得るために、産生されたタンパク質を、例えば、適切な部位のリン酸化もしくはグリコシル化により修飾する必要がある可能性がある。該共有結合は、既知の化学的方法もしくは酵素的方法を用いて達成してもよい。
4.2.3 キメラタンパク質と融合タンパク質
本発明は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vのキメラタンパク質もしくは融合タンパク質も提供する。本明細書で用いる場合、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの「キメラタンパク質」もしくは「融合タンパク質」は、動作可能な状態で非SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドと結合したSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドを含む。「SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチド」は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表し、一方「非SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチド」は、例えば、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質と異なるタンパク質および同一生物もしくは異なる生物由来のタンパク質といった、実質的にSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質と相同でないタンパク質に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを表す。SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの融合タンパク質中、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドは、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質の全てもしくは一部分に相当してもよい。ある実施態様において、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v融合タンパク質は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質の一つ以上の生物的活性部分を含む。別の実施態様では、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v融合タンパク質は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質の二つ以上の生物活性部分を含む。更に別の実施態様では、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v融合は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質の三つ以上の生物活性部分を含む。融合タンパク質において、「動作可能な状態で連結した」という語は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドおよび非SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドが互いにインフレームで融合していることを示すことを意図する。非SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドは、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドのN末端もしくはC末端に融合してもよい。
ある実施態様では、融合タンパク質はGST SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v融合タンパク質であり、該融合タンパク質では、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v配列はGST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)配列のC末端に融合する。前記の融合タンパク質は、組み換えSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドの精製を容易にすることができる。望ましくは、抗V5抗体で容易な検出と迅速な精製のために、実施例に記載されるようにSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドはV5-Hisタグと融合する。配列番号35,39,43および54のポリペプチドによってそれぞれコードされる、配列番号36、40、44および55は、V5-His6タグを有するSCFA2、SCFA2△C、SCFA4、もしくはSCFA4v融合タンパク質を表す。
別の実施態様では、融合タンパク質は、異種シグナル配列をN末端に含むSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質である。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)において、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの発現および/または分泌は異種シグナル配列の利用を通じて増大する場合がある。例えば、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vのシグナル配列は、マウスIgKappa(Igκ)鎖のVJ2-C領域由来のシグナル配列で置き換えてもよい。例えば、配列番号35,39,43および54のポリペプチドによってそれぞれコードされる、配列番号36、40、44および55は、Igκシグナル配列を含む。配列番号36、40、44および55の融合タンパク質をコードする配列番号35,39,43および54のポリヌクレオチドは、インビボでSCFA2、SCFA2△C、SCFA4、もしくはSCFA4vを発現し、ポリペプチドの生物活性を測定する実施例で述べたように使用した。本発明のSCFA2、SCFA2△C、SCFA4、もしくはSCFA4vキメラタンパク質もしくは融合タンパク質は、標準的な組み換えDNA技術によって産生してもよい。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片を従来の手法に従って、例えば、結さつのための平滑末端もしくは粘着末端の利用、また適切な末端を作るための制限酵素処理、粘着末端を適切に埋める手法、望ましくない結合を阻止するためのアルカリホスファターゼ処理、酵素での結さつによって、インフレームで共に結さつされる。別の実施態様では、融合遺伝子は、自動DNA合成機などの従来の技術によって合成される。あるいは、後にアニーリングしてキメラ遺伝子配列を作製するために再増幅可能な、二つの連続した遺伝子断片の間に相補的な突出部を生じさせるアンカープライマーを用いて遺伝子断片のPCR増幅を行ってもよい(Ausubel,et al.(eds.) CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,1992を参照)。更に、既に融合部分をコードした多くの発現ベクターが市販されている(例えばGSTポリペプチド)。SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vをコードする核酸は、融合部分がインフレームでSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質に結合するように、該発現ベクターにクローニングしてもよい。
4.2.4 ポリペプチド組成物
本発明の医薬組成物は、配列番号3、6、8、10、12、14、17、19、21、23、26、36、40、44、51、もしくは55の任意の一つとして説明されたアミノ酸配列、または配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54の任意のヌクレオチド配列をコードするアミノ酸配列を含むがそれに限定されない単離したSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドを含む。また、本発明のポリペプチドは、(a)配列番号1、2、4、5、7、9、11、13、15、16、18、20、22、24、25、35、39、43、50、52、53、もしくは54に示すヌクレオチド配列の任意の一つを有するポリヌクレオチド、または(b)配列番号3、6、8、10、12、14、17、19、21、23、26、36、40、44、51、もしくは55として説明されるアミノ酸配列の任意の一つをコードするポリヌクレオチド、もしくは(c)厳密な条件下で(a)もしくは(b)のいずれかのポリヌクレオチドの相補配列にハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドにコードされる生物活性もしくは免疫活性があるポリペプチドを望ましくは含む。本発明は、配列番号3、6、8、10、12、14、17、19、21、23、26、36、40、44、51、もしくは55として示される任意のアミノ酸配列の生物学的もしくは免疫学的に活性な変形、および、それと「実質的に同等な」生物活性を保持する配列(例えば、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、より典型的には少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、より典型的には、少なくとも約95%、96%、97%、98%、最も典型的には少なくとも約99%のアミノ酸同一)も提供する。対立遺伝子変異体によりコードされるポリペプチドは、配列番号3、6、8、10、12、14、17、19、21、23、26、36、40、44、51、もしくは55を含むポリペプチドと比較して類似の、増加したもしくは減少した活性を有してもよい。
生物活性を示すことができる本発明のタンパク質断片も本発明に含まれる。タンパク質断片は線状の形であってもよく、もしくは、例えば、共に参照して本明細書に組み入れる、H.U.Saragoviら、Bio/Technology 10,773-778(1992)およびR.S.McDowell,et al.,J Amer.Chem.Soc.114,9245-9253(1992)に記載のように、既知の方法を用いて結晶化してもよい。該断片は、タンパク結合部位の結合価を上げるためなどの多くの目的のために、免疫グロブリンといった担体分子に融合してもよい。
本発明は、全長と主要成熟型(例えば、シグナル配列もしくは前駆体配列を含まない)もしくは成熟型(例えば、シグナル配列およびフューリン開裂部位が欠けている)の両方の本開示のタンパク質も提供する。タンパク質をコードしている配列は、開示したヌクレオチド配列の翻訳によって配列目録中で特定される。該タンパク質の成熟型は、適切な哺乳動物細胞もしくはその他の宿主細胞での全長ポリヌクレオチドの発現によって得ることもできる。タンパク質の成熟型の配列も全長型のアミノ酸配列からも検出可能である。
本発明のタンパク組成物は、例えば医薬的に許容可能な例えば親水性の担体といった、許容可能な担体を更に含んでもよい。
本発明は更に、本発明の核酸断片、もしくは本発明の核酸断片の縮重変異体にコードされる単離したポリペプチドを提供する。「縮重変異体」とは、遺伝コードの縮重のために、ヌクレオチド配列が同一のポリペプチド配列をコードするが、本発明の核酸断片(例えば、ORF)とは異なるヌクレオチド断片が意図されている。本発明の望ましい核酸断片は、タンパク質をコードするORFである。
当業者に知られている様々な方法論を、本発明の単離したポリペプチドもしくはタンパク質の任意の一つを得るために利用してもよい。最も単純な段階では、アミノ酸は、市販のペプチド合成機を用いて合成してもよい。合成で構築されたタンパク配列は、一次、二次、もしくは三次構造および/または立体構造上の特徴をタンパク質と共有しているために、タンパク質活性など共通の生物学的な性質を持っている可能性がある。この手法は、小ペプチドや大きなペプチドの断片を作製する際に特に有用である。断片は、例えば、自然のポリペプチドに対する抗体作製に有用である。従って、これらは生物学的に活性な、もしくは自然の精製されたタンパク質の免疫学的な代替物として、医薬組成物のスクリーニングおよび抗体作製のための免疫学的処理に利用される可能性がある。
本発明のポリペプチドとタンパク質は、もう一つの方法として、所望のポリペプチドもしくはタンパク質を発現するよう改変された細胞から精製してもよい。本明細書では、遺伝操作を通じて細胞が通常は産生しない、もしくは細胞が通常低濃度で産生するポリペプチドもしくはタンパク質を産生するように作られた場合に、細胞は目的のポリペプチドもしくはタンパク質を発現するよう改変される、と言われる。当業者は、本発明のポリペプチドもしくはタンパク質の一つを産生する細胞を作製するために、組み換え配列もしくは合成配列のどちらかの真核細胞もしくは原核細胞への導入と発現のために容易に方法を適合させることができる。
本発明は、本発明の宿主細胞の適切な培地中での増殖培養、および、細胞もしくは細胞を増殖させた培養からのタンパク質の精製を含む、ポリペプチド産生の方法にも関する。例えば、本発明の方法は、本発明のポリヌクレオチドを含む適切な発現ベクターを含有する宿主細胞をコードしたポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養する、ポリペプチド産生のための方法を含む。ポリペプチドは、培地から、培養培地から便利に、もしくは宿主細胞から調製された溶解物から回収して更に精製してもよい。好適な実施態様は、該方法で産生されたタンパク質がタンパク質の全長、もしくは成熟型である場合を含む。
別の方法では、ポリペプチドもしくはタンパクは、ポリペプチドもしくはタンパクを産生するためにSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vをコードするDNAで形質転換した細菌細胞から精製する。当業者は、単離された本発明のポリペプチドもしくはタンパクの一つを得るために、ポリペプチドとタンパク単離のための既知の方法に容易に従うことができる。これらの方法は、免疫クロマトグラフィー、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および免疫アフィニティークロマトグラフィーを含むがそれに限定されない。例として、Scopes,Protein Purification:Principles and Practice,Springer-verlag(1994)、Sambrook,et al.,in Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biologyを参照。生物学的/免疫学的活性を保持するポリペプチド断片は、約100アミノ酸以上、もしくは約200アミノ酸からなり、特定のタンパク質ドメインをコードする断片を含む。
精製したポリペプチドは、ポリペプチドに結合する分子を同定するために、当業者によく知られたインビボ結合アッセイを用いてもよい。これらの分子は、例えば、小分子、組み合わせライブラリー由来の分子、抗体またはその他のタンパク質を含むがそれに限定されない。結合アッセイで同定された分子は、次にインビボ組織培養で、もしくは当業者によく知られた動物モデルで、拮抗剤活性もしくは作動薬活性について試験する。手短に述べると、分子を複数の細胞培養もしくは動物に用量設定した後、細胞/動物の死亡もしくは細胞/動物の生存期間の延長のいずれかについて試験する。
本発明のタンパク質は、遺伝子組み換え動物の産物として、例えば、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む体細胞もしくは生殖細胞によって特徴づけられる遺伝子組み換えウシ、ヤギ、ブタ、もしくはヒツジのミルクの組成物として、発現されてもよい。
本明細書で提供するタンパク質は、精製されたタンパク質のアミノ酸配列に類似しているが、自然に、あるいは意図的操作で修飾されたアミノ酸配列で特徴づけられるタンパク質も含むが、このペプチドもしくはDNA配列の修飾は、例えば既知の手法を用いて当業者によって行うことができる。タンパク質配列中の対象の修飾は、コード配列中の選択されたアミノ酸残基の配列改変、置換、置き換え、挿入もしくは欠失を含んでもよい。例えば、一つ以上のシステイン残基は、分子の立体構造を換える為に欠失もしくは別のアミノ酸と置き換えられてもよい。該改変、置換、置き換え、挿入もしくは欠失のための手法は、当業者によく知られている(例えば、米国特許第4、518、584号を参照)。望ましくは、該改変、置換、置き換え、挿入もしくは欠失は、タンパク質の目的の活性を保持する。タンパク質機能に重要なタンパク質の領域は、単独もしくは一連のアミノ酸のアラニンで系統的に置換し、アラニンを含む変異体の生物活性試験を行うアラニンスキャニング法を含む、当業者に既知の様々な方法で特定することもできる。この種の分析は、生物活性におけるアミノ酸置換の重要性を測定する。タンパク質機能に重要なタンパク質の領域は、eMATRIXプログラムによって特定してもよい。
全体的に、もしくは部分的にタンパク質活性を保持していると期待されるタンパク質配列のその他の断片および派生物は、スクリーニングもしくはその他の免疫学的方法論に有用であり、また本明細書で開示したように当業者によって容易に行うこともできる。該修飾も本発明に含まれる。
タンパク質は、一つ以上の昆虫発現ベクターで、昆虫発現システムを用いて、適切な制御配列に動作可能な状態で連結している単離した本発明のポリヌクレオチドにより産生してもよい。バキュロウイルス/昆虫細胞発現システムの材料と方法はキットとして、例えばInvitrogen,San Diego,Calf.,USA(MaxBatTMキット)から市販されており、また該方法は参照して本明細書に組み入れるSummers and Smith,Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)で述べているように、当業者によく知られている。本明細書で用いる場合、本発明のポリヌクレオチドを発現可能な昆虫細胞が「形質転換」される。
本発明のタンパク質は、形質転換された宿主細胞を組み換えタンパク質発現に適した培養条件下で培養することによって調製してもよい。結果として発現されたタンパク質は、次に該培地から(培地もしくは細胞抽出物から)、例えばゲル濾過、およびイオン交換クロマトグラフィーなどといった既知の精製過程を用いて精製してもよい。タンパク質の精製は、タンパク質に結合するアフィニティーカラム剤、またコンカナバリンAアガロース、ヘパリン-toyopearlTM、もしくはCibacrom blue 3GA SepharoseTMなどのアフィニティー樹脂を通す一つ以上のカラム処理、フェニルエーテル、ブチルエーテル、もしくはプロピルエーテル等の樹脂を用いる疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む一つ以上の処理、または免疫アフィニティークロマトグラフィーを含んでもよい。
あるいは本発明のタンパク質は、精製可能な形で発現されてもよい。例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、もしくはチオレドキシン(TRX)といった融合タンパク質として、またはHisタグとして発現されてもよい。該融合タンパク質の発現と精製のためのキットは、New England BioLab(Beverly,Mass)、Pharmacia(Piscataway,N.J.)およびInvitrogenよりそれぞれ市販されている。タンパク質はエピトープでタグ化した後に、該エピトープを対象とする特異的な抗体を用いて精製してもよい。該エピトープの一つ(「FLAG(登録商標)」)はKodak(New Haven,Conn)から市販されている。
最後に、タンパク質を更に精製するために、例えば、メチル基もしくはその他の脂肪族基のペンダント基を有するシリカゲルなど、疎水性RP-HPLC媒体を用いる、一つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)処理を利用してもよい。前述の精製処理の一部もしくは全ては、実質的に単離した異種組み換えタンパク質を提供するために、様々な組合せで利用してもよい。精製したタンパク質は従って、他の哺乳動物タンパク質を実質的に含まず、本発明に従って「単離されたタンパク質」と定義される。
本発明のポリペプチドは、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vアナログを含む。これはSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドの断片、および一つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、もしくは置換を含むSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドを含む。また、本発明のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドのアナログは、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドもしくはそのアナログが例えば標的部分もしくは別の医薬品といった別の部分に融合された、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドの融合タンパク質、またはSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドの修飾を含む。該アナログは、活性および/または安定性といった、向上した特性を示してもよい。SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドもしくはそのアナログに融合される可能性がある部分の例は、例えば、ポリペプチドの小腸への送達をもたらす標的部分といった、例えば小腸への抗体、もしくは消化管細胞上で発現する受容体やリガンドに対する抗体を含む。SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドと融合さる可能性があるその他の部分は、例えばサイトカインもしくはその他の医薬品など、消化管障害と本明細書に列挙されたようなその他の状態の治療に用いられる治療薬等である。
4.2.5 遺伝子治療
本発明は、本明細書に列挙された疾患を治療するための遺伝子治療を提供する。本発明のポリペプチドをコードする機能的な遺伝子の適切な細胞への送達は、生体外で、生体内原位置で、もしくはインビボで、ベクター、更に具体的には、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、もしくはレトロウイルス)、もしくは生体外で物理的なDNA移入方法(例えば、リポソーム、もしくは化学処理)を用いることによって達成される。例えば、Anderson,Nature,Spplement to Vol.392,no.6679,pp.25-20(1998)を参照。遺伝子治療手法に関する更に追加の総説として、Friedmnn,Science,244:1275-1281(1989)、Verma,Scientific American:68-84(1990)、およびMiller,Nature,357:455-460(1992)を参照のこと。
上記で論じたように、「ベクター」は、本発明に従った宿主細胞への核酸の運搬を意味する。望ましいベクターは、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスといったウイルスベクターである。従って、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質もしくはそのポリペプチドドメイン断片をコードする遺伝子もしくは核酸配列は、インビボ、生体外、もしくはインビトロでウイルスベクターを用いて、もしくはDNAの直接導入を通じて、導入される。標的組織における発現は、ウイルスベクターもしくは受容体リガンドなどの特定の細胞に対する遺伝子組み換えベクターを標的とすることで、または組織特異的なプロモーターを用いることによって、あるいはその両方で達成される。
一般的にインビボもしくは生体外標的と治療過程に用いるウイルスベクターは、DNAに基づくベクターとレトロウイルスベクターである。ウイルスベクターの構築と使用の方法は、当業者に知られている(例えば、Miller and Rosman,BioTechniques 7:980-990(1992)を参照)。望ましくは、ウイルスベクターは複製が欠如しており、つまり標的細胞内で自己複製が不可能である。一般的に、本発明の範囲内で用いられる複製が欠如したウイルスベクターのゲノムは、感染した細胞内でのウイルス複製に必要な少なくとも1つの領域が欠けている。これらの領域は(全体的に、もしくは部分的に)除去されるか、当業者に知られる任意の手法により機能しないようにされるかのいずれかである可能性がある。これらの手法は、全体的除去、置換(別の配列、具体的には核酸の挿入によって)、(複製に)必須の領域への部分的除去もしくは一つ以上の塩基の追加等がある。該手法は、インビボ(単離されたDNAで)もしくは生体内原位置で、遺伝子操作、もしくは突然変異誘発物質処理の手法を用いて行われてもよい。望ましくは、複製が欠如したウイルスは、ウイルス粒子の封入に必要なゲノム配列を保持している。
DNAウイルスベクターは、例えば単純疱疹ヘルペス(HSV)、乳頭腫ウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)などといった、しかしそれに限定されない、弱毒化したもしくは不完全なDNAウイルスなどを含む。全体的にもしくはほとんど全体的にウイルス遺伝子を欠いた不完全なウイルスが望ましい。不完全なウイルスは細胞に導入後は感染性ではない。不完全なウイルスベクターを利用することで、他の細胞への感染を懸念せずに特定の局所的部位の細胞への投与が可能になる。従って、特定の組織を特異的に標的にすることができる。具体的なベクターの例は、不完全なヘルペスウイルス1(HSV1)ベクター(Kaplittら、Molec.Cell.Neurosci.2:320-330(1991))、糖タンパク質L遺伝子を欠く不完全なヘルペスウイルスベクター(特許公開RD371005A)、もしくはその他の不完全なヘルペスウイルスベクター(1994年9月29日に公開された国際特許公開第WO94/21807号、および1994年4月2日に公開された国際特許公開第WO92/05263号)、Stratford-Perricaudet et al.により記載のようになベクター(J.Clin.Invest.90:626-630(1992)、また、La Salleら、Science 259:988-990(1993)も参照)といった弱毒化されたアデノウイルスベクター、および不完全なアデノ随伴ウイルスベクター(Samulskiら、J.Virol.61:3096-3101(1987)、Samulskiら、J.Virol.63:3822-3828(1989)、Lebkowskiら、Mol.Cell.Biol.8:3988-3996(1988))を含むがそれに限定されない。
インビボでの投与において望ましくは、ウイルスベクターと形質移入された細胞の免疫不活性化を防ぐために、適切な免疫抑制処理が例えば、アデノウイルスベクターといったウイルスベクターと共に利用される。例えば、ウイルスベクターに対する体液性免疫反応もしくは細胞性免疫反応を阻止するために、例えばインターロイキン-12(IL-12)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、もしくは抗CD4抗体といった免疫抑制サイトカインが投与されてもよい(例えば、Wilson,Nature Medicine(1995)参照)。更に、最低限の数の抗原を発現するよう操作されたウイルスベクターの使用は有利である。
好適な実施態様では、ベクターはアデノウイルスベクターである。実施例に示したように、消化管上皮細胞の増殖刺激に対する、腺窩上皮の過形成による顕著な広範性の粘膜の肥厚と腺窩の長さと複雑な分岐の顕著な増加における予期せぬほど効果的な影響によって示されたように、アデノウイルスベクターは、それ自体がSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドの送達に特に有効であることが示された。アデノウイルスは、様々な細胞型に本発明の核酸を効率的に送達するよう修飾可能な真核DNAウイルスである。様々な血清型のアデノウイルスが存在する。本発明の範囲には、2型、もしくは5型のヒトアデノウイルス(Ad2もしくはAd5)または動物由来のアデノウイルスを利用するためのこれらの血清型の優先傾向が含まれる(国際公開第94/26914号参照)。本発明の範囲内で利用可能なこれらの動物由来のアデノウイルスには、イヌ科の動物、ウシ科の動物、ネズミ科の動物(例:Mav1,Beardら、Virology 75(1990)81)、ヒツジ、ブタ、鳥類、サル(例:SAV)由来のアデノウイルスがある。
望ましくは、本発明の複製が不完全なアデノウイルスベクターは、末端逆位配列(ITR)、キャップ化配列および対象の核酸を含む。より更に望ましくは、少なくともアデノウイルスベクターのE1領域が非機能的である。別の領域、特に、E3領域(国際公開第号95/02697)、E2領域(国際公開第94/28938号)、E4領域(国際公開第94/28152号、国際公開第94/12649号および国際公開第95/02697号)、もしくは後期遺伝子の任意のL1-L5も修飾されてもよい。
好適な実施態様において、アデノウイルスベクターはE1およびE3領域が欠失している。E1欠失アデノウイルスの例を、内容を参照して本明細書に組み込んだ、欧州特許第185,573号に開示している。
本発明に従った複製欠陥の組み換えアデノウイルスは、当業者に知られた任意の手法で調製することもできる(Levreroら、Gene 101(1991) 195、欧州特許第185,573号、Graham,EMBO J.3(1984)2917)。特に、アデノウイルスと対象のDNA配列を持つプラスミドの間の異種組み換えによって調製することもできる。相同組み換えは、適切な細胞系統への該アデノウイルスとプラスミドの共形質移入により達成される。使用する細胞系統は、望ましくは(i)該要素によって形質転換可能でなければならず、また(ii)複製欠陥アデノウイルスのゲノムの一部の相補できる配列を、望ましくは組み替えの危険性を避けるために統合した形で含まなければなない。利用可能な細胞系の例は、ゲノムに統合されたAd5アデノウイルスゲノムの左手部分(12%)を含む、ヒト胚腎臓細胞系293(Grahamら、J.Gen.Virol.36(1977) 59)、および、国際公開出願第94/26914号、および第95/02697号で述べたように、E1およびE4機能を相補可能な細胞系統である。組み換えアデノウイルスは、当業者によく知られている標準的な分子生物学手法を用いて回収して精製される。
本発明で用いてもよいプロモーターは、常時発現プロモーターと制御された(誘導可能な)プロモーターの両方を含む。プロモーターは、核酸の発現の自然な原因であってもよい。また異種の供給源からであってもよい。特に、真核遺伝子もしくはウイルス遺伝子のプロモーター配列であってもよい。例えば、感染させる目的の細胞のゲノム由来のプロモーター配列であってもよい。同様に、利用したアデノウイルスなどのウイルスゲノム由来のプロモーター配列であってもよい。この点において、例えば、E1A、MLP、CMV、およびRSV遺伝子などのプロモーターに言及することもできる。
更に、プロモーターは、活性化配列もしくは調節配列、または組織特異的もしくは優勢な発現(エノラーゼおよびGFAPプロモーターなど)を可能にする配列の追加によって修飾してもよい。更に、核酸がプロモーター配列を含まない場合には、該配列の下流をウイルスゲノムなどに挿入してもよい。
本発明の実践に有用な一部のプロモータは、偏在的なプロモーター(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、中間径フィラメントプロモーター(例えば、デスミン、ニューロフィラメント、ケラチン、GFAP)、治療遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、VIII因子)、組織特異的プロモーター(例えば、平滑筋細胞のアクチンプロモーター)、分裂中の細胞で選択的に活性化されるプロモーター、刺激に反応するプロモーター(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)、テトラサイクリン制御性転写活性化因子、サイトメガロウイルスの前初期プロモーター、レトロウイルスLTRプロモーター、メタロチオネインプロモーター、SV-40プロモーター、E1aプロモーター、およびMLPプロモーターである。テトラサイクリン制御性転写活性化因子およびCMVプロモーターは、その内容を参照して本明細書に組み込んだ、国際公開第96/01313号、米国特許第5,168,062号および第5,385,839号に記載されている。
従って、遺伝子発現の制御に用いてもよいプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40早期プロモーター領域(Benoist and Chambon,1981,Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの長い3’末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamoto,et al.,1980,Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982,Nature296:39-42);例えばβ-ラクタマーゼプロモーター(Villa-kamaroff,et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727-3731)もしくはtacプロモーター(DeBoer,et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21-25)といった原核発現ベクター;また"Useful proteins from recombinant bacteria" in Scientific American,1980,242:74-94を参照;酵母もしくはその他の真菌由来のGal4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PKG(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターのようなプロモーターエレメント;および組織特異性を示し、遺伝子組み換え動物で用いられてきた、膵腺房細胞で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域動物の転写制御領域(Swiftら、1984,Cell38:639-646、Ornitzら、1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399-409、MacDonald,1987,Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115-122)、リンパ細胞で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984,Cell 38:647-658、Adamesら、1985,Nature 318:533-538、Alexanderら、1987,Mol.Cell.Biol.7:1436-1444)、精巣、乳房、リンパ球、マスト細胞で活性なマウス乳癌ウイルス制御領域(Lederら、1986,Cell 45:485-495)、肝臓で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら、1987,Genes and Devel.1:268-276)、肝臓で活性なα-フェトタンパク質遺伝子制御領域(Krumlaufら、1985,Mol.Cell.Biol.5:1639-1648、Hammerら、1987,Science 235:53-58)、肝臓で活性なα1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら、1987,Gene and Devel.1:161-171)、骨髄性細胞で活性なβ-グロブリン遺伝子制御領域(Mogramら、1985,Nature 315:338-340、Kolliasら、1986,Cell 46:89-94)、脳内のオリゴデンドロサイトで活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987,Cell 48:703-712)、骨格筋で活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283-286)、および視床下部で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら、1986,Science 234:1372-1378)を含むがそれに限定されない。
本発明のヌクレオチド、もしくは本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の任意の一つの導入は、染色体外基質(一時的発現)もしくは人口染色体(安定した発現)で達成してもよい。細胞はまた、該細胞に対して望ましい作用、もしくは該細胞での活性を増加させるもしくは作り出すために、本発明のタンパク質存在下で生体外で培養してもよい。処理された細胞は、次に治療上の目的でインビボで誘導してもよい。本発明の実践でのウイルスベクターの使用に加えて、本発明は更に、オペレーターおよびプロモーターエレメントが対象のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に動作可能な状態で結合した新規のベクターを含む。本発明のアデノウイルスベクターは、実施例で詳細に述べるpAdenoVector-CMV5-Intronベクターである。
4.2.6 腺窩細胞と組織増殖活性
本発明のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドは、増殖因子活性を示し、腸腺窩細胞の増殖と分化に関わっている。SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vは、その他の消化管上皮細胞に対する増殖活性も示す可能性がある。インビボもしくは生体外での腺窩細胞に対する本発明のポリペプチドの投与は、分化全能状態の細胞集団を維持し拡大させる可能性があり、損傷した組織もしくは病変組織の再生、移植、生体医薬品の製造、およびバイオセンサーの開発に有用である。組織の治療のための前記のような胃腸細胞の移植のための細胞移植には、現在ヒト以外の供給源もしくはドナーから得なければならないヒトタンパク質の生産への応用の取り組み、大量のヒト細胞を生産する能力が重要である。
本明細書に挙げた任意の増殖因子、その他の幹細胞維持因子、および特異的に幹細胞を含む細胞因子(SCF)、白血病抑制因子(LIF)、Flt-3リガンド(Flt-3L)、任意のインターロイキン類、IL-6に融合した可溶性のIL-6受容体組み換え体、マクロファージ炎症タンパク質1-α(MIP-1-α)、G-CSF、GM-CSF、トロンボポエチン(TPO)、血小板因子4(PF-4)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF2)、およびグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)などの所望の効果を達成するために、複数の異なる外因性増殖因子および/またはサイトカインが本発明のポリペプチドとの組合せで投与される可能性を意図している。
腺窩細胞を含む腸上皮細胞は、本発明のペプチドの自己分泌発現を誘導するために本発明のポリヌクレオチドを形質移入してもよい。これは、そのままで有用な、もしくは後に目的の成熟細胞型に分化させることができる、未分化細胞系の作製を可能にする。これらの安定した細胞系は、cDNAライブラリー作製とポリメラーゼ連鎖反応実験のための鋳型作製のための未分化のmRNA供給源としても役に立つ可能性がある。これらの研究は、腺窩細胞集団において異なった形で発現される、腺窩細胞の増殖および/または維持を調節する遺伝子の単離と特定を可能にするだろう。
上皮幹細胞集団の拡大と維持は、多くの病的状態の治療に有用であろう。例えば、本発明のポリペプチドは、電離放射線、化学療法、感染および炎症により引き起こされた疾患、自己免疫疾患、不測の損傷もしくは遺伝的障害によって損傷された細胞の増殖と置換に利用可能な消化管上皮細胞を培養で得るために、腺窩細胞の操作に用いてもよい。
本発明のポリペプチドの発現と腺窩細胞に対するその効果は、より分化した細胞型への腺窩細胞の分化制御を達成するために操作してもよい。未分化の幹細胞集団から特異的に分化した細胞型の純粋な集団を得る広く応用可能な方法は、選択マーカーを発現させる細胞型特異的なプロモーターの利用を伴う。腺窩細胞を含む消化管上皮細胞のインビボ培養は、本発明のポリペプチドが増殖因子活性を示すかどうかを判定するために利用してもよい。腺窩細胞は、ヒトおよびマウスの結腸粘膜由来の解離した結腸腺窩から単離され、SCFA2、SCFA4、もしくは、全体を参照して本明細書に組み入れる、Whiteheadら、Gastroenterology 117:858-865(1999)に記載の方法を用いて、SCFA2、SCFA4、またはSCFA4vのクローン形成活性を評価してもよい。増殖因子活性は、本発明のポリペプチド単独存在化、もしくは他の増殖因子もしくはサイトカインとの組合せで評価することもできる。
本発明の組成物は、腺窩細胞を含む腸上皮細胞の増殖と口腔組織および消化管組織の再生、つまり、上皮腺窩細胞の再生、死もしくは外傷に関わる上皮層に受けた障害の治療にも有用である可能性がある。更に具体的には、組成物は、本明細書に列挙した消化管疾患の治療に用いてもよい。
発明の組成物は、褥瘡、血管不全に関連する潰瘍、外科創傷、および外傷などを限定せずに含む、治っていない傷のより良い、より速い閉鎖を促進するためにも有用である可能性がある。創傷治癒活性のアッセイは、Eaglstein and Mertz,J.Invest.Dermatol.71:382-84(1978)によって改訂されたWinter,Epidermal Wound Healing,pp71-112(Mailbach,H.I.and Rovee,D.T.,eds)、Year Book Medical Publishers,Inc.,Chicago)に記載されるものが挙げられるが、これに限定されない。
4.2.7 免疫調節活性
本発明のポリペプチドは、サイトカイン産生および/または活性、および/または免疫系の細胞を含むがそれに限定されない免疫系構成要素の調節に関わる活性を示す可能性がある。本発明のポリペプチドはこれらの特性を示すポリペプチドをコードすることが可能である。サイトカインおよび/または免疫系細胞の調節は、サイトカイン濃度もしくは数多くの免疫系特有の細胞の増加および/または減少を含む場合もある。
該免疫調節活性がある本発明のポリペプチドは、様々な免疫障害の治療に用いてもよい。これらの障害は、潰瘍性大腸炎および/またはクローン病を含む炎症性腸疾患(IBD)、放射線治療および/または化学療法を含む抗癌治療の結果としての粘膜炎を含むがそれに限定されない。これらの免疫障害の原因は、例えば、突発性(つまり原因不明)、遺伝的である、病原体による(例えば、ウイルス、細菌、真菌)、および/または抗癌治療(例えば、放射線治療および/または化学療法)で誘導された損傷による場合がある。
免疫反応および/または免疫系の構成要素の調節は、数多くの方法で達成することができる。下方調節は、既に進行している免疫反応の阻害もしくは抑制という形である可能性があり、もしくは免疫反応の誘導の阻害に関わる可能性もある。活性化したT細胞の機能は、T細胞反応の抑制によって、もしくはT細胞の特異的な耐性を誘導することによって、もしくはその両方で阻害される可能性がある。T細胞反応の免疫抑制は、ほとんどの場合、抑制剤への継続的な曝露を必要とする、抗原非特異的な活性過程である。T細胞における非反応性誘導もしくはアネルギー誘導を伴う耐性は、一般的に抗原特異的で耐性化剤への曝露の中断後も持続する免疫反応とは区別される。操作上、耐性は、耐性化剤が存在しない状態での特異的抗原への再曝露に対するT細胞反応の欠如により証明することもできる。
炎症性腸疾患は、高濃度のIL-1,IFN-γ、および/またはTNFが関連するTヘルパー1(Th1)細胞の過剰反応、もしくは高濃度のIL-4、IL-5および/またはIL-13に関連するTヘルパー2(Th2)細胞の過剰反応といった、殆ど常に二つの経路のうちの一つを介している(全体を参照して本明細書に組み入れる、Bouma et al.)。従って、本発明のポリペプチドが介在している可能性がある疾患治療における免疫調節活性の機構は、Th1および/またはTh2細胞集団の数の下方調節であろう。あるいは、別の活性が、炎症反応に関連するおよび/または炎症反応を介在しているサイトカイン(例えば、IL-12、IFN-γ、TNF、IL-4、IL-5、および/またはIL-13)の濃度を減少させる可能性がある。
本発明のポリペプチドの活性は、他にも方法はあるが、以下の方法で測定可能である:
以下の文献中に記載のT細胞もしくは胸腺細胞の増殖アッセイで、該文献は、Current Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Assocates and Wiley-Interscience(Chapter 3,In vitro assays for Mouse Lymphocyte Function3.1-3.19;Chapter7,Immunologic studies in Humans);Takaiら、J.Immunol.137:3494-3500,1986;Bertagnolliら、J.Immunol.145:1706-1712,1990;Bertagnolliら、Cllular Immunology 133:327-341,1991;Bertagnolliら、I.Immunol.149:3778-3783,1992;Bowmanら、I.Immunol.152:1756-1761,1994を含むがそれに限定されない。
サイトカイン産生および/または脾臓細胞、リンパ節細胞、もしくは胸腺細胞の増殖のアッセイは、Plyclonal T cell stimulation,Kruisbeek,A.M.and Shevach,E.M.In Current Protocols in Immunology.J.E.e.a.Coligan eds.Vol.1pp.3.12-3.12.14,John Wiley and Sons,Toronto.1994;およびMeasurement of mouse and human interferon-γ,Schreiber,R.D.In Current Protocols in Immunology.J.E e.a.Coligan eds.Vol1pp.6.8.1-6.8.8,John Wiley and Sons,Toronto.1994で述べられたアッセイを制限無しに含む。
(APC-T細胞相互作用に影響する数ある中のタンパク質とT細胞の直接影響を、増殖とサイトカイン産生を測定することによって特定する)抗原に対するT細胞クローン反応のアッセイは、Current Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience(Chapter 3,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function;Chapter 6,Cytokines and their cellular receptors;Chapter7,Immunologic studies in Human);Weinbergerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:6091-6095,1980;Weinbergerら、Eur.J.Immun.11:405-411,1981;Takaiら、J.Immunol.137:3494-3500、1986;Takaiら、J.Immunol.140:508-512,1988)に記載のアッセイを制限無しに含む。
4.2.8 化学走性/ケモキネシス活性
本発明のポリペプチドは、例えば単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、マスト細胞、好酸球、上皮細胞、および/または内皮細胞を含む哺乳動物細胞において化学走性もしくはケモキネシス活性に関与している可能性もある。本発明のポリペプチドは、該特性を示すポリペプチドをコードする可能性もある。化学走性受容体およびケモキネシス受容体の活性化は、目的の細胞集団を望ましい作用部位に移動させるもしくは誘引する為に利用可能でもある。化学走性組成物もしくはケモキネシス組成物(例えば、タンパク質、抗体、結合相手、もしくは本発明の調節因子)は、創傷および組織のその他の外傷の治療、および、局所的な感染の治療に利益をもたらす。例えば、リンパ球、単球もしくは好中球の腫瘍または感染部位への誘引は、腫瘍もしくは病原体に対する免疫反応の向上を引き起こす可能性がある。
タンパク質もしくはペプチドは、直接的もしくは間接的に該細胞集団の方向付けもしくは有向性運動を刺激することができれば、特定の細胞集団に対して化学走性活性を有する。望ましくは、タンパク質もしくはペプチドは、細胞の有向性運動を直接的に刺激する能力を持つ。一方、特定のタンパク質は、既知の細胞の化学走性の任意のアッセイで該タンパク質もしくはペプチドを使用することで細胞集団が容易に測定できるように、化学走性活性を有する。
化学走性活性のアッセイ(化学走性を誘導もしくは阻害するタンパク質を特定する)は、膜を越える細胞の遊走誘導に対するタンパク質の能力と、ある細胞集団の他の細胞集団への接着を誘導するタンパク質の能力を測定するアッセイを含む。運動および接着に対する適切なアッセイは、Current Protocols in Immunology,Ed by J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W.Strober,Pub.Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience(Chapter 6.12,Measurement of alpha and beta Chemokines6.12.1-6.12.28;Taubら、J.Clin.Invest.95:1370-1376,1995;Lindら、APMIS 103:140-146,1995;Mullerら、Eur.J.Immunol.25:1744-1748;Gruberら、J.of Immunol.152:5860-5867,1994;Johnstonら、J.of Immunol.153:1762-1768,1994で述べられたアッセイを制限無しに含む。
4.2.9 薬剤スクリーニング
有用な化合物のスクリーニングは、人間以外の動物への投薬、および様々なタイムポイントでの化合物のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vタンパク質の活性に対する効果のアッセイの範囲にわたる、候補化合物の投与を伴う。化合物は、腹部膨張の前もしくは開始時に投与することもできる。投与は、評価する化合物の化学的性質によって、経口、もしくは適切な注射であってもよい。化合物への細胞の反応を、適切な生化学的アッセイおよび/または組織学的アッセイを用いて経時的に評価する。
本発明のポリペプチドへの結合能もしくは活性の調節能(即ち増大もしくは減少)のスクリーニング可能な試験化合物の供給源は、(1)無機化合物および有機化合物ライブラリー、(2)天然物ライブラリー、および(3)ランダムもしくは模倣ペプチド、オリゴヌクレオチドもしくは有機分子のいずれかを含む組合せライブラリーを含む。
化合物ライブラリーは容易に合成することも、多数の販売元から購入することもでき、また既知の化合物もしくは、天然物スクリーニングを通じて「ヒット(hit)」もしくは「優位(lead)」と同定された化合物の構造アナログを含む可能性もある。
天然物ライブラリーの供給源は、微生物(細菌と真菌を含む)、動物、草木、もしくはその他の植物、もしくは海洋生物であり、またスクリーニングのための混合ライブラリーは(1)発酵および土壌、植物、もしくは海洋微生物からのブロスの抽出、もしくは(2)微生物自体の抽出によって作製してもよい。天然物ライブラリーは、ポリケチド、非リボソームペプチド、および(非天然で生じた)変異体を含む。概説として、Science 282:63-68(1998)を参照。
混合ライブラリーは、大量のペプチド、オリゴヌクレオチドもしくは有機化合物からなり、従来の自動合成法、PCR、クローニングもしくは独自の合成方法によって容易に調製も可能である。特に興味があるのはペプチドとオリゴヌクレオチド混合ライブラリーである。更に、興味あるその他のライブラリーはペプチド、タンパク質、ペプチド模倣体、複数並行合成コレクション、組み換え体、およびポリペプチドのライブラリーを含む。コンビナトリアル・ケミストリーとこれにより作製されたライブラリーについての概説として、Myers,Curr.Opin.Biotechnol.8:701-707(1997)を参照。ペプチド模倣体ライブラリーの概説と例として、Al-Obeidiら、Mol.Biotechnol,9(3):205-23(1998);Hrubyら、Curr.Opin.Chem Biol,1(1):114-19(1997);Dornerら、Bioorg Med Chem,4(5);709-15(1996)(アルキル化ジペプチド)を参照。
4.3 SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4v療法の影響を受けやすい疾患
ある状況では、本発明は薬剤および上皮形成が望まれる疾患と状態の治療に有用な方法を提供する。SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドは細胞保護作用、口腔および消化管の上皮細胞の増殖および/または分化の増大に有用である。具体的には、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドは、消火器疾患、消化管の粘膜炎、中咽頭、唇、および食道(口腔粘膜炎)の粘膜炎、炎症性腸疾患、短腸症候群、胃十二指腸潰瘍、例えばびらん性胃炎、食道炎、食道逆流、を含む消化管のびらん、および創傷、熱傷、眼科疾患、および上皮細胞の増殖もしくは再生の刺激が望まれる任意の疾患を含むその他の状態を含むがそれに限定されない、疾患もしくは状態の治療もしくは予防に有用である。口腔から消化管に至るまでの粘膜産生の不足を引き起こす疾患の治療も意図されている。
口腔粘膜炎および消化管粘膜炎を含む粘膜炎は、消化系の上皮が炎症を起こす、一部の癌療法の合併症である。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vは、癌の治療のために患者に施された、もしくは腫瘍除去後の補助療法として施された化学療法および/または放射線療法によって引き起こされる消化管の粘膜変質の予防および/または改善に有用である。典型的な化学療法剤は、BCNU、ブスルファン、カルボプラチン、シクロホスファミド、tannorubicin、ドクソルビシン(doxorubicin)、エトポシド、5-フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ifophamide、イリノテカン、メルファラン、メトトレキサート、ナベルビン(navelbine)、トポテカン、およびタキソールを限定なしに含み、また典型的な投薬計画は、BEAM(ブスルファン、エトポシド、シトシン、アラビノシド、メトトレキサート);シクロホスファミドと全身照射;シクロホスファミド、全身照射およびエトポシド;シクロホスファミドおよびブスルファン、ならびに5-フルオロウラシルとロイコボリンもしくはレバミゾールを限定なしに含む。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vでの治療前もしくは治療後の処置は、細胞保護効果もしくは再生、あるいはその両方を引き起こすのに有用であり、例えば、小腸および結腸の粘膜において、見込まれる副作用を減少させる一方で治療の投薬量を増加させることができる。
SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vで治療可能な炎症性腸疾患は、慢性、再発性、出所不明の炎症性疾患、クローン病、炎症性腸疾患に伴う形成異常、中間部大腸炎、潰瘍性大腸炎;活性大腸炎、抗生物質関連大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、空置大腸炎、好酸球性大腸炎、移植片対宿主病、肉芽腫性大腸炎、虚血性大腸炎、出血性大腸炎、マラコプラキア、壊死性腸炎、放射線性腸炎、虫垂炎を含む非感染性大腸炎;アデノウイルス性大腸炎、アメーバ性大腸炎、バランチジウム症、HSV/AIDS関連大腸炎、および、トリパノソーマ、E.coli、Mycobacterium avium intracellulare、ロタウイルス、サルモネラ、赤痢菌、Campylobacter jejuni、クロストリジウム、ボツリヌスによって引きおこされる大腸炎、および住血吸虫症、スピロヘータ症、梅毒、鞭虫症、結核症、腸チフス、Vibrio cholera、およびエルシニアに関連する大腸炎を含む非感染性大腸炎で特徴づけられる一般的な炎症性腸疾患を含む。
短腸症候群は、小腸が半分以上除去された人々に影響を及ぼす一群の問題である。小腸の一部を除去する最も一般的な理由は、クローン病の治療である。更に、癌性増殖を除去するために、腸の一部の外科的切除が必要な場合もある。短腸症候群の主要な症状は下痢である。その他の症状は、筋けいれん、鼓腸、および胸焼けを含む。短腸症候群の多くの人々は、残存する小腸が水分、ビタミン、その他の栄養素を食物から十分に吸収できないために栄養不良である。また、彼等は、生命を脅かす恐れもある脱水症状になる可能性もある。脱水症状と栄養不良に関連した問題は、脱力感、疲労、抑うつ、体重減少、細菌感染症および食べ物に対するアレルギーを含む。短腸症候群は、食習慣の変更、静脈内栄養補給、ビタミンとミネラルの栄養補助、および症状を軽減する薬剤を通じて治療する。SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vポリペプチドは、切除されていない腸組織の増殖の増大に有用である可能性もあり、その結果、腸の吸収表面積が増大し、短腸症候群に伴う症状を改善する可能性もある。
SCFA2、SCFA4、及びSCFA4vポリペプチドの細胞保護作用および/または再生活性は、放射線で誘導された粘膜炎のインビボモデル(参照して本明細書に組み入れるWithers and Elkind,Int J Radiat 17:261-267(1970))、インビボの化学療法で誘導された粘膜炎(全て全体を参照して本明細書に組み入れる、Sorisら、Oral Surg Oral Med Oral Pathol 69:437-443(1990);Moore,Cancer Chemother Pharmacol 15:11-15(1985);Farellら、Cell Prolif 35:78-85(2002))、大腸炎および小腸の潰瘍もしくは炎症のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデル(Jeffersら、Gastroenterology 123:1151-1162(2002),Hanら、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 279:G1011-G1022(2000));および短腸症候群(SBS)の外科的モデル(全体を参照して本明細書に組み入れる、Scottら、Am J Physiol G911-G921(1998);Helmrathら、J Am Coll Surg 183:441-449(1996))で試験することもできる。
被験体がSCFA2、SCFA4、およびSCFA4v治療に反応するかどうかを判断するために、罹患細胞、組織および相当する正常試料との間のSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vのmRNAとタンパク質発現濃度の比較を行った。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vポリペプチドmRNAもしくはタンパク質の発現の検出および定量の方法は、共に全体を参照して本明細書に組み入れる、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor laboratory,NY(1989)もしくはAusubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,NY(1989)に述べられた当業者によく知られた標準的な核酸およびタンパク質の検出・定量手法を用いる。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vのmRNAの標準的な検出および定量方法は、標識したSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vリボプローブを用いるインサイツハイブリダイゼーション法(全体を参照して本明細書に組み入れる、Gemou-Engesaeth,et al.,Pediatrics 109:E24-E32(2002))、SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vポリヌクレオチドプローブを用いるノーザンブロットとそれに関連した手法(全体を参照して本明細書に組み入れる、Kunzli,et al.,Cancer 94:228(2002))、SCFA2、SCFA4、およびSCFA4v特異的プライマーを用いるRT-PCR解析(Angchaiskisiri,et al.,Blood 99:130(2000))、および、分岐鎖DNA溶液ハイブリダイゼーションアッセイ(全体を参照して本明細書に組み入れる、Jardi,et al.,J.Viral Hepat.8:465-471(2001))、転写を介した増幅法(Kimura,et al.,J.Clin.Microbiol.40:439-445(2002))、例えばオリゴ、cDNA、モノクローナル抗体などのマイクロアレイ産物、リアルタイムPCR(全体を参照して本明細書に組み入れる、Simpson,et al.,Molec.Vision,6:178-183(2000))などのその他の増幅検出方法を含む。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vタンパク質の検出と定量の標準的な方法は、ウェスタンブロット解析(Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,NY(1989),Ausubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,NY(1989))、免疫細胞化学(Racila,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:4589-4594(1989)前出)、および、例えば酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および特異的酵素イムノアッセイ(EIA)を含む様々な免疫アッセイを含む(Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,NY(1989),Ausubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,NY(1989))。
本発明の方法で治療可能な疾患と状態は、望ましくは哺乳動物で生じる。哺乳動物は、例えば、ヒトおよびその他の霊長類、また、イヌやネコといったペットもしくはコンパニオン・アニマル、ラット、マウス、ウサギ、といった実験動物、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウシといった家畜を含む。
4.3.1 治療方法
本発明の組成物(ポリペプチド断片、アナログ、変異体および抗体もしくはその他の結合相手、もしくはアンチセンスポリヌクレオチドなどの調節因子を含む)は、様々な治療法での数多くの応用がある。治療応用の例は、本明細書に例示された例を含むがそれに限定されない。
本発明のある実施態様は、本発明のペプチドで治療可能な疾患または障害に罹患した個人へのSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vポリペプチドもしくはその他の本発明の組成物の有効量の投与である。投与方法は特に重要ではないが、非経口投与が望ましい。典型的な投与方法は、皮下もしくは静脈内ボーラスでの送達である。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vポリペプチドもしくはその他の本発明の組成物の投薬量は、通常処方医師によって決定される。投薬量は年齢、体重、状態、個別の患者の反応によって様々であることが予期される。一般的には、1回分当たりに投与されるポリペプチドの量は、体重当たり約0.01μg/kgから100mg/kgの範囲であり、望ましい用量は、患者の体重当たり約0.1μg/kgから10mg/kgである。静脈内投与では、本発明のSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vポリペプチドは、医薬的に許容可能な非経口溶媒と組み合わせた注射可能な形で製剤する。該溶媒は当業者によく知られ、その例は、水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液および少量のヒト血清アルブミンを含む溶液を含む。溶媒は、等張性を維持し、ポリペプチドとその他の活性成分の安定性を維持する、微量の添加物を含む場合もある。該溶液の調製は当業者の技術のうちである。
4.3.2 製剤処方
本発明のタンパク質もしくは組成物(供給源にかかわらず、組み換え体から非組み換え体の供給源、ならびに本発明のポリペプチドの抗体とその他の結合相手を限定なしに含む)は、さまざまな障害を治療もしくは改善するために、それ自体、あるいは投薬時に安定な担体もしくは賦形剤と混合した医薬組成物中で、それを必要とする患者に投与してもよい。該組成物は(タンパク質もしくはその他の活性成分および担体に加えて)、希釈剤、増量剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、および当業者によく知られたその他の成分を任意で含んでもよい。「医薬的に許容可能な」という語は、活性成分の生物活性の有効性を妨げない非毒性成分を意味する。担体の性質は投与経路に依存する。本発明の医薬組成物は、またサイトカイン、リンフォカイン、もしくはその他の造血因子、および例えば任意のFGF、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子(TGF-αとTGF-β)、インスリン様増殖因子(IGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)などといった様々な増殖因子および本明細書に記載のサイトカインも含んでもよい。
医薬組成物は更に、タンパク質の活性もしくはその他の成分の活性を強化する、またはその活性もしくは治療での使用を補う、その他の薬剤を含む場合もある。該添加因子および/または薬剤は、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分との相乗作用を生み出す、あるいは副作用を最小限にするために医薬組成物に含まれる場合もある。逆に、本発明のタンパク質もしくは活性成分は、特定のサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓溶解因子、抗血栓因子、または抗炎症剤の製剤中に、凝固因子、サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓溶解因子、抗血栓因子、または抗炎症剤(例えば、IL-1Ra、IL-1 Hy1、IL-1 Hy2、抗TNF、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤)の副作用を最小限にするために含まれる可能性もある。本発明のタンパク質は、多量体中(例えば、ヘテロダイマー、もしくはホモダイマー)またはそれ自体と別のタンパク質との複合体で活性であってもよい。結果として、本発明の医薬組成物は本発明のタンパク質を前記のような多量体もしくは複合体の形で含むこともできる。
第一のタンパク質を含む本発明の医薬組成物に含まれる方法に代わる方法として、第二のタンパク質もしくは治療薬を第一のタンパク質と同時に投与することもできる(例えば、同時にもしくは異なる時間に与えられ、薬剤の組合せが治療部位で医薬的濃度に達する)。製剤手法および即時使用の化合物の投与は、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co.,Easton,PA 最新版に見いだされるだろう。医薬的に有効な用量は更に、症状改善、例えば治療、治癒、予防もしくは関連する症状の改善、または該状態の治療、治癒、予防、もしくは改善の率の上昇をもたらすに十分な化合物の量を表す。個人に活性成分を単独投与で使用した場合、医薬的有効用量は成分単独を指す。組合せで使用する場合には、医薬的有効用量は、連続的もしくは同時に併用投与されたかどうかにかかわらず、医薬的影響を引きおこす活性成分の組み合わせた量を示す。
治療方法の実施、もしくは本発明の利用において、治療有効量の本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を治療すべき状態を有する哺乳動物に投与する。本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分は、本発明の方法に従って単独もしくはサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子を使用した他の治療法との組合せで投与してもよい。一つ以上のサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子を共投与する場合、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を、サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓溶解因子、抗血栓因子と同時、もしくは連続的のいずれかで投与してもよい。連続的に投与する場合、主治医がサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓溶解因子、抗血栓因子との組合せでの本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分の適切な投与の順について決定する。
4.3.3 投与経路
適切な投与の経路は、例えば経口、経直腸投与、経粘膜投与、腸投与;筋肉注射、皮下注射、髄内注射、更に髄膜注射、直接脳室内注射、静脈注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、もしくは眼球内注射といった非経口送達を含む。医薬組成物の使用もしくは本発明の方法の実施のために、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分の投与は、例えば経口摂取、吸引、局所適用、もしくは皮膚注射、皮下注射、腹腔内注射(IP)、非経口もしくは静脈内注射といった様々な従来の方法で実行してもよい。患者への皮下投与もしくは静脈内投与が望ましい。
あるいは、全身的な方法よりも、例えば化合物の組織への直接注射で、しばしば持続性薬剤もしくは持続放出製剤で、局所に化合物を投与する可能性もある。
別の実施態様では、上皮細胞の増殖および/または刺激が必要な被験体へのSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vを産生する細胞の移植(細胞治療)が意図される。正常ではSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vを発現しない、もしくは低濃度のSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vを発現する細胞は、医薬的濃度のSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vを産生するように、SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vをコードするポリヌクレオチドで形質転換することで修飾してもよい。細胞は、被験体と同一種のものであってもよく、もしくは異なる種由来であってもよい。望ましくは、細胞はSCFA2、SCFA4、およびSCFA4v治療が必要な被験体由来である。ヒトもしくはヒト以外の細胞は、SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vタンパク質の放出を可能にする生体適合性で半浸透性の高分子封入体を用いて被験体に移植されるか、あるいは直接的にカプセル封入無しで移植してもよい。
別の実施態様では、インビボ遺伝子治療が意図される。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vをコードするヌクレオチド配列は、本明細書で列挙されたような疾患の予防もしくは治療を行うためにタンパク質分泌のために直接的に被験体に導入される。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vをコードするヌクレオチドは、治療する組織に直接注射してもよく、あるいは、罹患した組織の細胞に例えばアデノウイルスベクターもしくはレトロウイルスベクターといったウイルスベクターにより送達してもよい。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vをコードする核酸を含む適切なベクターの物理的な移送は、リポソーム介在移送、裸のDNAの直接注射、受容体を介した移送、もしくは微粒子曝露などの方法によって達成してもよい。
本発明のポリペプチドは、望ましい作用部位に有効な用量を送達する任意の経路で投与される。個別の適応症への適切な投与経路と有効な用量の決定は、当業者の技量レベルの範囲内である。望ましくは、創傷治療には医薬的化合物を直接的に部位に投与する。本発明のポリペプチドの適切な用量範囲は、これらの用量から、あるいは適切な動物モデルでの類似の研究から推定してもよい。次に、用量は必要であれば、最大の医薬的利益を提供するために臨床医が調節してもよい。
4.3.4 組成物/製剤
本発明に従った使用のための医薬組成物は、従って従来の方法で、活性の化合物の医薬的に用いてもよい調製への加工を可能にする賦形剤と補助剤を含む生理的に許容可能な担体一つ以上を用いて製剤してもよい。これらの医薬組成物は、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、粉末化、乳液化、カプセル封入化、封入化、もしくは凍結乾燥処理の方法によって、既知の方法で製造してもよい。適切な製剤は、選択した投与の経路に依存する。医薬的に有効な量の本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を経口投与する場合、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分は、タブレット、カプセル、粉末、溶液、エリキシル剤の形態である。タブレットの形態で投与する場合、本発明の医薬組成物は、更に例えばゼラチンもしくはアジュバントといった固体担体を含んでもよい。タブレット、カプセル、粉末は、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を約5から95%含み、望ましくは本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を約25%から90%含む。液体の形態で投与する場合、例えば水、石油、ピーナッツオイル、ミネラルオイル、ダイズ油、もしくはごま油のような動植物由来の油、または合成油といった液体の担体を添加してもよい。医薬組成物の液体形態はさらに、生理食塩水、デキストロース、もしくはその他の炭水化物溶液、または、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールといったグリコールを含んでもよい。液体の形態で投与する場合は、医薬組成物は本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を重量にして約0.5%から90%含み、望ましくは本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を約1%から50%含む。
本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分の治療有効量を静脈内注射、皮膚注射、もしくは皮下注射する場合、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分は発熱物質を含まない、非経口で許容可能な水溶液の形態である。pH、等張性、安定性などを十分顧慮した該非経口で許容可能なタンパク質もしくはその他の活性成分の溶液は、当業者の技術の範囲内である。静脈内注射、皮膚注射、もしくは皮下注射のための好適な医薬組成物は、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分に加えて、例えば塩化ナトリウム注射剤、リンガー注射剤、デキストロース注射剤、デキストロースと塩化ナトリウム注射剤、乳酸加リンガー注射剤、もしくは当業者に知られたその他の等張媒体を含まなければならない。本発明の医薬組成物は、安定剤、保存料、緩衝液、抗酸化剤、もしくは当業者に知られたその他の添加物も含む可能性もある。注射剤については、本発明の薬剤は水溶液中で製剤してもよく、望ましくは、例えばハンクス液、リンガー液、もしくは生理食塩緩衝液といった生理的に適合する緩衝液とすることもできる。経粘膜投与には、障壁に浸透するのに適切な浸透剤が製剤に用いられる。該浸透剤は、当業者に一般的に知られている。
経口投与では、化合物は活性化合物と当業者によく知られた医薬的に許容可能な担体を混合することで容易に製剤される。該担体によって本発明の化合物は、治療を受ける患者が経口摂取するタブレット、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤が可能になる。経口使用する医薬的製剤は、錠剤もしくは糖衣剤のコアを得るために、もし望ましければ、適切な補助剤を添加した後に固体賦形剤、任意で得られた混合物を破砕し、混合物の顆粒を加工して得る。適切な賦形剤は、特に、乳糖、スクロース、マンニトールもしくはソルビトールなどを含む糖、例えばコーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調合剤などの増量剤である。必要に応じて、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギニン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどそれらの塩といった崩壊剤を添加してもよい。糖衣錠のコアは、適切な被覆が施される。この目的のために、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタンを含む場合もある高濃度の糖液、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物を利用してもよい。識別もしくは活性化合物の用量の異なる組合せを特徴づけるために、染料もしくは色素をタブレットもしくは糖衣の被覆に添加してもよい。
経口で使用可能な医薬品は、ゼラチンなどでできた押し込み型カプセル、ソフトカプセル、ゼラチンとグリセロールもしくはソルビトールといった可塑剤でできた密閉カプセルを含む。押し込み型カプセルは、乳糖などの増量剤、デンプンなどの結合剤、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および任意で安定剤との混合で活性成分を含んでもよい。ソフトカプセルでは、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、もしくは液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解もしくは懸濁してもよい。更に、安定剤を添加してもよい。経口投与用の全ての製剤は、該投与に適切な用量でなければならない。口腔投与には、組成物は従来の方法でタブレット、もしくはトローチ剤の形態で製剤してもよい。
吸引による投与には、本発明に従った使用のための化合物は、エアロゾルスプレー体裁の形で、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、もしくはその他の適切な気体といった、適切な推進剤を使用して加圧されたパックもしくは噴霧器から便利に送達される。加圧エアロゾルの場合、用量単位は定量を送達する弁で規定されることで決定される可能性もある。例えば吸引器で使用するゼラチンのカプセルとカートリッジは、化合物と乳糖またはデンプンといった適切な粉末基剤の粉末混合物を含んで製剤する。化合物は、例えば、ボーラス注射、もしくは継続輸液による注入による非経口投与用に製剤してもよい。注射用の製剤は、例えば、アンプルで、もしくは保存料を加えて複数用量容器で、単位投薬形態で提示してもよい。製剤は、懸濁液、溶液、または油性媒体もしくは水性媒体中の乳液のような形態をとってもよく、また懸濁化剤、安定剤、および/または分散剤などの配合剤を含んでもよい。
非経口投与のための医薬製剤は、水溶性の活性化合物の水溶液を含む。更に、活性化合物の懸濁液を適切な油性注射懸濁液として調製してもよい。適切な親油性溶媒もしくは媒体は、例えばごま油、または、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドといった合成脂肪酸エステルのような脂肪油、あるいはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、もしくはデキストランといった、懸濁液の粘性を増す物質を含んでもよい。任意で、懸濁液は適切な安定剤、もしくは、高濃度溶液の調製が可能になるように化合物の溶解度を上げる薬剤を含んでもよい。あるいは、活性成分は、使用前に例えば発熱物質を含まない滅菌水などの適切な媒体と構成する粉末形態であってもよい。
また化合物は、例えばココアバターもしくはグリセリドといった従来の坐薬基剤を含む坐薬もしくは保留浣腸といった、直腸配合で製剤してもよい。以前述べた製剤に加え、化合物は持続性製剤として製剤しても良い。該長時間作用型の製剤は、埋め込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)によって、または筋肉注射によって投与してもよい。従って、例えば、化合物は適切なポリマーもしくは疎水性物質(例えば、許容可能なオイル中の乳剤として)、またはイオン交換樹脂と共に製剤しても、あるいは難溶性誘導体として、例えば難溶性の塩として製剤しても良い。
本発明の疎水性化合物用の医薬的担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相を含む共溶媒系である。共溶媒系は、VPD共溶媒系である可能性もある。VPDは、ベンジルアルコール3%(w/v)、非極性界面活性剤のポリソルベート80が8%(w/v)、ポリエチレングリコール300が65%(w/v)の無水エタノールで溶液である。VPD共溶媒系(VPD:5W)は、5%デキストロース水溶液で1:1に希釈したVPDを含む。この共溶媒系は、疎水性化合物をよく溶解し、それ自体が全身投与で低毒性である。当然、共溶媒系の比率は溶解性と毒性の性質を損なわずに大幅変更してもよい。更に、共溶媒系化合物の同一性は様々であってもよく、例えば、別の低毒性の非極性界面活性剤をポリソルベート80の代わりに利用してもよく、ポリエチレングリコールの画分サイズは様々であってもよく、例えばポリビニルピロリドンといったその他の生体適応性ポリマーでポリビニルポリエチレングリコールで置き換えてもよく、その他の糖もしくは多糖でデキストロースを置換してもよい。あるいは、疎水性医薬組成物のその他の送達システムを利用してもよい。リポソームおよび乳液が送達媒体もしくは担体の例としてよく知られている。通常、毒性を犠牲にすることになるが、ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒も利用してもよい。更に、化合物は、医薬品を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスといった、持続性放出製剤を用いて送達してもよい。様々な種類の持続性放出材料が確立され、当業者によく知られている。持続性放出カプセルは、その化学的性質に依存して、化合物を数週間から100日以上までの間放出する。医薬品の化学的性質と生物的安定性によって、タンパク質とその他の活性成分の安定性のために更なる方法を採用してもよい。
医薬組成物は、適切な固形もしくはゲル相の担体もしくは賦形剤も含んでもよい。該担体もしくは賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーを含むがそれに限定されない。本発明の活性成分の多くは、医薬的に適合する対イオンとの塩として提供されてもよい。該医薬的に許容可能な塩基追加塩は、生物的有効性と遊離酸の性質を保持し、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、モノアルキルアミン、二塩基性アミノ酸、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、トリエタノールアミンなどといった無機塩もしくは有機塩との反応によって得られる塩である。
本発明の医薬組成物は、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分とタンパク質もしくはペプチド抗原との複合体の形態をとってもよい。タンパク質および/またはペプチド抗原は、Bリンパ球とTリンパ球両方の刺激性シグナルに送達される。Bリンパ球は、Bリンパ球の細胞表面のイムノグロブリン受容体を通じて抗原に反応する。Tリンパ球は、MHCタンパク質による抗原提示の後に、T細胞受容体(TCR)を通じて抗原に反応する。宿主細胞のクラスI-MHCおよびクラスII-MHC遺伝子にコードされるものを含め、MHCと構造的に関連するタンパク質は、Tリンパ球にペプチド抗原を提示するのに役割を果たす。抗原要素は、精製したMHCペプチド複合体として単独もしくは直接的にT細胞に信号を伝えられる共刺激分子と共に供給してもよい。あるいは、B細胞上の表面イムノグロブリンとその他の分子と結合できる抗体、およびT細胞上のTCRとその他の分子に結合できる抗体を、本発明の医薬組成物と組み合わせてもよい。
本発明の医薬組成物は、本発明のタンパク質を、その他の医薬的に許容可能な担体に加えて、ミセル、不溶性単分子層、液晶、もしくは水溶液中のラメラ層のような集合体で存在する脂質のような両親媒性物質と混合したリポソームの形態であってもよい。リポソーム製剤に好適な脂質は、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などを制限無しに含む。該リポソーム製剤の調製は、例えば全て参照して本明細書に組み入れる、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、第4,737,323号に開示されたように、当業者の水準の範囲内である。
本発明の医薬組成物中の本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分の量は、治療を受ける状態の性質と重篤度、そして患者が経験した治療前の性質に依存する。最終的には、主治医が治療する個別の患者毎に本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分の量を決定する。最初に、主治医は低用量の本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を投与し、患者の反応を観察する。患者にとって最適の医薬効果が得られるまで本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分のより多量の用量を投与してもよく、その時点で用量はそれ以上増量されない。本発明の方法の実践に用いる様々な医薬組成物は、体重kg当たり約0.01μgから約100mg(望ましくは、約0.1μgから約10mg、より望ましくは約0.1μgから約1mg)の本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分を含まなければならない。骨、軟骨、腱もしくは靱帯の再生に有用な本発明の組成物は、局所的、漸進的な組成物の投与、もしくは治療方法は埋め込みもしくは機器として局所的な組成物の投与を含む。投与の際、本発明に用いる医薬組成物は、もちろん、熱源性を含まず、医薬的に許容可能な形態である。更に、組成物は粘性がある形態で骨、軟骨、もしくは組織の損傷部位に送達されるように、望ましく封入もしくは注射してもよい。創傷の治癒と組織の修復には局所投与が適している可能性もある。上述のように、本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分以外に任意に含んでもよい医薬的に有用な薬剤を選択的にもしくは追加的に、本発明の方法の組成物で同時もしくは連続的に投与してもよい。骨および/または軟骨形成に望ましくは、組成物は、タンパク質を含む、もしくはその他の活性成分を含む組成物の骨および/または軟骨損傷部位への送達が可能で、骨と軟骨形成のための構造を提供し、任意で体内に吸収されるマトリックスを含む。該マトリックスは、現在その他の移植される医学的用途で用いている材料で形成されてもよい。
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生体分解性、機械的な性質、美容上の外見、および界面特性に基づく。特定の組成物の適用が適切な製剤を明らかにする。組成物に見込まれるマトリックスは、生物分解性で化学的に明確な硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ無水物であってもよい。その他の見込まれる材料は、骨コラーゲンもしくは皮膚コラーゲンのような生分解性で生物学的に十分定義済みの材料である。更なるマトリックスは、純粋なタンパク質もしくは細胞外マトリックス構成要素を含む。その他の見込まれるマトリックスは、非生体分解性で、化学的に明らかな、焼結したヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、もしくはその他のセラミックである。マトリックスは、ポリ乳酸とヒドロキシアパタイト、もしくはコラーゲンとリン酸三カルシウムといった、上述の種類の材料の任意の組合せからなってもよい。バイオセラミックは、カルシウム-アルミン酸塩-リン酸といったように組成物内で変化したり、細孔サイズ、粒子サイズ、粒子形状、および生分解性を変更するよう加工してもよい。現在、好適なのは、多孔質粒子の形状で、直径が150から800μmの範囲の乳酸とグリコール酸の50:50(モル重量)の共重合体である。ある用途では、マトリックスからタンパク質組成物が解離するのを防ぐために、例えばカルボキシメチルセルロースといった金属イオン封鎖剤もしくは自家血栓の利用が有用である。
好適な金属イオン封鎖剤ファミリーは、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースといったアルキルセルロース(ヒドロキシアルキルセルロースを含む)のようなセルロース材料であり、最も望ましくは、カルボキシメチルセルロース(CMC)のカチオン塩である。その他の好適な金属イオン封鎖剤は、ヒアルロン酸、アルギニン酸ナトリウム、ポリ(エチレングリコール)、ポリオキシエチレンオキサイド、カルボキシビニルポリマー、および、ポリ(ビニルアルコール)である。本発明において有用な金属イオン封鎖剤の量は、製剤の総重量に基づいて0.5-20重量%であり、望ましくは1-10重量%である。これは、ポリマーマトリックスからのタンパク質の脱離を防ぐために、また組成物が適切な治癒をもたらすために、更に、前駆細胞がマトリックスに浸潤するのをあまり妨げないような、従って、タンパク質は前駆細胞の骨形成活性支援の機会をもたらすのに必要な量を表す。更なる組成物では、本発明の更なる組成物、タンパク質もしくはその他の活性成分は、問題となっている骨および/または軟骨の異常、創傷もしくは組織の治療に有効なその他の薬剤と組み合わせてもよい。これらの薬剤は、例えば上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子(TGF-αおよびTGF-β)、およびインスリン様増殖因子(IGF)といった様々な増殖因子を含む。
医薬組成物は、現在、獣医学上の応用にも価値がある。本発明のタンパク質もしくはその他の活性成分による治療などには、ヒトに加えて、特に家畜とサラブレッドのウマが好適な患者(患畜)である。組織再生に用いるタンパク質を含む医薬組成物の用法・用量は、例えば、形成が望まれる組織重量、損傷部位、損傷した組織の状態、創傷の大きさ、損傷した組織の種類(例えば、骨)、患者の年齢、性別、食習慣、任意の感染の重篤度、投与時期、およびその他の臨床的要因といった、タンパク質の作用を変更する様々な要素を考慮して、主治医によって決定される。用量は、医薬組成物中のその他のタンパク質を含めて再構成に用いるマトリックスの種類によって変わる可能性がある。例えば、最終的組成物への例えばIGF1(インスリン様増殖因子1)といったその他の既知の増殖因子の添加が用量に影響する可能性もある。進展を、例えばX線、組織形態測定的な測定法およびテトラサイクリン標識によって、組織/骨の成長およびまた修復を定期的な評価で監視してもよい。
本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子治療に用いてもよい。該ポリヌクレオチドは、インビボもしくは生体外のいずれかで哺乳動物の被験体における発現のために細胞に導入してもよい。本発明のポリヌクレオチドは、細胞または生物への核酸導入のためのその他の既知の方法(ウイルスベクターもしくは裸のDNAの形態を含むがそれに限定しない)によって投与してもよい。また細胞は、該細胞の活性に望ましい作用を生み出すために、本発明のタンパク質存在下で生体外で培養してもよい。処理した細胞は、その後、治療の目的でインビボに導入してもよい。
4.3.5 有効用量
本発明で用いられるのに適した医薬組成物は、活性成分が意図される目的を達成するために有効な量で含まれた組成物を含む。より具体的には、治療有効量とは、治療される被験体に存在する症状の進展を防ぐ、もしくは緩和するために有効な量を意味する。有効量の決定は、特に、本明細書で提示された詳細な開示に照らせば、十分に当業者の技術の範囲内である。本発明の方法で用いる任意の化合物については、治療有効量は、最初にインビトロアッセイで妥当な量から推定することもできる。例えば、用量は、ヒトで有用な用量をより正確に決定するために利用可能な濃度範囲を達成するために、動物モデルで策定することができる。例えば、用量は、細胞培養で決定されるようなIC50を含む濃度範囲を達成するために(即ち、タンパク質の生物活性の最大阻害の半量を達成する試験化合物の濃度)、動物モデルで策定することができる。当該情報は、ヒトでの実用的用量をより正確に決定するために用いてもよい。
治療有効量とは、患者の症状の改善もしくは生存期間の延長を引きおこす化合物の量を表す。毒性と治療効果は標準的な薬学的手法で細胞培養もしくは実験動物で決定してもよく、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的用量)およびED50(集団の50%に対して医薬的に有効な用量)の決定である。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数で、LD50とED50の間の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が望ましい。これらの細胞培養アッセイと動物研究から得られたデータは、ヒトでの使用のための用量範囲の策定に用いることができる。該化合物の用量は、望ましくは毒性がほとんどないもしくは全くないED50を含む範囲内の血中濃度になる。用量は、採用した投薬形態と使用した投与経路によってこの範囲内で異なることもある。的確な製剤、投与経路、および用量は、患者の状態を観て個別の医師が決定することもできる。例として、Finglら、1975,in "The Pharmacological Basis of Therapeutics",Ch.1 p.1を参照。投薬量と投薬間隔は、目的の効果もしくは最低有効濃度(MEC)を維持するために十分な活性部分の血漿濃度を提供するために個別に調節してもよい。MECは各化合物で異なるが、インビトロデータから推測可能である。MECを達成するのに必要な用量は、個人の特性と投与経路に依存する。しかし、血漿濃度の測定にはHPLCアッセイもしくはバイオアッセイが利用可能である。
投薬間隔もMEC値を用いて決定することができる。化合物はMEC以上の血漿濃度を時間の10-90%の間、望ましくは30-90%の間、最も望ましくは50-90%の間維持する投与計画を用いて投与しなければならない。局所投与もしくは選択的取り込みの場合、薬剤の局所有効濃度は血漿濃度とは合致しない可能性もある。
本発明のポリペプチドもしくはその他の組成物の典型的な投薬計画は、体重当たり1日あたり約0.01μg/kgから100mg/kgの範囲であり、好適な用量は患者の体重あたり、一日当たり約0.1μg/kgから25mg/kgであり、大人と子供で異なる。投薬は、1日1回、もしくは同等の用量をより長い、もしくはより短い間隔で送達してもよい。
投薬する組成物の量は、当然、治療を受ける被験体、被験体の年齢および体重、疾患の重篤度、投与方法、および処方する医師の判断に依存する。
4.3.6 診断アッセイとキット
本発明は更に、任意で適切な標識と結合もしくは別の方法で結びつけた本発明の核酸プローブもしくは抗体を用いて、試験サンプル中の本発明のORFの一つもしくはその相同体の、存在もしくは発現を特定する方法を提供する。
一般的に、本発明のポリペプチドを検出する方法は、試料とポリヌクレオチドと結合して複合体を形成する化合物を、複合体を形成するのに十分な期間接触させ、複合体が検出された場合に本発明のポリヌクレオチドが試料中に検出されるように複合体を検出する方法を含む。該方法は、本発明のポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でアニーリングする核酸プライマーとの試料を当該条件下で接触させ、もしポリヌクレオチドが増幅されれば試料中にポリヌクレオチドが検出されるように、アニーリングしたポリヌクレオチドを増幅する方法からなってもよい。
一般的に、本発明のポリペプチドの検出方法は、試料とポリヌクレオチドと結合して複合体を形成する化合物を、複合体を形成するのに十分な期間接触させ、複合体が検出された場合に本発明のポリペプチドが試料中に検出されるように複合体を検出する方法からなってもよい。
詳細には、該方法はテスト試料を一つ以上の本発明の抗体もしくは一つ以上の本発明の核酸プローブとのインキュベーション、およびテスト試料中の組成物への核酸プローブもしくは抗体の結合のアッセイからなってもよい。
テスト試料との核酸プローブもしくは抗体のインキュベーション条件は様々である。インキュベーション条件は、アッセイで利用したフォーマット、利用した検出方法、および、アッセイで用いた核酸プローブもしくは抗体の種類と性質に依存する。当業者は、本発明の核酸プローブもしくは抗体を容易に適用して使用できる一般的に利用可能なハイブリダイゼーション、増幅、もしくは免疫学的アッセイの任意のフォーマットを認めるだろう。該アッセイの例は、Chard,T.,An Introducton to Radioimmunoassay and Related Techniques,Elsevier Science Publishers,Amsterdam,The Netherlands(1986);Bullock,G.R.et al.,Techniques in Immunocytochemistry,Academic Press,Orlando,FL Vol.1(1982),Vol.2(1983),Vol.3(1985);Tijssen,P.,Practice and Theory of immunoassays:Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Elsevier Science Publishers,Amsterdam,The Netherlands(1985)に見いだすことができる。本発明のテスト試料は、細胞、タンパク質、もしくは細胞の膜抽出物、もしくは例えば唾液、血液、血清、血漿もしくは尿といった生物学的液体を含む。上述の方法で使用したテスト試料は、アッセイのフォーマット、検出方法の性質、アッセイする試料として用いた組織、細胞もしくは抽出物に基づいて異なる。タンパク質抽出物もしくは細胞の膜抽出物の調製方法は、当業者によく知られており、利用するシステムに適合した試料を得るために容易に適応可能である。
本発明の別の実施態様では、本発明のアッセイを行うのに必要な試薬を含むキットが提供される。具体的には、本発明は、厳重に封じられた一つ以上の容器で、(a)第一の容器は、本発明のプローブもしくは抗体の一つを含み、(b)一つ以上の別の容器は、洗浄試薬、プローブもしくは抗体の結合の存在を検出できる試薬の一つ以上を含む容器を含むコンパートメントキットを提供する。
詳細には、コンパートメントキットは、試薬が別々の容器に入った任意のキットを含む。該容器は、小さなガラス容器、プラスチック容器、または細長いプラスチックもしくは紙の小片を含む。該容器は、試料と試薬が交差汚染しないように一つのコンパートメントから別のコンパートメントに能率的に試薬を移せるように、また各容器の試薬もしくは溶液を定量的な方法で一つのコンパートメントから別のコンパートメントに添加できるようになっている。該容器は、テスト試料を受け入れる容器、アッセイに用いる抗体を含む容器、洗浄試薬(例えばリン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝液など)を含む容器、また抗体もしくはプローブの結合の検出に用いる試薬を含む容器を含む。検出試薬の種類は、標識した核酸プローブ、標識した二次抗体、もしくは、一次抗体が標識されている場合には、酵素的な、または標識した抗体と反応可能な抗体結合試薬といった代わりとなる方法である。当業者は、開示された本発明のプローブと抗体は、当業者が既知の確立されたキットフォーマットに容易に組み込めることを容易に理解するだろう。
4.3.7 スクリーニングアッセイ
単離された本発明のタンパク質とポリヌクレオチドを用いて、本発明は更に、配列番号4、15、24、もしくは50で示すヌクレオチド配列に相当するORFがコードするポリペプチドに結合する、または核酸がコードするポリペプチドの特定のドメインに結合する調節薬剤の取得と同定の方法を提供する。詳しくは、該方法は、
(a)単離した本発明のORFがコードするタンパク質もしくは本発明の核酸と試薬の接触、および
(b)試薬が該タンパク質もしくは該核酸に結合するかどうかの検出、
の工程を含む。
調節薬剤は、上皮細胞のSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの増殖活性を増大もしくは減少させる可能性もある。
一般的に、本発明のポリヌクレオチドに結合する化合物同定のための該方法は、化合物と本発明のポリヌクレオチドをポリヌクレオチド/化合物複合体を形成するのに十分な時間接触させ、もしポリヌクレオチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリヌクレオチドに結合する化合物が同定されるように複合体を検出する方法を含む可能性もある。
同様に、従って、一般的に、本発明のポリペプチドに結合する化合物同定のための該方法は、化合物と本発明のポリペプチドをポリペプチド/化合物複合体を形成するのに十分な時間接触させ、もしポリペプチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリペプチドに結合する化合物が同定されるように複合体を検出する方法を含む可能性もある。
本発明のポリペプチドに結合する化合物の同定方法は、化合物と本発明のペプチドを細胞内で標的遺伝子配列の発現を促進するポリペプチド/化合物複合体を形成するのに十分な時間接触させ、もしポリペプチド/化合物複合体が検出されれば、本発明のポリペプチドに結合する化合物が同定されるようにレポーター遺伝子配列の発現によって複合体を検出する方法を含む可能性もある。
該方法で同定された化合物は、本発明のポリペプチドの活性を調節する(化合物が存在しない場合に観察される活性と比較して、活性を増大もしくは減少させる)化合物を含む可能性もある。あるいは、該方法で同定された化合物は、本発明のポリヌクレオチドの発現を調節する(化合物が存在しない場合に観察される発現レベルと比較して、発現を増大もしくは減少させる)化合物を含む可能性もある。本発明の方法で同定された化合物のような化合物は、当業者によく知られた標準的アッセイを用いて活性/発現の調節能を試験することもできる。
上述のアッセイでスクリーニングした薬剤は、ペプチド、炭水化物、ビタミン誘導体、もしくはその他の医薬品である可能性もあるが、それに限定されない。薬剤は、選択されてランダムにスクリーニングされるか、もしくは合理的に選択され、もしくはタンパク質モデリング手法を用いて設計される。
ランダムスクリーニングでは、ペプチド、炭水化物医薬品などといった試薬がランダムに選択され、本発明のORFがコードするタンパク質への結合能についてアッセイを行う。あるいは、薬剤は合理的に選択もしくは設計してもよい。本発明で用いる場合、「合理的に選択もしくは設計」される薬剤とは、薬剤を特定のタンパク質の構造に基づいて選択する場合を指す。例えば当業者は、合理的に設計した抗ペプチドペプチド(例えば、Hurbyら、Application of Synthetic Peptides:Antisense Peptides,"In Synthetic Peptides,A User's Guide,W.H.Freeman,NY(1992),pp.289-307,およびKaspczakら、Biochemistry 28:9230-8(1989)を参照)もしくは薬剤などを生成するために、特定のペプチド配列に結合可能なペプチド、薬剤などを生成するための現在利用可能な方法を容易に適用することもできる。
前述に加えて、大雑把に述べたように本発明のある種類の薬剤は、本発明のORFもしくはEMFの一つへの結合を通じて、遺伝子発現を制御するために用いることもできる。前述のように、該薬剤はランダムにスクリーニングされるか、もしくは合理的に設計/選択される。ORFもしくはEMFを標的にすることよって、当業者は単一ORFもしくは同一のEMFに発現制御を依存する複数ORFのいずれかの発現を調節する、特異的な配列もしくは要素特異的な薬剤を設計することができる。ある種類のDNA結合剤は、DNAもしくはRNAと結合することによってハイブリダイゼーションさせたもしくは三重らせん構造をとる塩基残基を含む薬剤である。該薬剤は、典型的なホスホジエステル、リボ核酸骨格に基づく可能性があり、もしくは塩基付着能がある様々なスルフヒドリル誘導体もしくは多量体誘導体である可能性もある。
これらの方法で用いるのに適した薬剤は、通常20から40塩基を含み、転写に関わる遺伝子領域(三重らせん:Leeら、Nucl.Acids Res.6:3073(1979);Cooneyら、Science 241:456(1988);およびDervanら、Science 251:1360(1991)を参照)、または、mRNA自体(アンチセンス:Okano,J.Neurochem.56:560(1991);Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression,CRC Press,Boca Raton,FL(1988))に相補的になるよう設計する。三重らせん構造は、mRNA分子のポリペプチドへの翻訳をアンチセンスRNAハイブリダイゼーションが阻害する上に、DNAからのRNA転写遮断を任意で引きおこす。両方の手法とも、モデルシステムで有効であることが示されてきた。本発明の配列に含まれる情報は、アンチセンスもしくは三重らせんオリゴヌクレオチドおよびその他のDNA結合剤の設計に必要である。
本発明のORFの一つにコードされるタンパク質に結合する薬剤は、診断薬として利用することもできる。本発明のORFの一つにコードされるタンパク質に結合する薬剤は、医薬組成物を作製するために、既知の手法を用いて製剤することもできる。
実施例1:ヒト細胞のcDNAライブラリーからの配列番号1の単離
新規核酸である配列番号1は、成人の脳から調製されたヒトcDNAライブラリーから、標準的なPCR法、ハイブリダイゼーションsequence signature解析による配列決定、およびサンガー配列決定法を用いて得た。挿入断片に近接するベクター配列に特異的なプライマーを用いてライブラリーの挿入断片をPCRで増幅した。試料をナイロン膜上にスポットし、オリゴヌクレオチドプローブで配列サインを得るために調べる。クローンは類似もしくは同一配列のグループにし、単一の代表クローンをゲルで配列決定するために選択する。増幅した挿入断片の5’配列をM13シークエンシングリバースプライマーを用いて典型的なサンガーの配列決定プロトコルで推定した。PCR産物を精製し、蛍光色素ターミネーターサイクルシークエンスに供した。シングルパスゲルシークエンシングを377 Applied Biosystems(ABI)シークエンサを用いて行った。配列番号1の挿入断片は、共同所有の国際公開第WO03/029405号に記載されている。
実施例2:配列番号2の組み立て
SCFA2(配列番号2)をコードする核酸を上の実施例1で記載の方法でcDNAライブラリーから、ある例では一つ以上の公開データベースから得た配列から組み立てた。最終的な配列をEST配列を種として用いて組み立てた。次に、種を拡張組み立てに拡大するために、追加の配列をこの組み立てに属する別のデータベースから引き出すことによって再帰アルゴリズムを用いた(つまり、EST配列を含むHyseqデータベース、dbESTバージョン124、gbpri 124、およびUniGeneバージョン124)。組み立てを拡張する前述のデータベースからの追加配列がなくなった時点でアルゴリズムを終了した。組み立てへの構成配列の算入は、組み立て配列に対してBLASTスコアが300以上で同一性比率が95%以上のBLASTNヒットに基づいた。
全長遺伝子のcDNA配列とそれに相当するタンパク質配列は、PHRAP(Univ.of Washington)もしくはCAP4(Paracel)を用いて組み立てた配列から作り出した。任意のフレームシフトと不適当な終止コドンを手作業編集で修正した。編集の際、配列をFASTYおよびBLASTを用いてGenbank(即ち、dbESTバージョン124、gbpri 124、UniGeneバージョン124、Genpeptリリース124)に対して配列を照合した。編集過程で使用した可能性があるその他のコンピュータープログラムは、phredPhrapとConsed(University of Washington)およびed-ready、ed-extおよびcg-zip-2(Hyseq,Inc)だった。全長のヌクレオチドとアミノ酸配列は、配列番号2および3としてそれぞれ配列目録に示されている。配列番号2および3は、共同所有の国際公開第WO03/029405号に以前、記載された。
実施例3:SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vのクローニングと発現
SCFA2ポリペプチドを発現させるため、SCFA2の全長DNA(配列番号2)をヒト小脳mRNAを用いて構築したcDNAライブラリー(Ambion)からPCR増幅した。また配列はヒトの様々な組織のmRNA由来のcDNAのプールからも単離した。
1回目のPCRは、順方向プライマー(配列番号27)および逆方向プライマー(配列番号28)5'-GAGCAGCACAAAGGCTGCAC-3'を用いて行った。2回目のPCRは、一次PCRをテンプレートとして用いて、順方向プライマー配列番号29と逆方向プライマー配列番号30を用いて行った。順方向プライマーと逆方向プライマー(配列番号29と30)内に組み込まれた制限サイトのNheIおよびXbalを哺乳動物発現ベクターpIntron/IgκへのNheI-Xbal断片のサブクローニングに用いた。NheI-Xbal断片は、シグナルペプチド(配列番号6)と終止コドンが欠けたSCFA2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号5)を含む。哺乳動物発現ベクターpIntron/Igκは、pSectagベクター(Invitrogen Inc.,Carsbad,CA)を以下のようにpCI哺乳動物発現ベクター(Promega,Madison,WI)由来のキメライントロンを操作して導入して遺伝的に修飾することで得た。pCMVおよびイントロン配列を含むpCIベクターの断片をBglIIとNheI制限酵素を用いてpCIベクターから切り出し、BglIIとNheIに隣接した配列を除いたpSectagベクターにサブクローニングした。
SCFA2ΔCをコードするcDNAを前述のcDNAプールからPCRを用いて単離した。順方向プライマー配列番号52と逆方向配列番号53を用いてPCRを行った。プライマーに含まれるXbaIとNheI部位は、SCFA2ΔCのNheI-Xbal断片の哺乳動物発現ベクターpIntron/Igκへのサブクローニングに用いた。SCFA2ΔCのNheI-Xbal断片は、配列番号51のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号50)を含む。
SCFA4、およびSCFA4vをコードするcDNAは、前述のcDNAプールからPCRを用いて単離した。1回目のPCRは、順方向プライマー(配列番号31)および逆方向プライマー(配列番号32)を用いて行った。
各cDNAライブラリーから二つの別の挿入断片が増幅されたのを示すPCR産物を分離するために、アガロースゲルのエチレンブロマイド染色を用いた。各挿入断片の配列を決定した。ある挿入断片は、SCFA4(配列番号13)をコードする配列を含んでおり、一方第二の挿入断片は、本明細書でSCFA4vとして特定されたSCFA4の変異体(配列番号22)をコードする配列を含んでいた。二回目のPCRは、一次PCRをテンプレートとして用いて、配列番号33の順方向プライマーと配列番号34の逆方向プライマーを用いて行った。プライマー内に含まれるNheIおよびXbaI部位をSCFA4およびSCFA4vのNheI-XbaI断片を哺乳動物発現ベクターpIntron/Igκへのサブクローニングに用いた。SCFA4のNheI-XbaI断片は、シグナルペプチド(配列番号17)と終止コドンが欠けたSCFA4のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号16)を含む。SCFA4vのNheI-XbaI断片は、シグナルペプチド(配列番号26)と終止コドンが欠けたSCFA4vのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号25)を含む。
実施例4:アデノウイルスベクター
主要成熟型のSCFA2(配列番号5)、SCFA4(配列番号16)、もしくはSCFA4v(配列番号25)、およびSCFA2のC末端欠失のSCFA2ΔC(配列番号51)をpIntron/IgκベクターからIgκリーダー配列とpIntron/IgκベクターのV5His6タグと共に増幅し、pAdenovator-CMVIntronアデノウイルスベクター(配列番号47)に次のようにクローニングした。pIntron-SCFA2-V5His6(配列番号36)をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号35)を配列番号37の順方向プライマーと配列番号38の逆方向プライマーを用いてpIntron/Igκから増幅した。プライマー内に含まれるNheIおよびXbaI部位を配列番号35をpAdenovator-CMVIntronベクター(配列番号47)のNheIおよびNotI部位にクローニングするのに用いた。
pIntron-SCFA4-V5His6(配列番号40)をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号39)を配列番号41の順方向プライマーと配列番号42の逆方向プライマーを用いてpIntron/Igκから増幅した。プライマー内に含まれるNotIおよびXbaI部位を配列番号39をpAdenovator-CMVIntronベクター(配列番号47)のNheIおよびNotI部位にクローニングするのに用いた。
pIntron-SCFA4v-V5His6(配列番号44)をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号43)の増幅にも配列番号40と41のプライマーを用いた。配列番号43を上述のようにNotIおよびXbaI部位を用いてpAdenovator-CMVIntronベクターにクローニングした。
pIntron-SCFA2ΔC-V5His6(配列番号55)をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号54)をpIntron/Igκから増幅し、pAdenovator-CMVIntronベクター(配列番号47)のNheIおよびNotI部位にクローニングした。
アデノウイルスベクターのpAdenovator-CMVIntronは、pAdenoVatorCMV5-IRES-GFP(Qbiogene,Carlsbad,CA,U.S.)を下記のように改変することで得た。pAdenoVatorCMV5-IRES-GFPをSpeIで消化し、MCSを除去し、IRESとGSPを順方向プライマー(配列番号45)と逆方向プライマー(配列番号46)を用いてPCR増幅した、pcDNA/Intronベクター由来のIntron-MCS-V5His-BGH polyAと結さつした。
Adenovirus-5ゲノム(E1/E2欠失)をコードするAdEasy-1プラスミドを持つ細菌細胞BJ5183(Qbiogene,Carlsbad,CA,U.S.A)への線状化したトランスファーベクターの形質転換をメーカーの取扱説明書に従って電気穿孔法により行った。組み換えアデノウイルスは、以前記載のように(Garnier,A.,J.Coteら、1994)、QBI-293A細胞(Qbiogene,Carlsbad,CA,U.S.A)中で作製し、増幅し、CsClバンド形成によって精製した。組み換えアデノウイルスを感染させた293A細胞による組み換えタンパク質の発現を、抗V5抗体(Invitrogene Inc.,Carlsbad,CA)を用いてウェスタン解析で測定した。CsCl精製した組み換えウイルスのタイターは、Adeno-X rapid titer キット(BD Biosciences,Palo Alto,U.S.A.)を用いてメーカーのプロトコールに従って測定した。手短に述べると、保存用ウイルスを、保存用の組み換えアデノウイルスの一連の希釈系列を293A細胞に感染させ、固定し、感染48時間後に形質導入した細胞をマウスの抗hexon抗体で染色することで試験した。シグナルは、ホースラディッシュのペルオキシダーゼに結合したヤギ抗マウス抗体で検出し、金属で感度強化された3,3'-ジアミノベンジジン テトラヒドロクロリド(DAB)で現像した。
実施例5:SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの生物活性評価のモデルとしての組み換えアデノウイルスの投与
腸上皮と結腸上皮に対するSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの効果を判定するために、SCFA2、SCFA4、およびSCFA4v組み換えアデノウイルスを正常マウスに投与した。アデノウイルスの投与前に、9-11週齢のBALB/cマウスをイソフルランで麻酔した。マウスあたり1x1010ウイルス粒子を後眼窩静脈を通じて注射した。同じタイターのコントロールウイルス(空のウイルス)もしくはPBSのみをコントロールとして用いた。合計46匹のマウスを用いて研究を行った。マウスをウイルス注射の3日後に屠殺した。上皮細胞のインビボ増殖率を測定するために、屠殺の4時間前に1mgのブロモデオキシウリジン(BrdU)を腹腔内(IP)に注射した。小腸、結腸、脾臓、肝臓、および骨髄などの様々な組織を採取し、ホルマリンで固定した。組織学的評価のために、パラフィン包埋切片をヘマトキシリンとエオジン(H&E)で染色した。切片は、以前記載のように(Mckinley,J.N.et al.,2000)、メーカーの取扱説明書(Oncogene Research product,Boston,U.S.A.)に従ってBrdU免疫組織化学解析用にも処理した。腸上皮細胞の増殖を評価するために、以前述べられた方法(Scholzen,T.et al.2000)に従って抗マウスKi67抗原ラットモノクローナル抗体(Dako Ltd.,High Wycombe,UK)を用いて免疫組織化学解析も行った。
アデノウイルス注射3日後に屠殺した小腸由来の切片のH&E染色(図4)は、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vアデノウイルスを受けたマウスの小腸は顕著に変化したことを示している。SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vによって引き起こされた組織学的変化は、腺窩の長さと分岐の複雑さが顕著に増した腺窩上皮の過形成によって著しいびまん性の肥厚した粘膜などであった。小腸で見られた影響に加えて、SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vは結腸の腺窩の長さと杯細胞の数とサイズが顕著に増大した腺窩の上皮過形成も誘導した。
SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの腸上皮細胞の増殖に対する影響を評価するため、コントロールマウスとSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vアデノウイルスを受けたマウスの小腸と結腸由来の切片上でBrdUの取り込みを行った。図5に示すように、SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vアデノウイルスを受けたマウスの小腸と結腸の腺窩は、コントロール動物の小腸と比較して顕著にBrdU陽性細胞が多かった。従って、SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vは消化管上皮細胞の増殖を刺激する。
実施例6:放射線で誘導された粘膜炎に対するSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの予防効果
予防薬および治療薬としてのSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの効果を放射線で誘導した粘膜炎の動物モデルで試験する。
10-12週齢の成体のオスBDF1マウス48匹を用いた。供給会社からの配達時と実験前に、動物を換気したケージで概日リズムを安定化させるために12時間の明暗周期で2週間個別に飼育する。動物は、餌と水を自由摂取させた。動物を6匹ずつの8グループに分け以下のように処理した。
1.13GyのX線照射(全身)前72、48、24時間にSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを2mg/kg静脈注射。
2.13GyのX線照射(全身)前72、48、24時間にSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを5mg/kg静脈注射。
3.13GyのX線照射(全身)前72、48、24時間にKGFを125μg/kg静脈注射。
4.13GyのX線照射(全身)前72、48、24時間に生理食塩水媒体を静脈注射。
5.無処理、無照射コントロール
6.13GyのX線照射(全身)後24、48、72、時間にSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを2mg/kg静脈注射。
7.13GyのX線照射(全身)後24、48、72、時間にSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを5mg/kg静脈注射。
8.13GyのX線照射(全身)後24、48、72、時間に生理食塩水を静脈注射。
注射は同時刻に行った。腸の傷害は15:00の13GyのX線の単回照射(0.7Gy/minで照射)で誘導した。
照射4日後に動物を屠殺する。小腸を切除し、組織学的解析の前にカルノア固定液で固定する。3μm厚の横断面切片を薄切し、ヘマトキシリンとエオジン(H&E)で染色する。
屠殺直後に、十二指腸、結腸中部、肝臓、肺、舌、脾臓、胃、および膵臓も切除してホルマリン生理食塩水で1晩固定し、70%エタノールで保存する。
各動物で腸外周を10箇所(グループあたり60箇所)解析した。外周は既知の腸の長さに相当し、従って簡便な長さベースライン単位である。外周当たりに生存している腺窩の数を評価し、グループあたりの平均を求める。
腺窩のサイズの違いに起因する評価のエラーを補正するために、腺窩の幅の平均(もっと広い点で測定)も測定する。補正は以下のように適用した。
補正後の腺窩の数/外周=無処理コントロールでの平均腺窩幅×処理グループでの生存腺窩の平均個数/処理を行った動物での平均腺窩幅
SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vは照射の障害作用から小腸上皮を保護するために投与することもでき、また放射線治療が示された患者に予防剤としても使用することもできる。
実施例7:化学療法で誘導された粘膜炎に対するSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの予防効果
A.正常マウス
正常マウスにおける化学療法で誘導された粘膜炎に対する組み換えSCFA2およびSCFA2ΔCの効果を評価した。実験プロトコルは、過去にBoushey et al.(Cancer Res.61:687-693(2001))によって述べられたプロトコルに基づいた。
メスのBDF-1マウス(11-13週齢)を用いた。各13匹ずつマウスを実験グループに分け、以下のように処理した。
1.ネガティブコントロール:媒体(50%DMSO)を0日目から3日目まで腹腔内注射し、食塩水を-3日目から6日まで毎日静脈注射。
2.粘膜炎コントロール:50mg/kgの5-FUを0日目から3日目まで腹腔内注射し、食塩水を-3日目から6日まで毎日静脈注射。
3.50mg/kgの5-FUを0日目から3日目まで腹腔内注射し、食塩水100μl中に50μgのSCFA2を-3日目から6日まで毎日静脈注射。
4.50mg/kgの5-FUを0日目から3日目まで腹腔内注射し、食塩水100μl中に5μgのSCFA2を-3日目から6日まで毎日静脈注射。
5.50mg/kgの5-FUを0日目から3日目まで腹腔内注射し、食塩水100μl中に50μgのSCFA2ΔCを-3日目から6日まで毎日静脈注射。
6.50mg/kgの5-FUを0日目から3日目まで腹腔内注射し、食塩水100μl中に5μgのSCFA2ΔCを-3日目から6日まで毎日静脈注射。
0日目から開始して、動物の体重、下痢の重篤度、および死亡率を毎日記録した。0から3の下痢スコアは、症状の悪化に対応して正常の0から重症の3までを反映した。体重変化は、無処理グループの体重に対する割合として計算した。
全ての動物は6日目に安楽死させ、屠殺2時間前に4mg/0.1mlのBrdUを注射した。大腸と小腸を切除して秤量し、長さを測定し、空腸中部の直径を記録した。空腸中部の断片(1cm)を幽門から約14-15cmから切り出し、横行結腸の断片(1cm)を回盲部から約4cmで切り出した。腸の断片を洗い流し、組織学解析のために10%中性に緩衝したホルマリンで固定した。粘膜の組織学的検討と形態計測をImagePro Software(ImegaPro,Ltd.,Ashford,Middlesex,UK)を用いて組織切片上で行った。
体重に対するSCFA2およびSCFA2ΔCの影響を表1と2それぞれに、また図6に要約する。
SCFA2もしくはSCFA2ΔCを受けなかったマウスと比較した場合、SCFA2およびSCFA2ΔCは5-FUで誘導した粘膜炎で引き起こされた下痢の重篤度と死亡率を有意に減少させた。同様にSCFA2およびSCFA2ΔCは、5-FU処理した動物が経験した体重減少を軽減した。
SCFA2およびSCFA2ΔCの腸の全体的な状態に対する影響を図7に示す。5-FU処理したマウスの腸は萎縮し、出血を伴った多数の病変が観察されたが、一方、SCFA2もしくはSCFA2ΔCを受けたマウスの腸の状態は、SCFA2およびSCFA2ΔCの腸上皮に対する増殖作用のために典型的な膨張を伴い、明らかに正常だった。
全実験グループの小腸と結腸の腸切片の組織学的解析は、5-FUにより引き起こされた腸粘膜の絨毛と腺窩コンパートメントに対する大規模な損傷を予防することで、SCFA2およびSCFA2ΔCが5-FUで誘導した粘膜炎のマウスの腸の構造を保護したことを示した(図8)。空腸中部(mid-jejunum)の絨毛の高さと腺窩の深さの微小形態計測は、SCFA2およびSCFA2ΔCの作用が顕著であることを裏付けている(図9)。BrdU染色で陽性だった腺窩細胞の割合として計算される腺窩の増殖指数は、生理食塩水を受けたマウスよりも、SCFA2もしくはSCFA2ΔCを受けた5-FU処理したマウスで顕著に高かった(P<0.05)(図10)。SCFA2およびSCFA2ΔCで処理したマウスの小腸と結腸の両方におけるBrdU取り込みの組織学的解析を、図11と12にそれぞれ示す。
SCFA2およびSCFA2ΔCは小腸と結腸を5-FUの有害な作用から保護する。従って、SCFA2およびSCFA2ΔCは、抗腫瘍薬治療の有害な副作用を低減するために化学療法剤と合わせて使用することもできる。
B.腫瘍を有するマウス
化学療法で誘導した粘膜炎におけるヒト組み換えSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの有効性は、健康なマウスと腫瘍を有するマウスで評価される。実験プロトコルはBoushey et al(Cancer Res 61:687-693(2001))により前述されたプロトコルに基づく。
100万個のCT26マウス結腸腫瘍細胞(ATCC、Manassas,VA,USA)を同種のBALB/cマウスのメスに皮下注射し、腫瘍を5日間成長させる。健康な動物と腫瘍を有する動物を各6匹ずつの実験グループに分け、以下のように処理を行う。
1.腫瘍有りのマウス、媒体(50%DMSO)を1日目から5日目まで腹腔内注射、生理食塩水を0日目から7日目まで静脈注射(TVS)
2.腫瘍有りのマウス、媒体(50%DMSO)を1日目から5日目まで腹腔内注射、100μlの生理食塩水中に5、50μgのSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを0日目から7日目まで静脈注射(TVG)
3.腫瘍有りのマウス、50mg/kgの5-FUを1日目から5日目まで腹腔内注射、生理食塩水を0日目から7日目まで静脈注射(TDS)
4.腫瘍有りのマウス、50mg/kgの5-FUを1日目から5日目まで腹腔内注射、100μlの生理食塩水中に5、50μgのSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを0日目から7日目まで静脈注射(TDG)
5.健康なマウス、50mg/kgの5-FUを1日目から5日目まで腹腔内注射、生理食塩水を0日目から7日目まで静脈注射(NDS)
6.健康なマウス、50mg/kgの5-FUを1日目から5日目まで腹腔内注射、100μlの生理食塩水中に5、50μgのSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを0日目から7日目まで静脈注射(NDG)
動物の体重、下痢の重篤度、腫瘍サイズの測定値を0、2、4、6、8日目に記録する。0から3の下痢スコアは、症状の悪化に対応して正常の0から重症の3までを反映する。体重変化は、無処理グループの体重に対する割合として計算した。腫瘍の長さ、幅、高さをノギスで測定し、腫瘍の体積は(長さx幅x高さ)/2として計算する。
全ての動物を8日目に安楽死させた。大腸と小腸を切除して秤量し、長さを測定し、空腸中部の直径を記録した。空腸中部の断片(1cm)を幽門から約14-15cmから切り出し、横行結腸の断片(1cm)を回盲部から約4cmで切り出した。腸の断片を洗い流し、組織学解析のために10%中性に緩衝したホルマリンで固定した。粘膜の組織学的検討と形態計測をImagePro Software(ImegaPro,Ltd.,Ashford,Middlesex,UK)を用いて組織切片上で行った。
SCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vは、抗腫瘍剤の有害な副作用を低減するために化学療法剤と合わせて使用することもできる。
実施例8:化学療法および放射線で誘導された口腔粘膜炎に対するSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの予防効果
A.放射線で誘導された口腔粘膜炎
舌の背側(頬側)上皮および腹側上皮の増殖に対するSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの効果をX線照射に供したマウスで研究する。
メーカーの取扱説明書と以前記載した方法(Scholzen,T.et al.2000)に従って、抗マウスKi67抗原ラットモノクローナル抗体(Dako Ltd.,High Wycombe,UK)を用いて、非照射マウスおよび照射マウスの舌のパラフィン包埋切片免疫組織化学解析を行った(実施例7Bのグループ1、2、および3)。
舌腹側上皮への照射で一般的に引き起こされる細胞充実度の喪失をSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4が低減させることを裏付けるために、Ki67染色で陽性だった上皮細胞の割合として計算される腺窩の増殖指数を計算した。
B.化学療法で誘導された口腔粘膜炎
5-FU処理した動物(実施例7Aのグループ3-6)の舌切片の組織学的解析は、SCFA2およびSCFA2ΔCが5-FU処理した正常BDF-1マウスの舌上皮層の形態を維持することを示した(図13)。基底層上皮細胞の数(図14)と粘膜厚(図15)の微小形態計測は、SCFA2およびSCFA2ΔCの効果が顕著であることを裏付けた。BrdU染色で陽性だった基底層上皮細胞の割合として計算される基底層のBrdU増殖指数は、5-FU処理してSCFA2およびSCFA2ΔCを受けたマウスでは、生理食塩水を受けた場合よりも有意に高かった(P<0.05)(図16)。
従って、SCFA2およびSCFA2ΔC、SCFA4、もしくはSCFA4vは、化学療法および放射線療法で誘導した口腔粘膜炎の治療および/または予防に対する治療薬として使用することもできる。
細胞の減少の重篤度の低減および口腔上皮および腸上皮の上皮層の再生率の上昇におけるSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの役割の可能性を更に評価するために、口腔粘膜炎の定量的な動物モデル(例えば、Wardlyら、Arch Oral Biol 43:567-577(1988);Pottenら、Cell Prolif 35:32-47(2002))をその他の細胞毒性薬剤との組合せで投与した場合のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの更なる医薬的特性の研究に用いてもよい。
実施例9:デキストラン硫酸ナトリウムで誘導した大腸炎に対するSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの治療効果
大腸炎の治療におけるヒトの組み換えSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの有効性をデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)で誘導した大腸炎モデルマウスで試験し、GLP-2の有効性(L'Heureux and Brubaker J Pharmacol Exp Ther 306:347-354(2003);Kriegelsteinら、J Clin Invest 110:1773-1782(2002);Siegmundら、J Pharmacol Exp Ther 296:99-105(2001))と比較する。
6から8週齢のメスのBALB/c(Charles River Laboratories,Wilmington,MA,USA)を換気したケージで飼育し、1週間、12時間の明暗周期に順化させた。体重が類似した(約20g,分散<5%)24匹のマウスを4ケージで飼育し、餌を自由摂取させ、4%DSS飲用溶液を7日間与えた。
7日目、各動物の体重を記録し、体重減少のスコア、便の固さ、肛門の出血を下記の表に示すように評価する。
スコアは、大腸炎の重篤度の指標として用いる、表にしたパラメータに与えられたスコアの平均として計算されるIBD活性指数(IBDAI)の算出に用いる。体重減少、便の固さ、および肛門の出血のスコアを毎日評価し、IBDAIを実験中毎日記録する。
7日目、DSSの作用を悪化させずに疾患活動性を維持するために、4%(v/w)DSS飲用溶液を1%(v/w)DSS溶液に換えた。疾患活動性が一貫して比較可能な、DSSを与えた動物を16匹選別し、4匹のグループに分け、以下の処理を行う。
1.水、生理食塩水を7日間毎日(10am)静脈注射。
2.DSS(1%)を7日間、生理食塩水を7日間毎日(10am)静脈注射。
3.DSS(1%)を7日間、100μgのSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを7日間毎日(10am)静脈注射。
4.DSS(1%)を7日間、50μgのSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを7日間毎日(10am)静脈注射。
5.DSS(1%)を7日間、10μgのGLP-2を7日間毎日2回(10amと6pm)皮下注射。
14日目、食事をケージから取り除き、腸をパージさせ、頸椎脱臼によって屠殺する。屠殺2時間前に4mg/0.1mlのBrdUを注射した。大腸と小腸を切除して秤量し、長さを測定し、空腸中部の直径を記録した。空腸中部の断片(1cm)を幽門から約14-15cmから切り出し、横行結腸の断片(1cm)を回盲部から約4cmで切り出した。腸の断片を洗い流し、組織学解析のために10%中性に緩衝したホルマリンで固定した。粘膜の組織学的検討と形態計測をImagePro Software(Imegapro,Ltd.,Ashford,Middlesex,UK)を用いて組織切片上で行った。実験グループ2-5のマウスのIBDIAとスコアに対応する体重減少、便の固さ、および肛門の出血を評価した。生理食塩水と共にDSSを受けた動物は、コントロールグループと比較して一般的に萎縮、充血、および下痢を伴う重症の大腸炎を発症する。DSSは小腸および結腸の粘膜の絨毛と腺窩コンパートメントの崩壊を引き起こすが、DSSで引き起こされた作用に対してはSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vを用いて腸の腺窩と絨毛の構造を復元することもできる。
実施例10:広範囲の腸切除後のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの治療効果
議論の被験体のSCFA2、SCFA4、もしくはSCFA4vの効果は、広範囲の腸切除に対する適応反応を短腸症候群のラット動物モデルで試験を行う。腸向性の薬剤の効果の研究に用いた動物モデルが記載されており(Scottら、Am J Physiol G911-G621(1998);Helmrathら、J Am Coll Surg 183:441-449(1996))、実験プロトコルを参照して本明細書に組み入れる。
動物を、空腸回腸中部の75%を外科切除するグループと、腸を切断して再吻合を行う疑似切除手術を行うコントロールグループ、および無手術のコントロールグループに分ける。動物に生理食塩水かSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vを2mg/kgの用量で投与する。75%の腸切除は、適応反応が最大化するように選択し、近位空腸部分と遠位回腸部分の同程度の維持は、ビタミンB12と胆汁酸に特化した回腸末端部の吸収能と回腸抑制を除去するという栄養上の意味に基づく。ラットでの25%の小腸の保持は遠位回腸部分を含有し、これは切除した動物がコントロール動物と同じ成長速度を達成するのに十分である。
切除に対する腸の形態的および機能的な反応とSCFA2、SCFA4、およびSCFA4v処理は、6、14、および21日目に評価する。食餌摂取と成長、肉眼的および顕微的な小腸の形態、および粘膜吸収特性の機能評価を記載されたように(Scottら、前出)評価する。
実施例11:TNBSで誘導した大腸炎に対するSCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの効果
ハプテン剤2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)は、発熱、下痢を伴う貫壁性炎症,直腸脱、および体重減少で特徴づけられる慢性的な大腸炎を誘導する。これらの臨床的および組織病理学的特徴は、TNBSで誘導した大腸炎がヒトのクローン病の重要な特徴を模倣していることを示す(Neurathら、J Exp Med 182:1281-1290(1995))。
SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの治療効果を、TNBSで誘導した大腸炎のマウスで試験する。腸炎症をNeurath et al.(前述)で記載のようにTNBS1mgの直腸単回投与で、6-8週齢のメスBALBcマウスで誘導する(グループI)。コントロール動物グループ(グループII)は媒体単独(45%アルコール)の直腸投与を受ける。7日後、マウスを屠殺し、TNBSによる大腸炎誘導を評価する。TNBS処理したマウスは、重症の下痢と結腸の萎縮を伴う潰瘍と出血を経験する。有害な作用は認められない。
コントロールグループとTNBSグループの結腸のH&E染色したパラフィン包埋切片で組織学的変化を評価する。TNBSは結腸壁の肥厚と固有層への実質的な貫壁性白血球浸潤を誘導する。
SCFA2、SCFA4、およびSCFA4vの治療効果を、TNBS処理した動物にTNBSの投与3日後に開始して4mg/kgまでの日用量(100μg/マウス、静脈投与)を投与することで試験する(グループIII)。各グループの動物を7日目もしくは10日目に屠殺する。組織を切除し、組織学的評価、形態解析、および増殖指標とアポトーシス指標を前記の実施例に述べたように測定した。