図1a及び図1bにプリンタマシンの一例10を示す。このマシン10においては、可動記録部材例えば光導電体ベルト18が複数個の支持部材例えばローラ21a〜21gに架かっているので、モータ20によってローラ21a〜21gのうち1個又は複数個例えば21aを駆動するとベルト18が進行する。ベルト18は、モータ20によって好ましくは20インチ毎秒以上の高速で図中矢印Pの方向に進められ、マシン10内の各種ワークステーションを通過していく。なお、単体ドラムの周囲にベルト18を巻き付け固定した状態で回転させてもよい。
プリンタマシン10にコントローラとして内蔵されている論理制御ユニット(LCU)24は、好ましくはストアドプログラム方式に従って動作するディジタルコンピュータ乃至マイクロプロセッサであり、そのプログラムに従ってマシン内ワークステーション群をシーケンシャルに動作させることにより、マシン10及びそのサブシステムの動作を統括制御する。LCU24は、また、各種センサ及びエンコーダからの信号に基づきマシン10を閉ループ制御するようプログラムされている。なお、特許文献2に記載の各種プロセス制御を、この参照を以て本願に繰り入れることとする。
プリンタマシン10は、その高電圧帯電ワイヤへの所定一次電圧の印加に応じ均一な静電コロナ電荷を発生させて光導電体ベルト18の表面18aに供給し、それによってベルト18を感光化する一次帯電ステーション28を内蔵している。このステーション28の出力は、LCU24による一次電圧調整制御の許にプログラマブル電圧コントローラ30が例えばグリッド電位ひいてはコロナ電荷移動を制御することによって、規制、安定化されている。なお、他の形態の帯電装置(チャージャ)、例えばブラシ型チャージャやローラ型チャージャも使用できる。
プリンタマシン10は、ライタ34aから光導電体ベルト18に光を投射する露光ステーション34を内蔵している。このステーション34にてベルト18上に光を当てるとその部分の静電荷だけが消散し、それによって複写乃至印刷対象文書の静電潜像がベルト18上に形成される。ライタ34aは、例えば発光ダイオード(LED)アレイ、レーザ光源乃至空間光変調器等のアレイとして実現でき、後に説明する通り強度及び露光時間の制御を受けつつベルト18を露光させてその上に個別の画素を形成させる。露光によってベルト18上に画素を形成する際、その画素位置では放電が生じるので、ベルト18上には印刷対象画像に対応する局所的電位分布が発生する。画像とは、文字、単語、テキスト、グラフィクス、写真等の事物を物理光により表現したもののことであり、1個又は複数個の画像の集まりを以て文書又はそのページと称し、更に画像の構成要素のことをセグメント、オブジェクト乃至ストラクチャ(構造)と称する。画像のセグメント、オブジェクト乃至構造それ自体も画像であり、そのサイズは最大で母画像の全体サイズに至る。
プリンタマシン10は、画像データ源36からデバイスドライバを介して供給されるディジタル画像データをリッピングするラスタ画像プロセッサ(RIP)37、並びにリッピングされたディジタル画像データを記憶等するマーキング画像プロセッサ(MIP)38を備えている。画像データ源36は印刷対象画像データ即ち印刷対象画像を表すディジタルデータの一バージョンを供給できる装置であり、画像データを供給できる種々の装置例えばコンピュータ、マイクロコントローラ、コンピュータワークステーション、スキャナ、ディジタルカメラ等の中でフロントエンドに位置しているもの、特にその装置で生成又は発見取得した画像を示すディジタル画像データを出力するアプリケーションプログラムが組み込まれているものを以て画像データ源36としている。このアプリケーションプログラムによって送出されるディジタル画像データは、クライアント装置(画像データ源36)とマーキング装置(マシン10)との間のインタフェースであるデバイスドライバに引き渡される。デバイスドライバは、画像データ源36から受領したデータをエンコードしてページ記述言語(PDL)による記述に変換し、更にマーキング装置(マシン10)に引き渡す。引き渡される画像データは、マシン10にて形成すべき画素の位置及び画素強度(画素値)を表している。画像データ源36から信号として供給されるこの画像データは、LCU24からの制御信号と共に、RIP37に供給される。RIP37は、受領したディジタル画像データ例えばスタイル付テキストデータを、リッピングと通称されるプロセスにより、PDL形式から電子画像プリンタ用シリアル指令列に変換する。RIP37は、リッピングしたディジタル画像データを、MIP38として知られる画像記憶再生システムに供給する。
概略、RIP37の主な役割は次のようなものである。即ち、サーバから印刷ジョブ情報を受領すること、その印刷ジョブ情報中のヘッダを構文解析してその印刷ジョブにて求められる印刷条件及び仕上げ条件を判別すること、PDLを解析してヘッダに記載のないあらゆるジョブ乃至ページ条件を検知すること、その印刷ジョブに係る諸条件とマーキングエンジンのコンフィギュレーションとの抵触(即ちRIP時間と解像度のミスマッチ)を解決すること、アカウントレコード及びエラーログを保存して要求に応じそれらの情報を各種サブシステムに提示すること、マーキングエンジンに画像転送条件を伝達すること、データをPDLから印刷用ラスタに翻訳すること、並びにユーザアプリケーション間診断通信をサポートすることである。即ち、RIP37は、postscript(登録商標)、PDF、PCL(登録商標)等のPDLで記述されている印刷ジョブ情報を受領する。RIP37が受領するこのPDLファイルには、ユーザがホストコンピュータを用いて作成した文書のレイアウトが記述されている。RIP37は、ラスタ化と通称される変換処理により、そのPDLファイルを複数本のラインのグリッドにより画像を表現するラスタ形式、即ちマーキングエンジン(プリンタマシン10)が受け入れられる形態に変換する。なお、本実施形態におけるRIP37には更にカスタムトーン伝達関数例えばアンドゥトーン伝達関数44を生成乃至実行する機能もあるが、このアンドゥトーン伝達関数44については後により詳細に説明することとする。RIP37は、受領したPDLファイル内にどのような文書が記述されているかに応じて、その文書に対する処理の仕方を決定する。RIP37はこの決定をその文書の冒頭データの探索によって実行する。ジョブマネージャは、印刷ジョブ情報を例えばEthernet(登録商標)を介しMSS(マーキングサブシステムサービス)に送る一方、その文書の残りの部分を更にRIP37に送り込んでラスタ化させる。注記するなら、文書ヘッダにはプリンタ固有情報例えば両面複製やステープリングの可否を示す情報がセットされている。RIP37(或いは他種インタプリタのうち何れか)により文書をラスタ化することによって得られたディジタル画像データ即ちラスタデータは、RTS(ラスタ転送サービス)を介しまたIDB(画像データバス)を経由してMIP38に転送される。
MIP38は、光学式複写機におけるリサーキュレーティングフィーダに機能的に取って代わるものである。これは、リスキャンが必要なジョブの場合光学式複写機では画像が機械的にリスキャンされるのに対して、図示例ではMIP38からのディジタル画像データの電子的読出、再生を実行すればよいので、機械的リスキャンプロセスは必要ない、という意味である。MIP38は、限度はあるが入力されるディジタル画像データを受け入れて記憶することができるため、必要に応じそのディジタル画像データを再生して印刷しそのジョブを完遂することができる。また、MIP38は、RIP37からのディジタル画像データを受領及び格納できるようMIPメモリと呼ばれるメモリを有している。MIPメモリに格納されたディジタル画像データは繰り返し読み出しレンダリング回路39に繰り返し与えることができる。また、ディジタル画像データを圧縮すればより少ない記憶容量で同じ枚数の画像を格納できるので、ディジタル画像データは圧縮してからMIPメモリに格納しMIPメモリからの読出時に伸長するようにするとよい。
プリンタマシン10は、MIP38から出力されるディジタル画像データを受領及び改変してライタインタフェース32(これは書込ヘッド、プリントヘッド等とも称される)に供給し、一群の露光パラメタを露光媒体例えば光導電体ベルト18に適用させるレンダリング回路39を備えている。回路39は、ハードウェア、ソフトウェア又はファームウェアによって実行可能なアルゴリズムとして表現することができる。
プリンタマシン10は、露光媒体ベルト(光導電体ベルト18)のうち露光によって静電潜像が形成された部分が送り込まれる現像ステーション35を備えている。ここではステーション35として磁気ブラシ型現像ステーション、即ちベルト18に磁気ブラシを並列近接配置する本件技術分野で周知の構成が用いられており、またこうした構成は多くの用途において好適に用い得るものであるが、これに代えて他種現像ステーション乃至現像装置を用いることもできる。画像を複数通りのグレースケール乃至色で、或いはその物理特性が異なる複数種類のトナーで現像するには、ステーション35を複数個設ければよい。図示例のプロセスを利用してフルプロセスカラー電子画像印刷を実行するには、例えばステーション35を4個設け、各ステーション35で例えばブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのうち対応する色のトナーを使用し現像を行えばよい。
光導電体ベルト18上の潜像形成済部分が現像ステーション35に達すると、LCU24が現像ステーション35を選択的に起動させてベルト18上にトナーを被着させる。これは、例えばバックアップローラ35aをベルト18方向に動かしベルト18を磁気ブラシに接触乃至接近させることによって、或いは逆に磁気ブラシをベルト18に向けて動かし部位選択的にベルト18に接触乃至接近させることによって行う。何れにせよ、磁気ブラシ上の帯電トナー粒子はベルト18上の静電潜像パターン形成部位に部位選択的に吸着し、それによってその静電潜像パターンが現像される。即ち、露光済ベルト18をステーション35に通すとそのベルト18上の画素位置にトナーが吸着され印刷対象画像に相応するトナーパターンがそのベルト18上に現れる。この現像プロセスは、本件技術分野において知られている通り、ステーション35の導体部分例えば導電アプリケータシリンダにバイアスを印加しそれを電極として使用することにより行う。即ち、その電極に供給される可変電源電圧を、LCU24からの指令に従いプログラマブル電圧コントローラ40にて規制、安定化することによって、現像プロセスを制御する。
現像ステーション35では例えばトナー粒子とキャリア粒子の乾性混合物である二成分混合型現像剤を使用する。通常、キャリア粒子としては保磁力が強い(強磁性の)フェライト粒子が好まれており、そうしたキャリア粒子の体積加重直径は例えば30μm程度である。ドライトナー粒子はこれよりかなり小さく、その体積加重直径は6〜15μmのオーダである。ステーション35には、例えば回転可能な磁気コアをシェル内に収め、且つそのシェルをモータその他の適当な駆動手段によって回転駆動可能とした構成のアプリケータを設けておく。この構成では、磁気コアとシェルが異なる回転数で回転するので、電界の作用によって現像剤が現像ゾーン内を移動していく。その途上で二成分混合型現像剤は二手に分離し、キャリア粒子がステーション35に残留する一方、トナー粒子の一部が光導電体ベルト18上に部位選択的に静電被着して、ベルト18上の静電潜像が現像される。また、こうして静電潜像の現像に使用され消尽した分のトナー粒子は、ステーション35内に定期的に補充する必要がある。トナーオーガ42は、現像剤の量が均一に保たれるようステーション35内に新たなトナー粒子を導入しキャリア粒子と混合させる。なお、この現像剤混合動作は様々な現像制御プロセスに従って制御することができる。一成分現像剤を使用する現像ステーションや液状トナーを使用する従来の現像ステーションを使用することもできる。
プリンタマシン10は、現像済画像と位置が揃うよう被着先シートSを動かし光導電体ベルト18に接触させて現像済画像をシートSに接触させる転写ステーション46を備えている。シートSはマシン10にて取り扱える各種の媒体、例えば被覆なし又は被覆付の紙製若しくはプラスチック製シート状媒体である。ステーション46には、ベルト18からシートSへと移動するようトナー粒子を静電付勢する帯電装置を設けるのが普通であり、この例においてはその種の付勢装置としてローラ46bが設けられている。ベルト18からシートSへの画像転写時には、このローラ46bをシートSの裏面に接触させ、プログラマブル電圧コントローラ46aによる制御の下、定電流モードで動作させる。或いは、画像の転写を受けてその画像をシートSに再転写する中間部材を、ベルト18とシートSの間に介在させてもよい。何れにせよ、トナー像が転写されたシートSはベルト18から剥がされ融着ステーション49に移送される。ステーション49では、例えば熱を加えることによってそのトナー像をシートS上に固着させる。なお、転写の際にトナー像をシートSに固着させてもよい。
プリンタマシン10は、光導電体ベルト18から残留トナーを除去する清掃ステーション48、例えばブラシ、ブレード、ウェブ等を備えている。このステーション48は、転写ステーション46の後方に配置されている。この清掃を補助する手段としては、例えば図示しない清掃前帯電装置をステーション48の内部又は前段に配置するとよい。ベルト18のうち清掃が終わった部分は再帯電及び再露光可能な状態となっている。なお、このときベルト18の他の部分はマシン10内の各種ワークステーションに位置している。従って、印刷プロセスは実質的に連続的な態様で行われることとなる。
周知の通り、プリンタマシン10及びそのサブシステム群の動作はLCU24によって統括制御される。LCU24は、通常、データ一時記憶ユニット、CPU(中央処理ユニット)、タイミング/サイクル制御ユニット、ストアドプログラム方式制御ユニット等から構成される。LCU24へのデータ入力及びLCU24からのデータ出力は、プログラム制御によって又はプログラム制御の下にシーケンシャルに行われる。LCU24への入力データは、入力信号バッファを介して入力データプロセッサに入力されるか或いは割込信号プロセッサを介して入力される。LCU24に入力されるデータは、例えば、マシン10を構成する各種スイッチ、センサ、アナログディジタル変換器等からの入力信号や、マシン10外の信号源例えば人間のユーザやネットワーク制御部等から受け取った信号を含んでいる。LCU24からの出力データや制御信号は、直接に又は適当な記憶部若しくはラッチ部を介して適当な出力ドライバへ、更にはそのマシン10内の適当なサブシステムへと供給される。
以上の静電写真プロセスを制御する際には、例えば各種センサを用いてプリンタマシン10をリアルタイム閉ループ制御し、ユーザが一定画質と受け取れる画像が得られるようにするのが望ましい。静電写真印刷にてリアルタイムプロセス制御が必要になるのは、そのマシン10を取り巻く環境の変化に対処し、また動作中におけるそのマシン10の動作条件の経時変化(レスト/ラン効果)に対処するためである。中でも、トナー粒子の電荷対質量比(q/m比)に影響を及ぼす重要な環境条件である湿度については、そうしたプロセス制御が必要になる。それは、光導電体に対するトナー粒子の現像時被着密度がq/m比によって左右され、ひいては最終出力画像の濃さが左右されるからである。更に、システムにて生じ得る経時変化としては、プリントヘッド(露光ステーション)の加齢による変化、現像剤内磁性キャリア粒子濃度のトナー粒子使用・消尽に伴う変化、一次帯電ステーション構成素子の機械的位置の変化、光導電体の加齢、電気部品及び光導電体の製造ばらつき、電源投入後のウォームアップに伴うプリンタ状態変化、トナー粒子の摩擦帯電等、静電写真プロセスにおける様々な条件の変化がある。これらの現象に対処しつつ高解像度印刷を行う昨今の電子画像印刷では、プロセス制御が非常に複雑になる。
プロセス制御に際しては、例えば密度センサ(デンシトメータ)76を使用し、LCU24による制御の下に光導電体ベルト18の非画像エリア内に露光、形成されている何個かのテストパッチを監視する。密度センサ76は、目標トナー密度との比較のため各テストパッチにおけるトナー密度を計測する。密度センサ76は、例えば赤外線LED、可視光LED等によって光導電体ベルト18を照らし、光導電体ベルト透過光又は反射光をフォトダイオードで検知する構成を採る。テストパッチ群は、そのうちあるもののトナー密度が最大トナー密度となり他の幾つかのトナー密度が種々の中間的トナー密度となり、従って一群の階調がそれらテストパッチにより表現されるように形成しておく。従って、密度センサ76から得られる各テストパッチのトナー密度実測値を、各種制御電圧乃至信号等によって与えられるトナー密度目標値と比較し、その結果を利用することで、一次帯電電圧V0、最高露出光強度E0及び現像ステーション電極バイアス電圧VBの制御や、トナー補充制御信号値又はトナー濃度設定値の制御によるq/m比制御を、実行することができる。特に、q/m比を所要レベルに維持することによって、トナー粒子帯電不足によるダスティング乃至ハロー文字形成を回避することや、トナー粒子帯電過剰による絶縁破壊及び転写時モトル(斑文状不整)を回避して、プリンタマシン10におけるプロセス制御を高精度化することができる。更に、このように種々の階調を表現するテストパッチ群をベルト18上のフレーム間エリア内に形成することにより、印刷出力スループットの低下を伴うことなくリアルタイムプロセス制御を実施することができる。その他、マシン10における各種プロセスパラメタの監視に有用なセンサとしては、電位計がある。図示例ではベルト18の移動方向Pに沿ってコロナ発生型一次帯電ステーション28の下流に、電位計のプローブ50が設けられている。使用できる電位計の例としては、この参照を以て本願に繰り入れるところの特許文献3に記載のものがある。
なお、電子画像印刷プロセス制御は、例えば何れも本願出願人が特許権乃至特許を受ける権利を保持しておりこの参照を以て本願に繰り入れられる特許文献4及び5に記載のやり方等、別のやり方で行ってもよい。
ラスタ画像処理は、画像作成に使用されたコンピュータアプリケーションによるPDL記述版画像データを以て開始される。RIP37は、PDL記述を解釈することによって、各印刷対象テキストオブジェクトについての記述子及び各印刷対象非テキストテキストオブジェクトについての記述子を含む表示対象オブジェクトリストを作成する。例えば、スタイル付テキストを含むワードプロセッサ文書等のコンテンツは、RIP37によって、そのテキストを構成する個々の文字並びにそのフォント及びページ内位置を特定するテキストオブジェクト記述子からなる表示対象オブジェクトリストに変換され、更にプリンタマシン10向けの指令列に“翻訳”される。そのマシン10が白黒二値のプリンタなら、各画素位置に対応するビットを以て各位置の画素がブラックかホワイトかを指示する指令列に翻訳される。白黒二値のプリンタとは、画像を一群の画素からなるディジタル画像データに変換して処理するプリンタのうち、各画素に割り当てるディジタル値即ち画素値が、1値及び0値という二通りの値のうち何れかしか採り得ないプリンタのことである。また、そうしたディジタル画像データのことを二値画像データと呼ぶ。これに対するものに、各画素に割り当てられる画素値が三通り以上の値を採り得る画素群からなるディジタルデータ即ち多ビット画像データがある。RIP37は、表示対象オブジェクトリストに基づきレンダリングを行い、印刷対象ページの連続階調バイトマップを生成する。連続階調バイトマップにおいては、印刷対象ページ上の各位置にある画素の各色印刷密度が、通常は8ビット即ち1バイトで表現される(1バイトマップレンダリングの場合)。例えばテキスト中の黒い文字を構成している各画素は、一般に最大密度値(8ビットでレンダリングする場合255)で表現される。通常、連続階調バイトマップに含まれる情報はマシン10にとり不要な情報を含んでいるので、RIP37は、連続階調バイトマップをラスタ化してマシン10に必要なビットマップを生成する。また、印刷対象オブジェクトが画像オブジェクトである場合等には、RIP37は、連続階調バイトマップに中間調スクリーンを適用して中間調密度を発生させる。適用する中間調スクリーンは印刷前調整の際に指定でき、それによって最終出力画像におけるコントラストの調整等を行える。
なお、この参照を以てその内容が本願に繰り入れられるところの特許文献6に記載の通り、グレースケール用プリントヘッド付電子画像プリンタも知られている。そのレンダリングアルゴリズムは、相隣接する複数個の隣接画素を複数個のセルにまとめ、各セルによって印刷対象画像の中間調ドットを表現するというアルゴリズムである。中間調印刷は、各セル内画素の露光レベルを増減することによって行われ、その露光レベルの増減は、プリントヘッド内LEDのうちその画素に対応するLEDの発光継続時間を変化させ露光範囲を同一セル内隣接画素に拡げること(露光範囲成長)によって行われる。
以上述べたリッピングに当たっては、使用するプリンタマシン10のライト特性を勘案してそのプリンタ用にビットマップを生成する。そのため、リッピングは個別プリンタ依存的な処理となる。例えば、そのプリンタの解像度、即ち画素サイズ[dpi]で表される解像度と、ビット深度で表されるコントラスト解像度は、連続階調バイトマップを決定づける。前述の通り、印刷前調整の際、マシン10のコントラスト性能に応じ適切な中間調スクリーンが選択されるため、RIP37による印刷対象画像データのレンダリングにはそのマシン10自体の属性が反映される。
RIP出力における個別プリンタ依存性は、そのRIP出力を別の電子画像プリンタに送るとき問題になりかねない。生じ得る問題の一つは、RIP出力供給先プリンタにより印刷された画像の明るさが、RIP出力供給元プリンタで仮に印刷したとしたら得られるはずの画像の明るさと違うものになる、という問題である。印刷側プリンタに供給されるのがRIP出力だけで原画像データが供給されない場合、そのプリンタ内のRIPで原画像データを再処理しそのプリンタ向けの階調調整を行うこともできない。
図2に、レンダリング回路39の機能を模式的ブロック図により示す。ここでは例示という趣旨に添い(それ以外の意図はなく)、ライン310を介しRIP37から変換回路312に供給されるディジタル画像データを二値即ち1ビットの画像データと仮定している。本実施形態における変換回路312は、この二値画像データを1ビットから多ビット例えば8ビットに変換する。具体的には、1ビット画素は1値か0値の何れかを採るので、1ビット画素を8ビット画素に変換する際には、元々の1値及び0値をそれぞれ8ビット画素の値域即ち0〜255の範囲内にある何れかの値、例えば0値と255値に変換する。回路312は、この変換によって得た8ビットのデータ(C)を注目画素PIQの画素値としてライン314上に送出する。エッジ判別回路316は、注目画素PIQの画素値として供給される8ビットの画素値に対し標準的な3×3エッジラプラシアンカーネル回路を適用することによって、その注目画素PIQがエッジ画素であるか否かを判別するのに使用できる情報(A)を、ライン317を介してマッピング回路318及びオブジェクト画素幅判別回路320に供給する。これは、その注目画素PIQがエッジ画素であるか否かを示すフラグが回路316によって提供されるということである。ここでいうエッジとは背景前景間にある遷移部分のことであり、エッジ画素とは背景画素前景画素間にある遷移部分内画素のことである。また、背景画素とはマーキング情報乃至印刷情報を比較的少量しか含まない画素のことであり、前景画素とは印刷に値する量のマーキング情報乃至印刷情報を含む画素のことである。マーキング情報とは、各画素に割り当てられているディジタル値であって、被着先媒体上に堆積させるマーキング素材例えばインクやトナーの量を決めるディジタル値のことである。このディジタル値(画素値)とマーキング素材堆積量との間には関数的関係があり、本実施形態の場合、例えばこのディジタル値が大きければ大きい程トナー粒子堆積量が多くなり見た目に暗い画素が形成される。但し、これとは逆の関係を採用してもよい。また、前景画素には内部画素、エッジ画素、1画素幅オブジェクト(例えば1画素幅ライン)内画素及び2画素幅オブジェクト(例えば2画素幅ライン)内画素がある。内部画素とは、エッジ画素、1画素幅オブジェクト内画素及び2画素幅オブジェクト内画素の何れでもない画素のことである。
3×3サイズの方角値ルックアップテーブル(LUT)回路322は、ライン314を介し変換回路312の出力(C)を受領し、各画素に方角値を割り当てる。割り当てる方角値Dはその画素を取り巻く8個の画素の画素値に従い決定する。図4に、割り当て得るユニークな八通りの方角値の例N、NE、NW、S、SE、SW、E及びWを示す。これらの方角値は、それぞれ、注目画素PIQから見てどちらの方角に画素連鎖が生じているかを表している。即ち、回路322は、3×3領域の中心に位置する注目画素PIQから見てブラック画素連鎖がどちらの方角にあるかを調べ、例えばその画素連鎖が注目画素PIQから見て上側即ち“北”側にあるならその注目画素PIQに方角値Nを割り当てる、というように、画素連鎖方角判別の結果に基づき各注目画素PIQに方角値を割り当てる。注目画素PIQを取り巻く画素は3×3領域内に8個あるのでそれら周辺画素群の採り得る画素値の組合せは256通りに上るが、注目画素PIQから見た画素連鎖の存在方角は、図示した画素配置に代表される八通りの方角しかない(但しこの他に“どちらにも連鎖が存在していない”場合もありその場合の方角値は例えば値0で表す)ので、注目画素PIQに対し割り当てられ得る方角値は八通り(及び0)しかない。図18dに、回路322がこの方角値割当に使用するテーブル(LUT)9の全体像を示す。このLUT9には256通りのエントリが含まれており、各エントリに対し九通りの方角値のうち何れかが割り当てられている。図4に示したのはそのうちの八例であるということに留意されたい。また、本実施形態では各方角値に対しその方角値を表す文字を割り当てているが、こうした方角値文字とは異なる種類乃至異なる性質の文字を割り当ててもよいし、数値を割り当ててもよい。回路322は、その出力(D)を、ライン323を介しオブジェクト画素幅判別回路320に供給し、オブジェクト画素幅例えば文字幅の判別に供する。
オブジェクト画素幅判別回路320は、注目画素PIQがエッジ画素であり且つ1画素幅オブジェクト内画素及び2画素幅オブジェクト内画素であるかを判別し、該当する場合に該当内容を示すタグ(B)をその画像データに対するフラグとしてライン321上に送出する。エッジに存する注目画素PIQは、1画素幅オブジェクトの一部であるか、2画素幅オブジェクトの一部であるか、そのどちらでもないか、何れかであるので、このタグが採り得る状態乃至値は三通りある。この判別を実現できるアルゴリズムは数多く考えられるが、本実施形態の場合、方角値LUT回路322から得られる情報(D)に基づき、回路320が検知、識別を行うようにしている。即ち、その情報に基づき注目画素PIQを取り巻く画素の方角値を調べることによって、それら周辺画素の中心にある注目画素PIQが1画素幅オブジェクトの一部か、2画素幅オブジェクトの一部か、それともその何れでもないかを、識別するようにしている。これについては図7及び図8を参照頂きたい。
次に示すのは、図2に示したオブジェクト画素幅判別回路320により実行されるアルゴリズムの例、特にそのアルゴリズムによる1画素幅ライン内画素検知コードを概念的に表したものである:
[数1]
“Aによって与えられるエッジ画素のうち、方角値LUT回路によればその方角値が0の画素は、
1画素幅ラインの一部である。”
次に示すのは、図2に示したオブジェクト画素幅判別回路320により実行されるアルゴリズムの例、特にそのアルゴリズムによる2画素幅ライン内画素検知コードを概念的に表したものである:
[数2]
“Aによって与えられるエッジ画素のうち、方角値LUT回路によれば
その方角値がEで右隣画素の方角値がWの画素、
その方角値がSEで右下画素の方角値がNWの画素、
その方角値がSで下隣画素の方角値がNの画素、
その方角値がSWで左下画素の方角値がNEの画素、
その方角値がWで左隣画素の方角値がEの画素、
その方角値がNWで左上画素の方角値がSEの画素、
その方角値がNで上隣画素の方角値がSの画素、並びに
その方角値がNEで右上画素の方角値がSWの画素は、
2画素幅ラインの一部であり、
それ以外の画素はエッジ画素である。”
マッピング回路318は、複数個の情報源から情報を受け取り、ライン340を介しライタインタフェース32にその出力を供給する。回路318に入力される情報には、ライン317経由のエッジ画素検出用情報(A)、ライン321経由のオブジェクト幅情報(B)、並びにライン314経由の原画像データ(C)特に注目画素PIQについてのデータがある。これに加え、現在のアルゴリズム実行モードがシニングモードかシックニングモードかを示す情報や、内部画素に再割当する内部画素値IPV、エッジ画素に再割当するエッジ画素値EPV、1画素幅オブジェクト内画素に再割当する1画素幅値1PV及び2画素幅オブジェクト内画素に再割当する2画素幅値2PVも、ライン330、332、334、336及び338を介し回路318に供給される。回路318にて注目画素PIQに新たに割り当てる(再割当する)画素値即ち再割当値は、その注目画素PIQが2画素幅オブジェクトの一部であるなら2PVを、1画素幅オブジェクトの一部であるなら1PVを、多画素幅オブジェクトを構成するエッジ画素であるならEPVを、また非背景内部画素であるならIPVを、というように、注目画素PIQの種類に応じて変化する。なお、このアルゴリズムでは背景画素(ホワイトエリア)の画素値を変更していないが、何か望みの効果があるなら、背景画素値を変更するアルゴリズムを使用してその効果を実現することも可能である。
どのような種類の再割当パラメタを使用しまたその再割当パラメタにどのような値を設定するかを決めるやり方は、数限りなくある。例えば、ユーザ(印刷オペレータ)がある特定の効果を期待しまたユーザインタフェース、機械スイッチその他の調整手段を介してプログラミングを行い、それら再割当パラメタ及びその値を指令するようにするとよい。或いは、プリンタ動作パラメタ、オペレータ入力その他の入力に応じ、コントローラたるLCU24がそれらを自動決定するようにしてもよい。更に、ある種の再割当パラメタ(値)を組み合わせた条件を持って新たな再割当パラメタとしてもよい。何れにせよ、ここでいう再割当パラメタとは、その値を決定してレンダリング回路39によるポストリッピング処理を行うことで、注目画素PIQに対し画素値(階調値、現像レベル等とも称する)を再割当できるようなものを指している。こうした注目画素値再割当に当たっては、その注目画素PIQの画像内位置、特に周辺画素に対する位置関係が重要である。以上、レンダリング回路39への入力が二値入力であるものとして説明を行ったが、回路39への入力が多ビット入力である場合、入力される注目画素PIQに対する再割当画素値が多ビットになる。
レンダリング回路39はRIP37とライタインタフェース32の間に設けられたラインインタフェース又はシリアルインタフェースに過ぎないので、この回路39においては、上述のプリンタマシン10及びその構成要素例えばRIP37やライタインタフェース32から独立したかたちで画像レンダリングを実行することができる。回路39はハードウェア例えばコンピュータ乃至プロセッサ基板によって実現することも、ソフトウェアによって実現することも、ファームウェアによって実現することもできる。ここでいうハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア等の意味は、本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)が理解している通りである。本発明を実施する際には、RIP37以外のプリンタ構成要素から供給されるデータ、例えば通常はプロセス制御に使用されるデータを用いて、回路39における画像レンダリングを行うようにすることもできる。加えて、画像レンダリングを実行させるための設定乃至プログラミングを、オペレータ(ユーザ)その他の外部乃至遠隔発信源が行い、印刷出力に特定の効果乃至効果群が現れるようにすることができる。グレーレベルライタ34aの直前に配置される回路39がハードウェアによるレンダリング回路であれば、露光直前段階まで帯域幅条件を緩くしておくことができる。ライタ34aの準拠方式はどのようなグレーレベル露光系であってもよい。
図3に、マッピング回路318により提供されるマッピング機能をフローチャートにより示す。この手順においては、回路312、316及び320から供給されるデータ並びにライン330、332、334、336及び338を介して供給されるデータを利用する。最初のステップ210においては、画像データ源36からの二値画像データ、より好ましくはRIP37によりリッピングされている二値画像データを受領する。ステップ212においては、回路318が、現在取り扱っている画素即ち注目画素PIQがエッジ画素か否かを判別する。二値画像データからエッジ画素を検出する手法としては従来から知られている様々な標準的なアルゴリズムを使用できる(非特許文献1参照)。また、エッジには、シニング(線幅狭搾処理)即ちライトニング(明化処理)に使用されるブラックエッジと、シックニング(線幅拡張処理)即ちダークニング(暗化処理)に使用されるホワイトエッジとがある。ブラックエッジの検出は、例えば、入力した画像データを二値(1ビット)から8ビットに変換し(例えば0値が0値になり1値が255値になるよう変換し)、変換後の画像データに対して標準的な3×3エッジラプラシアンカーネル回路を適用した結果に基づき行う。好適に使用できるカーネルの例としては、
[数3]
0 -1 0
-1 4 -1
0 -1 0
がある。
この操作によって得られる画像は、エッジ画素の画素値が255値で、それ以外の画素の画素値は皆0値の画像である。ホワイトエッジの検出は、二値から8ビットに変換した画像データを反転(例えば0値が255値になり1値が0値になるよう再変換)したものに基づき行う。テキストその他の画像構成要素からホワイトエッジを検出するのは、その画像を暗くしたい(ダークニングしたい)ときやライン及び中間調ドットを拡げたい(シックニングしたい)ときである。検出したホワイトエッジのエッジ画素をグレーレベル画素に置き換えれば露光領域が拡がり或いは延びる。またその際のグレーレベル画素付加量によってその画像の暗化度が決まる。本実施形態にて使用するエッジ検出アルゴリズムは、本件技術分野において知られている標準的アルゴリズムを組み合わせ更に洗練させたものであり、シニングモードにおいては各中間調セルのエッジ画素をグレーレベル画素に置き換えて印刷画像特に写真や描画の多い画像を明るくし、シックニングモードにおいては中間調セルの回りのホワイトエッジにグレーレベル画素を付加して画像を暗くする。
エッジ画素ではないと判別した注目画素PIQについては、ステップ214に進んで、その画素値が0かそれ以外の値かを判別する。画素値が0であればその画素は背景の一部であると見なせるので、そのように判別した注目画素PIQには、ステップ215にて背景画素値BPVを再割当する。本実施形態にて再割当される背景画素値BPVは0であるが、別の値にすることもできる。また、画素値が0でないと判別した注目画素PIQは、内部画素即ち塗り潰し領域内の画素であると見なし、ステップ216にて新たに内部画素値IPVを再割当する。
ステップ212にてエッジ画素と判別した注目画素PIQについては、ステップ217にて、その画像レンダリングをシニングモードで行うかそれともシックニングモードで行うかを判別する。これらのモードについては後により詳細に説明する。シニングモードが望ましい場合、ステップ218にて、注目画素PIQたるそのエッジ画素が1画素幅オブジェクト(例えばその幅が1画素分のライン)内の画素であるか否かを判別する。1画素幅オブジェクト内画素と判別した注目画素PIQには、ステップ220にて1画素幅値1PVを再割当する。逆に、1画素幅オブジェクト内画素でないと判別した注目画素PIQたるエッジ画素については、ステップ222にて、その注目画素PIQが2画素幅オブジェクト(例えばその幅が2画素分のライン)内の画素であるか否かを判別する。2画素幅オブジェクト内画素と判別した注目画素PIQには、ステップ224にて2画素幅値2PVを再割当し、2画素幅オブジェクト内画素でないと判別した注目画素PIQにはステップ226にてエッジ画素値EPVを再割当する。
画像レンダリングをシニングモードで行わない場合は、ステップ226にてその注目画素PIQにエッジ画素値EPVを再割当する。
なお、留意すべきことに、図3のフローチャートにより示したアルゴリズムはマッピング回路318の一部により或いは図2に示した機能の一部として実現されており、またレンダリング回路39は、図2に示した通りその入力端にRIP37から画素を表す二値データが供給されるとその画素を表す多ビットデータをライタ34a側に供給する。データの変換方法・変換形態や、種々の画素に対する再割当値の如何については、ユーザがどのような変化を印刷画像に望んでいるかに応じ際限なく変形、変更することができる。また、ご理解頂けるように、画像レンダリングアルゴリズムの実行は、エッジ若しくはエッジ画素の検出に応じて、或いはエッジ若しくはエッジ画素の検出を以て、開始されている。
本実施形態においては、方角値LUT回路322によって割り当てられる方角値(D)を利用し、エッジ画素を方角によって細分類する。エッジ画素とは、踵を接するオブジェクトに対して特定の方向乃至方角関係を有する画素のことであり、ある注目画素PIQがエッジ画素であるか否かの判別は、ライン323を介して供給される注目画素PIQの方角値情報に基づき図2中のマッピング回路318が行う。エッジ画素と判別した注目画素PIQについては、その注目画素PIQに対し回路322が割り当てた方角値を調べることによってどのような種類のエッジ画素かを調べる。更に、そのエッジ画素に対しては、そのエッジ画素に割り当てられている方角値に応じた画素値を割り当てる。方角値には八通りのユニークな値があるので、本実施形態にてライン332を介し回路318に供給されるエッジ画素値EPVも八通りになる。また、これら八通りのエッジ画素値EPVは様々な組合せで設定でき、またある方角値に係る画素に再割当するエッジ画素値EPVと他の方角値に係る画素に再割当するエッジ画素値EPVを同じ値にすることもできる。例えば、その方角値がN、NE又はNWである画素を他の方角値を有する画素に比べ例外なくアグレッシブにシニングする必要がある場合、その方角値がN、NE及びNWであるエッジ画素全てに対し、他の方角値を有するエッジ画素とは異なるグレーレベルを割り当てるようにするとよい。これ以外にも、周辺画素の存在方角に応じ異なる画素値を各エッジ画素に再割当するやり方及び根拠は色々ある。
図4に示した二値ビットマップ、即ち八通りの画素配置形態乃至オブジェクトを3×3サイズ画素アレイによって示したビットマップは、周囲オブジェクトに対する注目画素PIQの位置関係に基づき定められている。各二値ビットマップの中央画素が注目画素PIQであり、方角値LUT回路322によって与えられ得る八通りの方角値S、N、E、W、NE、SW、SE及びNWのうち何れかが、それら八通りの二値ビットマップに対して割り当てられている。注目画素PIQを取り巻く画素が採り得る画素値の組合せは256パターンあり、図4に示されているのはそのうち8パターンに過ぎないけれども、図示されていないどのパターンでも、結局はこれら八通りの相対的方向関係及び“0”のうち何れかに当てはまることに、留意されたい。なお、“0”とは割り当て得る方角値がないという意味である。隣接画素との関連における注目画素PIQの方角値の決定は、このようにして行うことができる。
こうした処理を実行するレンダリング回路39及び前述の通り回路39に対してディジタル画像データを供給するRIP37は、専用ハードウェアによっても、プリンタドライバ等のソフトウェアルーチンによっても、またそれらの組合せによっても実現することができる。即ち、上述のタスクを実行できる限り、その実現形態は問わない。
レンダリング回路39は、そのアルゴリズムに従い各画素を識別しその種類を分類乃至判別した上で、その種類に応じた画素値を各画素に再割当するのであるが、その際、再割当する画素値を画素の種類毎に異なる値にまた種類間で相独立に設定することができる。即ち、回路39は各画素を例えば背景画素、内部画素、エッジ画素、1画素幅オブジェクト内画素及び2画素幅オブジェクト内画素に分類し、画素の種類毎に相独立して定めてある画素値BPV、IPV、EPV、1PV又は2PVを、分類結果に応じて各画素に再割当する。例えば、内部画素に対しては新たな画素値IPVを再割当するがエッジ画素の画素値は変化させない、エッジ画素に対しては新たな画素値EPVを再割当するが内部画素の画素値は変化させない、エッジ画素の画素値を内部画素の画素値より小さくする、内部画素の画素値をエッジ画素の画素値より小さくする、等々が可能である。従って、本実施形態にて使用する画像レンダリングアルゴリズムには数限りなく変形版があり得ることを、理解できよう。本発明を実施する際の画素分類及び再割当画素値は様々に設定でき、その際には例えば背景画素BP、前景画素FP、内部画素IP、エッジ画素EP、1画素幅オブジェクト内画素1W、2画素幅オブジェクト内画素2W、N、S、E、W、NE、NW、SE、SW、Y、Z等に応じて画素分類及び再割当画素値を決定することができる。
図6a〜図6fに、文字が1個表された画素グリッドを示す。図6aに示した文字の二値ビットマップから読み取れるように、画素のうちある一群は塗り潰しエリアを形成する完全にブラックな画素であり、これを現像するとトナー密度が最大トナー密度Dmaxになる。他の一群は階調度=0の画素であり、これを現像するとトナー密度が0のエリアが形成される。
図6aに示した画像のうち内部画素及びエッジ画素双方に対しより小さな画素値を再割当すると、その文字は図6bに示すように多階調化される。これは、図6aに示した文字中の最大トナー密度Dmaxに係る画素に対し、新たな画素値IPV及びEPVを再割当してより小さなトナー密度Dxに関連付けたものである。
その文字をシニングすると、図6cに示すエッジ画素群が検出される。
更に、このシニングの結果に基づき文字中のエッジ画素及び内部画素に新たな画素値EPV及びIPVを再割当すると、図6dに示す画像データになる。
また、図6aに示した文字をシックニングすると、図6eに示すエッジ画素群が検出される。
更に、このシックニングの結果に基づき文字中のエッジ画素及び内部画素に新たな画素値EPV及びIPVを再割当すると、図6fに示す画像データになる。
これらの図から読み取れるように、レンダリング回路39による処理でエッジ画素及び内部画素に再割当されるグレーレベル(マーキング値)は互いに独立である。エッジ画素を検出した後に残る画素は、印刷しないホワイトエリア内にある背景画素か、エッジ画素に該当しない前景画素即ち内部画素の何れかであり、これらは互いに区別できる。即ち、上述のエッジ画素でない画素の原画像データにおける画素値が0値即ちマーキングなしを示す画素値であればその画素は背景画素であり、逆に1値即ちマーキングありを示す画素値であればその画素は内部画素である。回路39は内部画素を検出してその画素値(露光レベル)を変更することができ、またエッジ画素を検出して取り除きその後に残った内部画素に対しエッジ検出アルゴリズムを適用して第2レイヤ、第3レイヤ等々のエッジ画素を検出することができる。従って、内部画素とは、エッジ画素の全レイヤを除去した後に残る画素ともいえる。図17に、複数レイヤに亘りエッジ画素を検出する繰り返し処理を含むフローチャートを示す。
図17に示す手順は、ビットマップ画像データを受領するステップ610にて始まる。その次のステップ612では1レイヤ目のエッジ画素を識別し、更にその次のステップ614ではそのエッジ画素に新たな画素値EPV1を再割当してライタ34a側に送る。ステップ616では、ステップ612で識別した1レイヤ目のエッジ画素に画素値0を再割当することによって、仮想的な2レイヤ目のエッジ画素を発生させる。次のステップ618ではそのエッジ画素を識別し、更にその次のステップ620ではそのエッジ画素に新たな画素値EPV2を再割当してライタ34a側に送る。ステップ622では、ステップ618で識別した2レイヤ目のエッジ画素に画素値0を再割当することによって、仮想的な3レイヤ目のエッジ画素を発生させる。次のステップ624ではそのエッジ画素を識別し、更にその次のステップ626ではそのエッジ画素に新たな画素値EPV3を再割当してライタ34a側に送る。このプロセスは、所望回数だけ繰り返すことができる。即ち、ステップ628にてN−1レイヤ目のエッジ画素に画素値0を再割当し、それによって発生した仮想的なNレイヤ目のエッジ画素をステップ630にて識別し、ステップ632にてそのエッジ画素に新たな画素値EPVNを再割当してライタ34a側に送るまで、繰り返される。
オブジェクトをシックニングしてエッジサイズを拡張する際には、この手順を僅かに変形した手順を用いるだけでよい。即ち、ステップ616、622、628等々で割り当てる画素値を0より大きな値、例えば1値乃至Dmaxにして仮想的な又は実体的なエッジを新たに生成すればよい。
図5a〜図5dに、エッジ検出の繰り返しを伴う画像改変処理の別例を示す。
この画像改変処理においては、図5aに示す原画像中のオブジェクト(原オブジェクト)を繰り返しシニングして図5bに示す4個のエッジ画素レイヤ(そのうち最も外側のレイヤが原オブジェクトのエッジ画素)を識別する一方、原オブジェクトを繰り返しシックニングして3個のエッジ画素レイヤ(そのうち最も内側のレイヤが原オブジェクトのエッジのすぐ外側の画素)を識別し、そして図5b中のレイヤ群と図5c中のレイヤ群を組み合わせて図5dに示す改変版の画像データを生成する。
図7に、図2及び図3に示した回路及び手順による1画素幅オブジェクトの例たる1画素幅文字乃至ラインの処理を画素グリッドにより示す。まず、図7aに示した二値ビットマップから看取できるように、この1画素幅文字を構成している画素のうちの一群は塗り潰しエリアを形成する完全にブラックの画素であり、これを現像するとトナー密度が最大トナー密度Dmaxになる。残りの画素は皆階調度=0の画素であり、これを現像するとトナー密度が0のエリアが形成される。このように二値の画素値が割り当てられている画素に対しラプラシアンカーネルを適用してエッジ画素を判別し、各画素に8ビットの画素値を再割当すると図7bに示す画像データになる。また、図2中の方角値LUT回路322によって図18dのLUT9を用いた方角値割当アルゴリズムを実行すると、図7cに示すように文字画素周辺画素に方角値が割り当てられる。そして、先に概念的コードを示したアルゴリズムに従い且つ方角値に基づき背景画素、エッジ画素及び1画素幅オブジェクト内画素の別を判別すると、図7dの画素グリッドのようになる。
図8に、図2及び図3に示した回路及び手順による2画素幅オブジェクトの例たる2画素幅文字乃至ラインの処理を画素グリッドにより示す。まず、図8aに示した二値ビットマップから看取できるように、この2画素幅文字を構成している画素のうちの一群は塗り潰しエリアを形成する完全にブラックの画素であり、これを現像するとトナー密度が最大トナー密度Dmaxになる。残りの画素は皆階調度=0の画素であり、これを現像するとトナー密度が0のエリアが形成される。このように二値の画素値が割り当てられている画素に対しラプラシアンカーネルを適用してエッジ画素を判別し、各画素に8ビットの画素値を再割当すると図8bに示す画像データになる。また、図2中の方角値LUT回路322によって図18dのLUT9を用いた方角値割当アルゴリズムを実行すると、図8cに示すように文字画素周辺画素に方角値が割り当てられる。そして、先に概念的コードを示したアルゴリズムに従い且つ方角値に基づき背景画素、エッジ画素及び2画素幅オブジェクト内画素の別を判別すると、図8dの画素グリッドのようになる。
細いラインをその情報を失うことなく維持するためには、既に述べたように個々の1画素幅ライン及び2画素幅ラインをシニングの際に検知する必要がある。ラプラシアンカーネルによる操作を施すと、1画素幅ライン内画素も2画素幅ライン内画素もエッジ画素に分類されるので、1画素幅ラインと2画素幅ラインを何らかの手法により識別する必要があり、またご理解頂けるようにそうした手法は本件技術分野では数多く知られている。既に述べた通り、本実施形態では、原画像データを8ビット画像データに変換した上で3×3サイズの方角値LUT回路322によって処理することにより、まず1画素幅ライン内画素及び2画素幅ライン内画素を他種エッジ画素と弁別する。回路322の出力には各エッジのエッジ勾配を示唆する情報が含まれているので、ラプラシアンカーネル処理で生成された画像内エッジ検出用情報と回路322の出力とを併用することにより、原画像データに基づき1画素幅ライン内画素を2画素幅ライン内画素から弁別することができる。1画素幅ラインを2画素幅ラインから弁別して検出できるので、ラインの種類毎にユニークなグレーレベルを割り当てること、ひいては他のエッジ画素と区別することができる。
留意すべきことに、シニングやシックニングを繰り返すと1レイヤ目、2レイヤ目等々のエッジ画素が発生する。内部画素及びエッジ画素の画素値(グレーレベル)の値域は0即ち露光なしから255即ち最大露光に至る範囲であるので、シニングの際には1画素幅ライン及び2画素幅ラインの画素値を非0の最小露光レベルから最大露光レベルに至る範囲内の値とし、それらのラインが消えずに印刷されるようにする。但し、最小露光レベルを0にすることによって細いラインを意図的に消去することもできるので、本発明を実施する際の最小露光レベル設定値は非0に限定されるものではない。
図9に、オペレータ(ユーザ)が各画素への画素値(トナー密度値)再割当に使用する調整用インタフェースの例を示す。この図においては、内部画素値、エッジ画素値、1画素幅値、2画素幅値、トナー消費量、文字ライン幅、陰影、対称性及び露光変調度(明るさ/暗さ)を調整できるインタフェースが示されているが、これは一例に過ぎず、他種の情報をオペレータが入力できるようにしてもよい。再割当画素値の調整は例えばこうしたユーザインタフェースでも、或いはプリンタマシン10に接続された機械スイッチ等のユーザインタフェースでも、行うことができ、またそのインタフェースの種別や外観・形式は様々に変えることができる。更に、前述の通り、これらのパラメタを調整して所望の印刷結果を得る手法は複数通りある。何れにせよ、ユーザがそうしたユーザインタフェースを使用し自分の意志で画像に様々な調整を施すことができ、ひいては再リッピングなしで所望の印刷出力を得ることができる。また、先に述べたように、印刷特性はプリンタ毎に異なるものである。図示したが如きユーザインタフェースは、この印刷特性差に対処する手段、即ち個々のプリンタをいわばオンザフライで他のプリンタに似せる手段として使用することができる。オンザフライで、とは、プリンタを動作させている状態で調整を行うことができ、そのためさほど不便なく印刷出力を迅速且つ繰り返し解析できる、という意味である。また、図9に示した諸調整量を全て同一のインタフェース上に配する必要はなく、また図示されていない調整量をインタフェース上に配することもできる。
本実施形態におけるレンダリング回路39は、印刷に先立ち画素値(露光レベル)を指定できるものであれば、どのようなサイズ乃至容量のディジタル印刷システム(プリンタマシン10)でも、また静電写真式、電子写真式、インクジェット式、レーザ式等々どのような種類のディジタル印刷システムでも、使用することができる。プリンタマシン10は、印刷対象画像のビットマップデータを処理してエッジ画素を更には同じ画像中の他種画素を識別し、その後各画素の画素値乃至露光レベルを新規画素値乃至露光レベル調整値、即ちそのマシン10に対するトナー密度調整値に応じた値に設定する。この手法によれば、印刷画像及びそれに含まれる数多くのオブジェクトの特性、パラメタ及びユーティリティに影響を及ぼすことができ、例えばマッピング回路318における内部画素値再割当によって内部画素群にパターン(画素値の異なる画素群による模様)を付与することができる。こうした画像レンダリングアルゴリズムの利点の一つは、プロセス制御手段によるトナー密度制御を通じ、各画素に施した画素値修正が即座に発効することである。
また、複数台のプリンタの出力を組み合わせて単一の文書を作成する場合、しばしば、プリンタ間出力外観差及び質感差をできるだけ小さくすることが望まれる。更に、あるプリンタでリッピングしたビットマップ画像データに基づき、そのプリンタとは異なる特性を有する別のプリンタにて画像を印刷することがあり得る。本実施形態に係る方法によれば、画像を再リッピングすることなしに、またマシン設定パラメタ例えば静電写真プロセス設定点を調整することなしに、プリンタ間出力差を抑えることができる。プリンタ間で略一致させることができる外観要素としては例えばテキスト幅、ライン幅、画像階調スケール等があり、質感要素としては例えばトナースタッキング(トナー層の触感)等がある。本実施形態に係るレンダリング回路39による画像調整の効果は印刷出力上で直ちに発現するので、静電写真プロセス設定点調整用閉ループ制御システムに付きものの時間的遅延は発生しない。
また、画質が多少損なわれてもいいから1ページ当たりトナー消費量を減らしたい、と望むユーザも多い。本実施形態に係るレンダリング回路39には、図9に示した「トナー消費量」のノブ即ち調整部をユーザが操作して画質レベルを様々に変えられる、という特徴もある。更に、ユーザは、ある種類の画素例えば内部画素やエッジ画素に限って画素値を小さくし、その種の画素へのトナー堆積量を減らして総トナー消費量を抑えることもできる。ユーザは、このやり方で印刷画像を調整することで、トナー消費量を最小限に抑えつつ許容可能な画質を確保することができる。画像の再リッピングは必要ない。
ご理解頂けるように、レンダリング回路39は、画質及びトナー消費量の制御のため、全印刷対象画像構成画素を対象として且つ画素毎に画素値ひいてはトナー被着量を決定する。プリンタマシン10は、自機における総トナー消費量を、処理及び印刷するライン、文字、画像等のオブジェクトそれぞれにおけるトナー堆積量を加算乃至積算することにより正確に追跡監視する。トナー被着量の推計に際しては、現像されない隣接画素を有する画素であるエッジ画素の個数と、全隣接画素が現像される画素である内部画素の個数を別々に計数し、両計数結果に対し別々の変換係数即ち1画素当たりトナー使用量を適用する。これにより、ライン、ページ、ジョブ、ジョブ群等毎にトナー消費量を求めることができる。こうした推計結果は、マシン10によるトナー補充制御/トナー濃度制御にて利用できるのに加え、ユーザ自身も利用することができる。また、適用される変換係数はそのマシン10にてトナー密度可変制御に使用される目標トナー密度にも依存しているので、ユーザはジョブ毎にコストと画質の最適折衷点を指定することができる。例えば、シート面積の6%がテキストによって埋められている文書と、シート面積の6%が1平方インチサイズの単色正方形によって埋められている文書とでは、シート1枚当たりトナー使用量がかたや0.0397g、かたや0.0294gと、33%もの差があることが解っている。ブラック画素総数の文書間での違いを0.5%未満に抑えた場合ですら、こうした差が生じる。各画像をエッジ画素及び内部画素に関して解析した結果によれば、これは、エッジ画素によるトナー消費量が内部画素によるトナー消費量の1.3倍であることによる。従って、エッジ画素と内部画素とを個別に計数してトナー消費量を推計すれば、両者合計の画素数に基づき推計したトナー消費量に比べ正確な結果がもたらされる。
前述した通り、静電写真乃至電子写真プロセスには、現像ステーションの現像ゾーン内に誘電体例えば光導電記録素子を牽引乃至搬送し、その表面上に静電荷による画像(静電潜像)を形成する工程が含まれる。この工程においては、誘電体表面又はその上の静電潜像に例えば二成分現像剤を接触させて画像を現像する。二成分現像剤は、トナー粒子と通称される顔料性樹脂粒子群と、キャリア粒子と通称される磁気吸引可能な粒子群の混合物である。非磁性のトナー粒子を使用する場合、そのトナー粒子は、キャリア粒子への射突によって静電潜像電荷とは逆極性の摩擦電荷を獲得し、現像剤が静電潜像に相互接触する現像ゾーンにて静電潜像との間に作用する比較的強い静電力によってキャリア粒子から剥がされ、静電潜像に吸着することとなる。トナー粒子がこのようにして静電潜像上に堆積する一方、磁性粒子であるキャリア粒子は現像器シェル内の回転磁石によって吸引され、そのシェル内に引き込まれていく。通常、この磁力は非磁性のトナー粒子には作用しない。
しかしながら、現像ゾーン内には、そのトナー粒子を静電潜像方向に吸引する静電力以外に、そのトナー粒子に作用して画質を劣化させる力も存在している。例えば、誘電体例えば光導電記録素子の表面のうちその画像の背景エリアに相当する部分からトナー粒子に作用する斥力、キャリア粒子からトナー粒子に作用する電気的吸引力、他のトナー粒子からそのトナー粒子に作用する斥力、現像器シェルからトナー粒子に作用する電気的吸引力又は斥力(その何れになるかは現像器のニップ(接触間隙)エリアにて誘電体上の静電潜像担持膜に加わる電圧の極性による)等である。非磁性のトナー粒子に対してであれば、作用する力のうち静電潜像への吸引力以外の力の作用を補償し或いは何かとバランスさせ、それによって画質の顕著な劣化を防ぐ手法も幾つかあるが、磁性体成分を含むトナー粒子に作用する力は、非磁性のトナー粒子に作用する力とかなり異なり、そうした手法は適用困難である。
即ち、磁性体成分を含むトナー粒子に作用する力には、非磁性のトナー粒子に作用する上述の電気的な諸力に加え、キャリア粒子、他のトナー粒子、シェル内回転コア磁石等からの磁気的吸引力等、磁気的な力も作用する。これらの磁気的諸力は、全体としては何れもそのトナー粒子を誘電体上の静電潜像担持膜から引き離す方向の力であり、そのトナー粒子を誘電体上の静電潜像担持膜に引き付ける方向に作用する力は上述の静電吸引力だけであるので、当該磁気的諸力は静電潜像方向へのトナー粒子の電気的吸引を妨害する傾向を持つ。吸引を妨げる磁気的諸力に対する静電潜像上への電気的吸引力の強さの比は静電潜像と回転コア磁石との距離が拡がる程大きくなるので、トナー粒子はどちらかといえば誘電体上の静電潜像担持膜の後縁に堆積しやすく、従って画像の後縁の方がより濃く現像されがちでまたトラックラインに比べるとクロストラックラインの方が広く現像されがちである。なお、誘電体上の静電潜像担持膜の移動方向に対して直交するラインをクロストラックライン、平行なラインをトラックラインと称している。
このフリンジ場効果、即ち光導電体上のラインエッジを縁取るように電磁界(フリンジ状電磁界)が作用し印刷媒体上のラインエッジに相当する部分にトナー粒子を山積させる効果は、プリンタの種類によっては問題になることがある。本実施形態に係るレンダリング回路39においては、IPV、EPV、1PV或いは2PVといったパラメタを相応に調整し、それによってフリンジ場効果を抑え又は妨げるという手法で、ラインエッジ上へのトナー粒子の山積、即ちビルドアップ乃至パイルアップを減らすことができる。例えば、図5a〜図5dに示したように、同じ文字を形成している複数個のレイヤに対して互いに異なる画素値(露光レベル)を割り当てることにより、画質に対するフリンジ場効果を最低限に抑えることができる。
また、前述した通り最大トナー密度パッチを利用して最大トナー密度を制御することができる。即ち、最大トナー密度Dmaxを有する最大トナー密度パッチを密度センサ76によって読み取り、その密度センサ76から回路経由で伝送されてくる信号Doutを用い、何れも電子写真パラメタである一次帯電電圧V0の調整と最高露出光強度E0等の調整とを同時に行うことで、塗り潰しエリア(内部画素領域)におけるトナー密度を最大トナー密度Dmaxに維持することができる。また、こうした最大トナー密度制御に加えシャドウ領域内トナー密度制御及びハイライト領域内トナー密度制御を行うことができる。シャドウ領域内トナー密度制御を行う際には、実行前調整の際にレンダリング回路39に指示してあるエッジ画素値EPV及び内部画素値IPVを用い、約70〜90%の面積を占める個数の画素によるパターン又は最大トナー密度Dmaxの70〜90%に相当する露光レベルによる一様パターンで、シャドウ領域詳細設定パッチをライトする。このパッチの読取によって得られる密度センサ出力信号Doutに基づきエッジ画素値EPV及び内部画素値IPVを調整し、調整したエッジ画素値EPV及び内部画素値IPVをそれぞれエッジ画素及び内部画素に再割当することによって、シャドウ領域におけるトナー密度(例えば太線文字におけるライン幅)を仔細に亘り所望の如くに調整することができる。また、ハイライト領域内トナー密度制御を行う際には、実行前調整の際にレンダリング回路39に指示してあるエッジ画素値EPV、内部画素値IPV及び微細部分画素用画素値(露光レベル)を用い、最大トナー密度Dmaxの約5〜20%に相当する露光レベルによるブラック画素の一様パターンで、ハイライト領域詳細設定パッチをライトする。このパッチの読取によって得られる密度センサ出力信号Doutに基づき微細部分画素用画素値を調整し、調整した画素値をエッジ画素、1画素幅オブジェクト内画素及び2画素幅オブジェクト内画素のうち一種類又は複数種類に再割当することによって、ハイライト領域におけるトナー密度(例えば細線文字におけるライン幅)を仔細に亘り所望の如くに調整することができる。
また、本実施形態に係るレンダリング回路39を使用し全文字エッジで画素値(露光レベル)を低下させることもできるが、本実施形態による露光レベル調整には最低2画素幅が必要であるので、全エッジを対象にすると、とりわけ小サイズフォントで文字を印刷する際にライン幅狭搾が生じやすくなる。そうしたライン幅狭搾を抑えるには、例えば文字エッジのうちの半分例えば上側及び左側エッジだけで露光レベルを低下させるようにすればよいが、今度は文字中心位置が見た目にシフトすることとなり、例えばカーンドフォントを使用する場合や小サイズフォントで文字を印刷する場合等には望ましくない。そこで、本実施形態に係るレンダリング回路39では、閉鎖文字(例えば「O」「D」「B」のように閉鎖部分を有する文字)の閉鎖部分についてはその内側エッジ又は外側エッジだけで露光レベルを下げる、というまた別のアルゴリズムを用い画素値再割当を行うことで、全エッジ画素で露光レベルを下げた場合に比べ低いライン幅狭搾度を得ることと、上側及び左側エッジ画素だけ又は下側及び右側エッジ画素だけで露光レベルを下げ小サイズフォントで文字を印刷したとき顕現する文字中心位置シフトを回避することとを、両立させている。図10に、閉鎖文字の一例として文字「O」を示す。この図に示すように、本実施形態では、閉鎖文字の内側エッジと外側エッジとに、互いに異なる露光レベルを再割当することにより、過度のライン幅狭搾を引き起こすことなく文字中心位置を維持できるようにしている。また、閉鎖部分以外の部分例えば直線部分については例えば1画素幅分だけで露光レベルを下げるようにする。半閉鎖部分を有する文字例えば「V」「C」「M」「N」等に対してもこれと類似したアルゴリズム即ち内側エッジだけ又は外側エッジだけで露光レベルを変更するアルゴリズムを適用できる。半閉鎖部分を複数個有する文字例えば「T」「Y」「W」「M」に対してこのアルゴリズムを適用する際には、各線分の両側エッジで露光レベルが変更されないようにするためより多くのルールが必要になるであろうが、両側エッジでの露光レベル変更を避けられる首尾一貫した一組のルールを作成することは、十分可能なことである。
エッジ画素の画素値(露光レベル)を所望通り下げるには、適用対象文字のうち最もサイズが大きな文字全体を完全に覆える十分大きなサイズの二次元演算子を用いればよい。その演算子の適用視界でエリアを捉え、そのエリア内に存する個々のオブジェクトを識別し、そのオブジェクトに対しその演算子を適用して、本実施形態に係るレンダリングアルゴリズムを実施することにより、見た目上の文字中心位置シフトを最小限に抑えつつライン幅を見た目に狭めることができる。
また、内部画素即ち塗り潰し領域に属する画素の画素値乃至露光レベルがあるレベルを下回ると、その塗り潰し領域内の画像部分に電子写真プロセス特有の密度不整(non-uniformity)が顕現する。そうした密度不整を目立ちにくくするには、全内部画素に対して共通の露光レベル即ち内部画素値IPVを適用するのではなく、複数通りの内部画素値IPVから画素毎に選んで適用して、内部画素によるパターンが画像上に生じるようにするとよい。例えば、二値画像データに基づき生成する中間調パターンに似ているが、その明るさ乃至画素値が非ホワイトの画素値間で変化するパターンを、形成するようにするとよい。画素単位で画素値乃至露光レベルを変え画像パターンを形成することにより、同一露光レベルで画一的に画素を形成した空間では目立つ縞状不整及び帯状不整が目立ちにくくなる等、密度不整がかなり目立ちにくくなる。なお、密度不整の識別方法乃至計測方法は数多くあるが、例えば印刷出力を目視検査する方法や、所定露光レベルでパッチを印刷してそのパッチ上でのトナー密度を計測する方法を使用できる。また、パターンサイズやパターン内露光レベル段階数は様々に設定できる。例えば、印刷によって形成される内部画素のトナー密度の平均値が所望値と一致することとなるよう設定し、印刷結果における密度不整を抑えるようにするとよい。
この点との関連では、磁性トナー乃至磁気インクによる印刷に、本実施形態を好適に使用できるといえる。磁気インクや磁性トナーは磁化可能物質例えば酸化鉄を含む特殊なインク乃至トナーであり、容易に磁化させることができる。そのため、磁気インクや磁性トナーを用いて印刷された文字は、適当な読取装置にかけてその文字を磁化し、文字周辺に生じた磁界を検知することによって読みとることができ、またこのプロセスは自動化することができる。そうした技術、即ち磁気インクや磁性トナーにより記された文字を認識する技術としてはMICRがある。MICRは、既に多年に亘り小切手及び手形の自動読取及び分類や文書の高速読取及び分類に使用されている。MICRを使用する際には、本件技術分野において周知の通り、特殊なMICR専用フォント、例えば米国ならel3−bフォント、他国ならcmc−7標準フォントを用いて文字を印刷紙、その文字によって支払人金融機関、支払人口座番号、装置番号等の情報を支払装置に提示する。MICRでは、読取及び分類装置にかけてその文字を磁化させたとき、その装置で読み取れる適当な強度の磁気信号がその文字から生じるよう、各文字を印刷する。こうして印刷された文字を利用すれば、手形の呈示や支払に当たり自動回付や自動清算を好適に行うことができる。
しかしながら、MICR用トナーを用いた従来の電子画像印刷においては、比較的重い成分である酸化鉄の影響で、印刷された文字の画質がやや低くなっていた。即ち、トナー樹脂内に重い酸化鉄粒子を適切に分散させることや、その状態を維持するのは難しいことであるし、通常の即ちMICR用でないトナーに比べ磁性物質を含むMICR用トナーの現像及び融着効率は低いので、そのプリンタにて補償調整を実行しない限り、MICR用トナーにて実現し得る画質は通常のトナーにて実現し得る画質に比べ貧弱になる。本実施形態に係るレンダリング回路39によれば、文字の一部におけるMICR用トナー密度を調整し、ひいてはMICR用トナーの使用に伴い印刷物上に生じるトナー密度不整を最小限に抑えることができる。本願図面に描いた通り、文字内画素位置に応じてその画素におけるトナー密度の値を変化させることにより、磁性トナー粒子の濃度を調整することができ、ひいては読取装置における印刷文字読取ミスを減らすことができる。
図11にトーン再生曲線の典型例を示す。この曲線は本件技術分野にてγ曲線とも称されているものであり、プリンタとして従来のプリンタを用いた場合について、指令された現像レベルに基づき現像を行ったときその現像レベルが印刷画像でどの程度忠実に再現されるか、という性能を示している。図示例に示したのは、グレースケール印刷時における性能である。図中、横軸は指令される画素強度値(指令画素強度値)を、縦軸は指令画素強度値に応じそのプリンタによりハードコピー媒体に実現されるトナー密度値(実現トナー密度値)を、それぞれ表している。指令画素強度値の値域はホワイト即ち現像レベル=0からブラック即ち現像レベル=上限までの範囲であり、実現トナー密度値の値域はD0即ちトナー密度=0からDmax即ちトナー密度=最大までの範囲である。与えられた指令画素強度値に対する実現トナー密度値の関係を示すこの伝達関数は、図11中に理想曲線Iとして示すようにその傾きが45°の直線となるのが理想的である。伝達関数が理想曲線Iであれば、指令画素強度値の全値域に亘り指令画素強度値と厳密に一致する実現トナー密度値が得られる。
実際には、プリンタ性能は非線形なトーン再生曲線、例えば図11中に実際曲線Aとして示すS字状のトーン再生曲線に従う。狭義には、この非線形トーン再生曲線を以てγ曲線と称する。S字状トーン再生曲線に沿ってみると、一般に指令画素強度値が小さい領域では実現トナー密度値が小さくなり(即ち理想曲線Iより下になり)大きい領域では大きくなる(即ち理想曲線Iより上になる)。図11中、S字状トーン再生曲線のうち理想曲線Iより下になる領域即ちトゥ領域は符号Tにより、上になる領域即ちショルダ領域は符号Sにより、それぞれ表されている。トーン再生曲線のトゥ領域に属する実現トナー密度値のことをハイライト領域内密度値と呼び、ショルダ領域に属する実現トナー密度値のことをシャドウ領域内密度値と呼ぶ。ハイライト領域内密度値及びシャドウ領域内密度値の何れにおいてであれ、トーン再生誤差は一般に印刷時コントラスト誤差となって現れるものであり、例えばハイライト領域におけるトナー密度不足ははげ落ち状画像(ワッシュアウト)として視認され、またシャドウ領域における密度過剰は暗領域内の明るい特徴物の消失即ちその領域内の細部の逸失(ディテールロス)につながる。トーン再生曲線の中間トーン領域、即ち図11中で符号MTにより示されている領域においては、指令画素強度値に対する実現トナー密度値の誤差が比較的小さいので、この領域では、指令画素強度によく一致したトナー密度を、そのプリンタマシン10によって得ることができる。
従って、上述のRIP37を用いディジタル画像データをPDL記述からビットマップへと変換し、電子画像その他の種類のプリンタマシン10によって画像を印刷する場合、大抵は、その処理に際しγ補正を適用する。γ補正とは、そのマシン10のトーン再生曲線例えば図11中の曲線Aとは逆傾向の伝達関数を適用して、そのマシン10の実現トナー密度値を理想に近づける補償処理のことである。通常、このγ補正は、低指令画素強度値領域における実現トナー密度値を増し高指令画素強度値領域における実現トナー密度値を減ずる補正となる。理想曲線Iに対する実際のトーン再生曲線Aの曲率差に応じ補正係数即ちγ値を定め、そのγ値により補正を画素値を補正することでγ補正(少なくともその一次近似)を実現することができる。この補正は、実際には、先に述べた通り、ハイライト領域内密度値補正には高密度中間調スクリーンを、またシャドウ領域内密度値補正には低密度中間調スクリーンを、というように、適当な中間調スクリーンを選択することによって実行するとよい。
従来採用されていた手法では、所与又は所与種類のプリンタに適する中間調スクリーンを選択する作業は、必ず試行錯誤プロセスを伴っていた。この試行錯誤プロセスにおいては、正しいと解っている最大トナー密度Dmaxをまず最初に最大指令画素強度と関連付けた後、ハイライト領域内密度値及びシャドウ領域内密度値についての一組の暫定補正量を用いて基準画像を処理し、処理した画像を出力及び解析し、その結果に基づいて補正量を調整し、更にその補正量を用いて基準画像を再処理し、というように繰り返し処理により設定を行う。出力画像が所望画像に収束したら、この試行錯誤プロセスにて設定された補正量即ち選択された一組の中間調スクリーンを用い、別の画像の調整(γ補正)及び印刷を行う。従って、トゥ領域及びショルダ領域双方について且つプリンタ毎又は画像毎の繰り返し処理により設定を行わねばならないため、このプロセスの実行にはかなりの時間及びコストがかかる。
また、RIPプロセスには個別プリンタ依存性があるため、あるプリンタ又はある種類のプリンタ用に生成したRIP出力を他のプリンタ例えば電子画像プリンタに送るとしたら、その画像データに不適なγ補正が施されて画像が印刷されることを覚悟しなければならない。言い換えれば、リッピングを行ったプリンタを基準としてRIP出力にγ補正を施すと、別のプリンタのトーン再生曲線に相応するγ補正にはならないことが多い。
先に述べたように、特許文献2に記載の塗り潰し領域内トナー密度制御システムにおいては、最大トナー密度パッチや非最大トナー密度パッチのトナー密度を計測し、その電子画像プリンタの特性の計測結果に基づきそれらパッチのトナー密度を制御する。こうした既存手法で塗り潰し領域内トナー密度制御を行えば、その電子画像プリンタのセットアップ中及び動作中に実現トナー密度値の最大値を最大トナー密度Dmaxに調整することができ、また最大値以外の実現トナー密度値を相応の実現トナー密度値に調整、制御することができるが、塗り潰し領域内トナー密度例えば最大トナー密度Dmaxを制御できるのみで、ハイライト領域内密度値とシャドウ領域内密度値とを個別制御することはできない。言い換えれば、例えばハイライト領域内密度値不足が補償されるように塗り潰し領域内の最大トナー密度Dmaxを増加させるとシャドウ領域内密度値については過剰補償になり、逆にシャドウ領域内密度値過剰が補償されるように塗り潰し領域内の最大トナー密度Dmaxを減少させるとハイライト領域内密度値については補償不足になる。また、この塗り潰し領域内トナー密度制御を行うことで露光領域内のトナー密度が見た目に安定になるが、それによって必然的にテキストを構成する文字のライン幅や別体画像小部分のライン幅が変化するわけではなく、ライン幅変化の一部はフリンジ場効果によりもたらされるものである。即ち、本件技術分野において知られているように、電子画像プリンタの光導電体上に被着し画素を形成するトナーの量は、LED光又はレーザ光によって光導電体上に発生する露光電位と、現像ステーションにて印加されるバイアス電位との差に依存しており、これらの電位のうち何れかが変化すると現像ステーション内の電界が変化して、画素形成に至るトナー量が変化する。露光されたパッチのエッジ(即ち非露光画素に隣接する露光画素のエッジ)ではこの電界が同パッチの中央部に比べ格段に強く、既に知られているように電界強度で3〜5倍程の差があるので、トナー粒子は露光パッチのエッジ画素に積もりやすくまた非露光部分に囲まれた位置にある孤立露光画素にも積もりやすい。これをフリンジ場効果、或いはトナーのビルドアップ乃至パイルアップ効果と呼んでいる。例えば、理論的画素ピッチが42μmになる600[dpi]のプリンタにてこのパイルアップ効果が発生すると、孤立画素のサイズが90μmオーダにもなってしまう。また、こうしたフリンジ場効果はグレースケール画像にも完全にブラックのテキストにも影響するので、フリンジ場効果が発生していると画質調整、即ち画像リッピング元の電子画像プリンタと画像印刷用の別の電子画像プリンタの間の特性相違分の補償が難しくなる。こうしたフリンジ場効果は、本実施形態に係るレンダリング回路39を用い、露光パッチエッジ画素や非露光領域内孤立露光画素に対し、他より低い露光レベル乃至画素値EPVを再割当すれば、抑えることができる。
また、その階調スペクトラムが完全に連続な画像を生成できるプリンタは多くなく、むしろ様々な階調値をある種の変調パターンでシミュレートするプリンタの方が多い。そうした変調パターンの中でも一般的なものの一つに中間調がある。例えば、一般的な白黒プリンタでは、30%ホワイト、60%ホワイト等といった様々なグレーレベルを、中間調を用いて実現することが多い。中間調では、ラスタ化した画像を複数個の中間調セルに分割し、各中間調セルに含まれる所定個数の画素を任意個数比率でターンオンすることによって、連続な階調スペクトラムを近似的に実現する。白黒プリンタの場合、理論的には中間調セル内画素のうち50%をターンオンさせれば50%のグレーレベルを実現できる。また、面積被覆率が違うとエッジ画素数と内部画素数の比ひいてはドット利得に違いが生じるので、別々の実効スクリーン周波数(1インチ当たりライン本数;単位はlpi)で処理された複数種類の中間調のディジタル画像データがある場合、それらに基づき印刷された画像の外見上のコントラストもしばしば互いに異なるものになる。図12に、106、85及び71[lpi]という三通りのスクリーン周波数それぞれについて、17段階の中間調を示す。図中、各段階にはホワイト画素個数比率を付記してある。また、図13に、ブラック画素数比率[%]に対する明るさ[%]の関係をスクリーン周波数毎に且つ中間調段階毎に示してある。図中、標準露光時における関係を示す3本の曲線の間に差があることから、スクリーン周波数が違うと得られる中間調画像にも違いが現れることが解る。また、図14に、それぞれ1画素幅、2画素幅、3画素幅、4画素幅及び8画素幅を有する一群のラインを示す。更に、図15に、同一ライン幅を有するある一組のライン(例えば8画素幅ライン)について、ライン幅とそのラインを横切る方向に数えた画素数(ホワイトのスペースには負数を割当)との関係と、収集したデータポイントを通るよう引いたベストフィットライン500をグラフにより示す。図16に、画素数対ライン幅の関係から導出した一群のベストフィットラインを示す。その元となった画素数対ライン幅関係は、内部画素値IPVを固定し再割当画素値EPV、2PV及び1PVを八通りに変化させて導出したものである。ご覧の通り、この図には八通りの異なるベストフィットラインが示されており、またそのうち1本は原点(横軸=0と縦軸=0の交差点)を通る原点通過直線である。原点通過直線が得られた再割当画素値EPV、2PV及び1PVを用い図14に示した一群のラインをスクリーン周波数106、85及び71[lpi]で印刷し、それら三通りのスクリーン周波数についてのブラック画素数比率[%]対明るさ[%]の関係をプロットしてみたところ、図13中に「原点通過グループ」として示した3本の曲線となった。ご覧の通り、再割当画素値EPV、2PV及び1PVとして原点通過直線に係る値を用いると、スクリーン周波数の違いによらず同一のディジタル中間調画像が得られる。また、内部画素割当値IPVと異なる露光レベルを指定する再割当画素値EPV、2PV及び1PVを用いることによって、印刷画素数対文字ライン幅の関係を、原点通過直線によって表せる関係にすることができる。更に、割当値IPVを変化させていないため、複数個の内部画素の重ね合わせにより隙間なく埋められた好適な塗り潰し領域を形成できる。また、画素数とライン幅計測値との関係を示す直線が原点を通過しているため、中間調パターンについての画像密度がエッジ画素数対内部画素画素数比率に依存することにならず、従ってスクリーン周波数からも独立になる。従って、ユーザは、ユーザインタフェースを介し塗り潰し領域内最大トナー密度即ち再割当内部画素値IPVを調整し更にエッジ画素露光レベル即ち再割当画素値EPV、2PV及び1PVを指定することによって、画素数対文字ライン幅曲線を原点通過させスクリーン周波数に対する感度を最小化(スクリーン周波数差に対して鈍感化)することができ、同時にスクリーンを構成するドット形状(例えば円、楕円、菱等)に対する感度も最小化できる。
さて、図18aに3×3サイズの画素アレイを示す。この図の中央に位置する画素が注目画素PIQであり、この注目画素PIQは8個の画素b0〜b7によって取り巻かれている。図18bに示す8ビット二進数の各ビットはこれらの画素b0〜b7に関連付けられており、対応する画素にマーキングしないなら0値、マーキングするなら1値というように生成される。図18cに示したのは、注目画素PIQに対する隣接画素b0〜b7のマーキングパターンの一例である。マーキングする画素に1値、ブランクの画素に0値を割り当ててあるので、図18a及びbに示したビット割当の許では、ビット位置b0及びb3に対応する2個の画素にマーキングすることを示す図18c中のマーキングパターンは、二進数で00001001、十進数なら9で表されることとなる。
図18bから理解できるように、注目画素PIQを取り巻く8個の画素の画素値を表す8ビット二進数は、00000001、00000010、00000011、00000100等々、256通りの値を採り得る。この256通りの値を表現するには、例えば256個のエントリを有するLUTを生成すればよい。
図18dに、256個のエントリを有するLUTの例9を示す。このLUT9を構成する各エントリには、上掲の8ビット二進数によって与えられ得る画素マーキングパターンを表す方角値(0、SE、S、SW、E、W、NE、N及びNW)のうち何れかが、それぞれ設定されている。例えば、この図中、第1列第1行にあるエントリは二進数で表すなら00000000である。その右にあるエントリは図18a中の画素b0だけにマーキングするマーキングパターンを示しており、二進数で表すなら00000001であるので、そのエントリに対応する注目画素PIQに方角値文字SEが割り当てられる。更にその右にあるエントリは図18a中の画素b1だけにマーキングするマーキングパターンを示しており、二進数で表すなら00000010であるので、そのエントリに対応する注目画素PIQに方角値文字Sが割り当てられる。最初の00000000のすぐ下にあるエントリは二進数で表すなら00010000、十進数で表すなら16であり、そのエントリに対応する注目画素PIQに対して方角値文字Wが割り当てられることを表している。このように、図18dに示したLUT9は、それぞれ発生し得る256通りのマーキングパターンのうち何れかを表す256個のエントリから構成されており、各エントリには九通りの方角値のうち対応するマーキングパターンに対応するものが設定されている。
図19aに、ある文字の二値ビットマップを表した画素グリッドを示す。このビットマップは2個の画像部分710及び712を有しており、画像部分710を構成する画素のと画像部分712を構成する画素は互いに異なるトナー密度等で現像されるように画素値が設定されている。画像部分712は例えば画像部分710に対して陰影を付すために設けられた部分であり、図中、画像部分710と画像部分712との間には1画素幅ブランクライン714がある。例えば画像部分710と画像部分712を隣り合わせにしたかったのに様々な機械的、電気的乃至ソフトウェア的不具合によって位置合わせに問題が生じ、その結果生じた位置ずれによりこのような状態になる可能性は割合に高い。本実施形態に係る画像レンダリング能力、特に方角認識能力及び1画素幅オブジェクト認識能力を用いてポストリッピング処理を行うことにより、こうした画像部分710の外側エッジや陰影を表す画像部分712を識別することができる。例えば、画像部分712を構成する画素の方角値はN、NE又はEと識別される。
図19bに、画像部分710の1画素幅外側エッジ716、即ち画像部分710の中で画像部分712に一番近い部分を示す。このエッジ716やその方角値は、本実施形態に係るレンダリングアルゴリズムのエッジ識別能力や方角識別能力によって識別することができる。例えば、エッジ716を構成する画素の方角値はN、NE又はEとして識別される。
図19cに、識別したエッジ716を本実施形態に係るアルゴリズムによりシックニングすることによって得られる2画素幅エッジ718を示す。
図19dに、そのエッジをシックニングして得られる新たな画像部分710’と、画像部分712とを、一緒に印刷して得られる画像を示す。ご覧の通り、1画素幅ブランクライン714はシックニング部分により埋められており、その結果画像部分710’と画像部分712が連続するに至っている。このように、プリンタにて生じる問題のうち1画素幅又は複数画素幅に亘る位置ずれを補正し、その問題を解消することができる。また、図19eに示すように、陰影を表す画像部分712をシックニングすることでも位置ずれ問題を解消できることにご留意頂きたい。複数画素幅に亘る位置ずれ問題を解消するには、問題が起きた箇所の両側にある画像部分をシックニングして、互いに接近するよう“成長”させるとよい。
図20aに、文字730の二値ビットマップが表された画素グリッドを示す。
図20bに、本実施形態に係るレンダリングアルゴリズムのエッジ識別能力及び方角識別能力を用い文字730から識別した1画素幅外側エッジ732を示す。ここに例示したエッジ732を構成する画素の方角はN、NE又はEとして識別される。
図20cに、文字730と隣接乃至連続する1画素幅構造734の形成手法乃至態様を示す。この1画素幅構造734は、例えば文字730と異なるレベルで露光され異なるトナー密度で現像される。このようにすることで、様々な構造を有する画像の何れに対しても、ポストリッピング処理により陰影付けその他の効果を付加することができる。
また、先に述べたように、各中間調セル内の画素のターンオン比率を変化させることで連続階調スペクトラムを近似することができる。前述したアルゴリズムによれば、多ビットライタを用いるプリンタにてリッピングされた二値画像データにおけるライン幅/ドット利得及び塗り潰し領域内トナー密度を互いに独立に制御することができる。即ち、リッピングプロセスにより生成された画素を背景画素、エッジ画素、内部画素、1画素幅ライン内画素及び2画素幅ライン内画素の何れかに分類し、各画素に対しその所属分類に応じた多ビットの画素値を再割当しているので、その再割当値を適宜設定することにより、その画像におけるライン幅/ドット利得や塗り潰し領域内トナー密度を共に好適に変更、修正することができる。また、先に示したように、ライン幅設定値と塗り潰し領域内トナー密度設定値は互いに独立に指定できる。即ち、図9に示したようなGUIがユーザに提供されるため、ユーザは各項目を互いに独立に設定することができる。例えば、「ライン幅/ドット利得」と付記したスライダを1個、また「塗り潰し領域内トナー密度」と付記したスライダを1個、それぞれ設けて機能させるだけでよい。「塗り潰し領域内トナー密度」スライダを動かさないで「ライン幅/ドット利得」スライダを操作することで、そのテキストの塗り潰し領域内トナー密度に影響を及ぼすことなくライン幅を変えることができ、逆に、「ライン幅/ドット利得」スライダの設定を変えないで「塗り潰し領域内トナー密度」スライダを操作することで、同じライン幅を保ちながら塗り潰し領域内トナー密度を変化させることができる。但し、ライン幅/ドット利得を変化させると、そのテキストのライン幅だけでなく、中間調領域及びテキスト/ラインアートにも影響が生じる。
従って、リッピングされた画像に中間調領域及びテキスト/ラインが併含されている場合は、ライン幅/ドット利得を望ましい値に設定したとしても、中間調領域について望ましい結果を得つつテキスト/ラインアートについても望ましい結果を得ることが、できない可能性がある。例えば、ライン幅/ドット利得及び塗り潰し領域内トナー密度の組をある設定にすると、ページ内画像のうち中間調領域については望ましい結果が得られるが、テキスト/ラインアートについては十分満足のいかない結果になることがある。テキスト/ラインアートについて望ましい結果を得るためには、設定を別の組による設定にしなければならない。
前述のポストリッピング処理を伴うレンダリングアルゴリズムによれば、テキスト/ラインアートに変形、修正を施すことができるが、その修正は中間調領域にも影響を及ぼす。それは、そのアルゴリズムが大域的な即ち画像内全画素を操作するアルゴリズムであるからであるが、中間調領域に生じるこうした変化はユーザにとって望ましくないものであることがある。本実施形態によれば、中間調領域に変化をもたらすことなくテキスト/ラインを変更、修正する手段、即ちテキスト/ラインアートと中間調領域とを互いに独立に変更、修正する手段を提供することができる。
図21に、テキスト/ラインアートと中間調領域を互いに独立に変更、修正する手順を示す。この手順においては、まずステップ802にて一組目の階調度別サンプルを作成してみる。例えば、図12に示すように、ホワイト画素数比率を10%刻みで変えた一群の階調度別サンプルをそのマーキング装置により作成してみる。但し、これは図示簡便化を意図した一例に過ぎず、階調度別サンプル群の構成は適宜設定できる。例えば、ホワイト画素数比率が2.5%刻みで異なる一群の階調度別サンプル等、刻み幅の異なるサンプル群を作成してもよい。次のステップ804では、前述のポストリッピングレンダリングアルゴリズムに従い、現像レベル(階調度)の再割当値IPV、EPV、1PV及び2PVのうち1個又は複数個を変更し、更にその次のステップ806では、再割当された現像レベルに従い二組目の階調度別サンプルを作成してみる。二組目の階調度別サンプルの構成は、作成済の一組目の階調度別サンプルと次のステップ808にて比較できるよう、一組目の階調度別サンプルと同一又は類似の構成とする。ステップ808では、一組目の階調度別サンプルと二組目の階調度別サンプルとを対照、比較することによって、ステップ804における割当値変更がトナー密度に対してどのように影響したかを識別する。ステップ808における比較は、例えばマーキング装置(プリンタマシン10)のオペレータが自分の目で見て或いは適当な装置を用いて行うようにしてもよいし、或いはスキャナ等を用いた自動比較として実行するようにしてもよい。続くステップ810では、1個又は複数個の校正用設定点を決定する。この校正用設定点決定は、一組目の階調度別サンプルの中から二組目の階調度別サンプルと最もよくマッチングしているものを識別することによって行う。例えば、一組目の階調度別サンプルのうちホワイト画素数比率=40%のものが、二組目の階調度別サンプルのうちホワイト画素数比率=30%のものと最もよくマッチングしている場合、一組目のうちホワイト画素数比率=40%の現像レベルを使用したときのトナー密度が、二組目のうちホワイト画素数比率=30%の現像レベルを使用したときのトナー密度を、最も良好に近似するものになる。これら二種類の階調度別サンプルの関係によって、ポストリッピング処理抜きでレンダリングした場合に得られる印刷結果と、ポストリッピング処理を施してレンダリングした場合に得られる印刷結果とを関連付ける校正用設定点が決まる。また、図12に示した通り階調度別サンプルは複数個あるので、複数個の階調度別サンプルについてこの比較プロセスを実施し、複数個の校正用設定点を決定するようにするとよい。例えば10〜12個の校正用設定点を決定するとよいが、何個決定するのが望ましいかは環境次第であり、ここで例示した個数に限られるわけではない。
校正用設定点を決定したら、ステップ812にて、それら校正用設定点を用いてカスタムトーン伝達関数曲線、例えばリッピング前現像レベル対リッピング後現像レベルの関係を示すアンドゥトーン伝達関数曲線をプロットすることにより、リッピング前現像レベル即ち要求現像レベルに対し適切に、リッピング後現像レベル即ち実現現像レベルをマッピング乃至計算する。例えば、ポストリッピング処理を伴うレンダリングプロセスによりホワイト画素数比率=30%のサンプルを印刷するとポストリッピング処理抜きのレンダリングプロセスによりホワイト画素数比率=20%のサンプルを印刷したときと同じトナー密度が得られる旨、校正用設定点によって示されている場合、ポストリッピング処理付レンダリングプロセスを実行するとトナー密度が低めになる。本実施形態では、これを補正するため、アンドゥトーン伝達関数乃至その曲線を生成する。
ステップ814では、こうして生成したアンドゥトーン伝達関数乃至その曲線を、ポストリッピング処理付レンダリング時における各種画素への割当値例えばIPV、EPV、1PV及び2PVと関連付ける。これにより、ステップ816にて、プリンタ標準装備のトーン伝達関数を、オペレータによる操作例えばオペレータインタフェース上にあるアンドゥボタンの操作やオペレータインタフェースからのアンドゥコマンドの入力によってオーバライドし、アンドゥトーン伝達関数を適用すること、ひいてはステップ804にて与えた割当値によるポストリッピング処理付レンダリングプロセスにて発生する中間調/ドット利得の変化を取り消し又は防止する(アンドゥする)ことが、可能になる。アンドゥトーン伝達関数は例えばラスタ化前にディジタル画像データファイル中に埋め込んでおく。
ステップ812におけるアンドゥトーン伝達関数の生成は、様々な統計的手法で実行することができる。その際、アンドゥトーン伝達関数は、与えられている1個又は複数個の校正用設定点それぞれを含むように定義する必要がある。図22に、四通りのレンダリング時ポストリッピング処理設定について、要求ホワイト画素数比率即ちホワイト画素数比率入力値に対する実現ホワイト画素数比率即ちホワイト画素数比率出力値の関係を、グラフにより示す。図中の関数830は、通常のマーキング装置にて入力値を出力値にマッピングするのに使用されるトーン伝達関数であり、一方の端点ではホワイト画素数比率入力値=0%に対しホワイト画素数比率出力値=0%を、また他方の端点ではホワイト画素数比率入力値=100%に対しホワイト画素数比率出力値=100%を、それぞれ対応付け、それらに挟まれている領域内でも同様の入出力間1対1対応関係を提供する勾配=1の関数となっている。本実施形態におけるアンドゥトーン伝達関数は、図中の832a〜832dのように1個又は複数個の校正用設定点を含んでいる点で、関数830と異なっている。また、図21に示した例では、校正用設定点が線分連結によって形成されているが、滑らかな有限長曲線で連結してもよい。
以上の概略手順説明は白黒プリンタによりグレーレベル現像を行う場合についてのものであったが、上述の手順はカラー出力を作成するシステムにも等しく適用できる。例えばレッド、グリーン及びブルー(RGB)を成分色とするカラープリンタでは、それら三種類の成分色それぞれについて別々にアンドゥトーン伝達関数を生成する必要があり、また、シアン、イエロー、マゼンタ及びブラックを成分色とするカラープリンタでは、それら四種類の成分色それぞれについて別々にアンドゥトーン伝達関数を生成する必要がある。何れのカラープリンタにおいても、二組の階調度別サンプルを成分色毎に作成して両者を比較対照し、各成分色の濃淡を調べればよい。また、上述の手順は、何らかのまた何種類かのアクセント色乃至補助職を使用するプリンタ乃至システムにも適用できる。その場合、二組の階調度別サンプルを各アクセント色乃至補助色についても作成する。
図1aに示した通り、アンドゥトーン伝達関数44、RIP37、MIP38及びレンダリング回路39の集まりによって構成される画像処理サブシステムは、総体として、クライアントアプリケーションから画像データを受領し、トーン伝達関数を調整してアンドゥトーン伝達関数44を生成し、そのアンドゥトーン伝達関数44を用いて画像データを処理することにより、ラスタ化画素データストリームを生成する。生成されたラスタ化画素データストリームは、本実施形態に係る手法に従いマーキングエンジン10による画像出力に使用される。
また、上述の手順においては、校正用設定点データを校正用インタフェースからRIP37へと送り、RIP37にて本実施形態に係る方法に従いアンドゥトーン伝達関数44を生成しているが、校正用設定点データをクライアントに送り、マーキング装置10側ではなくクライアント側でアンドゥトーン伝達関数の生成及び適用を実施する形態でも、本発明を好適に実施することができる。何れの実施形態を採るにせよ、アンドゥトーン伝達関数は、現像レベル出力値を現像レベル入力値に対しマッピングするLUTの形態で実現するのが望ましい。
図23に、上述の好適な実施形態に係るプロセスにおける論理操作手順を示す。この図に示す手順においては、まずステップ902にてカウンタ変数nの値を1に初期化し、その次のステップ904にて一組目の階調度別サンプル中から1個を選択し、選択した階調度別サンプルにおけるホワイト画素数比率をその次のステップ906にて変数White%1にセットする。階調度別サンプル選択は、例えば一組目階調度別サンプル出力ページ上で予め決めておいた配置における位置に基づき行う。その次のステップ908においては、二組目の階調度別サンプル中から1個を選択し、選択した階調度別サンプルにおけるホワイト画素数比率をその次のステップ910にて変数White%2にセットする。その次のステップ912においては、プログラムに従い、変数White%1の値が変数White%2の値と十分にマッチングしている(近似的に等しいと認め得る)か否かを判別する。十分にマッチングしている場合、プログラムに従いステップ915に進んで補間処理によりベストフィットラインを作成し、その上でステップ918に進む。逆に、十分にマッチングしていない場合は、プログラムに従いステップ914に進んで二組目の階調度別サンプル中の次の階調度別サンプルを選択し、更にステップ916に進んで二組目の階調度別サンプル中の最後の階調度別サンプルを調べ終えたか否かを判別する。最後の階調度別サンプルを調べ終えたのであればプログラムに従いステップ918に進み、そうでなければプログラムに従いステップ910及び912に戻って、二組目の階調度別サンプル中から新たに選択したその階調度別サンプルが一組目の階調度別サンプル中から先に選択してある階調度別サンプルと十分にマッチングするか否かを判別する。
ステップ918においては、プログラムに従い変数White%1及びWhite%2を校正用設定点(xn,yn)として保存する(xn=White%1、yn=White%2)。この校正用設定点保存動作は、ステップ912にてマッチングありと判別された場合か、二組目の階調度別サンプル中の最後の階調度別サンプルを一組目の階調度別サンプル中の所与の階調度別サンプルと比較し終えた場合に、常に実行される。ステップ918における校正用設定点保存の後は、プログラムに従い、一組目の階調度別サンプル中の最後の階調度別サンプルを調べ終えたか否かをステップ920にて判別する。最後の階調度別サンプルを調べ終えたのであればプログラムに従いステップ926に進む。そうでなければプログラムに従いステップ922に進んで一組目の階調度別サンプル中の次の階調度別サンプルを選択し、次いでステップ924にてカウンタ変数nを1インクリメントし、ステップ906に戻ってその新たに選択した階調度別サンプルについての校正用設定点決定プロセスを開始する。全校正用設定点を保存した後実行されるステップ926においては、プログラムに従いまた保存してある校正用設定点に基づき、アンドゥトーン伝達関数を生成する。これによって、上述の手順が完遂される。
本実施形態の基礎をなしているのはRIP37にて使用されるトーン伝達関数の生成であり、トーン伝達関数算出のもとになるのは二種類の入力情報、即ちユーザ設定に基づくポストリッピング処理用アルゴリズムの動作結果と、その印刷ジョブに対して期待される中間調出力とである。
例えば、あるユーザが、自分の印刷ジョブ中のテキスト部分におけるライン幅を変更したいと望んでいるとする。また、その印刷ジョブ中の中間調領域についてはそのユーザが満足するに至っているが、同ジョブ中のテキスト部分についてはライン幅/ドット利得調整が済んでいないとする。そうした場合に、本実施形態では、画像全体に対して大域的に適用されるポストリッピング処理付アルゴリズムの作用のうち中間調領域に対する作用を打ち消すよう、トーン伝達関数を算出する。このトーン伝達関数を各ユーザの印刷設定毎に保存しておけば、ユーザがGUI上の「中間調外観保守」を選択したときにそれを援用することができる。
また例えば、テキスト/ラインアートについては最適な設定だがその設定により得られる中間調領域の印刷結果についてはユーザが満足していない、という状況も生じ得る。その場合、ユーザは、自分が望む中間調画像修正の内容を認識し、その修正を、先に指定してあるテキスト/ラインアート又はベースライン設定との関係で特定、指定すればよい(テキスト/ラインアートについての調整は必要ない)。この修正内容特定・指定に使用できる手法乃至ユーザインタフェースは多々ある。こうして中間調画像に関する所望修正内容を特定、指定するとその内容がトーン伝達関数決定に反映される。決定されたトーン伝達関数は中間調領域に対してだけ適用されるので、中間調領域についての設定とテキスト/ラインアートについての設定は結局互いに独立になる。この種の印刷ジョブについてこれを実現する際に、複雑で偽像が発生しやすい画像セグメント化アルゴリズムは必要ない。