JP2008307303A - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
FSEシーケンスを用いた非対称計測において、実効TEに依らずに、高い空間分解能の画像を取得できるMRI装置を提供する。
【解決手段】
TEと実効TEとが異なるパルスシーケンスを用いて、k空間に配置されるエコー信号群を該k空間上で非対称に計測する計測制御手段と、非対称計測されたk空間上のエコー信号群を用いて、画像を再構成をする信号処理手段と、を有して成り、計測制御手段は、実効TEに対応して、非対称計測されるエコー信号群がk空間上でシフトされるようにパルスシーケンスを設定するMRI装置において、計測制御手段は、シフトしたことにより発生したk空間未計測領域に対応するエコー信号を計測し、信号処理手段は、k空間未計測領域に対応するエコー信号を含んで画像再構成を行う。
【選択図】 図3

Description

本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置に関し、特に高速スピンエコーシーケンスにおける非対称計測に関する。
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号(エコー信号)を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を二次元的に或いは三次元的に画像化する装置である。撮像においては、エコー信号は、所定のパルスシーケンスに基づいて、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたエコー信号は、二次元又は三次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
パルスシーケンスの一つに、高速スピンエコー(以下、FSEと略記する)シーケンスが多用されており、その実効TEは所望の画質を有する画像を得る上で重要な撮像パラメータの1つである。ここで実効TEとは、k空間中心に配置されるエコー信号の取得時間(90°励起されてからエコー信号のピーク位置までの時間)を意味する。
実際に実効TEを実現するためには、エコー信号間の間隔を調整する方法や、k空間に配置するエコー信号の配置位置を変更する方法が用いられる。エコー信号の配置位置の変更に関しては、ETL(Echo Train Length)の数を変更する方法とエコー信号の配置位置をシフトさせる方法がある。
更に、エコー信号の配置位置のシフトに関しては、k空間を位相エンコード方向に関して(つまり、周波数エンコード軸に関して)対称に計測する対称計測方法ではエコー信号全体をk空間内でローテーションさせる方法を、k空間を位相エンコード方向に関して非対称に計測する非対称計測方法ではエコー信号全体をk空間内で位相エンコード方向にシフトさせる方法(特許文献1)をとる。シフト数の上限はETLで制限されるが、エコー信号の配置位置をシフトすることでETLを変更することなく、k空間中心に実効TEに対応するエコー信号を配置することにより、所望の実効TEを実現することが可能となる。
特開平6−209911号公報
しかし、k空間の非対称計測時においては、エコー信号の配置位置を位相エンコード方向にシフトすることで、k空間に未計測領域が発生してしまう。この未計測領域は、一般的にk空間の高周波領域となるので、このような未計測領域を含むk空間データを用いて画像再構成すると、その画像の空間分解能が低下してしまう。また、未計測領域と計測領域との間のエコー信号の段差のために、再構成画像には、リンギング等のアーチファクトが発生してしまう。上記特許文献1には、この未解決の課題に対する解決手段が開示されていない。
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、FSEシーケンスを用いた非対称計測において、実効TEに依らずに、高い空間分解能の画像を取得できるMRI装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成される。即ち、
複数エコー信号の計測においてTEと実効TEとが異なるパルスシーケンスを用いて、k空間に配置されるエコー信号群を該k空間上で非対称に計測する計測制御手段と、前記非対称計測されたk空間上のエコー信号群を用いて、画像を再構成をする信号処理手段と、を有して成り、前記計測制御手段は、前記実効TEに対応して、前記非対称計測されるエコー信号群が前記k空間上でシフトされるように前記パルスシーケンスを設定するMRI装置において、
前記計測制御手段は、前記シフトしたことにより発生したk空間未計測領域に対応するエコー信号を計測し、前記信号処理手段は、前記k空間未計測領域に対応するエコー信号を含んで前記画像再構成を行うことを特徴とする。
本発明のMRI装置によれば、FSEシーケンスを用いた非対称計測において、実効TEの設定・変更に対応して、実現可能な最大のETLを設定することにより、k空間未計測領域に対応するエコー信号をなるべく計測できるようになるので、実効TEに依らずに常に最適な空間分解能を有する画像を取得することができるようになる。
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
最初に、本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、MRI装置は静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えて構成される。
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成る。後述のシ−ケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮影時には、スライス面(撮影断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1にRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル) 14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのデータがCPU8に入力されると、CPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
ディスプレイ20にグラフィカルユーザーインターフェース(以下GUIと称する)を表示し、操作者からの入力を受け付け、操作者が撮像開始または停止の入力をした際には、CPU8が駆動されて撮像のコントロールが行われ、操作者が撮像パラメータの入力をした際には、CPU8が駆動されて撮像パラメータ設定支援部115が駆動される。
撮像パラメータ設定支援部30は、上記の撮像パラメータ設定支援部を実装したものであり、本実施形態においては対話的にポップアップウインドウを表示する形態をとる。
なお、図1において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検体1が挿入される静磁場発生系2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検体1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
次に、本発明に係るFSEシーケンスと、非対称計測について、図2を用いて説明する。図2(a)は、一般的なFSEシーケンスを表すシーケンス図であり、図2(b)は、k空間上で非対称に計測されるエコー信号群がそのk空間に配置される様子を示す。
図2(a)に示すFSEシーケンスは、実効TE=3 × エコータイムTE でETL=6の例を示す。ここでエコータイムTEとは、90°パルスから最初のスピンエコー信号のピーク位置までの時間であり、(90°− 最初の180°パルス)間の2倍の時間となる。実効TEは、90°パルスからk空間のkx軸に配置されるエコー信号のピーク位置まで時間であり、このkx軸に配置されるエコー信号とその近傍のエコー信号とが画像のコントラスト決定する重要なエコー信号となる。
RFパルス201は、最初の励起パルスである90°パルスと、90°パルスからTE / 2のタイミングで印加される最初の再収束パルスである180°パルスと、以降のTE間隔毎に印加される再収束パルスである180°パルスとを有して成る。
スライス傾斜磁場202は、各RFパルスと同じタイミングで印加され、これにより特定のスライス領域が選択励起されることになる。なお、最初のスライス傾斜磁場パルスの後の逆極性のリフェーズ傾斜磁場パルスは、直前のスライス傾斜磁場パルスでディフェーズされた横磁化をリフェーズするためのものである。
位相エンコード傾斜磁場203は、各180°RFパルス間に印加される位相エンコード傾斜磁場パルス(203a - 1, 203b - 1)〜(203a - 6,203b - 6)の組を有してなる。
各組は、180°RFパルス間に印加される位相エンコード傾斜磁場の印加量がゼロになるようの、振幅が同一で逆極性の一対の傾斜磁場パルスを有してなる。即ち、"a"が付された傾斜磁場パルスに対して"b"が付された傾斜磁場パルスは、振幅が同一で極性が逆となっている。
これにより、"a"が付された傾斜磁場パルスによって位相エンコード方向の空間情報が各エコー信号にエンコードされ、そのエコー信号の計測後には、"b"が付された傾斜磁場パルスによって、印加された位相エンコード量がキャンセルされる。これは、FSEシーケンスに必要なCPMG条件に適合するためである。そして、実効TEに対応するタイミングでエコー信号を計測するときには、k空間原点を通るkx軸上にそのエコー信号を配置するために、位相エンコード傾斜磁場パルスをゼロにして、印加する位相エンコード印加量をゼロにする。
周波数エンコード傾斜磁場204は、90°RFパルス−180°RFパルス間で印加されるディフェーズパルス204-0と、各180°RFパルス間で印加される周波数エンコード傾斜磁場204-1〜204-6とからなる。ディフェーズパルス204-0は横磁化をディフェーズするための傾斜磁場パルスであり、各周波数エンコード傾斜磁場204-1〜204-6は、それぞれエコー信号205-1〜205-6を計測する際に印加されて、各エコー信号205-1〜205-6に周波数エンコード方向の位置情報をエンコードする。ディフェーズ傾斜磁場パルス204-0の印加量と各周波数エンコード傾斜磁場の印加量とが等しくなるタイミングで各エコー信号205-1〜205-6がピークとなる。90°RFパルスから最初のエコー信号205-1のピーク位置間の時間、及び、各エコー信号間の時間がエコータイムTEとなる。
以上のRFパルス及び各傾斜磁場パルスが印加されて計測されたエコー信号205-1〜205-6がk空間に配置された様子を図2(b)に示す。図2(b)は、非対称計測を行って取得されたエコー信号のk空間上の配置を示すものであり、非対称計測領域がkx軸を挟んでk空間のky軸方向+側に広くあり、未計測領域がky軸方向−側となっている。
ここで非対称計測とは、計測されてk空間に配置されるエコー信号群が、k空間の原点又は位相エンコード方向に関して非対称となるような計測を意味する。図2(b)では、位相エンコード方向(つまりkx軸)に関して非対称となるように計測される例を示している。前述のエコー信号205-1〜205-6は、非対称計測領域のkx軸近傍のky軸−側から+側に向けて配置され、特に実効TEに相当するエコー信号205-3は、kx軸上に配置される。非対称計測領域の他の領域(ky軸方向+側の高域)は別のショットで計測される。つまり、非対称計測領域のエコー信号群は、1以上のショットにより分割されて計測されることになる。各ショットでは、k空間の計測領域に対応するエコー信号群が計測されるように、位相エンコード傾斜磁場パルスの印加量が制御される。
(第1の実施形態)
次に、本発明のMRI装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態は、FSEシーケンスを用いた非対称計測において、操作者が設定した実効TEに対応して、ETLを制御する。以下、図面に基づいて本実施形態を説明する。
最初に、操作者が設定した実効TEに対応したETLの再計算について説明する。
図3、4は、FSEシーケンスを用いた非対称計測において、実効TEに対応したETLの再計算についての処理全体のフローチャートを示す。また、図5は、非対称計測においてk空間に配置されるエコー信号群の様子を示す。以下、図3,4のフローチャートの各処理ステップを詳細に説明する。この処理フローの各ステップは、プログラムとして予め磁気ディスク18に記憶されており、必要に応じてCPU8に読み出されて、CPU8が実行されることにより実施されるものである。尚、以下の記述において、操作者が設定した撮像パラメータおよび自動設定による撮像パラメータをまとめて「撮像条件」と称する。
ステップ301で、CPU8は、ディスプレイ20上に撮像パラメータ設定GUIを表示させる。操作者は、例えば撮像パラメータ設定GUI上でFSEシーケンスを用いた非対称計測を選択する。即ち、操作者は、設定GUI上でパルスシーケンスとしてFSEシーケンスを選択し、FSEシーケンスの既存のプロトコル、或いは、新規のプロトコルを選択する。その選択に応じて、CPU8は、撮像パラメータ設定用GUIをディスプレイ20上に表示して、操作者の入力設定を受け付ける。撮像パラメータ設定用GUIの詳細については後述する。
ステップ302で、操作者は、撮像パラメータを変更するか否かを判断し、変更する必要があると判断する場合は、撮像パラメータ設定用GUI上で、撮像条件を逐次入力し、希望する撮像条件を設定するまでこれを繰り返す。この際、撮像条件が入力されるたびに、CPU8が以下のステップ303〜ステップ306を行うことによって、k空間内に未計測領域がある場合は所定の各種撮像制限条件に適合する範囲内で最大のETLが再計算され設定される。撮像制限条件の詳細については後述する。
ステップ303で、CPU8は、入力設定された撮像パラメータに応じてパルスシーケンスを計算する。この際、パルスシーケンスのETLは非対称計測で設定されるk空間上の計測領域の少なくとも一部をカバーし、操作者により設定された位相エンコード数及びショット数により以下の式(1)に基づいて計算される。ここでのETLを基準ETLとする。

{式1}
Figure 2008307303
ここで、位相エンコード数をPhase Encode、非対称計測において[(位相エンコード数)/2]に加えて画像再構成に必要な位相エンコード数をHalf Projection、ショット数をShotとする。ETLの値が割り切れない場合は切捨てとする。非対称計測データの再構成は公知のHalf Fourier法を用いて行われる。この基準ETLも各種撮像制限条件に適合する範囲内であるか否かが確認される。以下、上記基準ETLは各種撮像制限条件に適合するものとして説明する。適合しない場合は、基準ETLが各種撮像制限条件に適合するように調整される。図5の501は、非対称計測においてk空間に式(1)で求まる基準ETLを確保した時点のものである。501は実効TEの設定又は変更に伴うエコー信号配置のシフトが無く、k空間未計測領域が発生していない場合を示している。
ステップ304で、CPU8は、k空間に未計測領域があるかどうかを判別する。
ステップ305で、未計測領域がある場合は、CPU8は、各種撮像制限条件に適合する範囲内で実現可能である最大のETLを再計算して再設定する。尚、ETLの再計算処理の詳細については後述する。
ステップ306で、以上の処理により計算されたパルスシーケンスが撮像可能であるか否かの判定を行う。撮像可能である場合は、ステップ302に戻り、操作者の撮像条件設定の入力待ちとなる。撮像不可能である場合は、ステップ307に進む。
ステップ307で、CPU8は、撮像を可能にする撮像パラメータの限界値を計算し、例えばディスプレイ20上にポップアップウインドウを表示して、それら計算された撮像パラメータの限界値を提示する。以下の記述において撮像を可能にする撮像パラメータの限界値をまとめて「サジェスチョン」と称する。
ステップ308で、操作者は、ポップアップウインドウ上に表示されたサジェスチョンの内から所望の値を選択する。これにより、操作者は、撮像条件を常に撮像可能である状態に保ちながら、設定する撮像条件を所望の撮像条件に近づけていくことができる。
以上までが、実効TEに対応したETLの再計算についての処理の概要である。再計算されたETLを有するパルスシーケンスデータがCPU8からシーケンサ4に通知されて、シーケンサ4にて送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6を制御して、再計算されたETLを有するパルスシーケンスが実行される。そして、ETLを増やすことにより計測されることとなったk空間未計測領域に対応するエコー信号を含む計測された全てのエコー信号群を用いて、CPU8は画像を再構成する。
次にETLの再計算処理であるステップ304, 305の詳細について、図4と図5を用いて説明する。
ステップ401で、CPU8は、操作者が設定・変更した実効TEに対応して、非対称計測されるエコー信号全体を、k空間内で位相エンコード方向にシフトさせるシフト数を計算する。即ち、CPU8は、ステップ303で前述の式(1)に基づいて基準ETLを計算した後、操作者が設定・変更した実効TEを実現するために、実効TEに対応するタイミングで計測されるべきエコー信号がk空間の中心に配置されるように、非対称計測されるエコー信号群全体をk空間内で位相エンコード方向にシフトさせるシフト数を求める。非対称計測されるエコー信号群全体をk空間内で位相エンコード方向にシフトさせるためには、パルスシーケンスの位相エンコード傾斜磁場の印加量を調節する。図5の502は、実効TEの値によりk空間ky軸−側へのシフトが発生し、k空間ky軸+側に新たな未計測領域が発生した場合を示す。
ステップ402で、CPU8は、ステップ401におけるシフト数の算出によって、k空間内に新たに未計測領域が発生するかどうかを確認する。
ステップ403で、未計測領域がある場合には、CPU8は、ETLを1つ増加させ、そのETLの増加が所定の各種撮像制限条件を満足することを確認する。各種撮像制限条件を満足すればステップ402に戻って再度未計測領域の有無を確認する。撮像制限条件を満足しなければステップ407に進む。撮像制限条件としては、図4では3つの撮像制限条件を確認しているが、これらに限られるわけではなく、より多くの或いはより少ない撮像制限条件とすることが可能である。以下、図4に示す3つの撮像制限条件の確認について説明する。
ステップ404で、CPU8は、ETLを1つ増加させた結果、パルスシーケンスの実行時間が操作者が設定したTRを超えるか否かを確認する。超えていなければステップ405に進み、超えていればステップ407に進む。
ステップ405で、CPU8は、ETLを1つ増加させた結果、パルスシーケンスの位相エンコード数が操作者が設定した位相エンコード数を超えるか否かを確認する。超えていなければステップ406に進み、超えていればステップ407に進む。
ステップ406で、CPU8は、ETLを1つ増加させた結果、SAR(Specific Absorption Ratio)の値が所定の基準値を超えるか否かを確認する。超えていなければステップ402に進み、超えていればステップ407に進む。
ステップ407で、ETLを1つ増加させたことが、少なくとも1つの撮像制限条件を満足しなくなったので、CPU8は、ETLを1つ減少させてETL設定処理を終了する。
再びステップ402に戻った場合は、CPU8は、k空間内に未計測領域がまだ存在するか否かをチェックする。未計測領域が存在しない場合は、CPU8は、ETL設定処理を終了する。未計測領域がまだ存在する場合は、CPU8は、ステップ403に進んで、未計測領域が存在しなくなるまで同様の処理を繰り返す。
以上の様にして、設定されたTRおよび位相エンコード数の制限を超えないこと、及び、SARが所定の基準値を超えないことをチェックし、全ての撮像制限条件に対して制限範囲内であれば処理402に戻る。ここでどれか1つでも条件を満たさない場合は、ETLを1減らした値を設定する。処理402においてk空間内に新たに生じた未計測領域がない場合にはその時点での再計算されたETLを設定する。
以上のステップ401〜407の処理を行った結果の例を図5に示す。
501は、前述のステップ303において、非対称計測においてk空間に式(1)で求まる基準ETLを確保した時点のものである。また、501は実効TEの設定・変更に伴うエコー信号の配置位置のシフトが無く、k空間未計測領域が発生していない場合も示している。
502は、実効TEの設定・変更によりシフトが発生し、k空間ky軸+側に新たな未計測領域が発生した場合を示している。
503、504、505は、TR、位相エンコード数などの撮像パラメータを変更すること無く、尚且つSARが基準値を超えないという制限において、最大のETLを設定した場合の例である。
503は、502の状態から1つでもETL増やすとTR、位相エンコード数、SARのいずれかの撮像制限条件を超える場合の一例を示す。その結果、503では新たに発生したk空間未計測領域を全く埋めることができておらず、502の状態と変わらない。
504は、新たに発生したk空間未計測領域の全てを埋めることができず、撮像制限条件内で実現可能な最大のETLを設定することでk空間未計測領域を有効活用している場合の一例を示す。その結果、504では新たに生じた3つの未計測領域の内2つを埋めることができたことを示している。
505は、発生したk空間未計測領域について全てを埋めることができた場合を示している。
以上までが、ETLの再計算処理であるステップ304,305の詳細説明である。
次に、FSEシーケンスを用いた非対称計測において、FSEシーケンスにおける実効TEとETLを変更する方法、及び、計測されるエコー信号をk空間上で位相エンコード方向にシフトさせる方法について説明する。
図6(a)は、図2(a)に示すFSEシーケンスにおいて、k空間未計測領域を実現可能な最大ETLにより埋める場合のシーケンス図(1TR分)を示している。尚、位相エンコード傾斜磁場603は、マルチショットの場合を示している。RFパルスと各傾斜磁場パルス及びそれらの符号は図2(a)と同じなので、同一部分については説明を省略する。図6(a)に示すFSEシーケンスにおいては、TRに余裕があり、位相エンコード数とSARの撮像制限条件を満足してETLを3つ増やして、シーケンスの最後に計測することによりk空間未計測領域を計測する場合を示している。なお、シングルショット、マルチショットのどちらの場合でも同様の処理となる。
図6(b)は、図2(b)に示す非対称計測におけるk空間上でのエコー信号配置から、ETL変更に対応して、計測されるエコー信号群をk空間上で位相エンコード方向にシフトさせる具体例を示す。606、607、608は、それぞれk空間上での位相エンコード方向シフトと、そのシフトを実現するための位相エンコードの印加の仕方を表す位相エンコード傾斜磁場のみに関するシーケンス図を示している。なお、このシーケンス図においては、RFパルス及び他の傾斜磁場パルスは変わらないため表示を省略してある。
606は、図2と同様であり、比較のために主要部分を再掲するものであり、基準ETLに対応する位相エンコードの印加を示したシーケンス図である。シーケンス図左のk空間配置図にあるように、3番目のエコー信号がk空間中心に配置されるように該当するエコー信号の計測時の位相エンコードがゼロとされている。即ち、各エコー信号に対する位相エンコードの印加量比は、最初から順に -2, -1, 0, +1, +2, +3, +4, +5とされる。
607は、ETLが変更されることなく、実効TEの設定により第6エコー信号がk空間原点に配置されるように位相エンコードの印加が調節された場合を示す。即ち、606と比較して、位相エンコードの印加量比が最初から順に -5, -4, -3, -2, -1 , 0 , +1, +2とされ、第1エコー信号への印加量が-2から-5に変更される等、の変更が行われている。
608は、k空間未計測領域を全て有効活用できるようにETLを3つ増やした場合を示す。k空間中心に配置されるエコー信号の位置は607と変わらないが、未計測領域となる高周波成分を得るために追加したETLに該当するエコー信号にその未計測領域に対応する位相エンコードが印加されている。即ち、位相エンコードの印加量比が最初から順に -5, -4, -3, -2, -1 , 0 , +1, +2. +3, +4, +5とされ、新たに位相エンコード(+3, +4, +5)が最後に追加された3つのエコー信号に印加されて計測されることなる。
以上までが、FSEシーケンスを用いた非対称計測において、FSEシーケンスにおける実効TEとETLを変更する方法、及び、計測されるエコー信号をk空間上で位相エンコード方向にシフトさせる方法について説明である。
最後に、前述のステップ301における、操作者が撮像パラメータを設定するための撮像パラメータ設定用GUIの一例について、図7に基づいて説明する。
図7にディスプレイ20に表示される撮像パラメータ設定用GUIを示す。GUIは、患者情報表示領域701と、図形操作による撮像パラメータ設定入力領域702と、値の入力による撮像パラメータ設定入力領域703と、撮像コントロール領域704と、を有して構成される。
撮像パラメータ設定入力領域702では、操作者は、画像上に表示された撮像パラメータ入力補助図形705を、マウス23又はキーボード24を介して操作することにより、スライス枚数やスライス断面の位置、角度等の撮像パラメータの設定と変更を行うことができる。
撮像パラメータ設定入力領域703では、操作者は、撮像パラメータを直接数値入力又はメニューから選択することにより、撮像パラメータの設定・変更を行うことができる。FSEシーケンスを用いた非対称計測を起動するためには、操作者は、撮像パラメータ設定入力領域703にて、例えばパルスシーケンスを指定するパラメータ(Sequence)をFSEシーケンスを意味する「FSE」と設定し、k空間充填法を指定するパラメータ(Echo Alloc.)を非対称計測を意味する「ADA」に設定する。また、ショット数が設定可能であり図7に示す例では「9」が設定されている。ETLは自動計算で設定されるために数値入力が不可となる。
以上までが、撮像パラメータ設定用GUIの一例についての説明である。
以上説明したように、本実施形態によれば、FSEシーケンスを用いた非対称計測において、実効TEの設定・変更に対応して、実現可能な最大のETLを設定することにより、k空間未計測領域のデータをなるべく取得するようになるので、実効TEに依らずに常に最適な空間分解能を有する画像を取得することができるようになる。
また、操作者により設定・変更された撮像パラメータを変更すること無く、且つ、各種撮像制限条件に適合する範囲内で、実効TEの設定・変更に対応して実現可能な最大のETLが再計算されて設定されるので、操作者にETLの再設定を意識させることなく撮像条件設定のための負担を低減することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、上記第1の実施形態をマルチスライス撮像に適用するものである。その他については、前述の第1の実施形態と同様なので、同じ点についての説明は省略し、異なる点のみ以下に説明する。
図8は、FSEシーケンスにおけるマルチスライス撮像時のシーケンス図である。801は、3スライスを撮像するマルチスライス撮像の場合の、基準ETLにおける1TR分のシーケンス図を示している。各スライスのFSEシーケンスは図2(a)と同一であるので、説明を省略する。なお、本実施形態は3スライスに限られず、2スライス又は4スライス以上にも適用可能である。
801では、TRに余裕があるため、例えばk空間内に未計測領域があり、位相エンコード数、SAR等の各種撮像制限条件が制限範囲内である場合には、802のように各スライスを撮像するパルスシーケンス毎にETLを増やすことができる。802は2つETLを増やした例を示している。また802は、各スライスのFSEシーケンスに対して同数のETLが追加されるように調節された例を示しているが、本発明はこれに限られるわけではない。例えば、所望の1以上のスライスに対応するパルスシーケンスのみのETLを増加させても良い。
尚、マルチスライス撮像においては、元々TRの内で空いた時間範囲で他のスライスを撮像することから、TRの時間的余裕はシングルスライスの場合よりも少なくなる。また、多くのスライスを同じTRの時間内で密に撮像するために、SARも増大する。そのため、マルチスライス撮像における各種撮像制限条件は、シングルスライス撮像の場合と比較してより厳しくなる。それ以外は、前述の第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
以上説明したように、本実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を、マルチスライス撮像においても実現することが可能になる。
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。
例えば、パルスシーケンスとして、シングルショット/マルチショットEPIを用いる場合にも、本発明を適用することが可能である。要は、複数エコー信号の計測においてTEと実効TEとを異ならせることが可能なパルスシーケンスに対して本発明を適用することが可能である。
また、前述の各実施形態は二次元撮像の場合を説明したが、本発明は三次元撮像の場合のスライスエンコード及び位相エンコードの少なくとも一方に適用可能である。
本発明MRI装置の全体概略構成を示す図。 従来のFSEシーケンスの一例及び非対称計測時のk空間上のエコー信号配置を示す図。 本発明のMRI装置の第1の実施形態において実行される処理の概要を説明するフローチャートを示す図。 本発明MRI装置の第1の実施形態においてにおけるETL最適化の概要を説明するフローチャートを示す図。 本発明MRI装置の第1の実施形態においてにおけるk空間のエコー配置の例を示す図。 本発明MRI装置の第1の実施形態においてにおいて実現されるシーケンスの一例を示す図。 撮像パラメータ設定用GUIの一例を示す図 本発明MRI装置の第2の実施形態においてにおいて実現されるシーケンスの一例を示す図。
符号の説明
1 披検体、2 静磁場発生系、3 傾斜磁場発生系、4 シーケンサ、5 送信系、6 受信系、7 信号処理系、8 中央処理装置(CPU)、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14a 高周波コイル(送信コイル)、14b 高周波コイル(受信コイル)、15 信号増幅器、16 直交位相検波器、17 A/D変換器、18 磁気ディスク、19 光ディスク、20 ディスプレイ、21 ROM、22 RAM、23 トラックボール又はマウス、24 キーボード

Claims (4)

  1. 複数エコー信号の計測においてTEと実効TEとが異なるパルスシーケンスを用いて、k空間に配置されるエコー信号群を該k空間上で非対称に計測する計測制御手段と、
    前記非対称計測されたk空間上のエコー信号群を用いて、画像を再構成をする信号処理手段と、
    を有して成り、
    前記計測制御手段は、前記実効TEに対応して、前記非対称計測されるエコー信号群が前記k空間上でシフトされるように前記パルスシーケンスを設定する磁気共鳴イメージング装置において、
    前記計測制御手段は、前記シフトしたことにより発生したk空間未計測領域に対応するエコー信号を計測し、
    前記信号処理手段は、前記k空間未計測領域に対応するエコー信号を含んで前記画像再構成を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記計測制御手段は、前記パルスシーケンスに、前記k空間未計測領域に対応するエコー信号を計測するためのパルスシーケンスを追加して、該k空間未計測領域に対応するエコー信号を計測することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  3. 請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記計測制御手段は、複数のスライスを撮像するマルチスライス撮像用のパルスシーケンスの内の、少なくとも1つのスライスの撮像に対応するパルスシーケンスに、前記k空間未計測領域に対応するエコー信号を計測するためのパルスシーケンスを追加することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
    前記パルスシーケンスは、高速スピンエコーシーケンスであり、前記シフトが位相エンコード方向に行われることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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