JP2008304433A - 温度管理媒体の起動確認方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度管理媒体が起動しないまま使用されることを防止することができる温度管理媒体の起動確認方法を提供する。
【解決手段】本発明の温度管理媒体の起動確認方法は、常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化液11,21を備え、凝固した乳化液11,21は昇温により融解し、相分離する第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を用いた温度管理媒体の起動確認方法であって、第一温度管理媒体10と第二温度管理媒体20を対象物1の一面1aに並べて配し、対象物1と共に第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を所定温度まで冷却した後、第一温度管理媒体10を加温することにより、第二温度管理媒体20の起動を確認することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の温度管理媒体の起動確認方法は、常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化液11,21を備え、凝固した乳化液11,21は昇温により融解し、相分離する第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を用いた温度管理媒体の起動確認方法であって、第一温度管理媒体10と第二温度管理媒体20を対象物1の一面1aに並べて配し、対象物1と共に第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を所定温度まで冷却した後、第一温度管理媒体10を加温することにより、第二温度管理媒体20の起動を確認することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、物品が一旦、所定の温度域以下の雰囲気中に曝され、その後、これより高い温度の雰囲気中に曝されたか否かという温度履歴を容易に確認することができる温度管理媒体の起動確認方法に関し、さらに詳しくは、この温度管理媒体による温度管理開始時に確実に起動を確認し、未起動のまま使用されることを防止する温度管理媒体の起動確認方法に関する。
近年、冷凍あるいは冷蔵した状態で配送される荷物が一段と増加するに伴って、これらの荷物を配達先まで予め決められた温度に保ちながら運搬する宅配便などの配送手段が普及している。このような配送手段を用いて荷物を配送すると、例えば、集荷元の冷凍・冷蔵施設から配送車へ荷物を積み込む時、配送車間で荷物を積み替える時、配送車から荷物を取り出し配達先へ配達する時などに、本来ならば冷凍・冷蔵状態が保たれなければならない荷物が、直射日光による高温雰囲気や室温雰囲気に曝されることがある。
また、無事に冷凍・冷蔵状態が保たれながら配達先に届けられた後も、荷物の冷凍・冷蔵状態が保たれることが求められる。荷物の中身が食品や医薬品である場合、これらの冷凍・冷蔵状態が保たれないと、これらに変質や雑菌の繁殖などが生じて、その品質が損なわれるおそれがある。極端な場合、食品や医薬品の冷凍・冷蔵状態が保たれないと、食中毒や医療事故などを誘発しかねない。このような厳格な温度管理が求められるものとしては、食品や医薬品の他に、化学分野や写真分野で用いられる各種薬品などが挙げられる。
従来、上述のような温度管理が正常に行われているか否かを簡便に確認する方法として、以下に示す方法が提案されている。
例えば、脂溶性色素を溶解した炭素数7〜15の高級アルコールの1種または2種以上が、非イオン系界面活性剤および水に分散されてなる乳化液(エマルション)を、密封容器に充填してなる保存温度管理用インジケータが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、室温で液状の、保存管理温度を超えると溶融する油性物質を非イオン界面活性剤および水によってエマルション化してなるO/W型エマルション層と、上記油性物質のみを選択的に拡散透過する、油溶性色素をエマルション層と反対面に設けてなる障壁と、油性物質を拡散透過する不透明層とを密封容器に順次設けてなる保存温度管理用インジケータが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
例えば、脂溶性色素を溶解した炭素数7〜15の高級アルコールの1種または2種以上が、非イオン系界面活性剤および水に分散されてなる乳化液(エマルション)を、密封容器に充填してなる保存温度管理用インジケータが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、室温で液状の、保存管理温度を超えると溶融する油性物質を非イオン界面活性剤および水によってエマルション化してなるO/W型エマルション層と、上記油性物質のみを選択的に拡散透過する、油溶性色素をエマルション層と反対面に設けてなる障壁と、油性物質を拡散透過する不透明層とを密封容器に順次設けてなる保存温度管理用インジケータが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
上述した従来の保存温度管理用インジケータには、以下に示すような課題があった。
環境ホルモンであることが知られている非イオン性界面活性剤を使用することから、上記の保存温度管理用インジケータを食品や医療品などに貼付している場合、その安全性を確保することが難しかった。
また、従来の温度管理用インジケータは、室温にて保存可能な期間が数日〜6ヶ月程度と短く、長期に渡って室温にて安定に保存することができないという問題があった。
環境ホルモンであることが知られている非イオン性界面活性剤を使用することから、上記の保存温度管理用インジケータを食品や医療品などに貼付している場合、その安全性を確保することが難しかった。
また、従来の温度管理用インジケータは、室温にて保存可能な期間が数日〜6ヶ月程度と短く、長期に渡って室温にて安定に保存することができないという問題があった。
そこで、本発明者等は、食しても安全、長期に渡って室温にて安定に保存可能、かつ、所定温度で作動する温度管理媒体として、室温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化液を備え、この乳化液は昇温により融解し、相分離する温度管理媒体であって、乳化液は、水、油脂およびリン脂質を含む脂質混合物からなるものを提案している(例えば、特許文献3参照)。
特開昭57−37227号公報
特開平5−149797号公報
特開2006−153701号公報
特許文献3に開示されている温度管理媒体は、温度管理の目的のみで、荷物などの対象物に貼付され、使用されていた。この場合、温度管理媒体は、起動時間(温度管理媒体を任意の温度にて冷却した場合、起動するまでに要する時間)以上に冷却されることにより確実に起動するという仮定に基づいて使用されていた。しかしながら、冷却時の対象物の種類や保管方法(倉庫内の配置など)によっては、温度管理媒体が十分に冷却されないことがあり、温度管理媒体が起動しないまま使用されるおそれがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、温度管理媒体が起動しないまま使用されることを防止することができる温度管理媒体の起動確認方法を提供することを目的とする。
本発明の温度管理媒体の起動確認方法は、常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化液を備え、該凝固した乳化液は昇温により融解し、相分離する温度管理媒体を複数用いた温度管理媒体の起動確認方法であって、前記複数の温度管理媒体を対象物の一面に並べて配し、当該対象物と共に前記温度管理媒体を所定温度まで冷却した後、少なくとも1つの温度管理媒体を加温することにより、前記温度管理媒体の起動を確認することを特徴とする。
本発明の温度管理媒体の起動確認方法は、常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化液を備え、該凝固した乳化液は昇温により融解し、相分離する温度管理媒体を複数用いた温度管理媒体の起動確認方法であって、前記複数の温度管理媒体を対象物の一面に並べて配し、当該対象物と共に前記温度管理媒体を所定温度まで冷却した後、少なくとも1つの温度管理媒体を加温することにより、前記温度管理媒体の起動を確認するので、温度管理媒体が正常に起動しているか否かを確認することができる。したがって、本発明の温度管理媒体の起動確認方法によれば、温度管理媒体が起動しないまま使用されることを防止することができる。また、温度管理媒体が起動しなかった場合、対象物も十分に冷却されていなかったことを推測できる。
本発明の温度管理媒体の起動確認方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1は、本発明に係る温度管理媒体の起動確認方法の一実施形態を示す概略斜視図である。
図1中、符号1は対象物、10は第一温度管理媒体、11は乳化液、12は密閉容器、20は第二温度管理媒体、21は乳化液、22は密閉容器をそれぞれ示している。
この実施形態の温度管理媒体の起動確認方法は、第一温度管理媒体10と第二温度管理媒体20を用い、対象物1の一面1aに、これら第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を並べて配し、対象物1と共に第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を所定温度まで冷却した後、第一温度管理媒体10のみを加温することにより、第二温度管理媒体20の起動を確認する方法である。
また、第一温度管理媒体10と第二温度管理媒体20はそれぞれ、常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化液11,21と、この乳化液11,21を内包する密閉容器12,22とから概略構成されている。なお、乳化液11,21は同一成分からなり、密閉容器12,22は大きさや材質が同一の容器である。
図1中、符号1は対象物、10は第一温度管理媒体、11は乳化液、12は密閉容器、20は第二温度管理媒体、21は乳化液、22は密閉容器をそれぞれ示している。
この実施形態の温度管理媒体の起動確認方法は、第一温度管理媒体10と第二温度管理媒体20を用い、対象物1の一面1aに、これら第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を並べて配し、対象物1と共に第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を所定温度まで冷却した後、第一温度管理媒体10のみを加温することにより、第二温度管理媒体20の起動を確認する方法である。
また、第一温度管理媒体10と第二温度管理媒体20はそれぞれ、常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化液11,21と、この乳化液11,21を内包する密閉容器12,22とから概略構成されている。なお、乳化液11,21は同一成分からなり、密閉容器12,22は大きさや材質が同一の容器である。
すなわち、この実施形態の温度管理媒体の起動確認方法では、まず、冷凍あるいは冷蔵した状態で配送される荷物などの対象物1の一面1aに、粘着剤などを介して、第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を並べて貼付する。
次いで、冷蔵庫や保冷庫内などの冷却装置内に、第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を貼付した対象物1を収容し、この対象物1を所定温度にて、所定時間冷却する。
なお、本発明の温度管理媒体の起動確認方法にて「所定温度」とは、食品や医薬品などの保存温度;−60℃以上、+20℃以下の温度範囲のことである。また、ここで所定温度は、乳化液11,21が均一に凝固する温度(起動温度)以下である必要がある。また、対象物1に貼付した第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を所定温度にて冷却する時間は、乳化液11,21が完全に凝固するまでに要する時間(起動時間)以上とする。第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20の起動時間は、これらを冷却する温度に応じて変化する。
なお、本発明の温度管理媒体の起動確認方法にて「所定温度」とは、食品や医薬品などの保存温度;−60℃以上、+20℃以下の温度範囲のことである。また、ここで所定温度は、乳化液11,21が均一に凝固する温度(起動温度)以下である必要がある。また、対象物1に貼付した第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を所定温度にて冷却する時間は、乳化液11,21が完全に凝固するまでに要する時間(起動時間)以上とする。第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20の起動時間は、これらを冷却する温度に応じて変化する。
次いで、対象物1を冷却装置から取り出し、第一温度管理媒体10に数秒〜数十秒程度指で触れることにより、人間の体温により第一温度管理媒体10のみを加温する。
すると、凝固した乳化液11が昇温して相分離する温度(分離温度)に達する。
乳化液11の温度が分離温度に達し、密閉容器12内に収容された乳化液11が水相と油相に相分離して変色した場合、第二温度管理媒体20が正常に起動していることを確認できる。一方、乳化液11の温度が分離温度に達しても、密閉容器12内に収容された乳化液11が水相と油相に相分離せずに、変色しなかった場合、第二温度管理媒体20が正常に起動しなかったことを確認できる。
すると、凝固した乳化液11が昇温して相分離する温度(分離温度)に達する。
乳化液11の温度が分離温度に達し、密閉容器12内に収容された乳化液11が水相と油相に相分離して変色した場合、第二温度管理媒体20が正常に起動していることを確認できる。一方、乳化液11の温度が分離温度に達しても、密閉容器12内に収容された乳化液11が水相と油相に相分離せずに、変色しなかった場合、第二温度管理媒体20が正常に起動しなかったことを確認できる。
第二温度管理媒体20の正常な起動が確認出来た場合、保冷車に設けられ、−60〜+20℃に保たれた冷蔵装置内に対象物1を収容し、対象物1を配送する。
一方、第二温度管理媒体20の正常な起動が確認出来なかった場合、対象物1から、この第二温度管理媒体20を取り外し、別の2つの温度管理媒体を対象物1の一面1aに貼付し、上述のように起動確認を行い、正常な起動が確認できた後、保冷庫に設けられ、所定温度に保たれた冷蔵装置内に対象物1を収容し、対象物1を配送する。
一方、第二温度管理媒体20の正常な起動が確認出来なかった場合、対象物1から、この第二温度管理媒体20を取り外し、別の2つの温度管理媒体を対象物1の一面1aに貼付し、上述のように起動確認を行い、正常な起動が確認できた後、保冷庫に設けられ、所定温度に保たれた冷蔵装置内に対象物1を収容し、対象物1を配送する。
乳化液11,21は、水、油分およびリン脂質を含む脂質混合物を含有するエマルションであり、常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固するものである。
この乳化液11は、水または油分のいずれか一方が分散媒(連続相)をなし、他方が分散相(不連続相)をなしており、リン脂質を含む脂質混合物が界面活性剤として機能し、水または油分のいずれか一方が他方に微粒子状に分散している。また、乳化液11は、分散媒(連続相)が水で、分散相(不連続相)が油分の場合、水中油滴型(Oil in Water型:O/W型)エマルションをなし、一方、分散媒(連続相)が油分で、分散相(不連続相)が水の場合、油中水滴型(Water in Oil型:W/O型)エマルションをなす。
この乳化液11は、水または油分のいずれか一方が分散媒(連続相)をなし、他方が分散相(不連続相)をなしており、リン脂質を含む脂質混合物が界面活性剤として機能し、水または油分のいずれか一方が他方に微粒子状に分散している。また、乳化液11は、分散媒(連続相)が水で、分散相(不連続相)が油分の場合、水中油滴型(Oil in Water型:O/W型)エマルションをなし、一方、分散媒(連続相)が油分で、分散相(不連続相)が水の場合、油中水滴型(Water in Oil型:W/O型)エマルションをなす。
乳化液11,21において、水と油分の割合(水:油)は、目的とする第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20の起動温度の範囲に応じて適宜調整されるが、5:95(wt:wt)〜95:5(wt:wt)が望ましく、10:90(wt:wt)〜60:40(wt:wt)が好ましく、15:85(wt:wt)〜30:70(wt:wt)が特に好ましい。
また、乳化液11,21の分離温度(乳化液が昇温により相分離する温度)は、2種以上の異なる油分を使用することにより調整される。
乳化液11,21を構成する水としては、特に限定されず、如何なる水でも用いられるが、リン脂質への影響を考慮すると、イオン交換水や蒸留水が好適に用いられる。
油分としては、室温(約23℃)付近にて界面活性剤を用いて水とともに乳化液11,21を構成し、一旦、所定温度以下、例えば、−60℃〜+20℃に曝された後、再び所定温度を超える温度に昇温することにより相分離するものが挙げられる。このような油分としては、例えば、トリアシルグリセロール(トリグリセリド、TAG)および/またはジアシルグリセロール(ジグリセリド、DAG)を主成分とするものが挙げられる。
トリアシルグリセロールは、グリセリンに3個の脂肪酸が結合してなる構造をなす、ナタネ油,ヒマシ油,パーム油、大豆油、魚油などの動植物油であり、脂肪酸残基の炭素数は、乳化液11,21の起動温度と分離温度を考慮して適宜選択することができる。
ジアシルグリセロールは、グリセリンに2個の脂肪酸が結合してなる構造をなす、ナタネ油,ヒマシ油,パーム油、大豆油、魚油などの動植物油であり、脂肪酸残基の炭素数は、乳化液11,21の起動温度と分離温度を考慮して適宜選択することができる。
また、本発明では、モノアシルグリセロール(MAG)などを含有してもよい。
乳化液11,21では、トリアシルグリセロールおよび/またはジアシルグリセロールが、目的とする第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20の起動温度(乳化液11,21が凝固する温度)範囲および分離温度に応じて、適宜の割合で混合して用いられる。
例えば、乳化液11,21に含まれる油分において、トリアシルグリセロールおよび/またはジアシルグリセロールの割合を、1〜99重量%の範囲とすれば、起動温度が−60℃〜+20℃、分離温度が−40℃〜+23℃となる。
例えば、乳化液11,21に含まれる油分において、トリアシルグリセロールおよび/またはジアシルグリセロールの割合を、1〜99重量%の範囲とすれば、起動温度が−60℃〜+20℃、分離温度が−40℃〜+23℃となる。
また、リン脂質としては、レシチンおよびリゾレシチンを主成分とするものが挙げられる。
レシチンは、乳化液11,21において、水または油脂のいずれか一方を他方に微粒子状に分散させるための界面活性剤として機能する。レシチンとしては、下記の一般式(1)で表される大豆レシチン、下記の一般式(5)〜(8)で表される卵黄リン脂質を含む卵黄レシチン、魚介類由来のレシチンなどが挙げられる。
上記の一般式(1)中、R1、R2は飽和および不飽和炭化水素から構成される。また、Aは塩基を表している。
例えば、Aが下記の式(2)で表される塩基である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルコリン、Bが下記の式(3)で表される塩基である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルエタノールアミン、Aが下記の式(4)で表される塩基である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルイノシトール、Aが水素原子である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジン酸である。
例えば、Aが下記の式(2)で表される塩基である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルコリン、Bが下記の式(3)で表される塩基である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルエタノールアミン、Aが下記の式(4)で表される塩基である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジルイノシトール、Aが水素原子である場合、上記の一般式(1)で表される大豆レシチンはホスファチジン酸である。
大豆レシチンは、上記の一般式(1)に示すように、2つの脂肪酸残基と、1つの塩基を有している。大豆レシチンは天然の乳化剤であり、抗酸化作用、離型作用、分散作用、起泡・消泡作用、保水作用、蛋白質・澱粉との結合作用、チョコレートの粘度低下作用など多岐にわたる性質を兼ね備えている。また、大豆レシチンは、大豆を抽出した大豆粗油を濾過後、約2%の温水を加え攪拌し、ガム状となって油層から分離したものを乾燥することにより得られる。さらに、大豆レシチンは、安価で大量供給が可能であり、精製度合いによって様々な状態で得ることができるという特長を備えているので、使用条件によって種類を選択できる。
卵黄レシチンは、鶏卵の卵黄は水分48%、蛋白質16%、脂質33%からなるが、この脂質中に30%含まれる成分がリン脂質である。また、卵黄の脂質は中性脂肪65%、リン脂質30%、コレステロール4%から構成されている。また卵黄リン脂質は、上記の一般式(5)のホスファチジルコリン(Phosphatidylcholine)70〜80%、上記の一般式(6)のホスファチジルエタノールアミン(Phosphatidylethanolamine)10〜15%、上記の一般式(7)のスフィンゴミエリン(Sphingomyelin)1〜3%、上記の一般式(8)のリゾホスファチジルコリン(Lysophosphatidylcholine)1〜2%から構成されている。
リゾレシチンは、上記のようなレシチンと同様に、乳化液11,21において、水または食用油脂のいずれか一方を他方に微粒子状に分散させるための界面活性剤として機能する。リゾレシチンとしては、上記の一般式(1)で表される大豆レシチン、上記の一般式(5)〜(8)で表されるレシチンなどをリゾ化して、レシチンから脂肪酸が1個取れた構造をなすものが挙げられる。ここで、リゾ化とは、酵素であるPhospholipaseA2を用いて、レシチンが持つグリセリン基の第二位の脂肪酸残基を脱離させることをいう。
また、リゾレシチンは、天然の乳化剤であり、抗酸化作用、離型作用、分散作用、起泡・消泡作用、保水作用、蛋白質・澱粉との結合作用、チョコレートの粘度低下作用など多岐にわたる性質を兼ね備えている。
乳化液11,21において、リン脂質を含む脂質混合物の配合量は、油分100質量部に対して、0.1質量部以上、40質量部以下が好ましく、1質量部以上、20質量部以下がより好ましい。
リン脂質を含む脂質混合物の配合量が、油分100質量部に対して、0.1質量部未満では、乳化し難い。一方、リン脂質を含む脂質混合物の配合量が、油分100質量部に対して、40質量部を超えると、水に油分およびリン脂質が分散し難くなり、うまく乳化しない。
リン脂質を含む脂質混合物の配合量が、油分100質量部に対して、0.1質量部未満では、乳化し難い。一方、リン脂質を含む脂質混合物の配合量が、油分100質量部に対して、40質量部を超えると、水に油分およびリン脂質が分散し難くなり、うまく乳化しない。
また、レシチンとリゾレシチンの配合割合は、目的とする第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20の起動温度(乳化液11,21の凝固する温度)範囲に応じて適宜調整されるが、20:80(wt:wt)〜80:20(wt:wt)が好ましく、70:30(wt:wt)〜30:70(wt:wt)がより好ましい。
また、乳化液11,21には、その凝固点を所望の温度範囲に調整するために、糖類や水溶性高分子を配合してもよい。糖類や水溶性高分子の種類、配合量などを変えることにより、乳化液11,21の凝固点を所望の温度範囲に調整することができる。
糖類としては、例えば、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノースなどの単糖類、麦芽糖、ショ糖、ラクトース、セルビオースなどの二糖類、スタキオース、ラフィノースなどのオリゴ糖類、ペクチン、ガラクタン、デンプン、アミロース、プルラン、アラビアガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カルボキシメチルキチンなどの多糖類が挙げられる。これらの中でも、凝固点調整の意味から分子量の分かっている、単糖類や二糖類が望ましい。
水溶性高分子としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ゼラチン、ポリアクリル酸アミド、ポリオキシエチレンオキサイド、ポリオキシプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、イソブテン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルエーテルなどが挙げられる。水溶性高分子は、重合度が大きくなると粘性が高くなり、乳化が困難となる傾向にあることから、重量平均分子量100,000以下のものを使用することが好ましい。
密閉容器12,22としては、乳化液11,21を収容する部分(空間)を有し、乳化液11,21が相分離した様子を光学的に確認できる材質からなるものが好ましく、ガラスやプラスチック、あるいは食して無害な材料が好適に用いられる。食して無害な材料としては、例えば、プルラン、オブラート、ガム、アメなどが挙げられる。その形態としては、例えば管状、板状、フィルム状、球状などが挙げられる。なお、相分離を確認するだけならば、密閉容器12,22を、乳化液11,21が相分離してなる水相と油相の境界付近のみ透明な材質とし、他は不透明な金属などからなる構成としてもよい。
特に、密閉容器12,22として可撓性のフィルム状のものを用いた場合、荷物などの対象物の外形に沿って第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を貼付することができるばかりでなく、第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20に外力が加えられた際に密閉容器12,22自体が柔軟に変形してその影響を回避することができるので望ましい。
また、乳化液11,21の相分離によって、密閉容器12,22内に収容されている液体の体積が変動してもその影響を受けないようにするために、例えば、乳化液11,21とともに空気や不活性ガスなどの気体を密閉容器12,22内に封入しておいてもよい。
次に、この実施形態で用いられる温度管理媒体の製造方法の一例を説明する。
まず、トリアシルグリセロールおよび/またはジアシルグリセロールを主成分とする油分にリン脂質を含む脂質混合物を溶解して、油分の混合液(油分混合液)を調整する。
次いで、攪拌しながら、水に油分混合液を少しずつ加えて、水または油分のいずれか一方を他方に微粒子状に分散させて、乳化液を得る。
次いで、密閉容器内に乳化液を充填して、密閉容器を密閉し、温度管理媒体を得る。なお、この際、密閉容器の乳化液で満たされていない部分に、空気などの気体を封入してもよい。
まず、トリアシルグリセロールおよび/またはジアシルグリセロールを主成分とする油分にリン脂質を含む脂質混合物を溶解して、油分の混合液(油分混合液)を調整する。
次いで、攪拌しながら、水に油分混合液を少しずつ加えて、水または油分のいずれか一方を他方に微粒子状に分散させて、乳化液を得る。
次いで、密閉容器内に乳化液を充填して、密閉容器を密閉し、温度管理媒体を得る。なお、この際、密閉容器の乳化液で満たされていない部分に、空気などの気体を封入してもよい。
この実施形態の温度管理媒体の起動確認方法によれば、第一温度管理媒体10と第二温度管理媒体20を用い、対象物1の一面1aに、これら第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を並べて配し、対象物1と共に第一温度管理媒体10および第二温度管理媒体20を所定温度まで冷却した後、第一温度管理媒体10のみを加温することにより、第二温度管理媒体20の起動を確認するので、第二温度管理媒体20が正常に起動しているか否かを確認することができる。したがって、この実施形態の温度管理媒体の起動確認方法によれば、第二温度管理媒体20が起動しないまま使用されることを防止することができる。また、第二温度管理媒体20が起動しなかった場合、対象物1も十分に冷却されていなかったことを推測できる。
なお、この実施形態では、対象物1に2つの温度管理媒体を貼付し、第一温度管理媒体10を起動確認に用いた場合を例示したが、本発明の温度管理媒体の起動確認方法はこれに限定されない。本発明の温度管理媒体の起動確認方法にあっては、3つ以上の温度管理媒体を対象物の一面に並べて配し、少なくとも1つの温度管理媒体を加温することにより、その他の温度管理媒体の起動を確認してもよい。
また、この実施形態では、起動確認用の第一温度管理媒体10指で触れることにより、第一温度管理媒体10を加温した場合を例示したが、本発明の温度管理媒体の起動確認方法はこれに限定されない。本発明の温度管理媒体の起動確認方法にあっては、対象物や起動確認用の温度管理媒体以外の温度管理媒体が加温されない手段であれば、いかなる手段を用いて起動確認用の温度管理媒体を加温してもよい。
また、この実施形態では、起動確認用の第一温度管理媒体10指で触れることにより、第一温度管理媒体10を加温した場合を例示したが、本発明の温度管理媒体の起動確認方法はこれに限定されない。本発明の温度管理媒体の起動確認方法にあっては、対象物や起動確認用の温度管理媒体以外の温度管理媒体が加温されない手段であれば、いかなる手段を用いて起動確認用の温度管理媒体を加温してもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
3℃にて10時間で起動し、10℃にて変色する温度管理媒体を2つ用意した。
次いで、これらの温度管理媒体を、対象物の一面に並べて貼付した後、この対象物を3℃の冷蔵庫内に12時間保管した。冷蔵庫内にて、対象物の芯温および表面温度は1〜3℃の範囲内であった。
次いで、冷蔵庫から対象物を取り出し、一方の温度管理媒体に10秒程度、指で触れることにより加温したところ、変色した。これにより、温度管理媒体が起動していることを確認できた。この時、他方の温度管理媒体は変色していなかった。
次いで、保冷車に設けられ、0〜10℃に保たれた保冷庫内に対象物を収容し、この保冷車により対象物を配送した。
納品先にて対象物を保冷車から取り出し、故意に加温しなかった温度管理媒体を観察したところ変色しておらず、適切な温度管理の下、配送されたことを確認することができた。
3℃にて10時間で起動し、10℃にて変色する温度管理媒体を2つ用意した。
次いで、これらの温度管理媒体を、対象物の一面に並べて貼付した後、この対象物を3℃の冷蔵庫内に12時間保管した。冷蔵庫内にて、対象物の芯温および表面温度は1〜3℃の範囲内であった。
次いで、冷蔵庫から対象物を取り出し、一方の温度管理媒体に10秒程度、指で触れることにより加温したところ、変色した。これにより、温度管理媒体が起動していることを確認できた。この時、他方の温度管理媒体は変色していなかった。
次いで、保冷車に設けられ、0〜10℃に保たれた保冷庫内に対象物を収容し、この保冷車により対象物を配送した。
納品先にて対象物を保冷車から取り出し、故意に加温しなかった温度管理媒体を観察したところ変色しておらず、適切な温度管理の下、配送されたことを確認することができた。
「実施例2」
3℃にて10時間で起動し、10℃にて変色する温度管理媒体を2つ用意した。
次いで、これらの温度管理媒体を、対象物の一面に並べて貼付した後、この対象物を3℃の冷蔵庫内に12時間保管した。冷蔵庫内にて、対象物の芯温および表面温度は1〜3℃の範囲内であった。
次いで、冷蔵庫から対象物を取り出し、一方の温度管理媒体に10秒程度、指で触れることにより加温したところ、変色しなかった。これにより、温度管理媒体が起動していないことが判明した。対象物は、冷蔵庫内にて、温度管理媒体が貼付される前から十分に冷却されていたので、対象物が冷蔵庫内において冷却され難い場所に保管されていたことを推測できた。
また、温度記録計を用いて、冷蔵庫内の温度について詳細な調査を行ったところ、冷蔵庫内には、冷風が届かずに比較的温度が高い場所や、他の荷物に囲まれて冷却され難い場所があることが分かった。
この結果に基づいて、冷蔵庫内の保管方法を見直す必要があることが分かった。
3℃にて10時間で起動し、10℃にて変色する温度管理媒体を2つ用意した。
次いで、これらの温度管理媒体を、対象物の一面に並べて貼付した後、この対象物を3℃の冷蔵庫内に12時間保管した。冷蔵庫内にて、対象物の芯温および表面温度は1〜3℃の範囲内であった。
次いで、冷蔵庫から対象物を取り出し、一方の温度管理媒体に10秒程度、指で触れることにより加温したところ、変色しなかった。これにより、温度管理媒体が起動していないことが判明した。対象物は、冷蔵庫内にて、温度管理媒体が貼付される前から十分に冷却されていたので、対象物が冷蔵庫内において冷却され難い場所に保管されていたことを推測できた。
また、温度記録計を用いて、冷蔵庫内の温度について詳細な調査を行ったところ、冷蔵庫内には、冷風が届かずに比較的温度が高い場所や、他の荷物に囲まれて冷却され難い場所があることが分かった。
この結果に基づいて、冷蔵庫内の保管方法を見直す必要があることが分かった。
「比較例」
3℃にて10時間で起動し、10℃にて変色する温度管理媒体を1つ用意した。
次いで、この温度管理媒体を、対象物の一面に貼付した後、この対象物を3℃の冷蔵庫内に12時間保管した。
次いで、冷蔵庫から対象物を取り出したところ、温度管理媒体は変色していなかった。
次いで、保冷車に設けられ、0〜10℃に保たれた保冷庫内に対象物を収容し、この保冷車により対象物を配送した。
納品先にて対象物を保冷車から取り出し、温度管理媒体を観察したところ変色していなかった。そこで、対象物からこの温度管理媒体を剥離して、室温に曝したところ変色しなかった。
これにより、この温度管理は、起動していなかったことが判明した。そのため、この温度管理媒体は、配送中の温度管理を監視できていないばかりでなく、この温度管理媒体が起動しなかった原因を特定することもできなかった。
3℃にて10時間で起動し、10℃にて変色する温度管理媒体を1つ用意した。
次いで、この温度管理媒体を、対象物の一面に貼付した後、この対象物を3℃の冷蔵庫内に12時間保管した。
次いで、冷蔵庫から対象物を取り出したところ、温度管理媒体は変色していなかった。
次いで、保冷車に設けられ、0〜10℃に保たれた保冷庫内に対象物を収容し、この保冷車により対象物を配送した。
納品先にて対象物を保冷車から取り出し、温度管理媒体を観察したところ変色していなかった。そこで、対象物からこの温度管理媒体を剥離して、室温に曝したところ変色しなかった。
これにより、この温度管理は、起動していなかったことが判明した。そのため、この温度管理媒体は、配送中の温度管理を監視できていないばかりでなく、この温度管理媒体が起動しなかった原因を特定することもできなかった。
本発明の温度管理媒体の起動確認方法は、温度管理媒体を荷物の表面に貼付する従来の利用形態の他に、食品や薬品と同梱して用いる新たな形態にも利用できることから、食品や薬品の温度管理の状況を把握することにも利用できる。
1・・・対象物、10・・・第一温度管理媒体、11,21・・・乳化液、12,22・・・密閉容器、20・・・第二温度管理媒体。
Claims (1)
- 常温にて液状で、かつ、所定温度まで冷却すると凝固する乳化液を備え、該凝固した乳化液は昇温により融解し、相分離する温度管理媒体を複数用いた温度管理媒体の起動確認方法であって、
前記複数の温度管理媒体を対象物の一面に並べて配し、当該対象物と共に前記温度管理媒体を所定温度まで冷却した後、少なくとも1つの温度管理媒体を加温することにより、前記温度管理媒体の起動を確認することを特徴とする温度管理媒体の起動確認方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2007154285A JP2008304433A (ja) | 2007-06-11 | 2007-06-11 | 温度管理媒体の起動確認方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007154285A JP2008304433A (ja) | 2007-06-11 | 2007-06-11 | 温度管理媒体の起動確認方法 |
Publications (1)
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ID=40233274
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2007154285A Withdrawn JP2008304433A (ja) | 2007-06-11 | 2007-06-11 | 温度管理媒体の起動確認方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2008304433A (ja) |
-
2007
- 2007-06-11 JP JP2007154285A patent/JP2008304433A/ja not_active Withdrawn
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