JP2008299278A - 光走査装置・画像形成装置・光走査方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レーザ光源1から出射された光ビームは光路切り換え手段4で上段光路又は下段光路に切り換えられる。上段光路を通る光ビームは2段構成のポリゴンミラー7の上段のポリゴンミラー7aで偏向されて被走査面を走査され、下段光路を通る光ビームは下段のポリゴンミラー7bで偏向されて異なる被走査面を走査される。光ビームは分割されることなく異なるタイミング(時間分割)で用いられるため、ビームパワーのロスはない。
【選択図】図1
Description
カラーの電子写真画像形成装置としては、感光体を1つのみ有し、色の数だけ感光体を回転するという方式もあるが、4色、1ドラムの場合、ドラムが4回転する必要が有り、生産性に劣る。
一方、タンデム方式の場合、どうしても、光源数が増えてしまい、それに伴い、部品点数の増加、複数光源間の波長差に起因する色ずれ、コストアップが生じてしまう。また、書込ユニット(光走査装置)の故障の原因として半導体レーザの劣化が挙げられている。
光源数が多くなると、故障の確率が増え、リサイクル性が劣化する。特に、光源として面発光レーザやLDアレイを用いる場合、上記の不具合は顕著である。
この方式は、共通の光源からの光ビーム(以下、単に「ビーム」ともいう)を分割し、副走査方向に異なる段の反射鏡に各分割ビームを同時に入射させ、それぞれの分割ビームで異なる被走査面を走査するものである。
レーザ光源の劣化は書き込み性能の低下(信頼性の低下)、ひいては画質の低下を来たすこととなる。
請求項3記載の発明では、請求項2記載の光走査装置において、前記第2の回折領域が、作用力印加で屈折率が変化する構造を有していることを特徴とする。
請求項4記載の発明では、請求項3記載の光走査装置において、前記第1の回折領域と前記第2の回折領域とが同一の回折構造を有していることを特徴とする。
請求項6記載の発明では、請求項2〜4のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記第1の回折領域と前記第2の回折領域のうち、少なくとも一方の回折領域は、主にポリマーから成る領域と主に非重合性液晶から成る領域との周期的な相分離構造を形成したポリマー分散型液晶ホログラム素子であることを特徴とする。
請求項8記載の発明では、請求項7記載の光走査装置において、前記第2の回折光学素子が、作用力印加で屈折率が変化する構造を有していることを特徴とする。
請求項9記載の発明では、請求項7記載の光走査装置において、前記第1の回折光学素子と前記第2の回折光学素子とが同一の回折構造を有していることを特徴とする。
請求項11記載の発明では、請求項7〜9のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記第1の回折光学素子と前記第2の回折光学素子のうち、少なくとも一方の回折光学素子は、主にポリマーから成る領域と主に非重合性液晶から成る領域との周期的な相分離構造を形成したポリマー分散型液晶ホログラム素子であることを特徴とする。
請求項13記載の発明では、請求項12記載の光走査装置において、前記偏光分離手段は、偏光ビームスプリッタプリズムであることを特徴とする。
請求項14記載の発明では、請求項12記載の光走査装置において、前記偏光分離手段は、少なくとも第1の回折領域と第2の回折領域とを有し、前記各回折領域は、光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域からなる周期的な構造を有し、透過及び回折により、互いに直交する偏光成分を分離することを特徴とする。
請求項16記載の発明では、請求項12〜15のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏光切り換え手段は、一対の透明基板と、前記基板の内面側に設けられた配向膜と、前記配向膜によりホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層と、前記透明基板面に対して略垂直方向に作用力を印加する作用力印加手段とからなり、作用力強度に応じて特定の偏光方向を略90°回転することを特徴とする。
請求項18記載の発明では、請求項17記載の光走査装置において、前記液晶層は略同じ厚さで、略同じコーン角を有することを特徴とする。
請求項19記載の発明では、請求項18記載の光走査装置において、前記コーン角が略45°であることを特徴とする。
請求項20記載の発明では、請求項18記載の光走査装置において、前記コーン角が略22.5°であることを特徴とする。
請求項22記載の発明では、請求項1〜21のうちのいずれか1つに記載の光走査装置において、前記偏向手段が、共通の回転軸を有し且つ副走査方向に複数段の構成を有する多面反射鏡であることを特徴とする。
請求項23記載の発明では、請求項1〜22のうちのいずれか1つに記載の光走査装置において、装置筐体内の温度を一定の範囲に保つ温度調整手段を有していることを特徴とする。
請求項24記載の発明では、請求項23記載の光走査装置において、前記光路切り換え手段、前記偏光切り換え手段又は前記偏光分離手段の温度を直接的に検知する温度検知手段を有し、該温度検知手段からの検知信号に基づいて温度調整を行うことを特徴とする。
請求項26記載の発明では、請求項25記載の画像形成装置において、前記偏向手段の走査記録に対応して、前記光源からの光路を切り換えるように、前記光走査装置を駆動制御することで、複数の異なる被走査面を順次走査記録することを特徴とする。
請求項27記載の発明では、請求項26記載の画像形成装置において、前記光路の切り換え信号は、各被走査面の走査同期信号を基準として設定されていることを特徴とする。
非重合性液晶から成る領域と等方性媒質から成る領域の周期的な構造からなる回折光学素子を用いることで、電界制御により周期構造の屈折率差の有無が容易に実現でき、かつ、周期構造の屈折率差が大きくとれる。
干渉露光により作製する液晶ホログラム素子は原版複製が可能であるため、低コスト化が実現できるとともに、電界駆動に対して応答性に優れている。
偏光分離手段として、回折光学素子を用いた構成とすることで、従来のミラー分割によるミラー面精度ばらつきの影響及び配置誤差の影響によるビームスポット径劣化の不具合がなく、高価なハーフミラープリズムに比べて低コスト化が実現できる。
偏光切り換え手段として、キラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶素子と電界印加手段を用いているため、光源の波長および偏光方向に対応して、液晶層の膜厚および配向方向を設定することで、偏光方向の切り換えが電界制御により容易に実現できる。また、強誘電性液晶は応答性に優れている。
偏光切り換え手段として、同じセルギャップ、同じコーン角を有する強誘電性液晶素子を光軸方向に複数個配列した構成とすることで、複数の強誘電性液晶素子は同プロセスで作製でき、また、電界制御が並列化できることから、比較的簡易構成にて実現できる。
偏光切り換え手段として、同じセルギャップ、同じコーン角を有する強誘電性液晶素子を光軸方向に複数個配列した構成とし、液晶層のコーン角が略45°とすることで、90°偏光回転機能を達成する場合、強誘電性液晶素子の1個構成と比較して2個配列した各素子のセルギャップは半分となり、低電圧化が図れる。また、入射偏光方向ズレの許容値が広くなる。
偏光切り換え手段として、同じセルギャップ、同じコーン角を有する強誘電性液晶素子を光軸方向に複数個配列した構成とし、液晶層のコーン角が略22.5°とすることで、90°偏光回転機能を達成する場合、強誘電性液晶素子の1個構成と比較して、セルギャップは同じであるが、液晶のコーン角が小さいことから同じ電圧で高速化が図れる。
温度調整手段を具備しているため、光路切り換えおよび偏光切り換えの応答性が安定した光走査装置が提供できる。
まず、本発明の光走査装置の比較構成として、従来の光走査装置について、図31〜34を用いて説明する。
図31は光走査装置の一部を示している。この光走査装置は、レーザ光源1、コリメートレンズ3、光束分割手段40、共通の回転軸を有し2段からなる多面反射鏡(ポリゴンミラー)7等を有している。実際には光源1とポリゴンミラー7間には副走査方向にパワーを有するシリンドリカルレンズが配備されるが、ここでは省略している。また、ポリゴンミラー7からの走査光が被走査面に結像する結像光学系も省略している。
共通の光源1からビームを分割する光束分割手段40としては、ハーフミラープリズムや、回折光学素子を組み合わせた構成が挙げられるが、詳細な説明は省略する。
このような構成において、図32に示すように、上段のビームLB1が感光体面(被走査面)を走査しているときは下段のビームLB2は被走査面上にビームが到達しないようにし、望ましくは遮光部材13により遮光するようにする。また、下段のビームLB2が上段とは異なる感光体面(被走査面)を走査しているときは上段のビームLB1は被走査面に到達しないようにする。
さらに、光源1の変調駆動も上段と下段でタイミングをずらし、上段に対応する感光体を走査するときは、上段に対応する色(例えばブラック)の画像情報に基づき、光源1の変調駆動を行い、下段に対応する感光体を走査するときは下段に対応する色(例えばマゼンダ)の画像情報に基づき、光源1の変調駆動を行う。
図33ではブラックとマゼンダの領域での光量を同じに設定しているが、実際には光学素子の透過率、反射率は相対的に違うため、光源1の光量を同じにしてしまうと、感光体に到達するビームの光量が異なってしまう。そこで、図34に示すように、異なる感光体面を走査するときに互いの設定光量を異ならせることにより、異なる感光体面上に到達するビーム光量を等しくできる。
光源パワーの増大は、光源1の劣化(短命化)の原因となるとともに、消費エネルギーの増加を来たすことになる。
特に図29のような高密度化に有効な面発光レーザ(VCSEL)を光源として用いる場合、前記不具合(劣化)は顕著である。
すなわち、VCSELアレイでは微小なVCSELを多数配置して高精細化を実現しているが、1つ1つのVCSELは耐熱性が低く、配列ピッチも小さいため、パワーを増大させると互いに熱の影響を受けて劣化し易い。
図1は本実施形態に係る光走査装置の一部を示している。この光走査装置20(図28、30参照)は、レーザ光源1、光路切り換え手段4、共通の回転軸を有し複数の段からなる多面反射鏡7等を有している。図1では比較構成と同様にシリンドリカルレンズ、被走査面への結像光学系を省略している。
詳細は後述するが、光路切り換え手段4としては、図2に示すように、
作用力印加としての電界印加により屈折率が変化する第1の回折光学素子21と、第1の回折光学素子21に電界を印加する作用力印加手段で且つ液晶駆動源としての電界印加手段22と、第2の回折光学素子23とで構成されており、光ビームは電界印加ON時と電界印加OFF時では異なる光路を通る。
ここでは、電界印加制御において、電界印加ON時に上段光路、電界印加OFF時に下段光路を通過するようにしているが、電界印加ON時に下段光路、電界印加OFF時に上段光路を通過するような構成としてもよい。上下段のポリゴンミラー7a、7bは、比較構成と同様にして、45°位相をずらした4面のポリゴンミラーを用いた構成としている。
また、図3(b)に示すように、下段ポリゴンミラー7bからのビームが感光体面(被走査面)を走査しているときは、ビームは略下段光路のみを通過し、上段光路はほとんど通過しない動作が実現できる。
すなわち、光源1から出射した光ビームを分割することなく、光路を切り換えながら時間的なタイミングをずらして交互にそのまま使用するため、ビーム光量のロスはなく、光源パワーを効率的に利用できる。
そのため、光源1の長寿命化や劣化確率の低減に繋がる。特に高密度化に有効な面発光レーザを光源として用いる場合、効果が大きくなる。
また、戻り光が光源1に入って悪影響が出ること等を防止するために、従来の方式では遮光部材13やλ/4板による光アイソレータ(図示していない)等が必要であるが、本実施形態では光ビームの走査中に他の光ビームが反射するということがないので、遮光部材13や光アイソレータは必要ではなく、且つ、戻り光の問題も生じない。
一対の基板24a、24b間に非重合性液晶からなる領域と等方性媒質からなる領域の周期的な構造が形成されている。符号25は支持部材を示している。ここで、周期的構造の形成は、フォトリソグラフィとエッチングまたは切削加工や成形技術等により格子形状を形成し、格子間に非重合性の液晶材料を充填することにより実現できる。
回折光学素子の構成に関して、非重合性液晶としてはネマチック、コレステリック、スメクチックなど一般的な液晶タイプを使用することができ、等方性媒質としては、フォトポリマー等の透明樹脂や石英、青板、白板、BK7等の光学硝材が使用できるが、複屈折性を有さなければこれに限るものではない。
また、図示しないが、作製時には液晶の配向方向を規制する電界が印加可能な電極を設け、液晶の複屈折性を効率よく利用するために配向膜、ラビング、光配向等の配向処理をすることが好ましい。
図5は基板面に対して略垂直配向となるように配向処理がされており、s偏光(紙面垂直方向)の光が入射する構成としている。図5(a)に示すように、電界印加OFF時において、液晶の常光成分屈折率noと等方性媒質の屈折率nが一致している場合、光は格子の影響を受けずに直進する。
図5(b)に示すように、電界印加ON時において、液晶の異常光成分屈折率neと等方性媒質の屈折率nが一致しない場合、光は格子の影響を受けて回折する。
図6は配向方向を変えた例を示している。ここでは基板面に対して略水平配向(格子の稜線方向)となるように配向処理がされており、s偏光(紙面垂直方向)の光が入射する構成としている。
図6(a)に示すように、電界印加OFF時において、液晶の異常光成分屈折率neと等方性媒質の屈折率nが一致していない場合、光は格子の影響を受けて回折する。
図6(b)に示すように、電界印加ON時において、液晶の常光成分屈折率noと等方性媒質の屈折率nが一致している場合、光は格子の影響を受けずに直進する。
ここで、第2の回折光学素子23は、第1の回折光学素子21からの回折光を入射光と略平行となるように再回折するため、第1の回折光学素子21と同様の格子形状を有することが生産性、ひいては製造コストの低減の観点から好ましい。
図8に示すような構成にて、第2の回折光学素子23へ電界を印加しない場合は、第1の回折光学素子21からの回折光は再回折されずに透過するため、下段ポリゴンミラー7bに入射されなくなる。
図5、6、7、8においては入射偏光をs偏光としているが、液晶の配向方向を、図9(a)に示すように、基板面に対して略水平配向で格子の稜線方向とは略垂直な方向とすることで、p偏光に対しても同様の動作が実現できる。
回折機能に関して詳細な説明は省略するが、−1次光または+1次光の回折効率は略100%得られることが好ましく、回折光学素子としては格子ピッチに対して格子高さが厚い体積位相型回折格子が好ましい。
また、片側次数の回折光の効率を高くするには、ブラッグ回折条件を満たすように格子を傾けることが好ましい。格子の傾き調整は、図9(b)に示すように格子形状を傾斜させてもよく、図7、図8に示すように、素子自体を傾斜させてもよい。
厚さ約0.5mmのBK7基板にSiONを成膜し、フォトリソグラフィとエッチングにより、ピッチ約1μm、高さ約2.5μmの格子形状を形成し、図4に示すように格子形成基板24bと平面基板24a間にネマチック液晶(メルク製ZLI−2248)を保持した。
このとき平面基板24aのみに配向膜をスピンコートで成膜した。基板間隔は一対のアルミ電極スペーサ(支持部材25)で約6μmに設定し、アルミ電極は格子稜線方向に電界が印加可能なように配置した。この回折光学素子に電界強度4.5V/μm(100Hz)の電圧を印加し、青色LDの光を入射したところ、素子(格子)を12°傾斜させた配置において、+1次光にて70%の高い回折効率が得られた。この状態で電界印加をOFFしたところ、0次光にて、70%の透過率が得られた。
このとき偏光方向は格子稜線方向(s偏光)に設定しており、図5に示す動作が確認できた。
非重合性液晶分子と重合性モノマーあるいはプレポリマーと図示しない光重合開始剤とを均一に混合した組成物を透明電極(図示しない)が成膜された二枚の透明基板30間に挟む。組成物の厚みは基板間隔を制御する図示しないスペーサ部材によって制御できる。
この組成物は感光性を有するため、素子作製工程において感度を有する波長域の光を遮断した環境下で取り扱う。
液晶ホログラム素子の構成に関して、スペーサ部材としては、液晶表示装置に用いられるような球形スペーサ、ファイバースペーサ、PETフィルム、マイラーフィルムなどを用いることができる。また、フォトリソグラフィとエッチングあるいは成型技術などによって基板表面に突起形状(凹凸形状も含む)を加工しても良い。
スペーサ部材はホログラム領域内に存在してもよいが、光散乱等の影響を考えるとホログラムの有効領域外に形成することがよい。スペーサ部材の高さは数μmから数十μmの範囲にて使用でき、回折光の波長とポリマー部と液晶部の屈折率差に応じて所望のホログラム層厚みとなるように適宜設定する。
組成物に関して、非重合性液晶としては屈折率異方性を有する液晶ならば一般的なものを使用できる。液晶材料を選択する時は、あるオーダーパラメータの配向状態において、重合性モノマーあるいはプレポリマーの硬化層の屈折率とほぼ等しい屈折率となる液晶材料を選択してもよく、また、液晶材料を選択してから、その液晶のあるオーダーパラメータの配向状態での屈折率とほぼ等しい屈折率になるように重合性モノマーあるいはプレポリマーを選択してもよい。
重合性モノマーまたはプレポリマーとしては、重合による硬化収縮が大きいものを用いることが好ましい。また、上記の他に熱重合禁止剤、可塑剤等が添加されても良い。
光重合開始剤の添加量に関しての詳細な説明は省略するが、添加量が少なすぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が起こり難くなり、必要な露光時間が長くなってしまう。逆に、光重合開始剤が多すぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が不十分な状態で硬化してしまうため、ポリマー中に多くの液晶分子が取り込まれ、偏光選択性が悪くなるという問題がある。
同様にして、非重合性液晶材料と重合性モノマーあるいはプレポリマーの混合比率も相分離に大きく影響し、非重合液晶の混合比率が少なすぎる場合には、十分な複屈折(屈折率変調量)が得られず、多すぎる場合には、ポリマー中に多くの液晶分子が取り込まれ、偏光選択性が悪くなる。
また、ポリマー中の液晶分子はドロップレット化し、散乱成分の原因となるため全体の透過率は低下する。混合比率としては、重合性モノマーあるいはプレポリマーの合計量100重量%に対して、非重合性液晶材料は10重量%〜30重量%の割合がよく、さらには20重量%〜25重量%の割合が最良である。この割合においては得られる複屈折と液晶による散乱成分とのバランスが良く、高透過率となる。
この時、硬化収縮が起こって密度差が生じ、隣接する重合性モノマーあるいはプレポリマーが明部に移動し更に重合が進行する。それと同時に明部に存在していた非重合性液晶が暗部に向かって追い出されることで相分離が起こる(図11(b))。この時、液晶分子が移動して行く際にモノマーやポリマー鎖との相互作用で液晶分子長軸を移動方向に配向させようとする力が働くと考えられる。
すなわち、相分離過程において干渉縞の間隔方向に液晶分子を配向させようとする力が働くと考えられる。最終的には図11(c)に示すように、干渉縞の明暗のピッチに対応してポリマー層と非重合性液晶層の周期構造が形成され、液晶層部の配向ベクトルが干渉縞の間隔方向を向いた状態が得られると考えられる。
相分離によるポリマー層と非重合性液晶層の周期構造では、厳密にはポリマーと非重合性液晶が周期的に完全に分離することは困難であり、ここで言うポリマー層とはポリマー成分が多い領域であり液晶分子を含んでいても良い。また、非重合性液晶層とは非重合性液晶成分が多い領域でありポリマー成分を含んでいても良い。実際にはポリマー層と液晶層の界面は理想的な平面では無く凹凸状であると推測されるため、図11に示したように、界面での液晶分子長軸方向のバラツキは大きく、液晶層のオーダーパラメータは若干小さい状態となっている。
作製する周期構造のピッチは所望の回折角や波長によって異なるが、概ね0.2μmから10μmの範囲である。例えば、650nmの入射光に対して40°の回折角を得るためには、1.0μm程度のピッチ、780nmの入射光に対しては1.2μm程度のピッチが必要となる。
このような干渉露光により作製する液晶ホログラム素子は原版複製が可能であるため、低コスト化が実現できる。また、ポリマーによる配向規制の関係から、格子形状に液晶を充填した回折光学素子と比較して、電界駆動に対して応答性に優れている。
厚み0.7mmのガラス基板の片面に青色光および赤色光に対する反射防止膜を形成し、反射防止膜とは反対の面にはITO電極を成膜した。およそ8μm径のビーズスペーサをそれぞれ混入したそれぞれの接着剤により前記のガラス基板を電極面が対向するように貼り合わせた。
接着剤の塗布は反射防止膜形成面とは反対の面で、基板の縁2箇所に塗布した。
次に以下の(1)〜(5)の材料の混合物からなる組成物を約65℃に加熱しながら毛管法によりセル中に注入し、厚み約8μmの組成物層を形成した。なお、この組成物は緑色より短波長の光に反応性を示すため赤色光を用いた暗室下で取り扱った。
(1)ネマチック液晶(メルク製 TL216、Δε>0) 25重量部
(2)フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製AH600) 75重量部
(3)ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学製DCP−A) 10重量部
(4)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学製HO) 5重量部
(5)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア819) 1重量部
セル中に注入後、この組成物は室温下において等方性を示した。
セル基板を加熱装置に取り付け、約65℃に加熱した状態で、約1分間の二光束干渉露光を行い、液晶ホログラム素子を作製した。この時、基板面の垂直方向に対して+7度と+35度の方向から二光束が入射するように設定した。
液晶ホログラム素子の特性評価としては、作製した素子に波長633nmの直線偏光のレーザ光を照射して、入射光強度に対する0次光と+1次回折光強度を測定した。入射光強度は5mW程度になるようにNDフィルタを用いて調整し、入射光路中に直線偏光板と半波長板を配置し、半波長板の光軸を45度回転させることで、素子に入射する偏光方向(p偏光、s偏光)を切り換え可能な構成とした。
このときの応答速度を高速度カメラにて測定したところ、電界印加ON時は約100μsec、電界印加OFF時は約250μsecと一般的な液晶素子より2桁も高速応答性を示した。
すなわち、この液晶ホログラム素子を図2に示す第1の回折光学素子21とすることで、電界印加の制御により光路の切り換えが実現できる。
また、液晶素子(回折光学素子)をアクティブに駆動する作用力印加は電界印加に限定される趣旨ではなく、磁界印加でもよい。
また、副走査方向に2段のポリゴンミラーにより偏向走査(主走査方向に走査)するようにしたが、1段のポリゴンミラーの単面のミラーの上下部位を偏向位置として使い分ける構成としてもよい。また、単面のミラーにおいて、同じ偏向位置を使い、斜め入射方式で異なる被走査面を走査するようにしてもよい(以下の他の実施形態において同じ)。
図12に本実施形態に係る光走査装置の一部を示す。光走査装置20'は、レーザ光源1、偏光切り換え手段26、偏光分離手段27、共通の回転軸を有し複数の段からなる多面反射鏡7等を有している。図12では比較構成と同様にシリンドリカルレンズ、被走査面への結像光学系を省略している。
本実施形態では、偏光切り換え手段26と偏光分離手段27とを組み合わせたものが、第1の実施形態における光路切り換え手段4の機能を有する。
ここで、偏光切り換え手段26はp偏光とs偏光の切り換えを行う機能を有し、偏光分離手段27はp偏光とs偏光を分離することで光路を選択する回折素子として機能する。
偏光分離手段27としては、偏光ビームスプリッタ(PBS)プリズムや、上述した第1の回折光学素子21と第2の回折光学素子23とを組み合わせた構成が採用でき、特に図13に示すような、回折光学素子を組み合わせた構成は低コスト化に有利である。
回折光学素子を組み合わせた偏光分離素子(偏光分離手段27)の作製および動作確認について説明する。
厚み0.7mmのガラス基板の片面に青色光および赤色光に対する反射防止膜を形成し、およそ8μm径のビーズスペーサをそれぞれ混入したそれぞれの接着剤により二枚のガラス基板を貼り合わせた。接着剤の塗布は反射防止膜形成面とは反対の面で、基板の縁2箇所に塗布した。
次に以下の(1)〜(5)の材料の混合物からなる組成物を約65℃に加熱しながら毛管法によりセル中に注入し、厚み約8μmの組成物層を形成した。なお、この組成物は緑色より短波長の光に反応性を示すため赤色光を用いた暗室下で取り扱った。
(1)ネマチック液晶(メルク製 TL216、Δε>0) 25重量部
(2)フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製AH600) 75重量部
(3)ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学製DCP−A) 10重量部
(4)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学製HO) 5重量部
(5)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア819) 1重量部
セル中に注入後、この組成物は室温下において等方性を示した。
液晶ホログラム素子の特性評価としては、作製した素子に波長633nmの直線偏光のレーザ光を照射して、入射光強度に対する0次光と+1次回折光強度を測定した。入射光強度は5mW程度になるようにNDフィルタを用いて調整し、入射光路中に直線偏光板と半波長板を配置し、半波長板の光軸を45度回転させることで、素子に入射する偏光方向(p偏光、s偏光)を切り換え可能な構成とした。
ここで、上記の液晶ホログラム素子を2つ用いて、図13に示すように偏光分離素子を作製した。2つの素子間距離は約10mmとし、p偏光およびs偏光をそれぞれ入射して偏光方向に対する光利用効率を測定したところ、p偏光入射時の光利用効率は78%、s偏光入射時の光利用効率は94%であり、良好に偏光分離することができた。
そこで、比較的安価で高速応答性を示す強誘電性液晶による偏光切り換え素子が好ましい。
光走査装置の動作としては、レーザ光源から出射したビームは、偏光切り換え手段26における電界制御により、ビームの偏光方向が切り換えられ、偏光分離手段27により直交する偏光方向のそれぞれのビームは、副走査方向にビーム光路(上段光路と下段光路)が平行シフトされ、時間分割で上下段のポリゴンミラー7a、7bにそれぞれ入射される。上下段のポリゴンミラー7a、7bは、比較構成と同様にして、45°位相をずらした4面のポリゴンミラーを用いた構成としている。
また、下段ポリゴンミラー7bからのビームが感光体面(被走査面)を走査しているときは、ビームは略下段光路のみを通過し、上段光路はほとんど通過しない動作が実現でき、光源からのビーム光量をロスなく、効率的に利用できる。そのため、光源の長寿命化や劣化確率の低減に繋がる。特に高密度化に有効な面発光レーザを光源として用いる場合、効果が大きくなる。
図14に液晶素子を用いた偏光切り換え手段26の概略を示す。偏光切り換え手段26は、一対の透明基板28、28と、図示しない配向膜と、ホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶層と、前記透明基板面に対して略垂直方向に電界印加を可能とする一対の透明電極29、29と、図示しない作用力印加手段としての電界印加手段とからなる構成とされている。
前述したように高速応答にはホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶を用いることが好ましいが、それほど高速応答が必要ない用途によっては、ネマチック液晶も同様の構成で用いることができる。
また、配向膜はTN液晶、STN液晶等に用いられるポリイミド等の通常の配向膜、また耐久性能が高いSiO、SiO2、ポリシロキサン系の無機配高膜が利用でき、液晶ダイレクタの方向を強く規制するため、ラビング処理や光配向処理を別途施すことが好ましい。透明電極29はITO等を用いることができる。
SSFLCは図15(a)に示すように、液晶分子がスメクチック層法線に対して傾き角−θ(ここでは、θ=22.5°)だけ傾いて安定する配向状態と、図15(b)に示すように、逆方向にθだけ傾いて安定する配向状態とが混在する状態が実現できる。
図15において、Wはスメクチック相の層法線、nは液晶分子の長軸方向(ダイレクタ)、丸印内に黒丸の記号と、丸印内に+の記号は自発分極の方向を表す。
紙面に垂直な方向に電界を印加することにより、液晶分子とその自発分極の向きを一様に揃えることができ、その状態を保持しておくことができる。そして、印加する電界の極性を切り換えることによって、2つの状態間のスイッチングを行うことができる。
すなわち、θ=22.5°とする場合、配向状態1から45°傾いた配向状態2に安定させることができる。
図16は、前述したSSFLCを用いた偏光切り換え素子の動作を示す模式図である。図16において、液晶層の厚さ(セルギャップ)dは入射光の波長λ(例えば650nmまたは780nm)と液晶材料の650nmまたは780nmにおける屈折率異方性Δnによって決まり、Δn×d=λ/2を満たすように、すなわち、半波長板条件を満たすように決定する。
入射偏光方向は液晶層における液晶分子配向の2つの配向状態のうち、どちらか一方の配向状態における液晶分子の短軸方向または長軸方向と位置するように調整配置する必要がある。
ここでは、−Eの電界を印加した時の配向状態1の短軸方向としている。調整法としては、位相板の配置により偏光方向を調整することが可能である。また、ラビング等の配向処理により、液晶分子の初期配向を設定する、または液晶素子自体を回転調整しても可能である。
一方、透明電極29に+Eの電界を印加した場合、液晶分子はスメクチック相の層法線方向Wから+θだけ傾いた配向状態(配向状態2)をとる。この場合、ここではθ=22.5°としているので、入射偏光に対して、液晶分子長軸方向(ダイレクタ)は2θ=45°傾いて配向する。その結果、半波長板条件が成立し、出射偏光は入射偏光から略90°回転した偏光方向となる。
すなわち、電界制御により偏光切り換えが実現でき、強誘電性液晶を用いているため、偏光切り換えに有する応答速度は数μsec〜数百μsecと高速応答である。
理想モデル(配向状態)での偏光状態を解析するため、前提条件として、液晶はネマチック(ZLI−2293*)、印加電圧0V、プレチルト角0°とした。表1及び表2にシミュレーション1の詳細を示す。
また、モデル2における液晶分子の方向はp偏光から45deg傾いており、光は液晶の複屈折を感じるため、前述した[液晶複屈折Δn×セルギャップd=波長λ/2]の条件を満たすことで、90°偏光が回転する。
ここで、シミュレーション1では波長λ:650nm、液晶の複屈折Δn:0.130、セルギャップd=2.50μmであることから、上式を満たしており、90°偏光回転された結果、p偏光の透過率が0%、s偏光の透過率が100%となっている。すなわち理想モデルにおいて、90°偏光回転機能が確認できている。
参考として波長λが780nmの場合、液晶は波長分散があるため、若干複屈折は小さくなりΔn:0.125とすると、90°偏光回転機能を有するセルギャップd=3.11μmとなる。
基板を90度に加熱した状態で2枚の基板間に液晶層として、強誘電性液晶(クラリアント製R5002 Δn=0.17、2θ=90度)を毛管法で注入し、70℃から55℃までを10V/μmの直流電圧を印加した状態で冷却後に封止し、図14に示すような液晶素子を作製した。配向状態を光学顕微鏡により観察したところ、ほぼ均一な配向状態を確認した。この液晶素子に周波数100Hz、±10V/μmの矩形波信号を入力し、クロスニコル下での明暗のスイッチング速度を測定した(液晶素子特性評価装置 大塚電子製)。
電界制御による偏光切り換えに動作に関しては、偏光切り換えを効率よく実現するには、図16に示すように強誘電性液晶のコーン角2θが45°であることが好ましいため、2θが45°である強誘電性液晶(クラリアント製FELIX018−100 Δn=0.17、2θ=45)を用いて、前述と同様にして液晶素子を作製評価した。
評価方法は作製した液晶素子をλ/2板と、偏光板の間に配置し、入射時の偏光方向と出射時の偏光方向を評価した。光源は赤色LD(波長650nm)を用いた。
更に、素子電極間に極性の異なる−10V/μmの電界を印加したところ、これも若干楕円偏光になっているが、入射時と出射時の偏光方向は略90°異なった方向となった。すなわち、電界印加の制御により偏光方向が90°切り換えることができた。出射偏光が楕円偏光になるのは、Δn*d=λ/2の条件が最適化されていないためである。
さらに、この液晶素子に周波数4kHz、±18V/μmの矩形波、パルス波(パルス幅40μsec)信号を入力し、クロスニコル下での明暗のスイッチング速度を測定した。スイッチング応答速度はオシロスコープを用いて、フォトダイオード出力波形により求めた。応答速度は±電圧切り換えタイミングから出力飽和値とし、透過光の明暗0−100%のデータである。
図18に液晶素子の応答速度特性を示す。±電界時の応答速度はほぼ同じであるためプロットは±電界時の平均値とした。室温(25℃)付近における応答速度は約25〜30μsecであった。前記の強誘電性液晶素子よりさらに2桁も高速応答性を示した。
図19に液晶素子(図14で示した偏光切り換え手段26と同様の構造)を光軸方向に複数個(ここでは2個とする)用いた偏光切り換え手段31の概略を示す。
各一個の液晶素子32は一対の透明基板28と、図示しない配向膜と、ホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶層と、前記透明基板面に対して略垂直方向に電界印加を可能とする一対の透明電極29と、共通の電界印加手段33とからなる構成とされている。
第2の実施形態での説明と同様に、高速応答にはホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶を用いることが好ましい。また、配向膜はTN液晶、STN液晶等に用いられるポリイミド等の通常の配向膜、また耐久性能が高いSiO、SiO2、ポリシロキサン系の無機配高膜が利用でき、液晶ダイレクタの方向を規制するため、ラビング処理や光配向処理を別途施すことが好ましい。
透明電極はITO等を用いることができる。強誘電性液晶のスイッチング(図15参照)は、第2の実施形態での説明と同様でなので省略する。
一方、透明電極29間に+Eの電界を印加した場合、図20(b)に示すように、液晶分子(図示しない)は配向状態2をとる。
出射偏光は液晶層の厚さ(セルギャップ)d、入射光の波長λ(例えば650nmまたは780nm)と液晶材料の650nmまたは780nmにおける屈折率異方性Δnによって決まり、2個のSSFLC(偏光回転)素子において、[第一の偏光回転素子のΔn×d]+[第二の偏光回転素子のΔn×d]=λ/2の条件を満たす(すなわち、複数個の素子で半波長板条件を満たす)ことで、入射偏光から90°回転した偏光方向となる。
調整法としては、入射偏光を位相板の配置により偏光方向を調整することが可能である。また、ラビング等の配向処理により、液晶分子の初期配向を設定する、または液晶素子自体を回転調整しても可能である。
このように、液晶素子を光軸方向に複数個用いた構成においても電界制御により90°偏光回転が実現でき、更に同じ厚さ(セルギャップ)dで同じコーン角2θを有する液晶素子を2個組み合わせることで、複数の液晶素子は同プロセスで作製でき、異なる素子構成での組み合わせと比較すると生産性が向上する。
また、図19で示したように、電界制御も並列化(同じ印加電圧が使用可能:電界印加手段共有化)でき、偏光切り換え手段31として構成が簡易化できる。
ここでは、2個のSSFLC(偏光回転)素子は同じセルギャップを有し、かつ同じコーン角2θを有しており、コーン角2θは45°と設定している。2個の素子の透明電極間に−Eの電界を印加した時の配向状態1の短軸方向(または長軸方向)に入射偏光方向を調整している(図21(a)、図22(a))。
また、2個の素子の透明電極間に+Eの電界を印加した場合、図21(b)、図22(b)に示すように、液晶分子はコーン角2θ分の45°傾いた配向状態2となる。出射偏光は液晶層の厚さ(セルギャップ)d'、入射光の波長λ(例えば650nmまたは780nm)と液晶材料の650nmまたは780nmにおける屈折率異方性Δnによって決まり、2個のSSFLC(偏光回転)素子において、[第一の偏光回転素子のΔn×d’=λ/4]+[第二の偏光回転素子のΔn×d’=λ/4]=λ/2の条件を満たすことで、入射偏光から90°回転した偏光方向となる。
このような構成とすることで、SSFLC素子が1個である偏光切換素子に比べて素子のセルギャップは小さくなり(d'<d)、低電圧化が図れる。
図20に示すような構成の液晶素子の偏光解析をシミュレーション(LCDマスター:シンテック)により検証した。ここで今回、理想モデル(配向状態)での偏光状態を解析するため、前提条件として、液晶はネマチック(ZLI−2293*)、印加電圧0V、プレチルト角0°とした。表3及び表4にシミュレーション2の詳細を示す。
また、モデル2における第一(#1)、第二(#2)の液晶分子の方向はそれぞれp偏光から45deg、45deg傾いており、光は液晶の複屈折を感じるため、前述した[第一の液晶(偏光回転)素子のΔn×d’=λ/4]+[第二の液晶(偏光回転)素子のΔn×d’=λ/4]=λ/2の条件を満たすことで、90°偏光が回転する。
ここで、シミュレーション2では波長λ:650nm、液晶の複屈折Δn:0.130、セルギャップd=1.25μmであることから、上式を満たしており、90°偏光回転された結果、p偏光の透過率が0%、s偏光の透過率が100%となっている。すなわち、液晶素子を光軸方向に複数個(ここでは2個とする)用いた構成における理想モデルにおいても、90°偏光回転機能が確認できている。
すなわち、駆動電界としても1/2となり、低電圧化できる。
2個のSSFLC(偏光回転)素子は同じセルギャップを有し、かつ同じコーン角2θを有しており、コーン角2θは22.5°と設定している。
入射偏光方向は2個の素子の透明電極間に−Eの電界を印加した時の配向状態1の短軸方向(または長軸方向)となるように調整している(図23(a)、図24(a))。
また、2個の素子の透明電極間に+Eの電界を印加した場合、図23(b)、図24(b)に示すように、液晶分子はコーン角2θ分の±22.5°(第一素子は22.5°、第二素子は−22.5°)傾いた配向状態2となる。出射偏光は液晶層の厚さ(セルギャップ)d、入射光の波長λ(例えば650nmまたは780nm)と液晶材料の650nmまたは780nmにおける屈折率異方性Δnによって決まり、2個のSSFLC(偏光回転)素子において、[第一の偏光回転素子のΔn1×d]+[第二の偏光回転素子のΔn2×d]=λ/2の条件を満たすことで、入射偏光から90°回転した偏光方向となる。
ここで、応答性の高速化に関して説明する。図25にSSFLC物性の粘度γとコーン角2θとの関係を示す(クラリアント製FLCカタログデータ参考)。凡例はFLCの配向モードの違いを示しており、様々な配向モードにおいて、コーン角2θが小さくなると粘度γも小さくなる傾向にあることがわかる。
一般にFLCの応答性はτ=γ/Ps*E(液晶とディスプレイ応用の基礎:コロナ社参考)の式で近似でき、Ps:自発分極、E:電界との関係にもよるが、粘度γが小さくなると応答速度が速くなる傾向にあることがわかる。
また、モデル2における第一(#1)、第二(#2)の液晶分子の方向はそれぞれp偏光から22.5deg、−22.5deg傾いており、光は液晶の複屈折を感じるため、前述した[第一の液晶(偏光回転)素子のΔn1×d]+[第二の液晶(偏光回転)素子のΔn2×d]=λ/2の条件を満たすことで、90°偏光が回転する。
シミュレーション3では波長λ:650nm、液晶の複屈折Δn:0.130、セルギャップd=2.5μmであることから、上式を満たしており、90°偏光回転された結果、p偏光の透過率が0%、s偏光の透過率が100%となっている。
すなわち、液晶素子を光軸方向に複数個(ここでは2個とする)用いた構成における理想モデルにおいても、90°偏光回転機能が確認できている。
また、所望偏光成分の透過率確保には第一SSFLC素子のコーン角2θ1と、第二SSFLC素子のコーン角2θ2とは、0.9*(90+2θ1)/2≦2θ2≦1.1*(90+2θ1)/2の関係を満たすことが好ましい。
前述した光走査装置において、光源からのビームをロスすることなく、時間分割で上下段のポリゴンミラーにそれぞれ入射するためには、光路切り換えの応答速度が重要となる。
前述したように、光路の切り換えは、アクティブな回折光学素子あるいは偏光切り換え素子の電界制御によりなされる。そこで、安価な素子を実現するために液晶を用いた構成としている。液晶材料は一般的に温度依存性を示し、温度が高くなるに従い、粘性が低くなり、応答速度が速くなる性質をもつ(図17参照)。
そこで、本実施形態では光路切り換えの高速化を定常的に得るための温度調整手段を設けたことを特徴としている。
このような構成とする場合、直接素子を温度調整するため、調整温度に達する時間が早く、高精度の調整ができるといった利点がある。一般にペルチェ素子は高価であるため、小型ヒータを用いることが好ましく、小型ヒータとしては例えば、セラミックヒータ等を用いることができる。
また、光走査ユニット内の温度を調整するように光走査装置に温度調整手段を設ける構成としてもよい。
温度調整手段36は、筐体35の外面近傍に配置された熱源37と、筐体35内の温度を検知する温度検知手段38と、温度検知手段38からの検知信号に基づいて熱源37を調整する温度制御回路39を有している。
ここでは、熱源37としてヒータを用いて、温度調整する構成としている。例えば、ヒータとしては、加熱源と熱拡散板とで構成することができ、加熱源によって加熱された雰囲気は、熱拡散板によって均一に拡散される。また、ファンによる送風量を調節することでも装置内の温度を調整することができる。特定の温度範囲に調整されるようにサイリスタやサーモスタットを設けることが好ましい。
例えば、図17に示すような応答性を示す液晶素子を光路切り換えに用いる場合、温度調整手段36における温度範囲を30℃〜40℃に設定することで0.5msec以下の高速応答を保つことができ、第2の実施形態で説明した応答性を示す液晶素子を光路切り換えに用いる場合、温度調整手段36における温度範囲を30℃〜40℃に設定することで25μsec以下の高速応答を保つことができる。
このような場合、図27に示すように、光路切り換え手段4に直接的にその熱容量に適した熱源37'を配置し、且つ、温度検知手段38によりその近傍を検知するようにすれば常に良好な高速応答性を維持することができる。
図28は本実施形態に係る光走査装置の構成を示す概要斜視図である。同図において符号1、1’は光源としての半導体レーザ、2はLD(半導体レーザ)ベース、3、3’はカップリングレンズ、4は上述した光路切り換え手段、5、5’はシリンドリカルレンズ、6は防音ガラス、7は偏向手段としてのポリゴンミラー、8は第1走査レンズ、9はミラー、10は第2走査レンズ、12は被走査面としての感光体(像担持体)、50は開口絞りをそれぞれ示す。
カップリングレンズ3、3’、光路切り換え手段4、シリンドリカルレンズ5は第1の結像光学系を構成し、第1走査レンズ8、ミラー9、第2走査レンズ10は第2の結像光学系を構成する。
なお、図28では2つの感光体12M、12Kに対応する構成のみ示しているが、実際には偏向手段7を挟んで、図示された光学系と同様の光学系を配備することにより、4つの感光体を走査するようになっている。
カップリングレンズ3、3’を出たビームは被走査面上でのビーム径を安定させるための開口絞り50を通過し、光路切り換え手段4に入射する。上述のようにビームは光路切り換え手段4により光路を切り換えられる。
光路切り換え手段4により光路を切り換えられたビームは上下段それぞれに配備されるシリンドリカルレンズ5、5’により、偏向反射面の近傍にて主走査方向に長い線像に変換される。ここで、偏向手段7は上下段にそれぞれ単体のポリゴンミラー7a、7bが同心で配置され、互いに回転方向の角度がずらしてある(ここではθ=45deg)。
上述のように、共通の光源からの上段のビームが被走査面である感光体12Kを走査し、異なるタイミングで下段のビームが上段とは異なる感光体12Mを走査する。
光路切り換え手段4における光路切り換え信号は、有効走査幅外に配備される図示しない同期受光手段(例えばフォトダイオード)により検知される走査同期信号を基準として設定されている。
光路切り換え手段4に代えて、偏光切り換え手段と偏光分離手段とからなる構成としてもよい。
光源としては、図29に示すように、高密度化に有効な面発光レーザ(VCSEL)を用いてもよい。
本実施形態では光走査装置20を例示しているが、光走査装置20'、34においても同様である。
カラー画像形成装置は、転写ベルト11の移動方向に沿って並置された4つの感光体12Y、12C、12M、12Kを有している。イエロー画像形成用の感光体12Yの周りには、その矢印で示す回転方向において順に、帯電器13Y、現像器14Y、転写手段15Y、クリーニング手段16Yが配置されている。他の色についても同様の構成を有しており、色別の欧文字(C:シアン、M:マゼンダ、K:ブラック)を付して区別し、説明は省略する。
帯電器13は、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。帯電器13と現像器14の間において感光体表面に光走査装置20によりビームが照射され、感光体12に静電潜像が形成されるようになっている。
そして、静電潜像に基づき、現像器14により感光体面上にトナー像が形成される。転写手段15により、転写ベルト11で搬送される記録媒体(転写紙)に各色の転写トナー像が順次転写され、最終的に定着手段17により重ね合わせ画像が転写紙に定着される。
本実施形態では光走査装置20を例示しているが、光走査装置20'、34においても同様である。
4 光路切り換え手段
7 偏向手段としてのポリゴンミラー
12 被走査面としての感光体
20 光走査装置
21 第1の回折光学素子
23 第2の回折光学素子
26 偏光切り換え手段
27 偏光分離手段
28 透明基板
33 作用力印加手段としての電界印加手段
36 温度調整手段
38 温度検知手段
Claims (28)
- 光源と、該光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、該偏向手段によって偏向された光ビームを被走査面上に結像する結像光学系とを有する光走査装置において、
前記光源と前記偏向手段との間に光ビームの光路を切り換える光路切り換え手段が設けられ、前記光源からの光ビームの光路を切り換えながら該光ビームを異なるタイミングで偏向することにより、複数の異なる被走査面を走査することを特徴とする光走査装置。 - 請求項1記載の光走査装置において、
前記光路切り換え手段は、作用力印加で屈折率が変化する第1の回折領域と、該第1の回折領域からの回折光を前記偏向手段の所定部位へ達するように回折させる第2の回折領域とを有していることを特徴とする光走査装置。 - 請求項2記載の光走査装置において、
前記第2の回折領域が、作用力印加で屈折率が変化する構造を有していることを特徴とする光走査装置。 - 請求項3記載の光走査装置において、
前記第1の回折領域と前記第2の回折領域とが同一の回折構造を有していることを特徴とする光走査装置。 - 請求項2〜4のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記第1の回折領域と前記第2の回折領域のうち、少なくとも一方の回折領域は、非重合性液晶からなる領域と等方性媒質からなる領域の周期的な構造からなり、前記非重合性液晶からなる領域の特定の偏光方向に対する屈折率が前記作用力印加により変化し、作用力印加に応じて前記特定の偏光方向の光を透過又は回折することを特徴とする光走査装置。 - 請求項2〜4のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記第1の回折領域と前記第2の回折領域のうち、少なくとも一方の回折領域は、主にポリマーから成る領域と主に非重合性液晶から成る領域との周期的な相分離構造を形成したポリマー分散型液晶ホログラム素子であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1記載の光走査装置において、
前記光路切り換え手段は、作用力印加で屈折率が変化する第1の回折光学素子と、該第1の回折光学素子からの回折光を前記偏向手段の所定部位へ達するように回折させる第2の回折光学素子とを有していることを特徴とする光走査装置。 - 請求項7記載の光走査装置において、
前記第2の回折光学素子が、作用力印加で屈折率が変化する構造を有していることを特徴とする光走査装置。 - 請求項7記載の光走査装置において、
前記第1の回折光学素子と前記第2の回折光学素子とが同一の回折構造を有していることを特徴とする光走査装置。 - 請求項7〜9のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記第1の回折光学素子と前記第2の回折光学素子のうち、少なくとも一方の回折光学素子は、非重合性液晶からなる領域と等方性媒質からなる領域の周期的な構造からなり、前記非重合性液晶からなる領域の特定の偏光方向に対する屈折率が前記作用力印加により変化し、作用力印加に応じて前記特定の偏光方向の光を透過又は回折することを特徴とする光走査装置。 - 請求項7〜9のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記第1の回折光学素子と前記第2の回折光学素子のうち、少なくとも一方の回折光学素子は、主にポリマーから成る領域と主に非重合性液晶から成る領域との周期的な相分離構造を形成したポリマー分散型液晶ホログラム素子であることを特徴とする光走査装置。 - 光源と、該光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、該偏向手段によって偏向された光ビームを被走査面上に結像する結像光学系とを有する光走査装置において、
前記光源と前記偏向手段との間に、作用力印加で屈折率が変化する偏光切り換え手段と、偏光分離手段とが設けられ、前記光源からの光ビームの光路を切り換えながら該光ビームを異なるタイミングで偏向することにより、複数の異なる被走査面を走査することを特徴とする光走査装置。 - 請求項12記載の光走査装置において、
前記偏光分離手段は、偏光ビームスプリッタプリズムであることを特徴とする光走査装置。 - 請求項12記載の光走査装置において、
前記偏光分離手段は、少なくとも第1の回折領域と第2の回折領域とを有し、前記各回折領域は、光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域からなる周期的な構造を有し、透過及び回折により、互いに直交する偏光成分を分離することを特徴とする光走査装置。 - 請求項12記載の光走査装置において、
前記偏光分離手段は、少なくとも第1の回折光学素子と第2の回折光学素子とを有し、前記各回折光学素子は、光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域からなる周期的な構造を有し、透過及び回折により、互いに直交する偏光成分を分離することを特徴とする光走査装置。 - 請求項12〜15のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記偏光切り換え手段は、一対の透明基板と、前記基板の内面側に設けられた配向膜と、前記配向膜によりホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層と、前記透明基板面に対して略垂直方向に作用力を印加する作用力印加手段とからなり、作用力強度に応じて特定の偏光方向を略90°回転することを特徴とする光走査装置。 - 請求項16記載の光走査装置において、
前記偏光向切り換え手段を光軸方向に複数個配列したことを特徴とする光走査装置。 - 請求項17記載の光走査装置において、
前記液晶層は略同じ厚さで、略同じコーン角を有することを特徴とする光走査装置。 - 請求項18記載の光走査装置において、
前記コーン角が略45°であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項18記載の光走査装置において、
前記コーン角が略22.5°であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項2〜20のうちのいずれか1つに記載の光走査装置において、
電界印加手段を有し、前記作用力印加が電界印加であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜21のうちのいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記偏向手段が、共通の回転軸を有し且つ副走査方向に複数段の構成を有する多面反射鏡であることを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜22のうちのいずれか1つに記載の光走査装置において、
装置筐体内の温度を一定の範囲に保つ温度調整手段を有していることを特徴とする光走査装置。 - 請求項23記載の光走査装置において、
前記光路切り換え手段、前記偏光切り換え手段又は前記偏光分離手段の温度を直接的に検知する温度検知手段を有し、該温度検知手段からの検知信号に基づいて温度調整を行うことを特徴とする光走査装置。 - 請求項1〜24のうちのいずれか1つに記載の光走査装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
- 請求項25記載の画像形成装置において、
前記偏向手段の走査記録に対応して、前記光源からの光路を切り換えるように、前記光走査装置を駆動制御することで、複数の異なる被走査面を順次走査記録することを特徴とする画像形成装置。 - 請求項26記載の画像形成装置において、
前記光路の切り換え信号は、各被走査面の走査同期信号を基準として設定されていることを特徴とする画像形成装置。 - 光源からの光ビームを偏向手段により偏向し、偏向された光ビームを結像光学系を介して被走査面上に結像する光走査方法において、
前記光源からの光ビームの光路を切り換えながら該光ビームを異なるタイミングで偏向することにより、複数の異なる被走査面を走査することを特徴とする光走査方法。
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