JP2003090992A - 光偏向装置、該光偏向装置を用いた画像表示装置、及び光偏向装置の制御方法 - Google Patents

光偏向装置、該光偏向装置を用いた画像表示装置、及び光偏向装置の制御方法

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JP2003090992A
JP2003090992A JP2001285409A JP2001285409A JP2003090992A JP 2003090992 A JP2003090992 A JP 2003090992A JP 2001285409 A JP2001285409 A JP 2001285409A JP 2001285409 A JP2001285409 A JP 2001285409A JP 2003090992 A JP2003090992 A JP 2003090992A
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Hiroyuki Sugimoto
浩之 杉本
Toshiaki Tokita
才明 鴇田
Yumi Matsuki
ゆみ 松木
Yoshirou Futamura
恵朗 二村
Masanori Kobayashi
正典 小林
Yasuyuki Takiguchi
康之 滝口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構成が簡単で小型であり、光量損失、光学ノ
イズ及び解像度低下が少なく、低コスト化を図ることが
できる光偏向装置および該光偏向装置を提供する。 【解決手段】 光偏向素子1は、基板2,3間にキラル
スメクチックC層を形成する液晶層5を有しており、電
源による電界の強度及び方向に応じて液晶層の平均的な
光学軸の傾斜方向を変化させて直線偏光の透過光路を偏
向させる。このときに光偏向時の液晶層5の全域の電界
強度がEs以上となるように電源7の出力を設定する。
すなわち、電界変化に対して偏向量が一定となる飽和電
界Es以上の電界を印加することにより、液晶層内に電
界ムラが発生しても光路の偏向量は場所によらず一定と
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気信号によって
光の方向を変える光偏向装置及び該光偏向装置を利用し
た画像表示装置に関し、プロジェクションディスプレ
イ、ヘッドマウントディスプレイなどの電子ディスプレ
イ装置に応用可能な光偏向装置及び画像表示装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】光偏向素子なる光学素子として、従来よ
り、KH2PO4(KDP),NH4 PO4(AD
P),LiNbO3,LiTaO3,GaAs,CdTe
など第1次電気光学効果(ポッケルス効果)の大きな材
料や、KTN,SrTiO3,CS2,ニトロベンゼン等
の第2次電気光学効果の大きな材料を用いた電気光学デ
バイスや、ガラス,シリカ,TeO2などの材料を用い
た音響光学デバイスが知られている(例えば、青木昌治
編;「オプトエレクトロニックデバイス」、昭晃堂)。こ
れらは、一般的に、十分大きな光偏向量を得るためには
光路長を長く取る必要があり、また、材料が高価である
ため用途が制限されている。一方で、液晶材料を用いた
光偏向素子なる光学素子も各種提案されており、その数
例を挙げると、以下に示すような提案例がある。
【0003】例えば、特開平6−18940号公報によ
れば、光空間スイッチの光の損失を低減することを目的
に、人工複屈折板からなる光ビームシフタが提案されて
いる。内容的には、2枚のくさび形の透明基板を互いに
逆向きに配置し、該透明基板間に液晶層を挟んだ光ビー
ムシフタ、及びマトリクス形偏向制御素子の後面に前記
光ビームシフタを接続した光ビームシフタが提案され、
併せて、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配
置し、該透明基板間にマトリクス駆動が可能で、入射光
ビームを半セルシフトする液晶層を挟んだ光ビームシフ
タを半セルずらして多段接続した光ビームシフタが提案
されている。
【0004】また、特開平9−133904号公報によ
れば、大きな偏向を得ることが可能で、偏向効率が高
く、しかも、偏向角と偏向距離とを任意に設定すること
ができる光偏向スイッチが提案されている。具体的に
は、2枚の透明基板を所定の間隔で対向配置させ、対向
させた面に垂直配向処理を施し、透明基板間にスメクチ
ックA相の強誘電性液晶を封入し、前記透明基板に対し
て垂直配向させ、スメクチック層と平行に交流電界を印
加できるように電極対を配置し、電極対に交流電界を印
加する駆動装置を備えた液晶素子である。即ち、スメク
チックA相の強誘電性液晶による電傾効果を用い、液晶
分子の傾斜による複屈折によって、液晶層に入射する偏
光の屈折角と変位する方向を変化できるようにしたもの
である。
【0005】しかしながら上記特開平6−18940号
公報例においては、液晶材料にネマチック液晶を用いて
いるため、応答速度をサブミリ秒にまで速めることは困
難であり、高速なスイッチングが必要な用途には用いる
ことはできない。また、上記特開平9−133904号
公報例においては、スメクチックA相の強誘電液晶を用
いているが、スメクチックA相は自発分極を持たないた
め、高速動作は望めない。
【0006】次に、ピクセルシフト素子に関して従来提
案されている技術を数例挙げて説明する。例えば、特許
第2939826号公報に示されるように、表示素子に
表示された画像を投写光学系によりスクリーン上に拡大
投影する投影表示装置において、前記表示素子から前記
スクリーンに至る光路の途中に透過光の偏光方向を旋回
できる光学素子を少なくとも1個以上と複屈折効果を有
する透明素子を少なくとも1個以上を有してなる投影画
像をシフトする手段と、前記表示素子の開口率を実効的
に低減させ、表示素子の各画素の投影領域が前記スクリ
ーン上で離散的に投影される手段と、を備えた投影表示
装置がある。
【0007】同公報例においては、偏光方向を旋回でき
る光学素子(旋光素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上と
複屈折効果を有する透明素子(複屈折素子と呼ぶ)を少
なくとも1個以上を有してなる投影画像シフト手段(ピ
クセルシフト手段)によりピクセルシフトを行っている
が、問題点として、旋光素子と複屈折素子とを組合せて
使用するため、光量損失が大きいこと、光の波長により
ピクセルシフト量が変動し解像度が低下しやすいこと、
旋光素子と複屈折素子との光学特性のミスマッチから本
来画像が形成されないピクセルシフト外の位置に漏れ光
によるゴースト等の光学ノイズが発生しやすいこと、素
子化のためのコストが大きいことが挙げられる。特に、
複屈折素子に前述したようなKH2PO4(KDP),N
42PO4(ADP),LiNbO3,LiTaO3
GaAs,CdTeなど第1次電気光学効果(ポッケル
ス効果)の大きな材料を使用した場合、顕著である。
【0008】また、特開平5−313116号公報に示
される投影機においては、制御回路により、画像蓄積回
路に蓄積した本来表示すべき画像を市松状に画素選択回
路へサンプリングして順次空間光変調器に表示し、投影
させ、さらに、制御回路により、この表示に対応させて
パネル揺動機構を制御して空間光変調器の隣接画素ピッ
チ距離を整数分の一ずつ移動させることで、本来表示す
べき画像を時間的な合成により再現するようにしてい
る。これにより、空間光変調器の画素の整数倍の分解能
で画像を表示可能にするとともに、画素の粗い空間光変
調器と簡単な光学系を用いて安価に投影機を構成可能と
している。
【0009】ところが、上記特開平5−313116号
公報においては、画像表示用素子自体を画素ピッチより
も小さい距離だけ高速に揺動させるピクセルシフト方式
が記載されており、この方式では、光学系は固定されて
いるので諸収差の発生が少ないが、画像表示素子自体を
正確かつ高速に平行移動させる必要があるため、可動部
の精度や耐久性が要求され、振動や音が問題となる。
【0010】さらに、特開平6−324320号公報に
よれば、LCD等の画像表示装置の画素数を増加させる
ことなく、表示画像の解像度を、見掛け上、向上させる
ため、縦方向及び横方向に配列された複数個の画素の各
々が、表示画素パターンに応じて発光することにより、
画像が表示される画像表示装置と、観測者またはスクリ
ーンとの間に、光路をフィールド毎に変更する光学部材
を配し、また、フィールド毎に、前記光路の変更に応じ
て表示位置がずれている状態の表示画素パターンを画像
表示装置に表示させるようにしている。ここに、屈折率
が異なる部位が、画像情報のフィールド毎に、交互に、
画像表示装置と観測者又はスクリーンとの間の光路中に
現れるようにすることで、前記光路の変更が行われるも
のである。
【0011】上記特開平6−324320号公報の例に
おいては、光路を変更する手段として、電気光学素子と
複屈折材料の組合わせ機構、レンズシフト機構、バリア
ングルプリズム、回転ミラー、回転ガラス等が記述され
ており、上記旋光素子と複屈折素子を組合せてなる方式
の他に、ボイスコイル、圧電素子等によりレンズ、反射
板、複屈折板等の光学素子を変位(平行移動、傾斜)さ
せ光路を切り替える方式が提案されているが、この方式
においては、光学素子を駆動するために構成が複雑とな
りコストが高くなる。
【0012】また、特開平10−133135号公報に
よれば、回転機械要素を不要化でき、全体の小型化、高
精度・高分解能化を実現でき、しかも外部からの振動の
影響を受け難い光ビーム偏向装置が提案されている。具
体的には、光ビームの進行路上に配置される透光性の圧
電素子と、この圧電素子の表面に設けられた透明の電極
と、圧電素子の光ビーム入射面Aと光ビーム出射面Bと
の間の光路長を変化させて光ビームの光軸を偏向させる
ために電極を介して圧電素子に電圧を印加する電圧印加
手段とを備えている。
【0013】上記特開平10−133135号公報で
は、透光性の圧電素子を透明の電極で挟み、電圧を印加
することで厚みを変化させて光路をシフトさせる方式が
提案されているが、比較的大きな透明圧電素子を必要と
し、装置コストがアップする等、前述の特開平6−32
4320号公報の場合と同様の問題点がある。
【0014】また、特開平7−20417号公報では、
−40℃〜80℃の温度範囲内にキラルスメクチックC
相を示す強誘電性液晶セルと複屈折媒体を組み合わせる
ことで出射項の光軸を所定の方向にずらすためのウォブ
リングを行うのに用いられる光変調素子が提案されてい
る。キラルスメクチックC相の温度範囲が広いため、広
範囲な温度条件での使用を可能にし、温度差が大きくて
十二分に使用できる。しかし、光軸のシフト量を制御す
ることはできない。
【0015】また、本出願人が先に出願した「光偏向素
子、光偏向デバイス及び画像表示装置」においては、透
明な一対の基板と、該基板間に充填されたホメオトロピ
ック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶
と、この液晶に電界を作用させる少なくとも1組以上の
電界印加手段とを備える構成とし、キラルスメクチック
C相よりなる液晶を利用しているので、従来の光偏向素
子に比して、構成が複雑であることに伴う高コスト、装
置大型化、光量損失、光学ノイズを改善でき、かつ、従
来のスメクチックA液晶やネマチック液晶などにおける
応答性の鈍さも改善でき、高速応答が可能となるように
した。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来技術の課
題を整理すると、従来のピクセルシフト素子において問
題となっているのは、(1)構成が複雑であることに伴
う高コスト、装置大型化、光量損失、ゴースト等の光学
ノイズ又は解像度低下、(2)特に可動部を有する構成
の場合の位置精度や耐久性、振動や音の問題、(3)ネ
マチック液晶などにおける応答速度、である。
【0017】上記(3)の応答速度に関し、画像表示装
置におけるピクセルシフトに必要な光偏向の時間は以下
のように見積もることができる。画像フィールド(時間
tFie ld)を時間的にn分割し、各n個のサブフィールド
毎に画像表示素子と光学部材との間の光路を偏向してピ
クセルシフトのシフト位置をn箇所に定めた場合、1つ
のサブフィールドの時間tSFは tSF=tField/n で表される。この時間tSFの期間中に光偏向がなされる
が、その時間をtshiftとするとこのtshiftの期間は表示
が行えないため、この期間に相当する分だけ光利用効率
が低下する。
【0018】光利用効率Eは以下の式で表される。 E=(tSF−tshift)/tSF 仮にピクセルシフト位置nがn=4、画像フィールドt
Fieldが16.7msである場合に、光利用効率Eを90
%以上確保するためには、 0.9<(16.7/4−shift)/(16.7/4) tshift<0.42(ms) となり、光偏向を0.42msで行う必要がある。通常
のネマチック液晶は応答速度が数ms以上であるため、
ここに示すような高速ピクセルシフトのための光学素子
としては使用することはできない。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平6−189
40号公報においては液晶材料にネマチック液晶を用い
ているため、応答速度をサブミリ秒にまで速めることは
困難であり、ピクセルシフトに用いることはできない。
一方、キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶では
その応答速度は十分0.42ms以下に設定することが
可能である。また、上記特開平9−133904号公報
においてはスメクチックA相の強誘電液晶を用いている
が、スメクチックA相は自発分極を持たないため、キラ
ルスメクチックC相に見られるような高速動作はやはり
望めない。
【0020】本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなさ
れたもので、基本的には、従来の光偏向素子における問
題点、即ち、構成が複雑であることに伴う高コスト、装
置大型化、光量損失、光学ノイズを改善し、構成が簡単
で、小型であり、光量損失、光学ノイズ、解像度低下が
少なく、低コスト化を図ることができる光偏向装置、該
光偏向装置の制御方法および該光偏向装置を備える画像
表示装置を提供することを目的とする。各請求項に対応
する目的を以下に記載する。
【0021】請求項1の発明は、一つの光偏向装置内で
均一な偏向量を得ることが可能な光偏向装置を提供する
ことを目的とするものである。請求項2の発明は、一つ
の光偏向装置内で均一で一定した偏向量を得ることが可
能な光偏向装置を提供することを目的とするものであ
る。請求項3の発明は、温度による光偏向量の制御特性
を改善し、正確な光偏向動作を行うことができる光偏向
装置を提供することを目的とするものである。
【0022】請求項4の発明は、温度による光偏向量の
制御特性を改善し、正確な光偏向動作を行うことができ
る光偏向装置を提供することを目的とするものである。
請求項5及び6の発明は、正確に光偏向量を制御可能な
光偏向装置を提供することを目的とするものである。請
求項7及び8の発明は、充分な光偏向量を得ることが可
能で、かつ、光偏向動作の応答速度が速い光偏向装置を
提供することを目的とするものである。請求項9の発明
は、所望の光偏向量を得ることが可能で、かつ、光偏向
動作の時間的な効率が良い光偏向装置を提供することを
目的とするものである。
【0023】請求項10の発明は、長期的に安定して正
確な光偏向量を得ることが可能な光偏向装置を提供する
ことを目的とするものである。請求項11の発明は、入
射光が無偏光の光であっても確実に光路を偏向すること
ができる光偏向装置を提供することを目的とするもので
ある。請求項12の発明は、光路を二次元方向に偏向可
能とすることができる光偏向装置を提供することを目的
とするものである。請求項13の発明は、画素数の少な
い画像表示素子を用いて、見かけ上高精細で光利用効率
の高い画像表示装置を提供することを目的とするもので
ある。
【0024】請求項14の発明は、光偏向装置への電気
的ノイズの影響を減少させることができるようにした光
偏向装置を提供することを目的とするものである。請求
項15の発明は、画像表示装置への電気的ノイズの影響
を減少させることができるようにした画像表示装置を提
供することを目的とするものである。請求項16の発明
は、光偏向装置への電気的ノイズの影響を減少させるこ
とができるようにするための簡単な構成の電圧印加手段
を備えた光偏向装置を提供することを目的とするもので
あることを目的とするものである。請求項17の発明
は、画像表示装置への電気的ノイズの影響を減少させる
ことができるようにするための簡単な構成の電圧印加手
段を備えた画像表示装置を提供することを目的とするも
のであることを目的とするものである。請求項18の発
明は、低電圧駆動が可能で、高速応答性と耐圧性に優れ
たスイッチを有する電圧印加手段を有する光偏向装置を
提供することを目的とするものである。請求項19の発
明は、低電圧駆動が可能で、高速応答性と耐圧性に優れ
たスイッチを有する電圧印加手段を有する画像表示装置
を提供することを目的とするものである。請求項20及
び21の発明は、一つの光偏向装置内で均一な偏向量を
得ることが可能な光偏向装置の制御方法を提供すること
を目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、透明
な一対の基板、該一対の基板間の間隔を規制する間隔規
制手段、該基板間に保持されるキラルスメクチックC相
を形成可能な液晶層、少なくとも一方の前記基板の内側
表面に形成した垂直配向膜、及び前記液晶層に対して略
平行な方向に電界を印加可能に配置した少なくとも2つ
以上の電極を有する光偏向素子と、該光偏向素子の前記
電極間に電圧を印加する電界印加手段とを有し、該電界
印加手段による電界の強度及び方向に応じて前記液晶層
の平均的な光学軸の傾斜方向を変化させて直線偏光の透
過光路を偏向する光偏向装置において、前記電界印加手
段による電界の増加に対して光路の偏向量の増加傾向が
飽和する電界強度を飽和電界Esとした時、光路の偏向
時の前記液晶層内全域の電界強度がEs以上となるよう
に前記電界印加手段の出力を設定することを特徴とした
ものである。
【0026】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、該光偏向装置は、前記光偏向素子の温度を制御する
温度制御手段を有し、該温度制御手段は、前記液晶層の
温度がキラルスメクチックC相を示す温度範囲にあるよ
うに前記光偏向素子の温度を制御することにより、該光
偏向素子における光路の偏向量を制御することを特徴と
したものである。
【0027】請求項3の発明は、請求項2の発明におい
て、前記キラルスメクチックC層を形成する液晶層の液
晶ダイレクタのチルト角θの増加に対して、光路の偏向
量が単調増加を示す範囲内でチルト角θを制御するよう
に、該液晶層の液晶材料及び前記温度制御手段による温
度制御範囲を設定することを特徴としたものである。
【0028】請求項4の発明は、請求項3の発明におい
て、前記液晶ダイレクタのチルト角θが、該液晶層の温
度変化に対して0度から40度の範囲内で変化するよう
に該液晶層の液晶材料及び前記温度制御範囲を設定する
ことを特徴としたものである。
【0029】請求項5の発明は、請求項2ないし4のい
ずれか1の発明において、前記液晶層の温度を上昇させ
たときにキラルスメクチックC相からスメクチックA相
またはキラルネマチック相に転移する温度をTc℃とし
たとき、前記温度制御手段は、前記液晶層がキラルスメ
クチックC相を示す温度で、かつ、(Tc−α)℃以下
(但しα>0)の範囲内となるように前記光偏向素子の
温度を制御することを特徴としたものである。
【0030】請求項6の発明は、請求項5の発明におい
て、前記(Tc−α)℃は、(Tc−5)℃であること
を特徴としたものである。
【0031】請求項7の発明は、請求項2ないし6のい
ずれか1の発明において、液晶層の温度を上昇させたと
きにキラルスメクチックC相からスメクチックA相また
はキラルネマチック相に転移する温度をTc℃としたと
き、前記温度制御手段は、前記液晶層の温度が(Tc−
β)℃以上かつ(Tc−α)℃以下(但し、β>α>
0)の範囲内となるように前記光偏向素子の温度を制御
することを特徴としたものである。
【0032】請求項8の発明は、請求項7の発明におい
て、(Tc−β)℃以上かつ(Tc−α)℃以下(但
し、β>α>0)の範囲は、(Tc−40)℃以上かつ
(Tc−5)℃以下の範囲であることを特徴としたもの
である。
【0033】請求項9の発明は、請求項2ないし4のい
ずれか1の発明において、飽和電界Es以上での光路の
偏向量を飽和偏向量Ls、光路が飽和偏向量Lsの距離
を移動する応答時間をRとして、該光偏向素子の温度T
に対する飽和偏向量の変化を関数Ls(T)とし、該光
偏向素子の温度Tに対する応答時間の変化を関数R
(T)とした時、単位時間当たりの偏向量の関数[Ls
(T)/R(T)]が最大となる温度Tmを前記温度制
御手段による目標温度として設定し、該温度Tmにおい
て所望の飽和偏向量Lsとなるように前記スペーサの厚
さを設定したことを特徴としたものである。
【0034】請求項10の発明は、請求項2ないし9の
いずれか1の発明において、該光偏向装置は、前記光偏
向素子の外部に光路の偏向量を検出する偏向量検出手段
と、前記温度制御手段による偏向量の目標値と該偏向量
検出手段の検出値とを比較する比較回路と、該比較回路
の結果に応じて前記温度制御手段の制御目標値を変更す
る制御回路とを有することを特徴としたものである。
【0035】請求項11の発明は、請求項1ないし10
のいずれか1に記載の光偏向装置において、該光偏向装
置は、前記光偏向素子への入射光の偏光方向を前記液晶
層の平均的な光軸の傾斜方向と一致させる偏光方向制御
手段を有することを特徴としたものである。
【0036】請求項12の発明は、請求項11の発明に
おいて、該光偏向装置は、第1の前記光偏向素子の出射
光の偏光面を略直角に回転させる偏光面回転手段と、該
偏向面回転手段による偏光面回転後の出射光を入射光と
する第2の前記光偏向素子を有し、前記第1及び第2の
光偏向素子の液晶層法線方向は略一致し、かつ前記第1
及び第2の光偏向素子の電界方向が略直交するように配
置されてなることを特徴としたものである。
【0037】請求項13の発明は、画像情報に従って光
を制御可能な複数の画素が二次元的に配列した画像表示
素子と、該画像表示素子を照明する光源及び照明装置
と、前記画像表示素子に表示した画像パターンを観察す
るための光学装置と、画像フィールドを時間的に分割し
た複数のサブフィールドで形成する表示駆動手段と、各
画素からの出射光の光路を偏向する前記請求項1ないし
12のいずれか1に記載の光偏向装置とを有し、サブフ
ィールド毎の光路の偏向状態に応じて表示位置がずれて
いる状態の画像パターンを表示することで画像表示素子
の見かけ上の画素数を増倍して表示することを特徴とし
たものである。
【0038】請求項14の発明は、請求項1ないし12
のいずれか1の発明において、偏光面を略直角に回転さ
せる偏光面回転手段と電圧印加手段を有することを特徴
としたものである。
【0039】請求項15の発明は、請求項13の発明に
おいて、偏光面を略直角に回転させる偏光面回転手段と
電圧印加手段を有することを特徴としたものである。
【0040】請求項16の発明は、請求項14の発明に
おいて、前記電圧印加手段は直流電源と出力切換回路と
から成り、該出力切換回路は4つのスイッチを用いて、
第1のスイッチと第2のスイッチを直列に接続し、第3
のスイッチと第4のスイッチを直列に接続し、これら2
組の直列スイッチを並列に接続し、前記第1のスイッチ
と前記第3のスイッチの一端を直流電源の出力端子に接
続し、前記第2のスイッチと前記第4のスイッチの一端
を接地して成り、前記第1のスイッチと第2のスイッチ
の間から第1の出力端子を取出し、前記第3のスイッチ
と第4のスイッチの間から第2の出力端子を取出し、前
記第1及び第4のスイッチを閉じた状態と、前記第2及
び第3のスイッチを閉じた状態とを切り替える電圧印加
手段を用いたことを特徴としたものである。
【0041】請求項17の発明は、請求項15の発明に
おいて、前記電圧印加手段は直流電源と出力切換回路と
から成り、該出力切換回路は4つのスイッチを用いて、
第1のスイッチと第2のスイッチを直列に接続し、第3
のスイッチと第4のスイッチを直列に接続し、これら2
組の直列スイッチを並列に接続し、前記第1のスイッチ
と前記第3のスイッチの一端を直流電源の出力端子に接
続し、前記第2のスイッチと前記第4のスイッチの一端
を接地して成り、前記第1のスイッチと第2のスイッチ
の間から第1の出力端子を取出し、前記第3のスイッチ
と第4のスイッチの間から第2の出力端子を取出し、前
記第1及び第4のスイッチを閉じた状態と、前記第2及
び第3のスイッチを閉じた状態とを切り替える電圧印加
手段を用いたことを特徴としたものである。
【0042】請求項18の発明は、請求項16の発明に
おいて、前記電圧印加手段は、前記スイッチにフォトカ
プラを用いたことを特徴としたものである。
【0043】請求項19の発明は、請求項17の発明に
おいて、前記電圧印加手段は、前記スイッチにフォトカ
プラを用いたことを特徴としたものである。
【0044】請求項20の発明は、透明な一対の基板、
該一対の基板間の間隔を規制するスペーサ、該基板間に
保持されるキラルスメクチックC相を形成可能な液晶
層、少なくとも一方の前記基板の内側表面に形成した垂
直配向膜、及び前記液晶層に対して略平行な方向に電界
を印加可能に配置した少なくとも2つ以上の電極を有す
る光偏向素子と、該光偏向素子の前記電極間に電圧を印
加する電界印加手段とを有し、該電界印加手段による電
界の強度及び方向に応じて前記液晶層の平均的な光学軸
の傾斜方向を変化させて直線偏光の透過光路を偏向する
光偏向装置に適用する光偏向装置の制御方法において、
前記電界印加手段による電界の増加に対して光路の偏向
量の増加傾向が飽和する電界強度を飽和電界Esとした
時、光路の偏向時の前記液晶層内全域の電界強度がEs
以上となるように前記電界印加手段の出力を設定するこ
とを特徴としたものである。
【0045】請求項21の発明は、請求項20の発明に
おいて、前記液晶層の温度がキラルスメクチックC相を
示す温度範囲にあるように前記光偏向素子の温度を制御
することにより、該光偏向素子における光路の偏向量を
制御することを特徴としたものである。
【0046】
【発明の実施の形態】本明細書において、「光偏向素
子」とは、外部からの電気信号により光の光路を偏向、
即ち、入射光に対して出射光の光軸を平行にシフトさせ
るか、或る角度を持って回転させるか、或いは、その両
者を組み合せて光路を切換えることが可能な光学素子を
意味する。また、「光偏向量」とは光路あるいは光軸を
平行シフトさせた場合あるいは回転させた場合の移動量
の大きさである。特に、平行シフトの光偏向動作に対し
てそのシフトの大きさを「光路シフト量」あるいは単に
「シフト量」と呼び、回転による光偏向動作に対してそ
の回転量を「光路回転角」あるいは単に「回転角」と呼
ぶものとする。「光偏向装置」とは、このような光偏向
素子を含み、入射した光路を平行シフトあるいは回転さ
せる装置一式を意味する。
【0047】また、「ピクセルシフト素子」とは、少な
くとも画像情報に従って光を制御可能な複数の画素を二
次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明
する光源と、画像表示素子に表示した画像パターンを観
察するための光学部材と、画像フィールドを時間的に分
割した複数のサブフィールド毎に画像表示素子と光学部
材の間の光路を偏向する光偏向手段とを有し、光偏向手
段によりサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位
置がずれている状態の画像パターンを表示させること
で、画像表示素子の見掛け上の画素数を増倍して表示す
る画像表示装置における光偏向手段を意味する。従っ
て、基本的には、上記定義による光偏向素子や光偏向デ
バイスを光偏向手段として応用することが可能といえ
る。
【0048】以下に本発明による光偏向素子、光偏向装
置及び画像表示装置の実施形態について、添付された図
面を参照して具体的に説明する。なお、実施形態を説明
するための全図において、同様の機能を有する部分には
同じ符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0049】図1は本発明による光偏向装置が有する光
偏向素子の一実施形態を説明するための図で、光偏向装
置の上面概略図を図1(A)に、正面概略図を図1
(B)に、側面概略図を図1(C)に示すものである。
図1において、1は光偏向素子、2,3は、透明な基
板、4は垂直配向膜、5は液晶層、6は電極対、6a,
6bは電極対を構成する電極、7は電源、iは入射光、
1、l2は出射光である。
【0050】光偏向素子1においては、まず、図1
(C)に示すように一対の透明な基板2,3が対向配置
させて設けられている。そして、少なくとも一方の基板
(ここでは基板2)の内面には垂直配向膜4が形成され
ており、この垂直配向膜4と他方の基板3との間にはキ
ラルスメクチックC相を形成可能な液晶層5が充填され
ている。
【0051】上記のような一対の基板2,3及び液晶層
5を有する構造体に対して、目的とする光偏向方向に対
応させて、図1(B)に示すように電極6a,6bによ
る一対の電極対6が配置され、電極間に電圧を印加する
電界印加手段である電源7に接続されている。両基板
2,3の間隔を規制する間隔規制手段であるスペーサを
別途設けても良いが、図1(A)に示すように、電極対
6をスペーサとして兼用し、光路と重ならない位置で当
該光偏向素子1の液晶回転軸に対して略垂直方向に電界
ベクトルが向くように設置する。光偏向による光の進行
方向を3方向以上に振りたい場合は、入射光の偏光方向
をその偏光方向に対応させて回転させるとともに、電極
対6をやはりそれらに対応させ複数設ければよい。入射
光iは、後述する動作原理に基づき、電極対6より形成
される電界の方向(図中白抜き矢印e1,e2)によって
偏向を受け、第1の出射光l1若しくは第2の出射光l2
の何れかの光路をとる。
【0052】次に、液晶層5の材料に関して説明する。
「スメクチック液晶」は液晶分子の長軸方向(液晶ダイ
レクタ方向)をほぼ揃えており、液晶分子は方向を揃え
たまま層状に配列してなる液晶相である。このような液
晶に関し、液晶分子の長軸方向が上記層の法線方向(層
法線方向)と一致している液晶相を「スメクチックA
相」と呼ぶ。また、液晶分子の長軸方向が層法線方向に
一致せずに傾斜している液晶相を「スメクチックC相」
と呼んでいる。この液晶ダイレクタの傾斜角度をチルト
角θと呼ぶ。各層内の液晶ダイレクタはチルト角θで同
一方向を向いている。液晶分子長軸に垂直な方向に永久
双極子成分を持つ場合、このチルト角θに起因して自発
分極Psが存在するため強誘電性が発現すると考えられ
ている。この自発分極Psと外部電界Eにより定まる方
向に液晶分子が再配列することで光学特性が制御され
る。
【0053】一般に強誘電性を発現する液晶材料は分子
構造中に不斉炭素を有しているため、外部電界Eが働か
ない状態において各層毎に液晶ダイレクタの方位角の方
向が螺旋的に回転しているいわゆる螺旋構造をとり、
「キラルスメクチックC相」と呼ばれる。また、キラル
スメクチックC相の反強誘電性液晶では各層毎に液晶ダ
イレクタの方位角が対向する方向を向く。
【0054】なお、本実施の形態等では、液晶層5とし
て強誘電性液晶を例にとり光偏向素子1の説明を行う
が、反強誘電性液晶の場合にも同様に使用することがで
きる。一般にキラルスメクチックC相を形成可能な液晶
材料の分子構造は、主鎖、スペーサ、骨格、結合部、キ
ラル部などよりなる。主鎖構造としてはポリアクリレー
ト、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオキシ
エチレンなどが利用可能である。スペーサは分子回転を
担う骨格、結合部、キラル部を主鎖と結合させるための
ものであり、適当な長さのメチレン鎖等が選ばれる。ま
た、カイラル部とビフェニル構造など剛直な骨格とを結
合する結合部には−COO−結合等が選ばれる。
【0055】本発明で用いる液晶材料は、室温程度かそ
れ以下の温度で結晶相からキラルスメクチックC相に転
移し、50℃から100℃程度の比較的高温域でキラル
スメクチックC相からスメクチックA相に転移するもの
が好ましい。更に温度を上げると、キラルネマチック相
を経て等方相となる。本発明に係わる光偏向素子の使用
可能な温度範囲を広く設定するためにはキラルスメクチ
ックC相の温度範囲が広いことが好ましいが、広すぎる
と等方相転移点なども高温化してしまい、素子内に液晶
層を注入する際の基板の処理温度が高くなり過ぎて好ま
しくない。光偏向素子の使用温度域を考慮するとキラル
スメクチックC相の上限温度は50℃から100℃の間
が好ましいと判断した。
【0056】無電界下のキラルスメクチックC相の液晶
層に対して、液晶の層法線方向から偏光顕微鏡によるコ
ノスコープ像を観察すると、十字像が中央部に位置して
おり、一軸性光学軸を有していることが確認できる。こ
こで図2に液晶分子の螺旋構造のモデルを示す。電界E
=0では図2(A)に示すように左右対称な螺旋構造に
よって液晶ダイレクタ方向は空間的に平均化される。液
晶層の平均化された光学軸は層法線方向を向いており、
この光学軸に平行な入射光に対しては光学的に等方的で
ある。
【0057】次に、液晶層の水平方向に比較的小さな電
界0<E<Esを印加すると、自発分極Psへの電界E
の作用で液晶分子に回転モーメントが生じるために図2
(B)のように螺旋構造が歪んで非対称となり、平均的
な光学軸が一方向に傾く。この時、電界強度の増加と共
に歪みが大きくなって平均的な光学軸の傾斜角も大きく
なる。これは、コノスコープ像の十字像の位置が移動す
ることから確認できる。さらに電界強度を増加させる
と、ある閾値電界Es以上で図2(C)のように螺旋構
造が消失して光学的に一軸性となる。この時の光学軸の
傾斜角は液晶ダイレクタのチルト角θと等しくなる。さ
らに電界を増加させてもチルト角θは変化せず、光学軸
の傾斜角も一定となる。
【0058】本実施の形態の光偏向素子1においては、
キラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶5は垂直
配向膜4により基板2,3面に垂直に分子螺旋回転の回
転軸が向いており、いわゆるホメオトロピック配向をな
す。このようなホメオトロピック配向のための配向法と
しては、従来より行われている方法を適用することがで
きる。即ち、(1)ずり応力法、(2)磁場配向法、
(3)温度勾配法、(4)SiO斜法蒸着法、(5)光
配向法等が挙げられる(例えば、竹添、福田「強誘電性
液晶の構造と物性」コロナ社、p235参照)。
【0059】本実施の形態の光偏向素子1の特徴の1つ
は、構成が簡単で製造コストが抑制できる点にある。ま
た、キラルスメクチックC相はスメクチックA相やネマ
チック液晶に比較して極めて高速な応答性を有してお
り、サブmsでのスイッチングが可能である点も特徴で
ある。特に、電界方向に対して液晶ダイレクタ方向が一
義的に決定されるため、スメクチックA相よりなる液晶
に比べダイレクタ方向の制御が容易であり、扱いやす
い。
【0060】また、本発明で用いるホメオロトピック配
向のキラルスメクチックC相よりなる液晶層5は、ホモ
ジニアス配向(液晶ダイレクタが基板面に平行に配向し
ている状態)をとる場合に比べて、液晶ダイレクタの動
作が基板2,3からの規制力を受けにくく、外部電界方
向の調整で光偏向方向の制御が行いやすく、必要電界が
比較的低いという利点を有する。また、液晶ダイレクタ
がホモジニアス配向している場合、電界方向だけでなく
基板面に液晶ダイレクタが強く依存するため、光偏向素
子の設置についてより位置精度が求められることにな
る。逆に、本実施の形態のようなホメオロトピック配向
の場合は、光偏向に対して光偏向素子1のセッティング
余裕度が増す。これらの特徴を活かす上で、厳密に螺旋
軸を基板面に垂直に向ける必要はなく、或る程度傾いて
いても差し支えない。液晶ダイレクタが基板2,3から
の規制力を受けずに2つの方向を向くことが可能であれ
ばよい。
【0061】次に、本実施の形態の光偏向素子1の動作
原理について図3及び図4を参照して説明する。図3
は、図1に示した構成に関して液晶分子の配向状態を模
式的に示した図で、図中、7は電源、Lは液晶ダイレク
タである。図3では便宜上紙面表裏方向に電圧印加され
るように描いており、電界は紙面表裏方向に発生するも
のとする。また、電界方向は目的とする光の偏向方向に
対応して電源7により切換えられる。また、当該光偏向
素子1に対する入射光は直線偏光であり、その偏光方向
は図3中上下の矢印に示す通り上下方向であって、その
偏光方向に電界方向が直交するようにスペーサ兼電極6
a,6bは対向配置される。また、図示しないが、電極
6a,6bからの漏洩電界が当該光偏向素子1周辺の機
器に悪影響を及ぼさないように電磁シールドを設けるの
が好ましい。
【0062】図4は、本発明に係わる光偏向素子の動作
原理を説明するための図で、光偏向素子の側面概略構成
を模式的示す図を図4(A)に、液晶分子の配向状態を
模式的に説明する図を図4(B)に示すものである。X
YZ直交座標系を図示する通りにとったとき、Y軸方向
に充分大きな電界が印加されている場合、液晶層5内の
XZ断面において液晶ダイレクタLは、図4に示すよう
にその電界方向によって第1の配向状態または第2の配
向状態の何れかの状態(図4(B)参照)をとって分布
する。
【0063】ここで、液晶ダイレクタLは、チルト角θ
による仮想的なコーン形状に沿って回転可能であると考
えられる。液晶の自発分極Psが正でありY軸正方向
(紙面上向き)に電界Eがかかっているものとすると、
液晶ダイレクタLの回転軸は略基板垂直方向であるため
XZ面内にある。液晶分子の長軸方向の屈折率をne、
短軸方向の屈折率をnoとすると、入射光として、偏光
方向をY軸方向に持つ直線偏光を選びX軸正方向に入射
光が進むとき、光は液晶層5内で常光として屈折率no
を受けて直進し、図4(A)に示すa方向に進む。即
ち、光偏向は受けない。
【0064】一方、偏光方向がZ軸方向である直線偏光
が入射するとき、入射方向の屈折率は液晶ダイレクタL
の方向及び屈折率no,neの両者から求められる。よ
り詳しくは、屈折率no,neを主軸に持つ屈折率楕円
体において楕円体中心を通過する光の方向との関係から
求められるが、ここでは詳細は省略する。光は屈折率n
o,ne及び平均的な液晶ダイレクタLの方向(平均化
したチルト角=光学軸の傾斜角度θ)に対応した偏向を
受け、図4(A)に示すb(第1の配向状態の場合)に
示す方向にシフトする。
【0065】以上は、電界強度がEs以上で螺旋構造が
解けてチルト角θが光学軸の傾斜角に等しい場合につい
て説明したが、電界強度がEs以下の場合には、液晶ダ
イレクタ方向を平均化した光学軸の傾斜角として上記θ
を扱えば良い。
【0066】次にチルト角θ(光軸傾斜角)と光路シフ
ト量の関係を説明する。液晶層5の厚み(ギャップ)を
dとするときシフト量Sは以下の式で表される(例え
ば、「結晶光学」応用物理学会、光学懇話会編、p19
8参照)。 S=[(1/no)2−(1/ne)2]sin(2θ・d) ÷[2((1/ne)2sin2θ+(1/no)2cos2θ)] (式1) また、電界方向を反転させた時、液晶ダイレクタLは図
4においてX軸を中心とした線対称の配置(第2の配向
状態)を取り、偏光方向がZ軸方向である直線偏光の進
行方向は図4(A)におけるb′に示す通りとなる。
【0067】従って、この直線偏光に対して液晶5に作
用させる電界方向を制御することで、bとb′との2位
置、即ち、図4に示す2S分の光偏向が可能となる。例
えば、式1でno=1.6、ne=1.8、d=32μm
として、θに対する光路シフト量Sの変化を計算した結
果を図5に示す。液晶ダイレクタLのチルト角θが2
2.5°の場合は、2S=5(μm)の偏向量が得られ
る。
【0068】本発明の光偏向素子では、数十μmから数
百μm程度の比較的薄い液晶層に対して、電極間の間隔
が数mmから数十mmと充分に広いため、電極間に均一
な電界を印加することは困難である。この様な構成で
は、液晶層中の水平方向の電界強度は、電極近傍では高
電界になり、素子中央部では低電界になる傾向があるこ
とが、差分法による電界シミュレーション結果などから
示唆されている。従って、光路シフト量に電界依存性が
ある場合、素子内の位置によって光路シフト量が異なっ
てしまうという問題が生じる。そこで、本発明では光偏
向時の液晶層内全域の電界強度がEs以上となるように
電界印加手段の出力を設定する。従って、液晶層の厚み
dと温度Tを一定に設定しておけば、上記のような電界
ムラが発生しても光路シフト量を一定に保つことができ
る(請求項1に対応)。すなわち、電界変化に対して偏
向量が一定となる飽和電界Es以上の電界を印加してい
るので、液晶層内に電界ムラが発生しても光路の偏向量
は場所によらず一定とすることができるる。
【0069】以上の説明は液晶層の温度が一定の条件で
あるが、液晶層の特性には温度依存性が存在する。キラ
ルスメクチックC相からスメクチックA層に転移する液
晶においては、チルト角θは温度Tにより変化し、相転
移点をTcとすると、 θ∝(T−Tc)β (式2) の関係がある。βは材料により異なるが0.3〜0.5程
度の値をとる。本発明の第二の実施の形態では、光偏向
時の液晶層内全域の電界強度がEs以上となるよう設定
し、素子全体での光学軸の傾斜角がθ(チルト角θと等
しい)で均一になるようする。この状態で光偏向素子の
液晶層の温度のみを制御することで、光学軸の傾斜角θ
を変化させて光路シフト量を制御することができる。
【0070】液晶5の温度制御としては、当該光偏向素
子1の温度をモニタし設定温度との差を低減するための
加熱源若しくは冷却源等を作動するようフィードバック
をかければよい。また、温度をモニタする変わりに光偏
向位置をモニタし正規位置との差を低減するように上記
加熱/冷却源を作動させるようにしてもよい。
【0071】図6は、本発明に係わる光偏向素子の温度
制御を行うための構成例を説明するための図で、図中、
2,3は基板、5は液晶層、6a、6bは電極、8は透
過窓、12は温度センサ、13は温度制御回路、14は
温度測定回路である。光偏向素子に対する加熱源として
は、図6に示すように光偏向素子1の外部に加熱ヒータ
11を接して設けてもよいが、小型化のためには後述す
る実施の形態の如く、光偏向素子1内部または表面に接
して抵抗線を形成し、これに電流を流すことで得られる
ジュール熱を利用するのが好ましい。また冷却源として
はペルチェ素子等が好適に用いられる。
【0072】図7及び図8は、光偏向素子の温度制御を
行うための他の構成例をそれぞれ説明するための図であ
る。図7及び図8に示す構成においては、光偏向素子1
の内部あるいは表面に加熱源となる電気抵抗材料15を
設けている。この電気抵抗材料15には駆動電流を制御
する温度制御手段16が接続されている。ここに、電気
抵抗材料15としては可視光域で透明で適当な電気抵抗
を有し、さらに耐熱性(室温〜80℃程度)に優れる材
料を用いることが好ましい。具体的には、ITOが用い
られており、図7に示す構成では、基板2と配向膜4と
の間に形成されている。あるいは、図8のようにポリエ
ステルフィルムの表面にITO膜を蒸着した透明導電性
フィルム17を用い、ITO面を光偏向素子側に接して
配置しても良い。
【0073】ここで、上記の電気抵抗材料15における
透明抵抗体の表面抵抗をRs(Ω/□)、電極6a、6
b間の距離をa(cm)、電極の長さをb(cm)とす
ると、上記透明抵抗体によるヒータの抵抗R(Ω)はR
=a/b×Rsになる。このヒータにE(V)の電圧を
印加するとE×E/Rの電力P(W)を消費する。回路
電流I(A)は、I=E/Rで求められる。ヒータの面
積はa×bであるのでP/(a×b)で得られる単位面
積当たりの消費電力Pd(W/cm2)は、温度や昇温
速度などのヒータの能力を表すパラメータになる。例え
ば、表面抵抗500Ω、電極間距離3cm、電極長さ4
cmのヒータの抵抗値は375Ωになる。これに30V
の電圧を印加すると全体で2.4W、単位面積当たり0.
2W/cm2の電力を消費し、ヒータの表面は一分間に
20〜25℃昇温する。
【0074】温度制御手段16により、サーミスタ等の
温度センサ(図示せず)により当該光偏向素子1の温度
をモニタして設定温度との差を低減するようにITO
(電気抵抗材料15)への駆動電流を流すことでジュー
ル熱発生によって温度制御がなされる。設定温度は当該
光偏向素子1の周囲の環境温度以上で、かつ、所望のチ
ルト角θが得られる温度が望ましい(請求項2,21に
対応)。すなわち、電界変化に対して光偏向量が一定と
なる飽和電界Es以上の電界を印加しているので、液晶
層内に電界ムラが発生しても光偏光量は一定となる。さ
らに光偏向素子の温度を制御することで、素子の温度変
化による光偏向量の変化を防止することが出来る。
【0075】次に、本発明の第3の形態によるチルト角
θの制御範囲について説明する。図5に示すように一軸
性複屈折板による光シフト量Sは計算上では光学軸のチ
ルト角が0度から約48度までは単調に増加するが、約
48度以上では減少し始める。この単調増加の範囲内で
動作するように素子構成を設定することで、光シフト量
Sを確実に制御できる(請求項3に対応)。すなわち、
チルト角θの増加(減少)に対して光偏向量は単調増加
(減少)特性のみを示す領域で制御すると、温度上昇に
対してチルト角θは単調減少するので、温度上昇に対し
て光偏向量は単調減少する。従って温度による光偏向量
の制御性を向上させることができる。
【0076】さらに、チルト角の限界については、スメ
クチックC相の分子論において、プリーストの平均場近
似により得られた結論(J. Chem. Phys.,
65, p.408 (1976))では、チルト角の
最大値は49.1度とされている。したがって、図5に
おけるチルト角が0度から約50度の範囲がキラルスメ
クチック液晶を用いた光偏向素子の実現可能な動作範囲
である。ここで、仮にチルト角θが40度よりも大きく
なるキラルスメクチック液晶材料を用いた場合、チルト
角θが40度から約50度付近を含んだ範囲で変化させ
ても、光路シフト量の変化率が小さくなる範囲が現れ、
光シフト量の制御性が低下してしまう。
【0077】そこで、本発明ではキラルスメクチックC
層を形成する液晶層の液晶ダイレクタのチルト角θが、
液晶層の温度変化に対して0度以上40度以下の範囲内
で変化するように液晶材料及び温度制御範囲を設定する
ことが好ましい。さらに好ましくは、チルト角変化に対
する光シフト量の変化率が比較的大きな0度以上30度
以下の範囲内で制御させる。この範囲内ではチルト角θ
の減少(増加)に対して光路シフト量は比較的大きな減
少(増加)特性を示す。温度変化に対してチルト角θが
変化するので、温度による光路シフト量の制御性が向上
する(請求項4に対応)。
【0078】次に、本発明の第4の形態による光偏向素
子の温度制御範囲について説明する。前述の(式2)か
ら、比較的低温領域では温度上昇に対して緩やかにチル
ト角θが減少し、相転移点Tc近傍では温度上昇に対し
て急激にチルト角θが減少する。特に、Tcから(Tc
−α)℃(但しα>0)の範囲では1℃の変化でチルト
角θが数度以上変化してしまうため、実用的な温度制御
手段の精度から考えて使用困難である。実際の温度制御
が可能な範囲を考慮すると、液晶層がキラルスメクチッ
クC相を示す温度で、かつ、(Tc−5)℃以下の範囲
内となるように光偏向素子の温度を制御することがより
好ましい。従って温度変化に対する光路シフト量の変化
量が比較的小さくなるので、温度制御による光路シフト
量の制御性が向上する。従って性格な偏向量の制御が可
能になる(請求項5、6に対応)。
【0079】次に、光偏向素子の応答時間の温度依存性
について説明する。温度が上昇するとチルト角θが小さ
くなり、コーン内の回転粘度ηrは以下の(式3)によ
り小さくなる。 ηr0sin2θ [η0:ネマチック相の粘度に相当する値] (式3)
【0080】一方、チルト角θと自発分極Psは比例す
るので、温度上昇に伴い外部電場による駆動力PsEは
小さくなる。応答時間の温度依存性は主にチルト角θの
変化に基づく回転粘度の変化と駆動力の変化の競合関係
で決まると考えられる。一般的には上昇とともに応答時
間は短くなる傾向があるため、光偏向素子を比較的高温
域である(Tc−β)℃以上(但し、β>α>0)の範
囲で温度制御して用いることが好ましい。上記Tcが7
0℃〜80℃程度である一般的なキラルスメクチックC
相を形成可能な液晶材料の場合、40℃〜50℃以上の
温度領域で使用することが好ましい。
【0081】そこで、本発明の第5の形態では、光偏向
素子の温度制御範囲として、(Tc−40)℃以上の温
度に制御する。より好ましくは(Tc−30)℃以上で
ある。ここで、上記Tcの絶対値自体が異なる液晶材料
系を用いた場合でも、応答時間の短縮に効果のある温度
領域との温度差はほぼ同様であると考えられる。温度制
御範囲の上限値は前述の光路シフト量の制御性で決まる
ので、液晶層の温度が(Tc−40)℃以上かつ(Tc−
5)℃以下の範囲内となるように光偏向素子の温度を制
御する。すなわち、転移温度Tcよりもある程度低い温
度領域で動作させることによって、温度変化に対して光
路シフト量の変化量が比較的小さくなるので、温度制御
による光路シフト量の制御性が向上する。更に、キラル
スメクチックC相を示す温度範囲内の比較的高温領域で
動作させることによって、正確な偏向量の制御を可能に
し、かつ応答速度を向上させることができる(請求項
7、8に対応)。
【0082】次に、光偏向速度の温度依存性について考
える。一般的には上述したように温度上昇と共に応答時
間は短くなるが、光路シフト量自体も小さくなるため、
単位時間当たりの光路シフト量すなわち偏向速度が大き
くなるとは限らない。そこで、飽和電界Es以上での偏
向量を飽和偏向量Ls、光路が飽和偏向量Lsの距離を
移動する応答時間をRとして、光偏向素子の温度Tに対
する飽和偏向量の変化を関数Ls(T)とし、光偏向素
子の温度Tに対する応答時間の変化を関数R(T)とし
た時、単位時間当たりの偏向量の関数[Ls(T)/R
(T)]を考える。この関数は例えば図9のようにな
る。図9の横軸は転移温度Tcに対する温度差(Tc−
T)、縦軸は単位時間当たりの偏向量(偏向速度)を表
す。温度差(Tc−T)の増加とともに偏向速度は急激
に増加した後、減少傾向に転じることが分かった。
【0083】図9の偏向速度の数値自体は用いる液晶材
料の種類や電界印加条件により大きく異なるが、偏向速
度に最大値を持つ傾向は普遍的であると考えられる。そ
こで、本発明の第6の形態では、単位時間当たりの偏向
量の関数[Ls(T)/R(T)]が最大となる温度T
mを前記温度制御手段による目標温度として設定し、こ
の温度Tmにおいて所望の飽和偏向量Lsとなるように
前記スペーサの厚さを設定することで、正確で効率の良
い光偏向装置を実現することができる(請求項9に対
応)。
【0084】図10は、本発明の第7の形態である光路
シフト量の検出による温度制御へのフィードバックにつ
いて説明するための図で、図中、15は電気抵抗材料、
16は温度制御回路、20は偏向量検出手段、21は比
較回路、22は制御回路、23は移動機構である。光偏
向素子を温度制御する場合、電源OFF時と光偏向動作
時の温度差によるヒートストレスなどによって液晶材料
の特性が経時的に変化し、初期と経時で光路シフト量が
変化してしまう可能性がある。そこで本発明では、図1
0のように光偏向素子の外部に光路シフト量を検出する
偏向量検出手段20を設ける。さらに温度制御回路16
による偏向量の目標値と偏向量検出手段20の検出値と
を比較する比較回路21を設け、比較回路21の結果に
応じて、制御回路22によって温度制御回路16による
制御目標値を変更する。
【0085】偏向量検出手段20としては微小な受光素
子をアレイ状に密に配列したものを用い、光偏向素子か
らの出射光線の受光位置の変化を検出する。上記受光素
子としてはCCDやフォトダイオードアレイなどを用い
ることができる。一つの受光素子のサイズは数μmから
数十μm程度であり、所望の光路シフト量よりも小さく
する。また、レンズなどを用いて偏向量を拡大しても良
い。
【0086】光偏向素子からの出射光路中に常に偏向量
検出手段20を配置すると、利用可能な出射光路が減少
するか遮光してしまう。そのため偏向量検出手段20を
出射光路中に出し入れする移動機構23を設けることが
好ましい。移動機構23としては、ソレノイドによる往
復機構、回転モータによる回転機構、回転機構を往復運
動に変換するリンク機構などを用いることができる。
【0087】図11は、偏向量を検出して温度制御を行
うための他の好ましい構成例を示す図で、出射光路を屈
曲させる機構を設けて、固定した偏向量検出手段20へ
の入射を切換えるようにしたものである。出射光路の屈
曲機構としては平面鏡や偏光ビームスプリッタなどを用
いることができる。特に、本発明では出射光が直線偏光
であるため、図11に示すようにツイストネマチック液
晶セルのように電気的に偏光面を90度回転させる素子
24と偏光ビームスプリッタ25を組み合わせれば、電
気的に出射光路を屈曲させることができる。偏光面を9
0度回転させる素子24としては、図12のようなツイ
ストネマチック液晶セルを用いることができる。図12
において、30はツイストネマチック液晶セル、31、
32は基板、33は液晶を所定の配向処理方向に配向さ
せるための配向膜、34はツイストネマチック液晶であ
る。図11に示す構成例では、機械的な可動部が無いの
で装置の小型化や静音化などに有利である。
【0088】上記のような構成により、所望のタイミン
グで出射光路を偏向量検出手段20上に導き、実際に偏
向動作を行わせてその偏向量を検出する。比較回路21
や制御回路22には従来の演算装置を用いることができ
るので詳細説明は省略するが、予め記憶されている目標
偏向量と偏向量検出手段20による検出結果を比較回路
21で比較して、温度制御回路16の制御目標を変更す
ることによって、長期的な経時劣化や環境変動により偏
向特性が変化した場合でも、実際の光路シフト量を検出
して制御系にフィードバックすることで、正確な光偏向
動作を行うことができる(請求項10に対応)。
【0089】図13は、本発明の光偏向素子の更に他の
構成例を示す図で、光偏向素子の入射側に偏向方向制御
手段26を設けた例を示すものである。上記の第一から
第七の実施の形態では、電界印加時の液晶分子の傾斜方
向に平行な偏光方向の直線偏光のみが光路の偏向を受
け、これに直交した直線偏光は直進したままである。従
って無偏光の光を入射した場合、出射光には偏向を受け
ない成分を含むため、光路偏向の有無に対するコントラ
ストが低下してしまう。そこで、本発明の第八の形態で
は、光偏向素子への入射光の偏光方向を液晶層の平均的
な光軸の傾斜方向と一致させる偏光方向制御手段26を
設ける。
【0090】偏光方向制御手段26としては、直線偏光
板を用いることができる。図13に示すように、直線偏
光板の偏光方向をスペーサ兼用の電極6a、6bの長手
方向に平行に合わせて、素子の入射面側に設置する。本
実施形態の構成によれば、入射光が無偏光の場合でも、
液晶分子の傾斜による光路偏向作用を受けない光成分を
カットするので、偏向されない光の発生を防止し、確実
に光路偏向による光スイッチングを行うことができる。
すなわち偏向動作におけるコントラストを向上させるこ
とができる(請求項11に対応)。
【0091】本発明の第九の形態を図14に基づいて説
明する。本実施の形態は、前述した実施の形態のように
構成された2つの光偏向素子1a,1bと1/2波長板
9とを組み合わせて構成された光偏向素子に関する。図
14においては、スペーサや透明電極ライン、配向膜な
どは図示を省略してある。光偏向素子1a,1bは、各
々の電極対6a、6bによる電界発生方向を直交させて
光進行方向に直列に配列されており、これらの光偏向素
子1a,1b間に1/2波長板9が配設されている。
【0092】1/2波長板9は、通常市販されている可
視光用のものをそのまま適用することができる。また、
図12のようなツイストネマチック液晶セルを用いるこ
ともできる。この光偏向素子に入射する光は図12に示
す通り、Z軸方向に偏光方向を有しており、光進行方向
に対して前段側の光偏向素子1aにおいて上下方向(Z
軸方向)に偏向を受けた後、1/2波長板9によって偏
光方向を90°回転させてY軸方向の偏光方向とするこ
とで、後段の光偏向素子1bで左右方向(Y軸方向)の
偏向を受ける。
【0093】このような光偏向素子9によれば、光偏向
素子1aにおいて上下方向(Z軸方向)に2位置、光偏
向素子1bにおいて左右方向(Y軸方向)に2位置の光
シフトが行われるため、素子全体としては合計4位置に
光をシフトさせることが可能となる。すなわち、一方向
への偏向が可能な光偏向素子を二枚組み合わせ、両者の
電界印加方向を90度回転させて配置し、入射側の光偏
向素子から出射した光の偏光面を90度回転させて、第
二の光偏向素子に入射させることで、確実に二次元方向
への光偏向が可能となる(請求項12に対応)。
【0094】本発明の第十の形態を図15に基づいて説
明する。本実施の形態は、画像表示装置への適用例を示
す。図15において、41はLEDランプを2次元アレ
イ状に配列した光源であり、この光源41からスクリー
ン46に向けて発せられる光の進行方向には拡散板4
2、コンデンサレンズ43、画像表示素子としての透過
型液晶パネル44、画像パターンを観察するための光学
部材としての投射レンズ45が順に配設されている。4
7は光源41に対する光源ドライブ部、48は透過型液
晶パネル44に対するドライブ部である。
【0095】ここに、透過型液晶パネル44と投射レン
ズ45との間の光路上にはピクセルシフト素子として機
能する光偏向装置49が介在されており、ドライブ部5
0に接続されている。このような光偏向装置49とし
て、前述したような光偏向素子1が用いられている。
【0096】光源ドライブ部47で制御されて光源41
から放出された照明光は、拡散板42により均一化され
た照明光となり、コンデンサレンズ43により液晶ドラ
イブ部48で照明光源と同期して制御されて透過型液晶
パネル44をクリティカル照明する。この透過型液晶パ
ネル44で空間光変調された照明光は、画像光として光
偏向装置49に入射し、この光偏向装置49によって画
像光が画素の配列方向に任意の距離だけシフトされる。
【0097】この場合、光偏向素子の有効面積が比較的
大きい必要があるため、加熱ヒータなどによる素子温度
の均一制御が重要となる。比較的大面積で均一温度制御
を行うためには、前述したごとくのITO透明抵抗体に
よる面状加熱ヒータを用いることが好ましく、均一温度
制御と光利用効率の向上が達成できる。光偏向装置49
を透過した光は投射レンズ45で拡大されスクリーン4
6上に投射される。
【0098】ここに、光偏向装置49により画像フィー
ルドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎の光路
の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パター
ンを表示させることで、透過型液晶パネル44の見掛け
上の画素数を増倍して表示する。このように光偏向装置
49によるシフト量は透過型液晶パネル44の画素の配
列方向に対して2倍の画像増倍を行うことから、画素ピ
ッチの1/2に設定される。シフト量に応じて透過型液
晶パネル44を駆動する画像信号をシフト量分だけ補正
することで、見掛け上高精細な画像を表示することがで
きる。この際、光偏向装置49として、前述した各実施
の形態のような光偏向素子を用いているので、光の利用
効率を向上させ、光源の負荷を増加することなく観察者
により明るく高品質の画像を提供できる。光偏向位置制
御を、当該光偏向素子1における電極対6による電界印
加方向及び電界強度により行うことで、適切なピクセル
シフト量が保持され良好な画像を得ることができる。す
なわち、自発分極を発現するキラルスメクチックC相液
晶層の平均的な光学軸の傾斜方向の切換えを利用した光
偏向装置を用いているので、サブフィールド画像に対応
して、高速な光路の偏向が可能になり、見かけ上高精細
な画像表示が可能となる。また、高速応答性によりサブ
フィールド画像の切換え時間が短くできるので、時間的
な光利用効率を向上させることができる(請求項13に
対応)。
【0099】次に、電圧印加手段について図16〜図1
9を用いて説明する。光偏向素子の一対の電極、あるい
は、光偏向素子が少なくとも2つ以上の電極を有する場
合には光偏向素子の有効領域の最も外側に位置する一対
の電極を電極A及び電極Bとする。図16は、図14で
説明したXY二方向への光偏向素子をモデル的に示し、
偏光面回転手段は省略してある。第二の光偏向素子の一
対の電極を電極C及び電極Dとする。光路の偏向位置を
短時間で切換えるためには、電界方向の切換えも短時間
に切換える必要があり、電圧印加手段は矩形波状の交流
電圧を印加可能であることが好ましい。矩形波状の交流
電圧はパルスジェネレータの±数ボルト程度の矩形波信
号を高速パワーアンプで百倍から千倍に増幅することで
得られる。最終的な高電圧の切換え時間は数百マイクロ
秒以下とすることが好ましい。
【0100】光偏向素子への一般的な電圧印加方法とし
ては、例えば図17のように電極Aおよび電極Dを接地
端子に接続し、他方の電極Bおよび電極Cに高電圧端子
を接続する。ここで、電極Bに±aV、電極Cに±bV
を印加すると、電極Bと電極Cの間には最大で(a+
b)V、最小で(a−b)Vの電位差が生じる。電極B
と電極Cの間には基板や偏光面回転手段を挟んで数ミリ
程度の間隔があるが、印加電圧値が数キロボルトと大き
い場合には、素子厚み方向に発生する電界強度は無視で
きなくなり、光偏向量が部分的に減少するなどの悪影響
を与える。また、高圧印加側の電極はプラス極性からマ
イナス極性へと切換わるため、その電極近傍における電
位の変化量は非常に大きく、光偏向素子の外部への電磁
ノイズの原因となるため好ましくない。
【0101】そこで、本発明では、光偏向素子の一対の
電極を第一及び第二の電極としたとき、第一の電極が接
地あるいは低電圧で第二の電極が高電圧の状態と、第一
の電極が高電圧で第二の電極が接地あるいは低電圧の状
態とを切換えることを特徴とする。例えば、図16のよ
うに、電圧印加手段は直流電源と出力切換回路とから成
る。出力切換回路は、直流電源の出力端子と接続する入
力端子と、二つの出力端子を有しており、一方の端子が
高電圧の時は他方の端子が接地あるいは低電圧で、一方
の端子が接地あるいは低電圧の時は他方の端子が高電圧
となるように切換え可能な回路ならば全て用いることが
できる。
【0102】図17に示すように二組の光偏向素子を考
えた場合、二組の素子間での電極間の電位差は、最大で
aVあるいはbV、最小でゼロVあるいは(a−b)V
となり、図16の場合に比べて明らかに電位差が小さく
なる。従って素子の厚み方向への電界により光偏向量が
部分的に減少するなどの悪影響を低減することができ
る。また、電極近傍における電位の変化量も比較的小さ
いため、光偏向素子の外部への電磁ノイズを低減するこ
とができる。すなわち両電極の接地状態と高圧印加状態
を交互に切換えることで、両電極近傍での電位変化量が
略等しく、電位の変化量の最大値が小さくでき、従って
素子外部への漏れ電界を減少させ、光偏向装置および画
像表示装置への電気的ノイズの影響を減少させることが
できる(請求項14、15に対応)。
【0103】次に出力切換回路について説明する。出力
切換回路は、4つのスイッチを用いて図18に示すよう
に構成されている。第一のスイッチ(SW1)と第二の
スイッチ(SW2)を直列に接続し、第三のスイッチ
(SW3)と第四のスイッチ(SW4)を直列に接続
し、この二組の直列スイッチを並列に接続し、第一のス
イッチ(SW1)と第三のスイッチ(SW3)の一端を
入力端子として直流電源の出力端子に接続している。ま
た、第二のスイッチ(SW2)と第四のスイッチ(SW
4)の一端を接地端子(GND)に接続している。そし
て第一のスイッチ(SW1)と第二のスイッチ(SW
2)の間から出力端子1を取出し、第三のスイッチ(S
W3)と第四のスイッチ(SW4)の間から出力端子2
を取出す。
【0104】図18(A)のようにSW1とSW4を閉
じて、SW2とSW3を開いた状態では、端子1に高電
圧が印加され、端子2が接地される。図18(B)のよ
うにSW1とSW4を開いて、SW2とSW3を閉じた
状態では、端子1が接地され、端子2に高電圧が印加さ
れる。この二つの状態を切換えることで、図18の電圧
印加手段が簡単な構成で実現できる(請求項16,17
に対応)。
【0105】ここで、上記スイッチとしては電子的に切
換えが可能なソリッドステートリレーやトランジスタな
どを用いることが出来るが、特に高速応答性を有する電
界効果型トランジスタが好ましい。また、比較的高電圧
のスイッチングを行うため、入力側と出力側が電気的に
絶縁されたフォトカプラを用いることがノイズ対策の面
などで更に好ましい。図19は、フォトカプラ(PC)
を用いた出力切換回路の構成例を示す回路図である。
【0106】フォトカプラは回路間の電気的絶縁とノイ
ズ除去のために使用される部品で、部品内で発光素子と
受光素子を対向させ、電気信号をいったん光信号に変換
し、再度電気信号に再生する。発光素子としてはLED
が用いられ、受光素子としては信号の速度に応じてフォ
トトランジスタ、フォトダイオードとトランジスタが用
いられる。入力側と出力側との間の絶縁抵抗は1010Ω
前後、伝達の浮遊容量は1pF程度と小さい。出力側の
誘導負荷などで発生するノイズが入力側にフィードバッ
クされない。マイクロ秒の速さでのスイッチが可能、な
どの利点がある。
【0107】なお、図19において各フォトカプラ(P
C)の駆動回路は省略してあるが、PC1とPC4、P
C2とPC3が連動して動作するような回路により構成
されている。約5V程度の入力信号でPCを駆動し、数
kVの高電圧のスイッチングが可能となる。図16では
各SWにつき一個のPCを使用しているが、フォトトラ
ンジスタ部の耐圧性能が不充分な場合には、複数のPC
を直列に接続して一つのSWとして機能させることが好
ましい。すなわち、4つのスイッチにフォトカプラを用
いているので、5V程度の入力信号で数kVの高電圧の
スイッチングが可能となり、また、マイクロ秒以下の高
速な電圧の切換えを可能とすることができる(請求項1
8,19に対応)。
【0108】(実施例1)大きさ3cm×4cm、厚さ
1.1mmのガラス基板の表面をシランカップリング剤
(東レ・ダウコーニング・シリコーン製AY43−02
1)で処理して垂直配向膜を形成した。厚さ40μmま
たは100μm、幅1mm、長さ3cmの二本のアルミ
電極シートをスペーサとして、垂直配向膜を内面にして
二枚のガラス基板を張り合わせた。2本のアルミ電極シ
ートは平行で、その間隔は1mmとした。基板を約90
度に加熱した状態で、二枚の基板間に強誘電性液晶(チ
ッソ製CS1029)を毛管法にて注入した。冷却後、
接着剤で封止し、図1に類似の光偏向素子を作成した。
【0109】上記の光偏向素子の入射面側に24.5μ
m幅のライン/スペースのマスクパターンを設け、この
マスクパターン側からコリメートした直線偏光で照明し
た。直線偏光の向きは、アルミ電極シートの長手方向と
同一に設定した。素子の温度か25℃の状態で、マスク
パターンを透過した光を光路偏向素子の2本のアルミ電
極シートの間を通して顕微鏡で観察した。パルスジェネ
レータと高速パワーアンプを用いて、電極間に±200
V程度までの矩形電圧を印加したところ、マスクパター
ンが平行にシフトして観測された。マスクパターンや光
偏向素子、顕微鏡は機械的に静止しているので、電気的
に光路シフトすることが確認出来た。この時の印加電圧
に対する光路シフト量の変化を図20に示す。電圧の増
加と共に光路シフト量が増加し、100Vから125V
以上で光路シフト量が飽和した。すなわち、電界強度と
しては100V/mmから125V/mm以上で光路シ
フト量が飽和した。また、光路シフト量は液晶層の厚さ
に比例していることが確認できた。
【0110】次に、電極間隔を2mm幅にして同様な実
験を行ったところ素子中央部での光路シフト量は電圧3
00V、電界150V/mm以上で飽和した。前述の1
mm幅の素子に比べて必要な電界が大きくなっている
が、これは電極間隔の増大によって素子内の電界分布が
不均一になり、中央付近では実効的な電界強度が計算値
である150V/mmよりも小さいためと考えられる。
この時、素子の端部付近でも光路シフト量は一定であっ
た。この結果から、電界変化に対して偏向量が一定とな
る飽和電界Es以上の充分大きな電界を印加すること
で、液晶層内に電界ムラが発生しても光路の偏向量は場
所によらず一定となることが確認できた(請求項1,2
0に対応)。
【0111】(実施例2)実施例1の電極間1mm、液
晶層100μmの光偏向素子に図6に示すごとくの温度
制御装置を取り付けた。ここで用いた強誘電性液晶(チ
ッソ製CS1029)は、−18℃から70℃の範囲で
キラルスメクチックC相を示す。この液晶のチルト角θ
は25℃において25度であり、温度上昇と共に減少
し、70℃で0度になる。
【0112】光偏向素子の温度制御装置は加熱ヒータと
温度制御回路、温度センサと温度測定回路からなる。温
度制御装置としてLINKAM社製液晶セル加熱装置T
H600と安立計器製デジタル温度計を改造して使用し
た。加熱ヒータ中央部には透過窓があるため光路を遮る
ことは無い。この例では加熱ヒータが光偏向素子の一方
の面に接しているため光偏向素子の表面と裏面で温度差
が生じるので、温度センサを素子の両面に配置し、両者
の平均値を光偏向素子の温度として検出するように設定
した。
【0113】図21に種々の素子温度における光路シフ
ト量の電界依存性の比較を示す。温度の上昇と共に光路
シフト量が一定となる閾値電界Esが小さくなり、飽和
シフト量も小さくなる。例えば、この光偏向素子を55
℃の一定温度で制御すると125V/mm以上の電界範
囲において、光シフト量は20.5μmで一定に制御で
きる。この時のチルト角θは偏光顕微鏡コノスコープ観
察より25度と見積もられる。この光偏向素子を50℃
の一定温度で制御すると100V/mm以上の電界範囲
において、光シフト量は18.5μmで一定に制御でき
る。この時のチルト角θは22度と見積もられる。さら
に、光偏向素子を65℃の一定温度で制御すると25V
/mm以上の幅広い電界範囲において、光シフト量は
5.1μmで一定に制御できる。この時のチルト角θは
偏光顕微鏡コノスコープ観察より6度と見積もられる。
このようにチルト角θの制御範囲が25度から5度の範
囲内となるように素子温度を制御することによって、広
い電界範囲において光路シフト量を制御することができ
た(請求項2、3、4、21に対応)。
【0114】(実施例3)実施例2と同様にして測定し
た飽和シフト量の温度依存性の一例を図22に示す。図
中には液晶層が100μmの素子と40μmの素子の結
果を示した。キラルスメクチックC相からスメクチック
A相転移する温度Tc=70℃以上ではシフト量はゼロ
であり、65℃より大きな温度では飽和シフト量が0.
5μmから2μm程度変動して不安定であったが、65
℃以下では安定して飽和シフト量を測定することができ
た。つまり、(Tc−5)℃以下の範囲内となるように
温度を制御することで、安定したシフト量が得られた
(請求項5、6に対応)。
【0115】(実施例4)実施例1と同様にして作成し
た液晶厚さ40μmの光偏向素子の応答時間を測定し
た。なお、応答時間の測定は、直線偏光板のクロスニコ
ル中に素子の電極方向を45度回転させ、かつ、素子を
光路に対して10度〜20度程度傾斜させた状態で、透
過光量の時間変化を測定して求めた。測定結果を図23
に示す。温度の上昇と共に応答時間は減少していく傾向
がある。特に30℃以下では応答時間が長いが、30℃
以下では0.4msec以下の応答時間が得られた。
【0116】また、前述の図22においても光偏向素子
の温度が25℃と30℃では飽和シフト量は一定であ
り、この温度範囲内では温度による制御ができなかっ
た。応答時間の短縮とシフト量の変化の二点から30℃
以上すなわち(Tc−40)℃以上が好ましいと判断し
た。前述の発明の範囲と合わせて、(Tc−40)℃以
上かつ(Tc−5)℃以下の範囲内では設定温度により
飽和シフト量を確実に制御でき、かつ、比較的応答時間
を短くすることができた(請求項7、8に対応)。
【0117】(実施例5)実施例1と同様な液晶厚さ1
00μmのセルについて、図22の光偏向素子の温度T
に対する飽和偏向量の変化を関数Ls(T)とし、図2
3の光偏向素子の温度Tに対する応答時間の変化を関数
R(T)とした時、単位時間当たりの偏向量の特性[L
s(T)/R(T)]を図9に示した(ここでは、図2
3の応答時間は飽和電界強度よりも小さな電界での測定
結果であるため、厳密には請求項6の条件では無いが、
特性の傾向は同様あると考えられる)。この特性が最大
となる温度Tm=55℃を温度制御回路による目標温度
として設定した。
【0118】次に、この結果を基に、厚さを55μmの
スペーサ兼用のアルミ電極シートを2mm間隔で設定
し、他の条件は実施例1と同様にして新たな光偏向素子
を作成した。実施例2と同様な温度制御装置を用いて光
偏向素子が常に55℃となるように設定した。電極間2
mmに±300Vの矩形波電圧を印加したところ、応答
速度が0.2msec以下と速く、光路シフト量が9μ
mで初期的には安定した光偏向装置が得られた(請求項
9に対応)。
【0119】(実施例6)図15に示すような画像表示
装置を作成した。画像表示素子として対角0.9インチ
XGA(1024×768ドット)のポリシリコンTF
T液晶ライトバルブを用いた。画素ピッチは縦横ともに
約18μmである。画素の開口率は約50%である。ま
た、画像表示素子の光源側にマイクロレンズアレイを設
けて照明光の集光率を高める構成とした。本実施例で
は、光源としてRGB三色のLED光源を用い、上記の
一枚の液晶パネルに照射する光の色を高速に切換えてカ
ラー表示を行う、いわゆるフィールドシーケンシャル方
式を採用している。本実施例では、画像表示のフレーム
周波数が60Hz、ピクセルシフトによる4倍の画素増
倍のためのサブフィールド周波数が4倍の240Hzと
する。一つのサブフレーム内をさらに3色分に分割する
ため、各色に対応した画像を720Hzで切換える。液
晶パネルの各色の画像の表示タイミングに合わせて、対
応した色のLED光源をON/OFFすることで、観察
者にはフルカラー画像が見える。
【0120】本実施例は光偏向素子の基本構成は実施例
5と同様であるが、アルミ電極の間隔を18mmとし
た。また、加熱ヒータとして透明フィルムヒータ(帝人
製T−COATタイプF)を用いた。透明ヒータ面を光
偏向素子基板に密着させて配置した。光偏向素子のガラ
ス基板の大きさと透明ヒータの大きさは3cm×4cm
とした。透明ヒータの表面抵抗値は500Ω/□であ
り、30Vの電圧を印加したところ、ヒータの表面は一
分間に25℃昇温した。
【0121】上記のヒータ付きの素子を二組用い、入射
側を第一の光偏向素子、出射側を第二の光偏向素子とし
た。互いの透明電極ラインの方向が直交し、画像表示素
子の画素の配列方向に一致するように配置した。本実施
例では液晶ライトバルブからの出射光が既に直線偏光で
あり、その偏光方向が第一の光路偏向素子の光路偏向方
向と一致するように配置されているが、光路偏向素子へ
の入射光の偏光度を確実にするために、光路偏向素子の
入射面側に偏光方向制御手段として直線偏光板を設け
た。従って第一の光偏向素子で偏向されずに直進してし
まうノイズ光の発生が防止できた(請求項11に対
応)。
【0122】さらに、第一及び第二の光路偏向素子の間
に偏光面回転素子を設けた。偏光面回転素子は、図12
に示すように薄いガラス基板(3cm×4cm、厚さ
0.15mm)上にポリイミド系の配向材料をスピンコ
ートし、約0.1μmの配向膜を形成した。ガラス基板
のアニール処理後、ラビング処理を行った。二枚のガラ
ス基板の間の周辺部に8μm厚のスペーサを挟み、ラビ
ング方向が直交するように上下基板を張り合わせて空セ
ルを作製した。このセルの中に、誘電率異方性が正のネ
マチック液晶にカイラル材を適量混合した材料を常圧下
で注入し、液晶分子の配向が90度捻じれたTN液晶セ
ルを作成した。このセルには電極を設けていないため、
単なる偏光回転素子として機能する。第一の光路偏向素
子から出射した光の偏光面と偏光回転素子の入射面のラ
ビング方向が一致するように、二つの光路偏向手段の間
に挟んで配置した。偏光面回転素子により第一の光路偏
向素子からの出射光の偏光面が90度回転し、第二の光
路偏向素子の偏向方向に一致する。第一の光偏向素子、
偏光面回転素子、第二の光偏向素子からなる光偏向装置
を液晶ライトバルブの直後に設置した(請求項12に対
応)。
【0123】光偏向素子の温度を55度に設定し、図1
7および図19の電圧印加手段及び出力切換手段を用い
て、光偏向素子を駆動する矩形波電圧の電圧を±5kV
(平均電界は±280V/mm)、周波数を120Hz
とし、二枚の縦と横の位相を90度ずらして、4方向に
画素シフトするように駆動タイミングを設定した。図1
9のようにフォトカプラを用いた回路により電圧切換時
間は20μsecと充分に短時間であった。
【0124】最終的な画像表示素子に表示するサブフィ
ールド画像を240Hzで書き換えることで、縦横二方
向に見かけ上の画素数が4倍に増倍した高精細画像が表
示できた。光路偏向素子の切換え時間は約0.2mse
cであり、充分な光利用効率が得られた。また、フリッ
カーなどは観測されなかった。さらに、表示領域の全域
に渡って均一な画素ピッチで増倍動作を行うことができ
た(請求項13ないし19に対応)。
【0125】(実施例7)実施例6の画像表示素子のリ
アプロジェクションスクリーンの周辺部に投射光路の端
部にCCD面が挿入可能な機構を設けた。通常の画像表
示状態ではCCDは光路上から待避位置に配置している
が、使用時間の累積が1000時間毎に光路シフト量調
整モードを実行する場合には、ソレノイドにより投射光
路中の端部に挿入される。それと同時に投射レンズのピ
ントを微調整し、投射画像がCCD面上に結像するよう
に設定する。この状態で予めテストパターンとして記憶
されているドット画像を投影し、CCD面上でのシフト
量を測定した。CCDの画素サイズは9μm角で、CC
D面上の1ドットのサイズは約125μm角であり、充
分な精度でシフト量を算出できた。CCD面上でのシフ
ト量が狙いの設定値である125μmとなるように、設
定温度を調整し、その時の温度を新たな制御目標温度と
して再設定した。この調整モードの実施により、長期間
に渡って安定した高精細画像を維持できた(請求項10
に対応)。
【0126】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、従来の光偏向素子における問題点、即ち、構
成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量
損失、光学ノイズを改善し、構成が簡単で、小型であ
り、光量損失、光学ノイズ、解像度低下が少なく、低コ
スト化を図ることができる光偏向装置および該光偏向装
置を備える画像表示装置を提供することができる。すな
わち本発明の光偏向装置によれば電界変化に対して偏向
量が一定となる飽和電界Es以上の電界を印加している
ので、液晶層内に電界ムラが発生しても光路の偏向量は
場所によらず一定とすることができる。
【0127】また光偏向素子の温度を制御することで、
素子の温度変化による光偏向量の変化を防止することが
できる。このときにチルト角θの増加(減少)に対して
光偏向量は単調増加(減少)特性のみを示す領域で制御
することにより、温度による光偏向量の制御性が向上す
る。
【0128】また転移温度Tcよりも適度に低い温度領
域で動作させることによって、温度変化に対する光偏向
量の変化量が比較的小さくなるので、温度制御による光
偏向量の制御性が向上し、正確な偏向量の制御を可能と
することができる。更に、キラルスメクチックC相を示
す温度範囲内の比較的高温領域で動作させることによっ
て、応答速度を向上させることができ、正確な偏向量の
制御と応答速度の向上を両立させることができる。
【0129】また単位時間当たりの偏向量の関数[Ls
(T)/R(T)]が最大となる温度Tmで動作させる
ことで、光偏向動作の効率を良くすることができる。こ
の温度において所望の光偏向量が得られるようにスペー
サの厚さを調整して液晶層の厚みを設定することで、正
確で効率の良い光偏向装置を実現できる。
【0130】また長期的な経時劣化や環境変動により偏
向特性が変化した場合でも、実際の光偏向量を検出して
制御系にフィードバックすることで、正確な光偏向動作
を行うことができる。電界印加時の液晶層の平均的な光
軸の傾斜方向に平行な偏光方向の光のみを入射させるこ
とにより、偏向されない光の発生を防止し、確実な光路
偏向を実現でき、偏向動作のコントラストが向上する。
【0131】また一方向への偏向が可能な光偏向素子を
二枚組み合わせ、両者の電界印加方向を90度回転させ
て配置し、入射側の光偏向素子から出射した光の偏向面
を90度回転させて、第二の光偏向素子に入射させるこ
とにより、確実に二次元方向への光偏向が可能となる。
【0132】また自発分極を発現するキラルスメクチッ
クC相液晶層の平均的な光学軸の傾斜方向の切換えを利
用した光偏向装置を用いることにより、サブフィールド
画像に対応して、高速な光路の偏向が可能になり、見か
け上高精細な画像表示が可能となる。また、高速応答性
によりサブフィールド画像の切換え時間が短くできるの
で、時間的な光利用効率を向上させることができる。
【0133】また光偏向素子の電極対の一方を接地し、
もう一方に交流電源を接続した場合、両電極の接地状態
と高圧印加状態を交互に切換えることで、両電極近傍で
の電位変化量が略等しく、電位の変化量の最大値を小さ
くすることができ、素子外部への漏れ電界を減少させ、
光偏向装置および画像表示装置への電気的ノイズの影響
を減少させることができる。また電圧印加手段を直流電
源と4つのスイッチによる出力切換回路から構成するこ
とにより、比較的簡単に電圧印加手段を実現できる。ま
た上記4つのスイッチにフォトカプラを用いることによ
り、5V程度の入力信号で、数kVの高電圧のスイッチ
ングを可能とすることができ、またマイクロ秒以下の高
速な電圧の切換を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による光偏向装置が有する光偏向素子
の一実施形態を説明するための図である。
【図2】 本発明に適用される液晶分子の電界による螺
旋構造変化のモデルを説明するための図である。
【図3】 図1に示した構成に関して液晶分子の配向状
態を模式的に示した図である。
【図4】 本発明に係わる光偏向素子の動作原理を説明
するための図である。
【図5】 θに対する光路シフト量Sの変化を計算した
結果を示した図である。。
【図6】 本発明に係わる光偏向素子の温度制御を行う
ための構成例を説明するための図である。
【図7】 光偏向素子の温度制御を行うための他の構成
例を説明するための図である。
【図8】 光偏向素子の温度制御を行うための更に他の
構成例を説明するための図である。
【図9】 液晶分子の偏向速度の温度依存性の一例を示
す図である。
【図10】 本発明の第7の形態である光路シフト量の
検出による温度制御へのフィードバックについて説明す
るための図である。
【図11】 偏向量を検出して温度制御を行うための他
の好ましい構成例を示す図である。
【図12】 本発明に適用可能なツイストネマチックセ
ルの構成を説明するための図である。
【図13】 本発明の光偏向素子の更に他の構成例を示
す図である。
【図14】 本発明による光偏向装置の更に他の実施形
態を説明するための図である。
【図15】 本発明による光偏向装置の更に他の実施形
態を説明するための図である。
【図16】 光偏向素子を2枚合わせた場合の各電極へ
の電圧印加状態について説明するための図である。
【図17】 本発明の光偏向素子への電圧印加方法を説
明するための図である。
【図18】 本発明における出力切換回路の例を説明す
るための図である。
【図19】 フォトカプラ(PC)を用いた出力切換回
路の構成例を示す回路図である。
【図20】 光路シフト量の電圧依存性について説明す
るための図である。
【図21】 種々の素子温度における光路シフト量の電
圧依存性について比較説明するための図である。
【図22】 光路偏向における飽和シフト量の温度依存
性について説明するための図である。
【図23】 液晶分子の応答時間の温度依存性について
説明するための図である。
【符号の説明】
1,1a,1b…光偏向素子、2,3…透明な基板、4
…垂直配向膜、5…液晶層、6…電極対、6a,6b…
電極、7…電源、8…透過窓、9…1/2波長板、11
…加熱ヒータ、12…温度センサ、13…温度制御回
路、14…温度測定回路、15…電気抵抗材料、16…
温度制御回路、17…透明導電性フィルム、20…偏向
量検出手段、21…比較回路、22…制御回路、23…
移動機構、24…素子、25…偏光ビームスプリッタ、
26…偏光方向制御手段、30…ツイストネマチック液
晶セル、31,32…基板、33…配向膜、34…ツイ
ストネマチック液晶、41…光源、42…拡散板、43
…コンデンサレンズ、44…透過型液晶パネル、45…
投射レンズ、46…スクリーン、47…光源ドライブ
部、48…ドライブ部、49…光偏向装置、50…ドラ
イブ部、i…入射光、L…液晶ダイレクタ、l1、l2
出射光。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H04N 5/74 H04N 5/74 K (72)発明者 松木 ゆみ 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 二村 恵朗 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 小林 正典 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 滝口 康之 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 Fターム(参考) 2H049 BA05 BA06 BA08 BA42 BB03 BB63 BC22 2H088 EA45 GA04 GA17 JA17 JA20 MA02 MA06 2K002 AA07 AB04 BA06 CA14 DA14 EB01 HA02 5C058 AA06 BA02 BA25 BA30 BA33 EA01 EA02 EA26

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明な一対の基板、該一対の基板間の間
    隔を規制する間隔規制手段、該基板間に保持されるキラ
    ルスメクチックC相を形成可能な液晶層、少なくとも一
    方の前記基板の内側表面に形成した垂直配向膜、及び前
    記液晶層に対して略平行な方向に電界を印加可能に配置
    した少なくとも2つ以上の電極を有する光偏向素子と、
    該光偏向素子の前記電極間に電圧を印加する電界印加手
    段とを有し、該電界印加手段による電界の強度及び方向
    に応じて前記液晶層の平均的な光学軸の傾斜方向を変化
    させて直線偏光の透過光路を偏向する光偏向装置におい
    て、前記電界印加手段による電界の増加に対して光路の
    偏向量の増加傾向が飽和する電界強度を飽和電界Esと
    した時、光路の偏向時の前記液晶層内全域の電界強度が
    Es以上となるように前記電界印加手段の出力を設定す
    ることを特徴とする光偏向装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の光偏向装置において、
    該光偏向装置は、前記光偏向素子の温度を制御する温度
    制御手段を有し、該温度制御手段は、前記液晶層の温度
    がキラルスメクチックC相を示す温度範囲にあるように
    前記光偏向素子の温度を制御することにより、該光偏向
    素子における光路の偏向量を制御することを特徴とする
    光偏向装置。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の光偏向装置において、
    前記キラルスメクチックC層を形成する液晶層の液晶ダ
    イレクタのチルト角θの増加に対して、光路の偏向量が
    単調増加を示す範囲内でチルト角θを制御するように、
    該液晶層の液晶材料及び前記温度制御手段による温度制
    御範囲を設定することを特徴する光偏向装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の光偏向装置において、
    前記液晶ダイレクタのチルト角θが、該液晶層の温度変
    化に対して0度から40度の範囲内で変化するように該
    液晶層の液晶材料及び前記温度制御範囲を設定すること
    を特徴する光偏向装置。
  5. 【請求項5】 請求項2ないし4のいずれか1に記載の
    光偏向装置において、前記液晶層の温度を上昇させたと
    きにキラルスメクチックC相からスメクチックA相また
    はキラルネマチック相に転移する温度をTc℃としたと
    き、前記温度制御手段は、前記液晶層がキラルスメクチ
    ックC相を示す温度で、かつ、(Tc−α)℃以下(但
    しα>0)の範囲内となるように前記光偏向素子の温度
    を制御することを特徴とする光偏向装置。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の光偏向装置において、
    前記(Tc−α)℃は、(Tc−5)℃であることを特
    徴とする光偏向装置。
  7. 【請求項7】 請求項2ないし6のいずれか1記載の光
    偏向装置において、液晶層の温度を上昇させたときにキ
    ラルスメクチックC相からスメクチックA相またはキラ
    ルネマチック相に転移する温度をTc℃としたとき、前
    記温度制御手段は、前記液晶層の温度が(Tc−β)℃
    以上かつ(Tc−α)℃以下(但し、β>α>0)の範
    囲内となるように前記光偏向素子の温度を制御すること
    を特徴とする光偏向装置。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の光偏向装置において、
    (Tc−β)℃以上かつ(Tc−α)℃以下(但し、β
    >α>0)の範囲は、(Tc−40)℃以上かつ(Tc
    −5)℃以下の範囲であることを特徴とする光偏向装
    置。
  9. 【請求項9】 請求項2ないし4のいずれか1に記載の
    光偏向装置において、飽和電界Es以上での光路の偏向
    量を飽和偏向量Ls、光路が飽和偏向量Lsの距離を移
    動する応答時間をRとして、該光偏向素子の温度Tに対
    する飽和偏向量の変化を関数Ls(T)とし、該光偏向
    素子の温度Tに対する応答時間の変化を関数R(T)と
    した時、単位時間当たりの偏向量の関数[Ls(T)/
    R(T)]が最大となる温度Tmを前記温度制御手段に
    よる目標温度として設定し、該温度Tmにおいて所望の
    飽和偏向量Lsとなるように前記スペーサの厚さを設定
    したことを特徴とする光偏向装置。
  10. 【請求項10】 請求項2ないし9のいずれか1に記載
    の光偏向装置において、該光偏向装置は、前記光偏向素
    子の外部に光路の偏向量を検出する偏向量検出手段と、
    前記温度制御手段による偏向量の目標値と該偏向量検出
    手段の検出値とを比較する比較回路と、該比較回路の結
    果に応じて前記温度制御手段の制御目標値を変更する制
    御回路とを有することを特徴とする光偏向装置。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし10のいずれか1に記
    載の光偏向装置において、該光偏向装置は、前記光偏向
    素子への入射光の偏光方向を前記液晶層の平均的な光軸
    の傾斜方向と一致させる偏光方向制御手段を有すること
    を特徴とする光偏向装置。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の光偏向装置におい
    て、該光偏向装置は、第1の前記光偏向素子の出射光の
    偏光面を略直角に回転させる偏光面回転手段と、該偏向
    面回転手段による偏光面回転後の出射光を入射光とする
    第2の前記光偏向素子を有し、前記第1及び第2の光偏
    向素子の液晶層法線方向は略一致し、かつ前記第1及び
    第2の光偏向素子の電界方向が略直交するように配置さ
    れてなることを特徴とする光偏向装置。
  13. 【請求項13】 画像情報に従って光を制御可能な複数
    の画素が二次元的に配列した画像表示素子と、該画像表
    示素子を照明する光源及び照明装置と、前記画像表示素
    子に表示した画像パターンを観察するための光学装置
    と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィ
    ールドで形成する表示駆動手段と、各画素からの出射光
    の光路を偏向する前記請求項1ないし12のいずれか1
    に記載の光偏向装置とを有し、サブフィールド毎の光路
    の偏向状態に応じて表示位置がずれている状態の画像パ
    ターンを表示することで画像表示素子の見かけ上の画素
    数を増倍して表示することを特徴とする画像表示装置。
  14. 【請求項14】 請求項1ないし12のいずれか1に記
    載の光偏向装置において、偏光面を略直角に回転させる
    偏光面回転手段と電圧印加手段を有することを特徴する
    光偏向装置。
  15. 【請求項15】 請求項13に記載の画像表示装置にお
    いて、偏光面を略直角に回転させる偏光面回転手段と電
    圧印加手段を有することを特徴とする画像表示装置。
  16. 【請求項16】 請求項14に記載の光偏向装置におい
    て、前記電圧印加手段は直流電源と出力切換回路とから
    成り、該出力切換回路は4つのスイッチを用いて、第1
    のスイッチと第2のスイッチを直列に接続し、第3のス
    イッチと第4のスイッチを直列に接続し、これら2組の
    直列スイッチを並列に接続し、前記第1のスイッチと前
    記第3のスイッチの一端を直流電源の出力端子に接続
    し、前記第2のスイッチと前記第4のスイッチの一端を
    接地して成り、前記第1のスイッチと第2のスイッチの
    間から第1の出力端子を取出し、前記第3のスイッチと
    第4のスイッチの間から第2の出力端子を取出し、前記
    第1及び第4のスイッチを閉じた状態と、前記第2及び
    第3のスイッチを閉じた状態とを切り替える電圧印加手
    段を用いたことを特徴とする光偏向装置。
  17. 【請求項17】 請求項15に記載の画像表示装置にお
    いて、前記電圧印加手段は直流電源と出力切換回路とか
    ら成り、該出力切換回路は4つのスイッチを用いて、第
    1のスイッチと第2のスイッチを直列に接続し、第3の
    スイッチと第4のスイッチを直列に接続し、これら2組
    の直列スイッチを並列に接続し、前記第1のスイッチと
    前記第3のスイッチの一端を直流電源の出力端子に接続
    し、前記第2のスイッチと前記第4のスイッチの一端を
    接地して成り、前記第1のスイッチと第2のスイッチの
    間から第1の出力端子を取出し、前記第3のスイッチと
    第4のスイッチの間から第2の出力端子を取出し、前記
    第1及び第4のスイッチを閉じた状態と、前記第2及び
    第3のスイッチを閉じた状態とを切り替える電圧印加手
    段を用いたことを特徴とする画像表示装置。
  18. 【請求項18】 請求項16に記載の光偏向装置におい
    て、前記電圧印加手段は、前記スイッチにフォトカプラ
    を用いたことを特徴する光偏向装置。
  19. 【請求項19】 請求項17に記載の画像表示装置にお
    いて、前記電圧印加手段は、前記スイッチにフォトカプ
    ラを用いたことを特徴する画像表示装置。
  20. 【請求項20】 透明な一対の基板、該一対の基板間の
    間隔を規制するスペーサ、該基板間に保持されるキラル
    スメクチックC相を形成可能な液晶層、少なくとも一方
    の前記基板の内側表面に形成した垂直配向膜、及び前記
    液晶層に対して略平行な方向に電界を印加可能に配置し
    た少なくとも2つ以上の電極を有する光偏向素子と、該
    光偏向素子の前記電極間に電圧を印加する電界印加手段
    とを有し、該電界印加手段による電界の強度及び方向に
    応じて前記液晶層の平均的な光学軸の傾斜方向を変化さ
    せて直線偏光の透過光路を偏向する光偏向装置に適用す
    る光偏向装置の制御方法において、前記電界印加手段に
    よる電界の増加に対して光路の偏向量の増加傾向が飽和
    する電界強度を飽和電界Esとした時、光路の偏向時の
    前記液晶層内全域の電界強度がEs以上となるように前
    記電界印加手段の出力を設定することを特徴とする光偏
    向装置の制御方法。
  21. 【請求項21】 請求項20に記載の光偏向装置の制御
    方法において、前記液晶層の温度がキラルスメクチック
    C相を示す温度範囲にあるように前記光偏向素子の温度
    を制御することにより、該光偏向素子における光路の偏
    向量を制御することを特徴とする光偏向装置の制御方
    法。
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