この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
まず、この発明の実施形態における光束分割素子の概略構成につき図1ないし図3を参照して説明する。図1、図2は、この発明の実施形態における光束分割素子の概略構成を示す模式図であり、第1ホログラム素子からの第1透過直進光は第2ホログラム素子を透過していないが、図2のように第2ホログラム素子は透過する配置としている。
図1に示す、この発明の実施形態における光束分割素子100は、第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2を多段に配列した構成されている。第1ホログラム素子1は、透光性基板11、12間にホログラム層13を設け、第2ホログラム素子2は、透光性基板21、22間にホログラム層23を設けている。
この第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2を多段に配列した光束分割素子100の動作原理としては、入射光束10を第1ホログラム素子1にて回折による偏向光10bと透過による直進光10aの二光束に分割し、回折による偏向光10bを第2ホログラム素子2にて再度回折により偏向した偏向光20bとなり、分割した二光束の光軸(進行方向)および光強度を設定することができる。
ここで、第1ホログラム素子1で回折した偏向光を第1回折偏向光10b、第2ホログラム素子2で再度回折した偏向光を「2回折偏向光20b、第1ホログラム素子1で透過した直進光を第1透過直進光10a、第2ホログラム素子2で再度透過した直進光を第2透過直進光20aと定義する。
図1は、第1ホログラム素子1からの第1透過直進光10aは第2ホログラム素子2を透過していない。これに対して、図2に示す構成は、第1ホログラム素子1からの第1透過直進光10aが第2ホログラム素子2を透過する配置にしている。
この図2に示すように、第1透過直進光10aが第2ホログラム素子2を透過する場合は、第2ホログラム素子2へ入射する前に位相差板(図示しない)により、透過率が高くなる偏光方向を設定することが望ましい。
図3に示すように、光束分割素子100を構成してもよい。図3に示す構成においては、第1ホログラム素子1の光出射側に用いる基板と第2ホログラム素子2の光入射側に用いる基板を兼用した基板15を用いたものである。この場合、基板15の厚さは、第2透過直進光20aと第2回折偏向光20bの受光位置(分割光束の間隔距離)によって適宜設定される。
このように、図1ないし図3に示すように、第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2を多段に配置することにより、1つの光束から分割した二光束の光軸(進行方向)および光強度を設定することができるものである。
ここで、体積ホログラム素子のモデルにつき図4に従い説明する。図4は、体積ホログラム素子の断面構造のモデルを示す模式図である。
このホログラム素子は、光学異方性領域と光学等方性領域の周期構造からなり、周期構造の屈折率変調量をΔnH、周期構造の膜厚をT、周期構造の格子ピッチをp、周期構造の格子傾きをφと定義する。
一般的に、ホログラムの回折角θは、θ=sin−1(λ/p)で表せ、入射光束の波長λとホログラムの格子ピッチpで決まる。すなわち、回折角θは、ホログラムの格子ピッチpにより設定可能である。
また、回折効率は格子周期構造から生成される屈折率変調量(または屈折率差)ΔnHと周期構造の膜厚Tに依存し、これらのパラメータを最適化することで、理想的な回折効率が得られる。理論的に得られる最大回折効率はホログラム種類によって異なるが、体積ホログラム(屈折率変調型ホログラム)は、非常に高い回折効率(理論値100%)を得ることができ、ブラッグ回折条件を満たす入射角度θinや格子の傾きφを設定することで、特定次数(特に、+1次または−1次)の回折光の効率が設定可能である。
すなわち、上記した図1、図2、図3に示す光束分割素子100において、第1ホログラム1と第2ホログラム2の格子傾きφを同じに設定(ブラッグ回折条件を満足)することで、入射光束10から回折した第1回折偏向光10bを入射光軸10(第1透過直進光10a)と平行となる第2回折偏向光20bに高効率で再回折することができる。
ここで、この発明の構成における光束分割素子100に用いるホログラム素子としては、温度依存性を示し、格子ピッチおよび格子傾きが設定可能であれば、図5(a)、図5(b)に示すように、光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域からなる周期構造を有するものが使用できる。
例えば、周期構造は等方性媒体あるいは複屈折媒体に格子溝を形成し、等方性媒体あるいは複屈折媒体を埋めたそれぞれの組み合わせが可能である。
周期構造の格子溝はフォトリソグラフィーとエッチングまたは切削加工や成形技術等により形成することができる。また、等方性媒体としては、フォトポリマー等の透明樹脂や石英、BK7等の光学硝材が使用できるが、複屈折性を有さなければこれに限るものではない。複屈折媒体としては、高分子複屈折膜(高分子フィルム)、液晶等が使用できる。
また、周期構造の形成方法としては、ホログラム記録材料へのステッパによる一般的なマスク露光法、電子ビームによる直接描画法、レーザビームによる直接描画法、二光束干渉露光法などがある。
記録材料としては、下記のような一般的な感光材料が使用できる。例えば、重クロム酸ゼラチン、フォトクロック材料、フォトサーモプラスチック、電気光学結晶(例えば、強誘電性酸化物:LiNbO3,BaTiO3結晶など)、フォトレジスト、フォトポリマー、高分子液晶および高分子分散液晶などがある。
特に、汎用性が高いフォトポリマーは、屈折率変調型のホログラムを記録することができるので、高い回折効率が得られ、粒状性がほとんどないため高解像力で、低ノイズのホログラムが得られる。フォトポリマーは非常に多種・多用の材料により組成されており、光架橋型、光重合型に大別できる。光重合型では現像を要するものと不要なものがある。現像工程が不要な材料では、組成面から(a)ポリマー、モノマー、(b)モノマー、モノマー、(c)不活性成分(低分子)、モノマーに分類できる。(a)および(c)はモノマー重合物質とポリマーあるいは低分子化合物との間で大きな屈折率差が生じるように成分が選ばれる。(b)は屈折率の異なる2種類のモノマーで構成されるが、(1)光重合性の異なるモノマー、(2)光重合性と熱重合性のモノマー、(3)光ラジカル重合性と光カチオン重合性のモノマーなどの組み合わせがある。
前記した材料において、フォトポリマーやフォトレジストなどの光重合性を有する高分子感光材料は解像力、露光感度、感光波長帯域を幅広く選択でき、高耐環境性に優れ、膜厚・サイズに自由度がある。また粒状性も低い為、ホログラムの特性として高回折効率、高透明性が得られる。
また、高回折効率を有する屈折率変調型ホログラムの場合、記録されたホログラム領域における周期構造の屈折率変調の差は大きい方が、高効率が得られる最適な膜厚は小さくなり、それに伴い波長変動や入射角度に依存する回折効率の変化が小さくできる。即ち、得られる高回折効率特性の波長変動や入射角度に対する許容範囲が広いホログラムが実現できる。周期構造の屈折率変調の差が大きくできる感光材料としは、複屈折性を示す高分子複屈折膜、高分子液晶および高分子分散型液晶などがある。
高分子複屈折膜は高分子フィルムを延伸して高分子鎖を配向させることによって複屈折性を有した高分子膜であり、スタンパ等で簡単に大量生産することができ、低コストで偏光分離素子の作製ができるといった利点がある。延伸する高分子フィルムの高分子材料としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリアクリルレート、ポリカーボネイト(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン等が使用できるが、これに限るものではない。
高分子液晶および高分子分散型液晶は、重合性液晶と、非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤の何れか一つまたは複数の混合によりなる組成物である。重合性液晶モノマーとしては、液晶性アクリレートモノマーなどを用いることができ、非重合性液晶としては、屈折率異方性を有する液晶ならば一般的なものを使用できる。その相構成はネマチック、コレステリック、スメクチックのいずれのタイプでも良い。
重合性モノマーまたはそのプレポリマーとしては、光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー及びそれらの混合物を用いることができる。また、上記の他に熱重合禁止剤、可塑剤等が添加されても良い。
光重合開始剤としては、公知の材料を用いることができ、添加量は照射する光の波長に対する各材料の吸光度によって異なり、複製時の露光条件によって適宜調整される。
上記した感光材料からなる組成物は、露光時の条件を適切に設定することで、偏光方向によって屈折率分布が異なる周期構造を形成することができる(偏光方向によって周期構造における屈折率変調量が異なる)。
組成物の例としては高分子モノマー中に非重合性液晶と光重合開始剤を分散させたホログラフィック高分子分散液晶(HPDLC: Holographic Polymer Dispersed Liquid Crystal)あるいは重合性液晶と光重合開始剤を混合させた光硬化型液晶(PPLC: Photo−Polymerized Liquid Crystal)などがある。
次に、この発明の光束分割素子に用いることができるホログラム素子として、HPDLCを用いたホログラム素子につき説明する。上記した組成物に干渉縞を露光した場合について説明する。HPDLCについて、干渉露光前の断面構成を図6に示す。非重合性液晶分子と重合性モノマーあるいはプレポリマーと図示しない光重合開始剤とを均一に混合した組成物30を二枚の透明基板31、32間に挟んだ構成である。図7は、相分離によるホログラムの形成過程を模式的に示しており、同図(a)は、露光状態を示す断面図、(b)は露光後、相分離をした場合の断面図、(c)は相分離をした場合の上面図である。図7(a)に示すように、非重合性液晶分子と重合性モノマーあるいはプレポリマーと図示しない光重合開始剤とを均一に混合した組成物30に対して、干渉縞の強度分布が図示のような状態で干渉露光を行う。この露光により、図7(b)、(c)に示すように、干渉縞の明部においてモノマーが移動(高分子と液晶の相分離)して硬化し、干渉縞暗部には液晶が残り、明部で硬化したポリマーに引っ張られて液晶が特定の方向に配向する。この配向のために直交する入射偏光に対し、一方は屈折率変化が生じずほとんど透過する。これと直交する偏光方向は液晶が配向して屈折率が大きい方向と一致することにより、周期的屈折率変化を感じて入射光は回折する。以上によりHPDLCは偏光性回折格子として機能する。
また、PPLCにおいては透明電極(ITO)と液晶を配向させる配向層をもつ基板間に光重合性の感応基がついた液晶を封入して液晶を水平配向させる。これに干渉縞を露光すると縞の明部では液晶分子が重合して硬化する。一方縞の暗部の液晶分子は硬化しないで残っている。次に液晶層をはさむ透明電極間に電圧をかけながら光を照射する。このとき暗部の液晶は電圧印加により基板に垂直方向に配向して光により硬化する。以上より干渉縞の明、暗に対応して液晶の配向が水平/垂直の周期構造をもつようになる。このようにして記録した回折格子に直交する偏光を入射させると一方の偏光方向(水平配向した液晶分子の短軸方向と一致)では水平/垂直の配向があっても屈折率変化を感じないで入射光はほとんど透過し、これと直交する方向では水平配向した液晶分子の長軸方向と一致して水平/垂直の配向による屈折率変化を感じて入射光はほとんど回折する。
以上のように、組成物材料の重合反応に伴った相分離あるいは重合反応と外場による配向変化などによって偏光選択性を有する偏光ホログラムが作製できる。
ホログラム記録用感光材料を成膜する方法としては、一般的な溶剤の成膜手法が適応でき、単基板へのスピンコートやディッピング、対基板で構成されているセルへの毛細管現象あるいは真空による注入方法などがある。
ここで、図8にHPDLC(偏光ホログラム)素子の断面の概略構成を示す。偏光ホログラム素子1(2)は、一対の基板11、12(21、22)間に光学異方性(複屈折性)を示す領域1aと光学等方性を示す領域1bが周期的に構成されている。機能動作としては、例えば、図9(a)のように、素子へ入射する偏光方向がs偏光(ここでは紙面垂直方向である周期配列方向と垂直とする)であり、等方性領域1bの屈折率nと複屈折性領域1aの一方の屈折率noがn=noのとき、光はそのまま透過する。また、図9(b)のように、入射する偏光方向がp偏光(ここでは紙面左右方向である周期配列方向と平行とする)であり、等方性領域1bの屈折率nと複屈折性領域1aのもう一方の屈折率neがn≠neのとき、光は回折する。このように入射光の偏光方向により、透過と回折の選択がなされる機能を有する。尚、図9に示す例では、p偏光が回折し、s偏光が透過しているが、周期構造の屈折率によってはp偏光が透過し、s偏光が回折する場合もある。
また、図8では光学異方性領域1aと光学等方性領域1bの周期構造は基板11、12(21、22)に挟まれている構成を示しているが、これに限るものではなく、一枚の基板上に成膜されていてもよく、基板上になくてもよい。
ここで、図8、図9に示した偏光ホログラム素子は体積型屈折率変調ホログラムであり、前記したように、回折効率はホログラムの屈折率変調量ΔnHと厚みTの積ΔnH・Tに依存し、特定な偏光方向における光学異方性を示す領域と光学等方性を示す領域の屈折率変調量ΔnHが一定である場合、ホログラム素子の周期構造の厚みT(膜厚またはセルギャップと同じ)を設定することで回折効率を適宜設定することができる。図8に示す格子傾きφは周期構造に垂直なベクトルであり、周期構造配列面を基準(0°)とし、45°<φ<135°の関係にあるものとする。
図10に体積型屈折率変調ホログラム素子の回折効率および透過率と膜厚の関係を示す。前記したように、体積型屈折率変調ホログラム素子は理論的に最大100%の回折効率であり、回折効率と透過率の関係は全体で100%である。最大100%の回折効率が得られるホログラム層の膜厚(セルギャップ)をT2、回折効率が50%(透過率が50%)ホログラム層の膜厚(セルギャップ)をT1とする。T1=T2/2となる。図10に示すように、回折効率と透過率は、サインカーブ、コサインカーブのように膜厚に対応して変化する。
ここで、ホログラム層の膜厚(セルギャップ)が同一である偏光ホログラム素子を第1ホログラム1と第2ホログラム2として多段に配列し、入射偏光方向をホログラム周期構造の配列方向と平行にした場合の光束分割素子につき、図11及び図12に従い説明する。
図11に示すように、素子のホログラム層13、23の膜厚(セルギャップ)がそれぞれ最大回折効率を得るT2においては、第1ホログラム素子1にて全ての光が回折され、第2ホログラム素子2にて再回折される。すなわち、第1透過直進光は発生せず、光軸のシフトのみが行われ光束は分割されない。
また、図12のように、素子のホログラム層13、23の膜厚(セルギャップ)が最大回折効率の半分を得るT1においては、第1ホログラム素子1にて、第1透過直進光10aと第1回折偏向光10bに均等に分割されるが、第2ホログラム素子2においても第2回折偏向光が均等に分割されるため、多段に配列された素子1、2から出射される光は三光束となり、強度もばらばらとなる。
そこで、ホログラム層の膜厚(セルギャップ)が異なるホログラムを第1ホログラム1と第2ホログラム2として多段に配列した構成につき説明する。この構成において、入射偏光方向はホログラム周期構造の配列方向と平行とし、第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2を図13に示すように、ホログラム層13の膜厚をT1(T2/2)、ホログラム層23の膜厚をT2とする場合、第1ホログラム素子1の回折効率は50%、透過率は50%となり、第2ホログラム素子2の回折効率は100%、透過率は0%となる。すなわち、図13に示すように、第1ホログラム素子1から第1透過直進光10aと第1回折偏向光10bが出力され、第1回折偏向光10bが第2ホログラム素子2で回折され、第2回折偏向光20bとして出力される。この構成の光束分割素子100では、第2回折偏向光20bの効率は50%、第1透過直進光10aの効率は50%の割合で二光束を均等に分割することができる。
次に、ホログラム素子の温度依存性に関して説明する。一般的に、複屈折性領域、等方性領域に存在する物質の屈折率には温度依存性があり、常に一定の屈折率を保つことは難しい。この温度による屈折率の変化は、回折効率の変動、偏光選択性の低下に繋がり、この発明の光束分割素子において実用上大きな問題となる。ここで、偏光選択性とは、s偏光の回折効率とp偏光の回折効率との比と定義する。
図14に、体積型屈折率変調ホログラムの屈折率変調量ΔnHと回折効率の関係を示す。ここで示している屈折率変調量ΔnHとは図4、図8に示したホログラム素子内部の屈折率分布の高低差であるが、説明を簡潔にするため、ΔnHは|no−n|または|ne−n|と等価としている。ΔnHが大きくなるにつれて回折効率は上昇し、ΔnHが最大の時ΔnH_maxは、理論上回折効率100%となり、ΔnHが最大値を超えると回折効率は減少してゆく。
図15は等方性領域1bの屈折率nと複屈折性領域1aの屈折率no、neの一般的な温度依存性を示す特性図である。図15に示すように、温度が上昇すると屈折率n、no、neの絶対値は変化し、相対的に|no−n|および|ne−n|も変化する。
このように温度上昇による屈折率の変化に伴い、ホログラム素子の回折効率も温度により大きく変動する。すなわち、最大回折効率を設定した場合、温度上昇によりΔnHは小さくなり、回折効率は低下する傾向にある(図14の矢印)。ここで、一般的に高い回折効率を得る為には、ΔnHがある程度大きくなければならないため、高い回折効率を得る場合はΔnHとして|ne−n|を設定することが好ましい。
前述したように、ホログラム素子の回折効率は屈折率変調量ΔnHと厚み(ホログラム層)Tの積ΔnH・Tに依存する。膜厚Tはスペーサーや硬化材料により保持されているため、温度上昇による変化は小さい。すなわち、温度上昇による回折効率の変動は、屈折率変調量ΔnHの温度変化による影響が大きいと考えられる。
そこで、図16、図17にΔnH・Tと回折効率の関係を示す。ホログラム層13の膜厚がT1の第1ホログラム1、ホログラム層23の膜厚がT2の第2ホログラム2の温度上昇による回折効率の変化を矢印で示す。屈折率変調量ΔnHは膜厚Tによらず一定であると仮定している。図16に示すものは、第1ホログラム1の回折効率が50%になるようにホログラム層13の膜厚T1を設定し、第2ホログラム2が回折効率が100%になるホログラム層23の膜厚Tmaxより、少し膜厚を小さくした膜厚T2に設定している。また、図17に示すものは、第1ホログラム1の回折効率が50%になるようにホログラム層13の膜厚T1を設定し、第2ホログラム2の回折効率が100%になるホログラム層23の膜厚Tmaxより、少し膜厚を大きくした膜厚T2に設定している。
図16に示すものは、温度上昇により第1ホログラム1、第2ホログラム2ともに回折効率が低下している。これに対し、図17は温度上昇により第1ホログラム1の回折効率は低下しているが、第2ホログラム2の回折効率は一旦増加してから低下している。
図16、図17から、ホログラムの膜厚Tは、最大回折効率を得る膜厚Tmaxより小さく設定することで、温度上昇により回折効率は低下し、最大回折効率を得る膜厚Tmaxより大きく設定することで、温度上昇により回折効率が一旦増加し低下することが分かる。
このことから、膜厚(セルギャップ)の異なるホログラム層を有する第1ホログラム1と第2ホログラム2を多段に配列した構成において、第1ホログラム1の膜厚T1は最大回折効率を得る膜厚Tmaxより小さく、第2ホログラム2の膜厚T2は最大回折効率を得る膜厚Tmaxより大きく設定する。このように構成することで、温度上昇による第1ホログラム1の回折効率低下と第2ホログラム2の回折効率増加をキャンセルすることができる。従って、分割された光束における第2回折偏向光20bの温度による変動が抑制され光束分割素子として温度特性が改善される。
また、図1、図2、図13に示すような構成において、分割光束の効率を高くするためには、まず、第1ホログラム1で光束を略等分割する回折効率が得られ、第2ホログラムで高回折効率を得るように、第1ホログラム1、第2ホログラム2のホログラム層を構成することで実現できる。すなわち、第2ホログラム2の回折効率は第1ホログラム1の回折効率より高い方がよいことを意味しており、膜厚に対しては、最大回折効率が得られるTmaxに近いほど高回折効率となることから、第2ホログラム2のホログラム層23の膜厚と最大回折効率が得られるTmaxとの差|Tmax−T2|が第1ホログラム1のホログラム層13の膜厚T1と最大回折効率が得られるTmaxの差|Tmax−T1|よりも小さいことで分割光束の効率を高く設定することができる。
さらに、図10の回折効率と膜厚の関係から、第1ホログラム素子1のホログラム層12の膜厚T1を第2ホログラム素子2のホログラム層23の膜厚T2の略半分に設定することで、分割した光束のそれぞれの強度を略等しく設定できる。
次に、この発明の第2の実施形態につき図18を参照して説明する。図18は、この発明の第2の実施形態における光束分割素子の概略構成を示す模式図である。この第2の実施形態においては、第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2のホログラム層13、23の膜厚(セルギャップ)Tが同一である。そして、入射光のp偏光成分とs偏光成分の強度の割合が略均等になるように入射偏光方向を設定することを特徴としている。このような構成の場合、入射偏光方向の設定調整等が必要となるが、同一の膜厚を有するため、一定条件の生産プロセスによる素子で実現できるため、生産性が向上できる。
前記したように、ホログラム層の膜厚(セルギャップ)が同一のホログラム素子を多段配列した構成において、回折効率が最大となるような膜厚(セルギャップ)Tmaxを設定したホログラム素子を用いる場合、入射偏光方向がホログラム素子の周期的な構造に略平行(p偏光)および垂直(s偏光)なときは光束が分割されない。
これはホログラム素子への入射偏光成分(p偏光およびs偏光)の光強度に依存し、図19のように周期的構造の配列方向に平行な偏光方向が入射するとき、入射光の強度は、s偏光成分がほとんどなく、ほぼp偏光成分であるため、入射光はs偏光成分に係る透過光はほとんど発生せず、p偏光成分に係る回折光のみが発生する。
ここで、図20に示すように、周期的構造の配列方向に平行な方向から偏光方向を少し傾けて入射するとき、入射光の強度はs偏光成分とp偏光成分とに分けられ、強度の割合としてはp偏光成分の方がs偏光成分より大きく、p偏光成分に係る回折光が大きく発生し、s偏光成分に係る透過光も少し発生する。また、図21に示すように、周期的構造の配列方向に平行な方向から偏光方向を45°(135°)傾けて入射するとき、入射光の強度は等しい割合でs偏光成分とp偏光成分とに分けられるため、p偏光成分に係る回折光とs偏光成分に係る透過光は均等になる。このように第1ホログラム素子の第1回折偏向光と第1透過直進光の割合は入射光のs偏光成分とp偏光成分の光強度の割合に依存する。また、周期構造の平均的な屈折率も入射偏光方向によって変化し、僅かであるが第1回折偏向光と第1透過直進光の割合に起因する。
図18、図21に示すように、周期構造の配列方向とは異なる偏光方向を有する直線偏光を入射し、p偏光成分とs偏光成分の強度を適宜調整することで、第1ホログラム素子1にてp偏光成分は第1回折偏向光10bとなり、s偏向成分は第1透過直進光10aとなる。次に、第2ホログラム素子2にてp偏向成分は第2回折偏向光20bとなり、s偏向成分は第2透過直進光20aとなり、光束が分割される。なお、図18においては、第1透過直進光10aは第2ホログラム素子2を透過する配置にしているが、第1透過直進光10aは第2ホログラム素子2を透過していない配置にしてもよい。
ここで、入射偏光方向の設定は一般的な位相差板により設定でき、偏光板、グラントムソンプリズム、1/2波長板、などが使用できる。また、光源としてLD等の偏光光を用いる場合は光源を回転させることでも設定できる。
前述したようにホログラム素子には温度依存性がある。そこで、ホログラム素子のホログラム層の膜厚を異ならせてホログラム素子のΔnH・Tと回折効率の関係を調べた。図22、図23、図24に、ホログラム素子のΔnH・Tと回折効率の関係を示す。し、各ホログラム素子の温度上昇による回折効率の変化を矢印で示す。ただし、屈折率変調量ΔnHは膜厚Tによらず一定であると仮定している。
図22は、第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2のホログラム層13,23の膜厚(セルギャップ)T1、T2が、最大回折効率を得る膜厚Tmaxと同じである場合を示している。この場合には、温度上昇により、第1ホログラム1、第2ホログラム2ともに回折効率が低下している。
これに対し、図23は第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2のホログラム層13、23の膜厚(セルギャップ)T1、T2が同じで、かつ最大回折効率を得る膜厚Tmaxよりも大きい関係にある場合を示している。この場合は、温度上昇により第1ホログラム1、第2ホログラム2ともに回折効率が一旦増加してから低下している。このことから、第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2のホログラム層の膜厚(セルギャップ)T1、T2が略同じである場合、最大回折効率を得る膜厚Tmax以下であると第1ホログラム1、第2ホログラム2ともに温度上昇により回折効率が低下し、光束分割素子100としては温度特性が顕著に悪くなる。
しかし、第1,第2ホログラム素子1,2のホログラム層の膜厚T1、T2が略同じである場合においても、図23のように、膜厚T1、T2が最大回折効率を得る膜厚Tmaxより大きいことで、第1ホログラム1、第2ホログラム2ともに温度上昇により回折効率が一旦増加してから低下するため、若干の変動はあるが、広い温度範囲にて高回折効率を保つことができ、光束分割素子100としては温度特性が改善される。
また、図24は、第1ホログラム素子1と第2ホログラム素子2のホログラム層13,23のそれぞれの膜厚(セルギャップ)T1、T2が、Tmaxを境に大小関係にある場合を示している。この場合、温度上昇により第1ホログラム1の回折効率は低下し、第2ホログラム2の回折効率は増加している。すなわち、回折効率が略同じとなるように、ホログラム層の膜厚(セルギャップ)を設定し、入射偏光はp偏光成分とs偏光成分の強度の割合が略均等になるように偏光方向を設定し、第1ホログラム1と第2ホログラム2を多段に配列した構成の光束分割素子においては、次のように膜厚を設定することが好ましい。 第1ホログラム1のホログラム層13の膜厚T1は最大回折効率を得る膜厚Tmaxより小さく、第2ホログラム2のホログラム層23の膜厚T2は最大回折効率を得る膜厚Tmaxより大きく設定することで、温度上昇による第1ホログラム1の回折効率低下と第2ホログラム2の回折効率増加がキャンセルされて分割された光束(第2回折偏向光)の温度な特性が改善される。
図18に示すような構成における光束分割素子100の回折効率と入射偏光方向との理想的な関係を図25に示す。図25から入射偏光方向が周期的な構造の配列方向に対して、略45°または略135°(45°+90°)である場合、光束の分割バランスが略50%であり、用途にもよるが一般的な光学素子として問題ない特性が得られる。図25から具体的には、入射偏光方向が周期的な構造の配列方向に対して、43°±3°の範囲で光束のバランスが40%から60%の範囲となり、一般的な光学素子として問題ない特性が得られる。
また、入射偏光方向の設定に位相差板として、1/4波長板を使用して円偏光または楕円偏光とする場合、円偏光においては、図26に示すように入射光のp偏光成分とs偏光成分の強度は均等に設定され、入射光を均等に分割することができる。楕円偏光においても方位角を適宜設定することでp偏光成分とs偏光成分の強度の比率が設定できるため、均等な光束分割のバランスをたもつことができる。図26においては、円偏光の回転を左回転としているが、回転方向は左右どちらでもよい。このように円偏光を入射する場合、光源側の偏光方向に対して軸を設定すればよく、偏光ホログラム素子への偏光方向の設定が不要になる。
この発明の第3の実施形態における光束分割素子の概略構成を図27、図28に示す。この実施形態は、第1ホログラム1と第2ホログラム2の後段にそれぞれ光量調整手段3を備えている。図27、図28では、模式的にホログラム素子と離して記載しているが、所望の光束が調整可能でかつ他の光束に影響を及ぼさなければホログラム素子と一体となっていてもよい。ここで、光量調整手段3としては一般的なNDフィルター、位相差板などが使用できる。このように光量調整手段3を備える場合、分割した光束の強度をそれぞれ設定できる。すなわち、温度上昇により分割した一方の光束の強度が低下した場合、光量調整手段3によりもう一方の光束の強度を調整し、分割した光束の強度を略同じに保つことができ、温度特性のよい光束分割装置が実現できる。
以下、具体的実施例によるこの発明をさらに詳細に説明するが、この発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
厚み0.7mmのガラス基板の片面に青色光および赤色光に対する反射防止膜を形成し、およそ4μm〜12μm径のビーズスペーサーを用意し、形成するホログラム層に対応するビーズスペーサーを混入したそれぞれの接着剤により、二枚のガラス基板を貼り合わせた。接着剤の塗布は反射防止膜形成面とは反対の面で、基板の縁2箇所に塗布した。
次に、以下の(1)〜(5)の材料の混合物からなる組成物をホットプレートで加熱しながら毛管法によりセル中に注入し、厚み約4μm〜12μmのホログラム層となる組成物層を形成した。なお、この組成物は緑色より短波長の光に反応性を示すため赤色光を用いた暗室下で取り扱った。
(1)ネマチック液晶(メルク製Δε>0) 25重量部
(2)ウレタンプレポリマー(共栄社化学製) 75重量部
(3)ジアクリレート(共栄社化学製) 10重量部
(4)メタクリレート(共栄社化学製) 5重量部
(5)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(チバガイギー製) 1重量部
上記組成物をセル中に注入後、その特性を調べると、この組成物は室温下において等方性を示した。
次に、波長442nmのHe−Cdレーザによる二光束干渉露光系を作成した。レーザ光を分割、拡大して平行光とし、二光束干渉の干渉縞に対応して約1μm周期の干渉縞が生成される。セル基板を加熱した状態で、約1分間の二光束干渉露光を行い、液晶ホログラム素子を作製した。この時、一方の入射光軸に対して約7度傾けたて二光束が入射するように設定した。
液晶ホログラム素子の特性評価としては、作製した素子に波長655nmの直線偏光のレーザ光を照射して、入射光強度に対する0次光と+1次回折光強度を測定した。入射光強度は5mW程度になるように、NDフィルターを用いて調整し、入射光路中に直線偏光板と半波長板を配置し、半波長板の光軸を45度回転させることで、素子に入射する偏光方向(p偏光、s偏光)を切り換え可能な構成とした。このときのp偏光は干渉露光時の干渉縞と直交方向とし、s偏光は干渉縞の方向とした。表1に、膜厚4μm〜12μmの液晶ホログラム素子のp偏向における回折効率の特性を示す。表1より、上記した組成物を用いた液晶ホログラム素子においては、膜厚が9μmで最大回折効率が得られた。
続いて、作製した上記液晶ホログラムの2素子を用いて、図1のように、多段配列して光束分割素子を作製した。素子への入射偏光方向はp偏光とし、配列素子間距離は約10mmとした。第1ホログラム素子、第2ホログラム素子の膜厚を適宜設定し、膜厚設定した光束分割素子の第1透過直進光(第1光束)と第2回折偏向光(第2光束)の入射光に対する光利用効率の温度特性を評価した。
まず、第1、第2ホログラムともに、最大回折効率を得る膜厚9μmより小さい範囲における膜厚4μmと8μmのホログラムを組み合わせて4種類の光束分割素子を作成した。その評価した結果を表2〜表5に示す。ここで、表2に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:4μm)、表3に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:4μm)、表4に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:8μm)、表5に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:8μm)である。
表2ないし表5から、4種類の光束分割素子において、温度25°の特性から、表4に示す第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:8μm)以外は、均等な光束分割ができていないことがわかる。すなわち、表2に示す第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:4μm)のものでは、第1光束/第2光束が3.2、表3に示す第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:4μm)のものでは、第1光束/第2光束が0.1、表4に示す第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:8μm)のものでは、第1光束/第2光束が1.4、表5に示す第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:4μm)のものでは、第1光束/第2光束が0.0である。
この表2ないし表5からは、表4の構成の光束分割素子以外は、光束分割素子として適さないことがわかる。さらに、これら表2ないし表5からこれら素子は、25℃〜55℃と温度が上昇するに従い、第1、第2ホログラム素子共に回折効率が低下し、第1光束、第2光束とも温度による変動が大きい。よって、これら表2ないし表5に示す光束分割素子は、常温からの設定値からのパワーの温度変動を小さくすることはできなかった。
次に、第1ホログラムは最大回折効率を得る膜厚9μm以下で、第2ホログラムは最大回折効率を得る膜厚9μm以上として光束分割素子を作製した。そして、光束分割素子の第1透過直進光(第1光束)と第2回折偏向光(第2光束)の入射光に対する光利用効率の温度特性を評価した。その結果を表6から表8に示す。また、比較のために、第1ホログラム、第2ホログラム共に最大回折効率を得る膜厚9μm以上として光束分割素子を作製した。その結果を表9から表11に示す。
ここで、表6に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)、表7に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)、表8に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)である。
また、表9に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:10μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)、表10に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:9μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)、表11に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:10μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)である。
表6ないし表11から、6種類の光束分割素子において、温度25°の特性から、表6に示す第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)、表7に示す第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)以外は、均等な光束分割ができていないことがわかる。すなわち、表6に示す第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)のものでは、第1光束/第2光束が1.4、表7に示す第1ホログラム(膜厚:4μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)のものでは、第1光束/第2光束が1.4、表8に示す第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)のものでは、第1光束/第2光束が0.0である。
また、表9に示す第1ホログラム(膜厚:10μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)のものでは、第1光束/第2光束が0.1、表10に示す第1ホログラム(膜厚:9μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)のものでは、第1光束/第2光束が0.0、表11に示す第1ホログラム(膜厚:10μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)のものでは、第1光束/第2光束が0.1である。
さらに、これら表6ないし表8から、これら素子は、25℃〜55℃と温度が上昇するに従い、第1ホログラム素子の回折効率は低下するが、逆に第2ホログラム素子の回折効率は上昇している。この結果、温度上昇による第1ホログラムの回折効率の低下と第2ホログラムの回折効率の増加がキャンセルされ、常温からの設定値からパワーの温度変動を小さくできる。
一方、表9ないし表11から、これら素子は、25℃〜55℃と温度が上昇するに従い、第1、第2ホログラム素子の回折効率は共に上昇し、第1の光束、第2の光束とも温度による変動が大きい。よって、これら表9ないし表11に示す光束分割素子は、常温からの設定値からのパワーの温度変動を小さくすることはできなかった。
上記のように、表2〜表11において、均等な光束分割ができていない表4、表6、表7以外は、第1ホログラムの膜厚が第2ホログラムの膜厚より大きいか、または第1、第2ホログラムともに膜厚がほぼ同じである。また、表4、表6、表7の温度特性を比較すると、第1光束/第2光束、第1光束の変動率はほぼ同じであるが、第2光束の変動率は表4、表6、表7の順番に温度上昇に伴う変動率が小さくなっている。ここで、最大回折効率を得る膜厚9μmを基準にすると、第1ホログラムの膜厚は表4、表6、表7の全てにおいて、9μmよりも小さい。また、第2ホログラムの膜厚は、表4は9μmよりも小さく、表6は9μm、表7は9μmよりも大きい。すなわち、第1ホログラムの膜厚は最大回折効率を得る膜厚より小さく、第2ホログラムの膜厚は最大回折効率を得る膜厚より大きいことで、温度変動の小さい均等な光分割ができた。
(実施例2)
ホログラム層の膜厚を5.5μmとする以外は実施例1と同様にして、液晶ホログラム素子を作製した。以下の表12に回折効率特性を示す。特性はp偏向入射のものである。
上記の膜厚5.5μmのホログラムを第1ホログラムとし、膜厚9〜12μmのホログラムを第2ホログラムとして組み合わせて4種類の光束分割素子を作製し評価した。表13に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:5.5μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)、表14に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:5.5μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)、表15に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:5.5μm)/第2ホログラム(膜厚:11μm)、表16に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:5.5μm)/第2ホログラム(膜厚:12μm)である。
上記した表13から表14の全ての組み合わせにおいて、第1光束/第2光束、第1光束の変動率はほぼ同じであるが、第2光束の変動率は若干異なっており、表15が一番小さい。表15の膜厚の組み合わせは、第1ホログラムの膜厚5.5μm、第2ホログラムの膜厚11μmであり、第1ホログラムの膜厚が第2ホログラムの膜厚の略半分であることで、温度上昇に伴う変動率が小さくなった。
(実施例3)
ホログラム素子への入射偏光はp偏光から45°回転した偏向方向とする以外は、実施例1と同様の液晶ホログラム素子における回折効率特性を表17に示す。
表17より、上記した実施例1と同様に、膜厚が9μmで最大回折効率が得られた。
続いて、作製した上記液晶ホログラムの2素子を用いて、実施例1と同じく、図1のように、多段配列して光束分割素子を作製した。素子への入射偏光方向は45°回転した偏向方向とし、配列素子間距離は約10mmとした。第1ホログラム素子、第2ホログラム素子の膜厚を適宜設定し、膜厚設定した光束分割素子の第1透過直進光(第1光束)と第2回折偏向光(第2光束)の入射光に対する光利用効率の温度特性を評価した。
その評価した結果を表18〜表24に示す。ここで、表18に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:8μm)、表19に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:9μm)、表20に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)、表21に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:9μm)/第2ホログラム(膜厚:9m)、表22に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:9μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)、表23に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:10μm)/第2ホログラム(膜厚:10μm)、表24に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:10μm)/第2ホログラム(膜厚:8μm)である。
表18〜表22の全ての組み合わせにおいて、第1光束/第2光束はほぼ同じであり均等な光束分割ができた。また、25℃〜55℃付近における分割光束の変動率も小さく、表20、表21、表22、表24においては、変動率が10%以内に収まった。特に、第1ホログラムの膜厚9μm、第2ホログラムの膜厚10μmの構成がよく、傾向としては実施例1と同様にして、最大回折効率を得る膜厚9μmを基準にすると、第1ホログラムの膜厚は、最大回折効率を得る膜厚以下で、第2ホログラムの膜厚は最大回折効率を得る膜厚より大きいことで、温度変動の小さい均等な光分割ができた。
(実施例4)
膜厚4.5μmの液晶ホログラム素子を実施例1と同様にして作製し、実施例1の液晶ホログラム素子と組み合わせて、図27の光束分割素子を作製した。素子への入射偏光方向はp偏光とし、配列素子間距離は約10mmとした。第1ホログラム素子1、第2ホログラム素子3の膜厚およびホログラムの後段に設置したNDフィルター3の透過率を適宜設定し、光束分割素子の第1透過直進光(第1光束)と第2回折偏向光(第2光束)の入射光に対する光利用効率の温度特性を評価した。その結果を表25及び表26に示す。
ここで、表25に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:4.5μm)/第2ホログラム(膜厚:12μm)でNDフィルターを設けないもの、表26に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:4.5μm)/第2ホログラム(膜厚:12μm)で第1光束に透過率70%のNDフィルター設置したものである。
表25及び表26から第1光束にNDフィルターを設置して光強度を調整することで、第1光束/第2光束が1になり、等強度の分割光束が生成できることを確認した。
続いて、実施例1の液晶ホログラム素子を組み合わせて図27の光束分割素子を作製した。ホログラム素子への入射偏光はp偏光から45°回転した偏向方向とする以外は、前記と同様にして光束分割素子の温度特性を評価した。その結果を表27及び表28に示す。
ここで、表27に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:11μm)でNDフィルターを設けないもの、表28に示す光束分割素子は、第1ホログラム(膜厚:8μm)/第2ホログラム(膜厚:11μm)で第1光束に透過率80%のNDフィルター設置したものである。
表27及び表28から第1光束にNDフィルターを設置して光強度を調整することで、第1光束/第2光束が1になり、等強度の分割光束が生成できた。
この表25から表28により、入射する偏光方向によらず光量調整手段を設けることで、広い温度範囲において等しい強度の分割光束が生成できた。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 第1ホログラム素子、2 第2ホログラム素子、3 光量調整手段、11、12、21、22 基板、13、23 ホログラム層、100 光束分割素子。