以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る噴流浴装置の概略構成を表す模式平面図である。
図2は、同噴流浴装置において浴槽本体を側面方向から見た模式図である。
本実施形態に係る噴流浴装置は、浴槽本体1、加圧装置であるポンプ7、噴流ノズル11などを備える。
浴槽本体1は、略平行に相対向する一対の長辺側浴槽壁3a、3bと、略平行に相対向する一対の短辺側浴槽壁4a、4bとを有する。浴槽本体1の上縁部には、外側にフランジ状に張り出した浴槽リム2が設けられている。
長辺側浴槽壁3bには吸入口5が形成されている。加圧装置であるポンプ7が駆動されると、浴槽本体1に貯留された浴槽水(湯も含む)は吸入口5を介して流路13へと吸い込まれる。
流路13の一端は吸入口5に接続され、他端はポンプ7の吸入口に接続されている。ポンプ7は、吸入口5から流路13内に浴槽水を吸い込み、その吸い込んだ浴槽水を加圧してポンプ7の吐出口に接続された流路14に吐出する。このポンプ7から吐出された加圧浴槽水は、噴流ノズル11の内部に流入する。
使用していないときに、ポンプ7内部の残留水を抜くために、ポンプ7は吸入口5よりも上方に設けることが望ましい。また、浴槽水排水時に、流路13内の残水が吸入口5を介して排水できるように、流路13は図2に表すようにポンプ7側から吸入口5に向けて下り勾配とされることが望ましい。
吸入口5は浴槽本体1の底面に形成してもよいが、この場合前述した流路13の排水勾配をつけにくいため、吸入口5は浴槽壁に形成することが望ましい。また、一般に、入浴者は、一対の短辺側浴槽壁のうちの一方に背をもたれかけて、他方の短辺側浴槽壁に足を向けた姿勢で入浴するため、吸入口5を短辺側浴槽壁に形成した場合には、入浴者の背中や足裏で吸入口5がふさがれポンプ7に過剰の負荷がかかることが懸念される。したがって、吸入口5は、浴槽壁の中でも、入浴者の身体の一部等によってふさがれにくい長辺側浴槽壁に形成するのが望ましい。
図1に表すように、一方の短辺側浴槽壁4aには、例えば2つの噴流ノズル11が設けられている。2つの噴流ノズル11は、略同じ高さ(本実施形態では、浴槽本体1の底面から概ね230(mm))に所定距離隔てて(本実施形態では、2つの噴流ノズル11間の距離は概ね160(mm)で、且つ、2つの噴流ノズル11の設置位置の中心と短辺側浴槽壁4a方向の中央部が一致するように)設けられている。噴流ノズル11が設けられた一方の短辺側浴槽壁4aの反対側の他方の短辺側浴槽壁4b側には浴槽水栓が設けられる。したがって、入浴者は自然と噴流ノズル11が設けられた側の短辺側浴槽壁4aに背中を向けた姿勢で入浴する。
図3(a)は、噴流ノズル11及びその位置を移動させる機構を有する噴流装置の構成を例示する模式図である。噴流ノズル11の移動機構は遊星歯車機構であり、その遊星歯車機構の模式平面図を図3(b)に表す。
この遊星歯車機構は、サンギア39と遊星ギア38とアウターギア41とを有する。遊星ギア38は、アウターギア41の内側で自転しつつサンギア39を中心とした公転運動、すなわち遊星運動を行う。
アウターギア41は円形リング状に形成され、その内周部に歯が形成されている。アウターギア41はケーシング37に対して保持され、ケーシング37は短辺側浴槽壁4aに保持されている。したがって、アウターギア41は静止体に対して固定され回転しない。
ケーシング37内には、軸受35を介して導水シャフト34が通され、その導水シャフト34の先端はアウターギア41の中心に位置し、その先端にサンギア39が設けられている。導水シャフト34は、軸受35に回転可能に支持され、ケーシング37の外部でギア33、32を介してモータ31に連結されている。
導水シャフト34の内部は中空にされ、配管42を介して導入される流水の流路が形成されている。配管42と導水シャフト34とは、シール性を保ちつつ導水シャフト34の回転を可能にする構造で連結されている。
その構造を図4に示す。図4において、導水シャフト111、配管110は、それぞれ、図3における導水シャフト34、配管42に対応する。
導水シャフト111は配管110を貫通し、導水シャフト111において配管110内に臨む部分の管壁には複数の導水孔112が貫通形成されている。配管110内を流れてきた流水は導通孔112を通じて導水シャフト111内に導入される。
配管110の内部において導水シャフト111が入り込んでいる部分には一対のOリング114、115が保持されており、それら一対のOリング114、115は、導水孔112を導水シャフト111の軸方向に挟む位置に設けられ導水シャフト11の外周面に接触している。それらOリング114、115によって、配管110内の流水が、導水シャフト111との結合部から外部に漏れることが防止されている。導水シャフト111はOリング114、115に接触しつつ回転可能となっている。配管110は、導水シャフト111の外周面に装着された一対のCリング113によって導水シャフト111の軸方向の位置ズレが規制されて位置決めされている。
サンギア39は、導水シャフト34と共に一体となって回転する。サンギア39の外周部には歯が形成され、また、円盤状の遊星ギア38の外周部にも歯が形成され、両ギア38、39の歯は互いに噛み合っている。また、遊星ギア38の歯は、アウターギア41の内周部に形成された歯とも噛み合っている。
遊星ギア38において外周側の部分には、円筒状の噴流ノズル11が貫通固定されている。噴流ノズル11の先端は、浴槽本体1の内部に臨み、噴出口26として機能する。モータ31の駆動により導水シャフト34が回転されると、噴流ノズル11(噴出口26)は遊星ギア38と共に、アウターギア41の内側でサンギア39を中心とした遊星運動を行う。
噴流ノズル11は、ケーシング37内に設けられたフレキシブルホース43及び配管44を介して導水シャフト34内部の流路とつながっている。配管44と導水シャフト34とは、シール性を保ちつつ導水シャフト34の回転を可能にする構造で連結されている。その構造は、図4を参照して前述した構造と同じであり、配管44が図4における配管110に対応し、導水シャフト34が図4における導水シャフト111に対応する。
以上説明したように構成される本実施形態に係る噴流浴装置において、浴槽本体1近傍に設けられた図示しないコントローラのスイッチを入浴者が操作すると、ポンプ7が起動し、浴槽本体1に貯留された浴槽水が吸入口5から流路13内へと吸入される。この吸入された浴槽水は、ポンプ7にて加圧されて、流路14、配管42、導水シャフト34内部の流路、配管44およびフレキシブルホース43を介して、噴流ノズル11内に導入される。噴流ノズル11内に導入された加圧浴槽水は、噴出口26から、浴槽本体1に貯留された浴槽水中に噴出される。
噴出口26は、導水シャフト34の駆動により、自転しつつサンギア39のまわりを公転する遊星運動を行い、噴出口26は、導水シャフト34に対して略垂直な面(導水シャフト34を中心とする円状の移動面)を周方向に移動しつつ径方向にも移動する。その移動中、移動面に対する噴流ノズル11の角度すなわち噴流噴出角度は一定であり、例えば90°である。
図5(a)、(b)に、噴出口26の移動軌跡例を示す。遊星ギア38の歯数(半径)とアウターギア41の歯数(半径)との比によって、移動軌跡は変わる。(a)は遊星ギア38の歯数(半径)とアウターギア41の歯数(半径)との比を20:47とした場合、(b)は遊星ギア38の歯数(半径)とアウターギア41の歯数(半径)との比を13:47とした場合の移動軌跡例をそれぞれ示す。(a)の場合には、移動範囲の中心付近に集中的に噴流を当てることができる。
前述したように移動している噴出口26から噴出される噴流が、入浴者に対して衝突する噴流衝突部位の中心は、図6に例示されるように、第1の範囲aとこの第1の範囲aの周りを囲む第2の範囲bとを連続的に繰り返して移動する軌跡Lを描く。噴流衝突部位の中心は、曲率が一定な円や、直線的にジグザグする軌跡ではなく、曲率が変化する曲線を描く軌跡Lで移動する。
第1の範囲aは第1の円C1の円内であり、第2の範囲bは、第1の円C1と中心を共有し第1の円Cよりも直径が大きな第2の円C2の内側であって且つ第1の円C1の円内(第1の範囲a)を除く範囲である。
第1の範囲aは入浴者の例えば背中において噴流の衝突を受けて集中的に(局所的に)押されたい範囲(例えば直径20mmほどの円内)に対応し、噴流束の太さは人の指の太さ(特に親指太さ)に対応し、入浴者は噴流によって指圧マッサージを受けているような感じが得られる。
噴流衝突部位の移動軌跡Lは、曲率が一定な円状を描くのではなく、曲率が変化する曲線を描いて移動するので、前述した遊星歯車機構におけるギア比を適切に設定することで、人の指で押されるような指圧感を得るべく所望の狭い範囲(第1の範囲a)に局所的に集中して噴流を当てることができる。
図7に表すように、第1の円C1の半径をR1、第2の円の半径をR2、噴出口26の半径をRnとした場合、R2−R1<Rnとすれば、約2Rnの太さの噴流の一部が常に第1の範囲a内にあり、入浴者が噴流を当てたいと思う部位(第1の範囲a)に常に噴流が当たるため、その部位に集中的に噴流が当たることによる指圧感を得ることができ、また噴流を当てたいと思う部位に噴流が当たらずもどかしい思いをすることがない。
噴流は、同じ部位のみに受け続けると馴化したり、押されっぱなしとなるため、もまれる感じは受けにくい。しかし、本実施形態では、噴出口26は第1の円C1及び第2の円C2の周方向に移動しつつ径方向にも移動するため、入浴者に対する噴流衝突部位が、押したい部位(第1の範囲a)だけでなくその周囲(第2の範囲b)にも移動するので、第1の範囲aに押圧力が作用する感じと、その押圧力が解除される感じとを繰り返す実際の指圧マッサージに近いリズム感を実現でき、また、噴流衝突部位が曲率が変化する曲線を描く軌跡で移動することもあって、機械的でなく自然と指で押されたまま人体表面上を移動するような指圧マッサージ感が得られる。このため、長時間入浴していても飽きがなくゆったりとリラックスできる。噴流をあまり広い範囲を移動させると、もみたい部位(第1の範囲a)になかなか噴流が到達しないため、第2の範囲bの最も外側を規定する第2の円C2の直径は30〜80(mm)程度が望ましい。
指(特に一般的な指圧でよく用いられる親指)でマッサージされている感覚を実現するためには、直径5cm以上8cm以下の第2の円C2の円内を、1cm以上3cm以下の太さの噴流束で押しながら移動させるのが望ましい。1cm以上3cm以下の太さの噴流束を実現するべく、噴流ノズル11の噴出口26の直径は1cm以上3cm以下とするのがよい。
また、指で押されたまま人体表面上を移動するような自然な指圧マッサージ感を得るためには、噴流衝突部位の移動速度を10〜50(cm/秒)とするのが望ましい。
図8(a)は、噴流ノズル11及びその位置を移動させる機構を有する噴流装置の他の具体例を表す模式図である。この具体例においても噴流ノズル11の移動機構は遊星歯車機構であり、その遊星歯車機構の模式平面図を図8(b)に表す。
本具体例では、アウターギア41と、アウターギア41の半径よりも大きな直径の遊星ギア47を有する。遊星ギア47は、アウターギア41の内側で自転しつつアウターギア41の中心のまわりを公転運動する。
アウターギア41は円形リング状に形成され、その内周部に歯が形成されている。アウターギア41はケーシング37に対して保持され、ケーシング37は短辺側浴槽壁4aに保持されている。したがって、アウターギア41は静止体に対して固定され回転しない。
ケーシング37内には、軸受35を介して導水シャフト34が通され、その導水シャフト34の先端は、ケーシング37内に設けられた円盤状の回転体45に結合されている。導水シャフト34は、軸受35に回転可能に支持され、ケーシング37の外部でギア33、32を介してモータ31に連結されている。
導水シャフト34の内部は中空にされ、配管42を介して導入される流水の流路が形成されている。配管42と導水シャフト34とは、シール性を保ちつつ導水シャフト34の回転を可能にする構造で連結されている。この構造は、図4を参照して前述した構造と同様であり、配管42が図4における配管110に対応し、導水シャフト34が図4における導水シャフト111に対応する。
回転値45の内部には、導水シャフト34内部の流路と連通した流路が形成されている。回転体45の外周側部分には、導水シャフト34に対して略平行に延在した導水シャフト46が設けられている。導水シャフト46の内部は中空にされ、回転体45内部の流路と連通した流路が形成されている。
導水シャフト46は、回転体45に対してシール性を保ちつつ導水シャフト46の回転を可能にする構造で連結されている。その構造は、図4を参照して前述した構造と同様であり、内部に流路が形成された回転体45は図4における配管110に対応し、導水シャフト46は図4における導水シャフト111に対応する。
モータ31の駆動により導水シャフト34が回転されると、導水シャフト34と一体に回転体45が回転する。導水シャフト46は、回転体45の回転に伴って、導水シャフト34を中心とした円を描く軌跡でもって回転移動する。導水シャフト46において遊星ギア47側に突出した先端は遊星ギア47に結合、遊星ギア47は、導水シャフト46の軸中心まわりの回転により自転可能となっている。
遊星ギア47の外周部には歯が形成され、その歯はアウターギア41の内周部に形成された歯と噛み合っている。遊星ギア47において外周部側の部分には、円筒状の噴流ノズル11が貫通固定されている。噴流ノズル11の先端は、浴槽本体1の内部に臨み、噴出口26として機能する。
噴流ノズル11は、配管48を介して導水シャフト46内部の流路とつながっている。導水シャフト46、配管48、噴流ノズル11および遊星ギア47は一体に構成されている。
モータ31の駆動により導水シャフト34及び回転体45が回転されると、導水シャフト46は導水シャフト34を中心に円を描く軌跡で移動し、これにより、噴出口26は遊星ギア47と共に、アウターギア41の内側で遊星運動を行う。すなわち、噴出口26は導水シャフト34に対して略垂直な面(円状の移動面)を周方向に移動しつつ径方向にも移動する。このとき、その移動面に対する噴流ノズル11の角度すなわち噴流噴出角度は一定(例えば90°)である。
図5(c)、(d)に、図8の実施形態の場合における噴出口26の移動軌跡例を示す。遊星ギア47の歯数(半径)とアウターギア41の歯数(半径)との比によって、移動軌跡は変わる。(c)は遊星ギア47の歯数(半径)とアウターギア41の歯数(半径)との比を42:47とした場合、(d)は遊星ギア47の歯数(半径)とアウターギア41の歯数(半径)との比を24:47とした場合の移動軌跡例をそれぞれ示す。(d)の場合には、移動範囲の中心付近に集中的に噴流を当てることができる。
そのように移動している噴出口26から噴出される噴流が、入浴者に対して衝突する噴流衝突部位の中心は、図9に例示されるように、第1の範囲aとこの第1の範囲aの周りを囲む第2の範囲bとを連続的に繰り返して移動する軌跡Lを描く。噴流衝突部位の中心は、曲率が一定な円や、直線的にジグザグする軌跡ではなく、曲率が変化する曲線を描く軌跡Lで移動する。
第1の範囲aは、第1の円C1の円内であり、第2の範囲bは、第1の円C1と中心を共有し第1の円C1よりも直径が大きな第2の円C2の内側であって且つ第1の円C1の円内(第1の範囲a)を除く範囲である。
第1の範囲aは入浴者の例えば背中において噴流の衝突を受けて集中的に(局所的に)押されたい範囲(例えば直径20mmほどの円内)に対応し、噴流束の太さは人の指の太さ(特に親指太さ)に対応し、入浴者は噴流によって指圧マッサージを受けているような感じが得られる。
噴流衝突部位の移動軌跡は、曲率が一定な円状を描くのではなく、曲率が変化する曲線を描いて移動するので、遊星歯車機構におけるギア比を適切に設定することで、人の指で押されるような指圧感を得るべく所望の狭い範囲(第1の範囲a)に局所的に集中して噴流を当てることができる。
また、噴出口26は第1の円C1及び第2の円C2の周方向に移動しつつ径方向にも移動するため、入浴者に対する噴流衝突部位が、押したい部位(第1の範囲a)だけでなくその周囲(第2の範囲b)にも移動するので、第1の範囲aに押圧力が作用する感じと、その押圧力が解除される感じとを繰り返す実際の指圧マッサージに近いリズム感を実現でき、また、噴流衝突部位が曲率が変化する曲線を描く軌跡で移動することもあって、機械的でなく自然と指で押されたまま人体表面上を移動するような指圧マッサージ感が得られる。このため、長時間入浴していても飽きがなくゆったりとリラックスできる。
図10に示すように、噴流衝突部位の中心の軌跡Lが、第2の範囲bのみを移動して第1の範囲a内に入らない場合には、噴流を当てたい部位に当てることができない。また、噴流が第1の範囲aだけに当たると、人が指で押しながら人体表面上を移動させる自然な指圧マッサージ感が得られず、また同じ部位が押されっぱなしにされることによる馴化をまねく。したがって、噴流衝突部位の中心が、第1の範囲aと第2の範囲bとを繰り返して移動する軌跡を描くように適切な設計が必要である。
図11に示すように、遊星ギア38の半径r1がアウターリング41の半径r2の半分以下(r1≦(r2/2))の場合、第1の円C1、第2の円C2およびアウターリング41の中心を一致させ、第1の円C1の半径をR1、第2の円C2の半径をR2、遊星ギア38の中心と噴出口26の中心との間の距離をrdとすると、噴流衝突部位の中心の軌跡が第1の範囲aと第2の範囲bとを繰り返して往き来する条件は、R1>r2−(r1+rd)となる。
図12に示すように、遊星ギア47の半径r1がアウターリング41の半径r2の半分より大きい(r1>(r2/2))場合、第1の円C1、第2の円C2およびアウターリング41の中心を一致させ、第1の円C1の半径をR1、第2の円C2の半径をR2、遊星ギア47の中心と噴出口26の中心との間の距離をrdとすると、噴流衝突部位の中心の軌跡が第1の範囲aと第2の範囲bとを繰り返して往き来する条件は、R1>rd−(r2+r1)となる。
前述した構成において、遊星ギアに複数のノズルを設け、第1の範囲aおよび第2の範囲bに複数本の噴流束を当てることも可能であるが、狭い部位を複数本の噴流束で押されるよりも単一(1本)の噴流束で押される方が、押されている点を入浴者が認知しやすく押圧点が人体表面上を移動する感じを得ることができ、自然な指圧感を感じやすい。すなわち、人体の皮膚は、互いに接近した複数部位への同時刺激よりも、1部位への刺激の方が刺激の変化をより感じやすく、例えば背中の2点に刺激を与える場合それら部位が40(mm)以上離れていた方が2点に別の刺激があることを感じやすい。そこで、背側(短辺側浴槽壁4a)に複数の噴流ノズル11を設ける場合には、それら2つの噴流ノズル11は少なくとも50(mm)以上、好ましくは100(mm)以上離して設けるのが好ましい。
また、人体が気泡入り噴流を受けた場合、噴流が衝突していると感じる部位とそうでない部位との境界は、複数点における気泡の衝突感および浮力による気泡の上昇によりあいまいとなり、人体表面での水流の移動を明瞭に感じることは難しかった。そのため、水流で押されたまま人体表面上を移動する感じは受けられず、指で押されたまま人体表面上を移動するような指圧マッサージ感を得にくい。
したがって、噴流に気泡を混入しないことで、気泡の影響を受けずに、人体表面での水流の移動を明瞭に感じることができ、水流で押されたまま人体表面上を移動する感じ、すなわち指で押されたまま人体表面上を移動するような指圧マッサージ感を得ることができる。なお、直径が数十(μm)以下の気泡(マイクロバブル、ナノバブル等)は噴流に含まれてもよい。そのような直径が数十(μm)以下の気泡が噴流に含まれたとしても人体表面での水流の移動を明瞭に感じることができる。
図3、8に表される前述した実施形態において、噴出ノズル11の延在方向は回転軸である導水シャフト34に対して略平行であり、噴出ノズル11(噴出口26)の移動面に対して噴流噴出角度が一定(約90°)である。すなわち、遊星ギアの回転に伴って噴出口26は位置を移動させていくが、噴流噴出方向は一定(噴出口26の移動面に対して略垂直方向)であり、ノズル先端と入浴者との間の距離が変動しても人体表面上における噴流衝突範囲は大きく変わらず、ほぼ同一範囲に安定して噴流を当てることができるため、ノズル先端と入浴者との間の距離の影響を受けることなく所望の指圧マッサージ感を安定して得やすい。
ここで、図2に表されるように、入浴者が短辺側浴槽壁4aに背をもたれて、くつろいで入浴する場合、臀部を短辺側浴槽壁4aからやや離れた位置に置き、図示しない浴槽用枕等に頭部をのせたり、首、肩あるいは背の一部を短辺側浴槽壁4aに接触させた入浴姿勢をとることから、入浴者の上半身は自然と短辺側浴槽壁4aに対して傾斜し、噴流ノズル11が設置されている高さ(本実施の形態では底面より230mm)では、短辺側浴槽壁4aと入浴者との間には概ね30〜100(mm)程度の隙間が生じる。また、一方で、噴流ノズル11は互いに着脱自在な少なくとも2つ以上の複数のノズル構成部品からなり、これら複数のノズル構成部品によって、短辺側浴槽壁4aに開口する穴部に、例えばフランジ等の接続手段を用いて、短辺側浴槽壁4aを挟み込むようにして保持されるから、噴流ノズル11の先端つまり、噴出口26は、短辺側浴槽壁4aに対して、概ね5〜10(mm)浴槽内部に位置する。
すなわち、噴流ノズル11を短辺側浴槽壁4aに配置することで、噴出口26から人体までの距離は概ね20〜95(mm)程度となり、短辺側浴槽壁4aに背をもたれた入浴者の身体の一部に的確に噴流を当てることができ、十分な指圧感を与えることができる。
特に噴流に気泡を混入しない場合にはやわらかい刺激となり、直線的な強い刺激を与える気泡入り噴流の場合に比べて、入浴者は噴出口26に近づきやすく、場合によっては噴出口26を背中で塞いでしまうことが起こり得る。
そこで、噴流ノズル11の先端部を、図2に表すように、噴流ノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aの内面より浴槽内方に例えば10(mm)出っ張らせれば、入浴者がその背をぴったり短辺側浴槽壁4aの内面に沿わせた場合には、噴流ノズル11の出張部11aが背に当たり不快に感じるため、入浴者は自然と背を短辺側浴槽壁4aから離す姿勢をとることになり、噴出口26が入浴者の背で塞がれてしまうのを防ぐことができる。
噴流ノズル11先端部の、浴槽壁内面からの出っ張り長さが(5mm)以下では入浴者が感触として噴流ノズル11の出っ張りを感じにくく、また、出っ張り長さが30(mm)以上ではその出っ張った部分が入浴中に邪魔となり、またデザイン性も損ねる。したがって、噴流ノズル11先端部の、浴槽壁内面からの出っ張り長さは5〜30(mm)の間に設定するのが望ましい。
前述した具体例では、入浴者に対する噴流衝突部位の中心が、曲率が変化する曲線を描きながら第1の範囲aと第2の範囲bとを連続的に繰り返して移動する軌跡を実現するために、噴出口26を遊星運動させる構造を採用したが、これに限らず、噴流噴出角度(噴出方向)を変化させることでも前記軌跡は実現可能である。
噴流噴出角度を変化させる構成の一例として、図13に示すように、噴流ノズル60を2軸ステージ53と連結させて揺動させる構成が挙げられる。
噴流ノズル60は、直交する2軸方向(例えば、図13において上下方向と、紙面を貫く方向)に揺動可能に支持体51に保持され、その揺動を許容すべく可撓性を有するフレキシブルホース52を介して加圧浴槽水の供給流路に接続されている。噴流ノズル60においてフレキシブルホース52との接続部近傍の部分がシャフト56を介して2軸ステージ53に連結され、2軸ステージ53が前述した2軸方向に移動することで、噴流ノズル60は支持体51に保持された部分を中心に2軸方向に揺動する。
2軸ステージ53を、図14に例示するように曲率が変化しつつ楕円状の曲線を描く軌跡でもって移動させると、前述した揺動機構により噴流ノズル60吐出先端軌跡も図14に示すような軌跡でもって移動し、これに伴い噴出口26からの噴流噴出方向が連続的に変化する。
そのような挙動をする噴出口26から噴出される噴流が、入浴者に対して衝突する噴流衝突部位の中心は、図14に例示されるように楕円状の曲線を描く軌跡でもって、前述した第1の範囲aと第2の範囲bとを連続的に繰り返して移動する。
この具体例においても、入浴者に対する噴流衝突部位が、押したい部位(第1の範囲a)だけでなくその周囲(第2の範囲b)にも移動するので、第1の範囲aに押圧力が作用する感じと、その押圧力が解除される感じとを繰り返す実際の指圧マッサージに近いリズム感を実現でき、また、噴流衝突部位が曲率が変化する曲線を描く軌跡で移動することもあって、機械的でなく自然と指で押されたまま人体表面上を移動するような指圧マッサージ感が得られる。
また、実際に人が指圧マッサージをする場合においては、人体表面に対して荷重を加えながら、その荷重位置を移動させるため、人体表面に対する荷重作用方向は概ね人体表面に対して斜め方向となる。本具体例のように噴流噴出角度を変えることで、人体表面に対して斜めに噴流束を当てつつ噴流衝突点を移動させることができ、実際に人の指で押される感じに近い指圧マッサージ感覚を得やすい。
図15は、噴流噴出角度を変化させる構成の他の具体例を示す。
この噴流装置は、筒体64と、円盤状の回転体71と、封止体72とによって囲まれたチャンバー66を有し、チャンバー66内は、配管65を介して加圧浴槽水の供給流路につながっている。
チャンバー66内には、軸受シール63を介して内部の水密性を確保しつつ回転軸62が通され、その回転軸62は回転体71の中心に結合されている。回転軸62は、軸受シール63に回転可能に支持され、回転軸62の他端側はチャンバー66の外部でモータ61に連結されている。
噴流ノズル70は回転体71の外周部側に設けられ、噴出口26が形成された先端側はチャンバー66の反対側に突出している。噴流ノズル70は、その根元部67を支点に揺動自在に設けられている。噴流ノズル70は、ワイヤまたはロッド等の連結部材68を介して、電動モータまたは流体圧駆動のアクチュエータ等の駆動装置69と連結されている。駆動装置69は、回転体71に対して保持されている。
駆動装置69の駆動により連結部材68が伸縮駆動されると、その連結部材68を介して噴流ノズル70が駆動装置69側に引き寄せられたり遠ざけられることで、噴流ノズル70は根元部67を支点に揺動する。
また、モータ61の駆動により回転体71が回転されると、噴出口26は回転軸62に対して略垂直な面(円状の移動面)を、円を描くように周方向に移動する。この移動中に、前述した揺動機構により移動面に対する噴流噴出角度を変化させる。
そのような挙動をする噴出口26から噴出される噴流が、入浴者に対して衝突する噴流衝突部位の中心は、曲率が変化する曲線を描く軌跡でもって、前述した第1の範囲aと第2の範囲bとを連続的に繰り返して移動する。
噴出角度(噴出方向)を変化させる場合、図3、8に示す構成のように噴出角度(噴出方向)が一定の場合に比べて、噴流ノズルと人体との間の距離の変動によって、噴流が人体に当たる範囲(衝突範囲)が変わりやすく所望の指圧感を得られない場合がある。そこで、噴流ノズルと入浴者との距離を計測し、その距離に応じて噴流噴出角度を適切に設定することで、噴流噴出角度を変化させる場合でも、所望の指圧感を確実に安定して得ることが可能となる。
図16は、距離計測手段と噴出角度設定手段を設けた噴流浴装置を示す。
噴流ノズル11が設けられた短辺側浴槽壁4aにおいて噴流ノズル11の近くに、例えばレーザー距離計、超音波距離計、赤外線距離計等の距離計測手段75が設けられている。
浴槽本体1の外側には、コントローラ76とノズル角度可変装置77を有する噴出角度設定手段が設けられている。コントローラ76には、距離計測手段75によって計測された距離データが入力し、その距離データに応じて、コントローラ76はノズル角度可変装置77を駆動する。ノズル角度可変装置77は、例えば電動モータ、流体圧駆動のアクチュエータ等であり、噴流ノズル11を動かして噴流噴出角度(噴流噴出方向)を変える。
短辺側浴槽壁4aの内面(噴流ノズル11の噴出口)と、入浴者との間の距離(浴槽本体1の底面に対して略平行な方向の距離)をXとすると、この距離Xは距離計測手段75の計測によって得られる。
噴出口と入浴者との間を結ぶ、浴槽本体1の底面に対して略平行な線(長さX)を基準とした場合の噴出角度は図16においてθで表せる。噴流衝突部位の人体表面上での移動範囲を表す前述した第1の範囲、第2の範囲は、(X×tanθ)の大きさによって規定される。θ0<θmとして、第1の範囲を規定する円の半径(X×tanθ0)、第2の範囲を規定する(X×tanθm)における噴出角度θ0、θmを距離Xに応じて適切に設定することで、距離Xが変動しても、噴流束を人体表面上における所望の範囲(第1の範囲、第2の範囲)を移動させつつ当てることができ、人の指で押されたまま人体表面上を移動するような自然な指圧マッサージ感を確実に得ることができる。
また、図2に示すように、噴流ノズル11の先端側の部分を浴槽壁4aの内面から浴槽内に出っ張らせて、その出張部11aの出っ張り長さを適切に設定することで、噴出口26と人体との間の距離を所望の距離(例えば30〜80(mm))に自然とさせることができ、人の指で押されたまま人体表面上を移動するような自然な指圧マッサージ感を得ることができる。この具体例では、噴流ノズル11の出張部11aが、姿勢規制手段として機能する。
入浴者の姿勢を規制する姿勢規制手段としては、噴流ノズル11の出張部11aに限らない。例えば、図17に示すように、噴流ノズル11が取り付けられた短辺側浴槽壁4aの上部(噴流ノズル11取付位置よりも上方の部分)に、浴槽内方に向けて出っ張った枕101や背当て102を設けることで入浴者を所望の姿勢に規制して、噴出口26と、入浴者の背または腰との間に所望の間隔が自然と形成され、噴出口26が塞がれることを防いだり、指圧感を得るのに適切な距離を保つことができる。
また、図18は、姿勢規制手段のさらに他の具体例を表す模式図である。
この具体例では、噴流ノズル11が設けられた一方の短辺側浴槽壁4aにおける噴流ノズル11設置部位よりも上方に、下方(浴槽底部)に向かうほど対向する他方の短辺側浴槽壁4bとの距離が短くなるよう傾斜した傾斜面104を姿勢規制手段として設けている。入浴者がその傾斜面104に背を沿わせてもたれることで、自然と、噴流ノズル11先端と入浴者との間に隙間が生じ、噴出口26が塞がれることを防いだり、指圧感を得るのに適切な距離を保つことができる。
本発明者等の検討によれば、傾斜面104の下端を噴出口26の中心から50(mm)ほどの高さに位置させ、その下端を通る鉛直線Zに対して角度θ=10〜15°ほど傾斜面104を浴槽壁4aの外側に傾倒させた場合、入浴者が背中を傾斜面104に沿わせてもたれると、噴流ノズル11先端と、入浴者の背中との間隔を20〜95(mm)とすることができるとの知見が得られた。なお、傾斜面104は平坦面であることに限らず曲面状であってもよい。
図19は、噴流噴出角度を一定に保った状態で、2軸ステージ53を用いて噴流ノズル80(噴出口26)を移動させることで、図14に例示される移動軌跡を実現する構成を示す。
浴槽壁4aに保持されたケーシング85の内部に2軸ステージ53が設けられ、その2軸ステージ53に対してシャフト54及び配管83を介して噴流ノズル80が連結されている。配管83の先端に噴流ノズル80が設けられ、その噴出口26は浴槽内部に臨んでいる。配管83の他端側はフレキシブルホース82に接続され、フレキシブルホース82は、前述したポンプ7から送られる加圧浴槽水の導水管81に接続されている。
噴流ノズル80と配管83は、2軸ステージ53と一体となってケーシング85内を移動され、この移動を許容するため、噴流ノズル80及び配管83は、フレキシブルホース82を介してケーシング85外部に設けられた導水管81に接続されている。噴流ノズル80の移動面に対する角度すなわち噴流噴出角度θは、一定に保たれる。
図19において横方向から見た2軸ステージ53の移動軌跡は、図14に例示するように楕円状の曲線を描く軌跡であり、したがって、噴出口26も図14に示す軌跡でもって移動する。この結果、その噴出口26から噴出される噴流が入浴者に対して衝突する噴流衝突部位の中心は、図14に示す軌跡でもって、前述した実施形態と同様に第1の範囲aと第2の範囲bとを連続的に繰り返して移動する。