図1は本発明によるベーパ回収装置の一実施例を示すシステム系統図である。本実施例では、給油所に接地された地下タンクに液体燃料を荷卸しする場合を例に挙げて以下説明する。図1に示されるように、給油所に設置された地下タンク10には、ベーパ回収装置20が設けられている。また、地下タンク10は、図1では省略された地中に埋設されており、地上に延在する荷卸し管30と、計量機40に給液する給液管50と、通気管60とが挿入されている。
荷卸し管30は、地上に突出する上端に、タンクローリ車31に積載された油液(液体燃料)を荷卸しするための荷卸しホース32が接続される注油口34が設けられている。
また、通気管60は、上端にタンク内圧力が予め設定された所定圧以上に上昇した場合に排気側が開弁し、給油により地下タンク10内圧力が低下した場合には給気側が開弁するように構成された安全弁70が設けられている。
さらに、地下タンク10の上部空間12に連通された通気管60には、タンク内圧力を検出する圧力センサ(荷卸し検出手段)62が設けられている。本実施例では、圧力センサ62は、通気管60のベーパ回収管80が分岐される位置の圧力を検出するように取り付けられている。この圧力センサ62は、タンクローリ車31から地下タンク10に荷卸しされた油液の荷卸し量に応じて液面が上昇した場合や後述の脱着工程時においてベーパが地下タンク10に導入されることにより生じうる圧力上昇や計量機40による給油によって液面が低下した場合の圧力低下を検出するものである。そして、圧力センサ62によって検出された圧力測定値の信号は、後述する制御装置150に入力される。
ここで、本実施例では、荷卸し検出手段として圧力センサ62を使用し、圧力センサ62により検出された圧力変化に基づいて脱着工程での荷卸しがなされているか否かを検出する場合を説明するが、荷卸し検出手段としては圧力センサ62以外のものを使用しても良い。これ以外の荷卸し検出手段としては、例えば、荷卸しホース32が接続される注油口34にホース接続を検出する検出スイッチ(図示せず)を設け、この検出スイッチから出力されたホース検出信号に基づいて荷卸し開始を検出しても良いし、あるいは地下タンク10に設けられている液面計(図示せず)により液面上昇が検出された場合に荷卸し開始を検出するようにしても良い。
ベーパ回収装置20は、通気管60より分岐されたベーパ回収管80と、吸着剤90が充填された吸着槽100と、吸着槽100の排気口102に連通された排気管110と、排気管110を開または閉とする排気弁114と、吸着槽100の給気口104に連通された三方弁120と、吸着槽100で脱着された燃料成分を地下タンク10に還流させる還流管130とを有する。
吸着槽100は、内部を上層領域100a、中間層領域100b、下層領域100cの3ブロックに分けた場合、各ブロックの温度を測定する温度センサ(温度検出手段)141〜143が取り付けられている。温度センサ141〜143としては、熱電対などからなり、各温度センサ141〜143の防爆構造とされた温度検出部が吸着槽100に挿入されている。また、温度センサ141〜143は、夫々高さ位置の異なる上層領域100a、中間層領域100b、下層領域100cに充填された吸着剤90の温度を測定し、その検出温度に対応する電気的な検出信号を制御装置150に入力する。尚、温度センサの数及び設置場所は、上記数及び設置場所に限らない。また、温度センサ141〜143としては、測温抵抗体あるいはサーミスタ等を用いても良い。
排気管110は、上端開口112が高所に延在しており、吸着槽100を通過する過程でベーパを分離された気体を上端開口112から大気中に放出させる。また、排気管110の途中には、電磁弁からなる排気弁114が配置されており、排気弁114は制御装置150により吸着工程のとき開弁し、脱着工程のときは閉弁するように制御される。
また、排気弁114と排気口102との間には、パージ管116が接続されており、パージ管116には、電磁駆動式のパージ弁118が設けられている。このパージ弁118は、制御装置150により弁開度を制御されており、脱着工程が開始されて温度変化率が所定以下になったときに開弁され、パージガスを吸着槽100の排気口へ供給するパージガスの流量を調整する。尚、本実施例においては、パージ管116は、その端部がパージガスを生成する圧縮機119に連通されており、圧縮機119によって加圧された空気あるいは窒素ガスをパージガスとして供給するようになっているが、これに限るものではなく、例えば、圧縮機119を取り外し、パージ管116に外気を直接導入するようにしても良い。
三方弁120は、ベーパ回収管80が連通されたaポートと、給気口104に連通されたbポートと、還流管130に連通されたcポートとを有し、電磁アクチュエータ122により弁体を切替動作させるように構成されている。従って、三方弁120は、制御装置150からの制御信号により電磁アクチュエータ122が駆動されて、吸着工程時にはaポートとbポートとを連通させ、あるいは脱着工程時にはbポートとcポートとを連通するように切り替える。
さらに、還流管130には、脱着工程時に駆動されて吸着槽100内を減圧する吸引ポンプ(脱着手段)160と、吸着槽100から吸引されたベーパを冷却して液化する冷却ユニット170とが配置されている。この吸引ポンプ160及び冷却ユニット170は、制御装置150によって吸着工程時には停止され、脱着工程時には駆動されるように制御される。吸引ポンプ160は、比較的小容量のポンプであり、製造コストが安価であると共に、消費電力の点からも低コスト化されている。
そして、荷卸し作業が終了すると、脱着工程に移行して吸着槽で吸着された燃料成分を吸引ポンプ160の吸引力によって脱着させ、脱着された燃料成分を冷却ユニット170で液化して地下タンク10に還流させる。
制御装置150(制御手段)のメモリには、後述するように吸着槽100の吸着剤90に吸着された燃料成分を吸引ポンプ160によって吸着剤90から脱着する脱着工程で圧力センサ62により検出された圧力から圧力上昇率を求め、この圧力上昇率から地下タンク10への荷卸しが行なわれていることが検出された場合(荷卸し検出手段)に吸引ポンプ160による脱着工程を停止し、吸着槽100へベーパを供給して吸着工程を開始させる制御プログラム(脱着工程停止制御手段)と、圧力センサ62により検出された圧力が予め設定された設定圧力以上である場合、地下タンク10の上部空間12の容積が不足していると判定する制御プログラム(タンク容積判定手段)と、地下タンク10の上部空間の容積が不足していると判定された場合、吸引ポンプ160による脱着工程を停止させる制御プログラム(脱着停止手段)が格納されており、制御装置150は、各制御プログラムに基づいて演算処理を実行する。
図2は圧力センサ62により測定されたタンク上部空間12の圧力変化及び液面高さの変化を示すグラフである。図2に示すグラフIは、地下タンク10の液面高さ(液位)の変化を示すグラフであり、グラフIIは地下タンク10の上部空間12のタンク圧力の変化を示すグラフである。
グラフIにより示す地下タンク10の液面高さは、タンクローリ車31からの荷卸しによって上昇し、荷卸し終了後の計量機40による給油によって低下する。一方、グラフIIでは、荷卸しが開始されると地下タンク10の上部空間12の容積が減少することにより上部空間12内のベーパが吸着槽100に供給されて吸着工程が行われる。また、地下タンク10より供給されたベーパが吸着槽100の吸着剤90に吸着された後脱着工程になると吸着槽100の吸着剤90から燃料成分が脱着されて濃縮されたベーパが地下タンク10に還流されるため、上部空間12の圧力が上昇する。
一方、脱着工程時における上部空間12の圧力上昇の度合いは、地下タンク10における液面高さによっても変化する。即ち、上部空間12の容積が大きい場合には、この容積が小さい場合に比べて圧力上昇(圧力上昇率)が小さくなる。このため、給油が複数回行なわれて液面高さが低いときに行なわれた脱着工程A(図2のt5〜t6)の圧力上昇率ΔP1と、荷卸し終了直後の液面高さが高いときに行なわれた脱着工程B(図2のt8〜t9)の圧力上昇率ΔP2とを比較すると、ΔP1<ΔP2となる。また、地下タンク10の上部空間12の容積が小さいことに起因して脱着工程時に上部空間12の圧力が所定の圧力PHH(第1の圧力値)に達っした場合(図2のt9)には脱着工程を停止し、その後、地下タンク10内の液面の高さが上記脱着工程Bの停止時点の高さより低下して上部空間12の容積が増大することにより、所定の圧力PL(中間値)まで低下した場合(図2のt10)には、脱着工程が再開されることになるが、この場合の脱着工程C(図2のt10〜t11)の圧力上昇率ΔP3は、脱着工程Bの際における圧力上昇率ΔP2よりも小さくなる。この結果、各圧力上昇率の大小関係はΔP1<ΔP3<ΔP2となる。
従って、上部空間12の圧力は、脱着工程が行なわれているか否か及び地下タンク12内の液面の変化に応じて変動するため、圧力センサ62により上部空間12の圧力を測定することにより、上部空間12の容積と上部空間12のベーパ発生量との関係から脱着工程の実施が可能か否かを推測することができる。
また、本実施の形態においては、圧力センサ62により測定される圧力値が所定の圧力値PL(第2の上限圧力値)以上であり、かつ、圧力変化率ΔPが所定変化率ΔPS以上に達した場合に脱着工程から吸着工程に移行するようになっている。ここで、この圧力変化率ΔPSは前述の脱着工程時に生じうる最大の圧力上昇率よりも大きな値が設定されている。なお、荷卸し時の圧力変化率が脱着工程時の圧力変化率よりも大きい値に設定されている理由は、脱着工程時に荷卸しが行なわれた場合には、脱着工程と荷卸しとの両方の圧力上昇要因により圧力上昇が生じるのに対して、荷卸しが行なわれていない脱着工程時においては脱着工程のみが圧力上昇要因となるためである。
なお、地下タンク10の液面高さは、t1〜t2の間にタンクローリ車31からの荷卸しにより液面が上昇し、例えば、タンク容量の90%程度まで荷卸しされる。
タンクローリ車31から地下タンク10への荷卸しが開始されると、荷卸しが開始されてから地下タンク10で発生したベーパの回収が終了するまで、吸着槽100で吸着工程が行なわれる。
一方、荷卸し終了後、計量機40による給油が行なわれると、地下タンク10の液面が低下するため、液面高さは、徐々に減少する。
本実施例では、脱着工程が行われている際に圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)より得られる圧力変化率ΔPが圧力上昇率ΔPSよりも大きくなったことが検出された場合(図2のt7)に、タンクローリ車31からの荷卸しが開始されたものと判断し、吸引ポンプ160の運転を停止させて脱着工程を停止し、且つ三方弁120を吸着工程時の状態に切り替えることにより、吸着工程を行なう。
そして、タンクローリ車31から地下タンク10への荷卸しにより地下タンク10より排出されるベーパが吸着槽100の吸着剤90に吸着された後、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定値PL(中間値)以下であることを条件に吸引ポンプ160の運転を再開させて脱着工程(脱着工程B)を再開させるべく三方弁120を脱着工程側に切り替える。また、脱着工程Bにおいて、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定圧力PHH(第1の上限値)に達した場合(図2のt9)、地下タンク10の上部空間12の容積が不足しているので、吸引ポンプ160の運転を停止し、吸着も脱着も行なわない停止状態(待機状態)とする。
これにより、荷卸し終了直後の地下タンク10の上部空間12の容積が小さくなった状態で吸引ポンプ160を介して還流された燃料成分により上部空間12の圧力が安全弁70が開弁する圧力値に上昇することによりベーパが大気に放出されるのを防止している。
この後、計量機40の給油により地下タンク10内の液面が低下して上部空間12の容積が増大することにより上部空間12の圧力がPL(中間値)未満(図2のt10)に低下したときは、吸引ポンプ160の運転を再開して脱着工程(脱着工程C)が行なわれる。そして、この脱着工程Cは吸着槽100の吸着剤90よりベーパの脱着が完了するか、或いは上部空間12の圧力が所定圧力PHH(第1の上限値)に達する(図2のt11)まで行なわれる。以下同様に、圧力センサ62により検出された圧力Pに基づいて吸着工程、脱着工程、待機状態の何れかを選択することになる。
図3は温度センサ141〜143により測定された吸着工程、脱着工程の温度変化を示すグラフである。図3に示されるように、吸着槽100に充填された吸着剤90は、例えば、多孔質のシリカゲルなどからなり、微細な孔にベーパ(液体燃料成分が蒸発した油蒸気)に含まれる燃料成分(石油に主成分となる炭化水素:HC成分)を吸着(化学的吸着と物理的吸着)する性質を有している。そして、吸着剤90がベーパに含まれる燃料成分を吸着する際に熱を発し、吸着された燃料成分を脱着する際に熱を奪うため、吸着槽100で吸着が行なわれている間は温度センサ141〜143により温度上昇が検出され、吸着槽100で脱着が行なわれている間は温度センサ141〜143により温度低下が検出される。尚、吸着剤としては、シリカゲル以外のもの、例えば、ゼオライト、炭素系吸着剤などを用いても良い。
温度センサ141〜143により検出された温度変化は、夫々図3のグラフf1〜f3に示すように外気温(図3中、破線で示す規準線)に対して温度上昇と温度低下とを所定のサイクルで繰り返すように表せる。
一方、地下タンク10においては、計量機40による給油が行なわれることにより液面が低下すると共に、液面より上方の上部空間12にベーパが発生する。そして、油槽所で油液が積載されたタンクローリ車30が給油所に到着し、荷卸し管30に荷卸しホース32が接続されると、地下タンク10への荷卸しが開始される。
その際、地下タンク10においては、油液の荷卸しに伴って液面が上昇し、上部空間が次第に狭くなる。このような、荷卸し時は、吸着工程(三方弁120のaポートとbポートとを連通させる)が設定される。これにより、地下タンク10内の上部空間12に滞留していたベーパがベーパ回収管80を介して吸着槽100の下側に開口する給気口104に供給される。
給気口104より供給されたベーパに含まれる燃料成分は、吸着槽100の下層領域100cの吸着剤90に吸着されるため、荷卸し開始直後から吸着槽100の下層領域100cに設けられた温度センサ143によって検出された温度が急激に上昇する(グラフf3参照)。
吸着槽100の下層領域100cの吸着剤90によって燃料成分が吸着されなかったベーパは、排気口102側(上方)へ流れるため、吸着槽100の中間層領域100bの吸着剤90によって吸着される。そのため、荷卸し開始後に中間層領域100bの温度センサ142によって検出された温度が下層領域100cより若干遅れて上昇する(グラフf2参照)。
吸着槽100の中間層領域100bの吸着剤90によって燃料成分が吸着されなかったベーパは、さらに排気口102側(上方)へ流れるため、吸着槽100の上層領域100aの吸着剤90によって燃料成分を吸着される。そのため、荷卸し開始後に上層領域100aの温度センサ141によって検出された温度が下層領域100c、中間層領域100bの温度より若干遅れて上昇する(グラフf1参照)。
このように、吸着槽100には、異なる高さ位置に温度センサ141〜143が分散配置されているので、各領域100a〜100cでの温度変化を検出することが可能になり、荷卸し開始(T1)から荷卸し終了(T2)までの吸着槽100の状態を各温度センサ141〜143に検出された温度変化率(吸着時は温度上昇率、脱着時は温度低下率)に基づいて確認することが可能になる。また、地下タンク10からのベーパ供給が止まると吸着剤90による吸着が行なわれなくなるので、温度上昇も緩やかな変化となり、やがて各温度センサ141〜143に検出される温度の上昇率が所定以下(温度上昇率Δt1以下)に低下する。
また、温度センサ141〜143は、吸着槽100の一部の温度を検出しているだけなので、温度変化率の低下状態が所定時間継続することによって、吸着槽100全体での吸着工程が終了したことになる。
従って、各温度センサ141〜143により検出された温度上昇率の減少から各領域100a〜100cでの吸着工程が終了したことを正確に判断することが可能になる。これにより、吸着工程における精度をより高めることができる。
そして、吸着槽100を通過する過程でベーパに含まれる燃料成分を除去された気体は、ベーパを含まないクリーンな状態になって排気管110の上端開口112から大気中に放出される。
図3において、タンクローリ車30から地下タンク10への荷卸しが終了(T2)すると、吸着工程が終了して脱着工程に移行する。脱着工程は、三方弁120をbポートとcポートとが連通されるように切り替えると共に、排気管110の排気弁14を閉弁し、且つ吸引ポンプ160により吸着槽100の気体を吸引する。
尚、脱着工程の開始は、図2において説明したように、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定圧力PHH(第1の上限値)未満であるときに行なうため、荷卸し終了時の圧力P(計測値)が所定圧力PHH(第1の上限値)未満であるときは、図3に示すように吸着工程から脱着工程に切り替わる。
脱着工程に切り替わると、吸着槽100において、吸引ポンプ160の負圧によって吸着剤90に吸着された燃料成分が脱着されるため、図3のグラフf1〜f3に示すようにT2以降は各領域100a〜100cで吸着剤90の温度が低下する。そして、グラフf1〜f3に示すように各領域での脱着に伴う温度低下が各温度センサ141〜143によって検出される。
また、吸着工程が開始されて時間T3になると、各温度センサ141〜143に検出された温度低下率が所定温度低下率Δt1以下に低下し、この状態が所定時間継続された時点(T3)で、脱着分離が著しく低下する。このとき、パージ管116のパージ弁118を開弁して吸着槽100の排気口102に圧縮機119により加圧されたパージガスを供給することにより、吸着槽100においては、吸着剤90に吸着された燃料成分の脱着分離が促進される。そのため、グラフf1〜f3に示すように、パージガスの供給により各温度センサ141〜143に検出された温度がさらに低下して燃料成分の脱着分離が促進されたことを確認することが可能になる。
ガスパージにより脱着効率が回復した後再び脱着効率が著しく低下した時点(T4)で、各温度センサ141〜143に検出された温度低下率が所定温度低下率Δt2以下に減少するのでガスパージによる脱着分離が終了したことを検出できる。
そして、時間T4で吸引ポンプ160を停止させるとともに排気弁114を開弁することにより、吸着槽100にはパージガス及び排気弁114より大気が導入され、吸着剤90の温度が外気温に上昇したことが各温度センサ141〜143に検出された時点(T5)で脱着工程が終了する。
ここで、制御装置150が実行する制御処理について図4A〜図4Cを参照して説明する。図4AのS11では、三方弁120のaポートとbポートとを連通させるように切り替えることにより、吸着槽100は、吸着工程に切り替わる。
なお、このときの吸着槽100の排気弁114は開弁状態であるため、地下タンク10の上部空間内12の圧力が吸着槽100の吸気口104に供給され、排気弁114を介して大気圧が吸着槽100の排気口102に供給される。なお、この状態においては吸着槽100によるベーパの吸着が行ないうる状態ではあるが、荷卸しも脱着工程も行われていないことから、吸着槽100内へのベーパの供給はほとんどない。
次のS12では、温度センサ141〜143によって検出された吸着槽100の温度が上昇しているか否かをチェックしており、温度上昇があれば、吸着工程(吸着槽100による実際のベーパの吸着)が開始(図3のT1参照)されたものと判断することができる。
続いて、S13に進み、冷却ユニット170を駆動して冷却を開始させる。尚、冷却ユニット170は、冷媒をコンプレッサにより圧縮して冷却する構成であるので、冷却可能状態になるのに時間がかかるため、脱着工程に入る前段階で始動させるようになっている。ここで、冷却ユニット170に起動初期から冷却能力を発揮できるものを採用した場合には脱着工程が開始されると同時に冷却ユニット170を起動するようにしても良い。
次のS14では、吸着槽100の下層領域100cから吸着反応が進行するため、下層領域100cの温度センサ143によって検出された温度(信号)を読み込み、下層領域100cの温度上昇率が予め設定された所定温度上昇率t1よりも大であるか否かをチェックする。このS14において、下層領域100cの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも大である場合(YESの場合)、現在の状態を維持すべくS14の処理を繰り返す。
下層領域100cにおける吸着反応が進むことにより、下層領域100cの吸着剤90の温度が上昇するがこの温度上昇率は徐々に低下し始める。そして、S14において、下層領域100cの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも小さくなった場合(NOの場合)、S15に進む。
次のS15では、吸着槽100の中間層領域100bの温度センサ142によって検出された温度(信号)を読み込み、前述のS14の処理と同様に中間層領域100bの温度上昇率が予め設定された所定温度上昇率t1よりも大であるか否かをチェックする。このS15において、中間層領域100bの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも大である場合(YESの場合)、上記S14に戻る。
中間層領域100bにおける吸着反応が進むことにより、中間層領域100bにおける吸着剤90の温度が上昇する。そのため、S15において、中間層領域100bの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも小さい場合(NOの場合)、S16に進む。
次のS16では、吸着槽100の上層領域100aの温度センサ141によって検出された温度(信号)を読み込み、前述のS14の処理と同様に上層領域100aの温度上昇率が予め設定された所定温度上昇率t1よりも大であるか否かをチェックする。このS16において、上層領域100aの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも大である場合(YESの場合)、上記S14に戻る。
また、上層領域100aにおける吸着反応が進むことにより、上層領域100aにおける吸着剤90の温度上昇率が徐々に低下し始める。そして、S16において、上層領域100aの温度上昇率が所定温度上昇率t1よりも小さくなった場合(NOの場合)、S17に進み、三方弁120を吸着状態から脱着状態に切り替える。
このように、上記S14〜S16で各領域100a〜100cの温度上昇率が所定温度上昇率t1以下になったとき(図3のT2参照)、吸着工程が終了したものと判断して、脱着工程に切り替える。すなわち、三方弁120をbポートとcポートとが連通されるように切り替えて脱着工程にする。
続いて、S18に進み、排気管110の排気弁14を閉弁させ、S19で吸引ポンプ160を起動させて吸着槽100の気体を吸引(減圧)し、次のS20の処理に移行する。これで、脱着工程が開始されると共に、吸引ポンプ160によって吸引された燃料成分が冷却ユニット170で冷却されて液化され、地下タンク10に戻される。
なお、このS17〜S19による脱着工程の開始は、吸着工程終了直後に圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が予め設定された所定上限圧力PHH(第1の上限値)未満であることを条件に行うようにしてもよい。
また、地下タンク10に貯留されている液体燃料の量を計測するための液面センサを当該地下タンク10に設け、この液面センサより得られる信号(液面高さや液体燃料貯蔵量)を利用して地下タンク10内の上部空間12の大きさ(容量)を計測し、この容量が所定量以上であることを条件にして、脱着工程を開始するようにしても良い。
次のS20では、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が予め設定された所定圧力PHL(第2の上限値)以上に上昇したか否かをチェックする。このS21において、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定圧力PHL(第2の上限値)以上である場合(YESの場合)は、この状態においてタンクローリ車31から地下タンク10への荷卸しが行なわれると上部空間12内の圧力が急上昇して上部空間12内の圧力が安全弁70を開弁させる圧力に達してしまう可能性が高いものと判断して、S21に進み、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)の圧力上昇率ΔPが予め設定された所定圧力上昇率ΔPS以上か否かをチェックする(荷卸し検出手段)。
S21において、圧力P(計測値)の圧力上昇率ΔPが予め設定された所定圧力上昇率ΔPS以上の場合(YESの場合)は、タンクローリ車31から地下タンク10への荷卸しが開始されたものと判断し(図2の荷卸し:t6〜t7参照)、後述するS41に移行して吸引ポンプ160の運転を停止させ、続いて、S42で冷却ユニット170を停止する。この後は、S43でパージ弁118を閉弁させ、S44で排気弁114を開弁した後S11に戻り、吸着工程を開始する(吸着工程B:図2のt7〜t8参照)。
また、上記S20において、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定圧力PHL(第2の上限値)未満である場合(NOの場合)、あるいは上記S21において、圧力P(計測値)の圧力上昇率ΔPが予め設定された所定圧力上昇率ΔPS未満の場合(NOの場合)は、図4Bに示すS22に進む。
次のS22では、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が予め設定された所定上限圧力PHH(第1の上限値)以上か否かをチェックする。このS22において、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定圧力PHH(第1の上限値)以上である場合(YESの場合、脱着工程C:図2のt8〜t9参照)は、地下タンク10の上部空間12の容積が不足していると判定して(タンク容積判定手段)、S23に進み、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)の圧力上昇率ΔPが予め設定された所定圧力上昇率ΔPS以上か否か(今回の圧力上昇はタンクローリ車より液体燃料の荷卸しが開始されたことによるものであるのか否か)をチェックする。S23において、圧力P(計測値)の圧力上昇率ΔPが予め設定された所定圧力上昇率ΔPS以上の場合(YESの場合、図2のt9参照)は、荷卸しが開始されたものと判断し、後述するS41〜S43の脱着停止処理を行なった後、前述のS11以降の吸着工程に戻る。
また、S23において、圧力P(計測値)の圧力上昇率ΔPが予め設定された所定圧力上昇率ΔPS未満の場合(NOの場合)は、今回の圧力上昇の原因はタンクローリ車より液体燃料の荷卸しによるものではなく単に脱着工程が行われていることに起因するものと判断し、S24に進み、吸引ポンプ160の運転を停止状態にする。吸引ポンプ160が停止された状態では、吸着槽100からの吸引が行なわれないため、吸着も脱着も行なわない待機状態になる(図2のt11〜t12参照)。
この待機状態においては、吸引ポンプ160が停止しているので、給油が所定回数行なわれて地下タンク10の上部空間12の容積が大きくなることにより上部空間12内の圧力が所定圧力PL(中間圧力)以下に低下するまでは、吸着槽100内の燃料成分が上部空間12に戻されることはないため、上部空間12の圧力が更に上昇することはない。よって、ベーパが通気管60の安全弁70を介して大気中に放出されることを防止できる。
続いて、S25に進み、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が予め設定された所定下限圧力PL(中間値)未満か否かをチェックする。計量機40により給油が行なわれることで地下タンク10の液面が低下して上部空間12の容積が増大し、これにより、圧力低下が生じる。そのため、圧力センサ62により検出された圧力が予め設定された所定下限圧力PL(中間値)未満に低下すると、地下タンク10の上部空間12の容積が十分あると判定する(タンク容積判定手段)。
そして、S25において、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が予め設定された所定下限圧力PL(中間値)未満に低下したと判断した場合にはS26に進み、吸引ポンプ160の運転を開始し、吸着槽100における脱着処理を行なう(脱着工程Cと同様:図2のt8〜t9参照)。このとき、地下タンク10の上部空間12の容積が十分あるので、吸引ポンプ160から吐出された燃料成分が地下タンク10に導入されても、上部空間12内の圧力は所定上限圧力PHH(第1の上限値)以下であるので上部空間12のベーパが通気管60の安全弁70を介して大気中に放出されることはない。
一方、上記S22において、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定圧力PHH(第1の上限値)未満である場合(NOの場合)は、上記S23〜S26の処理を省略してS27に進む。
次のS27では、吸着槽100の上層領域100aの温度センサ141によって検出された温度(信号)を読み込み、上層領域100aの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt1よりも大であるか否かをチェックする。このS27において、上層領域100aの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも大である場合(YESの場合)、S22に戻り、S22以降の処理を行なう。
上層領域100aにおける脱着分離が進むことにより、上層領域100aにおける吸着剤90の温度が低下する。そのため、S27において、上層領域100aの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも小さい場合(NOの場合)、S28に進む。
次のS28では、吸着槽100の中間層領域100bの温度センサ142によって検出された温度(信号)を読み込み、中間層領域100bの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt1よりも大であるか否かをチェックする。このS28において、中間層領域100bの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも大である場合(YESの場合)、上記S22に戻る。そして、S22以降の処理を行なう。
また、中間層領域100bにおける脱着分離が進むことにより、中間層領域100bにおける吸着剤90の温度が低下する。そのため、S28において、中間層領域100bの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも小さい場合(NOの場合)、S29に進む。
次のS29では、吸着槽100の下層領域100cの温度センサ143によって検出された温度(信号)を読み込み、下層領域100cの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt1よりも大であるか否かをチェックする。このS29において、下層領域100cの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも大である場合(YESの場合)、S22に戻り、S22以降の処理を行なう。
下層領域100cにおける脱着分離が進むことにより、下層領域100cの吸着剤90の温度が低下する。そのため、S29において、下層領域100cの温度低下率が所定温度低下率Δt1よりも小さい場合(NOの場合)、S30に進む(図3のT3参照)。吸着剤90は、吸着剤90からのベーパの脱着分離が限界に達すると温度低下が鈍化する。
このように、上記S27〜S29で各領域100a〜100cの温度低下率が所定温度低下率Δt1以下になったとき、脱着工程の第1段階が終了したものと判断して、パージ制御(脱着工程の第2段階)を行なう。
次のS30では、パージ管116のパージ弁118を開弁させてパージ制御(図3のT3〜T4)を開始する。これにより、圧縮機119によって加圧されたパージガス(圧縮された空気または窒素)が排気口102より吸着槽100の内部に供給される。吸着槽100内は、吸着剤90から脱着された燃料成分が充満しており、排気口102に加圧されたパージガスが導入されると共に、吸着槽100の上部から下部に向かう気流が発生して吸着剤90から脱着された燃料成分がパージされる。そして、吸着槽100から吸引ポンプ160によって吸引された燃料成分は、冷却ユニット170で冷却されて液化され、地下タンク10に戻される。
このように、吸着槽100の下部から導入された吸引ポンプ160による負圧と、吸着槽100の上部から導入されたパージガスとの相乗効果により、吸着剤90に吸着された燃料成分の脱着がより一層促進される。
次に、S30の処理を実行した後、S31の処理に移行することになる。ここで、図4B、図4Cに示すS31〜S37の処理は、前述したS20〜S26の処理と同じであるので、その説明は省略する。すなわち、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)より得られる圧力上昇率ΔPが所定の圧力上昇率ΔPS以上の場合にタンクローリ車31から地下タンク10への荷卸しが開始された可能性があると判定した場合は、脱着工程から吸着工程に切り替えることにより、地下タンク10より排出されるベーパを吸着することにより、脱着工程時に荷卸しをすることにより生じうる安全弁70を介してベーパが大気に排出されるのを防止する。また、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定圧力PHH(第1の上限値)以上である場合は、地下タンク10の上部空間12の容量不足と判断して吸引ポンプ160の運転を停止させる。これにより、地下タンク10の上部空間12の容積不足により生ずる、脱着工程時に上部空間12内の圧力値が安全弁70が開弁する圧力値に達してベーパが安全弁70から大気放出されてしまうのを防止することができる。なお、荷卸しをしていないにもかかわらず圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が所定圧力PHH(第1の上限値)に達したことにより脱着工程が停止した場合には、圧力センサ62により検出された圧力P(計測値)が予め設定された所定下限圧力PL(中間値)未満に低下した時点で、吸引ポンプ160の運転を再開し、吸着槽100における脱着処理を行なう。
次のS38〜S40では、吸着槽100の上層領域100a〜下層領域100cの温度センサ141〜143によって検出された温度(信号)を読み込み、上層領域100a〜下層領域100cの温度低下率が予め設定された所定温度低下率Δt2よりも大であるか否かをチェックする。このS38〜S40において、上層領域100a〜下層領域100cの温度低下率が所定温度低下率Δt2よりも大である場合(YESの場合)、S33に戻り、S33以降の処理を行なう。
そして、上層領域100a〜下層領域100cにおける燃料成分の脱着分離が進むことにより、上層領域100a〜下層領域100cにおける吸着剤90の温度が低下する。そのため、S38〜S40において、上層領域100a〜下層領域100cの温度低下率が所定温度低下率Δt2よりも小さい場合(NOの場合)、S41に進む。なお、パージガスの供給による吸着槽100における燃料成分の脱着分離が著しく低下すると、吸着剤90の温度低下がとまり、外気温に向かって温度が徐々に上昇する。
このように、上記S38〜S40で各領域100a〜100cの温度低下率が所定温度低下率Δt2以下になったとき、脱着工程が終了したものと判断して、吸着工程に切り替える。すなわち、三方弁120をaポートとbポートとが連通されるように切り替えて吸着工程にする。
次のS41では、吸引ポンプ160の運転を停止させ、続いて、S42では冷却ユニット170を停止する。S43ではパージ弁118を閉止し、続いてS44では排気弁114を開弁する。この後は、S45で予め設定された所定時間(図3のT4〜T5)が経過したか否かをチェックし、この所定時間が経過する間にパージガスの供給によって吸着槽100の圧力が徐々に上昇して大気圧に戻り(図3の終了制御)、前述のS11の処理に移行する。これで、吸着槽100は、吸着剤90の再生が完了して次回の吸着工程が可能になる。
このように、本実施例では、上記S21,S23(S32,S34)において、圧力センサ62によって検出された地下タンク10の上部空間12の圧力から上部空間12内の圧力上昇率が所定圧力上昇率ΔPSよりも大きいか否かを判定することにより、タンクローリ車31からの荷卸しが開始されたか否かを判定することが可能になり、脱着工程時において荷卸し開始と判定された場合には、脱着工程を停止して地下タンク10の圧力が異常に上昇することを未然に防止することが可能になると共に、上記S22〜S26(S33〜S37)において、地下タンク10の液面上昇による上部空間12の容量不足を判定することが可能になり、容量不足のときの脱着工程を停止させて地下タンク12の圧力上昇を防止することも可能になる。
従って、本実施例によれば、2種類のセンサを設けなくても圧力センサ62により検出された圧力値に基づいて脱着工程中の荷卸しの有無と、地下タンク10の容量不足の有無を判定することが可能になり、センサを削減することができる。
さらに、制御装置150は、温度センサ141〜143に検出された温度上昇率に基づいて吸着工程が終了したことを判断し、温度センサ141〜143に検出された温度低下率に基づいて脱着工程が終了したことを判断することができるので、地下タンク10におけるベーパの発生量に応じて吸着槽100の吸着工程及び脱着工程の進行状況を確認して吸着工程から脱着工程への切り替えや脱着工程から吸着工程への切り替えを正確に行なうことが可能になり、ベーパ吸着・脱着工程によるベーパに含まれる燃料成分の回収効率をより高めることが可能になる。
従って、吸着槽100における脱着精度が向上するため、吸着剤90の吸着能力を有効に利用することが可能になり、大気中へのベーパの放出量を最小限に減らすことができる。
また、吸着工程と脱着工程を無駄なく実施することができるため、無駄なエネルギの消費を削減してベーパ回収のためのコストを安価に抑えることが可能になる。
さらに、温度センサ141〜143に検出された温度変化に基づいて脱着工程時の脱着状況をモニタすることができるので、パージガスの使用量を最小限に抑えると共に、地下タンク10へのパージガスの流入によるタンク圧力上昇を抑えることができる。