JP2008282728A - 燃料電池及びそのセパレータ及びその加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明により、耐蝕性膜の亀裂を抑制し、かつ、溝形状のばらつきの発電効率への影響が小さい、信頼性の高い燃料電池及びそのセパレータ及びその製造方法が実現できる。
【解決手段】電解質・電極複合体11と複数の溝が連結した形状の発電部を持つセパレータ12とエンドプレート9と燃料ガス供給管3と燃料ガス排出管4と酸化剤ガス供給管5と酸化剤ガス排出管6を有する燃料電池であって、電解質・電極複合体11とセパレータ12を交互に積層し、セパレータ12の発電部の電解質・電極複合体11と接触する箇所の両端に凹部18を設ける。
【選択図】図2
【解決手段】電解質・電極複合体11と複数の溝が連結した形状の発電部を持つセパレータ12とエンドプレート9と燃料ガス供給管3と燃料ガス排出管4と酸化剤ガス供給管5と酸化剤ガス排出管6を有する燃料電池であって、電解質・電極複合体11とセパレータ12を交互に積層し、セパレータ12の発電部の電解質・電極複合体11と接触する箇所の両端に凹部18を設ける。
【選択図】図2
Description
本発明は、特に固体高分子型燃料電池等の燃料電池及びそのセパレータ及びその製造方法に関わるものである。
固体高分子型燃料電池は、イオンを通す性質を持つ固体高分子電解質の膜を用いた燃料電池である。固体高分子電解質とその表裏にアノード電極とカソード電極を配したものを電解質・電極複合体と呼ぶ。電解質・電極複合体のアノード電極側に燃料ガスを供給しカソード電極側に酸化剤ガスを供給することで、燃料ガスと酸化剤ガスの化学反応のエネルギーより電気エネルギーを生成する。
燃料ガスとして代表的なものは水素であり、酸化剤ガスとしては大気が用いられる。この電気化学反応より取り出せる電圧は1V程度と小さいため、通常は何層も積層して大きな電力として取り出す。燃料電池の一つの層を燃料電池セルと呼びそれを複数層重ねあげた物を燃料電池スタックと呼ぶ。
燃料電池セルを積層する際には隣合うセルのアノード電極の水素とカソード電極の酸素を分離するためにセパレータを用いる。セパレータは単に酸素と水素を分離するだけではなく、表面に形成された深さ0.5mm前後で溝間隔が1〜3mm程度の微細溝により、効率良く水素あるいは酸素を供給し生成した水を排出する役割を担う。また、セパレータはアノード電極より電子を集電し、カソード電極に供給する役割も担っている。
上記のような役割を担うためにセパレータには、水素と酸素を分離するために水素の透過性が低いことが求められる。また、表面に微細な溝を加工できる成形性や、電子を集め伝導するための低い接触抵抗や高い電気伝導性や高い耐蝕性能が求められる。
セパレータに要求されるこれらの条件を満たす材料として、従来より黒鉛が用いられてきたが、靭性や加工性に課題がある。
金属を用いたセパレータも用いられている。セパレータの利点は靭性が高く薄くできるため燃料電池の少スペース化につながることや、プレス成形を用いれば生産性が飛躍的に向上しコスト削減につながることがあげられる。それに対して、金属材料を用いる場合の最大の課題は腐食による電池性能の劣化であり、そのために、鉄、ステンレス、アルミや銅等の安価な材料を母材とし、耐蝕性と高い電気の伝導性の両方を満たすAu、Pt等の貴金属をメッキしたものなどがある。あるいは、母材の上に耐蝕性の高いTiを圧延等で接合し、さらに接触抵抗を避けるためのコーティング処理を施した材料などが用いられている。
金属製セパレータの溝の成形方法としては、プレスを用いた加工による方法が主に用いられている。この方法では、1ないしは数回の工程でセパレータを成形するが、1工程が数秒以内で終了するために生産性が高い。但し、黒鉛製のセパレータと比較すると形状の自由度が低いという課題がある。
下記特許文献1には、溝形状を一度成形したのちに、頂部を内側に湾曲させてから、再度、平らに成形することにより電解質・電極複合体との接触面を平坦化し、接触抵抗を抑制する方法が、記載されている。また、下記特許文献2には、スペーサ部に荷重を緩和する絞りを設け発電部の接触圧を安定化する方法が、記載されている。
燃料電池に用いるセパレータは薄板状の素材を張り出しで成形するために、金属の成形限界内で成形することが重要であるが、特に重要なのは溝の角部の外周部分である。この箇所は張り出しと曲げによる歪が重なるために、歪が集中する。そのため耐蝕性膜に亀裂が生じ母材が腐食し、母材の金属イオンが溶出することで電解質を汚染するために、燃料電池の性能が低下し、寿命を短縮するという課題がある。そのため、耐蝕性膜に亀裂が生じない程度にセパレータ溝高さを低くし溝ピッチを大きくすることが、燃料電池の設計の制約条件となっている。
また、セパレータのプレス加工では、成形時の金型の変形や不完全な拘束のため、同一のセパレータで、中央の溝と端の溝の高さに差が生じる。そのため、電解質・電極複合体とセパレータの接触面積が異なり、発電効率に影響を与える。
上記特許文献1では、電解質・電極複合体と接触する底面を平に加工することを可能とする方式が提示されているが、溝ごとの形状のばらつきを抑制する効果は得られない。また、溝形状のばらつきによる電解質・電極複合体の接触面積のばらつきを抑制する効果も得られない。そのため、溝毎の形状のばらつきにより燃料電池の化学反応の進行速度が面内で異なるという課題があった。
また、上記特許文献2では溝の傾斜部分に薄肉部を形成することで溝の剛性を低下して接触圧を均一にする方式が提示されていが、この傾斜部に薄肉部を形成する方法として、切削除去による方法と鍛圧等の塑性流動による方法がある。前者は加工時間がかかり適切なコストで製造できないという課題があり、後者は薄肉部の面積が増大すると成形荷重が過大になり、巨大なプレスを用いた低速での製造となるためにコストが増大するという課題がある。
本発明の目的は、耐蝕性膜の亀裂を抑制し、かつ、溝形状のばらつきによる発電効率への影響が小さい燃料電池及びそのセパレータ及びその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、電解質・電極複合体と、複数の溝が連結した形状の発電部を持つセパレータと、エンドプレートと、燃料ガス供給管と、燃料ガス排出管と、酸化剤ガス供給管と、酸化剤ガス排出管とを有する燃料電池であって、
前記セパレータは、前記電解質・電極複合体と交互に積層され、前記発電部の電解質・電極複合体と接触する箇所の両端に、凹部を備えることを特徴とする。
前記セパレータは、前記電解質・電極複合体と交互に積層され、前記発電部の電解質・電極複合体と接触する箇所の両端に、凹部を備えることを特徴とする。
また、電解質・電極複合体と、複数の溝が連結した形状の発電部を持つセパレータと、エンドプレートと、燃料ガス供給管と、燃料ガス排出管と、酸化剤ガス供給管と、酸化剤ガス排出管とを有する燃料電池であって、
前記セパレータは、前記電解質・電極複合体と交互に積層され、前記発電部の溝において角の外周側表面に、曲率中心が外周側に存在する箇所があることを特徴とする。
前記セパレータは、前記電解質・電極複合体と交互に積層され、前記発電部の溝において角の外周側表面に、曲率中心が外周側に存在する箇所があることを特徴とする。
また、積層された複数の燃料電池セルと、それを挟むエンドプレートと、燃料の供給のための燃料ガス供給管と、燃料ガス排出管と、酸化剤ガスの供給のための酸化剤ガス供給管と、酸化剤ガス排出管と、冷却水を供給するための冷却水供給管と、冷却水排出管とを備える燃料電池であって、
前記燃料電池セルは、電解質・電極複合体とセパレータから構成され、
前記セパレータの発電部は、前記電解質・電極複合体と面方向が同一の平行部と、前記平行部に対して角度をもつ傾斜部とを、角部を介して接続した構造を有し、
前記平行部と前記傾斜部の接続位置である前記角部の外周側において凹部が形成されていることを特徴とする。
前記燃料電池セルは、電解質・電極複合体とセパレータから構成され、
前記セパレータの発電部は、前記電解質・電極複合体と面方向が同一の平行部と、前記平行部に対して角度をもつ傾斜部とを、角部を介して接続した構造を有し、
前記平行部と前記傾斜部の接続位置である前記角部の外周側において凹部が形成されていることを特徴とする。
また、前記凹部の前記平行部とのなす角度が、前記傾斜部の接線と前記平行部の接線のなす角度より大きいことを特徴とする。
また、前記電解質・電極複合体と前記セパレータ2枚を交互に積層したことを特徴とする。
また、複数の溝が連結した形状の発電部を持つ、燃料電池に用いるセパレータであって、
前記発電部の電解質・電極複合体と接触部の両端に凹部を設けたことを特徴とする。
前記発電部の電解質・電極複合体と接触部の両端に凹部を設けたことを特徴とする。
また、前記凹部の裏面にあたる内周側に、凸部を更に設けたことを特徴とする。
また、前記凹部の裏面にあたる内周側に、凹部を更に設けたことを特徴とする。
また、複数の溝が連結した形状の発電部を持つ、燃料電池に用いるセパレータであって、
前記発電部の溝において角の外周側表面に曲率中心が外周側に存在する箇所があることを特徴とするセパレータ。
前記発電部の溝において角の外周側表面に曲率中心が外周側に存在する箇所があることを特徴とするセパレータ。
また、セパレータ加工工程と、セパレータと電解質・電極複合体を積層する積層工程と、組立工程よりなる燃料電池の製造方法であって、
前記セパレータ加工工程において、
材料を均等に張り出す張出し小工程と
製品の溝形状に成形する成形小工程を含む複数の小工程でセパレータの発電部の溝を成形する溝成形小工程と、
発電部の溝の角外周表面となる箇所に凹部を形成する小工程と、
を含むことを特徴とする。
前記セパレータ加工工程において、
材料を均等に張り出す張出し小工程と
製品の溝形状に成形する成形小工程を含む複数の小工程でセパレータの発電部の溝を成形する溝成形小工程と、
発電部の溝の角外周表面となる箇所に凹部を形成する小工程と、
を含むことを特徴とする。
更に、セパレータ加工工程と、セパレータと電解質・電極複合体を積層する積層工程と、組立工程よりなる燃料電池の製造方法であって、
前記セパレータ加工工程において、
材料を均等に張り出す張出し小工程と、
製品の溝形状に成形する成形小工程を含む複数の小工程でセパレータの発電部の溝を成形する溝成形小工程と、
成形工程の展開長よりも前記張出し工程での展開長が長くなるように張出し、成形工程より発電部の溝の角外周表面となる箇所に凹部を形成する小工程とを含むことを特徴とする。
前記セパレータ加工工程において、
材料を均等に張り出す張出し小工程と、
製品の溝形状に成形する成形小工程を含む複数の小工程でセパレータの発電部の溝を成形する溝成形小工程と、
成形工程の展開長よりも前記張出し工程での展開長が長くなるように張出し、成形工程より発電部の溝の角外周表面となる箇所に凹部を形成する小工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、寿命及び信頼性が高く、性能のばらつきが小さい燃料電池及びそのセパレータ及びその製造方法を実現することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施例1である固体高分子型の燃料電池の燃料電池スタック1の構造を示す図である。
燃料電池スタック1は、積層された複数の燃料電池セル2と、それを挟むエンドプレート9とボルト10と、燃料の供給のための燃料ガス供給管3及び燃料ガス排出管4と、酸化剤ガスの供給のための酸化剤ガス供給管5と酸化剤ガス排出管6と冷却水を供給するための冷却水供給管7と冷却水排出管8から構成される。酸化剤ガス排出管6は反応により生成した水を排出する機能も担う。燃料ガスとしては純度の高い水素を用いることが望ましい。
また酸化剤ガスとしては窒素を79%、酸素を21%含む通常の大気を用いるがこの比率に限定されるものではない。固体高分子型の燃料電池は100℃以下で、望ましくは70℃から90℃程度の温度で動作させるために、冷却水を用いて反応熱を排出する。燃料電池の出力は用途により様々であり、冷却水を用いなくても良い機種もある。燃料電池は燃料電池スタックの他に、燃料ガスの供給排出や冷却水の供給排出のためのポンプ類やタンク類及びこれらのコントローラー等を含めて構成される。
燃料電池スタック1は、燃料電池セル2を複数重ね合わせて実用に足る起電力を取り出す構造となっている。セルの積層段数は数層から数1000層である。
燃料電池セル2は、電解質・電極複合体11とセパレータ12を積層し構成される。図3にセパレータ12とそれに取り付けられたガスケット40の斜視図を示す。ガスケット40は燃料ガスや酸化剤ガスあるいは冷却水が漏洩するのを防ぐ目的で用いられる。ガスケット40の素材としては、耐蝕性を持つ樹脂やゴムが望ましい。
セパレータには中央に複数の微細溝を連続して加工した発電部31が存在する。また、燃料ガス供給穴34と燃料ガス排出穴35と酸化剤ガス供給穴36と酸化剤ガス排出穴37と冷却水供給穴38と冷却水排出穴39があり、それぞれ、燃料ガス供給管3、燃料ガス排出管4、酸化剤ガス供給管5、酸化剤ガス排出管6、冷却水供給管7、冷却水排出管8と接続してる。発電部31への燃料ガス及び酸化剤ガス及び冷却水の供給は、ガスケット40の形状を変更することにより変更する。図3のガスケット40では酸化剤ガス供給穴36、酸化剤ガス排出穴37、冷却水供給穴38、冷却水排出穴39はガスケット40により閉鎖されており、燃料ガス供給穴34と燃料ガス排出穴35のみ開放されているため、燃料ガスの供給と排出のみが行われる。
図2は燃料電池スタック1を構成する燃料電池セル2の発電部31の断面構造を示す図である。燃料電池セル2を構成する主な部品は、電解質・電極複合体11と、電解質・電極複合体11を両側より挟むセパレータ12である。図2では電解質・電極複合体11bの両面にセパレータ12bとセパレータ12cが配置されて、一つの燃料電池セル2を構成する。電解質・電極複合体11は固体高分子電解質膜21の表面にアノード触媒層22及びカソード触媒層23を接着した構造である。
触媒層は、例えば、直径数10nmの炭素微粒粉末に直径数nmのPt微粒子を担持させたカーボン担持触媒を、固体高分子電解質をバインダーとしカーボンペーパー等に塗布し、固体高分子電解質膜21に接着したものである。セパレータ12の材料は、鉄、アルミ、銅、マグネシウム、ニッケル、クロム、チタン等の金属元素を主成分とする母材に、耐蝕性と導電性を担う表面膜を形成した材料である。このようなセパレータ材料の一例は、母材にステンレスを用いその表裏に板厚の10%程度のTiが金属接合したクラッド材料で、さらに表面に数nmの厚さの貴金属膜を設けた材料であり、チタンの不働態膜が耐蝕性を担っている。
また、メッキにより母材に貴金属膜を直接接合した構造でも良い。耐蝕性あるいは導電性を担う表面膜は1層でも良くまた複数層でも良い。耐蝕性の膜の種類としては、チタンやクロム等の金属の不働態膜やAu、Pt、Pd等の貴金属の単体もしくは合金の膜、あるいはセラミックの膜であっても高分子性の膜などで良い。
セパレータ12の断面は表裏に台形の微細溝を連続して形成した形状である。セパレータ12bと電解質・電極複合体の間の空間が酸化剤ガス流路13であり、セパレータ12cと電解質・電極複合体11bの間の空間は燃料ガス流路14である。また、セパレータ12aとセパレータ12bの間の空間は冷却水流路19である。
図2に示すように、セパレータ12の発電部31は、電解質・電極複合体11と面方向が同一のセパレータ12の平行部15と、平行部15に対して角度をもつ傾斜部16が角部17を介して接続した構造である。板厚は0.05mmから0.5mmの範囲であり、望ましくは0.1mmから0.3mmである。より望ましくは0.1mm程度である。溝のピッチは1mmから5mmの範囲であり、望ましくは1.5mmから3mmである。発電部の厚みは0.2mmから1.0mmの範囲であり、望ましくは0.3mmから0.5mmである。傾斜部16の平行部15に対する角度は0から90°の範囲内であり、望ましくは30°から60°の範囲である。角部の内側表面の半径は板厚の1〜5倍程度であり、望ましくは2倍程度である。また、本実施例のセパレータ12では平行部15と傾斜部16の接続位置である角部の外周側に、凹部18がある。凹部とは曲率中心が角部の外周側に存在する箇所である。
凹部18の形状は円弧上の形状やV溝状やあるいは台形の形状で良い。凹部18における板厚は平行部の最大の板厚と比較して80%から30%であり、望ましくは50%程度である。また、凹部18は電解質・電極複合体と接触していない面、すなわちセパレータ12同士が接触している面の角部17に形成されても良い。
セパレータ12を電解質・電極複合体11と重ね合わせて燃料電池セル2あるいは燃料電池スタック1を構成する場合には、平行部15のほぼ全面が電解質・電極複合体と接触し凹部18はその両端に位置する。また、凹部18の一部では平行部15となす角度が、傾斜部16と平行部15のなす角度よりも大きい。即ち、角部17の周辺について、さらに詳述すると、図11は角部17の周辺を拡大した断面図である。傾斜部16と平行部15のなす角度とは、傾斜部16の接線と平行部15の接線のなす角度で、図11においてωで示す角度である。凹部18の平行部15とのなす角度とは凹部18の接線と平行部15の接線のなす角度であり、凹部18のなかで最大となる箇所の角度を図11においてθとして示す。
θはωより大きいことが望ましい。なぜなら電解質・電極膜複合体との接触角度を大きくとれるためセパレータの高さ違いによる接触面積の違いが小さくなるからである。逆に、θがωよりも小さい場合には、凹部は図12に示す広く浅い形状となり、この場合には接触面積自体が小さくなり抵抗が増大する。
次に、燃料電池の製造方法について図4を用いて説明する。燃料電池の製造工程はセパレータ加工工程51とガスケット成形工程52と積層工程53と組立工程54より構成される。
セパレータ加工工程51において、金属薄板にプレス加工をほどこしてセパレータ12を製造する。ガスケット成形工程52にて、セパレータ12に、燃料ガスや酸化剤ガスの漏洩を防止するためのガスケット40を接着する。
接着は接着材を用いても良く、熱圧着を行っても良く、また嵌合構造で接続しても良い。また、セパレータ加工工程51においてセパレータ12に微細な穴を開け、セパレータ12の両面からガスケット40を取付、セパレータ12の穴部で両面のガスケット40を接着しても良い。また、射出成形等でガスケット40の成形と同時にセパレータ12に接着しても良い。
積層工程53において、セパレータ12と電解質・電極複合体11を積層し、エンドプレート9で挟みボルト10で締めて固定し燃料電池スタック1を製造する。組立工程54で、燃料電池スタック1にポンプやタンク類を取り付けて燃料電池を製造する。
上記の工程ではガスケット成形工程52においてガスケット40をセパレータ12に接着したが、ガスケット成形工程52を省略して、積層工程53において積層しても良い。
続いて、図5を用いてセパレータ加工工程の詳細、特に、セパレータ12の発電部31の溝を加工する工程について説明する。図5は金型の1ピッチ分の断面拡大図である。セパレータ加工工程51は材料を均等に張り出す張出し工程61と、製品形状に成形する成形工程62よりなる。張出し工程61の金型は張出し上型72と張出し下型73よりなる。張出し上型72と張出し下型73の間に材料71aを挿入して、上下よりプレスすることにより成形する。張出し工程61では材料の展開長が、製品の溝形状の展開長と同等もしくは長めになるように成形する。ここで、同等もしくは長めとは製品の展開長と比較して−10%から+20%の範囲であり、望ましくは0〜10%の範囲である。
また、張出し工程61の上下の金型には溝方向に沿って形成された突起部75がある。本実施例では突起部75の形状は円弧上であるが、これに限るものではない。突起部75の高さは材料71aの板厚よりも小さく、望ましくは50%程度である。また、突起部の半径は材料71aの板厚よりも小さく望ましくはその50%程度である。突起部75の位置は加工後の製品形状で角部外周の位置の近傍である。上型72及び下型73を用いて張出し加工を行うと、張出し後材料71bの形状になり凹部中間形状76が形成される。成形工程では成形工程上型77及び成形工程下型78を用いて加工を行い製品形状71Cとなり、凹部中間形状76は凹部18となる。
セパレータ加工工程51は、他に以下の小工程より構成される。以降の工程で材料と金型の位置を一致させるための位置決め穴を加工する位置決め穴開け工程があっても良い。また、張出し工程61において周囲の材料が発電部31に引き込まれるのを避けるために周囲にリブを成形するリブ成形工程があっても良い。また、燃料ガス供給穴34、燃料ガス排出穴35、酸化剤ガス供給穴36、酸化剤ガス排出穴37、冷却水供給穴38及び冷却水排出穴39を開ける工程があっても良い。セパレータ加工工程51の中の一連の小工程は同一プレスの中に複数の金型を並べて行ってもよく、別々のプレスで行っても良い。また、プレス加工前や加工中に耐蝕性のコーティングを施す工程を設けても良く、途中で焼鈍工程を設けても良い。また、材料はコイル状に巻かれたフープ材で提供され一連の加工後に切断するのが望ましいが、切断済みの材料を用いても良い。この場合には金型への材料の供給と搬出は人手で行っても良いし、ロボットを用いても良い。また、途中の工程で切断しても良い。
本実施例のセパレータ12を用いると以下のような理由により、耐食層の亀裂を抑えることが可能となる。
セパレータ12で最も亀裂が生じやすいのは、角部17の外周側である。成形工程62において、この箇所に張出しと曲げによる引張り歪が集中するのが、亀裂が生じる要因であるので、引張り歪を減少せしめることにより亀裂が抑制できる。曲げ加工において、金型に接触する内周側の半径が同一であれば、板厚が薄いほうが外周側の歪は小さくなる。
セパレータ12で最も亀裂が生じやすいのは、角部17の外周側である。成形工程62において、この箇所に張出しと曲げによる引張り歪が集中するのが、亀裂が生じる要因であるので、引張り歪を減少せしめることにより亀裂が抑制できる。曲げ加工において、金型に接触する内周側の半径が同一であれば、板厚が薄いほうが外周側の歪は小さくなる。
本実施例の加工方法では成形工程では角部の板厚が50%程度に低減されているため、外周側の歪は小さくなる。また、材料を延ばす加工では板厚の薄い部分の引張応力が拡大し変形が集中するが、本実施例の加工方法では、張出し工程61において、製品形状と同等以上に展開長に延ばしているため、角部の引張応力を抑制することが可能となる。よって、成形工程62で、角部外周の亀裂を抑制することが可能となる。また、張出し工程61で凹部18を形成するさいには鍛圧により加工するため亀裂は生じない。ひいては、溝高さと溝ピッチの設計上の制約が緩和されるため、より性能が高い設計の燃料電池を製造することができる。
さらに本実施例のセパレータ12を用いて、本実施例のセパレータ12を用いた場合に燃料電池の性能を向上させる点について説明する。
実生産では、加工時の反力による金型の変形や材料の拘束状態の違いにより、セパレータ12の発電部31のセパレータ高さは、中央と端などの位置により異なる。電解質・電極複合体11とセパレータ12を積層する場合には、電解質・電極複合体11が変形して溝の高さの違いを吸収するが、接触幅に違いが生じるため接触抵抗に違いが生じる。本実施例のセパレータ12では凹部18の作用により、溝高さの違いを吸収し接触抵抗を均一に保つことが可能となる。図6に本実施例のセパレータ12の一例の溝形状の寸法を記す。溝高さHは0.40mmであり、溝ピッチPは2.0mmであり、板厚は0.10mmであり、傾斜部の角度は45度である。角部17の内側の半径r1は0.20mmであり、外側の半径r2は0.30mmである。また、半径0.05mmで深さが0.05mmの半円の凹部18が角部の中心にある。凹部18の半円の中心の溝中心からの距離は0.42mmである。以上の形状のセパレータでは、食い込み高さhがh1=0.02mmからh2=0.07mmの範囲において、接触幅Wは変化しない。そのために、電解質・電極複合体11との接触抵抗のばらつきが小さくなり、発電性能も均一化する。また、セパレータ12の製造時のばらつきが、燃料電池スタック1の性能に与える影響を軽減できるので、信頼性や安定性が向上しまた性能も向上する。
実生産では、加工時の反力による金型の変形や材料の拘束状態の違いにより、セパレータ12の発電部31のセパレータ高さは、中央と端などの位置により異なる。電解質・電極複合体11とセパレータ12を積層する場合には、電解質・電極複合体11が変形して溝の高さの違いを吸収するが、接触幅に違いが生じるため接触抵抗に違いが生じる。本実施例のセパレータ12では凹部18の作用により、溝高さの違いを吸収し接触抵抗を均一に保つことが可能となる。図6に本実施例のセパレータ12の一例の溝形状の寸法を記す。溝高さHは0.40mmであり、溝ピッチPは2.0mmであり、板厚は0.10mmであり、傾斜部の角度は45度である。角部17の内側の半径r1は0.20mmであり、外側の半径r2は0.30mmである。また、半径0.05mmで深さが0.05mmの半円の凹部18が角部の中心にある。凹部18の半円の中心の溝中心からの距離は0.42mmである。以上の形状のセパレータでは、食い込み高さhがh1=0.02mmからh2=0.07mmの範囲において、接触幅Wは変化しない。そのために、電解質・電極複合体11との接触抵抗のばらつきが小さくなり、発電性能も均一化する。また、セパレータ12の製造時のばらつきが、燃料電池スタック1の性能に与える影響を軽減できるので、信頼性や安定性が向上しまた性能も向上する。
この結果、燃料電池として次のような効果がある。燃料電池の効率の指標の一つとして電圧効率があるが、図13に電流密度と電圧効率の関係を模式的に示すように、電圧効率は電流密度が上昇すると低下する傾向を示す。また、内部で出力密度に分布が生じる場合には、出力密度の分布が大きいほど平均の電圧効率が下がることになる。
本実施例によれば、電解質・電極複合体とセパレータの接触の度合いが全体で均一になるため接触抵抗が均一となり、上記のような出力分布を小さくすることが可能であり、燃料電池の平均的な電圧効率が向上する。
図7は本実施例のセパレータ12の溝形状の別の一例である。凹部18の裏面にあたる内周側に凸部81が設けられた形状であるが、このような一例でも、接触抵抗を安定化する効果は発揮される。
また、図8は、凹部18の裏面にあたる内周側に凹部82が設けられたセパレータ12の他の一例であるが、接触抵抗を安定化する効果はこの一例でも発揮される。製造工程を変更し、張出し成形後に凹部18を設ける小工程を別に設けても、張出し成形前に凹部を設けても、材料製造の段階で凹部18を設けても、同様に得られる。
以上に説明したように、本実施例は電解質・電極複合体との接触面積のばらつきが低減させることで、面内で均一にするという効果があり、また、鍛圧による薄肉化を行うが、薄肉化する箇所が角部であるために面積が小さく、過度の成形荷重は必要がないため、適切な製造コストで加工することが可能となる。
この結果、本実施例によれば、セパレータに亀裂が生じ難いために信頼性が向上し、さらに製造時のばらつきによらず接触抵抗が安定した燃料電池を提供することが可能となる。
次に実施例2について、説明する。図9は実施例2の燃料電池スタック1を構成する燃料電池セル2の発電部の断面構造を示す図である。燃料電池セル2を構成する主な部品は、電解質・電極複合体11と、電解質・電極複合体11を両側より挟むセパレータ12である。図2では電解質・電極複合体11fの両面にセパレータ12aとセパレータ12bが配置されて、一つの燃料電池セル2を構成している。電解質・電極複合体11は固体高分子電解質膜21の表面に表面にアノード触媒層22及びカソード触媒層23を接着した構造である。
セパレータ12は隣接する燃料電池セル間で共用されており、例えばセパレータ12dは電解質・電極複合体11eのアノード触媒層22と電解質・電極複合体11fのカソード触媒層23と接触して、隣接した二つの燃料電池セルで用いられる。セパレータ12の断面は表裏に台形の微細溝を連続して形成した形状である。表裏の微細溝はそれぞれ酸化剤ガス流路13及び燃料ガス流路14である。
図9に示すように、セパレータ12の発電部31は、電解質・電極複合体11と面方向が同一で接触しているセパレータ12の平行部15と、平行部15に対して角度をもつ傾斜部16が接続して構成される。板厚は0.05mmから0.5mmの範囲であり、望ましくは0.1mmから0.3mmである。溝のピッチは1mmから5mmの範囲であり、望ましくは1.5mmから3mmであり、よりのぞましくは2.5mmである。発電部の厚みは0.2mmから1.0mmの範囲であり、望ましくは0.3mmから0.5mmである。傾斜部16の平行部15に対しする角度は0から90°の範囲内であり、望ましくは30°から60°程度である。また、本実施例のセパレータ12では平行部15と傾斜部16の接続位置である角部の外周側において凹部18が形成されている。凹部とは曲率中心が角部の外周側に存在する箇所である。
凹部18の形状は円弧上の形状やV溝状やあるいは台形の形状で良い。凹部18における板厚は平行部の最大の板厚と比較して80%から30%であり、望ましくは50%程度である。セパレータ12を電解質・電極複合体11と重ね合わせて燃料電池セル2あるいは燃料電池スタック1を構成する場合には、平行部15のほぼ全面が電解質・電極複合体と接触し凹部18はその両端に位置する。また、実施例1で述べたように、凹部18の一部では平行部15となす角度が、傾斜部16と平行部15のなす角度よりも大きくなる。
実施例2の燃料電池セルを用いても、実施例1の燃料電池セルと同様の効果が得られ、また、両者が一つの燃料電池で混用されても同様の効果が得られるが、更に下記の効果が得られる。
即ち、水素と酸素の化学反応より電気を取り出す燃料電池では、発電に伴い生じる熱を排出するために、実施例1のように内部に冷却水を通す構造のものがあるが、それに対して、小さいサイズで自然冷却で十分な性能が得られる場合には、実施例2に示すように冷却水路19がない構造でも良い。冷却水路19が無い構造ではそれに伴い燃料電池スタックの重量及び大きさが小さくなり、冷却水用のポンプなどの補器も削減可能である。よって、携帯性が望まれる小型の燃料電池では実施例2の形態がより望ましい。
続いて、図10を用いてセパレータ加工工程51の別の一例である実施例3を説明する。図10は1ピッチ分の断面拡大図である。この例ではセパレータ加工工程51は材料を均等に張り出す張出し工程91と、凹部を加工する凹部加工工程92と、製品形状に成形する成形工程93よりなる。張出し工程91の金型は張出し上型102と張出し下型103よりなる。張出し上型102と張出し下型103の間に材料101aを挿入して、金型で上下よりプレスすることにより成形する。張出し工程では材料の展開長が、製品の溝形状の展開長と同等もしくは長めになるように成形する。ここで、同等もしくは長めとは製品の展開長と比較して−10%から+20%の範囲であり、望ましくは0〜10%の範囲である。
続いて凹部加工工程92において凹部途中形状109を加工する。凹部加工工程92でもちいる凹部加工上型104と凹部加工下型105には溝方向に沿って形成された突起部106がある。本実施例では突起部106の形状は円弧上であるが、これに限るものではない。突起部106の高さは材料101aの板厚よりも小さく、望ましくは50%程度である。また、突起部の半径は材料101aの板厚よりも小さく望ましくはその50%程度である。突起部106の位置は加工後の製品形状で角部外周の位置の近傍であることが望ましい。成形工程93では成形工程上型107及び成形工程下型108を用いて加工を行い、製品形状101dとなり、凹部途中形状109は凹部18となる。
実施例3においても実施例1で述べたと同様の効果が得られる。実施例3では3工程の加工方法を述べたがこれに限るものではなく、さらに増えても良い。
1…燃料電池スタック、2…燃料電池セル、3…燃料ガス供給管、4…燃料ガス排出管、5…酸化剤ガス供給管、6…酸化剤ガス排出管、7…冷却水供給管、8…冷却水排出管、9…エンドプレート、10…ボルト、11…電解質・電極複合体、12…セパレータ、13…酸化剤ガス流路、14…燃料ガス流路、15…平行部、16…傾斜部、17…角部、18…凹部、21…固体高分子電解質膜、22…アノード触媒層、23…カソード触媒層、31…発電部、34…燃料ガス供給穴、35…燃料ガス排出穴、36…酸化剤ガス供給穴、37…酸化剤ガス排出穴、38…冷却水供給穴、39…冷却水排出穴、40…ガスケット、51…セパレータ加工工程、52…ガスケット成形工程、53…積層工程、54…組立工程、61…張出し工程、62…成形工程、71…材料、72…張出し上型、73…張出し下型、75…突起部、76…凹部中間形状、77…成形工程上型、78…成形工程下型、81…凸部、82…凹部中間形状、91…張出し工程、92…凹部加工工程、93…成形工程、101…材料、102…張出し上型、103…張出し下型、106…突起部、107…成形工程上型、108…成形工程下型、109…凹部中間形状。
Claims (11)
- 電解質・電極複合体と、複数の溝が連結した形状の発電部を持つセパレータと、エンドプレートと、燃料ガス供給管と、燃料ガス排出管と、酸化剤ガス供給管と、酸化剤ガス排出管とを有する燃料電池であって、
前記セパレータは、前記電解質・電極複合体と交互に積層され、前記発電部の電解質・電極複合体と接触する箇所の両端に、凹部を備えることを特徴とする燃料電池。 - 電解質・電極複合体と、複数の溝が連結した形状の発電部を持つセパレータと、エンドプレートと、燃料ガス供給管と、燃料ガス排出管と、酸化剤ガス供給管と、酸化剤ガス排出管とを有する燃料電池であって、
前記セパレータは、前記電解質・電極複合体と交互に積層され、前記発電部の溝において角の外周側表面に、曲率中心が外周側に存在する箇所があることを特徴とする燃料電池。 - 積層された複数の燃料電池セルと、それを挟むエンドプレートと、燃料の供給のための燃料ガス供給管と、燃料ガス排出管と、酸化剤ガスの供給のための酸化剤ガス供給管と、酸化剤ガス排出管と、冷却水を供給するための冷却水供給管と、冷却水排出管とを備える燃料電池であって、
前記燃料電池セルは、電解質・電極複合体とセパレータから構成され、
前記セパレータの発電部は、前記電解質・電極複合体と面方向が同一の平行部と、前記平行部に対して角度をもつ傾斜部とを、角部を介して接続した構造を有し、
前記平行部と前記傾斜部の接続位置である前記角部の外周側において凹部が形成されていることを特徴とする燃料電池。 - 前記凹部の前記平行部とのなす角度が、前記傾斜部の接線と前記平行部の接線のなす角度より大きいことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
- 前記電解質・電極複合体と前記セパレータ2枚を交互に積層したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 複数の溝が連結した形状の発電部を持つ、燃料電池に用いるセパレータであって、
前記発電部の電解質・電極複合体と接触部の両端に凹部を設けたことを特徴とするセパレータ。 - 前記凹部の裏面にあたる内周側に、凸部を更に設けたことを特徴とする請求項6に記載のセパレータ。
- 前記凹部の裏面にあたる内周側に、凹部を更に設けたことを特徴とする請求項6に記載のセパレータ。
- 複数の溝が連結した形状の発電部を持つ、燃料電池に用いるセパレータであって、
前記発電部の溝において角の外周側表面に曲率中心が外周側に存在する箇所があることを特徴とするセパレータ。 - セパレータ加工工程と、セパレータと電解質・電極複合体を積層する積層工程と、組立工程よりなる燃料電池の製造方法であって、
前記セパレータ加工工程において、
材料を均等に張り出す張出し小工程と
製品の溝形状に成形する成形小工程を含む複数の小工程でセパレータの発電部の溝を成形する溝成形小工程と、
発電部の溝の角外周表面となる箇所に凹部を形成する小工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。 - セパレータ加工工程と、セパレータと電解質・電極複合体を積層する積層工程と、組立工程よりなる燃料電池の製造方法であって、
前記セパレータ加工工程において、
材料を均等に張り出す張出し小工程と、
製品の溝形状に成形する成形小工程を含む複数の小工程でセパレータの発電部の溝を成形する溝成形小工程と、
成形工程の展開長よりも前記張出し工程での展開長が長くなるように張出し、成形工程より発電部の溝の角外周表面となる箇所に凹部を形成する小工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
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