JP2008280224A - 製鋼スラグ固化体の製造方法、及び製鋼スラグ固化体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化カルシウム、二酸化珪素、三酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、五酸化燐の質量合計が70%以上の製鋼スラグと固化助材またはセメントを混合した後に加水して固化する。この時、酸化カルシウムと酸化マグネシウムの質量合計を二酸化珪素の質量で除した数値を塩基度(1)と定義し、塩基度(1)が2.6以上、3.2以下を満足する製鋼スラグを用いるとより好ましい。
【選択図】図1
Description
(1)酸化カルシウム、二酸化珪素、三酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、五酸化燐の質量合計が70%以上の製鋼スラグと固化助材またはセメントを混合した後に加水して固化することを特徴とする製鋼スラグ固化体の製造方法。
(2)酸化カルシウムと酸化マグネシウムの質量合計を二酸化珪素の質量で除した数値を塩基度(1)と定義し、塩基度(1)が2.6以上、3.2以下を満足する製鋼スラグを用いることを特徴とする前記(1)記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
(3)酸化カルシウム、酸化マグネシウム、三酸化アルミニウムの質量合計を二酸化珪素、五酸化燐、酸化マンガンの質量合計で除した数値を塩基度(2)と定義し、製鋼スラグと固化助材またはセメントのいずれか、またはその両方を混合した混合物の塩基度(2)を2.4以上3.0以下とした後に加水して固化することを特徴とする製鋼スラグ固化体の製造方法。
(4)製鋼スラグと固化助材またはセメントのいずれか、またはその両方を混合した混合物の粒径74μm以下の質量合計が10〜35%であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
(5)固化助材として水砕スラグ又は高炉スラグ微粉末を用いることを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
(6)固化助材として高炉セメントを用いることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
(7)前記(5)記載の固化助材と前記(6)記載の高炉セメントのいずれか、または両方と前記(1)または(2)記載の製鋼スラグを自然含水状態で混練した後、混合物を平地に敷き均し、整形、散水、転圧、養生、さらに破砕、用途に応じて分級することを特徴とする製鋼スラグ固化体の製造方法。
(8)前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体に鉄鋼スラグや天然砕石を混合することを特徴とする土木工事用材料の製造方法。
(10)酸化カルシウムと酸化マグネシウムの質量合計を二酸化珪素の質量で除した数値を塩基度(1)と定義したとき、前記製鋼スラグの塩基度(1)が2.6以上、3.2以下を満足することを特徴とする前記(9)記載の製鋼スラグ固化体。
(11)製鋼スラグに、固化助材または固化助材とセメントを混合した混合物の水和固化体であって、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、三酸化アルミニウムの質量合計を二酸化珪素、五酸化燐、酸化マンガンの質量合計で除した数値を塩基度(2)と定義したとき、前記混合物の塩基度(2)が2.4以上、3.0以下を満足することを特徴とする製鋼スラグ固化体。
(12)前記混合物の粒径74μm以下の質量合計が10〜35%であることを特徴とする前記(9)乃至(11)のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体。
(13)前記固化助材が水砕スラグ又は高炉スラグ微粉末であることを特徴とする前記(9)乃至(12)のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体。
(14)前記セメントが高炉セメントであることを特徴とする前記(9)乃至(13)のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体。
(15)前記(9)乃至(14)のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の破砕物に鉄鋼スラグや天然砕石を混合してなることを特徴とする土木工事用材料。
本発明に係る製鋼スラグの固化体を製造するための設備構成について、図1を一例に挙げて説明する。材料を貯蔵する設備は、製鋼スラグを入れる製鋼スラグビン1、固化助材を入れる固化助材ビン2、セメントを入れるセメントビン3から構成される。これらのビンの下部には定量切り出しが可能なフィーダー(不図示)が装備されている。前述したビンの下に混合機に各材料を搬送、投入する混合機前面コンベアー4が設置され、その先に混合機5、その後面に混合機後面コンベアー6が設置されている。後面コンベアー6から払い出された製鋼スラグと固化助材やセメントとの混合物(以下、混合物と称す)はダンプトラック7に積載され、混合物固化用ピット8に搬送される。混合物を固化するために必要なピット8の周辺設備としては、ピット内の混合物を敷き均し、整形する重機9、整形後散水する散水装置10、散水後、転圧する重機11、養生後、固化した混合物を破砕、掘削する掘削機12が配置されている。
本発明に係る製鋼スラグ固化体を製造するための所定の化学成分と粒度を有する製鋼スラグ、固化助材、セメントをそれぞれの貯蔵ビン1〜3に投入して貯蔵しておく。ここで、製鋼スラグ、及び固化助材として使用する水砕スラグは、自然含水状態のままでよい。次に、予め設定した混合率となるようにそれぞれの貯蔵ビン1〜3から材料を混合機前面のベルトコンベアー4上に定量を切り出し、ベルトコンベアー4から混合機5に各材料を投入し連続的に混合する。この混合機は、ドラム回転型、パドル型、スクリュー型等の混合機を適用することができるが、ドラム回転型の混合機が混合性と混合効率の面から最も適している。混合機で混合された混合物は、混合機後面のベルトコンベアー6に払い出す。その後、この混合物をダンプトラック7などで敷き均しするヤード8まで搬送する。
前述した混合物は、厚さ(高さ)200〜600mmなるようにショベルカーやグレーダーで敷き均しと表面の整形を行う。この時点では、表面の整形だけにとどめ、転圧はしない。それは、散水後の混合物への水の浸透性を確保するためである。ここで整形後の混合物の厚さ(高さ)を200〜600mmとした理由は、その厚さ(高さ)が200mm以下では、均一な厚さ(高さ)にするための整形作業の効率が著しく低下することと、600mm以上となると混合物下方部が十分転圧できなくなり固化体の品質が低下するためである。また、この敷き均しをする場所は、深さ600mm以上周辺地盤より掘り込んだピット形式あるいは、敷き均した混合物周辺を高さ600mm以上の堰堤で囲んだ構造とする。その理由は混合物に散水した水が敷き均した混合物の表面から流出するのを防止するためである。整形完了後、混合物全体に所定の量の水を散水する。この散水装置はスプリンクラーが望ましいが、水量管理が可能な放水銃を備えた散水車でも良い。散水後、表面の水が完全に混合物内部に浸透してから、設地圧100KN/m2以上のブルドーザーやタイヤローラーで転圧し養生する。
混合物への散水、転圧後、1週間から1ヶ月養生し、掘削機で掘削、粗破砕する。配合や製造計画により多少異なるが、前述した配合であれば通常散水後、2週間養生し、用途に応じた最大粒径で破砕し、ストックヤードに保管する。なお必要に応じて分級してもよい。一例として、道路の路盤材であれば40mm〜0mmや25mm〜0mmの粒度分布とし、岩ずり代替であれば300mm〜0mmの粒度分布とする。すなわち、本発明の製鋼スラグは、用途に応じた粒度分布で製品(例えば土木工事用材料など)の製造が可能である。当該固化体は、単味でも土木工事用材料として利用可能であるが、用途に応じて他の鉄鋼スラグや天然砕石に混合することにより、土木工事用材料としての品質向上を図ることが可能である。
(製鋼スラグの条件)
本発明の製鋼スラグ固化体に適用される製鋼スラグは、酸化カルシウム(CaO)、二酸化珪素(SiO2)、三酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、五酸化燐(P2O5)、一酸化マンガン(MnO)、その他の不可避的な不純物を含み、そのうち酸化カルシウム、二酸化珪素、三酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び五酸化燐の質量合計が70%以上の製鋼スラグである。前記の組成を満足するものであれば、転炉から副生する転炉スラグのいずれをも適用することができる。本発明では、前述したように、製鋼スラグに対して固化助材またはセメントを混合し、加水して固化させることによって製鋼スラグ固化体を製造するが、酸化カルシウム、二酸化珪素、三酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び五酸化燐の質量合計が70%以上の製鋼スラグを用いることにより、固化助材やセメントの使用量を少なくして良質な固化体を製造することができる。
さらに、本発明の製鋼スラグ固化体に適用する製鋼スラグは、下記の塩基度(1)式の条件を満たすものとする。
2.6 ≦ (CaO+MgO)/SiO2 ≦ 3.2 ・・・ 塩基度(1)
製鋼スラグは、本発明による固化体の水和固化のためのアルカリ刺激材として機能する必要がある。したがってその機能を評価するため塩基度(1)式を定義した。その理由は以下の通りである。本発明の実験によれば、製鋼スラグに含有するCaOとMgOはアルカリに寄与し、水和固化に正の影響を与える。一方、SiO2は酸性で水和固化に負の影響を与えるため、その両者の含有量の比で評価することが望ましいと考えた。これを踏まえた本発明の実験の結果、この評価式が当該固化体に使用する製鋼スラグを評価できると確認できたためである。
製鋼スラグは単味でも加水することにより水和物が生成され固結するが、固化体破砕後の粒状物が土木工事用材料として使用可能な品質を確保するために、固化助材である水砕スラグや高炉スラグ微粉末を混合する。さらに必要に応じてセメントを混合しても良い。セメントを使用する主な目的は、固化体の強度増加、養生工期短縮にある。使用するセメントの種類としては、特に限定されることはなく、ポルトランドセメントなど一般的に公知なセメントを使用することができる。但し、セメントのみでは緻密な水和固形物のみが形成されてしまうので、より確実に本発明の効果を得るためには、高炉スラグ微粉末を含む高炉セメントを使用するのが好ましい。なお、本発明の固化体の混合物(製鋼スラグと固化助材及び固化材の総和)は、下記の化学成分(塩基性/酸性物比)の条件を満たす混合量とする。
2.6 ≦ (CaO+MgO+Al2O3)/(SiO2+P2O5+MnO) ≦ 3.0 ・・・ 塩基度(2)
塩基度(2)式を定義した理由は、散水、養生、破砕後得られる固化体の強度が土木用材料として満足する品質を確保できるかを判断するためである。塩基度(2)式の分子はアルカリ成分であり、特に水和物を生成するためのアルカリ性のイオンを溶出しやすい。これらの成分が多いほど水和物の生成が促進され固化体の強度が増加する。一方、塩基度(2)式の分母は酸性成分で水和物生成には効果が無い。そのため両者の含有量の比で本発明の固化体製造のための混合物を評価することが望ましいと考えた。これを踏まえた本発明の実験の結果、この評価式が当該固化体の混合物を評価できると確認できた。
製鋼スラグに固化助材やセメントを混合した混合物の粒度は、74μm以下が10%〜35%とする。74μm以下が10%以下となると、固化体の強度発現が緩慢となり散水後の養生期間が長期化する。また、35%以上となると透水性が不良となって散水時の水が十分浸透せずに不均一な品質の固化体となるとともに固化助材の量が不足し、固化体の強度が発現し難くなる。混合物の粒度は、材料を混合した後に分級することによって調整してもよく、予め74μm以下が10%〜35%となるように材料を分級し、それを混合するようにすることもできる。
図1の装置で製造した固化体の実施例を以下に述べる。固化体の水浸膨張比と修正CBRの試験結果は、固化体を2週間養生したものを破砕し、40mm以下に分級した粒状物で試験を行った結果である。
塩基度(1)が異なる製鋼スラグ固化体の品質試験結果を表2に示す。
実施例−2〜実施例−4の製鋼スラグは塩基度(1)が本発明で定義した上下限近傍と中間の製鋼スラグであり、いずれも水浸膨張率と修正CBRは道路用路盤材の規準を満足した。
塩基度(2)が異なる混合物の固化体の品質試験結果が表3に示す。
実施例−7〜実施例−9の固化体は塩基度(2)が本発明で定義した上下限近傍と中間の固化体であり、いずれも水浸膨張率と修正CBRは道路用路盤材の規準を満足した。
混合物の粒径74μm以下の量が異なる固化体の実施例を表4に示す。
74μm以下分の量が39%の実施例−11は水浸膨張率が低く規準を満足したが、固化体の修正CBRが規準を満足しなかった。これは、74μm以下の微粉分が多く、水が十分浸透しなかったため固化体の強度が発現しなかったことによる。一方、74μm以下分の量が5%の実施例−15も水浸膨張率は規準を満足したが、固化体の修正CBRが規準を満足しなかった。これは、混合物の微粉分が少なく混合物内の空隙が多く水和物が十分に生成されなかったためである。表5の結果からは、混合物の粒径74μm以下の量が9%〜36%であれば、固化体の水浸膨張率と修正CBRは規準を満足した。そこで、本発明の固化体用混合物の粒径74μm以下の量は10%〜35%とした。
固化助材として微粒水砕スラグまたは高炉スラグ微粉末を使用した実施例を表5に示す。いずれの配合も製鋼スラグと固化助材の混合率が60%と27%、70%と20%で、塩基度(2)が本発明で定義した基準内に入っており、固化体の水浸膨張率と修正CBRは規準を満足した。
以上は固化助材のみの実施例であったが、水砕スラグとセメントを混合した場合の実施例を表6に示す。これらの実施例は、上述の塩基度(1)は満足するが塩基度(2)を満足しない例であるが、この場合であっても固化体の水浸膨張率と修正CBRは満足した。これにより、セメントを3%以上使用した実施例では、塩基度(2)を満足しない場合でも路盤用材料の基準値を満足したので、塩基度(2)を適用しないこととした。
2 固化助材ビン
3 固化材ビン
4 混合機前面コンベアー
5 混合機
6 混合機後面コンベアー
7 ダンプトラック
8 混合物固化用ピット
9 整形用重機
10 散水装置
11 転圧用重機
12 掘削機
Claims (15)
- 酸化カルシウム、二酸化珪素、三酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、五酸化燐の質量合計が70%以上の製鋼スラグに、固化助材または固化助材とセメントを混合した後に加水して固化することを特徴とする製鋼スラグ固化体の製造方法。
- 酸化カルシウムと酸化マグネシウムの質量合計を二酸化珪素の質量で除した数値を塩基度(1)と定義し、塩基度(1)が2.6以上、3.2以下を満足する製鋼スラグを用いることを特徴とする請求項1記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
- 酸化カルシウム、酸化マグネシウム、三酸化アルミニウムの質量合計を二酸化珪素、五酸化燐、酸化マンガンの質量合計で除した数値を塩基度(2)と定義し、製鋼スラグに、固化助材または固化助材とセメントを混合した混合物の塩基度(2)を2.4以上、3.0以下とした後に加水して固化することを特徴とする製鋼スラグ固化体の製造方法。
- 前記製鋼スラグに、固化助材または固化助材とセメントを混合した混合物の粒径74μm以下の質量合計が10〜35%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
- 固化助材として水砕スラグ又は高炉スラグ微粉末を用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
- セメントとして高炉セメントを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
- 請求項5記載の固化助材と請求項6記載の高炉セメントのいずれか、または両方と請求項1または2記載の製鋼スラグを自然含水状態で混練した後、混合物を平地に敷き均し、整形、散水、転圧、養生、さらに破砕、用途に応じて分級することを特徴とする製鋼スラグ固化体の製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の破砕物に鉄鋼スラグや天然砕石を混合することを特徴とする土木工事用材料の製造方法。
- 酸化カルシウム、二酸化珪素、三酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、五酸化燐の質量合計が70%以上の製鋼スラグに、固化助材または固化助材とセメントを混合した混合物の水和固化体であることを特徴とする製鋼スラグ固化体。
- 酸化カルシウムと酸化マグネシウムの質量合計を二酸化珪素の質量で除した数値を塩基度(1)と定義したとき、前記製鋼スラグの塩基度(1)が2.6以上、3.2以下を満足することを特徴とする請求項9記載の製鋼スラグ固化体。
- 製鋼スラグに、固化助材または固化助材とセメントを混合した混合物の水和固化体であって、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、三酸化アルミニウムの質量合計を二酸化珪素、五酸化燐、酸化マンガンの質量合計で除した数値を塩基度(2)と定義したとき、前記混合物の塩基度(2)が2.4以上、3.0以下を満足することを特徴とする製鋼スラグ固化体。
- 前記混合物の粒径74μm以下の質量合計が10〜35%であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体。
- 前記固化助材が水砕スラグ又は高炉スラグ微粉末であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体。
- 前記セメントが高炉セメントであることを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体。
- 請求項9乃至14のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の破砕物に鉄鋼スラグや天然砕石を混合してなることを特徴とする土木工事用材料。
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