JP2008278931A - 座席のリクライニング装置 - Google Patents

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Yasushi Ohashi
靖史 大橋
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Abstract

【課題】安価な手段で、円弧状の楔部材の摩擦摺接面を形成する低摩擦摺動材の耐剥離性を確保することである。
【解決手段】円弧状の楔部材4の摩擦摺接面となる外側面4aと内側面4bにショットブラストを施し、このショットブラストを施した摩擦摺接面に、低摩擦摺動材としてのフッ素樹脂皮膜8を一体化することにより、高価な金属溶射層の中間層の形成を不要として、安価な手段で、楔部材4の摩擦摺接面を形成するフッ素樹脂皮膜8の耐剥離性を確保できるようにした。
【選択図】図2

Description

本発明は、座席のリクライニング装置に関し、特に、自動車用シートに好適な座席のリクライニング装置に関する。
自動車用シート等の座席のリクライニング装置には、本発明の実施形態を説明する図1に示すように、座席の座部と背もたれ部を、内歯車1と、内歯車1より歯数の少ない外歯車2を偏心させて噛み合わせたタウメル機構と呼ばれる差動伝動機構によって結合し、外歯車2に設けた軸孔2aと内歯車1の軸1aとの間で、互いに偏心した外周面と内周面で形成される環状の楔間隙3に、一対の円弧状の楔部材4を対向させて挟入して、これらの楔部材4を楔間隙3に食い込む方向にばね5で付勢し、内歯車1の軸1aとともに回動する楔作動部材6によって、ばね5で付勢された楔部材4を押し戻したときに、内歯車1と外歯車2の噛み合いが外れて、背もたれ部の傾斜角度が調整可能とされ、楔部材4の外側面4aと内側面4bが、楔間隙3を形成する外周面と内周面とにそれぞれ摺接する摩擦摺接面とされたものがある(例えば、特許文献1参照)。
図1に示したような座席のリクライニング装置では、より苛酷な摩擦摺接面となる楔部材4の外側面4aが摺接する楔間隙3の外周面、すなわち外歯車2の軸孔2aに、滑り軸受として軸受ブッシュ7を圧入したものが多い。楔部材4の内側面4bが摺接する楔間隙3の内周面、すなわち内歯車1の軸1aにも軸受ブッシュを外嵌したものもある。
特開平3−237904号公報
上述した従来の座席のリクライニング装置では、円弧状の楔部材の摩擦摺接面が楔間隙でスムーズに摺動するように、環状の楔間隙の外周面や内周面に軸受ブッシュを配設する必要があり、軸受ブッシュを配設しても、楔部材との繰り返しの摩擦摺接によって、軸受ブッシュの摺接面を形成する樹脂層が剥離することがあった。このような問題に対して、本出願人は、楔部材の摩擦摺接面を低摩擦摺動材で形成し、低摩擦摺動材の耐剥離性を確保するために、中間層としての金属溶射層を介して低摩擦摺動材を基材と一体化することを提案している(特願2006−66341、特願2006−150039)。
上記特願2006−66341および特願2006−150039で提案したように、低摩擦摺動材の耐剥離性を確保するために中間層として金属溶射層を設ける手段は、銅系等の金属溶射層の中間層を形成するために、製造コストが高くなる問題がある。
そこで、本発明の課題は、安価な手段で、円弧状の楔部材の摩擦摺接面を形成する低摩擦摺動材の耐剥離性を確保することである。
上記の課題を解決するために、本発明は、座席の座部と背もたれ部を、内歯車と、この内歯車より歯数の少ない外歯車を偏心させて噛み合わせた差動伝動機構によって結合し、前記外歯車に設けた軸孔と前記内歯車の軸との間で、互いに偏心した外周面と内周面で形成される環状の楔間隙に、一対の円弧状の楔部材を対向させて挟入して、これらの楔部材を前記楔間隙に食い込む方向にばねで付勢し、前記内歯車の軸とともに回動する楔作動部材によって、前記ばねで付勢された楔部材を押し戻したときに、前記内歯車と外歯車の噛み合いが外れて、前記背もたれ部の傾斜角度が調整可能とされ、前記楔部材の外側面と内側面が、前記楔間隙を形成する外周面と内周面とにそれぞれ摺接する摩擦摺接面とされた座席のリクライニング装置において、前記円弧状の楔部材の少なくとも外側面の摩擦摺接面にショットブラストを施し、このショットブラストを施した摩擦摺接面に、低摩擦摺動材を一体化した構成を採用した。
すなわち、円弧状の楔部材の少なくとも外側面の摩擦摺接面にショットブラストを施し、このショットブラストを施した摩擦摺接面に、低摩擦摺動材を一体化することにより、高価な金属溶射層の中間層の形成を不要として、安価な手段で、楔部材の摩擦摺接面を形成する低摩擦摺動材の耐剥離性を確保できるようにした。
前記ショットブラストを施した摩擦摺接面の表面粗さは、Ra3〜15μm、好ましくはRa5〜10μmとするのがよい。
前記楔部材の基材を鉄系焼結材とすることにより、低摩擦摺動材の耐剥離性をさらに高めることができる。なお、鉄系焼結材には、C、Cu、Ni、Mo等の化学成分を含有させることができる。
前記低摩擦摺動材をフッ素樹脂皮膜とすることにより、低摩擦摺動材を安価で、より優れた低摩擦特性を有するものとすることができる。
前記フッ素樹脂皮膜は、フッ素樹脂100重量部に対して、バインダ樹脂100〜150重量部を配合し、黒鉛、二硫化モリブデンおよび酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物から選ばれる一種以上の固体潤滑剤を5〜30重量部配合したものとすることにより、低摩擦特性、耐摩耗性および耐剥離性がより優れたものとすることができる。
前記フッ素樹脂は、摩擦熱に耐えられる耐熱性を有するものであればよく、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロポリプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。これらは、それぞれ単独または2種以上の共重合体や3共重合体等であってもよい。
前記PTFEは、フッ素樹脂の中では最も耐熱性が優れており、また、常温でも優れた摺動性を示すので好適である。さらに、PTFEの中でも、滑剤級の粉末PTFEを用いることが好ましく、滑剤級の粉末PTFEの市販品としては、ポリフロンM15、ルブロンL−2(以上、ダイキン工業社製商品名)、テフロンTLP−10(デュポン社製商品名)、フルオンG163(旭硝子社製商品名)等を挙げることができる。なお、滑剤級の粉末PTFEとは、一度焼成したPTFEを粉砕した再生PTFEや、PTFEにガンマ線照射処理をして低分子量化したPTFE粉末を言い、ガンマ線照射処理をした市販品の例としては、KT400H(喜多村社製商品名)がある。
前記PTFEの形態は、成形用の粉末であっても、いわゆる固体潤滑用の微粉末であってもよく、その平均粒径は0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μmの範囲にあるものがよい。平均粒径がこの程度の範囲にあれば、PTFE粉末はコーティング剤中で凝集し難く、皮膜中に満遍なく均一に分散される。
前記バインダ樹脂は、フッ素樹脂皮膜を熱劣化させることなく下地である楔部材の基材に強固に密着するとともに、粉末としたフッ素樹脂やその他の配合物を結着する役割をする。バインダ樹脂としては、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステルアミドイミド樹脂等を挙げることができる。中でもPIとPAIが好適であり、さらに、イミド結合またはアミド結合が芳香族基を介して結合している芳香族系のPIやPAIが特に好ましい。
前記PAIはイミド結合とアミド結合を有する樹脂である。芳香族系PAIのイミド結合は、ポリアミド酸等の前駆体であっても、閉環したイミド環であってもよく、これらが混在する状態でもよい。このような芳香族系PAIには、芳香族第一級アミン(例えば、ジフェニルメタンジアミン)と芳香族三塩基酸無水物(例えば、トリメット酸無水物のモノまたはジアシルハライド誘導体)とから製造されるもの、芳香族ジイソシアネート化合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート)と芳香族三塩基酸無水物とから製造されるもの等がある。さらに、アミド結合に比べてイミド結合の割合を多くしたPAIとして、芳香族、脂肪族または脂環族ジイソシアネート化合物と芳香族四塩基酸二無水物および芳香族三塩基酸無水物とから製造されるもの等があり、いずれのPAIも使用することができる。
上述した各座席のリクライニング装置は、前記座席が自動車用シートであるものに好適である。
本発明の座席のリクライニング装置は、円弧状の楔部材の少なくとも外側面の摩擦摺接面にショットブラストを施し、このショットブラストを施した摩擦摺接面に、低摩擦摺動材を一体化したので、高価な金属溶射層の中間層の形成を不要として、安価な手段で、楔部材の摩擦摺接面を形成する低摩擦摺動材の耐剥離性を確保することができる。
前記楔部材の基材を鉄系焼結材とすることにより、低摩擦摺動材の耐剥離性をさらに高めることができる。
前記低摩擦摺動材をフッ素樹脂皮膜とすることにより、低摩擦摺動材をより優れた低摩擦特性でより安価なものとすることができる。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この座席のリクライニング装置は自動車用シートのものであり、図1に示すように、座席の座部と背もたれ部を、座部側に設けられた内歯車1と、内歯車1より歯数の少ない背もたれ部側に設けられた外歯車2を偏心させて噛み合わせた差動伝動機構によって結合し、外歯車2に設けた軸孔2aと内歯車1の軸1aとの間で、互いに偏心した外周面と内周面で形成される環状の楔間隙3に、一対の円弧状の楔部材4を対向させて挟入して、これらの楔部材4を楔間隙3に食い込む方向にばね5で付勢し、内歯車1の軸1aにセレーション結合されて軸1aとともに回動する楔作動部材6の突出部6aによって、圧縮コイルばね5で付勢された楔部材4を押し戻したときに、内歯車1と外歯車2の噛み合いが外れて、背もたれ部の傾斜角度が調整可能とされている。楔間隙3の外周面は、外歯車2の軸孔2aに圧入された軸受ブッシュ7で形成され、楔間隙3の内周面は、楔作動部材6の円環部6bで形成されており、楔部材4が摺接する軸受ブッシュ7の内径面と、軸受ブッシュを兼ねる円環部6bの外径面には樹脂層が形成されている。
前記円弧状の楔部材4は鉄系焼結材で形成され、図2(a)に示すように、外側面4aが軸受ブッシュ7の内径面と摺接する摩擦摺接面、内側面4bが楔作動部材6の円環部6bの外径面と摺接する摩擦摺接面とされており、幅広側の端面に圧縮コイルばね5の座となる凹部4cが形成され、幅狭側の端面が楔作動部材6の突出部6aが当接される座面4dとなっている。
また、図2(b)に示すように、前記摩擦摺接面となる楔部材4の外側面4aと内側面4bは、ショットブラストを施されて表面粗さがRa5〜10μmとされ、このショットブラストを施された表面に、低摩擦摺動材としてのフッ素樹脂皮膜8が一体化されている。
前記フッ素樹脂皮膜8は、PTFEを主成分とするフッ素樹脂100重量%に対し、バインダ樹脂としてPAI100〜150重量%、固形潤滑剤として酸化鉄5〜30重量%を含むコーティング材ベアリーFL7075(NTN精密樹脂社製商品名)をスプレーコートした後、約230℃で焼成して厚さ0.025mmの皮膜としたものである。
上記鉄系焼結材で形成し、外側面と内側面にショットブラストを施して表面粗さをRa5〜10μmとし、その表面に上記フッ素樹脂皮膜を一体化した楔部材(実施例)と、同じく鉄系焼結材で形成し、外側面と内側面に中間層として銅系の金属溶射層を形成して、その表面に実施例と同じフッ素樹脂皮膜を一体化した楔部材(比較例)を用意した。これらの実施例と比較例の楔部材を、図1に示した座席のリクライニング装置に組み込んで、背もたれ部を繰り返し回動させる回動耐久試験を行い、摩擦摺接部を観察するとともに、上昇および下降回動時のトルクを測定した。試験条件は以下の通りである。
・背もたれ部への負荷:20kgf(回動中心から300mmの位置)
・回動角 :30°
・回動速度 :2°/秒
・回動サイクル数 :8000サイクル
・摩擦摺接面の潤滑 :無潤滑
上記回動耐久試験の結果、実施例のものも比較例のものも、楔部材のフッ素樹脂皮膜や軸受ブッシュの樹脂層が剥離することなく、十分な耐久性を有することが確認された。また、図3に示すように、上昇および下降回動時のトルクも、実施例および比較例の両者とも試験終了時まで上昇することはなく、両者がほぼ同一レベルで安定していた。以上の結果より、基材の表面にショットブラストを施して低摩擦摺動材を一体化した楔部材は、高価な金属溶射層を中間層として低摩擦摺動材を一体化した楔部材と同等の優れた耐久性と低摩擦特性を有することが確認された。
上述した実施形態では、楔部材の摩擦摺接面となる外側面と内側面の両方に、ショットブラストを施して低摩擦摺動材を一体化したが、より苛酷な摩擦摺接面となる外側面のみにショットブラストを施して低摩擦摺動材を一体化してもよい。
座席のリクライニング装置の実施形態を示す一部切欠き正面図 aは図1の楔部材を示す斜視図、bはaの摩擦摺接面の拡大断面図 回動耐久試験におけるトルクの変化を測定した結果を示すグラフ
符号の説明
1 内歯車
1a 軸
2 外歯車
2a 軸孔
3 楔間隙
4 楔部材
4a 外側面
4b 内側面
4c 凹部
4d 座面
5 圧縮コイルばね
6 楔作動部材
6a 突出部
6b 円環部
7 軸受ブッシュ
8 フッ素樹脂皮膜

Claims (5)

  1. 座席の座部と背もたれ部を、内歯車と、この内歯車より歯数の少ない外歯車を偏心させて噛み合わせた差動伝動機構によって結合し、前記外歯車に設けた軸孔と前記内歯車の軸との間で、互いに偏心した外周面と内周面で形成される環状の楔間隙に、一対の円弧状の楔部材を対向させて挟入して、これらの円弧状の楔部材を前記楔間隙に食い込む方向にばねで付勢し、前記内歯車の軸とともに回動する楔作動部材によって、前記ばねで付勢された楔部材を押し戻したときに、前記内歯車と外歯車の噛み合いが外れて、前記背もたれ部の傾斜角度が調整可能とされ、前記楔部材の外側面と内側面が、前記楔間隙を形成する外周面と内周面とにそれぞれ摺接する摩擦摺接面とされた座席のリクライニング装置において、前記円弧状の楔部材の少なくとも外側面の摩擦摺接面にショットブラストを施し、このショットブラストを施した摩擦摺接面に、低摩擦摺動材を一体化したことを特徴とする座席のリクライニング装置。
  2. 前記ショットブラストを施した摩擦摺接面の表面粗さを、Ra3〜15μmとした請求項1に記載の座席のリクライニング装置。
  3. 前記楔部材の基材を鉄系焼結材とした請求項1または2に記載の座席のリクライニング装置。
  4. 前記低摩擦摺動材をフッ素樹脂皮膜とした請求項1乃至3のいずれかに記載の座席のリクライニング装置。
  5. 前記座席が自動車用シートである請求項1乃至4のいずれかに記載の座席のリクライニング装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011140299A (ja) * 2010-01-11 2011-07-21 Faurecia Sieges D'automobile 補剛されたカラーを備えているヒンジ装置
KR101739469B1 (ko) 2011-04-13 2017-05-24 대원정밀공업(주) 리클라이너의 작동성능 향상을 위한 검사식 조립방법

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