JP2008274355A - 表面品質、破壊靱性および耐サワー性に優れる熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

表面品質、破壊靱性および耐サワー性に優れる熱延鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面品質に優れ、かつ破壊特性に優れ、さらに耐サワー性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】C:0.02〜0.08%、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%、Ca:0.003%以下を含み、Si、Mn、P、S、Al、N、Oを適正量に調整し、かつCa、O、Sが特定の関係を満足するように調整された組成を有する鋼素材に、粗圧延工程と、仕上圧延工程と、巻取工程とを順次施すに当たり、粗圧延工程後で仕上圧延工程前に、および/または、仕上圧延工程中のパス間に、表層部を50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却、または表層部を50℃/s以上の冷却速度でAr変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、しかる後に仕上圧延を施す。なお、Ar変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施した場合には、仕上圧延は1パス当たりの圧下率を、(1.1×一様伸び)%以下に限定することが好ましい。これにより、表面品質に優れ、破壊靱性に優れ、さらに耐サワー性にも優れた高張力熱延鋼板とすることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、腐食性のつよいサワー環境で使用されるラインパイプ向け電縫鋼管およびスパイラル鋼管等の用途に供して好適な高張力熱延鋼板の製造方法に係り、とくに表面欠陥の発生防止および破壊靭性の向上に関する。なお、鋼板には、鋼板、鋼帯を含むものとする。
近年、石油危機以来の原油の高騰や、エネルギー供給源の多様化の要求などから、北海、カナダ、アラスカ等のような極寒地での石油、天然ガスの採掘およびパイプラインの敷設が活発に行われるようになっている。また、一旦は、開発が放棄されていた腐食性の強いサワーガス田等に対する開発が盛んとなっている。さらに、パイプラインにおいては、天然ガスやオイルの輸送効率向上のため、大径で高圧操業を行う傾向となっている。パイプラインの高圧操業に耐えるため、輸送管(ラインパイプ)は厚肉の鋼管とする必要があり、厚鋼板を素材とするUOE鋼管が使用されるようになってきている。しかし、最近では、パイプラインの施工コストの更なる低減という強い要望にしたがい、鋼管の材料コスト低減の要求も強く、輸送管として、厚鋼板を素材とするUOE鋼管に代わり、生産性が高くより安価な、コイル形状の熱延鋼板(熱延鋼帯)を素材とした高強度電縫鋼管あるいはスパイラル鋼管が用いられるようになってきた。
これら高強度鋼管には、ラインパイプの破壊を防止する観点から、同時に優れた低温靭性を保持することが要求されている。このような強度と靭性とを兼備した鋼管を製造するために、鋼管素材である鋼板では、熱間圧延後の加速冷却を利用した変態強化や、Nb、V、Ti等の合金元素の析出物を利用した析出強化等による高強度化と、制御圧延等を利用した組織の微細化等による高靭性化が図られてきた。またさらに最近では,極寒地用の鋼管に対しては、パイプラインのバースト破壊を防止する観点から、破壊靭性、とくに優れたCTOD特性、とくに優れたDWTT特性を具備することが要求される場合が多い。
このような要求に対し、例えば特許文献1には、C:0.05〜0.12%、Ca:0.0020〜0.0060%を含み、Si、Mn、Al、P、Sを適正量調整して含む連鋳製スラブに、950℃以下で10〜50%の圧下を行い、引続き表面の冷却速度が2℃/s以上で表面温度がAr以下の温度になるまで冷却し、250s未満の復熱後、未再結晶領域にて50%以上の圧延を行い、720〜820℃の範囲で圧延を終了し、引続いて平均冷却速度5〜30℃/sで冷却した後、400〜600℃の範囲で巻取る高靭性耐サワー鋼管用ホットコイルの製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、耐HIC特性と、低温靭性の両特性に優れたホットコイルが製造でき、寒冷地でのラインパイプの製造が可能となるとしている。
また、特許文献2には、C:0.01〜0.20%を含み、Si、Mn、Al、Nを適正量含有する鋼片を、Ac変態点以上1250℃以下に加熱し、900℃以上の温度での累積圧下率が10〜80%の粗圧延を行ったのち、2〜40℃/sの加速冷却を、該冷却速度における(Ar変態点+50℃)〜(Ar変態点−50℃)まで行って、加速冷却後、累積圧下率30〜90%の仕上げ圧延を650℃以上で終了し、さらに仕上げ圧延終了後、5〜40℃/sの冷却速度で200〜450℃まで再び加速冷却する低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼材の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術によれば、複雑な熱処理工程を必要とすることなく、低降伏比と、優れた低温靭性とを両立させた熱延鋼板を製造することができるとしている。
また、特許文献3には、C:0.01〜0.10%、Nb:0.01〜0.1%を含み、Si、Mn、P、S、Nを適正量含み、かつMn/Si:5〜8を満足するように調整した鋼片に、1100℃以上で行う最初の圧下率:15〜30%、1000℃以上での合計圧下率:60%以上、最終圧延の圧下率:15〜30%の条件下で粗圧延を行い、5℃/s以上の冷却速度で鋼板表層部をAr点以下まで冷却し、復熱または強制加熱により、表層部の温度が(Ar−40℃)〜(Ar+40℃)となった時点で仕上圧延を開始し、950℃以下の合計圧下率:60%以上の条件で仕上圧延を終了し、ついで2s以内に冷却を開始し、10℃/s以上の速度で600℃以下まで冷却し、600〜350℃の範囲で巻き取る低温靭性及び溶接性に優れた高強度電縫鋼管用熱延鋼板の製造方法が記載されている。特許文献3に記載された技術によれば、高価な合金元素を添加することなく、また熱処理する必要なく、低温靭性および溶接性に優れた高強度電縫鋼管を製造することができるとしている。
特開平7−268467号公報 特開平10−306316号公報 特開2001−207220号公報
しかし、特許文献1に記載された技術で製造された熱延鋼板では、耐HIC特性の向上は顕著であるが、DWTT特性やCTOD特性の向上は顕著ではなく、さらに表面割れが発生する場合があり、問題を残していた。さらに、特許文献1に記載された技術では、オーステナイト未再結晶域における圧下率を極めて大きくする必要があり、熱間圧延プロセスにおいて仕上板厚が厚くなるに従って、シートバー厚みが厚くなり、仕上板厚が厚い鋼板を製造するには限界があった。また、特許文献2、特許文献3に記載された技術で製造された熱延鋼板では、表面割れが多発する場合があるという問題があった。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、低温大圧下で熱間圧延を実施しても表面割れ等の表面欠陥の発生がなく表面品質に優れ、しかも破壊靱性に優れ、さらに耐サワー性にも優れた高張力熱延鋼板を製造することが可能となる、高張力熱延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。なお、ここでいう「高張力鋼板」とは、降伏強さYSが448MPa以上のAPI−X65級鋼管を製造可能な鋼板をいうものとする。また、「破壊靭性に優れた」とは、ASTM規格E1290の規定に準拠したCTOD試験を実施した際の試験温度−10℃における限界開口変位量δc(mm)が0.25mm以上である場合、およびASTM E436の規定に準拠したDWTT試験を実施し延性破面率が85%となる温度が−10℃未満の場合をいう。また、「表面品質に優れた」とは、割れ深さが0.1mmを超える表面割れ等の表面欠陥の発生がない場合をいう。なお、ここでいう表面割れとは、圧延方向に対して90度となる方向に走るT方向割れを指す。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、靭性、表面品質に及ぼす各種要因について鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、表面割れ等の表面欠陥は、高靭性を確保するために低温圧延を指向したことによる、表層部の過冷却による熱間延性の低下、あるいはさらに表層部への過大な圧下による、粒界フェライトの割れにその主因があることを突き止めた。しかし、本発明者らの検討によれば、高靭性熱延鋼板を得るためには、被圧延材の温度を高靭化に有効な温度域に冷却したのち、所定範囲の圧下を施す仕上圧延を行うことが肝要であり、そのために仕上圧延前あるいは仕上圧延中に加速冷却を施し、その後の仕上圧延で所定値以上の有効圧延率を施すことが必須となることを知見した。そして、高靭性と、優れた表面品質と、さらには耐サワー性とを両立させるためには、優れた耐サワー性を維持できる組成の鋼素材を用いるとともに、さらに、表層部がAr変態点を下回らないように、加速冷却を調整するか、あるいはAr変態点を下回るような低温に冷却する場合には、その後に施す仕上圧延における1パス当たりの圧下量を、高温での一様伸び(均一伸び)値と関連する値以下とする圧延を行うことがよいことを知見した。そして、このような処理は、既存の、仕上圧延前の冷却手段、仕上圧延機内の冷却手段を積極的に活用することにより、達成できることを見い出した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.001%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%、Ca:0.003%以下、O:0.005%以下を含み、さらにCa、S、Oが次(1)式、次(2)式
1.4≦{[%Ca]−[%O]×(0.18+130[%Ca])}/1.25[%S]<3.3‥‥(1)
[%Ca]×[%S]0.28 ≦3.6×10−4 ‥‥(2)
(ここで、[%Ca]、[%O]、[%S]:各元素の含有量(質量%))
を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部を50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、しかる後に仕上圧延工程を施すことを特徴とする表面品質、破壊靱性、および耐サワー性に優れる熱延鋼板の製造方法。
(2)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.001%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%、Ca:0.003%以下、O:0.005%以下を含み、さらにCa、S、Oが次(1)式、(2)式
1.4≦{[%Ca]−[%O]×(0.18+130[%Ca])}/1.25[%S]<3.3‥‥(1)
[%Ca]×[%S]0.28 ≦3.6×10−4 ‥‥(2)
(ここで、[%Ca]、[%O]、[%S]:各元素の含有量(質量%))
を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間で、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、さらに仕上圧延を行い所定寸法形状の熱延板とすることを特徴とする表面品質、破壊靱性、および耐サワー性に優れる熱延鋼板の製造方法。
(3)質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、P:0.025%以下、S:0.001%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.005%以下、Nb:0.03〜0.10%、Ti:0.005〜0.05%、Ca:0.003%以下、O:0.005%以下を含み、さらにCa、S、Oが次(1)式、(2)式
1.4≦{[%Ca]−[%O]×(0.18+130[%Ca])}/1.25[%S]<3.3‥‥(1)
[%Ca]×[%S]0.28 ≦3.6×10−4 ‥‥(2)
(ここで、[%Ca]、[%O]、[%S]:各元素の含有量(質量%))
を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、ついで前記仕上圧延工程を施し、さらに該仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間で、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、さらに仕上圧延を施し所望寸法形状の熱延板とすることを特徴とする表面品質、破壊靱性および、耐サワー性に優れる熱延鋼板の製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記仕上圧延工程における仕上圧延が、1パス当たりの圧下率が15〜50%の圧延であることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(5)(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記加速冷却に代えて、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却とし、引き続く前記仕上圧延工程における仕上圧延、1パス当たりの圧下率が(1.1×一様伸び)%以下(ここで、一様伸び:950℃まで加熱したのちAr変態点以下まで冷却し、再び950℃まで加熱して高温引張を実施したときに、得られる応力−歪曲線における一様伸び(%))である圧延とすることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005〜0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜1.0%、Mo:0.005〜0.5%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(7)(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記巻取工程における前記熱延板の巻取り温度を350〜700℃とし、巻き取ったのちの冷却速度をコイル中央部で5〜20℃/hとすることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、表面割れ等の表面欠陥の発生がなく表面品質に優れ、しかも限界開口変位量δcが大きく、DWTT温度が低く破壊靭性に優れ、さらに耐サワー性にも優れた高張力熱延鋼板を、容易にかつ生産性高く製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、鋼管の材料コストを低減でき、したがってパイプラインの施工コストの更なる低減が可能となるという効果もある。
まず、本発明で使用する鋼素材の組成限定理由について説明する。なお、とくに断らないかぎり質量%は単に%と記す。
C:0.02〜0.08%、
Cは、鋼の強度を上昇させる作用を有する元素であり、本発明では所望の高強度を確保するために、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.08%を超える過剰な含有は、パーライト等の第二相の組織分率を増大させ、母材靭性および溶接熱影響部靭性を低下させる。このため、Cは0.02〜0.08%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.05%である。
Si:0.5%以下
Siは、固溶強化、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させるが、同時に靭性を低下させる作用を有し、また、Siは電縫溶接時にSiを含有する酸化物を形成し、電縫溶接部の表面品質を低下させる。このため、本発明では、Siはできるだけ低減することが望ましいが、0.5%までは許容できることから、Siは0.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.4%以下である。
Mn:0.8〜1.8%
Mnは、焼入性を向上させる作用を有し、焼入性向上を介し鋼板の強度を増加させる。また、Mnは、MnSを形成しSを固定することにより、Sの粒界偏析を防止してスラブ(鋼素材)割れを抑制する。このような効果を得るためには、0.8%以上の含有を必要とする。一方、1.8%を超える含有は、偏析を助長し、セパレーションの発生を増加させる。この偏析を消失させるには、1300℃を超える温度に加熱する必要があり、このような熱処理を工業的規模で実施することは現実的でない。このため、Mnは0.8〜1.8%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.9〜1.5%である。
P:0.025%以下
Pは、鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、鋼の強度を上昇させる作用を有する。しかし、0.025%を超えて過剰に含有すると溶接性が低下する。このため、Pは0.025%以下に限定した。なお、好ましくは0.015%以下である。
S:0.001%以下
Sは、Pと同様に鋼中に不純物として不可避的に含まれるが、0.001%を超えて過剰に含有すると、スラブ割れを生起させるとともに、熱延鋼板においては粗大なMnSを形成し、延性の低下を生じさせる。このため、Sは0.001%以下に限定した。なお、好ましくは0.0008%以下である。
Al:0.005〜0.10%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.10%を超える含有は、電縫溶接時の、溶接部の清浄性を著しく損なう。このようなことから、Alは0.005〜0.10%に限定した。なお、好ましくは0.08%以下である。
N:0.005%以下
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、過剰な含有はスラブ鋳造時の割れを多発させる。このため、Nは0.005%以下に限定した。なお、好ましくは0.004%以下である。
Nb:0.03〜0.10%
Nbは、オーステナイト粒の粗大化、再結晶を抑制する作用を有する元素であり、熱間仕上圧延におけるオーステナイト未再結晶温度域圧延を可能にするとともに、炭窒化物として微細析出することにより、溶接性を損なうことなく、少ない含有量で熱延鋼板を高強度化する作用を有する。このような効果を得るためには、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える過剰な含有は、熱間仕上圧延中の圧延荷重の増大をもたらし、熱間圧延が困難となる場合がある。このため、Nbは0.03〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.03〜0.07%である。
Ti:0.005〜0.05%
Tiは、窒化物を形成しNを固定しスラブ(鋼素材)割れを防止する効果を有するとともに、炭化物として微細析出することにより、鋼板を高強度化させる。このような効果は、0.005%以上の含有で顕著となるが、0.05%を超える含有は析出強化により降伏点が著しく上昇する。このため、Tiは0.005〜0.05%に限定した。なお、好ましくは0.005〜0.035%である。
Ca:0.003%以下
Caは、SをCaSとして固定し、硫化物系介在物を球状化する、介在物の形態を制御する作用を有し、介在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、水素のトラップ能を下げる作用を有する元素であり、このような効果を得るためには、0.0005%以上含有させることが好ましいが、0.003%を超える含有は、CaOの増加を招き、耐食性、靭性を低下させる。このため、Caは0.003%以下に限定した。なお、好ましくは0.0005〜0.003%である。
O:0.005%以下
Oは、鋼中では、各種の酸化物を形成し、熱間加工性、耐食性、靭性等を低下させる。このため、本発明では、できるだけ低減することが好ましいが、0.005%までは許容できる。極端な低減は精錬コストの高騰を招くため、Oは0.005%以下に限定した。
本発明では、Ca、S、Oを、上記した範囲内で、さらに次(1)式、(2)式
1.4≦{[%Ca]−[%O]×(0.18+130[%Ca])}/1.25[%S]<3.3‥‥(1)
[%Ca]×[%S]0.28 ≦3.6×10−4 ‥‥(2)
(ここで、[%Ca]、[%O]、[%S]:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含有する。Ca、S、Oが(1)式を、Ca、Sが(2)式を満足することにより、腐食性のつよいサワー環境においても、耐食性、耐腐食割れ性が低下しない介在物形状に調整される。(1)式の中央値が1.4未満となる場合は、圧延方向に伸びたMnSが形成され、著しくHIC発生が助長される。一方、(1)式の中央値が、3.3以上となる場合は、CaOクラスターの生成が顕著となりHICの発生が助長される。(2)式の左辺値が3.6×10-4を超える場合は、CaSクラスターの形成が助長されHICの発生が助長される。
上記した成分が基本の組成であるが、この基本の組成に加えてさらに、Cu:0.005〜0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜1.0%、Mo:0.005〜0.5%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成としてもよい。
Cu、Ni、Cr、Mo、Vはいずれも、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を増加させる元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Cuは、焼入れ性を向上させるとともに、固溶強化あるいは析出強化により鋼板の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は熱間加工性を低下させる。このため、Cuは0.005〜0.5%に限定することが好ましい。
Niは、焼入れ性を向上させ、鋼板の強度を増加させるとともに、靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましいが、0.5%を超えて含有しても効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Niは0.005〜0.5%に限定することが好ましい。
Crは、焼入性を向上させ、鋼板強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果は、0.005%以上の含有で顕著となる。一方、1.0%を超える過剰の含有は、電縫溶接時に溶接欠陥を多発させる傾向となる。このため、Crは0.005以上1.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.8%である。
Moは、焼入性を向上させるとともに、炭化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果は0.005%以上の含有で顕著となる。一方、0.5%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Moは0.005〜0.5%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.3%である。
なお、Cu、Ni、Cr、Moはともに熱間圧延後の冷却過程におけるフェライト変態、引き続くパーライト変態挙動に影響を及ぼす。Cu、Ni、Cr、Moはいずれも、ポリゴナルフェライト形成を抑制しベイニティックフェライト形成を促進するとともに、パーライト変態ノーズを長時間側へ移動させる働きがあり、圧延方向に列状に並ぶパーライトの析出を抑制する働きを有する。なお、ここでいうベイニティックフェライトとは、低温にてフェライト変態し結晶粒内の転位密度が高く、ラス間にセメンタイトの析出がほとんど見られないフェライト相を指す。
Vは、焼入性を向上させるとともに、炭窒化物を形成して鋼板を高強度化する作用を有する元素であり、このような効果は0.005%以上の含有で顕著となる。一方、0.3%を超える過剰の含有は、溶接性を劣化させる。このため、Vは0.005〜0.3%とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.2%である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、Sn:0.005%以下、Mg:0.0005%以下が許容できる。
上記した組成の鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す。なお、鋼素材の製造方法はとくに限定する必要はない。上記した組成の溶鋼を通常の転炉等の溶製法で溶製し、連続鋳造法、造塊−分塊法等の通常の鋳造方法で鋼素材とすることができる。
上記した組成の鋼素材は、加熱され、まず粗圧延工程を施される。加熱温度は、とくに限定されないが、1100〜1300℃の範囲の温度とすることが好ましい。加熱温度が1100℃未満では、変形抵抗が高く、圧延機への負荷が過大となりすぎる。1300℃を超えて高温とすると、結晶粒が粗大化しすぎて熱延板の靭性が低下する。また、スケールロスが多くなり、歩留が低下する。なお、粗圧延工程では、所定寸法のシートバーとすることができればよく、とくに粗圧延条件は限定されないが、粗圧延終了温度は1050℃以上とすることが靭性の観点から好ましい。
粗圧延工程を経て得られたシートバーには、仕上圧延工程を施すが、仕上圧延工程前に、加速冷却を施すことが好ましい。加速冷却は、シートバー等を冷却し、高靭化に有効な温度域に冷却して、その後の仕上圧延により、靭性を有効に向上させるために施す。加速冷却を施すことにより、高靭化に有効な温度域に冷却された板厚方向の領域が拡大でき、仕上圧延による靭性向上の程度を大きくすることができる。なお、仕上圧延工程前の加速冷却は、既存のFSB、ロール冷却、ストリップクーラント等の冷却手段によって容易に行える。
加速冷却は、シートバーの表層部が50℃/s以上の冷却速度で、Ar変態点超え900℃以上の温度に達するまで急冷する冷却とすることが好ましい。これにより、シートバー中心部近傍までを、高靭化に有効な温度域である、950℃以下の温度とすることができる。
なお、「表層部」とは、表面から板厚方向に2mmの範囲をいうものとする。またここで、「表層部の温度」は、放射温度計により測定される値、あるいは伝熱計算により求められる値とする。
加速冷却の冷却速度が50℃/s未満では、冷却中にフェライト変態が生じる可能性があり、その後の仕上圧延で割れを生じやすくなる。また冷却速度が50℃/s未満では、高靭化に有効な温度域に冷却される板厚方向における領域が狭く、高靭化の程度が少なくなる。
加速冷却の冷却停止温度がAr変態点超えの900℃を超える高温となる場合には、高靭化に有効な温度域に冷却される範囲が狭く、靭性の向上代が少ない。一方、加速冷却の冷却停止温度がAr変態点以下となると、その後の仕上圧延条件によっては表層部に割れが発生する危険性が高くなる。
また、上記した加速冷却に代えて、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却としてもよい。これにより、シートバー中心部近傍までを、高靭化に有効な温度域である、950℃以下の温度とすることが容易となる。しかし、この場合には、加速冷却後の仕上圧延の条件を特定範囲の条件とする必要がある。なお、加速冷却の冷却停止温度がAr変態点以下の350℃未満では、マルテンサイト変態が進行し、その後復熱し熱間圧延された場合に不均一な展伸組織が形成され、ブリスター発生などの不具合を招くため、上記した加速冷却の冷却停止温度はAr3変態点以下350℃以上とすることが好ましい。
加速冷却を施されたシートバーは、ついで、仕上圧延工程を施す。
なお、加速冷却は、上記したように、粗圧延工程後で仕上圧延工程前に施すことに代えて、仕上圧延工程中に行ってもよく、また粗圧延工程後で仕上圧延工程前と、仕上圧延工程中とを合わせ行ってもよい。
仕上圧延工程中に加速冷却を施す場合には、少なくとも1回、圧延のパス間で、仕上圧延途中の熱延板に施すことが好ましい。仕上圧延工程中の加速冷却は、仕上圧延ミル内のクーラントを利用することにより行うことができる。なお、仕上圧延工程中の加速冷却も、仕上圧延工程前の加速冷却と同様に、圧延途中の熱延板の表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度まで急冷、あるいはAr変態点以下、好ましくは350℃以上の温度まで急冷、する冷却とすることが好ましい。
加速冷却を施された熱延板は、仕上圧延工程における所定の圧下を施されて所定寸法の熱延板とされる。なお、本発明では、仕上圧延における有効圧下率は、20%以上とすることが高靭性化の観点から好ましい。有効圧下率とは、高靭化に有効な温度域である、950℃以下の温度域での全圧下量をいう。なお、板厚全体で所望の低温靱性を達成するためには、板厚中央部で所望の有効圧下率を確保する必要がある。
加速冷却の停止温度が、Ar変態点超えの場合には、その後に施される仕上圧延工程における仕上圧延の圧延条件はとくに限定されないが、1パス当たりの圧下率は、15〜50%の圧延とすることが好ましい。1パス当たりの圧下率が15%未満では、所望の高靭性化が期待できなかったり、板形状を損なう恐れがある。一方、1パス当たりの圧下率が50%を超えると、表面欠陥が発生しやすくなったり、圧延負荷が増大する。なお、より好ましくは15〜35%である。
一方、加速冷却の冷却停止温度が、Ar変態点以下の温度の場合には、表層部の組織がフェライト+オーステナイトの二相となり、表面欠陥の発生を避けるために、本発明では、加速冷却停止後の仕上圧延における1パス当たりの圧下率を、(1.1×一様伸び)%以下に限定することが好ましい。なお、ここでいう「一様伸び」は、引張試験片を950℃まで加熱したのちAr変態点以下まで加速冷却し、その後950℃まで加熱して、その場で高温引張を行ったときに、得られる応力−歪曲線における一様伸び値(%)をいう。1パス当たりの圧下率が、(1.1×一様伸び)%を超えて大きくなると、析出したフェライトに歪が集中し、表層に割れを誘発しやすくなる。
なお、表面割れは表層部と板厚中心での温度差が大きくなる厚肉材で起こりやすくなるため、本発明の効果は特に厚肉材で発揮される。ここで、厚肉材とはWT17.5mm以上、特にWT19.1mm以上を指す。
仕上圧延工程を経て得られた熱延板は、ついで巻取工程でコイル状に巻き取られる。本発明における巻取工程では、巻取り温度は350〜700℃とすることが好ましい。なお、仕上圧延終了後、熱延板に、好ましくは冷却速度:5〜50℃/sで、巻取り温度まで冷却する。仕上圧延後の冷却は、好ましくは仕上圧延ミルに引き続く冷却設備を有するホットランナウトの前詰(前段)にて行う。これによりホットランナウト上でフェライト変態を進行させることができ、所望のベイニティックフェライト組織を達成しやすい。巻取り温度が350℃未満では、鋼板各位置での温度ばらつきが大きくなり、材質ばらつきや形状のばらつきが生じ、さらには、コイラー能力によっては巻き取ることができない場合も生ずる。一方、巻取り温度が700℃を超えると、仕上圧延ミルに引き続く冷却設備を有するホットランナウト上で板厚中心部でフェライト変態が進行せず、巻取り後徐冷されながらフェライト変態が進行するため、結晶粒が粗大化し、靭性が低下する。このようなことから、巻取り温度は350〜700℃とすることが好ましい。また、コイル状に巻き取ったのち、コイル中央部の冷却速度で5〜20℃/hで室温まで冷却することが好ましい。冷却速度が、5℃/h未満では結晶粒成長が進行し、靱性が低下する場合がある。一方20℃/hを超える場合には、コイル中央部と外周部や内周部との温度差が大きくなりコイル形状の悪化を招きやすくなる。
表1に示す組成を有するスラブ(鋼素材)(肉厚:215mm)を、表2に示す温度に加熱し、表2に示す条件で粗圧延工程、仕上圧延工程、および巻取工程を施し、表2に示す板厚の熱延板とした。なお、加速冷却を、粗圧延工程後で仕上圧延工程前に、および/または、仕上圧延工程中のパス間に、表2に示す条件で施した。仕上圧延工程後の巻取工程では、表2に示す冷却速度で冷却し、表2に示す巻取り温度で巻き取り、コイル状としたのち、表2に示す冷却速度で室温まで冷却した。
得られた熱延板について、表面品質試験、引張試験、衝撃試験、CTOD試験、DWTT試験、HIC試験を実施した。試験方法は次のとおりである。
(1)表面品質試験
得られた熱延板について、鋼板の全域にわたり表面を目視またはビデオカメラで観察し、割れの有無を調査し、表面品質を評価した。割れ等の表面欠陥が発生した場合を×、発生しなかった場合を○として評価した。表面割れは深さ100μm以上の割れを指す。
(2)引張試験
得られた熱延板から引張試験片を採取し、ASTM規格E8の規定に準拠して引張試験を実施した。引張試験片は、試験方向が圧延方向に直角になるように採取した標点間距離2インチ、平行部板幅1/2インチの板状試験片を用いて、室温における降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)を測定した。
(3)衝撃試験
得られた熱延板の板厚中央部から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−80℃での吸収エネルギー(J)を求めた。なお、試験片は3本とし、得られた吸収エネルギー値の算術平均をもとめ、その鋼板の吸収エネルギー値vE−80(J)とした。なお、vE−80が300J以上の場合を低温靱性が優れると評価した。
(4)CTOD試験
得られた熱延鋼板から、試験片の長手方向が鋼板の圧延方向に直交する方向(C方向)となるように、試験片を採取し、ASTM E 1290の規定に準拠して試験温度:−10℃においてCTOD試験を実施した。試験荷重は三点曲げ方式で負荷し、切欠に変位計を取り付けて限界開口変位量δcを測定した。このδc値が0.25mm以上である場合に、鋼板の破壊靱性が優れると評価した。
(5)DWTT試験
得られた熱延板から、圧延方向に直交する方向(C方向)が長手方向となるようにDWTT試験片を採取し、ASTM E436の規定に準拠して、DWTT試験を実施し、DWTT温度(℃)(:延性破面率が85%となる最低温度)を求め、破壊靱性を評価した。なお、DWTT温度が−15℃以下である場合には、破壊靱性に優れると評価した。
(6)HIC試験
得られた熱延板から、試験片の長手方向が鋼板の圧延方向に平行となるように、試験片を採取し、NACE規格TMO284の規定に準拠してHIC試験を実施した。HIC試験は、試験片を該規格に規定のA溶液中に浸漬したのち、CLR値を測定した。なお、CLR値が0%である場合には、HICの発生が認められず、耐HIC性(耐サワー性)に優れると評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2008274355
Figure 2008274355
Figure 2008274355
本発明例はいずれも表面割れの発生もなく表面品質に優れ、vE−80が300J以上と低温靱性に優れ、−10℃におけるδcが0.25mm以上、DWTT温度が−10℃未満と破壊靱性にも優れ、CLR値も0%と耐サワー性にも優れた熱延板となっている。
鋼No.Aの組成を有する鋼板は、いずれも耐サワー性は良好であるが、加速冷却を施さない比較例(熱延板No.1)では、表面品質は良好であるが、vE−80が300J未満と低温靱性が低下し、DWTT温度が−5℃と破壊靱性が低下している。また、仕上圧延が本発明の範囲を外れる比較例(熱延板No.2、No.3)では、表面割れが発生し、表面品質が低下し、さらに破壊靱性、あるいは低温靱性および破壊靱性が低下している。
鋼No.Bの組成を有する鋼板はいずれも耐サワー性は良好であるが、加速冷却が本発明範囲を外れる比較例(熱延板No.10)では、表面品質、低温靱性は良好であるが、DWTT温度が−10℃と破壊靱性が低下している。
鋼No.Cの組成を有する鋼板はいずれも耐サワー性は良好であるが、仕上圧延が本発明の範囲を外れる比較例(熱延板No.13)は、有効圧下率が高い圧延のため低温靭性は極めて良好であるが、表面割れが発生し表面品質が低下し、さらにDWTT温度が−10℃と破壊靱性が低下している。
鋼No.Dの組成を有する鋼板はいずれも耐サワー性は良好であるが、加速冷却、仕上圧延が本発明の範囲を外れる比較例(熱延板No.15)は、低温靱性は良好であるが、表面割れが発生し表面品質が低下し、さらにDWTT温度が−5℃と破壊靱性が低下している。
鋼No.F、Gの組成を有する鋼板(熱延板No.17、18)は、表面品質、低温靱性、破壊靱性は良好であるが、鋼組成が(1)式を満足しないか、(1)、(2)式を両方とも満足しておらず、本発明の範囲を外れるため、耐サワー性が低下している。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
    Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
    S:0.001%以下、 Al:0.005〜0.10%、
    N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
    Ti:0.005〜0.05%、 Ca:0.003%以下、
    O:0.005%以下
    を含み、さらにCa、S、Oが下記(1)式、(2)式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、
    前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部を50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、しかる後に仕上圧延工程を施すことを特徴とする表面品質、破壊靱性および耐サワー性に優れる熱延鋼板の製造方法。

    1.4≦{[%Ca]−[%O]×(0.18+130[%Ca])}/1.25[%S]<3.3‥‥(1)
    [%Ca]×[%S]0.28 ≦3.6×10−4 ‥‥(2)
    ここで、[%Ca]、[%O]、[%S]:各元素の含有量(質量%)
  2. 質量%で、
    C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
    Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
    S:0.001%以下、 Al:0.005〜0.10%、
    N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
    Ti:0.005〜0.05%、 Ca:0.003%以下、
    O:0.005%以下
    を含み、さらにCa、S、Oが下記(1)式、(2)式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、
    前記仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間で、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、さらに仕上圧延を行い所定寸法形状の熱延板とすることを特徴とする表面品質、破壊靭性および耐サワー性に優れる熱延鋼板の製造方法。

    1.4≦{[%Ca]−[%O]×(0.18+130[%Ca])}/1.25[%S]<3.3‥‥(1)
    [%Ca]×[%S]0.28 ≦3.6×10−4 ‥‥(2)
    ここで、[%Ca]、[%O]、[%S]:各元素の含有量(質量%)
  3. 質量%で、
    C:0.02〜0.08%、 Si:0.5%以下、
    Mn:0.8〜1.8%、 P:0.025%以下、
    S:0.001%以下、 Al:0.005〜0.10%、
    N:0.005%以下、 Nb:0.03〜0.10%、
    Ti:0.005〜0.05%、 Ca:0.003%以下、
    O:0.005%以下
    を含み、さらにCa、S、Oが下記(1)式、(2)式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、粗圧延を施しシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーに仕上圧延を施し熱延板とする仕上圧延工程と、該熱延板を巻き取る巻取工程とを順次施す熱延鋼板の製造方法において、
    前記粗圧延工程後で、前記仕上圧延工程前に、前記シートバーに、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、ついで前記仕上圧延工程を施し、さらに該仕上圧延工程で少なくとも1回、圧延パス間で、仕上圧延途中の熱延板に、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点超え900℃以下の温度に達するまで急冷する加速冷却を施したのち、該加速冷却を停止し、さらに仕上圧延を施し所望寸法形状の熱延板とすることを特徴とする表面品質、破壊靭性および耐サワー性に優れる熱延鋼板の製造方法。

    1.4≦{[%Ca]−[%O]×(0.18+130[%Ca])}/1.25[%S]<3.3‥‥(1)
    [%Ca]×[%S]0.28 ≦3.6×10−4 ‥‥(2)
    ここで、[%Ca]、[%O]、[%S]:各元素の含有量(質量%)
  4. 前記仕上圧延工程における仕上圧延が、1パス当たりの圧下率が15〜50%の圧延であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
  5. 前記加速冷却に代えて、表層部が50℃/s以上の冷却速度でAr変態点以下の温度に達するまで急冷する加速冷却とし、引き続く、前記仕上圧延工程における仕上圧延を、1パス当たりの圧下率が(1.1×一様伸び)%以下(ここで、一様伸び:950℃まで加熱したのちAr変態点以下まで冷却し、再び950℃まで加熱して高温引張を実施したときに得られる応力−歪曲線における一様伸び値(%))である圧延とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.005~0.5%、Ni:0.005〜0.5%、Cr:0.005〜1.0%、Mo:0.005〜0.5%、V:0.005〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
  7. 前記巻取工程における前記熱延板の巻取り温度を350〜700℃とし、巻き取ったのちの冷却速度をコイル中央部で5〜20℃/hとすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
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