JP2008268432A - 電子写真装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】端部シール部材が当接している電子写真感光体の表面層の削れや剥れを防止し、高耐久、高安定な電子写真感光体を有する電子写真装置を提供する。
【解決手段】表面層が複数の各々独立した凹形状部を有し、かつ、該凹形状部の短軸径をRpc、該凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す深さをRdvとした場合に、短軸径(Rpc)に対する深さ(Rdv)の比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上であり、該無機微粉体の一次粒子の平均粒径が30nm以上500nm以下であり、かつ、短軸径(Rpc)より小さい電子写真感光体を有する電子写真装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、特定の電子写真感光体を有する電子写真装置に関する。
電子写真感光体としては、低価格及び高生産性の利点から、光導電性物質(電荷発生物質や電荷輸送物質)として有機材料を用いた感光層(有機感光層)を支持体上に設けてなる有機電子写真感光体が普及している。有機電子写真感光体としては、高感度及び材料設計の多様性の利点から、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層を有する電子写真感光体が主流である。なお、この電荷発生物質としては、光導電性染料や光導電性顔料が挙げられ、電荷輸送物質としては、光導電性ポリマーや光導電性低分子化合物が挙げられる。
電子写真感光体は、その表面に、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの電気的外力及び/または機械的外力が直接加えられるため、これら外力に対する耐久性も要求される。具体的には、これら外力による表面の傷や摩耗の発生に対する耐久性、すなわち耐傷性及び耐摩耗性が要求される。
耐摩耗性の向上に関しては、電子写真感光体の表面層用の結着樹脂として、従来、ポリカーボネート樹脂がよく使用されてきた。しかし、近年、表面層用の結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂よりも機械的強度が高いポリアリレート樹脂を使用することで、電子写真感光体の耐久性のさらに向上させる提案がなされている(特許文献1)。ポリアリレート樹脂は、芳香族ジカルボン酸ポリエステル樹脂の1種である。
また、特許文献2には、結着樹脂として硬化性樹脂を用いた硬化層を表面層とした電子写真感光体が開示されている。また、特許文献3及び特許文献4には、以下の電子写真感光体が開示されている。炭素−炭素二重結合を有する結着樹脂のモノマーと炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送性機能を有するモノマーとを、熱または光のエネルギーにより硬化重合させることによって形成される電荷輸送性硬化層を表面層とした電子写真感光体。さらに、特許文献5及び特許文献6には、以下の電子写真感光体が開示されている。同一分子内に連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を、電子線のエネルギーにより硬化重合させることによって形成される電荷輸送性硬化層を表面層とした電子写真感光体。
このように、近年、有機電子写真感光体の周面の耐傷性や耐摩耗性を向上させる技術として、電子写真感光体の表面層を硬化層とすることにより、表面層の機械的強度を高めるという技術が提案されてきている。
一方で、上述のように電子写真感光体の表面層の耐摩耗性を高くすると、画像流れが発生しやすくなるため、トナーに研磨作用を有する無機微粉体を添加する提案がされている(特許文献7)。
さて、電子写真感光体は、一般的には上述のように、帯電工程−露光工程−現像工程−転写工程−クリーニング工程からなる電子写真画像形成プロセスに用いられる。電子写真画像形成プロセスのうち、転写工程後に電子写真感光体に残留する転写残トナーを除去することによって、電子写真感光体の周面をクリーニングするクリーニング工程は、鮮明な画像を得るために重要な工程である。弾性ゴムブレードを用いるクリーニングブレード方式は、弾性ゴムブレードと電子写真感光体とを摩擦することにより作用するクリーニング方式である。また、現像工程には、現像容器からのトナー飛散を防止するために、現像ローラーの長手方向両端部と該現像容器の開口部との隙間に設けられた端部シール部材を電子写真感光体に当接させている。
上述の電子写真画像形成プロセスにおいては、トナーから遊離した研磨作用の高い無機微粉体が弾性ゴムブレード端部から漏れ、それが端部シール部材に埋め込まれ、さらにそれが蓄積されていく。その結果、端部シール部材が当接している電子写真感光体の表面層の削れや剥れを助長させてしまうという問題があった。
特開平10−39521号公報 特開平2−127652号公報 特開平5−216249号公報 特開平7−72640号公報 特開2000−66424号公報 特開2000−66425号公報 特開2005−338750号公報
本発明は、高耐久、高安定な電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、支持体上に感光層を有する電子写真感光体、
結着樹脂、着色剤及び無機微粉体を含有するトナーと、該トナーを収容する現像容器と、該現像容器の開口部に延在し回転する現像ローラーと、該現像ローラーの長手方向両端部と該現像容器の開口部との隙間に設けられた端部シール部材とを有する現像手段、
及び、弾性ゴムブレードを該電子写真感光体に当接させて転写残トナーを除去するクリーニングブレード方式であるクリーニング手段を有する電子写真装置であって、
該電子写真感光体の表面層が複数の各々独立した凹形状部を有し、かつ、該凹形状部の短軸径をRpc、該凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す深さをRdvとした場合に、短軸径(Rpc)に対する深さ(Rdv)の比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上であり、該無機微粉体の一次粒子の平均粒径が30nm以上500nm以下であり、かつ、短軸径(Rpc)より小さいことを特徴とする電子写真装置である。
本発明により、端部シール部材が当接している電子写真感光体の表面層の削れや剥れを防止することが可能となり、高耐久、高安定な電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することが可能となった。
以下、本発明をより詳細に説明する。
まず、本発明の電子写真装置について説明する。
図1は、本発明による電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される電子写真感光体1の表面は、帯電手段(一次帯電手段:例えば帯電ローラー)3により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光のような露光手段(図示せず)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5のトナーにより現像されてトナー像となる。現像手段5は、結着樹脂、着色剤及び無機微粉体を含有するトナーと、トナーを収容する現像容器と、現像容器の開口部に延在し回転する現像ローラーとを有する。さらに現像手段5は、現像ローラーの長手方向両端部と該現像容器の開口部との隙間に設けられた繊維材料や発泡体等の材料からなる端部シール部材(図示せず)を有する。ここで、トナー像は電子写真感光体1の表面に形成担持されている。次いで、該トナー像が、転写手段(例えば転写ローラー)6からの転写バイアスによって、転写材供給手段(図示せず)から電子写真感光体と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体の回転と同期して給送された転写材(例えば紙)Pに順次転写されていく。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、弾性ゴムブレードを有するクリーニングブレード方式のクリーニング手段7によって転写残トナーの除去を受けて清浄面化される。さらに、電子写真感光体1の表面は、前露光手段(図示せず)からの前露光光(図示せず)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が、例えば帯電ローラーを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段7の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。また、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターのような電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールのような案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
本発明の端部シール部材は、電子写真装置の最大通紙幅に相当する領域にかからないように設けられており、また、トナー飛散やトナー漏れを防止するため、弾性ゴムブレード長手方向両端部の外側に設けられている。
本発明に用いるトナーに添加する無機微粉体の一次粒子の平均粒径は30nm以上500nm以下であり、好ましくは40nm以上300nm以下である。30nm未満では研磨作用が不充分であり、500nmを超えると画像領域内での電子写真感光体の傷を悪化させてしまう。
本発明における無機微粉体の平均粒径については、電子顕微鏡にて5万倍の倍率で撮影した写真から100個の粒径を測定して、その平均を求めた。粒径は、一次粒子の最長辺をa、最短辺をbとしたとき、(a+b)/2として求めた。
無機微粉体としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウムなどがあるが、その中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。
さらに、画像流れを防止することができる研磨作用の高い粒子形状として、立方体状及び直方体状の少なくとも一方(立方体状及び/または直方体状)であるペロブスカイト型結晶であることが好ましい。
また、ペロブスカイト型結晶無機微粉体中の粒子形状が概略立方体及び/または直方体である粒子の含有率を50個数%以上にすることが、さらに研磨作用を高めることができるので好ましい。
本発明において、ペロブスカイト型結晶無機微粉体の着色粒子(トナー粒子)に対する遊離率は2体積%以上20体積%以下であることが好ましい。2体積%未満では弾性ゴムブレード近傍に滞留し、電子写真感光体の表面を研磨する作用が低下し、20体積%を超えると画像領域内での電子写真感光体の傷を悪化させてしまう場合がある。ここで遊離率とは、トナー粒子から遊離したペロブスカイト型結晶無機微粉体の割合を体積%で求めたものであり、パーティクルアナライザー(PT1000:横河電機(株)製)により測定されたものである。さらに詳しくは、遊離率は、結着樹脂の構成元素である炭素原子の発光と、ペロブスカイト型結晶無機微粉体の構成原子の発光における後述の同時性の有無から、次式により求めたものと定義する。ここで、「ペロブスカイト型結晶無機微粉体の構成原子のみの発光体積」を発光体積A、「炭素原子と同時に発光したペロブスカイト型結晶無機微粉体の構成原子の発光体積」を発光体積Bとする。
上記の遊離率は、パーティクルアナライザーで「Japan Hardcopy97論文集」の65〜68頁(発行者:電子写真学会、発行日:1997年7月9日)に記載の原理で測定を行う。具体的には、前記装置では、トナー等の微粒子を一個ずつプラズマへ導入し、微粒子の発光スペクトルから、発光物の元素、粒子数及び粒子の粒径を知ることができる。
ここで、発光体積Bにおける「炭素原子と同時に発光した」とは、炭素原子の発光から2.6msec.以内に発光したペロブスカイト型結晶無機微粉体の構成原子の発光をいう。そして、それ以降のペロブスカイト型結晶無機微粉体の構成原子の発光はペロブスカイト型結晶無機微粉体の構成原子のみの発光とする。本発明では、炭素原子と同時に発光したペロブスカイト型結晶無機微粉体の構成原子の発光は、トナー粒子表面に付着したペロブスカイト型結晶無機微粉体を測定していることになる。また、ペロブスカイト型結晶無機微粉体の構成原子のみの発光は、トナー粒子から遊離したペロブスカイト型結晶無機微粉体を測定していることになる。これらを用いて遊離率を求める。
具体的な測定方法としては、0.1体積%酸素含有のヘリウムガスを用い、23℃で湿度60%の環境にて測定を行い、トナーサンプルは、同環境下にて一晩放置し、調湿したものを測定に用いる。チャンネル1で炭素原子(測定波長247.860nm)、チャンネル2で無機微粉体の構成原子(例えば、チタン酸ストロンチウムであれば、ストロンチウム原子:測定波長407.770nm)を測定する。一回のスキャンで炭素原子の発光数が1,000個以上1,400個以下となるようにサンプリングを行い、炭素原子の発光数が総数で10,000個以上となるまでスキャンを繰り返し、発光数を積算する。この時、炭素原子の発光個数を縦軸に、炭素原子の三乗根電圧を横軸にとった分布において、前記分布が極大を一つ有し、さらに、谷が存在しない分布となるようにサンプリングし、測定を行う。このデータを元に、全元素のノイズカットレベルを1.50Vとし、上記計算式を用い遊離率を算出する。
本発明の電子写真感光体は、上述のとおり、支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、表面層に複数の各々独立した凹形状部を有する。しかも、凹形状部の短軸径をRpc、凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す深さをRdvとした場合に、短軸径(Rpc)に対する深さ(Rdv)の比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部を有する。
本発明における各々独立した凹形状部とは、個々の凹形状部が、他の凹形状部と明確に区分されている状態を示す。本発明における電子写真感光体の表面に形成されている凹形状部は、感光体表面の観察では、例えば、直線により構成される形状、曲線により構成される形状あるいは直線及び曲線により構成される形状が挙げられる。直線により構成される形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形あるいは六角形が挙げられる。曲線により構成される形状としては、例えば、円形状あるいは楕円形状が挙げられる。直線及び曲線により構成される形状としては、例えば、角の円い四角形、角の円い六角形あるいは扇形が挙げられる。感光体表面の凹形状部の例を図2に示す。また、本発明における電子写真感光体の表面の凹形状部は、感光体断面の観察では、例えば、直線により構成される形状、曲線により構成される形状あるいは直線及び曲線により構成される形状が挙げられる。直線により構成される形状としては、例えば、三角形、四角形あるいは五角形が挙げられる。曲線により構成される形状としては、例えば、部分円形状あるいは部分楕円形状が挙げられる。直線及び曲線により構成される形状としては、例えば、角の円い四角形あるいは扇形が挙げられる。本発明における電子写真感光体の表面の凹形状部の具体例としては、図2−b(凹形状部の形状例(表面))及び図2−c(凹形状部の形状例(断面))で示される凹形状部が挙げられる。本発明における電子写真感光体の表面の凹形状部は、個々に異なる形状、大きさあるいは深さを有してもよく、また、すべての凹形状部が同一の形状、大きさあるいは深さであってもよい。さらに、電子写真感光体の表面は、個々に異なる形状、大きさあるいは深さを有する凹形状部と、同一の形状、大きさあるいは深さを有する凹形状部が組み合わされた表面であってもよい。
本発明における短軸径とは、図2−b中の矢印の長さ(Rpc)で示されているように、各凹形状開口部を水平方向に投影して得られた直線のうち、最小となる直線の長さと定義する。例えば、円の場合は直径、楕円の場合は短径、四角形の場合は辺のうち短い方を採用する。
本発明における深さとは、各凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す。具体的には、図2−c中の深さ(Rdv)で示されているように、電子写真感光体における凹形状部の開孔部周囲の表面を基準とし、凹形状部の最深部と開孔面との距離のことを示す。
本発明の凹形状部は、電子写真感光体の少なくとも表面に形成されている。感光体表面の凹形状部の領域は、感光体表面の全域であってもよいし、表面の一部分に形成されていてもよいが、少なくとも端部シール部材が当接する表面部位には凹形状部が形成されている。
本発明においては、トナーは結着樹脂、着色剤及び無機微粉体を含有する。電子写真画像形成プロセスにおいて、トナーから遊離した研磨作用の高い無機微粉体が弾性ゴムブレード端部から漏れた場合、電子写真感光体の凹形状部で捕集することができる。このため、無機微粉体の端部シール部材への埋め込みを低減することでき、その結果、電子写真感光体の削れや剥れの悪化を防止することができる。
このとき、無機微粉体の一次粒子の平均粒径が短軸径(Rpc)より小さいことで、効率的に凹形状部に捕集することができる。
本発明の電子写真感光体の表面には、上述の凹形状部の短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部を、電子写真感光体の表面に100μm四方あたり50個以上有することが好ましい。特定の凹形状部を単位面積あたり多く有することにより、遊離した無機微粉体の捕集効率を高めることができる。さらには、凹形状部の短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部を、100μm四方あたり100個以上有することが好ましい。また、単位面積中に上記形状を満たさない凹形状部を有してもよい。なお、上記の100μm四方の領域は、電子写真感光体の表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定している。
また、電子写真感光体の表面100μm四方あたりの凹形状部の平均短軸径(Rpc−A)に対する、表面100μm四方あたりの凹形状部の平均深さ(Rdv−A)の比(Rdv−A/Rpc−A)とする。このとき、平均短軸径に対する平均深さの比(Rdv−A/Rpc−A)が0.5以上であり、かつ平均深さ(Rdv−A)が0.5μm以上であることが、遊離した無機微粉体の捕集効率を高めることができるので好ましい。さらには、平均短軸径に対する平均深さの比(Rdv−A/Rpc−A)が1.0以上であること、平均深さ(Rdv−A)が1.0μm以上であることがより好ましい。
本発明の電子写真感光体の表面における、短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部の配列は任意である。詳しくは、短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部が、ランダムに配置されてもよいし、規則性を持って配置されてもよい。
本発明において、電子写真感光体の表面の凹形状部は、例えば、市販のレーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡あるいは原子力間顕微鏡を用いて測定可能である。
レーザー顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。超深度形状測定顕微鏡VK−8550、超深度形状測定顕微鏡VK−9000及び超深度形状測定顕微鏡VK−9500(いずれも(株)キーエンス製)。表面形状測定システムSurface Explorer SX−520DR型機((株)菱化システム製)。走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS3000(オリンパス(株)製):リアルカラーコンフォーカル顕微鏡オプリテクスC130(レーザーテック(株)製)。
光学顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。デジタルマイクロスコープVHX−500及びデジタルマイクロスコープVHX−200(いずれも(株)キーエンス製):3DデジタルマイクロスコープVC−7700(オムロン(株)製)。
電子顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−9800及び3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−8800(いずれも(株)キーエンス製)。走査型電子顕微鏡コンベンショナル/Variable Pressure SEM(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製):走査型電子顕微鏡SUPERSCAN SS−550((株)島津製作所製)。
原子力間顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。ナノスケールハイブリッド顕微鏡VN−8000((株)キーエン社製)。走査型プローブ顕微鏡NanoNaviステーション(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製):走査型プローブ顕微鏡SPM−9600((株)島津製作所製)。
上記顕微鏡を用いて、所定の倍率により、測定視野内の凹形状部の短軸径及び深さを計測することができる。さらには、単位面積あたりの凹形状部の開孔部面積率を計算により求めることができる。
一例として、Surface Explorer SX−520DR型機による解析プログラムを利用した測定例について説明する。測定対象の電子写真感光体をワーク置き台に設置し、チルト調整して水平を合わせ、ウェーブモードで電子写真感光体の周面の3次元形状データを取り込む。その際、対物レンズの倍率を50倍とし、100μm×100μm(10000μm)の視野観察としてもよい。この方法で、測定対象の感光体の表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定する。
次に、データ解析ソフト中の粒子解析プログラムを用いて電子写真感光体の表面の等高線データを表示する。
凹形状部の形状、短軸径、深さ及び開孔部面積のような凹形状部の孔解析パラメーターは、形成された凹形状部によって各々最適化することができる。例えば、短軸径10μm程度の凹形状部の観察及び測定を行う場合、短軸径上限を15μm、短軸径下限を1μm、深さ下限を0.1μm及び体積下限を1μm以上としてもよい。そして、解析画面上で凹形状部と判別できる凹形状部の個数をカウントし、これを凹形状部の個数とする。
また、上記と同様の視野及び解析条件で、上記粒子解析プログラムを用いて求められる各凹形状部の開孔部面積の合計から凹形状部の合計開孔部面積を算出する。次いで以下の式から凹形状部の開孔部面積率(以下、単に面積率と表記したものは、この開孔部面積率を示す)を算出してもよい。
(凹形状部の合計開孔部面積/(凹形状部の合計開孔部面積+非凹形状部の合計面積))×100[%]
なお、凹形状部の短軸径が1μm程度以下の凹形状部については、レーザー顕微鏡及び光学顕微鏡による観察が可能であるが、より測定精度を高める場合には、電子顕微鏡による観察及び測定を併用することが望ましい。
次に、本発明による電子写真感光体の表面の形成方法について説明する。表面形状の形成方法としては、上記の凹形状部に係る要件を満たし得る方法であれば、特に制限はない。電子写真感光体の表面の形成方法の例を挙げれば、パルス幅が100ns(ナノ秒)以下である出力特性を有するレーザー照射による電子写真感光体の表面の形成方法が挙げられる。また、所定の形状を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し形状転写を行う表面の形成方法が挙げられる。
パルス幅が100ns(ナノ秒)以下である出力特性を有するレーザー照射による電子写真感光体の表面の形成方法について説明する。この方法で用いるレーザーの具体的な例としては、ArF、KrF、XeFまたはXeClのようなガスをレーザー媒質とするエキシマレーザーあるいはチタンサファイアを媒質とするフェムト秒レーザーが挙げられる。さらに、上記、レーザー照射における、レーザー光の波長は、1,000nm以下であることが好ましい。
上記、エキシマレーザーは、以下の工程で放出されるレーザー光である。まず、Ar、KrまたはXeのような希ガスと、FあるいはClのようなのハロゲンガスとの混合気体に、放電、電子ビームまたはX線のような高エネルギーを与えて、上記の元素を励起して結合させる。その後、基底状態に落ちることで解離する際、エキシマレーザー光が放出される。上記、エキシマレーザーにおいて用いるガスとしては、ArF、KrF、XeClまたはXeFが挙げられるが、いずれを用いてもよい。特には、KrFあるいはArFが好ましい。
凹形状部の形成方法としては、図3に示されているレーザー光遮蔽部aとレーザー光透過部bとを適宣配列したマスクを使用する。マスクを透過したレーザー光のみがレンズで集光され、電子写真感光体の表面に照射されることにより、所望の形状と配列を有した凹形状部の形成が可能となる。上記、レーザー照射による電子写真感光体の表面の形成方法では、一定面積内の多数の凹形状部を、凹形状部の形状あるいは面積に関わらず瞬時に、かつ同時に加工できるため、表面形成工程は短時間で行うことが可能である。マスクを用いたレーザー照射により、1回照射当たり電子写真感光体の表面の数mmから数cmの領域が加工される。レーザー加工においては、図4に示すように、まず、ワーク回転用モーターdにより電子写真感光体fを自転させる。自転させながら、ワーク移動装置eにより、エキシマレーザー光照射器cによるレーザー照射位置を電子写真感光体の軸方向上にずらしていくことにより、電子写真感光体の表面の広範囲に効率良く凹形状部を形成することができる。
上記、レーザー照射による電子写真感光体の表面の形成方法により、表面層に複数の各々独立した凹形状部を有する電子写真感光体を作製できる。しかも、凹形状部の短軸径をRpc及び凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す深さをRdvとした場合に、短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部を有する電子写真感光体を作製できる。凹形状部の深さは、レーザー照射による電子写真感光体の表面を形成する場合は、レーザー照射時間、回数のような製造条件の調整により制御できる。製造上の精度あるいは生産性の観点から、レーザー照射による電子写真感光体の表面を形成する場合は、一回の照射により形成される凹形状部の深さは0.1μm以上2.0μm以下とすることが望ましい。さらには0.3μm以上1.2μm以下であることが好ましい。レーザー照射による電子写真感光体の表面の形成方法を用いることにより、凹形状部の大きさ、形状及び配列の制御性が高く、高精度かつ自由度の高い電子写真感光体の表面加工が実現できる。
また、レーザー照射による電子写真感光体の表面の形成方法では、同じマスクパターンを用いて上記の表面の形成方法を複数の部位あるいは感光体表面全域に施されてもよい。この方法により、感光体表面全体に均一性の高い凹形状部を形成することができる。
次に、所定の形状を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し形状転写を行う表面の形成方法について説明する。
図5は、本発明におけるモールドによる圧接形状転写加工装置の概略図の例を示す図である。加圧及び解除が繰り返し行える加圧装置Aに所定のモールドBを取り付けた後、感光体Cに対して所定の圧力でモールドを当接させ形状転写を行う。その後、加圧を一旦解除し、感光体Cを回転させた後に、再度加圧そして形状転写工程を行う。この工程を繰り返すことにより、感光体全周にわたって所定の凹形状部を形成することが可能である。
また、例えば図6に示されるように、加圧装置Aに感光体Cの全周長程度の所定形状を有するモールドBを取り付けた後、感光体Cに対して所定の圧力をかけながら、感光体を回転、移動させることにより、感光体全周にわたって所定の凹形状部を形成してもよい。
また、シート状のモールドをロール状の加圧装置と感光体との間に挟み、モールドシートを送りながら表面加工することも可能である。
また、形状転写を効率的に行う目的で、モールドや感光体を加熱してもよい。モールド及び感光体の加熱温度は、本発明の形状が形成できる範囲で任意であるが、形状転写時のモールドの温度(℃)を支持体上の感光層のガラス転移温度(℃)より高くするように加熱されていることが好ましい。さらには、モールドの加熱に加えて、形状転写時の支持体の温度(℃)を感光層のガラス転移温度(℃)より低く制御されていることが、感光体表面に転写された凹形状部を安定的に形成するうえで好ましい。
また、本発明の感光体が電荷輸送層を有する感光体である場合は、形状転写時のモールドの温度(℃)を支持体上の電荷輸送層のガラス転移温度(℃)より高くするように加熱されていることが好ましい。さらには、モールドの加熱に加えて、形状転写時の支持体の温度(℃)を電荷輸送層のガラス転移温度(℃)より低く制御されていることが、感光体表面に転写された凹形状部を安定的に形成するうえで好ましい。
モールド自体の材質や大きさ、形状は適宜選択することができる。材質としては、微細表面加工された金属及びシリコンウエハーの表面にレジストによりパターニングをしたもの、微粒子が分散された樹脂フィルムまたは所定の微細表面形状を有する樹脂フィルムに金属コーティングされたものが挙げられる。モールド形状の一例を図7に示す。
また、感光体に対して圧力の均一性を付与する目的で、モールドと加圧装置との間に弾性体を設けてもよい。
上記、所定の形状を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し形状転写を行う表面の形成方法により、表面層に複数の各々独立した凹形状部を有する電子写真感光体を作製できる。しかも、凹形状部の短軸径をRpc及び凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す深さをRdvとした場合に、短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部を有する電子写真感光体を作製できる。凹形状部の深さは、所定の形状を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し形状転写を行う表面の形成を行う場合は、深さは0.5μm以上10μm以下とすることが望ましい。所定の形状を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し形状転写を行う表面の形成方法を用いることにより、凹形状部の大きさ、形状及び配列の制御性が高く、高精度かつ自由度の高い電子写真感光体の表面加工が実現できる。
次に、電子写真感光体の表面層形成時に表面を結露させた表面の形成方法を説明する。
電子写真感光体の表面層形成時に表面を結露させた表面の形成方法とは、次の順で行われる。結着樹脂及び特定の芳香族有機溶剤を含有し、芳香族有機溶剤の含有量が表面層用塗布液中の全溶剤質量に対し50質量%以上80質量%以下で含有する表面層用塗布液を作製し、該塗布液を塗布する塗布工程を経る。次いで、該塗布液を塗布された支持体を保持し、該塗布液を塗布された支持体の表面を結露させた支持体保持工程を経る。その後、支持体を加熱乾燥する乾燥工程により表面に各々独立した凹形状部が形成された表面層を作製する。
上記、結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂及び不飽和樹脂が挙げられる。特には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂あるいはジアリルフタレート樹脂が好ましい。さらには、ポリカーボネート樹脂あるいはポリアリレート樹脂であることが好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
上記、特定の芳香族有機溶剤は、水に対して親和性の低い溶剤である。具体的には、1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼンあるいはクロロベンゼンが挙げられる。
上記、表面層用塗布液中に、芳香族有機溶剤を含有していることが重要であるが、凹形状部を安定的に作製する目的で、表面層用塗布液中に、さらに水との親和性の高い有機溶剤あるいは水を表面層用塗布液中に含有してもよい。水との親和性の高い有機溶剤としては、(メチルスルフィニル)メタン(慣用名:ジメチルスルホキシド)、チオラン−1,1−ジオン(慣用名:スルホラン)であることが好ましい。また、N,N−ジメチルカルボキシアミド、N,N−ジエチルカルボキシアミド、ジメチルアセトアミドあるいは1−メチルピロリジン−2−オンであることが好ましい。これらの有機溶剤は単独で含有することも、2種以上混合して含有することもできる。
上記、支持体の表面を結露させた支持体保持工程とは、表面層用塗布液を塗布された支持体を、支持体の表面が結露する雰囲気下に一定時間保持する工程を示す。この表面形成方法における結露とは、水の作用により表面層用塗布液を塗布された支持体に液滴が形成されたことを指す。支持体の表面を結露させる条件は、支持体を保持する雰囲気の相対湿度及び塗布液溶剤の揮発条件(例えば気化熱)によって影響される。しかし、表面層用塗布液中に、芳香族有機溶剤を全溶剤質量に対し50質量%以上含有しているため、塗布液溶剤の揮発条件の影響は少なく、支持体を保持する雰囲気の相対湿度に主に依存する。支持体の表面を結露させる相対湿度は、40%以上100%以下である。さらに相対湿度70%以上であることが好ましい。支持体保持工程には、結露による液滴形成が行われるのに必要な時間があればよい。生産性の観点から好ましくは1秒以上300秒以下であり、さらには10秒から180秒程度であることが好ましい。支持体保持工程には、相対湿度が重要であるが、雰囲気温度としては20℃以上80℃以下であることが好ましい。
上記、加熱乾燥する乾燥工程により、支持体保持工程によって表面に生じた液滴を、感光体表面の凹形状部として形成できる。均一性の高い凹形状部を形成するためには、速やかな乾燥であることが重要であるため、加熱乾燥が行われる。乾燥工程における乾燥温度は、100℃以上150℃以下であることが好ましい。加熱乾燥する乾燥工程の時間は、支持体上に塗布された塗布液中の溶剤及び結露工程によって形成した水滴が除去される時間があればよい。乾燥工程の時間は、20分以上120分以下であることが好ましく、さらには40分以上100分以下であることが好ましい。
上記、電子写真感光体の表面層形成時に表面を結露させた表面の形成方法により、感光体の表面には、各々独立した凹形状部が形成される。電子写真感光体の表面層形成時に表面を結露させた表面の形成方法は、水の作用により形成される液滴を、水との親和性の低い溶剤及び結着樹脂を用いて凹形状部を形成する方法である。この製造方法により作製された電子写真感光体の表面に形成された凹形状部の個々の形は、水の凝集力により形成されるため、均一性の高い凹形状部となっている。この製造方法は、液滴あるいは液滴が十分に成長した状態から液滴を除去する工程を経る製造方法であるため、電子写真感光体の表面の凹形状部は、例えば、液滴形状あるいはハニカム形状(六角形状)の凹形状部が形成される。液滴形状の凹形状部とは、感光体表面の観察では、例えば、円形状あるいは楕円形状に観察される凹形状部であり、感光体断面の観察では、例えば、部分円状あるいは部分楕円状に観察される凹形状部を示す。また、ハニカム形状(六角形状)の凹形状部とは、例えば、電子写真感光体の表面に液滴が最密充填されたことにより形成された凹形状部である。具体的には、感光体表面の観察では、例えば、凹形状部が円状、六角形状あるいは角の円い六角形状であり、感光体断面の観察では、例えば、部分円状あるいは角柱のような凹形状部を示す。
電子写真感光体の表面層形成時に表面を結露させた表面の形成方法により、表面層に複数の各々独立した凹形状部を有する電子写真感光体を作製できる。しかも、凹形状部の短軸径をRpc及び凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す深さをRdvとした場合に、短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部を有する電子写真感光体を作製できる。凹形状部の深さは、上記範囲内で任意であるが、個々の凹形状部の深さが、0.5μm以上20μm以下となる製造条件であることが好ましい。
上記、凹形状部は、製造方法で示した範囲内で製造条件の調整を行うことにより制御可能である。凹形状部は、例えば、本発明記載の表面層用塗布液中の溶剤種、溶剤含有量、支持体保持工程における相対湿度、保持工程における保持時間、加熱乾燥温度により制御可能である。
次に、本発明による電子写真感光体の構成について説明する。
上記のとおり、本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に設けられた有機感光層(以下、単に「感光層」ともいう。)とを有する。本発明による電子写真感光体は、一般的には、円筒状支持体上に感光層を形成した円筒状有機電子写真感光体が広く用いられるが、ベルト状或いはシート状などの形状も可能である。
感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質とを同一の層に含有する単層型感光層であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層であってもよい。本発明による電子写真感光体は、電子写真特性の観点から、積層型感光層が好ましい。また、積層型感光層は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層であっても、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層であってもよい。本発明による電子写真感光体において、積層型感光層を採用する場合、電子写真特性の観点から、順層型感光層が好ましい。また、電荷発生層を積層構造としてもよく、また、電荷輸送層を積層構成としてもよい。さらに、耐久性能向上等を目的とし感光層上に保護層を設けることも可能である。
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金またはステンレスのような金属製の支持体を用いることができる。アルミニウムまたはアルミニウム合金の場合は、ED管、EI管や、これらを切削、電解複合研磨(電解作用を有する電極と電解質溶液による電解及び研磨作用を有する砥石による研磨)、湿式または乾式ホーニング処理したものも用いることができる。また、アルミニウム、アルミニウム合金または酸化インジウム−酸化スズ合金を真空蒸着によって被膜形成された層を有する上記金属製支持体を用いることもできる。また、樹脂製支持体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フェノール樹脂、ポリプロピレンまたはポリスチレン樹脂)を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子または銀粒子のような導電性粒子を樹脂や紙に含浸した支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチックを用いることもできる。
支持体の表面は、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止などを目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
支持体の体積抵抗率は、支持体の表面が導電性を付与するために設けられた層である場合、その層の体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以下であることが好ましく、特には1×10Ω・cm以下であることがより好ましい。
支持体と、後述の中間層または感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けてもよい。これは導電性粉体を適当な結着樹脂に分散させた塗布液を塗工することにより形成される層である。
このような導電性粉体としては、以下のようなものが挙げられる。カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛または銀のような金属粉;導電性酸化スズまたはITOのような金属酸化物粉体。
また、同時に用いられる結着樹脂としては、以下の熱可塑樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン。ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール。アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂。
導電層は、上記導電性粉体と結着樹脂を、以下の溶剤に分散し、または溶解し、これを塗布することにより形成することができる。テトラヒドロフランまたはエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル系溶剤;メタノールのようなアルコール系溶剤;メチルエチルケトンのようなケトン系溶剤;トルエンのような芳香族炭化水素溶剤。導電層の平均膜厚は0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、さらには5μm以上30μm以下であることがより一層好ましい。
導電性顔料や抵抗調節顔料を分散させた導電層は、その表面が粗面化される傾向にある。
支持体または導電層と、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、バリア機能や接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、例えば、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護のために形成される。
中間層は、硬化性樹脂を塗布後硬化させて樹脂層を形成する、あるいは、結着樹脂を含有する中間層用塗布液を導電層上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
中間層の結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリグルタミン酸またはカゼインのような水溶性樹脂。ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリグルタミン酸エステル樹脂。電気的バリア性を効果的に発現させるためには、また、塗工性、密着性、耐溶剤性及び抵抗のような観点から、中間層の結着樹脂は熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、熱可塑性ポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂としては、溶液状態で塗布できるような低結晶性または非結晶性の共重合ナイロンが好ましい。中間層の平均膜厚は、0.05μm以上7μm以下であることが好ましく、さらには0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、中間層において電荷(キャリア)の流れが滞らないようにするために、中間層中に、半導電性粒子を分散させる、あるいは、電子輸送物質(アクセプターのような電子受容性物質)を含有させてもよい。
次に本発明における感光層について説明する。
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷発生物質としては、以下のものが挙げられる。モノアゾ、ジスアゾまたはトリスアゾのようなアゾ顔料;金属フタロシアニンまたは非金属フタロシアニンのようなフタロシアニン顔料;インジゴまたはチオインジゴのようなインジゴ顔料;ペリレン酸無水物またはペリレン酸イミドのようなペリレン顔料。アンスラキノンまたはピレンキノンのような多環キノン顔料;スクワリリウム色素、ピリリウム塩またはチアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素。セレン、セレン−テルルまたはアモルファスシリコンのような無機物質;キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、キサンテン色素、キノンイミン色素スチリル色素。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンあるいはクロロガリウムフタロシアニンのような金属フタロシアニンは、高感度であるため、好ましい。
感光層が積層型感光層である場合、電荷発生層に用いる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂。酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂または塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂。特には、ブチラール樹脂が好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂及び溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライターまたはロールミルを用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:10以上10:1以下(質量比)の範囲が好ましく、特には1:1以上3:1以下(質量比)の範囲がより好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択される。有機溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
電荷発生層の平均膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び/または可塑剤を必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷(キャリア)の流れが滞らないようにするために、電荷発生層には、電子輸送物質(アクセプターのような電子受容性物質)を含有させてもよい。
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷輸送物質としては、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物またはトリアリルメタン化合物が挙げられる。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂とを溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。また、上記電荷輸送物質のうち単独で成膜性を有するものは、結着樹脂を用いずにそれ単独で成膜し、電荷輸送層とすることもできる。
感光層が積層型感光層である場合、電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂または不飽和樹脂。特には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはジアリルフタレート樹脂が好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解して得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、1:2以上2:1以下(質量比)の範囲が好ましい。
電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、以下のものが挙げられる。アセトンまたはメチルエチルケトンのようなケトン系溶剤;酢酸メチルまたは酢酸エチルのようなエステル系溶剤。テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメトキシメタンまたはジメトキシエタンのようなエーテル系溶剤;トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンのような芳香族炭化水素溶剤。これら溶剤は、単独で使用してもよいが、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤を使用することが、樹脂溶解性のような観点から好ましい。
電荷輸送層の平均膜厚は5μm以上50μm以下であることが好ましく、特には10μm以上35μm以下であることがより好ましい。
また、電荷輸送層には、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤及び/または可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
本発明において電子写真感光体に要求される特性の一つである耐久性能の向上にあたっては、上記の機能分離型感光体の場合、表面層となる電荷輸送層の材料設計は重要である。例えば、高強度の結着樹脂を用いる方法、可塑性を示す電荷輸送物質と結着樹脂との比率を適正化する方法、高分子電荷輸送物質を使用する方法が挙げられるが、より耐久性能を発現させるためには表面層を硬化系樹脂で構成することが有効である。
上記、表面層を硬化系樹脂で構成する方法としては、例えば、電荷輸送層を硬化系樹脂で構成することが挙げられ、また、上記の電荷輸送層上に第二の電荷輸送層或いは保護層として硬化系樹脂層を形成することが挙げられる。硬化系樹脂層に要求される特性は、膜の強度と電荷輸送能力との両立であり、電荷輸送物質及び重合或いは架橋性のモノマーやオリゴマーから構成されるのが一般的である。
これら表面層を硬化系樹脂で構成する方法には、電荷輸送物質としては、公知の正孔輸送性化合物及び電子輸送性化合物を用いることができる。これらの化合物を合成する材料としては、アクリロイルオキシ基またはスチレン基を有する連鎖重合系の材料が挙げられる。また、水酸基、アルコキシシリル基またはイソシアネート基を有する逐次重合系のような材料が挙げられる。特に、表面層を硬化系樹脂で構成された電子写真感光体の電子写真特性、汎用性や材料設計及び製造安定性の観点から正孔輸送性化合物と連鎖重合系材料の組み合わせが好ましい。さらには、正孔輸送性基及びアクリロイルオキシ基の両者を分子内に有する化合物を硬化させた表面層で構成された電子写真感光体であることが特に好ましい。
硬化手段としては、熱、光または放射線のような公知の手段が利用できる。
硬化層の平均膜厚は、電荷輸送層の場合は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、さらには10μm以上35μm以下であることが好ましい。第二の電荷輸送層或いは保護層の場合は、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、さらには1μm以上10μm以下であることが好ましい。
本発明の電子写真感光体の各層には各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの劣化防止剤や、フッ素原子含有樹脂粒子などの潤滑剤などが挙げられる。
以上の各層の塗布液を塗布する際には、以下の塗布方法を用いることができる。浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、リングコーティング法。
以下、本発明を実施例にしたがってより詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
<感光体製造例1>
直径30mm、長さ357.5mmの表面切削加工されたアルミニウムシリンダーを支持体(円筒状支持体)とした。
次に、以下の成分からなる溶液を約20時間、ボールミルで分散し導電層用塗料を調製した。
酸化スズの被覆層を有する硫酸バリウム粒子からなる粉体 60部
(商品名:パストランPC1、三井金属鉱業(株)製)
酸化チタン 15部
(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)
レゾール型フェノール樹脂 43部
(商品名:フェノライト J−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70質量%)
シリコーンオイル 0.015部
(商品名:SH28PA、東レシリコーン(株)製)
シリコーン樹脂 3.6部
(商品名:トスパール120、東芝シリコーン(株)製)
2−メトキシ−1−プロパノール 50部
メタノール 50部
上記方法にて調製した導電層用塗料を、上記支持体上に浸漬法によって塗布し、140℃に加熱されたオーブン内で1時間、加熱硬化することにより、平均膜厚が15μmの導電層を形成した。
次に、以下の成分をメタノール400部/n−ブタノール200部の混合液に溶解した中間層用塗料を、上記導電層上に浸漬塗布し、100℃に加熱されたのオーブン内で30分間、加熱乾燥した。これにより、平均膜厚が0.45μmの中間層を形成した。
共重合ナイロン樹脂 10部
(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)
メトキシメチル化6ナイロン樹脂 30部
(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)
次に、以下の成分を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、酢酸エチル700部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン 20部
(CuKα特性X線回折において、7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°(ブラッグ角度(2θ±0.2°))に強い回折ピーク有するもの)
下記構造式(1)
で示されるカリックスアレーン化合物 0.2部
ポリビニルブチラール 10部
(商品名:エスレックBX−1、積水化学(株)製)
シクロヘキサノン 600部
上記電荷発生層用塗料を中間層上に浸漬コーティング法で塗布し、80℃に加熱されたオーブン内で15分間、加熱乾燥することにより、平均膜厚が0.17μmの電荷発生層を形成した。
次いで、以下の成分をクロロベンゼン600部及びメチラール200部の混合溶媒中に溶解して電荷輸送層用塗料を調製した。これを用いて、上記電荷発生層上に電荷輸送層を浸漬塗布し、110℃に加熱されたオーブン内で30分間、加熱乾燥することにより、平均膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
下記構造式(2)
で示される電荷輸送物質(正孔輸送物質) 70部
ポリカーボネート樹脂 100部
(ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
次いで、以下の成分を、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)20部及び1−プロパノール20部の混合溶剤に溶解した。
フッ素原子含有樹脂 0.5部
(商品名:GF−300、東亞合成(株)製)
上記フッ素原子含有樹脂が溶解された溶液に、4フッ化エチレン樹脂粉体(商品名:ルブロンL−2、ダイキン工業(株)製)10部を加えた。その後、4フッ化エチレン樹脂粉体を加えた溶液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110EH、米Microfluidics社製)で59MPa(600kgf/cm)の圧力で4回の処理を施し、均一に分散させた。さらに、上記分散処理を行った溶液をポリフロンフィルター(商品名PF−040、アドバンテック東洋(株)製)で濾過を行い、分散液を調製した。その後、下記構造式(3)
で示される電荷輸送物質(正孔輸送物質)90部、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン70部及び1−プロパノール70部を上記分散液に加えた。これを、ポリフロンフィルター(商品名:PF−020、アドバンテック東洋(株)製)で濾過を行い、第二電荷輸送層用塗料を調製した。
上記第二電荷輸送層用塗料を用いて、上記電荷輸送層上に第二電荷輸送層用塗料を塗布した後、大気中、50℃のオーブンで10分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下において加速電圧150KV及びビーム電流3.0mAの条件で支持体を200rpmで回転させながら1.6秒間電子線照射を行った。引き続いて、窒素雰囲気下において、支持体周囲の温度を25℃から125℃まで30秒かけて昇温させ、第二電荷輸送層に含有される物質の硬化反応を行った。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15KGyであった。また、電子線照射及び加熱硬化反応雰囲気の酸素濃度は15ppm以下であった。上記処理を行った支持体を、大気中において25℃まで自然冷却し、その後、120℃に加熱されたのオーブン内で30分間、大気中で、加熱処理を行って、平均膜厚が5μmの第二電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
上記の方法により作製された電子写真感光体の両端部20mmの周面に対して、図6に示された装置において、図8に示された形状転写用のモールドを設置し表面加工を行い、感光体1を得た。加工時の電子写真感光体及びモールドの温度は110℃に制御し、4.9MPa(50kg/cm)の圧力で加圧しながら、感光体を周方向に回転させ形状転写を行った。
<電子写真感光体の表面形状測定>
上記の方法により作製された電子写真感光体に対して、超深度形状測定顕微鏡VK−9500((株)キーエンス製)を用いて表面観察を行った。測定対象の電子写真感光体を円筒状支持体を固定できるよう加工された置き台に設置し、電子写真感光体の上端から15mm離れた位置の表面観察を行った。その際、対物レンズ倍率を50倍とし、感光体表面の100μm四方を視野観察とし、測定を行った。測定視野内に観察された凹形状部を解析プログラムを用いて解析を行った。
測定視野内にある各凹形状部の表面部分の形状、短軸径(Rpc)及び凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す深さ(Rdv)を測定した。電子写真感光体の表面には、図9に示される円柱状の凹形状部が形成されていることが確認された。短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部の100μm四方あたりの個数を算出すると、2,500個であった。また、凹形状部の表面部分の平均短軸径(Rpc−A)は、1.0μmであった。また、凹形状部と、その凹形状部と最も近い距離にある凹形状部との平均距離(以下、凹形状部間隔と表記する)は、1.0μmの間隔で形成されていた。また、凹形状部の平均深さ(Rdv−A)は、2.0μmであった。結果を表1に示す。(表1中、個数は、短軸径に対する深さの比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上の凹形状部の100μm四方あたりの個数を示す。Rpc−Aは、100μm四方あたりの凹形状部の平均短軸径を示す。Rdv−Aは、100μm四方あたりの凹形状部の平均深さを示す。Rdv−A/Rpc−Aは、100μm四方あたりの凹形状部の平均短軸径に対する平均深さの比を示す。)
<感光体製造例2>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製し、感光体製造例1で使用したモールドにおいて、図8中のDで示された短軸径を1.0μmから2.0μmとした以外は、感光体製造例1と同様に加工を行い、感光体2を得た。感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、円柱状の凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<感光体製造例3>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製し、感光体製造例1で使用したモールドにおいて、図8中のDで示された短軸径を1.0μmから4.0μmとした以外は、感光体製造例1と同様に加工を行い、感光体3を得た。感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、円柱状の凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<感光体製造例4>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製した。次いで感光体製造例1で使用したモールドにおいて、図8中のDで示された短軸径を1.0μmから2.0μm及びFで示された高さを3.0μmから2.0μmとした以外は、感光体製造例1と同様に加工を行い、感光体4を得た。感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、円柱状の凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<感光体製造例5>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製した。次いで感光体製造例1で使用したモールドにおいて、図8中のDで示された短軸径を1.0μmから0.5μm及びFで示された高さを3.0μmから1.0μmとした以外は、感光体製造例1と同様に加工を行い、感光体5を得た。感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、円柱状の凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<感光体製造例6>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製し、感光体製造例1で使用したモールドにおいて、図8中のFで示された高さを3.0μmから1.5μmとした以外は、感光体製造例1と同様に加工を行い、感光体6を得た。感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、円柱状の凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<感光体製造例7>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製し、感光体製造例1で使用したモールドを図10に示した山型形状のモールドに代えた以外は感光体製造例1と同様に加工を行い、感光体7を得た。感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、図11に示される山状の凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<感光体製造例8>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体の両端部20mmの周面に対して、図4で示されるようなKrFエキシマレーザー(波長λ=248nm)を用いた凹形状部作製方法を用いて、凹形状部を形成した。その際に、図12で示すように直径10μmの円形のレーザー光透過部が5.0μm間隔で図のように配列するパターンを有する石英ガラス製のマスクを用い、照射エネルギーを0.85J/cmとした。さらに、1回照射あたりの照射面積は2mm四方で行い、2mm四方の照射部位あたり3回のレーザー光照射を行った。同様の凹形状部の作製を、図4に示すように、電子写真感光体を回転させ、照射位置を軸方向にずらす方法により、感光体表面に対する凹形状部の形成を行い、感光体8を得た。
感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、図13に示される凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<感光体製造例9>
表面加工は実施しなかった以外は、感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製し、感光体9を得た。
<感光体製造例10>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製した。次いで感光体製造例1で使用したモールドにおいて、図8中のDで示された短軸径を1.0μmから4.0μm及びFで示された高さを3.0μmから0.8μmとした以外は、感光体製造例1と同様に加工を行い、感光体10を得た。感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、円柱状の凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<感光体製造例11>
感光体製造例1と同様に電子写真感光体を作製した。次いで感光体製造例1で使用したモールドにおいて、図8中のDで示された短軸径を1.0μmから4.0μm及びFで示された高さを3.0μmから1.5μmとした以外は、感光体製造例1と同様に加工を行い、感光体11を得た。感光体製造例1と同様に表面形状測定を行ったところ、円柱状の凹形状部が形成されていることが確認された。測定結果を表1に示す。
<無機微粉体製造例1>
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンを純水で濾液の電気伝導度が2200μS/cmになるまで洗浄した。該含水酸化チタンスラリーにNaOHを添加して吸着している硫酸根をSOとして0.24質量%になるまで洗浄した。次に該含水酸化チタンスラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1.0としてチタニアゾル分散液を得た。該チタニアゾル分散液にNaOHを添加し、分散液のpHを6.0として上澄み液の電気伝導度が120μS/cmになるまで純水を用いてデカンテーションによって洗浄した。得られた含水酸化チタンをX線回折により調べたところアナターゼ型TiOのピークのみを示した。
以上のようにして得られた含水率91質量%のメタチタン酸533g(0.6モル)をSUS製反応容器に入れ、窒素ガスを吹き込み20分間放置し反応容器内を窒素ガス置換した。Sr(OH)・8HO(純度95.5質量%)183.6g(0.66モル)を加え、さらに蒸留水を加えて0.3モル/リットル(SrTiO換算)、SrO/TiOモル比1.10のスラリーに調整した。
窒素雰囲気中で該スラリーを90℃まで18℃/1時間で昇温し、沸点で3時間反応を行った。反応後40℃まで冷却し、窒素雰囲気下において上澄み液を除去し、2.5リットルの純水を加えてデカンテーションを行うという操作を2回繰り返して洗浄を行った後、ヌッチェで濾過を行った。得られたケーキを110℃の大気中で4時間乾燥した。
得られたチタン酸ストロンチウムは、一次粒子の平均粒径が150nmで粒子形状が立方体状及び/または直方体状であるものの含有率は70個数%であった。このチタン酸ストロンチウムを無機微粉体A−1とする。結果を表2に示す。
<無機微粉体製造例2〜3>
無機微粉体製造例1でチタン酸ストロンチウムの反応温度、温度までの昇温速度、反応時間、分散液のpHを調整して、以下の特性を持つペロブスカイト型無機微粉体A−2及びA−3を作製した。結果を表2に示す。
<トナー粒子製造例>
・スチレンアクリル樹脂 100部
(スチレン−ブチルアクリレート共重合比=78:22)
・磁性体 100部
・サリチル酸金属化合物 2部
・パラフィンワックス 3部
上記を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、二軸押し出し混練機で溶融混練した後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後、分級して平均粒径7μmの着色粒子X(トナー粒子)を得た。
<トナー製造例1〜3>
トナー粒子X100部と一次粒径約7nmのシリカ100部にジメチルシリコーンオイル20部で表面処理した疎水性シリカ(BET=130m/g)1.2部と、無機微粉体A−1〜3をそれぞれ1.5部ヘンシェルミキサーFM10Bにて、外添した。こうしてトナーB−1〜3を得た。無機微粉体の遊離率はいずれも10体積%であった。
<実施例1〜9、比較例1〜3>
上記の方法により作製された感光体とトナーを用いて、以下のような評価を行った。
評価機はキヤノン(株)製のデジタル複写機GP405を用いて、雰囲気温度23℃及び相対湿度50%の環境下で、感光体の暗部電位(Vd)が−700V、明部電位(Vl)が−200Vになるように電位の条件を設定し、感光体の初期電位を調整した。次に、200000枚の通紙耐久試験を行い、その後、感光体端部の目視観察を行った。通紙耐久試験はA4サイズの普通紙を用い、プリント1枚ごとに1回停止する間欠モードで行った。なお、テストチャートは、印字比率5%のものを用いた。評価結果を表3に示す。
本発明による電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。 本発明における凹形状部の形状例を示す図である。 本発明におけるマスクの配列パターンの例(部分拡大図)を示す図である。 本発明におけるレーザー加工装置の概略図の例を示す図である。 本発明におけるモールドによる圧接形状転写加工装置の概略図の例を示す図である。 本発明におけるモールドによる圧接形状転写加工装置の概略図の別の例を示す図である。 本発明におけるモールドの形状の例を示す図である。 感光体製造例1で使用したモールドの形状(部分拡大図)を示す図である。 感光体製造例1により得られた感光体表面の凹形状部の配列パターン(部分拡大図)を示す図である。 感光体製造例7で使用したモールドの形状(部分拡大図)を示す図である。 感光体製造例7により得られた感光体表面の凹形状部の配列パターン(部分拡大図)を示す図である。 感光体製造例8で使用したマスクの配列パターン(部分拡大図)を示す図である。 感光体製造例8により得られた感光体表面の凹形状部の配列パターン(部分拡大図)を示す図である。
符号の説明
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
a レーザー光遮蔽部
b レーザー光透過部
c エキシマレーザー光照射器
d ワーク回転用モーター
e ワーク移動装置
f 電子写真感光体
g 凹形状非形成部
h 凹形状形成部
A 加圧装置
B モールド
C 感光体
P 転写材

Claims (6)

  1. 支持体上に感光層を有する電子写真感光体、
    結着樹脂、着色剤及び無機微粉体を含有するトナーと、該トナーを収容する現像容器と、該現像容器の開口部に延在し回転する現像ローラーと、該現像ローラーの長手方向両端部と該現像容器の開口部との隙間に設けられた端部シール部材とを有する現像手段、
    及び、弾性ゴムブレードを該電子写真感光体に当接させて転写残トナーを除去するクリーニングブレード方式であるクリーニング手段を有する電子写真装置であって、
    該電子写真感光体の表面層が複数の各々独立した凹形状部を有し、かつ、該凹形状部の短軸径をRpc、該凹形状部の最深部と開孔面との距離を示す深さをRdvとした場合に、短軸径(Rpc)に対する深さ(Rdv)の比(Rdv/Rpc)が0.5以上であり、かつ深さ(Rdv)が0.5μm以上であり、該無機微粉体の一次粒子の平均粒径が30nm以上500nm以下であり、かつ、短軸径(Rpc)より小さいことを特徴とする電子写真装置。
  2. 前記凹形状部を前記電子写真感光体の表面に100μm四方あたり50個以上有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置。
  3. 前記凹形状部において、前記電子写真感光体の表面100μm四方あたりの凹形状部の平均短軸径(Rpc−A)に対する、表面100μm四方あたりの平均深さ(Rdv−A)の比(Rdv−A/Rpc−A)が0.5以上であり、かつ平均深さ(Rdv−A)が0.5μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真装置。
  4. 前記平均深さ(Rdv−A)が1.0μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真装置。
  5. 前記平均短軸径(Rpc−A)に対する平均深さ(Rdv−A)の比(Rdv−A/Rpc−A)が1.0以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真装置。
  6. 前記無機微粉体の粒子形状が立方体状及び直方体状の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真装置。
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