JP2008267646A - 冷蔵庫 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷却器3が発する冷気を利用して食品を保存し貯蔵する冷蔵庫であって、貯蔵した食品をその凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に少なくとも一定時間保持する過冷却ケース81を備える。過冷却ケース81は、例えば、複数の温度帯に切替可能な切替室200に配した上下2段式の下側ケースにより構成する。
【選択図】図6
Description
低温環境に該食品をおくと、表面から除々に冷却され、最終的に中心部分までが周囲温度に至る。このとき、表面のほうが先に温度が下がるため、表面が先に凍りはじめるという現象が起こる。このような場合においては、食品表面にできた氷結晶が食品内部の未凍結状態の水分を引き出しながら拡大するため、中心部分に向かって大きな針状結晶ができる。大きな針状結晶は食品本来の構造を破壊するため、解凍時の食品形状を凍結前の状態に戻すことは非常に困難である。したがって、凍結時にいかにして小さな氷結晶をつくるか、氷結晶によって食品本来の構造を破頓しないかが、凍結品質を良くする手段であるといえる。
最近の家庭用冷蔵庫に対するニーズは、食生活、生活スタイルの変化により「冷凍」または「冷凍保存」に集まっている。冷凍食品の多様化、利用量増加、作り置き、食品ストックなど、冷凍室利用頻度は高まる傾向にあり、大容量化が求められている。また一方では、食品品質に対する要求も高く、冷凍保存食品の品質を高める工夫は数多くなされている。
したがって、急速冷凍は、食品内部に大きな氷結晶が生成されるのを抑制するための一手段といえる。
過冷却とは、食品を特定の冷却条件で冷却していくと、該食品の凍結点以下の温度でも凍っていない状態となることをいう。このような過冷却状態で食品を保存すると、凍結による蛋白質変性、細胞組織の損傷などの冷却障害を回避できるという利点がある。また、過冷却状態とした食品に強制的に刺激を与えて過冷却状態を解除すると、食品が急速に凍結すること、およびこのようにして得られた凍結状態は、過冷却状態を通過してしまう従来の急速凍結法に比べて細胞組織の損傷が少なく、品質劣化が極めて小さいことが報告されている(例えば、特許文献2参照)。過冷却状態を経て凍結した食品は、食品全体に均一に、針状ではなく粒状の細かい氷結晶が生成されるため、細胞組織の損傷が少なくなるのである。
しかし、過冷却状態とするときの冷却スピードが遅く、過冷却状態が長すぎると、酸化や細菌繁殖などによって食品品質が低下する可能性があった。また、過冷却状態は不安定であるため過冷却状態での最低到達点温度が深く(低く)到達する前に過冷却が解除されやすい、最低到達点温度が浅い(高い)と解除されたときに出来る氷核が少ないため冷凍品質の良い冷凍ができないという問題点がある。
まず、過冷却について詳しく説明する。図1は、過冷却なし(a)と過冷却あり(b)で水が凍結するときの温度変化を示したグラフである。グラフの縦軸は温度でありグラフ上方に向かうほど温度は上がる。横軸は時間であり矢印方向に時間経過を示す。
過冷却状態とは、その物質の凍結点以下であるにも関わらず、100パーセント凍っていない状態をいう。ここで、凍結点とは、その物質が凍り始める温度のことをいう。すなわち、過冷却状態とは、凍り始めるべき温度ではあるが全く凍っていない状態のことである。例えば、水の凍結点は0℃である。この凍結点は物質によって様々であり、塩濃度や糖度が高い食品などにおいては0℃よりも低くなる傾向にある。
過冷却状態と過冷却状態を経た凍結について水を例にさらに詳しく説明すると、過冷却状態とは、水を冷却したとき、凍結点である0℃を下回っても100パーセント水の状態であることをいう。過冷却状態にはいった水も、やがては凍結し、氷とすることが可能であるが、このときには何らかの刺激が必要である。この刺激とは、温度的なものであっても、物理的なものであってもよい。このように刺激によって凍結を開始させることができるのであるが、過冷却状態から凍結開始に移行するまでの時間は、数秒単位であり、瞬間的なものである。しかし、この凍結開始時に瞬間的に凍る水の割合は全体の数パーセントであり、これが100パーセント氷になるまでにはさらに冷却時間を要する。
そして、もうひとつ通常凍結と過冷却凍結の大きな違いは、凍結開始時の状態である。ここで、凍結開始時にはどのような現象が起こっているのかをペットボトルに入った水を例に説明すると、通常凍結の場合には、凍結が開始するとペットボトル表面付近の水から凍り始め、表面部分に薄氷がはったような状態になり、その後内部に向かって氷が広がり、最終的に全体が凍結する。氷の成長は、水分子がある一定以上の大きさのクラスターを形成した氷核を中心に起こるものであり、氷核形成は凍結開始時に起こるものである。したがって、通常凍結の場合には表面にはとんどの氷核が形成され、そこから水の状態である部分へ向かって氷が成長しているといえる。
一方、過冷却凍結の場合には、凍結が開始するとペットボトル全体に均一に氷核が形成される。そして、内部も表面もペットボトル内のあらゆる部分で氷が成長するため、一定方向に向かって氷が成長するということはない。
凍結完了後の通常凍結と過冷却凍結の違いとしては、その冷却過程の違いから、通常凍結の場合には表面から内部に向かった大きな針状氷結晶ができるのに対し、過冷却凍結の場合には表面と内部に、均一に小さな粒状氷結晶ができる。
また、急速冷凍の場合には凍結開始時、凍結完了後にどのような状態であるかというと、表面に冷気を当てて素早く凍結させるという点でいうと通常凍結の場合と同様である。まず表面の温度が急激に下がるため、表面から凍り始める。しかし、通常凍結と異なる点は、内部まで冷却される速度が速くなるため、通常凍結に比べると内部にも氷核ができやすい状態となり、通常凍結時ほど大きな氷結晶ができることはない。
食品冷凍について考えると、凍結完了後の氷結晶の大きさ、形状は解凍時の食品品質に大きな影響を与える。食品は、細胞、タンパク質、糖質などで構成されている場合がほとんどであるため、氷結晶によってその構造が一度破壊されてしまうと、完全に元にもどらない場合が多い。したがって、凍結時にできる氷結晶の大きさ、形状が食品本来の構造を破壊しないようなものであると品質の良い冷凍ができているといえるのである。
食品の冷却と氷結晶の大きさ、形状について考える際に、最大氷結晶生成帯である−1℃〜−5℃の温度帯の通過時間を考慮することは従来から行われている。それは、この最大氷結晶生成帯を短時間で通過させてやると氷結晶は小さくなるという考え方である。
過冷却冷凍の場合には、最大氷結晶生成帯を含むこの近辺の温度帯(−1℃〜−10℃付近)に過冷却状態で留まる時間は長い。しかし過冷却状態とは凍っていない状態である。したがって、過冷却状態であれば、この温度帯通過時間が長くても凍結後の氷結晶が大きくならず、微細な氷結晶を作ることが可能である。最大氷結晶温度帯を含むこの近辺の温度帯での冷凍で、小さな氷結晶を形成させ、品質の良い冷凍とするという点では全く新規の冷凍方法である。また、過冷却状態が解除すると凍結が開始し、温度が変化しない相変化状態を経て完全に凍結するのであるが、過冷却状態を経ていれば、その後の凍結の過程で最大氷結晶生成帯に長時間留まったとしても、氷結晶が肥大化することはないことが確認できている。したがって、この点においても新規の冷凍方法であるといえる。
過冷却を経ていれば、その後の凍結過程に長時間かかったとしても、氷結晶状態にほとんど影響はないが、凍結過程に入ったときに急速に冷凍してやると、氷結晶が肥大する可能性はさらに低くなり、また、氷結晶以外の食品品質低下要因についても回避することができるので、さらに品質の良い冷凍ができるといえる。
また、これまでは過冷却状態に入った食品を過冷却解除して凍結させた場合のメリットについてのみ述べてきたが、過冷却状態に入った食品を必ずしも凍結させる必要はない。過冷却状態を維持するメリットとしては、凍結温度以下、すなわち通常であれば凍ってしまうような温度で保存しているにも関わらず100パーセント凍っていない、氷結晶が全くできていない状態であるため、低温で保存しながら氷結晶による食品構造の変化を全く受けないという点が挙げられる。より低温で保存することは食品の様々な化学変化を抑制できるという点で鮮度推持に有効であることは一般的に知られていることであるが、この低温保存と未凍結であるという両方のメリットを達成できる保存方法であるともいえる。また、食品を解凍する必要もない。しかし、未凍結状態であるということには、デメリットもある。食品中の水分が未凍結であるということは、細菌繁殖や様々な化学変化にその水分が利用可能であるということである。したがって、その点では凍結したものよりも注意を払う必要がある。
まず、本発明の冷蔵庫の過冷却室(過冷却スペースに同じ)における過冷却条件について説明する。過冷却の条件設定時に最も重視するべき点は、冷却速度および冷却される食品の芯温の最低到達点(過冷却状態で到達する温度)と凍結点との差である。
冷却速度が速すぎると、食品全体の温度が不均一な状態で冷却されるため、(食品の表面温度と芯温の差が大きい)凍結している部分と未凍結部分とができる。氷結晶は氷核を中心に成長するため、該食品の一部分でも凍結してしまうと、そこから未凍結部分の水分を取り込みながら成長することになる。その結果、針状の大きな氷結晶ができることになる。細胞間などに生じた針状氷結晶や大きな氷結晶は、細胞中の水分流出や細胞破壊の原因となり、該食品解凍時のドリップ流出を引き起こす。その結果として、食品本来のうまみが減少したり、食感が悪くなったりする。
一方、冷却速度が遅すぎると、過冷却状態の維持については問題ないが、未凍結状態が長くなることで、細菌繁殖、酸化促進などにより食品品質が悪化することが問題となる。
つまり、凍結点までは表面温度と芯温の差が小さくなるように冷却し、凍結点以下の温度に達した場合(過冷却状態)は冷却速度を上げて、芯温の最低到達点に早く到達するようにして過冷却を解除することで未凍結状態が長くならないようにする。このように食品が凍結点まで、凍結点以下の過冷却状態まで、過冷却解除され、完全に凍結するまでのそれぞれの温度制御、温度帯を連続してまたは段階的に行うようにする。このような問題を解決するために、過冷却スペースに抗菌機能をつける方法もある。抗菌機能としては、紫外線、オゾンを用いる方法が挙げられる。しかし、抗菌機能をつけるとコストがかかるという問題もある。
過冷却の温度が深いとよいとされる理由としては以下のようなことが考えられる。過冷却の温度が深くなると、過冷却で蓄えられる顕熱エネルギー量が多くなるので、結果的に過冷却解除時に使われる瞬間的な潜熱変化のエネルギーが大きくなり、そのエネルギーを利用して、過冷却解除時に発生する氷核が食品中に均一に一度に多く発生し、その氷核を核に氷結晶が成長するため、小さな氷の粒が食品内に均一に多数でき、細胞への影響が小さくなるといえる。
空気温度ムラは15℃以内であればよいが、好ましくは5℃以内である。空気温度ムラが大きすぎることの問題点としては、大きな食品を冷却しようとするとき、部分的な凍結がおきてしまうことが挙げられる。
ヨーグルトやプリンなどのデザート類を過冷却冷凍で凍らせると、非常に微細な氷結晶ができるため、通常冷凍や冷蔵とは異なった新食感を得ることができる。また、牛乳やジュース類などを過冷却冷凍すると、通常冷凍とは違った食感のシャーベットができるなど、微細な氷結晶ならではの新メニューができる可能性がある。
じゃがいもなど、いも類は従来冷凍に適さない食品とされていた。カレーなどを作ったとき、冷凍保存し、翌日以降に温めなおして食べるというようなことは一般家庭で日常的に行われていることであるが、その際、じゃがいもだけは取り除たり、つぶしたりして冷凍することがカレーをおいしく冷凍するための常識であるとされていた。これはじゃがいもを冷凍し、解凍すると、スカスカになり、食感が悪くなるからである。しかし、過冷却冷凍でカレーを凍結させると、解凍後もじゃがいもの食感が凍結前とはほとんど変わらず、スカスカあるいはべちゃっとした食感になったりしないことが実験結果からわかっている。じゃがいもの主成分であるデンプンはアミロースとアミロペクチンで構成されているが、それらの立体構造を氷結晶の成長によって破壊するのが従来の冷凍であった。一度破壊された構造は解凍しても元に戻らないため、解凍したじゃがいもはスカスカになる。 これに対して、過冷却冷凍でできる氷結晶は非常に微細であるため、凍結時にデンプンの立体構造をほとんど変形させることがなく、解凍しても、元の立体構造を維持できると考えられる。したがって、過冷却冷凍後、解凍したじゃがいもの食感は悪くならないと考えられる。このような原理は、冷凍に適さないとされていた他の食品にもあてはまる場合があり、従って過冷却冷凍を用いると、これまで冷凍に適さないとされていた食品の冷凍が可能になることも示唆される。
このように、冷却状態を経て食品などを凍結させた場合、微細な氷結晶ができるため、細胞やタンパク質などの本来の食品構造を変化させることなく維持できることが分かってきている。したがって、凍結→解凍した食品を再び凍結するなど、凍結→解凍を繰り返しても従来冷凍時のように品質が極端に悪化することがなくなる可能性もある。
以上は一般家庭での活用によるメリットについて述べたが、食品加工においても過冷却冷凍は有効利用が可能であるといえる。過冷却冷凍で生じる氷結晶の細かさは−60℃の冷凍にも優るという結果が得られており、高品質冷凍を実現するという点で、業務用冷凍庫にも代替できるといえる。そして、業務用のように大きなエネルギーを使って極低温冷気をつくりだす必要がないため、省エネ性が高いというメリットがある。
過冷却状態を経て冷凍保存が行われるこの発明の実施の形態1における冷蔵庫について詳しく説明する。図3は、この発明の実施の形態1における冷蔵庫1の断面図である。この冷蔵庫1の食品貯蔵室は、最上部に開閉ドアを備えて配置される冷蔵室100、冷蔵室100の下方に冷凍温度帯(−18℃)から冷蔵、野菜、チルド、ソフト冷凍(−7℃)などの温度帯に切り替えることのできる引き出しドアを備える切替室200、切替室200と並列に引き出しドアを備える製氷室500、最下部に配置される引き出しドアを備えた冷凍室300、冷凍室300と切替室200及び製氷室500との間に引き出しドアを備えた野菜室400等から構成される。冷蔵庫100の扉表面には、各室の温度や設定を調節する操作スイッチと、そのときの各室の温度を表示する液晶などから構成される操作パネル5が設けられている。
切替室200は、冷蔵(約3℃)、チルド(約0℃)、ソフト冷凍(約−5、−7、−9℃)、冷凍(約−17℃)など、6通りの温度帯に切替可能となっており、冷蔵室100の扉に設置された液晶パネル5によって、温度を切り替えることができる。切替室200の温度は、図示されていないサーミスタの設定温度およびその検出値により制御されている。
この構造によれば、切替ケース80だけを使用する時には、上側の切替ケース80が下側の過冷却ケース81内へ気流が直接流入するのを抑制するため、過冷却ケース81の空気温度上昇を抑制する。また、通常冷却時には、過冷却ケース81の上部が切替ケース80によりカバーされて、冷気が直接入りにくい構造となっているため、過冷却をつくるときに必要な緩慢冷却が可能となる。
なお、切替ケース80と過冷却ケース81の間に隙間がない場合でも適度な冷却性能は得られる。隙間がない場合には、通常冷却時における空気温度変動の幅を小さく抑えることができる。
2段ケースの下側を過冷却スペースとする構造としては、図7のように、上側ケースをその前側と後側で深さを相違させるように底面に段差を設け、下側ケースをその段差スペースに対応させて配置する構成としてもよい。図7においては、上側ケースが切替ケース83であり、下側ケースが過冷却ケース84である。図7の構造においては、切替ケース83の背面側には背の高い食品を収納でき、扉側には小物を収納できるというメリットがある。
また、2段ケースの下側を過冷却スペースとする構造としては、図8に示すようなものでもよい。図8においては、上側ケースが切替ケース85であり、下側ケースが過冷却ケース86である。切替ケース85と過冷却ケース86の奥行きは必ずしも同じである必要はなく、一部隙間が開いていてもよい。また、切替ケース85をはめ込み式とすることができるほかに、スライド式として、ケースを奥に押し込んで過冷却ケース86内の食品を取り出す構造としてもよい。図8の構造においては、上側ケースを追加するだけで過冷却スペースができることから、変更の際にコストが安くて済むというメリットがある。
芯温が凍結点に達するまで上記のように冷却し、凍結点に達したら食品温度の最低到達点を下げるように急速に冷却する。これは、凍結点以下の温度は不安定な状態になるのでゆっくり食品の温度を低下させると過冷却状態での到達温度が高いままに解除されてしまう可能性がある。よって、凍結点に達したと判定できる温度に表面温度測定装置95の温度がなった場合は、FAN回転数を上げて、過冷却ケースに流入する冷気を多くするか、ダンパ46を全開にして(図11のダンパ46の状態)冷気流入量を多くして最低到達点温度を下げるように温度制御する。そのとき切替室設定温度は凍結点まで冷却した温度設定と同じか、設定温度を下げる。
次に食品が過冷却解除されると表面温度測定装置95の温度が上昇する。これは食品が過冷却状態から過冷却解除されると食品温度は凍結点まで上昇し、凍結点と過冷却到達温度との差分の熱エネルギー(温度上昇分の熱エネルギー)により食品内に氷核を生成する現象によるものである。その判定を受けて過冷却室に冷気を流入させて、完全に凍結させるように温度制御する。ダンパ46を全開とし、FAN回転数、圧縮機回転数を上げて、より低温の冷気を流入できるようにする。そのとき切替室設定温度は通常温度より低くする。
このように食品を凍結点まで、凍結点から過冷却最低達成点温度、過冷却解除、完全凍結までの各段階で連続的または段階的に設定制御を変える。例えば、過冷却ケースへの冷気温度、冷気風量、冷気風速をコントロールし、確実に過冷却状態にし、その過冷却最低到達温度を下げ、過冷却を解除し、解除後の凍結スピードを上げて質のよい冷凍を実現する。
一方で一定時間経過しても表面温度測定装置95の温度が凍結点から下がらない場合は、その食品が過冷却を起こさずに(過冷却失敗)、凍結点から相変化し、凍結状態に入ってしまったと判断し、過冷却解除後の温度制御と同様に急速に凍結できるように温度制御し、食品の凍結品質をできるだけ維持するように過冷却状態を経ての冷凍でなくてもより微細に氷結晶を形成できるようにする。
失敗がない温度制御については凍結点までは例えば肉の場合は凍結点である−1℃で温度制御し、芯温まで−1℃の凍結点まで均一に食品を冷却する。次に温度設定を−4℃〜−7℃程度にコントロールできるようにして、過冷却到達温度をさげて行く、過冷却最低到達点温度は冷却温度以下には下がらないので凍結点より−3℃以下にしたい場合は−4℃以下の温度で冷却する必要がある。ただし、あまり低温にすると最低到達温度を低く出来ないままに過冷却解除されてしまうので−7℃としている。過冷却解除については過冷却最低到達点が凍結点よりも−3℃以下に到達したら(5秒以上過冷却状態にすると同様の効果)過冷却解除するための制御を実施し解除させる。過冷却解除後は、急冷制御により、早く食品が凍結するように制御する。すでに保存され、包丁で簡単に切れるように食品が保存されている場合(−5〜−10℃保存)は急冷においても、すでに保存されている食品が切れなくならないように食品温度を−10℃以下には下げないように温度制御することが望ましい。冷凍温度帯であれば、その必要はなく、より低温で急冷する。
なお、自然対流などの風速が小さい環境化でも過冷却状態および過冷却最低到達温度は段階的な温度制御で実現可能であるが、風速、冷気温度の制御によっても同様の効果を得られ、さらに急冷や切替室を冷凍設定で使用する場合の急冷制御については自然対流では冷却スピードが得られないのに対して本実施例のように直接冷気を流入した場合は急冷が可能となり、より幅広い利用が可能となる。
上記実施例では過冷却ケース上方開口部に蓋等を設置していないが、蓋等により冷気風量、冷気風速をコントロールすることも合わせて実施しても同様の効果が得られる。そのとき、蓋は上方開口部を完全に覆う必要はなく、冷気風量、冷気風速がコントロールできる範囲でもよい。
図13は、この発明の実施の形態1における図5に対応する切替室200の側面断面図である。図13に示すように、上下2段に構成された切替ケース201の上段ケースを過冷却ケース40としている。過冷却ケース40は、切替室天井面吹出し口43より後方に設置され、スライド式で引き出せる構造となっている。この構造によれば、過冷却ケース40内部およびそこに収納されている食品には切替室天井面吹出し口43から直接冷気が当たらないため、温度を安定な状態で維持することができる。
図15は、この発明の実施の形態1における過冷却ケースの構造図である。ここでは、切替室200に設けられる切替ケース201の上部を蓋60で覆って、切替ケース201の全体を過冷却ケースとしている。図15は、切替ケース201の全体が蓋60に覆われて、その全体が過冷却ケースを形成している例である。なお、切替ケース201の内部に、縦方向あるいは横方向に仕切りを設けるとともに、その仕切られた一部分のみを蓋60で覆い、蓋60で覆われた部分のみを過冷却ケースとする構造としてもよい。蓋60が設けられて過冷却ケースとされた空間内には冷気が直接吹き付けないため、ケース内は完全な間接冷却となる。また、このようにして形成した過冷却ケース内の温度変動はほとんどなく、さらに、それを最も低コストで実現することができる。
なお、ケース内に風を入れないで冷却させる、例えば、壁内部に冷気または冷媒を循環させるなどして壁を冷却することによる輻射冷却を利用すれば、蓋60なしのケースを過冷却ケースとすることも可能である。
図16は、この発明の実施の形態1における図5に対応する切替室200の側面断面図である。図16に示すように、本実施の形態では、切替室200の上部にファン(切替室ファン)70を設けたものである。この構成によれば、ファン70の作用により、切替室200内の空気をゆっくり攪拌することができるため、冷却速度を高めることなく、空気温度を均一に保つことができる。過冷却ケース40内には大きな食品を投入することもあるが、この構成ではそのような場合に食品全体の冷却ムラをなくすことができ、過冷却を安定的に起こすことが可能になる。過冷却ケース40は切替室200内のどのような部分に設置されていてもよく、切替ケース201に対して独立なケースとしても、あるいは切替ケース201全体を過冷却ケース40としてもよい。
図17は、この発明の実施の形態1における図5に対応する切替室200の側面断面図、図18は、本実施の形態で使用される過冷却ケースの斜視図、図19は、本実施の形態による過冷却ケースへの冷気の流れを示した図である。
図17に示すように、切替室200内の切替ケース201の下部に、過冷却スペースを構成する過冷却ケース81が配置されている。切替室200の周囲には切替室風路41が設けられ、また、冷却器3からの冷気が吹き出される3つの吹出し口、切替室背面上側吹出し口42、切替室背面下側吹出し口44、切替室天井面吹出し口43が設けられている。また、切替室風路41の入り口部に、切替室200へ向かう冷気量を調節するダンパ46が設けられている。
ここで使用される過冷却ケース81は、図18に示すように、ケース背面に切替室背面下側吹出し口44からの冷気が流入する切欠き90が形成され、ケース前面に、切欠き90から流れこんだ冷気を排出するスリット91が形成されている。冷却器3からの冷気は、過冷却ケース81を図19の矢印で示すように流れるため、過冷却時と過冷却解除時では、その流量を、ダンパ46などの流量調整装置で調整することが好ましい。
なお、ケース背面に冷気が流入する切欠や開口を形成し、ケース前面に流れこんだ冷気を排出するスリットや開口を形成する構成は、実施の形態1のいずれの過冷却ケースにも適用できる。
過冷却ケース81に収容された食品を過冷却するには、過冷却ケース81に収容された食品の芯温が凍結点を越え、過冷却状態に達するまで(ステージ1)、圧縮機10、ファン2、ダンパ46などが、切替室200内を、例えば−2℃〜−20℃の範囲で選択される空気温度にするように動作する。なお、圧縮機10やファン2は別の部屋の温度でコントロールして、ダンパ46の開閉のみで温度制御してもよい。ここでは、ダンパ46は、通常通り全開/全閉を繰り返すようにする。そして、過冷却解除が可能な食品芯温度に達すると(ステージ2)、ダンパ46の開度を半開にし、過冷却ケース81側に主に冷気が流れ込むようにする。ダンパ46の半開角度としては、気流に横方向のベクトルを与える角度であればよい。好ましくは10度〜60度である。ダンパ46を半開とする時間は、過冷却解除した後、凍結が完了するまでの時間(ステージ2,3)とする。食品の凍結が完了した後の保存期間(ステージ4)の制御は、通常通り、ダンパ46を全開/全閉を繰り返すように戻すこととする。
また、直接冷気が吹きつけることで起こる温度ムラが過冷却解除の要因となる場合があるので、蓋の一部または全部に熱伝導性の良い部材を用いてもよいし、吹出し口の形状、吹出し口と蓋の位置関係を所定の温度ムラ範囲に収まるようにしてもよい。所定の温度ムラ範囲とは、10K以内、好ましくは5K以内、さらに好ましくは3K以内である。
Claims (24)
- 食品を貯蔵する冷蔵庫本体に配置され冷却器からの冷気により魚、肉類、野菜、果実などの食品を収納する0℃から冷凍温度帯の温度まで連続してまたは段階的に温度調整可能な温度制御手段を設けた冷凍室と、前記冷凍室内に吹出され前記冷却器に吸い込まれる冷気を取り入れる前記冷凍室内に配置された過冷却室と、前記過冷却室に貯蔵された食品を凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に維持するように前記冷凍室を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は前記食品を過冷却状態に維持するように前記温度制御手段にて凍結点から−15℃程度までの温度範囲で温度を低下させながら調整することを特徴とする冷蔵庫。
- 前記過冷却室は前記冷気を前記冷凍室から取り入れるとともに前記冷凍室に戻す開口を有することを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。
- 食品を貯蔵する冷蔵庫本体に配置され冷却器からの冷気により魚、肉類、野菜、果実などの食品を収納する0℃から冷凍温度帯の温度まで連続してまたは段階的に温度調整可能な温度制御手段を設けた冷凍室と、前記冷凍室内に吹出され前記冷却器に吸い込まれる冷気を前記冷凍室内に循環させる冷気調整手段と、前記温度設定手段が設定する温度と前記冷気調整手段が調整する冷気方向と冷気量により前記冷凍室に貯蔵された食品を凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態に前記冷凍室を維持する制御装置と、を備え、前記制御装置は前記食品を過冷却状態に維持するように前記温度制御手段にて凍結点から−15℃程度までの温度範囲で温度を低下させながら調整することを特徴とする冷蔵庫。
- 食品を貯蔵する冷蔵庫本体に設けられ0℃から冷凍温度帯の温度まで連続してまたは段階的に温度制御する温度制御手段を有する切替室と、前記切替室の内部に配置され閉鎖された容器であって魚、肉類、野菜、果物などを開閉可能な蓋にて収納し、前記容器内の前記食品を凍結点以下の温度でも凍らない過冷却状態にする過冷却室と、前記過冷却室内にて閉鎖された冷気を前記過冷却室内にて循環する閉鎖冷気循環手段と、を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
- 前記温度制御手段は、前記食品を過冷却状態に維持する前記過冷却室もしくは前記冷凍室の室内温度を計測、又は、前記食品の温度を計測して制御することを特徴とする請求項1乃至4の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記温度制御手段は、凍結点までの温度、過冷却達成温度、過冷却状態解除温度、冷凍保存温度など連続的又は段階的に温度を変えて制御することを特徴とする請求項1乃至5の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記食品の温度を計測する食品温度計測は、前記過冷却室もしくは前記冷凍室内の温度から食品表面の温度を推測する、または、赤外線センサにて食品表面温度を計測する食品表面温度計測手段と、を備えたことを特徴とする請求項5記載の冷蔵庫。
- 計測された食品の表面温度から前記食品中心付近の温度を演算する食品芯温度計測手段と、を備えたことを特徴とする請求項5又は6記載の冷蔵庫。
- 前記過冷却状態を維持する前記過冷却室もしくは前記冷凍室内の冷気流れを、過冷却を維持しない状態の前記冷凍室もしくは前記切替室内の冷気の流れから風量、風速、風向、温度を変化させる過冷却を維持しない状態の前記冷凍室もしくは前記切替室内への冷気吹出し口及び前記過冷却室もしくは前記冷凍室内の冷気風路構造に設けられた冷気調整手段と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至8の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記冷気調整手段は、室内への冷気吹出し口の位置と数、前記過冷却状態を維持する前記食品の配置位置までの前記吹出し口からの風路の曲がりと長さなどの冷気風路構造であることを特徴とする請求項9記載の冷蔵庫。
- 前記制御装置が過冷却状態に維持した温度にて一定時間経過後、もしくは食品芯温度計測により、もしくは食品表面温度の急変を検知し、過冷却温度に達成したと判断し、又は、過冷却状態が解除された温度であると判断して、前記過冷却室内もしくは前記冷凍室内の前記食品に温度、振動、超音波などの物理的衝撃を与えて過冷却を解除しあらかじめ設定された冷凍温度にて保存する、もしくは急速冷凍することを特徴とする請求項1乃至10の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記食品芯温度計測手段にて計測する前記食品中心付近温度が過冷却状態とされるときの冷却速度は、前記食品の芯温が300度/時間〜0.35度/時間の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の冷蔵庫。
- 前記冷却速度は、前記食品の芯温が凍結点〜凍結点よりも5度低い温度の範囲内に有るとき判断することを特徴とする請求項12記載の冷蔵庫。
- 前記過冷却状態は少なくとも5秒間以上保持されることを特徴とする請求項13に記載の冷蔵庫。
- 過冷却状態解除可能な温度に達したとき、貯蔵した前記食品の芯温と表面温度との差が0度〜10度の範囲内となるように、前記食品を冷却することを特徴とする請求項8乃至14の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記冷気調整手段は、貯蔵した食品が過冷却状態とされるとき、前記食品を直接冷却する周囲の空気温度の冷却状態変化による変動幅が15度以内となるように調整することを特徴とする請求項1乃至15の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記食品を過冷却状態に維持する前記過冷却室もしくは前記冷凍室を上側ケースと下側ケースの下側ケースにより構成したことを特徴とする請求項1乃至16の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記上側ケースと前記下側ケースとの間に隙間を設けたことを特徴とする請求項17記載の冷蔵庫。
- 前記上側ケースの底面に前記下側ケース内の空気温度変動を抑制する部材を配置したことを特徴とする請求項17記載の冷蔵庫。
- 前記食品を過冷却状態に維持する前記過冷却室もしくは前記冷凍室を上側ケースと下側ケースの上側ケースにより構成したことを特徴とする請求項1乃至16の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 貯蔵した食品が過冷却状態とされるとき、前記過冷却室内部の空気温度ムラが15度以内となるように前記過冷却室容器、ケースなどの冷気を取り入れる開口もしくはフタ構造の位置および大きさを形成することを特徴とする請求項1乃至20の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 前記過冷却解除は、前記過冷却室への冷気の導入によって行うことを特徴とする請求項11記載の冷蔵庫。
- 前記維持された前記過冷却状態を解除する過冷却解除手段が過冷却解除後の保存温度帯を、−5℃以下の温度帯から選択可能としていることを特徴とする請求項1乃至22の少なくともいずれかに記載の冷蔵庫。
- 冷蔵庫本体に配置され冷却器からの冷気により魚、肉類、野菜、果実などの収納する食品を温度制御手段にて段階的に温度を下げながら凍結点以下の温度で凍らない過冷却状態に維持深化させる過冷却室と、前記過冷却室内に吹出され前記過冷却室内を循環する冷気の風量、風速、風向、温度を変化させる冷気調整手段と、前記温度制御手段と前記冷気調整手段にて前記過冷却室に収納され過冷却状態にある食品の過冷却状態を前記過冷却室の冷気の状態を変化させて解除する過冷却解除手段と、を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
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