JP2008267608A - 回転伝達装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】例えば、ウォーム(歯付回転体)12とローラギア(ローラ回転体)とを噛合させた回転伝達装置を製造する際、一部のローラアッセンブリ34を除いて組付けた半組付ローラギア400を作製し、その半組付ローラギア400とウォーム12とを正規位置に配設した後、残るローラアッセンブリ34を組付けてローラギアを完成させる。この残りのローラアッセンブリ34の組付けは、装置本体10に設けた窓から行う。
【選択図】図14
Description
一方、本回転伝達装置への要望は、正確な回転伝達ができることにとどまらず、高トルクが伝達できることをも望まれる場合がある。かかる高トルク伝達を目的とする回転伝達装置は、歯付回転体に一時期に係合するローラアッセンブリの数を多くすることによって実現することができる。しかし、ただでさえ困難を伴う上記配設作業は、特に、係合するローラアッセンブリ数の多いローラ回転体と歯付回転体とを正規の噛合位置において噛合させる場合に、さらなる困難を伴い、ついには噛合自体が不可能となる。それらのことを考えれば、回転伝達装置の製造においては特別な配慮が必要となる。
かかる特徴を有する本製造方法によれば回転伝達精度の高い回転伝達装置を簡便に製造できる。
なお、構成部品となる歯付回転体,ローラアッセンブリおよびタレットは、回転伝達装置を組付けて完成させるメーカが自身で製造を行うものであってもよく、また、他に製造させるものであってもよい。本項でいう「歯付回転体準備工程」,「ローラアッセンブリ準備工程」および「タレット準備工程」は、前者の場合、それぞれのものを製造して準備する工程となり、後者の場合は、それぞれのものを購入して準備する工程となる。以下の項においても、同様に解釈するものとする。
前記歯付回転体を準備する歯付回転体準備工程と、
前記複数のローラアッセンブリを準備するローラアッセンブリ準備工程と、
外周部において前記複数のローラアッセンブリを保持するタレットを準備するタレット準備工程と、
前記複数のローラアッセンブリの一部である複数のものを前記タレットに組付け、半組付ローラ回転体を得る第1ローラアッセンブリ組付工程と、
その半組付ローラ回転体と前記歯付回転体とを互いに適正に噛合する正規位置に位置決めして配設する歯付回転体およびローラ回転体配設工程と、
前記複数のローラアッセンブリの残部である少なくとも1つのものを前記タレットに組付け、全組付ローラ回転体を得る第2ローラアッセンブリ組付工程と
を含むことを特徴とする回転伝達装置の製造方法。
本項を始めとする一連の項に記載する製造方法は、ローラ回転体へのローラアッセンブリの組付けに工夫を凝らすことにより、歯付回転体とローラ回転体との正規位置への配設を容易にし、回転伝達精度の高い回転伝達装置を簡便に製造することを可能にするものである。
(2)前記ローラアッセンブリ準備工程において、それぞれ前記歯付回転体の歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する前記ローラアッセンブリを準備する(1)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
このような態様のローラアッセンブリを有する回転伝達装置の場合、係合するローラアッセンブリにおいて、それが有する各ローラが常に歯付回転体の螺旋状歯に当接して一方向に回転する。そのため、極めてバックラッシを小さくすることができ、正確な回転伝達が可能であるが、その分クリアランスが小さくなり、ローラ回転体と歯付回転体の正規位置での噛合が困難となる。したがって、かかる態様の回転伝達装置の製造には本発明の適用が特に有効である。
(3)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールを構成する回転伝達装置を製造する(1)項または(2)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
本項に記載の態様の回転伝達装置は、連続した回転を伝達するための装置であり、例えばカムを用いたインデックス装置等と異なり、ローラ回転体のいずれの回転位置においても正確な回転伝達を要求される。したがって、ローラ回転体と歯付回転体との噛合位置がより正確であることが望まれる。一部のローラアッセンブリを組付けていない状態のローラ回転体を正規位置に配設する本製造方法によれば、通常の方法では2つの回転体の配設が不可能である場合に可能となり、通常の方法でも可能である場合に容易となる。
(4)前記回転伝達装置として、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記ローラアッセンブリの1つ以上が前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれるものを製造する(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
(5)前記回転伝達装置として、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記ローラアッセンブリの2つ以上が前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれるものを製造する(4)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
常に2つ以上のローラアッセンブリが歯山に挟まれる場合、すべてのローラアッセンブリを組付けたローラ回転体は、歯付回転体と噛合させて正規位置に配設することが困難である。特に、ローラ回転体が円筒形状のローラを有するものであって、歯付回転体が鼓形ウォーム,グロボイダルカム等である場合には、すべてのローラアッセンブリを組付けた状態でのそれらの噛合は不可能である。それが可能になるのであるから、本態様の回転伝達装置への本製造方法の適用価値は極めて高いものとなる。
(6)前記第1ローラアッセンブリ組付工程において、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれる数と同数以上の互いに隣接する前記ローラアッセンブリを除くものを組付ける(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本製造方法において、第1ローラアッセンブリ組付工程において組み付けるローラアッセンブリの数は特に限定されるものではない。同一時期に螺旋状歯に係合するローラアッセンブリの存在が、ローラ回転体と歯付回転体との正規位置への配設に影響を与えることに鑑みれば、それらのローラアッセンブリのすべてを除いて半組付ローラ回転体とすれば、両者の配設は極めて容易になる。同一時期に係合するローラアッセンブリのうち、歯山に挟まれずに係合するもの、つまり、歯山の片側にのみ係合するものは、両者の配設に対して与える影響は小さい。これに対し、歯山に挟まれるものは、両者の正規位置への配設を大きく阻害する。したがって、いずれの回転角度においても歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれる数と同数以上の互いに隣接するローラアッセンブリを除いた半組付ローラ回転体であれば、ローラ回転体と歯付回転体の正規位置での噛合は容易に行える。なお、両者の配設前により多くのローラアッセンブリの組付けを行うほうが、作業性面で優れるという観点からすれば、第1ローラアッセンブリ組付工程において、歯山に挟まれる数と同数の互いに隣接するローラアッセンブリを除くすべてのローラアッセンブリを組付けることが望ましい。
(7)前記ローラアッセンブリ準備工程前に、前記ローラを回転可能に支持する支持部と、前記タレットに保持されるスタッド部とを有するローラ軸を準備するローラ軸準備工程を含み、
前記ローラーアッセンブリ準備工程が、前記支持部において前記ローラを前記ローラ軸に回転可能に支持させる工程を含み、
前記タレット準備工程が、前記タレットの外周部に前記スタッド部が嵌合される嵌合穴を形成する工程を含み、
前記第1ローラアッセンブリ組付工程および前記第2ローラアッセンブリ組付工程が、前記スタッド部を前記嵌合穴に嵌合させる工程を含む(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
ローラアッセンブリは、回転可能なローラを有するものであり、その1つの具体的な態様を本項は示す。ローラアッセンブリをローラとそれを軸支するローラ軸とから構成し、そのローラ軸をタレットに保持させる態様である。ローラ軸をスタッド部においてタレットに設けた嵌合穴に嵌合させれば、ローラアッセンブリの組付が容易に行える。また、タレットに設ける嵌合穴は、割出装置等を用いれば、正確なピッチで形成することができ、良好な精度を有するローラ回転体が得られる。
(8)前記ローラアッセンブリを前記タレットに固着するローラアッセンブリ固着工程を含む(1)項ないし(7)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本回転伝達装置は、正確な回転伝達を目的とするものである。そのためには、ローラ回転体におけるローラアッセンブリのピッチの精度は重要である。例えば、運転中の振動により固定が緩む等の原因から、ローラアッセンブリのピッチが狂う事態も考えられる。ローラアッセンブリを固着すれば、正確なローラアッセンブリのピッチが維持できる。したがって、固着工程を含む本項に記載の製造方法によって製造された回転伝達装置は、長期にわたって正確な回転伝達を行い得る装置となる。
固着手段は、特に限定されるものではなく、長期にわたってローラアッセンブリの位置ずれが生じないものであればよい。例えば、かしめ、溶接、ろう付け、接着剤による接着等、種々の手段を採用できる。中でも接着剤による接着は、振動に対して信頼性が高く、加熱を必要としないことから歪み等が発生せず、比較的安価であるといった理由から、ローラアッセンブリの固着には好適である。1つのローラアッセンブリの取付けが完了する毎にそのローラアッセンブリを固着するものであってもよく、第1ローラアッセンブリ組付工程および第2ローラアッセンブリ組付工程とが完了したローラアッセンブリをまとめて行うものであってもよい。また、第2ローラアッセンブリ組付工程後、すべてのローラアッセンブリをまとめて固着するものであってもよい。
ローラとローラ軸とを含み、ローラ軸のローラ支持部にローラが回転可能に支持され、ローラ軸のスタッド部が、タレットに形成された嵌合穴に嵌合される形式のローラアッセンブリにおいては、スタッド部を嵌合穴に固着することが容易であるため、固着工程の採用が特に有効である。
(9)前記ローラアッセンブリ準備工程前に、前記ローラを回転可能に支持する支持部と、前記タレットに保持されるスタッド部とを有するローラ軸を準備するローラ軸準備工程を含み、
前記ローラーアッセンブリ準備工程が、前記支持部において前記ローラを前記ローラ軸に回転可能に支持させる工程を含み、
前記タレット準備工程が、前記タレットの外周部に前記スタッド部が嵌合される嵌合穴を形成する工程を含み、
前記第1ローラアッセンブリ組付工程および前記第2ローラアッセンブリ組付工程が、前記スタッド部を前記嵌合穴に、そのスタッド部の外周面とその嵌合穴の内周面との間の少なくとも一部に隙間を有する状態で嵌合させる工程を含み、
ローラアッセンブリ固着工程が、前記隙間に接着剤を充填する工程を含む(8)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
本項の態様は、スタッド部をタレットの嵌合穴に嵌合させてローラ軸を保持させる上記態様において、ローラアッセンブリを固着する場合の一態様である。スタッド部あるいは嵌合穴の少なくともいずれかを、両者の間に隙間を設けるように形成し、その隙間に接着剤を充填するものであり、簡便な手段によって充分なる強度の固着が達成できる。充填方法は、特に限定されるものではないが、例えば、外部からその隙間へ通じる供給路となる比較的小さな孔をタレットに穿孔しておき、その孔から隙間へ接着剤を圧送すればよい。
(10)軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、
タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備え、前記歯付回転体と噛合するローラ回転体と
の2つの回転体を含み、
それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置。
ここでいう歯付回転体は、ウォームのようなのものを連想すればよく、また、ローラ回転体は、ローラタレット、ローラギアと称することもでき、ウォームと噛合するウォームホイールのようなものを連想すればよい。通常のウォームおよびウォームホイールと異なるのは、ウォームホイールの歯に相当するものがタレットの外周部に保持されたローラアッセンブリであり、そのローラアッセンブリがウォーム状のものの螺旋状歯に係合する構造となっていることにある。ローラアッセンブリの螺旋状歯に係合において、ローラアッセンブリが有するローラは、螺旋状歯の側面に当接し、歯付回転体とローラ回転体とが噛合して回転する際に、その当接位置の変化に伴って螺旋状歯の側面を転がるように回転する構造となっている。したがって、本回転伝達装置は、歯と歯とが係合する回転伝達装置と違って、基本的には歯とローラとのすべりは発生せず、スムーズな回転伝達動作が可能になる。また、歯とローラとの間の摩擦が極めて少ないことから、歯付回転体の回転をローラ回転体の回転として伝達することのみならず、ローラ回転体の回転を歯付回転体の回転として伝達することも可能である。
本回転伝達装置では、ローラが螺旋状歯の一方の側面に当接し続ける状態でローラアッセンブリが係合する場合、歯付回転体とローラ回転体のいずれかの一方向の回転が他方の一方向の回転として正確に伝達される。また、複数のローラのうちの1以上のものがローラが螺旋状歯のある側面に当接し続け、かつ、別の1以上のものが異なる側面に当接し続ける状態でローラアッセンブリが係合する場合、歯付回転体とローラ回転体のいずれかの双方向の回転が他方の双方向の回転として正確に伝達されるだけでなく、バックラッシが極めて小さいことから(理論的にはバックラッシは発生しない)、回転方向の切り替わり時においても、回転ずれがなく即応性も良好である。さらに、バックラッシが極めて少ないことは、装置のガタツキなく、振動,騒音等の発生も抑制される。なお、この場合、螺旋状歯の異なる側面に係合する複数のローラは、1つのローラアッセンブリがもつ複数のローラであってもよく、複数のローラアッセンブリが有するそれぞれのローラであってもよい。また、螺旋状歯の異なる側面は、同じ歯山の背向する側面でもよく、異なる歯山の異なる側面であってもよい。
本回転伝達装置は、例えば、歯付回転体をウォームと、ローラ回転体をそのウォームと噛合するウォームホイールとし、その歯付回転体を入力軸側、そのローラ回転体を出力側とし、歯付回転体の一定速度の回転を減速させてローラ回転体の一定速度の回転として伝達する減速装置としての態様で実施することができる。この態様において、例えば、ローラアッセンブリが回転軸線に直角な一円周上に配設されたローラ回転体であって、そのローラアッセンブリにおいて、ローラがローラ回転体の回転軸線に略直角な回転軸線のまわりに回転するものを用いて、減速装置を構成することができる。その場合、噛合させる歯付回転体は、鼓形ウォーム、円筒ウォーム等あるいはこれらに類似した形状のものとすればよい。つまりこの態様は、ローラ回転体が平ローラギアとして機能し、平ローラギア式減速装置としての態様と称することができる。また、減速装置の態様において、例えば、ローラアッセンブリが回転軸線に直角な平面状の一円周上に配設されたローラ回転体であって、そのローラアッセンブリにおいて、ローラがローラ回転体の回転軸線に略平行な回転軸線のまわりに回転するものを用いて、減速装置を構成することもできる。その場合、噛合させる歯付回転体は、円筒ウォーム等あるいはこれらに類似した形状のものとすればよい。つまりこの態様は、ローラ回転体がフェイスローラギアとして機能し、フェイスローラギア式減速装置としての態様と称することができる。
また、本回転伝達装置は、上述したように、ローラ回転体の回転を歯付回転体に伝達可能であることから、ローラ回転体を入力側、歯付回転体を出力側とし、ローラ回転体の一定速度の回転を増速させて歯付回転体の一定速度の回転として伝達する増速装置としての態様で実施することもできる。この態様は、上記同様、平ローラギア式増速装置、フェイスローラ式増速装置として態様と称することができる。さらに、上記態様において、歯付回転体の係合する歯山の数を多くし、螺旋状歯のリード角を大きくする等すれば、それぞれの一方の回転を同じ回転速度の他方の回転として伝達することも可能である。この態様は、平ローラギア式等速回転伝達装置、フェイスギア式等速回転伝達装置としての態様と称することができる。以上の減速装置,増速装置,等速回転伝達装置等は、2つの回転体の一方の連続した回転を他方の連続した回転として伝達するものであり、そのような装置は狭義の回転伝達装置と称することができる。回転伝達装置として、例えば、螺旋状歯を、そのリード角が一定ではなく、歯付回転体の回転角度に応じてリード角が変化するような形状のものとすれば、一定速度の回転を伝達する回転伝達装置ではなく、回転角度に応じて回転速度が変化する態様の回転伝達装置とすることもできる。
本発明の回転伝達装置は、上記それぞれの回転伝達装置において、一方を任意の回転角度位置で停止させれば、噛合する他方もそれに対応した任意の回転角度位置で停止させることができ、インデックス装置としての態様で実施することができる。具体的には、例えば、入力側となる歯付回転体あるいはローラ回転体のいずれかを回転角度を制御可能な駆動装置(例えば、サーボモータ等)で回転させ、入力側を任意の角度で停止させることによって、出力側のローラ回転体あるいは歯付回転体を任意の回転位置に停止させる態様で実施させればよい。また、電気あるいは電子的な制御等によって、所定の回転角度で正逆転を繰り返す揺動装置としての態様で実施することもできる。
上記態様をさらに発展させれば、例えば、歯付回転体の螺旋状歯を回転軸線に直角な平面に沿って延びる停留部(ドエル)が設けられた形状とし、この停留部とローラ回転体に配設されたローラアッセンブリとが係合するときには、入力側の回転の出力側への伝達を一時的に停止させ得る態様で実施することもできる。つまり、この態様は、歯付回転体がカムとして機能し、ローラ回転体がカムフォロアが外周部に配設されたローラタレットとして、そして、ローラアッセンブリがカムフォロアとして機能する態様である。したがって、本明細書においては、回転伝達装置は広義に解釈するものとし、本回転伝達装置は、そのようなローラタレット式インデックス装置を始めとして、カムとローラタレットを組み合わせた種々のローラタレット式カム装置も含むものとする。なお、ローラタレット式インデックス装置としての態様も、上記同様、例えば、グロボイダルカム(鼓形カム)あるいはバレルカム(円筒カム)と平ローラタレットとが組み合わされた平ローラタレット式インデックス装置、バレルカムとフェイスローラタレットとが組み合わされたフェイスローラタレット式インデックス装置等、種々のものを採用し得る。ちなみに、歯付回転体に形成される停留部は複数箇所設けてもよく、その歯付回転体の1回転内においてローラ回転体が複数回停止させられるような形状の歯付回転体であってもよい。
上述した種々の本回転伝達装置の態様において、歯付回転体の軸方向に並ぶ歯山の数は限定されるものではない。また、螺旋状歯の数も限定されず、1条の螺旋状歯が形成された歯付回転体を用いる回転伝達装置であってもよく、2条あるいはそれ以上の条数の螺旋歯が形成された歯付回転体を用いる回転伝達装置であってもよい。さらに、一時期に螺旋状歯に係合するローラアッセンブリの数についても限定されるものではなく、より高トルクの回転を効率よく伝達する等の目的で、複数のローラアッセンブリが同時に螺旋状歯に係合する態様の回転伝達装置とすることもできる。また、ローラアッセンブリの配設数、配設ピッチ等は任意に設定でき、それが有するローラの形状についても、円筒形、円錐形等、様々な形状とすることができ、さらに、1つのローラアッセンブリが有するローラ数についても1つあるいは2つ以上の任意の数とすることができる。その他、本回転伝達装置における歯付回転体およびローラ回転体の大きさ,材質,両者の位置関係等の各構成についても、目的に応じた種々の構成とすることができる。
本回転伝達装置の用途については、特に限定されるものではなく、例えば、所定のワークの回転あるいはその位置の割出等を行うロータリーテーブル,インデックステーブル等を始めとして、各種機器の組立に用いられる自動組立機,マシニングセンター等の工作機械,印刷機械における印刷紙の送り位置決め装置,アーム式ロボットのアームの駆動装置,半導体チップ等の電子部品製造装置等の各種機器,装置における回転伝達装置として用いることが可能である。
(11)略鼓形をなし、軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体であって、
タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備えるローラ回転体とともに、そのローラ回転体の回転軸線と自らの回転軸線とが立体交差させられて配設され、そのローラ回転体と噛合することにより、自らの回転をそのローラ回転体に伝達するあるいはそのローラ回転体の回転が自らに伝達される回転伝達装置に用いられ、
前記ローラ回転体に対応する正規のローラ回転体を理論ローラ回転体と定義し、当該歯付回転体と前記理論ローラ回転体とが、その理論ローラ回転体の複数のローラアッセンブリと前記螺旋状歯との間のクリアランスがその理論ローラ回転体のいずれの回転角度においても一定に保たれる状態で回転可能である場合に、その歯付回転体を理論歯付回転体、その螺旋状歯を理論螺旋状歯、それら理論歯付回転体と理論ローラ回転体との相対位置を理論噛合位置と定義し、
それら理論歯付回転体と理論ローラ回転体とが、前記理論噛合位置より互いの回転軸線が相対的に接近した実噛合位置で噛合させらることにより、前記複数のローラアッセンブリの少なくとも一部のものが前記理論螺旋状歯から予圧を受けた状態で、前記回転伝達装置が回転を伝達する状態を想定し、その状態を理論実噛合状態と定義した場合に、
その理論実噛合状態において前記予圧に起因して前記ローラ回転体に生じる正方向の回転トルクと逆方向の回転トルクとのアンバランスに基づいて前記回転伝達装置に発生する回転伝達むらに比較して、実際の回転伝達むらが小さくなるように、前記理論螺旋状歯の側面の少なくとも一部分がその一部分の法線方向に前進あるいは後退させられて修正された形状の前記螺旋状歯を有することを特徴とする歯付回転体。
本項以下の一連の項に記載する歯付回転体は、(1)項に記載の回転伝達装置の部品となる歯付回転体に関する。上述したように、種々の態様の回転伝達装置が得られる。この中でも、歯付回転体を鼓形ウォームあるいはグロボイダルカムとする回転伝達装置は、歯付回転体の螺旋状歯と一時期に係合するローラ回転体のローラアッセンブリの数を多くすることができ、負荷容量を大きくすることが可能で、高トルクの回転伝達が可能となる。本項以下の歯付回転体は、この鼓形ウォームまたはグロボイダルカムとしての歯付回転体であって、回転伝達むらの少ない回転伝達装置を実現し得るものを提供することを目的とするものである。
鼓形ウォームまたはグロボイダルカム(鼓形歯付回転体と総称することができる)平ローラギアまたは平ローラタレット(平ローラ回転体と総称することができる)とを組み合わせる場合、両者は、互いの回転軸線が交差するように、多くの場合は、直角に立体交差するように配設される。直角に立体交差する場合においては、平ローラ回転体の回転によって描かれるローラアッセンブリの中心の回転軌跡を含む平面内に鼓形歯付回転体の回転軸線が含まれるように、両者が配設される。上述したように、高トルク回転伝達を可能とすべく、鼓形歯付回転体と平ローラ回転体との噛合においては、複数のローラアッセンブリが同時に螺旋状歯に係合するように設計することが望ましい。しかし、実際の歯付回転体およびローラ回転体ともに製作上の寸法誤差を有することを許容せざるを得ず、また、回転伝達装置作動中における熱膨張に対して考慮を要すること、両者を噛合させる作業の困難性等から、ローラアッセンブリと螺旋状歯との間にある程度のクリアランスを有するように両者を設計する必要がある。ところが、クリアランスを有する状態で両者を噛合させる場合、その回転伝達装置にはバックラッシが発生する。そこで、両者の設計上の相対位置(理論噛合位置)より、両者を接近させた相対位置(実噛合位置)つまり互いの回転軸線が相対的に接近した位置で両者を噛合させ、係合するローラアッセンブリが螺旋状歯から所定の予圧を受けた状態で回転を伝達させれば、その回転伝達装置はバックラッシが除去されることになる。
ところが、上記のような方式で予圧をかけた状態では、その予圧に起因して、別の問題が生じる。この問題は、後に詳しく説明するが、その回転伝達装置に回転伝達むらが発生する、つまり、回転角度の変化に応じ伝達される回転速度が変化するというものである。この現象は、ローラアッセンブリが受ける予圧の量がローラ回転体の回転角度の変化につれて変化することに起因するものである。この現象については、後に図を用いて詳しく説明するため、ここでの説明は簡単なものに留める。ローラアッセンブリが受ける予圧は、螺旋状歯の側面とローラとがクリアランス量を超えて接近させられることによって生じるが、ローラ回転体の回転角度によってローラと螺旋状歯の側面との接近距離が異なることから、ローラアッセンブリが受ける予圧量もそれにつれて変化するのである。予圧量のローラ回転体の回転方向成分は、ローラ回転体を正回転方向あるいは逆回転方向に回転させる回転トルクになる。同時に複数のローラアッセンブリが係合する場合、ローラ回転体の回転角度によっては、それらの予圧量の回転方向成分のバランスが崩れる。つまり、正方向の回転トルクと逆方向の回転トルクのバランスが崩れるのである。そして、そのバランスを保とうとしてローラ回転体および歯付回転体がその分だけ回転させられることになる。この余分な回転が、回転伝達装置の回転伝達むらとなって現れるのである。本項に記載の鼓形歯付回転体は、この回転伝達むらを減少させるべく修正を加えた形状の螺旋状歯を有することが特徴であり、本歯付回転体と平ローラ回転体とを噛合させて回転伝達装置を構成すれば、その回転伝達装置は、回転角度伝達誤差が小さいものとなる。
上記のように、設計上のそれぞれの回転体をそれぞれ理論歯付回転体および理論ローラ回転体とし、それらが実噛合位置で噛合する場合を実噛合状態とし、この状態における回転伝達装置に生じる回転伝達むらを基準にして、その回転伝達むらを小さくするように、その理論歯付回転体がもつ理論螺旋状歯を元に修正が加えられた形状の螺旋状歯を形成すればよい。このことは、一旦理論螺旋状歯に形成し、その後にその歯に修正を加えて形成することを必ずしも意味するものではない。机上の計算により修正が加えられた形状の螺旋状歯の形状データを作成し、その形状データに基づいて、直に実際の螺旋状歯を形成するものであってもよい。
(12)前記ローラ回転体と前記実噛合位置において噛合した状態における前記複数のローラアッセンブリの各々が受ける予圧量の回転方向成分であって正回転方向に作用する成分の量を予圧正成分量、逆回転方向に作用する成分の量を予圧負成分量、その予圧正成分量とその予圧負成分量との和を予圧成分量和とそれぞれ定義し、
前記複数のローラアッセンブリのうち同時期に前記螺旋状歯と係合するものの前記予圧正成分量の合計,前記予圧負成分量の合計および前記予圧成分量和の合計を、それぞれ総予圧正成分量,総予圧負成分量,総予圧成分量和と定義し、
前記理論ローラ回転体の回転に伴って変化する前記総予圧正成分量,前記総予圧負成分量および前記総予圧成分量和のそれぞれの絶対値の最大値を、それぞれ最大総予圧正成分量,最大総予圧負成分量および最大総予圧成分量和と定義し、
以上の予圧正成分量,予圧負成分量,予圧成分量和,総予圧正成分量,総予圧負成分量,総予圧成分量和,最大総予圧正成分量,最大総予圧負成分量および最大総予圧成分量和等を予圧関連量、それら予圧関連量の少なくとも1つを含むものを予圧関連量群と定義した場合において、
前記螺旋状歯が、前記理論螺旋状歯の形状を規定する理論形状データと、前記予圧関連量群を修正すべく前記理論螺旋状歯の形状を修正する修正データとに基づいて形成されたものである(11)項に記載の歯付回転体。
歯付回転体の螺旋状歯の形状は、どのような手法の修正に基づいて形成されたものでもよい。本項に記載の歯付回転体は、ある1つの修正手法に基づく螺旋状歯を有する歯付回転体である。上述したように、予圧に起因する回転伝達むらには、ローラアッセンブリが螺旋状歯から受ける予圧量のローラ回転体の回転方向成分量が影響する。そこで、1つのローラアッセンブリが受ける正回転方向および逆回転方向に作用する成分量とその和、およびそれらから導き出されるいろいろなパラメータである上記いくつかの予圧関連量を引用し、その予圧関連量を変化させるように理論螺旋状歯を修正すれば、その歯付回転体を有する回転伝達装置は確実に回転伝達むらを制御できる。つまり、本修正手法は、理論歯付回転体が噛合する場合の予圧関連量を基に、それらの予圧関連量を補正するための理論螺旋状歯の修正データを作成し、理論螺旋状歯の形状に関するデータとその修正データとの組み合わせによって決定される形状に螺旋状歯を成形するという実用的な手法である。この手法によれば、回転伝達装置の回転伝達むらを、各種修正データに応じた様々な状態に調整することができる。したがって、その修正手法に基づく本項に記載の歯付回転体は、任意に設定した異なる特性を有する種々の回転伝達装置を容易に構成できる歯付回転体となる。なお、この修正手法に従う場合においても、上述のごとく、理論形状データに基づいて一旦理論螺旋状歯に成形し、その後に修正データに基づいてその歯に修正を加えて実際の螺旋状歯に成形するものでもよく、また、上記理論形状データと修正データとを結合させることにより、実際の螺旋状歯の形状データを作成し、そのデータに基づいて直に螺旋状歯に成形するものであってもよい。
(13)前記予圧関連量群が前記最大総予圧成分量和を含み、前記修正データが、その最大総予圧成分量和が前記理論実噛合状態における場合より小さくなるように前記理論螺旋状歯の形状を修正する最大総予圧成分量和減少データを含む(12)項に記載の歯付回転体。
総予圧成分量和は、各回転角度において、ローラ回転体全体が受ける予圧量の回転方向成分のアンバランス量、つまり、正方向の回転トルクと逆方向の回転トルクのアンバランス量を示すパラメータである。したがって、その絶対値の最大値である最大総予圧成分量和を減少させるように修正された螺旋状歯を有する本項に記載の歯付回転体を用いれば、その回転伝達装置は、アンバランスの最大量が減少し、その分、回転伝達むらが減少させられた回転伝達装置となる。
(14)前記予圧関連量群が前記総予圧成分量和を含み、前記修正データが、その総予圧成分量和がステップ的に変化しないように前記理論螺旋状歯の形状を修正する総予圧成分量和急変防止データを含む(12)項または(13)項に記載の歯付回転体。
上述したように、総予圧成分量和は、各回転角度において、ローラ回転体全体が受ける予圧量の回転方向成分のアンバランス量を示すパラメータである。この総予圧成分量和がステップ的に変化する場合、つまり、総予圧成分量和がローラ回転体のある角度において急変する場合、その回転角度において、回転速度が急変する。すなわち、その回転角度において、回転角度の変化がギャップを伴うものとなる。かかる回転速度の急変も回転伝達むらの一因となる。したがって、総予圧成分量和がステップ的に変化しないように修正された螺旋状歯を有する本項に記載の歯付回転体を採用する回転伝達装置は、回転速度が急変しない良好な特性を有する回転伝達装置となる。
なお、総予圧成分量和がステップ的に変化する場合の代表例として、ローラアッセンブリの噛み替わりを挙げることができる。平ローラギア式回転伝達装置等による回転伝達においては、ローラ回転体のローラアッセンブリが螺旋状歯に係合しつつ回転移動する。したがって、ローラ回転体のある回転角度位置において、あるローラアッセンブリが係合を開始し、また、ローラ回転体のある回転角度位置において、あるローラアッセンブリが係合を解かれることになる。このようなローラアッセンブリの噛み替わり時には、総予圧成分量和が急変し、回転速度が急変することが多い。したがって、本項に記載の歯付回転体を採用すれば、例えば、ローラアッセンブリの噛み替わり時において、回転速度の急変のない回転伝達が実現される。
(15)前記総予圧成分量和急変防止データが、前記総予圧成分量和が0となる前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても、その直前および直後の総予圧成分量和が最大値あるいは最小値とならないように、前記理論螺旋状歯の形状を修正するものである(14)項に記載の歯付回転体。
ローラアッセンブリの噛み替わりの態様として、例えば、ローラ回転体のある回転角度で、1つのローラアッセンブリが係合を解かれるのと略同時に別の1つのローラアッセンブリが係合を開始するという態様も考えられる。そのような態様のローラアッセンブリの噛み替わりも、上述した総予圧成分量和がステップ的に変化する場合の1つに該当し、その場合、噛み替わり時の直前直後の総予圧成分量和の値は、後に詳しく説明するが、0を挟んで最大値と最小値となることが多い。予圧成分量和が0となる回転角度の直前および直後の総予圧成分量和が最大値あるいは最小値とならないようにすることで、例えばそのような態様において、噛み替わり時において発生する総予圧成分量和の変化を小さくでき、ローラアッセンブリの噛み替わり時期における回転伝達むらを小さくすることができる。
(16)前記予圧関連量群が前記総予圧成分量和を含み、前記修正データが、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においてもその総予圧成分量和が略0となるように前記理論螺旋状歯を修正する総予圧成分量和除去データを含む(12)項に記載の歯付回転体。
上述したように、総予圧成分量和は、各回転角度において、ローラ回転体全体が受ける予圧量の回転方向成分のアンバランス量を示すパラメータである。ローラ回転体のいずれの回転角度においてもその総予圧成分量和が略0となるように修正された形状の螺旋状歯とローラ回転体とを噛合させれば、いずれの回転角度においても予圧量の回転方向成分のバランスが保たれ、極めて回転伝達むらの小さな回転伝達装置が得られる。
(17)前記予圧関連量群が前記総予圧正成分量および前記総予圧負成分量をさらに含み、前記総予圧成分量和除去データが、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても、その総予圧正成分量およびその総予圧負成分量が0とならないように、前記理論螺旋状歯を修正するものである(16)項に記載の歯付回転体。
本項に記載の歯付回転体は、総予圧成分量和が略0となるようにして予圧量の回転方向成分のバランスを確保する上記場合における1つの態様である。ある回転角度において、何らかの理由でローラ回転体と歯付回転体との正規の相対回転角度位置からのずれが生じた場合であっても、その回転ずれを是正しようとする反力が働く。この場合、ローラ回転体全体の予圧の正回転方向の成分と逆回転方向の成分とがともに0でない場合、つまり、2以上のローラアッセンブリが予圧を受けかつ正回転方向および逆回転方向の成分が押し合った状態で均衡するときには、是正する反力の作用が大きく、回転ずれを自己修正する能力が高い。したがって、本項に記載の歯付回転体を採用する回転伝達装置は、総予圧正成分量と総予圧負成分量とが釣り合いを維持して回転伝達し、回転ずれに対する修正能力の高い回転伝達装置となる。
(18)前記予圧関連量群が前記予圧正成分量および前記予圧負成分量をさらに含み、前記総予圧成分量和除去データが、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても、前記ローラアッセンブリの前記螺旋状歯と係合しているものすべての前記予圧正成分量および前記予圧負成分量が略0となるように、前記理論螺旋状歯を修正するものである(16)項に記載の歯付回転体。
本項に記載の歯付回転体は、総予圧成分量和を略0となるようにして予圧量の回転方向成分のバランスを確保する上記場合におけるもう1つの態様である。総予圧成分量和は、同時期に係合するローラアッセンブリのそれぞれの予圧正成分量および予圧負成分量をすべて合計したものである。すべてのローラアッセンブリの予圧正成分量および予圧負成分量が0となる場合は、いずれのローラアッセンブリもまったく予圧を受けていない状態であり、理論歯付回転体と理論ローラ回転体とが理論噛合位置において噛合している状態に近い状態となる。したがって、本項に記載の歯付回転体を採用する回転伝達装置は、回転伝達むらが極めて小さく、スムーズな回転伝達が可能になる。
(19)前記ローラアッセンブリがそれぞれ前記歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する前記ローラ回転体と噛合する(11)項ないし(18)項に記載の歯付回転体。
1つのローラアッセンブリが1つのローラを有する場合、そのローラアッセンブリが螺旋状歯の2つの歯山に挟まれて係合するときには、ローラが螺旋状歯の側面状をすべることを避けるべく、その両方の歯山の側面にその1つのローラを当接させることを避けることが望ましい。よって、そのようにする場合、ローラアッセンブリは螺旋状歯のいずれか片方の側面にローラを当接させて係合させることになる。上述したように、ローラアッセンブリと螺旋状歯との間には一定のクリアランスが存在するように設計されることが望ましく、このような設計をした場合、実噛合位置におけるローラ回転体のある回転角度おいては、あるローラアッセンブリのローラがいずれの側面にも当接しない状態となることがある。この状態となる場合は、回転伝達装置の容量負荷が小さくなり、高トルク回転伝達にとっては都合の悪い。したがって、高トルク伝達という目的を考慮した場合は、本項に示したローラ回転体、すなわち、ローラアッセンブリがそれぞれ歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つのローラを有するようなローラ回転体と噛合させ、1つのローラアッセンブリが有する少なくとも1つのローラがいずれかの螺旋状歯のいずれかの側面に当接しつつ回転を伝達する状態をできるだけ維持することが望ましい。ところが、2つのローラを有する上記ローラアッセンブリを有するローラ回転体との噛合においては、そのローラ回転体の予圧に起因して生じる正方向の回転トルクと逆方向の回転トルクとのアンバランスは大きく、かつ、その変化は複雑なものとなる。したがって、予圧量のアンバランスを小さくする方向に修正を施した螺旋状歯を有する上記歯付回転体は、そのようなローラ回転体と噛合させる場合にそのメリットを充分に発揮し、より高トルクの回転伝達が可能でかつその回転伝達むらの小さな回転伝達装置を構成できるものとなる。また、ローラアッセンブリがそれぞれ歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つのローラを有するようなローラ回転体では、歯付回転体とローラ回転体を噛合させて一方向の回転を伝達させる場合、2つのローラのそれぞれが常に一方向に回転する。つまり、一方向の回転伝達において、ローラが正逆転しない。したがって、そのようなローラ回転体を有する回転伝達装置は、ローラの摩耗,発熱の少ない回転伝達装置となるという利点をも有することになる。
2つのローラを有するローラアッセンブリにおいて、それらのローラの位置関係は特に限定されるものではない。互いが干渉せずスムーズに回転できればよく、例えば、1つの支持軸に互いに同軸的に配置されるものであってもよく、あるいは、2つの支持軸にそれぞれ軸支され、両者が平行に配置されるようなものであってもよい。ローラアッセンブリの製造のし易さ、ローラアッセンブリを小型化できる等に鑑みれば、2つのローラが同じ支持軸に支持され、同軸的に配置されることが望ましい。さらに、ローラの大きさについても、製造上の都合を考えれば、2つのローラが同じ径を持つものであることが望ましい。
(20)ウォームホイールとして機能する前記ローラ回転体と噛合し、鼓形ウォームとして機能する(11)項ないし(19)項のいずれかに記載の歯付回転体。
上述したように、上記一連の項に記載した歯付回転体は、鼓形ウォームとしての態様でも、あるいは、グロボイダルカムとしての態様でも実施できる。一方、上記歯付回転体は、回転伝達むらを減少させることを目的としている。これらのことに鑑みた場合、本回転伝達装置は、停留部を有するグロボイダルカムとしての実施、つまり、停止位置精度をより重要視するインデックス装置を構成する態様での実施よりも、連続した回転を伝達する回転伝達装置、つまり、ウォームとしてローラギアと噛合させる態様で実施するほうが、上記一連の歯付回転体の特徴を充分に発揮できることになる。例えば、一定速度の入力側の回転を一定速度の回転として出力側に伝達する減速装置,増速装置等を構成する態様での実施すれば、その減速装置,増速装置等は、回転伝達むらが少なく、回転速度変化の少ない装置となる。
(31)軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、
タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備え、前記歯付回転体と噛合するローラ回転体と
の2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置に用いられ、
前記2つの回転体の少なくとも一方の軸と、その一方の軸を保持する前記回転伝達装置の装置本体との間に設けられ、その一方の軸を軸方向に位置調整可能に保持する軸保持装置であって、
前記少なくとも一方の軸をその軸方向に移動不能に保持する軸保持具と、
その軸保持具から前記軸方向に突出して突出端が前記装置本体の係止部に係止される突出部を有し、その突出部の突出量が調節可能に前記軸保持具に設けられ、その突出量の調節によって前記一方の軸の軸方向位置を調整可能にする軸方向位置調整装置と、
前記軸保持具を前記装置本体の係止部に向かって軸方向に押え付けて固定する軸保持具固定装置と
を含むことを特徴とする軸保持装置。
本項以下一連の項に記載する軸保持装置は、(1)項に記載した回転伝達装置において採用可能な軸保持装置であって、歯付回転体およびローラ回転体をその回転伝達装置の装置本体に保持するための軸保持装置である。
上述したローラギア式回転伝達装置、ローラタレット式インデックス装置等においては、バックラッシが少なく、正確な回転伝達を可能とする。しかし、そのためには、歯付回転体とローラ回転体との相対位置を適正なものとしなければならず、両者の回転軸線間距離のみならず、両者のそれぞれの回転軸線方向の位置も、適正な両者の噛合のために重要となる。本項以下に記載の軸保持装置は、歯付回転体あるいはローラ回転体の軸方向の位置調整を簡便に行い得ることを目的とする。
歯付回転体あるいはローラ回転体の軸をその軸方向に位置調整可能に回転伝達装置の装置本体に保持するための軸保持装置は、後に図を用いて説明するように、例えば、主に、(a)その軸をその軸方向に移動不能に保持し、フランジ部を有する軸保持具と、(b)そのフランジ部と回転伝達装置の装置本体の係止部との間に介装されるスペーサと、(c)そのフランジ部をその装置本体の係止部に向かって軸方向に押え付けて固定する軸保持具固定装置とを含んでなるように構成することができる。この態様の軸保持装置においては、軸の軸方向位置の調整は、スペーサの厚さを変更させることによって行うことができる。しかし、本回転伝達装置における歯付回転体およびローラ回転体の軸の調整は非常にシビアに行わなければならず、場合によっては、軸を組付けて固定してからその位置を確認し、正確な位置を決定するために、一旦軸の固定を解き調整して再び固定し直すといった一連の作業を何度も繰り返すトライ・アンド・エラー方式の位置調整を行わなければならないことも多くある。かかる位置調整において、上記構成の軸保持装置では、調整の都度スペーサを取り外してその厚さを変更させなければならない。しかし、装置本体の狭いスペースに軸保持装置が配設されるような場合にあっては、軸保持具を取り外さない限り容易にスペーサが取り外せないような状況も考えられ、その場合、それらの軸の軸方向位置の調整は、煩雑な作業を強いられ、また、精度よく位置調整を行うことが困難となる。
本項の軸保持装置に保持される軸は、上記軸保持具に回転可能に保持されるものであってもよい。その場合は、その軸保持具は軸受を含んで構成すればよく、その軸に支持される歯付回転体あるいはローラ回転体は、その軸に回転不能に支持されるか、または、歯付回転体あるいはローラ回転体が軸と一体構造となるようなものであればよい。また、上記軸は、上記軸保持具に回転不能に保持されるものであってもよく、その場合は、歯付回転体あるいはローラ回転体は軸受を介してその軸に回転可能に支持されるものであればよい。
なお、本項の軸保持装置において、突出端が係止部に係止される突出部の数は、特に限定されるものではないが、係止部における係止箇所が一直線上にない3箇所以上とし、これらの突出量を調節することにより、装置本体に対する軸の傾きをも適正に調整することが可能となる。また、突出部の突出端が係止部に係止される場合において、その突出端が係止部に直接当接して係止されるのであってもよく、突出端と係止部との間に何らかのものを介在させて、間接的当接して係止されるのであってもよい。
(32)前記軸保持具が、内周面と外周面とがそれぞれの中心軸が平行でかつ互いに偏心した偏心円筒部を有し、その偏心円筒部の内周面に前記一方の軸を嵌入させてその軸を保持し、その偏心円筒部の外周面が前記装置本体に形成された取付穴に嵌入して固定されるものであり、
前記保持具をその外周面の中心軸のまわりに回転させることにより、前記軸の軸直角方向の位置を調整可能な(31)に記載の軸保持装置。
上述したように、本回転伝達装置では、歯付回転体とローラ回転体との微妙な噛合位置の調整が必要となる。その位置調整は、両者のそれぞれの回転軸線方向のみならず、回転軸線に直角な方向においても重要になる場合も多い。本項に記載の軸保持装置では、軸保持具が偏心円筒部を有するように形成され、上記のように、その偏心円筒部において軸を保持し、その回転によって軸の軸直角方向の位置が調整可能であり、歯付回転体とローラ回転体との噛合位置の調整がさらに簡便に行える軸保持装置となる。
(33)前記軸保持具が、前記装置本体の係止部と向かい合う環状のフランジ部を有し、
前記軸方向位置調整装置が、
前記フランジ部の周辺部に前記一方の軸を取巻くように配置された複数の雌ねじ穴と、
その複数の雌ねじ穴にそれぞれ螺合して固定され、その一部が前記フランジ部の前記係止部と向かい合うフランジ対向面から突出して先端が前記係止部に係止される前記突出部となり、それぞれが回転させられることにより前記突出量が調節される複数の雄ねじ部材と
を含む(31)項または(32)項に記載の軸保持装置。
本項記載の軸保持装置は、平たく言えば、軸保持具にフランジが形成されており、そのフランジは複数の雌ねじ穴が形成されており、例えばボルトのような雄ねじ部材をねじ込んでその突出量を調節することにより、軸保持具と装置本体との位置が調整される構造となっている。ねじによる調節を採用するため、本項に記載の軸保持装置では、微妙な位置調整が容易に行い得る。
なお、フランジに形成される雌ねじ穴が貫通穴であり、雄ねじ部材のフランジ対向面から突出する突出部の突出量が、フランジ対向面の反対側の面であるフランジ背向面側から調節可能となる態様とすることが望ましい。この態様は、具体的には、雄ねじ部材を例えばボルトとし、そのボルトをフランジ背向面側からねじ込んで、その頭を回すことによってボルト先端の突出量を調節する態様が例示できる。かかる態様の本項に記載の軸保持装置は、フランジ背向面側から突出量の調節ができることから、いちいち軸保持具を取り外す等せずに軸の軸方向位置を調整でき、簡便な調整が可能となる。
(34) 前記軸方向位置調整装置が、
前記雄ねじ部材の各々が、前記突出部の反対側である後端部に前記フランジ対向面と反対側の面であるフランジ背向面と係合する頭部を有し、前記フランジ部を貫通して固定されたものであり、
前記雄ねじ部材の各々の頭部と前記フランジ背向面との間に介装され、厚さが変更されることにより前記雄ねじ部材の各々の前記突出部の突出量が調節される突出量調節部材を含む(33)項に記載の軸保持装置。
本項に記載の軸保持装置は、突出部の突出量の調節に特徴を有する。本項の態様は、例えば、ボルトを雄ねじ部材として採用する場合を例にとって説明すれば、ボルトをフランジ部を貫通して先端が対向面から突出するように取付け、そのボルトの頭部とフランジとの間にカラーのような部材を介在させて、そのボルトの突出量を調節することができるようにした態様である。フランジの背向面側から突出量の調節が可能であることから、上記軸保持具を取り外すことなく簡便に軸の位置調整が可能となる。本項の態様において、フランジ背向面が装置本体の係止部から一定の距離をおくように形成され、かつ、雄ねじ部材の頭部を除く長さが統一された態様を採用すれば、より簡便な位置調整が可能となる。そして、それぞれの雄ねじ部材の頭部に介装される突出量調整部材の厚さを一定にすれば、容易に、軸の装置本体に対する配設角度を一定に保つことができる。
(35)前記軸方向位置調整装置の突出部の突出端と前記装置本体の係止部との間に、その係止部の損傷を防ぐための損傷防止部材が介装された(31)項ないし(34)項のいずれかに記載の軸保持装置。
軸方向位置調整装置の上記突出部は、その突出端が装置本体の係止部に直接当接して係止されるものであってもよい。しかし、本軸保持装置では、上記軸保持具固定装置の力によって、その突出端が係止部に押し付けられる。したがって、係止部に傷が付く可能性があり、傷の発生によって軸の位置精度が悪くなることも考えられる。本項記載の軸保持装置では、係止部の損傷を防ぐための損傷防止部材が介装された構成を採用することから、係止部が傷付くことが少なく、安定した軸の位置精度が達成される軸保持装置となる。
(36)前記損傷防止部材が焼入処理された鋼鈑である(35)項に記載の軸保持装置。
損傷防止部材は、板状の部材を使用すればよい。焼き入れ処理された鋼鈑は、高硬度であり、比較的安価であることから、好適な損傷防止部材となる。
(37)前記歯付回転体が略鼓状をなし、その歯付回転体と前記ローラ回転体とが互いの回転軸線とが立体交差させられて配設される回転伝達装置に用いられる(31)項ないし(36)項のいずれかに記載の軸保持装置。
歯付回転体を鼓形ウォームあるいはグロボイダルカムとし、ローラ回転体を平ローラギアあるいは平ローラタレットとし、両者を噛合してなる回転伝達装置は、複数のローラアッセンブリが同時期に螺旋状歯に係合するものが多く、そのため歯付回転体とローラ回転体との噛合位置はシビアに調整されることが望まれる。その調整が困難を伴うことに鑑みれば、本軸保持装置をかかる回転伝達装置の軸保持装置として用いるときには、軸方向の位置調整を簡便に行い得るという本保持装置の効果が充分に発揮されることになる。
(38)前記ローラアッセンブリがそれぞれ前記歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する(31)項ないし(37)項のいずれかに記載の軸保持装置。
2つのローラを有する上記ローラアッセンブリは、螺旋状歯の歯山に挟まれて係合する状態となり得る。その状態においては、歯付回転体とローラ回転体との噛合位置はシビアに調整されることが要求される。したがって、かかるローラアッセンブリを有するローラ回転体を採用する回転伝達装置の軸保持装置として本軸保持装置を用いるときには、上記効果が充分に発揮されることになる。
(39)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールとして機能するローラギアである(31)項ないし(38)項のいずれかに記載の軸保持装置。
歯付回転体をウォームとする回転伝達装置は、連続した回転を伝達するものであり、より正確な回転伝達が望まれる。したがって、歯付回転体とローラ回転体との噛合位置の調整をより精度よく行う必要があることから、かかる回転伝達装置に本軸保持装置を用いれば、上記効果が充分に発揮される。
(51)軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、
タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備え、前記歯付回転体と噛合するローラ回転体と
の2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置に用いられ、
前記2つの回転体の少なくとも一方と、その少なくとも一方を回転可能に支承する前記回転伝達装置の装置本体の支承部との間に設けられ、当該回転伝達装置の回転伝達停止時にその少なくとも一方の回転を防止する回転防止装置であって、
前記2つの回転体の少なくとも一方と前記支承部との互いに対面する外周面と内周面との一方の少なくとも一部と隙間を隔てて配設され、内部に流体が充填され、その流体の圧力により膨張変形する変形部を有する膨張変形体と、
前記流体を加圧する流体加圧装置と
を含み、
前記外周面と内周面との一方の少なくとも一部が、前記流体が前記流体加圧装置で加圧されることにより、前記変形部が圧接する被圧接面部となり、
前記被圧接面部と前記変形部との間に発生する摩擦力により、前記2つの回転体の少なくとも一方の回転を防止する回転防止装置。
本項以下一連の項に記載の回転防止装置は、(1)項に記載した回転伝達装置において採用可能な回転防止装置であって、回転伝達停止時において、歯付回転体とローラ回転体との少なくとも一方の回転体の回転を防止するための装置である。
前述したように、本回転伝達装置は、正確な回転伝達が達成される装置であるが、常に回転を伝達しつづける用途にのみ供されることは少なく、その多くは、回転を一時停止して、その回転停止中に何らかの作業等が行われるという用途に供される。したがって、正確な回転伝達がなされるということは、広義には、停止する際あるいは停止している間に、その停止位置が正確であることも含まれる。
本回転伝達装置では、ローラが当接することによって係合することから、その係合部分に摩擦力が発生せず、一方の回転体の回転は他方の回転体にスムーズに伝達する。このことは逆に、回転停止の際に、いずれかの回転体に外力が加わる場合、詳しくは、その回転体に駆動源以外の回転トルクが加わった場合、その回転トルクが他方の回転体に容易に伝達されることになる。例えば、入力側となる一方の回転体を駆動モータで駆動させる場合を考えれば、回転停止中に出力側の回転体に何らかの回転トルクが加えられれば、それが入力側に伝達されることになり、その駆動モータがブレーキ付きのモータである場合であったとしても、そのブレーキの作用によってでしか回転を防止することができない。このような状況を考慮すれば、より確実な回転防止装置を設けることが望まれる。
本項を始めとする以下の一連の項に記載の回転防止装置は、上記実情に鑑み、上記回転伝達装置において、回転伝達停止時における回転体の回転を効果的に防止可能な回転防止装置を得ることを目的とするものである。
本項に記載の回転防止装置は、わかりやすく言えば、回転体をクランプ,チャック等することによって、その回転体の回転を防止するものである。流体圧によって変形する膨張変形体は、上記回転体とその回転体を回転可能に支承する装置本体の支承部との間に配設され、その変形によって、回転体をチャック,クランプ等する機能を果たすものである。本項に記載の回転防止装置は、流体圧を利用するため、均等にクランプ等することができ、回転体がズレることなく、回転体の停止位置精度が良好である。つまり、回転体の回転を効率よく防止することができる。
なお、本項を始めとする以下の一連の項に記載する回転防止装置においては、回転体が固定する軸に回転可能に支承される場合は、その軸が回転伝達装置の装置本体の支承部となるものとする。逆に、回転体と軸とが回転不能に固定され、その軸が装置本体の支承部に回転可能に支承される場合、その軸は回転体の一部となるものとする。前者の場合、膨張変形体は回転体の内周面と軸の外周面との間に配設されればよく、後者の場合、膨張変形体は、装置本体の支承部と軸との間に配設されればよい。
膨張変形体は、その形状,配設される数量等が特に限定されるものではない。また、膨張変形体は、支承部側に取付けられて、上記変形部が回転体側の被圧接面を加圧してその面に接するものでもよく、逆に、回転体側に取付けられて、上記変形部が支承部側の被圧接面を加圧してその面に接するものであってもよい。流体加圧装置と膨張変形体との流体の導通等に考慮すれば、膨張変形体が支承部側、つまり、回転しない側に取付けられる場合のほうが、簡単な構造となる。加圧流体はその種類が限定されるものではなく、空気等の気体、油等の液体等を用いることができる。大きな回転防止トルクが得られるという観点からすれば、流体は、油等の液体であることが望ましく、その場合は、油圧ユニット等を流体加圧装置とし、膨張変形体と流体加圧装置との間を油圧配管等によって接続すればよい。なお、膨張変形体は、その内部に流体が充填されるものではあるが、その場合の内部とは、膨張変形体内に区画される空間内部のみを意味するものではなく、例えば、上記支承部あるいは回転体に取付けられる場合、膨張変形体とそれが取付けられる部分との両者によって区画される空間内部であってもよい。つまり、膨張変形体が略閉鎖された空間を有する態様だけでなく、膨張変形体が開口した空間を有し、その開口が取付けられる部分に密着することで閉鎖空間を形成する態様をも含むことを意味する。
(52)前記被圧接面部に凸所と凹所との少なくとも一方が形成され、膨張変形により前記膨張変形体の前記変形部の少なくとも一部が前記凸所と凹所との少なくとも一方と係合する(51)項に記載の回転防止装置。
膨張変形体の変形部が圧接して摩擦力が発生する部分である被圧接面部に凸所あるいは凹所を形成すれば、圧接する変形部の一部がその凸所あるいは凹所に食い込むような状態で係合し、その部分により大きな摩擦力が生じることになる。したがって、本項に記載の回転防止装置は、上記凸所あるいは凹所の作用により、回転防止トルクの向上が図られることで、回転体の回転をより効果的に防止することができる。
(53)前記ローラ回転体の回転を防止する(51)項または(52)項に記載の回転防止装置。
本回転防止装置によって回転を防止される回転体は、歯付回転体であってもよく、また、ローラ回転体であってもよい。さらに、1つの回転伝達装置に2つの本回転防止装置を設置して、それら両者の回転を防止するように回転伝達装置を構成することもできる。本回転伝達装置は、前述したように、鼓形ウォームとなる歯付回転体と平ローラギアであるローラ回転体との組み合わせを始めとした種々の態様の装置が考えられる。そしてその多くは、ローラ回転体が歯付回転体と比較して大径である態様となる。そのような態様においては、いずれかの回転を防止するのであれば、小さな圧接力で大きな回転防止トルクが得られるという理由から、大径である側の回転を防止するほうがより効果的である。また、多くの態様が、歯付回転体を入力側回転体とし、ローラ回転体を出力側とする態様となる。回転停止時に外部からの回転トルクが加わるときは、その外力は出力側に加わるのが一般的であり、その場合は、出力側の回転を防止するほうがより効果的である。そのような観点からすれば、ローラ回転体の回転を防止する本項に記載の回転防止装置は、特に有効な装置であるといえる。
(54)前記ローラ回転体の前記タレットが、概して円筒形状をなし、
前記装置本体の支承部が前記タレットの内周側に挿入されてそのタレットを支承するものであり、前記タレットの内周面および前記支承部の外周面がそれぞれ前記対面する内周面および外周面である(53)項に記載の回転防止装置。
上述したように、ローラ回転体は、比較的大径である。そのようなローラ回転体では、ローラアッセンブリを外周部に保持するタレットは円筒形状に形成されることが多く、その内周側に軸状の支承部が挿入されて、その支承部の外周面とタレットの内周面が対面して、ローラ回転体が支承されることが多い。したがって、本項に記載の回転防止装置は、利用価値が高いものとなる。
(55)前記膨張変形体が、前記支承部の外周面の少なくとも一部に支持され、前記タレットの内周面の少なくとも一部が前記被圧接面部となる(54)項に記載の回転防止装置。
上述した理由から、膨張変形体は、支承部に固定され、変形部が回転体に存在する被圧接面部に圧接する態様が望ましい。タレットの内周面の一部を被圧接面部としてローラ回転体の回転を防止する本項に記載の回転防止装置は、実用性の高い回転防止装置となる。
(56)凸所と凹所との少なくとも一方が、前記タレットの外周面と内周面とで区画されるタレット壁を径方向に貫通する複数の貫通穴として前記被圧接面部に形成され、
前記膨張変形体が、環状をなし、内周面が前記支承部の外周面に支持され、外周面の少なくとも一部が前記変形部となって前記複数の貫通穴のすべてに係合する(55)項に記載の回転防止装置。
凸所あるいは凹所を被圧接面部に形成するメリットは前述したとおりである。タレットの内周面の一部を被圧接面部とする上記態様においてタレット壁に貫通穴を設けてその一部を凹所とすることは、比較的低コストに行える。そして、膨張変形体が支承部の外周を取巻く環状のものとし、変形部がすべての貫通穴に係合するようにすれば、ローラ回転体のいずれの回転角度においてもその回転が効果的に防止できることになる。したがって、本項に記載の回転防止装置は、実用的であり、かつ、効果的な回転防止装置となる。
(57)前記ローラアッセンブリは、前記ローラを支持する支持部とスタッド部とを有するローラ軸を含み、
前記スタッド部が前記貫通穴に嵌合された(56)項に記載の回転防止装置。
タレットは、その外周部に複数のローラアッセンブリを保持する。また、ローラアッセンブリは、ローラが回転可能に支持されている。したがって、ローラを支持するためのローラアッセンブリのローラ軸を凹所形成のための貫通穴に保持させれば、この貫通穴は、2つの機能を果たすことになる。したがって、本項に記載の回転防止装置は、製造コストが削減された回転伝達装置において好適に採用できる回転防止装置となる。
(58)前記歯付回転体が略鼓状をなし、その歯付回転体と前記ローラ回転体とが互いの回転軸線とが立体交差させられて配設される回転伝達装置に用いられる(51)項ないし(57)項のいずれかに記載の回転防止装置。
前述したように、かかる態様の回転伝達装置は、同時期に係合するローラアッセンブリの数を多くでき、高トルク回転伝達の用途に供されることが多い。一般的に、かかる回転伝達装置は、回転停止時に外部から大きな回転トルクが加わることが多いため、上記一連の項に記載した回転防止装置は、本項に記載された態様の回転伝達装置に好適である。
(59)前記ローラアッセンブリがそれぞれ前記歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する(51)項ないし(58)項のいずれかに記載の回転防止装置。
上記同様に、このような回転伝達装置は、ローラアッセンブリは、螺旋状歯の歯山に挟まれて係合する状態となり得るため、やはり、高トルクの回転を伝達するための用途に供されることが多い。したがって同様に、上記一連の項に記載した回転防止装置は、本項に記載された態様の回転伝達装置に好適である。
(60)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールとして機能するローラギアである(51)項ないし(59)項のいずれかに記載の軸保持装置。
歯付回転体をウォームとする回転伝達装置は、連続した回転を伝達するものでありより正確な回転伝達が望まれる。例えば歯付回転体をカムとするインデックス装置の場合と異なり、回転停止時において外部からの力により回転位置がずれる可能性は高い。したがって、上記一連の項に記載した回転防止装置を本項に記載の態様の回転伝達装置に用いれば、効果的に回転を防止できるという利点が充分に発揮されることになる。
(71)(31)項ないし(36)項に記載のいずれかに記載の軸保持装置と、(51)項ないし(57)項のいずれかに記載の回転防止装置との少なくとも一方を含む(1)項に記載の回転伝達装置。
(72)前記歯付回転体が略鼓形をなし、その歯付回転体と前記ローラ回転体とが互いの回転軸線とが立体交差させられて配設された(1)項または(71)項に記載の回転伝達装置。
(73)前記歯付回転体が(11)項ないし(18)項のいずれかに記載の歯付回転体であり、その歯付回転体と前記ローラ回転体とが前記実噛合位置で噛合させられた(72)項に記載の回転伝達装置。
(74)前記ローラアッセンブリがそれぞれ前記歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する(1)項および(71)項ないし(73)項のいずれかに記載の回転伝達装置。
(75)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールとして機能するローラギアである(1)項および(71)項ないし(74)項のいずれかに記載の回転伝達装置。
ここに掲げた一連の項は、(1)項に記載する回転伝達装置の様々なバリエーションにおいて、先に掲げた歯付回転体,軸保持装置,回転防止装置の少なくともいずれかを採用することにより、実施可能な各種態様の回転伝達装置の構成について示すものである。先に掲げた各項に示すそれぞれの歯付回転体,軸保持装置,回転防止装置のいずれかを採用すれば、その項において説明したそれぞれの利点を享受でき、また、それぞれの効果を充分に発揮できる多様な回転伝達装置を構成することができる。例えば、適切な態様の回転伝達装置を構成すれば、回転角度誤差が数秒以内という高精度な回転伝達が実現される。また、回転速度の変化を極めて小さくできるだけでなく、任意の回転角度位置に高精度に停止させることも可能であり、先に挙げた種々の機器の回転伝達精度を飛躍的に向上させることができる
(81)歯付回転体とその歯付回転体と噛合するローラ回転体との2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置の製造方法であって、
軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体を準備する歯付回転体準備工程と、
前記歯付回転体の歯の側面に当接してその歯に係合する少なくとも1つのローラを有する複数のローラアッセンブリを準備するローラアッセンブリ準備工程と、
外周部において前記複数のローラアッセンブリを保持するタレットを準備するタレット準備工程と、
前記複数のローラアッセンブリの一部である複数のものを前記タレットに組付け、半組付ローラ回転体を得る第1ローラアッセンブリ組付工程と、
その第1ローラアッセンブリ組付工程において組付けた前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う第1ピッチ調整工程と、
その半組付ローラ回転体と前記歯付回転体とを互いに適正に噛合する正規位置に位置決めして配設する歯付回転体およびローラ回転体配設工程と、
前記複数のローラアッセンブリの残部である少なくとも1つのものを前記タレットに組付け、全組付ローラ回転体を得る第2ローラアッセンブリ組付工程と、
第2ローラアッセンブリ組付工程において組付けた前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う第2ピッチ調整工程と
を含むことを特徴とする回転伝達装置の製造方法。
本項を始めとする以下の一連の項に記載の製造方法は、(1)項に記載の回転伝達装置の製造方法であって、主に、ローラ回転体へのローラアッセンブリの組付けと歯付回転体とローラ回転体との正規位置への配設に関するものである。
前述したように、本回転伝達装置は、バックラッシがないかあるいは極めて小さく、正確な回転伝達が可能な装置である。正確な回転伝達を可能にするには、ローラアッセンブリのローラと歯付回転体の螺旋状歯とのクリアランスをできるだけ小さな量で一定にすることが望ましく、そのために、歯付回転体の螺旋状歯の寸法精度,各ローラの寸法精度,各ローラアッセンブリの配設ピッチの精度等を高くした上、歯付回転体とローラ回転体とを正確な噛合位置へ精度よく配設する必要がある。しかし、クリアランスが小さいことから、この歯付回転体とローラ回転体との配設作業は困難を伴う。
一方、本回転伝達装置への要望は、正確な回転伝達ができることにとどまらず、高トルクの回転をも正確に伝達できることをも望まれる場合がある。かかる高トルク伝達を目的とする回転伝達装置は、歯付回転体に一時期に係合するローラアッセンブリの数を多くすることによって実現することができる。しかし、ただでさえ困難を伴う上記配設作業は、特に、係合するローラアッセンブリ数の多いローラ回転体と歯付回転体とを正規の噛合位置において噛合させる場合に、さらなる困難を伴い、また、形状によっては噛合自体が不可能である場合さえある。それらのことを考えれば、本回転伝達装置の製造においては特別な配慮が必要となる。
本項を始めとする以下の一連の項に記載する製造方法は、正確な回転伝達が可能な装置を得ることができる製造方法において、ローラ回転体へのローラアッセンブリの組付けに工夫を凝らすことにより、歯付回転体とローラ回転体との正規位置への配設を容易し、回転伝達精度の高い回転伝達装置を簡便に製造できる製造方法を得ることを目的とする。
本項に記載の製造方法は、ローラアッセンブリのタレットへの組付を2つの工程に分け、その1つの工程を歯付回転体とローラ回転体との正規位置への配設の前に行い、もう1つの工程を配設後に行うことを1つの特徴とする。つまり、両者の正規位置への配設に支障をきたさない程度に、まず一部のローラアッセンブリを組付け、正規位置配設後に残るローラアッセンブリの組付けを行うのである。上述したように、すべてのローラアッセンブリを組付けたローラ回転体と歯付回転体とを噛合させる場合、クリアランスの小さな状態での両者の正規位置への配設は極めて困難である。両者の配設に影響を与えない程度にローラアッセンブリを組付けた半組付ローラ回転体は、歯付回転体との噛合が容易に行える。
もう1つの特徴は、先に組付けたローラアッセンブリのピッチ調整を、歯付回転体とローラ回転体とを配設する前に行うことにある。つまり、ピッチ調整が略完了した状態の半組付ローラ回転体を、歯付回転体とともに正規位置に配設することにある。本製造方法において、第1ピッチ調整工程は、その行う場所が特に限定されるわけではない。ローラ回転体のローラアッセンブリの配設ピッチは、正確な回転伝達を行う上で極めて重要であり、でき得る限り正確であることが望ましい。回転伝達装置はコンパクトに設計されるのが実情であり、正確なピッチ調整を実機の中で行うことは困難を伴う場合も多い。このような場合にあっては、先に取付けたローラアッセンブリのピッチ調整を、実機外で行えば、容易にまた迅速に行うことができる。また、先に組付けたローラアッセンブリのピッチ調整を、歯付回転体とローラ回転体とを配設する前に行えば、上記実情に鑑みた場合、ピッチ調整工程の自由度が拡大する。
以上代表的な特徴について説明したが、かかる特徴を有する本製造方法によれば、その特徴によるメリットを充分に活かして、回転伝達精度の高い回転伝達装置を簡便に製造できる。
なお、構成部品となる歯付回転体,ローラアッセンブリおよびタレットは、回転伝達装置を組付けて完成させるメーカが自身で製造を行うものであってもよく、また、他に製造させるものであってもよい。本項でいう「歯付回転体準備工程」,「ローラアッセンブリ準備工程」および「タレット準備工程」は、前者の場合、それぞれのものを製造して準備する工程となり、後者の場合は、それぞれのものを購入して準備する工程となる。以下の項においても、同様に解釈するものとする。
(82)前記歯付回転体が略鼓形をなすものであり、
前記歯付回転体およびローラ回転体配設工程が、前記歯付回転体および前記ローラ回転体をそれぞれ互いに立体交差する回転軸線のまわりに回転可能に配設する工程を含む(81)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
本項に記載の製造方法は、歯付回転体が鼓形ウォームあるいはグロボイダルカムとなり、ローラ回転体がそれと噛合する平ローラギアあるいは平ローラタレットとなる態様の回転伝達装置、つまり、平ローラギア式回転伝達装置,平ローラタレット式インデックス装置等を製造する際に適用される方法である。前述した理由から、そのような2つの回転体の正規位置での噛合は、ローラアッセンブリがすべて組付けられた状態で行う場合、極めて困難である。したがって、かかる態様の回転伝達装置の製造において本製造方法を適用することは、その効果が大きい。
(83)前記ローラアッセンブリ準備工程において、それぞれ前記歯付回転体の歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する前記ローラアッセンブリを準備する(81)項または(82)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
このような態様のローラアッセンブリを有する回転伝達装置の場合、前述したように、係合するローラアッセンブリにおいて、それが有するいずれかのローラが常に歯付回転体の螺旋状歯に当接している。そのため、極めてバックラッシが少なく正確な回転伝達が可能であるが、その分クリアランスが小さくなり、ローラ回転体と歯付回転体の正規位置での噛合が困難となる。したがって、かかる態様の回転伝達装置の製造において本製造方法を適用することは、その効果が大きいものとなる。
(84)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールとして機能する回転伝達装置を製造する(81)項ないし(83)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本項に記載の態様の回転伝達装置は、連続した回転を伝達するための装置であり、例えばカムを用いたインデックス装置等と異なり、ローラ回転体のいずれの回転位置においても正確な回転伝達を要求される。したがって、ローラ回転体と歯付回転体との噛合位置がより正確であることが望まれる。一部のローラアッセンブリを組付けていない状態のローラ回転体を正規位置に配設する本製造方法は、2つの回転体の配設が容易であるため、高い精度で両者を配設できることから、そのような態様の回転伝達装置の製造に好適である。
(85)前記回転伝達装置として、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記ローラアッセンブリの2つ以上が前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれるものを製造する(81)項ないし(84)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
常に2つ以上のローラアッセンブリが歯山に挟まれる場合、すべてのローラアッセンブリを組付けたローラ回転体は、歯付回転体と噛合させて正規位置に配設することが困難である。特に、ローラ回転体が円筒形状のローラを有するものであって、歯付回転体が鼓形ウォーム,グロボイダルカム等である場合には、すべてのローラアッセンブリを組付けた状態でのそれらの噛合は、略不可能に近い。したがって、本態様の回転伝達装置への本製造方法の適用価値は極めて高いものとなる。
(86)前記第1ローラアッセンブリ組付工程において、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれる数と同数以上の互いに隣接する前記ローラアッセンブリを除くものを組付ける(81)項ないし(85)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本製造方法において、第1ローラアッセンブリ組付工程において組付けるローラアッセンブリの数は特に限定されるものではない。一時期に螺旋状歯に係合するローラアッセンブリの存在が、ローラ回転体と歯付回転体との正規位置への配設に影響を与えることに鑑みれば、それらのローラアッセンブリのすべてを除いて半組付ローラ回転体とすれば、両者の配設は極めて容易になる。一時期に係合するローラアッセンブリのうち、歯山に挟まれずに係合するもの、つまり、歯山の片側にのみ係合するものは、両者の配設に対して与える影響は小さい。これに対し、歯山に挟まれるものは、両者の正規位置への配設を大きく阻害する。したがって、いずれの回転角度においても歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれる数と同数以上の互いに隣接するローラアッセンブリを除いた半組付ローラギアであれば、ローラ回転体と歯付回転体の正規位置での噛合は容易に行える。なお、両者の配設前により多くのローラアッセンブリのピッチ調整を行うほうが、作業性および精度の両面で優れるという観点からすれば、第1ローラアッセンブリ組付工程において、歯山に挟まれる数と同数の互いに隣接するローラアッセンブリを除くすべてのローラアッセンブリを組付けることが望ましい。
(87)前記第1ピッチ調整工程が、軸方向に少なくとも1つの歯山を形成する螺旋状のダミー歯を外周部に有するダミー歯付回転体を前記歯付回転体とは別に準備し、前記半組付ローラ回転体とそのダミー歯付回転体とを噛合させ、それら半組付ローラ回転体とダミー歯付回転体との一方に回転角度検出装置を取付け、他方を回転させることにより前記一方を回転させ、前記回転角度検出装置によって検出される前記一方の回転角度が適正角度となるように、第1ローラアッセンブリ組付工程において組付けた前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う工程を含む(81)項ないし(86)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本製造方法において、ローラアッセンブリのピッチ調整の方法は特に限定されるものではない。通常、ローラアッセンブリはタレットの外周部にローラ回転体の回転軸線を中心とした一円周上の位置に等間隔で配設される。その場合は、それぞれ隣接するローラアッセンブリのローラ間の間隔が一定の間隔となるように行う(厳密には、隣接するローラアッセンブリの配設角度が一定となるように行う)。回転伝達精度の良好な装置とするためには、隣接するローラアッセンブリの各配設角度差が殆ど0となる程度までローラアッセンブリのピッチの調整を行うことが望ましい。
ローラアッセンブリのピッチ調整は、実機内において行うものであってもよいが、上述した理由から、煩雑なものとなる。本製造方法においては、第1ピッチ調整工程は、実機外で行えることから、例えば、いわゆる3次元測定器,光学的測定装置,画像処理装置等の測定装置を用い、それぞれのローラアッセンブリの位置データを得、そのデータを基にそれぞれの位置調整を行ってもよい。そのような方法に代わる実用的な方法として、本項に記載の方法を採用することができる。つまり、何らかの基準となる回転体(本項にいう「ダミー回転体」)を半組付ローラ回転体と噛合させ、それぞれの回転体の回転角度の関係を適正化すべく、組付けられたローラアッセンブリのピッチの調整を行うのである。例えば、それぞれの回転軸線が正規位置となるように2つの回転体を配設可能な専用の調整器にそれぞれの回転体を取付け、例えば、一方の回転体を正確に所定の回転角度だけ回転させ、他方の回転角度がその一方の所定回転角度に対応する正確な値となるように、ローラアッセンブリのピッチ調整を行うのである。
一例を示せば、以下のようになる。1条の螺旋状歯を有する歯付回転体は、それが1回転するときに噛合するローラ回転体のローラアッセンブリが1つ分だけ回転方向に送られるように形成されることが多い。例えば、このような螺旋状歯を有するダミー回転体を用いる場合には、ダミー回転体の1回転に対応するローラ回転体の移動ピッチ角度は、ローラアッセンブリの配設ピッチ角度と等しくなる。そこで、そのようなダミー回転体に例えばサーボモータ等を取付け、半組付ローラ回転体には例えばエンコーダ装置等の回転角度検出装置を取付けて、ダミー回転体を正確に1回転させ、それに対応するローラ回転体の移動ピッチ角度を測定し、その値が正確な値となるように、組付けたローラアッセンブリのそれぞれのピッチ調整を順次行い、順次固定すればよい。
ダミー回転体は、1条の螺旋状歯を有するものに限定されるわけではない。また、回転角度を検出する側の回転体をダミー回転体とし、このダミー回転体の回転角度が正確な値となるように、ローラアッセンブリのピッチ調整を行うものであってもよい。いずれかの回転体を正確に回転させる必要がある場合、その手段は、上記のサーボモータに限らず、例えば後に詳しく説明するような、位置決めピン等の機械的な機構を利用するもの等、所定角度だけ正確に回転可能な他の手段を採用するものであってもよい。また、基準となる所定角度も1回転(360゜)に限られず、それ以外の任意の所定角度であってもよい。さらに、回転角度検出装置についても、エンコーダに限られず、正確に回転角度が検出測定できる種々の手段を採用することができる。
(88)前記ダミー歯付回転体が、前記ローラ回転体の殆どすべての回転角度において、互いに係合する前記ローラアッセンブリの数と前記ダミー歯付回転体の歯山の数との一方が1つで、他方が2つであるように、前記ダミー歯が形成されたものである(87)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
第1ピッチ調整工程において用いられるダミー回転体は、その形状等が特に限定されるものではない。実際の歯付回転体と同一の形状を有するダミー回転体を用いるものであってもよい。しかし、高トルク回転伝達を目的とする回転伝達装置においては、上述したように、一時期に係合するローラアッセンブリの数が多いほうが望ましく、そのため歯付回転体は複数の歯山を有する形状に形成されることが多い。そのような形状のダミー回転体を用いると、ピッチ調整においても、複数のローラアッセンブリと複数の歯山が係合した状態となり、複数のローラアッセンブリのピッチ誤差が影響しあって正確なピッチ調整が困難となる。つまり、ある1つのローラアッセンブリのピッチ調整を行う際に回転検出装置によって検出される回転角度が、他のいくつかのローラアッセンブリのピッチ誤差の影響を受けたものとなってしまうのである。本項に記載のダミー回転体によって作り出せれる係合状態は、具体的には、1つのローラアッセンブリが2つの歯山に挟まれる状態か、あるいは、1つの歯山を2つのローラアッセンブリが挟んで係合する状態であり、例えばローラアッセンブリの噛み替わり時のような特異な場合を除いて、その状態が維持される。すなわち、そのダミー回転体は、ピッチ調整に必要な最小限の係合状態を実現し得るものである。したがって、かかるダミー回転体を用いた本項に記載の方法を採用すれば、容易にローラアッセンブリのピッチ調整が行えることになる。
(89)前記ダミー歯が前記ダミー歯付回転体の回転軸線に直角な平面に沿って延びる停留部を含み、
前記第1ピッチ調整工程が、前記半組付ローラ回転体に前記回転角度検出装置を取付け、前記停留部に前記ローラアッセンブリを係合させた状態でその半組付ローラ回転体の回転角度の検出を行う工程を含む(87)項または(88)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
本項に記載の製造方法は、第1ピッチ調整工程において、ダミー回転体を上記停留部(ドエル)有する螺旋状歯が形成されたカムを用いて、ローラアッセンブリのピッチ調整を行うものである。例えば一定のリード角をもつ螺旋状歯を有するウォーム状のダミー回転体を用いる場合、ピッチ調整において、いずれかの回転体を正確に所定の回転角度だけ回転させる必要がある。ところが、上記停留部を有するカム状のダミー回転体と半組付ローラ回転体とを噛合させる場合、停留部にローラアッセンブリが係合する状態では、ダミー回転体が回転しても半組付ローラ回転体は回転が停止させられた状態が維持される。したがって、ダミー回転体を正確に所定角度回転させなくても、停留状態において半組付ローラ回転体の回転角度を検出すれば、正確なピッチ調整を行うことができる。すなわち、本項に記載の方法によれば、より簡便にローラアッセンブリのピッチ調整を行うことができる。
(90)前記第2ピッチ調整工程が、前記全組付ローラ回転体と前記歯付回転体との一方に回転角度検出装置を取付け、他方を回転させることにより前記一方を回転させ、前記回転角度検出装置によって検出される前記一方の回転角度が適正角度となるように、第2ローラアッセンブリ組付工程において組付けた前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う工程を含む(81)項ないし(89)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
第2ピッチ調整工程では、第2ローラアッセンブリ組付工程で組付けた残りのローラアッセンブリのピッチ調整を行う。上述した第1ピッチ調整の方法と同様、例えば、一方の回転体を正確に所定の回転角度だけ回転させ、他方の回転角度が前記一方の所定回転角度に対応する正確な値となるように、ローラアッセンブリのピッチ調整を行うことができる。本項に記載の方法は、実機内で少ない数のローラアッセンブリのピッチ調整を行うため、実用的な製造方法となる。具体的な方法については、ダミー回転体ではなく実際の歯付回転体と噛合させること、2つの回転体が正規位置に配設された実機の中で行われること等を除き、上述した第1ピッチ調整工程における調整方法に従えばよい。回転体を正確に所定回転角度だけ回転させるための手段、回転角度検出装置等についても、上記のものに準じればよい。前述したように、第1ピッチ調整工程に比較して調整作業は相応の制約を受けるため、ピッチ調整するローラアッセンブリの数はできるだけ少ないほうが望ましい。
(91)前記ローラアッセンブリ準備工程前に、前記ローラを回転可能に支持する支持部と、前記タレットに保持されるスタッド部とを有するローラ軸を準備するローラ軸準備工程を含み、
前記ローラーアッセンブリ準備工程が、前記支持部において前記ローラを前記ローラ軸に回転可能に支持させる工程を含み、
前記タレット準備工程が、前記タレットの外周部に前記スタッド部が嵌合される嵌合穴を形成する工程を含み、
前記第1ローラアッセンブリ組付工程および前記第2ローラアッセンブリ組付工程が、前記スタッド部を前記嵌合穴に嵌合させる工程を含む(81)項ないし(90)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
ローラアッセンブリは、回転可能なローラを有するものであり、その1つの具体的な態様を本項は示す。ローラアッセンブリをローラとそれを軸支するローラ軸とから構成し、そのローラ軸をタレットに保持させる態様である。ローラ軸をスタッド部においてタレットに設けた嵌合穴に嵌合させれば、ローラアッセンブリの組付が容易に行える。また、タレットに設ける嵌合穴は、割出装置等を用いれば、正確なピッチで形成することができ、良好な精度を有するローラ回転体が得られる。
(92)前記ローラ軸が、前記支持部の軸線と前記スタッド部の軸線とが互いに平行であって偏心したものであり、
前記第1ピッチ調整工程および前記第2ピッチ調整工程が、前記ローラ軸を前記スタッド部の軸線を中心にして回転させ、任意の回転位置において前記タレットに固定することによって前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う工程を含む(91)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
上記態様のローラアッセンブリにおいて、スタッド部とローラを支持す支持部との軸線を偏心させれば、そのローラアッセンブリのピッチ調整は容易になる。つまり、スタッド部の軸線を中心に回転させれば、その偏心量に応じた量だけローラの回転中心がずれ、そのずれの方向を変えることによって、ローラアッセンブリのピッチの微調整が可能となる。ピッチ方向と直角な方向においてもローラアッセンブリの位置ずれが生じることになるが、回転伝達精度に及ぼす影響は少なく、殆ど問題とはならない。
(93)ピッチ調整された前記ローラアッセンブリを前記タレットに固着するローラアッセンブリ固着工程を含む(81)項ないし(92)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本回転伝達装置は、正確な回転伝達を目的とするものである。そのためには、ローラ回転体のローラアッセンブリのピッチは重要である。例えば、運転中に何らかの外力が加わったりする、運転中の振動により固定が緩む等の原因から、ローラアッセンブリのピッチが狂う事態も考えられる。ローラアッセンブリを固着すれば、調整を行った状態での正確なローラアッセンブリのピッチが維持できる。したがって、固着工程を含む本項に記載の製造方法によって製造された回転伝達装置は、長期わたって正確な回転伝達を行い得る装置となる。
固着手段は、特に限定されるものではなく、長期にわたってローラアッセンブリの位置ずれが生じないものであればよい。例えば、かしめ、溶接、ろう付け、接着剤による接着等、種々の手段を採用できる。中でも接着剤による接着は、振動に対して信頼性が高い、加熱を必要としないことから歪み等が発生しない、比較的安価であるといった理由から、ローラアッセンブリの固着には好適である。ピッチ調整されたローラアッセンブリに対して固着を行うのであるが、1つのローラアッセンブリのピッチ調整が完了した時点でそのローラアッセンブリを固着するものであってもよく、第1ピッチ調整工程後および第2ピッチ調整工程後にそれぞれ当該工程においてピッチ調整が完了したローラアッセンブリをまとめて行うものであってもよい。また、第2ピッチ調整工程後、すべてのローラアッセンブリをまとめて固着するものであってもよい。ローラアッセンブリのピッチ調整は、微妙な調整を必要とすることから、第2ピッチ調整工程内あるいはその後に、一部のローラアッセンブリの再調整が必要となることも考えられる。この点を考慮すれば、すべてのローラアッセンブリの調整が完了した後に、そのすべてのローラアッセンブリを固着することが望ましい。
(94)前記ローラアッセンブリ準備工程前に、前記ローラを回転可能に支持する支持部と、前記タレットに保持されるスタッド部とを有するローラ軸を準備するローラ軸準備工程を含み、
前記ローラーアッセンブリ準備工程が、前記支持部において前記ローラを前記ローラ軸に回転可能に支持させる工程を含み、
前記タレット準備工程が、前記タレットの外周部に前記スタッド部が嵌合される嵌合穴を形成する工程を含み、
前記第1ローラアッセンブリ組付工程および前記第2ローラアッセンブリ組付工程が、前記スタッド部を前記嵌合穴に、そのスタッド部の外周面とその嵌合穴の内周面との間の少なくとも一部に隙間を有する状態で嵌合させる工程を含み、
ローラアッセンブリ固着工程が、前記隙間に接着剤を充填する工程を含む(93)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
本項の態様は、スタッド部をタレットの嵌合穴に嵌合させてローラ軸を保持させる上記態様において、ローラアッセンブリを固着させる場合の一態様である。スタッド部あるいは嵌合穴の少なくともいずれかを、両者の間に隙間を設けるように形成し、その隙間に接着剤を充填させるものであり、簡便な手段よって充分なる強度の固着が達成できる。充填方法は、特に限定されるものではないが、例えば、外部からその隙間へ通じる供給路となる比較的小さな孔をタレットに穿孔しておき、その孔から隙間へ接着剤を圧送すればよい。
図1に本実施形態の回転伝達装置の平面断面図を、図2に右側面断面図を、図3に左側面図を、それぞれ示す。本回転伝達装置は、主に、回転伝達装置のハウジングとして機能する装置本体10と、装置本体10に保持された歯付回転体としての鼓形ウォーム12(以下、「ウォーム12」と略す)と、装置本体10に支承され、ウォーム12と噛合するローラ回転体としての平ローラギア14(以下、「ローラギア14」と略す)とを含んで構成される。本回転伝達装置においては、ローラギア14は、他の構成部品と組み合わされることによって、テーブル(図示していない)をローラギア14の回転軸線を中心に回転可能に支持するためのテーブル基体16を構成しており、テーブル基体16が装置本体10に支承されることで、ローラギア14が装置本体10に支承されるものとなっている。
上述した回転伝達装置の製造は、概して、それぞれの部品を準備する部品準備工程(歯付回転体(ウォーム)準備工程,タレット準備工程,ローラ軸準備工程,ローラアッセンブリ準備工程等を含む),第1ローラアッセンブリ組付工程,第1ピッチ調整工程,歯付回転体およびローラ回転体配設工程(上記回転伝達装置では、ウォームおよびローラギア配設工程となる),第2ローラアッセンブリ組付工程,第2ピッチ調整工程,固着工程,その他の後工程を経て行われる。以下に、それぞれについて説明する。
前述したように、歯付回転体とローラ回転体との噛合において、ローラアッセンブリと螺旋状歯との間に一定のクリアランスを設け、それぞれの回転軸線を互いに接近させた状態で両者を噛合する場合には、ローラアッセンブリは螺旋状歯から予圧を受けた状態となる。この状態で回転伝達をするときには、ローラ回転体の回転角度が変化することにより予圧の状態が変化し、回転速度が変化してしまう。いわゆる回転伝達むらである。以下に、モデルを用いて、まず、この回転伝達むらについて説明し、回転伝達むらが少なくなるような螺旋状歯の形状について説明する。そして、さらに、上記実施形態の回転伝達装置におけるウォームの螺旋状歯への適用について言及する。
σ0∝L’
の関係が成り立つ。また、ローラの外周面と基準線CLとのなす角度はローラアッセンブリの軸線と基準線CLとのなす角度と等しく、この角度をθとすれば、予圧σ0のローラギアの回転方向における予圧成分σは、
σ=σ0・sinθ
となり、さらに、
σ∝L’
となる。また、ローラの外周面がR’の位置にあると仮定した場合において、その面と螺旋状歯の側面との面間距離をδとしたときに、
δ∝L’
であり、結果として
σ∝δ
となる。一方、あるローラアッセンブリについてのδの値は、ローラギアとウォームとの相対移動距離L,ローラアッセンブリと螺旋状歯とのクリアランスc,ローラアッセンブリの軸線と基準線CLとのなす角θによって決定され、
δ=L・sinθ−c
の式により求まる。ちなみに、δの値は、θの関数であることから、ローラギアの回転角度位置によって変化するものであり、また、θが大きくなるにつれて大きくなることから、ローラアッセンブリがウォームの回転軸線方向における中心部で係合する場合に予圧成分が小さく、逆に、端部で係合する場合に大きくなることが判る。
|δ|=L・sin|θ|−c
の式により、絶対値を算出し、その値に正または負の記号を付すものとする。
δRA1=0.0162
δRA2=0.0028
δRA3=−0.0028
δRA4=−0.0162
となる。便宜上、1個のローラアッセンブリには、ローラギア500の正回転方向および逆回転方向にそれぞれ予圧成分が作用し、それぞれに予圧成分量δが存在するとみなすことができ、正回転方向に作用する予圧成分量を予圧正成分量δ+と、逆回転方向に作用する予圧成分量を予圧負成分量δ-と定義すれば、それぞれのローラアッセンブリRA1,RA2,RA3,RA4に生じる予圧正成分量δ+および予圧負成分量δ-(ローラギアの回転角度が0゜であることからさらに0の添え字を付す)は、
δ+ RA1,0=0.0162, δ- RA1,0=0
δ+ RA2,0=0.0028, δ- RA2,0=0
δ+ RA3,0=0, δ- RA3,0=−0.0028
δ+ RA4,0=0, δ- RA4,0=−0.0162
となる。また、その場合、上記予圧成分量δは、予圧正成分量δ+および予圧負成分量δ-との和であることから、予圧成分量和δと定義することがふさわしく、以後の説明において、その定義に従う。したがって、それぞれのローラアッセンブリRA1,RA2,RA3,RA4の予圧成分量和δRA1,δRA2,δRA3,δRA4は上記値となる。
Σδ+ 0=0.0190, Σδ- 0=−0.0190
Σδ0=0
となる。総予圧正成分量Σδ+と総予圧負成分量Σδ-との絶対値が等しいことつまり総予圧成分量和Σδが0であることは、予圧正成分と予圧負成分とが釣り合っており、ローラギア全体では予圧成分が打ち消された状態になっている。したがって、予圧による正回転方向の回転トルクと逆回転方向のトルクとはバランスがとれ、結果的にローラギアは予圧による回転トルクを受けていない状態であるといえる。ちなみに、回転トルクにはローラギアの回転軸線とローラまでの距離が関係し、内周側のローラと外周側のローラとではその距離が異なるため、厳密には等しくないが、その距離差の影響は小さいものと考えることができるため、本噛合モデルにおいては無視する。また、図20のD部からも判るように、実際には、ローラと螺旋状歯の当接点はローラアッセンブリの中心を結ぶ線上には無く、このずれも回転トルクに影響を与えるが、その影響は小さいものと考えることができることから、本噛合モデルにおいては、そのことについても同様に無視する。なお、上記、予圧正成分量δ+,予圧負成分量δ-,予圧成分量和δ,総予圧正成分量Σδ+,総予圧負成分量Σδ-および総予圧成分量和Σδは、いずれも予圧関連量と定義することができ、それらの単位は長さの単位(本明細書ではmm)となる。
δ+ RA2,5=0.0053, δ- RA2,5=0
δ+ RA3,5=0, δ- RA3,5=−0.0002
δ+ RA4,5=0, δ- RA4,5=−0.0143
となり、総予圧正成分量Σδ+ 5,総予圧負成分量Σδ- 5および総予圧成分量和Σδ5は、
Σδ+ 5=0.0053, Σδ- 5=−0.0145
Σδ5=−0.0092
となる。この位置では、総予圧負成分量Σδ- 5の絶対値は総予圧正成分量Σδ+ 5の絶対値より大きく、ローラギアは予圧により逆回転方向の回転トルクを受けている。その回転トルクの大きさは、総予圧成分量和Σδ5に比例するものとなる。その場合実際は、ローラギアは予圧とのバランスをとるべく、総予圧成分量和Σδ5の約半分に相当する分だけ逆回転方向に回転させられると考えることができ、その分の回転角度を回転角度誤差γと定義することができる。つまり、回転角度誤差γは、総予圧成分量和Σδを打ち消すべく発生するのである。ローラギアの半径(外周側ローラ位置におけるの半径と内周側ローラ位置の半径との平均値)をRとすれば、回転角度誤差γは、
γ=sin-1(Σδ/2/R)
という式で近似できる。ここでローラギアの半径Rを80mmとすれば(R=80)、ローラギアの回転角度が5゜の位置にある場合の回転角度誤差γ5(単位は秒とし、ローラギアの回転角度を添え字して示す)は、−11.9″となる。
δ+ RA2,10=0.0077, δ- RA2,10=0
δ+ RA3,10=0, δ- RA3,10=0
δ+ RA4,10=0, δ- RA4,10=−0.0122
となる。ちなみにローラアッセンブリRA3は、クリアランスが存在することで2つのローラのいずれもが螺旋状歯の側面に当接せず、いずれの方向の予圧成分も生じていない。そして、総予圧正成分量Σδ+ 10,総予圧負成分量Σδ- 10および総予圧成分量和Σδ10は、
Σδ+ 10=0.0077, Σδ- 10=−0.0122
Σδ10=−0.0045
となる。この位置においても、総予圧負成分量Σδ- 10の絶対値は総予圧正成分量Σδ+ 10の絶対値より大きく、ローラギアは予圧により逆回転方向の回転トルクを受けている。回転角度誤差γ10は、この位置において−5.8″となる。
δ+ RA2,15=0.0100, δ- RA2,15=0
δ+ RA3,15=0, δ- RA3,15=0
δ+ RA4,15=0, δ- RA4,15=−0.0100
Σδ+ 15=0.0100, Σδ- 15=−0.0100
Σδ15=0, γ15=0
となり、正回転方向の回転トルクと逆回転方向の回転トルクとは釣り合い、回転角度誤差は生じない。
δ+ RA2,20=0.0122, δ- RA2,20=0
δ+ RA3,20=0, δ- RA3,20=0
δ+ RA4,20=0, δ- RA4,20=−0.0077
Σδ+ 20=0.0122, Σδ- 20=−0.0077
Σδ20=0.0045, γ20=5.8
となり、また、図23(e)に示す回転角度25゜の位置では、
δ+ RA2,25=0.0143, δ- RA2,25=0
δ+ RA3,25=0.0002, δ- RA3,25=0
δ+ RA4,25=0, δ- RA4,25=−0.0053
Σδ+ 25=0.0145, Σδ- 25=−0.0053
Σδ25=0.0092, γ25=11.9
となり、いずれの場合も、予圧によりローラギアは正回転方向の回転トルクを受け、正回転方向に回転角度誤差が生じる。さらに、図23(f)に示す回転角度30゜の位置では、
δ+ RA2,30=0.0162, δ- RA2,30=0
δ+ RA3,30=0.0028, δ- RA3,30=0
δ+ RA4,30=0, δ- RA4,30=−0.0028
δ+ RA5,30=0, δ- RA5,30=−0.0162
Σδ+ 30=0.0190, Σδ- 30=−0.0190
Σδ30=0, γ30=0
となり、回転トルクの釣り合いのとれた基準回転位置に戻ることになる。
66,68:軸保持装置 70:連結装置 200:歯山 202,204:側面(螺旋状歯の) 206:逃がし部(歯の側面の) 208:当接部(歯の側面の) 400:半組付ローラギア 410:ダミー歯付回転体
420:全組付ローラギア 430:エンコーダ(回転角度検出装置)
Claims (6)
- (a)略鼓形をなし、軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、(b)タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有して前記タレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備え、前記歯付回転体の回転軸線と自らの回転軸線が立体交差させられて配設され、前記歯付回転体と噛合するローラ回転体との2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置の製造方法であって、
前記歯付回転体を準備する歯付回転体準備工程と、
前記複数のローラアッセンブリを準備するローラアッセンブリ準備工程と、
外周部において前記複数のローラアッセンブリを保持するタレットを準備するタレット準備工程と、
前記複数のローラアッセンブリの一部である複数のものを前記タレットに組付け、半組付ローラ回転体を得る第1ローラアッセンブリ組付工程と、
その半組付ローラ回転体と前記歯付回転体とを互いに適正に噛合する正規位置に位置決めして配設する歯付回転体およびローラ回転体配設工程と、
前記複数のローラアッセンブリの残部である少なくとも1つのものを前記タレットに組付け、全組付ローラ回転体を得る第2ローラアッセンブリ組付工程と
を含むことを特徴とする回転伝達装置の製造方法。 - 前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールを構成する回転伝達装置を製造する請求項1に記載の回転伝達装置の製造方法。
- 前記回転伝達装置として、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記ローラアッセンブリの1つ以上が前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれるものを製造する請求項1または2に記載の回転伝達装置の製造方法。
- 前記回転伝達装置として、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記ローラアッセンブリの2つ以上が前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれるものを製造する請求項3に記載の回転伝達装置の製造方法。
- 前記第1ローラアッセンブリ組付工程において、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれる数と同数以上の互いに隣接する前記ローラアッセンブリを除くものを組付ける請求項1ないし4のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
- 前記ローラアッセンブリを前記タレットに固着するローラアッセンブリ固着工程を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
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