本発明は、2つの回転体が互いに噛合してそれらの一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置およびそれに用いられる軸保持装置に関する。
2つの回転体が噛合してなる回転伝達装置は、歯車装置等を始めとして、様々な機器に用いられている。歯車装置等の回転伝達装置では、例えば、互いに係合する歯と歯とのすべりによる伝達ロスが発生する、また、その機構上、バックラッシが不可欠である。これらの現象は、正確な回転伝達を阻害する要因となる。一方で、各種機器の動作精度の要求は益々高くなり、それらの機器に用いられる回転伝達装置には、常に、より正確な回転伝達が可能であることが要求され続けている。
上記実情に鑑み、本発明は、正確な回転伝達が可能な回転伝達装置を提供することを課題とし、また、そのような回転伝達装置を実現するために好適な軸保持装置を提供することを課題とする。
本発明の軸保持装置は、所定の回転伝達装置、つまり、(A)軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、(B)タレットと、螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備え、歯付回転体と噛合するローラ回転体との2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置に用いられるものであり、2つの回転体の少なくとも一方の軸と、その一方の軸を保持する回転伝達装置の装置本体との間に設けられ、その一方の軸を軸方向に位置調整可能に保持する軸保持装置である。そして、本発明の軸保持装置は、(a)少なくとも一方の軸をその軸方向に移動不能に保持する軸保持具と、(b)その軸保持具から前記軸方向に突出して突出端が装置本体の係止部に係止される突出部を有し、その突出部の突出量が調節可能に軸保持具に設けられ、その突出量の調節によって前記一方の軸の軸方向位置を調整可能にする軸方向位置調整装置と、(c)軸保持具を装置本体の係止部に向かって軸方向に押え付けて固定する軸保持具固定装置とを含むことを特徴とする。
また、本発明の回転伝達装置は、(A)軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、(B)タレットと、螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備え、歯付回転体と噛合するローラ回転体との2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置であって、上記本発明の軸保持装置を含んで構成されたことを特徴とする。
正確な回転伝達を可能とする回転伝達装置を得るためには、歯付回転体とローラ回転体との相対位置を適正なものとしなければならず、両者の回転軸線間距離のみならず、両者のそれぞれの回転軸線方向の位置も、適正な両者の噛合のために重要となる。本発明の軸保持装置によれば、歯付回転体あるいはローラ回転体の軸方向の位置調整を簡便に行うことができる。また、本発明の回転伝達装置は、上記本発明の軸保持装置を含んで構成された回転伝達装置であることから、本発明の回転伝達装置によれば、簡便に、正確な回転伝達が可能な回転伝達装置が得られることになる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。本願発明を含む概念である。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(31)が請求項1に相当し、(32)項ないし(39)項の各々が請求項2ないし請求項9の各々に相当する。また、(1)項と(31)項を合わせたものが請求項10に相当する。なお、(32)項ないし(39)項の各々の技術的特徴の1つまたは複数を、請求項10に付加することも可能である。
(1)軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、
タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備え、前記歯付回転体と噛合するローラ回転体と
の2つの回転体を含み、
それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置。
ここでいう歯付回転体は、ウォームのようなのものを連想すればよく、また、ローラ回転体は、ローラタレット、ローラギアと称することもでき、ウォームと噛合するウォームホイールのようなものを連想すればよい。通常のウォームおよびウォームホイールと異なるのは、ウォームホイールの歯に相当するものがタレットの外周部に保持されたローラアッセンブリであり、そのローラアッセンブリがウォーム状のものの螺旋状歯に係合する構造となっていることにある。ローラアッセンブリの螺旋状歯に係合において、ローラアッセンブリが有するローラは、螺旋状歯の側面に当接し、歯付回転体とローラ回転体とが噛合して回転する際に、その当接位置の変化に伴って螺旋状歯の側面を転がるように回転する構造となっている。したがって、本回転伝達装置は、歯と歯とが係合する回転伝達装置と違って、基本的には歯とローラとのすべりは発生せず、スムーズな回転伝達動作が可能になる。また、歯とローラとの間の摩擦が極めて少ないことから、歯付回転体の回転をローラ回転体の回転として伝達することのみならず、ローラ回転体の回転を歯付回転体の回転として伝達することも可能である。
本回転伝達装置では、ローラが螺旋状歯の一方の側面に当接し続ける状態でローラアッセンブリが係合する場合、歯付回転体とローラ回転体のいずれかの一方向の回転が他方の一方向の回転として正確に伝達される。また、複数のローラのうちの1以上のものがローラが螺旋状歯のある側面に当接し続け、かつ、別の1以上のものが異なる側面に当接し続ける状態でローラアッセンブリが係合する場合、歯付回転体とローラ回転体のいずれかの双方向の回転が他方の双方向の回転として正確に伝達されるだけでなく、バックラッシが極めて小さいことから(理論的にはバックラッシは発生しない)、回転方向の切り替わり時においても、回転ずれがなく即応性も良好である。さらに、バックラッシが極めて少ないことは、装置のガタツキなく、振動,騒音等の発生も抑制される。なお、この場合、螺旋状歯の異なる側面に係合する複数のローラは、1つのローラアッセンブリがもつ複数のローラであってもよく、複数のローラアッセンブリが有するそれぞれのローラであってもよい。また、螺旋状歯の異なる側面は、同じ歯山の背向する側面でもよく、異なる歯山の異なる側面であってもよい。
本回転伝達装置は、例えば、歯付回転体をウォームと、ローラ回転体をそのウォームと噛合するウォームホイールとし、その歯付回転体を入力軸側、そのローラ回転体を出力側とし、歯付回転体の一定速度の回転を減速させてローラ回転体の一定速度の回転として伝達する減速装置としての態様で実施することができる。この態様において、例えば、ローラアッセンブリが回転軸線に直角な一円周上に配設されたローラ回転体であって、そのローラアッセンブリにおいて、ローラがローラ回転体の回転軸線に略直角な回転軸線のまわりに回転するものを用いて、減速装置を構成することができる。その場合、噛合させる歯付回転体は、鼓形ウォーム、円筒ウォーム等あるいはこれらに類似した形状のものとすればよい。つまりこの態様は、ローラ回転体が平ローラギアとして機能し、平ローラギア式減速装置としての態様と称することができる。また、減速装置の態様において、例えば、ローラアッセンブリが回転軸線に直角な平面状の一円周上に配設されたローラ回転体であって、そのローラアッセンブリにおいて、ローラがローラ回転体の回転軸線に略平行な回転軸線のまわりに回転するものを用いて、減速装置を構成することもできる。その場合、噛合させる歯付回転体は、円筒ウォーム等あるいはこれらに類似した形状のものとすればよい。つまりこの態様は、ローラ回転体がフェイスローラギアとして機能し、フェイスローラギア式減速装置としての態様と称することができる。
また、本回転伝達装置は、上述したように、ローラ回転体の回転を歯付回転体に伝達可能であることから、ローラ回転体を入力側、歯付回転体を出力側とし、ローラ回転体の一定速度の回転を増速させて歯付回転体の一定速度の回転として伝達する増速装置としての態様で実施することもできる。この態様は、上記同様、平ローラギア式増速装置、フェイスローラ式増速装置として態様と称することができる。さらに、上記態様において、歯付回転体の係合する歯山の数を多くし、螺旋状歯のリード角を大きくする等すれば、それぞれの一方の回転を同じ回転速度の他方の回転として伝達することも可能である。この態様は、平ローラギア式等速回転伝達装置、フェイスギア式等速回転伝達装置としての態様と称することができる。以上の減速装置,増速装置,等速回転伝達装置等は、2つの回転体の一方の連続した回転を他方の連続した回転として伝達するものであり、そのような装置は狭義の回転伝達装置と称することができる。回転伝達装置として、例えば、螺旋状歯を、そのリード角が一定ではなく、歯付回転体の回転角度に応じてリード角が変化するような形状のものとすれば、一定速度の回転を伝達する回転伝達装置ではなく、回転角度に応じて回転速度が変化する態様の回転伝達装置とすることもできる。
本発明の回転伝達装置は、上記それぞれの回転伝達装置において、一方を任意の回転角度位置で停止させれば、噛合する他方もそれに対応した任意の回転角度位置で停止させることができ、インデックス装置としての態様で実施することができる。具体的には、例えば、入力側となる歯付回転体あるいはローラ回転体のいずれかを回転角度を制御可能な駆動装置(例えば、サーボモータ等)で回転させ、入力側を任意の角度で停止させることによって、出力側のローラ回転体あるいは歯付回転体を任意の回転位置に停止させる態様で実施させればよい。また、電気あるいは電子的な制御等によって、所定の回転角度で正逆転を繰り返す揺動装置としての態様で実施することもできる。
上記態様をさらに発展させれば、例えば、歯付回転体の螺旋状歯を回転軸線に直角な平面に沿って延びる停留部(ドエル)が設けられた形状とし、この停留部とローラ回転体に配設されたローラアッセンブリとが係合するときには、入力側の回転の出力側への伝達を一時的に停止させ得る態様で実施することもできる。つまり、この態様は、歯付回転体がカムとして機能し、ローラ回転体がカムフォロアが外周部に配設されたローラタレットとして、そして、ローラアッセンブリがカムフォロアとして機能する態様である。したがって、本明細書においては、回転伝達装置は広義に解釈するものとし、本回転伝達装置は、そのようなローラタレット式インデックス装置を始めとして、カムとローラタレットを組み合わせた種々のローラタレット式カム装置も含むものとする。なお、ローラタレット式インデックス装置としての態様も、上記同様、例えば、グロボイダルカム(鼓形カム)あるいはバレルカム(円筒カム)と平ローラタレットとが組み合わされた平ローラタレット式インデックス装置、バレルカムとフェイスローラタレットとが組み合わされたフェイスローラタレット式インデックス装置等、種々のものを採用し得る。ちなみに、歯付回転体に形成される停留部は複数箇所設けてもよく、その歯付回転体の1回転内においてローラ回転体が複数回停止させられるような形状の歯付回転体であってもよい。
上述した種々の本回転伝達装置の態様において、歯付回転体の軸方向に並ぶ歯山の数は限定されるものではない。また、螺旋状歯の数も限定されず、1条の螺旋状歯が形成された歯付回転体を用いる回転伝達装置であってもよく、2条あるいはそれ以上の条数の螺旋歯が形成された歯付回転体を用いる回転伝達装置であってもよい。さらに、一時期に螺旋状歯に係合するローラアッセンブリの数についても限定されるものではなく、より高トルクの回転を効率よく伝達する等の目的で、複数のローラアッセンブリが同時に螺旋状歯に係合する態様の回転伝達装置とすることもできる。また、ローラアッセンブリの配設数、配設ピッチ等は任意に設定でき、それが有するローラの形状についても、円筒形、円錐形等、様々な形状とすることができ、さらに、1つのローラアッセンブリが有するローラ数についても1つあるいは2つ以上の任意の数とすることができる。その他、本回転伝達装置における歯付回転体およびローラ回転体の大きさ,材質,両者の位置関係等の各構成についても、目的に応じた種々の構成とすることができる。
本回転伝達装置の用途については、特に限定されるものではなく、例えば、所定のワークの回転あるいはその位置の割出等を行うロータリーテーブル,インデックステーブル等を始めとして、各種機器の組立に用いられる自動組立機,マシニングセンター等の工作機械,印刷機械における印刷紙の送り位置決め装置,アーム式ロボットのアームの駆動装置,半導体チップ等の電子部品製造装置等の各種機器,装置における回転伝達装置として用いることが可能である。
(11)略鼓形をなし、軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体であって、
タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備えるローラ回転体とともに、そのローラ回転体の回転軸線と自らの回転軸線とが立体交差させられて配設され、そのローラ回転体と噛合することにより、自らの回転をそのローラ回転体に伝達するあるいはそのローラ回転体の回転が自らに伝達される回転伝達装置に用いられ、
前記ローラ回転体に対応する正規のローラ回転体を理論ローラ回転体と定義し、当該歯付回転体と前記理論ローラ回転体とが、その理論ローラ回転体の複数のローラアッセンブリと前記螺旋状歯との間のクリアランスがその理論ローラ回転体のいずれの回転角度においても一定に保たれる状態で回転可能である場合に、その歯付回転体を理論歯付回転体、その螺旋状歯を理論螺旋状歯、それら理論歯付回転体と理論ローラ回転体との相対位置を理論噛合位置と定義し、
それら理論歯付回転体と理論ローラ回転体とが、前記理論噛合位置より互いの回転軸線が相対的に接近した実噛合位置で噛合させらることにより、前記複数のローラアッセンブリの少なくとも一部のものが前記理論螺旋状歯から予圧を受けた状態で、前記回転伝達装置が回転を伝達する状態を想定し、その状態を理論実噛合状態と定義した場合に、
その理論実噛合状態において前記予圧に起因して前記ローラ回転体に生じる正方向の回転トルクと逆方向の回転トルクとのアンバランスに基づいて前記回転伝達装置に発生する回転伝達むらに比較して、実際の回転伝達むらが小さくなるように、前記理論螺旋状歯の側面の少なくとも一部分がその一部分の法線方向に前進あるいは後退させられて修正された形状の前記螺旋状歯を有することを特徴とする歯付回転体。
本項以下の一連の項に記載する歯付回転体は、(1)項に記載の回転伝達装置の部品となる歯付回転体に関する。上述したように、種々の態様の回転伝達装置が得られる。この中でも、歯付回転体を鼓形ウォームあるいはグロボイダルカムとする回転伝達装置は、歯付回転体の螺旋状歯と一時期に係合するローラ回転体のローラアッセンブリの数を多くすることができ、負荷容量を大きくすることが可能で、高トルクの回転伝達が可能となる。本項以下の歯付回転体は、この鼓形ウォームまたはグロボイダルカムとしての歯付回転体であって、回転伝達むらの少ない回転伝達装置を実現し得るものを提供することを目的とするものである。
鼓形ウォームまたはグロボイダルカム(鼓形歯付回転体と総称することができる)平ローラギアまたは平ローラタレット(平ローラ回転体と総称することができる)とを組み合わせる場合、両者は、互いの回転軸線が交差するように、多くの場合は、直角に立体交差するように配設される。直角に立体交差する場合においては、平ローラ回転体の回転によって描かれるローラアッセンブリの中心の回転軌跡を含む平面内に鼓形歯付回転体の回転軸線が含まれるように、両者が配設される。上述したように、高トルク回転伝達を可能とすべく、鼓形歯付回転体と平ローラ回転体との噛合においては、複数のローラアッセンブリが同時に螺旋状歯に係合するように設計することが望ましい。しかし、実際の歯付回転体およびローラ回転体ともに製作上の寸法誤差を有することを許容せざるを得ず、また、回転伝達装置作動中における熱膨張に対して考慮を要すること、両者を噛合させる作業の困難性等から、ローラアッセンブリと螺旋状歯との間にある程度のクリアランスを有するように両者を設計する必要がある。ところが、クリアランスを有する状態で両者を噛合させる場合、その回転伝達装置にはバックラッシが発生する。そこで、両者の設計上の相対位置(理論噛合位置)より、両者を接近させた相対位置(実噛合位置)つまり互いの回転軸線が相対的に接近した位置で両者を噛合させ、係合するローラアッセンブリが螺旋状歯から所定の予圧を受けた状態で回転を伝達させれば、その回転伝達装置はバックラッシが除去されることになる。
ところが、上記のような方式で予圧をかけた状態では、その予圧に起因して、別の問題が生じる。この問題は、後に詳しく説明するが、その回転伝達装置に回転伝達むらが発生する、つまり、回転角度の変化に応じ伝達される回転速度が変化するというものである。この現象は、ローラアッセンブリが受ける予圧の量がローラ回転体の回転角度の変化につれて変化することに起因するものである。この現象については、後に図を用いて詳しく説明するため、ここでの説明は簡単なものに留める。ローラアッセンブリが受ける予圧は、螺旋状歯の側面とローラとがクリアランス量を超えて接近させられることによって生じるが、ローラ回転体の回転角度によってローラと螺旋状歯の側面との接近距離が異なることから、ローラアッセンブリが受ける予圧量もそれにつれて変化するのである。予圧量のローラ回転体の回転方向成分は、ローラ回転体を正回転方向あるいは逆回転方向に回転させる回転トルクになる。同時に複数のローラアッセンブリが係合する場合、ローラ回転体の回転角度によっては、それらの予圧量の回転方向成分のバランスが崩れる。つまり、正方向の回転トルクと逆方向の回転トルクのバランスが崩れるのである。そして、そのバランスを保とうとしてローラ回転体および歯付回転体がその分だけ回転させられることになる。この余分な回転が、回転伝達装置の回転伝達むらとなって現れるのである。本項に記載の鼓形歯付回転体は、この回転伝達むらを減少させるべく修正を加えた形状の螺旋状歯を有することが特徴であり、本歯付回転体と平ローラ回転体とを噛合させて回転伝達装置を構成すれば、その回転伝達装置は、回転角度伝達誤差が小さいものとなる。
上記のように、設計上のそれぞれの回転体をそれぞれ理論歯付回転体および理論ローラ回転体とし、それらが実噛合位置で噛合する場合を実噛合状態とし、この状態における回転伝達装置に生じる回転伝達むらを基準にして、その回転伝達むらを小さくするように、その理論歯付回転体がもつ理論螺旋状歯を元に修正が加えられた形状の螺旋状歯を形成すればよい。このことは、一旦理論螺旋状歯に形成し、その後にその歯に修正を加えて形成することを必ずしも意味するものではない。机上の計算により修正が加えられた形状の螺旋状歯の形状データを作成し、その形状データに基づいて、直に実際の螺旋状歯を形成するものであってもよい。
(12)前記ローラ回転体と前記実噛合位置において噛合した状態における前記複数のローラアッセンブリの各々が受ける予圧量の回転方向成分であって正回転方向に作用する成分の量を予圧正成分量、逆回転方向に作用する成分の量を予圧負成分量、その予圧正成分量とその予圧負成分量との和を予圧成分量和とそれぞれ定義し、
前記複数のローラアッセンブリのうち同時期に前記螺旋状歯と係合するものの前記予圧正成分量の合計,前記予圧負成分量の合計および前記予圧成分量和の合計を、それぞれ総予圧正成分量,総予圧負成分量,総予圧成分量和と定義し、
前記理論ローラ回転体の回転に伴って変化する前記総予圧正成分量,前記総予圧負成分量および前記総予圧成分量和のそれぞれの絶対値の最大値を、それぞれ最大総予圧正成分量,最大総予圧負成分量および最大総予圧成分量和と定義し、
以上の予圧正成分量,予圧負成分量,予圧成分量和,総予圧正成分量,総予圧負成分量,総予圧成分量和,最大総予圧正成分量,最大総予圧負成分量および最大総予圧成分量和等を予圧関連量、それら予圧関連量の少なくとも1つを含むものを予圧関連量群と定義した場合において、
前記螺旋状歯が、前記理論螺旋状歯の形状を規定する理論形状データと、前記予圧関連量群を修正すべく前記理論螺旋状歯の形状を修正する修正データとに基づいて形成されたものである(11)項に記載の歯付回転体。
歯付回転体の螺旋状歯の形状は、どのような手法の修正に基づいて形成されたものでもよい。本項に記載の歯付回転体は、ある1つの修正手法に基づく螺旋状歯を有する歯付回転体である。上述したように、予圧に起因する回転伝達むらには、ローラアッセンブリが螺旋状歯から受ける予圧量のローラ回転体の回転方向成分量が影響する。そこで、1つのローラアッセンブリが受ける正回転方向および逆回転方向に作用する成分量とその和、およびそれらから導き出されるいろいろなパラメータである上記いくつかの予圧関連量を引用し、その予圧関連量を変化させるように理論螺旋状歯を修正すれば、その歯付回転体を有する回転伝達装置は確実に回転伝達むらを制御できる。つまり、本修正手法は、理論歯付回転体が噛合する場合の予圧関連量を基に、それらの予圧関連量を補正するための理論螺旋状歯の修正データを作成し、理論螺旋状歯の形状に関するデータとその修正データとの組み合わせによって決定される形状に螺旋状歯を成形するという実用的な手法である。この手法によれば、回転伝達装置の回転伝達むらを、各種修正データに応じた様々な状態に調整することができる。したがって、その修正手法に基づく本項に記載の歯付回転体は、任意に設定した異なる特性を有する種々の回転伝達装置を容易に構成できる歯付回転体となる。なお、この修正手法に従う場合においても、上述のごとく、理論形状データに基づいて一旦理論螺旋状歯に成形し、その後に修正データに基づいてその歯に修正を加えて実際の螺旋状歯に成形するものでもよく、また、上記理論形状データと修正データとを結合させることにより、実際の螺旋状歯の形状データを作成し、そのデータに基づいて直に螺旋状歯に成形するものであってもよい。
(13)前記予圧関連量群が前記最大総予圧成分量和を含み、前記修正データが、その最大総予圧成分量和が前記理論実噛合状態における場合より小さくなるように前記理論螺旋状歯の形状を修正する最大総予圧成分量和減少データを含む(12)項に記載の歯付回転体。
総予圧成分量和は、各回転角度において、ローラ回転体全体が受ける予圧量の回転方向成分のアンバランス量、つまり、正方向の回転トルクと逆方向の回転トルクのアンバランス量を示すパラメータである。したがって、その絶対値の最大値である最大総予圧成分量和を減少させるように修正された螺旋状歯を有する本項に記載の歯付回転体を用いれば、その回転伝達装置は、アンバランスの最大量が減少し、その分、回転伝達むらが減少させられた回転伝達装置となる。
(14)前記予圧関連量群が前記総予圧成分量和を含み、前記修正データが、その総予圧成分量和がステップ的に変化しないように前記理論螺旋状歯の形状を修正する総予圧成分量和急変防止データを含む(12)項または(13)項に記載の歯付回転体。
上述したように、総予圧成分量和は、各回転角度において、ローラ回転体全体が受ける予圧量の回転方向成分のアンバランス量を示すパラメータである。この総予圧成分量和がステップ的に変化する場合、つまり、総予圧成分量和がローラ回転体のある角度において急変する場合、その回転角度において、回転速度が急変する。すなわち、その回転角度において、回転角度の変化がギャップを伴うものとなる。かかる回転速度の急変も回転伝達むらの一因となる。したがって、総予圧成分量和がステップ的に変化しないように修正された螺旋状歯を有する本項に記載の歯付回転体を採用する回転伝達装置は、回転速度が急変しない良好な特性を有する回転伝達装置となる。なお、総予圧成分量和がステップ的に変化する場合の代表例として、ローラアッセンブリの噛み替わりを挙げることができる。平ローラギア式回転伝達装置等による回転伝達においては、ローラ回転体のローラアッセンブリが螺旋状歯に係合しつつ回転移動する。したがって、ローラ回転体のある回転角度位置において、あるローラアッセンブリが係合を開始し、また、ローラ回転体のある回転角度位置において、あるローラアッセンブリが係合を解かれることになる。このようなローラアッセンブリの噛み替わり時には、総予圧成分量和が急変し、回転速度が急変することが多い。したがって、本項に記載の歯付回転体を採用すれば、例えば、ローラアッセンブリの噛み替わり時において、回転速度の急変のない回転伝達が実現される。
(15)前記総予圧成分量和急変防止データが、前記総予圧成分量和が0となる前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても、その直前および直後の総予圧成分量和が最大値あるいは最小値とならないように、前記理論螺旋状歯の形状を修正するものである(14)項に記載の歯付回転体。
ローラアッセンブリの噛み替わりの態様として、例えば、ローラ回転体のある回転角度で、1つのローラアッセンブリが係合を解かれるのと略同時に別の1つのローラアッセンブリが係合を開始するという態様も考えられる。そのような態様のローラアッセンブリの噛み替わりも、上述した総予圧成分量和がステップ的に変化する場合の1つに該当し、その場合、噛み替わり時の直前直後の総予圧成分量和の値は、後に詳しく説明するが、0を挟んで最大値と最小値となることが多い。予圧成分量和が0となる回転角度の直前および直後の総予圧成分量和が最大値あるいは最小値とならないようにすることで、例えばそのような態様において、噛み替わり時において発生する総予圧成分量和の変化を小さくでき、ローラアッセンブリの噛み替わり時期における回転伝達むらを小さくすることができる。
(16)前記予圧関連量群が前記総予圧成分量和を含み、前記修正データが、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においてもその総予圧成分量和が略0となるように前記理論螺旋状歯を修正する総予圧成分量和除去データを含む(12)項に記載の歯付回転体。
上述したように、総予圧成分量和は、各回転角度において、ローラ回転体全体が受ける予圧量の回転方向成分のアンバランス量を示すパラメータである。ローラ回転体のいずれの回転角度においてもその総予圧成分量和が略0となるように修正された形状の螺旋状歯とローラ回転体とを噛合させれば、いずれの回転角度においても予圧量の回転方向成分のバランスが保たれ、極めて回転伝達むらの小さな回転伝達装置が得られる。
(17)前記予圧関連量群が前記総予圧正成分量および前記総予圧負成分量をさらに含み、前記総予圧成分量和除去データが、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても、その総予圧正成分量およびその総予圧負成分量が0とならないように、前記理論螺旋状歯を修正するものである(16)項に記載の歯付回転体。
本項に記載の歯付回転体は、総予圧成分量和が略0となるようにして予圧量の回転方向成分のバランスを確保する上記場合における1つの態様である。ある回転角度において、何らかの理由でローラ回転体と歯付回転体との正規の相対回転角度位置からのずれが生じた場合であっても、その回転ずれを是正しようとする反力が働く。この場合、ローラ回転体全体の予圧の正回転方向の成分と逆回転方向の成分とがともに0でない場合、つまり、2以上のローラアッセンブリが予圧を受けかつ正回転方向および逆回転方向の成分が押し合った状態で均衡するときには、是正する反力の作用が大きく、回転ずれを自己修正する能力が高い。したがって、本項に記載の歯付回転体を採用する回転伝達装置は、総予圧正成分量と総予圧負成分量とが釣り合いを維持して回転伝達し、回転ずれに対する修正能力の高い回転伝達装置となる。
(18)前記予圧関連量群が前記予圧正成分量および前記予圧負成分量をさらに含み、前記総予圧成分量和除去データが、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても、前記ローラアッセンブリの前記螺旋状歯と係合しているものすべての前記予圧正成分量および前記予圧負成分量が略0となるように、前記理論螺旋状歯を修正するものである(16)項に記載の歯付回転体。
本項に記載の歯付回転体は、総予圧成分量和を略0となるようにして予圧量の回転方向成分のバランスを確保する上記場合におけるもう1つの態様である。総予圧成分量和は、同時期に係合するローラアッセンブリのそれぞれの予圧正成分量および予圧負成分量をすべて合計したものである。すべてのローラアッセンブリの予圧正成分量および予圧負成分量が0となる場合は、いずれのローラアッセンブリもまったく予圧を受けていない状態であり、理論歯付回転体と理論ローラ回転体とが理論噛合位置において噛合している状態に近い状態となる。したがって、本項に記載の歯付回転体を採用する回転伝達装置は、回転伝達むらが極めて小さく、スムーズな回転伝達が可能になる。
(19)前記ローラアッセンブリがそれぞれ前記歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する前記ローラ回転体と噛合する(11)項ないし(18)項のいずれかに記載の歯付回転体。
1つのローラアッセンブリが1つのローラを有する場合、そのローラアッセンブリが螺旋状歯の2つの歯山に挟まれて係合するときには、ローラが螺旋状歯の側面上をすべることを避けるべく、その両方の歯山の側面にその1つのローラを当接させることを避けることが望ましい。よって、そのようにする場合、ローラアッセンブリは螺旋状歯のいずれか片方の側面にローラを当接させて係合させることになる。上述したように、ローラアッセンブリと螺旋状歯との間には一定のクリアランスが存在するように設計されることが望ましく、このような設計をした場合、実噛合位置におけるローラ回転体のある回転角度おいては、あるローラアッセンブリのローラがいずれの側面にも当接しない状態となることがある。この状態となる場合は、回転伝達装置の容量負荷が小さくなり、高トルク回転伝達にとっては都合の悪い。したがって、高トルク伝達という目的を考慮した場合は、本項に示したローラ回転体、すなわち、ローラアッセンブリがそれぞれ歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つのローラを有するようなローラ回転体と噛合させ、1つのローラアッセンブリが有する少なくとも1つのローラがいずれかの螺旋状歯のいずれかの側面に当接しつつ回転を伝達する状態をできるだけ維持することが望ましい。ところが、2つのローラを有する上記ローラアッセンブリを有するローラ回転体との噛合においては、そのローラ回転体の予圧に起因して生じる正方向の回転トルクと逆方向の回転トルクとのアンバランスは大きく、かつ、その変化は複雑なものとなる。したがって、予圧量のアンバランスを小さくする方向に修正を施した螺旋状歯を有する上記歯付回転体は、そのようなローラ回転体と噛合させる場合にそのメリットを充分に発揮し、より高トルクの回転伝達が可能でかつその回転伝達むらの小さな回転伝達装置を構成できるものとなる。また、ローラアッセンブリがそれぞれ歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つのローラを有するようなローラ回転体では、歯付回転体とローラ回転体を噛合させて一方向の回転を伝達させる場合、2つのローラのそれぞれが常に一方向に回転する。つまり、一方向の回転伝達において、ローラが正逆転しない。したがって、そのようなローラ回転体を有する回転伝達装置は、ローラの摩耗,発熱の少ない回転伝達装置となるという利点をも有することになる。
2つのローラを有するローラアッセンブリにおいて、それらのローラの位置関係は特に限定されるものではない。互いが干渉せずスムーズに回転できればよく、例えば、1つの支持軸に互いに同軸的に配置されるものであってもよく、あるいは、2つの支持軸にそれぞれ軸支され、両者が平行に配置されるようなものであってもよい。ローラアッセンブリの製造のし易さ、ローラアッセンブリを小型化できる等に鑑みれば、2つのローラが同じ支持軸に支持され、同軸的に配置されることが望ましい。さらに、ローラの大きさについても、製造上の都合を考えれば、2つのローラが同じ径を持つものであることが望ましい。
(20)ウォームホイールとして機能する前記ローラ回転体と噛合し、鼓形ウォームとして機能する(11)項ないし(19)項のいずれかに記載の歯付回転体。
上述したように、上記一連の項に記載した歯付回転体は、鼓形ウォームとしての態様でも、あるいは、グロボイダルカムとしての態様でも実施できる。一方、上記歯付回転体は、回転伝達むらを減少させることを目的としている。これらのことに鑑みた場合、本回転伝達装置は、停留部を有するグロボイダルカムとしての実施、つまり、停止位置精度をより重要視するインデックス装置を構成する態様での実施よりも、連続した回転を伝達する回転伝達装置、つまり、ウォームとしてローラギアと噛合させる態様で実施するほうが、上記一連の歯付回転体の特徴を充分に発揮できることになる。例えば、一定速度の入力側の回転を一定速度の回転として出力側に伝達する減速装置,増速装置等を構成する態様での実施すれば、その減速装置,増速装置等は、回転伝達むらが少なく、回転速度変化の少ない装置となる。
(31)(A)軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、(B)タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備えて前記歯付回転体と噛合するローラ回転体との2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置に用いられ、
前記2つの回転体の少なくとも一方の軸と、その一方の軸を保持する前記回転伝達装置の装置本体との間に設けられ、その一方の軸を軸方向に位置調整可能に保持する軸保持装置であって、
前記少なくとも一方の軸をその軸方向に移動不能に保持する軸保持具と、
その軸保持具から前記軸方向に突出して突出端が前記装置本体の係止部に係止される突出部を有し、その突出部の突出量が調節可能に前記軸保持具に設けられ、その突出量の調節によって前記一方の軸の軸方向位置を調整可能にする軸方向位置調整装置と、
前記軸保持具を前記装置本体の係止部に向かって軸方向に押え付けて固定する軸保持具固定装置と
を含むことを特徴とする軸保持装置。
本項以下一連の項に記載する軸保持装置は、(1)項に記載した回転伝達装置において採用可能な軸保持装置であって、歯付回転体およびローラ回転体をその回転伝達装置の装置本体に保持するための軸保持装置である。上述したローラギア式回転伝達装置、ローラタレット式インデックス装置等においては、バックラッシが少なく、正確な回転伝達を可能とする。しかし、そのためには、歯付回転体とローラ回転体との相対位置を適正なものとしなければならず、両者の回転軸線間距離のみならず、両者のそれぞれの回転軸線方向の位置も、適正な両者の噛合のために重要となる。本項以下に記載の軸保持装置は、歯付回転体あるいはローラ回転体の軸方向の位置調整を簡便に行い得ることを目的とする。
歯付回転体あるいはローラ回転体の軸をその軸方向に位置調整可能に回転伝達装置の装置本体に保持するための軸保持装置は、後に図を用いて説明するように、例えば、主に、(a)その軸をその軸方向に移動不能に保持し、フランジ部を有する軸保持具と、(b)そのフランジ部と回転伝達装置の装置本体の係止部との間に介装されるスペーサと、(c)そのフランジ部をその装置本体の係止部に向かって軸方向に押え付けて固定する軸保持具固定装置とを含んでなるように構成することができる。この態様の軸保持装置においては、軸の軸方向位置の調整は、スペーサの厚さを変更させることによって行うことができる。しかし、本回転伝達装置における歯付回転体およびローラ回転体の軸の調整は非常にシビアに行わなければならず、場合によっては、軸を組付けて固定してからその位置を確認し、正確な位置を決定するために、一旦軸の固定を解き調整して再び固定し直すといった一連の作業を何度も繰り返すトライ・アンド・エラー方式の位置調整を行わなければならないことも多くある。かかる位置調整において、上記構成の軸保持装置では、調整の都度スペーサを取り外してその厚さを変更させなければならない。しかし、装置本体の狭いスペースに軸保持装置が配設されるような場合にあっては、軸保持具を取り外さない限り容易にスペーサが取り外せないような状況も考えられ、その場合、それらの軸の軸方向位置の調整は、煩雑な作業を強いられ、また、精度よく位置調整を行うことが困難となる。
本項に記載の軸保持装置では、軸の軸方向における装置本体に対する位置を調整するための手段として、軸保持具から前記軸方向に突出して突出端が前記装置本体の係止部に係止される突出部を有し、その突出部の突出量が調節可能に前記軸保持具に設けられ、その突出量の調節によって前記一方の軸の軸方向位置を調節可能にする軸方向位置調節装置を採用する。突出部の突出量によって軸保持具の装置本体に対する位置が決定され、軸はその軸方向に移動不能に軸保持具に保持されていることから、その軸の装置本体に対する軸方向位置が決定される。突出部は、その突出量が調節可能となっており、突出量の調節により、軸方向位置の調整が可能となっている。上記スペーサを用いる軸保持装置と異なり、軸保持具と係止部との間に介装されたスペーサを交換するという煩雑な作業を行うことがないため、本項記載の軸保持装置では、軸の軸方向位置の調整を簡便に行うことができる。
本項の軸保持装置に保持される軸は、上記軸保持具に回転可能に保持されるものであってもよい。その場合は、その軸保持具は軸受を含んで構成すればよく、その軸に支持される歯付回転体あるいはローラ回転体は、その軸に回転不能に支持されるか、または、歯付回転体あるいはローラ回転体が軸と一体構造となるようなものであればよい。また、上記軸は、上記軸保持具に回転不能に保持されるものであってもよく、その場合は、歯付回転体あるいはローラ回転体は軸受を介してその軸に回転可能に支持されるものであればよい。
なお、本項の軸保持装置において、突出端が係止部に係止される突出部の数は、特に限定されるものではないが、係止部における係止箇所が一直線上にない3箇所以上とし、これらの突出量を調節することにより、装置本体に対する軸の傾きをも適正に調整することが可能となる。また、突出部の突出端が係止部に係止される場合において、その突出端が係止部に直接当接して係止されるのであってもよく、突出端と係止部との間に何らかのものを介在させて、間接的に当接して係止されるのであってもよい。
(32)前記軸保持具が、内周面と外周面とがそれぞれの中心軸が平行でかつ互いに偏心した偏心円筒部を有し、その偏心円筒部の内周面に前記一方の軸を嵌入させてその軸を保持し、その偏心円筒部の外周面が前記装置本体に形成された取付穴に嵌入して固定されるものであり、
前記保持具をその外周面の中心軸のまわりに回転させることにより、前記軸の軸直角方向の位置を調整可能な(31)項に記載の軸保持装置。
上述したように、本回転伝達装置では、歯付回転体とローラ回転体との微妙な噛合位置の調整が必要となる。その位置調整は、両者のそれぞれの回転軸線方向のみならず、回転軸線に直角な方向においても重要になる場合も多い。本項に記載の軸保持装置では、軸保持具が偏心円筒部を有するように形成され、上記のように、その偏心円筒部において軸を保持し、その回転によって軸の軸直角方向の位置が調整可能であり、歯付回転体とローラ回転体との噛合位置の調整がさらに簡便に行える軸保持装置となる。
(33)前記軸保持具が、前記装置本体の係止部と向かい合う環状のフランジ部を有し、
前記軸方向位置調整装置が、
前記フランジ部の周辺部に前記一方の軸を取巻くように配置された複数の雌ねじ穴と、
その複数の雌ねじ穴にそれぞれ螺合して固定され、その一部が前記フランジ部の前記係止部と向かい合うフランジ対向面から突出して先端が前記係止部に係止される前記突出部となり、それぞれが回転させられることにより前記突出量が調節される複数の雄ねじ部材と
を含む(31)項または(32)項に記載の軸保持装置。
本項記載の軸保持装置は、平たく言えば、軸保持具にフランジが形成されており、そのフランジは複数の雌ねじ穴が形成されており、例えばボルトのような雄ねじ部材をねじ込んでその突出量を調節することにより、軸保持具と装置本体との位置が調整される構造となっている。ねじによる調節を採用するため、本項に記載の軸保持装置では、微妙な位置調整が容易に行い得る。
なお、フランジに形成される雌ねじ穴が貫通穴であり、雄ねじ部材のフランジ対向面から突出する突出部の突出量が、フランジ対向面の反対側の面であるフランジ背向面側から調節可能となる態様とすることが望ましい。この態様は、具体的には、雄ねじ部材を例えばボルトとし、そのボルトをフランジ背向面側からねじ込んで、その頭を回すことによってボルト先端の突出量を調節する態様が例示できる。かかる態様の本項に記載の軸保持装置は、フランジ背向面側から突出量の調節ができることから、いちいち軸保持具を取り外す等せずに軸の軸方向位置を調整でき、簡便な調整が可能となる。
(34) 前記軸方向位置調整装置が、
前記雄ねじ部材の各々が、前記突出部の反対側である後端部に前記フランジ対向面と反対側の面であるフランジ背向面と係合する頭部を有し、前記フランジ部を貫通して固定されたものであり、
前記雄ねじ部材の各々の頭部と前記フランジ背向面との間に介装され、厚さが変更されることにより前記雄ねじ部材の各々の前記突出部の突出量が調節される突出量調節部材を含む(33)項に記載の軸保持装置。
本項に記載の軸保持装置は、突出部の突出量の調節に特徴を有する。本項の態様は、例えば、ボルトを雄ねじ部材として採用する場合を例にとって説明すれば、ボルトをフランジ部を貫通して先端が対向面から突出するように取付け、そのボルトの頭部とフランジとの間にカラーのような部材を介在させて、そのボルトの突出量を調節することができるようにした態様である。フランジの背向面側から突出量の調節が可能であることから、上記軸保持具を取り外すことなく簡便に軸の位置調整が可能となる。本項の態様において、フランジ背向面が装置本体の係止部から一定の距離をおくように形成され、かつ、雄ねじ部材の頭部を除く長さが統一された態様を採用すれば、より簡便な位置調整が可能となる。そして、それぞれの雄ねじ部材の頭部に介装される突出量調整部材の厚さを一定にすれば、容易に、軸の装置本体に対する配設角度を一定に保つことができる。
(35)前記軸方向位置調整装置の突出部の突出端と前記装置本体の係止部との間に介装されてその係止部の損傷を防ぐための損傷防止部材を含む(31)項ないし(34)項のいずれかに記載の軸保持装置。
軸方向位置調整装置の上記突出部は、その突出端が装置本体の係止部に直接当接して係止されるものであってもよい。しかし、本軸保持装置では、上記軸保持具固定装置の力によって、その突出端が係止部に押し付けられる。したがって、係止部に傷が付く可能性があり、傷の発生によって軸の位置精度が悪くなることも考えられる。本項記載の軸保持装置では、係止部の損傷を防ぐための損傷防止部材が介装された構成を採用することから、係止部が傷付くことが少なく、安定した軸の位置精度が達成される軸保持装置となる。
(36)前記損傷防止部材が焼入処理された鋼鈑である(35)項に記載の軸保持装置。
損傷防止部材は、板状の部材を使用すればよい。焼き入れ処理された鋼鈑は、高硬度であり、比較的安価であることから、好適な損傷防止部材となる。
(37)前記歯付回転体が略鼓状をなし、その歯付回転体と前記ローラ回転体とが互いの回転軸線とが立体交差させられて配設される回転伝達装置に用いられる(31)項ないし(36)項のいずれかに記載の軸保持装置。
歯付回転体を鼓形ウォームあるいはグロボイダルカムとし、ローラ回転体を平ローラギアあるいは平ローラタレットとし、両者を噛合してなる回転伝達装置は、複数のローラアッセンブリが同時期に螺旋状歯に係合するものが多く、そのため歯付回転体とローラ回転体との噛合位置はシビアに調整されることが望まれる。その調整が困難を伴うことに鑑みれば、本軸保持装置をかかる回転伝達装置の軸保持装置として用いるときには、軸方向の位置調整を簡便に行い得るという本保持装置の効果が充分に発揮されることになる。
(38)前記ローラアッセンブリがそれぞれ前記歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する(31)項ないし(37)項のいずれかに記載の軸保持装置。
2つのローラを有する上記ローラアッセンブリは、螺旋状歯の歯山に挟まれて係合する状態となり得る。その状態においては、歯付回転体とローラ回転体との噛合位置はシビアに調整されることが要求される。したがって、かかるローラアッセンブリを有するローラ回転体を採用する回転伝達装置の軸保持装置として本軸保持装置を用いるときには、上記効果が充分に発揮されることになる。
(39)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールとして機能するローラギアである(31)項ないし(38)項のいずれかに記載の軸保持装置。
歯付回転体をウォームとする回転伝達装置は、連続した回転を伝達するものであり、より正確な回転伝達が望まれる。したがって、歯付回転体とローラ回転体との噛合位置の調整をより精度よく行う必要があることから、かかる回転伝達装置に本軸保持装置を用いれば、上記効果が充分に発揮される。
(51)軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体と、
タレットと、前記螺旋状歯の側面に当接する少なくとも1つのローラを有してそのタレットの外周部に保持されて前記螺旋状歯に係合する複数のローラアッセンブリとを備え、前記歯付回転体と噛合するローラ回転体と
の2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置に用いられ、
前記2つの回転体の少なくとも一方と、その少なくとも一方を回転可能に支承する前記回転伝達装置の装置本体の支承部との間に設けられ、当該回転伝達装置の回転伝達停止時にその少なくとも一方の回転を防止する回転防止装置であって、
前記2つの回転体の少なくとも一方と前記支承部との互いに対面する外周面と内周面との一方の少なくとも一部と隙間を隔てて配設され、内部に流体が充填され、その流体の圧力により膨張変形する変形部を有する膨張変形体と、
前記流体を加圧する流体加圧装置と
を含み、
前記外周面と内周面との一方の少なくとも一部が、前記流体が前記流体加圧装置で加圧されることにより、前記変形部が圧接する被圧接面部となり、
前記被圧接面部と前記変形部との間に発生する摩擦力により、前記2つの回転体の少なくとも一方の回転を防止する回転防止装置。
本項以下一連の項に記載の回転防止装置は、(1)項に記載した回転伝達装置において採用可能な回転防止装置であって、回転伝達停止時において、歯付回転体とローラ回転体との少なくとも一方の回転体の回転を防止するための装置である。前述したように、本回転伝達装置は、正確な回転伝達が達成される装置であるが、常に回転を伝達しつづける用途にのみ供されることは少なく、その多くは、回転を一時停止して、その回転停止中に何らかの作業等が行われるという用途に供される。したがって、正確な回転伝達がなされるということは、広義には、停止する際あるいは停止している間に、その停止位置が正確であることも含まれる。本回転伝達装置では、ローラが当接することによって係合することから、その係合部分に摩擦力が発生せず、一方の回転体の回転は他方の回転体にスムーズに伝達する。このことは逆に、回転停止の際に、いずれかの回転体に外力が加わる場合、詳しくは、その回転体に駆動源以外の回転トルクが加わった場合、その回転トルクが他方の回転体に容易に伝達されることになる。例えば、入力側となる一方の回転体を駆動モータで駆動させる場合を考えれば、回転停止中に出力側の回転体に何らかの回転トルクが加えられれば、それが入力側に伝達されることになり、その駆動モータがブレーキ付きのモータである場合であったとしても、そのブレーキの作用によってでしか回転を防止することができない。このような状況を考慮すれば、より確実な回転防止装置を設けることが望まれる。本項を始めとする以下の一連の項に記載の回転防止装置は、上記実情に鑑み、上記回転伝達装置において、回転伝達停止時における回転体の回転を効果的に防止可能な回転防止装置を得ることを目的とするものである。
本項に記載の回転防止装置は、わかりやすく言えば、回転体をクランプ,チャック等することによって、その回転体の回転を防止するものである。流体圧によって変形する膨張変形体は、上記回転体とその回転体を回転可能に支承する装置本体の支承部との間に配設され、その変形によって、回転体をチャック,クランプ等する機能を果たすものである。本項に記載の回転防止装置は、流体圧を利用するため、均等にクランプ等することができ、回転体がズレることなく、回転体の停止位置精度が良好である。つまり、回転体の回転を効率よく防止することができる。
なお、本項を始めとする以下の一連の項に記載する回転防止装置においては、回転体が固定する軸に回転可能に支承される場合は、その軸が回転伝達装置の装置本体の支承部となるものとする。逆に、回転体と軸とが回転不能に固定され、その軸が装置本体の支承部に回転可能に支承される場合、その軸は回転体の一部となるものとする。前者の場合、膨張変形体は回転体の内周面と軸の外周面との間に配設されればよく、後者の場合、膨張変形体は、装置本体の支承部と軸との間に配設されればよい。
膨張変形体は、その形状,配設される数量等が特に限定されるものではない。また、膨張変形体は、支承部側に取付けられて、上記変形部が回転体側の被圧接面を加圧してその面に接するものでもよく、逆に、回転体側に取付けられて、上記変形部が支承部側の被圧接面を加圧してその面に接するものであってもよい。流体加圧装置と膨張変形体との流体の導通等に考慮すれば、膨張変形体が支承部側、つまり、回転しない側に取付けられる場合のほうが、簡単な構造となる。加圧流体はその種類が限定されるものではなく、空気等の気体、油等の液体等を用いることができる。大きな回転防止トルクが得られるという観点からすれば、流体は、油等の液体であることが望ましく、その場合は、油圧ユニット等を流体加圧装置とし、膨張変形体と流体加圧装置との間を油圧配管等によって接続すればよい。なお、膨張変形体は、その内部に流体が充填されるものではあるが、その場合の内部とは、膨張変形体内に区画される空間内部のみを意味するものではなく、例えば、上記支承部あるいは回転体に取付けられる場合、膨張変形体とそれが取付けられる部分との両者によって区画される空間内部であってもよい。つまり、膨張変形体が略閉鎖された空間を有する態様だけでなく、膨張変形体が開口した空間を有し、その開口が取付けられる部分に密着することで閉鎖空間を形成する態様をも含むことを意味する。
(52)前記被圧接面部に凸所と凹所との少なくとも一方が形成され、膨張変形により前記膨張変形体の前記変形部の少なくとも一部が前記凸所と凹所との少なくとも一方と係合する(51)項に記載の回転防止装置。
膨張変形体の変形部が圧接して摩擦力が発生する部分である被圧接面部に凸所あるいは凹所を形成すれば、圧接する変形部の一部がその凸所あるいは凹所に食い込むような状態で係合し、その部分により大きな摩擦力が生じることになる。したがって、本項に記載の回転防止装置は、上記凸所あるいは凹所の作用により、回転防止トルクの向上が図られることで、回転体の回転をより効果的に防止することができる。
(53)前記ローラ回転体の回転を防止する(51)項または(52)項に記載の回転防止装置。
本回転防止装置によって回転を防止される回転体は、歯付回転体であってもよく、また、ローラ回転体であってもよい。さらに、1つの回転伝達装置に2つの本回転防止装置を設置して、それら両者の回転を防止するように回転伝達装置を構成することもできる。本回転伝達装置は、前述したように、鼓形ウォームとなる歯付回転体と平ローラギアであるローラ回転体との組み合わせを始めとした種々の態様の装置が考えられる。そしてその多くは、ローラ回転体が歯付回転体と比較して大径である態様となる。そのような態様においては、いずれかの回転を防止するのであれば、小さな圧接力で大きな回転防止トルクが得られるという理由から、大径である側の回転を防止するほうがより効果的である。また、多くの態様が、歯付回転体を入力側回転体とし、ローラ回転体を出力側とする態様となる。回転停止時に外部からの回転トルクが加わるときは、その外力は出力側に加わるのが一般的であり、その場合は、出力側の回転を防止するほうがより効果的である。そのような観点からすれば、ローラ回転体の回転を防止する本項に記載の回転防止装置は、特に有効な装置であるといえる。
(54)前記ローラ回転体の前記タレットが、概して円筒形状をなし、
前記装置本体の支承部が前記タレットの内周側に挿入されてそのタレットを支承するものであり、前記タレットの内周面および前記支承部の外周面がそれぞれ前記対面する内周面および外周面である(53)項に記載の回転防止装置。
上述したように、ローラ回転体は、比較的大径である。そのようなローラ回転体では、ローラアッセンブリを外周部に保持するタレットは円筒形状に形成されることが多く、その内周側に軸状の支承部が挿入されて、その支承部の外周面とタレットの内周面が対面して、ローラ回転体が支承されることが多い。したがって、本項に記載の回転防止装置は、利用価値が高いものとなる。
(55)前記膨張変形体が、前記支承部の外周面の少なくとも一部に支持され、前記タレットの内周面の少なくとも一部が前記被圧接面部となる(54)項に記載の回転防止装置。
上述した理由から、膨張変形体は、支承部に固定され、変形部が回転体に存在する被圧接面部に圧接する態様が望ましい。タレットの内周面の一部を被圧接面部としてローラ回転体の回転を防止する本項に記載の回転防止装置は、実用性の高い回転防止装置となる。
(56)凸所と凹所との少なくとも一方が、前記タレットの外周面と内周面とで区画されるタレット壁を径方向に貫通する複数の貫通穴として前記被圧接面部に形成され、
前記膨張変形体が、環状をなし、内周面が前記支承部の外周面に支持され、外周面の少なくとも一部が前記変形部となって前記複数の貫通穴のすべてに係合する(55)項に記載の回転防止装置。
凸所あるいは凹所を被圧接面部に形成するメリットは前述したとおりである。タレットの内周面の一部を被圧接面部とする上記態様においてタレット壁に貫通穴を設けてその一部を凹所とすることは、比較的低コストに行える。そして、膨張変形体が支承部の外周を取巻く環状のものとし、変形部がすべての貫通穴に係合するようにすれば、ローラ回転体のいずれの回転角度においてもその回転が効果的に防止できることになる。したがって、本項に記載の回転防止装置は、実用的であり、かつ、効果的な回転防止装置となる。
(57)前記ローラアッセンブリは、前記ローラを支持する支持部とスタッド部とを有するローラ軸を含み、
前記スタッド部が前記貫通穴に嵌合された(56)項に記載の回転防止装置。
タレットは、その外周部に複数のローラアッセンブリを保持する。また、ローラアッセンブリは、ローラが回転可能に支持されている。したがって、ローラを支持するためのローラアッセンブリのローラ軸を凹所形成のための貫通穴に保持させれば、この貫通穴は、2つの機能を果たすことになる。したがって、本項に記載の回転防止装置は、製造コストが削減された回転伝達装置において好適に採用できる回転防止装置となる。
(58)前記歯付回転体が略鼓状をなし、その歯付回転体と前記ローラ回転体とが互いの回転軸線とが立体交差させられて配設される回転伝達装置に用いられる(51)項ないし(57)項のいずれかに記載の回転防止装置。
前述したように、かかる態様の回転伝達装置は、同時期に係合するローラアッセンブリの数を多くでき、高トルク回転伝達の用途に供されることが多い。一般的に、かかる回転伝達装置は、回転停止時に外部から大きな回転トルクが加わることが多いため、上記一連の項に記載した回転防止装置は、本項に記載された態様の回転伝達装置に好適である。
(59)前記ローラアッセンブリがそれぞれ前記歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する(51)項ないし(58)項のいずれかに記載の回転防止装置。
上記同様に、このような回転伝達装置は、ローラアッセンブリは、螺旋状歯の歯山に挟まれて係合する状態となり得るため、やはり、高トルクの回転を伝達するための用途に供されることが多い。したがって同様に、上記一連の項に記載した回転防止装置は、本項に記載された態様の回転伝達装置に好適である。
(60)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールとして機能するローラギアである(51)項ないし(59)項のいずれかに記載の軸保持装置。
歯付回転体をウォームとする回転伝達装置は、連続した回転を伝達するものでありより正確な回転伝達が望まれる。例えば歯付回転体をカムとするインデックス装置の場合と異なり、回転停止時において外部からの力により回転位置がずれる可能性は高い。したがって、上記一連の項に記載した回転防止装置を本項に記載の態様の回転伝達装置に用いれば、効果的に回転を防止できるという利点が充分に発揮されることになる。
(71)(31)項ないし(36)項に記載のいずれかに記載の軸保持装置と、(51)項ないし(57)項のいずれかに記載の回転防止装置との少なくとも一方を含む(1)項に記載の回転伝達装置。
(72)前記歯付回転体が略鼓形をなし、その歯付回転体と前記ローラ回転体とが互いの回転軸線とが立体交差させられて配設された(1)項または(71)項に記載の回転伝達装置。
(73)前記歯付回転体が(11)項ないし(18)項のいずれかに記載の歯付回転体であり、その歯付回転体と前記ローラ回転体とが前記実噛合位置で噛合させられた(72)項に記載の回転伝達装置。
(74)前記ローラアッセンブリがそれぞれ前記歯付回転体の螺旋状歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する(1)項および(71)項ないし(73)項のいずれかに記載の回転伝達装置。
(75)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールとして機能するローラギアである(1)項および(71)項ないし(74)項のいずれかに記載の回転伝達装置。
ここに掲げた一連の項は、(1)項に記載する回転伝達装置の様々なバリエーションにおいて、先に掲げた歯付回転体,軸保持装置,回転防止装置の少なくともいずれかを採用することにより、実施可能な各種態様の回転伝達装置の構成について示すものである。先に掲げた各項に示すそれぞれの歯付回転体,軸保持装置,回転防止装置のいずれかを採用すれば、その項において説明したそれぞれの利点を享受でき、また、それぞれの効果を充分に発揮できる多様な回転伝達装置を構成することができる。例えば、適切な態様の回転伝達装置を構成すれば、回転角度誤差が数秒以内という高精度な回転伝達が実現される。また、回転速度の変化を極めて小さくできるだけでなく、任意の回転角度位置に高精度に停止させることも可能であり、先に挙げた種々の機器の回転伝達精度を飛躍的に向上させることができる
(81)歯付回転体とその歯付回転体と噛合するローラ回転体との2つの回転体を含み、それら2つの回転体の一方の回転を他方に伝達する回転伝達装置の製造方法であって、
軸方向に並ぶ複数の歯山を形成する1条以上の螺旋状歯を外周部に有する歯付回転体を準備する歯付回転体準備工程と、
前記歯付回転体の歯の側面に当接してその歯に係合する少なくとも1つのローラを有する複数のローラアッセンブリを準備するローラアッセンブリ準備工程と、
外周部において前記複数のローラアッセンブリを保持するタレットを準備するタレット準備工程と、
前記複数のローラアッセンブリの一部である複数のものを前記タレットに組付け、半組付ローラ回転体を得る第1ローラアッセンブリ組付工程と、
その第1ローラアッセンブリ組付工程において組付けた前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う第1ピッチ調整工程と、
その半組付ローラ回転体と前記歯付回転体とを互いに適正に噛合する正規位置に位置決めして配設する歯付回転体およびローラ回転体配設工程と、
前記複数のローラアッセンブリの残部である少なくとも1つのものを前記タレットに組付け、全組付ローラ回転体を得る第2ローラアッセンブリ組付工程と、
第2ローラアッセンブリ組付工程において組付けた前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う第2ピッチ調整工程と
を含むことを特徴とする回転伝達装置の製造方法。
本項を始めとする以下の一連の項に記載の製造方法は、(1)項に記載の回転伝達装置の製造方法であって、主に、ローラ回転体へのローラアッセンブリの組付けと歯付回転体とローラ回転体との正規位置への配設に関するものである。前述したように、本回転伝達装置は、バックラッシがないかあるいは極めて小さく、正確な回転伝達が可能な装置である。正確な回転伝達を可能にするには、ローラアッセンブリのローラと歯付回転体の螺旋状歯とのクリアランスをできるだけ小さな量で一定にすることが望ましく、そのために、歯付回転体の螺旋状歯の寸法精度,各ローラの寸法精度,各ローラアッセンブリの配設ピッチの精度等を高くした上、歯付回転体とローラ回転体とを正確な噛合位置へ精度よく配設する必要がある。しかし、クリアランスが小さいことから、この歯付回転体とローラ回転体との配設作業は困難を伴う。一方、本回転伝達装置への要望は、正確な回転伝達ができることにとどまらず、高トルクの回転をも正確に伝達できることをも望まれる場合がある。かかる高トルク伝達を目的とする回転伝達装置は、歯付回転体に一時期に係合するローラアッセンブリの数を多くすることによって実現することができる。しかし、ただでさえ困難を伴う上記配設作業は、特に、係合するローラアッセンブリ数の多いローラ回転体と歯付回転体とを正規の噛合位置において噛合させる場合に、さらなる困難を伴い、また、形状によっては噛合自体が不可能である場合さえある。それらのことを考えれば、本回転伝達装置の製造においては特別な配慮が必要となる。本項を始めとする以下の一連の項に記載する製造方法は、正確な回転伝達が可能な装置を得ることができる製造方法において、ローラ回転体へのローラアッセンブリの組付けに工夫を凝らすことにより、歯付回転体とローラ回転体との正規位置への配設を容易し、回転伝達精度の高い回転伝達装置を簡便に製造できる製造方法を得ることを目的とする。
本項に記載の製造方法は、ローラアッセンブリのタレットへの組付を2つの工程に分け、その1つの工程を歯付回転体とローラ回転体との正規位置への配設の前に行い、もう1つの工程を配設後に行うことを1つの特徴とする。つまり、両者の正規位置への配設に支障をきたさない程度に、まず一部のローラアッセンブリを組付け、正規位置配設後に残るローラアッセンブリの組付けを行うのである。上述したように、すべてのローラアッセンブリを組付けたローラ回転体と歯付回転体とを噛合させる場合、クリアランスの小さな状態での両者の正規位置への配設は極めて困難である。両者の配設に影響を与えない程度にローラアッセンブリを組付けた半組付ローラ回転体は、歯付回転体との噛合が容易に行える。もう1つの特徴は、先に組付けたローラアッセンブリのピッチ調整を、歯付回転体とローラ回転体とを配設する前に行うことにある。つまり、ピッチ調整が略完了した状態の半組付ローラ回転体を、歯付回転体とともに正規位置に配設することにある。本製造方法において、第1ピッチ調整工程は、その行う場所が特に限定されるわけではない。ローラ回転体のローラアッセンブリの配設ピッチは、正確な回転伝達を行う上で極めて重要であり、でき得る限り正確であることが望ましい。回転伝達装置はコンパクトに設計されるのが実情であり、正確なピッチ調整を実機の中で行うことは困難を伴う場合も多い。このような場合にあっては、先に取付けたローラアッセンブリのピッチ調整を、実機外で行えば、容易にまた迅速に行うことができる。また、先に組付けたローラアッセンブリのピッチ調整を、歯付回転体とローラ回転体とを配設する前に行えば、上記実情に鑑みた場合、ピッチ調整工程の自由度が拡大する。以上代表的な特徴について説明したが、かかる特徴を有する本製造方法によれば、その特徴によるメリットを充分に活かして、回転伝達精度の高い回転伝達装置を簡便に製造できる。
なお、構成部品となる歯付回転体,ローラアッセンブリおよびタレットは、回転伝達装置を組付けて完成させるメーカが自身で製造を行うものであってもよく、また、他に製造させるものであってもよい。本項でいう「歯付回転体準備工程」,「ローラアッセンブリ準備工程」および「タレット準備工程」は、前者の場合、それぞれのものを製造して準備する工程となり、後者の場合は、それぞれのものを購入して準備する工程となる。以下の項においても、同様に解釈するものとする。
(82)前記歯付回転体が略鼓形をなすものであり、
前記歯付回転体およびローラ回転体配設工程が、前記歯付回転体および前記ローラ回転体をそれぞれ互いに立体交差する回転軸線のまわりに回転可能に配設する工程を含む(81)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
本項に記載の製造方法は、歯付回転体が鼓形ウォームあるいはグロボイダルカムとなり、ローラ回転体がそれと噛合する平ローラギアあるいは平ローラタレットとなる態様の回転伝達装置、つまり、平ローラギア式回転伝達装置,平ローラタレット式インデックス装置等を製造する際に適用される方法である。前述した理由から、そのような2つの回転体の正規位置での噛合は、ローラアッセンブリがすべて組付けられた状態で行う場合、極めて困難である。したがって、かかる態様の回転伝達装置の製造において本製造方法を適用することは、その効果が大きい。
(83)前記ローラアッセンブリ準備工程において、それぞれ前記歯付回転体の歯の異なる側面に当接する2つの前記ローラを有する前記ローラアッセンブリを準備する(81)項または(82)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
このような態様のローラアッセンブリを有する回転伝達装置の場合、前述したように、係合するローラアッセンブリにおいて、それが有するいずれかのローラが常に歯付回転体の螺旋状歯に当接している。そのため、極めてバックラッシが少なく正確な回転伝達が可能であるが、その分クリアランスが小さくなり、ローラ回転体と歯付回転体の正規位置での噛合が困難となる。したがって、かかる態様の回転伝達装置の製造において本製造方法を適用することは、その効果が大きいものとなる。
(84)前記歯付回転体がウォームであり、前記ローラ回転体がウォームホイールとして機能する回転伝達装置を製造する(81)項ないし(83)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本項に記載の態様の回転伝達装置は、連続した回転を伝達するための装置であり、例えばカムを用いたインデックス装置等と異なり、ローラ回転体のいずれの回転位置においても正確な回転伝達を要求される。したがって、ローラ回転体と歯付回転体との噛合位置がより正確であることが望まれる。一部のローラアッセンブリを組付けていない状態のローラ回転体を正規位置に配設する本製造方法は、2つの回転体の配設が容易であるため、高い精度で両者を配設できることから、そのような態様の回転伝達装置の製造に好適である。
(85)前記回転伝達装置として、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記ローラアッセンブリの2つ以上が前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれるものを製造する(81)項ないし(84)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
常に2つ以上のローラアッセンブリが歯山に挟まれる場合、すべてのローラアッセンブリを組付けたローラ回転体は、歯付回転体と噛合させて正規位置に配設することが困難である。特に、ローラ回転体が円筒形状のローラを有するものであって、歯付回転体が鼓形ウォーム,グロボイダルカム等である場合には、すべてのローラアッセンブリを組付けた状態でのそれらの噛合は、略不可能に近い。したがって、本態様の回転伝達装置への本製造方法の適用価値は極めて高いものとなる。
(86)前記第1ローラアッセンブリ組付工程において、前記ローラ回転体のいずれの回転角度においても前記歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれる数と同数以上の互いに隣接する前記ローラアッセンブリを除くものを組付ける(81)項ないし(85)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本製造方法において、第1ローラアッセンブリ組付工程において組付けるローラアッセンブリの数は特に限定されるものではない。一時期に螺旋状歯に係合するローラアッセンブリの存在が、ローラ回転体と歯付回転体との正規位置への配設に影響を与えることに鑑みれば、それらのローラアッセンブリのすべてを除いて半組付ローラ回転体とすれば、両者の配設は極めて容易になる。一時期に係合するローラアッセンブリのうち、歯山に挟まれずに係合するもの、つまり、歯山の片側にのみ係合するものは、両者の配設に対して与える影響は小さい。これに対し、歯山に挟まれるものは、両者の正規位置への配設を大きく阻害する。したがって、いずれの回転角度においても歯付回転体の互いに隣接する歯山に挟まれる数と同数以上の互いに隣接するローラアッセンブリを除いた半組付ローラギアであれば、ローラ回転体と歯付回転体の正規位置での噛合は容易に行える。なお、両者の配設前により多くのローラアッセンブリのピッチ調整を行うほうが、作業性および精度の両面で優れるという観点からすれば、第1ローラアッセンブリ組付工程において、歯山に挟まれる数と同数の互いに隣接するローラアッセンブリを除くすべてのローラアッセンブリを組付けることが望ましい。
(87)前記第1ピッチ調整工程が、軸方向に少なくとも1つの歯山を形成する螺旋状のダミー歯を外周部に有するダミー歯付回転体を前記歯付回転体とは別に準備し、前記半組付ローラ回転体とそのダミー歯付回転体とを噛合させ、それら半組付ローラ回転体とダミー歯付回転体との一方に回転角度検出装置を取付け、他方を回転させることにより前記一方を回転させ、前記回転角度検出装置によって検出される前記一方の回転角度が適正角度となるように、第1ローラアッセンブリ組付工程において組付けた前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う工程を含む(81)項ないし(86)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本製造方法において、ローラアッセンブリのピッチ調整の方法は特に限定されるものではない。通常、ローラアッセンブリはタレットの外周部にローラ回転体の回転軸線を中心とした一円周上の位置に等間隔で配設される。その場合は、それぞれ隣接するローラアッセンブリのローラ間の間隔が一定の間隔となるように行う(厳密には、隣接するローラアッセンブリの配設角度が一定となるように行う)。回転伝達精度の良好な装置とするためには、隣接するローラアッセンブリの各配設角度差が殆ど0となる程度までローラアッセンブリのピッチの調整を行うことが望ましい。
ローラアッセンブリのピッチ調整は、実機内において行うものであってもよいが、上述した理由から、煩雑なものとなる。本製造方法においては、第1ピッチ調整工程は、実機外で行えることから、例えば、いわゆる3次元測定器,光学的測定装置,画像処理装置等の測定装置を用い、それぞれのローラアッセンブリの位置データを得、そのデータを基にそれぞれの位置調整を行ってもよい。そのような方法に代わる実用的な方法として、本項に記載の方法を採用することができる。つまり、何らかの基準となる回転体(本項にいう「ダミー回転体」)を半組付ローラ回転体と噛合させ、それぞれの回転体の回転角度の関係を適正化すべく、組付けられたローラアッセンブリのピッチの調整を行うのである。例えば、それぞれの回転軸線が正規位置となるように2つの回転体を配設可能な専用の調整器にそれぞれの回転体を取付け、例えば、一方の回転体を正確に所定の回転角度だけ回転させ、他方の回転角度がその一方の所定回転角度に対応する正確な値となるように、ローラアッセンブリのピッチ調整を行うのである。
一例を示せば、以下のようになる。1条の螺旋状歯を有する歯付回転体は、それが1回転するときに噛合するローラ回転体のローラアッセンブリが1つ分だけ回転方向に送られるように形成されることが多い。例えば、このような螺旋状歯を有するダミー回転体を用いる場合には、ダミー回転体の1回転に対応するローラ回転体の移動ピッチ角度は、ローラアッセンブリの配設ピッチ角度と等しくなる。そこで、そのようなダミー回転体に例えばサーボモータ等を取付け、半組付ローラ回転体には例えばエンコーダ装置等の回転角度検出装置を取付けて、ダミー回転体を正確に1回転させ、それに対応するローラ回転体の移動ピッチ角度を測定し、その値が正確な値となるように、組付けたローラアッセンブリのそれぞれのピッチ調整を順次行い、順次固定すればよい。
ダミー回転体は、1条の螺旋状歯を有するものに限定されるわけではない。また、回転角度を検出する側の回転体をダミー回転体とし、このダミー回転体の回転角度が正確な値となるように、ローラアッセンブリのピッチ調整を行うものであってもよい。いずれかの回転体を正確に回転させる必要がある場合、その手段は、上記のサーボモータに限らず、例えば後に詳しく説明するような、位置決めピン等の機械的な機構を利用するもの等、所定角度だけ正確に回転可能な他の手段を採用するものであってもよい。また、基準となる所定角度も1回転(360゜)に限られず、それ以外の任意の所定角度であってもよい。さらに、回転角度検出装置についても、エンコーダに限られず、正確に回転角度が検出測定できる種々の手段を採用することができる。
(88)前記ダミー歯付回転体が、前記ローラ回転体の殆どすべての回転角度において、互いに係合する前記ローラアッセンブリの数と前記ダミー歯付回転体の歯山の数との一方が1つで、他方が2つであるように、前記ダミー歯が形成されたものである(87)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
第1ピッチ調整工程において用いられるダミー回転体は、その形状等が特に限定されるものではない。実際の歯付回転体と同一の形状を有するダミー回転体を用いるものであってもよい。しかし、高トルク回転伝達を目的とする回転伝達装置においては、上述したように、一時期に係合するローラアッセンブリの数が多いほうが望ましく、そのため歯付回転体は複数の歯山を有する形状に形成されることが多い。そのような形状のダミー回転体を用いると、ピッチ調整においても、複数のローラアッセンブリと複数の歯山が係合した状態となり、複数のローラアッセンブリのピッチ誤差が影響しあって正確なピッチ調整が困難となる。つまり、ある1つのローラアッセンブリのピッチ調整を行う際に回転検出装置によって検出される回転角度が、他のいくつかのローラアッセンブリのピッチ誤差の影響を受けたものとなってしまうのである。本項に記載のダミー回転体によって作り出せれる係合状態は、具体的には、1つのローラアッセンブリが2つの歯山に挟まれる状態か、あるいは、1つの歯山を2つのローラアッセンブリが挟んで係合する状態であり、例えばローラアッセンブリの噛み替わり時のような特異な場合を除いて、その状態が維持される。すなわち、そのダミー回転体は、ピッチ調整に必要な最小限の係合状態を実現し得るものである。したがって、かかるダミー回転体を用いた本項に記載の方法を採用すれば、容易にローラアッセンブリのピッチ調整が行えることになる。
(89)前記ダミー歯が前記ダミー歯付回転体の回転軸線に直角な平面に沿って延びる停留部を含み、
前記第1ピッチ調整工程が、前記半組付ローラ回転体に前記回転角度検出装置を取付け、前記停留部に前記ローラアッセンブリを係合させた状態でその半組付ローラ回転体の回転角度の検出を行う工程を含む(87)項または(88)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
本項に記載の製造方法は、第1ピッチ調整工程において、ダミー回転体を上記停留部(ドエル)有する螺旋状歯が形成されたカムを用いて、ローラアッセンブリのピッチ調整を行うものである。例えば一定のリード角をもつ螺旋状歯を有するウォーム状のダミー回転体を用いる場合、ピッチ調整において、いずれかの回転体を正確に所定の回転角度だけ回転させる必要がある。ところが、上記停留部を有するカム状のダミー回転体と半組付ローラ回転体とを噛合させる場合、停留部にローラアッセンブリが係合する状態では、ダミー回転体が回転しても半組付ローラ回転体は回転が停止させられた状態が維持される。したがって、ダミー回転体を正確に所定角度回転させなくても、停留状態において半組付ローラ回転体の回転角度を検出すれば、正確なピッチ調整を行うことができる。すなわち、本項に記載の方法によれば、より簡便にローラアッセンブリのピッチ調整を行うことができる。
(90)前記第2ピッチ調整工程が、前記全組付ローラ回転体と前記歯付回転体との一方に回転角度検出装置を取付け、他方を回転させることにより前記一方を回転させ、前記回転角度検出装置によって検出される前記一方の回転角度が適正角度となるように、第2ローラアッセンブリ組付工程において組付けた前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う工程を含む(81)項ないし(89)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
第2ピッチ調整工程では、第2ローラアッセンブリ組付工程で組付けた残りのローラアッセンブリのピッチ調整を行う。上述した第1ピッチ調整の方法と同様、例えば、一方の回転体を正確に所定の回転角度だけ回転させ、他方の回転角度が前記一方の所定回転角度に対応する正確な値となるように、ローラアッセンブリのピッチ調整を行うことができる。本項に記載の方法は、実機内で少ない数のローラアッセンブリのピッチ調整を行うため、実用的な製造方法となる。具体的な方法については、ダミー回転体ではなく実際の歯付回転体と噛合させること、2つの回転体が正規位置に配設された実機の中で行われること等を除き、上述した第1ピッチ調整工程における調整方法に従えばよい。回転体を正確に所定回転角度だけ回転させるための手段、回転角度検出装置等についても、上記のものに準じればよい。前述したように、第1ピッチ調整工程に比較して調整作業は相応の制約を受けるため、ピッチ調整するローラアッセンブリの数はできるだけ少ないほうが望ましい。
(91)前記ローラアッセンブリ準備工程前に、前記ローラを回転可能に支持する支持部と、前記タレットに保持されるスタッド部とを有するローラ軸を準備するローラ軸準備工程を含み、
前記ローラーアッセンブリ準備工程が、前記支持部において前記ローラを前記ローラ軸に回転可能に支持させる工程を含み、
前記タレット準備工程が、前記タレットの外周部に前記スタッド部が嵌合される嵌合穴を形成する工程を含み、
前記第1ローラアッセンブリ組付工程および前記第2ローラアッセンブリ組付工程が、前記スタッド部を前記嵌合穴に嵌合させる工程を含む(81)項ないし(90)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
ローラアッセンブリは、回転可能なローラを有するものであり、その1つの具体的な態様を本項は示す。ローラアッセンブリをローラとそれを軸支するローラ軸とから構成し、そのローラ軸をタレットに保持させる態様である。ローラ軸をスタッド部においてタレットに設けた嵌合穴に嵌合させれば、ローラアッセンブリの組付が容易に行える。また、タレットに設ける嵌合穴は、割出装置等を用いれば、正確なピッチで形成することができ、良好な精度を有するローラ回転体が得られる。
(92)前記ローラ軸が、前記支持部の軸線と前記スタッド部の軸線とが互いに平行であって偏心したものであり、
前記第1ピッチ調整工程および前記第2ピッチ調整工程が、前記ローラ軸を前記スタッド部の軸線を中心にして回転させ、任意の回転位置において前記タレットに固定することによって前記ローラアッセンブリのピッチ調整を行う工程を含む(91)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
上記態様のローラアッセンブリにおいて、スタッド部とローラを支持す支持部との軸線を偏心させれば、そのローラアッセンブリのピッチ調整は容易になる。つまり、スタッド部の軸線を中心に回転させれば、その偏心量に応じた量だけローラの回転中心がずれ、そのずれの方向を変えることによって、ローラアッセンブリのピッチの微調整が可能となる。ピッチ方向と直角な方向においてもローラアッセンブリの位置ずれが生じることになるが、回転伝達精度に及ぼす影響は少なく、殆ど問題とはならない。
(93)ピッチ調整された前記ローラアッセンブリを前記タレットに固着するローラアッセンブリ固着工程を含む(81)項ないし(92)項のいずれかに記載の回転伝達装置の製造方法。
本回転伝達装置は、正確な回転伝達を目的とするものである。そのためには、ローラ回転体のローラアッセンブリのピッチは重要である。例えば、運転中に何らかの外力が加わったりする、運転中の振動により固定が緩む等の原因から、ローラアッセンブリのピッチが狂う事態も考えられる。ローラアッセンブリを固着すれば、調整を行った状態での正確なローラアッセンブリのピッチが維持できる。したがって、固着工程を含む本項に記載の製造方法によって製造された回転伝達装置は、長期わたって正確な回転伝達を行い得る装置となる。
固着手段は、特に限定されるものではなく、長期にわたってローラアッセンブリの位置ずれが生じないものであればよい。例えば、かしめ、溶接、ろう付け、接着剤による接着等、種々の手段を採用できる。中でも接着剤による接着は、振動に対して信頼性が高い、加熱を必要としないことから歪み等が発生しない、比較的安価であるといった理由から、ローラアッセンブリの固着には好適である。ピッチ調整されたローラアッセンブリに対して固着を行うのであるが、1つのローラアッセンブリのピッチ調整が完了した時点でそのローラアッセンブリを固着するものであってもよく、第1ピッチ調整工程後および第2ピッチ調整工程後にそれぞれ当該工程においてピッチ調整が完了したローラアッセンブリをまとめて行うものであってもよい。また、第2ピッチ調整工程後、すべてのローラアッセンブリをまとめて固着するものであってもよい。ローラアッセンブリのピッチ調整は、微妙な調整を必要とすることから、第2ピッチ調整工程内あるいはその後に、一部のローラアッセンブリの再調整が必要となることも考えられる。この点を考慮すれば、すべてのローラアッセンブリの調整が完了した後に、そのすべてのローラアッセンブリを固着することが望ましい。
(94)前記ローラアッセンブリ準備工程前に、前記ローラを回転可能に支持する支持部と、前記タレットに保持されるスタッド部とを有するローラ軸を準備するローラ軸準備工程を含み、
前記ローラーアッセンブリ準備工程が、前記支持部において前記ローラを前記ローラ軸に回転可能に支持させる工程を含み、
前記タレット準備工程が、前記タレットの外周部に前記スタッド部が嵌合される嵌合穴を形成する工程を含み、
前記第1ローラアッセンブリ組付工程および前記第2ローラアッセンブリ組付工程が、前記スタッド部を前記嵌合穴に、そのスタッド部の外周面とその嵌合穴の内周面との間の少なくとも一部に隙間を有する状態で嵌合させる工程を含み、
ローラアッセンブリ固着工程が、前記隙間に接着剤を充填する工程を含む(93)項に記載の回転伝達装置の製造方法。
本項の態様は、スタッド部をタレットの嵌合穴に嵌合させてローラ軸を保持させる上記態様において、ローラアッセンブリを固着させる場合の一態様である。スタッド部あるいは嵌合穴の少なくともいずれかを、両者の間に隙間を設けるように形成し、その隙間に接着剤を充填させるものであり、簡便な手段よって充分なる強度の固着が達成できる。充填方法は、特に限定されるものではないが、例えば、外部からその隙間へ通じる供給路となる比較的小さな孔をタレットに穿孔しておき、その孔から隙間へ接着剤を圧送すればよい。
以下、本発明の実施例を、歯付回転体が鼓形ウォームであり、ローラ回転体が平ローラギアである回転伝達装置であってロータリーテーブルを構成する回転伝達装置を例にとって、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
〈回転伝達装置の全体および各部の構成〉
図1に本実施例の回転伝達装置の平面断面図を、図2に右側面断面図を、図3に左側面図を、それぞれ示す。本回転伝達装置は、主に、回転伝達装置のハウジングとして機能する装置本体10と、装置本体10に保持された歯付回転体としての鼓形ウォーム12(以下、「ウォーム12」と略す)と、装置本体10に支承され、ウォーム12と噛合するローラ回転体としての平ローラギア14(以下、「ローラギア14」と略す)とを含んで構成される。本回転伝達装置においては、ローラギア14は、他の構成部品と組み合わされることによって、テーブル(図示していない)をローラギア14の回転軸線を中心に回転可能に支持するためのテーブル基体16を構成しており、テーブル基体16が装置本体10に支承されることで、ローラギア14が装置本体10に支承されるものとなっている。
ウォーム12は、複数の歯山を形成する螺旋状歯22を有するウォーム部24と、ウォーム部24と一体的に形成されその両側に同軸的に位置する2つのウォーム軸部26,28とを含んで構成される。また、ローラギア14は、略円筒状をなすタレット32と、タレット32の外周部に等角度ピッチに配置されて保持された複数(本実施例では24個)のローラアッセンブリ34とを含んで構成され、ローラアッセンブリ34の各々は、タレット32の回転軸線に直角な回転軸線を中心に回転可能な2つのローラ36を含んで構成される。ウォーム12とローラギア14との噛合は、ローラ36が螺旋状歯22の側面に当接可能な状態で、螺旋状歯22とローラアッセンブリ34とが係合してなされる。本回転伝達装置では、ウォーム12が入力側であり、ウォーム軸部26の先端部がエンコーダ付きサーボモータ40(以下、「モータ40」と略す)の駆動軸42に連結され、モータ40の回転によるウォーム12の回転が、出力側であるローラギア14の回転として、減速して伝達され、テーブル基体16が回転させられる。以下に、各部の構成等についてより詳しく説明する。
装置本体10は、ウォーム12およびテーブル基体16を内在させるハウジング部50と、テーブル基体16を支承するテーブル基体支承部52(以下、「支承部52」と略す)と、ウォーム12を、詳しくはウォーム12のそれぞれの軸部26,28を保持する2つのウォーム軸保持部54,56(以下「軸保持部54,56」と略す)と、モータ40が取付けられるモータ取付部58とに、概ね区分される。支承部52には、テーブル基体支承装置62(以下、「支承装置62」と略す)が配設され、支承装置62は、テーブル基体16を、その回転軸線(ローラギア14の回転軸線と同じ)のまわりに回転可能にかつその回転軸線の軸線方向および回転軸線に直角な方向に移動不能に支承する。また、支承部52には、ローラギア14のタレット32との間に、当該回転伝達装置の回転停止時において、ローラギア14つまりテーブル基体16が回転するのを防止するための回転防止装置64が配設されている。ウォーム軸保持部54,56には、それぞれ機能の異なるウォーム軸保持装置66,68(以下、「軸保持装置66,68」と略す)が配設され、それらの軸保持装置66,68は、それぞれウォーム軸部26,28を保持し、共同してウォーム12をその回転軸線のまわりに回転可能にかつそのその回転軸線の軸線方向および回転軸線に直角な方向に移動不能に保持する。なお、図1における左側の軸保持装置66は、ウォーム12の回転軸線方向の位置を調整可能となっており、その点で反対側の軸保持装置68と異なる。モータ取付部58にはモータ40が取付けられ、その状態において、駆動軸42とウォーム軸26の先端部との連結は、連結装置70によって行われる。これら支承装置62,回転防止装置64,軸保持装置66,68,連結装置70のそれぞれの構成および機能については、後に詳しく説明する。
ローラギア14は、上述したように、タレット32と、タレット32の外周部に保持された複数のローラアッセンブリ34とを含んでなる。ローラアッセンブリ34とタレット32との関係を表す図として、タレット32の回転軸線に直角な断面を図4に、その回転軸線を含む断面を図5に、ローラアッセンブリ34の正面方向から見た図を図6(図6(a)はローラアッセンブリ34を保持した状態を、図6(b)はローラアッセンブリ34が除去された状態を示している)に、それぞれ掲げる。これらの図をも参照して、ローラギア14についてさらに詳しく説明する。
ローラギア14の構成部品であるタレット32は、略円筒形状をなす。タレット32には、その円筒壁を回転軸線に直交する方向に貫通する複数(本実施例では24)の穴82が、円周を等分する位置に、つまり、等配位置に形成されている。また、タレット32の外周面は、それぞれの穴82の周囲が平面84に形成されている。後に詳しく説明するが、穴82は、ローラアッセンブリ34の一部と嵌合する穴であることから、以下、「嵌合穴82」と称し、また、平面84は、ローラアッセンブリ34の一部が係止する平面であることから、以下、「係止面84」と称する。さらに、タレット32には、下端面からそれぞれの嵌合穴82に向かって貫通する複数の雌ねじ穴86が形成され、また、一端が嵌合穴82の内周面において雌ねじ穴86と対向する位置に開口し、他端が係止面84に開口し、途中で折れ曲がる形状をなす導通孔88が形成されている。これら雌ねじ穴86と導通孔88の機能については、後述する。
ローラアッセンブリ34は、ローラ軸92と、ローラ軸92に回転可能にかつ互いに同軸的に支持された2つのローラ36とを含んで構成される。ローラ軸92は、断面形状が円形の段付状をなし、スタッド部94と、スタッド部94より大径のローラ支持部96(以下、「支持部96」と略す)と、支持部96より大径の頭部98とに区分される。2つのローラ36は、互いに同じ径を有する円筒形状をなし、支持部96の外周面において互いに同軸的に支持されており、支持部96の外周面とローラ36の内周面との間には、転動体としてのニードルローラ102が介装される。2つのローラ36は、このニードルローラ102によって、スムーズな回転が確保される。さらに、2つのローラ36の間には、ローラ36の内径より少し大きい外径をもつワッシャ形状のスラストピース104が介装され、また、ローラアッセンブリ34がタレット32に保持された状態において、スタッド部94側のローラ36と係止面84との間にも、ローラ36の内径より少し大きい外径をもつワッシャ形状のもう1つのスラストピース106が介装されており、これらの作用により、2つのローラ36は、独立して、スムーズに回転が可能となっている。
ローラ軸92のスタッド部94は、その外径がタレット32の嵌合穴82の内径よりわずかに小さく形成されており、嵌合穴82に嵌合される。また、スタッド部94と支持部96との段差の部分と係止面84との間にスラストピース106が挟持されて、ローラアッセンブリ34が係止面84に係止される。スタッド部94の軸線方向中央部の外周には、断面がV字形状をなす環状溝108が形成されており、環状溝108には雌ねじ穴86に螺合する止めねじ110の先端が係合することで、ローラ軸92が嵌合穴82の内周面に押し付けられてローラアッセンブリ34がタレット32に固定される。なお、止めねじ110の中心が環状溝108の中心に対してスタッド部94の先端側(頭部98の反対側)に若干ずれるように雌ねじ穴86が形成されており、止めねじ110が締め込まれることによって、ローラアッセンブリ34は、係止面84に対して押さえ付けられた状態でしっかりと固定される。
ローラアッセンブリ34は、さらに、接着剤によって固着される。この接着剤については図示していないが、ローラ軸92のスタッド部94の外周面とタレット32の嵌合穴82の内周面との間の隙間に充填され、その隙間内で硬化する。つまり、ローラ軸92のスタッド部94の外径は嵌合穴82の内径より若干小さく、また、止めねじ110によりスタッド部94が嵌合穴82の内周面の一方に押し付けられていることから、スタッド部94の外周面と嵌合穴82の内周面との間には、隙間が生じており、接着剤がその隙間に充填されて硬化するのである。接着剤による固着を採用しているため、タレット32へのローラアッセンブリ34の保持状態は良好であり、また、その保持状態が長期にわたって維持される。
スタッド部94には、その外周部に平面部112が形成され、また、タレット32の嵌合穴82の係止面84側の穴端には、面取り114が施され、係止面84には嵌合穴82に通じる導通溝116が形成されている。タレット32に形成された導通孔88,スタッド部94の環状溝108と嵌合穴82の内周面とで区画される空間,平面部112と嵌合穴82の内周面とで区画される空間,嵌合穴82の面取り114とスラストピース106のとで区画される環状の空間,導通溝116とスラストピース106とで区画される空間は、その順に連通しており、これらの空間が接着剤の圧送経路となる。接着剤は、導通孔88の係止面側の入り口から供給され、上記圧送経路を通って、導通溝116とスラストピース106とで区画される空間にまで圧送される。この圧送経路の途中において、接着剤は、その一部が、スタッド部94の外周面と嵌合穴82の内周面との間に存在する小さな隙間にまで入り込むことで、エアポケットができることなく、隙間への均一な接着剤の充填が担保される。
本回転伝達装置は正確な回転伝達を目的とすることから、ローラギア14におけるローラアッセンブリ34の配設ピッチ精度が重要となる。ここでいう配設ピッチとは、複数のローラアッセンブリ34の対応するローラ36間のピッチであり、厳密には、ローラギア14の回転軸線を中心とするローラ36の回転軸線の配設角度ピッチ(図4におけるθ1,θ2)を意味し、この配設角度ピッチが正確であることが要求される。ローラ軸92は、図5に示すように、スタッド部94の軸線l1と支持部96の軸線l2とが偏心して形成されており(図5では、偏心量Δが誇張して示してある)、本回転伝達装置においては、スタッド部94と支持部96との偏心を利用してピッチ調整が可能となっている。つまり、ローラアッセンブリ34をローラ軸92のスタッド部94を嵌合穴82に嵌合して取付けた際に、スタッド部94の軸線l1を中心にローラアッセンブリ34を回転させれば、嵌合穴82の中心軸線に対するローラ36の回転軸線の偏心方向を変更させることができ、その回転角度に応じたローラアッセンブリ34の配設角度ピッチの調整が可能となるのである。ローラアッセンブリ34を回転させて正規の配設角度ピッチとした後に止めねじ110を締め込むことによってローラ軸92を固定するという操作により、簡便にピッチ調整が行える。なお、ローラ軸92の頭部98の表面には、スタッド部94の軸線に対する偏心指示マーク118が刻まれており、偏心指示マーク118の指し示す方向によりピッチ調整の方向および調整量を容易に知ることができる。例えば、図4に示す3つのローラアッセンブリ34のうちの中央のローラアッセンブリ34を調整することを例にとって示せば、図6(a)における偏心指示マーク118が右を向くようにそのローラアッセンブリ34を回転させれば、配設角度ピッチθ1の値は大きくなり、θ2の値は小さくなる。逆に、偏心指示マーク118が左を向くように回転させれば、θ1の値は小さくなり、θ2の値は大きくなる。
テーブル基体16は、前述したように、ローラギア14を含んで構成される。より詳しくは、図1,図2に示すように、主に、ローラギア14と、厚みのある概してドーナッツ状をなしてテーブルを支持するための出力フランジ130と、一端部が出力フランジ130の内周に嵌入された円筒部材132と、ローラギア14つまりタレット32と出力フランジ130との間に挟持された概して円環状をなす環状部材134とを含んでなる。それら、ローラギア14,出力フランジ130,円筒部材132,環状部材134は、それぞれが同軸的に配置され、互いに締結されて、全体としてテーブル基体16を構成する。ローラギア14と、環状部材134と、出力フランジ130との締結は、締結具136により、環状部材134を出力フランジ130とタレット32とで挟み付けるようにして行われている。また、円筒部材132と出力フランジ130との締結は、円筒部材132の上部外周面を出力フランジ130の内周面に嵌入した状態で、締結具138により、円筒部材132のフランジ部140を出力フランジ130の段差面に係止させるように行われている。
テーブル基体16は、装置本体10の支承部52に支承される。支承部52は段付きの円筒形状をなし、外周上部には,スリーローラ軸受150が配設固定され、内周下部には、ラジアル玉軸受152が配設固定されている。スリーローラ軸受150は、2つの円環状部材154,156が締結されてなる保持体158と、保持体158内に保持され、スラスト荷重を受けるための2セットの棒状ローラ160と、ラジアル荷重を受けるための1セットの円筒ローラ162とを含んで構成され、棒状ローラ160および円筒ローラ162がテーブル基体16の環状部材134の両平面および内周面を転動して、環状部材134を支承する。また、ラジアル玉軸受152は、円筒部材132の出力フランジ130に嵌入していない端部側の外周面を支承する。つまり、これら2つの軸受150,152を介することで、テーブル基体16は、装置本体10の支承部52に回転可能かつ上下移動不能に支承される。なお、このことは装置本体10の支承部52の外周がタレット32の内周側に挿入されて、タレット32すなわちローラギア14が回転可能にかつ回転軸線方向に移動不能に支承されることを意味する。
本回転伝達装置では、回転伝達停止時に回転体の回転を防止するための回転防止装置として、ローラ回転体であるローラギア14の回転を防止するための回転防止装置64が、装置本体10の支承部52と、ローラギア14の構成部品であるタレット32との間に配設されている。この回転防止装置64は、主に、膨張変形体として機能して内部に加圧流体である作動油が充填されるクランプ部材170と、作動油を加圧する流体加圧装置としての油圧ユニット(装置本体10外にあるため図示していない)と、クランプ部材170と油圧ユニットとの間を連通する複数の作動油流路172とから構成される。なお、図2において示す2つの作動油流路172のうち、一方は増圧のための流路であり、他方は減圧のための流路である。なお、1つの流路のみを設け、その流路により増圧および減圧を行うものであてもよい。
クランプ部材170は、概して円筒形状をなし、内周面に装置本体10の支承部52の外周面の一部が嵌入して、その外周面の一部に支持される。クランプ部材170の断面形状は、図2あるいは図5に示すように、概してコの字形状をなす。詳しくは、ローラギア14の回転軸線方向の両端部側が厚肉に形成され、それらを繋ぐ中央部が薄肉に形成されている。薄肉に形成された部分と支承部の外周面とで区画されるクランプ部材170の内部が、加圧流体である作動油が充填される充填空間174となる。ちなみに、充填空間174は、略円環状の空間である。なお、クランプ部材170の厚肉部の一方(図では下部側)には、その周囲に複数の鍔状に張り出した部分が形成され、その部分が支承部52に固定される固定部176となり、固定部176において締結具178によって固定される。また両方の厚肉部には、支承部52の外周面と接する内周面にそれぞれ環状の溝180が形成され、この溝180にはシール部材であるOリング182が嵌挿され、Oリング182は、クランプ部材170の内部の充填空間174から作動油が漏洩することを防止する。また、クランプ部材170は、支承部52の外周面と対面するローラギア14の内周面、つまり、タレット32の内周面との間に隙間184を隔てて配設されている。
油圧ユニットを作動させ、充填空間174に充填された作動油を作動油流路172を通じて加圧すると、クランプ部材170の一部である薄肉部は、膨張変形する。つまり、この薄肉部が変形部186となる。変形部186が膨張変形することにより、隙間184がなくなり、変形部186がタレット32の内周面の一部を加圧するように接触、すなわち圧接する。したがって、タレット32の内周面の一部が被圧接面部188となる。変形部186が被圧接面部188を押圧する状態にあっては、ローラギア14が何らかの外力を受けて回転しようとするときでも、被圧接面部188と変形部186との間に発生する摩擦力により、ローラギア14の回転は防止される。
タレット32には、前述したように、ローラ軸92のスタッド部94が嵌合する複数の嵌合穴82が形成されており、タレット32の内周面において凹所が形成された格好となっている。図4および図5に示すように、クランプ部材170の変形部186が膨張変形して被圧接面部188に圧接するときには、変形部186の一部がこの嵌合穴82に嵌り込むように変形する。すなわち、嵌合穴82によって形成された凹所に係合する。嵌合穴82はタレット32の全周にわたって設けられており、クランプ部材170は環状をなしてその変形部186はタレット32の全周に圧接することから、変形部186はすべての嵌合穴82、つまりすべての凹所に係合することとなる。したがって、本実施例の回転防止装置では、効果的に回転を防止することが可能となる。
次に、ウォーム12について説明する。ウォーム12は、前述したように、複数の歯山を形成する螺旋状歯22を有するウォーム部24と、ウォーム部24と一体的に形成されその両側に同軸的に位置する2つのウォーム軸部26,28とを含んで構成される。ウォーム12とローラギア14との噛合状態を図7に示す。ちなみに、図7(a)は、ローラアッセンブリ34のある回転角度における噛合状態の状態を、図7(b)には、その回転角度からウォーム12が180゜回転した場合の状態をそれぞれ示す。また、図8には、ウォーム12のウォーム部24の展開図を示す。以下の説明は、これらの図をも参照しつつ行う。
本実施例のウォーム12は、概して鼓形をなすウォーム部24において、1条の螺旋状歯22を有しており、螺旋状歯22は、回転軸線方向に並ぶ3つないし4つの歯山200を形成する。ローラアッセンブリ34は、それが有する2つのローラ36のそれぞれが、螺旋状歯22の異なる側面である側面202と側面204とのそれぞれ(図7および図8において、螺旋状歯22の右側面を202、左側面を204とする)に当接可能となっている。正確には、ローラギア14の外周側(ローラ軸92の先端側)にあるローラ36が螺旋状歯22の右側面202に、内周側(ローラ軸92の根元側)にあるローラ36が左側面に当接可能となっている。詳しく説明すれば、螺旋状歯22は、断面において、その側面202,204の一部が法線方向に後退して形成された逃がし部206を有しており、逃がし部206においてはローラ36が当接しないようになっている。すなわち、螺旋状歯22は、逃がし部206を除く当接部208においてのみローラ36が当接可能となるように形成されている。なお、「当接可能」とは、実際にはローラアッセンブリ34と螺旋状歯22とはクリアランスをもって係合するため、係合するローラアッセンブリ34のローラ36のすべてが螺旋状歯22の側面202,204のいずれかに当接するとは限らないことを意味している。
ウォーム12の回転角度によるウォーム12とローラギア14との噛合状態の変化について説明すれば以下のようになる。ローラアッセンブリ34が最も多く係合する状態(最多係合状態:図7(a)は、その中間的位置を示している)においては、4つの歯山200に5個のローラアッセンブリ34が係合する。詳しくは、歯山200に挟まれた、つまり、螺旋状歯22の側面202,204の両方に係合する3個のローラアッセンブリ34と、歯山200に挟まれていない、つまり、側面202および側面204のそれぞれに係合する2個のローラアッセンブリ34とが存在する。それと異なり、ローラアッセンブリ34が最も少なく係合する状態(最少係合状態:図7(b)は、その中間的位置を示す)においては、歯山200に挟まれた、つまり、螺旋状歯22の側面202,204の両方に係合する2個のローラアッセンブリ34と、歯山に挟まれていない、つまり、側面202あるいは側面204の片方に係合する2個のローラアッセンブリ34とが存在する。また、最多係合状態と最少係合状態との中間的な係合状態も存在し、その状態では、歯山200に挟まれた、つまり、螺旋状歯22の側面202,204の両方に係合する3個のローラアッセンブリ34と、歯山に挟まれていない、つまり、側面202あるいは側面204のいずれか片方に係合する1個のローラアッセンブリ34とが存在する。
図8によれば、ウォーム12の回転に伴ってローラアッセンブリ34は下向き(→方向)に移動し、上述した最多係合状態(a)から中間的な係合状態,最少係合状態(b),中間的な係合状態を経て最多係合状態(a)へ戻るサイクルを繰り返す。本実施例では、ウォーム12が回転軸線のまわりに1回転することにより、上記1サイクルが行われ、ローラアッセンブリ34が1個分送り出される。つまり、ウォーム12の1回転により、ローラギア14がローラアッセンブリ34の配設角度ピッチ分に相当する回転角度だけ回転させられることになる。なお、螺旋状歯22は、一定のリード角をなすように形成されており、ウォーム12の一定速度の回転が、ローラギア14の一定速度の回転として伝達される。
本実施例においては、前述したように、常に複数のローラアッセンブリ34が係合する状態となっており、回転伝達のための容量負荷が大きく、高トルク回転を正確に伝達できる。また、ローラアッセンブリ34と螺旋状歯22との間にクリアランスが存在するとしても、ウォーム12の回転軸線とローラギア14の回転軸線との間隔調整等により、螺旋状歯22の異なる側面である側面202と側面204との両方に、異なるローラ36を常に当接し得る状態とすることが充分に可能である。したがって、バックラッシが発生しないかあるいは極めて小さなバックラッシしか存在しない状態を容易に作り出すことができ、正確な回転伝達が可能な回転伝達装置が実現される。
ウォーム12は、ウォーム部24と一体的に形成されその両側に同軸的に位置する2つのウォーム軸部26,28を有し、そのウォーム軸部26,28が、それぞれ、軸保持装置66,68によって、それぞれ装置本体10の軸保持部54,56に保持される。以下、モータ40の駆動軸42が連結される側の軸保持装置66と、その反対側の軸保持装置68とについて、順に説明する。
図9に軸保持部54および軸保持装置66を拡大して示す。軸保持装置66は、主に、ウォーム軸部26をその軸方向に移動不能にかつ回転可能に保持する軸保持具220と、ウォーム12の軸方向位置を調整するための軸方向位置調整装置の一部をなす調整ボルト222(雄ねじ部材として機能する)および調整カラー224と、軸保持具220を軸保持部54に固定する軸保持具固定装置としての固定ボルト226とから構成される。図3をも参照しつつ、以下にさらに詳しく説明する
軸保持具220は、主に、フランジ230を有し概して円筒状をなす軸保持具本体232と、軸保持具本体232に装着されウォーム軸部26を回転可能に保持する軸受セット234と、フランジ236を有し概して短い円筒状をなし軸受セット234を固定するため軸受固定具238とから構成される。軸保持具220の構成をさらに詳しく説明すれば、以下のようになる。軸受セット234は、2つのアンギュラ玉軸受240を並列に、詳しくは背面組み合わせの状態で、配置したものであり、アウターレースが軸保持具本体232の筒部242の内周面に嵌合し、インナーレースにウォーム軸部26の端部である小径部244が嵌入する構造となっている。軸保持具本体232の一端部は内周径が小さく形成されて軸受係止部246となり、この部分に一方のアンギュラ玉軸受240のアウターレースが係止される。軸受固定具238は、フランジ236が軸保持具本体232のフランジ230と重ね合わされ、筒部248が軸保持具本体232の筒部242の内周面に嵌入した状態で、後に詳しく説明する調整ボルト222および固定ボルト226の締付け力によって、軸保持具本体232に取付固定される。それにより、軸受セット234は、2つのアンギュラ玉軸受240のアウターレースが筒部248の先端の軸受係止部246との間に挟持されることで、軸方向への移動が不能な状態で固定される。また、ウォーム軸部26の小径部244の先端側には雄ねじが形成され、この雄ねじに螺合する取付ナット250により、ウォーム軸26の大径部252との間にアンギュラ玉軸受240のインナーレースを挟持した状態で、ウォーム軸部26が軸保持具220に取付けられる。軸保持具220は、上述した構造により、ウォーム軸部26を軸方向に移動不能にかつ回転可能に保持する。なお、軸保持具本体232のフランジ230および軸受固定具238のフランジ236は、一体となって、軸保持具220における円環状のフランジ部254を構成する。また、軸保持具本体232と軸受固定具238との相対回転を防止すべく、両フランジ230,236には回り止めピン256が打ち込まれている。
また、軸保持具本体232では、筒部242が、その内周面260と外周面262のそれぞれの中心軸が平行でありかつ互いに偏心するように形成されている(偏心量が小さいため、図においては明確に表現されていない)。したがって、筒部242は、軸保持具220における偏心円筒部として機能し、アンギュラ玉軸受240のインナーレースの内周面264がこの偏心円筒部の内周面として、筒部242の外周面262が偏心円筒部の外周面として、それぞれ機能する。装置本体10の軸保持部54には、軸保持具220を取付けるための取付穴266が、その中心軸線がウォーム12の回転軸線と平行となるようにして形成されており、取付穴266に筒部242の外周面262が嵌入して、軸保持具220が装置本体10の軸保持部54に取付けられる。軸保持具220の取付において、軸保持具220を回転させれば、軸保持具220は外周面262の中心軸のまわりに回転することになり、軸線方向と直角な方向におけるウォーム12の回転軸線の位置調整を容易にかつ高精度に行うことができる。
装置本体10の軸保持部54は、ウォーム12の回転軸線に直角でかつウォーム軸部26を取巻く平面として形成された係止部270を有する。また、軸保持具220は、前述したように、環状のフランジ部254を有する。フランジ部254は、一定の厚さで形成され、係止部270と向かい合うフランジ対向面272と、フランジ対向面272と反対側の面つまりフランジ対向面272と背向する面であるフランジ背向面274とを有する。さらに、フランジ部254には、その周辺部にウォーム軸部26を取巻くように等ピッチ間隔で配置され、かつ、ウォーム12の回転軸線と平行な軸線を有する6つの雌ねじ穴276が形成されている。詳しくいえば、軸保持具本体232のフランジ230には雌ねじが形成された穴が、軸受固定具238のフランジ部236にはその穴と同軸的に位置しかつその穴より若干大きな径をもつ穴がそれぞれ形成されている。雌ねじ穴276には、それぞれ、調整ボルト222がフランジ背向面274側からねじ込まれ、それぞれの調整ボルト222の先端がフランジ対向面272から突出している。この突出した部分が軸方向位置調整装置における突出部278となる。調整ボルト222の先端、つまり突出端が装置本体10の係止部270に係止されて軸保持具220が固定されることから、調整ボルト222を回転させて突出部278の突出量を調節することによって、フランジ部254と係止部270との離間間隔が決定され、それによって装置本体10に対する軸保持具220の軸方向位置が決定される。ウォーム12がウォーム軸部26において軸保持具220に軸方向に移動不能に保持されていることから、突出部278の突出量の調節により、ウォーム12の軸方向位置が調整されることになる。本軸保持装置66は、調整ボルト222を回転させるという操作によってウォーム12の軸方向位置が調整できるため、装置本体10のハウジング部50の外側からの調整が可能であり、また、軸保持具220を取り外すことなく調整が可能であることから、調整作業が容易に行える。
調整ボルト222の各々は、頭部を除く長さつまり首下長さが同じ長さに形成されている。調整ボルト222の各々の頭部とフランジ背向面274との間には、調整ボルト222のねじ部が貫通する状態で、円筒状の調整カラー224が介装されている。調整カラー224は、調整ボルト222の突出部278の突出量を規制し、突出量調節部材として機能する。調整カラー224の長さは、すべて同じ長さに形成されているため、調整ボルト222を締め込んだ際に、突出部278の突出量は、いずれの調整ボルト222においても同量となる。フランジ背向面274は係止部270と一定の距離をおいた状態となるように、つまりここでは、フランジ背向面274と係止部270とが平行となるように設計されており、したがって、フランジ部254が係止部270に対して傾くことなく、ウォーム12の回転軸線は、一定に保たれる。以上のことを総合すれば、軸保持装置66における軸方向位置調整装置は、調整ボルト222,調整カラー224,雌ねじ穴276等で構成されることになる。
また、フランジ部254には、固定ボルト226が貫通する6つの固定ボルト貫通穴280が、その周辺部にウォーム軸部26を取巻くように等ピッチ間隔でかつ雌ねじ穴276を相互に挟む位置に設けられている。詳しくは、軸保持具本体232のフランジ230および軸受固定具238のフランジ部236の両者に、同じ位置に同じ形状で設けられている。固定ボルト貫通穴280は、フランジ部254の周方向に長径が位置する略楕円形状の穴であり、固定ボルト226が貫通した状態で、軸保持具220が回転可能となっている。装置本体10の係止部270には固定ボルト226と螺合する雌ねじ穴282が形成されており、フランジ部254を押え付けるように6つの固定ボルト226によって軸保持具220が固定される。すなわち、軸保持装置66における軸保持具固定装置は、固定ボルト226,固定ボルト貫通穴280,雌ねじ穴282等で構成されることになる。
軸保持装置66では、調整ボルト222の突出部278の突出端が、直接係止部270に係止されるわけではなく、突出部278の突出端と係止部270との間には、係止部270の損傷を防ぐための損傷防止部材としての環状ライナ284が介装されている。環状ライナ284は、一定の厚さをもつ円環状の板材であり、固定ボルト226が挿通するための挿通穴が設けられている。環状ライナ284は、焼き入れ鋼板製であり、係止部270が傷付くことおよび自身が傷付いてフランジ部254のフランジ対向面272と係止部270との間隔が変化することを効果的に防止している。
上述した軸保持装置66に代えて、採用可能な別の軸保持装置について説明する。図10に、その軸保持装置を示す。図10(a)は、ウォーム軸保持部および軸保持装置を拡大して示す断面図であり、図10(b)は、軸保持装置の構成部品である環状スペーサの正面図である。図に示す軸保持装置300は、上記の軸保持装置66同様、ウォーム軸部26をその軸方向に移動不能にかつ回転可能に保持する軸保持具220と、ウォーム12の軸方向位置を調整するための軸方向位置調整装置と、軸保持具220を軸保持部54に固定する軸保持具固定装置としての6つの固定ボルト226とから構成される。上記軸保持装置66と異なるのは、軸方向位置調整装置であり、本軸保持装置300では、円環状をなす環状スペーサ302を採用する。環状スペーサ302は、軸保持具220のフランジ部254のフランジ対向面272と、装置本体10の係止部270との間に介装される。環状スペーサ302は、固定ボルト226が挿通する6つの挿通穴304を有し、フランジ部254とともに固定ボルト226によって押え付けられて固定される。他の構成要素については、上記軸保持装置66と同様であるため、ここでの説明は省略する。本軸保持装置300では、環状スペーサ302の厚みを変更することにより、ウォーム12の軸方向位置を決定することができる。環状スペーサ302の厚さを変更する場合には、装置本体10の軸保持部54から軸保持具220を一旦取りはずさなければならず、その点において、本軸保持装置300では、ウォームの軸方向位置調整作業が若干の煩雑さを伴うものとなるが、装置自体は単純な構成となる。
次に、上述した2つの軸保持装置66,300と反対側の軸保持装置、すなわちモータ40の駆動軸42が連結されない側の軸保持装置について説明する。図11に、その側のウォーム軸保持部および軸保持装置を示す。軸保持装置68は、主に、円筒部320とフランジ部322とを含んでなる軸保持部材324と、円筒部320の内周面に取付けられた軸受セット326とを含んで構成される。軸受セット326は、2つのアンギュラ玉軸受328を並列に、詳しくは背面組み合わせの状態で配置したものであり、アウターレースが内周面に嵌合し、インナーレースにウォーム軸部28の端部である小径部330を嵌入させる構造となっている。小径部330の先端には雄ねじが形成され、この雄ねじに螺合する取付ナット332により、ウォーム軸28の大径部334との間にアンギュラ玉軸受328のインナーレースを挟持した状態で、ウォーム軸部28が軸保持部材324に取付けられる。軸保持部材324の円筒部320は、前述した軸保持装置66における軸保持具220と同様、その内周面と外周面のそれぞれの中心軸が平行でありかつ互いに偏心するように形成されている(偏心量が小さいため、図においては明確に表現されていない)。装置本体10の軸保持部56には、軸保持部材324を取付けるための取付穴336が、その中心軸線がウォーム12の回転軸線と平行となるようにして形成されており、取付穴336に円筒部320の外周面が嵌入して、軸保持部材324が軸保持部56に取付けられる。軸保持部材324の取付において、軸保持部材324を回転させれば、前述の軸保持装置66における場合と同様、軸保持部材324は外周面の中心軸のまわりに回転することになり、軸線方向と直角な方向におけるウォーム12の回転軸線の位置調整を容易にかつ高精度に行うことができる。軸保持部材324は、フランジ部322において、固定ボルト338によって装置本体10の軸保持部56に固定される。フランジ部322に形成された固定ボルト338が挿通する挿通穴340は、軸保持部材324の回転が可能なように、略楕円形状の穴となっている。また、円筒部320の端部には、防塵等を目的とした蓋部材342が取付けられる。なお、本軸保持装置68では、軸受セット326は、円筒部320の内周面を摺動し、ウォーム12の回転軸線の方向に移動可能となっており、ウォーム12の加工に寸法誤差,熱膨張等を吸収することができる。
モータ40は、装置本体10にモータ取付部58において取付けられる。モータ40の駆動軸42とウォーム12詳しくはウォーム軸部26との連結は連結装置70によって行われる。図9には、連結装置70をも拡大して示す。連結装置70を簡単に説明すれば、連結装置70は、主に、駆動軸42およびウォーム軸部26の外周面に嵌合する内周面をもつ連結筒部材350と、連結筒部材350の内周面と駆動軸42の外周面とに係合する連結環352と、連結筒部材350の内周面とウォーム軸部26の外周面とに係合する連結環354と、連結筒部材350の駆動軸42側の端面部に配置されて連結環352を軸方向に押圧して変形させる環状の押圧部材356と、連結筒部材350の内部に配置されて連結環354を軸方向に押圧して変形させる環状の押圧部材358とから構成される。連結環352および連結環354は、互いに係合するテーパ面を有する2つの部材からなり、軸方向に押されることにより、内径が縮径しかつ外径が拡径する構造となっている。押圧部材356および押圧部材358をそれぞれねじ部材により移動させられることで連結環352および連結環354が変形し、駆動軸42とウォーム軸部26とが連結される。
その他装置本体10は、ハウジング部50に、2つの窓370,372が設けられており、それぞれの窓370,372には、蓋374,376が取付けられている。後に詳しく説明するが、一方の窓370は、ローラアッセンブリ34をタレットに組付ける作業を行う場合等に利用され、もう一方の窓372は、ローラギア14とウォーム12との噛合状態を確認しつつウォーム12を正規位置に配設する作業を行う場合等に利用される。また、モータ取付部58にも、4つの窓378が設けられており、モータ40の駆動軸42と連結装置70との連結作業を行う場合等に利用される。
上記回転伝達装置は、ロータリーテーブルを構成するものであり、モータ40を回転させることでウォーム12が回転し、その回転がローラギア14に減速して伝達され、その結果、テーブル基体16およびそれに支承されるテーブルが回転する。モータ40を一定の回転速度で回転させることにより、等速で回転するロータリーテーブルとして使用することができ、また、モータ40を制御し、その回転速度を変化させることにより、変速回転するロータリーテーブルとして使用することもできる。さらに、モータ40を制御し、その回転を任意に設定した回転量を経過して停止させれば、テーブルはそれに対応する回転角度位置で停止することから、インデックステーブルとして使用することも可能である。それらの使用態様を始めとして、様々な、使用態様が考えられるが、いずれの使用態様においても、正確な回転を伝達可能なロータリーテーブルとなる。
〈製造方法〉
上述した回転伝達装置の製造は、概して、それぞれの部品を準備する部品準備工程(歯付回転体(ウォーム)準備工程,タレット準備工程,ローラ軸準備工程,ローラアッセンブリ準備工程等を含む),第1ローラアッセンブリ組付工程,第1ピッチ調整工程,歯付回転体およびローラ回転体配設工程(上記回転伝達装置では、ウォームおよびローラギア配設工程となる),第2ローラアッセンブリ組付工程,第2ピッチ調整工程,固着工程,その他の後工程を経て行われる。以下に、それぞれについて説明する。
部品準備工程では、本回転伝達装置を構成する部品の各々を製造し、あるいは、購入することによって準備する。本回転伝達装置は、正確な回転伝達を目的とするものであり、その点において、各部品は寸法精度よく製造されることが望ましい。例えば、タレット準備工程においては、ローラアッセンブリ34のローラ軸92が嵌合する嵌合穴82の配設ピッチを精度よく加工することが望ましい(図4を参照)。また、ローラ軸準備工程においては、ローラ36を支持する支持部96の外径寸法を精度よく加工すること等、ローラアッセンブリ準備工程においては、外径寸法の揃ったローラ36を組付けること等に留意する。ウォーム準備工程におけるウォーム12の螺旋状歯22の形状については、特に重要であるが、これについては後に詳述する。なお、それぞれの部品は、先に図面を参照して説明したとおりのものであり、その製造方法が特に限定されるものではなく、機械加工等公知の製造方法によって製造すればよいため、ここでの説明は省略する。
第1ローラアッセンブリ組付工程では複数のローラアッセンブリの一部である複数のものをタレットに組付けて、半組付ローラ回転体を得る。本実施例では、24個のローラアッセンブリ34のうち21個のものをタレット32に組付けて、半組付ローラギアを得る。21個のローラアッセンブリ34は、互いに隣接するものを組付ける。したがって、21個のローラアッセンブリ34は、連続した位置にあり、半組付ローラギアでは、3つの連続した位置にある嵌合穴82にローラアッセンブリ34が組み付けられていない状態となる。前述したように、ローラギア14とウォーム12との噛合状態は、最多係合状態において、5個のローラアッセンブリ34が係合し、そのうちの3個のローラアッセンブリ34が歯山200に挟まれて係合する。また、最少係合状態では、4個のローラアッセンブリ34が係合し、そのうち2個のローラアッセンブリ34が歯山200に挟まれて係合する。ローラギア14のいずれの回転角度においても歯山に挟まれて係合する数と同数の隣接するローラアッセンブリ34を除いて半組付ローラギアを完成させれば、後のウォームおよびローラギア配設工程で、両者を正規位置に配設することが可能である。したがって、本回転伝達装置では、2個の隣接するローラアッセンブリ34を除いて半組付ローラギアとすることもできる。本実施例の本工程においては、ウォーム12とローラギア14との正規位置への配設が余裕を持って行えるという理由から、3個のローラアッセンブリ34を除いた残りのローラアッセンブリ34を組付けることとした。なお、ローラアッセンブリ34のタレット32への組付方法は、ローラ軸92のスタッド部94をタレット32の嵌合穴82に挿入して嵌合し、止めねじ110を締め付けて固定すればよい(図5および図6を参照)。その際、ローラ軸92の支持部96のスタッド部94に対する偏心方向を一定にすべく、例えば、すべてのローラアッセンブリ34において、頭部98に刻まれている偏心指示マーク118をタレット32の下端方向あるいはその反対方向に向けて揃えておくのがよい。
第1ピッチ調整工程では、第1ローラアッセンブリ組付工程において組付けたローラアッセンブリ34のピッチ調整を行う。本実施例においては、本工程は、専用の調整器にて行う。この調整器は、詳しく図示しないが、半組付ローラギアとウォーム12に対応するダミー歯付回転体とを、互いの正規位置にて噛合させることができる構造となっている。図12に半組付ローラギアとダミー歯付回転体との噛合状態を示し、図13にダミー歯付回転体の展開図を示す。ダミー歯付回転体410は1条の螺旋状のダミー歯412を有し、ダミー歯412は、ダミー歯付回転体410の回転軸線に直角な平面に沿って延びる停留部Aと、リード角を有する割出部Bとに区分されるように形成されている。つまり、ダミー歯付回転体410は、いわゆるグロボイダルカムであり、ダミー歯412は、グロボイダルカムにおけるカムリブに相当するものとなっている。また、ダミー歯412は、ローラアッセンブリが停留部Aと係合する状態においては、2つのローラアッセンブリ34に挟まれて係合する状態となり、螺旋状歯412のそれぞれの側面414,416が、それぞれのローラアッセンブリ34の外周側のローラ36に当接する状態となるように形成されている。また、ダミー歯412は、ダミー歯付回転体410が1回転(360゜回転)することにより、ローラアッセンブリ34が1つずつ送り出されるように形成されていることで、ダミー歯付回転体410の1回転により、半組付ローラギア400がローラアッセンブリ34の配設角度ピッチ分だけ回転させられることになる。
ピッチ調整は、例えば、以下の方法によって行うことができる。半組付ローラギア400に回転角度検出装置であるエンコーダを取付ける。半組付ローラギア400とダミー歯付回転体410とを噛合させた状態において、ダミー歯付回転体410を回転させ、エンコーダによって検出される半組付ローラギア400の回転角度が適正角度となるようにして、ピッチ調整する。具体的には、ある2つのローラアッセンブリ34が停留部Aに係合するときの半組付ローラギア400の回転角度を検出し、次いで、ダミー歯付回転体410を回転させて、隣接する次のローラアッセンブリ34が停留部Aに係合するとき、つまり、ローラアッセンブリ34が1つ分だけ送られたときの回転角度を検出し、これらの回転角度差を求めて配設角度ピッチとし、この実測された配設角度ピッチが理論上の配設角度ピッチと一致するように調整する。この調整においては、まず、隣接する3つのローラアッセンブリ34により決定される隣接する2つの配設角度ピッチの実測値が理論値と略等しくなる箇所を見つけ出し、その3つのローラアッセンブリ34のうちの両側のローラアッセンブリ34を基準にして、それに隣接する1個のローラアッセンブリ34の調整を行い、次いで、その調整を行ったローラアッセンブリ34を基準として、それに隣接するローラアッセンブリ34のピッチを調整する。同様に、順次、隣接するローラアッセンブリ34の調整を1つずつ行って、組付けられたすべてのローラアッセンブリの調整を完了する。基準となる箇所が見つからない場合は、最も理論値に近い実測値が得られた箇所について調整を行い、それを基準とすればよい。ピッチの具体的な調整方法は、基準となるローラアッセンブリ34との間の実測した配設角度ピッチが理論値より小さい場合は、そのローラアッセンブリ34の止めねじ110を緩め、基準となるローラアッセンブリ34から遠ざけるように、頭部98の偏心指示マーク118の動きを確認しつつ、そのローラアッセンブリ34のローラ軸92を適当な角度だけ回転させ、止めねじ110を締めて固定した後、再度配設角度ピッチを測定して確認する(図5および図6を参照)。逆に、基準となるローラアッセンブリ34との間の実測した配設角度ピッチが理論値より大きい場合は、そのローラアッセンブリ34を基準となるローラアッセンブリ34に近づけるようにして、調整を行えばよい。取付けたすべてのローラアッセンブリ34のピッチ調整を完了して、第1ピッチ調整が完了する。
本実施例の第1ピッチ調整工程においては、1つの歯山を2つのローラアッセンブリ34が挟むように形成されたダミー歯412を有するダミー歯付回転体410を用いることで、複数のローラアッセンブリ34のピッチ誤差が影響し合うことなく、容易に正確なピッチ調整を行うことができる。また、ダミー歯412が停留部Aを有するものであり、その停留部Aにローラアッセンブリ34を係合させてピッチ調整が行うことから、ダミー歯付回転体410の回転位置決め精度は正確さを要求されず、簡便にピッチ調整を行うことができる。
ウォームおよびローラギア配設工程では、半組付ローラギアとウォームとを互いに適正に噛合する正規位置に位置決めして配設する。本回転伝達装置では、ローラギア14は、出力フランジ130,円筒部材132等とともにテーブル基体16を構成する(図2を参照)。したがって、予め、半組付ローラギア400と、出力フランジ130等を組付けてテーブル基体16を完成させておく必要があり、本回転伝達装置の本工程は、実際にはテーブル基体16とウォーム12とを正規位置に配設する工程となる。ウォーム12は、両端のウォーム軸部26,28をそれぞれ軸保持装置66,68によって軸保持部54,56に保持させて、装置本体10に配設する(図9および図11参照)。ウォーム軸部26,28を保持させた当初においては、軸保持装置66は、固定ボルト226を緩めておき、軸保持具220が回転可能かつ軸方向に移動可能な状態としておく。同様に、軸保持装置68は、固定ボルト338を緩めておき、軸保持部材324が回転可能な状態としておく。ウォーム12を配設した後に、半組付ローラギア400を組み込んだテーブル基体16を、装置本体10の支承部52に支承させて配設する。
図14に、ウォーム12と半組付ローラギア400を噛合させる際のローラアッセンブリ34の配置状態を、図15に、ウォーム12の位置を正規位置に調整する際のローラアッセンブリ34の配置状態を示す。図において、1),2)および3)は、ローラアッセンブリ34が組付けられていない箇所を示す。半組付ローラギア400を配設する際には、図14のように、組付けていないローラアッセンブリ34がウォーム12の螺旋状歯22の歯山に挟まれるはずの回転角度位置に半組付ローラギア400を回転させた状態にて行う。実際には、その箇所にローラアッセンブリ34が存在しないため、ローラギア14の配設は容易に行える。次いで、ウォーム12の位置調整を行うことで、ウォーム12とローラギア14とを適正な噛合位置である正規位置に配設することになる。ウォーム12の位置調整は、半組付ローラギア400を先の回転角度位置から回転させて、図15のように、既に組付けてあるローラアッセンブリ34が螺旋状歯22に係合する状態で行う。このときの半組付ローラギア400の回転は、出力フランジ130を回転させながら、螺旋状歯22にローラアッセンブリ34が係合する状態を保ちつつ、ウォーム12を回転させて行う。ウォーム12の位置調整は、前述したように、回転軸線に直角な方向については、軸保持装置66の軸保持具220および軸保持装置68の軸保持部材324を回転させて行う。また、回転軸線方向については、軸保持装置66の調整カラー224の厚みを変更することによって行う。正確な回転伝達を確保するため、これらの位置調整は、厳密に行うのがよい。調整後、それぞれの軸保持装置66,68の固定ボルト226,338を締め、ウォーム12の位置を固定する。なお、一連の作業は、装置本体10のハウジング部50に設けた窓372から、螺旋状歯22とローラアッセンブリ34との係合状態を確認しつつ、注意深く行えばよい。
次に行う第2ローラアッセンブリ組付工程は、組付けられていないローラアッセンブリ34をタレット32に組付け、全組付ローラギアを得る工程である。本工程でのローラアッセンブリ34の組付けは、ローラアッセンブリ34が組付られていない箇所が装置本体10のハウジング部50に設けられた窓370の位置にくるように、半組付ローラギア400を回転させ、窓370から行う。組付けの方法は、第1ローラアッセンブリ組付工程と同様、ローラ軸92のスタッド部94をタレット32の嵌合穴82に挿入して嵌合し、止めねじ110を締め付けて固定すればよい(図5および図6を参照)。その際、ローラ軸92の支持部96のスタッド部94に対する偏心方向を一定にすべく、すべてのローラアッセンブリ34において、頭部98に刻まれている偏心指示マーク118をタレット32の下端方向あるいはその反対方向に向けて揃えておくのがよい。組付けられていなかった3個のローラアッセンブリ34組付けて、全組付ローラアッセンブリが得られる。図16に、すべてのローラアッセンブリ34を組付けた状態の回転伝達装置を示す。図において、全組付ローラギア420に付した1),2)および3)は、第2ローラアッセンブリ組付工程で組付けたローラアッセンブリ34の箇所を示している。
第2ピッチ調整工程は第2ローラアッセンブリ組付工程において組付けたローラアッセンブリ34のピッチ調整を行う工程である。全組付ローラギア420に回転角度検出装置を取付け、ウォーム12を回転させることにより全組付ローラギア420を回転させ、回転角度検出装置によって検出される回転角度が適正角度となるようにピッチ調整を行う。図17に、第2ピッチ調整工程を行っている状態の回転伝達装置の外観を示す。図に示すように、回転角度検出装置はエンコーダ430であり、テーブル基体16の出力フランジ130に取付けて、全組付ローラギア420の回転角度を検出する。ウォーム12の回転は、手回し式の回転装置440によって行う。回転装置440は、主に、装置本体10のモータ取付部58に取付けられる取付板442と、取付板442に回転可能に軸支された軸部444とフランジ部446とを含む回転軸448と、ウォーム軸部26と回転軸448とを軸部444の一端側で連結する連結部材450と、軸部444の他端側に取付けられたクランクレバー452とを含んで構成される。クランクレバー452を回転させることで、ウォーム12が回転させられる。また、フランジ部446の外周部には、内面が円錐周面となる円錐ブッシュ454が付設られており、また、取付板442には、回転軸448のある回転角度において円錐ブッシュ454とが同軸的に位置することが可能な位置に、円筒ブッシュ456が配設されている。円筒ブッシュ456を嵌通する状態で、先端がテーパ状の位置決めピン458を円錐ブッシュ454に嵌合させることによって、回転軸448の回転角度位置が、所定の回転角度位置に固定される。したがって、位置決めピン458を嵌合させた状態から、位置決めピン458を抜き、クランクレバー452を回転させ、再び位置決めピン458を嵌合させれば、ウォーム12は正確に1回転させられる。本回転装置440は、かかる単純な構造の装置であるが、ウォーム12の1回転を正確に割出すことができ、利用価値の高い装置である。なお、ピッチ調整におけるウォーム12の回転は、上記手回し式の回転装置によらず、回転伝達装置のモータ40によって行ってもよい。その場合は、後に説明するように、モータ40をモータ取付部58に取付ける作業をピッチ調整に先駆けて行えばよい。
ピッチ調整は、例えば、以下の方法によって行うことができる。図18に、ピッチ調整を開始する状態のローラアッセンブリの配置状態を示す。まず、図に示すように、第2ローラアッセンブリ組付工程で組付けたローラアッセンブリ34のうちの端側にあるもの(図における1)の箇所にあるもの)が、ウォーム12の次の1回転中に係合を開始する位置まで全組付ローラギア420を回転させておき、位置決めピン458を嵌合させた状態で、全組付ローラギア420の回転角度を検出する。この状態において、そのローラアッセンブリ34に隣接して既に螺旋状歯22に係合しているローラアッセンブリ34を基準となるローラアッセンブリ34とする。その状態から、回転装置440によって、ウォーム12を1回転させて、そのローラアッセンブリ34を螺旋状歯22に係合させる。ウォーム12の1回転により、ローラアッセンブリ34は配設角度ピッチ分だけ送られることから、その時点の回転角度を検出し、先の回転角度との差を求め、配設角度ピッチの実測値とする。この実測値が理論値に一致するするように、そのローラアッセンブリ34をピッチ調整する。ピッチの具体的な調整方法は、第1ピッチ調整工程における場合と同様、実測値が理論値より小さい場合は、そのローラアッセンブリ34の止めねじ110を緩め、基準となるローラアッセンブリ34から遠ざけるように、頭部98の偏心指示マーク118の動きを確認しつつ、そのローラアッセンブリ34のローラ軸92を適当な角度だけ回転させ、止めねじ110を締めて固定した後、再度配設角度ピッチを測定して確認する(図5および図6を参照)。逆に、基準となるローラアッセンブリ34との間の実測した配設角度ピッチが理論値より大きい場合は、そのローラアッセンブリ34を基準となるローラアッセンブリ34に近づけるようにして、調整を行えばよい。ピッチ調整が完了した先のローラアッセンブリ34を次の基準となるローラアッセンブリ34とし、上記の一連の操作を繰り返して、第2ローラアッセンブリ組付工程で組付けたすべてのローラアッセンブリ34のピッチ調整を行う。それらのローラアッセンブリ34のピッチ調整が完了した後、全組付ローラギア420の全周にわたって、すべてのローラアッセンブリ34の配設角度ピッチを確認し、必要とあれば再調整を行い、ローラアッセンブリ34のピッチ調整を終了する。
次に行う固着工程は、ピッチ調整されたローラアッセンブリ34をタレット32に固着する工程である。固着は、ローラ軸92のスタッド部94の外周面とタレット32の嵌合穴82の内周面との間の隙間に、接着剤を充填することによって行う(図5および図6参照)。接着剤には、例えば、ロックタイト(商品名:日本ロックタイト株式会社製)を用いることができる。ロックタイトは、常温硬化する嫌気性接着剤であり、ジメタアクリレートエステルを主成分とする比較的低粘性の液状をなす接着剤である。ロックタイトの充填作業は、タレットに形成された導通孔88の開口から、所定の注入器を用いて、ロックタイトを注入圧送することによって行う。上述したように、タレット32に形成された導通孔88,スタッド部94の環状溝108と嵌合穴82の内周面とで区画される空間,平面部112と嵌合穴82の内周面とで区画される空間,嵌合穴82の面取り114とスラストピース106のとで区画される環状の空間,導通溝116とスラストピース106とで区画される空間は、その順に連通しており、これらの空間がロックタイトの圧送経路となる。ロックタイトは、この圧送経路の途中において、その一部が、スタッド部94の外周面と嵌合穴82の内周面との間に存在する小さな隙間にまで入り込み、均一に充填される。すべてのローラアッセンブリ34に対して充填作業を行い、放置して硬化させることにり、ローラアッセンブリ34はタレット32に固着される。
回転伝達装置を駆動させるモータ40は、装置本体10のモータ取付部58に取付けられる。モータ40の駆動軸42とウォーム軸部26との連結は、まず、連結装置70をウォーム軸部26に取付け、その後にモータ40を配設し、窓378を利用して、駆動軸42と連結装置70を連結して行う。その他、モータ40から制御装置への配線、ローラギア14の回転防止装置64における作動油流路172と油圧ユニットとの間の配管等の作業を行って、回転伝達装置を完成させる。
〈ローラ回転体の螺旋状歯の形状〉
前述したように、歯付回転体とローラ回転体との噛合において、ローラアッセンブリと螺旋状歯との間に一定のクリアランスを設け、それぞれの回転軸線を互いに接近させた状態で両者を噛合する場合には、ローラアッセンブリは螺旋状歯から予圧を受けた状態となる。この状態で回転伝達をするときには、ローラ回転体の回転角度が変化することにより予圧の状態が変化し、回転速度が変化してしまう。いわゆる回転伝達むらである。以下に、モデルを用いて、まず、この回転伝達むらについて説明し、回転伝達むらが少なくなるような螺旋状歯の形状について説明する。そして、さらに、上記実施例の回転伝達装置におけるウォームの螺旋状歯への適用について言及する。
用いるモデルは、回転角度に応じて3個ないし4個のローラアッセンブリが同時期に係合する螺旋状歯を有する鼓形ウォーム(以下、「ウォーム」と略す)と、12個のローラアッセンブリを配設角度ピッチ30゜で保持した平ローラギア(以下、「ローラギア」と略す)との噛合モデルである。図19に、そのモデルにおいて、ローラギアがある回転角度位置においてウォームと噛合する状態を示す。図20に、そのウォームの展開図を示す。ローラギア500は、タレット502と、タレット502の外周部に等角度ピッチで保持されて配設された12個のローラアッセンブリ504とを含んで構成される。ローラアッセンブリ504の各々は、互いに同軸的に配設された同径の2つのローラ506を有し、それぞれのローラ506が独立して回転可能となっている。ウォーム510は、外周部に一定のリード角をもつ1条の螺旋状歯512を有し、螺旋状歯512は、軸方向に並ぶ2つ(噛み替わりの部分では3つ)の歯山を形成する。ローラアッセンブリ504と螺旋状歯512との係合は、ローラ506が螺旋状歯512の側面514(右側の側面に着目するときは右側面514と左側の側面に着目するときは左側面514と表す)に当接することによってなされるが、ローラギア500の外周側のローラ506が左側面514にのみ当接可能なように、また、内周側のローラ506が右側面514にのみ当接可能なように、螺旋状歯512の側面514には逃がし部516が設けられている(図20には、逃がし部516は省略してある)。したがって、ローラ506は、螺旋状歯512の側面514の当接部518においてのみ当接する。
本噛合モデルにおいては、ローラギア500は、設計寸法どおりに形成された理論ローラギアであり、また、ローラアッセンブリ504と螺旋状歯512との間のクリアランスがローラギア500のいずれの回転角度においても一定に保たれる状態で回転可能であるものとする。つまり、螺旋状歯512は設計寸法どおりに形成された理論螺旋状歯であり、ウォーム510は理論螺旋状歯を有する理論ウォームであるものとする。そして、上記クリアランスを一定に保った状態でウォーム510とローラギア500が回転可能な状態にある場合において、両者の相対位置を理論噛合位置とする。すなわち、設計上の位置に両者がある場合における両者の相対関係位置である。理論噛合位置において、ウォーム510とローラギア500とが噛合する場合、ローラアッセンブリ504と螺旋状歯512との間にクリアランスが存在する場合は、何某かのバックラッシが発生する。そこで、ウォーム510の回転軸線とローラギア500の回転軸線とを理論噛合位置より相対的に近づけた位置で噛合させることにする。このときのローラギア500とウォーム510との相対位置を実噛合位置と定義し、それらウォーム510とローラギア500が実噛合位置で噛合する状態を理論実噛合状態と定義する。
図19に示すローラギア500の回転角度位置は、ローラアッセンブリ504の噛み替わりの位置であり、この位置を基準回転角度位置とする。すなわち、ローラギア500の回転角度が0゜である回転角度位置である。図の→の方向をローラギア500の正回転方向とし、基準回転角度位置において係合するローラアッセンブリ504の各々を、先頭のものからRA1,RA2,RA3,RA4と名称付ける。ウォーム510の回転軸線とローラギア500の回転軸線の両者に直交する線を基準線CLとした場合、図19の状態においては、それぞれのローラアッセンブリRA1,RA2,RA3,RA4の軸線(ローラ506の回転軸線)と基準線CLとのなす角度θRA1,θRA2,θRA3,θRA4は、ローラアッセンブリ504の配設角度ピッチが30゜であることから、それぞれ、45゜,15゜,−15゜,−45゜となる。
上記基準回転角度位置において、理論噛合位置から実噛合位置へローラギア500とウォーム510とを相対移動させた場合を考える。つまり理論実噛合状態に移行させた場合を考えるのである。ある程度の距離を移動させた場合、それぞれのローラアッセンブリRA1,RA2,RA3,RA4は、ローラ506が螺旋状歯512の側面514に当接しそこからさらに押し込まれることになるため、螺旋状歯512から反力を受けることになる。この反力がそれぞれのローラアッセンブリに作用する予圧である。螺旋状歯512の側面514の法線方向に作用する予圧成分、つまり、ローラギア500の回転方向に作用する予圧成分は、ローラギア500を回転させる回転トルクを生じさせる。そしてその回転トルクの大きさは予圧成分の大きさに比例する。図19の状態においては、それぞれのローラアッセンブリRA1,RA2,RA3,RA4に、図に→で示す方向に、それぞれ予圧成分σRA1,σRA2,σRA3,σRA4が作用している。なお、上記クリアランスが正の値となる場合は、ローラギア500のいずれの回転角度においても、1個のローラアッセンブリ504が螺旋状歯512の異なる側面514に同時に係合することはなく、1個のローラアッセンブリに正回転方向の予圧成分と逆回転方向の予圧成分とが同時に作用することはない。
理論実噛合状態における予圧成分量を理論上の計算で求めれば以下のようになる。図21に、理論噛合位置から実噛合位置に移行する場合に発生する予圧成分量に関する概念図を示す。理論噛合位置においては、ローラアッセンブリのローラの外周面はRの位置にあり、螺旋状歯の側面はTの位置にある。両面の間隔がクリアランスcである。理論噛合位置から実噛合位置への移行により、ローラギアの回転軸線とウォームの回転軸線との距離がLだけ小さくなったとする。すると、ローラの外周面は図の破線の矢印が示すように基準線CLの方向に相対移動する。クリアランスcが0となる位置を超えて移動できないため、L’の分だけ移動できず、各所において弾性変形が生じ、その結果、ローラの外周面が螺旋状歯の側面から反力をうける。この反力がそのローラアッセンブリが受ける予圧であり、σ0とすれば、
σ0∝L’
の関係が成り立つ。また、ローラの外周面と基準線CLとのなす角度はローラアッセンブリの軸線と基準線CLとのなす角度と等しく、この角度をθとすれば、予圧σ0のローラギアの回転方向における予圧成分σは、
σ=σ0・sinθ
となり、さらに、
σ∝L’
となる。また、ローラの外周面がR’の位置にあると仮定した場合において、その面と螺旋状歯の側面との面間距離をδとしたときに、
δ∝L’
であり、結果として
σ∝δ
となる。一方、あるローラアッセンブリについてのδの値は、ローラギアとウォームとの相対移動距離L,ローラアッセンブリと螺旋状歯とのクリアランスc,ローラアッセンブリの軸線と基準線CLとのなす角θによって決定され、
δ=L・sinθ−c
の式により求まる。ちなみに、δの値は、θの関数であることから、ローラギアの回転角度位置によって変化するものであり、また、θが大きくなるにつれて大きくなることから、ローラアッセンブリがウォームの回転軸線方向における中心部で係合する場合に予圧成分が小さく、逆に、端部で係合する場合に大きくなることが判る。
上述したように、予圧成分σは上記δの値と比例関係にあることから、本明細書においては、δの値をもって予圧成分量と定義し、以後の説明において、予圧成分σの代わりに予圧成分量δを用いて説明するものとする。なお、あるローラアッセンブリに生じる予圧成分量δは、そのローラアッセンブリが基準線CLより正回転方向側にある場合は、ローラギアを正回転方向に回転させようとする向きに予圧成分が働くため、正の値となる。逆に、基準線CLより逆回転方向側にある場合は、逆回転方向に回転させようとする向きに予圧成分が働くため、負の値となる。実際の計算では、
|δ|=L・sin|θ|−c
の式により、絶対値を算出し、その値に正または負の記号を付すものとする。
図19に示す基準回転角度位置の状態において、係合するそれぞれのローラアッセンブリRA1,RA2,RA3,RA4に生じる予圧成分量δRA1,δRA2,δRA3,δRA4を、上記式から求める。条件としては、ローラギア500とウォーム510との相対移動距離Lを0.03mm,螺旋状歯512とのクリアランスcを0.005mmとする。それぞれの軸線と基準線CLとのなす角θRA1,θRA2,θRA3,θRA4は、45゜,15゜,−15゜,−45゜であることから、それぞれのローラアッセンブリに生じる予圧成分量は、
δRA1=0.0162
δRA2=0.0028
δRA3=−0.0028
δRA4=−0.0162
となる。便宜上、1個のローラアッセンブリには、ローラギア500の正回転方向および逆回転方向にそれぞれ予圧成分が作用し、それぞれに予圧成分量δが存在するとみなすことができ、正回転方向に作用する予圧成分量を予圧正成分量δ+と、逆回転方向に作用する予圧成分量を予圧負成分量δ-と定義すれば、それぞれのローラアッセンブリRA1,RA2,RA3,RA4に生じる予圧正成分量δ+および予圧負成分量δ-(ローラギアの回転角度が0゜であることからさらに0の添え字を付す)は、
δ+ RA1,0=0.0162, δ- RA1,0=0
δ+ RA2,0=0.0028, δ- RA2,0=0
δ+ RA3,0=0, δ- RA3,0=−0.0028
δ+ RA4,0=0, δ- RA4,0=−0.0162
となる。また、その場合、上記予圧成分量δは、予圧正成分量δ+および予圧負成分量δ-との和であることから、予圧成分量和δと定義することがふさわしく、以後の説明において、その定義に従う。したがって、それぞれのローラアッセンブリRA1,RA2,RA3,RA4の予圧成分量和δRA1,δRA2,δRA3,δRA4は上記値となる。
係合するすべてのローラアッセンブリの予圧正成分量δ+,予圧負成分量δ-および予圧成分量和δのそれぞれの合計を、それぞれ、総予圧正成分量Σδ+,総予圧負成分量Σδ-および総予圧成分量和Σδ(Σδ+とΣδ-との和でもある)と定義すれば、図19に示す基準回転角度位置の状態において、総予圧正成分量Σδ+ 0,総予圧負成分量Σδ- 0および総予圧成分量和Σδ0(ローラギアの回転角度が0゜であるとして0を添え字する)は、
Σδ+ 0=0.0190, Σδ- 0=−0.0190
Σδ0=0
となる。総予圧正成分量Σδ+と総予圧負成分量Σδ-との絶対値が等しいことつまり総予圧成分量和Σδが0であることは、予圧正成分と予圧負成分とが釣り合っており、ローラギア全体では予圧成分が打ち消された状態になっている。したがって、予圧による正回転方向の回転トルクと逆回転方向のトルクとはバランスがとれ、結果的にローラギアは予圧による回転トルクを受けていない状態であるといえる。ちなみに、回転トルクにはローラギアの回転軸線とローラまでの距離が関係し、内周側のローラと外周側のローラとではその距離が異なるため、厳密には等しくないが、その距離差の影響は小さいものと考えることができるため、本噛合モデルにおいては無視する。また、図20のD部からも判るように、実際には、ローラと螺旋状歯の当接点はローラアッセンブリの中心を結ぶ線上には無く、このずれも回転トルクに影響を与えるが、その影響は小さいものと考えることができることから、本噛合モデルにおいては、そのことについても同様に無視する。なお、上記、予圧正成分量δ+,予圧負成分量δ-,予圧成分量和δ,総予圧正成分量Σδ+,総予圧負成分量Σδ-および総予圧成分量和Σδは、いずれも予圧関連量と定義することができ、それらの単位は長さの単位(本明細書ではmm)となる。
次に、上記理論実噛合状態において、ローラギアが回転した場合を考える。図22および図23に、基準回転角度位置からローラギアが所定の回転角度だけ回転した場合のローラアッセンブリと螺旋状歯との係合状態を示す。図22(a)は基準回転角度位置から5゜回転した位置を示し、図22(b)は10゜、図22(c)は15゜、図23(d)は20゜、図23(e)は25゜、図23(f)は30゜回転した位置をそれぞれ示す。基準回転角度位置から回転し始めた直後に、ローラアッセンブリRA1は係合を解かれ、係合するローラアッセンブリの数が減少する。そして、30゜回転して基準回転角度位置の戻り、また次のローラアッセンブリRA5が係合を開始する。図20に示すウォームの展開図では、このローラギアの回転に伴って、ローラアッセンブリは→の向きに進行することになる。図20の(a)〜(f)は、図22および図23に示す位置に対応する。
図22(a)に示す回転角度5゜の位置において、それぞれのローラアッセンブリに生じる予圧正成分量δ+および予圧負成分量δ-は、
δ+ RA2,5=0.0053, δ- RA2,5=0
δ+ RA3,5=0, δ- RA3,5=−0.0002
δ+ RA4,5=0, δ- RA4,5=−0.0143
となり、総予圧正成分量Σδ+ 5,総予圧負成分量Σδ- 5および総予圧成分量和Σδ5は、
Σδ+ 5=0.0053, Σδ- 5=−0.0145
Σδ5=−0.0092
となる。この位置では、総予圧負成分量Σδ- 5の絶対値は総予圧正成分量Σδ+ 5の絶対値より大きく、ローラギアは予圧により逆回転方向の回転トルクを受けている。その回転トルクの大きさは、総予圧成分量和Σδ5に比例するものとなる。その場合実際は、ローラギアは予圧とのバランスをとるべく、総予圧成分量和Σδ5の約半分に相当する分だけ逆回転方向に回転させられると考えることができ、その分の回転角度を回転角度誤差γと定義することができる。つまり、回転角度誤差γは、総予圧成分量和Σδを打ち消すべく発生するのである。ローラギアの半径(外周側ローラ位置におけるの半径と内周側ローラ位置の半径との平均値)をRとすれば、回転角度誤差γは、
γ=sin-1(Σδ/2/R)
という式で近似できる。ここでローラギアの半径Rを80mmとすれば(R=80)、ローラギアの回転角度が5゜の位置にある場合の回転角度誤差γ5(単位は秒とし、ローラギアの回転角度を添え字して示す)は、−11.9″となる。
同様に、図22(b)に示す回転角度10゜の位置において、それぞれのローラアッセンブリに生じる予圧正成分量δ+および予圧負成分量δ-は、
δ+ RA2,10=0.0077, δ- RA2,10=0
δ+ RA3,10=0, δ- RA3,10=0
δ+ RA4,10=0, δ- RA4,10=−0.0122
となる。ちなみにローラアッセンブリRA3は、クリアランスが存在することで2つのローラのいずれもが螺旋状歯の側面に当接せず、いずれの方向の予圧成分も生じていない。そして、総予圧正成分量Σδ+ 10,総予圧負成分量Σδ- 10および総予圧成分量和Σδ10は、
Σδ+ 10=0.0077, Σδ- 10=−0.0122
Σδ10=−0.0045
となる。この位置においても、総予圧負成分量Σδ- 10の絶対値は総予圧正成分量Σδ+ 10の絶対値より大きく、ローラギアは予圧により逆回転方向の回転トルクを受けている。回転角度誤差γ10は、この位置において−5.8″となる。
図22(c)に示す回転角度15゜の位置においては、上記それぞれの予圧関連量は、
δ+ RA2,15=0.0100, δ- RA2,15=0
δ+ RA3,15=0, δ- RA3,15=0
δ+ RA4,15=0, δ- RA4,15=−0.0100
Σδ+ 15=0.0100, Σδ- 15=−0.0100
Σδ15=0, γ15=0
となり、正回転方向の回転トルクと逆回転方向の回転トルクとは釣り合い、回転角度誤差は生じない。
同様に、図23(d)に示す回転角度20゜の位置では、
δ+ RA2,20=0.0122, δ- RA2,20=0
δ+ RA3,20=0, δ- RA3,20=0
δ+ RA4,20=0, δ- RA4,20=−0.0077
Σδ+ 20=0.0122, Σδ- 20=−0.0077
Σδ20=0.0045, γ20=5.8
となり、また、図23(e)に示す回転角度25゜の位置では、
δ+ RA2,25=0.0143, δ- RA2,25=0
δ+ RA3,25=0.0002, δ- RA3,25=0
δ+ RA4,25=0, δ- RA4,25=−0.0053
Σδ+ 25=0.0145, Σδ- 25=−0.0053
Σδ25=0.0092, γ25=11.9
となり、いずれの場合も、予圧によりローラギアは正回転方向の回転トルクを受け、正回転方向に回転角度誤差が生じる。さらに、図23(f)に示す回転角度30゜の位置では、
δ+ RA2,30=0.0162, δ- RA2,30=0
δ+ RA3,30=0.0028, δ- RA3,30=0
δ+ RA4,30=0, δ- RA4,30=−0.0028
δ+ RA5,30=0, δ- RA5,30=−0.0162
Σδ+ 30=0.0190, Σδ- 30=−0.0190
Σδ30=0, γ30=0
となり、回転トルクの釣り合いのとれた基準回転位置に戻ることになる。
ローラギアの回転角度をω(゜)とし、0゜≦ω≦30゜の範囲の2.5゜刻みの回転角度位置における予圧関連量のうち、それぞれのローラアッセンブリの予圧成分量和δRA,総予圧正成分量Σδ+,総予圧負成分量Σδ-,総予圧成分量和Σδおよび回転角度誤差γを、一覧にして下記〔表1〕に示す。また、総予圧正成分量Σδ+,総予圧負成分量Σδ-および総予圧成分量和Σδのそれぞれの絶対値の最大値を、それぞれ最大総予圧正成分量Σδ+ max,最大総予圧負成分量Σδ- maxおよび最大総予圧成分量和Σδmaxと定義し(これらも予圧関連量である)、それらもあわせて示す。なお、予圧成分量和δRAのデータ中、「***」で示すものは、そのローラアッセンブリが螺旋状歯のいずれの側面にも当接していない状態を表している。
上記〔表1〕から判るように、示した予圧関連量はローラギアの回転角度ωの変化とともに変化している。ローラギアの回転角度ωの変化に伴う回転角度誤差γの変化をグラフにすれば、図24のようになる。回転伝達誤差γの変化は、この図から明らかなように、鋸歯状をなしている。このように変化する場合、入力側を一定速度で回転させても、出力側が一定速度で回転せず、あたかも脈動するように回転する。このことは、また、出力側を所定の回転角度位置で停止させるべく、入力側をそれに対応する所定の回転角度位置で停止させたとしても、出力側の停止位置がその回転角度位置によってばらつくことをも意味している。以上のことを総合すれば、理論螺旋状歯を有する理論ウォームと理論ローラギアとを実噛合位置で噛合させる場合は、回転伝達むらが発生が必然的であることが確認される。なお、前述したように、回転角度誤差γは、総予圧成分量和Σδを打ち消すべく発生し、その大きさは、総予圧成分量和Σδの約半分の量の円弧の中心角であるとすることができる。しかし、実際は、ローラギアが予圧の影響で回転させられる場合であって、例えば、ローラアッセンブリと螺旋状歯とのクリアランスを超えて回転させられようとするときには、本来当接する側面の反対側の側面に当接する等、他の様々な影響を受けるため、上記理論どおりの単純なものとはならないと考えられる。ところが、実験によれば、回転伝達誤差γの実測データの変化は、図24に示したものと略同じような変化を示すことが確認でき、上記理論に基づく回転伝達誤差は、実用上信頼性の高いものであるといえる。
上記〔表1〕およびそれを補填するデータに基づいて作成した本噛合モデルにおけるウォームの理論螺旋状歯の形状データを、下記〔表2〕に示し、また、図25に、そのデータに基づいて、螺旋状歯の形状を模式的に示す。なお、〔表2〕のデータ中、「***」で示すものは、ローラアッセンブリがその部位において螺旋状歯の側面に当接していないことを表している。
本噛合モデルのウォームの螺旋状歯は、1条で形成されており、軸方向に略2つの歯山が形成される。つまり、外周を略2周する螺旋状歯である。そこで、〔表2〕では、螺旋状歯の歯の部位をウォームの回転角度ψによって対応付けている。それに関係する図25においては、左上の条端部が回転角度0゜に対応する部位であり、右下の条端部が回転角度720゜に対応する部位となっている。上記〔表2〕に示すデータは、螺旋状歯のどの部位の側面がどの程度の予圧成分量を発生させるかを表している。数値が大きいほど大きな量の予圧を与えることになる。螺旋状歯の左側面については、回転角度0゜に対応する部位において最も大きな予圧を与えており、回転角度が大きくなるにつれて発生する予圧成分量が減少し、420゜を過ぎたあたりでローラアッセンブリが当接せず、予圧を与えなくなる。逆に、右側面においては、回転角度720゜に対応する部位において最も大きな予圧を与えており、回転角度が小さくなるにつれて発生する予圧成分量が減少し、300゜を過ぎたあたりでローラアッセンブリが当接せず、予圧を与えなくなる。図25において斜線を施した部分が予圧を与える部位であって、その斜線部の幅が大きいほど大きな予圧成分量が発生することを示している。
次に、前記〔表1〕に基づいて、理論実噛合状態における場合より回転伝達むらの小さい螺旋状歯の形状について述べる。上記理論螺旋状歯は、理論螺旋状歯を形成するための理論形状データに基づいて形成される。実際の螺旋状歯は、この理論形状データと、理論螺旋状歯の形状を修正する修正データとに基づいて形成すればよい。ちなみに、上記〔表2〕示す螺旋状歯の形状データもこの理論形状データの一態様であるといえ、以下の説明においては、〔表2〕の形状データを修正の基となる理論形状データとして扱う。修正データは、理論螺旋状歯の側面、厳密には側面の当接部を法線方向に前進あるいは後退させる量を示すものであり、理論螺旋状歯の側面を前進させれば、そこに係合するローラアッセンブリが受ける予圧が大きくなる。逆に、後退させれば、予圧が小さくなる。以下に、本噛合モデルにおいて採用可能な螺旋状歯の代表的形状について掲げる。
1つの代表的な形状として、最大総予圧成分量和Σδmaxを理論実噛合状態より小さくする最大総予圧成分量和減少データに基づいて形成された螺旋状歯を採用することができる。〔表1〕から判るように、回転角度誤差γは、総予圧成分量和Σδの絶対値が大きいほど大きなものとなる。上記噛合モデルの理論実噛合状態においては、ローラギアの回転角度が0゜(30゜)となる位置の前後において、最大総予圧成分量和Σδmaxが出現する。したがって、その回転角度においてローラアッセンブリが当接する螺旋状歯の側面の部分およびその近傍の部分を側面の法線方向に前進あるいは後退させて総予圧正成分量Σδ+と総予圧負成分量Σδ-とのバランスを是正すれば、最大総予圧成分量和Σδmaxが小さくなる。このような形状に修正するのがここでいう最大総予圧成分量和減少データであり、この修正データに基づいて形成された形状の螺旋状歯と噛合させれば、回転角度誤差γは小さくなる。図25を参照しつつ具体的に例示すれば、ウォーム回転角度ψが0゜あるいは360゜に対応する部位の左側面、および、ウォーム回転角度ψが720゜あるいは360゜に対応する部位の右側面を、その当接部を後退させるような、つまりその部位の斜線部の幅を減少させるような修正データに基づいて形成された螺旋状歯であればよい。
もう1つの代表的な形状として、総予圧成分量和Σδがステップ的に変化しないように理論螺旋状歯の形状を修正する総予圧成分量和急変防止データに基づいて形成された螺旋状歯を採用することができる。〔表1〕および図24から明らかなように、ローラギアの回転角度が0゜(30゜)となる位置を挟んで、総予圧成分量和Σδが急変し、回転角度誤差γも急変している。本噛合モデルにおいては、その回転角度位置では、あるローラアッセンブリの係合開始と他のあるローラアッセンブリの係合終了が略同時的に行われることから、その位置において総予圧成分量和Σδが0となるが、その直前および直後の位置において、総予圧成分量和Σδのそれぞれ最大値および最小値が出現する。つまり、総予圧成分量和Σδのステップ的な変化は、かなり大きなものとなっている。ステップ的な変化の原因は、螺旋状歯の条端部において、ローラアッセンブリが大きな予圧を受けることにある。したがって、本噛合モデルにおいて、そのようなステップ的な変化を防止するためには、図25を参照しつつ具体的に例示すれば、ローラアッセンブリが係合開始および係合終了する螺旋状歯の条端部においてローラアッセンブリが受ける予圧正成分量δ+および予圧負成分量δ-が略0となるように螺旋状歯の条端の部分の側面を法線方向に後退させ、かつ、歯条の中央に向かってその後退量が漸減するような修正データに基づいて螺旋状歯を形成すればよい。すなわち、その修正データは、ウォーム回転角度ψの0゜に対応する部位の左側面、および、ウォーム回転角度ψの720゜に対応する部位の右側面の斜線部を除去し、かつ、例えば、そこから螺旋状歯の中央部に向かって斜線部の幅を緩やかに変化させるような修正データであり、かかる修正データが、本噛合モデルにおける総予圧成分量和急変防止データとなる。総予圧成分量和急変防止データに基づいて形成された螺旋状歯では、回転伝達速度の急変のない良好な回転伝達が実現できる。
下記〔表3〕に、ある総予圧成分量和急変防止データと、そのデータに基づいて形成された螺旋状歯の形状データとを示し、下記〔表4〕にその螺旋状歯を有するウォームとローラギアを噛合させた場合の各種予圧関連量を示す。
上記〔表3〕に示す修正データは、ウォーム回転角度ψの0゜に対応する部位の左側面、および、ウォーム回転角度ψの720゜に対応する部位の右側面に係合するローラアッセンブリが、予圧を受けず、かつ、それら側面との間に隙間を有さないように、条端のそれらの側面を法線方向に後退させ、そこから歯の中央部に向かって、ウォームの回転角度15゜あたり0.001mmの割合で後退量を減少させるように修正を施すデータである。この修正データは、総予圧成分量和急変防止データであるとともに、前述の最大総予圧成分量和減少データでもある。先の〔表2〕の理論螺旋状歯の形状データとこの修正データとに基づいて形成した螺旋状歯の形状データが、〔表3〕の右欄に示す修正後螺旋状歯の形状データである。この修正後螺旋状歯を有するウォームとの噛合状態を示す上記〔表4〕を見て判るように、総予圧成分量和Σδはステップ的に変化せず、ローラギアの回転角度位置にともなって回転速度がステップ的に変化することはない。また、最大総予圧成分量和Σδmaxの値も〔表1〕に示す理論実噛合状態の場合と比較して小さく、その結果、回転角度誤差γも総じて小さく、回転伝達むらの小さな回転伝達装置が実現できることが確認できる。
上記総予圧成分量和急変防止データに基づく、あるいは、最大総予圧成分量和減少データに基づく形状と異なる別の代表的な形状を有するものとして、ローラギアのいずれの回転角度においてもその総予圧成分量和Σδが略0となるように理論螺旋状歯を修正する総予圧成分量和除去データに基づく形状の螺旋状歯を採用することもできる。総予圧成分量和Σδが略0になるということは、ローラギア全体をみれば予圧による回転トルクが殆ど発生していない状態であることを意味する。そのような修正データに基づいて形成された螺旋状歯は、回転伝達むらの極めて小さな回転伝達装置が実現される。
総予圧成分量和除去データに基づく螺旋状歯の形状の1つとして、ローラギアのいずれの回転角度においても、螺旋状歯と係合しているすべてのローラアッセンブリの予圧正成分量δ+および予圧負成分量δ-が略0となるような修正データに基づいた形状を採用することができる。具体的に例示すれば、図25における斜線部のすべてを除去すべく、予圧を発生させる部位における螺旋状歯の側面の当接部を法線方向に後退させるような修正データに基づいて形成された螺旋状歯とすればよい。かかる螺旋状歯では、いずれの回転角度においても殆ど予圧に起因する回転トルクは発生しない。
総予圧成分量和除去データに基づく螺旋状歯の形状の1つとして、ローラギアのいずれの回転角度においても、その総予圧正成分量Σδ+およびその総予圧負成分量Σδ-が0とならないような修正データに基づいた形状を採用することができる。つまり、いずれか2以上のローラアッセンブリが常に予圧を受けた状態で係合し、それらに起因する正回転方向の回転トルクと逆回転方向の回転トルクとが常に釣り合った状態であることを意味する。図25を参照しつつ具体的に例示すれば、あるウォームの回転角度を示す線(横軸線)が横切る部位において、螺旋状歯の左側面に施された斜線部の幅の合計と右側面に施された斜線部の幅の合計とが等しく、かつ、その状態がいずれのウォームの回転角度においても達成されるように、それぞれの側面の当接部を法線方向に前進あるいは後退させる修正データに基づいて、螺旋状歯を形成すればよい。かかる螺旋状歯を有するウォームを採用すれば、前述したように、回転ずれを自己修正する能力が高い回転伝達装置が得られる。
上記総予圧成分量和除去データに基づく螺旋状歯の形状についての具体的データを用いた考察は省略するが、総予圧成分量和急変防止データに基づく場合と同様の修正手法で行えばよく、目的とする螺旋状歯が得られることが容易に理解できる。
次に、前述した実施例の回転伝達装置におけるウォームとローラギアの場合について言及する。下記〔表5〕に、上記〔表1〕と同様の形式で、その回転伝達装置が理論実噛合状態にある場合の各種予圧関連量を示し、下記〔表6〕に、上記〔表2〕と同様の形式で、そのウォーム(理論ウォーム)の螺旋状歯の形状データを示す。また、図26に、そのデータに基づいて、その螺旋状歯の形状を模式的に示す。なお、ローラギアは、24個のローラアッセンブリを有し、その配設角度ピッチが15゜であり、その半径Rを160mmとした。また、ウォームは1条の螺旋状歯を有し、その螺旋状歯は、軸線方向に3つないし4つの歯山を形成するように、その外周部を約3.3周して形成されている。ローラアッセンブリと螺旋状歯とのクリアランスcは、0.005mm、理論噛合位置から実噛合位置へのローラギアおよびウォームの回転軸の相対移動距離Lは0.05mmとした。
上記〔表5〕から判るように、〔表1〕の場合と同様、理論実噛合状態においては、予圧に起因する回転むらが生じている。総予圧成分量和Σδが大きいほど回転伝達誤差γが大きくなることも同様である。ローラギアの回転角度ωにおいて2.5゜と3.75゜との間および11.25゜と12.5゜との間の2つの回転角度位置において、総予圧成分量和Σδがステップ的に変化しており、これらの回転角度位置でローラアッセンブリの係合の開始しあるいは終了する。〔表6〕および図26から判るように、螺旋状歯の中央部から条端部に向かうにつれて予圧正成分量δ+あるいは予圧負成分量δ-が大きくなっている。ここでは具体的な修正データの説明は省略するが、以上のことを総合すれば、前述した噛合モデルの場合に示したような、各種修正データ(最大総予圧成分量和減少データ,総予圧成分量和急変防止データ,総予圧成分量和除去データ等)に基づく螺旋状歯が、回転伝達むらを小さくするのに有効であることが容易に確認できる。なお、螺旋状歯の側面を法線方向に後退させる修正を中心に説明したが、クリアランスを多めに設定した理論螺旋状歯の形状データに基づき、螺旋状歯の側面を法線方向に前進させて、適当な予圧成分量が発生するような修正を行うようして、螺旋状歯の形状を決定するものであってもよい。
本発明の一実施例である平ローラギア式回転伝達装置を示す平面断面図である。
上記回転伝達装置を示す右側面断面図である。
上記回転伝達装置を示す左側面図である。
上記回転伝達装置において、ローラアッセンブリとタレットとの関係を表す図であって、タレットの回転軸軸方向に直角な断面を示す図である。
上記回転伝達装置において、ローラアッセンブリとタレットとの関係を表す図であって、タレットの回転軸線を含む断面を示す図である。
上記回転伝達装置において、ローラアッセンブリとタレットとの関係を表す図であって、ローラアッセンブリの正面方向から見た図である。
上記回転伝達装置において、ウォームとローラギアとの噛合状態を示す断面図である。
上記回転伝達装置におけるウォームの展開図である。
上記回転伝達装置におけるモータの駆動軸が連結される側のウォーム軸保持部および軸保持装置を拡大して示す断面図である。
上記軸保持装置に代えて採用可能な軸保持装置を示す図である。
上記回転伝達装置におけるモータの駆動軸が連結されない側のウォーム軸保持部および軸保持装置を拡大して示す断面図である。
実施例の製造方法の第1ピッチ調整工程における半組付ローラギアとダミー回転体との噛合状態を示す断面図である。
上記ダミー回転体の展開図である。
ウォームおよびローラギア配設工程においてウォームと半組付ローラギアとを噛合させる際のローラアッセンブリの配置状態を示す断面図である。
ウォームおよびローラギア配設工程においてウォームの位置を正規位置に調整する際のローラアッセンブリの配置状態を示す断面図である。
第2ローラアッセンブリ組付工程においてすべてのローラアッセンブリを組付けた状態の回転伝達装置を示す断面図である。
第2ピッチ調整工程を行っている状態の回転伝達装置の外観を示す背面図である。
第2ピッチ調整工程において、ピッチ調整を開始するときのローラアッセンブリの配置状態を示す断面図である。
鼓形ウォームと平ローラギアとの噛合モデルにおいて、ローラギアが基準回転角度位置でウォームと噛合する状態を示す断面図である。
上記噛合モデルにおけるウォームの展開図である。
上記噛合モデルにおいて、理論噛合位置から実噛合位置に移行する場合に発生する予圧成分量に関する概念図である。
上記噛合モデルにおいて、基準回転角度位置からローラギアが所定の回転角度だけ回転した場合のローラアッセンブリと螺旋状歯の係合状態を示す断面図である。
上記噛合モデルにおいて、基準回転角度位置からローラギアが所定の回転角度だけ回転した場合のローラアッセンブリと螺旋状歯の係合状態を示す断面図である。
上記噛合モデルにおいて、ローラギアの回転角度ωの変化に伴う回転角度誤差γの変化を示すグラフである。
上記噛合モデルにおいて、ウォームの螺旋状歯の形状データに基づいた螺旋状歯の形状を模式的に示す。
上記実施例の回転伝達装置が理論実噛合状態にある場合の螺旋状歯の形状を模式的に示す。
符号の説明
10:装置本体 12:ウォーム(歯付回転体) 14:ローラギア(ローラ回転体) 22:螺旋状歯 34:ローラアッセンブリ 36:ローラ 40:モータ 50:ハウジング部 52:支承部 54,56:軸保持部 58:モータ取付部 62:支承装置 64:回転防止装置 66,68:軸保持装置 70:連結装置 200:歯山 202,204:側面(螺旋状歯の) 206:逃がし部(歯の側面の) 208:当接部(歯の側面の) 400:半組付ローラギア 410:ダミー歯付回転体 420:全組付ローラギア 430:エンコーダ(回転角度検出装置)